JP7454905B2 - 有効成分であるイサブコナゾール又はそのプロドラッグを含有する真菌症治療及び/又は予防剤 - Google Patents

有効成分であるイサブコナゾール又はそのプロドラッグを含有する真菌症治療及び/又は予防剤 Download PDF

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Description

本発明は、有効成分であるイサブコナゾール又はそのプロドラッグを含有する真菌症治療及び/又は予防剤等に関する。
体表に局在する真菌による感染症は表在性真菌症と呼ばれるが、真菌が肺、肝臓、腎臓、脳など体の深部に入り込んで感染を起こすような状態は深在性真菌症と呼ばれている。深在性真菌症は、例えば、臓器移植を受けた後等免疫力が低下している患者に発症することがある感染症である。
日本国内で経験される主な深在性真菌症は、アスペルギルス症、カンジダ症、次いで頻度はかなり落ちるが、クリプトコックス症、ムーコル症などである(非特許文献1)。深在性真菌症における種々の病態は「炎症」そのものであり、起炎性刺激因子を演ずる真菌による生体損傷から身を守る防御反応の「表現」である(非特許文献1)。
侵襲性アスペルギルス症(IA;invasive aspergillosis)は血液領域、特に急性白血病に対する化学療法や造血幹細胞移植における深在性真菌症として最も頻度が高いことが報告されている(非特許文献2)。また、慢性肺アスペルギルス症(CPA;chronic pulmonary aspergillosis)には、単純性肺アスペルギローマ(SPA;simple pulmonary aspergilloma)と慢性進行性肺アスペルギルス症(CPPA;chronic progressive pulmonary aspergillosis)があることも報告されている(非特許文献1)。
深在性真菌症治療に用いられ得る抗真菌薬として、例えば、アムホテリシンB(AMPH-B)、アムホテリシンBリポソーム製剤(L-AMB)、ミコナゾール(MCZ)、フルコナゾール(FLCZ)、ホスフルコナゾール(F-FLCZ)、ボリコナゾール(VRCZ)、イトラコナゾール(ITCZ)、ミカファンギン(MCFG)等が知られている(非特許文献1)。
海外において、新規アゾールであるイサブコナゾールが侵襲性アスペルギルス症(IA)をはじめとする深在性真菌症に対して有効であることが報告されている(非特許文献2)。例えば、侵襲性アスペルギルス症(IA)患者を対象にボリコナゾール(VRCZ)と比較した海外第III相試験において、イサブコナゾールは、有効性において、ボリコナゾール(VRCZ)との非劣性を示した(非特許文献3)。
海外試験において、イサブコナゾールは、プロドラッグであるイサブコナゾニウム硫酸塩として、2日間にわたって、1日3回、イサブコナゾール換算で200mg投与され、その後、1日1回、イサブコナゾール換算で200mg投与されたことが報告されている(非特許文献3~5)。
一方、医薬品の開発は世界的規模で実施されることもあり、一般的に、新薬の世界的規模での開発・承認を目指して企画される治験であって、一つの治験に複数の国の医療機関が参加し、共通の治験実施計画書に基づき、同時並行的に進行する治験は国際共同治験と称される。
日本の厚生労働省は、「国際共同治験に関する基本的な考え方」と題する通知を発行しており、同通知において、外国人での臨床試験結果に基づき設定された推奨用量が日本人での推奨用量であると結論付けすることが困難な場合もみられる、と指摘している(非特許文献7)。
特許第3787307号公報
深在性真菌症の診断・治療ガイドライン(2014)共和企画 Med.Mycol.J.(2016)、Vol.57J、J77-J88 Lancet(2016)、Vol.387、pp760~769 Lancet Infect Dis(2016)、Vol.16、pp828~837 Clin Infect Dis(2016)、Vol.63、pp356~362 CRESEMBA(登録商標)添付文書(2015) 国際共同治験に関する基本的考え方について 薬食審査発第0928010号
本発明の課題は、安全性及び有効性に優れた、日本人真菌症患者へ投与される、有効成分であるイサブコナゾール又はそのプロドラッグを含有する、真菌症治療及び/又は予防剤等を提供することである。
本発明の一態様は、有効成分であるイサブコナゾール又はそのプロドラッグを含有する真菌症治療及び/又は予防剤であって、日本人真菌症患者に対して、負荷投与計画に従って投与され、同投与終了後から12~24時間経過した後、さらに、維持投与計画に従って投与される、真菌症治療及び/又は予防剤、である
(1)負荷投与計画:イサブコナゾール又はそのプロドラッグが、経口投与又は点滴静脈投与により、8時間おきに計6回、1回投与当たりイサブコナゾール換算で200mg投与される投与計画
(2)維持投与計画:イサブコナゾール又はそのプロドラッグが、経口投与又は点滴静脈投与により、1日1回、1回投与当たりイサブコナゾール換算で200mg投与される投与計画。
本発明の一態様は、有効成分であるイサブコナゾール又はそのプロドラッグを日本人真菌症患者に投与することによる真菌症治療及び/又は予防方法であって、負荷投与工程及び維持投与工程を含み、負荷投与工程と維持投与工程の間隔が12~24時間である、真菌症治療及び/又は予防方法;
(1)負荷投与工程:イサブコナゾール又はそのプロドラッグが、経口投与又は点滴静脈投与により、8時間おきに計6回、1回投与当たりイサブコナゾール換算で200mg投与される工程
(2)維持投与工程:イサブコナゾール又はそのプロドラッグが、経口投与又は点滴静脈投与により、1日1回、1回投与当たりイサブコナゾール換算で200mg投与される工程
すなわち、本発明は、以下の発明等に関する。
[1]有効成分であるイサブコナゾール又はそのプロドラッグを含有する真菌症治療及び/又は予防剤であって、日本人真菌症患者に対して、負荷投与計画に従って投与され、同投与終了後から12~24時間経過した後、さらに、維持投与計画に従って投与される、真菌症治療及び/又は予防剤;
(1)負荷投与計画:イサブコナゾール又はそのプロドラッグが、経口投与又は点滴静脈投与により、8時間おきに計6回、1回投与当たりイサブコナゾール換算で200mg投与される投与計画
(2)維持投与計画:イサブコナゾール又はそのプロドラッグが、経口投与又は点滴静脈投与により、1日1回、1回投与当たりイサブコナゾール換算で200mg投与される投与計画。
[2]イサブコナゾールのプロドラッグが、イサブコナゾニウム硫酸塩である、前記[1]に記載の真菌症治療及び/又は予防剤。
[3]真菌症が深在性真菌症である、前記[1]又は前記[2]に記載の真菌症治療及び/又は予防剤。
[4]真菌症が、アスペルギルス症、ムーコル症、又は、クリプトコックス症である、前記[1]~[3]のいずれかに記載の真菌症治療及び/又は予防剤。
[5]日本人真菌症患者が男性患者である、前記[1]~[4]のいずれかに記載の真菌症治療及び/又は予防剤。
[6]日本人真菌症患者の年齢が66歳~75歳である、前記[1]~[5]のいずれかに記載の真菌症治療及び/又は予防剤。
[7]有効成分であるイサブコナゾール又はそのプロドラッグを日本人真菌症患者に投与することによる真菌症治療及び/又は予防方法であって、負荷投与工程及び維持投与工程を含み、負荷投与工程と維持投与工程の間隔が12~24時間である、真菌症治療及び/又は予防方法;
(1)負荷投与工程:イサブコナゾール又はそのプロドラッグが、経口投与又は点滴静脈投与により、8時間おきに計6回、1回投与当たりイサブコナゾール換算で200mg投与される工程
(2)維持投与工程:イサブコナゾール又はそのプロドラッグが、経口投与又は点滴静脈投与により、1日1回、1回投与当たりイサブコナゾール換算で200mg投与される工程
[8]イサブコナゾールのプロドラッグが、イサブコナゾニウム硫酸塩である、[7]に記載の真菌症治療及び/又は予防方法。
[9]真菌症が深在性真菌症である、前記[7]又は前記[8]に記載の真菌症治療及び/又は予防方法。
[10]真菌症が、アスペルギルス症、ムーコル症、又は、クリプトコックス症である、前記[7]~[9]のいずれかに記載の真菌症治療及び/又は予防方法。
[11]日本人真菌症患者が男性患者である、前記[7]~[10]のいずれかに記載の真菌症治療及び/又は予防方法。
[12]日本人真菌症患者の年齢が66歳~75歳である、前記[7]~[11]のいずれかに記載の真菌症治療及び/又は予防方法。
図1は、治験の内容を示す。
1.有効成分
本発明において、イサブコナゾールとは、下記式(I)で示される化合物を意味する。
本発明において、イサブコナゾールは有効成分である。
イサブコナゾールは、Isavuconazoleやアイサブコナゾールと称されることもある。イサブコナゾールのCAS番号は241479-67-4である。米国において、イサブコナゾールのプロドラッグであるイサブコナゾニウム硫酸塩を含有する製剤が臨床応用されている(非特許文献6)。イサブコナゾニウム硫酸塩は、下記式(II)で示される化合物である。イサブコナゾニウム硫酸塩は、生体内で加水分解され、イサブコナゾールとなり得る。イサブコナゾニウム硫酸塩のCAS番号は946075-13-4である。
イサブコナゾール又はそのプロドラッグは自体公知の方法で製造又は調製できる(特許文献1、非特許文献6等)。イサブコナゾールのプロドラッグとして、イサブコナゾニウム硫酸塩を好ましく挙げることができる。
2.真菌症
真菌症は、白癬など感染部位が体表に限局される表在性真菌症と、肺や腎臓、中枢神経系など体の深部に真菌が侵入し感染を引き起こす深在性真菌症に大別され得る。
主要な深在性真菌症は、アスペルギルス症、カンジダ症、次いで頻度は落ちるが、クリプトコックス症、ムーコル症などである。深在性真菌症には、組織への侵襲を伴い急速に症状が進行する侵襲性のものと、緩徐に進行し、増悪、寛解を繰り返す慢性のものが存在する。侵襲性深在性真菌症として、例えば、侵襲性アスペルギルス症(IA;invasive aspergillosis)が知られている。慢性深在性真菌症として、例えば、慢性肺アスペルギルス症(CPA;chronic pulmonary aspergillosis)が知られている。
本発明に係る真菌症は特に限定されないが、深在性真菌症であることが好ましい。本発明に係る深在性真菌症も特に限定されるものではないが、アスペルギルス症、ムーコル症、又は、クリプトコックス症であることが好ましい。本発明に係るアスペルギルス症として、例えば、侵襲性アスペルギルス症、単純性肺アスペルギローマ(SPA;simple pulmonary aspergilloma)、慢性進行性肺アスペルギルス症(CPPA;chronic progressive pulmonary aspergillosis)が好ましく例示される。本発明に係るクリプトコックス症として、播種性クリプトコックス症、肺クリプトコックス症、クリプトコックス脳髄膜炎が好ましく例示される。
深在性真菌症の診断は、臨床医など当業者であれば、適切に実施可能である。確定診断法として、例えば、培養検査法、顕微鏡検査法、病理組織学的診断法が挙げられ、補助診断法として、血清診断、遺伝子診断、画像診断、抗真菌薬感受性測定などが例示される。臨床的制約により確定診断法を用いることができない場合、あるいは明確な結果が得られない場合に、補助診断法と臨床情報とを組合せて、暫定的な診断を行うことができる(非特許文献1)。
3.真菌症の治療、予防
本発明に係る深在性真菌症の治療は特に限定されないが、具体的には、深在性真菌症に対する経験的治療や早期推定治療が例示される。本発明に係る深在性真菌症の予防も特に限定されないが、深在性真菌症の発症予防を意味し、例えば、骨髄移植や臓器移植など深在性真菌症発症リスクの高い症例への発症予防を目的とする適応が例示される。
深在性真菌症治療の効果の有無や程度については、臨床医などによって適切に判断なされ得るが、例えば、臨床症状効果の有効率、画像診断効果の有効率、真菌学的効果の消失率、全死因死亡率などによって、治療効果の有無や程度が判断され得る。
例えば、侵襲性アスペルギルス症、ムーコル症及び播種性クリプトコックス症等において、投与開始前の培養・直接鏡検で検出された真菌が投与後に消失した(消失)、あるいは、投与開始前の培養・直接鏡検で検出された真菌が感染巣の消失等により培養用検体の採取が困難であるため消失の根拠はないが、臨床的に感染真菌が消失したと判断された(推定消失)場合、真菌学的効果が有効と判断され得る。
例えば、侵襲性アスペルギルス症、ムーコル症及び播種性クリプトコックス症等において、投与開始前の真菌症による画像所見が投与によって改善した場合、画像診断効果が有効と判断され得る。ここでの改善とは、例えば、画像所見上の病変の長径が50%以上を目安に縮小した場合などを意味する。
4.用法・用量
本発明の真菌症治療及び/又は予防剤は、負荷投与計画に従って投与され、同投与終了後から12~24時間経過した後、さらに、維持投与計画に従って投与される。
本発明の真菌症治療及び/又は予防方法は、負荷投与工程及び維持投与工程を含み、負荷投与工程と維持投与工程の間隔が12~24時間である。
一般的に、負荷投与は、治療開始初期において1回当たりの投与量の増量や1日あたりの投与回数を増やすことにより、早期に目標とする薬剤血中濃度に到達させるための投与設計として理解されている。抗真菌薬の中では、例えば、ボリコナゾールやイトラコナゾールは、負荷投与を要する薬剤として知られている。また、一般的に、維持投与は、所望の薬剤血中濃度を概ね維持することを目的として反復投与される投与設計として理解されている。
本発明の負荷投与計画は、「イサブコナゾール又はそのプロドラッグが、経口投与又は点滴静脈投与により、8時間おきに計6回、1回投与当たりイサブコナゾール換算で200mg投与される投与計画」である。ここで、負荷投与工程とは、負荷投与計画に従う投与の過程を意味する。
本発明の維持投与計画は、「イサブコナゾール又はそのプロドラッグが、経口投与又は点滴静脈投与により、1日1回、1回投与当たりイサブコナゾール換算で200mg投与される投与計画」である。ここで、維持投与工程とは、維持投与計画に従う投与の過程を意味する。
イサブコナゾール又はそのプロドラッグとして、イサブコナゾニウム硫酸塩を使用する場合、イサブコナゾニウム硫酸塩量372.6mgがイサブコナゾール換算で200mgに相当すると理解される。
負荷投与計画に従う投与が終了した後、維持投与計画に従う投与が開始されるまでの期間は、12~24時間である。すなわち、負荷投与工程の終了から維持投与工程の開始までの経過時間が12~24時間である。
本発明の真菌症治療及び/又は予防剤が示す有効性又は安全性の観点から、この経過時間は、14~22時間であることがさらに好ましく、16~20時間であることが最も好ましい。
本発明の負荷投与計画に従う投与の期間又は本発明の維持投与計画に従う投与の期間において、経口投与から点滴静脈投与への変更、あるいは、点滴静脈投与から経口投与への変更は許容される。ただし、本発明の維持投与計画に従う投与の期間において投与経路を変更する場合、点滴静脈投与から経口投与への変更は、経口投与から点滴静脈投与への変更と比べて、より好ましい。
本発明の実施において、イサブコナゾール又はそのプロドラッグを点滴静脈投与する際、その投与による1回あたりの投与の開始から終了までの経過時間は特に限定されないが、1時間以上であることが好ましく、1時間を超過することがさらに好ましい。
5.投与対象
本発明の真菌症治療及び/又は予防剤は、特定の背景を有する真菌症患者に投与されることに1つの特徴を有する。投与対象として、最も典型的には、日本人を挙げることができる。
日本人とは、日本国内に古来より居住してきた、日本列島に起源、祖先、由来等を持つヒトをいい、一般に日本国籍を有する者をいう。
投与対象の性別や年齢は問わないが、男性及び/又は66歳~75歳の者であることが好ましい。男性成人であれば、身長165~175cm程度、女性成人であれば、身長153~163cm程度であることができる。投与対象の体重も特に制限されないが、40kg以上が好ましく、50kg以上であることがさらに好ましい。
投与対象が女性である場合、妊娠していない女性、妊娠の可能性がない女性、適切な避妊をする意思のある女性が好ましい。
5.1.侵襲性アスペルギルス症の治療における投与対象
本発明において、侵襲性アスペルギルス症の治療を指向する際、投与対象は、確定診断により侵襲性アスペルギルス症患者と判断される者、臨床診断により侵襲性アスペルギルス症と判断される者、又は侵襲性アスペルギルス症の可能性を有すると判断される者であることができる。
侵襲性アスペルギルス症の診断において、宿主因子の基準は、(1)発症に関連する遷延性の好中球減少(500/μL未満の期間が10日以上)、(2)同種造血幹細胞移植のレシピエント、(3)プレドニゾロン換算で0.3mg/kg/日以上に相当する副腎皮質ステロイドの3週間以上の使用、(4)過去90日以内の細胞性免疫抑制薬の投与歴、(5)先天性重症免疫不全、であることができる。
侵襲性アスペルギルス症の診断において、臨床的基準は、(1)下気道真菌感染症、(2)気管・気管支炎、(3)副鼻腔感染症、(4)中枢神経感染症、であることができる。
侵襲性アスペルギルス症の診断において、真菌学的基準は、(1)直接的検査(細胞診、直接鏡検、または培養)、(2)間接的検査(アスペルギルス抗原の検出)、であることができる。
確定診断により侵襲性アスペルギルス症患者と判断される投与対象として、
1)投薬前14日以内に得られた本来無菌的である部位から針吸引や生検標本の病理組織学的検査、細胞病理学的検査または直接鏡検において、菌糸を確認するととともに、組織損傷の関連(顕微鏡による確認または画像検査による浸潤や病変の確認)を認める者、又は、
2)投薬前14日以内に本来無菌的な部位または感染症症状と関連して臨床上/放射線画像上の異常がある部位から、無菌的手技によって得られた検体の培養検査で糸状菌(アスペルギルス属)を検出する者、
とすることができる。
臨床診断により侵襲性アスペルギルス症の患者と判断される投与対象として、宿主因子、臨床的基準、及び、真菌学的基準のすべてについて、それぞれ1つ以上満たす者であることができる。
侵襲性アスペルギルス症の可能性を有すると判断される投与対象として、宿主因子および臨床的基準について、それぞれ1つ以上満たす者であることができる。
5.2.慢性肺アスペルギルス症の治療における投与対象
本発明において、慢性肺アスペルギルス症の治療を指向する際、投与対象は、確定診断により慢性肺アスペルギルス症患者と判断される、又は、臨床診断により慢性肺アスペルギルス症と判断される者であることができる。
確定診断により慢性肺アスペルギルス症患者と判断される者として、宿主因子および臨床的基準の両方を満たし、さらに、真菌学的基準のうち「直接的検査」の基準を1つ以上満たす者であることができる。
臨床診断により慢性肺アスペルギルス症患者と判断される者とは、宿主因子および臨床的基準の両方を満たし、さらに、真菌学的基準のうち「間接的検査」の基準を1つ以上満たす者であることができる。
慢性肺アスペルギルス症の診断において、宿主因子は、慢性肺アスペルギルス症のリスク因子(陳旧性肺結核症、COPD、気管支拡張症、空洞性病変、肺非結核性抗酸菌症、間質性肺炎、胸部外科手術の既往等)を有する者であることができる。
慢性肺アスペルギルス症の診断において、臨床的基準は、(1)慢性的な臨床症状を有し、かつ、(2)胸部画像診断(CT)で陰影が見られ、他の原因は否定的と判断される者であることができる。
慢性肺アスペルギルス症の診断において、真菌学的基準は、直接的検査(直接鏡検、培養または病理組織学的検査)、間接的検査(アスペルギルス抗原または抗体の検出)、であることができる。
5.3.ムーコル症の治療における投与対象
本発明において、ムーコル症の治療を指向する際、投与対象は、臨床症状または画像等により真菌感染が強く疑われ、かつ以下のいずれかに該当する者であることができる。
(1)投薬前14日以内に得られた検体の直接鏡検で、ムーコル目の菌要素が確認される、または培養検査でムーコル目が検出される
(2)投薬前14日以内に得られた検体の病理組織学的検査でムーコル目が検出される
5.4.クリプトコックス症の治療における投与対象
本発明において、クリプトコックス症の治療を指向する際、投与対象は、確定診断によりクリプトコックス症患者と判断される、又は、臨床診断によりクリプトコックス症と判断される者であることができる。
クリプトコックス症の診断において、確定診断によりクリプトコックス症患者と判断される者とは、臨床症状または画像等により真菌感染が強く疑われ、さらに真菌学的基準の直接的検査を満たす者であることができる。
クリプトコックス症の診断において臨床診断によりクリプトコックス症患者と判断される者とは、臨床症状または画像等により真菌感染が強く疑われ、さらに真菌学的基準の間接的検査を満たす者であることができる。
クリプトコックス症の診断において、真菌学的基準は、直接的検査(直接鏡検、培養または病理組織学的検査)、間接的検査(クリプトコックス抗原の検出)、であることができる。
6.安全性
一般的に、薬剤を投与された者に生じた全ての好ましくないまたは意図しない疾病やその徴候を有害事象(Adverse event;AE)と称することができる。薬剤投与後に発現した有害事象を特にTEAE(Treatment-emergent adverse event)と称することがある。
有害事象のうち、薬剤との因果関係が否定できないものを副作用と称することができる。ここで、因果関係が否定できないとは、因果関係の合理的な可能性が認められることの他、因果関係の合理的な可能性がないと評価できないことを含む。
有害事象は、「重篤な有害事象」および「非重篤な有害事象」に分類され得る。有害事象の程度は、「軽度」「中等度」「高度」に分類され得る。このような分類は、例えば、臨床試験において、治験責任医師や治験分担医師が当該分野の慣用な方法に従ってなすことができる。
有害事象は、経時的変化の観点から、その転帰を、例えば、回復(recovered/resolved)、軽快(recovering/resolving)、未回復(not recovered/not resolved)、回復したが後遺症あり(recovered/resolved with sequelae)、死亡、不明、と分類することもできる。
ある薬剤と別の薬剤を安全性で比較する場合の方法は、特に制限されず、例えば、ある有害事象に着目し、その発現頻度、重篤性、因果関係、転帰、及び/又は程度に関して比較することもできる。あるいは、有害事象全体やその一部又は副作用全体やその一部に起因する投与中断の観点で、両剤を比較することもできる。有害事象は、臨床検査値やバイタルサインの異常を含むことができる。
有害事象は、特に限定されず、器官別大分類(System Organ Class;SOC)によっても分類され得る。有害事象に係る器官別大分類は、以下のように例示され得る。
1)感染症および寄生虫症
2)胃腸障害
3)筋骨格系および結合組織障害
4)障害、中毒、および処置合併症
5)一般・全身障害および投与部位の状態
6)皮膚および皮下組織障害
7)神経系障害
8)呼吸器、胸郭および縦隔障害
9)眼障害
10)代謝および栄養障害
11)臨床検査
12)良性、悪性および詳細不明の新生物(嚢胞およびポリープを含む)
13)耳および迷路障害
14)心臓障害
15)血管障害
7.製剤
本発明の真菌症治療及び/又は予防剤は、経口投与又は点滴静脈投与が可能である限り、特に限定されず、剤型として、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、経口液剤、シロップ剤、注射剤などを挙げることができる。
本発明の点滴静脈投与用の真菌症治療及び/又は予防剤として、少なくとも、イサブコナゾール又はそのプロドラッグをイサブコナゾール換算で200mg含有する輸液剤、びん針、点滴筒、クランプ、エアベント付き輸液フィルタ、静脈針、及び、輸液チューブを備える点滴静脈投与用輸液セットが好ましく例示される。
本発明の点滴静脈投与用の真菌症治療及び/又は予防剤として、イサブコナゾール又はそのプロドラッグをイサブコナゾール換算で200mg含有する輸液剤を製造するための、イサブコナゾール又はそのプロドラッグを含有する凍結乾燥製剤を好ましく例示できる。同凍結乾燥製剤の組成は特に限定されないが、海外で臨床応用されているイサブコナゾニウム硫酸塩凍結乾燥製剤を参考にすることができる(CRESEMBA(登録商標);非特許文献6)。具体的には、マンニトール、pH調整剤として硫酸を本発明の有効成分と配合し、慣用の方法で、本発明の凍結乾燥製剤を製造することができる。
本発明の真菌症治療及び/又は予防剤をカプセル剤とする場合も、海外で臨床応用されているイサブコナゾニウム硫酸塩製剤を参考にして調製することができる(CRESEMBA(登録商標);非特許文献6)。具体的には、たとえば、慣用の方法を用いて、有効成分及び添加剤(クエン酸マグネシウム、結晶セルロース、タルク、軽質無水ケイ酸、ステアリン酸)を混交し、それらを、ヒプロメロースを主成分とするカプセル基材に充填することで本発明のカプセル剤を製造することができる。
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施例にも束縛されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、任意の形態で実施することが可能である。
1.試験方法
1.1 概要
日本人深在性真菌症に対し、イサブコナゾニウム硫酸塩372.6mg(イサブコナゾール換算で200mg)を静脈内投与または経口投与した場合の安全性および有効性を検討した。本試験(以降、治験と称することもある)の期間は、スクリーニング期、治療期、追跡調査期から構成された(図1)。治療期において、治験薬(イサブコナゾニウム硫酸塩又はボリコナゾール)が最大84日間投与された。投与経路は、静脈内投与または経口投与の2種類より選択され、同一の患者に対して静脈内投与から経口投与への切り替えを可能とした。
投与開始42日目、84日目および治験薬投与終了時(以降、EOT(End Of Treatment)と称する場合がある)の治療効果を、専門医から構成される委員会が盲検下で評価した。治験薬投与終了後28日間を追跡調査期とし、追跡調査期終了までのすべての有害事象を調査した。追跡調査期は、最大、投与開始から112日目までとした。本治験の主要評価項目は、治験薬投与開始から追跡調査期終了までに有害事象を発現した被験者(治験薬が投与された者)の割合とした。
1.2 選択基準
以下の基準(1)~(3)全てを満たした患者を治験の対象とした。
(1)20歳以上の日本人男女
(2)侵襲性アスペルギルス症、慢性肺アスペルギルス症、ムーコル症、又はクリプトコックス症に合致する患者。
(3)女性の場合、妊娠していない女性、妊娠の可能性がない女性、適切な避妊をする意思のある女性
1.3 除外基準
以下の基準(1)~(16)のいずれかに該当する患者を治験の対象から除外した。
(1)妊娠中または授乳中の女性の患者
(2)アゾール系抗真菌薬又は治験薬の成分に過敏症を有する患者
(3)QT/QTc延長のリスクが高い患者又はトルサード・ド・ポアンの危険因子を有する患者
(4)QT短縮症候群の既往を有する患者
(5)登録時に肝機能障害がある者
(6)登録時に中等度から重度の腎機能障害を有する患者
(7)治験薬投与前5日以内にエファビレンツ、リトナビル、リファンピシン、リファブチン、麦角アルカロイド(後述のコホートA対象者のみ除外)、長時間作用型バルビツール酸塩、カルバマゼピン、ピモジド(後述のコホートA対象者のみ除外)、キニジン(後述のコホートA対象者のみ除外)、トリアゾラム(後述のコホートA対象者のみ除外)、オルメサルタン メドキソミル・アゼルニジピン(後述のコホートA対象者のみ除外)またはセイヨウオトギリソウ等による投与を受けた患者
(8)アスペルギルス属、ムーコル目およびクリプトコックス属以外を起因真菌とする患者
(9)治験期間中の生存が困難と考えられる患者
(10)有効性および安全性評価が困難となる基礎疾患、合併症または全身状態を有する患者
(11)深在性真菌症に対してボリコナゾールの投与経験があり、この治療が無効であった患者、または不耐であった患者。もしくは治験薬投与前14日以内にボリコナゾールの投与を受けたすべての患者(後述のコホートA対象者のみ除外)
(12)ボリコナゾール以外の全身性抗真菌薬投与中の患者で、治験薬投与開始までにこれら薬剤の投与を中止できない、またはこれら薬剤により深在性真菌症の症状が改善傾向にある患者
(13)クリプトコックス脳髄膜炎が強く疑われる患者
(14)治験薬投与30日前までに他の治験薬による投与を受けた患者
(15)過去に本治験に参加したことのある患者
(16)その他、治験責任医師または治験分担医師が本治験の実施にあたり不適当と判断した患者
1.4 診断基準
侵襲性アスペルギルス症、慢性肺アスペルギルス症、ムーコル症、又は、クリプトコックス症の診断基準に一致する者を被験者とした。それぞれの真菌症の診断基準は以下の通りとした。
1.4.1 侵襲性アスペルギルス症(コホートA)
(1)確定例
1)治験薬投薬前14日以内に得られた本来無菌的である部位から針吸引や生検標本の病理組織学的検査、細胞病理学的検査または直接鏡検において、菌糸を確認するととともに、組織損傷の関連(顕微鏡による確認または画像検査による浸潤や病変の確認)を認める被験者、又は、
2)治験薬投薬前14日以内に本来無菌的な部位または感染症症状と関連して臨床上/放射線画像上の異常がある部位から、無菌的手技によって得られた検体の培養検査で糸状菌(アスペルギルス属)を検出する被験者
(2)臨床診断例
臨床診断例は、宿主因子、臨床的基準、及び、真菌学的基準のすべてについて、それぞれ1つ以上満たす被験者とした。
(3)可能性例
宿主因子および臨床的基準について、それぞれ1つ以上満たす被験者。ただし、可能性例として登録された被験者のうち、治験薬投与開始後7日以内に、検査により確定例または臨床診断例の基準を満たした場合、確定例または臨床診断例として取り扱った。
侵襲性アスペルギルス症の診断において、宿主因子の基準は、(1)発症に関連する遷延性の好中球減少(500/μL未満の期間が10日以上)、(2)同種造血幹細胞移植のレシピエント、(3)プレドニゾロン換算で0.3mg/kg/日以上に相当する副腎皮質ステロイドの3週間以上の使用、(4)過去90日以内の細胞性免疫抑制薬の投与歴、(5)先天性重症免疫不全、であった。
侵襲性アスペルギルス症の診断において、臨床的基準は、(1)下気道真菌感染症、(2)気管・気管支炎、(3)副鼻腔感染症、(4)中枢神経感染症、であった。
侵襲性アスペルギルス症の診断において、真菌学的基準は、(1)直接的検査(細胞診、直接鏡検、または培養)、(2)間接的検査(アスペルギルス抗原の検出)、であった。
1.4.2 慢性肺アスペルギルス症(コホートA)
(1)確定例
宿主因子および臨床的基準の両方を満たし、さらに、真菌学的基準のうち「直接的検査」の基準を1つ以上満たす被験者
(2)臨床診断例
宿主因子および臨床的基準の両方を満たし、さらに、真菌学的基準のうち「間接的検査」の基準を1つ以上満たす被験者
慢性肺アスペルギルス症の診断において、宿主因子は、慢性肺アスペルギルス症のリスク因子(陳旧性肺結核症、COPD、気管支拡張症、空洞性病変、肺非結核性抗酸菌症、間質性肺炎、胸部外科手術の既往等)を有する者であった。
慢性肺アスペルギルス症の診断において、臨床的基準は、(1)慢性的な臨床症状を有し、かつ、(2)胸部画像診断(CT)で陰影が見られ、他の原因は否定的と判断される被験者であった。
慢性肺アスペルギルス症の診断において、真菌学的基準は、直接的検査(直接鏡検、培養または病理組織学的検査)、間接的検査(アスペルギルス抗原または抗体の検出)であった。
1.4.3 ムーコル症(コホートB)
臨床症状または画像等により真菌感染が強く疑われ、かつ以下のいずれかに該当する被験者であった。
(1)治験薬投与前14日以内に得られた検体の直接鏡検で、ムーコル目の菌要素が確認される、または培養検査でムーコル目が検出される
(2)治験薬投与前14日以内に得られた検体の病理組織学的検査でムーコル目が検出される
1.4.4 クリプトコックス症(コホートB)
(1)確定例
臨床症状または画像等により真菌感染が強く疑われ、さらに真菌学的基準の直接的検査を満たす被験者
(2)臨床診断例
臨床症状または画像等により真菌感染が強く疑われ、さらに真菌学的基準の間接的検査を満たす被験者
クリプトコックス症の診断において、真菌学的基準は、直接的検査(直接鏡検、培養または病理組織学的検査)、間接的検査(アスペルギルス抗原の検出)、であった。
1.5 治験薬
治験薬として被験薬と対照薬を被験者に投与した。
1.5.1 被験薬
被験薬は、静脈内投与用としてイサブコナゾニウム硫酸塩372.6mg(イサブコナゾールとして200mg)を含有する凍結乾燥製剤、経口投与用としてイサブコナゾニウム硫酸塩186.3mg(イサブコナゾールとして100mg)を含有するカプセル製剤が2つからなるカプセル製剤であった。両製剤は慣用の方法により製造された。
1.5.2 対照薬
対照薬は、静脈内投与用としてボリコナゾール200mgを含有する凍結乾燥製剤、経口投与用としてボリコナゾール200mg又は50mgを含有する錠剤であった。これらの製剤は、例えば、ブイフェンド錠200mg又は50mgのように入手容易な製剤であり、適宜に入手して治験において対照薬として利用した。
1.6 治験薬の用法・用量
1.6.1 被験薬の用法・用量
投与1~2日目において負荷投与、その終了後から12~24時間経過後、投与3日目からは維持投与を実施した。
負荷投与は、約8時間おきに計6回(計48時間)なされる投与であって、1回投与あたり、被験薬(凍結乾燥製剤)1バイアルを用時溶解し、同溶解液を点滴静脈注射用容器にいれ、静脈内投与し、又は、被験薬(カプセル剤)2カプセルを経口投与する投与、であった。
維持投与は、1日1回の頻度による投与であって、1回投与あたり、被験薬(凍結乾燥製剤)1バイアルを用時溶解し、同溶解液を点滴静脈注射用容器に入れ、静脈内投与し、又は、被験薬(カプセル剤)2カプセルを経口投与する投与、であった。被験薬(凍結乾燥製剤)1バイアルを静脈内投与する際、最低1時間かけて投与した。凍結乾燥製剤からカプセル剤への切り替えは可能とされたが、カプセル剤から凍結乾燥製剤への切り替えは不可とした。
1.6.2 対照薬の用法・用量
投与1日目において負荷投与、その終了後から12~24時間経過後、投与2日目からは維持投与を実施した。
負荷投与は、約12時間おきに計2回(計24時間)なされる投与であって、1回投与あたり、対照薬(凍結乾燥製剤)を用時溶解し、同溶解液を点滴静脈注射用容器に入れ、6mg/kgの用量で点滴静脈内投与し、又は、対照薬(錠剤)を300mgの用量で経口投与する投与、であった。
維持投与は、1日2回の頻度による投与であって、1回投与あたり、対照薬(凍結乾燥製剤)を用時溶解し、同溶解液を点滴静脈注射用容器に入れ、4mg/kgの用量で静脈内投与し、又は、対照薬(錠剤)を200mgの用量で経口投与する投与、であった。凍結乾燥製剤から錠剤への切り替えは可能とされたが、錠剤から凍結乾燥製剤への切り替えは不可とした。また、被験者の体重、肝機能等により投与量の調節がなされ、必要に応じて血漿中濃度モニタリングを実施した。
1.7 治験薬群とその割付
コホートAにおいて、侵襲性アスペルギルス症の診断基準に一致する被験者と慢性肺アスペルギルス症の診断基準に一致する被験者を治験薬群と対照薬群に無作為に割り付けた。コホートBは、ムーコル症の診断基準に一致する被験者とクリプトコックス症の診断基準に一致する被験者から構成されていた。コホートBの被験者全てを治験薬群とした。
1.8 有効性の評価
有効性評価項目を以下の4項目とした。
(1)DRC(データレビュー委員会)の判定結果に基づく治療有効率(投与42日目、投与84日目およびEOT(治験薬投与終了時)の総合効果の有効率
(2)DRC(データレビュー委員会)の判定(臨床症状効果の有効率、画像診断効果の有効率、真菌学的効果の消失率)
(3)治験責任医師の評価(総合効果の有効率、臨床症状効果の有効率、画像診断効果の有効率、真菌学的効果の消失率)
(4)全死因死亡率等
1.9 安全性の評価
TEAEを発現した被験者の割合(TEAE発現率)を本治験の主要評価項目とした。その他、臨床検査値、バイタルサイン、12誘導心電図などを安全性評価項目とした。
1.9.1 臨床検査項目
臨床検査項目は、血液一般検査(赤血球数、ヘモグロビン、ヘマトクリット、白血球数、白血球分画、血小板数)、血液生化学検査(AST、ALT、γ―GTP、ALP、総ビリルビン、直接ビリルビン、クレアチニンホスホキナーゼ、LDH、血清クレアチニン、BUN、カルシウム、尿酸、電解質、アルブミン、血糖)、尿検査(pH、蛋白、糖、潜血、ウロビリノゲン)とした。
2.試験結果
2.1 解析対象集団
有効性および安全性に関する解析集団(ITT,mITT,SAS)数は表1に記載の通りであった。
コホートA及びコホートBに関する背景は表2の記載の通りであった。コホートAにおいて治験薬群と対照薬群の間で背景に関する大きな違いはなかった。
意図した治療に基づく解析集団(ITT)は、割り付けられた症例のうち、少なくとも1回以上治験薬の投与を受けた全症例とした。修正された意図した治療に基づく解析集団(mITT)は、意図した治療に基づく解析集団(ITT)のうち、DRC判定により深在性真菌症「確定例」もしくは「臨床診断例」とされた全症例とした。安全性に関する解析対象集団(SAS)は、割り付けられた被験者のうち、少なくとも1回以上治験薬の投与を受けた全症例とした。
2.2 被験薬及び対照薬の投与期間
コホートA又はコホートBにおける被験薬群と対照薬群の間で投与期間に大きな違いはなかった(表3)。
2.3 DRC判定による慢性肺アスペルギルス症治療有効率(総合効果の有効率)
投与開始42日目、投与開始84日目、EOT時における慢性肺アスペルギルス症の治療有効率(総合効果の有効率)は表4の通りであり、被験薬は慢性肺アスペルギルス症治療において有効であることが明らかとなった。
前述の通り、侵襲性アスペルギルス症患者を対象にボリコナゾール(VRCZ)と比較した海外第III相試験において、イサブコナゾールは、有効性において、ボリコナゾール(VRCZ)との非劣性を示した(非特許文献3)。
非特許文献3において、DRC判定による侵襲性アスペルギルス症治療有効率(EOT時)が示されており、有効(35%)および無効(65%;ただし、不変と悪化の合計とする)であった(非特許文献3;表2)。本発明においては、DRC判定による慢性肺アスペルギルス症治療有効率(EOT時)は、有効(約83%)および無効(約10%;ただし、不変と悪化の合計とする)であった。以上の結果等に照らし、本発明に係る真菌症治療及び/又は予防剤は有効性の観点において極めて優れていることを表4は示唆していると発明者は考えている。
2.4 DRC判定による侵襲性アスペルギルス症治療有効率(総合効果の有効率)
42日目およびEOT時における侵襲性アスペルギルス症の治療有効率(総合効果の有効率)は表5の通りであり、被験薬は侵襲性アスペルギルス症治療において有効であると考えられた。
非特許文献3において、DRC判定による侵襲性アスペルギルス症治療有効率(EOT時)が示されており、無効(65%;ただし、不変と悪化の合計とする)であった(非特許文献3;表2)。本発明においては、DRC判定による侵襲性アスペルギルス症治療有効率(EOT時)は、無効(約33%;ただし、不変と悪化の合計とする)であった。以上の結果等に照らし、本発明に係る真菌症治療及び/又は予防剤は有効性の観点において極めて優れていることを表5は示唆していると発明者は考えている。
2.5 DRC判定によるクリプトコックス症治療有効率(総合効果の有効率)
投与開始42日目、投与開始84日目、EOT時におけるクリプトコックス症の治療有効率(総合効果の有効率)は表6の通りであり、被験薬はクリプトコックス症治療において有効であることが明らかとなった。
前述の通り、海外試験において、イサブコナゾールは、プロドラッグであるイサブコナゾニウム硫酸塩として、2日間にわたって、1日3回、イサブコナゾール換算で200mg投与され、その後、1日1回、イサブコナゾール換算で200mg投与されたことが報告されている(非特許文献4~5)。非特許文献5において、クリプトコックス症治療のDRC判定結果(EOT時の総合効果)が示されており、有効(約67%)および無効(約33%;ただし、不変と悪化の合計とする)であった(非特許文献5;表2)。
一方、本発明においては、DRC判定によるクリプトコックス症治療有効率(EOT時)は、有効(90%)および無効(10%;ただし、不変と悪化の合計とする)であった。以上の結果等に照らし、本発明に係る真菌症治療及び/又は予防剤は有効性の観点において極めて優れていることを表6は示唆していると発明者は考えている。
2.6 DRC判定によるムーコル症治療有効率(総合効果の有効率)
投与開始42日目、投与開始84日目、EOT時におけるムーコル症の治療有効率(総合効果の有効率)は表7の通りであり、被験薬はムーコル症治療において有効であることが明らかとなった。
非特許文献4において、DRC判定によるムーコル症治療有効率(EOT時)が示されており、無効(69%;ただし、不変と悪化の合計とする)であった(非特許文献4;表3)。
一方、本発明においては、DRC判定によるムーコル症治療有効率(EOT時)は、無効(0%;ただし、不変と悪化の合計とする)であった。以上の結果等に照らし、本発明に係る真菌症治療及び/又は予防剤は有効性の観点において極めて優れていることを表7は示唆していると発明者は考えている。
2.7 DRC判定による慢性肺アスペルギルス症治療有効率(総合効果の有効率、サブグループ別)
EOT時における慢性肺アスペルギルス症のサブグループ別の治療有効率(総合効果の有効率)は表8の通りであり、被験薬はいずれのサブグループに対しても慢性肺アスペルギルス症治療において有効であることが明らかとなった。中でも男性患者や66~75歳の患者などに対して被験薬の効果は特に優れている可能性が示唆されたと発明者は考える。
2.8 TEAE発現率
TEAE(薬剤投与後に発現した有害事象)は、各患者に対して被験薬又は対照薬の投与を開始した時点(観察開始時)から投与を終結した時点からさらに35日経過した時点(観察終結時)までに観察された有害事象とした。全有害事象、ならびに、眼障害、肝胆汁障害、消化管障害、および筋骨格系障害について、TEAEの発現率(%)を表9に示した。併せて、便秘、悪心、差明、肺炎、視力障害の発現率(%)を表10に示した。
非特許文献3において、有効性のみならず安全性情報も開示されている(表3)。
本発明において、骨格系および結合組織障害に係るTEAE発現率はいずれの真菌症治療においても総じて低く抑えられる傾向が認められた(5.8、0.0、10.0、0.0)。一方、非特許文献3開示の安全性情報のうちイサブコナゾール投与時の骨格系および結合組織障害発現率は27%であった(Musculoskeletal and connective disorders欄;表3)。本例に代表されるように、本発明に係る真菌症治療及び/又は予防剤は有効性のみならず安全性においても極めて優れていると発明者は考えている。
2.9 TEAE発現率(負荷投与および維持投与における発現率)
TEAE発現率を負荷投与と維持投与の工程別に観察等して得た結果を表11に示す。1日当たりの投与量がより大きい(すなわち患者への薬剤負担がより大きい)負荷投与工程おいて、逆にTEAE発現率がより小さい傾向が示された。
本発明のイサブコナゾール又はそのプロドラッグを有効成分として含有する真菌症治療及び/又は予防剤は安全性及び有効性に優れる。本発明は医薬品産業において極めて有用である。

Claims (3)

  1. 有効成分であるイサブコナゾール又はイサブコナゾニウム硫酸塩を含有する真菌症治療及び/又は予防剤であって、日本人真菌症患者に対して、負荷投与計画に従って投与され、同投与終了後から12~24時間経過した後、さらに、維持投与計画に従って投与される、真菌症治療及び/又は予防剤;
    (1)負荷投与計画:イサブコナゾール又はイサブコナゾニウム硫酸塩が、経口投与又は点滴静脈投与により、8時間おきに計6回、1回投与当たりイサブコナゾール換算で200mg投与される投与計画
    (2)維持投与計画:イサブコナゾール又はイサブコナゾニウム硫酸塩が、経口投与又は点滴静脈投与により、1日1回、1回投与当たりイサブコナゾール換算で200mg投与される投与計画。
  2. 真菌症が深在性真菌症である、請求項1に記載の真菌症治療及び/又は予防剤。
  3. 真菌症がアスペルギルス症、ムーコル症、又は、クリプトコックス症である、請求項1に記載の真菌症治療及び/又は予防剤。
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