JP7466425B2 - 変形係数算出プログラム、及び変形係数算出方法 - Google Patents
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Description
本願発明は、変形特性の異方性を示す岩盤の変形係数に関する技術であり、より具体的には、等変位載荷方式の孔内載荷試験で得られた結果に対して異方性弾性理論に基づく解析を行うことで岩盤の変形係数を求める技術に関するものである。
岩盤上、あるいは岩盤内に構築する構造物の設計計画を行うにあたっては、その岩盤の力学特性を把握することが極めて重要となる。岩盤の力学特性としては、例えば岩盤の変形係数や応力状態などが挙げられ、このうち変形係数は杭基礎やトンネル、大深度地下空洞など主に岩盤内に構築される構造物の設計にとって不可欠な情報といえる。
従来、岩盤の変形係数を求めるにあたっては、原位置試験を行い、その結果から変形係数を算定するのが一般的であった。例えば非特許文献1では、種々の試験結果から変形係数を求めるための算出手法を示している。あるいは特許文献1のように、不連続面を有する岩盤などある特定の条件下で適用される変形係数の算出手法なども提案されている。
地盤調査の方法と解説(公益社団法人地盤工学会).
岩盤の中には、層理が発達した堆積岩や、片理の発達した変成岩、節理の発達した火成岩など、その変形特性に異方性を示すもの(以下、「異方性岩盤」という。)がある。すなわちこのような異方性岩盤は、直交する2方向における変形特性が明瞭に異なるという特性を有しているわけである。
ところが、従来の変形係数の算出手法は、等方性岩盤を前提としたものであって、異方性岩盤の変形係数を算出するものではなかった。つまり、あらゆる方向で同じ変形特性を示す岩盤について1つの変形係数を算出する手法であり、異方性岩盤のように直交2方向に異なる2つの変形係数を算出するものではなかった。例えば、非特許文献1(二分冊の2)の「第2章孔内水平載荷試験」ではプレッシャーメータ試験やボアホールジャッキ試験の試験結果から変形係数を求める算定式を示しており、また非特許文献1(二分冊の2)の「第3章平板載荷試験」では平板載荷の試験結果から変形係数を求める算定式を示しているが、いずれも岩盤が等方性であると仮定した弾性論によって算出するものである。
一方、原位置試験の結果から異方性岩盤の変形係数(つまり、直交2方向の異なる変形係数)を算出する手法に関する研究等もこれまで行われている。しかしながらこれらの手法は、いくつかの障壁があって実用化されていないのが現状である。例えば、異方性弾性理論は取り扱うパラメータが多いうえ難解であるという障壁や、異方性を把握するためには多方向での圧力と荷重変位の関係(Δp/Δux)を求める必要があるという障壁、測定されたK値から想定される2方向の変形係数E1、E2と傾斜角φの組み合わせは莫大な数が考えられることから逆算することは極めて困難であるといった障壁を挙げることができる。
本願発明の課題は、従来技術が抱える問題を解決することであり、すなわち原位置試験の結果から異方性岩盤の変形係数を比較的容易に算出することができる変形係数算出プログラム、及び変形係数算出方法を提供することである。
本願発明は、原位置試験によって得られる地盤反力係数Kと直交2方向の異なる変形係数E1、E2とがそれぞれ線形関係あり、この関係を利用すれば比較適容易に解析することができる、という点に着目してなされたものであり、これまでにない発想に基づいて行われた発明である。
本願発明の変形係数算出プログラムは、ボーリング孔壁面を等変位載荷方式で加圧する載荷試験を、異方性を示す岩盤に対して載荷方向を変えながら行ったN(Nは3以上の自然数)回分の試験結果に基づいて、岩盤の第1変形係数E1、第2変形係数E2、及びこれらの傾斜角φを算出する機能を、コンピュータに実行させるプログラムであって、条件値仮定処理と線形定数算出処理、暫定変形係数算出処理、弾性コンプライアンス算出処理、解析地盤反力係数算出処理、差分2乗和算出処理、中間抽出処理、最終抽出処理、変形係数決定処理と、をコンピュータに実行させる機能を備えたものである。なお、第1変形係数E1は直交する3軸(第1軸、第2軸及び第3軸)のうち第1軸方向の変形係数であって、第2変形係数E2は第2軸方向の変形係数である。また、水平面と第1軸との傾斜角φが複数種類設定されるとともに、第1変形係数E1と第2変形係数E2との比である変形係数比eも複数種類設定される。条件値仮定処理は、第1軸と第2軸を含む平面内の第1ポアソン比ν12と、第1軸と第3軸を含む平面内の第2ポアソン比ν13、第1軸と第2軸を含む平面内のせん断弾性係数G12を仮定する処理である。線形定数算出処理は、載荷試験により得られた地盤反力係数Kiと変形係数比eとに基づいて、地盤反力係数Kiと第1変形係数E1との線形関係を示す第1線形定数aiを地盤反力係数Kiごとに算出するとともに、地盤反力係数Kiと第2変形係数E2との線形関係を示す第2線形定数biを地盤反力係数Kiごとに算出する処理である。暫定変形係数算出処理は、N組の地盤反力係数Ki及び第1線形定数aiに基づいて暫定第1変形係数Et1を算出するとともに、N組の地盤反力係数Ki及び第2線形定数biに基づいて暫定第2変形係数Et2を算出する処理である。弾性コンプライアンス算出処理は、条件値仮定処理で仮定された第1ポアソン比ν12、第2ポアソン比ν13及びせん断弾性係数G12と、暫定変形係数算出処理で算出された暫定第1変形係数Et1及び暫定第2変形係数Et2と、傾斜角φに基づいて、異方性弾性体における歪と応力を示す構成方程式のうち各応力成分の係数である弾性コンプライアンスを算出する処理である。解析地盤反力係数算出処理は、載荷装置の載荷角度の半分β及び試験孔の半径rと、弾性コンプライアンス算出処理で算出された弾性コンプライアンスに基づいて解析地盤反力係数Kcを求める処理である。差分2乗和算出処理は、解析地盤反力係数算出処理によって算出された解析地盤反力係数Kcと、N回分の地盤反力係数Kiとの差分2乗和を算出する処理である。中間抽出処理は、設定された複数種類の変形係数比eごとに得られる差分2乗和のうち、最小値の差分2乗和を中間最小2乗和として抽出する処理である。最終抽出処理は、設定された複数種類の傾斜角φごとに得られる中間最小2乗和のうち、最小値の中間最小2乗和を最終最小2乗和として抽出する処理である。変形係数決定処理は、最終抽出処理で抽出された最終最小2乗和に係る暫定第1変形係数Et1及び暫定第2変形係数Et2を、第1変形係数E1及び第2変形係数E2として決定する処理である。
本願発明の変形係数算出プログラムは、地盤反力係数Kiと第1変形係数E1との線形関係が「Ki=E1×ai」で表され、地盤反力係数Kiと第2変形係数E2との線形関係が「Ki=E2×bi」で表されたものとすることもできる。
本願発明の変形係数算出プログラムは、判定処理を、コンピュータに実行させる機能をさらに備えたものとすることもできる。この判定処理は、最終抽出処理で抽出された最終最小2乗和とあらかじめ定めた2乗和閾値とを照らし合わせる処理である。また判定処理は、最終最小2乗和が2乗和閾値を下回るときは載荷試験の対象岩盤が異方性を示すと判定し、最終最小2乗和が2乗和閾値を上回るときは載荷試験の対象岩盤が等方性を示すと判定する。
本願発明の変形係数算出方法は、ボーリング孔壁面を等変位載荷方式で加圧する載荷試験を行うことによって、異方性を示す岩盤の第1変形係数E1、第2変形係数E2、及びこれらの傾斜角φを算出する方法であって、載荷試験工程と解析工程を備えた方法である。このうち載荷試験工程では、載荷方向θを変えながら岩盤に対してN(Nは3以上の自然数)回の載荷試験を行い、解析工程では、N回分の試験結果に基づいて岩盤の第1変形係数E1、第2変形係数E2、及びこれらの傾斜角φを算出する。なお解析工程では、本願発明の変形係数算出プログラムを使用して岩盤の第1変形係数E1、第2変形係数E2、及びこれらの傾斜角φを算出する。
本願発明の変形係数算出プログラム、及び変形係数算出方法には、次のような効果がある。
(1)原位置試験の結果に基づいて、比較的容易に異方性岩盤の変形係数を算出することができる。
(2)異方性を考慮することによって、変形係数の測定結果のばらつきを低減することができる。
(3)岩盤内の空洞や構造物等の数値解析を行う場合、岩盤の変形特性の異方性を考慮した入力値を採用することができ、従来に比してより的確に空洞や構造物等を評価することができる。
(4)岩盤の等方性、異方性の工学的判断が可能である。
(1)原位置試験の結果に基づいて、比較的容易に異方性岩盤の変形係数を算出することができる。
(2)異方性を考慮することによって、変形係数の測定結果のばらつきを低減することができる。
(3)岩盤内の空洞や構造物等の数値解析を行う場合、岩盤の変形特性の異方性を考慮した入力値を採用することができ、従来に比してより的確に空洞や構造物等を評価することができる。
(4)岩盤の等方性、異方性の工学的判断が可能である。
本願発明の変形係数算出プログラム、及び変形係数算出方法の実施形態の例を図に基づいて説明する。
1.定義
本願発明の変形係数算出プログラム、及び変形係数算出方法の実施形態の例を説明するにあたって、はじめにここで用いる用語の定義を示しておく。
本願発明の変形係数算出プログラム、及び変形係数算出方法の実施形態の例を説明するにあたって、はじめにここで用いる用語の定義を示しておく。
(ボアホールジャッキ試験)
本願発明は、原位置試験を行った結果を用いて、岩盤の力学特性である変形係数を算出することを技術的特徴のひとつとしている。そしてこの原位置試験としては、ボーリング孔壁面を等変位載荷方式で加圧する載荷試験を採用するとよい。便宜上ここでは、この載荷試験方法のことを「ボアホールジャッキ試験」ということとする。以下、本願発明におけるボアホールジャッキ試験の手法について説明する。
本願発明は、原位置試験を行った結果を用いて、岩盤の力学特性である変形係数を算出することを技術的特徴のひとつとしている。そしてこの原位置試験としては、ボーリング孔壁面を等変位載荷方式で加圧する載荷試験を採用するとよい。便宜上ここでは、この載荷試験方法のことを「ボアホールジャッキ試験」ということとする。以下、本願発明におけるボアホールジャッキ試験の手法について説明する。
図1は、ボアホールジャッキ試験を説明する図であり、(a)はその側面図、(b)はボーリング孔BHを水平面で切断した断面図である。この図に示すようにボアホールジャッキ試験を実施するにあたっては、あらかじめ構築されたボーリング孔BH内の所定位置に載荷装置(以下、「ボアホールジャッキJB」という。)を配置する。このボアホールジャッキJBは、ピストンジャッキと載荷板LBを含んで構成され、また油圧によって動作するピストンジャッキが載荷板LBを孔壁方向に押し付ける構造とされ、ボアホールジャッキJB内部には圧力計及び変位計が内蔵されている。なおこの油圧は、地上に設置された圧力源CPからホースHSを通じて伝達される。そしてボアホールジャッキJBに接続された通信ケーブルSCを通じて、データロガーDLが圧力(油圧)及び変位の値を記録する。図1(b)に示すように、載荷板LBは所定の幅を有しており、すなわち載荷板LBの幅寸法だけ孔壁を加圧することができる。便宜上ここでは、ボアホールジャッキJBの中心から載荷板LBの両端に広がる中心角の1/2を「載荷半角β」ということとし(図1(b))、ボーリング孔BH(試験孔)の半径を「試験孔半径r」ということとする。
本願発明におけるボアホールジャッキ試験は、載荷方向を変えながらN回(Nは3以上の自然数)行われ、そしてN回分の試験結果が解析に用いられる、図2は、図1(b)と同様、ボーリング孔BHを水平方向に切断した断面図であって、載荷方向θと主応力方向αの関係を示す図であり、(a)は載荷方向θが0°で主応力方向αが45°の状態を示し、(b)は載荷方向θが-45°で主応力方向αが60°の状態を示している。この図では、載荷方向を変えた2回分のボアホールジャッキ試験の例を示しているが、最低でも3回(例えば4回など)のボアホールジャッキ試験を行う必要がある。
(第1変形係数と第2変形係数)
本願発明は、層理が発達した堆積岩や、片理の発達した変成岩、節理の発達した火成岩など変形特性に異方性を示す「異方性岩盤」の変形係数を算出するものである。図3は、この異方性岩盤の3軸方向の変形係数を模式的に示す図であり、(a)は異方性岩盤の層方向(層理や片理、節理の方向)が水平面(この場合、x軸とz軸を含む面)であるケースを示し、(b)は異方性岩盤の層方向が水平面に対して傾斜しているケースを示している。
本願発明は、層理が発達した堆積岩や、片理の発達した変成岩、節理の発達した火成岩など変形特性に異方性を示す「異方性岩盤」の変形係数を算出するものである。図3は、この異方性岩盤の3軸方向の変形係数を模式的に示す図であり、(a)は異方性岩盤の層方向(層理や片理、節理の方向)が水平面(この場合、x軸とz軸を含む面)であるケースを示し、(b)は異方性岩盤の層方向が水平面に対して傾斜しているケースを示している。
図3に示すように異方性岩盤は、岩盤の走向と傾斜に沿って設定される直交の3軸方向にそれぞれ変形係数を有しており、便宜上ここでは、岩盤斜に設定される直交3軸方向をそれぞれ「第1軸」、「第2軸」、「第3軸」ということとし、さらに第1軸方向の変形係数を「第1変形係数E1」、第2軸方向の変形係数を「第2変形係数E2」、第3軸方向の変形係数を「第3変形係数E3」ということとする。例えば、図3(a)のケースでは異方性岩盤の層方向が水平面であることからx軸方向に第1変形係数E1、y軸方向に第2変形係数E2、z軸方向に第3変形係数E3を設定し、図3(b)のケースでは異方性岩盤の層方向が水平面からφだけ傾斜していることからx軸からφだけ傾斜した方向に第1変形係数E1、y軸からφだけ傾斜した方向に第2変形係数E2、z軸方向に第3変形係数E3を設定することができる。なお、図3(b)のように異方性岩盤の層方向が水平面から傾斜する角度のことをここでは単に「傾斜角φ」ということとする。
通常、異方性岩盤は、各層の平面方向と平行な2つの変形係数(この場合、第1変形係数E1とz軸方向に第3変形係数E3)は、向きが異なるだけでその大きさは略同値として取り扱うことができる。一方、各層の平面の垂直方向と平行な変形係数(この場合、第2変形係数E2)は、他の2方向の変形係数(この場合、第1変形係数E1とz軸方向に第3変形係数E3)とはその大きさが相当程度相違する。そのため、便宜上ここでは第1変形係数E1、第2変形係数E2、及びこれらの傾斜角φを算出する例で説明することとする。
(変形係数比)
第1変形係数E1と第2変形係数E2との比を便宜上ここでは「変形係数比e」ということとする。すなわち変形係数比eは、次式によって与えられる。
e=E1/E2
第1変形係数E1と第2変形係数E2との比を便宜上ここでは「変形係数比e」ということとする。すなわち変形係数比eは、次式によって与えられる。
e=E1/E2
(ポアソン比とせん断弾性係数)
異方性岩盤は、直交する3平面内それぞれでポアソン比を有することから、便宜上ここでは、第1軸と第2軸を含む平面内のポアソン比を「第1ポアソン比ν12」、第1軸と第3軸を含む平面内のポアソン比を「第2ポアソン比ν13」、第2軸と第3軸を含む平面内のポアソン比を「第3ポアソン比ν23」ということとする。また、第1変形係数E1と第2変形係数E2を算出するために必要な、第1軸と第2軸を含む平面内の岩盤のせん断弾性係数を「せん断弾性係数G12」ということとする。
異方性岩盤は、直交する3平面内それぞれでポアソン比を有することから、便宜上ここでは、第1軸と第2軸を含む平面内のポアソン比を「第1ポアソン比ν12」、第1軸と第3軸を含む平面内のポアソン比を「第2ポアソン比ν13」、第2軸と第3軸を含む平面内のポアソン比を「第3ポアソン比ν23」ということとする。また、第1変形係数E1と第2変形係数E2を算出するために必要な、第1軸と第2軸を含む平面内の岩盤のせん断弾性係数を「せん断弾性係数G12」ということとする。
(地盤反力係数)
ボアホールジャッキ試験を行うと、載荷圧力と孔壁面の変位量を直交2軸のグラフにプロットすることができ、図4に示すように載荷圧力と変位量との関係を示す直線部の勾配(つまり、載荷圧力増分と変位量増分の比)を「地盤反力係数K」として得ることができる。ただし、上記したとおり本願発明ではN回のボアホールジャッキ試験が行われることから、「地盤反力係数Ki(i=1~N)」のように試験回数を示す添え字iを付すこととする。
ボアホールジャッキ試験を行うと、載荷圧力と孔壁面の変位量を直交2軸のグラフにプロットすることができ、図4に示すように載荷圧力と変位量との関係を示す直線部の勾配(つまり、載荷圧力増分と変位量増分の比)を「地盤反力係数K」として得ることができる。ただし、上記したとおり本願発明ではN回のボアホールジャッキ試験が行われることから、「地盤反力係数Ki(i=1~N)」のように試験回数を示す添え字iを付すこととする。
2.変形係数算出プログラム
本願発明の変形係数算出プログラムついて、図を参照しながら詳しく説明する。なお、本願発明の変形係数算出方法は、本願発明の主変形係数算出プログラムを利用して岩盤の変形係数を算出する方法であり、したがってまずは本願発明の変形係数算出プログラムについて説明し、その後に本願発明の変形係数算出方法について説明することとする。
本願発明の変形係数算出プログラムついて、図を参照しながら詳しく説明する。なお、本願発明の変形係数算出方法は、本願発明の主変形係数算出プログラムを利用して岩盤の変形係数を算出する方法であり、したがってまずは本願発明の変形係数算出プログラムについて説明し、その後に本願発明の変形係数算出方法について説明することとする。
本願発明の変形係数算出プログラムは、異方性岩盤を理論的に扱うため「Lekhnitskiiの異方性弾性理論(S.G.Lekhnitskii:Theory of Elasticity of an Anisotropic Body,Mir Publishers)」を利用するとともに、「鎌田論文(鎌田武司:だ円孔を有する異方性無限板の二次元混合境界値問題(日本機械学会論文集))の理論」を用いてボアホールジャッキ試験による地盤反力係数Kiの算定式を導出している。ここで、「Lekhnitskiiの異方性弾性理論」と、「鎌田論文の理論」について簡単に説明する。
(Lekhnitskiiの異方性弾性理論)
図5は、Lekhnitskiiの異方性弾性理論を説明するための数式図である。このうち数式(1)は、異方性弾性体におけるひずみと応力との関係を示す構成方程式である。なお、式中のσxはx軸方向の直応力であり、σyはy軸方向の直応力、σzはz軸方向の直応力、τxyはx軸とy軸を含む平面内のせん断応力、εxはx軸方向の直ひずみ、εyはy軸方向の直ひずみ、γxyはx軸とy軸を含む平面内のせん断ひずみである。なお、この構成方程式のうち各応力成分の係数(a11~a66)のことを「弾性コンプライアンス」ということとする。
図5は、Lekhnitskiiの異方性弾性理論を説明するための数式図である。このうち数式(1)は、異方性弾性体におけるひずみと応力との関係を示す構成方程式である。なお、式中のσxはx軸方向の直応力であり、σyはy軸方向の直応力、σzはz軸方向の直応力、τxyはx軸とy軸を含む平面内のせん断応力、εxはx軸方向の直ひずみ、εyはy軸方向の直ひずみ、γxyはx軸とy軸を含む平面内のせん断ひずみである。なお、この構成方程式のうち各応力成分の係数(a11~a66)のことを「弾性コンプライアンス」ということとする。
弾性コンプライアンス(a11~a66)は、第1ポアソン比ν12と第2ポアソン比ν13、第3ポアソン比ν23、せん断弾性係数G12、さらに第1変形係数E1と第2変形係数E2、傾斜角φを用いて数式(2)で表すことができる。またせん断弾性係数G12は、第1ポアソン比ν12と第1変形係数E1、第2変形係数E2を用いて数式(3)で表すことができる。ただし、数式(2)は平面応力状態に対するものであり、トンネルやボアホール等の問題に対応する平面ひずみ状態に関しては、aijの代わりに数式(4)に示すbijを用いればよい。弾性コンプライアンスは対称性があることから、aij=ajiやbij=bjiが成立する。また数式(5)や数式(6)の関係より、第1ポアソン比ν12と第2ポアソン比ν13が与えられれば第3ポアソン比ν23を求めることができる。
(鎌田論文の理論)
図6は、鎌田論文の理論を説明するための数式図である。このうち数式(7)は、異方性弾性体におけるひずみと応力との関係を示す構成方程式である。鎌田論文の理論では、異方性を定量的に扱うための特性値μj(j=1,2)を数式(7)の4次方程式の4解のうち|μj|<1を満たす2解として定義する。なお、式中のA1~A4は数式(8)で表される複素定数であり、文字に付されたバーは共役、iは虚数単位を示す。
図6は、鎌田論文の理論を説明するための数式図である。このうち数式(7)は、異方性弾性体におけるひずみと応力との関係を示す構成方程式である。鎌田論文の理論では、異方性を定量的に扱うための特性値μj(j=1,2)を数式(7)の4次方程式の4解のうち|μj|<1を満たす2解として定義する。なお、式中のA1~A4は数式(8)で表される複素定数であり、文字に付されたバーは共役、iは虚数単位を示す。
複素定数δj、ρj(j=1,2)、及びP、Q、Rを数式(9)で定義すると、数式(10)に示す2次方程式の解λjが得られる。そして、数式(11)の2式を満たすように実定数κを設定する。また、この実定数κを用いると、γとγjは数式(12)のように定義することができる。
ここまで説明した複素定数を用いることで、ボアホールジャッキ試験による孔壁面の変位量uを数式(13)によって得ることができる。なお、式中のL1とΛは、数式(14)によって求められる。そして数式(13)を変形し、ボアホールジャッキ試験による載荷圧力pと変位量u を増分形式にすることによって、地盤反力係数Ki(Δp/Δu)に試験孔半径r を乗じた数式(15)が得られる。鎌田論文の理論によれば、測定した地盤反力係数Kiに基づき数式(15)の右辺に陰関数として含まれる第1変形係数E1と第2変形係数E2、傾斜角φを逆解析することが可能となる。
(処理の流れ)
続いて、本願発明の変形係数算出プログラムの主な処理の流れについて図7を参照しながら説明する。図7は、本願発明の変形係数算出プログラムの主な処理の流れを示すフロー図であり、中央の列に実施する処理を示し、左列にはその処理に必要な情報等を、右列にはその処理から生ずる情報等を示している。
続いて、本願発明の変形係数算出プログラムの主な処理の流れについて図7を参照しながら説明する。図7は、本願発明の変形係数算出プログラムの主な処理の流れを示すフロー図であり、中央の列に実施する処理を示し、左列にはその処理に必要な情報等を、右列にはその処理から生ずる情報等を示している。
ボアホールジャッキ試験を実施し、N回分の試験結果が得られると、本願発明の変形係数算出プログラムを用いて図7に示す一連の処理をコンピュータに実行させる。処理を開始するにあたっては、複数種類(便宜上ここではM個)の傾斜角φを設定するとともに、複数種類(便宜上ここではL個)の変形係数比eを設定しておく。後述するように、ここで設定された傾斜角φや変形係数比eを変更しながら繰り返し計算が行われる。
図7に示すように第1ポアソン比ν12と第2ポアソン比ν13、せん断弾性係数G12を仮定する(Step101)。具体的には、オペレータがコンピュータのデバイス(ポインティングデバイスやキーボード等)を操作することによって仮定したそれぞれ値を入力していく。なお、ボアホールジャッキ試験によって得られる試験孔半径rと載荷半角β、地盤反力係数K1~KNは既知である。
次に、設定されたM個の傾斜角φのうちいずれかの値が設定され(Step102)、設定されたL個の変形係数比eのうちいずれかの値が設定される(Step103)。そして、地盤反力係数Kiと設定された変形係数比e、基準変形係数E0に基づいて、第1線形定数aiと第2線形定数biを算出する(Step104)。ここで基準変形係数E0とは、あらかじめ定められた基準となる変形係数(例えば、E0=10,000MPa)であり、第1線形定数aiと第2線形定数biは地盤反力係数Kiごとに求められる係数であって図8に示す数式(16)によって定義される。すなわち第1線形定数aiは、地盤反力係数Ki(Δp/Δu)と第1変形係数E1との線形関係を表す係数であり、第2線形定数biは、地盤反力係数Kiと第2変形係数E2との線形関係を表す係数である。なお、第1線形定数aiと第2線形定数biは地盤反力係数Kiごとに求められることから、試験回数を示す添え字iを付している。
本願発明の発明者は、変形係数比eが一定であるという条件の下、地盤反力係数Kiと第1変形係数E1は線形関係を示し、同様に地盤反力係数Kiと第2変形係数E2も線形関係を表示すことを見出している。図9は、変形係数比eを変えながら(e=1.0,2.0,4.0,6.0,8.0,10.0)数値解析を行った(ただし、第1ポアソン比ν12=0.25,第2ポアソン比ν13=0.30,載荷半角β=27.5°,傾斜角φ=0°)結果を示す図であり、(a)は横軸を第1変形係数E1、縦軸を地盤反力係数Kiと試験孔半径rとの積としたグラフ図、(b)は横軸を第2変形係数E2、縦軸を地盤反力係数Kiと試験孔半径rとの積としたグラフ図である。この図から、地盤反力係数Kiと第1変形係数E1、そして地盤反力係数Kiと第2変形係数E2が線形関係にあることは明確に理解できる。
地盤反力係数Kiから、第1変形係数E1、第2変形係数E2、傾斜角φを適切な刻みで探索するにあたり、第1変形係数E1にはN1個の、第2変形係数E2にはN2個の、傾斜角φにはM個(上記した設定数)の候補値があるとする。このとき探索すべき組合せは N1×N2×M個となるが、数式(16)の関係を用いれば、L(変形係数比eの設定数)×M 個の組合せでの探索が可能となり、繰返し計算が大幅に減少する。
N回分の地盤反力係数Kiについて繰り返し計算する(図7)ことでN回分の第1線形定数aiと第2線形定数biが算出されると、換言すればN組の地盤反力係数Kiと第1線形定数ai、第2線形定数biが得られると、暫定的な2つ変形係数を算出する(Step105)。なお、ここで得られる変形係数はあくまで解析経過で算出される暫定的な変形係数であることから、それぞれ「暫定第1変形係数Et1」、「暫定第2変形係数Et2」ということとする。具体的には、図8の数式(16)にN組の地盤反力係数Kiと第1線形定数ai、第2線形定数biを適用し、最小二乗法によって暫定第1変形係数Et1と暫定第2変形係数Et2を算出する。
暫定第1変形係数Et1と暫定第2変形係数Et2が算出されると、仮定した第1ポアソン比ν12と第2ポアソン比ν13、せん断弾性係数G12、そして設定された傾斜角φを用いて、弾性コンプライアンスa11~a66を算出する(Step106)。具体的には、図5に示す数式(2)の変数にそれぞれ各値を適用することによって、弾性コンプライアンスa11~a66を算出する。
弾性コンプライアンスa11~a66が算出されると、既知である試験孔半径rと載荷半角βを用いて、解析地盤反力係数Kcを算出する(Step107)。ここで解析地盤反力係数Kcとは、解析経過で算出される暫定的な地盤反力係数(Δp/Δu)であり、具体的には図6に示す数式(7)~(15)の変数にそれぞれ各値を適用することによって、解析地盤反力係数Kc(=Δp/Δu)が算出される。
解析地盤反力係数Kcが算出されると、N回分の地盤反力係数Kiと解析地盤反力係数Kcによって差分二乗和Dを算出する(Step108)。ここで差分二乗和Dとは、地盤反力係数Kiと解析地盤反力係数Kcとの差分の2乗和であり、図8に示す数式(17)によって算出される。
差分二乗和Dが算出されると、設定された傾斜角φの値は変えることなく、変形係数比eのみを異なる値に変更したうえで(Step103)、Step104~Step108の一連の処理を行って、改めて差分二乗和Dを算出する。そして、設定した変形係数比eの数(L回)だけ繰り返し差分二乗和Dを算出すると(Step103~Step108)、算出されたL個の差分二乗和Dのうち最小の値となるものを中間最小二乗和Dmとして抽出する(Step109)。
中間最小二乗和Dmが算出されると、設定された傾斜角φを異なる値に変更したうえで(Step102)、Step103~Step109の一連の処理を行って、改めて中間最小二乗和Dmを算出する。そして、設定した傾斜角φの数(M回)だけ繰り返し中間最小二乗和Dmを算出すると(Step102~Step109)、算出されたM個の中間最小二乗和Dmのうち最小の値となるものを最終最小二乗和Dfとして抽出する(Step110)。最後に、最終最小二乗和Dfに係る暫定第1変形係数Et1を第1変形係数E1として決定するとともに、暫定第2変形係数Et2を第2変形係数E2として決定し、その傾斜角φも決定する(Step111)。
(妥当性の検証)
発明者は、本願発明の変形係数算出プログラムによる逆解析の手法の妥当性について検証している。以下、その内容について説明する。
発明者は、本願発明の変形係数算出プログラムによる逆解析の手法の妥当性について検証している。以下、その内容について説明する。
等方性における変形係数Eの算定式は、図8に示す数式(18)で設定することができる(川久保 昌平他:ボアホールジャッキ試験による地盤変形係数算定の厳密化への取り組み(第46回地盤工学研究発表会))。一方、図6に示す数式(15)を変形すると、異方性理論においては数式(18)のΦ(ν,β)に相当するものを図8に示す数式(19)で表すことができる。第1変形係数E1≒第2変形係数E2、 第1ポアソン比ν12≒第2ポアソン比ν13 としたうえで数式(19)によりΦ(ν,β)を数値計算した。その計算結果と従来値との比較を図10に示す。両者の値は小数点以下第二位までよく一致していることから、本願発明の理論は妥当であるといえる。
また、逆解析としての妥当性も検証している。試験孔半径r=33mm,載荷半角β=27.5°,第1変形係数E1=2,000,第2変形係数E2=1,000,第1ポアソン比ν12=0.25,第2ポアソン比ν13=0.30として図6に示す数式(15)によって地盤反力係数Kiを計算すると、図11(a)の結果が得られた。これを入力値として図7に示す処理フローに沿って逆解析を行うと、図11(b)に示すように当初の設定値(順解析値)と逆解析値は一致した。図11(c)は逆解析時の中間最小2乗和Dmの分布であり、傾斜角φ=0°のときに最小となっていることが分かる。これにより、本願発明の逆解析方法は妥当といえる。
(異方性の判断)
コンクリート試験体を用いた実験によるK値と変形係数Dを図12(a)に示す。このK値を用い、本願発明の変形係数算出プログラムによる逆解析を行った。その結果を図12(b)と図12(c)に示す。これらの図に示すように、中間最小2乗和Dmは傾斜角φ=35°で最小となり、これに対応する第1変形係数E1=1,167MPaと第2変形係数E2=729MPa(図12(b)の上段)が得られた。一方、図12(c)では傾斜角φの90°の範囲(-95°~-5°)において中間最小2乗和Dmが一定となる区間が見られ、このときの第1変形係数E1と第2変形係数E2はそれぞれ910MPaであり(図12(b)の下段)、図12(a)におけるDの平均値と略一致した。
コンクリート試験体を用いた実験によるK値と変形係数Dを図12(a)に示す。このK値を用い、本願発明の変形係数算出プログラムによる逆解析を行った。その結果を図12(b)と図12(c)に示す。これらの図に示すように、中間最小2乗和Dmは傾斜角φ=35°で最小となり、これに対応する第1変形係数E1=1,167MPaと第2変形係数E2=729MPa(図12(b)の上段)が得られた。一方、図12(c)では傾斜角φの90°の範囲(-95°~-5°)において中間最小2乗和Dmが一定となる区間が見られ、このときの第1変形係数E1と第2変形係数E2はそれぞれ910MPaであり(図12(b)の下段)、図12(a)におけるDの平均値と略一致した。
異方性として見た場合(図12(b)の上段)、中間最小2乗和Dmは1.88×103であり、これを変形係数換算すると(1.88×103)0.5=43MPaの誤差に相当する。そして、この程度の値を誤差として許容すれば、岩盤を異方性とした図12(b)の上段の解析結果は有効となる。一方、この誤差(43MPa)が許容できない場合には、等方性と判断して図12(b)の下段の解析結果を採用するのが妥当である。すなわち、あらかじめ変形係数の誤差に対する閾値、あるいは中間最小2乗和Dmに対する閾値(2乗和閾値)を設定しておき、変形係数の誤差や中間最小2乗和Dmがこの閾値を下回るときは異方性と判断して逆解析の結果をそのまま採用し、閾値を上回るときは等方性と判断して傾斜角φの90°範囲で中間最小2乗和Dmが一定となる区間に対応する変形係数を採用するとよい。なお、図12(c)では傾斜角φの-95°~-5°の範囲で中間最小2乗和Dmが一定となっているが、種々の条件によって中間最小2乗和Dmが一定となる90°範囲は異なる(例えば、-45°~45°など)。
3.変形係数算出方法
次に、本願発明の変形係数算出方法ついて図を参照しながら説明する。なお、本願発明の変形係数算出方法は、ここまで説明した本願発明の変形係数算出プログラムを利用して岩盤の変形係数を算出する方法であり、したがって本願発明の変形係数算出プログラムで説明した内容と重複する説明は避け、本願発明の変形係数算出方法に特有の内容のみ説明することとする。すなわち、ここに記載されていない内容は、「2.変形係数算出プログラム」で説明したものと同様である。
次に、本願発明の変形係数算出方法ついて図を参照しながら説明する。なお、本願発明の変形係数算出方法は、ここまで説明した本願発明の変形係数算出プログラムを利用して岩盤の変形係数を算出する方法であり、したがって本願発明の変形係数算出プログラムで説明した内容と重複する説明は避け、本願発明の変形係数算出方法に特有の内容のみ説明することとする。すなわち、ここに記載されていない内容は、「2.変形係数算出プログラム」で説明したものと同様である。
図13は、本願発明の変形係数算出方法の主な工程を示すフロー図である。この図に示すように、まずボーリングマシン等を用いて異方性岩盤を削孔(掘削)してボーリング孔BHを構築する(Step201)。ボーリング孔BHを構築すると、図1に示すようなボアホールジャッキ試験を実施する(Step202)。このとき、既述したとおり載荷方向θi を変えながら、計画したN回だけ繰り返しボアホールジャッキ試験を実施する。
ボアホールジャッキ試験を実施し、N回分の試験結果が得られると、本願発明の変形係数算出プログラムを用いて図7に示す一連の処理をコンピュータに実行させることによって、異方性岩盤の第1変形係数E1と第2変形係数E2を算出する(Step203)。
本願発明の変形係数算出プログラム、及び変形係数算出方法は、杭基礎、トンネルや地下空洞を新設するための設計、施工中の地下空洞の安定性検討、あるいは変状トンネル補強設計など、種々の構造物設計や安定性検討に利用することができる。本願発明によれば、岩盤の異方性を適切に評価することができ、これによって構造物等のより的確な設計が可能となり、その結果、我が国の建設インフラストラクチャーの高品質化につながることを考えれば、本願発明は産業上利用できるばかりでなく社会的にも大きな貢献を期待し得る発明といえる。
BH ボーリング孔
CP 圧力源
HS ホース
JB ボアホールジャッキ
LB 載荷板
DL データロガー
SC 通信ケーブル
CP 圧力源
HS ホース
JB ボアホールジャッキ
LB 載荷板
DL データロガー
SC 通信ケーブル
Claims (4)
- ボーリング孔壁面を等変位載荷方式で加圧する載荷試験を、異方性を示す岩盤に対して載荷方向を変えながら行ったN(Nは3以上の自然数)回分の試験結果に基づいて、岩盤の第1変形係数E1、第2変形係数E2、及びこれらの傾斜角φを算出する機能を、コンピュータに実行させるプログラムであって、
前記第1変形係数E1は直交する第1軸、第2軸及び第3軸のうち該第1軸方向の変形係数であって、前記第2変形係数E2は該第2軸方向の変形係数であり、
水平面と前記第1軸との傾斜角φが複数種類設定されるとともに、前記第1変形係数E1と前記第2変形係数E2との比である変形係数比eも複数種類設定され、
前記第1軸と前記第2軸を含む平面内の第1ポアソン比ν12と、前記第1軸と前記第3軸を含む平面内の第2ポアソン比ν13と、前記第1軸と前記第2軸を含む平面内のせん断弾性係数G12と、を仮定する条件値仮定処理と、
載荷試験により得られた地盤反力係数Kiと前記変形係数比eとに基づいて、該地盤反力係数Kiと前記第1変形係数E1との線形関係を示す第1線形定数aiを該地盤反力係数Kiごとに算出するとともに、該地盤反力係数Kiと前記第2変形係数E2との線形関係を示す第2線形定数biを該地盤反力係数Kiごとに算出する線形定数算出処理と、
N組の前記地盤反力係数Ki及び前記第1線形定数aiに基づいて暫定第1変形係数Et1を算出するとともに、N組の前記地盤反力係数Ki及び前記第2線形定数biに基づいて暫定第2変形係数Et2を算出する暫定変形係数算出処理と、
前記条件値仮定処理で仮定された前記第1ポアソン比ν12、前記第2ポアソン比ν13及び前記せん断弾性係数G12と、前記暫定変形係数算出処理で算出された前記暫定第1変形係数Et1及び前記暫定第2変形係数Et2と、前記傾斜角φと、に基づいて、異方性弾性体における歪と応力を示す構成方程式のうち各応力成分の係数である弾性コンプライアンスを算出する弾性コンプライアンス算出処理と、
載荷装置の載荷角度の半分β及び試験孔の半径rと、前記弾性コンプライアンス算出処理で算出された前記弾性コンプライアンスと、に基づいて解析地盤反力係数Kcを求める解析地盤反力係数算出処理と、
前記解析地盤反力係数算出処理によって算出された前記解析地盤反力係数Kcと、N回分の前記地盤反力係数Kiとの差分2乗和を算出する差分2乗和算出処理と、
設定された複数種類の前記変形係数比eごとに得られる前記差分2乗和のうち、最小値の該差分2乗和を中間最小2乗和として抽出する中間抽出処理と、
設定された複数種類の前記傾斜角φごとに得られる前記中間最小2乗和のうち、最小値の該中間最小2乗和を最終最小2乗和として抽出する最終抽出処理と、
前記最終抽出処理で抽出された前記最終最小2乗和に係る前記暫定第1変形係数Et1及び前記暫定第2変形係数Et2を、前記第1変形係数E1及び前記第2変形係数E2として決定する変形係数決定処理と、を前記コンピュータに実行させる機能を備えた、
ことを特徴とする変形係数算出プログラム。 - 前記地盤反力係数Kiと前記第1変形係数E1との線形関係が次式によって表され、
Ki=E1×ai
前記地盤反力係数Kiと前記第2変形係数E2との線形関係が次式によって表される、
Ki=E2×bi
ことを特徴とする請求項1記載の変形係数算出プログラム。 - 前記最終抽出処理で抽出された前記最終最小2乗和とあらかじめ定めた2乗和閾値とを照らし合わせる判定処理を、前記コンピュータに実行させる機能をさらに備え、
前記判定処理は、前記最終最小2乗和が前記2乗和閾値を下回るときは載荷試験の対象岩盤が異方性を示すと判定し、該最終最小2乗和が該2乗和閾値を上回るときは載荷試験の対象岩盤が等方性を示すと判定する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の変形係数算出プログラム。 - ボーリング孔壁面を等変位載荷方式で加圧する載荷試験を行うことによって、異方性を示す岩盤の第1変形係数E1と第2変形係数E2を算出する方法であって、
載荷方向θを変えながら岩盤に対してN(Nは3以上の自然数)回の前記載荷試験を行う載荷試験工程と、
N回分の試験結果に基づいて、岩盤の前記第1変形係数E1と前記第2変形係数E2を算出する解析工程と、を備え、
前記解析工程では、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の前記変形係数算出プログラムを使用して岩盤の前記第1変形係数E1と前記第2変形係数E2を算出する、
ことを特徴とする変形係数算出方法。
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