JP7464936B2 - セラミックコーティング部材及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、セラミックコーティング部材に関する。本発明は、特に、エアロゾルデポジション法により形成した防錆能力を有するセラミックコーティング部材に関する。
金属表面の防錆加工として、従来はめっきが一般的に使用されている。硬質クロムめっきなど多くのめっきは、六価クロムを使用しており、六価クロムは環境負荷物質のためその使用について多くの規制を受けている。EUのRoHS規制(Restriction of Hazardous Substances(危険物質に関する制限))やELV指令(End-of-Life Vehicles Directive)では、家電製品、自動車部品を対象に既に六価クロムの使用が禁止されている。
このため、六価クロムを使用しためっき代替として、三価クロムめっき、高速フレーム溶射、プラズマ溶射などが検討されている。三価クロムめっきを使用しためっき技術では、六価クロムを使用しためっきに比べて、防錆能力が低下する問題があり、金属基材との界面が多孔質となるため十分な密着性が得られず、めっきが剥離する問題がある。このため、三価クロムめっきを使用しためっき技術では、環境面、経済面において大きなメリットが得られない。また、溶射法を用いて成膜した被膜は、硬度と耐食性はめっきと比較して優れるが、密着性、耐摩耗性及び膜厚制御はめっきと比較して劣る。
現状、六価クロムを使用しためっきに対して、機能面及び経済面で同等程度となる代替技術は見出されていない。
六価クロムめっきの代替となる被膜形成技術としては、三次元形状を有する大型部材への適用性、環境に優しいドライコーティング(非溶液プロセス)、硬度900 HV以上且つ膜厚が数マイクロメートル程度の被膜でありながら防食性能、優れた密着性などを有する被膜形成技術、及び硬質クロムメッキと同等以上の機械性能が望まれている。
上記の技術課題を解決する手法として、セラミック微粒子を固体状態のままガスで搬送して基材に吹き付け、セラミック微粒子をナノサイズ迄で破砕・変形させ、常温で成膜するエアロゾルデポジション法など緻密なセラミックコーティングを作製する技術が知られている(特許文献1)。エアロゾルデポジション法は、溶射とは異なり、基材に吹き付けるセラミック微粒子を溶かさないことから凝固収縮に伴うクラックが発生せず、硬度及び密着力を維持しながら、高い耐食性及び耐摩耗性を有するセラミックス膜の金属基材上への形成が期待されている。また、エアロゾルデポジション法は、原料及び製造工程においても環境負荷物質を一切使用しないため、めっき処理とは異なり規制を受けることがないこのため、エアロゾルデポジション法は、処理設備の設置場所についての許可を必要としないという利点もある。さらに、エアロゾルデポジション法は、セラミック微粒子の破砕変形現象を利用しているため、基材に吹き付けるセラミック微粒子の粒子径より薄い膜を緻密に形成できる特徴がある。
一方、エアロゾルデポジション法はセラミック微粒子を基材に衝突・破砕させ、ナノサイズの微細結晶片に破砕し、微細結晶の破砕粒子の物質流動と再結合で、緻密な膜を形成する手法である。そのため、破砕粒子の十分な物質流動がない場合には、破砕粒子間の結合に隙間ができ易く、防錆、耐摩耗性という観点からは、工業レベルの広い面積にピンホールやクラックのないセラミックス膜を形成することは容易ではなかった。
例えば、耐摩耗性の観点からエアロゾルデポジション法を用いた成膜技術を検討した特許文献2がある。特許文献2においては、硬質被膜を形成すべき基材の表面粗さ(Ra)を0.15μm以下とし、この硬質被膜の膜厚を1μm以上5μm以下とし、且つ、この膜厚を、硬質被膜の軸方向中央の膜厚を基準として±2μm以下の範囲とすることにより、軸受の摩耗を低減する技術が開示されている。
また、特許文献3には、セラミックス微粒子の平均粒子径が0.1μm~0.5μmであり、基材表面の表面粗さRaが0.01μmより大きく0.5μm未満であることにより、基材上に衝突したセラミックス微粒子が基材表面の微小突起部で応力を受けるため、収縮に伴うせん断応力を緩和し、基材表面に成膜面が堆積しながら成長することができため、成膜速度を向上させることができることが開示されている。
特開2001-348658号公報 特開2009-257568号公報 特開2008-111154号公報
N.Seto et al.,Journal of Thermal Spray Technology,Volume 23(8) December 2014,P1373-1381
本発明者らが検討した結果、特許文献2及び3に開示された成膜方法では、工業レベルの広い面積にピンホールやクラックのない、防錆性能及び耐摩耗性に優れたセラミックス膜を形成することは困難であることが明らかとなった。
本発明の一実施形態は、上記の問題を解決するものであって、防錆性能に優れたセラミックコーティング部材を提供することを目的とする。
本発明の一実施形態に係るセラミックコーティング部材は、金属基材上に複数のセラミックス微粒子が配置されたセラミックス膜を有し、セラミックス膜の一次元表面クルトシス(Rku)が3以下、又は二次元表面クルトシス(Sku)が3以下、或いはセラミックス膜と金属基材との界面に形成される凹凸の一次元界面クルトシスをRkub、金属基材の硬度をHvs、複数のセラミックス微粒子を配置するために用いるセラミックス粒子の硬度をHvpとするとき、1<(Rkub・Hvp)/Hvs<6である。
セラミックス膜の厚みが、1μm以上、10μm以下であってもよい。
複数のセラミックス微粒子は、セラミックス粒子材料が微細化した微粒子であり、セラミックス粒子材料のビッカース硬度(HvC)と金属基材のビッカース硬度(HvS)との間に、2.5<HvC/HvS<10の関係があってもよい。
セラミックコーティング部材は、防錆コーティング部材であってもよい。
本発明の一実施形態に係るセラミックコーティング部材の製造方法は、下記式を満たすセラミックス粒子材料硬度(Hvp)を有するセラミックス粒子と、硬度(Hvs)及び一次元表面クルトシス(Rkus)を有する金属基材と、を準備し、セラミックス粒子を金属基材に対して噴出し、セラミックス粒子を、金属基材の表面で破砕させ、セラミックス粒子の破砕により生成した新生面を有するセラミックス微粒子を、新生面を介して結合させる。

Rkub/Rkus=α・Hvs/Hvp (0.5<α<3)
準備したセラミックス粒子の表面を活性化させて活性領域を生成し、活性領域を備えるセラミックス粒子を金属基材に対して噴出し、活性領域を備えるセラミックス粒子を、金属基材の表面で破砕させ、活性領域及び新生面を有するセラミックス微粒子を、活性領域及び新生面を介して結合させてもよい。
本発明の一実施形態によると、防錆性能に優れたセラミックコーティング部材が提供される。
本発明の一実施形態に係るセラミックコーティング部材100を示す模式図であり、(A)は一実施形態に係るセラミックコーティング部材100の斜視図であり、(B)は金属基材110とセラミックス膜150との界面を示す断面図を示す。 (A)は、原料として用いるセラミックス粒子のサイズ(D)と凹凸111の周期(dr)が近い場合(0.5</dr<1.5)について説明する模式図であり、(B)は、凹凸111の周期に対し、原料として用いるセラミックス粒子のサイズが十分に小さい場合(/dr<0.5)について説明する模式図である。 本発明の一実施形態に係るセラミックコーティング部材100の製造に用いる製造装置1000を示す模式図である。 本発明の一実施形態に係るセラミックコーティング部材100の製造に用いる製造装置2000を示す模式図である。 本発明の一実施例に係る8時間後のセラミックコーティング部材を示す図である。 (A)及び(B)は、本発明の一実施例に係るセラミックコーティング部材のセラミックス膜の表面の凹凸の状態に対するRa、Rku、一次元の断面プロファイル及び二次元の断面プロファイルと塩水噴霧試験による防錆効果の確認結果を示す図である。 (A)~(B)は、本発明の一実施例に係るセラミックコーティング部材のセラミックス膜の表面の凹凸の状態に対するRa、Rku、一次元の断面プロファイル及び二次元の断面プロファイルと塩水噴霧試験による防錆効果の確認結果を示す図である。 は、本発明の一実施例に係るセラミックコーティング部材のセラミックス膜の表面の凹凸の状態に対するRa、Rku、一次元の断面プロファイル及び二次元の断面プロファイルと塩水噴霧試験による防錆効果の確認結果を示す図である。 本発明の一実施例に係るセラミックコーティング部材に対して12時間の塩水噴霧試験を行った結果を示し、(A)の上段の図は、錆が出なかった部分の光学顕微鏡写真であり、下段の図は、その一次元の断面プロファイルであり、(B)の上段の図は、錆が出た部分の光学顕微鏡写真であり、下段の図は、その一次元の断面プロファイルである。 (A)~(F)は、本発明の一実施例に係るセラミックス膜の表面を示す図である。 (A)は、錆が生じなかったRkuが2以下のセラミックコーティング部材の断面SEM写真を示し、(B)は、そのセラミックコーティング部材についてのアルミの元素分析マッピングであり、(C)は、共焦点顕微鏡で観察したセラミックコーティング部材の断面プロファイルを示す。 (A)は、錆が生じたRku値で5以上のセラミックコーティング部材の断面SEM写真を示し、(B)は、そのセラミックコーティング部材についてのアルミの元素分析マッピングであり、(C)は、共焦点顕微鏡で観察したセラミックコーティング部材の断面プロファイルを示す。 複雑な3次元形状の表面にエアロゾルデポジション法でアルミナ膜をコートした構造物を示す。 鉄系基材に膜厚(t)が、6μm又は8μmのセラミックス膜としてアルミナ膜を形成したセラミックコーティング部材を示す。 セラミックコーティング部材について、塩水噴霧試験を8時間実施したときの防錆効果を比較した結果を示す。 参考例1のセラミックコーティング部材について、塩水を3時間、7時間及び24時間の噴霧した後の参考例1のセラミックコーティング部材の上面図を示す。 参考例1のセラミックコーティング部材における錆の広がりを説明する模式図である。 (A)は、塩水を3時間及び7時間の噴霧した後の比較例1の硬質クロムメッキコーティング部材の上面図を示し、(B)は、硬質クロムメッキ膜と鉄系基材との界面への錆の進展による硬質クロムメッキ膜の浮きを示す。 比較例1の硬質クロムメッキコーティング部材における錆の広がりを説明する模式図である。
以下、図面を参照して、本発明に係るセラミックコーティング部材について説明する。なお、本発明のセラミックコーティング部材は、以下に示す実施の形態及び実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、本実施の形態及び後述する実施例で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
本発明者らが検討した結果、セラミックコーティング膜に上述したピンホールができる条件として、エアロゾルデポジション法の成膜原理から、基材、特に金属基材に衝突したセラミックス粒子が均質なナノスケールの微細結晶片であるセラミックス微粒子151に破砕される条件が重要であることを見出した。基材の表面粗さ(凹凸形状)、セラミックコーティング膜の膜厚、及び基材の硬度を所定の関係に設定することにより、セラミックコーティング膜のピンホールやクラックの形成の抑制、即ち防錆効果の向上に効果をもたらすことを本発明者らは初めて見出した。本発明の一実施形態は、上述した課題を解決し、量産レベルで低コストにピンホールのないセラミックコーティング膜を金属基材などの表面に形成したセラミックコーティング部材を提供するものである。
図1は、本発明の一実施形態に係るセラミックコーティング部材100を示す模式図である。図1(A)は、一実施形態に係るセラミックコーティング部材100の斜視図であり、図1(B)は、セラミックコーティング部材100を図1(A)の線分ABにおいて切断した切断面において、図1(A)の丸で囲んだ部分についての断面端図である。図1(B)は、金属基材110とセラミックス膜150との界面を示す模式図である。セラミックコーティング部材100は、金属基材110上に複数のセラミックス微粒子151が配置されたセラミックス膜150を有する。金属基材110は、少なくともセラミックス膜150との界面に、微細な凹凸111を有する。
一実施形態において、セラミックコーティング部材100は、セラミックス膜150と金属基材110との界面に形成される凹凸111の一次元界面クルトシスをRkub、金属基材の硬度をHvs、セラミックス粒子硬度をHvpとするとき、1<(Rkub・Hvp)/Hvs<6の関係を満たす。
一方、セラミックス膜150と金属基材110との界面に形成される凹凸111の形状は、セラミックス膜150の表面形状にも影響を与える。このため、一実施形態において、セラミックコーティング部材100においては、セラミックス膜150の表面の一次元表面クルトシス(Rku)が3以下であってもよい。
または、一実施形態において、セラミックコーティング部材100においては、二次元表面クルトシス(Sku)が2以下であってもよい。
[クルトシスの定義]
本明細書におけるクルトシスについて説明する。一次元表面クルトシス(Rku)は、セラミックス膜150の表面の鋭さの尺度である尖度を意味し、高さ分布の尖り(鋭さ)を表す。一次元表面クルトシス(Rku)は、セラミックス膜150の表面の凹凸について、二乗平均平方根高さ(Rq)の四乗によって無次元化した基準長さにおいて、粗さ曲線の高さZ(x)の四乗平均を表したパラメータである。また、一次元界面クルトシス(Rkub)は、セラミックス膜150と金属基材110との界面に形成される凹凸111について、二乗平均平方根高さ(Rq)の四乗によって無次元化した基準長さにおいて、粗さ曲線の高さZ(x)の四乗平均を表したパラメータである。クルトシス(Rku)は、下記式により表される。下記式(1)において、Lは、基準長さを示す。


Rku=3: 正規分布
Rku>3: 表面凹凸の高さ分布が尖っている
Rku<3: 表面凹凸の高さ分布がつぶれているような形状になる
また、二次元表面クルトシス(Sku)は、下記式(2)に示すように二次元パラメータである一次元表面クルトシス(Rku)を三次元に拡張した尖度を示す。


S=L1×L2: 基準面積
Sku=3: 正規分布
Sku>3: 表面凹凸の高さ分布が尖っている
Sku<3: 表面凹凸の高さ分布がつぶれているような形状になる
なお、上記式(2)において、基準面積Sを構成する縦の長さL1と横の長さL2は同じであってもよく、異なっていてもよい。また、基準面積Sは、矩形状の面積に限定されず、例えば円の面積であってもよい。
[プラトー構造表面パラメータの定義]
凹凸111の輪郭曲線において、ある高さcで切断したときに現れる実体部の割合をcの関数として表した負荷曲線を求めることができる。負荷曲線の40%に相当する区間の傾きが最も小さくなる直線(等価直線)から、コア部のレベル差(Rk)、突出山部高さ側のコア部の負荷長さ率(Mr1)及び突出谷部深さ側のコア部の負荷長さ率(Mr2)を求めることができる。Rkの幅で分断された負荷曲線の突出部分の面積と等しくなるような三角形を考え、この三角形から突出山部高さ(Rpk)、突出谷部深さ(Rvk)を求める。
[セラミックス膜の膜厚]
一実施形態において、セラミックス膜150の厚みは、1μm以上、10μm以下である。防錆効果の得られるセラミックス膜の厚みに関しては、セラミックス微粒子151の原料として用いるセラミックス粒子が金属基材110の表面の凹凸111により十分に破砕されない場合、セラミックス膜150を構成する破砕されたセラミックス微粒子151間に、セラミックス膜150の表面から金属基材110の表面にまで貫通した隙間ができるため十分な防錆力が得られない。また、セラミックス膜150が厚すぎると膜内の圧縮応力が増大するため、膜内の圧縮応力が破砕されたセラミックス微粒子151の金属基材110に対する密着力を超えると、セラミックス膜150内に微細な剥離や割れが生じ、ピンホールを発生する。
後述する実施例に示すように、Rku値が、Rku<3、又はRpk値で、Rpk<0.5で、セラミックス膜150の厚み(t)が1μm<t<10μmの範囲であれば、量産性が高く、且つ実用に耐えうる程度のピンホールフリーのセラミックス膜150を形成することができ、十分な防錆効果が得られる。特にRpk値に着目すると、錆が頻繁に表れる箇所は、錆の出ない箇所に比較し、Rpk値が10倍以上となる。
また、セラミックコーティング部材100において、セラミックス微粒子151は、原料として用いるセラミックス粒子が微細化した微粒子であり、セラミックス粒子材料のビッカース硬度(HvC)と金属基材のビッカース硬度(HvS)との間に、2.5<HvC/HvS<10の関係を有する。
図2(A)は、原料として用いるセラミックス粒子のサイズ(D)と凹凸111の周期(dr)が近い場合(0.5</dr<1.5)について説明する模式図である。原料として用いるセラミックス粒子153の硬度が金属基材110の硬度より高く、セラミックス粒子153が金属基材110の表面の尖った凸(山)部に衝突すると、凸部が大きく塑性変形する。この変形により、セラミックス粒子にかかる圧縮反力は緩和され、十分均質な粒子破砕が進まなくなる。エアロゾルデポジション法においては、金属基材110に原料として用いるセラミックス粒子153が衝突することにより、セラミックス粒子153が均質なナノスケールの微細結晶片であるセラミックス微粒子151に破砕され、セラミックス微粒子151の表面に活性な新生面が形成される必要がある。この新生面に生じた結合力により、セラミックス微粒子151の表面と金属基材110の表面との結合、及びセラミックス微粒子151同士の表面での結合が生じて、セラミックス膜150が形成されるため、セラミックス粒子の破砕は、エアロゾルデポジション法における重要なプロセスの1つである。
また、金属基材110の鋭く凹んだ凹(谷)部にセラミックス粒子153が衝突すると、セラミックス粒子153は破砕されるが、金属基材110の凹部の谷の部分とセラミックス粒子153の間に隙間が生じ、破砕したセラミックス微粒子151と金属基材110の接合面積が小さくなるため、セラミックス微粒子151が金属基材110に十分には密着しない。この結果、金属基材110に均質に密着した緻密なセラミックス膜150が形成できず、セラミックス膜150が薄い膜厚である場合、ピンホールができやすくなる。特に、セラミックス膜150の膜厚の増加とともに膜内部の応力も増加する。その結果、金属基材110とセラミックス膜150の界面で密着できていない箇所が部分的に存在すると、そこを起点にセラミックス膜150の部分的な剥離やセラミックス膜150にクラックが生じ、防錆効果は逆に低下する。従って、金属基材110とセラミックス膜150の密着が不十分な箇所があると、防錆効果と同時に機械的強度や電気的絶縁性の高いセラミックス膜150を形成することは困難となる。
また、図2(B)は、凹凸111の周期に対し、原料として用いるセラミックス粒子153のサイズが十分に小さい場合(/dr<0.5)について説明する模式図である。凹凸111の頂点やその近傍に粒子が衝突した場合、凹凸111の斜面に対し粒子は斜めから衝突することになるため、金属基材110の表面に垂直にセラミックス粒子153が衝突する場合に比べ、衝突によるセラミックス粒子153の圧縮応力は小さくなり、セラミックス粒子153は破砕されにくくなる。このため、緻密な粒子間結合や結合力の強い粒子間結合を得ることは困難になる。この結果、基板表面に形成されるセラミックス膜150にポアやクラックが形成されやすくなり、防錆効果は低下する。さらに、凹凸111の深い谷間にセラミックス微粒子151が密着しない効果より、凹凸111の山の部分にセラミックス粒子153が衝突して粒子破砕が不十分且つ不均一になる効果の方が大きいと考えられる。
また、金属基材110とセラミックス膜150との界面に配置された、上述した条件を満足する凹凸は、金属基材110より硬いセラミックス粒子が衝突して変形するため、金属基材110の硬さにも依存するが、この成膜時に形成される界面の凹凸(アンカー層)111の一次元界面クルトシス(Rkub)は、成膜前の金属基材110の一次元表面クルトシス(Rkus)より小さくなる。このため、セラミックス粒子材料の硬度(Hvp)と金属基材110の硬度(Hvs)とは、下記の関係を満たす。

Rkub/Rkus=α・Hvs/Hvp (0.5<α<3)
[金属基材]
本実施形態において、金属基材110の材料は、上記の関係式を満たす限り特には限定されないが、例えば、鉄や銅、ニッケル、又は鉄を含む合金を用いることができる。例えば、日本工業規格(JIS)に適合した炭素鋼(S45C、SD295A、SWRM、STKM11A、STKM13A、STK400)を用いることができる。また、JISに適合した特殊鋼(DC53)を用いることができる。また、JISに適合したクロムモリブデン鋼(SCM435、SCM440、SCM415、SNCM439、SNCM420)を用いることができる。また、JISに適合した工具鋼・ダイス銅(SUJ2、SKS3、SKD11、SKH51、SKS93)を用いることができる。また、JISに適合した黄銅(C2700、C3604、C4641、C6782)を用いることができる。また、JISに適合した銅(ABB2、PBC2、BC6、BECU25、BECU50、C1020、C1100、C1220、C5191、CRCUP)を用いることができる。また、JISに適合したプリハードン鋼(NAK55、NAK80)を用いることができる。また、JISに適合したステンレス鋼(SUS3003、SUS304、SUS310S、SUS316、SUS403、SUS420J2、SUS440C、SUS630)を用いることができる。また、JISに適合したアルミ合金(A1050、A1070、A2014、A2017、A2024、A5052、A5056、A5083、A6061、A6063)を用いることができる。なお、金属基材110の材料は、これらに限定されるものではない。
また、一実施形態において、金属基材110のセラミックス膜150を形成する面を上記の関係式を満たすように切削或いは研削、又は研磨することにより、防錆効果が量産レベルで得られる。
また、この時の基材の研磨、研削方法としては、特許第3740523号公報に記載された超微粒子材料平坦化成膜方法に示されたエアロゾルデポジション法を使って、研磨・研削用のセラミックス粒子をノズルから金属基材110に斜めから吹き付けることで、金属基材110の表面を研削或いは研磨し、Rku値、Sku値を3以下に調整し、その後、成膜用のセラミックス粒子を基材に吹き付け、セラミックス膜を形成することも可能である。または、研磨・研削用のセラミックス粒子をノズルから金属基材110に扇状に吹き付けることで、金属基材110の表面を研削或いは研磨し、Rku値、Sku値を3以下に調整してもよい。
[セラミックス粒子]
本実施形態において、セラミックス膜150を形成するための原料となるセラミックス粒子153は、上記の関係式を満たす限り特には限定されないが、例えば、アルミナ(Al)又はシリカ(SiO)、ジルコニア(ZrO)、部分安定化ジルコニア(YSZ)、イットリア(Y)、窒化ケイ素(Si )、窒化アルミ(AlN)、タングステンカーバイド(WC)、サイアロン(Si-Al)、サーメット(TiC-20TiN-15WC-10MoC-5N)などを用いることができる。一実施形態において、原料となるセラミックス粒子153は平均粒子径が50nm~10μmのアルミナが好ましい。
[セラミックコーティング部材の製造方法]
本発明に係るセラミックコーティング部材100は、エアロゾルデポジション法を用いて、製造することができる。エアロゾルデポジション法については、例えば、特許文献1又は非特許文献1の記載に準じて実施することができる。なお、非特許文献1においては、金属のローラの表面粗さ(Ra)のみに着眼して、エアロゾルデポジション法によりセラミックス膜を形成していた。一方、本願は、表面クルトシスに着眼し、セラミックコーティング部材において工業的に有効な防錆効果を実現した。
図3は、本発明の一実施形態に係るセラミックコーティング部材100の製造に用いる製造装置1000を示す模式図である。製造装置1000は、例えば、エアロゾル化チャンバー1030及び成膜チャンバー1050を備える。製造装置1000において、搬送ガスボンベ1020が、搬送管1010を介して、エアロゾル化チャンバー1030に接続する。搬送ガスボンベ1020には、例えば、アルゴンやヘリウムなどの不活性ガスが収容されている。エアロゾル化チャンバー1030には、セラミックス膜150の原料となるセラミックス粒子153が収容されている。搬送ガスボンベ1020から供給された搬送ガスは、セラミックス粒子153と混合・撹拌され、エアロゾル化される。
エアロゾル化されたセラミックス粒子153は、搬送管1011を介して、分級装置1035を通して粗い粒子をフィルターした後、成膜チャンバー1050に搬送されて、成膜ノズル1060から、金属基材110の表面に吹き付けられる。金属基材110の表面に吹き付けられたセラミックス粒子153は、金属基材110の表面に衝突して、均質なナノスケールの微細結晶片であるセラミックス微粒子151に粉砕され、金属基材110の表面に堆積して、セラミックス膜150を形成する。セラミックス微粒子151の表面には活性な新生面が形成され、セラミックス微粒子151の表面と金属基材110の表面との結合、及びセラミックス微粒子151同士の表面での結合が生じる。金属基材110の衝突破砕によって生成するセラミックス微粒子151の新生面を介して、セラミックス微粒子151の表面と金属基材110の表面との結合、及びセラミックス微粒子151同士が結合する。これにより、金属基材110の表面にセラミックス微粒子151が堆積して、セラミックス膜150が形成される。このようにして、ピンホールの生成が抑制された、防錆性能に優れたセラミックコーティング部材100を製造することができる。
成膜チャンバー1050には、成膜ノズル1060と対向する位置にX-Y-Zステージ1080が配置される。金属基材110はX-Y-Zステージ1080上に配置され、X-Y-Zステージ1080を駆動することより、金属基材110の表面の所望の位置にセラミックス微粒子151を堆積させて、セラミックス膜150を形成することができる。成膜チャンバー1050には、搬送管1012を介して、成膜チャンバー1050の内部を減圧、脱気する真空排気系1090が接続される。真空排気系1090は、例えば、メカニカルブースターポンプ1091及びロータリーポンプ1093を備えることができる。
減圧された成膜チャンバー1050に送られたセラミックス粒子153のエアロゾルは、細い開口の成膜ノズル1060から、金属基材110に吹き付けられることでセラミックス膜150を形成する。このとき、成膜チャンバー1050内が0.1Torr以上10Torr以下の圧力であると、搬送されたセラミックス粒子153は数百m/secまで容易に加速される。金属基材110上に吹き付けるエアロゾルの速度は150m/sec以上400m/sec以下であることが好ましい。使用するセラミックス粒子153の調整とセラミックス粒子153の粒径分布、加速条件、成膜雰囲気などにより、セラミックス粒子153が室温で堆積、固化されたセラミックス膜150が形成される。
図4は、本発明の一実施形態に係るセラミックコーティング部材100の製造に用いる製造装置2000を示す模式図である。製造装置2000は、例えば、エアロゾル化チャンバー2030、プラズマ発生装置2040及び成膜チャンバー2050を備える。製造装置2000において、搬送ガスボンベ2020が、搬送管2010を介して、エアロゾル化チャンバー2030に接続する。搬送ガスボンベ2020及びエアロゾル化チャンバー2030の構成は、搬送ガスボンベ1020及びエアロゾル化チャンバー1030と同様の構成であってもよく、詳細な説明は省略する。
エアロゾル化されたセラミックス粒子153は、搬送管2011を介して、プラズマ発生装置2040に搬送される。プラズマ発生装置2040としては、例えば、誘導コイルを用いることができる。プラズマ発生装置2040内に発生する非熱平衡プラズマにより、セラミックス粒子153の融点以下の温度域において、セラミックス粒子153の表面が電子的に励起され、連続的にセラミックス粒子153の極表層に活性領域が生成される。
表面が活性化したセラミックス粒子153は、成膜チャンバー2050に搬送されて、成膜ノズル2060から、金属基材110の表面に吹き付けられる。金属基材110の表面に吹き付けられたセラミックス粒子153は、金属基材110の表面に衝突して、均質なナノスケールの微細結晶片であるセラミックス微粒子151に粉砕され、金属基材110の表面に堆積して、セラミックス膜150を形成する。セラミックス微粒子151の表面には活性な新生面が形成され、セラミックス微粒子151の表面と金属基材110の表面との結合、及びセラミックス微粒子151同士の表面での結合が生じる。セラミックス微粒子151の表層の活性領域の生成に利用するプラズマは、セラミックス微粒子151が金属基材110まで到達するプラズマフレームを有するが、好ましくは金属基材110に熱ダメージを与えない。プラズマにより生成するセラミックス粒子の表層の活性領域は、プラズマフレーム中を飛行してセラミックス粒子が金属基材110に到達するまで維持され、プラズマによって生成する活性領域及び金属基材110との衝突破砕によって生成するセラミックス微粒子151の新生面を介して、セラミックス微粒子151の表面と金属基材110の表面との結合、及びセラミックス微粒子151同士が結合する。これにより、金属基材110の表面にセラミックス微粒子151が堆積して、セラミックス膜150が形成される。このようにして、ピンホールの生成が抑制された、防錆性能に優れたセラミックコーティング部材100を製造することができる。
成膜チャンバー2050には、成膜ノズル2060と対向する位置にX-Y-Zステージ2080が配置される。金属基材110はX-Y-Zステージ2080上に配置され、X-Y-Zステージ2080を駆動することより、金属基材110の表面の所望の位置にセラミックス微粒子151を堆積させて、セラミックス膜150を形成することができる。成膜チャンバー2050には、搬送管2012を介して、成膜チャンバー2050の内部を減圧、脱気する真空排気系2090が接続される。真空排気系2090は、例えば、メカニカルブースターポンプ2091及びロータリーポンプ2093を備えることができる。
エアロゾル化チャンバー2030で搬送ガスと混合されたセラミックス粒子153は、分級装置2035を通して粗い粒子をフィルターした後、減圧された成膜チャンバー2050に送られ、セラミックス粒子153のエアロゾルとして細い開口の成膜ノズル2060から、金属基材110に吹き付けられることでセラミックス膜150を形成する。このとき、成膜チャンバー2050内が0.1Torr以上100Torr以下の圧力であると、搬送されたセラミックス粒子153は数百m/secまで容易に加速される。金属基材110上に吹き付けるエアロゾルの速度は150m/sec以上400m/sec以下であることが好ましい。使用するセラミックス粒子153の調整とセラミックス粒子153の粒径分布、加速条件、成膜雰囲気などにより、セラミックス粒子153が室温で堆積、固化されたセラミックス膜150が形成される。
セラミックス粒子材料の硬度(Hvp)と金属基材110の硬度(Hvs)が、下記の関係を満たす、セラミックス粒子と金属基材110を準備する。一実施形態において、用いる基材に応じて、下記の関係式を満たすセラミックス粒子を選択することができる。

Rkub/Rkus=α・Hvs/Hvp (0.5<α<3)
また、一実施形態において、金属基材110のセラミックス膜150を形成する面を上記の関係式を満たすように切削或いは研削、は研磨することにより、防錆効果が量産レベルで得られる。この時、原料となるセラミックス粒子153は平均粒子径が50nm~10μmのアルミナが好ましい。
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例でのRku値、Rpk値の基準長さ(L)は、100μm以上、20mm以下、Sku値での基準面積(S)は100μm角以上、20mm角以下であった。
[実施例1]
表面粗さ(Ra)が2μm~3μmの鉄系の金属基材(SS400、ビッカース硬度:200Hv~400Hv)と、粒子径分布が0.08μm~10μmのα-アルミナ(ビッカース硬度:1000Hv~2000Hv)を準備した。金属基材を旋盤で加工し、回転中心から外周部に向かって被削物の周速が上がることを利用し、刃物と被削物の相対速度を変化させ、金属基材の表面粗さを変化させた。準備した金属基材とα-アルミナ粒子を用いて、エアロゾルデポジション法やプラズマ援用エアロゾルデポジション法を用いて、金属基材上にセラミックス膜を形成した。成膜条件として、真空度:100Pa~500Pa、キャリアガス:空気、キャリガス流量:2L/分~40L/分に設定し、約1~10μmの膜厚のセラミックス膜を有するセラミックコーティング部材を形成した。
塗装やめっきなど表面処理での評価方法として広く用いられている塩水噴霧試験(JIS Z 2371:2015)に準じて、セラミックコーティング部材の防錆評価を行った。具体的には、下記のとおりである。
JIS Z 2371 塩水噴霧試験 概要
<装置>
噴霧塔又は噴霧ノズル、塩溶液貯蔵槽、試験片保持器、噴霧採取容器などを備えた噴霧室、塩溶液補給タンク、圧縮空気供給器、空気飽和器、温度調節装置、排気ダクトなどで構成。
<試験条件など>
塩溶液 50g/L±5g/L、pH6.5~7.2(25℃±2℃)
試験装置内温度 35℃±2℃
噴霧装置 98kPa±10kPa
噴霧量 80cmに対して1.5±0.5ml/hr.で噴霧。
噴霧採取容器(ロートの様) 直径100mm、面積約80cm、2か所以上(噴霧器近くと遠く)に設置。
空気は油及び埃含まず 0.098±0.010MPaであった。
噴霧液からの水の蒸発を防ぐために、噴霧塔又は成膜ノズルへ送る圧縮空気は、加湿器又は空気飽和器の中を通過させた。
試験経過時間において、セラミックコーティング部材のセラミックス膜の表面での錆発生有無と大きさ、及び錆による表面腐食の進行度合いを目視により、又は光学顕微鏡若しくは電子顕微鏡により確認した。
表面粗さは、共焦点顕微鏡(レーザーテック株式会社、OPTELICS(登録商標)HYBRID+)を使用し、表面粗さ(JIS B 0601:1994)の評価方法に準じて測定及び算出を行った。測定面としては、成膜前の金属基材の表面及び成膜後のセラミックス膜の表面を用いた。
図5は、塩水を8時間噴霧した後のセラミックコーティング部材を示す図である。図5において、破線で囲んだ部分は、セラミックコーティング部材の塩水を噴霧しなかった部位を示す。図5の右側は、噴霧した部位を示す。また、図5の各測定位置における各測定値を表1に示す。表1中、Raは表面粗さを示し、Rvは最大谷深さを示し、Rzは最大高さを示し、Rkuは一次元表面クルトシスを示し、Rdqは二乗平均平方根傾斜を示し、Rkは、コア部のレベル差を示し、Rpkは突出山部高さを示し、Rvkは突出谷部深さを示す。

図5及び表1の結果より、表面粗さ(Ra)が2.484のNo.1-1の部位では一次元表面クルトシス(Rku)が3.495であり、Raが1.367のNo.3-1の部位ではRkuが4.406であった。この2つの部位を比較すると、Rkuが大きなNo.3-1の部位の方が、錆が多く発生した。これらの結果より、セラミックス膜の緻密さやピンホールのでき方、防錆効果には、金属基材表面の大きな凹凸の指標の中でも、表面粗さ(Ra)よりも、一次元表面クルトシス(Rku)やプラトー構造表面パラメータ(Rpk)が大きく影響することが明らかとなった。特に、セラミックス膜の一次元表面クルトシス(Rku)が3以下であれば、防錆効果を示すことが明らかとなった。
図6(A)~図8は、セラミックコーティング部材のセラミックス膜の表面の凹凸の状態に対する一次元の断面プロファイル及び二次元の断面プロファイルと塩水噴霧試験による防錆効果の確認結果を示す図である。図6(A)~図8において、上段の左側の図は、サンプル表面をレーザー共焦点顕微鏡で観察した図であり、上段の右側の図は、光学顕微鏡写真であり、下段の左側の図は、二次元の断面プロファイルであり、下段の右側の図は、一次元の断面プロファイルである。
図6(A)の線分を付与した位置におけるRaは1.36であり、Rkuは4.09であり、Rpkは1.71であった。また、図6(B)の線分を付与した位置におけるRaは1.11であり、Rkuは1.66であり、Rpkは0.645であった。図7(A)の線分を付与した位置におけるRaは1.36であり、Rkuは4.09であり、Rpkは1.71であった。また、図7(B)の線分を付与した位置におけるRaは1.65であり、Rkuは2.74であり、Rpkは2.91であった。図8の線分を付与した位置におけるRaは1.19であり、Rkuは5.68であり、Rpkは0.941であった。各セラミックコーティング部材は、セラミックス膜の表面粗さ(Ra値)が1μm~1.3μm程度であるが、その中でもRku値が3を超えたものに、明らかな錆が確認された。
[実施例2]
セラミックス膜の表面のRa値が同程度である場合のRku値の違いによる防錆効果について、さらに検討した。約4μmのセラミックス膜を形成したセラミックコーティング部材について、12時間の塩水噴霧試験を行った。図9(A)の上段の図は、12時間の塩水噴霧試験で錆が出なかった部分の光学顕微鏡写真であり、下段の図は、その一次元の断面プロファイルである。また、図9(B)の上段の図は、同じ条件で錆が出た部分の光学顕微鏡写真であり、下段の図は、その一次元の断面プロファイルである。
図9(A)の上段の図の線分を付与した位置(基準長(L):約1000μm(白線)、基準面積(S):約1400μm角(白枠内))における試験前の算術平均粗さ(Sa)は1.17であり、最大高さ(Sz)は16.49であり、二次元表面クルトシス(Sku)は2.11であり、表面粗さ(Ra)は1.09であり、一次元表面クルトシス(Rku)は1.86であった。また、図9(B)の上段の図の線分を付与した位置(基準長(L):約1000μm(白線)、基準面積(S):約1400μm角(白枠内))における試験前のSaは1.05であり、Szは15.34であり、Skuは6.44であり、Raは1.09であり、Rkuは6.26であった。
図9(A)の測定ラインL1(基準長(L))及び図9(B)の測定ラインL2(基準長(L))での塩水噴霧試験前のRa値は、ともに1μm前後であるのに対して、測定ラインL1の塩水噴霧試験前のRku値は1.86であり、測定ラインL2のRku値は6.26と大きく異なる。これは、写真の観察領域で測定した二次元の表面クルトシス(Sku)値においても同じである。これは、測定ラインL2の断面プロファイルに見られる尖った谷の部分(丸で囲んだ部分)が、存在することによる。つまり、エアロゾルデポジション法によるセラミックス成膜では、ピンホールのない優れた被覆を実現するためには、金属基材の凹凸の深さよりも、凹凸の尖り度合いを小さくすることが重要であることが明らかとなった。
[実施例3]
図10に示したセラミックコーティング部材のセラミックス膜の表面について、セラミックス膜の厚みが、それぞれ、0.9μm(図10(A)及び図10(B))、4μm(図10(C)及び図10(D))、及び6μm(図10(E)及び図10(F))である3種類のセラミックコーティング部材について、共焦点顕微鏡を用いて二次元表面クルトシス(Sku値)を測定し、塩水噴霧後の錆の発生状態との関係を調査した。なお、セラミックス膜の厚みが、0.9μm及び4μmであるセラミックコーティング部材については、12時間の塩水噴霧試験を行い、セラミックス膜の厚みが、6μmであるセラミックコーティング部材については、8時間の塩水噴霧試験を行った。
セラミックス膜の厚みが0.9μmのセラミックコーティング部材(図10(A))において、基準長(L):約1000μm(白線)、基準面積(S):約1400μm角(白枠内)に対して、Saは1.20であり、Szは12.0であり、Skuは1.80であり、Raは1.22であり、Rkuは1.75であった。また、図10(B)において、基準長(L):約1000μm(白線)、基準面積(S):約1400μm角(白枠内)に対して、Saは1.20であり、Szは13.0であり、Skuは1.83であり、Raは1.21であり、Rkuは1.82であった。セラミックス膜の厚みが4μmのセラミックコーティング部材(図10(C))において、基準長(L):約1000μm(白線)、基準面積(S):約1400μm角(白枠内)に対して、Saは1.16であり、Szは14.7であり、Skuは2.98であり、Raは1.21であり、Rkuは2.65であった。また、図10(D)において、基準長(L):約1000μm(白線)、基準面積(S):約1400μm角(白枠内)に対して、Saは1.10であり、Szは13.63であり、Skuは3.06であり、Raは1.11であり、Rkuは4.14であった。セラミックス膜の厚みが6μmのセラミックコーティング部材(図10(E))において、基準長(L):約1000μm(白線)、基準面積(S):約1400μm角(白枠内)に対して、Saは1.27であり、Szは16.2であり、Skuは2.98であり、Raは1.46であり、Rkuは2.96であった。また、図10(F)において、基準長(L):約1000μm(白線)、基準面積(S):約1400μm角(白枠内)に対して、Saは1.33であり、Szは21.6であり、Skuは3.23であり、Raは1.28であり、Rkuは3.11であった。
セラミックス膜の膜厚が4μm及び6μmのセラミックコーティング部材の測定範囲内の二次元表面クルトシス(Sku)が3以下である場合は、8~12時間の塩水噴霧試験後の表面観察において錆は観察されなかった。一方で、セラミックス膜の膜厚が0.9μmのセラミックコーティング部材においては、二次元表面クルトシス(Sku)が1.83の場合には、12時間の塩水噴霧試験後には、セラミックス膜の膜厚が4μm及び6μmのセラミックコーティング部材に比べて、小さく僅かではあるが錆びが観察された。これに対し、二次元表面クルトシス(Sku)が1.80以下のセラミックコーティング部材では、12時間の塩水噴霧試験後に錆びは全く観察されず、セラミックス膜の膜厚が4μm及び6μmのセラミックコーティング部材に比べて、良好な防錆を施すための二次元表面クルトシス(Sku)は、2から1.80に減少する。これらの結果から、量産性に優れ工業的に利用可能なセラミックス膜の膜厚は、1μm以上が好ましく、二次元表面クルトシス(Sku)が3以下である必要があることが明らかとなった。また、二次元表面クルトシス(Sku)が2以下であることがより好ましいことが明らかとなった。
エアロゾルデポジション法において、基材の表面粗さ(Ra)が小さい鏡面を有する方が、硬度の高い膜を形成できることは、特許文献2及び3にも開示されている。しかし、基材の表面が荒い場合でも、防錆効果が十分に確保できる程度にピンホールを無くすための成膜メカニズムやプロセス要因は明らかではなかった。例えば、特許文献2及び3では、十分なセラミックス膜の密度、硬度を得るためには、Ra<0.5μmが必要であることを開示している。一方、上述した本発明の実施例から、Raが0.5μm以上である場合であっても、Rku値、Sku値、Rpk値が上記の条件を満足していれば、十分な防錆効果や膜硬度が確保できることが明らかになった。
[実施例4]
図11及び図12は、鉄基材上に厚さ3μmのアルミナ膜で被覆したセラミックコーティング部材について、7時間の塩水噴霧試験を行った結果を示す図である。図11(A)は、錆が生じなかったRku値が2以下のセラミックコーティング部材の断面SEM写真を示し、図11(B)は、そのセラミックコーティング部材についてのアルミの元素分析マッピングであり、図11(C)は、共焦点顕微鏡で観察したセラミックコーティング部材の断面プロファイルを示す。また、図12(A)は、錆が生じたRku値で5以上のセラミックコーティング部材の断面SEM写真を示し、図12(B)は、そのセラミックコーティング部材についてのアルミの元素分析マッピングであり、図12(C)は、共焦点顕微鏡で観察したセラミックコーティング部材の断面プロファイルを示す。
アルミの元素分析マッピング(図11(B)及び図12(B))でアルミの元素が濃く表れているところは、アルミナ膜が被覆しているエリアを表している。図12(B)に示した塩水噴霧試験で錆が見られたRa値=2.18、Rku>5以上の断面では、矢印で示した3箇所において、鉄基材の凹凸の凸部が鋭くなっていることが確認できる。この結果は、アルミナの被覆が途切れて鉄基材が露出していることを示しており、この場所から錆が発生することが確認された。一方で、図10(B)に示したRa値=0.92、Rku値<2以下のセラミックコーティング部材の断面では、鉄基材の凹凸をほぼ一定の厚みでアルミナ膜が被覆していることが観察でき、7時間の塩水噴霧試験でも錆びの発生は見られなかった。従って、エアロゾルデポジション法によるセラミックス成膜では、基材の凹凸はその深さのみならず凹凸の鋭さも、その上を被覆するアルミナ膜の被覆能力に大きく影響することが明らかとなった。
[実施例5]
図13は、複雑な3次元形状の構造物(金属基材)の表面にエアロゾルデポジション法でアルミナ膜(セラミックス膜)をコートした例である。図13(A)の構造物の表面粗さRaは1.5μmであり、図13(B)の構造物の表面粗さRaは1.1μmであり、両方とも、表面粗さRaはで1μm程度であるが、図13(A)の構造物はRku値が3以下、図13(B)の構造物はRku値が3以上のサンプルであった。これらの構造物に対して、上述した塩水噴霧試験を12時間行った。その結果、Rku値が3以下の図13(A)の構造物では表面に錆が発生しなかったが、Rku値が3以上の図13(B)の構造物では、多数の個所で錆が見られた。このような複雑な3次元形状の構造物では、その表面粗さRaを均一に0.5μm以下の鏡面状に機械加工、研磨加工することは容易でない。このため、コーナー部などに削り残しや磨き残しが必ず生じ、その場所にコートされたセラミックス膜にはピンホールやクラックが発生して錆が生じる。これに対し、Ra値が1μm以上であっても、Rku値が3以下になるように機械加工すれば、錆の発生しないセラミックスコーティングが可能となり、Rku値に着目した基材の仕上げで、生産性を向上させ、加工コストを低減できる。
[実施例6]
図14は、鉄系基材に膜厚(t)が、6μm又は8μmのセラミックス膜としてアルミナ膜を形成したセラミックコーティング部材を示す図である。図15は、このセラミックコーティング部材について、上述した塩水噴霧試験を8時間実施したときの防錆効果を比較した結果を示す図である。なお、各図の左側の破線で囲んだ領域は、塩水噴霧試験を実施していない領域を示す。
膜厚6μmのアルミナ膜でコートされた領域Aの旋盤面に直行した約1000μmの基準長さ(L)における表面粗さ(Ra)は0.89であり、一次元表面クルトシス(Rku)は4.28であり、算術平均粗さ(Sa)は1.07であり、最大高さ(Sz)は17.7であり、二次元表面クルトシス(Sku)は4.24であった。また、膜厚8μmのアルミナ膜でコートされた領域BのRaは1.14であり、Rkuは3.20であり、Saは1.38であり、Szは16.2であり、Skuは2.93であった。さらに、膜厚8μmのアルミナ膜でコートされた領域CのRaは1.14であり、Rkuは3.33であり、Saは1.00であり、Szは14.4であり、Skuは3.33であった。
領域A、領域B及び領域Cの全てが、一次元表面クルトシス(Rku)及び二次元表面クルトシス(Sku)がほぼ3を超える錆が発生する条件であったが、膜厚8μmのアルミナ膜でコートされた領域B及び領域Cでは錆びのサイズや発生頻度が大きかったのに対し、膜厚6μmのアルミナ膜でコートされた領域Aでは、明らかに錆のサイズや発生頻度が小さくなっていた。セラミックス膜の膜厚が大きくなると、セラミックス膜の内部応力が大きくなる。また、Rku値やSku値が3以上の荒れた表面になるとセラミックス膜と基材との密着力も低下する。このため、セラミックス膜に微細な剥離やクラックが容易に発生し、そこから錆が発生すると考えられる。以上のことから、工業的な量産レベルで防錆効果が十分得られるセラミックス膜の最適な膜厚(t)範囲は、1μm<t<10μm、好ましくは1μm<t<6μmであることが明らかになった。
[参考例1]
セラミックス膜にピンホールがあった場合にも上述した実施形態に係るセラミックス膜が、従来の硬質クロムメッキ膜よりも、ピンホールからの錆の広がりを抑制可能であることを検証した。参考例1として、鉄系基材にアルミナ膜を形成し、ピンホールが存在するセラミックコーティング部材を用いた。具体的には、表面粗さ(Ra)が2μm~3μmの鉄系の金属基材(SPCC、ビッカース硬度:150Hv~200Hv)と、粒子径分布が0.1μm~10μmのα-アルミナ(ビッカース硬度:1000Hv~2000Hv)を準備した。準備した金属基材とα-アルミナ粒子を用いて、エアロゾルデポジション法を用いて、金属基材上にアルミナ膜を形成した。成膜条件として、真空度:100Pa~500Pa、キャリアガス:空気、キャリガス流量:10L/分~40L/分に設定し、約3μmの膜厚のアルミナ膜を有するセラミックコーティング部材を形成した。参考例1のセラミックコーティング部材は、アルミナ膜の一次元表面クルトシス(Rku)が3.5、二次元表面クルトシス(Sku)が4.6、アルミナ膜と鉄系基材との界面に形成される凹凸の一次元界面クルトシス(Rkub)が2.6でり、ピンホールが生じたセラミックコーティング部材は、本願実施例のセラミックコーティング部材の一次元表面クルトシス等の値から僅かに外れていることが確認された。
(比較例1)
比較例1として、参考例1で用いた鉄系基材に従来の硬質クロムメッキ膜を形成した。具体的には、参考例1で用いた鉄系基材に、約500μmの膜厚の硬質クロムメッキ膜を有する比較例1の硬質クロムメッキコーティング部材を形成した。
参考例1及び比較例1のコーティング部材について、塩水噴霧試験(JIS Z 2371:2015)に準じて、実施例1と同様の条件にて、参考例1及び比較例1のコーティング部材の防錆評価を行った。
図16は、参考例1のセラミックコーティング部材について、塩水を3時間、7時間及び24時間の噴霧した後の参考例1のセラミックコーティング部材の上面図を示す。図16において、円で囲んだ部分は、ピンホールにサビが生じた部分を示す。また、図17は、参考例1のセラミックコーティング部材における錆の広がりを説明する模式図である。参考例1のセラミックコーティング部材100Aにおいては、ピンホール190での鉄系基材110Aから発生した錆は、アルミナ膜150A内では横方向(鉄系基材110Aに平行な方向)には広がらなかった。エアロゾルデポジション法により形成した参考例1のアルミナ膜150Aでは、鉄系基材110Aの界面にアンカー層111Aがあるため、この界面部分での錆の横方向への広がりが抑制され、ピンホール190からの錆の広がりが大幅に抑制された。
図18(A)は、塩水を3時間及び7時間の噴霧した後の比較例1の硬質クロムメッキコーティング部材の上面図を示し、図18(B)は、硬質クロムメッキ膜と鉄系基材との界面への錆の進展による硬質クロムメッキ膜の浮きを示す。また、図19は、比較例1の硬質クロムメッキコーティング部材における錆の広がりを説明する模式図である。比較例1の硬質クロムメッキコーティング部材200においては、硬質クロムメッキ膜250自体も徐々に錆が生じ、ピンホール290を中心に錆は横方向に大きく広がった。また、硬質クロムメッキ膜250と鉄系基材110Aの界面でも横方向の浸食が進み、硬質クロムメッキ膜250が鉄系基材110Aから剥離して部分的に浮くような事象も生じた(18(B))。
比較例1の結果より、従来の硬質クロムメッキ膜では、硬質クロムメッキ層と鉄系基材との界面が平滑であるため、界面に沿って錆が広がり易いことが明らかとなった。一方、参考例1のセラミックコーティング部材100Aにおいては、アルミナ膜150Aにピンホール190が存在する場合にも、アルミナ膜150Aと鉄系基材110Aの界面にアンカー層111Aがあるため、界面部分での錆の横方向への広がりが抑制され、ピンホール190からの錆の広がりが大幅に抑制されることが明らかとなった。上述した実施例のセラミックコーティング部材はピンホールの生成が抑制されているが、参考例1の結果より、実施例のセラミックコーティング部材にピンホールが生じた場合にも、アルミナ膜と金属基材の界面にアンカー層があるため、ピンホールからの錆の広がりが大幅に抑制可能であることは明らかである。
本発明に係るセラミックコーティング部材は、以前より産業界で環境問題になっている六価クロム機能メッキ部材の代替となる防錆コーティング部材、耐摩耗部材として好適に用いることができる。
100 セラミックコーティング部材、110 金属基材、111 凹凸(アンカー層)150 セラミックス膜、151 セラミックス微粒子、190 ピンホール、1000 製造装置、1010 搬送管、1011 搬送管、1012 搬送管、1020 搬送ガスボンベ、1030 エアロゾル化チャンバー、1040 プラズマ発生装置、1050 成膜チャンバー、1060 成膜ノズル、1080 ステージ、1090 真空排気系、1091 メカニカルブースターポンプ、1093 ロータリーポンプ、2000 製造装置、2010 搬送管、2011 搬送管、2012 搬送管、2020 搬送ガスボンベ、2030 エアロゾル化チャンバー、2035 分級装置、2040 プラズマ発生装置、2050 成膜チャンバー、2060 成膜ノズル、2080 ステージ、2090 真空排気系、2091 メカニカルブースターポンプ、2093 ロータリーポンプ

Claims (3)

  1. 金属基材上に複数のセラミックス微粒子が配置されたセラミックス膜と、
    前記金属基材と前記セラミックス膜との界面に配置された凹凸と、を有し、
    前記セラミックス膜の表面の一次元表面クルトシス(Rku)が3以下、又は
    二次元表面クルトシス(Sku)が3以下あることを特徴とするセラミックコーティング部材。
  2. 前記セラミックス膜の厚みが、1μm以上、10μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のセラミックコーティング部材。
  3. 前記セラミックス膜の一次元表面クルトシス(Rku)が3未満、又は
    前記凹凸の輪郭曲線から求めた負荷曲線を用いて求めた突出山部高さ(Rpk)が0.5未満であり、
    前記セラミックス膜の厚み(t)が1μm<t<10μmの範囲であることを特徴とする請求項2に記載のセラミックコーティング部材。
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