以下、本発明の電動式油圧作業機械の実施の形態について図面を用いて説明する。本実施の形態においては、電動式油圧作業機械の一例として油圧ショベルを例に挙げて説明する。
[第1の実施の形態]
まず、本発明の電動式油圧作業機械の第1の実施の形態としての油圧ショベルの構成について図1を用いて説明する。図1は本発明の電動式油圧作業機械の第1の実施の形態としての電動式油圧ショベルを示す外観図である。ここでは、運転席に着座したオペレータから見た方向を用いて説明する。
図1において、油圧作業機械としての油圧ショベル1は、自走可能な下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、上部旋回体3の前部に俯仰動可能に設けられたフロント作業装置4とで大略構成されている。上部旋回体3は、油圧アクチュエータである旋回油圧モータ5によって下部走行体2に対して旋回するように構成されている。
下部走行体2は、左右にクローラ式の走行装置6(一方のみを図示)を備えている。左右の走行装置6は油圧アクチュエータである走行油圧モータ7により駆動するように構成されている。
上部旋回体3は、下部走行体2上に旋回可能に搭載された支持構造体としての旋回フレーム9と、旋回フレーム9上の左前側に設置されたキャブ10と、旋回フレーム9の後端部に設けられたカウンタウェイト11と、キャブ10とカウンタウェイト11の間に設けられた機械室12とを含んで構成されている。キャブ10には、オペレータが着座する運転席21、油圧ショベル1を操作するための操作装置22や回転数指示ダイアル23(後述の図2参照)、油圧ショベル1の状態を表示するモニタ24(後述の図2参照)などが配置されている。カウンタウェイト11は、フロント作業装置4と重量バランスをとるためのものである。機械室12は、後述の油圧ポンプ31や制御弁ユニット33(共に後述の図2参照)などの油圧機器および後述の電動モータ41やバッテリシステム42などの電気機器(共に後述の図2参照)を収容している。
フロント作業装置4は、掘削作業等を行うための多関節型の作業装置であり、例えば、ブーム14、アーム15、作業具としてのバケット16を備えている。ブーム14の基端側は、上部旋回体3の前部に回動可能に連結されている。ブーム14の先端部には、アーム15の基端部が回動可能に連結されている。アーム15の先端部には、バケット16の基端部が回動可能に連結されている。ブーム14、アーム15、バケット16はそれぞれ、油圧アクチュエータであるブームシリンダ17、アームシリンダ18、バケットシリンダ19によって駆動される。
次に、本発明の電動式油圧作業機械の第1の実施の形態における油圧システム及び電気システムの構成について図2を用いて説明する。図2は第1の実施の形態に係る電動式油圧作業機械の油圧システム及び電気システム並びにそれらの制御システムを示すブロック図である。
図2において、油圧ショベル1は、下部走行体2、上部旋回体3、フロント作業装置4(共に図1参照)などを油圧によって駆動させる油圧システム30を備えている。油圧システム30は、圧油を吐出する油圧ポンプ31と、油圧ポンプ31から吐出された圧油により駆動する複数の油圧アクチュエータと、油圧ポンプ31から複数の油圧アクチュエータに供給される圧油の流れを制御する制御弁ユニット33とを含んで構成されている。
油圧ポンプ31は、例えば、可変容量型のポンプであり、斜板や斜軸の傾転角を変化させることで押除け容積が変更可能な構成となっている。油圧ポンプ31は、例えば、後述の車体コントローラ70からの指令に応じて押除け容積が調整されることで、単位回転当たりの吐出流量が変更されるように構成されている。
油圧システム30の複数の油圧アクチュエータとしては、前述した旋回油圧モータ5、走行油圧モータ7、ブームシリンダ17、アームシリンダ18、バケットシリンダ19(共に図1を参照)を含んでいる。油圧ショベル1は、旋回油圧モータ5の駆動により旋回動作を行い、走行油圧モータ7の駆動により走行動作を行い、ブームシリンダ17とアームシリンダ18とバケットシリンダ19の複合駆動により掘削動作を行うように構成されている。
制御弁ユニット33は、油圧ポンプ31から吐出された圧油を複数の油圧アクチュエータ5、7、17、18、19に分配するものであり、各油圧アクチュエータ5、7、17、18、19に対応する制御弁の集合体である。制御弁ユニット33の各制御弁は、油圧ポンプ31から対応する油圧アクチュエータ5、7、17、18、19に供給される圧油の流れ(方向及び流量)を制御するものである。制御弁ユニット33は、例えば、操作パイロット圧により駆動する油圧パイロット式のものである。制御弁ユニット33の各制御弁に作用する操作パイロット圧は、例えば、パイロットポンプ34をパイロット油圧源として操作装置22によって生成される。すなわち、操作装置22は、当該装置22の操作(操作方向や操作量)に応じてパイロットポンプ34の吐出圧(パイロット一次圧)を減圧することで制御弁ユニット33の各制御弁に入力する操作パイロット圧(パイロット二次圧)を生成する機能を有している。
油圧ショベル1は、油圧システム30の油圧ポンプ31及びパイロットポンプ34を電力によって駆動する電気システム40を備えた電動式のものである。電気システム40は、油圧ポンプ31及びパイロットポンプ34を駆動する原動機としての電動モータ41と、電動モータ41に電力を供給する電源の1つとしてのバッテリシステム42とを備えている。電気システム40は、バッテリシステム42を含む複数の電源から電動モータ41に電力供給が可能に構成されており、バッテリシステム42を含む複数の電源から電動モータ41への供給電力を調整するインバータ43を備えている。
本実施の形態の電気システム40は、油圧ショベル1に電気的に接続可能な外部電源である商用電源100を電動モータ41の電源の1つとして使用可能に構成されている。具体的には、電気システム40は、商用電源100にケーブルを介して接続可能な給電口44と、給電口44を介して供給される商用電源100の交流電力を直流電力に変換してバッテリシステム42及びインバータ43(電動モータ41)に供給可能なコンバータ45とを備えている。電気システム40では、バッテリシステム42及びコンバータ45が電力ライン46を介してインバータ43に接続されている。
バッテリシステム42は、例えば搭載レイアウトや構造の都合上、第1のバッテリ51と第2のバッテリ52と第3のバッテリ53の3つのバッテリがインバータ43に対して電気的に並列に接続された構成である。各バッテリ51、52、53は、電気的に直列に接続された複数の電池セル(図示せず)を内部に有している。各バッテリ51、52、53の電池セルごとに電圧を検出する電圧センサ(図示せず)が設けられていると共に、各バッテリ51、52、53には代表部位の温度を測定する温度センサ及び電流を検出する電流センサ(共に図示せず)が設けられている。第1のバッテリ51、第2のバッテリ52、第3のバッテリ53はそれぞれ第1の遮断装置54、第2の遮断装置55、第3の遮断装置56を介して電気回路に接続されている。
第1の遮断装置54、第2の遮断装置55、第3の遮断装置56はそれぞれ、第1のバッテリマネジメントユニット57(以下、第1のBMU57)、第2のバッテリマネジメントユニット58(以下、第2のBMU58)、第3のバッテリマネジメントユニット59(以下、第3のBMU59)によって電気的な遮断又は接続の切替が行われるように構成されている。第1~第3のBMU57~59はそれぞれ、第1~第3のバッテリ51~53の電圧センサ、電流センサ、温度センサの検出値を取得し、これらの検出値に基づき第1~第3のバッテリ51~53の状態を監視すると共に第1~第3のバッテリ51~53の異常を検出するように構成されている。第1~第3のBMU57~59はそれぞれ、第1~第3のバッテリ51~53を使用しない場合や第1~第3のバッテリ51~53の異常を検出した場合に、第1~第3の遮断装置54~56を遮断状態に切り替えるように構成されている。すなわち、第1~第3のBMU57~59は、第1~第3のバッテリ51~53の異常を検出すると共に、異常が検出された第1~第3のバッテリ51~53からの電力供給を停止させる異常検出装置として機能するものである。
バッテリシステム42は、第1~第3のBMU57~59の全てを統括するマスタバッテリマネジメントユニット60(以下、マスタBMU60)を備えている。マスタBMU60は、第1~第3のBMU57~59と通信可能に接続されており、第1~第3のBMU57~59からそれぞれ第1~第3のバッテリ51~53の状態や異常の有無の情報を取得するものである。マスタBMU60は、後述の車体コントローラ70に車体通信網62を介して通信可能に接続されており、第1~第3のBMU57~59から取得した第1~第3のバッテリ51~53の情報を車体コントローラ70に提供する。
インバータ43は、バッテリシステム42及びコンバータ45から供給される直流電力を三相交流電力に変換して制御することで、電動モータの駆動(回転数やトルク)を制御するものである。インバータ43には、直流を変換して三相交流を生成するインバータ回路81(後述の図3参照)を制御するインバータコントローラ82(後述の図3参照)が内蔵されている。インバータコントローラ82は、インバータ43(インバータ回路81)の状態を監視すると共に、インバータ43(インバータ回路81)の異常を検出するように構成されている。インバータコントローラ82は、後述の車体コントローラ70に車体通信網62を介して通信可能に接続されており、インバータ43(インバータ回路81)の情報を車体コントローラ70に提供すると共に車体コントローラ70からの指令に応じて電動モータ41へ供給する三相交流電力を調整する。インバータコントローラ82の機能の詳細は後述する。
給電口44は、商用電源100より供給される交流電力を検出すると共に、当該交流電力における電圧の異常の有無を確認する機能を有している。給電口44は、異常な電圧の交流電力を検出した場合にはコンバータ45との電気的接続を遮断するように構成されており、異常電圧によるコンバータ45の故障を防ぐものである。すなわち、給電口44は、商用電源100からの電力供給の異常を検出すると共に、異常が検出された商用電源100の電力供給を停止させる異常検出装置として機能するものである。給電口44は、後述の車体コントローラ70に車体通信網62を介して通信可能に接続されており、商用電源100からの電力供給の異常の有無の情報を車体コントローラ70へ送信する。
コンバータ45は、商用電源100の交流電力を変換して生成した直流電力を電圧制御又は電流制御により供給してバッテリシステム42を充電する機能を有している。コンバータ45には、電圧制御又は電流制御が可能であるコンバータ回路45a(後述の図3参照)を制御するコンバータコントローラ45b(後述の図3参照)が内蔵されている。コンバータコントローラ45bは、後述の車体コントローラ70に車体通信網62を介して通信可能に接続されており、コンバータ45(コンバータ回路45a)の状態や異常の有無などの情報を車体コントローラ70に提供すると共に車体コントローラ70からの指令に応じてインバータ43及びバッテリシステム42へ供給する直流電力を調整する。コンバータコントローラ45bの機能の詳細は後述する。
車体コントローラ70は、油圧ショベル1の状態を監視すると共に、油圧ショベル1の動作を制御するように構成されている。車体コントローラ70は、バッテリシステム42のマスタBMU60、インバータコントローラ82、給電口44、コンバータコントローラ45bを含む各種の機器と車体通信網62を介して通信可能に接続されており、各種の機器と相互に情報を交換すると共に各種の機器に対して指令するように構成されている。本実施の形態の車体コントローラ70とインバータコントローラ82は、相互に情報を授受することで、油圧ポンプ31及び電動モータ41の駆動を制御する制御装置として機能するものである。車体コントローラ70の制御(機能)の詳細は後述する。
車体コントローラ70には、キャブ10(図1参照)内に配置された回転数指示ダイアル23及びモニタ24が車体通信網62を介して通信可能に接続されている。回転数指示ダイアル23は、オペレータにより操作される操作量(ダイアル操作量)に応じて油圧ポンプ31又は電動モータ41の回転数を指示する回転数指示装置として機能するものであり、ダイアル操作量に応じた指示信号を車体コントローラ70へ送信する。モニタ24は、車体コントローラ70から送信される情報に基づき油圧ショベル1の各種の情報を表示画面に表示するものである。
モニタ24は、例えば、タッチパネルを備えており、オペレータの操作によって油圧ショベル1に対する指示を入力する入力装置25としての機能も有している。入力装置25は、例えば、コンバータ45の供給電力を3段階から選択可能に構成されている。商用電源100は油圧ショベル1のユーザが用意するので、ユーザの契約電力量や電力変換設備の容量などの要因によって商用電源100の給電能力には限界がある。そこで、コンバータ45の供給電力をユーザの操作によって変更可能としている。例えば、モニタ24に表示された3つの供給電流の入力値(16アンペア、32アンペア、64アンペア)の中からオペレータが商用電源100の供給可能な電力に合わせて選択する。入力装置25(モニタ24)は、選択された入力値を車体コントローラ70へ送信する。
また、油圧ポンプ31又は電動モータ41には、油圧ポンプ31又は電動モータ41の実回転数を検出する回転数センサ27が設けられている。回転数センサ27は、検出した油圧ポンプ31又は電動モータ41の実回転数Naに応じた検出信号を車体コントローラ70へ送信する(後述の図3参照)。
また、油圧システム30は、操作装置22によって生成されて制御弁ユニット33の各制御弁に入力される操作パイロット圧のうちの最高圧力を検出する圧力センサ28を備えている。圧力センサ28は、車体コントローラ70に車体通信網62を介して通信可能に接続されており、検出した圧力に応じた検出信号を車体コントローラ70へ送信する。
次に、本発明の電動式油圧作業機械の第1の実施の形態の一部を構成するバッテリシステムのBMU、コンバータコントローラ、車体コントローラ、インバータコントローラの各機能について図3~図6を用いて説明する。図3は図2に示す第1の実施の形態に係る電動式油圧作業機械の制御システムの機能ブロック図である。
図3において、バッテリシステム42の第1~第3のBMU57~59及びマスタBMU60はそれぞれ、ハード構成として、RAMやROM等からなる図示しない記憶装置及びCPUやMPU等からなる図示しない処理装置を備えている。記憶装置には、第1~第3のバッテリ51~53の状態監視や異常検出及び制御に必要なプログラムや各種情報が予め記憶されている。処理装置は、記憶装置からプログラムや各種情報を適宜読み込み、当該プログラムに従って処理を実行することで第1~第3のバッテリ51~53の状態監視や異常検出及び制御を実現する。
具体的には、第1~第3のBMU57~59はそれぞれ、第1~第3のバッテリ51~53の状態や異常の有無に応じて各バッテリ51、52、53が供給可能な最大電力を演算するように構成されている。すなわち、第1のBMU57は第1のバッテリ51の供給可能な最大電力Pb1_maxを、第2のBMU58は第2のバッテリ52の供給可能な最大電力Pb2_maxを、第3のBMU59は第3のバッテリ53の供給可能な最大電力Pb3_maxを演算する。第1~第3のBMU57~59はそれぞれ演算結果の第1~第3のバッテリ51~53の供給可能な最大電力Pb1_max、Pb2_max、Pb3_maxをマスタBMU60へ送信する。マスタBMU60は、第1のBMU57の演算結果の第1のバッテリ51の供給可能な最大電力Pb1_maxと第2のBMU58の演算結果の第2のバッテリ52の供給可能な最大電力Pb2_maxと第3のBMU58の演算結果の第3のバッテリ53の供給可能な最大電力Pb3_maxとの合計値であるバッテリシステム42の供給可能な最大電力Pbsum_maxを演算する。マスタBMU60は、演算結果のバッテリシステム42の供給可能な最大電力Pbsum_maxを車体コントローラ70へ送信する。
各BMU57、58、59が監視する各バッテリ51、52、53には、寿命の維持や故障の防止のため、その供給電力又は充電電力に許容される上限(最大値)がある。第1~第3のバッテリ51~53の許容値を超えた給電又は充電は著しい性能低下や故障の原因となる。そこで、各バッテリ51、52、53の状態に応じた各バッテリ51、52、53の供給可能な電力又は充電可能な電力を示す特性が、各バッテリ51、52、53の電池セルの性能仕様を基に予め設定されており、各BMU57、58、59の記憶装置に予め記憶されている。各BMU57、58、59は、記憶装置に記憶されている当該特性を基に、各バッテリ51、52、53の充電状態を示す指標であるSOC(State Of Charge)及び各バッテリ51、52、53の状態の1つの指標である温度を考慮して各バッテリ51、52、53の供給可能な最大電力Pb1_max、Pb2_max、Pb3_maxを算出する。各バッテリ51、52、53のSOCは、各バッテリ51、52、53の電流センサの検出値(電流値)の積算及び電圧センサの検出値(電圧値)を用いて算出される。各バッテリ51、52、53の温度は、各バッテリ51、52、53の温度センサの検出値である。
各BMU57、58、59は、各バッテリ51、52、53の異常を検出して第1~第3の遮断装置54、55、56を遮断状態に切り替えた場合には、各バッテリ51、52、53の供給可能な最大電力Pb1_max、Pb2_max、Pb3_maxを0に設定する。すなわち、異常が検出されたバッテリの供給可能な電力分を除外する。なお、各バッテリ51、52、53の温度センサの検出値が所定値よりも高くて各バッテリ51、52、53の供給電流を制限したい場合には、各バッテリ51、52、53の供給可能な最大電力Pb1_max、Pb2_max、Pb3_maxが制限されるように各BMU57、58、59を構成することも可能である。
コンバータコントローラ45bは、コンバータ回路45aの状態を監視すると共に、コンバータ回路45aの異常を検出するように構成されている。コンバータ45の状態や異常の有無の情報を車体コントローラ70へ送信する。また、コンバータコントローラ45bは、車体コントローラ70の後述の電力供給指令Pcc(詳細は後述するが、コンバータ45の異常発生時には供給可能電力が0に設定される指令)を受信し、コンバータ45の供給電力が当該電力供給指令Pccに一致するようにコンバータ回路45aを制御する。これにより、商用電源100の電力がコンバータ45を介してバッテリシステム42又はインバータ45に供給される。すなわち、コンバータコントローラ45bは、コンバータ45の異常を検出すると共に、異常が検出されたコンバータ45からの電力供給を停止させる異常検出装置として機能するものである。
コンバータコントローラ45bは、ハード構成として、RAMやROM等からなる図示しない記憶装置及びCPUやMPU等からなる図示しない処理装置を備えている。記憶装置には、コンバータ回路45aの状態監視や異常検出及び制御に必要なプログラムや各種情報が予め記憶されている。処理装置は、記憶装置からプログラムや各種情報を適宜読み込むと共に車体コントローラ70からの指令を受信し、当該プログラム及び指令に従って処理を実行することでコンバータ回路45aの状態監視や異常検出及び制御の機能を実現する。
車体コントローラ70は、基本的に、回転数指示ダイアル23のダイアル操作量に応じた指示信号を基に油圧ポンプ31及び電動モータ41の回転数を制御するように構成されている。ただし、本実施の形態の車体コントローラ70は、電動モータ41及びインバータ43の消費電力がバッテリシステム42及び商用電源100(コンバータ45)の供給可能な最大電力の合計値を超えないように油圧ポンプ31の油圧出力を制限するように構成されている。
車体コントローラ70は、ハード構成として、RAMやROM等からなる記憶装置71と、CPUやMPU等からなる処理装置72とを備えている。記憶装置71には、油圧ポンプ31及び電動モータ41の制御に必要なプログラムや各種情報が予め記憶されている。処理装置72は、記憶装置71からプログラムや各種情報を適宜読み込むと共に各種機器からの各種情報を受信し、当該プログラムに従って処理を実行することで各種機能を実現する。車体コントローラ70は、処理装置72により実行される機能として、ポンプ回転数算出部74、外部電源指令演算部75、モータ指令演算部76、ポンプ制御部77を有している。
ポンプ回転数算出部74は、回転数指示ダイアル23のダイアル操作量に応じた指示信号を受信し、受信した指示信号(ダイアル操作量)に基づき油圧ポンプ31の要求回転数Nrを算出する。算出結果の要求回転数Nrをモータ指令演算部76へ出力する。
外部電源指令演算部75は、オペレータによって入力されたコンバータ45の供給電力量である選択供給電力Pcsを入力装置25から受信する。また、商用電源100との接続の有無や商用電源100の電力供給における異常電圧の検出の有無などの商用電源100の電力供給の状態に関する情報を給電口44から受信する。さらに、コンバータ45の異常の有無の情報をコンバータコントローラ45bから受信する。
外部電源指令演算部75は、基本的に、入力装置25から受信した選択供給電力Pcsをコンバータ45の供給可能な最大電力Pc_maxとして算出する。ただし、給電口44が商用電源100の接続無しの状態を検出した場合や商用電源100の異常電圧を検出した場合またはコンバータコントローラ45bがコンバータ45の異常を検出した場合には、コンバータ45の供給可能な最大電力Pc_maxとして0を算出する。外部電源指令演算部75は、演算結果のコンバータ45の供給可能な最大電力Pc_maxをモータ指令演算部76へ出力する。また、外部電源指令演算部75は、演算結果のコンバータ45の供給可能な最大電力Pc_maxを電力供給指令Pccとしてコンバータコントローラ45bへ送信する。
モータ指令演算部76は、ポンプ回転数算出部74の算出結果の要求回転数Nr、回転数センサ27が検出した電動モータ41の実回転数Na、マスタBMU60の演算結果のバッテリシステム42の供給可能な最大電力Pbsum_max、外部電源指令演算部75の演算結果のコンバータ45の供給可能な最大電力Pc_max、インバータコントローラ82からのインバータ43及び電動モータ41の異常の有無の情報に基づいて、電動モータ41の回転数指令Nc及び電動モータ41のモータ許容トルクTmaxを演算する。
モータ指令演算部76は、例えば、図4に示すフローチャートにしたがって電動モータ41の回転数指令Nc及びモータ許容トルクTmaxを演算する。図4は図3に示す第1の実施の形態に係る電動式油圧作業機械の車体コントローラにおけるモータ指令演算部の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図4において、モータ指令演算部76は、先ず、マスタBMU60からのバッテリシステム42の供給可能な最大電力Pbsum_max(Pb1_max+Pb2_max+Pb3_max)と外部電源指令演算部75からのコンバータ45の供給可能な最大電力Pc_maxとを合計することで、供給可能最大電力Pmaxを演算する(ステップS10)。供給可能最大電力Pmax(Pbsum_max+Pc_max)は、第1~第3のバッテリ51~53及び商用電源100(複数の電源)のうち異常が検出された電源(異常電源)を除いた各電源の供給可能な電力の合計値となる。これは、各バッテリ51、52、53の供給可能な最大電力Pb1_max、Pb2_max、Pb3_maxが各バッテリ51、52、53の状態(充電状態や温度)に応じて算出されると共に各バッテリ51、52、53の異常時にその異常となったバッテリが0に設定され、かつ、Pc_maxが商用電源100又はコンバータ45の異常時に0に設定されるので、異常が検出された第1~第3のバッテリ51、52、53及び商用電源100(コンバータ45)の供給電力が除外されるからである。したがって、供給可能最大電力Pmaxは、各バッテリ51、52、53の状態や異常の有無及び商用電源100やコンバータ45の異常の有無に応じて変動する。
次に、モータ指令演算部76は、第1~第3のバッテリ51~53及び商用電源100(複数の電源)から受電する電動モータ41が油圧ポンプ31を最小のアイドリング回転数で駆動可能か否かを判定する(ステップS20)。具体的には、演算結果の供給可能最大電力Pmaxに対して電動モータ41とインバータ43の効率である効率値Eimを乗算することで、電動モータ41が出力可能な最大値を演算する。演算結果の電動モータ41の出力可能な最大値(Pmax×Eim)が油圧ポンプ31を駆動させるために必要な最小動力Pf1を超えているか否かを判定する。電動モータ41の出力可能な最大値(Pmax×Eim)が最小動力Pf1を超えている場合(YESの場合)にはステップ30に進む一方、最小動力Pf1以下である場合(NOの場合)にはステップ50に進む。
効率値Eimは、電動モータ41及びインバータ43の性能仕様から予め設定されたものであり、記憶装置71に予め記憶されている。最小動力Pf1は、傾転角が最小時の油圧ポンプ31を回転駆動させるのに必要なトルクである最小ポンプ吸収トルクTp_minと油圧ポンプ31の最小のアイドリング回転数との乗算から得られるものである。最小ポンプ吸収トルクTp_minは、油圧ポンプ31の性能仕様から予め設定されたものである。最小動力Pf1及び最小ポンプ吸収トルクTp_minは、記憶装置71に予め記憶されている。
ステップS20においてNOの場合には、第1~第3のバッテリ51~53及び商用電源100(複数の電源)からの供給電力では電動モータ41が油圧ポンプ31を駆動不能なので、モータ指令演算部76は、電源の故障と判定する(ステップS50)。電源の故障と判定した場合における車体コントローラ70の制御については省略する。
一方、ステップS20においてYESの場合には、モータ指令演算部76は、ポンプ回転数算出部74からの要求回転数Nrを電動モータ41の回転数指令Ncとして設定する(ステップS30)。モータ指令演算部76は、演算結果の電動モータ41の回転数指令Ncをインバータ45へ送信する。
次に、モータ指令演算部76は、演算時点における電動モータ41の実回転数Naで油圧ポンプ31を駆動させると想定したときに電動モータ41の出力可能な最大トルクであるモータ許容トルクTmaxを演算する(ステップS40)。具体的には、ステップS20の演算結果である電動モータ41の出力可能な最大値(Pmax×Eim)を回転数センサ27によって検出されてインバータ45から送信された電動モータ41の実回転数Naで除算することで、モータ許容トルクTmaxを演算する。モータ指令演算部76は、演算結果のモータ許容トルクTmaxをポンプ制御部77へ出力する。ステップS40の処理を終了すると、リターンしてスタートに戻り、次の演算周期を開始する。
図3に戻り、ポンプ制御部77は、圧力センサ28の検出信号(操作パイロット圧の最高圧)を受信し、基本的には受信した操作パイロット圧の最高圧に基づき油圧ポンプ31の押除け容積(傾転角)を制御するように構成されている。すなわち、圧力センサ28によって検出された操作パイロット圧の最高圧が大きくなるにしたがって押除け容積が大きくなるように油圧ポンプ31の傾転角を調整する。ただし、本実施の形態のポンプ制御部77は、モータ指令演算部76からのモータ許容トルクTmaxを用いて油圧ポンプ31の傾転角を制限するように構成されている。具体的には、油圧ポンプ31の傾転角とそれに対応した油圧ポンプ31を回転駆動させるために必要な吸収トルクとの関係を示すテーブルがポンプ特性として予め設定されている。当該ポンプ特性は、設計諸元や実験データなどに基づいて設定されるものであり、記憶装置71に予め記憶されている。ポンプ制御部77は、当該ポンプ特性を参照してモータ許容トルクTmaxに対応する傾転角を許容傾転角Amaxとして算出する。
ポンプ制御部77は、例えば、図5に示すフローチャートにしたがって油圧ポンプ31の傾転角を制御する。図5は図3に示す第1の実施の形態に係る電動式油圧作業機械の車体コントローラにおけるポンプ制御部の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図5において、ポンプ制御部77は、記憶装置71に予め記憶されている上述のポンプ特性を参照してモータ許容トルクTmaxに対応する傾転角を許容傾転角Amaxとして算出する(ステップS110)。次に、圧力センサ28の検出値である操作パイロット圧の最高圧に基づき油圧ポンプ31の目標傾転角Atを演算する(ステップS120)。
次いで、ポンプ制御部77は、ステップS120における演算結果の目標傾転角AtがステップS110における算出結果の許容傾転角Amaxよりも小さいか否かを判定する(ステップS130)。ステップS130において、目標傾転角Atが許容傾転角Amaxよりも小さい場合(YESの場合)には、傾転角指令Acとして目標傾転角Atを設定する(ステップS140)。一方、目標傾転角Atが許容傾転角Amax以上である場合(NOの場合)には、傾転角指令Acとして許容傾転角Amaxを設定する(ステップS150)。ポンプ制御部77は、傾転角指令Acを油圧ポンプ31(レギュレータ)へ送信する。ステップS140又はステップS150の処理を終了すると、リターンしてスタートに戻り、次の演算周期を開始する。
このように、油圧ポンプ31の傾転角を許容傾転角Amax以下に制限するので、油圧ポンプ31の吸収トルクが電動モータ41のモータ許容トルクTmaxを超えてしまうことを防止することができる。この場合、第1~第3のバッテリ51~53及び商用電源100(各電源)の供給可能な最大電力の合計値(供給可能最大電力Pmax)を基に算出されたモータ許容トルクTmaxに対応する許容傾転角Amaxを用いて油圧ポンプ31の傾転角を制限するので、電動モータ41及びインバータ43の消費電力が供給可能最大電力Pmaxを超えないように油圧ポンプ31の油圧出力が制限されることになる。
図3に戻り、インバータコントローラ82は、ハード構成として、RAMやROM等からなる図示しない記憶装置及びCPUやMPU等からなる図示しない処理装置を備えている。記憶装置には、インバータ回路81の状態監視や異常検出及び制御に必要なプログラムや各種情報が予め記憶されている。処理装置は、記憶装置からプログラムや各種情報を宜読み込むと共に車体コントローラ70からの指令を受信し、当該プログラム及び指令に従って処理を実行することでインバータ回路81の状態監視や異常検出及び制御の機能を実現する。インバータコントローラ82は、処理装置により実行される機能として例えば、モータ制御部84及び電流制御部85を有している。
モータ制御部84は、回転数センサ27の検出信号(電動モータ41又は油圧ポンプ31の実回転数Na)を常時取り込んで車体コントローラ70へ送信すると共にインバータ回路81の異常の有無の情報を車体コントローラ70へ送信するものである。また、車体コントローラ70から受信した回転数指令Nc及び回転数センサ27によって検出された実回転数Naに基づいてモータトルク指令Tcを演算する。
モータ制御部84は、例えば、図6に示すフローチャートにしたがってモータトルク指令Tcを演算する。図6は図3に示す第1の実施の形態に係る電動式油圧作業機械のインバータコントローラにおけるモータ制御部の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図6において、モータ制御部84は、車体コントローラ70からの回転数指令Ncと回転数センサ27からの実回転数Naとの偏差に対してゲインGpを乗じることで、電動モータ41のモータトルク指令Tcを算出する(ステップS210)。ゲインGpは、電動モータ41を制御するために予め設定されたフィードバックゲインである。モータ制御部84は、演算結果のモータトルク指令Tcを電流制御部85へ出力する。ステップS210の処理を終了すると、リターンしてスタートに戻り、次の演算周期を開始する。
図3に戻り、電流制御部85は、モータ制御部84の演算結果であるモータトルク指令Tcに相当するトルクを電動モータ41が出力するようにインバータ回路81のトランジスタ(例えば、IGBT)を制御する。
このように、本実施の形態の車体コントローラ70は、回転数指示ダイアル23のダイアル操作量に応じた回転数指令Ncに相当する回転数に追従するようにインバータコントローラ82を介して電動モータ41をフィードバック制御する。加えて、電源異常の有無に応じて変動する第1~第3のバッテリ51~53及び商用電源100(複数の電源)の供給可能最大電力Pmaxの範囲内に電動モータ41及びインバータ43の消費電力が制限されるように設定したモータ許容トルクTmaxよりも油圧ポンプ31の吸収トルクが超えないように油圧ポンプ31の押除け容積(傾転角)を制限する。すなわち、車体コントローラ70は、電動モータ41及び油圧ポンプ31の回転数を回転数指示ダイアル23の指示(ダイアル操作量)に応じた回転数に追従させつつ、電動モータ41及びインバータ43の消費電力が第1~第3のバッテリ51~53及び商用電源100(複数の電源)の供給可能最大電力Pmaxを超えないように油圧ポンプ31の油圧出力を制限している。
次に、本発明の電動式油圧作業機械の第1の実施の形態の動作について図2~図6を用いて説明する。先ず、複数の電源のうち、バッテリシステムの第1のバッテリが故障した場合の動作について説明する。
図2に示す第1のバッテリ51が故障すると、第1のBMU57は監視中の第1のバッテリ51の異常を検出して第1の遮断装置54を遮断状態に切り替える。これにより、第1のバッテリ51の電力供給が不能となる。この場合、図3に示す第1のBMU57は、第1のバッテリ51の供給可能な最大電力Pb1_maxを0に設定してマスタBMU60へ送信する。一方、図2に示す第2及び第3のバッテリ52、53は正常なので、図3に示す第2及び第3のBMU58、59は第2及び第3のバッテリ52、53の状態(充電状態や温度)に応じた供給可能な最大電力Pb2_max、Pb3_maxをマスタBMU60へ送信する。
図3に示すマスタBMU60は、第1~第3のBMU57~59から送信された各バッテリ51、52、53の供給可能な最大電力Pb1_max、Pb2_max、Pb3_maxを合計することで、バッテリシステム42の供給可能な最大電力Pbsum_maxを算出する。演算結果のバッテリシステム42の供給可能な最大電力Pbsum_maxは、第1のバッテリ51の故障によって、第1のバッテリ51の故障前の供給可能な最大電力Pb1_max分だけ低くなっている。マスタBMU60は、演算結果のPbsum_maxを車体コントローラ70へ送信する。
図3に示す車体コントローラ70のモータ指令演算部76は、図4に示すように、マスタBMU60の演算結果であるバッテリシステム42の供給可能な最大電力Pbsum_maxを用いて算出した第1~第3のバッテリ51~53及び商用電源100(複数の電源)の供給可能最大電力Pmax(ステップS10)を基にモータ許容トルクTmaxを演算する(ステップS40)。演算結果のモータ許容トルクTmaxは、第1のバッテリ51の故障によるPbsum_maxの減少分が反映されることで、第1のバッテリ51の故障前よりも低くなっている。モータ指令演算部76は、図3に示すように、演算結果のモータ許容トルクTmaxをポンプ制御部77へ出力する。
ポンプ制御部77は、図5に示すように、油圧ポンプ31の傾転角(傾転角指令Ac)をモータ許容トルクTmaxに対応した許容傾転角Amax以下となるように制限する。油圧ポンプ31の傾転角を制限する許容傾転角Amaxは、モータ許容トルクTmaxに対応して算出されるので、第1のバッテリ51の故障前よりも低下したモータ許容トルクTmaxに応じて第1のバッテリ51の故障前よりも小さくなる。このため、第1のバッテリ51に故障が生じても、油圧ポンプ31の吸収トルクが電動モータ41の出力可能なトルク(モータ許容トルクTmax)を超えることを回避することができるので、電動モータ41のストールを防止することができる。
次に、入力装置により入力されるコンバータの供給電力が低く設定された場合又は商用電源の電力供給の異常若しくはコンバータの異常が発生した場合の動作について説明する。
例えば、図2に示すモニタ24に表示されたコンバータ45の供給可能な電力の3つの選択肢のうち、最小の電力がオペレータの操作により入力装置25から入力された場合を想定する。例えば、16アンペア、32アンペア、64アンペアの3つの供給電流が選択肢としてモニタ24に表示され、最小の16アンペアが選択された場合、図3に示す入力装置25は16アンペアに対応した選択供給電力Pcsを車体コントローラ70へ送信する。選択供給電力Pcsは3つの選択肢の供給電流の大きさに応じて設定されるので、16アンペアに対応した選択供給電力Pcsは他の選択肢(16アンペアよりも大きな供給電流の選択肢)が入力された場合よりも小さくなっている。
図3に示す車体コントローラ70の外部電源指令演算部75は、基本的に、入力装置25から送信された選択供給電力Pcsをコンバータ45の供給可能な最大電力Pc_maxとして演算する。ただし、給電口44が商用電源100の接続無しの状態を検出した場合や商用電源100の異常電圧を検出した場合またはコンバータコントローラ45bがコンバータ45の異常を検出した場合には、コンバータ45(商用電源100)の供給可能な最大電力Pc_maxを0に設定する。外部電源指令演算部75は、演算結果のコンバータ45の供給可能な最大電力Pc_maxをモータ指令演算部76へ出力すると共に、演算結果のコンバータ45の供給可能な最大電力Pc_maxを電力供給指令Pccとしてコンバータコントローラ45bへ送信する。
演算結果のコンバータ45の供給可能な最大電力Pc_maxは、基本的に、最小値の選択供給電力Pcsが入力された場合、最小値以外の選択肢が入力された場合に比べて低くなっている。ただし、商用電源100の電力供給の異常が発生した場合又はコンバータ45の異常が発生した場合には、当該Pc_maxを0に低下させる。
コンバータコントローラ45bは、車体コントローラ70からの電力供給指令Pccに基づきコンバータ回路45aを制御する。基本的には、入力装置25の入力に応じた供給電力が出力されるようにコンバータ回路45aを制御する。3つの選択肢のうちの最小値(17アンペア)が入力装置25に入力された場合には、最小の供給電力がコンバータ45から出力される。ただし、コンバータコントローラ45bがコンバータ45の異常を検出した場合または給電口44が商用電源100の接続無しの状態を検出した場合や商用電源100の異常電圧を検出した場合には、Pc_max=0に応じた電力供給指令Pccに基づいてコンバータ45による電力供給を停止する。
図3に示す車体コントローラ70のモータ指令演算部76は、図4に示すように、外部電源指令演算部75の演算結果であるコンバータ45の供給可能な最大電力Pc_maxを用いて算出した第1~第3のバッテリ51~53及び商用電源100(複数の電源)の供給可能最大電力Pmax(ステップS10)を基にモータ許容トルクTmaxを演算する(ステップS40)。演算結果のモータ許容トルクTmaxは、基本的に、入力装置25から入力された最小値に応じて算出されたPc_maxが反映されることで、入力装置25から最小値以外の選択肢(供給電流)が入力された場合に比べて低くなる。また、モータ許容トルクTmaxは、商用電源100の電力供給の異常又はコンバータ45の異常によるコンバータ45の供給可能な最大電力Pc_maxの減少分が反映されることで、商用電源100又はコンバータ45の異常前よりも低くなっている。モータ指令演算部76は、図3に示すように、演算結果のモータ許容トルクTmaxをポンプ制御部77へ出力する。
ポンプ制御部77の処理は、上述した第1のバッテリ51の故障時と同様である。すなわち、油圧ポンプ31の傾転角(傾転角指令Ac)をモータ許容トルクTmaxに対応した許容傾転角Amax以下となるように制限することで、油圧ポンプ31の油圧出力を制御する。許容傾転角Amaxは、商用電源100又はコンバータ45の異常前よりも低下したモータ許容トルクTmaxに応じて小さくなる。また、許容傾転角Amaxは、最小値が入力された場合、最小値以外の選択肢(供給電流)が入力されたときよりも低くなるモータ許容トルクTmaxに応じて小さくなる。このため、商用電源100又はコンバータ45の異常が生じた場合であっても、また、入力装置25から入力されるコンバータ45の供給電力として最小値が選択された場合であっても、油圧ポンプ31の吸収トルクが電動モータ41の出力可能なトルク(モータ許容トルクTmax)を超えることを回避することができるので、電動モータ41のストールを防止することができる。
上述したように、第1の実施の形態に係る油圧ショベル1(電動式油圧作業機械)は、油圧ポンプ31と、油圧ポンプ31から供給される圧油により駆動する油圧アクチュエータ5、7、17、18、19と、油圧ポンプ31から油圧アクチュエータ5、7、17、18、19に供給される圧油の流れを制御する制御弁ユニット33の制御弁と、油圧ポンプ31を駆動する電動モータ41と、電動モータ41に電力を供給する第1~第3のバッテリ51~53と、第1~第3のバッテリ51~53及び商用電源100(バッテリを含む複数の電源)から電動モータ41への供給電力を調整するインバータ43と、油圧ポンプ31及び電動モータ41を制御する制御装置としての車体コントローラ70及びインバータコントローラ82とを備えている。加えて、第1~第3のバッテリ51~53及び商用電源100(複数の電源)の各々の異常を検出すると共に、異常が検知された電源である異常電源からの電力供給を停止させる異常検出装置としての第1~第3のBMU57~59及び給電口44を備えている。車体コントローラ70及びインバータコントローラ82(制御装置)は、第1~第3のバッテリ51~53及び商用電源100(複数の電源)のうち異常電源の分を除いた各電源の供給可能な電力Pb1_max、Pb2_max、Pb3_max、Pc_maxの合計値である供給可能最大電力Pmaxを演算し、電動モータ41及びインバータ43の消費電力が演算結果の供給可能最大電力Pmaxを超えないように油圧ポンプ31の油圧出力を制限する制限制御を行うように構成されている。
この構成よれば、異常の有無に応じて変動する第1~第3のバッテリ51~53及び商用電源100(複数の電源)の供給可能最大電力Pmaxの範囲内に電動モータ41及びインバータ43の消費電力を制限しつつ、電動モータ41の出力を超えないように油圧ポンプ31の油圧出力を制限するので、第1~第3のバッテリ51~53及び商用電源100(複数の電源)のいずれかに異常が発生しても、第1~第3のバッテリ51~53からの過剰な電力の引出しを防止することができると共に、電動モータ41のストールを防止することができる。
また、本実施の形態においては、油圧ポンプ31が押除け容積が可変である可変容量ポンプであり、かつ、車体コントローラ70(制御装置)の上記制限制御が油圧ポンプ31の押除け容積を演算結果の供給可能最大電力Pmaxに応じて制限するものである。
この構成によれば、電源異常の有無に応じて変動する第1~第3のバッテリ51~53及び商用電源100(複数の電源)の供給可能最大電力Pmaxに応じて油圧ポンプ31の吸収トルクを制限することで油圧ポンプ31の油圧出力を制限するので、電源異常の発生時における電動モータ41のストールを確実に防止することができる。
また、本実施の形態においては、複数の電源のうちの1つは電気的に接続可能な外部電源としての商用電源100であり、油圧ショベル1(電動式油圧作業機械)は商用電源100(外部電源)の供給可能な電力としての選択供給電力Pcsを車体コントローラ70(制御装置)に入力する入力装置25を更に備えている。車体コントローラ70(制御装置)は、入力装置25からの入力値である選択供給電力Pcsを商用電源100(外部電源)の供給可能な電力として用いて供給可能最大電力Pmaxの演算を行うように構成されている。
この構成によれば、電動モータ41の電源として商用電源100(外部電源)を利用する場合において、入力装置25からの入力値Pcsを含む供給可能最大電力Pmaxに応じて電動モータ41の駆動を制限するので、商用電源100(外部電源)からの供給電力が過剰に消費されることを防止することができる。
[第2の実施の形態]
次に、本発明の電動式油圧作業機械の第2の実施の形態を図7~図9を用いて説明する。図7は本発明の第2の実施の形態に係る電動式油圧作業機械における油圧システム及び電気システム並びにそれらの制御システムを示すブロック図である。図8は図7に示す第2の実施の形態に係る電動式油圧作業機械の制御システムの機能ブロック図である。図9は図8に示す第2の実施の形態に係る電動式油圧作業機械の車体コントローラにおけるモータ指令演算部の処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、図7~図9において、図1~図6に示す符号と同符号のものは、同様な部分であるので、その詳細な説明は省略する。
本発明の電動式油圧作業機械の第2の実施の形態が第1の実施の形態に対して相違する主な点は、油圧ポンプ31Aが可変容量ポンプではなく押除け容積が不変である固定容量ポンプで構成されていること、及び、油圧ポンプ31Aの固定容量型への変更に応じて車体コントローラ70Aの制御方法が変更されていることである。第1の実施の形態においては、油圧ポンプ31の押除け容積(傾転角)を制限して単位回転数当たりの吐出流量(吸収トルク)を制御することで、電動モータ41及びインバータ43の消費電力が第1~第3のバッテリ51~53及び商用電源100(複数の電源)の供給可能最大電力Pmaxを超えないように油圧ポンプ31の油圧出力を制限している。それに対して、第2の実施の形態においては、電動モータ41及び油圧ポンプ31Aの回転数を制限することで、電動モータ41及びインバータ43の消費電力が第1~第3のバッテリ51~53及び商用電源100(複数の電源)の供給可能最大電力Pmaxを超えないように油圧ポンプ31Aの油圧出力を制限する。
図7に示す油圧システム30の油圧ポンプ31Aは、車体コントローラ70Aの直接的な制御対象ではなく、車体コントローラ70A及びインバータコントローラ82による電動モータ41の回転数制御によって間接的に回転数が制御されることで、油圧出力が制御されるものである。油圧システム30のそれ以外の構成は第1の実施の形態の場合と同様である。また、電気システム40の構成は第1の実施の形態の場合と同様である。
図8に示す第2の実施の形態の車体コントローラ70Aが第1の実施の形態の車体コントローラ70(図3参照)に対して相違する主な点は、固定容量型の油圧ポンプ31Aへの変更に応じて図3に示すポンプ制御部77が削除されていること及びモータ指令演算部76Aの演算方法が変更されていることである。車体コントローラ70Aのポンプ回転数算出部74及び外部電源指令演算部75の機能は第1の実施の形態の場合と同様である。
具体的には、モータ指令演算部76Aは、ポンプ回転数算出部74の算出結果の要求回転数Nr、マスタBMU60の演算結果のバッテリシステム42の供給可能な最大電力Pbsum_max、外部電源指令演算部75の演算結果のコンバータ45の供給可能な最大電力Pc_max、インバータコントローラ82からのインバータ43及び電動モータ41の異常の有無の情報に基づいて、電動モータ41の回転数指令Ncを演算する。例えば、モータ指令演算部76Aは、図9に示すフローチャートにしたがって電動モータ41の回転数指令Ncを演算する。
図9において、モータ指令演算部76Aは、第1の実施の形態と同様に、バッテリシステム42の供給可能な最大電力Pbsum_max(Pb1_max+Pb2_max+Pb3_max)とコンバータ45(商用電源100)の供給可能な最大電力Pc_maxとの合計値である供給可能最大電力Pmaxを演算する(ステップS10)。次に、第1~第3のバッテリ51~53及び商用電源100(複数の電源)から受電する電動モータ41が油圧ポンプ31Aを最小のアイドリング回転数で駆動可能か否かを判定する(ステップS20A)。具体的には、ステップS10の演算結果である供給可能最大電力Pmaxに効率値Eimを乗算することで得られる電動モータ41の出力可能な最大値(Pmax×Eim)が固定容量型の油圧ポンプ31Aを最小のアイドリング回転数で駆動させるために必要な最小動力Pf2を超えているか否かを判定する。最小動力Pf2は、固定容量型の油圧ポンプ31Aを駆動するために必要なトルクであるポンプ駆動トルクTpfに対して最小のアイドリング回転数を乗算することで算出されるものである。ポンプ駆動トルクTpfは、油圧ポンプ31Aの性能仕様から予め設定された所定値である。ポンプ駆動トルクTpf及び最小動力Pf2は、記憶装置71に予め記憶されている。
ステップS20AにおいてNOの場合には、第1の実施の形態と同様に電源の故障と判定し(ステップS50)、処理を終了する。一方、YESの場合には、電動モータ41の許容回転数Nmaxを演算する(ステップS22)。許容回転数Nmaxは、電動モータ41及びインバータ43の消費電力が複数の電源51~53、100の供給可能最大電力Pmaxを超えないように制限すると共に油圧ポンプ31Aの油圧出力が電動モータ41の出力可能な範囲を超えないように制限するための電動モータ41の回転数の上限(許容値)である。許容回転数Nmaxは、電動モータ41の出力可能な最大値(Pmax×Eim)をポンプ駆動トルクTpfによって除算することで算出される。油圧ポンプ31Aは電動モータ41に接続されているので、油圧ポンプ31Aの回転数も許容回転数Nmaxに応じて制限されることになる。
次に、モータ指令演算部76Aは、ポンプ回転数算出部74からの要求回転数Nrが演算結果の許容回転数Nmaxよりも低いか否かを判定する(ステップS24)。要求回転数Nrが許容回転数Nmaxよりも低い場合(YESの場合)には、第1の実施の形態の場合と同様に、要求回転数Nrを電動モータ41の回転数指令Ncとして設定する(ステップ30)。一方、要求回転数Nrが許容回転数Nmax以上である場合(NOの場合)には、許容回転数Nmaxを電動モータ41の回転数指令Ncとして設定する(ステップ32)。モータ指令演算部76Aは、第1の実施の形態の場合と同様に、電動モータ41の回転数指令Ncをインバータコントローラ82へ送信する。ステップS30又はS32の処理を終了すると、リターンしてスタートに戻り、次の演算周期を開始する。
図8に戻り、インバータコントローラ82は、第1の実施の形態の場合と同様に、車体コントローラ70Aからの回転数指令Ncと回転数センサ27からの実回転数Naとの偏差に基づいてインバータ回路81を制御することで、電動モータ41の回転数を制御する。この場合、第1の実施の形態とは異なり、回転数指令Ncが許容回転数Nmax以下に制限されているので、電動モータ41及び油圧ポンプ31Aの回転数の上限が制限されている。
このように、本実施の形態においては、電動モータ41及びインバータ43の消費電力が第1~第3のバッテリ51~53及び商用電源100(複数の電源)の供給可能最大電力Pmaxを超えないように、かつ、油圧ポンプ31Aの油圧出力が電動モータ41の出力可能な最大値を超えないように、電動モータ41(油圧ポンプ31A)の回転数を許容回転数Nmax以下に制限するものである。
次に、本発明の電動式油圧作業機械の第2の実施の形態の動作について図7~図9を用いて説明する。バッテリシステムの第1のバッテリが故障した場合の動作について説明する。
図7に示すバッテリシステム42の第1のバッテリ51が故障すると、第1の実施の形態の場合と同様に、図8に示す第1のBMU57が第1のバッテリ51の供給可能な最大電力Pb1_maxを0に設定する。そのため、バッテリシステム42の供給可能な最大電力Pbsum_maxは、第1の実施の形態の場合と同様に、第1のバッテリ51の故障前の供給可能な最大電力Pb1_max分だけ低くなっている。
車体コントローラ70Aのモータ指令演算部76Aは、図9に示すように、バッテリシステム42の供給可能な最大電力Pbsum_maxを用いて算出した複数の電源51~53、100の供給可能最大電力Pmax(ステップS10)及び固定容量型の油圧ポンプ31Aのポンプ駆動トルクTpf(所定値)を基に許容回転数Nmaxを演算し(ステップS22)、電動モータ41の回転数指令Ncを演算結果の許容回転数Nmax以下に制限する(ステップS24、S30、S32)。許容回転数Nmaxは、第1のバッテリ51の故障によるバッテリシステム42の供給可能な最大電力Pbsum_maxの減少分が反映されることで、第1のバッテリ51の故障前よりも低くなっている。
インバータコントローラ82は、第1の実施の形態の場合と同様に、車体コントローラ70Aからの回転数指令Ncに相当する回転数に追従するように電動モータ41をフィードバック制御する。回転数指令Ncは、第1のバッテリ51の故障前よりも低くなった許容回転数Nmaxによって制限されている。回転数指令Ncを制限する許容回転数Nmaxは、電動モータ41及びインバータ43の消費電力が複数の電源51~53、100の供給可能最大電力Pmaxを超えないように、かつ、油圧ポンプ31Aの油圧出力が電動モータ41の出力可能な最大値を超えないように設定されたものである。したがって、第1のバッテリ51の故障により複数の電源51~53、100からの供給電力が低下しても、第1~第3のバッテリ51~53からの過剰な電力の引出し及び電動モータ41のストールを防止することができる。
上述した第2の実施の形態によれば、前述した第1の実施の形態と同様に、
異常の有無に応じて変動する第1~第3のバッテリ51~53及び商用電源100(複数の電源)の供給可能最大電力Pmaxの範囲内に電動モータ41及びインバータ43の消費電力を制限しつつ、電動モータ41の出力を超えないように油圧ポンプ31Aの油圧出力を制限するので、第1~第3のバッテリ51~53及び商用電源100(複数の電源)のいずれかに異常が発生しても、第1~第3のバッテリ51~53からの過剰な電力の引出しを防止することができると共に、電動モータ41のストールを防止することができる。
また、本実施の形態においては、油圧ポンプ31Aは押除け容積が不変である固定容量ポンプであり、かつ、車体コントローラ70A及びインバータコントローラ82(制御装置)の上記制限制御は電動モータ41の回転数を演算結果の供給可能最大電力Pmaxに応じて制限するものである。
この構成によれば、油圧ポンプ31Aが固定容量ポンプであっても、電源の異常発生時における第1~第3のバッテリ51~53からの過剰な電力の引出し及び電動モータ41のストールを防止することができる。
[第3の実施の形態]
次に、本発明の電動式油圧作業機械の第3の実施の形態を図10~図11を用いて説明する。図10は本発明の第3の実施の形態に係る電動式油圧作業機械における油圧システム及び電気システム並びにそれらの制御システムを示すブロック図である。図11は図10に示す第3の実施の形態に係る電動式油圧作業機械の制御システムの機能ブロック図である。なお、図10~図11において、図1~図9に示す符号と同符号のものは、同様な部分であるので、その詳細な説明は省略する。
図10に示す本発明の電動式油圧作業機械の第3の実施の形態が第1の実施の形態に対して相違する主な点は、電動モータ41に電力を供給する複数の電源のうちの1つとして商用電源100(図2参照)の代わりに燃料電池47を搭載していること、及び、燃料電池47の搭載に応じて車体コントローラ70Bの機能の一部が変更されていることである。なお、油圧システム30の構成は、第1の実施の形態の場合と同様である。
具体的には、電気システム40Bは、第1の実施の形態における商用電源100のための給電口44及びコンバータ45(共に図2参照)に代えて、電動モータ41及びバッテリシステム42に電力を供給可能な燃料電池システム46を備えている。燃料電池システム46は、燃料と酸化剤とを化学反応させて直流電力を生成する燃料電池47と、燃料電池47が生成した直流電力の電圧を変換してバッテリシステム42及びインバータ43に供給するコンバータ48(以下、FCコンバータ)とを備えている。電気システム40Bでは、バッテリシステム42及びFCコンバータ48が電力ライン46を介してインバータ43に接続されている。燃料電池47は、例えば、燃料及び酸化剤として水素及び酸素を用いるものである。燃料電池47は、燃料を貯留する燃料タンク47aと、燃料タンク47a内の燃料の残量を検出する残量検出器47bとを含むように構成されている。
燃料電池47及びFCコンバータ48に対する監視及び制御は、FCコントローラ49によって行われる。FCコントローラ49は、燃料電池47及びFCコンバータ48の異常を検出すると共に、燃料電池47又はFCコンバータ48の異常検出時に燃料電池47の電力供給を停止するように構成されて異常検出装置として機能する。FCコントローラ49は、車体コントローラ70Bに車体通信網62を介して通信可能に接続されており、燃料電池47及びFCコンバータ48の状態や異常の有無の情報を車体コントローラ70Bに提供する。
FCコントローラ49は、ハード構成として、RAMやROM等からなる図示しない記憶装置及びCPUやMPU等からなる図示しない処理装置を備えている。記憶装置には、燃料電池47及びFCコンバータ48の状態監視や異常検出及び制御に必要なプログラムや各種情報が予め記憶されている。処理装置は、記憶装置からプログラムや各種情報を適宜読み込み、当該プログラム及び指令に従って処理を実行することで燃料電池47及びFCコンバータ48の状態監視や異常検出及び制御の機能を実現する。
図11に示すFCコントローラ49は、燃料電池47の供給可能な最大電力Pf_maxを算出し、算出結果の燃料電池47の供給可能な最大電力Pf_maxを車体コントローラ70Bへ送信する。FCコントローラ49は、燃料電池47の性能仕様を基に予め設定されている供給可能な電力最大値を有しており、この電力最大値に対して燃料電池47及びFCコンバータ48の状態や異常の有無を考慮して燃料電池47の供給可能な最大電力Pf_maxを演算する。例えば、残量検出器47bにより検出された燃料の残量が少ない場合には、仕様上の電力最大値に対して残量検出器47bの検出値(燃料の残量)を考慮して減算した値を燃料電池47の供給可能な最大電力Pf_maxとして算出する。また、燃料電池47又はFCコンバータ48の異常を検出した場合には、燃料電池47の供給可能な最大電力Pf_maxを0に設定する。すなわち、異常が検出された燃料電池47の供給可能な電力分を除外する。
次に、図11に示す第3の実施の形態の車体コントローラ70Bが第1の実施の形態の車体コントローラ70(図3参照)に対して相違する主な点は、電動モータ41の電源の1つを商用電源100から燃料電池47へ変更したことに応じて、図3に示す外部電源指令演算部75が削除されていること及びモータ指令演算部76Bの演算方法が変更されていることである。車体コントローラ70Bにおけるポンプ回転数算出部74及びポンプ制御部77の機能は、第1の実施の形態の場合と同様である。
具体的には、モータ指令演算部76Bは、ポンプ回転数算出部74の算出結果の要求回転数Nr、回転数センサ27により検出された電動モータ41の実回転数Na、マスタBMU60の演算結果のバッテリシステム42の供給可能な最大電力Pbsum_max、FCコントローラ49の演算結果の燃料電池47の供給可能な最大電力Pf_max、インバータコントローラ82からのインバータ43及び電動モータ41の異常の有無の情報に基づいて、電動モータ41の回転数指令Nc及びモータ許容トルクTmaxを演算する。すなわち、モータ指令演算部76Bは、第1の実施の形態におけるコンバータ45の供給可能な最大電力Pc_maxに代えて燃料電池47の供給可能な最大電力Pf_maxを用いて電動モータ41の回転数指令Nc及びモータ許容トルクTmaxを演算するものである。詳細には、図4に示すフローチャートのステップS10において、複数の電源42、47の供給可能最大電力Pmaxの演算がバッテリシステム42の供給可能な最大電力Pbsum_maxと燃料電池47の供給可能な最大電力Pf_maxとの合計値に変更される。図4に示すフローチャートのそれ以外の演算処理については、第1の実施の形態の場合と同様である。
したがって、複数の電源42、47の供給可能最大電力Pmaxが燃料電池47の供給可能な最大電力Pf_maxの変化に応じて増減するので、モータ許容トルクTmaxが燃料電池47の供給可能な最大電力Pf_maxの低下に応じて低くなる。例えば、燃料電池47又はFCコンバータ48に異常が生じた場合、燃料電池47の供給可能な最大電力Pf_maxがFCコントローラ49によって0に設定されるので、モータ指令演算部76Bの演算結果のモータ許容トルクTmaxも燃料電池47の供給可能な最大電力Pf_maxの減少に応じて低くなる。油圧ポンプ31の傾転角は、第1の実施の形態の場合と同様に、車体コントローラ70Bのポンプ制御部77によってモータ許容トルクTmaxに対応して制限される(図5参照)。このため、燃料電池47又はFCコンバータ48に異常が生じても、油圧ポンプ31の吸収トルクが電動モータ41の出力可能なトルク(モータ許容トルクTmax)を超えることを回避することができるので、電動モータ41のストールを防止することができる。
上述した第3の実施の形態によれば、前述した第1の実施の形態と同様に、異常の有無に応じて変動する第1~第3のバッテリ51~53及び燃料電池47(複数の電源)の供給可能最大電力Pmaxの範囲内に電動モータ41及びインバータ43の消費電力を制限しつつ、電動モータ41の出力を超えないように油圧ポンプ31の油圧出力を制限するので、第1~第3のバッテリ51~53及び燃料電池47(複数の電源)のいずれかに異常が発生しても、第1~第3のバッテリ51~53からの過剰な電力の引出しを防止することができると共に、電動モータ41のストールを防止することができる。
また、本実施の形態においては、複数の電源のうちの1つが搭載された燃料電池47であり、燃料電池47は燃料を貯留する燃料タンク47a(タンク)及び燃料タンク47a(タンク)内の燃料の残量を検出する残量検出器47bを含んでいる。また、車体コントローラ70B(制御装置)は、燃料電池47の供給可能な電力として残量検出器47bにより検出された燃料の残量が考慮された電力値Pf_maxを用いて供給可能最大電力Pmaxの演算を行うように構成されている。
この構成によれば、電動モータ41の電源の1つとして燃料電池47を用いる場合においても、燃料電池47の燃料残量や異常の有無に対応して電動モータ41及びインバータ43の消費電力の制限及び油圧ポンプ31の油圧出力の制限が可能となる。
[第4の実施の形態]
次に、本発明の電動式油圧作業機械の第4の実施の形態について図12~図14を用いて説明する。図12は本発明の第4の実施の形態に係る電動式油圧作業機械における制御システムの機能ブロック図である。図13は図12に示す第4の実施の形態に係る電動式油圧作業機械の車体コントローラにおけるスピードセンシング制御部の処理手順の一例を示すフローチャートである。図14は図12に示す第4の実施の形態に係る電動式油圧作業機械のインバータコントローラにおけるモータ制御部の処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、図12~図14において、図1~図11に示す符号と同符号のものは、同様な部分であるので、その詳細な説明は省略する。
本発明の電動式油圧作業機械の第4の実施の形態が第1の実施の形態に対して相違する主な点は、車体コントローラ70Cによる油圧ポンプ31の制御としてスピードセンシング制御が採用されること及び油圧ポンプ31のスピードセンシング制御の採用に応じてインバータコントローラ82Cによる電動モータ41の制御方法が変更されていることである。なお、油圧システム30及び電気システム40のハード構成は、第1の実施の形態の場合と同様である(図2参照)。
図12に示す第4の実施の形態の車体コントローラ70Cが第1の実施の形態の車体コントローラ70(図3参照)に対して相違する主な点は、スピードセンシング制御を実行するためのスピードセンシング制御部77Cが図3に示すポンプ制御部77に代替していること及びモータ指令演算部76Cの演算結果のモータ許容トルクTmaxの出力先がインバータコントローラ82Cへ変更されていることである。車体コントローラ70Cにおけるポンプ回転数算出部74及び外部電源指令演算部75の機能は第1の実施の形態の場合と同様である。さらに、図12に示す第4の実施の形態のインバータコントローラ82Cが第1の実施の形態のインバータコントローラ82(図3参照)に対して相違する主な点は、モータ制御部84Cの演算処理が油圧ポンプ31のスピードセンシング制御に対応してモータ指令演算部76Cからのモータ許容トルクTmaxを用いるように変更されていることである。
車体コントローラ70Cのスピードセンシング制御部77Cは、ポンプ回転数算出部74の算出結果の要求回転数Nrを受け取ると共に、回転数センサ27により検出された電動モータ41の実回転数Naをインバータコントローラ82Cから受信する。さらに、電動モータ41の要求回転数Nrと実回転数Naとの偏差を監視し、電動モータ41の実回転数Naが要求回転数Nrよりも低下した場合には電動モータ41の実回転数Naが要求回転数Nrに近づくように油圧ポンプ31の傾転角を制御する。すなわち、スピードセンシング制御部77Cは、電動モータ41の実回転数Naが要求回転数Nrよりも低下したときに、油圧ポンプ31の吸収トルクを低下させることで、電動モータ41の要求回転数Nrと実回転数Naの偏差を0に近づけるように制御するものである。
スピードセンシング制御部77Cは、例えば、図13に示すフローチャートにしたがって油圧ポンプ31の傾転角を制限する。図13において、スピードセンシング制御部77Cは、電動モータ41の要求回転数Nrと実回転数Naの偏差に対してゲインGppを乗算することで、傾転角制御量Rpを算出する(ステップS310)。ゲインGppは、油圧ポンプ31の傾転角を制御するためのフィードバックゲインであり、設計時に予め設定する所定値である。次に、油圧ポンプ31の仕様上の傾転角の最大値Rp_smaxからステップS310の演算結果である傾転角制御量Rpを減算することで、油圧ポンプ31の許容傾転角Rpmaxを演算する(ステップS320)。許容傾転角Rpmaxは、油圧ポンプ31のスピードセンシング制御における傾転角の変更可能な上限(許容値)である。スピードセンシング制御部77Cは、ステップS320の演算結果の許容傾転角Rpmaxを超えないように油圧ポンプ31の傾転角指令Acを設定することで、油圧ポンプ31の傾転角を制限するものである。
図12に戻り、モータ指令演算部76Cは、第1の実施の形態のモータ指令演算部76と同様に、電動モータ41の回転数指令Nc及びモータ許容トルクTmaxの演算処理を行う(図4参照)。ただし、第1の実施の形態のモータ指令演算部76が演算結果の回転数指令Ncをインバータコントローラ82へ送信すると共に演算結果のモータ許容トルクTmaxをポンプ制御部77へ出力するのに対して、本実施の形態のモータ指令演算部76Cは演算結果の回転数指令Nc及びモータ許容トルクTmaxをインバータコントローラ82Cへ送信する。
第1の実施の形態においては、ポンプ制御部77がモータ許容トルクTmaxを用いて油圧ポンプ31の傾転角を制限することで、電動モータ41及びインバータ43の消費電力が複数の電源42、100の供給可能な最大電力Pmaxを超えないように制限されると共に、油圧ポンプ31の油圧出力が電動モータ41の出力を超えないように制限される。それに対して、本実施の形態においては、インバータコントローラ82Cのモータ制御部84Cがモータ許容トルクTmaxを用いて電動モータ41の出力トルクを制限することで、電動モータ41及びインバータ43の消費電力が複数の電源42、100の供給可能な最大電力Pmaxを超えないように制限される。
具体的には、モータ制御部84Cは、車体コントローラ70Cからの回転数指令Nc及びモータ許容トルクTmax、並びに、回転数センサ27からの実回転数Naに基づいてモータトルク指令Tcを演算する。例えば、図14に示すフローチャートにしたがってモータトルク指令Tcを演算する。
図14において、モータ制御部84Cは、回転数指令Ncと実回転数Naとの偏差に対してゲインGpを乗じることで、電動モータ41のモータ目標トルクTtを算出する(ステップS210A)。モータ目標トルクTtの演算方法は、第1の実施の形態におけるモータトルク指令Tcの演算(図6参照)と同様である。次に、モータ制御部84Cは、演算結果のモータ目標トルクTtが車体コントローラ70Cからのモータ許容トルクTmaxよりも低いか否かを判定する(ステップS220)。モータ目標トルクTtがモータ許容トルクTmaxよりも低い場合(YESの場合)にはモータ目標トルクTtをモータトルク指令Tcとして設定する一方(ステップS230)、モータ目標トルクTtがモータ許容トルクTmax以上の場合(NOの場合)にはモータ許容トルクTmaxをモータトルク指令Tcとして設定する(ステップS240)。ステップS230又はS240の処理を終了すると、リターンしてスタートに戻り、次の演算周期を開始する。
次に、本発明の電動式油圧作業機械の第4の実施の形態の動作について図12~図14を用いて説明する。バッテリシステムの第1のバッテリが故障した場合の動作について説明する。
第1のバッテリ51(図2参照)が故障すると、第1の実施の形態の場合と同様に、図12に示す第1のBMU57が第1のバッテリ51の最大電力Pb1_maxを0に設定するので、マスタBMU60の演算結果のバッテリシステム42の最大電力Pbsum_maxが第1のバッテリ51の故障前よりも低くなる。車体コントローラ70Cのモータ指令演算部76Cはバッテリシステム42の最大電力Pbsum_maxを含む供給可能最大電力Pmaxを基にモータ許容トルクTmaxを演算するので(図4参照)、モータ許容トルクTmaxはバッテリシステム42の最大電力Pbsum_maxの減少分が反映されて第1のバッテリ51の故障前よりも低くなる。
インバータコントローラ82Cは、電動モータ41の出力トルクを第1のバッテリ51の故障前よりも低くなったモータ許容トルクTmax以下になるように制限する。これにより、電動モータ41及びインバータ43の消費電力が複数の電源51~53、100の供給可能最大電力Pmaxを超えないように制限される。
もし、モータ許容トルクTmaxの制限によって電動モータ41の出力トルクが低下した場合、第1のバッテリ51の故障前には油圧ポンプ31の吸収トルクと釣り合っていた電動モータ41の出力トルクが油圧ポンプ31の吸収トルクよりも低くなってしまう。この場合、電動モータ41が要求回転数Nrに相当する回転数を維持することができず、電動モータ41及び油圧ポンプ31の実回転数Naが下がってしまう。このとき、車体コントローラ70Cのスピードセンシング制御部77Cが要求回転数Nrと実回転数Naとの偏差を検知して油圧ポンプ31の吸収トルクが小さくなるように傾転角を制御することで基本回転数あたりの吐出流量を低下させる。これにより、電動モータ41の実回転数Naが要求回転数Nrに追従しつつ油圧ポンプ31の吸収トルクと電動モータ41の出力トルクとが釣り合うようになる。
このように、本実施の形態においては、電動モータ41の出力トルクをモータ許容トルクTmax以下に制限することで、電動モータ41及びインバータ43の消費電力が複数の電源51~53、100の供給可能最大電力Pmaxを超えないように制限することでき、かつ、油圧ポンプのスピードセンシング制御によって電動モータ41の実回転数Naが要求回転数Nrに追従するように油圧ポンプ31の吸収トルクを電動モータ41の出力トルクに釣り合わせることで、電動モータ41のストールを防ぐことができる。
上述した第4の実施の形態によれば、前述した第1の実施の形態と同様に、異常の有無に応じて変動する第1~第3のバッテリ51~53及び商用電源100(複数の電源)の供給可能最大電力Pmaxの範囲内に電動モータ41及びインバータ43の消費電力を制限しつつ、電動モータ41の出力を超えないように油圧ポンプ31の油圧出力を制限するので、第1~第3のバッテリ51~53及び商用電源100(複数の電源)のいずれかに異常が発生しても、第1~第3のバッテリ51~53からの過剰な電力の引出しを防止することができると共に、電動モータ41のストールを防止することができる。
また、本実施の形態に係る油圧ショベル1は、油圧ポンプ31又は電動モータ41の回転数を指示する回転数指示装置としての回転数指示ダイアル23と、油圧ポンプ31又は電動モータ41の実回転数Naを検出する回転数センサ27とを更に備えている。油圧ポンプ31は押除け容積が可変である可変容量ポンプである。また、車体コントローラ70C及びインバータコントローラ82C(制御装置)の上記制限制御は、電動モータ41の出力トルクを演算結果の供給可能最大電力Pmaxに応じて制限すると共に、回転数センサ27より検出された実回転数Naが回転数指示ダイアル23の指示に応じた要求回転数Nrよりも低くなるにしたがって油圧ポンプ31の吸収トルクが減少するように油圧ポンプ31の押除け容積を制御するものである。
この構成によれば、電源の異常発生時における第1~第3のバッテリ51~53からの過剰な電力の引出しの防止及び電動モータ41のストール防止をいわゆる油圧ポンプ31のスピードセンシング制御を用いて実現することができる。油圧ポンプ31のスピードセンシング制御は、油圧ポンプ31の原動機としてエンジンを用いる既存の油圧ショベルにおいて広く活用されている。既存のスピードセンシング制御はエンジンの要求回転数と実回転数の入力を用いて実行されるので、油圧ポンプ31の原動機として電動モータを用いるスピードセンシング制御では電動モータ41の要求回転数と実回転数の入力を用いて実行することが可能である。したがって、油圧ポンプ31のスピードセンシング制御を実行可能な電動式の油圧ショベル1をエンジン搭載の既存の油圧ショベルをベースに開発する場合、既存の油圧ショベルの油圧制御システムを極力変更せずに適用することが可能であり、既存の油圧システムの設計変更が少なくて済む。
[第5の実施の形態]
次に、本発明の電動式油圧作業機械の第5の実施の形態を図15~図18を用いて説明する。図15~図18において、図1~図14に示す符号と同符号のものは、同様な部分であるので、その詳細な説明は省略する。図15は第5の実施の形態に係る電動式油圧作業機械における油圧システム及び電気システム並びにそれらの制御システムを示すブロック図である。図16は図15に示す第5の実施の形態に係る電動式油圧作業機械の制御システムの機能ブロック図である。
図15及び図16に示す本発明の電動式油圧作業機械の第5の実施の形態が第1の実施の形態に対して相違する主な点は、操作装置22Dが油圧パイロット式から電気式に変更されていると共に油圧システム30Dにおける制御弁ユニット33の各制御弁に入力する操作パイロット圧が操作装置22Dではなく電磁式パイロット弁36によって生成されていること、車体コントローラ70Dによる電磁式パイロット弁36の制御が追加されていること、及び、車体コントローラ70Dによる電磁式パイロット弁36の開口量制限により油圧ポンプ31の傾転角が間接的に制限されることである。なお、図15に示す電気システム40のハード構成は、第1の実施の形態の場合と同様である(図2参照)。
図15において、電気式の操作装置22Dは、車体コントローラ70Dに車体通信網62を介して通信可能に接続されており、操作内容及び操作量に応じた操作信号(電気信号)を車体コントローラ70Dへ送信する。車体コントローラ70Dは、操作装置22Dからの操作信号に応じて電磁式パイロット弁36の開口量を制御することで、制御弁ユニット33の各制御弁の駆動を制御する。
油圧システム30Dの電磁式パイロット弁36は、パイロットポンプ34の吐出圧を車体コントローラ70Dの指令に応じて減圧することで、制御弁ユニット33の各制御弁を駆動する操作パイロット圧を生成するものである。なお、図15において、電磁式パイロット弁36が1つのみ図示されているが、制御弁ユニット33の各制御弁に対して一対の電磁式パイロット弁36が対応するように設けられる。圧力センサ28は、各電磁式パイロット弁36が生成した操作パイロット圧のうちの最高圧を検出するものであり、検出した操作パイロット圧の最高圧に対応する検出信号を車体コントローラ70Dへ送信する。
図16に示す第5の実施の形態の車体コントローラ70Dが第1の実施の形態の車体コントローラ70(図3参照)に対して相違する主な点は、電磁式パイロット弁36を制御するためのパイロット弁制御部79が追加されていること、並びに、モータ指令演算部76D及びポンプ制御部77Dの演算処理が電磁式パイロット弁36の開口量制限の制御に対応して変更されていることである。なお、車体コントローラ70Dにおけるポンプ回転数算出部74及び外部電源指令演算部75の機能は第1の実施の形態の場合と同様である。
具体的には、モータ指令演算部76Dには、第1の実施の形態と同様に、ポンプ回転数算出部74の算出結果の要求回転数Nr、回転数センサ27により検出された電動モータ41の実回転数Na、マスタBMU60の演算結果のバッテリシステム42の供給可能な最大電力Pbsum_max、外部電源指令演算部75の演算結果のコンバータ45の供給可能な最大電力Pc_max、インバータ43及び電動モータ41の異常の有無の情報が入力されることに加えて、インバータコントローラ82からインバータ入力電力Pinvが入力される。インバータ入力電力Pinvは、バッテリシステム42及びコンバータ45(商用電源100)からインバータ回路81に入力された演算時点の実際の電力であり、電流センサ及び電圧センサ(図示せず)によって検出されるインバータ回路81の入力電流と入力電圧の積により算出可能である。
モータ指令演算部76Dは、これらの入力情報に基づき、電動モータ41の回転数指令Ncを演算すると共に、第1の実施の形態の場合のモータ許容トルクTmaxに代えて、電磁式パイロット弁36の許容開口量Vmaxを演算する。電磁式パイロット弁36の許容開口量Vmaxは、商用電源100の供給状態及びコンバータ45の異常の有無並びにバッテリシステム42の異常の有無に応じて電磁式パイロット弁36の開口量の変更可能な上限(許容値)である。モータ指令演算部76Dは、電動モータ41の回転数指令Ncをインバータコントローラ82へ送信し、電磁式パイロット弁36の許容開口量Vmaxをパイロット弁制御部79へ出力する。
モータ指令演算部76Dは、例えば、図17に示すフローチャートにしたがって電動モータ41の回転数指令Nc及び電磁式パイロット弁36の許容開口量Vmaxを演算する。図17は図16に示す第5の実施の形態に係る電動式油圧作業機械の車体コントローラにおけるモータ指令演算部の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図17において、ステップS10、S20、S30、S50の処理は、第1の実施の形態の場合と同様である。すなわち、モータ指令演算部76Dは、複数の電源42、100の供給可能最大電力Pmaxを演算し(ステップS10)、電動モータ41が油圧ポンプ31を最小のアイドリング回転数で駆動可能か否かを判定する(ステップS20)。電動モータ41が油圧ポンプ31を駆動不能と判定した場合(NOの場合)には、電源の故障と判定する(ステップS50)。一方、電動モータ41が油圧ポンプ31を駆動可能と判定した場合(YESの場合)には、要求回転数Nrを電動モータ41の回転数指令Ncとして設定する(ステップS30)。
次に、モータ指令演算部76Dは、ステップS10の演算結果である複数の電源42、100の供給可能最大電力Pmaxがインバータ入力電力Pinvを超えているか否かを判定する(ステップS60)。複数の電源42、100の供給可能最大電力Pmaxがインバータ入力電力Pinvを超えている場合(YESの場合)、すなわち複数の電源42、100の電力供給に余力がある場合には、電磁式パイロット弁36の仕様上の最大開口量V_smaxを電磁式パイロット弁36の許容開口量Vmaxとして設定する(ステップS70)。一方、複数の電源42、100の供給可能最大電力Pmaxがインバータ入力電力Pinv以下である場合(NOの場合)には、インバータ入力電力Pinvと複数の電源42、100の供給可能最大電力Pmaxとの偏差に対してゲインGpvを乗算した演算結果を電磁式パイロット弁36の仕様上の最大開口量V_smaxから減算した値を電磁式パイロット弁36の許容開口量Vmaxとして設定する(ステップS80)。ゲインGpvは、電磁式パイロット弁36の開口量を制御するためのフィードバックゲインであり、設計時に予め設定する所定値である。モータ指令演算部76Dは、演算結果の電磁式パイロット弁36の許容開口量Vmaxをパイロット弁制御部79へ出力する。ステップS70又はS80の処理を終了すると、リターンしてスタートに戻り、次の演算周期を開始する。
図16に戻り、パイロット弁制御部79は、操作装置22Dの操作信号(操作内容及び操作量)を受信すると共に、モータ指令演算部76Dから電磁式パイロット弁36の許容開口量Vmaxを受け取る。また、操作装置22Dからの操作信号を基に電磁式パイロット弁36の目標開口量を演算し、演算結果の目標開口量がモータ指令演算部76Dからの許容開口量Vmaxよりも小さいか否かを判定する。目標開口量が許容開口量Vmaxよりも小さい場合には、目標開口量を電磁式パイロット弁36の開口指令Vcとして設定する。一方、目標開口量が許容開口量Vmax以上の場合には、許容開口量Vmaxを電磁式パイロット弁36の開口指令Vcとして設定する。パイロット弁制御部79は、演算結果の開口指令Vcを電磁式パイロット弁36へ送信する。
このように、パイロット弁制御部79は、基本的に、操作装置22Dの操作に応じて電磁式パイロット弁36の開口量を制御することで操作パイロット圧を制御する。電磁式パイロット弁36の開口量に応じて生成された操作パイロット圧によって、制御弁ユニット33の各制御弁の駆動が制御される。ただし、本実施の形態においては、電磁式パイロット弁36の開口量を許容開口量Vmax以下に制限することで、電磁式パイロット弁36により生成される操作パイロット圧の最高圧を制限する。これにより、油圧ポンプ31の傾転角(吸収トルク)を制限することができるので、油圧ポンプ31の油圧出力の制限が可能となる。この理由については、ポンプ制御部77Dの制御方法の説明のときに述べる。
ポンプ制御部77Dは、圧力センサ28の検出信号(操作パイロット圧の最高圧)に基づき油圧ポンプ31の押除け容積(傾転角)を制御するように構成されている。すなわち、操作パイロット圧の最高圧が大きくなるにしたがって油圧ポンプ31の押除け容積(傾転角)が大きくなるように油圧ポンプ31の傾転角を調整する。第1の実施の形態においては、ポンプ制御部77がモータ指令演算部76の演算結果のモータ許容トルクTmaxを用いて油圧ポンプ31の傾転角を制限している(図5参照)。それに対して、本実施の形態のポンプ制御部77Dは、モータ許容トルクTmaxを用いて油圧ポンプ31の傾転角を制限することはなく、圧力センサ28によって検出された操作パイロット圧の最高圧に応じて油圧ポンプ31の傾転角を制御するだけである。
ポンプ制御部77Dは、例えば、図18に示すフローチャートにしたがって油圧ポンプ31の傾転角を制御する。図18は図16に示す第5の実施の形態に係る電動式油圧作業機械の車体コントローラにおけるポンプ制御部の処理手順の一例を示すフローチャートである。図18に示す本実施の形態のフローチャートは、図5に示す第1の実施の形態のフローチャートのうちステップS110、S130、S150を削除したものである。すなわち、ポンプ制御部77Dは、圧力センサ28の検出値(操作パイロット圧の最高圧)に基づき油圧ポンプ31の目標傾転角Atを演算し(ステップS120)、モータ許容トルクTmaxに対応する許容傾転角Amaxの演算(図5に示すステップS110)や目標傾転角Atと許容傾転角Amaxの比較判定(図5に示すステップS130)を行うことなく、目標傾転角Atを傾転角指令Acとして設定する(ステップS140)。
このように、ポンプ制御部77Dは、油圧ポンプ31の傾転角を直接的に制限することはない。しかし、パイロット弁制御部79が許容開口量Vmaxを用いて電磁式パイロット弁36の開口量を制限することで、電磁式パイロット弁36により生成される操作パイロット圧の最高圧が制限される。ポンプ制御部77Dは圧力センサ28の検出値に基づき油圧ポンプ31の傾転角を制御するので、制限された操作パイロット圧の最高圧によって油圧ポンプ31の傾転角が間接的に制限されることになる。
次に、本発明の電動式油圧作業機械の第4の実施の形態の動作について図15~図18を用いて説明する。バッテリシステムの第1のバッテリが故障した場合の動作について説明する。
図15に示す第1のバッテリ51が故障すると、第1の実施の形態の場合と同様に、図16に示す第1のBMU57が第1のバッテリ51の最大電力Pb1_maxを0に設定するので、マスタBMU60の演算結果のバッテリシステム42の最大電力Pbsum_maxが第1のバッテリ51の故障前よりも低くなる。このとき、車体コントローラ70Dのモータ指令演算部76Dは、バッテリシステム42の最大電力Pbsum_maxを含む供給可能最大電力Pmaxとインバータ入力電力Pinvを比較判定する(図17のステップS60)。第1のバッテリ51の故障によって供給可能最大電力Pmaxがインバータ入力電力Pinvよりも小さくなると、インバータ入力電力Pinvと供給可能最大電力Pmaxの偏差に応じて電磁式パイロット弁36の許容開口量Vmaxを小さくなるように設定する。
図16に示すパイロット弁制御部79は、電磁式パイロット弁36の開口量を操作装置22Dの操作に対応させずにモータ指令演算部76Dからの許容開口量Vmaxに制限する。これにより、電磁式パイロット弁36によって生成される操作パイロット圧が低下する。
ポンプ制御部77Dは、圧力センサ28の検出値に基づき油圧ポンプ31の傾転角(押除け容積)を制御するので(図18に示すフローチャート)、操作パイロット圧(圧力センサ28の検出値)の低下に応じて傾転角が小さくなるように制御する。これにより、油圧ポンプ31の単位回転数当たりの流量が減少するので、油圧ポンプ31の油圧出力を制限することができる。
このように、本実施の形態においては、複数の電源42、100の供給可能最大電力Pmaxに応じて設定される許容開口量Vmaxを用いて電磁式パイロット弁36の開口量を制限することで、電動モータ41及びインバータ43の消費電力がバッテリシステム42及び商用電源100の供給可能な最大電力Pmaxを超えないように油圧ポンプ31の油圧出力を制限するものである。
上述した第5の実施の形態によれば、前述した第1の実施の形態と同様に、異常の有無に応じて変動する第1~第3のバッテリ51~53及び商用電源100(複数の電源)の供給可能最大電力Pmaxの範囲内に電動モータ41及びインバータ43の消費電力を制限しつつ、電動モータ41の出力を超えないように油圧ポンプ31の油圧出力を制限するので、第1~第3のバッテリ51~53及び商用電源100(複数の電源)のいずれかに異常が発生しても、第1~第3のバッテリ51~53からの過剰な電力の引出しを防止することができると共に、電動モータ41のストールを防止することができる。
また、本実施の形態に係る油圧ショベル1は、制御弁ユニット33の各制御弁を駆動する操作パイロット圧を生成する電磁式パイロット弁36(パイロット弁)を更に備える。油圧ポンプ31は、押除け容積が可変である可変容量ポンプであり、かつ、電磁式パイロット弁36(パイロット弁)により生成された操作パイロット圧が高くなるにしたがって押除け容積が増加するように制御される。車体コントローラ70D(制御装置)は電磁式パイロット弁36(パイロット弁)の開口量を制御するように構成されており、車体コントローラ70D(制御装置)の上記制限制御は、電磁式パイロット弁36(パイロット弁)の開口量を演算結果の供給可能最大電力Pmaxに応じて制限するものである。
この構成によれば、電磁式パイロット弁36(パイロット弁)の開口量制限により操作パイロット圧を制御することで、油圧ポンプ31の押除け容積を直接的に制限することなく、油圧ポンプ31の油圧出力の制限が可能となる。この油圧ポンプ31の油圧出力の制限方法は、操作装置22Dが電気式である場合に適用可能である。
[その他の実施の形態]
なお、上述した第1~第5の実施の形態においては、本発明を電動式の油圧ショベル1に適用した例を示したが、本発明は電動式の油圧クレーンやホイールローダ等の各種の電動式油圧作業機械に広く適用することができる。
また、本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記の実施形態は本発明をわかり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
例えば、上述した実施形態においては、電動モータ41に電力を供給する複数の電源として、第1~第3のバッテリ51~53と商用電源100との組合せ、又は、第1~第3のバッテリ51~53と燃料電池47との組合せの例を示した。しかし、複数の電源として、第1~第3のバッテリ51~53のうちの少なくとも1つのバッテリと商用電源100又は燃料電池47との組合せが可能である。また、1つのバッテリ51と商用電源100と燃料電池47との組合せも可能である。また、複数の電源として、第1~第3のバッテリ51~53のように並列接続された複数のバッテリのみの組合せが可能である。
また、上述した第5の実施の形態においては、油圧ポンプ31の傾転角(押除け容積)が車体コントローラ70Dの指令によって制御される構成の例を示した。しかし、油圧ポンプ31の傾転角(押除け容積)を油圧回路のみで自律的に制御する構成も可能である。例えば、制御弁ユニット33の各制御弁を駆動する操作パイロト圧の最高圧を油圧ポンプ31の傾転角を調整するレギュレータに対して入力する油圧回路を用いることで可能となる。
また、上述した実施の形態においては、インバータ43による電動モータ41の回転数制御、車体コントローラ70Cによる油圧ポンプ31のスピードセンシングの傾転角制御、車体コントローラ70Dによる電磁式パイロット弁36の開口量制御におけるフィードバック制御について、説明の簡略化のためにP制御を用いて説明した。しかし、それらの実際のフィードバック制御では、積分器を含めたPI制御を用いる方が有利である。