JP7476153B2 - ホスホニウム化合物、誘導体化用試薬キット、質量分析方法、及びホスホニウム化合物の製造方法 - Google Patents

ホスホニウム化合物、誘導体化用試薬キット、質量分析方法、及びホスホニウム化合物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、ホスホニウム化合物、誘導体化用試薬キット、質量分析方法、及びホスホニウム化合物の製造方法に関する。
液体クロマトグラフィータンデム質量分析装置(LC-MS/MS)およびマトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析装置(MALDI-MS)は微量の代謝物や含有物を定量する極めて強力な分析手法である。これらの分析手法では、目的化合物のイオン化が行われる。目的化合物のイオン化が行われる分析に関して、目的化合物によってはイオン化効率が低いものがあり、検出できない場合や定量のための検出精度を確保できない場合も多い。そこで、目的化合物を誘導体化して、イオン化効率を高めることが行われる場合がある。
例えば、下記非特許文献1及び2には、窒素原子を含まない脂溶性ホルモン(男性ホルモンや女性ホルモン)を、窒素原子を含む誘導体化試薬により誘導体化することが開示されている。
J. Chromatogr. B 2011, 879, 1159-1165. Biomed. Chromatogr. 2021, 35, e5036.
本発明は、目的化合物のイオン化効率を高めるための新たな手法を提供することを目的とする。
本発明者らは、特定のホスホニウム化合物が、イオン化効率を高めるための誘導体化において適していることを見出した。
すなわち、本発明は、
下記式(I)
[式(I)において、
は、アルキル基を表し、当該アルキル基は、置換若しくは非置換の、炭素数1~20の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素数5~20の環状アルキル基であり、
、及びRは、互いに独立に、アルキル基又はアリール基を表し、当該アルキル基は、置換若しくは非置換の、炭素数1~20の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素数5~20の環状アルキル基であり、当該アリール基は、置換又は非置換の炭素数6~20のアリール基であり;
Xは、ヒドラジド基を有する反応基であり;且つ、
は、全体の荷電が-1のアニオンであるか、又は、Yは不在である]
で表されるホスホニウム化合物を提供する。
式(I)において、
前記アルキル基は、置換若しくは非置換の、炭素数1~10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素数5~10の環状アルキル基であり、
前記アリール基は、置換又は非置換の炭素数6~10のアリール基であってよい。
式(I)において、
は、以下の(a)又は(b)のいずれかを表してもよく、
、及びR は、互いに独立に、以下の(a)、(b)、又は(c)のいずれかを表してよい。
[ここで、mは0~8のいずれかの整数である。nは0~5のいずれか整数である。Zは、H、NH、COO、COOM、SO (スルホン酸イオン基)、又はSOM(スルホン酸基又はスルホン酸塩基)を表し、Mは、水素原子、リチウム原子、ナトリウム原子、又はカリウム原子を表す。]
式(I)において、
Xが、ヒドラジド基を有する反応基である場合、
前記反応基は、
であり、ここでoは0~6のいずれかの整数であってよい。
〔化4〕
〔化5〕
また、本発明は、
下記式(I)
[式(I)において、
、R、及びRは、同一の又は異なる疎水性炭化水素基であり;
Xは、酸素原子含有官能基又は窒素原子含有官能基に反応する反応基であり;且つ、
は、カウンターアニオンであるか、又は、Yは、不在である]
で表されるホスホニウム化合物も提供する。
また、本発明は、
下記式(II)
[式(II)において、
は、アルキル基を表し、当該アルキル基は、置換若しくは非置換の、炭素数1~20の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素数5~20の環状アルキル基であり、
及びRは、互いに独立に、アルキル基又はアリール基を表し、当該アルキル基は、置換若しくは非置換の、炭素数1~20の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素数5~20の環状アルキル基であり、当該アリール基は、置換又は非置換の炭素数6~20のアリール基であり;
Jは、ヒドラジド基を有する反応基と誘導体化対象化合物との反応により生成した基を表し;且つ、
は、全体の荷電が-1のアニオンであるか、又は、Yは不在である]
で表されるホスホニウム化合物も提供する。
Jは、
であってよく(ここで、oは0~6のいずれかの整数であり、且つ、Q1は、前記誘導体化対象化合物に含まれるカルボニル基がヒドラジド基と反応することによって生成した基である);
〔化9〕
〔化10〕
また、本発明は、式(I)により示されるホスホニウム化合物を含む誘導体化用試薬も提供する。当該試薬は、男性ホルモンの誘導体化用の試薬であってもよい
また、本発明は、
以下のホスフィン化合物と
(ここで、 は、アルキル基を表し、当該アルキル基は、置換若しくは非置換の、炭素数1~20の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素数5~20の環状アルキル基であり、
及びRは、互いに独立に、アルキル基又はアリール基を表し、当該アルキル基は、置換若しくは非置換の、炭素数1~20の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素数5~20の環状アルキル基であり、当該アリール基は、置換又は非置換の炭素数6~20のアリール基である)、
ヒドラジド基を有する反応性化合物と、
を含む誘導体化用試薬キットも提供する。当該試薬キットは、男性ホルモンの誘導体化用の試薬キットであってもよい

また、本発明は、質量分析対象化合物を、式(I)のホスホニウム化合物、前記誘導体化用試薬、又は前記誘導体化用試薬キットを用いて誘導体化することを含む、質量分析方法も提供する。当該質量分析対象化合物は、男性ホルモンであってもよい。
また、本発明は、
Xがヒドラジド基を有する反応基であるところの請求項1~3のいずれか一項に記載のホスホニウム化合物の製造方法であって、
以下のホスフィン化合物と
(ここで、R、R、及びRは、互いに独立に、アルキル基又はアリール基を表し、
前記アルキル基は、置換若しくは非置換の、炭素数1~20の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素数5~20の環状アルキル基であり、
前記アリール基は、置換又は非置換の炭素数6~20のアリール基である)、
以下のハロゲン化カルボン酸エチルと、
を反応させて、以下の化合物
を生成する第一反応工程と、
前記第一反応工程において生成された化合物をヒドラジンと反応させて、前記ホスホニウム化合物を生成する第二反応工程と、
を含む前記製造方法も提供する。
〔化15〕
〔化16〕
本発明により、例えば質量分析方法などの、目的化合物のイオン化が行われる分析方法において、イオン化効率を高めることができる。これにより、このような分析方法の検出感度を高めることができる。
なお、本発明の効果は、ここに記載された効果に限定されず、本明細書内に記載されたいずれかの効果であってもよい。
化合物1のNMRスペクトルデータである。 化合物1のNMRスペクトルデータ及びESI-MSデータである。 化合物2のNMRスペクトルデータである。 化合物2のNMRスペクトルデータ及びESI-MSデータである。 化合物3のNMRスペクトルデータである。 化合物3のNMRスペクトルデータ及びESI-MSデータである。 化合物4のNMRスペクトルデータである。 化合物4のNMRスペクトルデータ及びESI-MSデータである。 化合物5のNMRスペクトルデータである。 化合物5のNMRスペクトルデータ及びESI-MSデータである。 化合物6のNMRスペクトルデータである。 化合物6のNMRスペクトルデータ及びESI-MSデータである。 化合物7のNMRスペクトルデータである。 化合物7のNMRスペクトルデータ及びESI-MSデータである。 化合物8のNMRスペクトルデータである。 化合物8のNMRスペクトルデータ及びESI-MSデータである。 化合物9のNMRスペクトルデータである。 化合物9のNMRスペクトルデータ及びESI-MSデータである。 ホスホニウム化合物の構造を示す図である。 テストステロン誘導体化の反応式を示す図である。 テストステロン誘導体の化学構造を示す図である。 ジラール試薬T及びPの化学構造を示す図である。 生成された誘導体のSRMクロマトグラムである。 生成された誘導体のSRMクロマトグラムである。 生成された誘導体のSRMクロマトグラムである。 生成された誘導体のSRMクロマトグラムである。 生成された誘導体のSRMクロマトグラムである。 生成された誘導体のSRMクロマトグラムである。 測定されたピーク面積を示すグラフである。 測定されたピーク面積を示すグラフである。 エストラジオール誘導体化の反応式を示す図である。 反応中間体のNMRスペクトルデータである。 誘導体D11のNMRスペクトルデータである。 誘導体D11のNMRスペクトルデータ及びESI-MSデータである。 生成されたエストラジオール誘導体の化学構造を示す図である。 生成されたエストラジオール誘導体の化学構造を示す図である。 生成されたエストラジオール誘導体の化学構造を示す図である。 生成された誘導体のSRMクロマトグラムである。 生成された誘導体のSRMクロマトグラムである。 生成された誘導体のSRMクロマトグラムである。 生成された誘導体のSRMクロマトグラムである。 生成された誘導体のSRMクロマトグラムである。 生成された誘導体のSRMクロマトグラムである。 生成された誘導体のSRMクロマトグラムである。 測定されたピーク面積を示すグラフである。 測定されたピーク面積を示すグラフである。 測定されたピーク面積を示すグラフである。 化合物31のNMRスペクトルデータである。 化合物31のMSスペクトルデータである。 オキシトシン誘導体化の反応式を示す図である。 生成された誘導体のSRMクロマトグラムである。 測定されたピーク面積を示すグラフである。 テストステロン誘導体化の反応式を示す図である。 エストラジオール誘導体化の反応式を示す図である。 オキシトシン誘導体化の反応式を示す図である。
以下に本発明の好ましい実施形態について説明する。ただし、本発明は以下の好ましい実施形態のみに限定されず、本発明の範囲内で自由に変更することができる。
1.本発明の説明
上記で述べたLC-MS/MS及びMALDI-MSなどの質量分析装置は、微量の代謝物や含有物を定量する極めて強力な分析手法である。しかしながら、化合物によっては、イオン化効率が低いために、検出ができない又は検出はできるが定量が可能となる程度の精度が確保できない場合が多い。
食品やサプリメントなどのように或る程度の量で入手可能な試料に関しては、サンプル量を増やすことで、感度の不足をカバーすることは可能である。しかしながら、このような試料について、より少ないサンプル量で目的化合物を検出又は定量できることが望ましく、イオン化効率の向上が望ましい。
例えばヒト代謝物のような目的化合物に関しては、目的化合物が含まれる試料のサンプル量を簡単には増やせない場合が多い。このような目的化合物に関しては、イオン化効率の向上は非常に重要である。
検出感度の向上のために、質量分析計のより高感度化などの装置改良のみならず、目的化合物を改変し(誘導体化し)、イオン化効率を高めることが広く行われてきた。一般に生体代謝物は主に炭素、水素、酸素、窒素から成る有機化合物で非共有電子対を持つ酸素原子や窒素原子は水素イオン(プロトン)が付加しやすくイオン化効率が高い。特に窒素原子は酸素原子に比べてプロトン付加能が高く、窒素原子を含む化合物はそれを含まない化合物に比べてイオン化しやすい傾向がある。
上記で述べたとおり、脂溶性ホルモンは窒素原子を含まないことから窒素原子を含む誘導体化試薬を用いた誘導体化で窒素原子を導入したイオン化効率の向上が行われてきた。一方、窒素原子を有しているペプチドやタンパク質は脂溶性ホルモンに比べて一般的にイオン化しやすい傾向があり、ペプチドやタンパク質に関しては、誘導体化は必ずしも一般的な手法ではない。
これまでに微量代謝物などについてすでに質量分析装置を用いた分析が行われているが、精確な定量のために更なる感度向上を行うことが望ましい。
定量質量分析の定法であるLC-MS/MSではエレクトロスプレー(ESI)により目的化合物をイオン化させるので、目的化合物のイオン化のしやすさは目的化合物自身の極性(プロトン付加のしやすさ)とイオン化の際に揮発する移動相の有機溶媒組成に依存する。化合物が異なれば構造も違うし極性も変わるので、検出感度をさらに一層高めていくには化合物に合ったイオン化効率の最適化が必要である。
また、LC-MS/MSでは選択反応検出(SRM)でより高感度な定量測定を可能にしているため、より低バックグラウンドになるようなフラグメンテーションが得られることも重要な点である。
本発明者らは、特定のホスホニウム化合物によって、目的化合物のイオン化が行われる分析手法におけるイオン化効率を高めることができることを見出した。すなわち、本発明は、目的化合物に疎水性を制御するための基と目的化合物と反応する基とを有するホスホニウム化合物を提供する。
当該ホスホニウム化合物はリン原子を含む。リン原子は、周期表において、窒素原子と同じ15族であり、一つ下の周期に位置する。リン原子も窒素原子と同じように非共有電子対を持つので、プロトン付加しやすい特徴がある。
加えてリン原子はd軌道に電子をもつので、HSAB(Hard and Soft Acids and Bases)則より、窒素原子より柔らかく、アルキルもしくはベンジルハライドに対する求核置換反応がより起きやすい性質を持つ。そのため、容易に多種多様な疎水性置換基をリン原子上に導入することができる。よって、目的化合物に応じた疎水性置換基をリン原子に結合させることができ、目的化合物にとって最適な誘導体化試薬を提供することができる。
ペプチドやタンパク質は、N末端のみならずリジン残基側鎖にあるアミノ基など複数の反応点を持つ。そのため、アミノ基を介した誘導体化反応を行うと、複数種の反応生成物が生成することがあり、これは定量分析の感度について悪影響を及ぼし得る。本発明により、例えばネイティブケミカルライゲーション反応によって、N末端にシステイン残基を有するペプチド又はタンパク質(例えばオキシトシン及びバソプレッシンなどのペプチドホルモン)を選択的に誘導体化することもできる。本発明により、複数種の反応生成物が生成することを防ぐことができ、加えて、目的外の化合物の誘導体化反応を抑制することができる。これにより、質量分析におけるバックグラウンドノイズを下げることができ、検出感度の向上を図ることが可能である。
本発明に従うホスホニウム化合物によって、目的化合物に電荷を導入し且つ適切な疎水性を導入することができる。これにより、目的化合物の質量分析を可能とし、さらに、定量分析の検出感度を最適化することができる。
また、本発明により、例えば臨床検査分野において、質量分析を用いた微量代謝物を高感度で検出することができ、さらに高感度で定量することもできる。本発明は、質量分析装置の種類にかかわらず使用できるものである。例えば臨床検査分野において質量分析による微量代謝物の定量が広く普及するためにはいつでもどこでもどのメーカーの装置でも同じ値が出せることが望ましい。本発明による検出感度向上によって、各メーカーの機種間差を埋めることで、質量分析による微量代謝物の定量の普及を支援することができる。
以下で、本発明について、より詳細に説明する。
2.第一の実施形態(ホスホニウム化合物)
本発明は、下記式(I)
で表されるホスホニウム化合物を提供する。以下で、式(I)の各構成要素について説明する。
式(I)において、R、R、及びRは、互いに独立に、アルキル基又はアリール基を表してよい。前記アルキル基は、置換若しくは非置換の、炭素数1~20の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素数5~20の環状アルキル基である。前記アリール基は、置換又は非置換の炭素数6~20のアリール基である。R、R、及びRによって、誘導体化される目的化合物に疎水性を付与することができる。また、R、R、及びRの種類は、付与されるべき疎水性の程度に応じて、当業者により適宜選択されてもよい。
前記アルキル基は、置換若しくは非置換の、炭素数1~20の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基であってよい。前記直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基の炭素数は、好ましくは1~18であってよく、例えば1~16、1~14、1~12、又は1~10であってもよい。当該炭素数は、置換基の炭素原子数を含まない炭素数である。
一の実施態様において、前記直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基は、非置換のアルキル基であってよく、すなわち、炭素鎖に水素のみが結合しているアルキル基であってよい。
他の実施態様において、前記直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基は、置換されたアルキル基であってよく、すなわち、炭素鎖に水素に加えて、1以上の置換基が結合していてよい。当該置換基として、例えばアルコキシ基、アリール基、ヒドロキシ基、アミノ基、及びハロゲン原子が挙げられるが、これらに限定されない。当該置換基の位置及び数は、例えば導入されるべき疎水性などの各種要因に応じて、当業者により適宜選択されてよい。また2以上の置換基を有する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。
前記アルキル基は、置換若しくは非置換の、炭素数5~20の環状アルキル基であってもよい。前記環状アルキル基の炭素数は、好ましくは5~18であってよく、例えば5~16、5~14、5~12、又は5~10であってもよい。当該炭素数は、置換基の炭素原子数を含まない炭素数である。
一の実施態様において、前記環状アルキル基は、非置換の環状アルキル基であってよく、すなわち、炭素鎖に水素のみが結合しているアルキル基であってよい。
他の実施態様において、前記環状アルキル基は、置換されたアルキル基であってよく、すなわち、炭素鎖に水素に加えて、1以上の置換基が結合していてよい。当該置換基として、例えばアルコキシ基、アリール基、ヒドロキシ基、アミノ基、及びハロゲン原子が挙げられるが、これらに限定されない。当該置換基の位置及び数は、例えば導入されるべき疎水性などの各種要因に応じて、当業者により適宜選択されてよい。また2以上の置換基を有する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。
前記アリール基は、置換又は非置換の炭素数6~20のアリール基である。前記アリール基の炭素数は好ましくは6~18であり、例えば6~16、6~14、6~12、又は6~10であってよい。当該炭素数は、置換基の炭素原子数を含まない炭素数である。
一の実施態様において、前記アリール基は、非置換のアリール基であってよく、例えばフェニル基又はナフチル基であってよく、特にはフェニル基であってよい。
他の実施態様において、前記アリール基は、置換されたアリール基であってよい。前記置換されたアリール基における置換基の例として、例えばアミノ基、COO(カルボン酸イオン基)、COOM(カルボキシ基又はカルボン酸塩基)、SO (スルホン酸イオン基)、又はSOM(スルホン酸基又はスルホン酸塩基)、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヒドロキシ基、及びハロゲン原子が挙げられる。当該置換基の数は1つ又は2つ以上であってもよい。前記置換されたアリール基が2以上の置換基を有する場合、それらは同一であってもよく又は異なっていてもよい。前記COOM及び前記SOMに関して、Mは、水素原子であってよく、又は、アルカリ金属原子であってよい。当該アルカリ金属原子は、例えばリチウム原子、ナトリウム原子、又はカリウム原子であってよい。
本発明の特に好ましい実施態様において、
式(I)のうちのR、R、及びRは、互いに独立に、以下のいずれかを表してよい。
[ここで、mは0~8のいずれかの整数であってよく、特には0~6のいずれかの整数であってよい。nは0~5のいずれか整数であってよく、例えば0~4のいずれかの整数であってよい。Zは、H、NH、COO、COOM、SO (スルホン酸イオン基)、又はSOM(スルホン酸基又はスルホン酸塩基)を表し、Mは、水素原子、リチウム原子、ナトリウム原子、又はカリウム原子を表す。)
式(I)において、Xは、ヒドラジド基、ハライド基若しくは擬ハライド基、又はチオエステル基を有する反応基である。前記反応基によって、式(I)のホスホニウム化合物が目的化合物と結合することができる。前記反応基の種類は、目的化合物の種類に応じて当業者により適宜選択されてよい。前記反応基は、例えば、酸素原子を有する官能基(例えばカルボニル、フェノール、又はヒドロキシ)と反応する反応基であってよく、又は、窒素原子を有する官能基(例えばアミン)に反応する反応基であってよい。
一実施態様において、式(I)中のXは、ヒドラジド基を有する反応基であってよい。この実施態様において、前記反応基は、酸素原子を有する官能基を反応対象とする基であってよく、カルボニルを反応対象とする基であってよい。
この実施態様において、特に好ましくは、前記反応基は、
であり、ここでoは0~6のいずれかの整数であってよく、例えばoは0~4のいずれかの整数、特には、oは0、1、又は2のいずれかであってよい。
他の実施態様において、式(I)中のXは、ハライド基又は擬ハライド基(例えばトリフラート基又はトシラート基など)を有する反応基であってよく、例えばスルホニルハライド基、アセチルハライド基、スルホニルトリフラート基、アセチルトリフラート基、スルホニルトシラート基、又はアセチルトシラート基を有する反応基であってよい。式(I)中のXは、特に好ましくはスルホニルハライド基、スルホニルトリフラート基、又はスルホニルトシラート基を有する反応基であり、さらに好ましくはスルホニルハライド基又はスルホニルトリフラート基を有する反応基である。これらの基は、質量分析における感度向上の観点から、より優れている。この実施態様において、前記反応基は、酸素原子を有する官能基を反応対象とする基であってよく、特にはフェノール又はヒドロキシを反応対象とする基であってよい。
この実施態様において、特に好ましくは、前記反応基は、
である。ここで、Wは、ハロゲン原子(例えばF、Cl、又はBr)又は擬ハロゲン(例えばトリフラート基(TfO)又はトシラート基など)を表す。pは0~6のいずれかの整数であってよく、例えばpは0~4のいずれかの整数、特にはpは0、1、又は2のいずれかであってよい。
さらに他の実施態様において、式(I)中のXは、チオエステル基を有する反応基であってよい。この実施態様において、前記反応基は、窒素原子を有する官能基を反応対象とする基であってよく、特にはアミンを反応対象とする基であってよい。
この実施態様において、特に好ましくは、前記反応基は、
である。ここでVは、H、NH、SO (スルホン酸イオン基)、SOM、COO、COOM、又は親水性タグであり、Mは水素原子、リチウム原子、ナトリウム原子、又はカリウム原子を表す。
式(I)において、Yは、全体の荷電が-1のアニオンであるか、又は、Yは不在である。当該アニオンは、例えばハロゲンイオン(例えばF、Cl、又はBr)又は擬ハロゲンイオン(例えばトリフラートイオン又はトシラートイオンなど)であってよい。
以上で述べた構造的特徴を有するホスホニウム化合物により、目的化合物に恒久的正電荷を付与することが可能となる。
本発明のホスホニウム化合物は、上記で述べたように、酸素原子又は窒素原子を有する官能基を反応対象とする反応基を含む。
前記反応基がヒドラジドを含む場合において、前記目的化合物は、カルボニル基を有する化合物であってよい。この場合における目的化合物は、例えば男性ホルモンであり、特にはテストステロンであるが、これに限定されない。
前記反応基がハライド基又は擬ハライド基を含む場合において、前記目的化合物は、フェノール基又はヒドロキシ基を有する化合物であってよい。この場合における目的化合物は、例えば女性ホルモンであり、特にはエストラジオールであるが、これに限定されない。
前記反応基がチオエステルである場合において、前記目的化合物はアミンを有する化合物であってよい。この場合における目的化合物は、例えばN末端にシステイン残基を持つペプチド及びタンパク質であり、特にはオキシトシンを挙げることができるが、これに限定されない。
前記目的化合物は、生体試料に含まれているものであってよい。本発明のホスホニウム化合物によって誘導体化される目的化合物を含みうる生体試料は、例えば体液又は体液由来試料であってよく、より具体的には血清、血漿、血液、尿、髄液、及び唾液のうちのいずれかであってよい。このような生体試料に対して、必要に応じて各分析方法に応じた所定の前処理を行い、そして、本発明のホスホニウム化合物によって誘導体化処理を行うことで、目的化合物を検出することができる。
本発明のホスホニウム化合物を目的化合物と反応させることで、当該目的化合物に正電荷が付与され、且つ、当該目的化合物の疎水性を制御することができる(特には当該目的化合物の疎水性を高める又は低めることができる)。質量分析の目的化合物にこのように正電荷が付与され且つその疎水性が制御されることで、当該目的化合物のイオン化効率を高めることができ、これは質量分析における検出感度の向上をもたらす。
本発明のホスホニウム化合物と目的化合物との反応型式は、当該ホスホニウム化合物が有する反応基Xの種類に応じて選択されてよい。
反応基Xがヒドラジド基である場合は、当該反応型式は脱水縮合反応であってよい。この場合において、図30Aに示されるとおりの誘導体化が行われる。
反応基Xがハライド基又は擬ハライド基である場合は、当該反応型式は求電子置換反応であってよい。この場合において、図30Bに示されるとおりの誘導体化が行われる。同図の上段の反応式が、ハライド基がスルホニルハライド基である場合の誘導体化反応を示す。同図の下段の反応式が、ハライド基がアセチルハライド基である場合の誘導体化反応を示す。
反応基Xがチオエステル基である場合は、当該反応型式はネイティブケミカルライゲーション(NCLともいう)であってよい。この場合において、図30Cに示されるとおりの誘導体化が行われる。
本発明は、例えば以下の化合物を提供するが、本発明はこれらの化合物に限定されるものでない。式(I)のR、R、R、X、及びYは、例えば目的化合物や分析方法の種類などに応じて、適宜選択されてよい。
Xがヒドラジド基を有する反応基であるところの本発明に従うホスホニウム化合物の例として、以下を挙げることができる:
(2-ヒドラジンイル-2-オキソエチル)トリメチルホスホニウムブロミド;
(4-(ヒドラジンカルボニル)ベンジル)トリメチルホスホニウムブロミド;
ベンジル(2-ヒドラジンイル-2-オキソエチル)ジメチルホスホニウムブロミド;
(2-ヒドラジンイル-2-オキソエチル)トリエチルホスホニウムブロミド;
ベンジル(2-ヒドラジンイル-2-オキソエチル)ジエチルホスホニウムブロミド;
(2-ヒドラジンイル-2-オキソエチル)トリフェニルホスホニウムブロミド;
トリブチル(4-(ヒドラジンカルボニル)ベンジル)ホスホニウムブロミド;
トリブチル(2-ヒドラジンイル-2-オキソエチル)ホスホニウムブロミド;及び
(2-ヒドラジンイル-2-オキソエチル)ジフェニル(3-スルホフェニル)ホスホニウムブロミド。
Xがハライド基又は擬ハライド基を有する反応基であるところの本発明に従うホスホニウム化合物の例として、以下を挙げることができる:
(4-(クロロスルホニル)ベンジル)トリメチルホスホニウムブロミド;
(4-(クロロスルホニル)ベンジル)トリエチルホスホニウムブロミド;
(4-(クロロスルホニル)ベンジル)ジメチルフェニルホスホニウムブロミド;
(4-(クロロスルホニル)ベンジル)ジエチルフェニルホスホニウムブロミド;
(4-(クロロスルホニル)ベンジル)ジフェニルメチルホスホニウムブロミド;
(4-(クロロスルホニル)ベンジル)トリフェニルホスホニウムブロミド;
(4-(クロロスルホニル)ベンジル)トリブチルホスホニウムブロミド;
(4-(クロロスルホニル)ベンジル)トリシクロヘキシルホスホニウムブロミド;
(2-ブロモ-2-オキソエチル)トリメチルホスホニウムブロミド;
(2-ブロモ-2-オキソエチル)トリエチルホスホニウムブロミド;
(2-ブロモ-2-オキソエチル)ジメチルフェニルホスホニウムブロミド;及び
(2-ブロモ-2-オキソエチル)ジエチルフェニルホスホニウムブロミド。
Xがチオエステル基を有する反応基であるところの本発明に従うホスホニウム化合物の例として、以下を挙げることができる:
2-(2-(4-((トリブチルホスホニオ)アセチル)チオ)フェニル)アセタミド)エタン-1-スルホネート。
3.第二の実施形態(ホスホニウム化合物)
また、本発明は、
下記式(I)
[式(I)において、
、R、及びRは、同一の又は異なる疎水性炭化水素基であり;
Xは、酸素原子含有官能基又は窒素原子含有官能基に反応する反応基であり;且つ、
は、カウンターアニオンであるか、又は、Yは、不在である]
で表されるホスホニウム化合物も提供する。
前記疎水性炭化水素基は、目的化合物の疎水性を制御する(例えば疎水性を高める又は低める、特には高める)炭化水素基である。前記疎水性炭化水素基は、例えば上記2.においてR、R、及びRに関して述べたアルキル基又はアリール基であってよいが、これらに限定されない。前記疎水性炭化水素基は、目的化合物の疎水性を制御する(例えば高める又は低める、特には高める)ことができるように構成された他の炭化水素基であってもよい。当該他の炭化水素基は、例えば、アルケニル基などであってもよい。前記アルケニル基は、直鎖状でもあってもよく又は分岐状であってもよい。前記アルケニル基は、置換基を有していてもよい。前記アルケニル基の炭素数は、好ましくは1~20、より好ましくは1~18であってよく、例えば1~16、1~14、1~12、又は1~10であってよい。当該炭素数は、置換基の炭素原子数を含まない炭素数である。
前記酸素原子含有官能基又は窒素原子含有官能基に反応する反応基は、目的化合物に含まれる前記官能基と反応して、目的化合物に本発明のホスホニウム化合物を結合させる反応基である。
前記酸素原子含有官能基に反応する反応基は、例えばカルボニル、フェノール、又はヒドロキシと反応する反応基であってよい。当該反応基として、例えば上記2.においてXに関して述べたヒドラジド基、又は、ハライド基若しくは擬ハライド基を挙げることができるがこれらに限定されない。
前記窒素原子含有官能基に反応する反応基は、例えばアミンと反応する反応基であってよい。当該反応基として、例えば上記2.においてXに関して述べたチオエステル基を挙げることができるが、これに限定されない。
前記カウンターアニオンは、全体の荷電が-1のアニオンであってよい。当該アニオンは、例えばハロゲンイオン(例えばF、Cl、又はBr)又は擬ハロゲンイオン(例えばトリフラートイオン又はトシラートイオンなど)であってよい。また、前記カウンターアニオンは不在であってもよい。
前記ホスホニウム化合物によって、上記2.において説明した効果が奏される。例えば、当該ホスホニウム化合物により、目的化合物に恒久的正電荷を付与することが可能となる。また、当該ホスホニウム化合物を目的化合物と反応させることで、当該目的化合物に正電荷が付与され、且つ、当該目的化合物の疎水性を制御することができる(特には当該目的化合物の疎水性を高める又は低めることができる)。
4.第三の実施形態(目的化合物と結合したホスホニウム化合物)
また、本発明は、上記2.又は3.において説明したホスホニウム化合物を目的化合物と結合させて得られたホスホニウム化合物も提供する。当該ホスホニウム化合物は、下記式(II)によって表される化合物である。
式(II)において、R、R、及びR並びにYは、上記2.又は3.において式(I)に関して説明したとおりであり、その説明が本実施形態においても当てはまる。そのため、R、R、及びR並びにYについての説明は省略する。
式(II)において、Jは、ヒドラジド基、ハライド基若しくは擬ハライド基、又はチオエステル基を有する反応基と誘導体化対象化合物との反応により生成した基を表す。
前記反応基は、上記2.又は3.において式(I)に関して説明したとおりであり、その説明が本実施形態についても当てはまる。前記誘導体化対象化合物は、上記2.において説明した目的化合物であり、その説明が本実施形態についても当てはまる。前記反応基と前記誘導体化対象化合物との組合せは、上記2.において説明したとおり、目的化合物に応じて選択される。
以下で、Jのより具体的な例を説明する。
前記反応基がヒドラジド基を有する反応基である場合において、Jは、
であってよい。ここで、oは0~6のいずれかの整数であり、例えばoは0~4のいずれかの整数、特にはoは0、1、又は2のいずれかであってよい。また、Q1は、前記誘導体化対象化合物に含まれるカルボニル基とヒドラジド基との反応(特には脱水縮合反応)によって生成した基であってよい。
前記反応基がハライド基又は擬ハライド基を有する反応基である場合において、Jは、
であってよい。ここで、pは0~6のいずれかの整数であってよく、例えばpは0~4のいずれかの整数、特にはpは0、1、又は2のいずれかであってよい。また、Q2は、前記誘導体化対象化合物に含まれるフェノール基又はヒドロキシ基とハライド基若しくは擬ハライド基との反応(特には求電子置換反応)によって生成した基である。
前記反応基がチオエステル基を有する反応基である場合において、Jは、
であってよい。ここで、Q3は、前記誘導体化対象化合物に含まれるアミノ基とチオエステル基との反応(ネイティブケミカルライゲーション)によって生成した基である。
5.第四の実施形態(誘導体化用試薬)
本発明は、上記2.又は3.において述べた式(I)のホスホニウム化合物を含む誘導体化用試薬も提供する。前記誘導体化用試薬は、上記2.において述べた目的化合物を誘導体化するために用いられる試薬であってよい。より具体的には、前記誘導体化用試薬は、前記目的化合物に正電荷を付与するために、特には前記目的化合物に正電荷を付与し且つ前記目的化合物の疎水性を制御するために用いられる試薬であってよい。
前記誘導体化用試薬は、前記ホスホニウム化合物に加えて溶媒を含んでいてもよい。すなわち、前記誘導体化用試薬において、前記ホスホニウム化合物は溶媒中に存在していてよい。当該溶媒は有機溶媒であってよく、例えばメタノール、エタノール、又はプロパノールなどのアルコールであってよいが、これらに限定されない。また、当該溶媒は、水、または水と前記アルコールもしくはアセトニトリルとの混合溶媒でもよい。
6.第五の実施形態(誘導体化用試薬キット)
本発明は、誘導体化用試薬キットも提供する。前記試薬キットは、上記4.において述べた式(II)によって表される化合物を生成するために用いられる試薬キットである。
上記2.又は3.において説明したホスホニウム化合物を用いた目的化合物の誘導体化において、目的化合物の疎水性を制御するためのR、R、及びRを有し且つ目的化合物と結合するための反応基を有するホスホニウム化合物が用意され、そして、当該ホスホニウム化合物によって目的化合物が誘導体化される。
目的化合物の誘導体化のために、最初に、目的化合物を反応基含有化合物と反応させて結合体を得、そして次に、当該結合体に、R、R、及びRを有するホスフィン化合物を結合させてもよい。このように、目的化合物に、反応基含有化合物及びホスフィン化合物を逐次的に反応させて、目的化合物の誘導体化が行われてもよい。本発明は、このような誘導体化を行うために用いられる試薬キットも提供する。
また、目的化合物の誘導体化のために、目的化合物と、反応基含有化合物と、R、R、及びRを有するホスフィン化合物と、を反応させて、目的化合物の誘導体化が行われてもよい。このように、1回の反応処理において、目的化合物に反応基含有化合物及びホスフィン化合物が結合されてもよい。
すなわち、本発明の誘導体化用試薬キットは、
以下のホスフィン化合物と
(ここで、R、R、及びRは、互いに独立に、アルキル基又はアリール基を表し、
前記アルキル基は、置換若しくは非置換の、炭素数1~20の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素数5~20の環状アルキル基であり、
前記アリール基は、置換又は非置換の炭素数6~20のアリール基である)、
ヒドラジド基、ハライド基若しくは擬ハライド基、又はチオエステル基を有する反応性化合物と、
を含んでよい。
本発明の誘導体化用試薬キットを利用して目的化合物を誘導体化する場合、最初に、前記ヒドラジド基、ハライド基若しくは擬ハライド基、又はチオエステル基を有する反応性化合物を目的化合物と反応させて前記反応性化合物と前記目的化合物との結合体が得られる。そして次に、当該結合体に、前記ホスフィン化合物を結合させて、目的化合物が誘導体化される。
前記ホスフィン化合物に含まれるR、R、及びRは、上記2.において式(I)の化合物に関して説明したとおりであってよく、その説明が本実施形態においても当てはまる。
前記反応性化合物は、上記2.において式(I)の化合物に関して説明した反応基XとアニオンYとを含む化合物であってよく、例えば、
X-Y、
によって表される化合物であってよい。
反応基Xは、上記2.において式(I)の化合物に関して説明したとおりであり、その説明が本実施形態についても当てはまる。Yは、上記2.において式(I)の化合物に関して説明したアニオンの原子である。
なお、一の好ましい実施態様において、Xは、上記2.において説明したハライド基若しくは擬ハライド基を有する反応基又はチオエステル基を有する反応基である。これら反応基を用いた目的化合物の誘導体化に関して、上記2.において説明したホスホニウム化合物を利用して誘導体化するよりも、本実施形態に従うキットを利用して目的化合物を誘導体化するほうが、生成される誘導体の生成効率を高めることができる場合がある。
7.第六の実施形態(質量分析方法)
本発明は、質量分析対象化合物を、上記2.又は3.において説明したホスホニウム化合物、上記5.において説明した誘導体化用試薬、又は上記6.において説明した誘導体化用試薬キットを用いて誘導体化する誘導体化工程を含む質量分析方法も提供する。
前記質量分析対象化合物は、上記2.において説明した目的化合物であってよい。
前記誘導体化が行われた質量分析対象化合物は、上記4.において説明したホスホニウム化合物であってよい。
当該誘導体化によって、質量分析対象化合物のイオン効率を向上させることができ、これにより質量分析における検出感度を高めることができる。
前記質量分析方法は、前記誘導体化工程の後に、質量分析対象化合物をイオン化することを含む質量分析工程を含む。
前記イオン化は、より効率的なイオン化のために例えばエレクトロスプレーイオン化法(ESI)、大気圧化学イオン化法(APCI)、又はマトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)によるイオン化であってよいが、これら以外のイオン化法によるイオン化であってもよい。
本発明に従う誘導体化された目的化合物をこれらのイオン化法によってイオン化することで、目的化合物の定量および組織内又は細胞内での目的化合物の分布(イメージング)をより精確かつ高解像度で測定又は観測することが可能である。
前記質量分析工程は、例えば液体クロマトグラフィータンデム質量分析装置(LC-MS/MS)又はマトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析装置(MALDI-MS)によって実行されてよいが、質量分析工程を実行する装置はこれらに限定されない。
質量分析工程における具体的な手順は、例えば採用されるイオン化法及び使用される装置に応じて当業者が適宜設定することができる。
8.第七の実施形態(ホスホニウム化合物の製造方法)
本発明は、上記2.又は3.において説明した式(I)のホスホニウム化合物の製造方法も提供する。
式(I)のXがヒドラジド基を有する反応基である場合における前記製造方法は、
以下のホスフィン化合物と
以下のハロゲン化カルボン酸エチルと、
を反応させて、以下の化合物
を生成する第一反応工程と、
前記第一反応工程において生成された化合物をヒドラジンと反応させて、前記ホスホニウム化合物を生成する第二反応工程と、を含む。
前記第一反応工程において用いられる前記ホスフィン化合物に関して、R、R、及びRは、上記2.において説明したとおりであってよい。
また、前記第一反応工程において用いられるハロゲン化カルボン酸エチルのYも、上記2.において説明したとおりのYであってよい。
式(I)のXがチオエステル基を有する反応基である場合における前記製造方法は、 以下のホスホニウム酢酸と
以下のチオールと
を反応させて前記ホスホニウム化合物を生成することを含む。
前記ホスホニウム酢酸のR、R、及びRは、上記2.において説明したとおりであってよい。
また、前記チオールのVも、上記2.において説明したとおりのVであってよい。
9.実施例
以下で実施例を参照して本発明をより詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
ヒドラジド基を有するホスホニウム化合物((2-ヒドラジンイル-2-オキソエチル)トリメチルホスホニウムブロミド)の合成
ブロモ酢酸エチル(64μL、0.6 mmol)をアセトニトリル2 mLに溶かし、トリメチルホスフィン-テトラヒドロフラン溶液(3 M 0.24 mL、トリメチルホスフィン量:0.72 mmol)を添加し、混合物を得た。当該混合物中に、当該添加後直ちに白色沈殿が発生した。当該混合物を室温で1時間撹拌した後、当該混合物にメタノールを加えて沈殿を溶解し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。当該濃縮により生じた残渣をエタノール2 mLに溶かし、そこへ、ヒドラジン一水和物(純度80%、59μL、0.96 mmol)を加えて室温で1時間撹拌した後、50℃でさらに1.5時間撹拌した。当該撹拌後、ロータリーエバポレーターで濃縮して反応生成物((2-ヒドラジンイル-2-オキソエチル)トリメチルホスホニウムブロミド、以下「化合物1」ともいう)を得た(139 mg、0.6 mmol)。
化合物1について、1H‐NMR測定、13C‐NMR測定、31P‐NMR測定、及び質量分析を行った。これらの測定結果は、以下のとおりであった。
1H‐NMR (CD3OD) δ 3.56 (d, 2JPH = 15.0 Hz, 2H), 2.07 (d, 2JPH = 12.0 Hz, 9H) (図1-1のA); 13C‐NMR (CD3OD) δ 165.9, 31.5, 9.8(図1-1のB); 31P‐NMR (CD3OD) δ 31.1(図1-2のC); ESI‐MS calculated for C5H14N2OP+[M +] 149.08383, found 149(図1-2のD).
化合物1の構造は、図10において符号1により示されるとおりである。
[実施例2]
ヒドラジド基を有するホスホニウム化合物((4-(ヒドラジンカルボニル)ベンジル)トリメチルホスホニウムブロミド)の合成
4-メトキシカルボニルベンジルブロミド(1 g、4.4 mmol)をアセトニトリル8 mLに溶かし、トリメチルホスフィン-テトラヒドロフラン溶液(3 M 1.7 mL、トリメチルホスフィン量:5.2 mmol)を添加し、室温で撹拌した。当該撹拌を1.5時間行った後に白色沈殿が発生した。当該沈殿をろ過し、白色固体をクロロホルムで洗浄し、乾燥して(4-(メトキシカルボニル)ベンジル)トリメチルホスホニウムブロミドを得た(1.5 g, 4.4 mmol)。
(4-(メトキシカルボニル)ベンジル)トリメチルホスホニウムブロミド(115 mg, 0.37 mmol)をメタノール2 mLに溶かし、ヒドラジン一水和物(純度80%、27μL、0.45 mmol)を加えて氷冷下で30分間撹拌した後、ロータリーエバポレーターで濃縮して反応生成物(((4-(ヒドラジンカルボニル)ベンジル)トリメチルホスホニウムブロミド)、以下「化合物2ともいう」)を得た(114 mg、0.37 mmol)。
化合物2について、1H‐NMR測定、13C‐NMR測定、31P‐NMR測定、及び質量分析を行った。これらの測定結果は、以下のとおりであった。
1H‐NMR (CD3OD) δ 8.04 (d, J = 7.6 Hz, 2H), 7.53 (d, J = 7.6 Hz, 2H), 3.98 (d, 2JPH = 16.8 Hz, 2H), 1.93 (d, 2JPH = 14.8 Hz, 9H) (図2-1のA); 13C‐NMR (CD3OD) δ 168.6, 136.4, 135.0, 132.2, 130.6, 53.6, 8.7(図2-1のB); 31P‐NMR (CD3OD) δ 28.0(図2-2のC); ESI‐MS calculated for C11H18N2OP+ [M +] 225.11513, found 225(図2-2のD).
化合物2の構造は、図10において符号2により示されるとおりである。
[実施例3]
ヒドラジド基を有するホスホニウム化合物(ベンジル(2-ヒドラジンイル-2-オキソエチル)ジメチルホスホニウムブロミド)の合成
ジメチルフェニルホスフィン(103μL、0.72 mmol)とブロモ酢酸エチル(76μL、0.72 mmol)をトルエン1 mLに加えたところ、これらが混合された液体は白濁した。当該液体に、さらにアセトニトリル1 mLを加えると直ちに白色沈殿が発生した。当該液体にさらにメタノール1 mLを加えると、当該沈殿は速やかに溶解した。当該溶解後、室温で1.5時間撹拌した後、ロータリーエバポレーターで濃縮した。当該濃縮により得られた残渣をエタノール3 mLに溶かし、ヒドラジン一水和物(純度80%、71μL、1.1 mmol)を加えて室温で1時間撹拌した後、ロータリーエバポレーターで濃縮して反応生成物(ベンジル(2-ヒドラジンイル-2-オキソエチル)ジメチルホスホニウムブロミド、以下「化合物3」ともいう)を得た(99 mg、0.69 mmol)。
化合物3について、1H‐NMR測定、13C‐NMR測定、31P‐NMR測定、及び質量分析を行った。これらの測定結果は、以下のとおりであった。
1H‐NMR (CDCl3) δ 7.68 (br. s, 2H), 7.47 (br. s, 3H), 3.40 (br. s, 2H), 1.69 (d, 2JPH = 13.2 Hz, 6H) (図3-1のA); 13C‐NMR (CDCl3) δ 170.8, 135.0, 134.0, 131.6, 129.5, 128.7, 50.3, 17.9(図3-1のB); 31P‐NMR (CDCl3) δ 35.1(図3-2のC); ESI‐MS calculated for C11H18N2OP+[M +] 225.11513, found 225(図3-2のD).
化合物3の構造は、図10において符号3により示されるとおりである。
[実施例4]
ヒドラジド基を有するホスホニウム化合物((2-ヒドラジンイル-2-オキソエチル)トリエチルホスホニウムブロミド)の合成
ブロモ酢酸エチル(64μL、0.6 mmol)をアセトニトリル1 mLに溶かし、得られた溶液に、トリエチルホスフィン-テトラヒドロフラン溶液(1 M 1 mL、トリエチルホスフィン量:1 mmol)をゆっくりと添加し、室温で30分間撹拌した後、ロータリーエバポレーターで濃縮した。当該濃縮により得られた残渣をエタノール2 mLに溶かし、ヒドラジン一水和物(純度80%、59μL、0.96 mmol)を加えて1時間加熱還流した。当該加熱還流後にロータリーエバポレーターで濃縮して、反応生成物((2-ヒドラジンイル-2-オキソエチル)トリエチルホスホニウムブロミド、以下「化合物4」ともいう)を得た(139 mg、0.51 mmol)。
化合物4について、1H‐NMR測定、13C‐NMR測定、31P‐NMR測定、及び質量分析を行った。これらの測定結果は、以下のとおりであった。
1H‐NMR (CDCl3) δ 3.93 (d, 2JPH = 14.4 Hz, 6H), 2.45 (dq, 2JPH = 13.2 Hz, J = 7.2 Hz, 6H), 1.30 (dt, 3JPH = 18.8 Hz, J = 7.6 Hz, 9H) (図4-1のA); 13C‐NMR (CDCl3) δ 162.8, 50.6, 12.9, 5.9(図4-1のB); 31P‐NMR (CDCl3) δ 38.9(図4-2のC); ESI‐MS calculated for C8H20N2OP+[M +] 191.13078, found 191(図4-2のD).
化合物4の構造は、図10において符号4により示されるとおりである。
[実施例5]
ヒドラジド基を有するホスホニウム化合物(ベンジル(2-ヒドラジンイル-2-オキソエチル)ジエチルホスホニウムブロミド)の合成
ジエチルフェニルホスフィン(105μL、0.6 mmol)とブロモ酢酸エチル(64μL、0.6 mmol)をアセトニトリル2 mLに加えて得られた溶液を、室温で1時間撹拌した。当該溶液をロータリーエバポレーターで濃縮した後、当該濃縮により得られた残渣をトルエン2 mLに溶かし、得られた溶液にヒドラジン一水和物(純度80%、59μL、1.2 mmol)を加え、4.5時間加熱還流した。当該加熱還流後、ロータリーエバポレーターで濃縮して反応生成物(ベンジル(2-ヒドラジンイル-2-オキソエチル)ジエチルホスホニウムブロミド、以下「化合物5」ともいう)を得た(195 mg、0.6 mmol)。
化合物5について、1H‐NMR測定、13C‐NMR測定、31P‐NMR測定、及び質量分析を行った。これらの測定結果は、以下のとおりであった。
1H‐NMR (CDCl3) δ 10.16 (br. s, 1H), 7.95 (m, 2H), 7.57 (m, 3H), 6.77 (br. s, 2H), 4.23 (d, 2JPH = 14.4 Hz, 2H), 2.79 (m, 4H), 1.16 (m, 6H) (図5-1のA); 13C‐NMR (CDCl3) δ 162.5, 134.4, 132.3, 131.3, 130.3, 130.0, 128.4, 22.0, 14.4, 5.6(図5-1のB); 31P‐NMR (CDCl3) δ 33.3(図5-2のC); ESI‐MS calculated for C12H20N2OP+ [M +] 239.13078, found 239(図5-2のD).
化合物5の構造は、図10において符号5により示されるとおりである。
[実施例6]
ヒドラジド基を有するホスホニウム化合物の合成((2-ヒドラジンイル-2-オキソエチル)トリフェニルホスホニウムブロミド)
トリフェニルホスフィン(91 mg、0.35 mmol)をトルエン2 mLに溶かして溶液を得、当該溶液にブロモ酢酸エチル(41μL、0.38 mmol)をゆっくり加え、室温で30分間撹拌した。当該撹拌後1時間加熱還流したところ白色沈殿が析出した。当該析出後に、ロータリーエバポレーターで濃縮した後、当該濃縮により得られた残渣をエタノール2 mLに溶かして溶液を得、当該溶液にヒドラジン一水和物(純度80%、21μL、0.28 mmol)を加えて1時間加熱還流した。当該加熱還流後、当該溶液をロータリーエバポレーターで濃縮して反応生成物((2-ヒドラジンイル-2-オキソエチル)トリフェニルホスホニウムブロミド、以下「化合物6」ともいう)を得た(140 mg、0.34 mmol)。
化合物6について、1H‐NMR測定、13C‐NMR測定、31P‐NMR測定、及び質量分析を行った。これらの測定結果は、以下のとおりであった。
1H‐NMR (CDCl3) δ 10.36 (br. s, 1H), 7.6 (m, 15H), 5.01 (d, 2JPH = 14.0 Hz, 2H) (図6-1のA); 13C‐NMR (CDCl3) δ 161.6, 135.1, 134.0, 132.9, 132.0, 130.2, 128.5, 50.6(図6-1のB); 31P‐NMR (CDCl3) δ 30.0(図6-2のC); ESI‐MS calculated for C20H20N2OP+ [M +] 335.13078, found 335(図6-2のD).
化合物6の構造は、図10において符号6により示されるとおりである。
[実施例7]
ヒドラジド基を有するホスホニウム化合物の合成(トリブチル(4-(ヒドラジンカルボニル)ベンジル)ホスホニウムブロミド)
4-メトキシカルボニルベンジルブロミド(100 mg、0.44 mmol)をアセトニトリル2 mLに溶かして溶液を得、当該溶液にトリブチルホスフィン(123 mL、0.52 mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。当該撹拌後、当該溶液をロータリーエバポレーターで濃縮した。当該濃縮により得られた残渣をトルエン-アセトニトリル3 mL(2:1(v/v))に溶かし、ヒドラジン一水和物(純度80%、102μL、1.7 mmol)を加えて1時間加熱還流した後、ロータリーエバポレーターで濃縮して反応生成物(トリブチル(4-(ヒドラジンカルボニル)ベンジル)ホスホニウムブロミド、以下「化合物7」ともいう)を得た(206 mg、0.44 mmol)。
化合物7について、1H‐NMR測定、13C‐NMR測定、31P‐NMR測定、及び質量分析を行った。これらの測定結果は、以下のとおりであった。
1H‐NMR (CDCl3) δ 7.95 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.56 (dd, J = 8.0, 2.4 Hz, 2H), 4.46 (d, 2JPH = 15.6 Hz, 2H), 3.43 (br. s, 1H), 2.36 (m, 6H), 1.41 (m, 12H), 0.87 (t, J = 7.2 Hz, 9H) (図7-1のA); 13C‐NMR (CDCl3) δ 166.3, 134.1, 134.0, 130.39, 130.37, 130.3, 130.2, 52.3, 27.2, 23.8, 18.7, 13.4(図7-1のB); 31P‐NMR (CDCl3) δ 32.5(図7-2のC); ESI‐MS calculated for C20H36N2OP+ [M +] 351.25598, found 351(図7-3のD).
化合物7の構造は、図10において符号7により示されるとおりである。
[実施例8]
ヒドラジド基を有するホスホニウム化合物の合成(トリブチル(2-ヒドラジンイル-2-オキソエチル)ホスホニウムブロミド)
トリブチルホスフィン(118μL、0.5 mmol)をトルエン2 mLに溶かし、得られた溶液にブロモ酢酸エチル(55μL、0.5 mmol)をゆっくり添加した。当該添加後に当該溶液を1時間加熱還流した後、ロータリーエバポレーターで濃縮した。当該濃縮により得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(カラムサイズ:直径1.5 cm x 長さ5 cm、10%(v/v)メタノール-クロロホルム)で精製し、トリブチル(2-エトキシ-2-オキソエチル)ホスホニウムブロミドを得た(171 mg、0.46 mmol)。
トリブチル(2-エトキシ-2-オキソエチル)ホスホニウムブロミド(151 mg、0.41 mmol)をエタノール2 mLに溶かし、そして、得られた溶液を氷冷下で撹拌した。当該溶液にヒドラジン一水和物(純度80%、20μL、0.33 mmol)を加えて30分間氷冷下で撹拌した後、室温でさらに40分間撹拌した。その後、当該溶液に、ヒドラジン一水和物(純度80%、20μL、0.33 mmol)を加えて室温で1時間撹拌した後、15分間加熱還流した。当該加熱還流後に、当該溶液を室温まで冷却した後、さらにヒドラジン一水和物(純度80%、20μL、0.33 mmol)を加えて室温で1時間撹拌した。続いて、当該溶液にヒドラジン一水和物(純度80%、20μL、0.33 mmol)をさらに加えて50℃で終夜加熱撹拌した後、ロータリーエバポレーターで濃縮した。当該濃縮により得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(カラムサイズ:直径1.5 cm x 長さ5 cm、10%(v/v)メタノール-クロロホルム)で精製し、反応生成物(トリブチル(2-ヒドラジンイル-2-オキソエチル)ホスホニウムブロミド、「化合物8」ともいう)を得た(157 mg、0.41 mmol)。
化合物8について、1H‐NMR測定、13C‐NMR測定、31P‐NMR測定、及び質量分析を行った。これらの測定結果は、以下のとおりであった。
1H‐NMR (CDCl3) δ 11.0 (br. s, 1H), 4.11 (d, 2JPH = 14.0 Hz, 2H), 2.30 (m, 8H), 1.45 (m, 12H), 0.88 (m, 9H) (図8-1のA); 13C‐NMR (CDCl3) δ 159.2, 50.1, 27.1, 23.7, 19.4, 13.4(図8-1のB); 31P‐NMR (CDCl3) δ 33.7(図8-2のC); ESI‐MS calculated for C14H32N2OP+[M +] 275.22468, found 275(図8-2のD).
化合物8の構造は、図10において符号8により示されるとおりである。
[実施例9]
ヒドラジド基を有するホスホニウム化合物の合成((2-ヒドラジンイル-2-オキソエチル)ジフェニル(3-スルホフェニル)ホスホニウムブロミド)
ブロモ酢酸エチル(29μL、0.27 mmol)をトルエン1 mLに溶かし、ジフェニルホスフィノベンゼン-3-スルホン酸ナトリウム(100 mg、0.27 mmol)、続いてアセトニトリル1 mLを加えて懸濁液を得た。当該懸濁液にメタノール1 mLを加えて完全溶解し、得られた溶液を1時間加熱還流した。当該加熱還流後、当該溶液をロータリーエバポレーターで濃縮した後、当該濃縮により得られた残渣をエタノール3 mLに溶かして溶液を得、当該溶液にヒドラジン一水和物(80%、27μL、0.44 mmol)を加えて2時間加熱還流した。当該加熱還流後に当該溶液にさらにヒドラジン一水和物(純度80%、27μL、0.44 mmol)を加えて2時間加熱還流した後、ロータリーエバポレーターで濃縮して反応生成物((2-ヒドラジンイル-2-オキソエチル)ジフェニル(3-スルホフェニル)ホスホニウムブロミド、以下「化合物9」ともいう)を得た(122 mg、0.25 mmol)。
化合物9について、1H‐NMR測定、13C‐NMR測定、31P‐NMR測定、及び質量分析を行った。これらの測定結果は、以下のとおりであった。
1H‐NMR (CD3OD) δ 8.18 (ddd, J = 12.0, 1.2, 1.2 Hz, 2H), 8.10 (ddd, J = 12, 1.2, 1.2 Hz, 2H), 7.64 (m, 8H), 7.55 (m, 4H) (図9-1のA); 13C‐NMR (CD3OD) δ 173.3, 147.6, 135.4, 134.7, 133.7, 133.6, 130.9, 130.7, 120.3, 119.5, 21.4(図9-1のB); 31P‐NMR (CD3OD) δ 32.1(図9-2のC); ESI‐MS calculated for C20H20N2O4PS+ [M +] 415.08759, found 415(図9-2のD).
化合物9の構造は、図10において符号9により示されるとおりである。
[実施例10]
ヒドラジド基を有するホスホニウム化合物によるテストステロンの誘導体化
2 mLマイクロチューブにサンプル10μL(テストステロン標品、プール血清抽出物、もしくはアセトニトリル(バックグラウンド検証用))を入れ、当該マイクロチューブにホスホニウム化合物のメタノール溶液(1 mg/mL)を10μLと10%(v/v)酢酸メタノール溶液50μLとをさらに加え、そして、50℃45分間ヒートブロックで加熱した。これにより、テストステロンがホスホニウム化合物によって誘導体化された。以上の誘導体化処理を、実施例1~9において得た化合物1~9のそれぞれについて行った。化合物1~9による誘導体化処理によって得られたテストステロン誘導体を、以下でそれぞれ誘導体D1~D9ともいう。
なお、ヒドラジド基を有するホスホニウム化合物によるテストステロンの誘導体化の反応式を、図11に示す。同図に示されるように、テストステロンが、式(I)のホスホニウム化合物によって誘導体化される。また、誘導体D1~D9の化学構造は、図12に示されている。図12において、上段に、誘導体のうちのテストステロン部分が示されている。下段に、誘導体化により、テストステロンに結合した部分が示されている。
比較対象物質としてジラール試薬TおよびPを用いて(図13にこれら試薬の構造が示されている)、同様の誘導体化処理を行った。ジラール試薬TおよびPによる誘導体化処理によって得られたテストステロン誘導体を、以下でそれぞれ誘導体DT及びDPともいう。誘導体DT及びDPの構造も、図12に示されている。
前記ヒートブロックによる加熱後の溶液を遠心濃縮し、当該遠心濃縮によって得られた産物を50%(v/v)アセトニトリル水溶液100μLに再溶解した。当該再溶解により得られた溶液のうちの10μLを用いて、以下の実施例11において説明するとおりのLC-MS/MS分析を行った。
[実施例11]
テストステロン誘導体のLC-MS/MS分析
以下のLC分析条件及びMS/MS分析条件で、実施例10において説明した誘導体化処理によって得られたテストステロン誘導体(誘導体D1~D9並びに誘導体DT及びDP)のLC-MS/MS分析を行った。また、誘導体化処理されていないテストステロンについても、同じようにLC-MS/MS分析を行った。
<LC分析条件>
装置 高速液体クロマトグラフLC-20A(株式会社島津製作所)
分析カラム YMC Triart C18 (カラムサイズ:内径2.1 mm x 長さ100 mm、株式会社ワイエムシィ)
溶出条件 流速0.3 mL/min 溶媒A:0.1%(v/v) ギ酸-水 B:メタノール
<MS/MS分析条件>
装置 液体クロマトグラフ質量分析計(LCMS8040三連四重極型質量分析計、株式会社島津製作所)
イオン化条件 ESI正イオンモード
SRMパラメーター(以下表2に示されるとおり)
なお、誘導体D1~D9並びに誘導体DT及びDPの分析におけるSRMクロマトグラム(テストステロン100 pg)は、図14-1~図14-6に示されている。
<分析結果>
図15-1に、バックグラウンド、テストステロン標品(テストステロン10pg)、及びプール血清抽出物についての分析結果が示されている。同図において、縦軸はピーク面積値を示す。また、以下の表3に、測定されたピーク面積値が示されている。
上記分析結果より、化合物1~9のいずれについても、テストステロン標品及びプール血清抽出物の場合のピーク面積が、バックグラウンドの場合のピーク面積よりもはるかに高かった。そのため、化合物1~9を用いた誘導体化処理によって、テストステロンを適切に検出可能であることが分かる。
また、上記分析結果より、化合物1~9のいずれが用いられた場合についても、従来用いられている試薬T及びPと同程度の感度又はより高い感度で、テストステロン誘導体が検出されたことが分かる。
また、誘導体化しない場合は、テストステロン10pgの場合のピーク面積値が、バックグラウンドの場合のピーク面積値と近かった。そのため、誘導体化しない場合は、テストステロンが適切に検出されないことも分かる。この結果を踏まえると、本発明に従い誘導体化した場合において、誘導体化しない場合と比べてより高い感度でテストステロンを検出することができることも分かる。
上記の分析では、テストステロン量が10pgの標品について、分析が行われた。より少ない量のテストステロン量の場合についても、同様の分析を行った。分析結果を図15-2に示す。また、以下の表4に、測定されたピーク面積値が示されている。分析対象とされた標品のテストステロン量は同図に示されるとおり、100fg及び1pgであった。
これらの結果に示されるとおり、本発明に従う化合物はいずれも、1pgのテストステロンを感度良く検出することができる。
また、テストステロン量が100fgである場合に関して、誘導体化しないとバックグラウンドとの差がほぼなくなり測定不能であるのに対し、本発明に従う化合物1、3、及び4はバックグラウンドの場合との差が十分にある。すなわち、これら化合物によって、100fgのテストステロンを感度良く検出することができる。
また、ジラール試薬P及び誘導化しない場合については、テストステロン量が100fgである場合のピーク面積値は、バックグラウンドの場合の面積値と同程度であり、これらの場合は定量不能であることを示す。一方で、本発明に従う化合物については、テストステロン量が100fgである場合のピーク面積値は、バックグラウンドの場合の面積値よりも高い。
また、テストステロン量100fgの場合における試薬Tと化合物4の比較より、本発明により、従来のジラール試薬Tを用いた場合と比べて、2倍程度感度を向上することができることも分かる。
[実施例12]
4-ブロモメチルベンゼンスルホニルクロリドとトリメチルホスフィンによるエストラジオール(11)の誘導体化(エストラジオール-3-(4-トリメチルホスホニウムメチル)ベンゼンスルホナートの合成)
30 mLナスフラスコにエストラジオール(100 mg、0.37 mmol)と4-ブロモメチルベンゼンスルホニルクロリド(99 mg、0.37 mmol)を入れ、ここにアセトン3 mLに加え、これらを溶解させ、そして室温撹拌した。炭酸水素ナトリウム(46 mg、0.55 mmol)を水1 mLに溶解させて水溶液を得た。当該水溶液を、前記ナスフラスコ中の反応混合物に滴下した後、60℃24時間撹拌した。当該撹拌後、前記反応混合物を室温まで冷却し、そして、酢酸エチル4 mLで希釈し、飽和食塩水2 mLで洗浄した後、ロータリーエバポレーターで濃縮した。当該濃縮により得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(カラムサイズ:1.5 cm x 10 cm、50%(v/v)酢酸エチル-ヘキサン)で精製し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。当該濃縮後、減圧下で乾燥させてエストラジオール-3-(4-ブロモメチル)ベンゼンスルホナート(以下「反応中間体1」ともいう)を得た(79 mg、0.16 mmol)。エストラジール及び反応中間体1の構造が、図16の左及び中央にそれぞれ示されている。
反応中間体1について、1H‐NMR測定、13C‐NMR測定、及び質量分析を行った。これらの測定結果は、以下のとおりであった。
1H‐NMR (CDCl3) δ 7.81 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.5 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.14 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 6.69 (s, 1H), 6.68 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 4.60 (s, 2H), 4.47 (s, 1H), 3.69 (t, J = 8.0 Hz, 1H), 2.73 (m, 2H), 2.24 (m, 1H), 2.14 (m, 1H), 2.07 (m, 1H), 1.91 (dt, J = 12.1, 3.4 Hz, 1H), 1.83 (m, 1H), 1.65 (m, 1H), 1.34 (m, 8H), 0.74 (s, 3H)(図17のA); 13C‐NMR (CDCl3) δ 147.1, 143.7, 139.5, 138.7, 135.4, 129.5, 129.0, 128.9, 128.8, 126.5, 122.1, 118.9, 81.6, 49.9, 44.6, 44.0, 43.1, 38.2, 36.5, 30.4, 29.3, 26.8, 26.0, 23.0, 11.0(図17のB).
反応中間体1を30 mLナスフラスコに入れ、ここにアセトン2 mLを添加して溶解し、室温で撹拌した。前記ナスフラスコ中の溶液に、トリメチルホスフィン―テトラヒドロフラン溶液(3 M 1mL, トリメチルホスフィン量:3 mmol)を滴下し、室温5分間撹拌し、そしてさらに60℃で5分間油浴で加熱しながら撹拌した。これにより、白色沈殿が生成した。当該沈殿を含む溶液をロータリーエバポレーターで濃縮し、そして、真空下乾燥させて反応生成物(エストラジオール-3-(4-トリメチルホスホニウムメチル)ベンゼンスルホナート、以下「誘導体D11」ともいう)を得た(90 mg、0.16 mmol)。誘導体D11の構造が図17の右に示されている。
誘導体D11について、1H‐NMR測定、13C‐NMR測定、31P‐NMR測定、及び質量分析を行った。これらの測定結果は、以下のとおりであった。
1H‐NMR (CD3OD) δ 7.87 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.63 (dd, J = 8.0 Hz, 4JPH = 1.4 Hz, 2H), 7.18 (d, J = 9.2 Hz, 1H), 6.69 (d, J = 9.2 Hz, 1H), 6.68 (s, 1H), 3.97 (d, 2JPH = 16.8 Hz, 2H), 3.69 (t, J = 8.8 Hz, 1H), 2.70 (m, 2H), 2.24 (br. d, J = 13.2 Hz, 1H), 2.11 (m, 1H), 2.00 (m, 1H), 1.92 (m, 1H), 1.91 (d, 2JPH = 16.8 Hz, 6H), 1.83 (m, 1H), 1.65 (m, 1H), 1.55 (d, 2JPH = 16.8 Hz, 3H), 1.31 (m, 8H) (図18-1のA); 13C‐NMR (CD3OD) δ 149.4, 141.8, 140.8, 138.3, 137.5, 133.0, 131.4, 131.3, 130.8, 128.6, 124.0, 121.0, 83.1, 52.0, 46.2, 45.1, 40.6, 38.6, 31.5, 28.8, 28.1, 24.8, 18.3, 17.6, 12.5, 8.60(図18-1のB); 31P‐NMR (CD3OD) δ 28.5(図18-2のC); ESI‐MS calculated for C28H38O4PS+ [M +] 501.22229, found 501(図18-2のD).
[実施例13]
4-(ブロモメチル)ベンゼンスルホニルクロリドと種々のホスフィンによるエストラジオールの誘導体化
2 mLマイクロチューブにサンプル10μL(エストラジオール標品もしくはアセトニトリル(バックグラウンド検証用))を入れ、4-(ブロモメチル)ベンゼンスルホニルクロリド-アセトン溶液(1 mg/mL)50μLと炭酸水素ナトリウム水溶液(100 mM)50μLを加えて60℃5分間ヒートブロックで加熱した。当該加熱後、当該マイクロチューブ中のサンプルに、1%(v/v)ホスフィン-アセトニトリル溶液50μLを加えてさらに60℃2分間ヒートブロックで加熱した。これにより、エストラジオール誘導体が生成された。前記ホスフィンとして、上記実施例12において用いたトリメチルホスフィンを用いるだけでなく、他の7種のホスフィンも用いた。これにより、8種類のエストラジオール誘導体(それぞれ誘導体D11~D18ともいう)が生成された。
生成された誘導体の構造がそれぞれ図19に示されている。同図の上段において、これら誘導体に共通する構造が示されている。同図の下段に、用いられたホスフィンに起因する構造が示されている。
当該加熱後に遠心濃縮を行い、当該遠心濃縮により得られた産物を50%(v/v)アセトニトリル水溶液100μLに再溶解した。当該再溶解により得られた溶液のうちの10μLを用いてLC-MS/MS分析した。
[比較例14]
ダンシルクロリドによるエストラジオールの誘導体化
2 mLマイクロチューブにサンプル10μL(エストラジオール標品もしくはアセトニトリル(バックグラウンド検証用)を入れ、ダンシルクロリド-アセトン溶液(1 mg/mL)50μLと炭酸水素ナトリウム水溶液(100 mM)50μLを加えて60℃5分間ヒートブロックで加熱した。当該加熱後に遠心濃縮を行い、当該遠心濃縮により得られた産物を50%(v/v)アセトニトリル溶液水100μLに再溶解した。当該再溶解より得られた溶液のうちの10μLを用いてLC-MS/MS分析した(生成された誘導体の構造が図20に示されている。当該誘導体を誘導体DDともいう)。ダンシル体は比較対象物質である。
[実施例15]
ブロモアセチルブロミドと種々のホスフィンによるエストラジオールの誘導体化
2 mLマイクロチューブにサンプル10μL(エストラジオール標品もしくはアセトニトリル(バックグラウンド検証用))を入れ、ブロモアセチルブロミド-アセトン溶液(1 mg/mL)50μLとトリエチルアミン-アセトニトリル溶液(100 mM)50μLを加えて60℃5分間ヒートブロックで加熱した。当該加熱後、前記マイクロチューブ中のサンプルに、1%(v/v)ホスフィン-アセトニトリル溶液50μLを加えてさらに60℃2分間ヒートブロックで加熱した。前記ホスフィンとして、トリメチルホスフィンだけでなく他の3種のホスフィンも用いた。これにより、4種類のエストラジオール誘導体(それぞれ誘導体D21~D24ともいう)が生成された。
生成された誘導体の構造がそれぞれ図21に示されている。同図の左において、これら誘導体に共通する構造が示されている。同図の右に、用いられたホスフィンに起因する構造が示されている。
前記ヒートブロックによる加熱後に遠心濃縮を行い、当該遠心濃縮により得られた産物を50%(v/v)アセトニトリル水溶液100μLに再溶解した。当該再溶解により得られた溶液のうちの10μLを用いてLC-MS/MS分析を行った。
[実施例16]
エストラジオール誘導体のLC-MS/MS分析
以下のLC分析条件及びMS/MS分析条件で、実施例13、比較例14、及び実施例15において述べたLC-MS/MS分析は行われた。
<LC分析条件>
装置 高速液体クロマトグラフLC-20A(株式会社島津製作所)
分析カラム YMC Triart C18 (カラムサイズ:内径2.1 mm x 長さ100 mm、株式会社ワイエムシィ)
溶出条件 流速0.3 mL/min 溶媒A:0.1%(v/v) ギ酸-水 B:メタノール
<MS/MS分析条件>
装置 液体クロマトグラフ質量分析計(LCMS8040三連四重極型質量分析計、株式会社島津製作所)
イオン化条件 ESI正イオンモード
SRMパラメーター(以下表6に示されるとおり)
なお、各誘導体のSRMクロマトグラム(誘導体11~18及び誘導体DDについてはエストラジオール10pg、誘導体21~24についてはエストラジオール10ng)は、図22-1~図22-7に示されている。
<分析結果>
図23に、誘導体11~18及び誘導体DDに関する、バックグラウンド及びテストステロン標品(テストステロン10pg)についての分析結果が示されている。同図において、縦軸はピーク面積を示す。また、以下の表7に、測定されたピーク面積値が示されている。
上記分析結果より、本発明に従う誘導体11~18のいずれについても、エストラジオール標品の場合のピーク面積が、バックグラウンドの場合のピーク面積よりもはるかに高かった。そのため、エストラジオールを本発明に従い誘導体化することによって、エストラジオールを適切に検出可能であることが分かる。
また、上記分析結果より、誘導体11~18のいずれが用いられた場合についても、従来用いられている誘導体DD(ダンシル体)と同程度の感度又はより高い感度で、エストラジオール誘導体が検出されたことが分かる。
上記の分析では、エストラジオール量が10pgの標品について、分析が行われた。より少ない量のエストラジオール量の場合についても、同様の分析を行った。分析結果を図24に示す。また、以下の表8に、測定されたピーク面積値が示されている。分析対象とされた標品のエストラジオール量は同図に示されるとおり、10fg及び100fgであった。
同図に示される結果より、エストラジオール量が100fgである場合は、いずれの誘導体についても、ピーク面積値はバックグラウンドの場合よりもはるかに高かった。そのため、10pgよりもさらに低い100fgの場合であっても、エストラジオールを検出可能であることが分かる。
また、分析結果より、誘導体DD(比較例)については、エストラジオール量が10fgである場合のピーク面積値は、バックグラウンドの場合の面積値よりもわずかに高い。一方で、本発明に従う他の誘導体については、エストラジオール量が10fgである場合のピーク面積値は、バックグラウンドの場合の面積値よりも大幅に高い。そのため、本発明により、従来の試薬であるダンシルクロリドを用いた場合と比べて、10倍程度感度を向上することができることも分かる。
図25に、誘導体D21~D24についての、バックグラウンド及びテストステロン標品(テストステロン10ng)についての分析結果が示されている。同図において、縦軸はピーク面積を示す。なお、バックグラウンドのピーク面積が小さいため、同図において、それらのバーはほぼ見えない。
上記分析結果より、本発明に従う誘導体D21~D24のいずれについても、エストラジオール標品の場合のピーク面積が、バックグラウンドの場合のピーク面積よりもはるかに高かった。そのため、エストラジオールを本発明に従い誘導体化とすることによって、エストラジオールを適切に検出可能であることが分かる。
[実施例17]
チオエステル基を有するホスホニウム化合物の合成(2-(2-(4-((トリブチルホスホニオ)アセチル)チオ)フェニル)アセタミド)エタン-1-スルホネート)
トリチルクロリド(0.83 g、3.0 mmol)をクロロホルム3 mLに溶解し、得られた溶液に4-メルカプトフェニル酢酸(500 mg、3.0 mmol)を加え1時間撹拌した。その後、当該溶液に水酸化ナトリウム水溶液(1 M 4.5 mL)を加えて中和し、当該中和後に、酢酸エチルを添加した。当該添加後に飽和食塩水で洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮してオイル性残渣を得た。得られた残渣をシリカゲル精製することで4-(トリチルチオ)フェニル酢酸(以下「トリチル体」ともいう)を得た(0.81g、2.0 mmol)。
タウリン(0.46 g、3.7 mmol)とトリエチルアミン(0.51 mL、3.7 mmol)を水15 mLに溶かし、前記トリチル体(0.76 g、1.9 mmol)と1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(0.50 g、3.7 mmol)のN-メチルピロリドン溶液24 mLを加えた後、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(0.39 g、2.0 mmol)を加えて2日間撹拌した。反応液をシリカゲル精製することで2-(2-(4-(トリチルチオ)フェニル)アセタミド)エタン-1-スルホン酸(以下「タウリン抱合体」ともいう)を得た(1.2 g、2.3 mmol)。
前記タウリン抱合体 (0.96 g、1.9 mmol)とトリエチルシラン(0.32 mL、2.0 mmol)をクロロホルム14 mLに溶解し、トリフルオロ酢酸4.1 mLを加え30分撹拌した。反応液を濃縮することでオイル性残渣である2-(2-(4-メルカプトフェニル)アセタミド)エタン-1-スルホン酸(以下、「チオール」ともいう)を得た(1.7 g、1.9 mmol)。
トリブチルホスフィン(0.52 mL、2.1 mmol)とブロモ酢酸 tert-ブチル(0.29 mL、2.0 mmol)をトルエン10 mLに溶かし、3時間撹拌した。反応液をトルエンで希釈し、水で洗浄後、減圧濃縮した。得られた残渣を90%(v/v)トリフルオロ酢酸水溶液8.8 mLに溶解し、1.5時間撹拌した。反応液を減圧濃縮することでオイル性残渣であるトリブチルホスホニウム酢酸(以下「カルボン酸」ともいう)を得た(0.89 g、2.0 mmol)。
前記チオール(0.70 g、2.5 mmol)と前記カルボン酸(0.19 g、0.56 mmol)をN,N’-ジメチルホルムアミド2 mLに溶解し、得られた溶液に、ジイソプロピルエチルアミン(0.14 mL、0.80 mmol)、1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスファート(0.42 g、0.80 mmol)を加え、N,N’-ジイソプロピルエチルアミンでpHを7付近に整えた後2時間撹拌した。反応液を0.1%(v/v)トリフルオロ酢酸水溶液で希釈した後、逆相HPLCにて精製した。目的物を含むフラクションを凍結乾燥し、チオエステル(「2-(2-(4-((トリブチルホスホニオ)アセチル)チオ)フェニル)アセタミド)エタン-1-スルホネート」。以下「化合物31」ともいう)を粉末として得た(80 mg、0.15 mmol)。
化合物31について、1H‐NMR測定及び質量分析を行った。これらの測定結果は、以下のとおりであった。
1H‐NMR (CD3OD)(図26-1); ESI‐MS calculated for C24H41NO5PS2 + [M +H+] 518.21583, found 518(図26-2).
[実施例18]
NCL法を用いたオキシトシンの誘導体化
TPX製1.5 mL AMRプロテオセーブチューブに100 mMリン酸緩衝液(pH 8.0)を100μL入れた。そこに、オキシトシンを100 ng/mLの濃度で含む酢酸及びアセトニトリル水溶液(酢酸濃度1%(v/v)酢酸及びアセトニトリル濃度10%(v/v))を10μL入れた。次に、前記チューブに、用事調製したトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)水溶液(100 mg/mL)を5μLと、化合物31を0.2 mg/mLの濃度で含む50%アセトニトリル水溶液を5μLと、を添加し、撹拌し、そして15分間室温で反応させた。当該反応後、MES水溶液を5μL加え撹拌し、15分間室温で反応させて誘導体化した。前記誘導体化の反応式が図27に示されている。
[実施例19]
オキシトシン誘導体の後処理及びLC-MS/MS分析
誘導体化に伴い大量に含まれた塩を取り除いて誘導体の濃縮を可能とするために、EmporeTM 2215-C18 Octadecyl(CDS Analytical社)のディスク型固相をTORASTTM-H Tip(株式会社島津製作所)の先端に詰め、自作のミニカラムを作成し利用した。前記ミニカラムにアセトニトリル50μLを通液後、酢酸及びアセトニトリル水溶液(酢酸濃度1%(v/v)酢酸及びアセトニトリル濃度10%(v/v))を50μL通液させ平衡化後、実施例18における誘導体化後の試料を全量ロードした。前記酢酸及びアセトニトリル水溶液を50μLを通液させ洗浄し、120μLの酢酸及びアセトニトリル水溶液(酢酸濃度0.1%(v/v)及びアセトニトリル濃度50%(v/v))で溶出して、溶出液をLC-MS/MS分析のための試料として用いた。LC-MS/MS分析の条件は以下のとおりであった。
<LC分析条件>
装置 Agilent 1290 Infinity
分析カラム Waters ACQUITY UPLC Peptide BEH C18 2.1mm x 50 mm
溶出条件 流速0.5 mL/min 溶媒A:0.05 %(v/v) 酢酸-水 B:0.05 %(v/v) 酢酸-アセトニトリル
溶出条件は以下表9のとおりであった。
<MS/MS分析条件>
装置 SCIEX QTRAP 4500
イオン化条件 ESI正イオンモード
SRMパラメーターは以下表10のとおりであった。
<分析結果>
分析結果が、図28及び29に示されている。図29において、縦軸はピーク面積を示す。上記分析結果より、本発明に従いオキシトシンを誘導体化した場合は、誘導体化しない場合と比較して、検出強度は約8倍であった。そのため、本発明によって、オキシトシンの検出感度を向上することができることが分かる。



Claims (5)

  1. 下記式(I)
    [式(I)において、
    は、アルキル基を表し、当該アルキル基は、置換若しくは非置換の、炭素数1~20の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素数5~20の環状アルキル基であり、
    、及びRは、互いに独立に、アルキル基又はアリール基を表し、当該アルキル基は、置換若しくは非置換の、炭素数1~20の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素数5~20の環状アルキル基であり、当該アリール基は、置換又は非置換の炭素数6~20のアリール基であり;
    Xは、ヒドラジド基を有する反応基であり;且つ、
    は、全体の荷電が-1のアニオンであるか、又は、Yは不在である]
    で表されるホスホニウム化合物。
  2. 式(I)において、
    前記アルキル基は、置換若しくは非置換の、炭素数1~10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素数5~10の環状アルキル基であり、
    前記アリール基は、置換又は非置換の炭素数6~10のアリール基である、
    請求項1に記載のホスホニウム化合物。
  3. 式(I)において、
    は、以下の(a)又は(b)のいずれかを表し、
    、及びRは、互いに独立に、以下の(a)、(b)、又は(c)のいずれかを表す、
    [ここで、mは0~8のいずれかの整数である。nは0~5のいずれか整数である。Zは、H、NH、COO、COOM、SO (スルホン酸イオン基)、又はSOM(スルホン酸基又はスルホン酸塩基)を表し、Mは、水素原子、リチウム原子、ナトリウム原子、又はカリウム原子を表す。]
    請求項1に記載のホスホニウム化合物。
  4. 式(I)において、
    Xが、ヒドラジド基を有する反応基である場合、
    前記反応基は、
    であり、ここでoは0~6のいずれかの整数である、
    請求項1~3のいずれか一項に記載のホスホニウム化合物。
  5. 請求項1~4のいずれか一項に記載のホスホニウム化合物を含む誘導体化用試薬。
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