JP7461662B2 - 貴ガス水素化物、燃料、及び貴ガス水素化物の製造方法 - Google Patents

貴ガス水素化物、燃料、及び貴ガス水素化物の製造方法 Download PDF

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Description

本開示は、貴ガス水素化物、燃料、及び貴ガス水素化物の製造方法に関する。
アルゴンの水素化物分子としては、アルゴンフッ素水素化物(HArF)が唯一知られている化合物であり、極低温下で生成されるものとされている。また、貴ガスの水素化物イオンとして水素化ヘリウムイオン(HeH)は知られているが、電荷を持たない水素化ヘリウム分子(HeH)は知られていない。
アルゴンと水素分子との混合物が4.3万気圧でAr(H)の組成をもつ固体結晶をつくることが知られているが、これはアルゴンの結晶格子内に水素分子が規則的に組み込まれたものである(例えば、非特許文献1~2参照)。そのため、貴ガスの水素化物分子とは異なる。
一方、例えば非特許文献3のように、金属の表面にアルゴン等の貴ガスをイオンスパッタリングしてイオン注入することで、金属の表面近傍にナノバブルが形成され、表面歪みを誘発できる技術が報告されている。かかる技術は、触媒活性に関する研究成果として報告されている。
他方、近年では、地球環境の保全及び燃料枯渇等に対する要求から、化石燃料に代わる燃料として水素を利用する技術が注目されている。水素は、二酸化炭素を排出せずに熱エネルギーを取り出すことができる点で環境改善に有用であるだけでなく、酸素との電気化学反応によって電力を取り出し得る燃料としても有用である。
そのため、水素の利用拡大を見据え、水素の貯蔵、運搬等に関係するインフラの早急な整備が望まれている。
非特許文献1: P. Loubeyre et al., Phys. Rev. Lett. 72, 1360 (1994), <https://journals.aps.org/prl/pdf/10.1103/PhysRevLett.72.1360>
非特許文献2:「アルゴン水素化物の超伝導性に関する第一原理的研究」、石河孝洋、中西章尊、清水克哉、小田竜樹、<https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpsgaiyo/71.2/0/71.2_1645/_pdf, https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpsgaiyo/71.2/0/71.2_1645/_article/-char/ja/>
非特許文献3:"Growth Mechanism of Subsurface Argon Nanobubbles at Pd(111)", Hiroki Tanabe, Kazutaka Hayashi, Shun Hosoi, Naoki Hama, Yukie Yokota, and Kazuo Watanabe, J. Phys. Chem. C, 123(13), p.8256-8264 (2019).
水素を安定的に貯蔵することができる化合物は、水素貯蔵合金をはじめ種々の化合物が提案されているが、水素をより取り扱いやすく、より利用しやすくする化合物が提供されることは、水素の利用拡大に寄与する有用な技術と考えられる。
また、水素を取り扱うにあたり、水素の貯蔵及び運搬等の方法として、水素を気体状態でタンク等に圧入して貯蔵する方法、又は水素化した化合物を用いて貯蔵する方法等が提案されている。しかしながら、前者では、水素自体が化石燃料に比べて安全性に劣るという懸念が残り、また後者では、貯蔵できる水素量又は取り出しやすさ等の点で改善の余地があった。
このような事情から、水素の貯蔵及び運搬等の取り扱いに関する技術は未だ確立されるに至っていないのが実状である。
本開示は、上記に鑑みてなされたものである。
本発明の実施形態は、新規な貴ガス水素化物及びその製造方法を提供することにある。
本発明の他の実施形態は、化石燃料の代替が可能で取り扱いの容易な燃料を提供することにある。
課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 下記式1で表される貴ガス水素化物である。
Ng ・・・式1
式1において、Ngは、貴ガス原子を表し、nは1~8の整数を表し、mは1~46の整数を表す。
<2> 前記貴ガス原子が、ヘリウム、ネオン、アルゴン、又はクリプトンである前記<1>に記載の貴ガス水素化物である。
<3> nが1~3であり、mが1~18である前記<1>又は前記<2>に記載の貴ガス水素化物である。
<4> 前記<1>~前記<3>のいずれか1つに記載の貴ガス水素化物を含む燃料である。
<5> 金属又は金属酸化物の表面を貴ガスと接触させて、前記表面への貴ガス原子の吸着、及び前記金属もしくは前記金属酸化物の内部への貴ガス原子の吸蔵の少なくとも一方を行う工程と、前記表面及び前記内部の少なくとも一方に存在する前記貴ガス原子を水素原子と接触させる工程と、を有する貴ガス水素化物の製造方法である。
<6> 前記水素原子は、前記金属又は前記金属酸化物を水素含有ガスと接触させることにより生成させる前記<5>に記載の貴ガス水素化物の製造方法である。
<7> 金属又は金属酸化物と水素含有ガスとを接触させ、前記金属又は前記金属酸化物の表面及び内部の少なくとも一方に水素原子を存在させる工程と、前記金属又は前記金属酸化物に存在する前記水素原子と貴ガスとを接触させる工程と、を有する貴ガス水素化物の製造方法である。
<8> 金属又は金属酸化物の表面に水素含有ガス及び貴ガスをともに供給し、前記金属又は前記金属酸化物の表面において水素原子と貴ガス原子とを接触させる工程を有する貴ガス水素化物の製造方法である。
<9> 前記金属又は前記金属酸化物の金属が、ニッケル、銅、及びパラジウムの少なくとも1つを含む前記<5>~前記<8>のいずれか1つに記載の貴ガス水素化物の製造方法である。
<10> 貴ガス原子が、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、又はキセノンである前記<5>~前記<9>のいずれか1つに記載の貴ガス水素化物の製造方法である。
<11> 貴ガス原子もしくは貴ガスと水素原子との接触の前もしくは後、又は貴ガス原子もしくは貴ガスと水素原子との接触と同時に、前記金属又は前記金属酸化物を加熱する前記<5>~前記<10>のいずれか1つに記載の貴ガス水素化物の製造方法である。
本発明の実施形態によれば、新規な貴ガス水素化物及びその製造方法が提供される。
本発明の他の実施形態によれば、化石燃料の代替が可能で取り扱いの容易な燃料が提供される。
図1は、第1の態様の製造方法により製造されたヘリウム水素化物の組成並びにその製造条件及びTPDスペクトルデータを示す一覧表である。 図2は、第1の態様の製造方法により製造されたヘリウム水素化物の組成並びにその製造条件及びTPDスペクトルデータを示す一覧表である。 図3は、第1の態様の製造方法により製造されたヘリウム水素化物の組成並びにその製造条件及びTPDスペクトルデータを示す一覧表である。 図4は、第1の態様の製造方法により製造されたヘリウム水素化物の組成並びにその製造条件及びTPDスペクトルデータを示す一覧表である。 図5は、第1の態様の製造方法により製造されたヘリウム水素化物の組成並びにその製造条件及びTPDスペクトルデータを示す一覧表である。 図6は、第1の態様の製造方法により製造されたヘリウム水素化物の組成並びにその製造条件及びTPDスペクトルデータを示す一覧表である。 図7は、第1の態様の製造方法により製造されたヘリウム水素化物の組成並びにその製造条件及びTPDスペクトルデータを示す一覧表である。 図8は、第1の態様の製造方法により製造されたネオン水素化物の組成並びにその製造条件及びTPDスペクトルデータを示す一覧表である。 図9は、第1の態様の製造方法により製造されたネオン水素化物の組成並びにその製造条件及びTPDスペクトルデータを示す一覧表である。 図10は、第1の態様の製造方法により製造されたネオン水素化物の組成並びにその製造条件及びTPDスペクトルデータを示す一覧表である。 図11は、第1の態様の製造方法により製造されたネオン水素化物の組成並びにその製造条件及びTPDスペクトルデータを示す一覧表である。 図12は、第1の態様の製造方法により製造されたネオン水素化物の組成並びにその製造条件及びTPDスペクトルデータを示す一覧表である。 図13は、第1の態様の製造方法により製造されたネオン水素化物の組成並びにその製造条件及びTPDスペクトルデータを示す一覧表である。 図14は、第1の態様の製造方法により製造されたネオン水素化物の組成並びにその製造条件及びTPDスペクトルデータを示す一覧表である。 図15は、第1の態様の製造方法により製造されたアルゴン水素化物の組成並びにその製造条件及びTPDスペクトルデータを示す一覧表である。 図16は、第1の態様の製造方法により製造されたアルゴン水素化物の組成並びにその製造条件及びTPDスペクトルデータを示す一覧表である。 図17は、第1の態様の製造方法により製造されたアルゴン水素化物の組成並びにその製造条件及びTPDスペクトルデータを示す一覧表である。 図18は、第1の態様の製造方法により製造されたアルゴン水素化物の組成並びにその製造条件及びTPDスペクトルデータを示す一覧表である。 図19は、第1の態様の製造方法により製造されたアルゴン水素化物の組成並びにその製造条件及びTPDスペクトルデータを示す一覧表である。 図20は、第1の態様の製造方法により製造されたアルゴン水素化物の組成並びにその製造条件及びTPDスペクトルデータを示す一覧表である。 図21は、第1の態様の製造方法により製造されたアルゴン水素化物の組成並びにその製造条件及びTPDスペクトルデータを示す一覧表である。 図22は、第1の態様の製造方法により製造されたアルゴン水素化物の組成並びにその製造条件及びTPDスペクトルデータを示す一覧表である。 図23は、第1の態様の製造方法により製造されたクリプトン水素化物の組成並びにその製造条件及びTPDスペクトルデータを示す一覧表である。 図24は、第2の態様の製造方法により製造されたアルゴン水素化物の組成並びにその製造条件及びTPDスペクトルデータを示す一覧表である。 図25は、第3の態様の製造方法により製造されたアルゴン水素化物の組成並びにその製造条件及びTPDスペクトルデータを示す一覧表である。 図26は、第1の態様の製造方法によりNi(111)単結晶基板を用いた場合のアルゴン水素化反応における生成物のTPDスペクトルデータである。 図27は、第1の態様の製造方法によりNi(111)単結晶基板を用いた場合のアルゴン水素化反応における生成物のTPDスペクトルデータである。 図28は、第1の態様の製造方法によりNi(111)単結晶基板を用いた場合のアルゴン水素化反応における生成物のTPDスペクトルデータである。 図29は、第1の態様の製造方法によりNi(111)単結晶基板を用いた場合のアルゴン水素化反応における生成物のTPDスペクトルデータである。 図30は、第1の態様の製造方法によりNi(111)単結晶基板を用いた場合のアルゴン水素化反応における生成物のTPDスペクトルデータである。 図31は、第1の態様の製造方法によりNi(111)単結晶基板を用いた場合のアルゴン水素化反応における生成物のTPDスペクトルデータである。 図32は、第1の態様の製造方法によりNi(111)単結晶基板を用いた場合のアルゴン水素化反応における生成物のTPDスペクトルデータである。 図33は、第1の態様の製造方法によりNi(111)単結晶基板を用いた場合のアルゴン水素化反応における生成物のTPDスペクトルデータである。 図34は、第1の態様の製造方法によりNi(111)単結晶基板を用いた場合のアルゴン水素化反応における生成物のTPDスペクトルデータである。 図35は、第1の態様の製造方法によりNi(111)単結晶基板を用いた場合のアルゴン水素化反応における生成物のTPDスペクトルデータである。 図36は、第1の態様の製造方法によりNi(111)単結晶基板を用いた場合のアルゴン水素化反応における生成物のTPDスペクトルデータである。 図37は、Ni(111)単結晶基板を用いた場合のアルゴン水素化物のTPDスペクトルデータを、Pd(111)単結晶基板を用いた場合と対比して示すグラフである。 図38は、Ni(111)単結晶基板を用いた場合のアルゴン水素化物の生成量に対するH 照射量の依存性を示すグラフである。 図39は、第1の態様の製造方法によりNi(111)単結晶基板を用いて製造されたキセノン水素化物のTPDスペクトルを移動平均したデータを示すグラフである。
以下、本開示の貴ガス水素化物及びその製造方法並びに燃料について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本開示の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本開示はそのような実施態様に限定されるものではない。
本開示において、数値範囲を示す「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本開示において段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示に係る燃料において、燃料中の各成分の量は、各成分に該当する物質が燃料中に複数存在する場合、特に断らない限り、燃料中に存在する上記複数の物質の合計量を意味する。
なお、本開示において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
<貴ガス水素化物>
本開示の貴ガス水素化物は、式1で表される新規な化合物である。
なお、貴ガス(noble gas)は、希ガス又は稀ガス(rare gas)とも称される。
Ng ・・・式1
式1において、Ngは、貴ガス原子を表す。
貴ガス原子としては、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等が挙げられる。中でも、好ましい元素は、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、又はクリプトン(Kr)であり、更に好ましくは、He、Ne、又はArである。
式1において、nは1~8の整数を表す。
nは、1~4の整数であってもよく、1~3の整数であってもよく、1~2の整数であってもよい。
式1において、mは1~46の整数を表す。
mは、1~32の整数としてもよく、1~18の整数としてもよい。
上記の中でも、式1は、nが1~3であり、かつ、mが1~18である場合が好ましい。
本開示の貴ガス水素化物としては、例えば、水素化ヘリウム(Hen1、He)、水素化ネオン(Nen1)、水素化アルゴン(Arn1)、水素化クリプトン(Krn1)、水素化キセノン(Xen1)等が含まれる。
なお、各化学式において、mは、式1中のmと同義であり、n1は1又は2を表す。
本開示の貴ガス水素化物は、一種単独での化合物であるほか、貴ガスの種類と数(式1中のn)、又は水素原子数(式1中のm)の異なる分子が複数混在する混合物であってもよい。
貴ガス水素化物が一種単独で存在するものである場合、直接水素化して製造したものでもよいし、混合物等から単離されたものでもよい。
貴ガス水素化物が、貴ガスの種類及び水素原子数の少なくとも一方が異なる分子(水素化物)が複数混在する混合物である場合、各水素化物の液化温度の違いを利用して分離し、単離することも可能である。
貴ガス水素化物が混合物である場合、混合物中における各水素化物の混合比は、製造時の反応条件(例えば、反応物の比率、イオン照射量、温度)によって調節することができる。
本開示の貴ガス水素化物の具体例を以下に示す。
但し、本開示の貴ガス水素化物は、これらの具体例に制限されるものではない。
水素化ヘリウム(Hen1)の場合、mは、1~30が好ましく、1~25であってもよく、1~7であってもよい。
水素化ヘリウムの例としては、HeH、HeH、HeH、HeH、HeH、HeH、HeH、・・・、HeH30、及びHeを挙げることができる。
水素化ネオン(Nen1)の場合、mは、1~29が好ましく、1~23であってもよく、1~9であってもよい。
水素化ネオンの例としては、20NeH、20NeH20NeH20NeH、・・・、NeH29、並びに、22NeH22NeH22NeH22NeH、・・・、22NeH27を挙げることができる。
水素化アルゴン(Arn1)の場合、mは1~46が好ましく、1~32であってもよく、1~18であってもよい。
水素化アルゴンの例としては、ArH、ArH、ArH、ArH、ArH、ArH、・・・、ArH18、・・・、ArH46、及び、Arを挙げることができる。
水素化クリプトン(Krn1)の場合、mは5~7が好ましい。
水素化クリプトンの例としては、KrH、KrH、KrHを挙げることができる。
水素化キセノン(Xen1)の場合、mは1~2が好ましい。
水素化キセノンの例としては、XeH、XeHを挙げることができる。
<貴ガス水素化物の製造方法>
本開示の貴ガス水素化物は、上記の式1を満たす組成を有する化合物が得られる方法であれば、いずれの方法で製造されてもよい。本開示の貴ガス水素化物の製造は、貴ガス原子と水素原子とを、金属又は金属酸化物の表面及び/又は表面近傍(即ち、金属又は金属酸化物の内部)において接触させることで、貴ガスを水素化して水素化物とすることができる方法によることが好ましい。
貴ガスと水素原子とを接触させることで貴ガスの水素化物を得る方法としては、特に制限されるものではないが、以下に示す第1の態様、第2の態様、又は第3の態様に係る製造方法(本開示の貴ガス水素化物の製造方法)がより好適である。
以下、本開示の貴ガス水素化物の製造方法について詳述する。
本開示の貴ガス水素化物の製造方法の第1の態様は、金属又は金属酸化物の表面を貴ガスと接触させて、前記金属又は前記金属酸化物の表面への貴ガス原子の吸着、及び前記金属もしくは前記金属酸化物の内部への貴ガス原子の吸蔵の少なくとも一方を行う工程(以下、貴ガス接触工程)と、前記表面及び前記内部の少なくとも一方に存在する前記貴ガス原子を水素原子と接触させる工程(以下、第1水素化工程)と、を有している。
第1の態様は、まず初めに金属又は金属酸化物に貴ガス原子を存在させた状態とした後に水素原子を接触させて貴ガス水素化物を得るものである。
本開示の貴ガス水素化物の製造方法の第2の態様は、金属又は金属酸化物と水素含有ガスとを接触させ、前記金属又は前記金属酸化物の表面及び内部の少なくとも一方に水素原子を存在させる工程(以下、水素接触工程)と、前記金属又は前記金属酸化物に存在する前記水素原子と貴ガスとを接触させる工程(以下、第2水素化工程)と、を有している。
第2の態様は、まず初めに金属又は金属酸化物に水素原子を存在させた状態とした後に貴ガスを接触させて貴ガス水素化物を得るものである。
本開示の貴ガス水素化物の製造方法の第3の態様は、金属又は金属酸化物の表面に水素含有ガス及び貴ガスをともに供給し、金属又は金属酸化物の表面において水素原子と貴ガス原子とを接触させる工程を有している。
第3の態様は、金属又は金属酸化物に対して、水素原子及び貴ガス原子をともに(好ましくは同時に)接触させて貴ガス水素化物を得るものである。
以下、貴ガス水素化物の製造方法の第1の態様、第2の態様、及び第3の態様について詳述する。
<第1の態様>
貴ガス水素化物の製造方法の第1の態様は、貴ガス接触工程と第1水素化工程とを有し、必要に応じて、他の構成を有してもよい。
第1の態様では、金属又は金属酸化物の例えば表面及び表面近傍(金属又は金属酸化物の表面から金属又は金属酸化物の厚み方向の内部)に貴ガス原子を貯め込み、水素含有ガスを用い、貴ガス原子が貯め込まれた領域を含む表面及びその近傍に、例えば水素含有ガスを接触させることによって金属又は金属酸化物の表面で水素分子が解離することで生成した水素原子を接触させる。これにより、水素原子は金属又は金属酸化物の内部に拡散し、金属又は金属酸化物の例えば表面及びその近傍に貯め込まれた貴ガス原子と反応し、貴ガス水素化物を生成する。
なお、貴ガス原子と水素原子との接触は、真空条件下で行ってもよい。
-貴ガス接触工程-
貴ガス接触工程は、金属又は金属酸化物の表面を貴ガスと接触させて、金属又は金属酸化物の表面への貴ガス原子の吸着、及び金属もしくは金属酸化物の内部への貴ガス原子の吸蔵の少なくとも一方を行う工程である。
金属としては、例えば、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、バナジウム(V)、マグネシウム(Mg)等、及びこれらの合金を挙げることができ、Ni、Cu、及びPdの少なくとも1つを含むことが好ましく、Ni、Cu又はPd、及びこれらの合金がより好ましい。
また、金属酸化物としては、Fe、Co、Ni、Cu、Pd、V、Mg等の酸化物を挙げることができる。金属酸化物の例としては、FeO、Fe、Fe、CoO、Co、Co、NiO、Ni、CuO、CuO、PdO、V、MgO、MgO等が挙げられる。
金属又は金属酸化物の形状としては、特に制限はないが、板形状、ブロック形状、球状、顆粒等が挙げられ、板形状が好ましい。
板形状の厚みについては、特に制限はなく、貴ガス接触工程及び第1水素化工程、並びに後述する水素接触工程及び第2水素化工程等の各工程での処理に耐えることができる範囲で適宜選択すればよい。
貴ガス原子としては、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等が挙げられる。中でも、好ましい元素は、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、又はキセノンであり、更に好ましくは、He、Ne、又はArである。
本開示にいう貴ガス原子は、場合により、イオン化した状態にある場合及びプラズマ状態にある場合のものも包含する意である。
金属又は金属酸化物の表面に貴ガスを接触させる方法の例としては、貴ガスを金属又は金属酸化物の表面にあてる方法、金属又は金属酸化物を貴ガス雰囲気に曝す方法、貴ガスのイオンビームを金属又は金属酸化物の表面に照射する方法、等が挙げられる。
上記のうち、貴ガス元素を基板の内部に貯め込んで吸蔵させた状態を得る観点から、貴ガスのイオンビームを金属又は金属酸化物の表面に照射する方法が好ましい。
金属又は金属酸化物の表面に貴ガスを接触させる際の貴ガスの量は、貴ガスの接触方法に応じて適宜選択すればよい。
例えば、貴ガスのイオンビームを金属又は金属酸化物の表面に照射する場合、貴ガスイオンの照射量(イオン照射量)は、貴ガスの種類、又は水素原子数の調整等の目的などに応じて選択することができる。イオン照射量としては、例えば、1×1013ions/cm~1×1018ions/cmの範囲とすることができ、3×1014ions/cm~2×1017ions/cmが好適である。
イオン照射量は、試料単位面積(cm)あたりのイオン数を電流計により計測して得られる値であり、例えば、三和電気計器株式会社製のデジタルマルチメータPC700を用いて計測することができる。
例えば貴ガスのイオンビームを金属又は金属酸化物の表面に照射する場合、照射される貴ガスイオンが金属又は金属酸化物の表面に入射する角度(入射角)としては、貴ガスイオンが入射し得る深さの観点から、0°~45°が好ましく、0°~15°がより好ましい。
また、例えば貴ガスのイオンビームを金属又は金属酸化物の表面に照射する場合、照射される貴ガスのイオンビームの加速エネルギーとしては、貴ガス元素を基板の内部に埋め込んで吸蔵させた状態を得る観点から、1000V~5000Vが好ましく、1000V~1700Vがより好ましい。
イオンビームの加速エネルギーは、イオンスパッタリング法(イオン衝撃法)でイオンビームを照射する際の電圧を調整することにより適宜調整することができる。
貴ガスを接触させる際の金属又は金属酸化物の温度としては、貴ガス、水素原子、又は貴ガス水素化物の熱脱離を抑制する観点から、50K(ケルビン;以下同じ)~200Kの範囲が好ましく、90K~120Kの範囲がより好ましい。
金属又は金属酸化物の温度は、非接触温度計、熱電対を用いる等して表面の温度を計測することで求められる値である。
貴ガス水素化物の組成(既述のNg(式1)で表される組成)は、例えば下記(1)~(3)によって調整することが可能である。
(1)貴ガスイオンの照射量(イオン照射量)
即ち、水素原子と貴ガス原子との量比を調整することで、金属又は金属酸化物から出てくる貴ガス水素化物の組成を変化させることができる。例えば、貴ガスのイオン照射量の水素原子の量に対する多少により水素化物の生成温度が昇降し、生成される水素化物の組成も変化する。
(2)反応温度
即ち、水素原子と貴ガス原子とが反応する際の反応温度(例えば、金属又は金属酸化物の温度)により、生成される水素化物の組成は変化する。
(3)水素分子又は水素含有ガスの接触量
即ち、金属又は金属酸化物に接触させる水素分子又は水素含有ガスの量を調整することで、反応する水素原子と貴ガス原子の比率を変化させることができる。これにより、生成される水素化物の組成も変化する。
表面への貴ガスの吸着とは、金属又は金属酸化物の表面において、貴ガスと金属又は金属酸化物との間のファンデルワールス力により貴ガスが表面に付着している状態をいう。
金属もしくは金属酸化物の内部への貴ガス原子の吸蔵とは、貴ガス原子が金属又は金属酸化物の内部に入り込んで貯まっている状態をいう。
例えば、金属又は金属酸化物に貴ガスイオン(例えばArイオン)が照射され、金属もしくは金属酸化物の内部に中性化した貴ガス原子(例えばAr原子)が入り込んで貴ガスが凝集したバブリング領域(例えばArナノバブル)が形成されている状態であってもよい。貴ガスの照射は、イオンスパッタリングにより行うことができる。貴ガスの照射領域には、金属又は金属酸化物の表面から内部方向に貴ガスイオンが入り込んで凝集して形成された貴ガス原子のナノバブル構造が形成され、ナノバブル構造により歪みを持った表面が現れて突起が生じる。
ナノバブル構造は、走査型トンネル顕微鏡(STM)を用いた局所的な表面観察により確認することができる。
貴ガスの吸着及び吸蔵の状態は、昇温脱離法(Temperature Programmed Desorption:TPD)により確認することができる。
貴ガスが金属又は金属酸化物の表面に吸着する場合、吸着している貴ガス原子の量としては、貴ガス原子の水素化のしやすさの観点から、被覆率(即ち、表面の原子数に対する吸着種(貴ガス原子)の数の比率)が、0.1~0.9であることが好ましく、0.2~0.8であることがより好ましい。
また、金属又は金属酸化物の内部に吸蔵する場合、吸蔵している貴ガス原子の量としては、貴ガス原子の水素化のしやすさの観点から、イオン照射量の場合で1×1013ions/cm~1×1018ions/cmが好ましく、3×1014ions/cm~2×1017ions/cmがより好ましい。
金属又は金属酸化物に吸着又は吸蔵している貴ガス原子の量は、昇温脱離法(TPD)により計測される値である。
-第1水素化工程-
第1水素化工程は、金属又は金属酸化物の表面及び内部の少なくとも一方に存在する貴ガス原子を水素原子と接触させる工程である。
貴ガス原子と水素原子とを接触させる方法は、金属又は金属酸化物に存在する貴ガス原子に水素原子を作用させ得る方法であればよい。
例えば、貴ガス原子が存在する金属又は金属酸化物に水素含有ガスを直接あて、金属又は金属酸化物の表面で水素含有ガス中の水素分子が解離して生じた水素原子と貴ガスとを接触させる方法でもよい。このように、水素原子は、金属又は金属酸化物を水素含有ガスと接触させることにより生成されるものであることが好ましい。
また、例えば、あらかじめ水素分子を解離させる等して得た水素原子を、貴ガス原子が存在する金属又は金属酸化物にあてることで水素原子と貴ガスとを接触させる方法としてもよい。あらかじめ水素分子を解離させる場合、加熱した金属フィラメントに水素含有ガスを接触させることで水素分子を解離させてもよい。
また、例えば、水素分子を、加熱した金属フィラメントからの電子線により水素分子イオンH とし、H に電場をかけて加速し、これを貴ガス原子が存在する金属又は金属酸化物に照射することで、水素原子と貴ガスとを接触させる方法としてもよい。
水素含有ガスは、水素を含有するガス(気体)であればよく、水素のみからなるガスでもよいし、水素と他の気体成分(例えば、窒素、二酸化炭素)が混在する混合ガスであってもよい。混合ガスの場合、混合ガス中の水素の含有比率は、全体積に対して、50%以上であることが好ましく、80%以上がより好ましく、95%以上が更に好ましく、98%以上が特に好ましい。
貴ガスと水素原子とを接触させる際の水素原子の量(水素暴露量)は、水素原子の接触方法に応じて適宜選択すればよく、表面を水素分子(H)に暴露する場合は、1000L~10000Lの範囲とすることができ、1000L~5000Lの範囲が好適である。
なお、1L(Langmuir)は、10-6Torr・sであり、1Torr=133.3Paである(以下、同様である)。
水素曝露量は、水素を曝露した曝露時間と電離真空計で計測した圧力値の積から求められる値であり、例えば、AML社製のAIG17Gを用いて計測することができる。
貴ガス原子と水素原子との接触の前もしくは後、又は貴ガス原子と水素原子との接触と同時に、金属又は金属酸化物を加熱することが好ましい。金属又は金属酸化物を加熱しておくことにより、水素分子の解離と水素原子の拡散が生じやすく、結果、貴ガス原子の水素化をより良好に行わせることができる。貴ガス原子と水素原子とを接触させる際の金属又は金属酸化物の温度としては、水素分子の解離吸着と水素原子の拡散のしやすさの観点から、50K~500Kの範囲が好ましく、90K~120Kの範囲がより好ましい。
金属又は金属酸化物の温度は、非接触温度計、熱電対を用いる等して表面の温度を計測することで求められる値である。
<第2の態様>
貴ガス水素化物の製造方法の第2の態様は、水素接触工程と第2水素化工程とを有し、必要に応じて、他の構成を有してもよい。
第2の態様では、第1の態様とは逆に、金属又は金属酸化物の例えば表面及びその近傍(表面から厚み方向の内部)に水素原子を貯め込み、貴ガスを付与し、水素原子が貯め込まれた領域を含む表面及びその近傍に貴ガスを接触させる。これにより、貴ガス原子は金属又は金属酸化物の内部に拡散し、金属又は金属酸化物の例えば表面及びその近傍に貯め込まれた水素原子と反応し、貴ガス水素化物を生成する。
-水素接触工程-
水素接触工程は、金属又は金属酸化物と水素原子とを接触させ、金属又は金属酸化物の表面及び内部の少なくとも一方に水素原子を存在させる工程である。
なお、金属及び金属酸化物、並びに貴ガスの詳細については、既述の第1の態様における場合と同様であり、好ましい態様も同様であるので、ここでの説明を省略する。
金属又は金属酸化物と水素原子とを接触させる方法は、金属又は金属酸化物の表面又は内部に水素原子を存在させることができる方法であればよい。
例えば、あらかじめ水素分子を解離させる等して得た水素原子を、金属又は金属酸化物にあてることで、水素原子を金属又は金属酸化物の表面又は内部に存在させる方法としてもよい。
あらかじめ水素分子を解離させる場合、加熱した金属フィラメントに水素含有ガスを接触させることで水素分子を解離させて水素原子を得てもよい。
水素原子を、金属又は金属酸化物にあてる方法としては、RF放電(例えば、株式会社パスカル製の活性原子/ラジカルビーム源PAR-114-20-AS)又はECR(Electron Cyclotron Resonance)方式を用いた水素原子ビーム発生装置(例えば、アドキャップバキュームテクノロジー社製のアトムソース)を用いる方法でもよい。
金属又は金属酸化物の表面及び内部に存在する水素原子の量としては、貴ガス原子の水素化のしやすさの観点から、被覆率(即ち、表面の原子数に対する吸着種(水素原子)の数の比率)が、1~10の範囲としてもよく、1~5の範囲としてもよく、1~2の範囲が好適である。
金属又は金属酸化物に存在する水素原子の量は、昇温脱離法(TPD)により計測される値である。
-第2水素化工程-
第2水素化工程は、金属又は金属酸化物に存在する水素原子と貴ガスとを接触させる工程である。
水素原子と貴ガスとを接触させる方法は、金属又は金属酸化物に存在する水素原子に貴ガスを作用させ得る方法であればよい。
例えば、水素原子が存在する金属又は金属酸化物に貴ガスを送って直接あてる方法でもよい。
水素原子と貴ガスとを接触させる際の貴ガスの量(貴ガス曝露量)は、1L~100Lの範囲とすることができ、1L~10Lの範囲が好適である。なお、1L(Langmuir)は、10-6Torr・sである。
貴ガス曝露量は、電離真空計により求められ、例えば、AML社製のAIG17Gを用いて計測することができる。
水素原子と貴ガスとの接触の前もしくは後、又は水素原子と貴ガスとの接触と同時に、金属又は金属酸化物を加熱することが好ましい。金属又は金属酸化物を加熱することにより、貴ガス原子の水素化を良好に行わせることができる。水素原子と貴ガスとを接触させる際の金属又は金属酸化物の温度としては、水素分子の解離吸着と水素原子の拡散のしやすさの観点から、50K~500Kの範囲が好ましく、80K~120Kの範囲がより好ましい。
金属又は金属酸化物の温度は、非接触温度計、熱電対を用いる等して表面の温度を計測することで求められる値である。
<第3の態様>
貴ガス水素化物の製造方法の第3の態様は、金属又は金属酸化物の表面に水素含有ガス及び貴ガスをともに供給し、金属又は金属酸化物の表面において水素原子と貴ガス原子とを接触させる工程を有し、必要に応じて、他の構成を有してもよい。
なお、金属及び金属酸化物、貴ガスの詳細については、既述の第1の態様における場合と同様であり、好ましい態様も同様であるので、ここでの説明を省略する。
金属又は金属酸化物の表面において水素原子と貴ガス原子とを接触させる方法については、金属又は金属酸化物の表面に水素原子を接触させる方法、及び金属又は金属酸化物の表面に貴ガスを接触させる方法を、既述の第1の態様又は第2の態様における場合と同様に採用することで行える。
第3の態様において、貴ガスのイオンビームを水素含有ガスとともに金属又は金属酸化物の表面に照射する場合、貴ガスイオンの流束は、貴ガスの種類、又は水素分圧とのバランスをみて適宜選択することができ、例えば、2×1013ions/cm・s程度が好適である。
本開示の貴ガス水素化物の製造方法は、更に、上記以外の他の工程を有してもよい。
他の工程としては、例えば、表面清浄工程が挙げられる。
本開示では、水素原子と貴ガスの吸着と吸蔵の不純物による阻害の防止の観点から、金属又は金属酸化物を清浄する表面清浄工程を有することが好ましい。
-表面清浄工程-
表面清浄工程は、金属又は金属酸化物の、貴ガス原子と水素原子とを反応させて水素化物を得る反応面となる表面の少なくとも一部を清浄する工程である。
金属又は金属酸化物の表面を清浄する方法としては、例えば、イオンスパッタリング、熱処理(アニーリング、フラッシングなど)、酸素処理及びこれらの2以上を組み合わせた方法などが挙げられる。
イオンスパッタリングは、イオンスパッタリング法によって貴ガスイオンを金属又は金属酸化物に対して照射することで表面清浄する方法である。貴ガスイオンの生成に用いる貴ガスとしては、既述の貴ガスが用いられる。中でも、アルゴンが好ましい。
貴ガスイオンが金属又は金属酸化物の表面に入射する角度(入射角)は、エッチングレートの観点から、30°~80°が好ましく、40°~70°がより好ましい。
貴ガスイオンを照射する際に照射するイオンビームの加速エネルギーは、貴ガス原子が侵入する深さの観点から、500V~2000Vが好ましく、1000V~1500Vがより好ましい。
イオンビームの加速エネルギーは、イオンスパッタリング法でイオンビームを照射する際の電圧を調整することにより適宜調整することができる。
貴ガスイオンを照射する際の金属又は金属酸化物の温度は、表面と表面近傍の原子の拡散と再配列を促進する観点から、600K~1000Kが好ましく、700K~900Kがより好ましい。
金属又は金属酸化物の温度は、非接触温度計、熱電対を用いる等して表面の温度を計測することで求められる値である。
熱処理(アニーリング)は、金属又は金属酸化物を高温加熱して平坦化する方法である。
アニーリングは、通電加熱、フィラメントによる電子衝撃加熱、オーブン、赤外線ヒータ、焼成炉等の加熱器を用い、金属又は金属酸化物を直接又は間接的に加熱することにより行うことができる。
アニーリング時の加熱温度としては、500K~2000Kとすることができ、800K~1000Kがより好ましい。
熱処理(フラッシング)は、金属又は金属酸化物の表面を高温加熱して不純物を脱離させることにより清浄化する方法である。
フラッシングは、通電加熱、フィラメントによる電子衝撃加熱、オーブン、赤外線ヒータ、焼成炉等の加熱器を用い、金属又は金属酸化物を直接又は間接的に高温加熱することにより行うことができる。
フラッシングする際の金属又は金属酸化物の温度としては、700K~2000Kが好ましく、1000K~1500Kがより好ましい。
本開示の貴ガス水素化物が製造されたことの確認は、昇温脱離法(Temperature Programmed Desorption:TPD)によって、一定速度で金属又は金属酸化物を昇温させた際に金属又は金属酸化物の表面から脱離する生成分子(生成物)を四重極質量分析計(QMS)を用いて検出し、特定の質量電荷比(m/e)におけるQMSの信号を、金属又は金属酸化物の温度に対してプロットして得られるTPDスペクトルのピーク波形により同定することで行える。
<燃料>
本開示の燃料は、既述の本開示の貴ガス水素化物を含む。
本開示の燃料は、貴ガス水素化物のほか、必要に応じて、他の成分が含まれていてもよい。
本開示の貴ガス水素化物は、そのままの状態で燃焼反応に供することが可能であり、水素を取り出して水素利用に供することも可能である。
また、本開示の貴ガス水素化物は、以下の点で燃料として好適である。
(1)1分子あたりの水素原子数が多いため、より多くのエネルギーを発現し得る。
(2)貴ガスのうち、例えばアルゴンは自然界に豊富に存在し安価であるので、化石燃料の代替燃料として有用である。
(3)貴ガス水素化物は、酸素存在下で燃焼した場合に発生する成分は水と貴ガスのみであるため、地球環境に適したクリーンな燃料として有用である。
(4)本開示の貴ガス水素化物は室温(25℃)以上でも生成することから、熱的安定性が良好であり、燃料としての安全性に優れている。
(5)貴ガス水素化物の分子サイズが、水素分子に比べて大きいため、貯留時における貯留容器からの漏れが生じにくく、安全性に優れている。
貴ガス水素化物の燃料中における含有比率としては、特に制限されるものではなく、燃料の全質量に対して、10質量%~100質量%の範囲とすることができる。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1):第1の態様に基づく例
-1.1.準備-
(1)超高真空装置
特注二槽式超高真空装置、Vacuum Generators社製(英国;Christoph Rakete、ベルリン自由大学物理学科博士論文(2003年)参照)
(2)分析機器
イ.反応生成物の分析:
四重極質量分析計(Quadrupole Mass Spectrometer:QMS、HIDEN Analytical社(英国)、HAL/3F RC 301 PIC System)
ロ.基板表面の構造と組成の分析:
低速電子線回折(Low Energy Electron Diffraction:LEED)/オージェ電子分光法(Auger Electron Spectroscopy:AES)装置(SPECS社(独国)、ErLEED 150)
(3)貴ガスのイオンビーム照射
イオンソース(SPECS社(独国)、IQE11/35)
(4)ガスの導入方法
反応物のガスは、バリアブルリークバルブで分圧を調整して導入した。
-1.2.基板-
Pd(111)単結晶基板(MaTeck社、直径10mmφ、厚さ2mm)
Pd(111)単結晶基板は、Pd単結晶の基板であり、対象面が単結晶の(111)面であることを意味する。
基板は、クライオスタットの先端のサンプルホルダーに取り付け、液体窒素によって約100Kまで冷却して用いた。
また、基板の背面にフィラメントを設置し、フィラメントによる電子衝撃加熱により1250Kまで加熱可能であることを確認した。このとき、基板の表面温度をE型(クロメル-コンスタンタン、NiCr-CuNi)熱電対(直径0.08mm)にて測定した。
-1.3.試料ガス-
貴ガスの水素化物の合成に用いた試料ガスの純度は、次の通りである。
ヘリウム:99.995%
ネオン:99.999%
アルゴン:99.9999%
クリプトン:99.999%
水素(H):99.995%
重水素(D):99.995%。
-2.1.実験操作-
貴ガスの水素化物の合成を、到達真空度を1×10-10Torr以下とした超高真空装置内で行った。貴ガスの水素化物の合成手順は、次の通りである。
(1)Pd(111)単結晶基板の表面清浄化
Pd(111)単結晶基板の表面に、基板温度800Kでイオンスパッタリング法によりアルゴンイオンを照射した後、1200Kで短時間の加熱(フラッシング)を行い、更に1000Kで数分間アニーリングを行うことで、基板表面を清浄化した。
基板の加熱には、電子衝撃法を用いた。
なお、条件はそれぞれ下記の通りである。
<イオンスパッタリング条件>
貴ガス種:アルゴン
イオンビーム加速エネルギー:500V又は1000V
入射角:45°
基板の表面温度:800K(ケルビン)
<アニーリング条件>
加熱温度:1000K
<フラッシング条件>
加熱温度:1200K
(2)貴ガスイオンの基板表面への照射
続いて、上記清浄化を終えたPd(111)単結晶基板の表面に、イオンスパッタリング法により所望とする貴ガスイオンを下記条件にて照射した。
<照射条件>
貴ガスのイオンビーム照射
イオンビームの加速エネルギー:1000V
入射角:0°
イオン照射量:3×1014~2×1017ions/cm
基板の表面温度:100K
貴ガスの種類:ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)
貴ガスイオンが照射されたPd(111)単結晶基板の(111)面の表面構造を、上記のLEED/AES装置(SPECS社、ErLEED 150)により分析した。
結果、基板の(111)面から内部方向にArイオンが入り込んで凝集し、Arのナノバブル構造が形成され、(111)面の隆起に伴う格子間隔の伸長が生じていることを確認した。また、(111)面及びArイオンビームが照射された領域の基板内部において、それぞれAr原子が存在することを昇温脱離法(TPD)により確認した。
また、Ar原子の吸蔵量は、イオン照射量換算で1cmあたり1×1015個程度であった。
(3)水素原子の吸着及び吸蔵
次に、貴ガスイオンが照射されたPd(111)単結晶基板の表面に対し、バリアブルリークバルブからガスを導入することによって、下記条件で水素ガス(H又はD)をあてることで、基板における貴ガス原子を水素原子と反応させ、水素原子の吸着及び吸蔵を試みた。
<水素の吸着/吸蔵条件>
水素曝露量:5000L(1L(Langmuir)=10-6Torr・s)
基板の表面温度:115K
(4)反応生成物の検出
昇温脱離(Temperature Programmed Desorption:TPD)法によって、一定速度で基板を昇温させた際に基板の表面から脱離する生成分子(生成物)を四重極質量分析計(QMS)を用いて検出した。QMSの信号を基板温度に対してプロットすることで、TPDスペクトルを得た。
また、ネオンの同位体(20Ne、22Ne)の有無は、QMSにて確認した。
なお、上記検出にあたり、必要に応じて、四重極質量分析計(QMS)の校正のため、一定の貴ガス分圧下で信号強度の測定を行った。
-2.2.実験データ-
図1~図23に、水素化ヘリウム、水素化ネオン、及び水素化アルゴン、及び水素化クリプトンのTPDスペクトルデータをそれぞれ示す。
なお、図1~図23は、水素化物ごとに質量電荷比(m/e;m:Ngの質量、e:Ngの電荷)の順で記載されており、軽水素(H)、重水素(D)、及びイオン照射量にて分類されている。
図1~図7に示す結果から、昇温脱離法による測定でピークが確認された質量電荷比に対応する水素化ヘリウム(HeH)が生成されていることが確認された。
図8~図14に示す結果から、昇温脱離法による測定でピークが確認された質量電荷比に対応する水素化ネオン(NeH)が生成されていることが確認された。
図15~図22に示す結果から、昇温脱離法による測定でピークが確認された質量電荷比に対応する水素化アルゴン(ArH)が生成されていることが確認された。
図23に示す結果から、昇温脱離法による測定でピークが確認された質量電荷比に対応する水素化クリプトン(KrH)が生成されていることが確認された。
上記のようにして生成した水素化物Ng(Ng:貴ガス原子(He、Ne、Ar、Kr)、H:水素原子、n:貴ガス原子数、m:水素原子数)は、いずれも水素原子数の異なる分子の混合物であった。
なお、ネオン水素化物には、ネオンの同位体(20Ne、22Ne)の水素化物が含まれていた。この水素化物の比率は、自然界に存在する20Neと22Neの存在比に近似した結果が得られた。
(実施例2):第2の態様に基づく例
実施例1において、(2)貴ガスイオンの基板表面への照射及び(3)水素原子の吸着及び吸蔵の順序を逆転したこと(水素曝露量:5000L(基板の表面温度115K)、Arイオン照射量:3×1014ions/cm(基板の表面温度100K))以外は、実施例1と同様の操作を行い、かつ、反応生成物の検出を行った。
図24に、水素化アルゴンのTPDスペクトルデータを示す。
図24に示す結果から、昇温脱離法による測定でピークが確認された質量電荷比に対応する水素化アルゴン(ArH)が生成されていることが確認された。
(実施例3):第3の態様に基づく例
実施例1において、(2)貴ガスイオンの基板表面への照射及び(3)水素原子の吸着及び吸蔵を、下記の操作aに代えたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、かつ、反応生成物の検出を行った。
図25に、水素化アルゴンのTPDスペクトルデータを示す。
図25に示す結果から、昇温脱離法による測定でピークが確認された質量電荷比に対応するArD(m/e=48)が生成されていることが確認された。
<操作a>
清浄化を終えたPd(111)単結晶基板の表面に、イオンスパッタリング法により所望とする貴ガスイオンを下記の「照射条件」にて照射すると同時に、バリアブルリークバルブからガスを導入することによって下記の「水素の吸着/吸蔵条件」にて重水素ガス(D)をあてることにより、基板の表面において貴ガス原子と水素原子と反応させた。
<照射条件>
貴ガスのイオンビーム照射
イオンビームの加速エネルギー:1000V
入射角:0°
イオン照射量:2×1016ions/cm
基板の表面温度:115K
貴ガスの種類:アルゴン(Ar)
<水素の吸着/吸蔵条件>
水素曝露量:5000L(1L(Langmuir)=10-6Torr・s)
基板の表面温度:115K
(実施例4):第1の態様に基づく例
実施例1と同様にして、装置等を準備し、基板及び試料ガスを用意し、実施例1において、Pd(111)単結晶基板をNi(111)単結晶基板に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、アルゴン(Ar)の水素化物の合成を、到達真空度を1×10-10Torr以下とした超高真空装置内で行った。
-1.1.実験操作-
アルゴン(Ar)の水素化物の合成手順は、次の通りである。
(1)Ni(111)単結晶基板の表面清浄化
Ni(111)単結晶基板の表面に、基板温度300Kでイオンスパッタリング法によりアルゴン(Ar)イオンを照射した後、1000Kで数分間アニーリングを行い、更に1200Kで短時間の加熱(フラッシング)を行うことで、基板表面を清浄化した。
基板の加熱には、電子衝撃法を用いた。
なお、イオンスパッタリング条件、アニーリング条件、及びフラッシング条件は、実施例1と同様とした。
(2)アルゴン(Ar)イオンの基板表面への照射
続いて、上記清浄化を終えたNi(111)単結晶基板の表面に、イオンスパッタリング法によりArイオン(Ar)を下記Ar照射条件にて照射した。
<Ar照射条件>
Arのイオンビーム照射
イオンビームの加速エネルギー:1000V
入射角:0°
イオン照射量:2×1016ions/cm
基板の表面温度:300K
Arイオンが照射されたNi(111)単結晶基板の(111)面の基板内部において、Ar原子が存在することを昇温脱離法(TPD)により確認した。
また、Ar原子の吸蔵量は、イオン照射量換算で1cmあたり1×1015個程度であった。
(3)水素原子の吸着及び吸蔵
次に、Arイオンが照射されたNi(111)単結晶基板の表面に対し、以下のH 照射条件1で水素分子イオン(H )のイオンビームをあてることで、基板に水素原子を吸蔵させ、及び、水素原子を既に吸蔵された貴ガス原子と反応させた。
<H 照射条件1>
水素分子イオン(H )のイオンビーム照射
イオンビームの加速エネルギー:200V
入射角:0°
イオン照射量:2×1016ions/cm
基板の表面温度:90K
(4)反応生成物の検出
昇温脱離(TPD)法によって、一定速度で基板を昇温させた際に基板の表面から脱離する生成分子(生成物)を四重極質量分析計(QMS)を用いて検出した。QMSの信号を基板温度に対してプロットすることで、TPDスペクトルを得た。なお、上記検出にあたり、必要に応じて、四重極質量分析計(QMS)の校正のため、一定の貴ガス分圧下で信号強度の測定を行った。
-1.2.実験データ-
図26~図36に、アルゴン水素化反応における生成物のTPDスペクトルデータを示す。なお、図26~図36は、質量電荷比(m/e(原子質量単位:amu);m:Ngの質量、e:Ngの電荷)の順で記載されている。
図26~図36に示す結果から、昇温脱離法による測定でピークが確認された質量電荷比に対応する水素化アルゴン(ArH)が生成されていることが確認された。
また、図37に、Pd(111)単結晶基板を用いた場合とNi(111)単結晶基板を用いた場合とにおけるArHのTPDスペクトルを対比して示す。
図37の結果から、Ni(111)単結晶基板を用いた場合にも水素化アルゴンの生成が認められ、Pd(111)単結晶基板を用いた場合とNi(111)単結晶基板を用いた場合とでは、ArHが検出される温度が異なることが分かる。
Ni(111)単結晶基板を用いた場合でも、既述のPd(111)単結晶基板を用いた場合と同等以上の貴ガス水素化物(Ng)の収量が得られることが確認された。
上記のようにして生成した水素化物Ng(Ng:貴ガス原子(Ar)、H:水素原子、n:貴ガス原子数、m:水素原子数)は、いずれも水素原子数の異なる分子の混合物であった。
更に、上記において、H のイオンビーム照射条件のうち、加速エネルギーを200Vから80V、500V、1000V、又は5000Vに変更したこと以外は同様に行った場合の質量電荷比(m/e)の水素化アルゴンArHの生成量を比較した。結果を図38に示す。図38に示されるように、H の照射量が1×1016ions/cm程度までは、加速エネルギーによる違いはあまり見られない。しかし、それより大きな照射量では、H の加速エネルギーが80V、200Vの場合に水素化アルゴンの生成量の増加が顕著であることが分かる。H の加速エネルギーを大きくし過ぎると水素原子が基板の表面から深過ぎる位置に入り込み、吸蔵アルゴンとの反応性が逆に低下すると推測される。したがって、H の加速エネルギーとしては、50V~300Vが好ましく、70V~250Vがより好ましい。
(実施例5):第1の態様に基づく例
実施例4において、「(2)アルゴン(Ar)イオンの基板表面への照射」におけるAr照射条件を下記のXe照射条件に変えて、清浄化を終えたNi(111)単結晶基板の表面にイオンスパッタリング法によりキセノン(Xe)イオンを照射し、かつ、「(3)水素原子の吸着及び吸蔵」における「H 照射条件1」を下記の「H 照射条件2」に変えたこと以外は、実施例4と同様にして、キセノン(Xe)の水素化物の合成を、到達真空度を1×10-10Torr以下とした超高真空装置内で行った。
<Xe照射条件>
Xe(純度:99.999%)のイオンビーム照射
イオンビームの加速エネルギー:1000V
入射角:0°
イオン照射量:2×1016ions/cm
基板の表面温度:200K
<H 照射条件2>
水素イオン(H )のイオンビーム照射
イオンビームの加速エネルギー:200V
入射角:0°
イオン照射量:2×1016ions/cm
基板の表面温度:90K
-実験データ-
図39に、水素化キセノンのTPDスペクトルを移動平均したデータを示す。なお、図39は、質量電荷比(m/e(原子質量単位:amu);m:Ngの質量、e:Ngの電荷)の異なる2種を示している。
図39に示す結果から、昇温脱離法による測定でピークが確認された質量電荷比に対応する水素化キセノン(XeH)である136XeH、136XeHが生成されていることが確認された。
上記のようにして生成した水素化物Ng(Ng:貴ガス原子(Xe)、H:水素原子、n:貴ガス原子数、m:水素原子数)は、いずれも水素原子数の異なる分子の混合物であった。
本開示の貴ガス水素化物は、水素を貯蔵する用途に適しており、例えば、燃料などに好適に用いることができる。
本開示の貴ガス水素化物の具体的な用途としては、化学試薬(水素添加剤)、助燃剤(例えば、都市ガスなどへの混合助剤)、超伝導体、金属水素の前駆体、化学レーザーの媒体等が挙げられる。
また、本開示の貴ガス水素化物の製造方法は、苛性ソーダの製造等で副生する水素の資源化、トリチウムの回収、特定の貴ガスの選択的な分離・採集、等に利用することができる。
2019年7月5日に出願された日本出願特願2019-126288の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。

Claims (11)

  1. HeH(m=1~4)
    20 NeH (m=1、4~20)、
    22 NeH (m=1~20)、
    ArH (m=1~6,10,11,13,15~18,27~32)、
    KrH (m=5~7)又は
    XeH (m=1)で表される貴ガス水素化物。
  2. HeH(m=1~4)
    20 NeH (m=1、4~20)、
    22 NeH (m=1~20)、
    ArH (m=1~6,10,11,13,15~18,27~32)、
    KrH (m=5~7)又は
    XeH (m=1)で表される貴ガス水素化物を含む燃料。
  3. 貴ガスのイオンビームをPd基板又はNi基板に照射することで前記Pd基板又は前記Ni基板の表面を貴ガスと接触させて、前記表面への貴ガス原子の吸着、及び前記Pd基板又は前記Ni基板の内部への貴ガス原子の吸蔵の少なくとも一方を行う工程と、
    50K~298Kの温度条件下、前記表面及び前記内部の少なくとも一方に存在する前記貴ガス原子を水素原子と接触させる工程と、
    を有する貴ガス水素化物の製造方法。
  4. 前記水素原子は、前記Pd基板又は前記Ni基板を水素含有ガスと接触させることにより生成させる請求項3に記載の貴ガス水素化物の製造方法。
  5. 50K~298Kの温度条件下、Pd基板又はNi基板と水素含有ガスとを接触させ、前記Pd基板又は前記Ni基板の表面及び内部の少なくとも一方に水素原子を存在させる工程と、
    貴ガスのイオンビームを前記Pd基板又は前記Ni基板に照射することで前記Pd基板又は前記Ni基板の表面及び内部の少なくとも一方に存在する前記水素原子と前記貴ガスとを接触させる工程と、を有する貴ガス水素化物の製造方法。
  6. Pd基板又はNi基板の表面に水素含有ガス及び貴ガスをともに供給し、50K~298Kの温度条件下、前記Pd基板又は前記Ni基板の表面において水素原子と貴ガス原子とを接触させる工程を有し、前記貴ガスを前記Pd基板又は前記Ni基板の表面に供給することが、前記貴ガスのイオンビームを前記Pd基板又は前記Ni基板に照射することを含む貴ガス水素化物の製造方法。
  7. 貴ガス原子が、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、又はキセノンである請求項3~請求項のいずれか1項に記載の貴ガス水素化物の製造方法。
  8. 貴ガス原子もしくは貴ガスと水素原子との接触の前もしくは後、又は貴ガス原子もしくは貴ガスと水素原子との接触と同時に、前記Pd基板又は前記Ni基板を加熱する請求項3~請求項のいずれか1項に記載の貴ガス水素化物の製造方法。
  9. 金属又は金属酸化物と、
    HeH(m=1~4)
    20 NeH (m=1、4~20)、
    22 NeH (m=1~20)、
    ArH (m=1~6,10,11,13,15~18,27~32)、
    KrH (m=5~7)又は
    XeH (m=1)で表される貴ガス水素化物と、を含み、貴ガス水素化物を放出させるための貴ガス水素化物放出材。
  10. 昇温により貴ガス水素化物を放出する請求項に記載の貴ガス水素化物放出材。
  11. 前記金属又は前記金属酸化物の金属が、ニッケル及びパラジウムの少なくとも1つを含む請求項又は請求項10に記載の貴ガス水素化物放出材。
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