JP7450464B2 - 水銀吸着材及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、活性炭に硫黄が担持された硫黄担持活性炭を含む水銀吸着材、及びその製造方法に関する。
蛍光管などの水銀を含む廃棄物処理工程から排出されるガス中には水銀が含まれており、健康上、公害上の観点から除去する必要がある。従来から、硫黄担持活性炭が水銀蒸気を吸着することが知られており、硫黄担持活性炭として活性炭と硫黄を混合して加熱することにより硫黄を担持した活性炭が知られている。例えば、特許文献1(特開昭59-78915号公報)には、活性炭と硫黄微粒子を混合し、これを110℃~400℃に加熱することを特徴とする硫黄担持活性炭の製造法が開示されている。特許文献2(特開昭60-114338号公報)には、約0.005乃至約15重量パーセントの硫黄が含浸されていることを特徴とする堅果殻カーボンが開示されている。特許文献3(国際公開第2008/146773号)には、活性炭に硫黄が担持された硫黄担持活性炭からなる水銀吸着材であって、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分で示差走査熱量計により測定した熱量曲線において、硫黄のピークトップが534℃~537℃に示されることを特徴とする水銀吸着材が開示されている。
また、硫黄担持活性炭として金属触媒やキレート形成基により硫黄を導入した活性炭も知られている。例えば、特許文献4(特表2010-527288号公報)には、活性炭マトリクスと、硫黄元素として、または硫黄を含む化合物または部分において、任意の酸化状態にある硫黄と、金属元素として、または金属を含む化合物または部分において、任意の酸化状態にある金属触媒と、を含み、前記金属触媒が前記活性炭マトリクス全体に分散されている、溶媒体が開示されている。また、特許文献5(特開2000-342962号公報)には、活性炭、ゼオライト、ケイソウ土、天然砂およびセラミクスからなる群から選ばれる1種以上である多孔質物質に、キレート形成基含有化合物を結合させた重金属吸着剤が開示され、キレート形成基が、-CSNH、-CSNHNH、-NHCSNHNH、-NHCSNHよりなる群から選ばれる1種以上であることが記載されている。
特開昭59-78915号公報 特開昭60-114338号公報 国際公開第2008/146773号 特表2010-527288号公報 特開2000-342962号公報
特許文献1~3では、活性炭と硫黄を混合して加熱することにより硫黄を活性炭に担持しているが、硫黄の熱特性は、150~170℃で融化、高分子量化し、300℃付近で分解し、低分子量化しながら揮発することが知られている。150~170℃程度までしか加熱していない場合、硫黄は融解し、炭素表面で凝集した状態や、解重合により不安定化し、有機溶媒に溶出しやすくなるおそれがある。また、300℃付近まで加熱した場合、活性炭に担持した硫黄は様々な低分子量物(例えば、S~S)の状態で存在し、熱的に不安定である。そのため、このような活性炭は、硫黄の蒸気圧が高まる常温以上での使用では、水銀との反応性は高まる一方で、硫黄が揮発しやすく、有機溶媒への可溶性も高まることから、活性炭から硫黄が離脱、溶出するおそれがある。硫黄が揮発等により離脱すると、水銀吸着性能が低下するだけでなく、処理設備の腐食を引き起こすおそれがあるなど安定性の点でも問題があった。
また、特許文献4では、樹脂、硫黄及び金属塩を混合して焼成することにより活性炭に硫黄及び金属触媒が分散されている溶媒体を製造するため、亜硫酸ガスの放出は避けられず、工業的規模で製造するには処理設備など付帯設備が大きくなるという問題だけではなく、有毒ガスの発生に伴う危険性も増加するなど安全性の点で問題があった。
特許文献5では、活性炭等の多孔質物質に結合させるキレート形成基含有化合物に関して、その製造に硫化水素などの有害物の使用が避けされないなどの安全性の点で問題があった。また、キレート形成基含有化合物自体が高価で、経済的な支障が発生するなどの問題があった。
したがって、本発明の目的は、水銀を効率良く吸着・除去することができるとともに、硫黄の揮発が抑制された水銀吸着材を提供することである。
また、本発明の別の目的は、水銀吸着性能が高く、硫黄の揮発が抑制された水銀吸着材を、金属塩やキレート形成基含有化合物などを使用することなく、高い安全性で製造する方法を提供することである。
本発明の発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、酸化雰囲気下で加熱して硫黄の分解を促進した後、酸化雰囲気下で常温まで冷却することにより、硫黄含有量に対して特定の酸素含有量を有する硫黄担持活性炭が得られることを見出した。そして、さらに研究を行った結果、驚くべきことに、このような特定の酸素含有量を有する硫黄担持活性炭は、硫黄の揮発を抑制することができること、及び酸素を含有させたとしても硫黄の水銀に対する反応性を低下させることなく、水銀吸着性能に優れることを見出し、本発明の完成に至った。
すなわち、本発明は、以下の態様で構成されうる。
〔態様1〕
活性炭に硫黄が担持された硫黄担持活性炭を含み、硫黄に対して酸素を20~80モル%(好ましくは25~75モル%、より好ましくは30~70モル%)含有する、水銀吸着材。
〔態様2〕
前記硫黄の含有率が0.01~30重量%(好ましくは1~25重量%、より好ましくは5~20重量%)である、態様1に記載の水銀吸着材。
〔態様3〕
前記活性炭がヤシ殻炭を原料とする活性炭である、態様1又は2に記載の水銀吸着材。
〔態様4〕
前記活性炭の粒径が0.1~9mm(好ましくは0.2~4mm、より好ましくは0.5~3mm)である、態様1~3のいずれか一態様に記載の水銀吸着材。
〔態様5〕
活性炭を硫黄存在下、酸化雰囲気下で250~440℃(好ましくは280~380℃、より好ましくは300~350℃)で加熱する工程と、酸化雰囲気下で100℃以下まで冷却する工程と、を少なくとも備える、態様1~4のいずれか一態様に記載の水銀吸着材の製造方法。
〔態様6〕
加熱温度への昇温速度が1~300℃/min(好ましくは3~200℃/min、より好ましくは5~150℃/min)の範囲である、請求項5に記載の製造方法。
本明細書において、「水銀」は、単体としての金属水銀や、無機水銀、有機水銀等、水銀原子を含むあらゆる形態の物質を含む。
本発明の水銀吸着材は、水銀を効率良く吸着・除去することができるとともに、硫黄の揮発が抑制できる。
水銀吸着量を測定するための試験装置の概略図である。
[水銀吸着材の製造方法]
本発明の水銀吸着材の製造方法は、活性炭を硫黄存在下、酸化雰囲気下で250~440℃で加熱する工程と、加熱後に酸化雰囲気下で冷却する工程と、を少なくとも備えていてもよい。
本発明の発明者らは、反応性が高い高温下での硫黄を制御するためには窒素などの不活性ガス雰囲気下で加熱することが一般的であるが、意外なことに、硫黄が分解して低分子量物(例えば、S~S)を生じる温度条件で、かつ酸化雰囲気下で加熱することにより、硫黄の反応性が高いにも関わらず、二酸化硫黄などにまで酸化されることなく、酸素の含有量の高い硫黄担持活性炭ができることを見出した。さらに、加熱後に、酸化雰囲気下で冷却することにより、前記低分子量物が転移する過程において硫黄担持活性炭における酸素の含有量をさらに増加させることができ、すなわち、加熱時及び冷却時の条件を調整することにより、硫黄含有量に対する特定の酸素含有量を有する硫黄担持活性炭が得られることを見出した。冷却時のメカニズムは定かではないが、冷却時において硫黄の転移点を経由することになるところ、その転移点において酸化性ガスが存在することにより、硫黄の酸化が進行すると考えられる。
本発明で使用される活性炭は、周知の製造方法により得られるものを使用することができ、例えば、活性炭の原料となる炭素質原料に対して、水蒸気、二酸化炭素等の雰囲気下、高温で賦活するガス賦活や、塩化亜鉛、リン酸、水酸化カリウム、濃硫酸処理等で賦活する薬品賦活等が挙げられる。賦活後、酸洗浄するのが望ましい。
炭素質原料は、活性炭の原料として周知のものを用いることができ、例えば、ヤシ殻、パームナット殻、桃の種等の植物系原料、ピート、泥炭、亜炭、瀝青炭、無煙炭等の石炭系原料、フェノール樹脂、アクリル樹脂等の合成樹脂系原料等を挙げることができる。これらの炭素質原料の中でも、ヤシ殻、パームナット殻が好ましく、ヤシ殻がより好ましい。
炭素質原料の賦活は、安全性や経済性を考慮すると、少なくとも水蒸気を含有したガス下でガス賦活により行うことが好ましい。賦活用ガスには、水蒸気の他にも二酸化炭素、窒素、酸素等を使用することができ、例えば、水蒸気及び二酸化炭素を含有する賦活用ガスで賦活してもよい。賦活用ガスの水蒸気含有率は70容量%以下であってもよく、好ましくは65容量%以下、より好ましくは60容量%以下であってもよい。賦活用ガスの水蒸気含有率の下限は特に限定されないが、例えば、1容量%以上であってもよい。
また、賦活の条件としては、賦活ガスの組成や、所望の比表面積、細孔分布等によって適宜調整することが可能であるが、例えば、賦活温度は、600~1200℃であってもよく、好ましくは700~1100℃、より好ましくは750~1000℃であってもよい。賦活時間は、0.1~10時間であってもよく、好ましくは0.3~7時間、より好ましくは0.5~5時間であってもよい。
活性炭への硫黄の担持量、および担持した硫黄と活性炭表面の反応による固定化を調整する観点から、上記賦活後も上記賦活時と同様な組成のガス中で300℃以下まで冷却した後、系外に取り出して比表面積や細孔分布を調整してもよく、例えば、不活性ガス下で熱処理してもよい。熱処理によって炭素質組織が焼締められるいわゆる焼締効果により、活性炭の細孔径を小さくすることが可能となる。そのような焼締効果を発揮させるために、熱処理温度としては、500~1000℃であってもよく、好ましくは500~950℃、より好ましくは500~900℃であってもよい。また、熱処理時間は、熱処理温度によって異なるが、例えば、500℃の場合、20~180分程度が好ましく、800℃の場合、5~60分程度が好ましい。
また、賦活ガスの水蒸気含有率を低くして比表面積及び細孔分布を調整する方法以外にも、炭素質原料を常法で賦活した後、上述のような熱処理を施すことにより比表面積や細孔分布を調整することが可能である。例えば、常法により得られた活性炭を、実質的に酸素及び/又は水蒸気を含まないガス下で500℃以上の温度で熱処理し、同様のガス下で300℃以下の温度まで冷却することにより活性炭を製造してもよい。実質的に酸素及び/又は水蒸気を含まないガスとしては、窒素、二酸化炭素又はこれらの混合ガスを用いることができ、活性炭表面に結合した酸素原子が存在しないような雰囲気であればよく、酸素及び水蒸気が1~2%以下の状態であってもよい。
活性炭への硫黄の担持量を調整するために、上述のような条件で得られる活性炭の比表面積や細孔分布を調整することができる。
また、活性炭の形状は、破砕状、顆粒状、球状、円柱状、ハニカム状、繊維状など何れでもよいが、通気抵抗及び経済性の観点から、破砕状、顆粒状、球状、円柱状が好ましく、活性炭の粒径は0.1~9mmが好ましい。0.2~4mmがより好ましく、0.5~3mmがさらに好ましい。本発明において、活性炭の粒径とは、ふるい分けによる粒子径を示す。
本発明において、活性炭に硫黄を担持させるには、活性炭と硫黄とを混合させて加熱することで得ることができるが、活性炭と硫黄とを混合する方法として、例えば、(1)硫黄粉末を水に懸濁させ、これに活性炭を加えて攪拌混合した後、乾燥する方法、(2)予め活性炭に水を含浸させた後に硫黄粉末を加えてコーティングした後、更に水を加えてなじませる方法、(3)硫黄を二硫化炭素等の溶剤に溶解した硫黄の溶液を活性炭に含浸させた後、溶剤を気化させる方法、(4)硫化水素ガスに二酸化硫黄ガス又は空気を混合し、活性炭と接触させ活性炭の細孔表面に硫黄を生成させる方法、(5)硫黄粉末と活性炭とを混合する方法等が挙げられる。これらのうち、排水や廃棄物が少なく、有機溶媒を使用しない方法として、(5)の方法が、安全性に優れ、経済的にも目的に適っていて好ましい。
加熱工程では、活性炭を硫黄存在下、酸化雰囲気下で250~440℃で加熱する。加熱時の温度条件としては、高すぎる温度では、硫黄が分解して生じた低分子量物が気化して活性炭の表面への添着が起こり難くなり、担持量が不安定となるおそれがあるだけでなく、低分子量化した硫黄は反応性が高いため、製造設備の腐食等の危険性が生じるおそれがある。また、低すぎる温度では、硫黄の分解が進まず、硫黄は活性炭を被覆するだけにとどまり、硫黄の活性炭への添着性が弱く、有機溶媒等に溶出しやすくなるおそれがあるとともに、硫黄の担持量を高くできず、活性炭の比表面積及び吸着サイトを十分に活かせないおそれがある。加熱の温度条件は、280~380℃で行うのが好ましく、300~350℃で行うのがより好ましい。また、加熱工程では、複数段階において加熱してもよく、その場合、加熱工程における最高温度が上記温度範囲であってもよい。
上記加熱温度への昇温速度は、特に限定されるものではなく、使用する機器等によることは言うまでもないが、速すぎる昇温速度では、硫黄の分解が速く、蒸気圧の急激な上昇により、気化が優先してしまうため、活性炭表面への添着が起こり難くなる可能性がある。また、遅すぎる昇温速度では、経済的に好ましくなく、また、融解時間が長く、架橋が進むことでゴム状硫黄が形成し、その結果、活性炭表面への添着が起こり難くなる可能性がある。そのため、例えば、加熱温度への昇温速度としては、1~300℃/minの範囲であってもよく、好ましくは3~200℃/min、より好ましくは5~150℃/minの範囲であってもよい。
上記加熱温度での保持時間は、硫黄の分解、添着を進行できる時間であれば特に限定されるものではないが、保持時間が短すぎる場合、分解定着した硫黄の分子量が様々であり、品質として安定したものが得られないおそれがある。また、保持時間が長すぎる場合、経済的に好ましくない。例えば、加熱時の保持時間は、10~600分の範囲であってもよく、好ましくは20~300分の範囲、より好ましくは30~180分の範囲であってもよい。
加熱雰囲気としては、酸素を含有させる観点から、酸化雰囲気下で行われる。酸化雰囲気とは、酸化性ガスを含む雰囲気を意味し、酸化性ガスとしては、酸素、水蒸気、二酸化炭素等が挙げられる。酸化雰囲気としては、硫黄の酸化を促進しつつ、爆発、燃焼等の危険性を回避する観点から、酸化性ガスを5~30容量%含む雰囲気であることが好ましく、より好ましくは8~28容量%、さらに好ましくは10~25容量%であってもよい。加熱雰囲気に含まれる酸化性ガス以外のガスとしては、特に限定されるものではないが、安全性の観点から、窒素、アルゴン等の不活性ガスを含むことが好ましい。
酸化性ガスを含有するガスの流速は、酸素含有量を特定量に調整する観点から、活性炭100gに対して、100mL/min~200L/minであってもよく、好ましくは130mL/min~100L/min、より好ましくは150mL/min~10L/minであってもよい。
冷却工程では、加熱後に酸化雰囲気下で100℃以下(例えば、常温(25℃程度))まで冷却する。硫黄の加熱添着後、酸化性ガス存在下で冷却して、硫黄を一部酸化することによって、安定化することができる。冷却雰囲気としては、酸素を含有させる観点から、上述の加熱雰囲気の酸化雰囲気から適用することができ、酸化性ガスを含有するガスの流速も上記範囲から適用することができる。冷却雰囲気は、加熱雰囲気を維持したままにしてもよいし、加熱後に別の酸化雰囲気に変更してもよい。
冷却速度は、使用する機器や加熱温度等によって異なるが、例えば、0.1~30℃/minの範囲であってもよく、好ましくは0.3~20℃/min、より好ましくは0.5~15℃/minの範囲であってもよい。
また、酸素含有量を特定量に調整する観点から、冷却工程における時間は、例えば、10~600分であってもよく、好ましくは15~300分、より好ましくは30~180分であってもよい。
[水銀吸着材]
本発明の水銀吸着材は、活性炭に硫黄が担持された硫黄担持活性炭を含み、硫黄に対して酸素を20~80モル%含有する。本発明の水銀吸着材は、水銀吸着性能に優れ、硫黄の揮発が抑制できるため、長期使用の安定性に優れている。なお、硫黄に対する酸素の含有率(モル%)とは、硫黄原子の含有量100モル部に対する酸素原子の含有量(モル部)の割合を表す。
本発明において、硫黄が分解して生じた低分子量物(例えば、S~S)の状態で活性炭に添着していたとしても、低分子量化された硫黄は気化しやすく、そのような硫黄担持活性炭は、水銀吸着性能を長期に保持することができず、安定性が低いことを見出した。そこで、本発明では、硫黄の担持量に対して酸素を特定量含有していることにより、その詳細な硫黄の化学状態は明らかではないが、硫黄がある程度酸化された状態であるためか、硫黄成分が気化し難く、硫黄の揮発を抑制できることを見出した。さらに、硫黄がある程度酸化された状態であったとしても、水銀に対する反応性は低下せず、水銀吸着性能は維持できていることも見出した。
本発明の水銀吸着材において、少なくとも一部で硫黄と活性炭の炭素表面とが化学的に結合していてもよい。硫黄と活性炭の炭素表面とが化学的に結合していることにより、単に硫黄が活性炭を被覆しているような場合と比較して、気流など物理的な衝撃により剥離することを防止することができ、有機溶媒等への溶出を抑制することができる。上述の製造方法により活性炭に硫黄を担持した場合、硫黄と活性炭との担持形態は定かではないが、硫黄を分解して添着させることにより、硫黄が活性炭の炭素表面と化学結合を形成しているものと考えられる。
本発明の水銀吸着材は、水銀吸着性能の向上及び硫黄の揮発の抑制の観点から、硫黄に対して酸素を20~80モル%含有する必要があり、好ましくは25~75モル%含有してもよく、より好ましくは30~70モル%含有してもよい。酸素含有量が高すぎる場合、硫黄と酸素との結合状態は明らかではないが、硫黄が完全に酸化された状態、すなわち、SOになると考えられ、気化しやすくなるおそれがあるとともに、硫黄の状態によっては、水銀との反応性が低下するおそれがある。酸素含有量が低すぎる場合、硫黄の揮発を抑制できなくなる。
本発明の水銀吸着材は、水銀吸着性能の向上及び硫黄の揮発の抑制の観点から、硫黄の含有率が0.01~30重量%であってもよい。なお、硫黄の含有率とは、硫黄担持活性炭全量に対する硫黄の含有量(担持量)の割合を表す。また、硫黄の含有率は、好ましくは1~28重量%、より好ましくは5~25重量%であってもよい。
本発明の水銀吸着材は、吸着の対象である水銀以外の金属種を実質的に含んでいないことが好ましいが、不可避不純物を含んでいてもよい。
本発明の水銀吸着材は、液相中又は気相中の水銀の吸着除去する方法、特に気相中の水銀の吸着除去する方法に使用することができる。具体的には、水銀吸着材を充填塔に充填し、金属水銀や無機水銀化合物を含む空気、窒素、希ガス、各種排ガス、天然ガス、石油ガス等を、好ましくは80℃以下、より好ましくは60℃以下で通じることにより実施することができる。その場合、接触時間は吸着材の粒径にもよるが、通常は1秒間以上、好ましくは2秒間以上が目安となる。
本発明の水銀吸着材は、水銀吸着量が、10mg/g以上であってもよく、好ましくは13mg/g以上、より好ましくは20mg/g以上、さらに好ましくは24mg/g以上であってもよい。なお、水銀吸着量は、後述の実施例に記載した方法により測定される値である。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明は本実施例により何等限定されるものではない。なお、以下の実施例において、各種物性は下記の方法により測定したものを示す。
<硫黄担持量、硫黄含有率>
吸着材試料について、炭素・硫黄分析装置(株式会社堀場製作所製、「EMGA-620」)を用いて、空気下燃焼法に基づいて元素分析を行った。当該装置の検出方法は、非分散型赤外線吸収法(NDIR)であり、校正は、錫カプセル、鉄鋼標準試料JSS244-6で行い、前処理として250℃、約10分で乾燥した吸着材試料12mg、及び助燃材タングステン0.5mgを錫カプセルに取り、分析装置内で30秒脱ガスした後に測定した。試験は3検体で分析し、その平均値を分析値とした。
<酸素含有量>
吸着材試料について、酸素・窒素・水素分析装置(株式会社堀場製作所製、「EMGA-930」)を用いて、不活性ガス溶解法に基づいて元素分析を行った。当該装置の検出方法は、不活性ガス融解-非分散型赤外線吸収法(NDIR)であり、校正は、Niカプセル、SS-3(酸素標準試料)で行い、前処理として250℃、約10分で乾燥した吸着材試料20mgをNiカプセルに取り、分析装置内で30秒脱ガスした後に測定した。試験は3検体で分析し、その平均値を分析値とした。
<硫黄揮発率>
熱重量分析(TG)装置(セイコーインスツル株式会社製、「TG-DTA6300」)を用いて、吸着材試料を、流速200mL/minの窒素雰囲気下、50℃から120℃まで10℃/minで昇温しながら加熱し、120℃に到達後6時間維持した時の重量減少率を硫黄揮発率(%)として算出した。
<水銀吸着量>
図1に示すような試験装置を用いて、予め粒径を0.5~1.0mmに整粒した吸着材試料(5)1.000gを直径6mmのガラスカラム(4)に充填し、25℃の水銀飽和蒸気を含む窒素ガス(1)を1.00NL/minの速度で24時間通気した時の重量増加量を水銀吸着量(mg/g)として算出した。図1において、2は水銀、3は空瓶、6はガラスウール、7は排気、8は恒温槽である。なお、窒素中に含まれる水銀蒸気濃度は、日本LPガス協会規格、LPガス中の水銀分析方法(JLPGA-S-07)に記載の湿式吸収-還元気化原子吸光分析法にて行ったところ、2.3ppmであり、25℃水銀飽和濃度にほぼ等しい結果であった。
[参考例]
ヤシ殻活性炭(株式会社クラレ製、「クラレコールGG10/20」)500gを直径100mmの外熱式流動炉に投入し、880℃のLPG燃焼ガス(水蒸気含有率33容量%)雰囲気中で30分間熱処理した後、不活性ガス中に取り出し冷却した。熱処理して得られた活性炭をロールミルで破砕し、0.5~1.0mmに篩い分けして破砕状活性炭を得た。
[実施例1]
参考例で得た活性炭100gと、45μm以下の硫黄粉末30gとを固体混合し、外熱式加熱炉に入れ、流速200mL/minで空気を流しながら、25℃から300℃まで昇温速度10℃/minで昇温し、300℃で60分間加熱した。その後、空気流を維持したまま、加熱炉を100℃以下になるまで4時間かけて放冷した(冷却速度0.8℃/min)後、取り出して硫黄担持活性炭を得た。硫黄元素分析から求めた実際の硫黄の担持量は29.5gであった。得られた吸着材の酸素含有量、硫黄揮発率、及び水銀吸着量の測定結果を表1に示す。
[実施例2]
空気下で加熱後、5容量%酸素含有窒素を流しながら放冷した以外は、実施例1と同様の方法により吸着材を作製した。各種測定結果を表1に示す。
[実施例3]
硫黄粉末の量を15gとした以外は、実施例1と同様の方法により吸着材を作製した。各種測定結果を表1に示す。
[比較例1]
窒素を流しながら、昇温及び加熱し、その後、窒素流を維持したまま放冷した以外は、実施例1と同様の方法により吸着材を作製した。各種測定結果を表1に示す。
[比較例2]
窒素を流しながら、昇温及び加熱し、その後、1容量%酸素含有窒素を流しながら放冷した以外は、実施例1と同様の方法により吸着材を作製した。各種測定結果を表1に示す。
[比較例3]
参考例で得られた硫黄を担持していない活性炭の各種測定結果を表1に示す。
Figure 0007450464000001
表1に示すように、実施例1~3の吸着材は、硫黄に対する酸素の含有率が特定の範囲にあるため、硫黄の揮発を抑制することができ、水銀吸着性能に優れている。
一方、比較例1及び2の吸着材は、硫黄を含有しているため、水銀吸着性能は高いものの、硫黄に対する酸素の含有率が小さく、酸素含有量が少ないため、硫黄の揮発率が高い。
また、比較例3の吸着材は、硫黄を担持させていないため、水銀吸着性能が低い。
本発明の水銀吸着材は、水銀吸着性能が高く、特に、空気、窒素、燃焼ガス、産業廃棄物処理工程からの排ガスや天然ガス、石油ガスなどに含まれる水銀を効率的にしかも長期にわたって除去することが可能である。
以上のとおり、本発明の好適な実施態様を説明したが、当業者であれば、本件明細書を見て、自明な範囲内で種々の変更および修正を容易に想定するであろう。したがって、そのような変更および修正は、請求の範囲から定まる発明の範囲内のものと解釈される。
1・・・窒素ガス
2・・・水銀
3・・・空瓶
4・・・ガラスカラム
5・・・吸着材試料
6・・・ガラスウール
7・・・排気
8・・・恒温槽

Claims (6)

  1. 活性炭に硫黄が担持された硫黄担持活性炭を含み、硫黄に対して酸素を20~80モル%含有する、水銀吸着材。
  2. 前記硫黄の含有率が0.01~30重量%である、請求項1に記載の水銀吸着材。
  3. 前記活性炭がヤシ殻炭を原料とする活性炭である、請求項1又は2に記載の水銀吸着材。
  4. 前記活性炭の粒径が0.1~9mmである、請求項1~3のいずれか一項に記載の水銀吸着材。
  5. 活性炭を硫黄存在下、酸化雰囲気下で250~440℃で加熱する工程と、酸化雰囲気下で100℃以下まで冷却する工程と、を少なくとも備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の水銀吸着材の製造方法。
  6. 加熱温度への昇温速度が1~300℃/minの範囲である、請求項5に記載の製造方法。
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