JP7478793B2 - 相互作用する反応物のクーロン障壁の低減 - Google Patents

相互作用する反応物のクーロン障壁の低減 Download PDF

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Description

(関連出願の相互参照)
本願は、2017年5月9日に提出された米国仮出願番号62/503680の利益を主張する。本願は、2017年5月8日に提出された発明の名称がREACTOR USING ELECTRICAL AND MAGNETIC FIELDS(電場及び磁場を用いた原子炉)である米国特許出願番号15/589902の部分継続出願でもあり、番号15/589902の米国特許出願は、2014年6月27日に提出された発明の名称がMETHODS、DEVICES AND SYSTEMS FOR FUSION REACTIONS(融合反応用の方法、デバイス及びシステム)である米国特許出願番号14/318246の部分継続出願であり、この番号14/318246の米国特許出願は、以下の利益を主張する。(i)2013年6月27日に提出された米国仮出願番号61/840428、(ii)2014年1月8日に提出された米国仮出願番号61/925114、(iii)2014年1月8日に提出された米国仮出願番号61/925131、(iv)2014年1月8日に提出された米国仮出願番号61/925122、(v)2014年1月8日に提出された米国仮出願番号61/925148、(vi)2014年1月8日に提出された米国仮出願番号61/925142、(vii)2013年7月1日に提出された米国仮出願番号61/841834、(viii)2013年7月4日に提出された米国仮出願番号61/843015。米国特許出願番号14/318246は、2014年3月11日に提出された米国特許出願番号14/205339(今、2016年1月26日に授権された米国特許第9245654号)の部分継続出願でもあり、この番号14/205339の米国特許出願は、2013年3月11日に提出された米国仮出願番号61/776592の利益を主張し、また、2017年5月8日に提出された発明の名称がREACTOR USING ELECTRICAL AND MAGNETIC FIELDS(電場及び磁場を用いた原子炉)である米国特許出願番号15/589902の部分継続出願、2017年5月8日に提出された発明の名称がREACTOR USING ELECTRICAL AND MAGNETIC FIELDS(電場及び磁場を用いた原子炉)である米国特許出願番号15/589913の部分継続出願、2017年5月8日に提出された発明の名称がREACTOR USING ELECTRICAL AND MAGNETIC FIELDS(電場及び磁場を用いた原子炉)である米国特許出願番号15/589886の部分継続出願、及び2017年5月8日に提出された発明の名称がREACTOR USING AZIMUTHALLY VARYING ELECTRICAL FIELDS(方位角可変電場を用いた原子炉)である米国特許出願番号15/589905の部分継続出願であり、これら優先権出願のそれぞれの全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれている。
本開示は、核間反応及びこれら核間反応を発生させて維持するための原子炉に関する。
20世紀50年代以来、科技界では、制御可能で経済的に実施可能な融合を実現するために努力している。さまざまな原因のため、融合は、吸引力があるエネルギーであるが、数十億ドル及び数十年の研究をした結果、持続可能な融合をクリーンエネルギーとして用いるアイデアのほとんどが実現されなかった。従来、経済性、安全性、信頼性及び環境保全性に優れている融合反応維持方法は解決しにくい課題である。この課題が極めて困難であることが証明されている。本分野では、通常、融合が発電用として実用されるまでには25-50年間の研究が必要であると考えられ、「いつも言われている冗談のように、融合は、永遠に将来のエネルギーである」(「Next ITERation」、2011年9月3日、The Economist)。
従来、大規模融合についての研究は、主に融合点火用の条件を作成する2種の方法である慣性閉じ込め融合(ICF)と磁気閉じ込め融合に注目されている。ICFは、約針先のサイズほどの小ペレット形態の融合反応物(たとえば、重水素とトリチウムの混合物)を圧縮して加熱することで融合反応を発生させようとする。レーザ光、電子又はイオンの高エネルギービームを燃料ターゲットに送り、ターゲット燃料の加熱された外層を爆発させ、衝突波を発生させ、この衝突波は、燃料ペレットを介して内へ伝播して、融合反応物を圧縮して加熱し、それにより、融合反応を発生させる。
本出願を提出するときに、最も成功したICFプログラムは、National Ignition Facility(国立点火施設、NIF)であり、約35億ドルの費用で2009年に完成される。燃料ペレットに使用されるものよりも多くのエネルギーを放出させることにより、NIFは、マイルストーンに達するが、2015年までに、NIF実験は、点火に必要なエネルギーの約1/3しか実現できなかった。持続可能な反応については、報道された最長ICF融合反応時間は150ピコ秒のオーダーであった。ICFの努力により点火条件を達成させたとしても、実施可能なエネルギーにするには多くの支障がある。たとえば、燃料ターゲット及び駆動ビームを干渉せずに反応室から熱量を取り除く解決手段が必要であり、且つ融合プラントの短寿命を緩和させる解決手段が必要であり、それは、融合反応物の放射性副生物である重水素及びトリチウムが反応して中性子を発生させるためである。
別の主な研究方向である磁気閉じ込め融合は、磁場を用いてプラズマ形態の核熱融合燃料を閉じ込むことにより融合を誘導しようとする。このような方法は、イオンの近距離接触時間を延ばしてこれらの融合可能性を向上させる。磁気融合装置は、向心力とバランスを取るとき、粒子をプラズマ内で円形又は螺旋形の経路で移動させるように、荷電粒子に磁力を印加する。磁気閉じ込めは、熱プラズマが原子炉壁に接触することを防止する。磁気閉じ込めでは、融合は完全にプラズマ内で行われる。
磁気閉じ込めについての多くの研究は、トカマク(Tokamak)デザインに基づくものであり、熱プラズマがトロイダル磁場に閉じ込まれる。ニュージャージー州プリンストンのトカマク融合試験原子炉(TFTR)は、世界で始めて50/50重水素/トリチウムからなるプラズマを用いて広範の科学実験を行う磁融合装置である。1980年に建設されたTFTRが融合エネルギーを実現できることが期待されたが、結局、この目標を遂げられず、1997年に停止した。今まで、いずれのトカマクでも、最長プラズマ持続時間は、フランスのTore Supra tokamakが保有する6分30秒である。現在、磁気閉じ込め融合は、2013年に建設されたトカマク原子炉である国際熱核融合実験炉(ITER)に取り込んでいる。2015年6月までに、建設コストが140億ドルを超え、設備の建築期間が2019年までであると予測され、2027年から完全な重水素-トリチウム試験が開始されます。現在から推定すると、このプロジェクトのコストが500億ドルを超え、コストがさらに高まる可能性がある。最近、上院歳出予算委員会のエネルギーおよび水開発小委員会は、米国がITERプロジェクトから撤退するという意見を発表した。市場の現実及び融合発電用のトカマクデザイン固有の制限により、多くのアナリストは、ITERなどの融合原子炉が商業的に実行可能になることを疑っている。
メリーランド大学のメリーランド遠心実験(MCX)で磁気閉じ込めの代替形式が研究されている。遠心閉じ込めと速度せん断安定化の概念がテストされる。この実験では、磁場の存在下で、コンデンサが円筒形カソードから水素ガスを介して周囲の真空室に放出される。直交する電場と磁場(J×Bとして表される)は、ホット電離プラズマ(>10K)に放電電極の周りを回転させる力を発生させる。プラズマ境界での温度が大幅に変化することにより、プラズマの流れに大きな影響を与える冷たい中性(neutral species)種が必ず存在する。研究は中性物の効果に焦点を当てており、融合条件に必要な「必要なプラズマ回転を妨げる」と考えられている。「中性種」又は単に「中性物」とは、中性の電荷を持つ原子又は分子であり、つまり、同じ数の電子とプロトン、原子の場合は原子番号を有する。イオン、電離された原子又は他の粒子は電荷を持っており、つまり、プロトンよりも少なくとも1つ多い電子、又は電子よりも少なくとも1つ多いプロトンを持っている。
高度に電離されたプラズマを使用しない回転プラズマ装置を融合研究に用いることが検討されてきたが、中性物は融合条件に到達するための問題として常に見られてきまた。中立抗力や不安定性などによる制限性作用のため、本分野の研究者は、「完全に不可能であるわけではないが、回転プラズマだけが自立核融合炉の実現につながる可能性は非常に低い」と考えた(レビュー論文: ROTATING PLASMAS(回転プラズマ)、Lehnart,Nuclear Fusion 11(1971))。
信頼できる従来の方法は、すべて、閉じ込めとエンジニアリングの問題に直面している。核融合炉の総エネルギーバランスQは、次のように定義される。
Q=Efusion/Ein
式中、Efusionは融合反応によって放出される総エネルギーであり、Einは反応の発生に使用されるエネルギーである。目標は、利用可能なエネルギー源の発生終了時にQが1又は「1ユニット」を超えることにある。欧州トーラス共同研究施設(JET)の役人は、Q≒0.7を達成したと主張し、米国国立点火施設は、最近、Q>1(そのレーザの顕著なエネルギー損失を無視)を達成したと主張している。Q=1の場合は、「損益分岐点(breakeven)」と呼ばれ、融合反応によって放出されるエネルギーの量がエネルギー入力の量に等しいことを示している。実際には、電気を生成するために使用される原子炉は、融合エネルギーの一部のみが有用な形に変換できるため、商業的に実行可能になるために1を大きく上回るQ値を必要とする。従来の考え方では、大量の中性物が存在しない強く電離されたプラズマのみがQ>1を達成する可能性があると考えられている。これらの条件は、核融合炉で達成できる粒子密度とエネルギー閉じ込め時間を制限する。したがって、本分野では、ローソン基準(Lawson criterion)が制御された融合反応の基準とされ、これは、すべてのエネルギー入力を考慮した場合、誰もまだ達成していないと考えられている。ローソン基準、又は実質的に同様の範例の追求のため、融合装置及びシステムは、大きく、複雑で、管理しにくく、高価で、まだ経済的に実行不可能になる。三重積として知られるローソン基準の一般的な式は、次のとおりである。
ローソン基準については、ここでは詳しく説明しないが、本質的に、該基準は、粒子密度(n)、温度(T)及び閉じ込め時間(τ)の積が、荷電融合生成物(Ech)のエネルギー、ボルツマン定数(k)、融合断面積(σ)、相対速度(υ)及び点火条件に到達するための温度に依存する数よりも大きくなければならないことを示している。重水素-トリチウム反応の場合、三重積の最小値はT=14keVで発生し、三重積の値は約3×1021keV s/mである(J. Wesson,“ Tokamaks”, Oxford Engineering Science Series No 48,(オックスフォード工学科学シリーズ第48号),Clarendon Press,Oxford,第2版,1997年)。実際には、本業界基準の範例は、重水素-トリチウム融合反応を使用して正のエネルギーバランスを達成するには、150,000,000度を超える温度が必要であることを示唆している。プロトン-ホウ素11融合の場合、ローソン基準は、必要な温度がさらに大幅に高くなければならないことを示唆している。より具体的には、nτ~1016s/cmであり、これは、重水素-トリチウム融合に必要な値よりも~100倍以上高い[George H. Miley及びS.Krupaker MuraliのよるInertial Electrostatic Confinement(IEC)Fusion: Fundamentals and Applications(慣性静電閉じ込め(IEC)融合:基礎と応用から抜粋)]。
ローソン基準の一側面は、損失されたエネルギーを置き換え、プラズマ温度を維持して、その完全又は高度に電離された状態に保つために、熱エネルギーをプラズマに継続的に追加する必要があるという前提に基づいている。特に、従来の融合システムにおける主なエネルギー損失源は、可動電子が高温プラズマ内のイオンと相互作用する際の電子制動放射とサイクロトロン運動による放射である。融合法用のローソン基準は、高度に可動性のある電子を有する高温の強電離プラズマを使用するため、電子放射損失を重要な考慮事項として作成された。
従来の考え方では、中性物の大量の存在がない高温と強電離プラズマが必要であると考えられ、反応を安価に物理的に封じ込めることは不可能であるとさらに考えられている。したがって、最も厳しく追求されてきた方法は、磁気閉じ込めシステム(たとえば、ITERトカマク)及び慣性閉じ込めシステム(たとえば、NIFレーザ)を用いたような、反応を封じ込めるための複雑で高価なスキームを対象としている。
実際には、少なくとも1つの資料には、物理構造を用いて融合反応を封じ込めることが不可能であることが認められる。「プラズマの閉じ込めを提供する最も単純で最も明白な方法は、材料壁との直接接触によるものであるが、壁によるプラズマの冷却及びほとんどの壁材料の溶けという2つの基本的な原因のため、それは不可能になる。ここで融合プラズマは10Kの温度を必要とするが、金属は一般に5000K未満の温度で融解することを思い出した」(Principles of Fusion Energy「融合エネルギーの原理」A.A.Harmsら)。非常に高い温度の必要性は、電荷した高エネルギーのイオンのみが融合でき、且つクーロン反発力が融合イベントを制限することを前提としている。本分野の現在の教示は、すべての研究とプロジェクトの大部分について、この基本的な仮定に依存している。
まれに、研究者は、融合を開始して維持するために必要なエネルギーを減らすために、クーロン障壁又は反発力(相互作用する正の原子核を反発する)を減らす方法を検討した。そのような方法は、上記の方法で実行不可能であるとして大部分が無視されてきた。
1950年代、Luis Alvarezは、カリフォルニア大学バークレー校の水素気泡チャンバを使用してミューオン触媒融合の概念を研究した。Alvarezの研究(「Catalysis of Nuclear Reactions by μ Mesons(ミューオンによる核反応の触媒)」Physical Review.105,Alvarez,L.W.ら(1957))は、核融合が核熱融合に必要な温度よりもかなり低い温度で起こることを示した。理論的には、室温以下でも融合が起こりうることが提案された。このプロセスでは、負に荷電したミューオンが水素分子内の電子の1つを置き換える。ミューオンの質量は電子よりも207倍大きいため、水素原子核は通常の分子の場合よりも約207倍引き寄せられる。原子核が近くにある場合、室温で大量の融合イベントが発生できるほど、核融合の確率は大幅に増える。
ミューオン触媒融合はいくつかの注目を集めたが、ミューオン触媒融合を作る努力はまだ成功していない。多数のミューオンを発生させる現在の技術は、触媒核融合反応によって生成されるエネルギーを超えるほどの大量のエネルギーを必要とするため、損益分岐点又はQ>1に対して支障となる。さらに、各ミューオンは、重陽子(重水素原子の原子核)とトリトン(トリチウム原子の原子核)の核融合によって生成されたα粒子に約1%の確率で「粘着」され、それにより「粘着された」ミューオンは触媒サイクルから除去される。これは、各ミューオンは、せいぜい数百の重水素-トリチウム核融合反応のみを触媒できることを意味する。したがって、これら2つの要因(ミューオンは高価すぎて製造されにくいこと、後でα粒子に付着しやすいこと)により、ミューオン触媒融合は実験室の好奇心に留まる。有用なミューオン触媒融合を発生させるには、原子炉は、より安価で効率的なミューオン源及び/又は各ミューオンがより多くの融合反応を触媒できる方法が必要である。これまでのところ、発見されたものは、理論化されたものもない。
1989年3月、Martin FleischmannとStanley Ponsは、現在「常温融合」と呼ばれている方法によってクーロン障壁を低減させる方法を発見したことを報告した文章をJournal of Electroanalytical Chemistry(電気分析化学雑誌)に提出した。FleischmannとPonsは、パラジウム電極の表面での重水の電気分解に係る小型卓上実験で発生する核反応副生物と大量の熱量を観察している。常温融合の説明の1つは、水素とその同位体が、特定の固体(パラジウムなど)に高密度で吸収される可能性があると考えていることである。水素の吸収により高い分圧が発生し、水素同位体の平均分離が低下するため、ポテンシャル障壁が低下する。もう1つの説明は、パラジウム格子内の正の水素原子核の電子スクリーニングで障壁を下げるのに十分であることである。
Fleischmann-Ponsの発見は、最初に大きな注目を集めたが、科学界で受け取られることは非常に重要であり、ジョージア工科大学のグループが中性子検出器の問題をすぐに発見し、テキサスA&M大学が温度計の配線不良を発見した。これらの実験的ミス及び多くの有名な研究所によるFleischmann-Ponsの実験を再現する失敗した試みのため、科学界では、大部分が肯定的な実験結果は「融合」に起因するものではないという結論が得られた。米国エネルギー省(DOE)は、常温融合の理論と研究を調べる特別なパネルを組織した。最初に、1989年11月に、そして再び2004年に、米国エネルギー省は、これまでの結果は「常温融合」に起因する現象から有効なエネルギー源が生じるという説得力のある証拠を提示しなかったという結論を出した。
クーロン障壁を低減させる別の試みは、固体マトリックスに電子スクリーニングを採用することである。電子スクリーニングは、最初に恒星のプラズマで観察されており、スクリーニング係数が数パーセントしか変化しない場合、融合率を5桁変化させることが決定された(Wilets,L.ら,「Effect of screening on thermonuclear fusion in stellar and laboratory plasmas(恒星および実験室プラズマにおける核熱融合に対するスクリーニングの影響)」The Astrophysical Journal 530.1(2000):504.)。Wiletsによれば、「プラズマにおける核熱融合の速度は障壁の浸透によって支配される。障壁自体は、核融合のクーロン反発によって支配される。障壁ポテンシャルがGamow式の指数に現れるため、結果はプラズマ内の電子と陽イオンによるスクリーニングの影響に非常に敏感である。スクリーニングは障壁を下げるため、融合率を高め、核電荷が大きければ大きいほど、スクリーニングは重要になる。」
この電子スクリーニング効果を利用して点火条件を作成しようとする一例が、Robert Indechによる米国特許公開番号US2005/0129160A1に提示されている。この出願では、Indechは、印加された電位により電子がコーン構造の上部に集中するとき、微視的なコーン構造の先端近くに位置する2つの重陽子間の正荷電反発力の電子シールドについて説明する。開示されているように、これらのコーンは、3cmx3cmの寸法の表面上に配列されている。
Indechらは、核融合炉のクーロン障壁を下げるための潜在的な電子スクリーニングを実現しているが、どんな努力が成功したかは疑わしい。せいぜいこれらの努力は、持続的かつ制御された融合反応ではなく、点火のための方法を提案しているようである。ICF、磁気閉じ込め融合、及びクーロン障壁を低減するさまざまな方法の努力にもかかわらず、現在、商業的に実現可能な核融合炉設計は存在しない。
本開示は、原子炉の設計及び運転のさまざまな側面に関する。特に、電子スクリーニングを使用して2つの核の融合に対するクーロン障壁を低減する原子炉の設計及び運転に関する。融合反応を促進する電子リッチ領域で電子スクリーニングが提供される。
本開示の一態様は、原子炉に関するものであって、(a)荷電粒子及び中性物が内部で回転可能な閉じ込め領域を少なくとも部分的に囲む閉じ込め壁と、(b)閉じ込め領域に隣接又は近接する複数の電極と、(c)複数の電極の少なくとも2つの間に電位を印加するように構成される電圧及び/又は電流源を含み、印加された電位が閉じ込め領域において電場を発生させ、前記電場が単独に又は磁場と組み合わせて荷電粒子及び中性物の閉じ込め領域での回転運動を誘導及び/又は維持する制御システムと、(d)閉じ込め領域の内部に又は閉じ込め領域に隣接して配置された反応物であり、運転中に、中性物と反応物の繰り返した衝突により反応物との相互作用を発生させ、前記相互作用がエネルギーを放出するとともに生成物を発生させ、前記生成物の核質量が中性核及び反応物の核のうちのいずれの核質量とも異なる要素を特徴とする。運転中に、反応物に近接する閉じ込め領域は、正荷電粒子よりも前記電子リッチ領域における電子の量が少なくとも約10/cm大きい電子リッチ領域を含む。
特定の実施形態では、電極は、閉じ込め領域の周囲に方位角的に分布しており、且つ、制御システムは、複数の電極に時変電圧を印加することにより、荷電粒子及び中性物の閉じ込め領域での回転運動を誘導するように構成される。特定の実施形態では、原子炉は、閉じ込め領域内の電場と印加される磁場との間の相互作用により閉じ込め領域内にける荷電粒子及び中性物の回転運動を誘導するように構成される。
原子炉の運転中、電子リッチ領域は、以下の特徴のうちの1つ又は複数を有し得る。(i)電場強度は、少なくとも約10V/mである。(ii)電子の平均温度は、約10,000K~50,000Kである。(iii)電子密度は、約1010cm-3~約1023cm-3である。(iv)電子と陽イオンの比率は、約10:1~10:1である。(v)中性物の平均エネルギーは、約0.1eV~2eVである。(vi)中性物の濃度は、少なくとも約1016/cm(いくつかの場合には、約1016/cm~約1018/cmの間)である。及び/又は(vii)閉じ込め領域へ約50nm~約50μmの距離まで広がっている。
いくつかの実施形態では、原子炉は、運転中、閉じ込め領域において電子を発生させるように、閉じ込め領域の内部に又は閉じ込め領域に隣接して配置された電子エミッタを備える。電子エミッタは、閉じ込め壁に取り付けられ又は嵌め込まれてもよい。いくつかの場合には、1つ又は複数の絶縁層が閉じ込め壁とエミッタを分離して、断熱及び/又は電気絶縁を提供することがある。これらの層は、たとえば、ジルコニア、アルミナ、窒化亜鉛、及びマグネシアから製造されてもよい。いくつかの場合には、電子エミッタは、電子の発生を増加させるために、閉じ込め領域の内部まで突出している先の尖った幾何学的形状を持っている。
いくつかの場合には、原子炉は、電子エミッタに熱的に連通するフィラメントを備えてもよく、制御システムは、フィラメントを流れる電流を印加することでエミッタを加熱するように構成されてもよい。原子炉は、電子エミッタの温度を監視するように構成される温度センサを備えてもよく、制御システムは、監視された温度に基づいてフィラメントへの電流を調整するように構成されてもよい。
いくつかの実施形態では、原子炉は、レーザを備え、前記レーザは、閉じ込め領域を通って電子エミッタ上又は閉じ込め壁上に到着する光ビームを放出して、光ビームと電子エミッタ又は閉じ込め壁との間の相互作用により電子が閉じ込め領域の内部に放出されることを引き起こすように構成される。原子炉は、電子エミッタの温度を監視するための温度センサを備えてもよく、制御システムは、監視された温度に基づいてレーザ放出を制御するように構成されてもよい。
いくつかの実施形態では、電子エミッタは、原子炉の運転中、閉じ込め領域に出入りするように構成される。制御システムは、電子エミッタの位置を移動することで、たとえば、電子エミッタの温度(たとえば、温度センサを使用して測定される)及び電子の発生を制御するように構成されてもよい。
電子エミッタは、ホウ素又はホウ素含有材料を含んでもよい。いくつかの場合には、反応物は、ホウ素-11を含む。いくつかの場合には、生成物の核質量は、中性物及び反応物の核のいずれか一方の核質量より大きい。相互作用は、融合反応である場合があり、いくつかの場合には、無中性子融合反応(aneutronic fusion reaction)である。いくつかの場合には、中性物は、中性水素、重水素及び/又はトリチウムを含む。
特定の実施形態では、原子炉は、荷電反応生成物の熱エネルギー、運動エネルギー及び/又は原子炉からの機械エネルギーを抽出して、前記熱エネルギー、運動エネルギー及び/又は機械エネルギーを電気エネルギー及び/又は機械エネルギーに変換して、原子炉の外部で仕事をする。
本開示の別の態様は、原子炉の運転方法に関し、原子炉における複数の電極のうちの少なくとも2つの間に電位を印加するステップを含み、、(a)閉じ込め領域を少なくとも部分的に囲む閉じ込め壁と、(b)閉じ込め領域に隣接又は近接する複数の電極と、(c)複数の電極の少なくとも2つの間に電位を印加するように構成される電圧及び/又は電流源を含み、印加される電位が閉じ込め領域において電場を発生させる制御システムと、(d)閉じ込め領域の内部に又は閉じ込め領域に隣接して配置された反応物と、を特徴とする。閉じ込め領域における電場は、単独に又は磁場と組み合わせて作用し、荷電粒子及び中性物の閉じ込め領域での回転運動を誘導及び/又は維持する。加えて、反応物に近接する閉じ込め領域は、正荷電粒子よりも前記電子リッチ領域の電子の量が少なくとも約10/cmより大きい電子リッチ領域を含む。さらに、中性物(neutrals)と反応物との間の繰り返した衝突により反応物との相互作用を発生させ、前記相互作用がエネルギーを放出するとともに生成物を発生させ、前記生成物の核質量が中性物及び反応物の核のうちのいずれの核質量とも異なる。
特定の実施形態では、複数の電極は、閉じ込め領域の周囲に方位角的に分布しており、且つ、制御システムは、複数の電極に時変電圧を印加することにより、荷電粒子及び中性物の閉じ込め領域での回転運動を誘導するように構成される。特定の実施形態では、閉じ込め領域における電場は、荷電粒子及び中性物の閉じ込め領域での回転運動を誘導及び/又は維持するように、磁場と組み合わせて作用する。
複数の電極間に電位を印加する場合、電子リッチ領域は、以下の特徴のうちの1つ又は複数を有し得る。(i)電場強度は、少なくとも約10V/mである。(ii)平均温度は、約10,000K~50,000Kである。(iii)電子密度は、約1010cm-3~約1023cm-3である。(iv)電子と陽イオンの比率は、約10:1~10:1である。(v)中性物の平均エネルギーは、約0.1eV~2eVである。(vi)中性物の濃度は、少なくとも約1016/cm(いくつかの場合には、約1016/cm~約1018/cmである)である。及び/又は(vii)閉じ込め領域へ約50nm~約50μmの距離まで広がっている。
原子炉は、運転中、閉じ込め領域において電子を発生させるように、閉じ込め領域の内部に又は閉じ込め領域に隣接して配置された電子エミッタを備えてもよい。この方法は、いくつかの場合には、閉じ込め領域における電子の発生を制御するステップを含んでもよい。
たとえば、いくつかの場合には、電流を電子エミッタに熱的に連通するフィラメントに印加することにより、閉じ込め領域における電子の発生が制御される。いくつかの場合には、電子エミッタを閉じ込め領域に出し入れさせることにより、閉じ込め領域における電子の発生が制御される。いくつかの場合には、電子エミッタ又は閉じ込め壁に対するレーザからの発光を制御することにより、閉じ込め領域における電子の発生が制御される。
いくつかの場合には、生成物の核質量は、中性物及び反応物の核のうちのいずれの核質量よりも大きい。相互作用は、融合反応である場合があり、たとえば、無中性子融合反応である。特定の実施形態では、融合反応は、毎秒1立方センチメートルあたり1017~約1022の融合反応の速度で電子リッチ領域に発生する。特定の実施形態では、中性物は、水素、重水素、及び/又はトリチウムを含む。
特定の実施形態では、この方法は荷電反応生成物の熱エネルギー、運動エネルギー及び/又は原子炉からの機械エネルギーを電気エネルギー及び/又は機械エネルギーに変換して、原子炉の外部で仕事をするステップをさらに含む。
本開示のこれら及び他の特徴は、関連する図面を参照してより詳細に説明される。
第1の実施形態の原子炉のいくつかの図を示す。 第1の実施形態の原子炉のいくつかの図を示す。 第1の実施形態の原子炉のいくつかの図を示す。
閉じ込め壁の内部で回転する荷電粒子及び中性粒子の運動を模式的に示す。 閉じ込め壁の内部で回転する荷電粒子及び中性粒子の運動を模式的に示す。
閉じ込め壁との中性物及び荷電粒子の相互作用を模式的に示す。 閉じ込め壁との中性物及び荷電粒子の相互作用を模式的に示す。 閉じ込め壁との中性物及び荷電粒子の相互作用を模式的に示す。 閉じ込め壁との中性物及び荷電粒子の相互作用を模式的に示す。
無中性子プロトン-ホウ素-11融合反応の各段階を示す。 無中性子プロトン-ホウ素-11融合反応の各段階を示す。 無中性子プロトン-ホウ素-11融合反応の各段階を示す。 無中性子プロトン-ホウ素-11融合反応の各段階を示す。 無中性子プロトン-ホウ素-11融合反応の各段階を示す。
逆電気極性原子炉を示す。 逆電気極性原子炉を示す。 逆電気極性原子炉を示す。 逆電気極性原子炉を示す。
ハイブリッド原子炉を示す。 ハイブリッド原子炉を示す。 ハイブリッド原子炉を示す。 ハイブリッド原子炉を示す。 ハイブリッド原子炉を示す。 ハイブリッド原子炉を示す。
波動粒子原子炉を示す。 波動粒子原子炉を示す。
第1の実施形態の原子炉の様々な電極構成を示す。 第1の実施形態の原子炉の様々な電極構成を示す。
第1の実施形態の原子炉の様々な断面を示す。 第1の実施形態の原子炉の様々な断面を示す。 第1の実施形態の原子炉の様々な断面を示す。
軸方向磁場が超伝導磁石によって印加される第1の実施形態の原子炉を示す。 軸方向磁場が超伝導磁石によって印加される第1の実施形態の原子炉を示す。 軸方向磁場が超伝導磁石によって印加される第1の実施形態の原子炉を示す。 軸方向磁場が超伝導磁石によって印加される第1の実施形態の原子炉を示す。
第1の実施形態の原子炉において軸方向磁場を印加するように永久磁石が構成された第1の実施形態の原子炉を示す。 第1の実施形態の原子炉において軸方向磁場を印加するように永久磁石が構成された第1の実施形態の原子炉を示す。
閉じ込め領域に印加される磁場が永久磁石を使用して印加される第1の実施形態の原子炉を示す。 閉じ込め領域に印加される磁場が永久磁石を使用して印加される第1の実施形態の原子炉を示す。
第1の実施形態の原子炉の構成を示す。 第1の実施形態の原子炉の構成を示す。 第1の実施形態の原子炉の構成を示す。
第1の実施形態の原子炉の構成を示す。 第1の実施形態の原子炉の構成を示す。 第1の実施形態の原子炉の構成を示す。
共通軸線に沿って環状磁石がどのように構成され、その軸線に沿って実質的に向けられた磁場を生成するかを示す。 共通軸線に沿って環状磁石がどのように構成され、その軸線に沿って実質的に向けられた磁場を生成するかを示す。 共通軸線に沿って環状磁石がどのように構成され、その軸線に沿って実質的に向けられた磁場を生成するかを示す。
閉じ込め領域に印加された磁場が環状磁石を使用して印加される第1の実施形態の原子炉を示す。 閉じ込め領域に印加された磁場が環状磁石を使用して印加される第1の実施形態の原子炉を示す。 閉じ込め領域に印加された磁場が環状磁石を使用して印加される第1の実施形態の原子炉を示す。
閉じ込め領域に印加された磁場が径方向にオフセットされた磁石を使用して印加される第1の実施形態の原子炉を示す。 閉じ込め領域に印加された磁場が径方向にオフセットされた磁石を使用して印加される第1の実施形態の原子炉を示す。 閉じ込め領域に印加された磁場が径方向にオフセットされた磁石を使用して印加される第1の実施形態の原子炉を示す。
閉じ込め領域に印加された磁場が電磁石を使用して印加される第1の実施形態の原子炉を示す。 閉じ込め領域に印加された磁場が電磁石を使用して印加される第1の実施形態の原子炉を示す。 閉じ込め領域に印加された磁場が電磁石を使用して印加される第1の実施形態の原子炉を示す。 閉じ込め領域に印加された磁場が電磁石を使用して印加される第1の実施形態の原子炉を示す。
逆電気極性原子炉の様々な実施形態を示す。 逆電気極性原子炉の様々な実施形態を示す。
閉じ込め壁に配置され得る様々な電子エミッタを示す。 閉じ込め壁に配置され得る様々な電子エミッタを示す。
原子炉の閉じ込め壁に配置され得る電子放出モジュールを示す。 原子炉の閉じ込め壁に配置され得る電子放出モジュールを示す。
電子エミッタからの電子放出を増加又は制御するレーザを有する原子炉を示す。
核磁気共鳴感知を使用して原子炉内のガス反応物の組成を決定する構成を示す。 核磁気共鳴感知を使用して原子炉内のガス反応物の組成を決定する構成を示す。 核磁気共鳴感知を使用して原子炉内のガス反応物の組成を決定する構成を示す。
閉ループフィードバックを使用して原子炉を運転するように制御システムをどのように構成するかを示す。
原子炉の運転に使用され得る多段プロセスフローの例を示す。
前書き
本明細書に開示される様々な実施形態は、原子炉、及び原子炉に投入されるエネルギーよりも多くのエネルギーを発生させる方法で2つ以上の原子核間の反応を誘導する条件下でそれらの原子炉を運転する方法に関する。本開示は、核融合反応又は単に融合反応のような反応を指すが、反応の各側面は、従来核融合を特徴とする反応の各側面とは定量的又は定性的に異なる場合がある。したがって、本開示の残りの部分で「融合」という用語が使用される場合、この用語は、核融合に通常含まれるすべての特徴を必ずしも有することを意味するものではない。本明細書に開示されるいくつかの実施形態では、原子炉は持続的な融合反応を発生できるため、実行可能なエネルギー源として適切である。本明細書に記載されるように、持続的な融合反応とは、原子炉が約1秒間の時間単位よりも長く連続的に運転できる融合反応を指す。
様々な実施形態では、融合反応が起こる原子炉は、融合反応に関与する1つ又は複数の原子核を含む回転種(rotating species)を拘束するか、又は閉じ込めるように設計又は構成される。回転種を閉じ込めるためにさまざまな構造が提供されてもよい。通常、必ずしもそうではないが、これらの構造は堅固な物理的筐体を定義する。本明細書の他の場所でより詳細に説明するように、前記密閉構造は、略円筒形など、多くの形状を有してもよい。物理的な筐体に使用できる適切な構造の例は、図1、7、及び6に説明される。
他の機能に係らず、原子炉の壁は、通常、壁に隣接した内部の領域で回転する種(species)を閉じ込める作用を果たす。壁は、回転種を閉じ込めて原子炉内にとどめるという意味で閉じ込められている。本明細書に記載されるように、原子炉のこの壁は、壁、閉じ込め壁又はシュラウドと呼ばれる。様々な実施形態では、壁は、特に、電極、磁石、融合反応物(たとえば、ホウ素化合物)の供給源、及び/又は電子エミッタとするなど、他の機能も果たす。壁は、磁場や圧力波(従来の融合方法に使用される)ではなく、物理的に反応種(reactants species)を拘束するため、従来の核融合炉の設計とは異なる。他の機能は、電圧差を与えるための電極、磁石、反応物材料の供給源、電子エミッタとするなど、従来の核融合炉設計とはさらなる区別を提供する。
特定の実施形態では、上記のように、原子炉は、壁、及び壁の内部にある空間(環状の形状としてもよい)を備え、前記空間には、中性物の実質的な部分又は割合を含む反応種が回転して、原子炉の壁の表面に繰り返して衝突し、時々壁に存在する種と融合する。原子炉へのエネルギー入力を考慮すると、得られた反応は、損益分岐点となり、Q>1になる。融合反応が特定のエネルギー発電用途に必要な期間にわたって持続可能であることを保証するために、エネルギー出力とエネルギー入力の比率は、1よりも大幅に大きくする必要がある。それは、融合反応により生じたエネルギーを用いて融合が起こる条件(たとえば、閉じ込め領域における特定のプラズマ密度)を維持する際の固有の非効率性を説明します。特定の実施形態では、この比率は、少なくとも約1.2であるべきである。特定の実施形態では、この比率は、少なくとも約1.5であるべきである。特定の実施形態では、この比率は、少なくとも約2であるべきである。特定の実施形態では、原子炉は、少なくとも約15分間、又は少なくとも約1時間、持続可能な条件下で連続的に運転される。一例では、水素原子は、原子炉内で回転し、原子炉壁におけるホウ素又はリチウム原子に衝突して融合する。いくつかの実施形態では、原子炉は、運転中に相互作用する原子核間のクーロン反発力を低減する強い場を生成する電子流束を生成する1つ又は複数の電子エミッタを含む。
反応物は、原子炉の閉じ込め壁の内部の空間で融合反応をサポートできる任意の種であり得る。様々な実施形態では、反応物の少なくとも1つは、原子炉の内部領域内で回転している種である。いくつかの場合には、両方の反応物がともに回転種である。いくつかの場合には、反応物の一方は回転種であり、他方は、回転種を閉じ込める原子炉壁の一部に反応物が埋め込まれている場合など、固定されている種である。いくつかの場合には、回転種間又は回転種と静止種の間で融合が起こるように、回転反応物及び静止反応物のいくつかの組み合わせがある。反応種が主に回転種である場合、原子炉の物理的構造は、融合反応をサポートするために、回転種が原子炉壁の内面に実質的に衝突する必要がないように構成され得る。いくつかの設計では、回転種は、それらが原子炉壁に実質的に衝突するを防ぐ力などの力によって拘束される。このような設計では、2つの回転種は、閉じ込め壁の内部の領域(たとえば、閉じ込め領域)又は壁の表面に沿って融合する。いくつかの設計では、回転種は、閉じ込め領域内に配置された固定種(たとえば、ターゲット材料)と融合し得る。
特定の実施形態では、反応物は、無中性子反応の種である。他の実施形態では、反応物は、中性子反応の種である。反応物の一方又は両方は、中性又は非荷電の種であってもよい。原子炉内に存在する種は「粒子」と呼ばれることがある。しかし、そのような種は、分子又は原子スケールの粒子にすぎない。
開示された小型(たとえば卓上型)の無中性子原子炉は、中性子放射からの生物学的シールドを比較的わずかしか必要としないか、まったく必要としない。本明細書に記載の原子炉での融合反応は、たとえば約1000K~3000Kの温度範囲で融合が発生する「低温融合」を特徴として呼ばれ、このため、「熱核融合炉」(たとえば、トカマク核融合炉)に比べて、より取り扱われやすい。融合は、実質的に無中性子で「温和」であるため、「低温融合」炉に関連する材料とコストは大幅に削減される可能性がある。たとえば、いくつかの場合には、プロトタイプの原子炉が50,000ドル未満で建設されている。高温プラズマ原子炉に一般的に使用される放射線シールド及び工業用グレードのハードウェアを必要としなくてもよいため、開示された小型原子炉の重量及び設置面積も小さくなる。
原子炉内の種の回転運動は、多くのメカニズムによって与えられる。1つのメカニズムは、相互作用する電場と磁場の適用により回転を与える。相互作用は、原子炉内の荷電粒子に作用するローレンツ力として現れる。荷電粒子に作用するローレンツ力を生成し得る原子炉設計の例は、図1a~c及び図6に示されている。図1a~cは、原子炉が内側電極120を有し、シュラウド(閉じ込め壁)が外側電極110であるローレンツ駆動型原子炉を示す。垂直成分を有する印加磁場146が存在する場合、電極間の電場144は、電極間を移動する荷電粒子又は荷電種にローレンツ力を引き起こす。この力は、図1cに示されるように、それらを方位角的に回転させる。別の種類の原子炉設計では、原子炉の壁の周囲に方位角的に配置された複数の電極に電位又は電位の変化を連続的に印加することにより、荷電種に回転運動が与えられる。適切な原子炉設計の例を図7に示す。
多くの実施形態では、回転する荷電種が中性種と相互作用し、それらの中性種に角運動量を与えるように原子炉が運転し、それにより、中性種及び荷電種の原子炉内での回転運動を実現する。多くの実施形態では、回転種の大部分は中性種であり、荷電種は、プロトン(p)などのイオン化粒子である。本明細書で記載されるように、このプロセスは、イオン-中性物結合と呼ばれる場合がある。図2aは、少数の荷電粒子204が周囲の中性粒子206に運動を与えるイオン-中性物結合プロセスを模式的に示している。
様々な実施形態では、原子炉は、融合イベントが発生すると予想される原子炉の内部の局在領域で電子を放出するように設計されている。再び、図2aに示されるように、これらの電子は、閉じ込め壁210の近くに電子リッチ領域232を形成し得る。過剰な電子の存在は、クーロン障壁を低減させ、それにより、融合の可能性を高める。本明細書の他の場所で説明するように、この方式で電子を放出すると、融合の候補である2つの正荷電原子核間の固有のクーロン反発を低減する電子リッチ領域を生成できる。特定の実施形態では、原子炉内に回転種を閉じ込める壁に、又はその壁に隣接する領域に電子放出が起きる。一例では、電子放出は、原子炉の閉じ込め壁に取り付けられ又は埋め込まれたホウ素含有クーポン又はストリップなどの受動構造(passive structure)によって提供される。そのような受動構造は、原子炉の運転中に局所温度が上昇すると電子を放出する。他の実施形態では、電子放出は、原子炉の通常運転中に生じる加熱とは独立して制御される能動構造(passive structure)を使用して実施される。電子放出のための能動構造の例は、図21a及び図21bに示されており、個々の電子エミッタを加熱するための別個に制御される抵抗素子も含む。
本開示の別の態様は、原子炉内の融合反応によって生成されるエネルギーを捕捉及び変換するための構造又はシステムに関する。エネルギー捕捉システムの1つは、融合反応によって生成されたα粒子の移動によって生成される電気エネルギーを直接に捕捉する。これは、放出されたα粒子の経路に印加電場を発生させることによって行われ、この電場は、α粒子を減速させ、電場を発生させるために使用される電極に接続された回路に電流を生成する。別のエネルギー捕捉システムは、タービン、熱交換器、又は融合反応によって生じる熱エネルギーを機械エネルギーに変換するための他の従来の構造を含む熱エンジンを用いたエネルギー捕捉を提供する。これら及び他のエネルギー捕捉メカニズムについては、本開示において後述する。
中性物と壁の相互作用
原子炉の壁と相互作用する中性種は、従来の融合研究で採用されてきたものとは異なるタイプの相互作用を提供する。繰り返した相互作用は、閉じ込め壁の内壁又は内面に隣接する環状空間である比較的大きな体積に発生する。回転する中性物は、浅い角度、たとえば、視射角又は接線角(glancing or grazing angle)で壁と弾性的に相互作用することが多いため、壁を出てすぐに、入ったときに持っていたエネルギーの多くで内部空間に再び入ることができる。図2bは、閉じ込め壁210の表面に沿って移動する際に中性物206が持つことができる例示的な軌道経路を示す。回転する中性物は、壁に入る又は壁に衝突すると、通常、それと反応する又は反応しない融合対象物に遭遇することがある。反応しなかった場合、内部空間に再び入り、そこで回転運動を続ける。このような方式によれば、中性物は、壁の表面と繰り返して相互作用し、そのような弾性衝突ごとに、エネルギー損失が極めて少なく又はまったくなかった。
融合をもたらさないいくつかの粒子-壁の相互作用は、図3a~dに模式的に示されている。これらの図は、ホウ素11及び/又はチタンとの相互作用を示しているが、これらの相互作用は、閉じ込め壁で他の反応物質が使用される場合にも発生する可能性がある。図3aにおいて説明されるように、中性物-壁相互作用の僅か一部では、中性粒子は、壁の原子核(この場合は、ホウ素11の原子)と弾性的に衝突し、リバウンドされた中性物は、相互作用に入るときのエネルギーの大部分を保持する。すべての中性物ー壁相互作用では、通常、弾性衝突は、最高発生がある。図3bに示されるように、衝突のはるかに小さい部分では、中性物の原子核は、壁の原子核に十分に近づき、2つの核が非常に接近するとトンネリング効果の結果として衝突が非弾性になる。図3cは、発生する可能性のあるさらに別の相互作用を示しており、この場合、中性物が壁に侵入する。このタイプの衝突は、水素分子を吸収できるチタンやパラジウムなどの材料が閉じ込め表面に含まれている場合に、頻繁に発生する可能性がある。
図3dは、荷電粒子(たとえばプロトン)と閉じ込め壁との非弾性衝突を示している。このような場合、原子状水素などの中性物が閉じ込め壁と頻繁に弾性的に衝突する場合(図3a参照)とは対照的である。荷電粒子が閉じ込め壁に近づいたりそこから離れたりすると、粒子は、制動放射エネルギーの損失を受ける可能性がある。このエネルギー損失は、電子リッチ領域における荷電粒子と電子との間の静電相互作用によって引き起こされる。静電力の結果として、運動エネルギーの一部が失われ、X線などの高エネルギー電磁放射線が放出される。イオン化粒子を融合しようとすることに焦点を合わせた従来の核融合炉では、制動放射は大きなエネルギー損失をもたらす可能性がある。イオンに対する中性物の割合が高い弱電離プラズマを使用することにより、これらの損失は大幅に回避される。
運動している中性原子核と壁の原子核との間のトンネリング相互作用の特定の部分では、融合が発生する場合がある。図4aは、水素原子又はプロトンがホウ素11原子と融合するときに発生する無中性子融合反応の各段階を示している。まず、482には、高速で移動するプロトンがホウ素11原子と衝突し、2つの核が融合して483に示す励起炭素核を形成する。ただし、励起炭素核は短命であるが、484に示されるように、ベリリウム原子核及びα粒子に分解され、放射されるときのα粒子の運動エネルギーは3.76MeVである。最後に、485には、新しく形成されたベリリウム原子核は、ほぼ即座にさらに2つのα粒子に分解され、2つのα粒子のそれぞれが2.46MeVの運動エネルギーを持つ。図4b~eは、閉じ込み壁412の表面に関して、図4aに示される同じプロトン-ホウ素11融合反応の各段階を示している。図4aは、閉じ込め壁上のホウ素11原子の表面に向かって高速で移動するプロトンを示している。中性水素原子は、閉じ込め壁に近づくと、電子リッチ領域432を通過し、2つの正荷電原子核間の反発力を部分的にスクリーニングする。図4cは、中性水素がホウ素原子と融合して炭素核を形成した段階を示している。図4dには、炭素原子核は、ベリリウム原子核と1つのα粒子に分解された。最後に、図4eには、ベリリウム核は、分解されて2つの追加のα粒子を放出する。潜在的な反応物は、イオンではなく中性物であるため、閉じ込め壁の表面における原子との相互作用のほとんどが弾性衝突である。対照的に、壁に入る正荷電粒子は、壁の他の原子核から離れた場所で、静電反発力によって偏向される。これらの静電相互作用により、荷電粒子はエネルギーを失い、つまり、衝突は、非弾性である。軌道電子によってある程度スクリーニングされた正荷電原子核を持つ中性粒子は、同じ反発力を受けない。このため、中性物は、壁の別の原子に直接衝突する可能性が高い。したがって、イオンではなく中性物を使用すると、融合反応の可能性が高まり、融合反応が発生しない場合、中性物は、対応するイオンよりも高いエネルギーで弾性的にリバウンドされやすくなる。
全体として、回転する中性粒子は、壁との繰り返した相互作用を多く受け、融合反応の生成において非生産的である中性粒子は、比較的小さなエネルギー損失で弾性的反発する。前述のように、中性物は、壁から再出現する傾向があり、壁との次の相互作用に入るのに十分なエネルギーを有するため、それは、融合反応の生成において生産的である次の壁との相互作用に入ることができる。壁との相互作用は、それぞれ中性核と壁における原子核との間に融合反応を引き起こす可能性がある。
反応物が異なる種である場合(例:11B及びp)、単位体積あたりの融合速度は以下の式により得られる。
式中、nとnはそれぞれの反応物の密度、σは特定のエネルギーでの融合断面積、νは相互作用する2つの種の間の相対速度である。少なくとも1つの種が閉じ込め領域で回転し、別の種を含む閉じ込め壁に繰り返して衝突するシステムの場合、回転種の場合は、種の密度の値は、1020cm-3の桁であり、静止種(たとえば、ホウ素)の場合、種の密度の値は、1023cm-3の桁であり、融合断面の値は、10-32cmの桁であり、相互作用する種の相対速度は10m/sの桁であり得る。比較したところ、トカマク炉の場合、各種の密度の値は1014cm-3の桁であり、融合断面の値は、1028cm-3の桁であり、相互作用する種の相対速度は10m/sの桁である(2015年1月14日のM.Raghebによる「Inertial Confinement Fusion.pdf」に基づく。)。明らかに、本明細書に記載のような中性種を用いたシステムは、密度が高いため大きな利点がある。このようなシステムの単位体積あたりの融合エネルギーの速度は、トカマク及び慣性閉じ込めシステムの速度よりも少なくとも約8桁超えている。したがって、本明細書に開示されるシステムは、トカマク又は内部閉じ込めシステムの約1億分の1の体積で所定のエネルギー発生速度を達成できる。
クーロン障壁の低減
説明したように、信頼できる従来の核融合方法は、エネルギーを与えられた(energyed)融合反応物と、少なくとも150,000,000K(13000 eV)の桁の非常に高い温度に達する支持環境を有する。これは、融合反応物に十分な運動エネルギーを与えて、これらの自然静電反発を克服するために行われる。このような環境では、各反応物は、固有の正電荷を持つ原子核であり、融合反応の可能性をある程度確保するために最初に克服する必要がある。
本開示の特定の実施形態では、融合反応に、たとえば2000K(0.17 eV)桁など、はるかに低い温度が使用される。これらの実施形態は、1つ又は複数の反応物として中性種を使用し及び/又は反応物原子核間の強いクーロン反発力を低減するために反応環境を変える。クーロン力の低減は、たとえば、(i)反応領域に電子リッチ場を提供すること、及び/又は、(ii)反応物原子核の量子力学的スピンを整列させるなど、様々な方式で達成することができる。原子炉の構造に応じて、クーロン反発を低減するための装置と方法は多くの形をとることがある。以下の説明は、原子炉が外側閉じ込め壁又はシュラウドを備えた環状空間を含むと仮設している。他の原子炉構造も同様に、融合をサポートし低減させたクーロン反発環境をもたらす可能性があるが、以下の方式とは異なる方式でこれを達成できる。
以下、閉じ込め電極の内面近くの環境の1つの可能な解釈として提供され、この解釈は、開示された実施形態の実施に対する制限として理解されるべきではない。この解釈では、反応物、特に中性物は、高速で回転し電極の内面に衝突する。同時に、電子は、閉じ込め壁から又はその近くで放出される。急速に回転する中性物は高い角速度を持っているため、関連する遠心力によって閉じ込め壁の内面に極めて大きな圧力を印加する。壁の内面から放出される電子はこの力に対抗する。
放出された電子は、放出された位置、たとえば壁から離れて内部空間に向かって拡散する。ただし、電子は、中性物の遠心力により外側電極の内面に近い領域に拘束される。得られた電極の内面に隣接するバランス力の薄い領域は、反応物核間のクーロン反発を低減する強い場を持っている。
力のバランスは、(i)温度と電子と中性物の密度の積の勾配(電子が放出される壁面から離れる方向)、及び(ii)内面に向かって印加する遠心力のバランスとして数式により表す。遠心力は、中性物の密度、径方向の位置、及びこれら角速度の2乗の積に比例する。
この式では、rは閉じ込め電極の内面から離れた径方向、Kはボルツマン定数、TとTはケルビンを単位とした電子の温度と中性物の温度、nとnは電子と中性物の密度、nは中性種の密度、mは1つの回転中性種(たとえば水素原子)の質量、ωは回転中性種の角速度の2乗である。
電子が放出される表面(たとえば、閉じ込め壁の内面)の隣の薄い領域では、自由電子が強い電場を発生させる(図2a~bにおける閉じ込め壁210に隣接する電子リッチ領域232の模式図参照))。高濃度の中性物は、電子の平均自由経路が制限され、弾道軌道をたどることができなくなり、したがって、中性物を大幅に電離するのに十分な運動エネルギーが得られる。また、中性物は、イオンよりもかなり高い密度を持っているため、再結合に利用できる陽イオンは比較的少数である。たとえば、中性イオンに対するイオンの割合は、約1:10未満、約1:100未満、約1:1000未満、又は約1:10000未満の範囲であり得る。したがって、中性物は、通常、電子と陽イオンの間に配置される。この一連の条件により、閉じ込め壁の内面近くに高濃度の過剰電子が生成されるため、強い電場が発生する。
非常に薄い領域(たとえば、電極の内面の隣)における非常に過剰な電子(イオンに対する)、及び高濃度の中性物の存在の組み合わせにより、非常に強い電場が発生する。この領域では、強電場は、相互作用する正荷電原子核のクーロン反発を減少させる。したがって、2つの正荷電原子核が近接する確率は大幅に増加する。
また、前述したように、閉じ込め壁の内面に衝突する回転粒子は、相互作用する融合反応物のために繰り返す機会を与える。中性物は、電子リッチ層を繰り返し通過し、閉じ込め壁又はシュラウドの内面に衝突し、原子炉の内部空間に再び入る。この壁への衝突は、拘束された環境(たとえば、閉じ込め壁の内面)で回転する粒子によって生成される遠心力の径方向成分を表す。繰り返される衝突、接触、又はストライク(strike)は、特定の期間に特定の領域で融合反応が発生する可能性を高める。この繰り返しは、長い閉じ込め時間の必要性に取って代わり、融合反応を実現する従来の方法を特徴付けることにローソン基準を用いる懸念を解消する。簡単に言えば、融合反応の全体的な確率は大幅に増加する。
一例として、電子リッチ領域は、以下のパラメータ値の任意の組み合わせによって特徴付けられる。
自由電子の密度:約1023/cm
中性物の密度:約1020/cm
陽イオンの密度:約1015-1016/cm(中性物の約10-5~0.01%)
電子と陽イオンの密度の差:約10~10/cm
自由電子リッチ領域(ほとんどの電子密度勾配が存在する領域)の厚さ(径方向):約1マイクロメートル
電子リッチ領域の電場強度:約10~10V/m
電子温度:約1800-2000K(約0.15~0.17eV)
求心性加速度:約10g’s(gは重力加速度=9.8ms-2
このようなシステムにおける自由電子は、2つの原子核の融合反応を共同で触媒するものと見なせる。同様に、プロトンと重陽子に結合される1つ又は複数のミューオンは、水素と重水素原子の融合を触媒するものとして説明されることがある。ミューオンが2つの融合核を互いに近づけることによって融合を触媒するように、融合核の近くの自由電子は、本明細書に記載の融合反応を触媒する。電子は2つの反応物が十分に近づいて反応することを防ぐエネルギー障壁を効果的に低減させる。これは、化学的又は物理的なコンテキストでの任意の触媒の作用に非常に似ている。ミューオンと電子の両方が反応速度を高めるが、実際には反応に関与しない。それらは単に、反応物を反応するのに十分に近接させるために必要なエネルギー障壁を低減させる。
しかし、ミューオンと電子触媒には、他の類似点はほとんどない。ミューオン触媒融合は、さまざまな理由で商業的に実行可能ではない。特に、ミューオンは電子よりもはるかに大きな質量を持っているため、それらを生成するのははるかに高価である。さらに、それらの比較的少数のみが任意の瞬間に生成される可能性があり、これは、融合の損益分岐点要件を達成できないことを意味する。プロトン-ホウ素11反応の場合、損益分岐点融合には、毎秒1立方センチメートルあたり約1017個の成功した融合相互作用が必要である場合がある。大型プールでは、少数の原子核のみが、ミューオン触媒による融合の恩恵を受けることができ、融合を達成させるのにレベルに近くなる。
対照的に、電子は簡単に高密度で生成できる。たとえば、本明細書に開示される技術によれば、電子は、立方センチメートルあたり約1020以上の密度で生成され得る。このような高密度では、電子は、共同で作用して高電場を生成し、前記高電場は、比較的大きな体積範囲にわたって接近する核間の相互作用するクーロン障壁を低減させる。このような比較的大きな体積により、必要な相互作用が損益分岐点に達し、すなわち、毎秒立方センチメートルあたり少なくとも約1017の成功した融合相互作用が可能になる。
用語
「原子炉」は、1つ又は複数の反応物が反応して1つ又は複数の生成物を生成する装置であり、多くの場合、エネルギーの放出が伴う。1つ又は複数の反応物は、連続的供給、断続的供給、及び/又は一括供給により原子炉に提供される。それらは、ガス、液体又は固体の形で提供されてもよい。いくつかの場合には、反応物が反応の成分として提供され、たとえば、それは、壁のような原子炉の構造に含まれてもよい。ホウ素11、リチウム6、炭素12などが、原子炉の閉じ込め壁に提供され得る。いくつかの場合には、反応物は外部ソース(たとえば、ガス供給タンク)から提供される。特定の実施形態では、原子炉は、Q>1の核融合反応を促進するように構成される。原子炉は、反応中に生成された生成物及び/又はエネルギーを除去するための部材を備えていてもよい。生成物除去部材は、ポート、通路、ゲッターなどであってもよい。エネルギー除去部材は、熱エネルギーを除去するための熱交換器など、電気エネルギーを直接除去するためのインダクタ及び同様の構造などであり得る。原子炉部材は、生成物及びエネルギーを連続的又は断続的に除去できる。特定の実施形態では、原子炉は、反応物を含む1つ又は複数の閉じ込め壁を有し、且つ、いくつかの場合には、反応物の供給源、電場などを提供する。本開示全体を通して示されるように、持続融合反応を提供するのに適した原子炉は、多くの異なるデザインがある。
「ロータ」は、1つ又は複数の反応物又は生成物(粒子)が空間内で回転する原子炉又は原子炉部材である。空間は、本明細書に記載される閉じ込め壁によって少なくとも部分的に画定されてもよい。いくつかの場合には、ローレンツ力の場合のように、磁力、電力、及び/又はこの2つの組み合わせによって回転が誘導される。特定の実施形態では、回転は、閉じ込め領域内で回転するように荷電粒子に電力及び/又は磁力を加えることにより誘導され、回転する荷電粒子は、閉じ込め領域で中性物と衝突して、中性物を同様に回転させ、この現象は、イオン-分子結合と呼ばれることもある。中性物は電力や磁力の影響を受けないため、荷電粒子との相互作用がなければ、閉じ込め領域で回転しない。ロータの閉じ込め壁又は他の外部構造は、本明細書で説明されるような多くの閉じた形状を有してもよい。いくつかの実施形態では、外部構造は、一般的又は実質的に円形又は円筒形の形状である。そのような場合、形状は幾何学的に正確である必要はないが、回転軸線の周りの偏心率、非連続的な曲率(たとえば頂点)などの特定の変動を示してもよい。
いくつかの場合には、ロータの閉じ込め領域は、閉じ込め壁に対して同心円状に配列された内部ロッド又は他の構造を持っている。そのような場合、ロータには、粒子が回転する「環状空間」がある。本明細書で使用される場合、「環状空間」は、この領域が実質的に環状である閉じ込め領域を指す。なお、一部のロータは、環状空間を画定するための内部ロッド又は他の構造を持たない。そのような場合、ロータの閉じ込め領域は、単に中空構造である。環状空間は、通常円筒形の形状を有し得るが、そのような形状は、回転軸線の周りの偏心率、非連続的な曲率(たとえば頂点)などの特定の変動を示してもよい。
得られた電磁場により、電荷に対する電力と磁力の組み合わせによって「ローレンツ力」が提供される。力の大きさと方向は、電場と磁場のクロス積によって与えられ、したがって、力はJ×Bと呼ばれることもある。電場と磁場の方向が直交している場合、荷電粒子に印加される力は、右手の法則のニモニックで表される回転方向を有する。
融合反応では、関与する反応物と生成物(プロトン、α粒子及びホウ素(11B)が含まれ得る)は、必ずしも100%純度で存在するわけではない。そのような反応物、生成物又は反応の他の成分が本明細書に記載されている限り、そのような成分は実質的に存在すると理解される。言い換えれば、成分は100%のレベルで存在する必要はないが、より低いレベル、たとえば約95質量%又は約99質量%で存在してもよい。
無中性子反応は、通常、中性子が放出された全エネルギーの1%以下を持つ融合反応であると理解される。本明細書で使用される場合、無中性子反応又は実質的な無中性子反応は、この基準を満たすものである。
無中性子反応の例には、以下が含まれる。
p+B11→3He+8.68MeV
D+He→He+p+18.35MeV
p+Li→He+He+4.02MeV
p+Li→2He+17.35MeV
p+p→D+e+v+1.44MeV
D+p→He+γ+5.49MeV
He+He→He+2p+12.86MeV
p+C12→N13+γ+1.94MeV
13→C13+e+v+γ+2.22MeV
p+C13→N14+γ+7.55MeV
p+N14→O15+γ+7.29MeV
15→N15+e+v+γ+2.76MeV
p+N15→C12+He+4.97MeV
12+C12→Na23+p+2.24MeV
12+C12→Na20+He+4.62MeV
12+C12→Mg24+γ+13.93MeV
中性子反応の例には、以下が含まれる。
D+T→He+n+17.59MeV
D+D→He+n+3.27MeV
T+T→He+2n+11.33MeV
クーロン反発力は、同じ電荷の2つ以上の粒子が受ける静電力である。相互作用する2つの粒子の場合、分離距離の2乗の逆数に比例する(クーロンの法則)。したがって、荷電粒子が互いに近づくと、反発力は著しく強くなる。複数の荷電粒子によって生じる電場では、荷電粒子が受ける反発力は、近傍のすべての荷電粒子の寄与の重ね合わせによって与えられる。
クーロン障壁の低下とは、粒子が十分な数の電子又は他の荷電粒子にある程度達すると、よく知られ理解され2つの孤立粒子間で一般的に計算又は経験されるクーロン反発力がある計算可能な程度に「低下」又は減少し、それにより孤立した粒子がほかの方式で受ける反発力を低減させることを意味する。たとえば、XXの密度での過剰な電子の存在により、電子ドメイン内の2つの正荷電YY粒子間のクーロン反発力がZZ%減少する。
ローレンツィアンロータの実施形態
第1の実施形態
図1a~cは、荷電粒子、荷電種又はイオンがローレンツ力によって回転する原子炉の第1の実施形態を示している。図1aは、原子炉の断面図であり、図1bは、図1aの断面A―Aに沿った同じ原子炉の等角切り取り図を提供する。特に断らない限り、r、Θ、及びz座標を使用した方向性は、図1bに示すような円筒座標系に属する。図示の実施形態では、ローレンツにより駆動されるロータは、外側電極としても機能する外壁110と、環状空間140によって外側電極から分離され、時には放電ロッドと呼ばれる同心の内側電極120を有する。内側電極120とシュラウド140との間に電位を印加することにより、環状空間を横切って電場が形成される。電極間に十分な電位が印加されると、環状空間内のガスの一部が電離され、環状空間を横切っている径方向のプラズマ電流が生成される。様々な実施形態では、電場及び電流の流れがほぼ正のr方向になるように、内側電極は高い正電位に保持され、一方、シュラウドは、接地される。
図1cは、ローレンツ力がどのように閉じ込め壁110内で荷電粒子を方位角方向に駆動するかを示している。図1cでは、明瞭性を向上されるために、放電ロッドが取り外され、軸がz方向に変換されている。図示されていないが、磁石(たとえば、永久磁石又は超伝導磁石)は、環状空間内のz軸(実質的に軸方向)にほぼ平行する印加磁場を発生させることに用いられる。磁場は電流の方向にほぼ垂直であり、移動する荷電粒子、荷電種及びイオンに方位角(又はΘ)方向においてローレンツ力を受けられる。たとえば、放電ロッドが外側電極に対して正電位を持つ場合(たとえば、放電ロッドに正電位が印加されるとともに、外側電極が接地されている場合)を考慮して、r方向(144)に電場を発生させる。この構成では、正荷電イオンは、環状空間140を通って外側電極に向かってr方向に移動する。磁場が同時にz方向(146)を指している場合、イオンは-Θ方向、又は、図11b及び図1cに示される視点から見た場合の時計回り方向にローレンツ力を受ける。いくつかの場合には、電場と磁場は垂直とは異なるが平行ではない角度になってもよく、それによって、垂直成分は、多かれ少なかれ、十分に強い方位ローレンツ力を生成するのに十分な強度で存在する。この方位角の力は、荷電粒子、荷電種及びイオンに作用し、次に中性物と結合して、中央の放電ロッドと外側電極の間の環状空間における中性物も高回転速度で移動させられる。任意の可動機械部品がないということは、可能な回転速度にほとんど制限がないことを意味し、したがって、たとえば100,000RPSを超える中性物及び荷電粒子の回転速度を提供する。
逆電気極性の実施形態
図5a~dは、原子炉がローレンツ力を利用して、イオン-中性物結合によりイオン及び中性イオンを回転駆動することができる別の実施形態を示している。逆電気極性に構成された原子炉は、図1a~cに示された原子炉とは、電場及び電流の流れ(慣例により正の電荷の移動方向)がほぼ負のr方向であるという点で異なる。図5aは、原子炉の断面図であり、図5bは、図5aの断面A―Aに沿った同じ原子炉の等角切取り図を提供する。逆電気極性ロータは、外側電極510と、本明細書で閉じ込め領域と呼ばれることもある環状空間540によって外側電極から分離された同心内側電極520とを有する。内側電極及び/又は外側電極に電位を印加することにより、内側電極に向けられた径方向電場を環状空間において形成することができる。電極間に十分な電位が印加されると、環状空間内のガスの一部が電離され、環状空間を横切っている径方向プラズマ電流が生成される。
図5cは、ローレンツ力がどのように荷電粒子を原子炉内で方位角的に駆動するかを示している。図5cでは、明瞭性を向上させるために、内側電極が図面から取り外され、説明された軸がz方向に変換されている。図示されていないが、磁石(たとえば、永久磁石又は超伝導磁石)は、環状空間内のz軸に(すなわち、実質的に軸方向)にほぼ平行する印加磁場を発生させることに用いられる。磁場は電流の方向にほぼ垂直であり、移動する荷電粒子、荷電種及びイオンに方位角(又はΘ)方向においてローレンツ力を受けられる。たとえば、内側電極に負電位が印加されるとともに、外側電極が接地(又は正電位に保持)されている場合を考慮して、負のr方向(544)に電場を発生させる。この構成では、正荷電イオンは、環状空間540を通って内側電極に向かって負のr方向に移動する。磁場が同時にz方向(546)を指している場合、イオンは+Θ方向、又は、図5b及び図5cに示される斜視点図ら見た反時計回り方向にローレンツ力を受ける。いくつかの場合には、電場と磁場は、垂直とは異なるが平行ではない角度になってもよく、それによって、垂直成分は、多かれ少なかれ、十分に強い方位ローレンツ力を生成するのに十分な強度で存在する。この方位角の力は、荷電粒子、荷電種及びイオンに作用し、次に中性物と結合して、環状空間における中性物も高回転速度で移動する。任意の可動機械部品がないということは、可能な回転速度にほとんど制限がないことを意味し、したがって、たとえば100,000RPSを超える中性物及び荷電粒子の回転速度を提供する。
逆場の実施形態
図6a~dは、ローレンツ力を利用してイオン-中性結合によってイオン及び中性物を回転駆動する別の原子炉の実施形態の複数の図を示す。この実施形態の原子炉は、逆場構成を使用して運転する。この構成を有する原子炉は、図1a~c及び図5a~dに示される原子炉とは、閉じ込め領域内の電場と磁場の方向が逆になっている点で異なる。この構成では、磁場は、z軸にほぼ平行する代わりに、正又は負のr方向に径方向に向けられる。同様に、電場は、径方向に向けられるのではなく、z軸にほぼ平行する。図6aは、原子炉の等角図であり、図6bは、z方向における原子炉の図であり、図6cは、原子炉の等角断面図(図6bの線A―Aに対応する)であり、図6dは、原子炉の側面図を提供する。図示の実施形態は、内側環状磁石626と、閉じ込め壁としても機能する同心外側環状磁石616とを含む。環状磁石は、内側と外側の環状磁石の対応する表面が同じになるように、同じ方向に向けられた極を持っている。このような場合、外面は北極658であり、内面は南極659である。いくつかの実施形態では、閉じ込め表面の材料が磁性材料とは異なるように、磁石658の内面に1つ又は複数の追加の材料層がある場合がある。同心磁石間の領域は、閉じ込め領域660aの一端の電極及び閉じ込め領域660bの他端の電極によってz方向に制限される環状空間640を形成する。一般に、閉じ込め領域のいずれかの一方側におけるすべての電極(電極660a又は電極660bに対応する)には、類似した電位が与えられる。説明されたハイブリッド原子炉とは異なり、電極660a(又は電極660b)は、たとえば環状又はディスク形状を形成する単一の連続電極であってもよい。電極660aが接地され、環状空間660bの反対側の電極に正電位が与えられると、閉じ込め領域を通って正のz方向に電場が印加される。磁場がr方向(図示のように)を指している場合、直交する電場及び磁場は、イオンをΘ方向に方位角的に回転させる(たとえば、図6c参照)。あるいは、電極660bを接地させながら電極660aに正電位を印加することにより電場が負のz方向に向けられた場合、イオンは-Θ方向に回転する。
波動粒子の実施形態
図7a及び7bは、振動静電場によりイオンが回転する、制御された融合装置の第2の実施形態を示している。この実施形態では、外側リングに位置するか又は外側リングを形成する複数の個別壁電極714が、内側リングに位置するか又は内側リングを形成する内側電極724と任意に組み合わせて発生する電場によって、環状空間740において局所的で方位角的に変化する電場によって方位角的に加速されるイオンを発生させる。いくつかの場合には、壁電極は共同で閉じ込め壁を形成し、いくつかの場合には、壁電極は閉じ込め壁又は足場の一部の上又は内部に配置されてもよい。電場は、イオンに印加された静電力がほぼ方位角方向(Θ又は-Θ方向)に連続して進むように、制御された順序で方位角的に進行する。このような方式によれば、荷電種は、鉄道軌道に沿って振動磁場によって推進される磁気浮上列車のように、加速される。振動電位が電極に印加されてもよい。振動は、イオンの回転運動を誘導又は維持するために、1つの電極から隣接する電極にかけて位相又は他のパラメータが変化する。
環状空間に存在するイオンは、電場によって静電力を受け、イオン-中性物結合の原理により、多数又は数パーセントの中性物を駆動するために必要なイオンは比較的少数又は数パーセントである。誘導結合や容量結合などの適切なメカニズムによって、中性物を回転駆動するイオンを生成できる。いくつかの実施形態では、壁及び/又は内側電極にRF電荷がシーケンスで印加されると、イオンが生成される。いくつかの実施形態では、壁及び/又は内側電極は、最初に環状空間内の中性ガスの一部を電離するために初期電荷シーケンスを経て、次に、イオンを回転駆動するための異なる電荷シーケンスに変換される。たとえば、ガスを電離するために使用される電荷分布は、内側電極724に高電位を印加しながら閉じ込め壁電極714を単に接地することを含む場合がある。いくつかの実施形態では、すでに部分的に電離されたガスが環状空間740に導入され得る。
図7a及び図7bは、環状空間内のイオンを回転駆動するために使用され得る2つのバイナリ電荷分布を示しているが、多くの代替の電荷シーケンスが可能である。いくつかの電荷シーケンスでは、電極は、たとえば、一定時間接地電位に保持されるか、非対称の電荷シーケンスを持つことがある(たとえば、正電位は負電位の2倍の期間保持される)。
特定の実施形態では、このシステムは、軸方向静磁場などの磁場を必要としない。図7aは、イオン(たとえば、雲又はイオンのグループ)704が-Θ方向に力を受けるように電極に第1の電位分布が提供されるとき、第1の時点で取られたこの実施形態の例を示す。図7bは、イオン704が-Θ方向に方位角力を受け続けるように電極に異なる電位分布が提供されるとき、後の時点での図7aの実施形態を示している。
ハイブリッド実施形態
特定の実施形態では、原子炉は、ローレンツ力と振動静電場の両方を生成して、イオン-中性物結合によってイオン及び中性物を回転駆動する駆動機構を含む。運転のどの段階でも、原子炉は、これらのメカニズムの一方又は両方を使用できる。図6a~fは、そのような運転に適した例示的な原子炉を示している。図6aは、原子炉の等角図であり、図6bは、z方向における原子炉の図であり、図6cは、原子炉の等角断面図(図6bの線A―Aに対応する)であり、図6dは、原子炉の側面図を提供し、図6e及び6fは、異なる時点での断面図(図6dの線B―Bに対応する)である。図示の実施形態は、内側環状磁石626と、閉じ込め壁としても機能する同心外側環状磁石616とを含む。環状磁石は、内側と外側の環状磁石の対応する表面が同じになるように、同じ方向に向けられた極を持っている。この場合、外面は北極658であり、内面は南極659である。いくつかの実施形態では、閉じ込め表面の材料が磁性材料とは異なるように、磁石658の内面に1つ又は複数の追加の材料層がある場合がある。同心磁石間の領域は、1つ又は複数の電極対660a及び660bによってz方向に制限される環状空間640を形成する。電極対660a及び660bに異なる電位が与えられると、たとえば、電極660bを接地させながら電極660aに正電位を印加することにより、z方向にほぼ平行する電場が環状空間に生成される。イオンが環状空間で生成されると、直交する電場及び磁場により、イオンは-Θ方向に方位角的に回転する(たとえば、図6cを参照)。電極660aを接地させながら電極660bに正電位を印加すると、イオンはΘ方向に回転する。
いくつかの実施形態では、図6a~eに示されるように、複数の電極660a及び660bは、環状空間に沿って径方向に分布している。そのような場合、原子炉は、図7a及び図7b原子炉と同様の方式で駆動され得る。運転中、各電極対は、隣接する電極対の電位とは異なるほぼ類似した電位で駆動され、それによって、Θ方向に局所電場を生成する。図6d及び図6eに示されるように、イオンに印加される静電力がほぼ連続的に方位角的に(Θ又は-Θ方向に)変化する成分を示すように、電極対に印加される電圧を制御されたシーケンスで変調することができる。いくつかの構成では、原子炉は、最初にローレンツ力によってイオン及び中性物を駆動し、次に説明した交番静電場6を使用してイオン及び中性物を駆動するように運転するように構成できる。
原子炉の種類(寸法)
一態様において、原子炉は、それらが提供する出力パワーによりグループに分類され得る。このような方式によれば、本開示の原子炉は、この検討のために、小型、中型及び大型の原子炉に分けられる。小型原子炉は、通常、約1~10kWのパワーを生成できる。いくつかの実施形態では、これらの原子炉は、自動車に給電するか又は家庭に電力を供給するなどの個人的な用途に使用される。次の分類は、通常約10kW~50MWのパワーを供給する中型原子炉である。中型原子炉は、サーバーファームなど、電車や潜水艦などの大型車両など、大規模の用途に使用できる。大型原子炉は、約50MW~10GWのパワーを出力するように設計された原子炉であり、送電網及び/又は産業用発電所の一部の電力供給などの大規模作動に使用できる。これらの3つの一般的な分類は、本開示が関連し得る実用的なカテゴリーを提供するが、本明細書に開示される原子炉は、これらのカテゴリーのいずれにも制限されない。
シュラウド又は閉じ込め壁の表面積(周長と軸方向の積)は、通常、原子炉によって生成され得る最大パワーを制限する。大きな表面積を有するシュラウドは、大面積の内面(たとえば、図1aの122)にわたって融合反応をサポートする。小型原子炉の場合、シュラウドの内面の半径は、通常、約1cm~約2mであり、内面の表面積は、通常、約5cm~20cmの間である。中型原子炉の場合、シュラウドの内面の半径は、通常、約2m~約10mであり、内面の表面積は、通常、約25m~150mの間である。大型原子炉の場合、シュラウドの内面の半径は、通常約、10m~約50mであり、内面の表面積は、通常、約125m~628mの間である。いくつかの場合には、内面の半径は、数キロメートルの桁であってもよく、スイスのCERN実験室が運営する大型ハドロン衝突型加速器(LHC)と同様の設置面積を有する。上記の各値は、単一の原子炉が単独又は連続的に配列された原子炉の一部であると想定している(以下で説明する)。
第1の実施形態
図1a~cは、ローレンツ型ロータを利用して荷電粒子及び融合反応物を回転駆動し同心電極を有する原子炉の構造を示している。この実施形態は、内側電極120、外側電極110及び2つの電極間の環状空間140を有する。運転中、これらの電極間に印加された電位は、ほぼr方向の電場144を生成する。図示されていないが、この実施形態は、また、内側電極と外側電極との間でz方向に磁場146を生成する永久磁石又は電磁石(たとえば、超伝導磁石)を含む。図1cにおいて説明したように、電極間を移動する荷電粒子は、径方向電場と軸方向磁場のため、方位角方向の力、又はローレンツ力を受ける。
図示したように、図1aに示された原子炉は、内側電極112の外面と外側電極122の内面とを径方向に分離する隙間142を有する。内側電極及び外側電極の対向する表面の表面積が原子炉の規模を決定できるが、幅広い用途では、径方向隙間は、相対的一定に保持される。いくつかの場合には、隙間の上限は、環状空間内のガスを電離してプラズマ電流を生成するために利用可能なパワーによって制限され、隙間の下限は、製造公差によって制限される。隙間が非常に小さい場合、たとえば0.1mm未満の場合、電極間のいずれの位置ずれによっても、電極が接触して短絡が発生することを引き起こす。もちろん、製造公差により高い精度が得られるため、小さな隙間が実現可能である。いくつかの実施形態では、隙間は、約1mm~約50cmの間であり、いくつかの実施形態では、隙間は、約5cm~約20cmの間であり得る。いくつかの場合には、隙間は、原子炉のr方向及び/又はz方向に沿って変化し得る。たとえば、内側電極の半径は、z軸に沿った位置の関数として変化してもよく、一方、外側電極の内面の半径は、一定である。
外側電極によって作成された閉じ込め壁のz方向の長さは、原子炉の径方向の寸法と発電の要件によって決まる。いくつかの実施形態では、z方向における外側電極の長さは、磁場を生成するための磁石のタイプ及び構成によって制限される。たとえば、永久磁石が(図11に示されるように)z方向に沿って環状空間のいずれかの端部に配置される場合、外側電極はz方向に約5又は約10cmに制限され得る。しかし、複数の永久環状磁石を使用して磁場を生成し(図16及び図17参照)、電磁石又は超伝導磁石を使用して磁場を生成する(図10参照)場合、z方向における外側電極の長さははるかに長くてもよい。たとえば、外側電極は、約1m~約10mの間であり得る。一般に、外側電極110は、内側電極120と類似した長さであるが、常にそうである必要はない。いくつかの実施形態では、内側電極は、外側電極を超えて一方向又は両方向に延びていてもよい。いくつかの実施形態では、外側電極の長さは、外側電極が内側電極を超えて一方向又は両方向に延びるように、内側電極の長さを超えてもよい。
図1a~図1bは、固体の円形内側電極が円形外側電極と組み合わせて使用される1つの構成を示しているが、この構成では、多くの電極形状の順列が使用できる。代替実施形態のいくつかの非限定的な例は、当業者にとって明らかであり、図8a~b及び図9a~cを参照して検討される。いくつかの実例が提供されているが、実行可能な追加の電極形状の数を容易に理解できる。
図8aに示されるように、いくつかの実施形態では、内側電極820は、常に中実ではない環状構造であってもよい。内側電極内に空洞又は開放空間を設けることは、熱放散と、図17a~cに示される内側磁石の使用と、又は原子炉内の他の部材の使用とに有用である。いくつかの場合には、内側電極及び外側電極の半径は、原子炉のz方向に沿って変化し得る。たとえば、図8aに示すように、内側電極820は、z方向に沿ったいくつかの位置でより大きな円周を有し、それによって、それらの位置での隙間842を減少させる。逆に、均一な内側電極は、内側半径がz方向に沿って変化する又は変動する外側電極と共にを使用できる。いくつかの場合には、たとえば、図8bに示される実施形態では、内側電極820の半径と外側電極810の内面の半径の両方がz方向に変化し、それによって、隙間842が原子炉のz方向に沿って維持される。
図9a~cは、非円形断面を有する原子炉の断面を示している。図示したように、いくつかの実施形態では、内側電極920及び外側電極910は、方位角(すなわちΘ方向)に変化する半径を有してもよい。いくつかの場合には、内側電極及び外側電極(912及び922)の表面は、図9aに示すような楕円形の断面を有してもよい。いくつかの場合には、楕円形の断面の電極の長軸と短軸がわずかな割合、たとえば1%未満しかずれていない。いくつかの実施形態では、表面912及び/又は922は、図9bに示される原子炉の七角形など、多角形の断面を形成してもよい。いくつかの実施形態では、表面912及び922は、4つ以上の辺を有し得る。いくつかの実施形態では、8辺よりも多く、いくつかの実施形態では、16辺よりも多い。表面912に角があると、特定の状況で有利になる場合があり、たとえば、回転する粒子は、角の位置にあるターゲット材料と衝突する速度が増えて、融合の比率が増加する場合がある。いくつかの実施形態では、たとえば、図9cに示される原子炉の構成では、表面912及び922によって画定される内側電極又は外側電極の半径は、いずれかの表面の断面がパターン化されたエッジ、たとえば、正弦波状、のこぎり波状又は方形波状のエッジを有するようにΘ方向に変化し得る。説明された実施形態の内側電極及び外側電極は同軸であるが、いくつかの実施形態では、内側電極及び外側電極の軸はオフセットされ、たとえば、内側電極及び外側電極が、ほぼ平行するが共線ではないz方向軸を有するように、環状空間が偏心している。
内側電極及び外側電極用の材料は、原子炉の寸法、選択された融合反応物、核融合炉の運転を制御するその他のパラメータにより決まる。一般に、コスト、熱的特性及び電気的特性などで、多くのトレードオフがあり、それらは、どの材料が反応炉に選択されるかを決定する。融点が非常に高く、高温での導電性が比較的高いため、高融点金属(たとえば、タングステンやタンタル)を小型原子炉に選択でき、ただし、これらの材料を大型原子炉で使用すると、原子炉のコストが大幅に増加する可能性がある。
特定の実施形態では、電極材料は、原子炉の運転中に放出される熱エネルギーに耐えるのに十分に高い融点を有する。融合反応が発生し得る閉じ込め壁を形成する外側電極の場合、熱エネルギーの放出はしばしば大きい。通常の使用に耐えるために、外側電極の材料は、原子炉の運転中に電極が到達する温度を超える融点を持つ必要がある。いくつかの場合には、電極用に選択される材料の融点は、約800℃よりも高く、いくつかの場合には、電極の融点は、約1500℃よりも高く、他の場合には、融点は、約2000℃よりも高い。
多くの実施形態では、電極材料が高い熱伝導率を有することが有益である。定常状態で電極に熱が導入されるのと同等の速度で熱を電極から抽出できる場合(たとえば、熱交換器を使用)、原子炉は連続運転に適している。電極材料が高熱伝導率を有すると、熱の抽出速度が向上し、過熱の懸念が軽減される。いくつかの場合には、熱伝導率は約10(W/m・K)より大きく、いくつかの場合には、熱伝導率は、約100(W/m・K)より大きく、いくつかの場合には、熱伝導率は、約200(W/m・K)より大きい。
特定の場合、たとえば原子炉がパルス運転に構成されている場合、電極材料の熱容量が大きいことが有益である。高い熱容量を持つことにより、原子炉の運転中に電極の温度がより遅い速度で上昇する。パルス運転に使用される場合、生成された熱エネルギーは、パルス間で電極を介して放散され続け、電極が融点に達するを防ぐ。いくつかの場合には、電極の比熱は、約0.25J/g/℃より高く、いくつかの場合には、比熱は、約0.37J/g/℃より大きく、ほかの場合には、比熱は、約0.45J/g/℃より高い。
特定の実施形態では、電極材料は、比較的小さな熱膨張係数を有する。いくつかの場合には、低熱膨張係数を持つことにより、原子炉は、より広い温度範囲にわたって性能が向上する。たとえば、原子炉に室温で約1mmの隙間がある場合、内側電極及び/又は外側電極の膨張により、定常状態の運転中に隙間は比例してはるかに小さくなる。熱係数が高すぎると、外側電極と内側電極が接触して短絡を引き起こす可能性がある。あるいは、原子炉が運転温度で特定の隙間を有するように設計されている場合、その隙間は、原子炉が最初にオンにされたときに所望のものよりも大きくなり得る。ある場合には、電極材料の線膨張係数は約4.3×10-6-1未満であり、ある場合には、電極材料の線膨張係数は約6.5×10℃-1未満であり、他の場合には、電極材料の線膨張係数は約17.3×10-6-1未満である。
原子炉の運転を促進するために、電極は、熱サイクルにおいて劣化に耐えられるなどの機械的特性を持つように設計されてもよい。特定の条件では、いくつかの材料(たとえばステンレス鋼)は脆くなり、最終的に熱サイクルの結果として疲労する。原子炉がパルス運転で運転し、電極が急速に加熱及び冷却されると、内部応力が発生する場合がある。いくつかの場合には、単一のバルク材料を有する電極を使用するか、類似した膨張係数を持つ2つ以上の材料を使用することにより、熱負荷サイクルの影響を減らすことができる。特定の材料は、高温でのクリープにより変形する場合がある。したがって、高温で強度を維持できる電極材料を選択できる。
電極材料は化学的に不活性であり、原子炉の寿命に亘って酸化、腐食やその他の化学的劣化の影響を受けない。電極材料に関する別の考慮事項は、それらが強磁性であるかどうかである。いくつかの場合には、強磁性材料が使用されると、内部の局所的な磁場が生成され、環状空間内の意図された磁場の確立又は維持を妨げる。
同心電極を有するローレンツ駆動型原子炉では、内側電極及び外側電極は、運転中に電極の表面に電位が均一に印加されるように、十分に導電性の材料から作られてもよい。特定の実施形態では、室温で、内側電極材料又は外側電極材料の抵抗率は、約7×10-7Ωm未満であり、いくつかの場合には約1.68×10-8Ωm未満である。室温で導電できることに加えて、原子炉が運転していない場合、内側電極及び外側電極はより高い運転温度で導電性になる場合がある。運転中、内側電極又は外側電極は、約600℃~約2000℃の温度に達する場合がある。運転中、外側電極材料の抵抗率は約1.7E-8Ωm以下である必要があり、いくつかの場合には約1E-6Ωm以下である。
反応物又は副生物に水素又はヘリウムが含まれる場合、水素脆化に対する材料の耐性を考慮する。水素脆性とは、金属(たとえば、ステンレス鋼)が脆くなり、いくつかの場合には金属への水素原子又は分子の導入とその後の拡散により破壊するプロセスである。水素の溶解度は高温で増加するため、原子炉の運転中に電極材料への水素の拡散が増加する場合がある。閉じ込め壁に衝突する水素原子の遠心緻密化などにより、金属の外部よりも外部にかなり多くの水素が存在する濃度勾配によって支援される場合、拡散速度はさらに増加し得る。金属内の個々の水素原子は徐々に再結合して水素分子を形成し、金属内に内圧を発生させる。追加又は代替として、同伴された水素分子自体が内圧を発生させる。この圧力は、金属の延性、靭性、引張強度が低下し、亀裂が形成されて電極が破損するレベルまで増加する可能性がある。金属に炭素が含まれているいくつかの場合(炭化鋼など)には、電極は、水素攻撃として知られるプロセスの影響を受けやすく、水素攻撃は、水素原子が鋼の中に拡散し、炭素と再結合してメタンガスを形成することである。メタンガスが金属内に集まると、内圧が発生し、デバイスの機械的故障につながる。水素脆化の影響を低減する方法は、本明細書の他の場所で説明されているが、一般に、電極を設計する際に、脆化に対する材料の感度が考慮される。いくつかの場合には、電極には白金、白金合金、及び窒化ホウ素などのセラミックが含まれ、これらはそれぞれ水素脆化に抵抗する。いくつかの場合には、金属の格子内における水素の影響がそれほど害にならないように、冶金構造を変更することができる。たとえば、ある場合には、金属又は金属合金は、所望の冶金構造を達成するために熱処理を受け得る。
種々の実施形態では、内側電極及び外側電極は、主に金属及び金属合金で構成される。いくつかの実施形態では、内側電極及び/又は外側電極は、少なくとも部分的に、高い融点を有する高融点金属から製造される。高融点金属は、化学的に不活性であり、粉末冶金を使用した製造に適しており、非常に高い温度でクリープに対して安定していることが知られている。適切な高融点金属の例には、ニオブ、モリブデン、タンタル、タングステン、レニウム、チタン、バナジウム、クロム、ジルコニウム、ハフニウム、ルテニウム、ロジウム、オスミウム及びイリジウムが含まれる。一例では、少なくとも外側電極はタンタルを含む。
いくつかの実施形態では、一方又は両方の電極はステンレス鋼を使用して製造される。ステンレス鋼の利点には、その機械加工性と耐食性が含まれる。いくつかの場合には、電極は、少なくとも部分的に炭化ステンレス鋼よりも水素脆性に強い非炭素系ステンレス鋼(たとえば、インコロイなど)から製造される。いくつかの場合には、電極は、少なくとも部分的に、インコネル(Inconel)、モネル(Monel)、ハステロイ(Hastelloys)、ニモニック(Nimonic)など、非常に高い温度で強度を維持するニッケル合金から製造される。いくつかの場合には、電極の少なくとも一部は銅又は銅合金から製造される。いくつかの場合には、極温度に対する耐性が低い材料を使用できるように、電極は、内部を冷却して熱を抽出するための1つ又は複数のチャネルが設置されるように構成される。
特定の運転条件では、小原子融合反応物(たとえば、水素、重水素、ヘリウム)の吸収は、電極の機械的故障につながる可能性があるが、特定の材料に対して有害な脆化効果を低減又は排除させることができる。たとえば、ある条件では、水素吸収材料(たとえば、パラジウム-銀合金)は、水素脆化の影響を受けにくいようである((Jimenez,Gilbertoら,“A comparative assessment of hydrogen embrittlement: palladium and palladium-silver(25 weight% silver)subjected to hydrogen absorption/desorption cycling”「水素脆性の比較評価:水素吸収/脱着サイクリングを受けたパラジウムとパラジウム銀(25重量%銀)」(2016)、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。そのような場合、融合反応物の吸収は融合反応の速度を高める。たとえば、水素などの回転ガス反応物は、外側電極(又は閉じ込め壁)に固定された固定水素原子と衝突し得る。いくつかの場合には、内側電極及び/又は外側電極を介して反応物を拡散させることにより、反応物が原子炉に供給される。いくつかの場合には、電極は、融合反応物を送達するため、又は融合反応物間の衝突率を高める目的で、チタン、パラジウム、又はパラジウム合金を含んでもよい。
いくつかの場合には、本明細書の他の場所で説明するように、外側電極又は内側電極は、高い電子放射率を有する電子放出材料を含んでもよい。いくつかの場合には、外側電極は、融合反応物を含むターゲット材料を含んでもよい。いくつかの場合には、運転中に融合反応の結果としてターゲット材料が消費される。たとえば、いくつかの場合には、六ホウ化ランタンがターゲット材料として使用され、ホウ素-11原子は、プロトン-ホウ素反応中に消費される。
第1の実施形態-電極
いくつかの実施形態では、外側電極は単一の材料から製造されるモノリシックであり、他の実施形態では、外側電極は2つ以上の材料を含む層状又はセグメント化構造を有する。いくつかの実施形態では、外側電極の内面(閉じ込め壁)は、ターゲット材料(融合反応物を含む材料)又は電子放出材料を含む。いくつかの場合には、ターゲット材料又は電子エミッタが閉じ込め壁の表面積全体を覆い、いくつかの場合には、ターゲット材料又は電子エミッタが閉じ込め壁に沿った1つ又は複数の別個の位置に配置される(たとえば、図21a~bにおける電子エミッタの説明)。
いくつかの場合には、外側電極の内層が1つの特性を提供し、外層が異なる特性を提供する。たとえば、閉じ込め壁の表面を形成する内層は高い融点を有し、外層は優れた熱伝導性又は導電性を有し得る。
いくつかの場合には、電極は、電極の残りの部分よりも水素脆化に対する耐性が高い閉じ込め壁を形成する材料の層を含んでもよい。いくつかの場合には、電極は、水素原子が外側電極の格子に侵入するを防ぐか、バルク電極材料の断熱を提供できるセラミックコーティングを含む。いくつかの実施形態では、外側電極は、窒化アルミニウム層、アルミナ層、又は窒化ホウ素層を有してもよい。室温で導電性が低い一部の材料(たとえば、窒化ホウ素など)は、導電性を向上させるために熱処理され得る。いくつかの場合には、電極の表面に材料を追加し、水素脆性を低減する表面処理が行われる場合がある。たとえば、電極が水素脆化に対して敏感な材料(たとえば、タンタル)で製造されている場合、電極表面に少量の貴金属を加えることにより、脆化を減らすことができる。いくつかの場合には、貴金属は電極表面のごく一部しか覆わないことがある。たとえば、貴金属は、電極表面の約50%未満、約30%未満、又は10%未満を覆って、電極の水素脆性を大幅に低減させる。いくつかの場合には、水素脆性を低減するために、少量の白金、パラジウム、金、イリジウム、ロジウム、オスミウム、レニウム、及びルテニウムを電極表面に追加することができる。いくつかの場合には、貴金属の小さなスポット(たとえば、直径約0.5インチ)が電極表面にリベットで留められるか、溶接され得る。いくつかの場合には、貴金属粉末が原子炉に追加され、通常の運転中に、粉末が電極表面にスパッタされる。いくつかの場合には、たとえば原子炉が所定の時間運転した後、貴金属を電極の表面に定期的に追加してもよい。
いくつかの場合には、スリーブが外側電極の内面に取り付けられ、その結果、スリーブの内面が閉じ込め壁を形成する。いくつかの場合には、スリーブは、たとえば、ターゲット材料を提供し、電子エミッタを提供し、外側電極への水素浸透に対する障壁を提供し、及び/又は外側電極への熱保護を提供するために使用され得る。いくつかの場合には、スリーブは消耗品及び/又は交換可能である。たとえば、スリーブに消費されるターゲット材料が含まれている場合、スリーブは最終的に交換される。他の場合には、スリーブは、外側電極を水素脆化から保護する犠牲層として機能する。スリーブ自体が水素脆性のために故障する状況では、交換コストは、外側電極全体よりもはるかに低い。
いくつかの実施形態では、外側電極は、環状空間内に回転中性物を閉じ込めながら、高エネルギー荷電粒子が電極を通過することを可能にする多孔質又はメッシュ状構造を有してもよい。外側電極を通過する荷電粒子は、外側磁石の磁場によって誘導され得る。いくつかの場合には、脱出するα粒子は、α粒子の運動エネルギーを電気エネルギーに変換できるハードウェア(本明細書の他の場所で説明)にリダイレクトされる。いくつかの場合には、電極の細孔寸法は約100μm未満、いくつかの場合には、約1μm未満である。一般に、内側電極の構造は外側電極の構造と類似していてもよい。外側電極と同様に、内側電極は単一の材料で製造されてもよく、2つ以上の材料で製造される層状又はセグメント化された構造を有していてもよい。いくつかの実施形態では、内側電極は固体であってもよく、他の実施形態では、内側電極は内部空間を有する。いくつかの場合には、内側電極は内部冷却のための1つ又は複数の経路を含むことがある。種々の実施形態では、内側電極は、内側電極から接地された外側電極に流れる電流を提供する電源に接続される。外側電極の材料は一般に内側電極にも適しているが、特定の実施形態では、内側電極はターゲット材料又は電子放出材料を含まない。
第1の実施形態-磁石
図10a~dは、軸方向磁場が電磁石(たとえば、超伝導磁石)によって印加される第1の実施形態を示している。図10aは、原子炉の外側電極を囲む超伝導磁石の等角図を示す。図示のように、磁石は筐体1056を含む。図10bは、図10aと同じ斜視図を提供し、超伝導磁石の筐体1056が取り除かれ、超伝導コイル巻線1054が露出している。図10cは、z軸に沿って見た原子炉の斜視図を提供し、図10dは、図10aに示す切断線A―Aに対応する等角断面図である。図示されるように、原子炉は、外側電極1010、内側電極1020、及び2つの電極間の環状空間1040を画定する隙間10を有する。電流(図10aに矢印で示すように)は、原子炉に巻き付けられた超伝導コイル巻線1054を通過し、環状空間を通ってほぼz方向にある印加磁場を生成する。いくつかの実施形態では、超伝導磁石を使用して、約1~20テスラの間の環状空間を通過する印加磁場を生成する。いくつかの場合には、印加される磁場は1~5テスラである。コイル巻線は、低温(たとえば、-180℃未満)及び低圧に保たれた原子炉の周囲に配置された断熱筐体1056に配置される。筐体1056は、たとえば、ガス(たとえば、He)又は低温液体の断熱膨張性によって冷却されることで、超伝導コイルの温度をその臨界温度未満に維持することができる。いくつかの場合には、筐体を機械的に冷却して、低温液体の使用を回避する。コイル巻線は、ニオブ-チタン、又はニオブ-スズ、ビスマス・ストロンチウム・カルシウム・銅酸化物(BSCC)、又はイットリウム・バリウム・銅酸化物(YBCO)などの超伝導材料で製造できる。コイル巻線は、絶縁材で包まれたワイヤ又はテープの形を取りうる。いくつかの場合には、コイル巻線には、機械的安定性を提供するために銅マトリックスに配置された前述の超伝導材料のいずれかが含まれ得る。いくつかの実施形態では、商業的に販売されている超伝導磁石は、ベンダー(たとえば、Cryomagnetics,Inc.)又は磁気共鳴画像装置のメーカーからのものであり得る。いくつかの場合には、α磁気分光器実験に使用されるAMS-02超伝導磁石などの超伝導磁石を使用できる。超伝導磁石を使用して軸方向磁場を提供する場合、閉じ込め壁の半径は通常、超伝導磁石の半径よりも小さく、たとえば、いくつかの場合には、半径は、約20mに制限できる。
電磁石又は超伝導磁石が外側電極の周囲に配置されると、外側電極1010と磁石1056の筐体との間に間隔があり得る。この間隔は、磁石への熱伝達を低減するために使用され得る。いくつかの場合には、外側電極1010と磁性筐体の間に熱交換器を配置することができる。外側電極が多孔質又はメッシュ状の構造を有する場合、外側電極と磁石の筐体との間には、荷電粒子が外側電極を通過することを可能にする間隔があり得る。外側電極を通過する荷電粒子(たとえば、α粒子)は、イオンのサイクロトロンの動きによってr方向に拘束されるため、筐体1056と衝突しない。いくつかの場合には、外側電極間の間隔は約3cm~約6cm、いくつかの場合には約6cm~約10cmの間である。本明細書の他の箇所で記載されるように、荷電粒子は、次にエネルギー変換手段に向かってz方向に移動し、電気エネルギーを生成することができる。図11a~bは、ほぼ軸方向に向けられた(すなわち、z方向を指している)印加磁場を生成するために、環状空間1140のいずれかの一端にディスク状永久磁石1150が配置された原子炉を示す。図11aは、z方向に沿って見た斜視図を提供し、図11bは、図11aに示された切断線に対応する等角断面図を提供する。図11bにおいて説明されたように、原子炉は、内側電極1120、閉じ込め壁1112を形成する外側電極1110、及び内側電極と外側電極との間の環状空間を有する。磁石1150は、環状空間のいずれかの一方側に配置され、同じ磁気向きを有する。たとえば、両方の磁石は、正のz方向に向いた北極を持ってもよく、負のz方向に向いた北極を持ってもよい。図示されていないが、いくつかの実施形態では、磁石1150は、磁石が環状空間1140に近接し、外側電極1112の内面に沿ってほぼ均一な磁気領域を提供するように環状であってもよい。図11に示されたディスク状磁石と同じ極の向きを有する。
図12a~bは、外側電極1212の内面に沿ってz方向に印加磁場を生成するために、z方向に同じ極性(たとえば、図11に示すディスク状磁石と同じ向き)を有する複数の永久磁石1250が環状空間1240のいずれかの一方側に配置される別の実施形態を示している。図12aは、z方向における透視図を提供し、図12bは、図12aに示された切断線A―Aに対応する等角断面図を提供する。いくつかの特徴は、拡大図1201でラベル付けされ、環状空間が内側電極1220、外側電極1210、及び永久磁石1250によってどのように拘束されるかを示している。複数のより小さな磁石の使用は、大型原子炉用のより大きなモノリシック磁石に関連するコスト及び物理的制約を低減させるのに有用である。図12a及び図12bに示される磁石1250の配置は、2つの対向する環状磁石を効果的に発生させるものと見なされ得る。図示されていないが、いくつかの実施形態では、異なる磁石形状の組み合わせが軸方向磁場を生成するために使用される。たとえば、環状空間の一方側で環状磁石を使用し、反対側で複数のロッド状磁石を使用してもよい。
図13a~cは、単一の内側電極1320を有する原子炉1300が、z方向に沿って配列された永久磁石1350によって仕切られた複数の環状空間1340を有する実施形態を示している。図示されているように、原子炉は、内側電極1320、閉じ込め壁1312を形成する複数の外側電極1310(壁セグメントの組み合わせ)、及び各外側電極と内側電極との間の環状空間1340を有する。図13aは、z方向に沿って見た斜視図を提供し、図13b及び13cは、それぞれ、図13aに示された切断線に対応する断面図及び等角断面図を提供する。環状空間のいずれかの一端に永久磁石が配置される場合、z方向の環状空間の長さは、永久磁石によって生成できる磁場の強度によって制限される。いくつかの場合には、環状空間は、たとえば、約5又は10cmに制限されてもよい。複数の環状空間1340の間にz方向に磁石1350を配列することにより、外側電極1310の閉じ込め壁1312における総表面積を増加させることができる。前の実施形態と同様に、各磁石1350は、z軸に沿って同じ向きを有する。この設計では、各磁極は、隣接する環状空間に印加される磁場の形成に寄与するため、環状空間間の永久磁石を効率的に使用する。図示の実施形態は、環状磁石を使用して示されているが、他の多くの形状のもを使用してもよく、たとえば、環状空間に隣接する各磁石は、共同で環状構造を形成する多くのより小さな磁石で製造できる(図12a~b参照)。いくつかの実施形態では、外側電極1310は、電気的に分離された物理的に別個の部分に分割されてもよい。いくつかの実施形態では、外側電極は、たとえば、各環状空間1340に対応する各外側電極が接地されるように、モノリシック又はほかの方式で電気的に接続されてもよい。
図14a~cは、単一の原子炉構造1400が、z方向に沿って配列された永久磁石1450によって仕切られた複数の環状空間1440を有する実施形態を示している。図示のように、原子炉は、複数の内側電極1420、及び各電極群間の環状空間1440用の閉じ込め壁1412を形成する複数の外側電極1410を有する。図14aは、z方向における透視図を提供し、図14b及び図14cは、図14aに示された切断線に対応する断面図及び等角断面図を提供する。図13a~cの実施形態に示されているように、環状磁石及び単一の内側電極を使用するのではなく、図14a~cの実施形態は、ディスク状磁石と複数の内側電極セグメントを使用している。図13a~cからの対応する特徴の説明は図14a~cの実施形態に適している。いくつかの実施形態では、示される原子炉は、エネルギー需要に応じて利用可能な環状空間のサブセットのみを使用して運転し得る。たとえば、いくつかの実施形態では、融合反応物を1つの環状空間にのみ導入し、電圧電位をその環状空間に隣接する内側電極にのみ印加する。この方式によれば、エネルギー需要を満たすように原子炉のエネルギー出力を制御することができ、必要に応じて、さらにリアルタイムに制御することができる。したがって、いくつかの実施形態では、個々の内側電極1420及び/又は外側電極1410は独立して制御可能である。
図15a~図15cは、磁石1550がほぼ同軸であり、同じ向きを有する一連のリングによって生成される磁場を示す。図15aは、3つの磁石の等角図であり、図15bは、磁石の共有軸に沿った図を示し、図15cは、図15bの線A―Aに対応する断面図である。前の実施形態は、z方向において環状空間からオフセットされた磁石を利用していたが、磁石は、r方向において径方向に環状空間からオフセットされてもよい。図15cの破線によって示されるように、各環状磁石は、個別に考慮されると、そのN極で始まりそのS極で終わる磁場1545を生成する。複数の環状磁石が隣り合って配置されている場合、正味の効果は、個々の磁場の重ね合わせであり実線の磁力線1546で示されるように共有軸に沿って実質的に指している複合磁場であり得る。この磁石は、永久磁石を使用しながら原子炉の環状空間の実現可能な長さを延長するために使用される。
図16a~図16cは、径方向にオフセットされた環状磁石1650を使用して環状空間を通る軸方向磁場を生成する実施形態を示している。図示のように、原子炉は、単一の内側電極1620と、電極間の環状空間1640用の閉じ込め壁1612を形成する単一の外側電極1610を有する。図16aは、z方向に沿って見た原子炉の斜視図を提供し、図16b及び図16cは、図16aに示された切断線に対応する断面図及び等角断面図を提供する。各磁石1650は、z方向に沿って同じ極性を有する。たとえば、説明されたように、磁石1650のそれぞれは、正のz方向に面する南極を有する。この実施形態は、z方向に延びている環状空間を可能にし、閉じ込め壁1610により大きな表面積を作成し、より大きなパワー出力電位を可能にする。図13及び14の対応する実施形態の重複する特徴は、図16a~cの実施形態に適用することができる。
図17a~図17cは、径方向にオフセットされた磁石(1750、1752)を使用して単一の環状空間を通る軸方向磁場を生成する実施形態を示している。図示のように、原子炉は、単一の内側電極1720と、電極間の単一の環状空間1740用の閉じ込め壁1712を形成する単一の外側電極1710とを有する。図17aは、z方向に見た原子炉の斜視図を提供し、図17b及び図17cは、図17aに示された切断線に対応する断面図及び等角断面図を提供する。図17a~cの実施形態は、追加の磁石1752は、内側電極1620の内部領域に配置される点で、図16a~cに関して説明した実施形態を超える。図示のように、追加の磁石1752は、z方向に沿って外側磁石1750と同じ向きを有する。いくつかの実施形態では、図17b及び図17cに示すように、内側環状磁石1752は、z方向において外側環状磁石1750と整列している。いくつかの実施形態では、内側環状磁石は外側環状磁石からオフセットされてもよく、又は磁石間の間隔は外側磁石の間隔と異なってもよい。いくつかの実施形態では、内側磁石は、外側磁石とは異なる形状をとってもよく、内側磁石はロッド状磁石でもよい。
いくつかの実施形態では、永久磁石は、希土類元素又は希土類元素の合金から製造される。適切な磁石の例には、サマリウム-コバルト磁石とネオジム磁石が含まれる。現在又は今後開発される他の強力な磁石が使用に適している場合がある。いくつかの実施形態では、永久磁石は、環状空間において約0.1~1.5テスラの磁場を生成することができ、いくつかの実施形態では、永久磁石は、環状空間において約0.1~約0.5テスラの磁場を生成することができる。
すべての原子炉に永久磁石が必要であるわけではない。図10a~dを参照して説明したように、電磁石又は超伝導磁石を採用しているものもある。一部の原子炉は、永久磁石と電磁石の2つ以上の組み合わせを使用している。図18a~dは、電磁石によって軸方向磁場が印加される第1の実施形態を示している。図示されるように、原子炉は、内側電極1820、及び電極間の環状空間1840用の閉じ込め壁1812を形成する外側電極1810を有する。図18aは、原子炉の上に置かれた電磁石の等角図を示す。図18bは、z軸に沿った原子炉の斜視図を提供し、図18c及び図18dは、図18bに示された切断線に対応する断面図及び等角断面図を示す。電流は、図18cの磁力線で示されるように、原子炉をほぼz方向における印加磁場を生成するために、原子炉をz方向に囲むコイル巻線1854に通される。導電性コイルを通る電流は、AC又はDC電源によって提供されてもよい。導電性コイルがAC電源によって駆動される場合、内側電極及び/又は外側電極も同じ周波数のAC電源によって駆動されてもよい。これによって、荷電粒子の回転は、磁場の交番極性が電場と同期しなかった場合に発生する交番方向ではなく、同じ方向に維持される。コイルは、銅、アルミニウム、金や銀などの導電性材料で製造されてもよい。いくつかの実施形態では、コイルは、外側電極の周りに巻き付けられたワイヤの形態を取り、いくつかの実施形態では、コイルは、外側電極の周りに配置され得る別個の筐体に配置される。
逆電気極性の実施形態
以上、図5a~図5cには、逆電気極性ロータが説明された。一般に、特に断らない限り、第1の実施形態に対応する電極の構造は、逆電気極性ロータについても説明している。たとえば、内側電極及び外側電極用の材料、電極間の隙間(図5aにおける542)、及びz方向において磁場を生成するための磁石の構成は、同心電極原子炉について説明したものと同じであってもよい。しかしながら、以下で記載されるように、いくつかの実施形態は、異なる構造的構成及び/又は異なる材料(たとえば、内側電極の異なる材料)を使用する。
図5dは、逆電気極性ロータの交差選択を示す。内側電極に負電圧を印加して外側電極を接地するか、内側電極を接地して外側電極に正電位を印加するか、又は外側電極に印加される負電位よりも多くの負電位を内側電極に印加することにより、負のr方向に電場を印加することができる。内側電極及び/又は外側電極に電位を印加することによって電場が生成されると、環状空間540内の正荷電粒子が内側電極520に向かって引き寄せられる。正荷電粒子が内側に移動するとき、ローレンツ力が方位角的に粒子を加速させ、その結果、経路503に示される螺旋軌跡を発生させる。イオン-中性物結合にわたって、環状空間における中性物は、正荷電粒子と一緒に回転する。内側電極と外側電極との間の電位差により、内側電極上の余剰電子は、電極表面に近接した電子リッチ領域532を形成し、ローレンツ力により正荷電粒子と同じ方向に回転する。別の場所で説明するように、この電子リッチ領域は、融合の間のクーロン障壁を減少させ得る。いくつかの場合には、この電子リッチ領域は、内側電極の表面から約100um~約3mm伸びることができる。
いくつかの場合には、正荷電粒子が内側に移動すると、正荷電粒子が内側電極に接触したとき、又は正荷電粒子が電子リッチ領域で自由電子に遭遇したときに、荷電種の再結合が発生する。いくつかの場合には、正荷電粒子がラーマー(Larmor)半径502で内側電極の軌道の周りを移動できる。いくつかの実施形態では、正荷電粒子の濃度は径方向に変化してもよい。たとえば、外側電極の近くよりも、Larmor半径で環状空間を周回する正荷電粒子の濃度が高くなる。この荷電粒子の勾配により、環状空間内の速度分布が生じ、粒子が外壁近くでよりゆっくりと移動する傾向があり、ここで、遠心力により中性物の濃度が高くなり、中性物を駆動して運動させる正荷電粒子が少なくなる。
いくつかの実施形態では、内側電極は、タンタル、タングステン、銅、炭素、又は六ホウ化ランタンなどの単一の材料で構成されている。いくつかの場合には、内側電極は、電子放出及び/又はターゲット材料520bでコーティングされた導電性コア520aを有する。たとえば、内側電極は、六ホウ化ランタン、窒化ホウ素、又は別のホウ素含有材料で被覆された導電・耐熱性材料(タングステン)で製造されたコアを有してもよい。いくつかの場合には、内側電極の直径は約1cm~約3cmであり、いくつかの場合には、約4cm~約6cmである。いくつかの場合には、内側電極は、非常に小さい断面を有し、たとえば、フィラメント又はワイヤであってもよい。そのような実施形態では、内側電極は、約0.5mm未満、約0.1mm未満、又は約0.05mm未満の直径を有してもよい。いくつかの場合には、内側電極は、z方向に約3cm~約10cmの長さで延びていてもよい。いくつかの場合には、内側電極は、z方向に小さく、たとえば約3cm未満、又は約1cm未満であってもよい。いくつかの実施形態では、内側電極は、z方向に大幅に長く、たとえば約20cmより長くてもよい。いくつかの場合には、逆電気極性原子炉用のz方向の閉じ込め領域(内側電極及び外側電極が重なる長さ)は、内側電極及び/又は外側電極に電荷を印加する電源によって制限され得る。いくつかの場合には、z方向の長さは閉じ込め領域内のガス圧に依存する場合がある。いくつかの場合には、ガス圧力を非常に低い圧力まで下げてz方向の長さを長くすると、環状空間内でプラズマを生成するのに必要なパワーを減らすことができる。
図19aは、内側電極を能動的に冷却するいくつかの方法を示している。いくつかの場合には、内側電極1910は、通過する流体が熱を除去する内部経路1928を有する。たとえば、内側電極から熱を除去するために、内部経路を通して水を圧送することができる。いくつかの場合には、内側電極は、熱伝導性で電気絶縁性のセラミックブロック1923に接続されてもよい。セラミックブロックは、アルミナなどの材料で製造されてもよい。熱はセラミックブロックを通して放散され、それに接続されている内側電極の端から熱は除去される。いくつかの場合には、セラミックブロックには内側電極を支えるための開口部又は穴が含まれている。いくつかの場合には、止めネジを使用して内側電極をセラミックに固定する。いくつかの場合には、セラミックブロックを通して伝導される熱は、たとえば、セラミックブロックに接続された熱電発電機又は熱交換器を介して電力を生成するために使用される。
いくつかの場合には、ターゲット材料が消費されたり、電極が損傷したりすると、内側電極を交換されてもよい。たとえば、内側電極として使用されるホウ素被覆フィラメントは、ホウ素被覆が消費されたとき、又はフィラメントが破損したときに交換することができる。
特定の実施形態では、内側電極の長さは、環状空間を超えて延びている(外側電極のz方向の縁部によって限定される)。いくつかの場合には、内側電極の位置は、たとえばリニアアクチュエータを介してz方向に調整される。たとえば、内側電極がワイヤである場合、原子炉の運転中、内側電極の融解を防ぐために環状空間を通ってワイヤを引き出されるか、又は消費されているターゲット材料(たとえば、ホウ素コーティング)の部分を交換する。
いくつかの場合には、内側電極の幅はz方向に沿って変化し得る。図19bは、内側電極1920が外側電極1910を越えて延び、内側電極の延長部として作用し得るスリーブ1921によって所定の位置に保持される構成を示している。スリーブ1921は、銅、ステンレス鋼やタンタルなどの導電性材料で製造されてもよい。いくつかの場合には、スリーブを介して内側電極に電位を印加することができ、これにより、直径の小さい内側電極への抵抗加熱を減らすことができる。いくつかの場合には、スリーブの直径は、内側電極の直径よりもはるかに大きい。たとえば、スリーブの直径は、約10cmより大きくてもよく、内側電極の直径は、約0.5mmより小さくてもよい。いくつかの構成では、止めネジを使用して内側電極をスリーブに固定することができる。いくつかの実施形態では、スリーブはスリーブに直接ねじ込まれてもよい。これら及び他の付属機構により、スリーブ1921は、永久的であるが、内側電極1920は交換可能である。いくつかの場合には、スリーブをホウ素などのターゲット材料でコーティングしてもよい。いくつかの場合には、図19aで説明したように、スリーブを内部で冷却してもよい。
第1の実施形態の原子炉と同様に、内側電極と外側電極との間の隙間は、電源が閉じ込め領域でプラズマを生成する能力によって制限され得る。いくつかの場合には、外側電極は、第1の実施形態について説明した外側電極と構造が類似していてもよい。いくつかの場合には、外側電極は、外部絶縁層を有してもよい。たとえば、交番信号が原子炉の電極に印加される場合、又は逆電気極性原子炉が、互いに電気的に分離される必要がある追加の原子炉からなるモジュール化ユニットの一部である場合に、それは、有用である。一般に、内側電極及び外側電極の両方の支持構造は、原子炉のハウジングから電極を絶縁して電極間の交流電経路を防ぐ電気絶縁材料を含む。いくつかの場合には、外側電極は、石英管内に配置することにより円筒形に限定された金属シート(たとえば、銅シート)である。いくつかの場合には、外側電極は、絶縁構造内に配置された中実の管状構造である。別の実施形態では、電極は、石英管の内面を金属導電性コーティングでコーティングすることにより製造される。
他の場所で説明するように、少数のイオン又は正荷電粒子は、多くの中性粒子を回転駆動するのに十分である。外側電極に関連する閉じ込め壁により、中性物の濃度は径方向に増加する。ただし、回転する中性物は、径方向電場又は軸方向磁場の影響を受けない。外壁と他の粒子とのランダムな衝突により、中性物は電子リッチ領域に偏向され、いくつかの場合には、中性物は内側電極におけるターゲット材料に衝突して、融合イベントを引き起こすことがある。同様に、いくつかの場合には、正荷電粒子も内側電極に偏向して、融合反応(たとえば、プロトン-ホウ素11融合反応)を発生させることもできる。
いくつかの場合には、逆電気極性原子炉は定電圧で運転する。たとえば、原子炉の運転中に電極間の電位差を一定又はほぼ一定に維持するように、電圧源は、内側電極及び/又は外側電極に電位を印加してもよい。別の運転モードでは、逆電気極性原子炉は定電流で運転する。内側電極が小さく抵抗加熱により故障が生じやすい場合、定電流で運転することは有益である。いくつかの場合には、原子炉は最初に定電圧で運転し、その後、定電流運転モードに移行する。
いくつかの構成では、コンデンサやバッテリーなどのエネルギー貯蔵装置を使用して、内側電極及び/又は外側電極に電位を印加して、融合反応を開始させる。いくつかの場合には、回路がエネルギー貯蔵装置によって供給される電流及び/又は電圧を調整する。いくつかの場合には、エネルギーデバイス(たとえば、コンデンサ)を内側電極及び/又は外側電極に接続し、エネルギー貯蔵装置が融合反応をサポートするのに十分な強さの電場を生成できなくなるまで放電する。いくつかの場合には、原子炉は、融合反応により生成される電気エネルギーによって充電される追加のエネルギー貯蔵装置が設置され、また、第1のエネルギー貯蔵装置が放電する。次に、コントローラは、エネルギー貯蔵装置を充電モードと放電モードとの間で切り替えるスイッチを運転して、融合反応を維持できるようにする。
いくつかの場合には、電源は、内側電極及び/又は外側電極から切断され、電極間の電位差が融合反応を持続するのに十分ではなくなる前に、融合反応が引き続き所定期間(たとえば、約10秒間)発生する。電場が余りにも小すぎて融合を維持できない場合、電圧源又は電流源は再接続して内側電極に負電位を印加することができる。
逆極性原子炉の運転前に、環状空間内のガス圧は、約1気圧以上の圧力であってもよい。いくつかの場合には、たとえば、内側電極がz方向に長い場合、融合反応を開始させるために必要なパワーを減らすために、内側電極の圧力を低くしてもよい。いくつかの場合には、原子炉を運転する前に、環状空間内の圧力を約1Torr未満又は約10mTorr未満まで低下できる。いくつかの場合には、環状空間内の圧力は、融合反応の速度を制御するために、入口及び出口バルブを介して調整され得る。
逆電気極性原子炉の場合、閉じ込め領域の磁場は、約0.5テスラを超える場合があり、約1テスラを超える場合があり、約3テスラを超える場合もある。逆電気極性原子炉のいくつかの実施形態では、磁場は、内側電極と外側電極との間の電場に対してほぼ垂直ではない。いくつかの実施形態では、閉じ込め領域を通じて磁場は均一ではない。閉じ込め領域内の磁場は、磁石及び/又は電極の配置と向きを調整することで調整できる。いくつかの場合には、不均一な磁場により、イオン及び中性物が内側電極と衝突する速度が増加する場合がある。一般に、印加される磁場及び/又は電極に印加される電位は、原子炉の幾何学的形状、反応ガスの組成及び反応ガスの圧力に応じて変化し得る。
運転中、粒子(特に質量のより高い粒子)の濃度は、遠心力により外壁の近くでより大きくなる。これは、回転する反応物よりも質量の大きい融合生成物を環状空間から抽出するのに役立つ。たとえば、回転する水素種に係る融合反応によってα粒子が生成される場合、α粒子は外壁の近くに集中し、次に出口バルブを介して除去される。いくつかの場合には、融合生成物は、融合生成物が反応物として使用される別の原子炉に圧送されてもよい。たとえば、逆電気極性原子炉で生成されたα粒子又はヘリウム原子は、ヘリウム-ヘリウ融合反応をサポートするように構成された別の原子炉に移動できる。
逆場原子炉の実施形態
別の原子炉の実施形態は、図6a~dに関連して前に説明した逆場構成を有する。この構成では、ローレンツ型ロータを使用して、環状空間内の粒子の回転運動を付与及び維持する。一般に、本明細書で説明される原子炉の多くは、磁場と電場の向きが入れ替わっているにもかかわらず、逆場を印加するように再構成され得る。
第1の実施形態に関連して説明したような磁性材料で製造された永久磁石(616及び626)を使用して径方向磁場を印加することができる。いくつかの場合には、永久磁石は、径方向に向けられた軸を有する複数の方位角的にオフセットされた電磁石で置き換えられ、それによって、ほぼr方向に向けられた磁場が環状空間全体に印加される。いくつかの場合には、閉じ込め壁の表面は、磁性材料を保護する1つ又は複数の層を含み得る。たとえば、アルミニウム又はタンタル層は、外側磁石又は内側磁石を保護できる。いくつかの場合には、保護層には、融合反応物又は電子エミッタを含むターゲット材料が含まれ得る。いくつかの場合には、閉じ込め壁には、材料を融点以下に保ち、磁石の消磁を防ぐことができる内部冷却システムがある。
同心電極の実施形態では、内側電極と外側電極との間の隙間は、環状空間内のガスを電離するために利用可能なパワーによって時々制約される。同様に、逆場構成では、電極660a及び660bを分離するz方向での閉じ込め領域が制約される場合がある。たとえば、いくつかの場合には、電極間の間隔は約1mm~約50cmの範囲であり、いくつかの場合には、電極間の間隔は約5cm~約20cmの範囲である。
同心電極の実施形態では、z方向の環状空間の長さは、永久磁石の強度によって制限される場合がある。同様に、逆場構成では、r方向の隙間は、閉じ込め壁の表面近くに強い磁場を発生させることによって制限される場合がある。いくつかの場合には、径方向の隙間は、たとえば、約10cm以下、又は約5cm以下に制限されてもよい。いくつかの場合には、磁石616自体が閉じ込め表面の近くに十分に強い磁場を提供するとき、隙間はより大きくなり得、たとえば、いくつかの場合には、隙間は約10cmより大きくなる。いくつかの場合には、内側磁石は必要ではない。
波動粒子原子炉の実施例
波動粒子の実施例とも呼ばれる代替の原子炉構成は、前文に簡単に説明されており、図7a及び図7bに示されている。波動粒子の実施例では、荷電粒子は、静電場を振動させることにより回転させられる。中性種は荷電粒子によって押し進められる。閉じ込め壁、内壁又は閉じ込め領域と連通する別の構造にある方位角的に離間された電極に電荷を印加することによって電場を発生させる。この実施形態は、磁場を必要としないため、磁石を使用することによる構造的な制限は適用されない。たとえば、原子炉の半径は、環状又はディスク状磁石で実現可能な半径よりも大きくてもよい。さらに、この実施形態は、内側電極と外側電極との間の電流の流れを必要としないため、同心電極による構造的な制限は適用されない。波動粒子設計のいくつかの実施形態では、閉じ込め壁の半径は、約2mより大きく、いくつかの設計では、約10mより大きく、いくつかの場合には約50mより大きくてもよい。ローレンツ型ロータのいくつかの実装とは逆に、z方向の原子炉の長さは、時々同心電極の実施形態の場合のように、永久磁石の強度によって制限されない。いくつかの実施形態では、閉じ込め領域(たとえば、環状領域)のz方向の長さは、約1mより大きく、いくつかの場合には約10mより大きく、いくつかの場合には約100mより大きい。一実施形態では、閉じ込め壁がトーラス又はトーラス状の形状を形成するように、原子炉はz方向に曲率がある。一般に、原子炉の寸法制限は、原子炉のエネルギー需要と生産に関連するコストに左右される。波動粒子の実施形態では、閉じ込め領域に影響を与える方位角的にオフセットされた電極の数と寸法を制限することにより、回転種に対する制御の程度を設定することができる。閉じ込め壁に沿った比較的多数の電極により、電場線をより細かく変調することが可能になり、電場を使用して荷電粒子を移動させる効率を改善できる。いくつかの場合には、これは、動的に変化する電場が粒子を主に径方向ではなく方位角方向に駆動するためである。一般に、原子炉には、方位角的に離間された電極が少なくとも3つある。方位角的に離間された電極を少なくとも5つ有する原子炉も、約50を超える方位角的に離間された電極を有する原子炉もある。いくつかの場合には、電極の数は原子炉の寸法に比例する。たとえば、半径約1mの原子炉は、閉じ込め壁に沿って方位角的に離間された電極を約20~約40個有し、半径約2mの原子炉は、方位角的に離間された電極を約40~約80個有する。いくつかの場合には、方位角方向に離間された内側電極又は外側電極の数に対する原子炉の円周(m単位)の比は約3~約150であり、いくつかの場合には約20~100である。
いくつかの場合には、電極は、電気絶縁材料(たとえば、窒化アルミニウム又は窒化ホウ素)によって分離される。絶縁材料は、絶縁破壊しないように十分に厚くすることができる。最小厚さは、絶縁材料の絶縁耐力と電極に印加される電圧によって決まる。いくつかの場合には、電気絶縁材料には、ターゲット材料(ホウ素-11などの融合反応物)及び/又は電子エミッタが含まれる。
いくつかの場合には、方位角方向の電極の幅は、約10cm未満、いくつかの場合には約5cm未満、そしていくつかの場合には約2cm未満である。電極は、様々な形状のいずれでもよい。たとえば、円形又は多角形の場合がある。いくつかの場合には、長方形である。いくつかの実施形態では、原子炉は、閉じ込め壁に沿ってのみ方位角的に離間された電極を利用する。あるいは、いくつかの実施形態では、原子炉は、内壁のみに沿う電極、又は閉じ込め領域をz方向に制限する電極のみを利用する(たとえば、電極配置は、図6cに示される逆場の実施形態の電極660a及び660bに対応する)。電極自体が閉じ込め壁を限定しない場合、閉じ込め壁の表面は、別の材料(たとえば、ターゲット材料)又は電子エミッタなどで製造されてもよい。たとえば、電極は、六ホウ化ランタンで製造されるクーポンを含むスリーブによって閉じ込め領域から分離されてもよい。
いくつかの場合には、閉じ込め壁は、熱交換器(たとえば、冷却ジャケット)などの熱管理部材を有するように構成される。熱交換器は、電極の過熱を防止すること、及び/又は電気又は熱エネルギーを生成するために熱エンジンに加熱された流体を供給することに使用できる。いくつかの場合には、水などの流体を閉じ込め壁の通路に通すことにより、原子炉から熱を放散できる。たとえば、方位角的に離間された電極を離間させる絶縁材料は、流体が通過する内部通路を有してもよい。
同心電極の実施形態では、閉じ込め領域内のガスを電離するのに利用可能なパワーが制限されているため、内側電極と外側電極との間の隙間が制約されることがある。波動粒子の構成では、隣接して配置された電気的に離間された電極間の隙間も制限される。たとえば、いくつかの場合には、電極間の間隔は平均で約1mm~約50cmの範囲であり、いくつかの場合には、電極間の間隔は平均で約5cm~約20cmの範囲である。
いくつかの場合には、波動粒子原子炉には、複数の運転モードがある。たとえば、プラズマを開始又はストライクさせるために第1のフェーズが採用され、回転方向にイオン(及び間接的に中性物)を駆動するために後のフェーズが使用される場合がある。たとえば、RF電場を内側電極と外側電極との間に径方向に印加して、弱電離プラズマを生成し、運転用の原子炉を準備することができる。内側電極と外側電極との間にプラズマが生成されると、原子炉は、方位角的に分布している電極に駆動信号が順次印加され、荷電粒子と中性物を回転駆動するモードに移行する。
イオン及び中性物を回転駆動するために方位角的に分布した電極に印加される振動信号は、原子炉の構成及び所望の回転速度に基づいて、選択された広範囲の周波数にわたって提供され得る。たとえば、駆動信号は、約60kHz~1THzの範囲の周波数で、いくつかの場合には約60kHz~1GHzの範囲の周波数で印加されてもよい。いくつかの場合には、駆動信号の周波数が開始時低いであり、その後徐々に又は突然に増加することがある。たとえば、駆動信号は、比較的低い周波数、たとえば60kHzで開始し、最終的に、はるかに高い周波数、たとえば100Mhzまでランプアップすることがある。
いくつかの場合には、駆動信号は、制御された電圧を使用して電荷を印加する。電極間のアーク放電を回避するために、低電圧での高電流ではなく、高電圧及び低電流で電荷が印加されるのが好適である。いくつかの場合には、駆動信号は、約1kV~約100kV方位角的に離間された電極に印加される。いくつかの場合には、駆動信号は、100kVを超える電圧を電極に印加できる。
静電力を使用して、波動粒子の実施形態は、類似した原子炉構成(たとえば、類似した閉じ込め半径)を有するローレンツ駆動型原子炉で通常見られる回転速度を超える回転速度を誘導し得る。いくつかの場合には、静電駆動型原子炉は、少なくとも約1000RPS、又はいくつかの場合には少なくとも約100,000RPSの速度でガス種を回転駆動し得る。波動粒子の実施形態では、制御システムは、どのように電荷を電極に印加するかを指示すことに使用される。いくつかの場合には、制御システムは、高速カメラ又は別のセンサを使用して決定された検出速度をフィードバックとして、電極に印加される電荷シーケンスを調整する。一般に、方位角的に離間された電極は、類似した構造上の考慮事項を有し、磁場を使用する上記の実施形態に関して説明されたものと類似した材料で製造されてもよい。
ハイブリッド原子炉の実施形態
図6a~図6fは、ハイブリッド原子炉構成と呼ばれる別の一般的な原子炉構成を簡単に説明する。この構成では、ローレンツ型ロータと波動粒子ドライバーの両方を使用して、環状空間内の粒子の回転運動を付与及び維持する。ハイブリッド原子炉でローレンツ型ロータを運転する場合、逆場の実施形態の上記説明のいくつかの態様が適用され得る。同様に、ハイブリッド原子炉の方位角的に離間された電極を使用して運転する場合、波動粒子の実施形態の上記説明のいくつかの態様が適用され得る。
逆場の実施形態のように、第1の実施形態に関連して説明したような磁性材料で製造された永久磁石(616及び626)を使用して径方向磁場を印加することができる。いくつかの場合には、永久磁石は、径方向に向けられた軸を有する複数の方位角的にオフセットされた電磁石で置き換えられ、それによって、ほぼr方向に向けられた磁場が閉じ込め領域全体に印加される。いくつかの場合には、閉じ込め壁の表面は、磁性材料を保護する1つ又は複数の層を含み得る。たとえば、アルミニウム又はタンタル層は、外側磁石又は内側磁石を保護する。いくつかの場合には、保護層には、融合反応物又は電子エミッタを含むターゲット材料が含まれ得る。いくつかの場合には、閉じ込め壁には、材料を融点以下に保ち、磁石の消磁を防ぐことができる内部冷却システムがある。
同心電極の実施形態では、内側電極と外側電極との間の隙間は、環状空間内のガスを電離するために利用可能なパワーによって時々制約される。同様に、ハイブリッド原子炉構成では、電極660a及び660bを分離するz方向での閉じ込め領域又は環状空間が制約される場合がある。たとえば、いくつかの場合には、電極間の間隔は約1mm~約50cmの範囲であり、いくつかの場合には、電極間の間隔は約5cm~約20cmの範囲である。
同心電極の実施形態では、z方向の環状空間の長さは、永久磁石の強度によって制限される場合がある。同様に、ハイブリッド構成では、r方向の隙間は、閉じ込め壁の表面近くに強い磁場を発生させることによって制限される場合がある。いくつかの場合には、径方向の隙間は、たとえば、約10cm以下、又は約5cm以下に制限されてもよい。いくつかの場合には、磁石616自体が閉じ込め表面の近くに十分に強い磁場を提供するとき、隙間はより大きくなり得、たとえば、いくつかの場合には、隙間は約10cmより大きくなる。いくつかの場合には、内側磁石は必要ではない。
ハイブリッド実施形態では、制御システムは、どのように制御信号を方位角的に離間された電極に印加するかを指示すことに使用される。いくつかの場合には、制御システムは、センサからフィードバックを受信して、電極に印加される電荷シーケンスを調整し得る。一般に、電極(660a及び660b)は、類似した構造上の考慮事項を有し、第1の実施形態の電極に適していると説明された材料で製造されてもよい。
いくつかの構成では、ハイブリッド原子炉は、融合反応を実行するとき又は融合反応を実行する直前に運転モード間で切り替えるように構成されている。たとえば、原子炉は、粒子の回転を維持するために、最初にローレンツ型ロータを使用して運転し、次に波動粒子ドライバーに移行し得る。特定の条件では、ローレンツ力により駆動されるロータは、環状空間で粒子の回転を開始するのにより効率的である。環状空間内の粒子が、ローレンツ型ロータを使用する利点が見られなくなった原子炉内の臨界回転状態に達すると、原子炉は、波動粒子駆動モードに切り替わる。いくつかの場合には、波動粒子駆動モードに移行することで、粒子速度を上げ、エネルギー生成を高めることができる。いくつかの場合には、波動粒子駆動モードに移行することで、方位角的に分布している電極(660a及び660b)に印加される駆動信号のシーケンスを調整することにより、エネルギー生成をより正確に調整できる。電磁石を使用して電場を生成するいくつかの実施形態では、原子炉が波動粒子モード運転に入ると、磁場を制御するための電流供給を終了できる。これは、ローレンツ力がz方向において荷電粒子に作用することを防止できる。
電子エミッタ
本明細書の他の場所で説明するように、閉じ込め壁は、少なくとも一部的に、本明細書で電子エミッタと呼ばれる電子放出材料で製造されることがある。これらの材料は、特定の温度以上で熱電子放出を介して電子を放出する。たとえば、いくつかのホウ素系電子エミッタは、約1500K~約2500Kの範囲の放出温度を有する。いくつかの場合には、電子エミッタは、粉末の形態であってもよく、圧縮、焼結又は他の方式で環状空間内に配置するのに適した形に変換される。いくつかの場合には、物理的蒸着を使用して原子炉の閉じ込め壁に電子放出材料を焼結又は堆積させることができる。他の場合では、電子エミッタは、閉じ込め壁の一部を形成するか又は閉じ込め壁に取り付けられる連続構造に鍛造されてもよい。
いくつかの電子エミッタは、仕事関数が低い材料であり、原子炉内で熱及びその他の環境条件にさらされたときに劣化しにくい。電子エミッタの例には、酸化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化カルシウム、アルミナ、酸化トリウム、六ホウ化ランタン、六ホウ化セリウム、六ホウ化カルシウム、六ホウ化ストロンチウム、六ホウ化バリウム、六ホウ化イットリウム、六ホウ化ガドリニウム、六ホウ化サマリウム及び六ホウ化トリウムなどの酸化物及びホウ化物が含まれる。いくつかの場合には、エミッタは、たとえば、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化タンタル及び二ホウ化ハフニウムなど、遷移金属の炭化物及びホウ化物であってもよい。いくつかの場合には、エミッタは、Li、15N、He及びD(重水素)などの融合反応反応物として用いられ得る。いくつかの場合には、電子エミッタは、融合反応物を含む化合物であり得る。たとえば、六ホウ化ランタンは、電子エミッタ及びプロトン-11B融合用のターゲット材料の両方として用いられ得る。いくつかの場合には、融合反応生成物が電子エミッタとして用いられ得る。いくつかの場合には、電子エミッタは、2つ以上の材料の複合体であり得、少なくとも1つの材料は、仕事関数が低く、運転中に電子を放出する。
いくつかの場合には、電子エミッタは、原子炉の閉じ込め壁に固体部材として取り付けられる。いくつかの実施形態では、電子エミッタ(クーポンの形態で提供され得る)は、薄い又は平坦な構造を有し、環状空間に著しく突出することなく閉じ込め壁に取り付けられる。図20aは、電子エミッタのいくつかの例示的な断面を示している。いくつかの実施形態では、これらの電子エミッタは、クリップ又はネジなどの機械的留め具によって閉じ込め壁の表面に取り付けられてもよい。いくつかの場合には、電子エミッタは、閉じ込め壁内のスロットに滑り込むように構成され、少なくとも部分的に摩擦力によって保持して固定される。たとえば、スロットには、電子エミッタを保持するための溝又はクランプ機構がある。いくつかの場合には、熱、接着剤又は別の結合プロセスを使用して、エミッタを閉じ込め壁に取り付ける。いくつかの場合には、エミッタの構造の厚さは約1.2cm未満、いくつかの場合には約6mm未満、いくつかの場合には約3mm未満である。方位角方向又はz方向の電子エミッタの寸法は、原子炉の物理的寸法によって制限され得る。図20bは、電子エミッタ2036が閉じ込め壁2010の表面に沿って対称的に分布され得るいくつかの構成を示すが、いくつかの構成では、電子エミッタは少数の選択領域のみに配置されてもよい。
特定の実施形態では、エミッタが閉じ込め壁の表面に配置される場合、それらは、原子炉の運転に固有の摩擦熱及び/又はプラズマ熱によって加熱される。いくつかの場合には、電子エミッタも別の方法で加熱して、電子放出の速度を上げることもある。たとえば、原子炉の初期運転中に、原子炉がまだ比較的冷たいときに、別の方法で電子エミッタを加熱し、それによって電子放出を増加させる。いくつかの場合には、電子エミッタに印加されるエネルギー(たとえば、ジュール加熱により)を制御することにより、電子放出の速度及び融合反応の速度を制御できる。
いくつかの実施形態では、電源によって提供される電力を使用して閉じ込め壁における電子エミッタにエネルギーを提供する。たとえば、電流が電子放出材料内のフィラメントを通過することによって、ジュール加熱を提供し、電子放出を増加させることができる。いくつかの場合には、フィラメントはタングステンなどの高融点金属である。閉じ込め壁が電気的に接地される場合、電子エミッタは、電気絶縁材料によって閉じ込め壁から離間されてもよい。いくつかの場合には、フィラメントに直流(DC)が印加され得る。いくつかの場合には、電子エミッタと接触しているフィラメントに、たとえばRF又はマイクロ波信号を介して交流(AC)を印加することにより、電子放出がさらに改善又は制御される。
図21a~bは、同心電極を有する原子炉において電子放出を制御するためにジュール加熱が使用される例を示している。図21aは、内側電極2120、閉じ込め領域(たとえば、環状空間)2140によって内側電極から離間された外側電極2110、及び電源2135によって電力が供給され閉じ込め壁2112に沿って配置された電子放出モジュール2136を有する原子炉のz方向の図を提供する。図21bは、閉じ込め壁に位置する電子放出モジュールの拡大図を提供する。電子放出モジュールは、フィラメント2134によって加熱される六ホウ化ランタンなどの電子エミッタ材料2130を含む。いくつかの場合には、モジュールは、電極及び/又は閉じ込め壁との電気絶縁及び/又は断熱を提供する絶縁層2137及び2138を含んでもよい。いくつかの場合には、1つの層(2137又は2138)は、電気絶縁に使用され、もう1つの層は、断熱に使用される。これらの絶縁層は、ジルコニア、アルミナ、窒化亜鉛やマグネシアなどのセラミック材料で製造されてもよい。いくつかの実施形態では、電子放出モジュールの位置は、原子炉の運転中に調整することができる。たとえば、モジュールは、たとえばアクチュエータを使用して閉じ込め領域に径方向内側に移動して、回転種の摩擦加熱によって引き起こされる電子放出を増加させるか、閉じ込め領域から径方向外側に移動して、放出される電子を制限することができる。
いくつかの実施形態では、電子エミッタは、改善された電場電子放出のために、一端に鋭い点又は円錐形の構造を有してもよい。たとえば、電子エミッタに電位が供給されると、幾何学的形状が狭くなる結果、点の近くで強い電場が発生し、場電子放出がその点の位置に集中する。
いくつかの実施形態では、1つ又は複数のレーザを使用して、エミッタからの電子放出を増加するか、又はほかの方式で制御する。図22に示すように、原子炉2200は、閉じ込め領域2240内の光を電子エミッタ2230にガイドするように、レーザ2231を有するように構成されてもよい。図示のように、レーザからの光は、絶縁光ファイバ2239を介して内側電極2220を通して又はそれに沿って光学的にガイドされ得る。レーザは、熱電子放出に使用されるエミッタに向けることができるが、光電効果を示す閉じ込め壁上のチタンなどの他の材料に向けることもできる。たとえば、衝突する光子が電流によって中和されず、電子放出を増加させ得る電荷の不均衡を作り出す場合、金属と導体は光電効果を示す。図22は、逆電気極性の実施形態では、電子放出を増大させるために、レーザを内側の負荷電電極にガイドすることができる第1の実施形態を示している。
ガス供給システム
原子炉は、融合反応物を導入し融合生成物を除去するための1つ又は複数のガスバルブを有してもよい。いくつかの場合には、標準化されたガスバルブが使用される。たとえば、低圧堆積及びエッチングチャンバに使用されるガスバルブは、原子炉に適できる。いくつかの場合には、ガス反応物が内部の場所で閉じ込め領域に放出され、たとえば、反応種は経路に従って内側電極を通過できる。いくつかの場合には、ガスバルブは、z方向において閉じ込め領域の一端又はの環状空間に配置でき、また、他の場合、閉じ込め壁内にあるバルブを介してガス反応種を閉じ込め領域に導入する。融合生成物用の出口バルブは、入口バルブと類似した場所に配置できる。融合生成物が原子炉の運転中に除去される場合、出口バルブは、閉じ込め壁又は閉じ込め壁に隣接する位置に配置され得るが、z方向で閉じ込め領域からオフセットされる。いくつかの場合には、接地して短絡を引き起こすことを防止するために、入口バルブと出口バルブは電極から電気的に絶縁する必要がある。
入口バルブ及び出口バルブには、原子炉へのガス種の搬入及び搬出の便利さから、真空又はポンプシステムを有してもよい。いくつかの場合には、バルブには、原子炉に追加又は原子炉から除去されるガスの量を制御する流量計が含まれ得る。いくつかの場合には、流量計を原子炉の制御システムに接続して、チャンバ内に入れる水素又は反応種の量を制限することができる。いくつかの場合には、ガス入口は閉じ込め領域の近くに中性物を導入し、ガス出口は原子炉のz方向で融合が発生している場所を超えて移動した中性物を除去する。いくつかの場合には、融合生成物(α粒子など)の運動エネルギーを電気エネルギーに変換する効率を低下させる可能性のある中性物を除去するために、原子炉のz方向に沿った中性物の分布を制御するポンプシステムが使用される。
検討された実施形態は、ガス種を説明しているが、他の実施形態では、融合反応物が液体の形で閉じ込め領域に導入される。いくつかの場合には、閉じ込め領域をガスの形態の融合反応物で満たすのではなく、閉じ込め領域を液体燃料で満たすか、部分的に満たす。たとえば、液体水素、アンモニア、ブタン又はメタンなどのアルカン、及び液体水素化物などの利用可能な又は容易に放出可能な水素含有液体を、ガス水素の代わりに使用することができる。いくつかの場合には、液体燃料は、チャンバに入った直後に蒸発するように提供される。いくつかの場合には、液体燃料を原子炉に追加して、原子炉内の圧力を制御する。たとえば、温度差と閉じ込め領域の既知の体積を使用することにより、理想的なガスの法則を使用して、閉じ込め領域内の圧力を逆算することができる。いくつかの場合には、原子炉内のガス反応物の圧力を注意深く監視して、原子炉の構造の完全性を損なわずに中性物の密度を高く保持できる。
原子炉がローレンツ型ロータである場合、液体燃料は、十分な量で、又は閉じ込め領域に入ったときに液体がすぐに蒸発しないように熱条件下で追加される。そのような場合、電極間に電位を印加することにより、液体燃料に電流を流すことができる。いくつかの場合には、液体は、カリウムなどの荷電粒子が接種される(seeded with)。磁場が存在する場合、ローレンツ力が液体燃料の荷電成分と中性成分を回転駆動する。回転柱の運動エネルギーが増加するに伴い、閉じ込め壁に沿った境界層近くの液体が蒸発し、水素ガス又は閉じ込め壁においてターゲット材料と融合可能な別の反応ガスが放出される。たとえば、水素ガスが液体燃料から放出され、且つ閉じ込め壁が六ホウ化ランタンを含む場合、プロトン-11B融合が発生し得る。いくつかの場合には、回転する液体と閉じ込め壁との間に発達するガス層は、液体-壁の界面による抗力を減らすことにより閉じ込め領域内の液体をさらに速く回転させるスリップ層を形成できる。いくつかの場合には、液体は、熱を吸収し、電極が溶ける懸念を低下させ得る。ガスと比較して、液体が融合反応物の高密度を有するため、液体は長期間交換することなく使用できる。液体燃料を使用する実施形態に限定されないが、いくつかの場合には、原子炉は、圧力が閾値を超えると、原子炉からガスを放出するための安全バルブを有してもよい。輸送用途などの場合には、融合反応物は液体の形で保管され、液体として原子炉に配送されるか、配送前に気化される。融合反応物を液体の形で保管することにより、燃料の供給を小さくコンパクトにできる。
いくつかの場合には、液体燃料が加圧タンクによって原子炉に供給され得る。いくつかの場合には、融合反応物(たとえば、水素)は、原子炉に供給される小さなカプセルに含まれていてもよい。たとえば、水素は、ガラスカプセルに貯蔵されて、閉じ込め壁のポートを介して原子炉に供給されてもよい。いくつかの場合には、水素は、加圧された形で(たとえば、数気圧の圧力で)供給され、いくつかの場合には、水素は、液体の形で供給され得る。原子炉がすでに運転している場合、原子炉内の温度がカプセル容器の材料を溶かし、すぐに又は遅延した時間(たとえば、数分)にわたって燃料を放出できる。いくつかの場合には、原子炉が冷えて運転していない場合など、レーザ(たとえば、図22参照)を燃料カプセルにガイドして、カプセル材料を破壊し、反応物又は燃料を放出することができる。自動車用途などの場合、反応物を安全に保管するために必要なハードウェア(加圧タンクなど)を削減又は排除することで、水素などの融合反応物をカプセルに少量保管するときの利便性が向上する。
いくつかの場合には、水素などの融合反応物を固体化合物として原子炉に導入してもよい。たとえば、水素燃料が原子炉で消費されると、閉じ込め壁のポートを介してポリエチレン又はポリプロピレン製のポリマー燃料ペレットを原子炉に供給できる。原子炉内に入ると、原子炉の運転又はレーザ(たとえば、図22に示すレーザ)のエネルギーによって引き起こされる高温は、ポリマーを分解し、水素ガスを放出するのに十分である。いくつかの実施形態では、アンモニアボラン(ボラザンとしても知られている)を水素燃料として使用してもよい。原子炉が約100℃より高い温度に達すると、アンモニアボランは分子状水素とガス状ホウ素-窒素化合物を放出する。いくつかの場合には、アンモニアボランまたはホウ素-窒素化合物は電子エミッタとして機能し、いくつかの場合には、アンモニアボランからのホウ素原子が原子炉の運転中に水素原子と融合反応することがある。多くの用途(たとえば、自動車用途)では、ガス燃料又は液体燃料を安全に保管するために必要なハードウェアを削減又は排除することにより、固体燃料の利便性を高めることができる。
冷却システム
いくつかの場合には、原子炉の持続的な運転を可能にするために、原子炉を冷却して、電極、磁石及び/又は他の部材が過熱するを防ぐ必要がある。いくつかの実施形態では、原子炉は、液体浴に完全に浸出することにより冷却され得る。いくつかの実施形態では、原子炉は、伝導を介して原子炉から熱を取り除き、空気又は液体冷却剤などの流体媒体に伝達するヒートシンクを含む。一例として、熱交換器が使用されてもよい。ファン又はポンプは、流速を制御することができ、流体媒体に伝達される熱を運び去ることに寄与できる。原子炉内で監視された温度に応じて、層流と乱流の間で流体の流れが調整されるように、流体の速度を調整できる。いくつかの実施形態では、流体は、原子炉の外側の冷却ジャケットを通過し、いくつかの場合には、冷却管を使用して原子炉内の部材を冷却してもよい。本明細書の他の場所で説明するように、ヒートシンクは、熱エンジンが電気エネルギーを生成するための作動流体に熱を伝達することに用いられる。原子炉を冷却するための作動流体として使用できる液体の例には、水、液体鉛、液体ナトリウム、液体ビスマス、溶融塩、溶融金属、及び一部のアルコール、炭化水素、ハロカーボンを含むさまざまな有機化合物が含まれる。
電源
原子炉には、電極、電磁石及び原子炉を運転するのに必要なその他の電気部材に電流を供給するための1つ又は電源が含まれてもよい。電源は、2つの端子(たとえば、同心電極)間の電流及び/又は電圧を制御できる。いくつかの実施形態では、電源は、約200V~約1000Vの最大電圧を供給することができる。たとえば、いくつかの実施形態では、電源は電極に最大600Vを供給することができる。いくつかの実施形態では、小型原子炉は、約0.1A~約100Aの電流を提供することができ、及び/又は少なくとも約1kWのパワーを供給することができる。いくつかの中型実施形態では、原子炉は、約1A~約1kAの電流を提供することができ、及び/又は少なくとも約5kWのパワーを供給することができる。いくつかの大型実施形態では、原子炉は、約1A~約10kAの電流を提供することができ、及び/又は少なくとも数百kWのパワーを供給することができる。
原子炉の運転モードに応じて、電源は、直流又は交流を提供できる。いくつかの実施形態では、プラズマにストライクするために電極に交流電流が印加される。いくつかの場合には、閉じ込め領域でプラズマにストライクするために必要な電圧は、直流をプラズマのストライクするに使用する場合と比較して、約10%以上減少し得る。プラズマにストライクするためにAC信号が使用される場合、電源は、約1kHzを超える周波数、又はいくつかの場合には約1Mhzを超える周波数で交流電流又は電圧信号を供給できる。
一部の構成では、たとえば、電磁石を使用して軸方向磁場を提供する場合は、電磁石と電極の両方に交流電流を印加することができる。いくつかの場合には、電極及び同じ周波数であるが位相がずれている電磁石に交番信号が印加され得る。いくつかの場合には、電源は、約500Hzより大きく、又は約1kHzより大きい電流又は電圧信号を電極又は電磁石に印加することができる。いくつかの場合には、粒子の回転を維持できるように、電磁石は、交流電流が電極に印加される周波数と同じ周波数として運転する。いくつかの場合には、市販品として入手できる電源は、電流又は電圧信号を原子炉又は電磁石の電極に印加することができる。適切な電源のベンダーの例には、Advanced Energy Industries及びTDK-Lambda American Inc.が含まれる。
センサ
原子炉を運転する場合、エネルギー出力の速度を制御し、効率を改善し、部材の故障を防ぐなどのために、さまざまなパラメータを監視することができる。たとえば、原子炉の温度を監視して、原子炉の部材が限定された最大温度値を超えないことを保証できる。永久磁石が熱くなりすぎると、消磁することができ、電極又は他の部材が熱くなりすぎると、降伏(yield)又は融解することができる。いくつかの場合には、原子炉の運転には比較的高い温度が必要である。たとえば、一部の電子エミッタは、電子が閉じ込め領域に放出される前に十分な熱エネルギーを取得する必要がある。原子炉内の温度は、熱電対、推断画像形成(inferred imagery)やサーミスターなどのセンサを使用して監視できる。いくつかの場合には、原子炉内のほかの位置の温度を測定することにより、原子炉内の特定の温度を推断することができる。たとえば、外側電極の内面の温度は、外側電極の外面の温度を監視することにより推断され得る。いくつかの場合には、外部の位置から間接的に温度を測定することにより、シリコンバンド隙間温度センサなどの低コストの温度センサを使用できる。
いくつかの実施形態では、原子炉内のガス圧を監視することができる。電子エミッタの前の圧力を監視することにより、閉じ込め壁に強く押し付けられたため、電子密度についての情報が得られ得る。コントローラでチャンバ内の圧力の測定によって、閉じ込め領域に出入りするガス種の流速を調整できる。いくつかの実施形態では、閉じ込め領域又は環状空間内の回転速度は、毎秒数百又は数千の画像を捕捉するカメラを使用して監視することができる。いくつかの場合には、蛍光を発するか検出可能な光学的特徴(たとえば、アルゴンや量子ドット)を有する種を導入することで、原子炉内の種の回転を測定することができる。いくつかの実施形態では、閉じ込め領域におけるス組成は、融合生成物(たとえば、He及びHe)又は反応物ガスにおける少量の重水素について監視することができる。いくつかの実施形態では、融合生成物及び反応物の検出は、インサイチュ質量分析計(たとえば、ガス試料中の少量の重水素を検出できるHiden Analytical製qRGA)、光学分光計又はNMRセンサを使用して実行され得る。いくつかの実施形態では、原子炉は、放射線のレベルを検出するためのGeigerカウンターを備えていてもよい。
図23a~cは、同心電極の実施形態では、核磁気共鳴検知を使用してガス反応物の組成をどのように決定するかの例を示している。図23aは、内側電極2320、外側電極2310、及び閉じ込め領域を通過するz方向2391においてほぼ均一かつ時変しない磁場2391を有する原子炉を示す。軸方向に印加される磁場は、回転種の核スピンに合わせることに使用されてもよく、本明細書の他の場所で説明する超伝導磁石によって印加されてもよい。いくつかの場合には、軸方向磁場は約0.1テスラより大きく、いくつかの場合には、軸方向磁場は約0.5テスラより大きく、いくつかの場合には、閉じ込め領域を通る軸方向磁場は約2テスラより大きい。
検出が必要な場合、閉じ込め領域における回転種の核スピンは、方位角方向にRFパルスを印加することにより摂動する。図23bは、内側電極のz方向に交流電流を印加することにより、方位角的に時変する磁場2392をどのように生成するかを示している。いくつかの実施形態では、中心電極を通過する交流電流の周波数は、約60Hz~約1MHzであり、いくつかの場合には約1MHz~約1GHzである。種の配列を時変磁場で摂動させた後、種の原子核スピンが再配列される速度は、図23cに示されるような検出コイルを使用して監視される。検出コイル2390は、原子炉の長軸(z軸)にほぼ垂直であり、回転種によって吸収して再放出された電磁放射によりコイルを通過する電流を監視する。いくつかの場合には、医療用NMRシステムで使用されるものと同様の検出コイルを使用できる。
制御システム
監視されたパラメータは、システム部材の完全性を維持し、融合をサポートする方式で原子炉を運転する制御システムへの入力として提供され得る。制御システムは、融合反応のすべてのパラメータのいずれかも制御でき、いくつかの場合には、熱エネルギーの収集又は利用プロセス、及び電気エネルギー又は他の有用なエネルギーへの変換などの他の運転を制御する。特定の実施形態では、制御システムは、熱発生と熱抽出との間のバランスを維持する。したがって、たとえば、この所定の予め選択されたバランスを維持するために、制御システムは、原子炉内の電極に印加される電気エネルギーの印加を制御したり(たとえば、各パルス間の時間を延長又は短縮する及び/又はプラズマを生成するための電圧を変更するなど、電気パルスを変調することにより)、磁場を変更したり(たとえば、調整可能な磁石と超伝導磁石との組み合わせにより)、反応物の密度を変更したりすることがする。
本明細書の他の場所で説明するように、これらの条件の両方が満たされるように、いくつかのパラメータは限定されたプロセスウィンドウ内に入る必要がある。いくつかの場合には、制御システムは、エネルギー需要を識別する情報を受け取り、それに応じてプロセス条件を調整する。制御システムには、原子炉又は近くのオペレータへの損傷を防ぐために、自動シャットダウンプロセスを開始する基準がある。たとえば、閉じ込め壁の温度が特定のしきい値を超えた場合、又は放射のしきい値に達した場合、原子炉は融合反応をクエンチさせることができる。制御システムは、たとえば、すべての電極を接地し、ガス入力バルブを閉じ及び/又は不活性ガス種(たとえば、窒素)を導入することにより、原子炉をクエンチさせてもよい。
いくつかの場合には、制御システムは、たとえば図24に示すように閉ループフィードバックを提供してもよい。センサ2460からの測定入力パラメータ及び所望のエネルギー出力信号2461に基づいて、制御システム2462は、制御信号2463を送信して、必要に応じて原子炉2464の様々なパラメータ設定を調整し、エネルギー出力2465を制御するか、他の仕様を満たすことができる。コントローラが使用する入力パラメータには、温度、圧力、流量、ガス組成画分(たとえば、分圧)、粒子速度、電極間の電流放電や電圧などのパラメータが含まれる。いくつかの場合には、制御システムは、1つ又は複数のパラメータの履歴データを利用する。たとえば、特定の温度値を知ることが重要であるが、温度が変動する速度及び/又は幅を把握することも重要なことである。コントローラにより調整できる原子炉設定の例には、印加電流、印加電圧、印加磁場強度(電磁石の場合)及びガス流速(たとえば、水素流速)が含まれる。通常、コントローラは、関連する設定を行う原子炉部材に制御信号を伝送する。たとえば、制御信号を電源に伝送して、指定の電圧を印加するように電源に指示することができる。いくつかの場合には、設定は、制御システムへの入力パラメータであってもよい。たとえば、どの電圧を印加すべきかを決定する際に、コントローラは、現在電極に印加されている電流及び/又は電圧を考慮してもよい。いくつかの場合には、コントローラは、機械学習を使用してその決定を改善し、時間の経過とともに原子炉がより効率的になり、デバイスの物理的な変化に抵抗できるようにし(たとえば、部品が故障して交換された場合)又はエネルギー需要を予測することができる。
原子炉の特定の運転上の特徴は、独立して制御され得る。たとえば、冷却液の流速は、電流やガスの流速など、原子炉の主要な運転入力の調整を行う制御システムとは独立したシステムを使用して制御できる。別の例では、図21aに示す電子放出モジュールは、電子エミッタの測定温度を受け取り、ジュール加熱を提供するためにフィラメントにどの電流を印加すべきかを決定する関連コントローラを有してもよい。
上述の制御システムは、モジュール式又は集積方式でコンピュータソフトウェアを使用して制御ロジックの形で実装されてもよい。運転を制御する多くの可能な方法がある。本明細書で提供される開示及び教示に基づいて、当業者は、ハードウェア及び/又はハードウェアとソフトウェアの組み合わせを使用して制御機能を実装する方法を理解する。
いくつかの場合には、制御システムは、たとえば従来又は対象指向技術を使用して、Java、LabVIEW、MATLAB(登録商標)、C++又はPythonなど、適切なコンピュータ言語を使用するプロセッサによって実行されるソフトウェアコードとして実装され得る。ソフトウェアコードは、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、ハードドライブ又はフロッピーディスクなどの磁気媒体、又はCD-ROMなどの光学媒体など、コンピュータ読み取り可能な媒体に、一連の命令又はコマンドとして保存できる。いくつかの場合には、制御システムは、FPGA(フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)を使用してテスト及び設計され、その後ASICプロセスで製造され得る。いくつかの場合には、コントローラは、制御ロジックを安全に格納及び実行できる単一のチップであり得る。そのようなコンピュータ読み取り可能媒体は、単一の計算装置の上又はその中に常駐することができ、システム又はネットワーク内の異なる計算装置の上又はその中に存在することができる。たとえば、制御システムは、1つ又は複数のプロセッサ、PLC、コンピュータ、プロセッサ-メモリの組み合わせ、及びこれらの変形と組み合わせを使用して実装できる。制御システムは、分散型制御ネットワーク、制御ネットワーク、又は当業者に知られている大規模なプラント及び施設、個々の装置を制御する他のタイプの制御システム、ならびにこれらの組み合わせ及び変形であり得る。
放射線シールド
いくつかの実施形態では、たとえば、原子炉が無中性子又はほぼ無中性子反応をサポートする場合、原子炉は、放射線被曝を低減するためのシールドをほとんど必要としない場合がある。中性子放射の懸念がある場合、原子炉は、適切なシールドを備え得る。中性子はほとんどの物質を容易に通過するが、生物学的損傷を引き起こすほど相互作用する。いくつかの場合には、中性子を吸収する筐体に原子炉を配置することがある。いくつかの場合には、原子炉の閉じ込め壁には、中性子を吸収するための外層が含まれる。いくつかの場合には、シールド層は、高水分含有量のコンクリート、ポリエチレン、パラフィン、ワックス、水又はその他の炭化水素材料で製造されてもよい。いくつかの場合には、シールド層は、鉛又はホウ素を中性子吸収剤として含み得る。たとえば、炭化ホウ素は、シールド層として使用できるが、コンクリートのコストが非常に高い。いくつかの実施形態では、原子炉のz方向の端部は、中性子を吸収するだけでなく、断熱性及び電気的絶縁性を有する窒化ホウ素などの材料を含んでもよい。いくつかの場合には、電子エミッタ(たとえば六ホウ化ランタン)は、電子放射(neurotic radiation)からのシールドを提供する追加の機能を果たす。いくつかの場合には、大型原子炉では、水、油又は砂利のタンクなどは、効果的なシールドを提供するために原子炉の上に配置することができる。シールド層の厚さは、部分的に、使用される材料、原子炉の位置、融合反応のタイプ、及び原子炉の寸法に依存する。いくつかの実施形態では、シールド層は、約10cmより大きく、いくつかの場合には、シールド層は、約100cmより大きく、いくつかの場合には、シールド層は約1mより大きい。
交換可能な部材
原子炉内のプラズマ及び融合生成物の侵食性質により、電極は損傷、変形、脆化などする場合がある。通常の運転条件では、原子炉の一部の部材は、最終的に故障し交換しなければならない。さらに、運転条件が特定のしきい値(たとえば、高温、圧力、プラズマ電位又は反応物濃度)を超えると、部材は、より早く損傷したり摩耗したりする。水素が反応物として使用される場合、電極は、経時的に水素脆化を受ける可能性がある。脆化した電極を交換しないと、電極が粉末に変わる。いくつかの場合には、原子炉は、通常の運転条件外で不注意に運転する可能性があり、その結果、1つ又は複数の電極又はその他の部材の摩耗又は構造的損傷が増加する。たとえば、冷却システムが故障すると、電極の温度が融点に近くなり、電極が変形することがある。いくつかの場合には、熱応力により、電極の上又は電極内に微小破壊が発生し得る。電極の内部冷却システムが破裂して水蒸気が閉じ込め領域に侵入する場合、原子炉の圧力が急上昇する可能性がある。
本明細書で説明される核融合炉は、高度に構成可能及びモジュール化が可能である。特定の実施形態では、1つ又は複数の部材を変更及び/又は交換することができる。一部の部材は永久的であり、原子炉の寿命中に摩耗しないように設計され、一方、一部の部材は、一定の運転サイクル又は運転時間後に交換されることが予想される。交換可能な部材ごとに、部材の取り外し、取り扱い、改修及び/又は交換のための指定手順がある。さらに、部材の劣化を示したり予測したりする1つ又は複数のインジケータと現場で実施可能な診断が存在できる。
交換可能な部材の例には、原子炉内の1つ又は複数の電極、融合反応物、容器融合反応物(たとえば、水素ガス容器)及び原子炉に関連するエネルギー変換装置が含まれる。
部材を交換する必要があることを示すインジケータの例には、電極の導電率の低下、部材が運転している時間及び部材の光学特性(たとえば、部材の表面の変化を光学的に検出する)が含まれる。機械的故障は、目視検査、又はいくつかの場合には、温度、圧力及び電極の導電率などの測定パラメータを監視することで判断できる。いくつかの場合には、制御システムには、電極又はその他の部材の機械的故障を判定するためのロジックが含まれている。
いくつかの場合には、電極の導電率及び/又はコンダクタンスが時間とともに低下することがある。プラズマの揮発性により、電極上に形成される電気絶縁誘電体コーティングが存在し得る。電極の導電性及び/又はコンダクタンスが低下すると、原子炉の効率が低下し及び/又は過剰なパワーが必要になる場合がある。原子炉のコンダクタンス及び/又は導電率の低下を緩和するために何も行われないと、原子炉は電気的及び/又は熱的に危険になる可能性がある。本明細書の検討の多くは、電極の導電率及び/又はコンダクタンスの決定に関するものであるが、導電率は電極内の位置によって異なる。たとえば、電極の反応に面する表面の導電率は、長期間の運転の後、電極の内部の導電率よりもはるかに低くなり得る。別の例として、電極内の元の材料の導電率は運転中に大きく変化しないが、電極の反応に面する表面に形成された誘電体膜は電極の全コンダクタンスを著しく低下させる場合がある。導電率及び/又はコンダクタンスの代わりに、抵抗率及び/又は抵抗を決定してもよい。
電極の導電率及び/又はコンダクタンスを監視するため、又は電極の導電率又はコンダクタンスが注意又は交換を必要とするレベルに達したことを判断するために、さまざまな技術を採用することができる。一例では、電極の幾何学的形状を使用して、原子炉が運転していないときに電極表面の2点間の抵抗を測定することにより、電極の導電率を決定することができる。この測定は、たとえばマルチメーターを使用して、日常的なシステムチェックに手動で実行できる。いくつかの場合には、原子炉は、運転サイクル間で電極の抵抗を自動的に測定する測定回路を有するように構成される。いくつかの場合には、原子炉の制御システムは、測定された抵抗から電極のコンダクタンスを自動的に決定するように構成できる。電極のコンダクタンスを決定する別の方式は、閉じ込め領域におけるガス反応物を別のガスに変更し、閉じ込め領域内にプラズマを生成する診断サイクルを実行することである。たとえば、水素ガスは、アルゴンガス、ネオンガス又は窒素ガスで置き換えることができる。次いで、制御システムは、プラズマの電気的特性を監視し、電極の電圧及び電極を通過する電流を測定する。アルゴンプラズマの電気的特性に基づいて、電極の導電率を決定することができる。たとえば、各電極の導電率は、アルゴンプラズマ(又は別のプラズマ)の測定された電気的挙動を予想される電気的挙動と比較することにより決定され得る。いくつかの場合には、プラズマ(たとえば、アルゴンプラズマ)の予想される電気的挙動は、シミュレーション又は誘電体コーティングを持たない新しい原子炉の電気的挙動を測定することで決定できる。
原子炉の電極には、電極のメンテナンス又は交換をトリガーする低導電率又はコンダクタンス値の所定のしきい値を指定できる。たとえば、電極の導電率が期待値の約80%を下回る場合、電極を交換又は処理して、導電率を適切なレベルに回復させる。
いくつかの実施形態では、電極の導電率又はコンダクタンスが許容レベルを下回ると、洗浄サイクルを実行する。たとえば、洗浄サイクルには、洗浄ガス(たとえば、アルゴンガス)を閉じ込め領域に導入して、原子炉を運転して、誘電体コーティングの一部又はすべてを除去するためのプラズマを生成する。いくつかの場合には、弱電離プラズマは、誘電体コーティングを除去できるのに十分である。いくつかの場合には、洗浄サイクル中にアルゴンガスが完全に電離され得る。分解の化学的性質に応じて、化学的修復処理を採用できる。たとえば、電極の劣化が水素化物の形成又は他の形態の水素を媒介した還元による場合、破損した電極は、酸化剤(たとえば酸素含有プラズマ)で処理されてもよい。
いくつかの場合には、電極の導電率又はコンダクタンスが指定されたレベル(たとえば、その期待値の約50%)を下回ると、原子炉が安全に運転しないと判断できる。これは、厚い誘電体膜が形成され、原子炉が電源からの危険なレベルのパワーを必要とすることを示すことがある。いくつかの場合には、制御システム又は関連する安全システムは、影響を受ける電極の交換又は修復まで運転を停止することがある。いくつかの場合には、原子炉の制御システムには、電極又は他の部材の機械的故障を判別し、次に原子炉のアラート又は自動シャットダウンをトリガーするためのロジックが含まれている。
いくつかの実施形態では、原子炉内の電極又は磁石の1つ又は複数は、保護層又は犠牲層を含む。いくつかの場合には、この犠牲層は、所定の間隔で交換できるスリーブ(たとえば、閉じ込め壁の内面を形成するスリーブ)であり得る。いくつかの実施形態では、電極又はスリーブなどの金属部品を除去して、修復プロセス、たとえばアニーリングプロセスを施して、熱サイクルが原因で発生した可能性のある内部応力を除去することができる。いくつかの場合には、たとえば、部材が水素脆化を受けた場合、部材を取り外し、部材の材料を再処理して新しい部品を製造することができる。いくつかの場合には、脆化した部材(たとえば、タンタル電極)は、真空下でアニーリングすることにより延性状態に回復することができる。たとえば、いくつかの場合には、真空下で約1200℃でアニーリングすることにより、脆化した部材を修復することができる。
ターゲット材料(融合反応物)は最終的に消費されて、交換する必要がある。たとえば、いくつかの実施形態は、プロトン-ホウ素-11融合反応に必要な反応物としてホウ素-11を含む六ホウ化ランタンを使用する。消費しきれると、この材料を交換する必要がある。熱サイクルにより、六ホウ化ランタンも脆くなり故障する場合がある。六ホウ化ランタンの破壊又は分解により、融合反応の産量が低下する。いくつかの場合には、制御システムは、ターゲット材料の枯渇又は閉じ込め領域からの移動に対応するパワー低下をオペレータに通知し得る。いくつかの場合には、制御システムは、消耗品(たとえば、六ホウ化ランタン)が所定の使用限度に達し、交換する必要がある場合に、オペレータに警告する。

実施例
以下の非限定的な実施例は、本明細書で説明されるより広い原理に従って実施され得るいくつかの実施形態を表す。
1.)負電極(外側電極)
外側電極は、「シュラウド」と呼ばれることもあり、六ホウ化ランタン又は他のターゲット材料を取り付けた複数の点を備えた円筒形の金属リングを含む。シュラウドの組成は、通常、高融点金属の高い熱抵抗のため、タンタル(Ta)やタングステン(W)などの高融点金属であるが、原子炉の特定の実施形態は、合金316ステンレス鋼などの低温金属を使用する。これらの実施形態は、シュラウドが複合金属の臨界融点に達するを防ぐ液体冷却回路を含んでもよい。説明したように、外側電極は、より負の電極でもよく、より正の電極でもよい。
導電率
外部電源からの電力を利用することにより、正電極と負極の間に原子炉内のプラズマに衝突する。このイベントは、2つの電極間の電圧と、電極とプラズマを流れる電流によって媒介される。プラズマに衝突し融合プロセスを開始させるために必要な電圧は、2つの電極の導電率に直接関係している可能性がある。前述のように、負電極上に堆積する誘電体(電気絶縁性)コーティングが存在する可能性があり、したがって電極の導電率に影響を与える。
外側電極の導電率を決定するための、現場で実現可能な診断は、デジタルマルチメーターを使用して2点間の抵抗を測定することである。いくつかの実装では、抵抗が測定されると、その値がQAソフトウェアに入力され、外側電極の導電率と運転状態が示される。
導電率を決定するための2番目の診断は、原子炉内でグロー放電アルゴンプラズマにストライクすることを含む。これは、制御ソフトウェアによって行われ、その後、アルゴンプラズマの電気的挙動(電圧及び電流)を監視する。内部キャリブレーションと自動的に比較することにより、制御ソフトウェアは、電極の導電率を決定して、データをQAソフトウェアに送信できる。
導電率が組成金属の標準導電率定格の80%を下回ることをQAソフトウェアが示す場合、ARユニットは、最適運転状態外にあり、非最適運転状態にあるとされる。導電率が標準定格の50%を下回る場合、ARユニットは、非安全運転状態にあるとされる。これは、電源からパワーを過剰に引き出し、潜在的な電気的及び熱的危険をもたらすためである。導電率が0%の場合、完全な絶縁層が負極上に形成され、システムが運転しないことを示す。
運転:運転ユニットを通常どおり続行する。
非最適運転:提供された制御ソフトウェアを使用して、ARユニットでアルゴン洗浄サイクルを実行する。導電率が「最適運転」ゾーンに入るまで繰り返す。導電率が改善されない場合は、以下の「非安全運転」を実行する。
非安全運転:外側電極を清掃する必要がある。
構造的完全性
シュラウドの機械的構造が損傷、変形、又は脆化する可能性がある。これは、さまざまな原因で発生する。
冷却システムの故障、又は冷却システムの不適切な運転は、安全な運転パラメータを超えた原子炉内の極端な温度につながる可能性がある。これらの極端な温度は、熱衝撃を引き起こし、シュラウドの上又はシュラウド内に微小破壊を引き起こす可能性がある。さらに、これらの極端な温度がシュラウド組成物の融点に近づくと、シュラウド自体が変形して溶け始める。
構造的完全性の欠陥を検出するための、現場で実現可能な診断は、制御ソフトウェアからの異常な温度アラートによって促される目視検査である。制御ソフトウェアは、ユニットのいくつかの異なる部材の温度を監視し、各部材が安全な運転パラメータ内にあることを確認する。そのような部材の温度が安全な運転パラメータの範囲外になると、温度インジケータをトリガーしてアラームを送信させることができる。極端な場合(たとえば、そのような過熱部材の持続時間が長くなる)では、システムは、それ自体をシャットダウンし、シュラウドの完全性を強制的に目視検査することを必要とする。シュラウドが破損している場合は、検査と分析のためにQAチームに送られる。
2.)正電極(内側電極)
内側電極は、チャンバの背面にある高電圧セラミックフィードスルーに取り付けられた円筒形の金属ディスクと中空の金属シリンダーを含むことができる。これらの2つの部材は「ヘッド」と「ロッド」として呼ばれている。中心電極ヘッドの組成は、高融点金属の高い熱抵抗のため、通常、タンタル(Ta)やタングステン(W)などの高融点金属であるが、原子炉の異なる実施形態は、合金316ステンレス鋼などの低温金属を使用する。高温の中心ヘッドはより長く運転するため、交換の頻度を少なく抑えるべきである。中心電極ロッドは、通常、ヘッドと同じ極端な温度にならないため、合金316ステンレス鋼で製造される。
いくつかの実施形態では、中心電極ロッドは、過熱を防ぐために液体水で冷却される。高温ヘッドを利用する実施形態では、ヘッドはモリブデン(Mo)製止めネジでロッドに取り付けられている。低温ヘッドを利用する実施形態でも、ヘッドは水冷され、冷却回路が連続するようにロッドに溶接又ははんだ付けされる。
導電率
外側電極の場合と同様に、内側電極の導電率は、プラズマの電気的挙動を調整する。導電率の変化は、融合反応用のプラズマにストライクし且つそれを維持するために必要な電圧の変化をもたらす。上記のように、原子炉内で発生するプラズマと融合反応の揮発性は、内側電極の表面に誘電体コーティングを形成して、その導電率に影響を与える。
中心電極の導電率(上記さまざまな運転状態に関して)を決定するため、現場で実施可能な標準的な診断は、内側電極の診断と同じである。
構造的完全性
内側電極は、部材の構造的完全性に関して、外側電極(又はシュラウド)と同じ運転上のリスクがある。破損、変形又は脆化の可能性があるが、内側電極の内側に液体冷却チャネルがあるため、制御システムによる特定の部材の熱監視以外、障害検出のための追加の方法がある。
中心電極ロッドの温度(又は代替実施形態で示すように、上記液冷された中心電極ヘッドの温度)が組成物材料の融点に近づくと、ロッド(又はヘッド)の外面が破れて、真空室への水蒸気と液体水の組み合わせの侵入が可能になる。これは、冷却システムの故障又は不適切な使用、ならびに中心電極ロッド(又はヘッド)自体の持続的なプラズマアークの発生により発生する可能性がある。このような状況が発生すると、割れ目を通してチャンバに入る水蒸気の優位性のため、圧力が瞬間的に上昇する。制御システムは、この圧力上昇を検出し、システムを直ちにシャットダウンするとともに、即時かつ必要な目視検査を保証するエラー故障を表示させる。
3.)六ホウ化ランタンターゲット
六ホウ化ランタンは、一般に、LaBと呼ばれ、仕事関数が低いため、科学産業で電子エミッタとして使用される耐火性セラミック材料である。原子炉では、LaBは内壁に沿って均等に分布した取り付け点を介して負電極に取り付けられる。LaBには、融合反応に必要な固体ホウ素燃料が含まれており、燃料がなくなったら交換する必要がある。
ホウ素同位体の組成
自然界にあるホウ素には、10Bと11Bの2つの主要な同位体(プロトン数が同じであるが、中性子の原子の数が異なる)がある。これらの2つの同位体の中で最も豊富なものは11Bであり、すべてのホウ素の80%がこの形態で存在する。これは、融合反応が起こるために必要な同位体でもあるため、LaB燃料に存在するこの特定の同位体の相対濃度を知る必要がある。誘導結合プラズマ発光分析法(ICP-OES)、熱電離質量分析法(TIMS)、二次イオン質量分析法(SIMS)、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)など、この濃度を検出するためのさまざまな方法がある。
いくつかの実施形態では、LaBのホウ素同位体の組成を測定できる、現場で実施可能な診断はなく、これらは、サンプルをサードパーティの分析診断ラボに送る必要がある技術であるためである。
構造的完全性
この化合物は、セラミックの性質を有するため、非常に脆く、熱応力の影響を非常に受けやすい。原子炉内で発生する揮発性反応と、中心電極やシュラウドなどのさまざまな部材に存在する急速な加熱と冷却の速度により、LaBの構造的完全性が破壊される可能性がある。原子炉のいくつかの実施形態では、LaB燃料が時間とともに分解する傾向があることが観察されており、これは、交換の必要性を保証する。
LaB燃料の構造的完全性(及びその欠如)を決定するための、現場で実施可能な診断の1つは、目視検査である。LaBの目視検査の必要性を保証する、制御ソフトウェアによって提供される特定のインジケーターがある。融合反応はLaBサイトで発生するため、すべての出力パワー(たとえば、制御ソフトウェアで測定)がこれらのサイトから抽出される。原子炉の定常パワーが20%以上低下した場合、LaBピースの1つに問題があることを示し、ソフトウェアのパワーインジケータにおいてアラームをトリガーする。このタイプのアラームは、LaBピースの目視検査の必要性を保証する。
エネルギー変換ハードウェア
本明細書で説明されるような原子炉は、1つ又は複数の形態のエネルギーを生成し、通常、複数のエネルギーを同時に生成する。運転するとき、ほとんどの原子炉は熱エネルギーを生成する。また、広い範囲又は狭い範囲の周波数で放射エネルギーを生成することもできる。たとえば、原子炉内の励起種(たとえば、電子的に励起された水素原子)は、1つ又は複数の周波数帯域で放射を放出する。通常、原子炉は、プラズマを必要とするモード及び/又はプラズマを生成するモードで運転し、プラズマが存在すると放射エネルギーを生成する。さらに、多くの反応により、高レベルの運動エネルギーを持つ荷電種(たとえば、α粒子などのイオン)が生成される。原子炉は、圧力変動又は振動により機械エネルギーを生成する場合もある。
これらのエネルギー形式のいずれか1つ又は複数を、特定の用途に使用できるさまざまなエネルギー形式に変換できる。したがって、特定の実施形態では、エネルギー変換装置又は部材は、関連する原子炉に接続される。いくつかの場合には、エネルギー変換装置は、原子炉からの熱エネルギーを電気エネルギーに変換する(たとえば、熱電装置)。いくつかの場合には、エネルギー変換装置は、原子炉からの熱エネルギーを機械エネルギーに変換する(たとえば、熱エンジン)。いくつかの場合には、エネルギー変換装置は、原子炉からの電磁放射を電気エネルギーに変換する(たとえば、光起電力装置)。いくつかの場合には、エネルギー変換装置は、荷電反応生成物(たとえば、α粒子)又は電離融合反応物(たとえば、プロトン)の運動エネルギーを電気エネルギーに変換する。いくつかの場合には、エネルギー変換装置は、原子炉からの機械エネルギーを電気エネルギーに変換する(たとえば、圧電装置)。
さまざまなエネルギー変換装置は、原子炉によって生成された熱エネルギーを機械エネルギー及び/又は電気エネルギーに変換することができる。たとえば、熱電発電機は、原子炉に熱的に接続されて電気エネルギーを生成できる。熱電発電機は、たとえば、原子炉の閉じ込め壁に配置することにより、又は原子炉からの熱エネルギーをヒートパイプなどの熱伝達装置を介して送達することにより、原子炉に熱的に接続され得る。別の例において、原子炉は、熱エンジンを介して熱エネルギーを機械エネルギー(たとえば、ピストンの移動又はクランクシャフトの回転)に変換し得る。いくつかの実施形態では、原子炉にはスターリングエンジンが装備されている。いくつかの実施形態では、原子炉には、熱エンジン、たとえば、作動流体が周期的に相変化するランキンサイクルを使用する熱エンジンが装備されてもよい。電気エネルギーが必要な場合、熱エンジンは、たとえば、回転するクランクシャフト又は揺動するピストンを電気エネルギーに変換する発電機を有するように構成できる。
一部のエネルギー変換装置は、原子炉によって生成される電磁放射又は放射エネルギーを電気エネルギーに変換できる。たとえば、原子炉は、放射エネルギーを電気エネルギーに変換するために、閉じ込め領域のいずれかの一端に太陽電池を有してもよい。いくつかの場合には、反応装置は、熱保護を提供する透明障壁層及び/又は放射エネルギーを太陽電池に集中させるための光学デバイスを含み得る。いくつかの場合には、太陽電池は、原子炉から放出される放射エネルギー(たとえば、水素に対応)の狭帯域波長に対応する調整されたバンド隙間を有してもよい。
また、原子炉は、原子炉から放出される荷電粒子の運動エネルギーを電気エネルギーに変換する部材を有するように構成できる。たとえば、正荷電粒子(たとえば、α粒子)は、これらの移動を遅らせる1つ又は複数の電極によって生成された反対の電場を強制的に移動させることができる。粒子が減速すると、正荷電電極に接続された電気回路に電流が発生する。いくつかの場合には、原子炉から放出されたα粒子は、印加磁場を介してそのような電極にガイドできる。いくつかの場合には、原子炉は、核反応の結果として生成されたプラズマの運動エネルギーを電気エネルギーに変換する電磁流体発電機(MHD発電機)を有するように構成できる。
いくつかの場合には、原子炉は、単一のエネルギー変換装置(又はエネルギー変換モジュール)を使用して、原子炉によって生成されたエネルギーを機械エネルギー及び/又は電気エネルギーに変換できる。いくつかの実施形態では、原子炉は、複数のエネルギー変換装置(又はエネルギー変換モジュール)を使用して、原子炉によって生成されたエネルギーを機械エネルギー及び/又は電気エネルギーに変換してもよい。原子炉がさまざまな形態のエネルギーを生成できるため、生成される総機械エネルギー及び/又は電気エネルギーを増加させるために、異なるタイプのエネルギー変換装置を組み合わせることができる。いくつかの場合には、第2エネルギー変換装置を追加しても、第1エネルギー変換装置のエネルギー出力を減少することがなく、それは、エネルギー変換装置が原子炉によって発生される異なる形態のエネルギーを変換するためである。たとえば、いくつかの実施形態では、原子炉は、放射エネルギーを変換する太陽電池と熱エネルギーを変換する熱電発電機の両方から電気エネルギーを生成してもよい。この実施例では、太陽電池の存在は、熱電発電機によって生成される電気エネルギーを減少させない可能性があり、その逆も同様である。いくつかの実施形態では、原子炉は、原子炉によって生成された同じタイプのエネルギーを変換する複数のエネルギー変換装置を装備していてもよい。たとえば、いくつかの場合には、原子炉には、どちらも熱エネルギーを利用するスターリングエンジンと熱電発電機の両方が装備されてもよい。この実施例では、熱電発電機は、スターリングエンジンによって機械エネルギー及び/又は電気エネルギーに変換されなかった熱エネルギーを簡単に取得できる。一般に、本明細書に記載のエネルギー変換装置又はモジュールの任意の組み合わせを使用して、原子炉から機械エネルギー及び/又は電気エネルギーを生成することができる。
筐体
図示されていないが、原子炉は、閉じ込め領域を周囲環境から離間させる筐体を含んでもよい。いくつかの場合には、筐体の寸法は、部分的に閉じ込め壁の外側寸法によって制御される。いくつかの実施形態では、閉じ込め壁は、r方向の筐体の境界を画定し、閉じ込め領域は、z方向の閉じ込め壁の両端のフランジを使用して外部環境から隔離される。いくつかの実施形態では、制御システム、電源、磁石及びエネルギー変換装置を含むシステム全体が筐体内に配置される。筐体用のために選択される材料は、筐体の意図する目的に依存する。たとえば、生物学的シールド、熱的分離を提供する及び/又は低圧運転条件を可能にするために筐体が必要になる。いくつかの場合には、筐体は、各層が異なる機能を提供する層構造を持ってもよい。たとえば、筐体は、生物学的シールドのための炭化水素材料と断熱を提供するためのセラミック層とを含んでもよい。いくつかの場合には、複数の筐体を使用できる。たとえば、第1の筐体は、z方向に閉じ込め領域を密封して真空チャンバを作成するフランジを含むことができ、第2の外部筐体は、原子炉全体を包囲する。本明細書で提供される開示及び教示に基づいて、当業者は、原子炉の用途のニーズを満たす筐体を実装する方法及び/又は方法を把握して理解できる。
プロセス条件
多段運転及び/又は反応
いくつかの場合には、原子炉のエネルギー出力又は効率は、多段で運転するときに改善される。いくつかの場合には、原子炉は、融合反応を実施するための原子炉内の条件を作るための1つ又は複数の準備段階を有してもよい。たとえば、多段プロセスの準備段階を使用して、電子エミッタの温度を上げたり、閉じ込め壁の温度を冷却したり、閉じ込め領域内でプラズマを生成したり、閉じ込め領域内のガス圧を変更したりできる。図25は、原子炉を運転するための多段プロセスフローの例を示す。第1の運転2501では、電子を放出するための所定の温度に達するまで電子エミッタを加熱する。2501で電子エミッタを加熱した後、原子炉の電極間に交流電流を印加して、弱電離プラズマにストライクする。
閉じ込め領域でプラズマを開始させた直後に、原子炉は、原子炉内の荷電粒子を回転させて融合反応を維持する段階に移行する。いくつかのローレンツ型ロータでは、均一な磁場が印加されたときに電極に直流電流を印加することを意味する。あるいは、原子炉のz方向に交番磁場が印加される実施形態では、これは、磁場が振動するのと同じ周波数で電極に交番電流を印加することを意味してもよい。いくつかの場合には、電磁石(たとえば超伝導磁石)又は物理的に移動する永久磁石に交番電流を印加し、たとえば閉じ込め領域のいずれかの一方側に交番磁気向きを有する磁石をロータを持たせることにより、交流磁場を印加する。いくつかの場合には、中性物と荷電粒子の回転は、電場と磁場を同じ周波数で交番することにより同じ方向に維持される。たとえば、いくつかの場合には、電場と磁場の両方が、約0.1Hz~10Hz、いくつかの場合には約10Hz~約1kHz、いくつかの場合には1kHzを超える周波数で振動することがある。
波動粒子の実施形態では、電極の電荷シーケンス又は駆動信号を閉じ込め領域に隣接する電極に印加して、回転を開始することができる。たとえば、駆動信号は、約60Hzなどの低周波数で開始されて、次に、約10MHzなど、より高い周波数にランプアップし得る。いくつかの場合には、原子炉は、融合反応を停止するための類似した多段プロセスを含んでもよい。いくつかの場合には、原子炉は、融合反応が停止してから再開するまでの間に発生するアイドル段階を有してもよい。原子炉の運転中、パラメータを厳密に監視することができる。ローレンツ力を利用して電荷種を回転させる原子炉では、閉じ込め領域又は閉じ込め壁近くの環状空間の電流密度は、約150A/m~約10kA/mの範囲。たとえば、約150A/m~約9kA/mであり得る。いくつかの場合には、閉じ込め壁近くの電流密度は、約150A/m~約700kA/mの範囲、いくつかの場合には約400A/m~約6000kA/mの範囲であってもよい。いくつかの場合には、閉じ込め壁近くには十分な電場を維持するために原子炉を運転させる。たとえば、いくつかの場合には、電場は、約25V/mより大きく、いくつかの場合には、約40V/mより大きく、そして、いくつかの場合には、約30V/mより大きい。
いくつかの多段運転では、原子炉は荷電粒子が回転する方向を周期的に交互することができる。いくつかの場合には、荷電粒子が回転する方向を交互することにより、2つの回転する融合反応物間の衝突率が増加し得る。いくつかの場合には、回転方向を交互し、原子炉内の融合速度を増加又は制御することができる。いくつかの実施形態では、回転方向を交互することにより、閉じ込め表面上ではなく環状空間内で発生する可融性イベントにより、閉じ込め壁上の可融性イベントの速度が低下し得る。閉じ込め壁が熱くなりすぎた場合、たとえば閉じ込め壁に与えられる熱を低減することに有益であり得る。ローレンツ型ロータの場合、回転方向は、電場及び/又は磁場を交互に印加することによって交互することができる。たとえば、磁場が交互するが、電場が維持されている場合、荷電粒子にかかるローレンツ力も方向を交互する。いくつかの場合には、印加電場及び/又は印加磁場は、約0.1Hz~約10Hzの間の周波数、いくつかの場合には約10Hz~約1kHz、いくつかの場合には約1kHzより大きい周波数で交互する。これは、電子リッチ領域に電子を集中させ、近接する箇所に回転粒子を集中させる効果があり、いくつかの場合には、融合反応の数を増やす。
ガス条件
ガス(例えば、水素又はヘリウム反応ガス)が閉じ込め領域に導入される場合、反応ガスが特定の純度を持っていることは有益であり得る。いくつかの場合には、反応ガスの体積に含まれる不純物により、融合速度と全エネルギー出力が低下する場合がある。反応物ガスが純粋な形態で入手できる場合、反応物ガスは、少なくとも約99.95体積%又は少なくとも約99.999体積%の純度を有する。つまり、シリンダー内の不純物は10vpm(体積の100万分の1あたり)未満である。
いくつかの場合には、水素の天然同位体である重水素が水素反応ガスに見つかる場合がある。たとえば、重水素は水素タンクの不純物に存在する可能性があり、そのため、反応ガスに十分な量で存在すると、潜在的な危険をもたらす。燃料に重水素が多すぎると、原子炉内でプロトン-ホウ素11以外の融合反応が発生する可能性がある。いくつかの場合には、これらの他の反応は放射性副生物を放出することがある。反応ガス中の重水素の量を監視するために、原子炉には、Hiden Analytical質量分析計製のqRGAなどのセンサが装備されてもよい。
点火前に、原子炉には、イオンに対する中性物が約0%のモル分率で含まれ得る。プラズマにストライクした後、回転ガス種において中性物に対するイオンのモル分率が約1:1000~約1:1,000,000となるように原子炉を運転することができる。いくつかの場合には、反応ガスにおいて中性物に対するイオンのモル分率は、多段プロセスフローの特定の段階によって変化する。たとえば、図23のプロセスフローでは、段階2502でプラズマを開始した後、中性物に対するガスのイオンのモル分率は、段階2503において定常状態で運転している原子炉のそれよりも高い場合がある。
他の場所で説明するように、原子炉には、ガス入口及び出口バルブが装備されていてもよい。原則として、閉じ込め領域内の所望のガス組成又はガス圧力を維持するために、ガス入口バルブ及び/又はガス出口バルブを通るガスの流れを制御することができる。いくつかの場合には、閉じ込め領域におけるガスの体積は、約1分に1回、又は1時間に1回未満の速度で交換できる。多くの実施形態では、原子炉の運転中に流体が流れないようにガスバルブを密閉させてもよい。
いくつかの場合には、この閉じ込め領域でプラズマを生成する前に、反応ガスを標準の温度と圧力に維持する。真空筐体を使用する場合など、いくつかの場合には、閉じ込め領域でプラズマにストライクする前に、真空ポンプを使用して圧力を約1×10-2Torr未満、いくつかの場合には約1×10-6Torr未満に下げることができる。いくつかの場合には、中性物の密度を上げるために、反応ガス供給ラインは、閉じ込め領域でプラズマにストライクする前又は原子炉の運転中に、原子炉内の圧力を約0.1Torrより高く、いくつかの場合には約10Torrより高く上げることができる。原子炉の運転中、粒子は、地球表面の重力加速度の約10億倍の求心加速度を受けることがある。いくつかの場合には、原子炉の運転中に閉じ込め壁に沿ったガスの圧力及び/又は密度を監視することができる。回転種により誘導された圧力が閉じ込め壁の近くで不十分である場合、電子リッチ領域は閉じ込め領域にさらに拡散し、所望の電子スクリーニング効果を提供しない。いくつかの場合には、閉じ込め壁の近くでのガス圧をリアルタイムで監視できる。プラズマを開始する前に、ガスの温度はほぼ室温である場合があり、いくつかの場合には最初にガスが加熱される。いくつかの場合には、ガスは約1,800℃より大きくなるまで加熱され、いくつかの場合にはガスは約2,200℃より大きくなるまで加熱される。原子炉の運転中、閉じ込め領域におけるガスが約400℃~約800℃の範囲であり、いくつかの場合には約900℃~約1500℃の範囲であるように、ガスを加熱することができる。
他の場所で説明するように、反応ガスは、さまざまなメカニズムによって原子炉に送られる。入口バルブが使用される場合、ガス反応物はガスキャニスター又は加圧タンクから送られる。いくつかの実施形態では、反応ガス(たとえば、水素)は、閉じ込め壁又は水素吸収材料(たとえば、チタン又はパラジウム)から外に拡散することにより、閉じ込め領域に送られ得る。
クーロン障壁を低減させるための運転条件
本明細書の他の場所で説明するように、単位時間あたりの体積あたりの融合率は、dN/dT=n1n2σνで表せる。
式中、n1とn2はそれぞれの反応物の密度、σは特定のエネルギーでの融合断面積、νは相互作用する2つの種の間の相対速度である。クーロン障壁を低減させることにより、積(σν)を増やすことができる。いくつかの場合には、融合断面積は、約10-30cm~約10-48cmであり、いくつかの場合には、約10-28cm~約10-24cmである。いくつかの場合には、相対速度は10m/s~10m/sであり、いくつかの場合には約10m/s~約10m/sである。いくつかの場合には、クーロン障壁の低減により、閉じ込め壁に沿って毎秒立方センチメートルあたり約1017~約1022の融合反応の反応速度が得られる場合があります。
他の場所で説明するように、閉じ込め壁の近くに電子リッチ領域を形成して、衝突する核間のスクリーニング効果を提供することができる。いくつかの場合には、電子エミッタは、この領域に自由電子を提供することに用いられる。エミッタは、回転粒子の摩擦加熱及び/又はジュール加熱により、光学的に(たとえば、レーザを使用して)エネルギーを与えられる。
電子リッチ領域内では、電子の密度は約1010cm-3~約1023cm-3の桁であり、いくつかの場合には、この領域内で、電子の密度は、約1023cm-3の桁である。いくつかの実施形態では、電子リッチ領域における中性物の密度は約1016cm-3~約1018cm-3であり、いくつかの場合には、閉じ込め領域における中性物の密度は約1020cm-3の桁である。電子リッチ領域には、陽イオンの密度が中性物の密度よりもはるかに低いことが見つかる。いくつかの場合には、陽イオンの密度は、約1015cm-3~約1016cm-3である。いくつかの場合には、電子リッチ領域において、電子と陽イオンの比は、約10:1~約10:1の範囲である。
電子リッチ領域の径方向の厚さは、電子勾配の大部分が存在する領域として特徴付けられる。いくつかの場合には、電子リッチ領域は約50nm~約50umの範囲にあり、いくつかの場合には、電子リッチ領域は約500nm~約1.5umである。
たとえば閉じ込め壁から約1um離れた電子リッチ領域には、強い電場が存在し得る。いくつかの場合には、電子リッチ領域(又は閉じ込め領域)内の電場は10V/mより大きく、いくつかの場合には、電場は約10V/mより大きい。いくつかの場合には、この領域における電子の温度は、約10,000K~約50,000K、いくつかの場合には約15,000K~約40,000Kである。
いくつかの場合には、1つのパラメータが物理的な制限によって制約されている場合、そのパラメータは、電子リッチ領域内の他のパラメータに影響を与える駆動パラメータとなる可能性がある。たとえば、ローソン基準は、パラメータのバランスに係る。
いくつかの場合には、電子リッチ領域のパラメータは、ターゲットとなる融合反応に一部依存する。たとえば、p+11B反応とaD+D反応では、パラメータの範囲が異なる。
一般に、本開示の特定の実施形態は、負の(吸引)ポテンシャルを有する効果を作成、修正又は利用することにより、クーロン障壁を低減又は減少する。これらの実施形態では、原子核に近づく電位は、トンネリング(tunneling)のため、顕著に低減させたクーロン障壁を有する。
融合イベントの確率を高める別の方法は、融合反応物のスピンを整列することである。核力にはスピン依存成分がある。スピンが2つの原子核(たとえば、重陽子と重陽子)の間で整列している場合、クーロン障壁を減少する。核磁気モーメントは、量子トンネリングで役割を果たす。具体的には、2つの原子核の磁気モーメントが平行する場合、2つの原子核の間に引力が発生する。その結果、平行する磁気モーメントを持つ2つの原子核間の総ポテンシャル障壁が低下し、トンネリングイベントが発生しやすくなる。2つの原子核が逆平行磁気モーメントを持つ場合、逆に、ポテンシャル障壁が増加し、トンネリングが発生する可能性が低い。特定のタイプの原子核の磁気モーメントが正の場合、核は、印加された磁場の方向に磁気モーメントを整列する傾向がある。逆に、モーメントが負の場合、核は、印加された電場に対して逆平行に整列する傾向がある。潜在的な融合反応物として注目されているほとんどの核を含む核のほとんどは、正の磁気モーメントを持っている(p、D、T、Li、Li及び11Bはすべて正のモーメントを持っている。He及び15Nは負のモーメントを持っている)。特定の実施形態では、磁場が存在する装置内のすべての点で磁気モーメントをほぼ同じ方向に整列する磁場が提供される。これにより、第1及び第2の作業材料の核磁気モーメントが両方とも正又は負である場合、原子核間の総ポテンシャルエネルギー障壁が減少する。これにより、トンネリングの速度が増加し、融合反応がより多く発生すると考えられている。この効果は、スピン分極又は磁気双極子相互作用とも呼ばれる。さらに、磁力線を中心とした核の旋回も、原子核の全角運動量の決定に寄与する。そのため、原子核のサイクロトロン運動が核磁気モーメントの分極と同じ方向に追加の角運動量を付加すると、クーロン障壁はさらに減少する。
いくつかの場合には、閉じ込め領域内及び閉じ込め壁に沿った融合反応物(たとえば、H及び11B)のスピン状態は、1~20Tの範囲の磁場を印加することで整列すられる。磁場を用いてローレンツ力を提供する場合、磁場は融合反応物のスピン状態に整列することもできる。たとえば、電子スクリーニングとスピン分極(反応物核に作用する強磁場によって可能になる)によるクーロン障壁の低減の組み合わせにより、融合速度が大幅に向上する可能性がある。2つの原子核間の静電引力には、短距離(たとえば、1fm未満)で支配的になるスピン依存項が含まれる。
用途
本明細書に記載の核融合炉は、化石燃料への依存などの多くの社会的問題を解決できる豊富な用途を有する。いくつかの場合には、核融合炉の使用により、従来の発電方法では実現不可能又は実用的ではなかったエネルギー集約型用途が実現可能かつ/又は実用的になる。核融合炉のいくつかの用途について簡単に検討する。
いくつかの場合には、核融合炉は、石炭、天然ガス又は石油を燃焼して発電する発電所などの化石燃料発電所を改造することができる。いくつかの場合には、本明細書に記載の核融合炉は、核分裂発電所を改造することができる。発電所を改造する場合、いくつかの場合には、発電所のエネルギー発生部分のみを交換又は更新するだけでよい。これにより、タービン、発電機、冷却塔、配電網への接続及びその他のインフラストラクチャを再利用できるため、発電所の改造が簡単で費用効率が高くなる。たとえば、石炭燃焼ボイラーを本明細書に記載の原子炉を利用する融合ボイラーで置き換えることにより石炭発電所を改造することができる。同様に、制御ロッドとウラン燃料を本明細書に記載の核融合炉で置き換えることにより核分裂発電所を改造することができる。
いくつかの場合には、核融合炉は、複数の小型原子炉を使用するモジュール設計を有する。複数の原子炉を有することにより、運転中の原子炉の数を変えることで、エネルギー需要を満たすためにプラントのパワー出力を調整することができる。さらに、他の原子炉が運転している間に個々の原子炉を修理又は交換できる場合、プラントの全パワー出力は大きく影響を受けない可能性がある。
いくつかの場合には、核融合炉は、ガラス繊維製造などの工業プロセスの加熱インターフェースとして利用できる。いくつかの場合には、原子炉は、蒸気発生器(たとえば、蒸気洗浄又は金属切断に使用される蒸気発生器)の熱源として構成できる。いくつかの場合には、原子炉は、ヘリウムの供給源として使用され、ヘリウムは、融合反応の結果として生成される(たとえば、原子炉がプロトン-ホウ素-11融合を行う場合)。いくつかの場合には、原子炉は、家庭用温水器などの温水器の一部として使用できる。たとえば、原子炉は、原子炉から発せられる熱が水を加熱するために使用されるように、水タンクの内部に配置されてもよく、又は水タンクに熱的に結合されてもよい。いくつかの場合には、屋内暖房を提供するために、融合に基づく給湯器を水ラジエータと組み合わせてもよい。
いくつかの場合には、核融合炉は輸送用途に使用される。たとえば、核融合炉は、自動車、飛行機、列車及びボートに動力を供給する。たとえば、自動車には、電気エネルギー及び/又は機械エネルギーを生成するように構成された1つ又は複数のエネルギー変換モジュールを備えた原子炉が装備されていてもよい。電気自動車では、原子炉によって生成された電気エネルギーを使用して、電気モーターに電力を供給するためのバッテリー又はコンデンサを充電できる。たとえば、バッテリーの充電状態が特定のしきい値を下回ると、原子炉を運転して自動車のバッテリーを充電できる。いくつかの場合には、機械エネルギーは、たとえば、自動車に駆動力を提供するためのスターリングエンジンによって生成される。いくつかの場合には、核融合炉は、宇宙船に動力を供給することができる。宇宙船の一部の設計では、放射性同位体熱電発電機などの核分裂炉が使用されている。そのような設計は、放射性同位体の使用と生成の問題がある。また、比較的大量の放射性燃料を運ぶ必要がある。本明細書に記載の原子炉は、無中性子又はほぼ無中性子であり得るため、これらの原子炉は、有人宇宙船にとってはるかに好ましい。さらに、本明細書に記載の原子炉に使用される融合反応物のエネルギー密度は、同じ量のエネルギーを生成するために核分裂反応又は化学反応に必要な燃料よりも著しく高い。
「手段」又は「ステップ」を記載していない請求項の要素は、「手段+機能」又は「ステップ+機能」の形式ではない(35 USC§112(f)参照)。出願人は、「手段」又は「ステップ」を記載している請求項の要素のみが、35 U.S.C.§112(f)下で、又はそれに基づいて解釈されることを意図している。
本開示は、本発明の精神又は基本的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で具現化され得る。説明された実施形態は、すべての点で例示的であり、限定的ではないと見なされるべきである。したがって、本開示の範囲は、前述の説明ではなく、添付の特許請求の範囲によって示される。特許請求の範囲と同等の意味及び範囲内にあるすべての変更は、その範囲内に含まれるものとする。

Claims (18)

  1. 原子炉であって、
    荷電粒子及び中性物が内部で回転可能な閉じ込め領域を少なくとも部分的に囲む閉じ込め壁と、
    前記閉じ込め領域に隣接又は近接する複数の電極と、
    前記複数の電極の少なくとも2つの間に電位を印加するように構成される電圧及び/又は電流源を含み、印加される電位が前記閉じ込め領域において電場を発生させ、前記電場が単独に又は磁場と組み合わせて前記荷電粒子及び前記中性物の前記閉じ込め領域での回転運転を誘導及び/又は維持する制御システムと、
    前記閉じ込め領域の内部に配置される又は前記閉じ込め領域に隣接する反応物であって、運転中、前記中性物と前記反応物との間の繰り返した衝突により前記反応物との相互作用を発生させ、前記相互作用がエネルギーを放出するとともに生成物を発生させ、前記生成物の核質量が前記中性物及び前記反応物の核のうちのいずれの核質量とも異なり、運転中、前記反応物に近接する前記閉じ込め領域に電子リッチ領域を含み、正荷電粒子よりも前記電子リッチ領域における電子の量が少なくとも約10/cm多い反応物と、
    を備え
    前記閉じ込め領域の内部に配置される又は前記閉じ込め領域に隣接する電子エミッタをさらに備え、運転中、前記電子エミッタは、前記閉じ込め領域において電子を発生させ、
    前記電子エミッタの温度を監視するために設置された温度センサをさらに備え、
    前記制御システムは、監視された温度に基づいて前記電子エミッタの前記閉じ込め領域での移動を制御するように構成される、原子炉。
  2. 前記複数の電極は、前記閉じ込め領域の周囲に方位角的に分布しており、且つ、前記制御システムは、前記複数の電極に時変電圧を印加することにより荷電粒子及び前記中性物の前記閉じ込め領域での回転運転を誘導するように構成される、
    請求項1に記載の原子炉。
  3. 前記原子炉は、前記閉じ込め領域内の前記電場と印加される磁場との間の相互作用により荷電粒子及び前記中性物の前記閉じ込め領域での回転運転を誘導するように構成される、請求項1又は2に記載の原子炉。
  4. 運転中、前記電子リッチ領域内の電子と陽イオンの比率は、約10:1~10:1である、
    請求項1~3のいずれか1項に記載の原子炉。
  5. 前記電子エミッタは、前記閉じ込め壁に取り付けられ又は嵌め込まれる、
    請求項1~4のいずれか1項に記載の原子炉。
  6. 断熱及び/又は電気絶縁を提供するように構成され、前記閉じ込め壁と前記電子エミッタとの間に挿入される1つ又は複数の絶縁層をさらに備える、
    請求項1~5のいずれか1項に記載の原子炉。
  7. 前記1つ又は複数の絶縁層は、ジルコニア、アルミナ、窒化亜鉛及びマグネシアを含む、
    請求項に記載の原子炉。
  8. 前記電子エミッタは、前記閉じ込め領域の内部まで突出している点を少なくとも1つ有する、
    請求項1~7のいずれか1項に記載の原子炉。
  9. 前記電子エミッタに熱的に連通するフィラメントをさらに備え、
    前記制御システムは、さらに前記フィラメントを流れる電流を印加するように構成される、
    請求項1~8のいずれか1項に記載の原子炉。
  10. 前記電子エミッタの温度を監視するように構成される温度センサをさらに備え、
    前記制御システムは、監視された温度に基づいて電流を前記フィラメントに印加するように構成される、
    請求項に記載の原子炉。
  11. レーザをさらに備え、
    前記レーザは、前記閉じ込め領域を通って前記電子エミッタ上又は前記閉じ込め壁上に到着する光ビームを放出して、前記光ビームと前記電子エミッタ又は前記閉じ込め壁との間の相互作用により電子が前記閉じ込め領域の内部に放出されることを引き起こすように構成される、
    請求項1~10のいずれか1項に記載の原子炉。
  12. 前記電子エミッタは、前記原子炉の運転中、前記閉じ込め領域に出入りするように構成される、
    請求項1~11のいずれか1項に記載の原子炉。
  13. 前記制御システムは、さらに前記電子エミッタの前記閉じ込め領域での移動を制御するように構成される、
    請求項12に記載の原子炉。
  14. 前記電子エミッタは、ホウ素又はホウ素含有材料を含む、
    請求項1~13のいずれか1項に記載の原子炉。
  15. 前記反応物は、ホウ素-11を含む、
    請求項1~14のいずれか1項に記載の原子炉。
  16. 前記生成物の核質量は、前記中性物及び前記反応物の核のうちのいずれか一方の核質量より大きい、
    請求項1~15のいずれか1項に記載の原子炉。
  17. 前記中性物は、中性水素、重水素及び/又はトリチウムを含む、
    請求項1~16のいずれか1項に記載の原子炉。
  18. 荷電反応生成物の熱エネルギー、運動エネルギー及び/又は前記原子炉からの機械エネルギーを抽出して、前記熱エネルギー、運動エネルギー及び/又は機械エネルギーを電気エネルギー及び/又は機械エネルギーに変換して、前記原子炉の外部で仕事をするために配置されたエネルギー変換装置をさらに備える、
    請求項1~17のいずれか1項に記載の原子炉。
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