JP7453080B2 - 輝点異物の検査方法 - Google Patents
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Description
異物の中でも特に、光を拡散反射することによって輝点となる輝点異物が、光学用途においては重要視されることがある。例えば、前述の熱履歴による樹脂ヤケ由来と考えられる多くが黒色や茶色の異物は、光を吸収するため輝点とはなりにくいが、外部の環境由来と考えられる主に無機系の組成で構成される異物は、光を反射しやすいため輝点となりやすいと考えられる。
例えば、特許文献1には、溶融させたアクリル系樹脂をポリマーフィルターで濾過することで、液中パーティクルカウンターで測定した直径が2マイクロメートル以上の異物が500個/g未満であるアクリル系樹脂パッケージ体が開示されている。
また、特許文献2には、耐熱性アクリル樹脂に対して濾過精度が10マイクロメートル以下のポリマーフィルターによって濾過を行うことで、パーティクルカウンターを用いて測定される1グラムあたりに含まれる粒子径20マイクロメートル以上の異物が100個以下であるアクリル系樹脂組成物のペレットが開示されている。
しかし、上記のようなポリマーフィルターによる濾過は、樹脂の原材料中に含まれる不純物や重合中に発生するゲル、製造過程において混入する異物を除去対象としているため、成形過程、輸送時、及び外部環境由来の異物は、除去されずに残留する可能性がある。
また、ポリマーフィルターで濾過除去される異物の多くは、樹脂ヤケなどに由来する黒色や茶色の異物、すなわち、輝点とはなりにくい異物であるため、輝点異物の除去の観点からは、ポリマーフィルターによる濾過はあまり効果的ではないと考えられる。
しかし、これらの方法では、内部異物の評価はできても、その異物が輝点異物かどうかまでは判断することができないといった問題がある。また、レーザー顕微鏡で観察しているため、厚みのある試料に対しては膨大な測定時間を要することや、透明成形体自体の位相差の影響を受けてしまうことから、成形体によっては異物の判定が上手くできない等の問題があった。
また、特許文献5には、透明板表面に対して平行な光を透明板の少なくとも1側端面から入射させ、透明板内部の異物により散乱し輝点として出射させ、透明板表面の垂直上方向から撮像機を用いて撮像し、画像処理装置により各輝点の光量の閾値から透明板内部の輝点異物を検査する方法が開示されている。
この方法では、各輝点の光量の閾値から、表面輝点よりも内部輝点の光量のほうが高くなることを用いて表面異物か内部異物かの判別をしているが、輝点の由来となる異物の種別によっては、必ずしも内部輝点の光量のほうが高くなるわけではない。また、輝点異物のサイズが小さいほど輝点の光量は低くなるため、特に10~20マイクロメートル程度の輝点異物の検出は困難であると考えられる。
[1]
透明成形体の側面より光を入射させると拡散反射により輝点となる粒子径が10マイクロメートル以上の輝点異物について、前記透明成形体の側面より入射させる光の光源と前記透明成形体の間に、前記透明成形体の側面厚みよりも薄いスリット幅を有する光学スリットを設けることで前記透明成形体の表面裏面に起因するノイズ光を除去し、前記透明成形体の内部に存在する内部輝点異物のみの深度合成画像を得ることによって輝点異物の量を定量することを特徴とする、輝点異物の検査方法。
[2]
前記透明成形体の側面より入射させる光が単色光である、[1]に記載の輝点異物の検査方法。
本実施形態の輝点異物の検査方法は、透明成形体の任意の面に光を入射させ、前記透明成形体の内部のみの深度合成画像を取得し、前記深度合成画像から、前記光を拡散反射することにより輝点となった10マイクロメートル以上の輝点異物を定量することを特徴とする。
本開示で、「輝点」とは、光を拡散反射することにより周囲よりも輝度が高くなっている点であり、透明成形体の任意の面に光を入射させたときに、観察者には照明光が届かない状態(暗視野)において明部として検出することができる。より詳細には、「輝点」は、暗視野観察における輝度が、人が輪郭を確認できる範囲とされる3mcd/m2以上である部分とする。
また、本開示で、「輝点異物」とは、透明成形体の任意の面に光を入射させたときに、拡散反射により輝点となる異物である。
なお、輝点異物のサイズは、暗視野においてデジタルマイクロスコープを用いて測定した輝点のサイズ(最大径)として表される値である。
なお、本開示で、「透明成形体の内部」及び「透明成形体の表面部分」は、表面から該表面に垂直な方向に特定の距離までの部分が「透明成形体の表面部分」、それ以外の部分が「透明成形体の内部」であり、所望する透明成形体の検査範囲に応じて定めてよい。例えば、表面から該表面に垂直な方向に2ミリメートル未満までの部分を透明成形体の表面部分、それ以外の部分(表面から該表面に垂直な方向に2ミリメートル以上離れた部分)を「透明成形体の内部」とする等が挙げられる。
透明成形体が直方体以外の形状である場合も同様に、透明成形体の光を入射させる面(曲面である場合には、その曲面について定めた中央における接平面)が、デジタルマイクロスコープのステージに対して垂直となるようにして透明成形体をデジタルマイクロスコープに設置し、デジタルマイクロスコープによる観察方向の所定範囲を透明成形体の内部と定めて深度合成することにより、透明成形体の内部のみの深度合成画像を得る。また、透明成形体の光を入射させる面(曲面である場合には、その曲面について定めた中央における接平面)に垂直な方向の所定範囲における深度合成画像を連結し、連結画像内の輝点異物の数をカウントすることにより、透明成形体内部の輝点異物を定量評価する。
一方、撮像される画像の解像度は、レンズ倍率が高いほど撮被写界深度像側センサの画素あたりの投影面積が小さくなり、解像度は高くなる。つまり、観察したい透明成形体に対して、適切にデジタルマイクロスコープのレンズ倍率を選び、解像度と焦点深度(被写界深度)の範囲からデジタルマイクロスコープの深度合成する高さ範囲を調整することで、表面部分を除いた透明成形体内部のみの深度合成画像を得ることができる。
焦点深度(被写界深度)も同様に、用いるレンズの性能に依存するが、例えば、1ミリメートル程度の焦点深度(被写界深度)であれば、透明成形体の表面から2ミリメートル以上内側に離れた範囲について深度合成することで、透明成形体の表面から1ミリメートル程度までの範囲を透明成形体の表面部分として除いた内部のみの深度合成画像を得ることができる。
透明成形体の任意の面に光を入射させるための外部照明としては、LEDなどの拡散性のある光源や、レーザーなどの直進性の高い光源、光ファイバーやレンズ等で集光させた平行光源などが挙げられる。
透明成形体の表面に起因するノイズ光を除去する手段としては、透明成形体の任意の面に光を入射させる光源と透明成形体との間に、光学スリットを設けることが好ましい。この光学スリットのスリット幅を、透明成形体の光を入射させる面の幅よりも狭いものとすることによって、透明成形体の表面に存在する異物や傷等に外部照明が当たらなくなることから、前述のノイズ光が低減され、透明成形体内部の輝点異物を明確に検出することができるようになる。
また、スリットを設ける代わりに、照射する外部照明を平行性の高い照明とし、透明成形体の表面には光を照射せずに透明成形体内部のみに光を照射することで、ノイズ光を除去しても構わない。しかし、厳密な平行光を用意するのは容易ではなく、透明成形体の厚みや大きさなどが変化した場合には、その都度適した光源を準備する必要があるが、光学スリットであれば、透明成形体の大きさに合わせたスリット幅の光学スリットを数種類作製しておけばよく、容易に対応することが可能である。
本実施形態の輝点異物の検査方法を用いる透明成形体としては、光学部品に使用されるプラスチックとして一般に用いられている、メタクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート、環状オレフィン樹脂などを用いて成形した樹脂成形体が挙げられる。
透明成形体の形状や大きさは、特に限定されず、用途に応じて適宜選択される。
なお、本開示で、「透明」とは、可視光領域(およそ360~830nm)の光の透過率が高いことを意味し、少なくとも可視光の透過を目視によって視認可能な程度の透過率であればよい。
透明成形体として、メタクリル樹脂(旭化成株式会社製「デルペット80N」)を用いた射出成形により、厚さ3mm×幅20mm×長さ220mmの短冊状成形片を作製した。
具体的には、射出成形機(東芝機械株式会社製EC-100SX)及びサイドゲートを有する厚さ3mm×幅20mm×長さ220mmの短冊成形型を用い、シリンダー温度280℃、金型温度70℃にて射出成形することにより、短冊状成形片を得た。
上述の短冊状成形片4本について、デジタルマイクロスコープとしてキーエンス社製VHX-7000を使用し、暗視野にて輝点異物の検査を行った。レンズ倍率は80倍とし、前述の短冊状成形片の幅方向がデジタルマイクロスコープのステージに対して垂直方向となり、且つ、短冊状成形片の長さ方向がデジタルマイクロスコープの左右方向となるようにして、短冊状成形片をデジタルマイクロスコープに設置した。次に、短冊状成形片の対向する2つの20mm×3mmの側面それぞれに外部照明から光を入射させ、輝点を生じさせた。短冊状成形片の高さ(幅)20mmのうち、上下面からそれぞれ2mmの範囲を短冊状成形片の表面部分として除いた16mmの範囲を短冊状成形片の内部とし、撮像して深度合成を行った。さらに、短冊状成形片の中心から長さ方向にそれぞれ25mmまでの合計50mmの範囲について、得られた深度合成画像を連結した。
なお、輝点を生じさせるための外部照明としては、青色LED照明(シーシーエス社製ラインLED照明「LDL2-158X16BL2」、ピーク発光波長467nm)を2つ使用した。短冊状成形片の対向する2つの20mm×3mmの側面それぞれに光が入射するように、20mm×3mmの側面と青色LED照明の発光面とを対向させて、青色LED照明、短冊状成形片、青色LED照明の順に、それぞれ約1mmの間隔をあけて一列に配置した。次いで、各青色LED照明と短冊状成形片との間に、スリット幅15mmの光学スリット(シーシーエス社製、厚み1mm)を配置し、青色LED照明-スリット-短冊状成形片-スリット-青色LED照明が密着するように固定し、短冊状成形片の3mm×220mmの上下面に光が当たらないようにした。
結果、深度合成画像と、短冊状成形片の表面に焦点を合わせた画像とで、同じ位置に一致して確認される輝点異物はなかった。また、透過光照明での深度合成画像において確認された異物すべてが深度合成画像で確認されたわけではなかった。これらのことから、深度合成画像で確認された輝点異物は、間違いなく短冊状成形片の内部に存在する内部輝点異物のみであり、透過光照明での深度合成画像において確認される異物すべてが輝点となるわけではないことが示された。
さらに、4本の各短冊状成形片について、連結した深度合成画像のうち、厚さ2.5mm×幅16mm×長さ50mmのエリアに存在する10マイクロメートル以上の輝点異物をカウントしたところ、合計76個であり、1cm3体積当たりの個数としては9.5個/cm3であった。
特許文献3に記載の方法により、上述の短冊状成形片の内部異物の評価を行った。検出された内部異物が輝点となるかどうかについて、実施例1と同様の配置で透明成形体と2つの青色LED照明(シーシーエス社製「LDL2-158X16BL2」、ピーク発光波長467nm)とを設置し、短冊状成形片の対向する2つの20mm×3mmの側面それぞれに光を入射させて、目視による評価を行った。
結果、検出された内部異物すべてが輝点として確認されたわけではなく、特許文献3に記載の方法では、輝点とならない内部異物も検出されることが示された。
特許文献5に記載の方法により内部異物の評価を行ったが、表面に存在する異物に由来する輝点と内部異物に由来する輝点とに二分できるような閾値はなく、内部異物のみを判別することはできなかった。
Claims (2)
- 透明成形体の側面より光を入射させると拡散反射により輝点となる粒子径が10マイクロメートル以上の輝点異物について、前記透明成形体の側面より入射させる光の光源と前記透明成形体の間に、前記透明成形体の側面厚みよりも薄いスリット幅を有する光学スリットを設けることで前記透明成形体の表面裏面に起因するノイズ光を除去し、前記透明成形体の内部に存在する内部輝点異物のみの深度合成画像を得ることによって輝点異物の量を定量することを特徴とする輝点異物の検査方法。
- 前記透明成形体の側面より入射させる光が単色光であることを特徴とする請求項1に記載の輝点異物の検査方法。
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