JP7480745B2 - ウェーハ形状測定器の評価方法 - Google Patents
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例えばあるウェーハのあるセクターのESFQRを見た場合、その値が15nmだったとする。ESFQRはウェーハ外周部分を任意の角度毎に短冊状に切り取った厚さむらを最小二乗面でノーマライズ(規格化)し、その後、最大厚みと最低厚みとの差から算出される。繰り返し測定において、この任意のセクター内の最高厚みと最低厚みが常に同じ位置にならなくても、最大値と最低値の差が近い値であれば、その測定器のESFQR再現性(精度)は良好であると判断されてしまう。
図12において各セクターの測定値再現性は、上記のようにStdev=0.4~0.8nmで良好ではあったが、最大値を示すセクターは必ずしも一定ではなく、この結果から測定器の再現性は決して良好であるとは言えない。これらのことから、従来の、あるフラットネスパラメーターの測定値再現性のみを精度の尺度とする見方は、測定器の精度を吟味するうえで十分な方法とは言えないことが分かる。
また、特許文献2はウェーハをチャック上で吸着/非吸着の状態における形状差を製造プロセスに反映する技術と言え、特許文献3はウェーハ外周形状を一次元的に表現し、その微分形状からウェーハを選別する技術であり、測定器の厳格な選定技術は未だ開発されていない。
表面が鏡面加工されたウェーハ状の複数枚の標準サンプルを準備する工程Aと、
前記ウェーハ形状測定器の測定精度を評価するための前記標準サンプルにおけるウェーハ面内の評価領域を決定する工程Bと、
前記ウェーハ形状測定器を用いて、前記複数枚の標準サンプルの各々の前記決定した評価領域に対して、前記ウェーハ形状測定器の最小グリッド単位で区分したグリッドにおける厚さを繰り返し測定する工程Cと、
前記複数枚の標準サンプルの各々において、前記繰り返し測定した厚さから、前記ウェーハ形状測定器の同一標準サンプル内の繰り返し測定精度を算出する工程Dと、
前記各々のウェーハ形状測定器の同一標準サンプル内の繰り返し測定精度同士を比較して、前記ウェーハ形状測定器の良否を評価する工程Eと、
を含むことを特徴とするウェーハ形状測定器の評価方法を提供する。
各グリッドにおいて、前記繰り返し測定した厚さから平均値を算出して「平均厚さ」を得るステップと、
前記繰り返し測定した厚さにおいて、(「各測定回の測定値」-「平均厚さ」)の値である「差分厚さ」を算出するステップと、
該「差分厚さ」を、前記評価領域における全てのグリッドの「差分厚さ」の平均値が0になるように、補正して規格化して「差分厚さ(規格化)」を算出するステップと、
前記評価領域における各グリッドの「差分厚さ(規格化)」の二乗平均平方根(RMS)または標準偏差を算出して前記同一標準サンプル内の繰り返し測定精度とするステップ、
を含むことができる。
異なるウェーハ形状測定器ごとに算出した前記ウェーハ形状測定器の同一標準サンプル内の繰り返し測定精度を、測定器間で比較することによって行うことができる。
前記工程Eにおいて、前記標準サンプルの外周領域を所定の中心角ごとに分割し、該分割した領域同士間の前記ウェーハ形状測定器の同一標準サンプル内の繰り返し測定精度を比較することができる。
そこで本発明者が鋭意研究を行ったところ、表面が鏡面加工されたウェーハ状の複数枚の標準サンプルを準備する工程Aと、測定器の測定精度の評価のための標準サンプルにおけるウェーハ面内の評価領域を決定する工程Bと、測定器を用いて、複数枚の標準サンプルの各々の評価領域に対して、測定器の最小グリッド単位で区分したグリッドにおける厚さを繰り返し測定する工程Cと、複数枚の標準サンプルの各々において、繰り返し測定した厚さから、測定器の同一標準サンプル内の繰り返し測定精度を算出する工程Dと、各々の同一標準サンプル内の繰り返し測定精度同士を比較して、測定器の良否を評価する工程Eと、を含むウェーハ形状測定器の評価方法であれば、分解能が高く、より高精度な測定値再現性の評価が可能であり、十分正確に測定器の良否を評価できることを見出した。さらには、測定値再現性について、その測定器特有の機械的な問題や各種ウェーハに対する相性などの詳細な評価も可能であり、優れた測定器の選定に役立てることができることも見出し、本発明を完成させた。
図1に本発明のウェーハ形状測定器の評価方法の工程の一例を示す。
(工程A:標準サンプル準備工程)
まず、複数枚の標準サンプル(以下、サンプルウェーハ、または、単にウェーハとも言う)を準備する。これはウェーハ状のものであり、表面が鏡面加工されたものであれば良い。
例としては、PW(ポリシュドウェーハ)、EPW(エピタキシャルウェーハ)、SOIウェーハなどが挙げられるが、これらに限定されない。1種類だけでなく、これらの各種ウェーハを混ぜて準備しても構わない。特に中心や周辺の厚さが異なるウェーハを標準サンプルとして使用すれば、特定のウェーハ形状の測定精度が劣るウェーハ形状測定器(フラットネス測定器)を検出しやすくなるので、標準サンプルとして厚さ形状の異なるウェーハを準備するのが好ましい。また加工条件が同一であっても良いし、異なっていても良い。
ここでは例としてFOUPに保管された同一加工条件のサンプル(直径300mm、EPW)を25枚準備する。
次に、測定器の測定精度を評価するための標準サンプルにおけるウェーハ面内の評価領域を決定する。
例えば、ウェーハ状の標準サンプル全領域、または、ESFQRを測定する領域に相当する領域とすることができる。後者の場合、標準サンプルの外周領域を所定の中心角ごとに分割した領域とすることができる。例えば5°間隔で72個に分割した領域(セクター)とすることができる。ただし、この評価領域はその範囲や分割数は限定されず、その都度任意に選択することができる。
複数枚の標準サンプルウェーハを同一の評価したい測定器で繰り返し測定する。すなわち、複数回(2回以上)測定する。
測定は、前述したように決定した評価領域を、測定器の最小グリッド単位(x-yまたはr-θ単位)で区分したグリッドにおける厚さを測定する。
測定するグリッドサイズとしては、上記のように測定器の最小単位であり、例えば0.2mm程度以下とすることができる。
測定器の本質的な厚み測定再現性を評価することが目的であるため、最小単位のステップでデータを採取する。
通常、10数mmから数十mmの幅でフラットネスパラメーターを算出する領域の設定が行われることが多くみられるが、ウェーハ最外周領域におけるウェーハ厚さの変化は大きい。本発明では最小グリッド単位、例えば0.5mmよりも小さなグリッドサイズ、さらには上記のように0.2mm以下のグリッドサイズで測定して評価する。
標準サンプルは測定後FOUPに保管して再利用することができる。そして、同様の測定を異なる標準サンプルに対しても行う。
まず、この工程Dの全体の流れについて説明し、その後、例を挙げてより具体的に説明する。
ステップ1として、各標準サンプルの各グリッドにおいて繰り返し測定した厚さから平均値を算出し、「平均厚さ」を得る。図2は、各標準サンプル(例えば25枚:Sample Slot-01~25)の測定から、各グリッドの平均厚さを算出する様子を示す説明図である。
各グリッドの平均厚さは標準サンプル別に求める。平均厚さは、最小単位のグリッド毎に繰り返し測定した測定結果を平均化することによって得る。
まず、工程Cで説明したように、標準サンプルの厚さを測定器の最小の測定サイズで評価領域(例えばウェーハ全面)全体にわたって繰り返し測定する。このとき、例えば10回繰り返し測定した場合、1枚の標準サンプルに対して、各グリッドの厚さの実測値は測定1~測定10(A-1~A-10)の10個の厚さデータが存在する。
(A-1~A-10)-B=(C-1~C-10)(ここでは、算出した値は、正の値と負の値が存在する)
これは、ばらつきの評価には厚さの絶対値は無関係であるので、各測定回の平均の厚さを同じにするもので、測定1~測定10の各グリッドの「差分厚さ」C-1~C-10は「差分厚さ(規格化)」D-1~D-10に規格化される。
理想的な測定器が存在すれば差分厚さ(規格化)は、前述した通り0の面となるが、実際は厚みムラが存在するため、差分厚さ(規格化)は微小な高低差を持った面となる。そこで、評価領域内(ウェーハの面全体或いは、SFQRやESFQRで規定された領域内)で高低差のバラツキを算出する。バラツキは上記の標準偏差、二乗平均平方根等様々な統計値を用いてよい。
上記のようにして求めた各々標準サンプルでの同一標準サンプル内の繰り返し測定精度同士を比較して、ウェーハ形状測定器の良否を評価する。
測定値再現性(繰り返し測定精度)が良好な測定器はRMSの値が0に近づき、繰り返し測定精度が不良な測定器はRMSの値が増大する。RMS値あるいは標準偏差といったバラツキを表現する統計値が小さい測定器を再現性(精度)が高い測定器と位置づけることができるが、定量的にRMSが幾らなら、どのようなRMSパターンなら測定器として合格なのか現段階で示すことができるわけではない。しかし、ウェーハごとのRMS同士を比較することで、例えば、測定器の測定値再現性について機械的な問題があるのか、ウェーハに対する相性が存在するのか、などの手掛かりとなる情報を得ることができ、測定器の良否の評価に結び付けることができる。これらは従来の評価方法では得られない、より詳細な情報である。
(実施例)
ウェーハ形状測定器として異なる5台のKLA社製WaferSight2+を使用し、直径300mmのエピタキシャルウェーハ25枚を各測定器で10回繰り返し測定を行った。ここで得られる厚みデータはr(半径)方向0.2mmピッチ、θ(角度)方向1°ピッチのr-θ座標系のグリッドデータとなっており、データ点数はウェーハ一枚当たり約270000点となる。各ウェーハの10回分の測定グリッドデータからグリッド単位で平均厚さを算出し、平均厚さプロファイルを得て、これを基に各測定回で得られる厚さプロファイルからの差分厚さ、さらには差分厚さ(規格化)を求め、差分厚さ(規格化)のバラツキより装置の厚み測定再現性を評価した。
後述するように評価領域としてGBIR相当、およびESFQR相当の両方に対して領域設定を行なった。GBIR相当領域とは、300mmウェーハのエッヂから1mmの領域を除外した半径149mm内の領域に相当し、WaferSight2+のr-θ座標系におけるデータ点数は約270000点となる。また、ESFQR相当領域とは、約270000点のデータのうち、半径119.2mmから149mm内のデータを使用し、これらを72セクターで分割した750点のデータを1セクター当たりのデータとして用いた。
ウェーハ全体、或いは、フラットネス評価に供されるサイト、セクターに準じた領域ごとに、各ウェーハの二乗平均平方根(RMS)や標準偏差(Stdev)等、差分厚さ(規格化)のバラツキを定量的に算出し、測定器の測定値再現性(繰り返し測定精度)を評価し、測定器の良否を評価する。
従来法と同様にして、GBIR、ESFQR(72sectors,30mmLength)の測定値再現性により、測定器の評価を行った。GBIRとESFQRの測定条件は、それぞれ以下の通りである。
エッヂエクスクルージョンを1mmとして半径149mm内の最高点と最低点の厚さの差をGBIRとした。実施例で用いたエピタキシャルウェーハ25枚を実施例で用いた測定器で各々10回繰り返し測定を行い、GBIRの繰り返し再現性を標準偏差で表現した。
ESFQRはウェーハを5°ピッチで72個のセクターに円周方向に分割し、各セクターの半径119.2mmから149mm内の厚みプロファイルに対して最小二乗面を形成し、各セクターの厚みプロファイルから最小二乗面を差引く。最小二乗面によって規格化された厚みプロファイルの最も高い点と低い点との差をESFQRとし、各ウェーハの各セクターのESFQRの10回繰り返し再現性を標準偏差で表現した。
比較例のESFQRの再現性(10回測定の標準偏差)は測定器やウェーハによって特段個性を持つわけでは無く、ランダムな値を示している。一方、実施例のRMSは測定器毎に個性を持ったプロファイルを示し、ウェーハの違いや、ウェーハの特定領域において厚さ測定値の再現性に善し悪しが有ることを示している。
これらの図において、測定器#03はウェーハによらず、概ね一定のRMS値を示し、比較した5台の装置の中で最も小さいことから測定器#03はESFQR測定に最も適していることを示唆している。実際にRMS値の平均値を比較すると(表1参照)、測定器#03は最も小さいRMS値を示している。
上記の5つの図は測定器毎に25枚中の5枚のウェーハのセクター(1枚あたり72セクター)のRMSをプロットしているが、異なる形状のウェーハを測定しているにもかかわらず、セクターに対するRMSの変動パターンは、測定器毎にほぼ相似している。分かりやすいのは測定器#02、#04、#05である。
特に測定器#02と#05は、どのウェーハを測定してもウェーハの特定部位に対して厚みの再現性(RMS)が高かったり低かったりしている。このことから測定器#02と#05は他の測定器より、ウェーハの部位によって厚みを再現性良く測定出来たりできなかったりする、つまり、機械的に何らかの不具合があり、どのウェーハを測定しても決まった位置の厚み再現性に規則的な違いがあることを示している。
その結果を図11に示す。各測定器(#01-#05)における25枚の算出結果を各々横並びに表示している。また、各測定器でのRMS値の平均値を表2に示す。
しかしながら、実施例のグリッド単位のRMS値で比較すると、測定器#03はウェーハ同士の間でいずれも0に近い値となっており、どのウェーハに対しても測定値再現性が良い。
さらに、他の測定器の#01、#02、#04、#05についても見ると、各ウェーハのRMS値同士にばらつきが見られる。これらの測定器間での比較をすると、その差は歴然としており、測定器#03が最もグリッド単位でも良好な精度(RMS値)を示していることが分かる。これは、前述したESFQR相当領域における結果と一致している。
Claims (6)
- ウェーハ形状測定器の評価方法であって、
表面が鏡面加工されたウェーハ状の複数枚の標準サンプルを準備する工程Aと、
前記ウェーハ形状測定器の測定精度を評価するための前記標準サンプルにおけるウェーハ面内の評価領域を決定する工程Bと、
前記ウェーハ形状測定器を用いて、前記複数枚の標準サンプルの各々の前記決定した評価領域に対して、前記ウェーハ形状測定器の最小グリッド単位で区分したグリッドにおける厚さを繰り返し測定する工程Cと、
前記複数枚の標準サンプルの各々において、前記繰り返し測定した厚さから、前記ウェーハ形状測定器の同一標準サンプル内の繰り返し測定精度を算出する工程Dと、
前記各々のウェーハ形状測定器の同一標準サンプル内の繰り返し測定精度同士を比較して、前記ウェーハ形状測定器の良否を評価する工程Eと、
を含むことを特徴とするウェーハ形状測定器の評価方法。 - 前記工程Dは、
各グリッドにおいて、前記繰り返し測定した厚さから平均値を算出して「平均厚さ」を得るステップと、
前記繰り返し測定した厚さにおいて、(「各測定回の測定値」-「平均厚さ」)の値である「差分厚さ」を算出するステップと、
該「差分厚さ」を、前記評価領域における全てのグリッドの「差分厚さ」の平均値が0になるように、補正して規格化して「差分厚さ(規格化)」を算出するステップと、
前記評価領域における各グリッドの「差分厚さ(規格化)」の二乗平均平方根(RMS)または標準偏差を算出して前記同一標準サンプル内の繰り返し測定精度とするステップ、
を含むことを特徴とする請求項1に記載のウェーハ形状測定器の評価方法。 - 前記工程Eを、
異なるウェーハ形状測定器ごとに算出した前記ウェーハ形状測定器の同一標準サンプル内の繰り返し測定精度を、測定器間で比較することによって行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のウェーハ形状測定器の評価方法。 - 前記評価領域を、前記ウェーハ状の標準サンプル全領域、または、ESFQRを測定する領域に相当する領域、とすることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のウェーハ形状測定器の評価方法。
- 前記評価領域を、前記ESFQRを測定する領域に相当する領域とするとき、
前記工程Eにおいて、前記標準サンプルの外周領域を所定の中心角ごとに分割し、該分割した領域同士間の前記ウェーハ形状測定器の同一標準サンプル内の繰り返し測定精度を比較することを特徴とする請求項4に記載のウェーハ形状測定器の評価方法。 - 前記標準サンプルを、ポリシュドウェーハ、エピタキシャルウェーハ、およびSOIウェーハのうちのいずれかとすることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のウェーハ形状測定器の評価方法。
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