以下、本開示の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では、図中の同一または相当部分について同一符号を付して、その説明は原則的に繰返さないものとする。
実施の形態1.
(配電系統の構成例)
最初に、実施の形態1に係る分散電源管理装置が適用される配電系統の構成例を説明する。なお、実施の形態1では、三相系統を例示するが、配電系統は単相系統であってもよい。
図1は、実施の形態1に係る配電系統24の構成例を示すブロック図である。図1に示すように、配電系統24は、変電所20から電力の供給を受ける。配電系統24には、複数の自動電圧調整器(SVR:Step Voltage Regulator)23a~23cが設けられている。複数のSVR23a~23cは、電力の流れに対して直列に接続されている。複数のSVR23a~23cには、ビル112、マンション113、タウンA100a~タウンD100d、工場110、メガソーラー用の電力変換装置27、系統用蓄電池用の電力変換装置41a~41c、同期発電機30a,30bが接続されている。以下の説明では、SVR23a~23cを総称して「SVR23」とも称する。また、電力変換装置41a~41cを総称して「電力変換装置41」とも称する。
配電系統24には複数の電圧計22a,22e,22f,22i,22j,22xが配置されている。以下においては、電圧計22a,22e,22f,22i,22j,22xを総称して「電圧計22」とも称する。各電圧計22の計測値は予め定められた周期で配電自動化システム21(以下、「DSO21」とも称する)に送信される。DSO21は、配電系統24を管理する「系統管理装置」の一実施例に対応する。
SVR23のタップ位置情報、一次側電圧および二次側電圧の情報は、DSO21に送られる。実施の形態1では、SVR23は、予め定められた周期でタップ位置情報、一次側電圧および二次側電圧情報を通知するとともに、タップ切換時にタップ位置情報、一次側電圧および二次側電圧の情報を非定期に通知する。
CEMS(Community Energy Management System)31は、予め定められた周期で各需要家(タウン100a~100d、工場110、ビル112、マンション113)、電力変換装置27、同期発電機30a,30bおよび電力変換装置41a~41cから各種計測値などの情報を収集する。CEMS31は、収集したデータをDSO21からの要求に応じてDSO21に通知する。なお、タウン100a~100d内の需要家の消費電力、創エネ機器の発電電力は、各需要家に設置されたスマートメータ(図示せず)により計測される。CEMS31は、スマートメータの計測値を予め定められた周期(例えば30分周期)で収集する。CEMS31は「分散電源管理装置」の一実施例に対応する。
電力変換装置27にはメガソーラー26が接続されている。電力変換装置41a~41cには系統用蓄電池40a~40cがそれぞれ接続されている。蓄電池40a~40cは、配電系統24に接続することができる大容量の蓄電池である。以下の説明では、蓄電池40a~40cを総称する場合には「蓄電池40」とも表記する。
図2は、図1に示す配電系統24の構成をさらに説明するためのブロック図である。
図2に示すように、配電系統24には、負荷600、電力変換装置41および蓄電池40が接続されている。なお、説明を簡単にするために、図2では、配電系統24のインピーダンス29を集中系で表わしている。配電系統24のインピーダンス29は、リアクトル成分および抵抗成分より構成されるものとする。
(1)CEMS31
図3は、図1に示したCEMS31の構成を示すブロック図である。
図3に示すように、CEMS31は、通信回路11、記憶回路12、制御パラメータ生成回路13、運転計画作成回路14、送信データ生成回路15、および制御回路16を有する。
通信回路11は、通信線25を介してDSO21、各需要家(タウン100a~100d、工場110、ビル112、マンション113)、電力変換装置27、同期発電機30a,30bおよび電力変換装置41a~41cとの間で通信を行なう。
記憶回路12は、通信回路11を介して取得した各種情報を記憶する。各種情報には、計測結果および各分散電源のステータス情報等が含まれる。
制御パラメータ生成回路13は、電力変換装置41a~41cの各々に実装される仮想同期発電機制御の制御パラメータを生成する。
運転計画作成回路14は、DSO21からの制御指令に基づいて、電力変換装置41a~41cの運転計画を作成する。電力変換装置41a~41cの運転計画は、対応する蓄電池40a~40cの充放電計画(電力目標値)を含む。実施の形態1では、運転計画作成回路14は、30分間隔で24時間分の運転計画を作成する。
さらに、運転計画作成回路14は、5分単位で収集する電力変換装置41a~41cの計測結果および、蓄電池40a~40cのSOC情報などに基づいて、運転計画の修正が必要であるか否かを判定する。運転計画の修正が必要と判定した場合、運転計画作成回路14は、次回にDSO21からの制御指令が通知されるまでの期間の運転計画を修正する。
送信データ生成回路15は、制御パラメータ生成回路13により生成された、仮想同期発電機制御の制御パラメータおよび、運転計画作成回路14から出力される運転計画を記憶する。送信データ生成回路15は、制御回路16からの送信指令に応答して、記憶したデータを通信回路11に出力する。通信回路11は、送信データ生成回路15から出力されるデータを、制御回路16から出力される制御信号に従って、通信線25に送信する。
制御回路16は、配電系統24に接続される分散電源を管理するための制御回路である。制御回路16は、通信回路11、記憶回路12、制御パラメータ生成回路13、運転計画作成回路14および送信データ生成回路15の動作を管理する。
(1-1)運転計画作成回路14
図4は、図3に示した運転計画作成回路14の構成を示すブロック図である。
図4に示すように、運転計画作成回路14は、蓄電池運転計画作成回路141と、発電電力予測回路142と、消費電力予測回路143と、蓄電池運転計画補正回路144と、管理回路145と、管理回路146とを含む。
蓄電池運転計画作成回路141は、DSO21から通知される制御指令に関する情報、発電電力予測回路142により予測されたメガソーラー26の発電量の予測結果、および消費電力予測回路143により予測された需要家の消費電力の予測結果に関する情報に基づいて、電力変換装置41a,41b,41cの運転計画(電力目標値)を作成する。なお、DSO21から蓄電池運転計画作成回路141に通知される制御指令は、変電所20の下流側で消費される電力(配電系統24への供給電力)の計画値を含む。供給電力の計画値は、30分毎、24時間分の計画値から構成される。
発電電力予測回路142は、図示しない天気予報サーバから24時間分の天気予報情報を、通信回路11を介して取得する。発電電力予測回路142は、取得した天気予報情報および、発電電力を予測するために準備したデータベース(図示せず)の情報に基づいて、メガソーラー26の発電電力を予測する。
消費電力予測回路143は、CEMS31内部の時計情報(年月日、曜日、時刻)および、消費電力を予測するために準備したデータベース(図示せず)の情報に基づいて、各需要家の消費電力の合計値を予測する。
蓄電池運転計画補正回路144は、通信回路11を介して電力変換装置41a~41cの充放電電力量、および電力目標値情報に基づいて、運転計画の修正が必要か否かを判定する。修正が必要と判定した場合、蓄電池運転計画補正回路144は、運転計画の修正値を生成する。
管理回路145は、配電系統24に接続される分散電源の運転計画の作成を管理する。管理回路145は、蓄電池運転計画作成回路141および蓄電池運転計画補正回路144で生成した各蓄電池40の電力目標値(充電電力目標値および放電電力目標値)を記憶する。管理回路145は、管理回路146から出力される制御信号に基づいて、電力目標値を制御パラメータ生成回路13および送信データ生成回路15に出力する。
管理回路146は、蓄電池運転計画作成回路141、発電電力予測回路142、消費電力予測回路143、蓄電池運転計画補正回路144および管理回路145の動作を管理する。
(1-2)制御パラメータ生成回路13
図5は、図3に示した制御パラメータ生成回路13の構成を示すブロック図である。
図5に示すように、制御パラメータ生成回路13は、基準ΔP/ΔF特性算出回路131、ΔP/ΔF特性算出回路132、制御パラメータ生成回路133、仮想同期発電機モデル134、管理回路135、および制御回路136を含む。
基準ΔP/ΔF特性算出回路131は、電力変換装置41a~41cの静止型インバータ(第2のDC/AC変換器408)の容量情報に基づいて、基準ΔP/ΔF特性を算出する。
ΔP/ΔF特性算出回路132は、上記基準ΔP/ΔF特性、および運転計画作成回路14(図4)で作成された電力目標値情報に基づいて、ΔP/ΔF特性を算出する。
制御パラメータ生成回路133は、上記ΔP/ΔF特性、DSO21から通知された配電系統24に関連する情報(系統周波数(基準周波数Fref)、ΔFmax等)、静止型インバータ(第2のDC/AC変換器408)の容量に基づいて、仮想同期発電機モデル134を用いて、仮想同期発電機制御の制御パラメータを生成する。
仮想同期発電機モデル134は、制御パラメータ生成回路133から入力される情報を用いて、速度調整率Kgdおよび制動係数Dgを算出する。制御パラメータ生成回路133は、制動係数Dgを用いて慣性定数Mを算出する。
管理回路135は、仮想同期発電機制御の制御パラメータを管理する。管理回路135は、制御パラメータ生成回路133から出力される制御パラメータ、ΔP/ΔF特性算出回路132により算出されたΔP/ΔF特性、および電力目標値Prefなどの情報を図示しないメモリに格納し、管理する。
制御回路136は、基準ΔP/ΔF特性算出回路131、ΔP/ΔF特性算出回路132、制御パラメータ生成回路133、仮想同期発電機モデル134、および管理回路135の動作を管理する。
(2)電力変換装置27
図6は、図1に示した電力変換装置27の構成を示すブロック図である。
図6に示すように、電力変換装置27は、電圧計201,206,210、電流計202,207,211、第1のDC/DC変換器203、第1の制御回路204、直流母線205、第1のDC/AC変換器208、第2の制御回路209および、通信インターフェイス(I/F)212を有する。
電圧計201は、メガソーラー26から出力される直流電圧を計測する。電流計202は、メガソーラー26から出力される直流電流を計測する。
第1のDC/DC変換器203は、メガソーラー26から出力される第1の直流電圧を第2の直流電圧に変換する。第1の制御回路204は、第1のDC/DC変換器203を制御する。
直流母線205は、第1のDC/DC変換器203から出力される第2の直流電圧を第1のDC/AC変換器208に供給する。電圧計206は、直流母線205の電圧を計測する。電流計207は、第1のDC/DC変換器203から出力される直流電流を計測する。
第1のDC/AC変換器208は、第1のDC/DC変換器203から出力される直流電力を交流電力に変換する。第2の制御回路209は、第1のDC/AC変換器208を制御する。
電圧計210は、第1のDC/AC変換器208から出力される交流電圧を計測する。電流計211は、第1のDC/AC変換器208から出力される交流電流を計測する。通信I/F212は、電力変換装置27とCEMS31との間で通信を行なう。
(3)電力変換装置41
図7は、図1に示した電力変換装置41の構成を説明するブロック図である。
図7に示すように、電力変換装置41は、電圧計401,406,410、電流計402,407,411、第2のDC/DC変換器403、第3の制御回路404、直流母線405、第2のDC/AC変換器408、第4の制御回路409および、通信I/F412を有する。
電圧計401は、蓄電池40から出力される直流電圧を計測する。電流計402は、蓄電池40から出力される直流電流を計測する。
第2のDC/DC変換器403は、蓄電池40から出力される第3の直流電圧を第4の直流電圧に変換する。第3の制御回路404は、第2のDC/DC変換器403を制御する。
直流母線405は、第2のDC/DC変換器403から出力される直流電圧を第2のDC/AC変換器408に供給する。電圧計406は、直流母線405の電圧を計測する。電流計407は、第2のDC/DC変換器403から出力される直流電流を計測する。
第2のDC/AC変換器408は、第2のDC/DC変換器403から出力される直流電力を交流電力に変換する。第4の制御回路409は、第2のDC/AC変換器408を制御する。
電圧計410は、第2のDC/AC変換器408から出力される交流電圧を計測する。電流計411は、第2のDC/AC変換器408から出力される交流電流を計測する。通信I/F412は、電力変換装置41とCEMS31との間で通信を行なう。
なお、第1のDC/DC変換器203(図6)および第2のDC/DC変換器403(図7)には、公知のDC/DCコンバータを適宜用いることができる。第1のDC/AC変換器208(図6)および第2のDC/AC変換器408(図7)には、公知のインバータを用いることができる。第1のDC/AC変換器208および第2のDC/AC変換器408の各々は「静止型インバータ」の一実施例に対応する。第2の制御回路209および第4の制御回路409は「静止型インバータ制御部」の一実施例に対応する。
(2-1)第1の制御回路204
図8は、図6に示した第1の制御回路204の構成を説明するブロック図である。
図8に示すように、第1の制御回路204は、MPPT(Maximum Power Point Tracking)制御回路51、電圧制御回路52、第1の切換回路53、および第5の制御回路54を有する。
MPPT制御回路51は、電圧計201および電流計202の計測値に基づいて、いわゆる最大電力点追従(MPPT)制御を実行する。MPPT制御回路51は、メガソーラー26の発電電力を最大限に取り出すために、メガソーラー26の最大電力点をサーチする。具体的には、MPPT制御回路51は、電圧計201により計測される直流電圧を、最大電力点に対応する電圧に制御するために、第1のDC/DC変換器203の制御指令値を生成する。
電圧制御回路52は、電圧計206の計測値に基づいて、直流母線205の直流電圧(第2の直流電圧)を予め定められた目標電圧に維持するための第1のDC/DC変換器203の制御指令値を生成する。
第5の制御回路54は、MPPT制御回路51および電圧制御回路52の制御パラメータおよび制御目標値などを出力するとともに、メガソーラー26の発電状態などを管理する。第5の制御回路54は、第1の切換回路53の制御信号をさらに出力する。
第1の切換回路53は、第5の制御回路54からの制御信号に従って、MPPT制御回路51および電圧制御回路52の出力のうちのいずれか一方を、第1のDC/DC変換器203の制御指令値として選択的に出力する。
第1のDC/DC変換器203は、MPPTモードまたは電圧制御モードで制御される。第1の切換回路53は、MPPTモードでは、MPPT制御回路51で生成した制御指令値を出力する。第1の切換回路53は、電圧制御モードでは、電圧制御回路52が生成した制御指令値を出力する。
(2-2)第2の制御回路209
図9は、図6に示した第2の制御回路209の構成を説明するブロック図である。
図9に示すように、第2の制御回路209は、位相検出回路61、第1の正弦波生成回路62、電流制御回路60、および第6の制御回路67を有する。
電流制御回路60は、減算器63、第1のPI制御回路64、乗算器65、減算器66、第2のPI制御回路68および第1のPWM変換器69を有する。電流制御回路60は、系統電圧に同期して電力を出力する制御モードを実行する。この制御モードは、家庭に設置されている一般的な太陽光発電用の電力変換器の制御方式である。
位相検出回路61は、電圧計210(図6)で計測した交流電圧の波形から交流電圧の位相を検出する。
第1の正弦波生成回路62は、電圧計210で計測した交流電圧の振幅および、位相検出回路61により検出した位相情報に基づいて、交流電圧の波形に同期した正弦波を生成する。なお、実施の形態1では、位相検出回路61は、交流電圧の波形のゼロクロス点を検出するとともに、ゼロクロス点の検出結果から交流電圧の周波数を検出する。位相検出回路61は、検出した交流電圧の周波数を、ゼロクロス点情報とともに第1の正弦波生成回路62に出力する。
電流制御回路60は、電圧計206(図6)より計測される直流母線205の直流電圧に基づいて、第1のDC/AC変換器208を制御するための制御指令値を生成する。減算器63は、第6の制御回路67より出力される直流母線電圧の目標値から、電圧計206により計測される直流母線205の直流電圧を減算する。減算器63による減算値は第1のPI制御回路64に入力される。
乗算器65は、第1のPI制御回路64から出力される制御指令値と、第1の正弦波生成回路62から出力される正弦波とを乗算することにより、電流指令値を生成する。
減算器66は、乗算器65から出力される電流指令値と、電流計211(図6)により計測された交流系統の電流値との偏差を算出し、算出した偏差を第2のPI制御回路68に出力する。
第2のPI制御回路68は、第6の制御回路67から与えられる制御パラメータ(比例ゲインおよび積分時間)に基づいて、減算器66から出力される偏差がゼロになるように制御指令値を生成する。第2のPI制御回路68は、生成した制御指令値を第1のPWM変換器69に出力する。
第1のPWM変換器69は、第2のPI制御回路68から入力される制御指令値に対してPWM制御を実行することにより制御指令値を生成し、生成した制御指令値を第1のDC/AC変換器208へ出力する。
第6の制御回路67は、電圧計206および電流計207から出力される直流母線205に関する計測結果、電圧計210および電流計211から出力される交流系統に関する計測結果、ならびに第1の制御回路204から出力される第1のDC/DC変換器203のステータス情報などを収集し、収集した情報を、通信I/F212を介してCEMS31などに通知する。
また、第6の制御回路67は、第1のPI制御回路64および第2のPI制御回路68に対して制御パラメータを通知する。第6の制御回路67は、交流系統の実効電圧計測部(図示せず)が計測した有効電力および無効電力に関する情報を、通信I/F212を介してCEMS31に通知する。第6の制御回路67は、交流系統の実効電圧および有効電力などの計測値を第5の制御回路54に通知する。第5の制御回路54、例えば、系統電圧の実効値が所定値を超えた場合、メガソーラー26の制御をMPPT制御から電圧制御に切り換えることにより、系統電圧の上昇を抑制する。
(3-1)第3の制御回路404
図10は、図7に示した第3の制御回路404の構成を説明するブロック図である。
図10に示すように、第3の制御回路404は、充電制御回路71、放電制御回路72、第2の切換回路73および、第7の制御回路74を有する。
充電制御回路71は、蓄電池40の充電制御を行なうときに、第2のDC/DC変換器403の制御指令値を生成する。
放電制御回路72は、蓄電池40の放電制御を行なうときに、第2のDC/DC変換器403の制御指令値を生成する。
第7の制御回路74は、充電制御回路71および放電制御回路72に対して、制御パラメータおよび制御目標値などを出力する。第7の制御回路74は、蓄電池40の充電電力量(SOC)、充電電力(充電電流)および放電電力(放電電流)などを管理する。第7の制御回路74は、第2の切換回路73の制御信号を出力する。
第2の切換回路73は、第7の制御回路74からの制御信号に従って、充電制御回路71および放電制御回路72の出力のうちのいずれか一方を、第2のDC/DC変換器403の制御指令値として選択的に出力する。具体的には、第2の切換回路73は、蓄電池40の充電が指示されたときには、充電制御回路71が生成した制御指令値を出力する。一方、第2の切換回路73は、蓄電池40の放電が指示されたときには、放電制御回路72が生成した制御指令値を出力する。
(3-2)第4の制御回路409
図11は、図7に示した第4の制御回路409の構成を説明するブロック図である。
図11に示すように、第4の制御回路409は、交流周波数検出回路81、実効電力算出回路82、仮想同期発電機制御回路83、インバータ電流制御回路84、インバータ電圧制御回路85、第3の切換回路86および、第8の制御回路87を有する。
交流周波数検出回路81は、電圧計410(図7)で計測した交流電圧の波形から、交流電圧の位相を検出する。実施の形態1では、交流電圧の波形からゼロクロス点を検出し、検出したゼロクロス点の時間間隔から周波数を検出するものとする。なお、交流電圧の周波数の検出方法は、ゼロクロス点の検出結果を用いる方法に限定されるものではない。
実効電力算出回路82は、電圧計410および電流計411(図7)により計測した交流電圧および交流電流の情報を用いて実効電力を算出する。実施の形態1では、交流周波数検出回路81から出力されるゼロクロス点検出情報および交流周波数情報に基づいて、交流電圧波形の1周期分の電力を積算することにより、実効電力を算出する。なお、実効電力の算出方法は、上記方法に限定されるものではなく、例えば、交流系統が三相交流の場合にはDQ変換などを用いて実効電力を算出してもよい。
仮想同期発電機制御回路83は、交流周波数検出回路81から出力される交流電圧の周波数情報および、実効電力算出回路82から出力される交流実効電力情報に基づいて、第2のDC/AC変換器408(静止型インバータ)に対し、同期発電機が有する慣性力、同期化力および制動力を持たせる。
[仮想同期発電機制御技術]
以下、仮想同期発電機制御技術について簡単に説明する。
火力発電に代表的に用いられる同期発電機は、周波数に応じて出力電力を調整する機能(ガバナー機能)、角速度を維持する機能(慣性力)、系統電圧と同期をとる機能(同期化力)、基幹系統の電圧調整機能(AVR機能:Automatic Voltage Regulation機能)、系統事故時の交流系統電圧の瞬時低下の際にも運転を継続する機能などを有する。
仮想同期発電機制御技術では、静止型インバータの過渡応答を制御することにより、静止型インバータに同期発電機の持つ機能を模擬させる。具体的には、ガバナー機能、動揺方程式に基づく質点系モデル(回転機の動特性)を模擬した機能、およびAVR機能の3つの機能を模擬する。
実施の形態1では、特にガバナー機能および、動揺方程式に基づく質点系モデルを模擬した機能を第2のDC/AC変換器408に実装した場合について説明する。図45に、仮想同期発電機制御技術を説明するための概念図を示す。なお、同期発電機の持つAVR機能については、主に上位システム(実施の形態1ではCEMS31)から通知される出力電圧指令または無効電力指令値に基づいて制御される機能であるため、実施の形態1では実装しない。以下、ガバナー機能、および動揺方程式に基づく質点系モデルを模擬した機能について具体的に説明する。
最初に、ガバナー機能について説明する。
発電プラントにおけるガバナーは、火力発電および原子力発電におけるガスタービンまたは蒸気タービンの出力および、または、水力発電における水車のガイドベーンなどを制御することにより、発電機の出力電力を制御する機能を有する。交流電力系統において需要電力が供給電力を超えると、系統電圧の周波数が低下する。出力制御が可能な火力発電機または水力発電機ではガバナーにドループ特性を持たせることにより、系統電圧の周波数が低下すると、発電電力を増やすように発電機を制御する。一方、供給電力が需要電力を超えることによって系統電圧の周波数が上昇すると、発電電力を減らすように発電機を制御する。
図45は、ガバナー機能を模式的に表した図である。図45に示すように、同期発電機の角速度ωが増大すると、エネルギーの流入を調整する弁が右側に移動することにより、同期発電機に供給されるエネルギーが減少する。一方、同期発電機の角速度ωが減少すると、上記弁が左側に移動することにより、同期発電機に供給されるエネルギーが増加する。これにより、同期発電機から出力されるエネルギーを、自端の系統電圧の周波数(すなわち、同期発電機の角速度ω)により単独で制御することができる。上記の動作を同期発電機が個別に行なった場合でも、系統電圧の周波数に基づいて動作が管理されているため、複数の同期発電機間で負荷を分担することが可能となる。ガバナーは、電気学会より、標準モデルとして一次遅れ系で構成したモデルなどが提供されている。
実施の形態1では、次式(1)に示すように、ガバナーを、上述した一次遅れ系で構成したモデルで近似した場合の動作について説明する。
-1/{Kgd×(1+s×Tg)} …(1)
ただし、式(1)中の-1/Kgdはガバナーの比例ゲイン(Kgd:速度調整率)であり、Tgは一次遅れ系の時定数(Tg:ガバナー時定数)である。
次に、動揺方程式に基づく質点系モデルを模擬した機能について説明する。
図45に示すように、同期発電機は、単位慣性定数Mを持つ回転子を有する。例えば、日射量の急変によりメガソーラー26の発電電力が急減した場合、上記ガバナー制御では、不足する電力を瞬時に賄うことができない。同期発電機は、回転子に蓄積された回転エネルギーを電力に変換し、交流系統に出力する。その際、回転子の角速度(回転速度)が減少すると、ガバナー制御により供給されるエネルギーが増加することにより、需要電力と供給電力とをバランスさせる。次式(2)に、質点系モデル(発電機回転子)を模擬する動揺方程式を示す。動揺方程式はエネルギーPを角速度ωで除算し、トルクTに変換したものである。
Tin-Tout=M×dω/dt+Dg×ω …(2)
ただし、Dgは制動係数であり、Mは慣性定数である。
実施の形態1では、式(1)および式(2)を静止型インバータ(第2のDC/AC変換器408)の制御に組み入れることにより、同期発電機が持つ慣性力、同期化力および制動力を模擬する場合について説明する。
図11に戻って、インバータ電流制御回路84は、第2のDC/AC変換器408を電流制御するための制御指令値を生成する。なお、インバータ電流制御回路84は、図9に示す電流制御回路60とは制御パラメータのみが異なり、回路構成および動作が同一であるため、詳細な説明は省略する。
インバータ電圧制御回路85は、第2のDC/AC変換器408を電圧制御するための制御指令値を生成する。
第3の切換回路86は、インバータ電流制御回路84からの制御指令値と、インバータ電圧制御回路85からの制御指令値とを、第8の制御回路87の出力に基づいて切り換える。
第8の制御回路87は、電圧計406および電流計407による直流母線405に関する計測結果および、第3の制御回路404から出力される第2のDC/DC変換器403のステータス情報などを収集し、収集した情報を、通信I/F412を介してCEMS31などに通知する。
また、第8の制御回路87は、仮想同期発電機制御回路83、インバータ電流制御回路84およびインバータ電圧制御回路85の各々の制御パラメータを通知する。
さらに第8の制御回路87は、図示しない交流系統の実効電圧計測部で計測した交流系統の実効電圧、または図示しない交流系統の有効・無効電力計測部で計測した有効電力および無効電力の情報を、通信I/F412を介してCEMS31に通知する。第8の制御回路87は、交流系統の実効電圧、有効電力などの計測結果を第7の制御回路74に通知する。
(3-2-1)交流周波数検出回路81
図12は、図11に示した交流周波数検出回路81の構成を説明するブロック図である。
図12に示すように、交流周波数検出回路81は、位相検出回路810、周波数検出回路811、および第2の正弦波生成回路812を有する。
位相検出回路810は、電圧計410から出力される系統電圧の波形からゼロクロス点を検出する。位相検出回路810における位相検出方法は、ゼロクロス点の検出に限るものではない。実機でのゼロクロス点の検出については、電圧計410のゼロクロス点の検出誤差(主にオフセット誤差)、電圧計410の振幅検出誤差(主にリニアリティ誤差)、系統電圧波形をサンプリングするときのサンプリング周期の誤差などにより誤差が発生する。なお、サンプリング周期の誤差は、マイコンなどを利用してサンプリングを行なうとき、キャリア割り込みから実際にサンプリングを行なうまでの時間のばらつきにより発生し得る。
周波数検出回路811は、位相検出回路810から出力されるゼロクロス点の周期から、系統周波数を検出する。なお、系統周波数を検出する方法は、ゼロクロス点の周期から検出する方法に限定されるものではない。
第2の正弦波生成回路812は、位相検出回路810におけるゼロクロス点の検出結果、周波数検出回路811における周波数の検出結果、およびCEMS31から出力される系統電圧の振幅に基づいて、系統電圧に同期した正弦波を発生する。交流周波数検出回路81は、ゼロクロス点の検出結果(ゼロクロス点の検出時刻)、周波数の検出結果および正弦波情報を出力する。
(3-2-2)インバータ電圧制御回路85
図13は、図11に示したインバータ電圧制御回路85の構成を説明するブロック図である。
図13に示すように、インバータ電圧制御回路85は、第3の正弦波生成回路851、減算器852、第3のPI制御回路853および第2のPWM変換器854を有する。
インバータ電圧制御回路85は、仮想同期発電機制御回路83(図11)から出力される周波数および位相の情報および、第8の制御回路87(図11)から出力される系統電圧の振幅情報に基づいて、第2のDC/AC変換器408を制御するための制御指令値を生成する。なお、第8の制御回路87からの系統電圧の振幅情報は、第2の正弦波生成回路812を経由してインバータ電圧制御回路85に入力される。
交流周波数検出回路81(図11)からの正弦波情報(周波数、位相および振幅の情報)は第3の正弦波生成回路851に入力される。第3の正弦波生成回路851は、入力された正弦波情報に基づいて、第2のDC/AC変換器408から出力する交流電圧の目標値を生成する。
減算器852は、第3の正弦波生成回路851からの交流電圧の目標値と、電圧計410で計測された電圧との偏差を算出し、算出した偏差を第3のPI制御回路853に出力する。
第3のPI制御回路853は、入力された偏差がゼロになるようにPI(比例積分)演算を行なうことにより、電圧指令値を生成する。第3のPI制御回路853は、生成した電圧指令値を第2のPWM変換器854に出力する。なお、第3のPI制御回路853における制御パラメータ(制御ゲインおよび積分時間)は、第8の制御回路87から与えられるものとする。
第2のPWM変換器854は、第3のPI制御回路853から出力される電圧指令値を用いてPWM(Pulse Width Modulation)制御を実行することにより、制御信号を生成する。第2のPWM変換器854は、生成した制御信号を第2のDC/AC変換器408に出力する。
(3-2-3)仮想同期発電機制御回路83
図14は、図11に示した仮想同期発電機制御回路83の構成を説明するブロック図である。
図14に示すように、仮想同期発電機制御回路83は、減算器832、ガバナー制御回路833、加算器835、減算器836および、質点系演算回路837を有する。
減算器832は、周波数の実測結果と、第8の制御回路87から出力される基準周波数Frefとの偏差を算出する。減算器832の出力はガバナー制御回路833に入力される。ガバナー制御回路833は、減算器832の出力に基づいて、電力目標値に加えるオフセット値を生成する。ガバナー制御回路833の詳細な動作は後述する。
加算器835は、ガバナー制御回路833から出力されるオフセット値と、第8の制御回路87から入力される電力目標値Prefとを加算することにより、質点系演算回路837の制御電力目標値を生成する。
減算器836は、実効電力算出回路82から入力される実効電力と、加算器835から入力される制御電力目標値との偏差を算出する。減算器836の出力は質点系演算回路837に入力される。
質点系演算回路837は、減算器836から出力される偏差がゼロになるように、電力変換装置41から出力される系統電圧の周波数および位相を算出する。なお、実施の形態1では、ガバナー制御回路833および質点系演算回路837の制御パラメータ(速度調整率Kgd、ガバナー時定数Tg、慣性定数Mおよび制動係数Dg)は、CEMS31から第8の制御回路87を介して通知されるものとする。
(3-2-3-1)ガバナー制御回路833
図15は、図14に示したガバナー制御回路833の構成を説明するブロック図である。
図15に示すように、ガバナー制御回路833は、乗算器91、一次遅れ系モデル92、およびリミッタ回路93を有する。
乗算器91は、減算器832の出力と、第8の制御回路87から出力される比例ゲイン(-1/Kgd)とを乗算する。乗算器91の出力は一次遅れ系モデル92に入力される。実施の形態1では、一次遅れ系モデル92は、電気学会が提示している一次遅れ系の標準モデル(1/(1+s×Tg))を実装する。リミッタ回路93は、一次遅れ系モデル92の出力に対してリミッタ処理を施す。
(3-2-3-2)質点系演算回路837
図16は、図14に示した質点系演算回路837の構成を説明するブロック図である。
図16に示すように、質点系演算回路837は、減算器101、積分器102、乗算器103、除算器104、加算器105、および位相計算回路106を有する。
減算器101は、減算器836の出力と、乗算器103の出力との偏差を算出する。減算器101の出力は積分器102に入力される。
積分器102は、減算器101の出力を積分することにより、図45に示した発電機回転子の目標角速度(2×π×目標周波数(例えば60Hz))と、発電機回転子の角速度との差分値Δωを生成する。積分器102の出力は乗算器103に入力される。
乗算器103は、積分器102の出力と、第8の制御回路87から入力される制動係数Dgとを乗算する。
質点系演算回路837は、減算器836の出力と乗算器103の出力との偏差に基づいて、第2のDC/AC変換器408の制御により、同期発電機が持つ制動力を模擬するように構成される。
除算器104は、積分器102の出力Δωを2×πで除算することにより、周波数の差分値Δfに変換する。加算器105は、周波数差分情報Δfに目標周波数(60Hz)を加算することにより、周波数差分情報Δfを発電機回転子の周波数(回転周波数)に変換する。加算器105の出力は位相計算回路106に入力される。位相計算回路106は、発電機回転子の位相を算出する。
次に、質点系演算回路837の動揺方程式の伝達関数について説明する。動揺方程式の伝達関数は次式(3)に示すように、一次遅れ系の比例ゲイン(1/Dg)および時定数(M/Dg)を用いて表すことができる。
(1/M×s)/{1+Dg/M×(1/s)}
=(1/Dg)×[1/{1+(M/Dg)×s} …(3)
なお、仮想同期発電機制御におけるガバナー時定数Tg、質点系演算部の時定数M/Dgはシステムに要求される応答速度に基づき決定する。
(分散電源管理装置の動作概要)
次に、実施の形態1に係る分散電源管理装置の動作の概要について説明する。
図17は、電力変換装置41に実装される仮想同期発電機制御によりカバーされる領域を示す図である。図17の横軸は応答時間を示し、縦軸は需要変動幅を示す。
図17に示すように、静止型インバータに実装される仮想同期発電機制御は、数十m秒~数分程度の微小変動および短周期変動をカバーする。数分以上の変動については、負荷周波数制御(LFC)または経済負荷配分制御(EDC)によって対応することができる。よって、実施の形態1では、仮想同期発電機制御の応答性能を1秒以下として説明する。
以下の説明では、図2に示す配電系統24に接続された蓄電池40、電力変換装置41、配電系統のインピーダンス29および負荷600で構成されているモデルを使用する。説明を簡単にするため、電力変換装置41のインバータ容量を4kWとし、負荷600の容量を最大4kWとする。
図18は、実施の形態1に係る電力変換装置41に実装される仮想同期発電機制御を説明するための図である。図18には、電力目標値は変えずに、負荷600の消費電力を変化させたときの速度調整率Kgdと系統周波数との関係の一例が示されている。図18は、図2において、CEMS31から電力目標値が2kWとして通知されている状態において、負荷600が2kWから4kWに変動したときの、定常状態における各速度調整率Kgdにおける系統周波数を示す。なお、ガバナー時定数Tg、慣性定数Mおよび制動係数Dgの各々は一定値に固定されている。
図18の例では、Kgdが0.343になるまでは、Kgdの数値が大きくなるに従って系統周波数が低下する。一方、Kgdが0.343を超えると、系統周波数が収束することが確認される。
図19は、実施の形態1に係る電力変換装置41に実装される仮想同期発電機制御を説明するための図である。図19には、負荷を急変させたときの制動係数Dgと系統周波数との関係の一例が示されている。図19は、図2において、CEMS31から電力目標値が2kWとして通知されている状態とし、負荷を2kWから4kWに変動したときの、各制動係数Dgにおける系統周波数を示す。なお、ガバナー時定数Tg、慣性定数Mおよび速度調整率Kgd(=0.343)の各々は一定値に固定されている。図19の例では、制動係数Dgが小さくなるに従って、系統周波数の低下が大きくなることが確認される。
一般に、系統周波数の限界値(上限値および下限値)は、基準周波数(以下、Frefとも称する)±1~2%程度となる。よって、基準周波数Frefが60Hzである場合、系統周波数の上限値は61.2~60.6Hz程度となり、系統周波数の下限値は59.4~58.8Hz程度となる。したがって、ガバナー制御の速度調整率Kgdおよび制動係数Dgを、系統周波数が上記限界値により定まる周波数範囲に収まるように設定する必要がある。
次に、ΔP/ΔF特性について説明する。
図20は、ΔP/ΔF特性の一例を示す図である。図20の横軸は、電力目標値に対する実際の電力変換装置41の出力電力の偏差である差分電力ΔPである。差分電力ΔPは、電力変換装置41の出力電力が電力目標値よりも大きい場合を正とする。
図20の縦軸は、交流系統の基準周波数Fref(例えば60Hz)に対する電力変換装置41が出力する交流電圧の周波数の偏差である差分周波数ΔFである。差分周波数ΔFは、電力変換装置41が出力する交流電圧の周波数が基準周波数Frefよりも高い場合を正とする。ΔFmaxは、差分周波数ΔFの最大値である。
実施の形態1に係る仮想同期発電機制御回路83(図11)において、図20に示すΔP/ΔF特性は、静止型インバータ(第2のDC/AC変換器408)の容量、速度調整率Kgdおよび制動係数Dgで決まる。なお、図20では、蓄電池40の充電については考慮せず、電力目標値を静止型インバータ(第2のDC/AC変換器408)の容量の半分とする。図20は、図2において負荷600の消費電力が静止型インバータ(第2のDC/AC変換器408)の容量と同じになったときの系統周波数を上限値(Fref+ΔFmax)とし、負荷600の消費電力がゼロになったときの系統周波数を下限値(Fref-ΔFmax)とした場合のΔP/ΔF特性を示している。
実施の形態1では、図20に示すΔP/ΔF特性を「基準ΔP/ΔF特性」と呼ぶこととする。上述したように、基準ΔP/ΔF特性は、蓄電池40の放電モードにおいて、静止型インバータの容量の半分を電力目標値とし、静止型インバータの出力が容量と一致した場合に系統周波数が上限値(Fref+ΔFmax)となり、静止型インバータの出力がゼロになった場合に系統周波数が下限値(Fref-ΔFmax)となる条件でのΔP/ΔF特性である。なお、放電モードの詳細は後述する。
図21は、実施の形態1に係る電力変換装置41に実装される仮想同期発電機制御において負荷を急変させたときに静止型インバータから出力される交流電圧の周波数の応答波形を示す図である。
図17で説明したように、静止型インバータに実装した仮想同期発電機制御は、数十m秒~数分程度の微小振動および短周期変動をカバーする。そのため、仮想同期発電機制御には1秒以下の応答性能が求められる。一般に、時定数を小さくすると、応答性能が上がるが、応答波形に振動が発生する。また、複数台の分散電源が連携して動作する場合には、不必要な横流が発生するなどの問題が発生し得る。そのため実施の形態1では、図21に示すように、1秒程度で系統周波数が収束するように、ガバナー制御回路833(図15)および質点系演算回路837(図16)における時定数を決定した。
(従来の仮想同期発電機制御およびその問題点)
次に、従来の仮想同期発電機制御を実装した2台の電力変換装置41を配電系統24に配置した場合の問題点を説明する。
図22は、従来の仮想同期発電機制御を実装した2台の電力変換装置41の各々の静止型インバータから出力される交流電力の実効値の応答波形を示す図である。図22に示す応答波形は、2台の電力変換装置41を用いて自立系統を構成し、負荷を急変させたときに各静止型インバータから出力される交流電力の実効値の波形を示している。
図22では、各電力変換装置41のインバータ容量を4kWとし、負荷の消費電力を3.3kWとする。第1の電力変換装置41に対応する第1の蓄電池(図中では「BAT1」と表記)の電力目標値を2.2kWとし、第2の電力変換装置41に対応する第2の蓄電池(図中では「BAT2」と表記)の電力目標値を1.1kWとして、第1および第2の電力変換装置41を制御する。このような状態において、5秒付近で負荷の消費電力が約半分(1.65kW)に急変した場合を想定している。
図22に示すように、負荷が急変する前までは、第1の電力変換装置41からは電力目標値(2.2kW)付近の電力が出力され、第2の電力変換装置41からは電力目標値(1.1kW)付近の電力が出力されており、両者の電力比は2:1となっている。
一方、負荷が急変した後において、第1の電力変換装置41の出力電力は1.35kWとなり、第2の電力変換装置41の出力電力は0.3kWとなっており、両者の電力比は9:2となっている。このように負荷が急変した後は、2台の電力変換装置41からは、想定していた電力案分比(2:1)とは異なる比(9:2)で電力が出力されていることが分かる。
図23は、上記条件で従来の仮想同期発電機制御を実装した2台の電力変換装置41を動作させたときの各静止型インバータから出力される交流電圧の周波数の応答波形を示す。図23に示すように、交流電圧の周波数は、負荷が急変した後においても、仮想同期発電機制御によってほぼ同一の周波数に収束していることが分かる。
次に、図24および図25を用いて、負荷の急変時に電力案分比の変化が起こる理由について説明する。
図24は、従来の仮想同期発電機制御を実装した第1の電力変換装置41のΔP/ΔF特性の一例を示す図である。図25は、従来の仮想同期発電機制御を実装した第2の電力変換装置41のΔP/ΔF特性の一例を示す図である。
従来の仮想同期発電機制御では、電力目標値および静止型インバータの容量に応じて、ΔP/ΔF特性は切り替えられない。図24および図25の例では、2台の電力変換装置41の静止型インバータの容量が同じ(4kW)であるため、同一のΔP/ΔF特性が与えられたものとする。
図22に示すように負荷が急変した場合,各電力変換装置41に実装されている仮想同期発電機制御は、過不足電力を2台の電力変換装置41が分担するように動作する。このとき、図23に示したように、静止型インバータから出力される交流電圧の周波数が互いに等しくなるように、2台の電力変換装置41が制御される。
一方、各電力変換装置41から出力される電力と電力目標値との差分電力ΔPは、図24および図25に示すΔP/ΔF特性によって決まる。したがって、2台の電力変換装置41のΔP/ΔF特性が同一である場合、差分周波数ΔFが同じであるため、差分電力ΔPも同じ値となる。その結果、図22に示したように、負荷の急変後、2台の電力変換装置41からは、想定していた電力案分比とは異なる案分比で電力が出力されることになる。
(実施の形態1に係る仮想同期発電機制御)
図26は、実施の形態1に係る仮想発電機制御を実装した第2の電力変換装置41のΔP/ΔF特性の一例を示す図である。図中の実線は第2の電力変換装置41のΔP/ΔF特性を示し、破線は第1の電力変換装置41のΔP/ΔF特性(図24)を示している。
図22で示したように、第2の電力変換装置41の電力目標値(1.1kW)が、第1の電力変換装置41の電力目標値(2.2kW)の半分である場合(すなわち、電力案分比が2:1)、図26に示すように、同一の差分周波数ΔFにおいて、第1の電力変換装置41の差分電力ΔP(図中のΔP1)と第2の電力変換装置41の差分電力ΔP(図中のΔP2)との比が、電力目標値の比(2:1)に等しくなるように、第2の電力変換装置41のΔP/ΔF特性を決定する。
図26に示すように2台の電力変換装置41のΔP/ΔF特性を決定することにより、負荷が変化した場合においても、各電力変換装置41が分担する電力の比は、CEMS31から通知される電力目標値の比(2:1)と等しくなることがわかる。
(ΔP/ΔF特性の作成方法)
次に、CEMS31における各電力変換装置41のΔP/ΔF特性の作成方法について説明する。
実施の形態1では、各電力変換装置41のΔP/ΔF特性を作成する場合、CEMS31は、最初に、電力変換装置41毎に基準ΔP/ΔF特性を作成する。以下の説明では、蓄電池40の放電に限定して基準ΔP/ΔF特性の作成方法を説明する。
蓄電池40の動作モードには、蓄電池40の放電を行なう放電モード、蓄電池40の充電を行なう充電モードおよび、蓄電池40の充放電を行なう充放電モードがある。蓄電池40を放電モードまたは充電モードで動作させる場合には、差分周波数ΔFの限界値であるΔFmaxに対応する差分電力ΔPが、静止型インバータの容量の半分となるように、基準ΔP/ΔF特性を作成する。
一方、蓄電池40を充放電モードで動作させる場合(特に、電力目標値がゼロ付近となる場合)には、ΔFmaxに対応する差分電力ΔPが、静止型インバータの容量と等しくなるように、基準ΔP/ΔF特性を作成する。
なお、CEMS31は、管理する複数の電力変換装置41の基準ΔP/ΔF特性を同一のポリシーで作成する必要がある。したがって、CEMS31は、第1の電力変換装置41では充放電モードを考慮して基準ΔP/ΔF特性を作成する一方で、第2の電力変換装置41では、充電モードまたは放電モードを考慮して基準ΔP/ΔF特性を作成することは行なわない。
図27は、実施の形態1に係る仮想同期発電機制御を実装した電力変換装置41における基準ΔP/ΔF特性の一例を示す図である。
実施の形態1では、DSO21から通知される、系統周波数の限界値(Fref±ΔFmax)に関する情報、ならびに静止型インバータの容量に関する情報に基づいて、基準ΔP/ΔF特性が作成される。
具体的には、放電モードのみを考慮した場合には、電力目標値Prefを静止型インバータの容量の半分とし、電力変換装置41が静止型インバータの容量と等しい電力を出力するときに系統周波数が下限値(Fref-ΔFmax)となり、静止型インバータの出力がゼロとなるときに系統周波数が上限値(Fref+ΔFmax)となるように、基準ΔP/ΔF特性を作成する。
なお、充電モードのみを考慮した場合には、充電電力を負の値として扱い、充電電力がゼロとなるときに系統周波数が下限値(Fref-ΔFmax)となり、充電電力が静止型インバータの容量と等しくなるときに系統周波数が上限値(Fref+Δfmax)となるように、基準ΔP/ΔF特性を作成すれば同様の効果が得られる。
また、充放電モードを考慮する場合には、電力目標値Prefをゼロとし、静止型インバータの容量と等しい電力を放電するときに系統周波数が下限値(Fref-ΔFmax)となり、静止型インバータの容量と等しい電力を充電するときに系統周波数が上限値(Fref+ΔFmax)となるように、基準ΔP/ΔF特性を作成すれば同様の効果が得られる。
次に、図27に示す基準ΔP/ΔF特性を使用した、各電力変換装置41のΔP/ΔF特性の作成方法について図28を用いて説明する。
なお、以下の説明では、各電力変換装置41の静止型インバータの容量は同一であるものとする。図28では、図27に示した基準ΔP/ΔF特性を利用し、電力目標値が基準ΔP/ΔF特性における電力目標値(静止型インバータ容量の半分)とは異なる場合のΔP/ΔF特性を作成する方法を説明する。図中の破線は基準ΔP/ΔF特性(図27)を示し、実線はΔP/ΔF特性を示している。
静止型インバータの容量が同一である場合、実施の形態1では、基準ΔP/ΔF特性(図中の破線)の傾きに対し、静止型インバータ容量の半分(0.5倍)を、電力変換装置41の電力目標値Prefで除算した結果を乗算することにより、ΔP/ΔF特性(図中の実線)の傾きを求める。例えば、電力目標値Prefが静止型インバータ容量の0.25倍であった場合、基準ΔP/ΔF特性の傾きに、0.5/0.25(=2)を乗算することにより、ΔP/ΔF特性の傾きを求める。
次に、各電力変換装置41の静止型インバータの容量が異なる場合について説明する。この場合、各電力変換装置41の基準ΔP/ΔF特性の作成方法が上述した作成方法とは異なる。
複数の電力変換装置41間で静止型インバータの容量が異なる場合には、基準となる静止型インバータ容量を予め決めておく。例えば、3台の静止型インバータの容量を10kW,8kW,4kWとした場合には、8kWを基準とする。なお、基本的にはどの容量を基準に選択しても問題がないことは言うまでもない。そして、図27で述べた作成方法を用いて、基準容量(8kW)を有する静止型インバータの基準ΔP/ΔF特性を作成する。
次に、基準容量(8kW)を有する静止型インバータの基準ΔP/ΔF特性を用いて、容量が4kWの静止型インバータの基準ΔP/ΔF特性を作成する。図29は、容量が4kWの静止型インバータの基準ΔP/ΔF特性の作成方法を説明するための図である。図中の破線は基準容量を有する静止型インバータの基準ΔP/ΔF特性(図27)を示し、実線は容量が4kWの静止型インバータの基準ΔP/ΔF特性を示している。
図29に示すように、基準容量(8kW)に対する基準ΔP/ΔF特性の傾きに対し、基準容量(今回は8kW)を、自己の静止型インバータの容量(今回は4kW)で除算した値を乗算することにより、基準ΔP/ΔF特性の傾きを求める。具体的には、容量が4kWの静止型インバータの基準ΔP/ΔF特性の傾きは、基準容量(8kW)の静止型インバータの基準ΔP/ΔF特性の傾きに8/4(=2)を乗算することにより算出される。同様に、容量が10kWの静止型インバータの基準ΔP/ΔF特性の直線の傾きは、基準容量(8kW)の静止型インバータの基準ΔP/ΔF特性の傾きに8/10(=0.8)を乗算することにより算出される。
図30は、静止型インバータの容量が異なる2台の電力変換装置41の基準ΔP/ΔF特性およびΔP/ΔF特性の一例を示す図である。図30において、破線L1は第1の電力変換装置41の基準ΔP/ΔF特性を示し、実線L2は第1の電力変換装置41のΔP/ΔF特性を示す。破線L3は第2の電力変換装置41の基準ΔP/ΔF特性を示し、実線L4は第2の電力変換装置41のΔP/ΔF特性を示す。
図30の例では、第1の電力変換装置41は、静止型インバータの容量が8kWであり、電力目標値が6kWである。第2の電力変換装置41は、静止型インバータの容量が4kWであり、電力目標値が1kWである。
図31は、図30に示す2台の電力変換装置41から出力される交流電力の実効値の波形を示す図である。図31の例では、第1の電力変換装置41は、静止型インバータの容量が8kWであり、電力目標値が2kWである。第2の電力変換装置41は、静止型インバータの容量が4kWであり、電力目標値が1kWである。
図31の波形は、図30に示した2台の電力変換装置41の基準ΔP/ΔF特性(図中の実線L1,L3)に基づいて、2台の電力目標値が2kW,1kWである場合の仮想同期発電機制御回路83が生成した制御パラメータ(Tg,Kgd,MおよびDg)を用いて、第1および第2の電力変換装置41を動作させたものである。
図31には、負荷が3kWから5.25kWに急変した場合において、各電力変換装置41から出力される交流電力の実効値の波形が示されている。図31に示すように、負荷が急変する前および負荷が急変した後のいずれにおいても、第1および第2の電力変換装置41の電力案分比は2:1となっており、想定通りの動作をしていることが分かる。
以上説明したように、仮想同期発電機制御を実装した静止型インバータを有する、複数の電力変換装置41が配電系統24に接続されている場合、電力変換装置41毎に、静止型インバータの容量および電力目標値に基づいてΔP/ΔF特性が作成される。そして、電力変換装置41毎に、ΔP/ΔF特性を用いて仮想同期発電機制御回路83(図11)の制御パラメータが生成される。
このような構成としたことにより、負荷600の消費電力またはメガソーラー26の発電電力が急変した場合においても、各電力変換装置41から出力される電力の比を、CEMS31から通知された電力目標値の比と等しくすることができる。これによると、例えばSOCが少ないために放電電力を少なく設定した蓄電池40の放電電力の、放電電力全体に占める割合が大きくなるといったことを防ぐことができる。
なお、実施の形態1では、ΔP/ΔF特性の作成方法として、各電力変換装置41の基準ΔP/ΔF特性を作成し、作成した基準ΔP/ΔF特性を用いて、電力目標値に応じてΔP/ΔF特性を作成する方法を説明したが、これに限るものではない。例えば、静止型インバータの容量、電力目標値および、蓄電池40のSOC情報に基づいて、仮想同期発電機制御回路83の制御パラメータ(Tg,Kgd,M,Dg)を直接的に生成する構成としてもよい。
(分散電源管理装置の動作)
次に、図1から図41を用いて、実施の形態1に係る分散電源管理装置の動作を詳細に説明する。
最初に図1を参照して、実施の形態1に係る分散電源管理装置が適用される配電系統24について説明する。
実施の形態1では、配電系統24は、変電所20から供給される系統電圧を所定の電圧範囲内に制御するために、変電所20と電力変換装置27(または、電力変換装置41aまたはタウン100a)との間に、複数のSVR23が直列に接続されている。
電力変換装置27は電流源として動作する。電力変換装置27の近くには電力変換装置41aが設置されている。実施の形態1では、電力変換装置41aは電圧源として動作する。電力変換装置41aは、仮想同期発電機制御を実行することにより、メガソーラー26の発電電力を平滑化させることもできる。
負荷としては、タウン100a~100d、工場110、ビル112およびマンション113がある。負荷には、変電所20から供給される電力、メガソーラー26の発電電力および蓄電池40の放電電力が供給される。工場110には非常用の同期発電機30aが配置されており、ビル112には非常用の同期発電機30bが配置されている。
ここで、変電所20から供給される電力、メガソーラー26の発電電力および、蓄電池40の放電電力を受ける配電系統24における、分散電源管理装置の動作を説明する。
図32は、図1に示したCEMS31を中心とした分散電源管理装置の通常動作を説明するためのシーケンス図である。
図32に示すように、定常時の処理は、30分周期で実施される処理(以下、「第1の処理」とも称する)と、5分周期で実施される処理(以下、「第2の処理」とも称する)とで構成されている。
第1の処理(30分周期処理)が開始されると、DSO21は、CEMS31に対し、通信線25を介して、収集した計測データの出力を要求する。CEMS31は、DSO21からの要求を受信すると、直近の30分間で収集した各需要家の消費電力量、メガソーラー26の発電電力量、ならびに蓄電池40の充放電電力量およびSOCを含む計測データをDSO21に送信する。
計測データを受信すると、DSO21は、計測データに基づいて配電系統24の運転計画を作成し、作成した運転計画をCEMS31に通知する。配電系統24の運転計画は、変電所20から配電系統24への電力供給計画を含み、蓄電池40の運転計画(充放電計画)を作成するために必要となる。DSO21は、30分周期の電力供給計画を24時間分作成する。30分周期の電力供給計画は、30分間に変電所20から配電系統24に供給される総電力量を示す。
CEMS31は、DSO21から運転計画(電力供給計画)を受信すると、電力変換装置41に対して計測データを送信するように要求する。計測データは、直近の5分間の蓄電池40の充放電電力量およびSOC情報を含む。電力変換装置41は、CEMS31からの要求を受信すると、計測データをCEMS31に通知する。
CEMS31は、配電系統24に接続されているすべての電力変換装置41a~41cから計測データを受信する。このとき、CEMS31は、各需要家の30分間の消費電力量およびメガソーラー26の発電電力量などの計測データも収集する。
計測データの収集が完了すると、CEMS31は、蓄電池40の運転計画および制御パラメータを作成する。蓄電池40の運転計画は、蓄電池40の充放電計画であり、蓄電池40の充放電電力の目標値(電力目標値)を含む。蓄電池40の運転計画および制御パラメータの作成方法については後述する。
蓄電池40の運転計画および制御パラメータの作成が完了すると、CEMS31は、各電力変換装置41に対し、対応する蓄電池40の運転計画および制御パラメータを通知して、第1の処理を終了する。
続いてCEMS31は、第2の処理(5分周期処理)を実施する。CEMS31は、5分周期で各電力変換装置41から計測データを収集する。CEMS31は、収集した計測データに基づいて、電力目標値と実際の充放電電力との偏差を検出する。偏差が予め定められた閾値以上である場合には、CEMS31は、蓄電池40の運転計画(電力目標値)を再計算し、再計算結果を各電力変換装置41に通知する。なお、具体的な再計算の方法については後述する。
(CEMS31の動作)
次に、図33を用いてCEMS31の詳細な動作を説明する。
図33は、図1に示したCEMS31の制御処理を示すフローチャートである。図33に示すように、処理が開始されると、CEMS31は、ステップ(以下、Sと略す)01にて、DSO21からの計測データの出力要求を受信したかを確認する。出力要求を受信した場合(S01にてYES)、CEMS31は、S02により、複数の電力変換装置41から計測データを収集する。CEMS31は、S03により、記憶回路12に格納した計測データを、通信回路11を介してDSO21に通知する。
一方、DSO21からの出力要求を受信していない場合(S01にてNO)またはS03にてDSO21に計測データを送信した場合には、CEMS31は、S04に進み、DSO21から運転計画(電力供給計画)を受信したかどうかを確認する。運転計画を受信した場合(S04にてYES)、CEMS31はS05に進み、蓄電池40の運転計画(充放電計画)を作成する。
図34は、蓄電池40の運転計画を作成する処理(図33のS05)を示すフローチャートである。
図34に示すように、処理が開始されると、S051により、CEMS31は、メガソーラー26の発電電力量を予測する。具体的には、図3および図4に戻って、DSO21から運転計画を受信すると、制御回路16(図3)は、運転計画作成回路14内の管理回路146(図4)に対し、運転計画を作成するように指示する。管理回路146は、制御回路16から指示を受けると、蓄電池運転計画作成回路141を経由して発電電力予測回路142に対し、メガソーラー26の発電電力を予測するように指示する。
発電電力予測回路142は、管理回路146からの指示を受けると、図示しないインターネット上に配置された天気予報サーバにアクセスすることにより、現在から24時間後までの24時間分の天気予報を取得する。発電電力予測回路142は、取得した24時間分の天気予報および、発電電力予測回路142が管理する発電電力量予測用のデータベース(図示せず)に格納されているデータを用いて、現在から24時間後までの24時間分の発電電力量を予測する。なお、発電電力量予測用のデータベースは、30分周期で収集したメガソーラー26の発電電力量の実績および天気実績情報に基づいて構築される。データベースの構築方法の説明は省略する。
S051にて発電電力量を予測すると、CEMS31は、S052により、需要家の消費電力を予測する。具体的には、図4に戻って、管理回路146は、発電電力予測回路142からメガソーラー26の発電電力量の予測結果を受けると、蓄電池運転計画作成回路141を経由して、消費電力予測回路143に対し、需要家の消費電力を予測するように指示する。
消費電力予測回路143は、管理回路146からの指示を受けると、消費電力予測回路143が管理する消費電力予測用のデータベース(図示せず)に格納されているデータを用いて、現在から24時間後までの24時間分の需要家の消費電力量を予測する。なお、消費電力予測用のデータベースは、30分周期で収集した需要家の消費電力を、年月日、時刻情報および天気情報に基づいて処理することにより構築される。データベースの構築方法の説明は省略する。
S052にて需要家の消費電力量を予測すると、CEMS31は、S053により、需要計画を作成する。具体的には、図4に戻って、消費電力予測回路143から需要家の消費電力量の予測結果を受けると、蓄電池運転計画作成回路141は、発電電力予測回路142によるメガソーラー26の発電電力量の予測結果、消費電力予測回路143による需要家の消費電力量の予測結果、およびDSO21から通知された運転計画(30分毎の電力供給計画)に基づいて、蓄電池40a~40cの30分毎の充放電電力量の合計値を算出する。
S053にて需要計画を作成すると、CEMS31は、S054により、蓄電池40a~40cの充放電電力(電力目標値)を策定する。具体的には、図3および図4に戻って、蓄電池運転計画作成回路141は、通信回路11を介して記憶回路12に収集された蓄電池40a~40cのSOC情報および蓄電池容量に基づいて、各蓄電池40の30分毎の充放電電力を案分する。
実施の形態1では、24時間分の蓄電池40の運転計画を作成する際、CEMS31は、蓄電池40a~40cのSOCが同時にゼロとなる、あるいは、蓄電池40a~40cがともに24時間後に満充電状態となるように、各蓄電池40の充放電電力を策定する。
これは、以下の理由による。例えば、メガソーラー26の上方を雲が横切ることによって5分間程度、メガソーラー26の発電電力が10MWから4MWに低下した場合を想定する。なお、電力変換装置41a~41cの静止型インバータの容量をそれぞれ8MW,4MW,2MWとする。
ここで、蓄電池40aのSOCが最初にゼロとなり放電を停止することにより、残りの蓄電池40b,40cから1MW,0.5MWをそれぞれ放電するように、電力変換装置41b,41cに対して蓄電池の運転計画が通知されていたとする。日射量の急変によってメガソーラー26の発電電力が6MW減少した場合、蓄電池40b,40cの放電電力は、仮想同期発電機制御によって、それぞれ3MW,1.5MWを追加で出力することしかできないため、不足分の6MWを補償することができない。
一方、蓄電池40a~40cが動作していた場合には、最大14MW(=8MW+4MW+2MW)まで放電が可能となるため、仮想同期発電機制御によって補償できる電力範囲が広がる。よって、CEMS31において蓄電池40の運転計画(充放電計画)を作成する場合には、蓄電池40a~40cがほぼ同時にSOCがゼロ、または満充電状態になるように運転計画を作成する必要がある。
S054にて蓄電池40a~40cの充放電電力(電力目標値)を策定すると、CEMS31は、S055により、全ての蓄電池40a~40cについて、仮想発電機制御の制御パラメータを生成したかを確認する。全ての蓄電池40a~40cの制御パラメータの生成が終了していない場合(S055にてNO)、CEMS31は、S056に進み、仮想発電機制御の制御パラメータを生成する。
図35は、仮想同期発電機制御の制御パラメータを生成する処理(図34のS056)を示すフローチャートである。図35に示す処理は、CEMS31内の制御パラメータ生成回路13(図5)により実行される。
図35に示すように、処理が開始されると、制御回路136(図5)は、S0561により、図34のS054にて蓄電池運転計画作成回路141により生成された、次の30分間の蓄電池40の電力目標値、電力変換装置41内の第2のDC/AC変換器408(静止型インバータ)の容量、および配電系統24に関する情報を収集する。なお、配電系統24に関する情報には、系統周波数の上限値および下限値ならびに、仮想同期発電機制御回路83(図11)の応答性能などが含まれる。系統周波数の上限値は基準周波数Fref(例えば60Hz)+ΔFmaxであり、系統周波数の下限値はFref-ΔFmaxである。
S0561において情報収集が完了すると、S0562により、基準ΔP/ΔF算出回路131は、電力変換装置41ごとに基準ΔP/ΔF特性を算出する。以下、基準ΔP/ΔF特性について説明する。
仮想同期発電機制御を実装した電力変換装置41の制御パラメータを生成する場合、最初に、静止型インバータの基準ΔP/ΔF特性を算出する。なお、実施の形態1では、電力変換装置41のための制御パラメータを生成する構成について説明するが、風力発電装置など出力を調整可能な電力変換装置に仮想同期発電機制御を実装したものについても、同じ方法を用いて制御パラメータを生成することができる。
具体的には、基準ΔP/ΔF特性算出回路131は、図27に示すように、蓄電池40の放電モード時、静止型インバータの容量の半分を電力目標値とし、静止型インバータが最大電力を放電したときの交流電圧の周波数が下限周波数と等しくなり(図27では差分周波数ΔF=-ΔFmax)かつ、静止型インバータの放電電力がゼロのときの交流電圧の周波数が上限周波数と等しくなるように(図27ではΔF=ΔFmax)、基準ΔP/ΔF特性を決定する。
一方、蓄電池40の充電モード時には、静止型インバータの容量の半分を電力目標値とし、静止型インバータが最大電力を充電したときの交流電圧の周波数が上限周波数となり(ΔF=ΔFmax)、かつ、静止型インバータの充電電力がゼロのときの交流電圧の周波数が下限周波数と等しくなるように(ΔF=-ΔFmax)、基準ΔP/ΔF特性を決定する。
また、蓄電池40の充放電モード時には、静止型インバータの電力目標値をゼロとし、静止型インバータが最大電力を放電したときの交流電圧の周波数が下限周波数と等しくなり(ΔF=-ΔFmax)、かつ、静止型インバータが最大電力を充電したときの交流電圧の周波数が上限周波数と等しくなるように(ΔF=ΔFmax)、基準ΔP/ΔF特性を決定する。
図36は、基準ΔP/ΔF特性を生成する処理(図35のS0562)を示すフローチャートである。
図36に示すように、処理を開始すると、S05621により、基準ΔP/ΔF特性算出回路131(図5)は、制御回路136から、対象となる静止型インバータの容量情報(Cinv)を収集する。
静止型インバータの容量情報を収集すると、S05622により、基準ΔP/ΔF特性算出回路131は、系統情報(ΔFmax)を収集する。次に、基準ΔP/ΔF特性算出回路131は、S05623により、インバータ容量CinvおよびΔFmaxを用いて、基準ΔP/ΔF特性の傾きを求める。
具体的には、蓄電池40が充電モードまたは放電モードである場合、基準ΔP/ΔF特性算出回路131は、基準ΔP/ΔF特性の傾きを、-ΔFmax/(Cinv×0.5)とする。一方、蓄電池40が充放電モードである場合には、基準ΔP/ΔF特性の傾きを、-ΔFmax/Cinvとする。
なお、放電モード(または充電モード)および充放電モードのいずれの基準ΔP/ΔF特性を採用するかについては、図34のS053で作成した需要計画における蓄電池40の充放電電力の策定結果に基づいて、蓄電池運転計画作成回路141(図4)が判断する。具体的には、策定した充放電電力の絶対値が予め定められた値未満である場合には、蓄電池運転計画作成回路141は、充放電モードを採用する。なお、採用されたモードは、配電系統24に接続されている全ての電力変換装置41に適用される。
図35に戻って、S0562において基準ΔP/ΔF特性が算出されると、S0563により、ΔP/ΔF特性算出回路132(図5)は、ΔP/ΔF特性を生成する。具体的には、図5に戻って、基準ΔP/ΔF特性算出回路131は、生成した基準ΔP/ΔF特性の傾きを、制御回路136およびΔP/ΔF特性算出回路132に出力する。
ΔP/ΔF特性算出回路132は、制御回路136から与えられる電力目標値に基づいて、ΔP/ΔF特性を算出する。図37は、ΔP/ΔF特性を生成する処理(図35のS0563)を示すフローチャートである。図37に示すように、処理を開始すると、ΔP/ΔF特性算出回路132は、S05631により、制御回路136から電力目標値を収集する。ΔP/ΔF特性算出回路132は、S05632により、収集した電力目標値の大きさが静止型インバータ容量Cinvを超えていないかを判定する。
電力目標値の大きさが静止型インバータ容量Cinvを超えていた場合(S05632にてNO)、ΔP/ΔF特性算出回路132は、S05633にて、リミッタにより電力目標値を静止型インバータ容量Cinvに制限する。
ΔP/ΔF算出回路132は、S05634により、電力目標値を用いてΔP/ΔF特性の傾きを求める。具体的には、蓄電池40が放電モードまたは充電モードである場合には、ΔP/ΔF特性の傾きを、基準ΔP/ΔF特性の傾き×(Cinv×0.5)/電力目標値とする。一方、蓄電池40が充放電モードである場合には、メガソーラー26または風力発電などの再生可能エネルギーの発電電力の変動を吸収することを想定し(電力目標値がゼロ)、静止型インバータ容量のみに依存するΔP/ΔF特性、すなわち図35のS0562で求めた基準ΔP/ΔF特性をそのまま使用する。
図35に戻って、S0563によりΔP/ΔF特性を生成すると、S0564により、制御回路136は、仮想同期発電機制御の制御パラメータを生成する。図5および図38を用いて、制御パラメータの生成方法について説明する。
図5に示すように、制御回路136は、制御パラメータ生成回路133に対し、制御パラメータを生成するように指示する。
制御パラメータの生成指示を受けると、制御パラメータ生成回路133は、ΔP/ΔF特性算出回路132から与えられるΔP/ΔF特性の傾き、制御回路136から入力される系統情報(基準周波数Fref、ΔFmax)、電力目標値Prefおよびインバータ容量Cinvに基づいて、制御パラメータを生成する。実施の形態1では、制御パラメータ生成回路13(図3)内に仮想同期発電機制御回路83(図11)の動作を模擬する仮想同期発電機モデル134を実装し、このモデルを用いて制御パラメータを生成する場合について説明する。
なお、制御パラメータの生成方法はこれに限るものではなく、例えば、図18に示した速度調整率Kgdと系統周波数との関係を、制動係数Dgごとに対応するテーブルデータとして記憶しておくとともに、図19に示した制動係数Dgと系統周波数との関係を、速度調整率Kgdごとに対応するテーブルデータとして記憶しておき、これらのテーブルデータを用いて、適切な速度調整率Kgdおよび制動係数Dgを決定するように構成してもよい。
実施の形態1では、仮想同期発電機モデル134として、図14から図16に示すブロック図を数式モデル化したものを使用するが、これに限るものではない。例えば、上記式(1)に示すガバナー制御部の伝達関数、および上記式(2)に示す動揺方程式から仮想同期発電機制御回路83(図11)の伝達関数を生成し、生成した伝達関数から制御パラメータを生成する構成としてもよい。
図38は、制御パラメータを生成する処理(図35のS0564)を示すフローチャートである。図38に示すように、制御パラメータの生成を開始すると、仮想同期発電機モデル134(図5)は、S05641により、速度調整率Kgdおよび制動係数Dgの各々を予め定められた初期値に設定することにより、速度調整率Kgdおよび制動係数Dgを初期化する。実施の形態1では、ΔP/ΔF特性を決定する速度調整率Kgdおよび制動係数Dgのみを、仮想同期発電機モデル134で生成するものとする。
S05641にて速度調整率Kgdおよび制動係数Dgを初期化すると、仮想同期発電機モデル134は、S05642に進み、速度調整率Kgdおよび制動係数Dgを用いてΔP/ΔF特性の傾きを算出する。
仮想同期発電機モデル134は、S05643により、S05642にて算出されたΔP/ΔF特性の傾きと、図35のS0563(図37)により生成したΔP/ΔF特性の傾きとを比較する。具体的には、仮想同期発電機モデル134は、これら2つのΔP/ΔF特性の傾きの偏差が予め定められた許容範囲内に入っているかを確認する。
傾きの偏差が上記許容範囲内に入っている場合には、仮想同期発電機モデル134は、2つのΔP/ΔF特性の傾きが一致していると判定し(S05643にてYES)、処理をS05649に進める。
一方、傾きの偏差が上記許容範囲内に入っていない場合には、仮想同期発電機モデル134は、2つのΔP/ΔF特性の傾きが一致しないと判定する(S05643にてNO)。この場合、仮想同期発電機モデル134は、S05644に進み、制動係数Dgを変更する。実施の形態1では、仮想同期発電機モデル134は、現在の制動係数Dgに所定値を加算する。
S05644にて制動係数Dgを変更すると、仮想同期発電機モデル134は、S05645により、制動係数Dgが予め定められた所定範囲内に入っているかを確認する。制動係数Dgが当該所定範囲内に入っていれば(S05645にてYES)、仮想同期発電機モデル134は、S05642に戻り、変更された制動係数Dgを用いてΔP/ΔF特性の傾きを算出する。
一方、制動係数Dgが当該所定範囲を超えている場合(S05645にてNO)、仮想同期発電機モデル134は、現状の速度調整率Kgdでは適切な特性が得られないと判断し、S05646により、制動係数Dgを初期値に戻すとともに、速度調整率Kgdを変更する。具体的には、仮想同期発電機モデル134は、現在の速度調整率Kgd(初期値)に所定値を加算する。
S05646にて速度調整率Kgdを変更すると、仮想同期発電機モデル134は、S05647により、速度調整率Kgdが予め定められた所定範囲に入っているかを確認する。速度調整率Kgdが当該所定範囲から外れている場合(S05647にてNO)、仮想同期発電機モデル134は、S05648に進み、適切な速度調整率Kgdおよび制動係数Dgが求められなかったとして、速度調整率Kgdおよび制動係数Dgを予め準備していたそれぞれのデフォルト値に設定し、処理をS05649に進める。
一方、S05647にて速度調整率Kgdが所定範囲内にある場合(S05647にてYES)、仮想同期発電機モデル134は、S05642に戻り、変更された速度調整率Kgdおよび制動係数Dgを用いてΔP/ΔF特性の傾きを算出する。仮想同期発電機モデル134は、S05642~S05647の処理を、S05654にてYESと判定されるまで、または、S05647にてNOと判定されるまで繰り返し実行する。
速度調整率Kgdおよび制動係数Dgが設定されると、制御パラメータ生成回路133は、S05649により、慣性定数Mを算出する。実施の形態1では、慣性定数Mは、仮想同期発電機制御に求められる応答時間に基づいて算出される。具体的には、仮想同期発電機制御の応答性能は、ガバナー制御回路833(図14)のガバナー時定数Tgおよび、動揺方程式で求められる質点系演算回路837(図14)の時定数M/Dgによって決まる。実施の形態1では、ガバナー時定数Tgのデフォルト値を使用し、ガバナー時定数Tgを生成しないことから、質点系演算回路837の時定数のみを制御する。質点系演算回路837の時定数は、上記式(3)からM/Dgにより求められる。よって、実施の形態1では、デフォルト値で定められた質点系演算回路837の時定数に制動係数Dgに乗算することにより、慣性定数Mを算出する。
図34に戻って、S056にて仮想同期発電機制御の制御パラメータを生成すると、S055に戻り、制御パラメータ生成回路13は、配電系統24に接続されている全ての電力変換装置41の制御パラメータの算出が完了したかを確認する。全ての電力変換装置41の制御パラメータの算出が完了していない場合(S055にてNO)、制御パラメータ生成回路13は、S056に進み、次の電力変換装置41の制御パラメータを算出する。一方、全ての電力変換装置41の制御パラメータの算出を完了すると(S055にてYES)、制御パラメータ生成回路13は、蓄電池40の運転計画の作成を終了する。
図33のS05により、蓄電池40の運転計画の作成が終了すると、蓄電池運転計画作成回路141(図4)は、作成した運転計画(電力目標値)を管理回路145に通知する。管理回路145は、運転計画を受信すると、受信した運転計画をメモリに記憶するとともに、送信データ生成回路15(図3)に通知する。制御パラメータ生成回路13は、生成した制御パラメータを送信データ生成回路15に通知する。
送信データ生成回路15は、蓄電池40の運転計画(電力目標値)および制御パラメータを取得すると、これらを送信用フォーマットに加工して通信回路11(図3)に出力する。通信回路11は、送信データ生成回路15から送信データを受けると、通信線25を介して、対応する電力変換装置41に送信データを送信する。
図33のS10において、全ての電力変換装置41への運転計画および制御パラメータの送信が完了すると、S11において、CEMS31を停止させるかを確認する。CEMS31を停止させる場合(S11にてYES)、処理を終了する。一方、CEMS31を停止させない場合(S11にてNO)、処理はS01に戻る。
これに対して、図33のS04にてDSO21から運転計画(電力供給計画)を受信していない場合(S04にてNO)、CEMS31は、S06に進み、各種計測データの収集時刻が到来したかを確認する。実施の形態1では、上述したように、CEMS31は、5分周期で計測データを収集する。計測データの収集時刻が到来していない場合(S06にてNO)、処理はS01に戻る。一方、計測データの収集時刻が到来した場合(S06にてYES)、CEMS31は、S07により計測データを収集する。実施の形態1では、CEMS31は、電力変換装置41a~41cの各々から、5分間の蓄電池40の充放電電力量、現在の充放電電力およびSOC情報を、計測データとして収集する。
S07にて計測データを収集すると、CEMS31は、S08により、蓄電池40の運転計画の修正が必要であるか否かを確認する。S07では、CEMS31は、複数の蓄電池40の各々について、現在の充放電電力と運転計画(電力目標値)とを比較する。具体的には、CEMS31は、現在の充放電電力と電力目標値との電力差が所定範囲を超えているか、および、蓄電池40のSOCが予め定められている許容範囲を超えているかを確認する。複数の蓄電池40のうちのいずれか1つの蓄電池40において電力差が所定範囲を超えている場合、および/またはSOCが許容範囲を超えている場合には、CEMS31は、全ての蓄電池40の運転計画を見直す。なお、電力差が所定範囲を超えている、および/またはSOCが許容範囲を超えている蓄電池40の運転計画を見直すようにしてもよい。
CEMS31は、上記の要領で蓄電池40の運転計画の修正が必要かを確認し、蓄電池40の運転計画の修正が不要と判断した場合(S08にてNO)、S01に戻り処理を継続する。一方、蓄電池40の運転計画の修正が必要と判断した場合(S08にてYES)、CEMS31は、S09に進み、全ての蓄電池40の運転計画を修正する。
図39は、蓄電池40の運転計画を修正する処理(図33のS09)を示すフローチャートである。図39に示す処理は、CEMS31内の運転計画作成回路14(図4)により実行される。
図39に示すように、処理が開始されると、管理回路146(図4)は、S091により、蓄電池運転計画補正回路144(図4)に対し、運転計画の修正を指示するとともに、各電力変換装置41から収集した充放電電力およびSOC情報を転送する。S092では、管理回路146は、蓄電池運転計画補正回路144に対し、管理回路145(図4)に記憶されている蓄電池40の運転計画(電力目標値)、および記憶回路12に記憶されている電力変換装置41の静止型インバータの容量も出力する。
蓄電池運転計画補正回路144は、管理回路146から与えられる情報に基づいて、蓄電池40の運転計画の見直しを行なう。例えば、メガソーラー26の発電電力量の予測値および各需要家の消費電力量の予測値のいずれかが実績値から外れていたために、電力変換装置41の出力電力が電力目標値の2倍となっている場合を想定する。
このような場合において、系統周波数が下限値(Fref-ΔFmax)付近にまで低下しているものとする。これ以上の電力不足が生じると、系統周波数が下限値になってしまい、これ以上電力変換装置41から電力を供給できない状況が発生し得る。
そこで、実施の形態1では、電力目標値と充放電電力との比が所定の範囲内にない場合、蓄電池運転計画補正回路144は、5分周期で収集した計測データに基づいて、蓄電池40の運転計画(電力目標値)を修正する。具体的には、蓄電池運転計画補正回路144は、現在の充放電電力およびSOC情報に基づいて、蓄電池40の運転計画を修正する。
ここで、蓄電池40の運転計画の修正にSOCを用いる理由は、蓄電池40としてリチウムイオンバッテリを使用した場合、過充電または過放電によって蓄電池40が故障または、急激に劣化してしまう場合がある。そのため、通常の蓄電池の制御では、SOCが例えば90%を超えると、蓄電池の充電モードを、定電流充電モードから定電圧充電モードに切り替える。定電圧充電モードでは、充電電力を大きくとることができないため、仮想同期発電機制御において電力目標値を小さくする必要が生じる。同様に、過放電となった場合においても蓄電池40の劣化が進むため、SOCが例えば5%を下回った時点で放電電力を絞る必要がある。よって、SOCを蓄電池40の運転計画の作成および修正に使用する。
なお、蓄電池40として鉛蓄電池を使用する場合、過充電には強いが、過放電によって劣化が進行する傾向がある。そのため、鉛蓄電池の場合には、例えばSOCが20%を下回った時点で放電電力を絞る必要がある。上述したように、使用する蓄電池の劣化の進行を抑制するために、SOCを用いて電力目標値を修正する。
具体的には、蓄電池運転計画補正回路144は、現在の充放電電力に基づいて蓄電池40の運転計画を作成するが、SOCが上限値付近となるときの充電および、SOCが下限値付近となる放電においては、現在の充放電電力およびSOCに基づいて蓄電池40の運転計画を作成する。具体的には、SOCが上限値に近い場合には充電電力目標値を絞り、SOCが下限値に近い場合には放電電力目標値を絞る。
S093にて蓄電池40の運転計画(電力目標値)を修正すると、S094により、制御パラメータ生成回路13(図3)は、全ての蓄電池40の制御パラメータの算出が完了したかを確認する。全ての蓄電池40の制御パラメータの算出が完了していれば(S094にてYES)、蓄電池運転計画補正回路144は、蓄電池40の運転計画の修正処理を終了する。一方、全ての蓄電池40の運転計画の修正が完了していなければ(S094にてNO)、S095により、制御パラメータ生成回路13は、仮想同期発電機制御の制御パラメータを生成する。なお、仮想同期発電機制御の制御パラメータの生成方法は、上述した蓄電池40の運転計画の作成処理(図34のS056および図35)で用いた生成方法と同様であるため説明を省略する。
S095において制御パラメータを生成すると、S094に戻り、制御パラメータ生成回路13は、全ての電力変換装置41の制御パラメータの算出が完了したか否かを確認する。全ての電力変換装置41の制御パラメータの算出が完了していない場合(S094にてNO)、S095により、制御パラメータ生成回路13は、次の電力変換装置41の制御パラメータを生成する。
一方、全ての電力変換装置41の制御パラメータの算出が完了すると(S094にてYES)、蓄電池運転計画補正回路144は蓄電池40の運転計画の修正処理を終了する。
図33に戻って、S09において蓄電池40の運転計画を修正すると、運転計画の作成時と同様に、蓄電池運転計画作成回路141は、修正した運転計画(電力目標値)を、管理回路145に通知する。
管理回路145は、蓄電池運転計画作成回路141から蓄電池40の運転計画を取得すると、取得した運転計画を図示しないメモリに記憶するとともに、送信データ生成回路15に通知する。同様に、制御パラメータ生成回路13は、蓄電池40の運転計画および制御パラメータを送信データ生成回路15に通知する。
送信データ生成回路15は、蓄電池40の運転計画および制御パラメータを受けると、これらを送信用のフォーマットに加工し、通信回路11に出力する。
通信回路11は、送信データ生成回路15から送信データを受けると、通信線25を介して、対応する電力変換装置41に送信データを送信する(図33のS10)。
図33のS10において、全ての電力変換装置41に対して蓄電池40の運転計画の送信が完了すると、S11により、CEMS31を停止するかを確認する。CEMS31を停止する場合(S11にてYES)には、処理を終了する。一方、CEMS31を停止させない場合には、S01に戻り、処理を継続する。
以上説明したように、実施の形態1では、電力変換装置41に向けて蓄電池40の運転計画(電力目標値)を作成する際、各電力変換装置41の静止型インバータの容量および電力目標値に基づいて、当該静止型インバータに実装される仮想同期発電機制御の制御パラメータを生成する。これによると、次の運転計画がCEMS31から通知されるまでの期間中に、負荷600の消費電力またはメガソーラー26などの創エネ機器の発電電力が変動した場合においても蓄電池40の運転計画(電力目標値)と同じ案分比で、過不足電力を分担することができる。
したがって、例えば全ての電力変換装置41に運転計画を通知した直後に日射量が変化することによって、メガソーラー26の発電電力が50%減少した場合、不足する50%の電力は、運転計画の作成時に算出した電力目標値の比に基づいて案分される。例えば運転計画の作成時に、電力目標値がその比に従って制御された場合に、全ての蓄電池40のSOCがほぼ同時にゼロになるように、各蓄電池40の充放電電力が策定されていた場合には、メガソーラー26の発電電力が50%減少しても、電力目標値の比に基づいて過不足電力が案分されるため、全ての蓄電池40のSOCがほぼ同時にゼロになるように制御することができる。
なお、実施の形態1では、電力変換装置41の静止型インバータに向けて仮想同期発電機制御の制御パラメータを生成するとき、インバータ容量および電力目標値を用いて算出する構成について説明したが、これに限るものではなく、例えば、電力変換装置41aのインバータ容量に対して蓄電池40aの容量が2倍、電力変換装置41bのインバータ容量に対して蓄電池40bの容量が3倍など、インバータ容量に対する蓄電池40の容量の比が電力変換装置41間で異なる場合には、容量の比を考慮して各蓄電池40の運転計画(電力目標値)を生成する。あるいは、制御パラメータを生成するときに上記容量比を考慮することによっても、同様の効果を得ることができる。
(電力変換装置27および電力変換装置41の動作)
次に、図6から図16、図40および図41を用いて、メガソーラー用の電力変換装置27および蓄電池用の電力変換装置41の動作を説明する。
[電力変換装置27の動作]
図6を用いて、メガソーラー用の電力変換装置27の動作を説明する。
メガソーラー26が発電を開始すると、メガソーラー26から電力変換装置27内の第1のDC/DC変換器203に入力される直流電圧が上昇する。第1の制御回路204は、電圧計201により計測される直流電圧を監視する。第1の制御回路204は、直流電圧が所定の電圧値を超えた場合に、電力変換装置27を待機状態から通常動作に移行させる。
通常動作に移行すると、電力変換装置27内の第2の制御回路209は、第1のDC/AC変換器208を制御する。以下、通常動作時の電力変換装置27の制御を説明する。
図6を参照して、第1の制御回路204は、メガソーラー26が発電しているかを確認する。具体的には、第1の制御回路204は、電圧計201により計測されるメガソーラー26の出力電圧が所定電圧を超えているかを確認する。出力電圧が所定電圧を超えている場合、第1の制御回路204は、メガソーラー26が発電可能であることを、第2の制御回路209に通知する。
第2の制御回路209は、第1の制御回路204からの通知を受信すると、電圧計10により計測される配電系統24の交流電圧に基づいて、変電所20から配電系統24に電力が供給されているか(配電系統24が停電していないか)を確認する。
電圧計210により計測される交流電圧が所定電圧以上であって、配電系統24が停電していないことが確認されると、第2の制御回路209は、DC/AC変換器208を起動するとともに、第1の制御回路204に対し、メガソーラー26の発電を開始するように指示する。
なお、実施の形態1では、通常運転時に、直流母線205の直流母線電圧を第1のDC/AC変換器208によって管理する場合について説明する。また、実施の形態1では、電力変換装置27から配電系統24に回生される電力を、第1のDC/AC変換器208による電流制御によって管理することにより、分散電源管理装置全体を動作させるものとする。
第2の制御回路209によってメガソーラー26の発電開始が指示されると、第1の制御回路204の第5の制御回路54(図8)は、MPPT制御回路51(図8)に対し、メガソーラー26の最大電力点追随制御を開始するように指示する。
最大電力点追随制御について簡単に説明する。最大電力点追従制御では、前回の指令値を前々回の電力指令値よりも大きくしたか、小さくしたかを管理する。そして、今回計測したメガソーラー26の発電電力と、前回計測したメガソーラー26の発電電力とを比較し、発電電力が増加していた場合には、前回と同じ方向(増加方向または減少方向)に指令値を変更する。
具体的には、今回計測したメガソーラー26の発電電力が前回計測した発電電力よりも増加した場合、前々回の指令値よりも前回の指令値が大きいときには、今回の指令値を増加させる。一方、前々回の指令値よりも前回の指令値が小さいときには、今回の指令値を減少させる。反対に、今回計測したメガソーラー26の発電電力が前回計測した発電電力よりも減少した場合、前々回の指令値よりも前回の指令値が大きいときには、今回の指令値を減少させる。一方、前々回の指令値よりも前回の指令値が小さいときには、今回の指令値を増加させる。このように今回の指令値を制御することにより、メガソーラー26は出力電力が最大となるように制御される。
第1のDC/DC変換器203は、第1の制御回路204から出力される指令値に従って、内蔵されている昇圧回路を動作させることにより、メガソーラー26から出力される第1の直流電圧を、第2の直流電圧(直流母線205の直流母線電圧)に変換して出力する。
第1のDC/DC変換器203からメガソーラー26の発電電力の供給が開始されると、第2の制御回路209は、第1のDC/AC変換器208を制御することにより、配電系統24にメガソーラー26の発電電力を出力(回生)する。具体的には、直流母線205の直流母線電圧を監視しておき、直流母線電圧が制御目標値を超えた場合には、配電系統24より供給される交流電圧に同期して発電電力を出力する。
次に、図9を用いて第2の制御回路209の動作を説明する。
第2の制御回路209において、位相検出回路61は、電圧計210(図1)により計測される配電系統24の交流電圧の波形のゼロクロス点を検出する。
第1の正弦波生成回路62は、位相検出回路61により検出されたゼロクロス点を示す情報および、電圧計210により計測される交流電圧の波形に基づいて、配電系統24の交流電圧の波形に同期した基準正弦波を生成する。第1の正弦波生成回路62は、生成した基準正弦波を乗算器65に出力する。
電圧計206は、直流母線205の電圧を計測し、計測値を電流制御回路60内の減算器63および第6の制御回路67に出力する。なお、電流制御回路60は、交流系統電圧に同期して電力を出力する制御方式(電流制御)を用いる。この制御方式は、家庭に設置されている一般的な太陽光発電用の電力変換装置の制御方式である。
第6の制御回路67は、直流母線205の目標電圧を記憶しており、当該目標電圧を減算器63に出力する。
電流制御回路60は、電圧計206により計測される直流母線電圧が目標電圧になるように、第1のDC/AC変換器208が出力する電流を制御する。減算器63の出力は、第1のPI制御回路64に入力される。第1のPI制御回路64は、減算器63の出力がゼロになるようにPI制御を行なう。第1のPI制御回路64の出力は、乗算器65に入力され、第1の正弦波生成回路62からの基準正弦波と乗算されることにより、電流指令値に変換される。
乗算器65から出力される電流指令値は減算器66に入力される。減算器66は、電流指令値と、電流計211により計測される配電系統24の交流電流値との偏差を算出し、算出した偏差を第2のPI制御回路68に入力する。
第2のPI制御回路68は、減算器66から出力される偏差がゼロとなるようにPI制御を行なう。第1のPWM変換器69は、第2のPI制御回路68の出力に対してPWM制御を実行することにより、第1のDC/AC変換器208の指令値を生成する。第1のDC/AC変換器208は、第1のPWM変換器69から与えられる指令値に従って交流電流を出力する。
また、電圧計210により計測される交流電圧(交流実効電圧)が所定の電圧値を超えた場合、あるいは、CEMS31からメガソーラー26の発電電力を抑制する要求が通知された場合には、第1の制御回路204内の第5の制御回路54(図8)は、メガソーラー26の制御をMPPT制御から電圧制御に切り替える。具体的には、第5の制御回路54は、電圧計210により計測される交流電圧(交流実効電圧)が所定の電圧範囲に収まるように、メガソーラー26から出力される直流電圧を制御する。あるいは、第5の制御回路54は、メガソーラー26の発電電力がCEMS31から通知される電力範囲内に収まるように、メガソーラー26の出力電圧を制御する。
なお、第1の切換回路53(図8)は、第5の制御回路54から与えられる切換制御信号に従って、MPPT制御回路51の出力と、電圧制御回路52の出力とを切り換える。
第6の制御回路67は、電圧計206および電流計207により計測される直流母線205に関する計測結果、電圧計210および電流計211により計測される配電系統24に関する計測結果、第1の制御回路204から出力される第1のDC/DC変換器203のステータス情報などを収集し、収集した情報を通信I/F212を介してCEMS31などに通知する。
また、第6の制御回路67は、図示しない実効電圧計測部により計測した配電系統24の実効電圧あるいは、図示しない有効・無効電力計測部により計測した交流系統の有効電力および無効電力に関する情報についても、通信I/F212を介してCEMS31に通知するとともに、交流系統の実効電圧、有効電力等の計測結果は第5の制御回路54にも通知する。
第5の制御回路54は、上述したように、交流系統電圧の実効値が所定値を超えた場合、メガソーラー26の制御をMPPT制御から電圧制御に切り替えることにより、交流系統電圧の上昇を抑制する。
[電力変換装置41の動作]
次に、図7、図10から図16、図40および図41を用いて、蓄電池用の電力変換装置41の動作を説明する。
実施の形態1では、電力変換装置41には仮想同期発電機制御が実装されるため、第2のDC/AC変換器408は電圧制御を実行することにより、電圧源として動作する。すなわち、第3の制御回路404(図7)は、直流母線405の電圧が一定値になるように制御する。以下、図10を用いて第3の制御回路404の動作を説明する。
直流母線405の電圧は電圧計406により計測される。電圧計406の計測値は、充電制御回路71、放電制御回路72および第7の制御回路74に入力される。
充電制御回路71および放電制御回路72は、直流母線405の電圧が第7の制御回路74から出力される目標電圧になるように、充電電力または放電電力を制御する。具体的には、蓄電池40が放電している場合には、直流母線405の電圧が目標電圧より大きいときには放電電力を減少させる一方で、直流母線405の電圧が目標電圧より小さいときには放電電力を増加させるように制御することにより、直流母線405の電圧を目標電圧に一致させる。
一方、蓄電池40を充電している場合には、直流母線405の電圧が目標電圧より大きいときには充電電力を増加させる一方で、直流母線405の電圧が目標電圧より小さいときには放電電力を減少させるように制御することにより、直流母線405の電圧を目標電圧に一致させる。
なお、充電制御回路71の出力と、放電制御回路72の出力との切り換えは、第2の切換回路73により行なわれる。第7の制御回路74は、蓄電池40の充放電動作に基づいて、第2の切換回路73への切換制御信号を出力する。
次に、図11から図16および図40を用いて、第4の制御回路409(図7)の動作を説明する。
図40は、電力変換装置41の動作を説明するためのフローチャートである。
図40に示すように、処理が開始されると、S200により、第4の制御回路409は、各種制御パラメータを初期化する。続いてS201により、第4の制御回路409は、電圧計401,406,410により計測した電圧値、電流計402,407,411により計測した電流値および、蓄電池40のステータス情報を収集する。なお、電圧計410の計測値は交流電圧であるため、第8の制御回路87(図11)において交流電圧の実効値を算出し、当該実効値を電圧値とする。電流計411の計測値は交流電流であるため、第8の制御回路87において交流電流の実効値を算出し、当該実効値を電流値とする。第7の制御回路74内の充放電電力計算回路(図示せず)は、収集したデータに基づいて、蓄電池の充放電電力および充放電電力量を算出する。
電圧計410により計測した配電系統24の交流電圧は交流周波数検出回路81(図11)に入力される。交流周波数検出回路81は、S202により、交流電圧の波形のゼロクロス点を検出する。
図12は、図11に示した交流周波数検出回路81の構成を示すブロック図である。図12に示すように、電圧計410の計測値は位相検出回路810に入力される。図40のS202により、位相検出回路810は、交流電圧のゼロクロス点を検出する。なお、実施の形態1では、ゼロクロス点は、電圧計410により計測される交流電圧の波形が負から正に切り替わる点および時刻を示している。位相検出回路810は、検出したゼロクロス点を示す情報を周波数検出回路811に出力する。
周波数検出回路811は、位相検出回路810が前回検出したゼロクロス点の時刻と、今回検出したゼロクロス点の時刻とに基づいて交流電圧の周期を算出する。周波数検出回路811は、算出した周期に基づいて、交流電圧の周波数を算出する。
第2の正弦波生成回路812は、位相検出回路810により検出されたゼロクロス点情報および、および周波数検出回路811により検出された交流電圧の周波数情報を、正弦波情報として出力する。ゼロクロス点情報および周波数情報は、インバータ電流制御回路84、インバータ電圧制御回路85、仮想同期発電機制御回路83および、第8の制御回路87に出力される。
図40に戻って、S202にてゼロクロス点を検出した場合(S202にてYES)、位相検出回路810は、S203により、ゼロクロス点検出フラグをセットする。S203の処理を終了した場合、あるいはS202にてゼロクロス点を検出しない場合(S202にてNO)、第4の制御回路409は、S204により、第2のDC/AC変換器408を制御する。
以下、図11および図41を用いて、第2のDC/AC変換器408の制御について説明する。
上述したように、電力変換装置41は仮想同期発電機制御を実装しているため、第2のDC/AC変換器408は、電圧源として制御される。すなわち、第2のDC/AC変換器408は電圧制御される。したがって、配電系統24に供給される電力が不足する場合には、第2のDC/AC変換器408は、出力電力を増加するように制御される。一方、配電系統24に供給される電力が過剰となる場合には、第2のDC/AC変換器408は、出力電力を減少させるように制御される。
図41は、第2のDC/AC変換器408の制御処理の詳細を説明するためのフローチャートである。
図41に示すように、S2041により、実効電力算出回路82(図11)は、電圧計410および電流計411の計測値に基づいて電力値を算出すると、S2042により、算出した電力値を積分する。ゼロクロス点検出フラグがセットされている場合(S2043にてYES)、実効電力算出回路82は、S2044に進み、交流電圧1周期分の実効電力値の積分値を第8の制御回路87内の記憶回路(図示せず)に記憶するとともに、S2045により積分値をゼロに初期化する。
S2045の処理を終えた場合、あるいは、ゼロクロス点検出フラグがセットされていない場合(S2043にてNO)、S2046により、インバータ電圧制御回路85は、第2のDC/AC変換器408の指令値を生成する。
S2046にて指令値を生成すると、仮想同期発電機制御回路83(図11)は、仮想同期発電機制御を実行する。実施の形態1では、交流電圧の1周期を制御周期とする。なお、制御周期については、交流電圧の1周期の整数倍または、1秒周期などの予め定められた周期としてもよい。
図14は、仮想同期発電機制御回路83の構成を示すブロック図である。
第8の制御回路87(図11)は、制御タイミングに到来したと判断すると、仮想同期発電機制御回路83に対し、電圧制御に使用する周波数および位相に関する情報を生成するように指示する。実施の形態1では、ゼロクロス点において、インバータ電圧制御回路85内の第3の正弦波生成回路851(図13)により生成する正弦波の周波数および位相を更新する。よって、実施の形態1では、上記制御周期は、交流周波数検出回路81により検出したゼロクロス点の周期となる。
図14に示すように、仮想同期発電機制御回路83において、減算器832は、交流周波数検出回路81(図11)から入力される交流電圧の周波数の実測値から、第8の制御回路87から入力される基準周波数Fref(例えば60Hz)を減算し、減算結果をガバナー制御回路833に出力する。図15は、図14に示したガバナー制御回路833の詳細な構成を示すブロック図である。
図15に示すように、ガバナー制御回路833において、乗算器91は、減算器832(図14)の出力と、第8の制御回路87から通知される制御パラメータ(-1/Kgd)とを乗算する。乗算器91は、乗算結果を一次遅れ系モデル92に入力する。
なお、ガバナー制御回路833で使用する速度調整率Kgdおよびガバナー時定数Tgは、CEMS31から通知されたものを第8の制御回路87を経由してレジスタ(図示せず)にセットし、使用するものとする。
一次遅れ系モデル92は、上述したように、第8の制御回路87から通知される時定数Tgを用いて、一次遅れ系(1/(1+s×Tg))を模擬する演算を行ない、演算結果をリミッタ回路93に出力する。
リミッタ回路93は、入力されたデータに制限を加える。具体的には、リミッタ回路93は、第2のDC/AC変換器408の電力容量を超えないように、第2のDC/AC変換器408の出力電力に制限を加える。
図14に戻って、加算器835は、ガバナー制御回路833の出力と、第8の制御回路87から出力される電力目標値Prefとを加算する。なお、電力目標値Prefは、CEMS31から通知されたものが第8の制御回路87から出力される。
減算器836は、加算器835の出力から実効電力算出回路82(図11)から出力される実効電力の実績値を減算し、減算結果を質点系演算回路837に出力する。図16は、図15に示した質点系演算回路837の詳細な構成を示すブロック図である。
図16に示すように、減算器101は、減算器836(図14)の出力から乗算器103の出力を減算し、減算値を積分器102に出力する。
積分器102は、減算器101の減算結果を第8の制御回路87から出力される慣性定数Mによって除算し、除算結果を積分する。積分器102の出力Δωは、交流電圧の周波数の角速度(2×π×60Hz)に対する差分値に相当する。積分器102の出力Δωは、乗算器103および除算器104に入力される。
乗算器103は、積分器102の出力Δωと、第8の制御回路87から与えられる制動係数Dgとを乗算し、乗算結果を減算器101に出力する。
除算器104は、積分器102の出力Δωを2×πで除算することにより、Δωを基準周波数Fref(60Hz)からの差分値Δfに変換する。加算器105は、除算器104の出力Δfと、基準周波数Fref(60Hz)とを加算することにより、インバータ電圧制御回路85(図11)において電圧制御を行なうための周波数(Fref+Δf)を生成する。
なお、質点系演算回路837で使用する慣性定数Mおよび制動係数Dgについては、CEMS31により生成されて通知されたものを第8の制御回路87を経由して、図示しないレジスタにセットし、レジスタにセットされたものを使用する。
加算器105から出力される周波数情報(Fref+Δf)は、位相計算回路106に入力される。以下、位相計算回路106の動作を説明する。
実施の形態1では、加算器105(図16)から出力される周波数情報は、位相計算回路106によって積分され、インバータ電圧制御回路85が電圧制御を行なうときの位相情報として出力される。
質点系演算回路837(図16)から出力される位相情報および周波数情報は、交流周波数検出回路81内の第2の正弦波生成回路812(図12)を経由して、インバータ電圧制御回路85内の第3の正弦波生成回路851(図13)に入力される。第3の正弦波生成回路851は、入力された情報に基づいて、電力変換装置41から出力される交流電圧の目標値を生成する。
図40に戻って、S205にて仮想同期発電機制御の処理が終了すると、第4の制御回路409は、S206により、CEMS31から計測データの送信要求を受けたかを確認する。CEMS31から送信要求を受けた場合(S206にてYES)、第8の制御回路87(図11)は、S207により、計測データを通信I/F412(図7)を介してCEMS31に通知する。
一方、S207にて計測データを通知した場合、または、CEMS31からの送信要求がなかった場合(S206にてNO)、第8の制御回路87は、S208に進み、CEMS31から制御情報を受信したかを確認する。
CEMS31から制御情報を受信した場合(S208にてYES)、第8の制御回路87は、S209により、制御情報の受信フラグをセットする。S209の処理が終了した場合、またはCEMS31から制御情報を受信していない場合(S208にてNO)には、第8の制御回路87は、S210により、ゼロクロス点検出フラグがセットされているか否かを確認する。ゼロクロス点検出フラグがセットされていない場合(S210にてNO)、処理はS201に戻る。
一方、ゼロクロス点検出フラグがセットされている場合(S210にてYES)、S211により、第2の正弦波生成回路812(図12)は、系統電圧の周波数および位相の情報を取り込むとともに、S212にて、ゼロクロス点検出フラグをリセットする。
S212にてゼロクロス点検出フラグをリセットすると、S213により、第2の正弦波生成回路812は、系統電圧の周波数および位相の情報(実施の形態1ではゼロクロス点時刻情報)を、S211にて取り込んだ情報に更新する。
S213の処理が完了すると、第8の制御回路87は、S214により、CEMS31から制御情報を受信したか(制御情報受信フラグがセットされているか)を確認する。受信フラグがセットされていない場合(S214にてNO)、処理をS201に戻す。
一方、受信フラグがセットされている場合には(S214にてYES)、第8の制御回路87は、S215により、周波数目標値(基準周波数Fref)および電力目標値Prefの各々を受信したデータに置き換える。第8の制御回路87は、仮想同期発電機制御の制御パラメータを、S216にて受信した制御パラメータ(速度調整率Kgd、制動係数Dgおよび慣性定数M)に更新する。
S216にて制御パラメータの更新が完了すると、第8の制御回路87は、受信フラグをセットしているレジスタ(図示せず)をクリア(リセット)して、処理をS201に戻す。
以上説明したように、実施の形態1に係る分散電源管理装置によれば、CEMS31が作成した蓄電池40a~40cの運転計画(電力目標値)を、対応する電力変換装置41a~41cにそれぞれに通知した直後に需要バランスが大きく変化した場合であっても、電力変換装置41a~41cの出力電力の案分比を、運転計画作成時の電力目標値の比とほぼ等しくすることができる。これによると、数時間後に蓄電池40a~40cのSOCがほぼ同時にゼロとなるように運転計画(放電計画)が作成されていた場合、もしくは、蓄電池40a~40cがほぼ同時に満充電になるように運転計画(充電計画)が作成されていた場合において、負荷600の消費電力またはメガソーラー26の発電電力が運転計画作成時の想定電力から大きく変化したときにおいても、想定した時刻からずれるものの、蓄電池40a~40cのSOCをほぼ同時にゼロ、または蓄電池40a~40cをほぼ同時に満充電とすることができ、想定した運転計画を遵守することができる。
また、従来の仮想同期発電機制御技術では、過不足電力を電力変換装置41a~41cが均等に分担していたため、電力目標値が相対的に小さい電力変換装置41の電力の案分比が高くなってしまい、対応する蓄電池40が他の蓄電池40に先立ってSOCがゼロになってしまう場合があった。これに対し、実施の形態1によれば、過不足電力を、運転計画にて設定された電力目標値の比に案分することができるため、SOCが低い(すなわち、電力目標値が小さい)蓄電池40の電力の案分比を低く抑えることができる。
実施の形態2.
実施の形態1では、電力変換装置41に実装される仮想同期発電機制御の制御パラメータをCEMS31が生成し、電力変換装置41に送信する構成について説明した。実施の形態2では、CEMS31が制御パラメータの生成に必要となるパラメータを電力変換装置41に送信し、受信したパラメータを用いて電力変換装置41が制御パラメータを生成する構成について説明する。
実施の形態2におけるCEMS31は、実施の形態1におけるCEMS31と比較して、制御パラメータ生成回路13(図5)の構成のみが異なる。以下では、実施の形態1と異なる部分の動作を中心に、実施の形態2に係る分散電源管理装置を説明する。
図42は、実施の形態2に係る制御パラメータ生成回路13の構成を示すブロック図である。図42に示す制御パラメータ生成回路13は、図5に示した制御パラメータ生成回路13から制御パラメータ生成回路133および仮想同期発電機モデル134を除くとともに、制御回路136を制御回路137に置き換えたものである。
実施の形態2では、CEMS31は、ΔP/ΔF特性の傾きを生成し、生成したΔP/ΔF特性の傾き、電力目標値Pref、系統情報(系統周波数の限界値(Fref±ΔFmax)、仮想同期発電機制御の応答性能などを電力変換装置41に送信する。電力変換装置41は、CEMS31からの受信データおよび、自己の静止型インバータの容量を用いて制御パラメータを生成する。
実施の形態2では、CEMS31がΔP/ΔF特性を生成する構成について説明するが、これに限るものではなく、CEMS31が、制御パラメータの生成に必要となるすべての情報または中間的に生成されるデータを電力変換装置41に送信し、電力変換装置41が、受信したデータを利用して制御パラメータを生成する構成としてもよい。これによると、CEMS31から電力変換装置41に送信されるデータ量を減らすことができる。
図42に示すように、実施の形態2に係る制御パラメータ生成回路13は、基準ΔP/ΔF特性算出回路131、ΔP/ΔF特性算出回路132、管理回路135および制御回路137を有する。
基準ΔP/ΔF特性算出回路131は、電力変換装置41a~41cの静止型インバータ(第2のDC/AC変換器408)の容量に関する情報に基づいて、基準ΔP/ΔF特性を算出する。
ΔP/ΔF特性算出回路132は、基準ΔP/ΔF特性および、運転計画作成回路14(図5)で作成された電力目標値Prefに基づいて、ΔP/ΔF特性を算出する。
管理回路135は、ΔP/ΔF特性算出回路132から出力されるΔP/ΔF特性の傾き、および電力目標値Prefなどの情報を図示しないメモリに格納し、管理する。
制御回路137は、基準ΔP/ΔF特性算出回路131、ΔP/ΔF特性算出回路132および管理回路135の動作を管理する。
次に、実施の形態2に係るCEMS31の動作を説明する。実施の形態2に係るCEMS31の動作は、実施の形態1に係るCEMS31の動作と比較して、仮想同期発電機制御の制御パラメータの生成処理(図34のS056および図35)のみが異なる。以下、異なる部分の動作について説明する。
図43は、仮想同期発電機制御の制御パラメータを生成する処理(図34のS056)を示すフローチャートである。図43に示す処理は、CEMS31内の制御パラメータ生成回路13(図42)により実行される。
図43に示すように、処理が開始されると、最初に、制御回路137は、S0561により、図34のS054で作成した次の30分間の蓄電池40の充放電電力量から算出した電力目標値Pref、電力変換装置41内の第2のDC/AC変換器408のインバータ容量Cinv、配電系統24の情報(系統周波数の限界値(Fref±ΔFmax)、仮想同期発電機制御の応答性能)を収集する。実施の形態2では、図34のS054において、蓄電池運転計画作成回路141(図4)が、各電力変換装置41の電力目標値Prefを作成するものとする。
S0561にて情報を収集すると、S0562により、基準ΔP/ΔF特性算出回路131(図42)は、基準ΔP/ΔF特性を算出する。基準ΔP/ΔF特性の作成方法は、実施の形態1で説明した方法と同じである。すなわち、蓄電池40の放電モードまたは充電モードにおいては、基準とするインバータ容量の半分を電力目標値(放電の場合を正、充電の場合を負とする)とし、静止型インバータが最大電力を放電した場合(充電では充電電力がゼロとなる場合)の交流電圧の周波数が下限周波数(Fref-ΔFmax)と等しくなるように、静止型インバータの放電電力がゼロの場合(充電では最大電力を充電する場合)の交流電圧の周波数が上限周波数(Fref+ΔFmax)と等しくなるように、基準ΔP/ΔF特性を作成する。
一方、蓄電池40の充放電モードの場合には、基準となるインバータ容量の半分を電力目標値とし、静止型インバータが最大電力で充電したときの交流電圧の周波数が上限周波数と等しくなるように、かつ、静止型インバータの充電電力がゼロとなるときの交流電圧の周波数が下限周波数と等しくなるように、基準ΔP/ΔF特性を作成する。
S0562にて基準ΔP/ΔF特性を算出すると、S0563により、ΔP/ΔF特性算出回路132は、ΔP/ΔF特性を作成する。具体的には、図42に示すように、基準ΔP/ΔF特性を生成すると、基準ΔP/ΔF特性算出回路131は、生成した基準ΔP/ΔF特性の傾きを制御回路137およびΔP/ΔF特性算出回路132に出力する。
ΔP/ΔF特性算出回路132は、制御回路137から通知される電力目標値Prefに基づいて、ΔP/ΔF特性を算出する。具体的には、ΔP/ΔF特性算出回路132は、制御回路137から収集した電力目標値Prefがインバータ容量Cinvを超えていた場合、電力目標値Prefをインバータ容量Cinvに制限する。そして、ΔP/ΔF特性算出回路132は、蓄電池40の放電モードまたは充電モードの場合、ΔP/ΔF特性の傾き=基準ΔP/ΔF特性の傾き×(Cinv×0.5)/Prefとなるように、ΔP/ΔF特性の傾きを算出する。
ΔP/ΔF特性の傾きが算出されると、制御回路137は、ΔP/ΔF特性の傾き、電力目標値Pref、系統情報(Fref±ΔFmax、仮想同期発電機制御の応答性能など)を管理回路135に出力する。管理回路135は、入力された情報を図示しない記憶部に、電力変換装置41ごとに記憶する。以降の動作は、実施の形態1における動作と同じであるため説明を省略する。
次に、実施の形態2に係る電力変換装置41の動作を説明する。
図44は、第4の制御回路409(図11)の動作を中心としたフローチャートである。
図44に示すように、電力変換装置41の動作が開始されると、実施の形態1と同様に、第4の制御回路409は、S200により、各種制御パラメータを初期化し、予め定められた初期値に設定する。
各種制御パラメータを初期化すると、第4の制御回路409は、S201により、電圧計401,406,410および電流計402,407,411の計測値および、蓄電池40のステータス情報(SOCなど)を収集する。実施の形態2では、第4の制御回路409は、収集したデータに基づいて、蓄電池40の充放電電力および充放電電力量を算出する。
次にS202により、第4の制御回路409は、交流電圧のゼロクロス点を検出する。ゼロクロス点を検出すると(S202にてYES)、S203に進み、ゼロクロス点検出フラグをセットする。なお、ゼロクロス点は、実施の形態1と同様、電圧計410により計測される交流電圧の波形が負から正に切り替わる点および時刻を示す。交流周波数検出回路81(図11)は、位相検出回路810(図12)が前回検出したゼロクロス点の時刻情報と、今回検出したゼロクロス点の時刻情報とに基づいて、交流電圧の周期を算出し、算出した結果に基づいて交流電圧の周波数を算出する。
第2の正弦波生成回路812は(図12)、位相検出回路810により検出されたゼロクロス点情報および、周波数検出回路811により検出された交流電圧の周波数情報を、正弦波情報として出力する。
S203の処理が終了した場合またはS202にてゼロクロス点が検出されない場合(S202にてNO)、第4の制御回路409は、S204により、第2のDC/AC変換器408を制御する。実施の形態1と同様に、第4の制御回路409は、第2のDC/AC変換器408を電圧源として制御する。よって、第4の制御回路409は、配電系統24に供給される電力が不足する場合には、第2のDC/AC変換器408の出力電力を増加させ、配電系統24に供給される電力が過剰となる場合には、第2のDC/AC変換器408の出力電力を減少させる。
実効電力算出回路82(図11)は、電圧計410および電流計411の計測値に基づいて実効電力値を算出し、算出した実効電力値を積分する。ゼロクロス点検出フラグがセットされている場合、実効電力算出回路82は、交流電圧の1周期分の実効電力の積分値を第8の制御回路87内の記憶回路に記憶させるとともに、積分値をゼロに初期化する。実効電力を算出すると、インバータ電圧制御回路85は、第2のDC/AC変換器408を制御するための指令値を生成する。
S204にて指令値が生成されると、第4の制御回路409は、S205により、仮想同期発電機制御を実行する。実施の形態1と同様に、交流電圧の1周期を制御周期とする。第8の制御回路87(図11)は、制御タイミングが到来したと判断すると、仮想同期発電機制御回路83(図11)に対し、電圧制御に使用する周波数および位相の情報を生成するように指示する。実施の形態2では、実施の形態1と同様に、ゼロクロス点で、インバータ電圧制御回路85内の第3の正弦波生成回路851(図13)が発生する交流電圧の周波数および位相を更新する。
仮想同期発電機制御回路(図14)において、減算器832は、交流周波数検出回路81(図11)による交流電圧の周波数の実測値と第8の制御回路87から出力される基準周波数Frefとの偏差を算出し、算出した偏差をガバナー制御回路833に出力する。
ガバナー制御回路833(図15)は、減算器832から出力される偏差と、第8の制御回路87から通知される制御パラメータ(-1/Kgd)とを乗算器91により乗算し、乗算結果を一次遅れ系モデル92に出力する。なお、ガバナー制御回路833が使用する速度調整率Kgdおよびガバナー時定数Tgは、CEMS31から通知された情報に基づいて第8の制御回路87が生成して図示しないレジスタにセットしたものを使用するものとする。
一次遅れ系モデル92は、実施の形態1で説明したように、第8の制御回路87から通知された時定数Tgを用いて、一次遅れ系(1/(1+s×Tg))を模擬する演算を行ない、演算結果をリミッタ回路93に出力する。リミッタ回路93は、第2のDC/AC変換器408の電力容量を超えないように、第2のDC/AC変換器408の出力電力に制限を加える。
加算器835(図14)は、ガバナー制御回路833の出力と、第8の制御回路87から出力される電力目標値Prefとを加算する。なお、電力目標値Prefは、CEMS31から通知されたものである。減算器836は、加算器835の出力と、実効電力算出回路82(図11)による実効電力の実測値との偏差を算出し、算出した偏差を質点系演算回路837に出力する。
質点系演算回路837(図16)において、減算器101は、減算器836(図14)の出力と、乗算器103の出力との偏差を算出し、算出した偏差を積分器102に出力する。積分器102は、減算器101の出力を、第8の制御回路87から出力される慣性定数Mで除算し、除算結果を積分する。積分器102の出力Δω(交流電圧の周波数の角速度からの差分値)は、乗算器103および除算器104に入力される。乗算器103は、積分器102の出力Δωと、第8の制御回路87から出力される制動係数Dgとを乗算し、乗算結果を減算器101に出力する。除算器104は、積分器102の出力Δωを2×πで除算することにより、ΔωをΔf(交流電圧の周波数からの差分値)に変換する。加算器105は、除算器104の出力と、交流電圧の基準周波数Fref(60Hz)とを加算することにより、インバータ電圧制御回路85での電圧制御に用いる周波数を生成する。なお、質点系演算回路837が使用する慣性定数Mおよび制動係数Dgは、CEMS31から通知された情報を用いて第8の制御回路87が生成してレジスタ(図示せず)にセットしたものを用いることとする。加算器105から出力される周波数情報は、位相計算回路106に出力される。位相計算回路106は、加算器105から出力される周波数情報を積分することにより、インバータ電圧制御回路85での電圧制御に用いる位相情報を生成する。
質点系演算回路837から出力される位相情報および周波数情報は、交流周波数検出回路81内の第2の正弦波生成回路812(図12)を経由して、インバータ電圧制御回路85内の第3の正弦波生成回路851(図13)に入力される。第3の正弦波生成回路851は、電力変換装置41から出力する交流電圧の目標値を生成する。
図44に戻って、S205にて仮想同期発電機制御が完了すると、第4の制御回路409は、S206により、CEMS31から計測データの送信要求を受けたかを確認する。CEMS31から送信要求を受けた場合(S206にてYES)、S207に進み、第4の制御回路409は、計測データを通信I/F412を介してCEMS31に通知する。
S207にて計測データを送信した場合または、CEMS31からの送信要求を受けていない場合(S206にてNO)、第4の制御回路409は、S208により、CEMS31から制御情報を受信したかを確認する。制御情報を受信していた場合(S208にてYES)、第4の制御回路409は、制御情報の受信フラグをセットする。S209にて受信フラグをセットした場合、あるいは、CEMS31から制御情報を受信していない場合(S208にてNO)、第4の制御回路409は、S210により、ゼロクロス点検出フラグがセットされているかを確認する。ゼロクロス点検出フラグがセットされていない場合(S210にてNO)、処理はS201に戻る。
一方、ゼロクロス点検出フラグがセットされている場合(S210にてYES)、第4の制御回路409は、S211に進み、交流電圧の周波数および位相の情報を第2の正弦波生成回路812に取り込むとともに、S212により、ゼロクロス点検出フラグをリセットする。
S212にてゼロクロス点検出フラグをリセットすると、第4の制御回路409は、S213により、交流電圧の周波数および位相の情報を、S211において第2の正弦波生成回路812に取り込んだ周波数および位相にそれぞれ更新する。
S213にて交流電圧の周波数および位相の情報を更新すると、第4の制御回路409は、S214により、CEMS31からの制御情報を受信したか(受信フラグがセットされているか)を確認する。受信フラグがセットされていない場合(S214にてNO)、処理はS201に戻る。一方、受信フラグがセットされている場合(S214にてYES)、第4の制御回路409は、S215により、周波数目標値(基準周波数Fref)および電力目標値Prefをそれぞれ受信したデータに置き換える。
S216にて制御パラメータ生成用の情報を受信すると、第8の制御回路87は、仮想同期発電機制御の制御パラメータを生成する。具体的には、CEMS31により生成されたΔP/ΔF特性の傾き、系統情報(基準周波数Fref、電力目標値Pref、ΔFmaxなど)および、自己のインバータ容量に基づいて、制御パラメータを生成する。実施の形態2では、第8の制御回路87は、図19に示す制動係数Dgおよび系統周波数の関係を複数の速度調整率Kgdの各々についてテーブルデータとして記憶しておく。第8の制御回路87は、ΔFmaxの情報に基づいて、テーブルデータを参照することにより、ΔP/ΔF特性の傾きに一致する速度調整率Kgdおよび制動係数Dgの組合せを検索する。
なお、電力変換装置41に実装する仮想同期発電機制御用の制御パラメータの生成方法は上述した方法に限るものではない。例えば実施の形態1のように、自己の仮想同期発電機制御モデルを内蔵する、あるいは、仮想同期発電機制御を表す数式を内蔵するなどの方法を用いてもよい。
速度調整率Kgdおよび制動係数Dgを生成すると、第8の制御回路87は、質点系演算回路の時定数情報から慣性定数Mを算出する。慣性定数Mの算出方法は、実施の形態1で説明したように、上記式(3)を用いて、CEMS31から通知された時定数と、(M/Dg)とが等しくなるように慣性定数Mを算出する。
図44のS220にて制御パラメータを生成すると、第8の制御回路87は、S216により、制御パラメータの変更(更新)を実施する。制御パラメータを変更(更新)すると、第8の制御回路87は、受信フラグをセットしているレジスタ(図示せず)をクリア(リセット)し、処理をS201に戻す。
以上説明したように、実施の形態2によれば、各々が仮想同期発電機制御を実装した複数の電力変換装置41を配電系統24に配置した構成において、負荷600の消費電力またはメガソーラー26の発電電力が変動した場合においても、複数の電力変換装置41は、CEMS31で作成した運転計画(電力目標値)の案分比に従って過不足電力を分担することができる。
また実施の形態2では、CEMS31に実装した機能の一部を電力変換装置41に実装する構成としたことにより、CEMS31の処理負荷を軽減することができる。例えば、一般需要家が設置した家庭用蓄電池に仮想同期発電機制御を実装する場合、実施の形態1では、CEMS31が数百から数千の家庭用蓄電池における仮想同期発電機制御の制御パラメータを生成することが必要となる。一方、実施の形態2によれば、仮想同期発電機制御の機能の一部を家庭用蓄電池に実装することにより、CEMS31の処理負荷を軽減することができる。
また、複数の電力変換装置41または家庭用蓄電池に実装されている仮想同期発電機制御回路の構成が異なる場合、CEMS31が制御パラメータを生成する構成では、CMES31は、図5に示す仮想同期発電機モデルを複数種類、または実施の形態に2に示したテーブルデータを複数種類持つ必要がある。また、仮想同期発電機制御回路ごとに、生成する制御パラメータの数も異なる場合もある。このような場合でも、電力変換装置41および家庭用蓄電池の各々が制御パラメータを生成する構成とすることにより、CEMS31の処理を単純化することができる。
また、実施の形態1および2では、電力変換装置41に向けて運転計画(電力目標値)を作成するとき、各電力変換装置41の静止型インバータの容量および電力目標値に基づいて、制御パラメータを生成するように構成したことにより、次の運転計画がCEMS31から通知されるまでの期間に負荷600の消費電力または、メガソーラー26の発電電力は変動した場合でも、運転計画(電力目標値)と同じ案分比で過不足電力を分担することができる。
これにより、例えば運転計画を通知した直後に日射量が変化し、メガソーラー26の葉電電力が50%減少した場合においても、不足する50%の電力は、運転計画の作成時に算出した電力目標値の比に基づいて分担される。よって、例えば運転計画作成時において、ほぼ同時にSOCがゼロになるように複数の蓄電池40の電力目標値が算出されていた場合、電力目標値の比に基づいて、不足する50%の電力が案分されるため、ほぼ同時にSOCがゼロになるように制御することができる。
なお、実施の形態1および2では、蓄電池40用の電力変換装置41に仮想同期発電機制御を実装した構成について説明したが、これに限るものではなく、例えば風力発電機などの創エネ機器に仮想同期発電機制御を実装した構成においても同様の効果を奏することは言うまでもない。特に、風力発電機はプロペラでモータを回すために発電機が慣性力を持っており、同様の効果を奏することは言うまでもない。
また実施の形態1および2では、蓄電池40のような大容量の蓄電池を配電系統24に複数台実装する構成について説明したが、家庭用蓄電池の電力変換装置または電気自動車用の電力変換装置に仮想同期発電機制御を実装し、CEMS31が行なう制御と同様の制御を実施してもよい。この場合、配電系統24に接続される電力変換装置は数百台の規模になり得る。さらに、蓄電池容量としては蓄電池40のような大容量(例えば数百kWから数MW)と家庭用蓄電池(数kW)が配置されていても同様の効果を奏することができる。
また、実施の形態1および2では蓄電池40用の電力変換装置41について説明したが、これに限るものではなく、静止型インバータを電圧源として制御する電力変換装置(例えば、太陽電池(家庭用太陽電池を含む)、風力発電機および燃料電池の発電電力を配電系統24に供給するようなシステムに仮想同期発電機制御を実装した構成についても、上述した方法を用いて仮想同期発電機制御の制御パラメータを生成する構成とすることにより、同様の効果を得ることができる。
さらに、電気自動車(EV:Electric Vehicle)、プラグインタイプのハイブリッド自動車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)または燃料電池自動車(FCV:Fuel Cell Vehicle)等の車載蓄電池を用いることも可能である。
なお、実施の形態1および2では、説明を簡単にするために、図21から図31の説明では数kWのインバータ容量を有する電力変換装置41を用いて動作を説明したが、これに限るものではない。
また、実施の形態1および2では分散電源管理装置を配電系統に適用する構成について説明したが、これに限るものではなく、送電系統または自立系のマイクログリッドに対して本開示の技術を適用しても同様の効果を奏する。
さらに実施の形態1および2では、三相交流を例示したが単相交流または単相三線交流であってもよい。さらに、系統用蓄電池用の電力変換装置(三相交流)と家庭用蓄電池システム(単相交流)とが混在する構成においても、上述した方法を用いて仮想同期発電機制御の制御パラメータを生成する構成とすることにより同様の効果を得ることができる。
なお、実施の形態1および2では、電力変換装置41内の静止型インバータに向けて、仮想同期発電機制御の制御パラメータを生成するとき、静止型インバータの容量および電力目標値を用いて制御パラメータを生成する構成について説明したがこれに限るものではない。例えば、電力変換装置41a内の静止型インバータの容量に対して蓄電池40aの蓄電池容量が2倍、電力変換装置41b内の静止型インバータの容量に対して蓄電池40bの蓄電池容量が3倍など、静止型インバータの容量に対する蓄電池の容量の比が互いに異なる場合には、当該容量比を考慮して運転計画(電力目標値)を生成する、あるいは、制御パラメータを生成するときに上記容量比を考慮するように構成することにより同様の効果を得ることができる。
実施の形態2では、電力変換装置41内で制御パラメータを生成することができるように、電力目標値に加えて、系統情報およびΔP/ΔF特性の傾き情報を送信する構成にすいて説明したが、送信する情報はこれに限るものではなく、電力変換装置41内で制御パラメータを生成することができる情報をCEMS31から送信するように構成することにより同様の効果を得ることができる。
実施の形態1および2では、仮想同期発電機モデル(図5)を内蔵する構成と、制動係数Dgおよび系統周波数の関係(図19)を複数の速度調整率Kgdの各々に対応付けてテーブルデータとして記憶しておき、ΔFmax情報に基づいて、ΔP/ΔF特性の傾きとほぼ一致する速度調整率Kgdおよび制動係数Dgの組み合わせを検索する、あるいは、速度調整率Kgdおよび系統周波数の関係(図18)を複数の制動係数Dgの各々に対応付けてテーブルデータとして記憶しておき、ΔFmax情報に基づいて、ΔP/ΔF特性の傾きとほぼ一致する速度調整率Kgdおよび制動係数Dgの組み合わせを検索する構成とについて説明したがこれに限るものではない。例えば、仮想同期発電機制御回路を数式モデルで内蔵するなど他の方法を採用してもよいことは言うまでもない。
さらに、実施の形態1および2では、制御パラメータを生成するときにΔP/ΔF特性を算出する構成について説明したがこれに限るものではなく、例えば、CEMS31内に変電所20以下の配電系統モデル(デジタルツイン)を実装し、当該配電系統モデルを用いて想定されるユースケースで最適に動作するように制御パラメータを生成する構成としてもよい。さらに当該構成にAIを実装し、AIを用いて制御パラメータを生成する構成としてもよい。
なお、実施の形態1および2では、CEMS31とDSO21との間の通信周期を30分とし、CEMS31と電力変換装置41との間の通信周期を5分とする構成としたが、これに限るものではない。例えばCEMS31および電力変換装置41間の通信周期を1分としてもよい。
また、実施の形態1および2では、ガバナー制御回路833(図14)内のガバナーモデルを一次遅れ系としてモデル化したが、これに限るものではなく、二次遅れ系またはLPF(Low Pass Filter)などでガバナーモデルを構成してもよい。
さらに、実施の形態1および2では、質点系演算回路837(図14)を積分器とフィードバックループとでモデリングしたがこれに限るものではなく、例えば一次遅れ系、二次遅れ系およびLPFでモデル化してもよいことは言うまでもない。さらに、実施の形態1および2では仮想同期発電機制御で広く用いられているVQ制御については説明を簡単にするために省略したが、仮想同期発電機制御としてVQ制御が実装されている電力変換装置に本開示を採用しても同様の効果を得ることができる。さらに、質点系演算回路837(図14)の構成も図16に示す回路に限定されるものではない。
変形例の説明.
実施の形態1および2では、説明を分かりやすくするために電力変換装置27および電力変換装置41における制御回路を図6から図16に示す構成とし、かつ、CEMS31を図3から図5に示すハードウェアで構成する場合について説明したが、各ブロックまたは一部のブロックの機能を、CPU(Central Processing Unit)上に実装したソフトウェアによって構成しても同様の制御機能を実現することができる。あるいは、少なくとも一部のブロックについて、ソフトウェアおよびハードウェアの機能分割によって、同様の制御機能を実現することも可能である。
なお、上述した実施の形態および変更例について、明細書内で言及されていない組み合わせを含めて、不都合または矛盾が生じない範囲内で、実施の形態で説明された構成を適宜組み合わせることは出願当初から予定されている。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。