以下、添付される図面を参照しながら実施の形態について説明する。なお、図面は概略的に示されるものであり、説明の便宜のため、適宜、構成の省略、または、構成の簡略化がなされるものである。また、図面に示される構成の大きさおよび位置の相互関係は、必ずしも正確に記載されるものではなく、適宜変更され得るものである。
また、以下に示される説明では、同様の構成要素には同じ符号を付して図示し、それらの名称と機能とについても同様のものとする。したがって、それらについての詳細な説明を、重複を避けるために省略する場合がある。
また、以下に記載される説明において、「第1」または「第2」などの序数が用いられる場合があっても、これらの用語は、実施の形態の内容を理解することを容易にするために便宜上用いられるものであり、これらの序数によって生じ得る順序などに限定されるものではない。
相対的または絶対的な位置関係を示す表現(例えば「一方向に」「一方向に沿って」「平行」「直交」「中心」「同心」「同軸」など)は、特に断らない限り、その位置関係を厳密に表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる範囲で相対的に角度または距離に関して変位された状態も表すものとする。等しい状態であることを示す表現(例えば「同一」「等しい」「均質」など)は、特に断らない限り、定量的に厳密に等しい状態を表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる差が存在する状態も表すものとする。形状を示す表現(例えば、「四角形状」または「円筒形状」など)は、特に断らない限り、幾何学的に厳密にその形状を表すのみならず、同程度の効果が得られる範囲で、例えば凹凸や面取りなどを有する形状も表すものとする。一の構成要素を「備える」「具える」「具備する」「含む」または「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的表現ではない。「A,BおよびCの少なくともいずれか一つ」という表現は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、A,BおよびCのうち任意の2つ、ならびに、A,BおよびCのすべてを含む。
<基板処理システムの概略構成>
図1は、基板処理システム100の構成の一例を概略的に示す平面図である。図1で示されるように、基板処理システム100は、例えば、基板の一例としての半導体基板(ウエハ)Wの表面に付着した有機系のゴミを除去する処理に用いることができる枚葉式の装置である。有機系のゴミとしては、例えば、基板Wの表面に不純物を注入するイオン注入処理等の後において基板Wの表面に残っている不要になったレジスト、あるいは基板Wの表面のうちの外周部の近傍に付着しているレジスト等に由来する有機系のゴミ等、が含まれる。
基板処理システム100は、収容器としての複数のキャリアCを保持する収容器保持機構としてのロードポートLPと、基板Wを処理する複数(この実施の形態では、12台)の処理ユニット110とを含む。具体的には、鉛直方向に積層された3台の処理ユニット110によって構成されたタワーTWが、平面的に4台配置されている。言い換えれば、平面的に配列された4台の処理ユニット110でそれぞれ構成されている3組の処理ユニット110が、鉛直方向に積層するように配置される。
基板処理システム100は、さらに、例えば、インデクサロボットIRと、センターロボットCRと、制御装置30とを含む。インデクサロボットIRは、例えば、ロードポートLPとセンターロボットCRとの間で基板Wを搬送することができる。センターロボットCRは、例えば、インデクサロボットIRと各処理ユニット110との間で基板Wを搬送することができる。制御装置30は、例えば、基板処理システム100に備えられた各部の動作およびバルブの開閉等を制御することができる。
ここでは、図1で示されるように、ロードポートLPと各処理ユニット110とは、水平方向に間隔を空けて配置されている。ロードポートLPにおいて、複数枚の基板Wを収容する複数のキャリアCは、平面視したときに水平な配列方向Dに沿って配列されている。ロードポートLPは、基板Wを搬入する搬入部として機能する。ここで、インデクサロボットIRは、例えば、キャリアCから基板載置部PASSに複数枚の基板Wを1枚ずつ搬送することができるとともに、基板載置部PASSからキャリアCに複数枚の基板Wを1枚ずつ搬送することができる。基板載置部PASSは、基板Wを載置する載置台を含む。
センターロボットCRは、例えば、基板載置部PASSから各処理ユニット110に複数枚の基板Wを1枚ずつ搬送することができるとともに、各処理ユニット110から基板載置部PASSに複数枚の基板Wを1枚ずつ搬送することができる。また、例えば、センターロボットCRは、必要に応じて複数の処理ユニット110の間において基板Wを搬送することができる。インデクサロボットIR、基板載置部PASSおよびセンターロボットCRは、基板Wを搬入部(ロードポートLP)から受け取り、処理ユニット110に受け渡す基板受渡部として機能する。
図1の例では、インデクサロボットIRは、平面視U字状のハンドHを有している。ここでは、インデクサロボットIRは2つのハンドHを有する。2つのハンドHは、互いに異なる高さに配置される。各ハンドHは基板Wを水平な姿勢で支持することができる。インデクサロボットIRはハンドHを水平方向および鉛直方向に移動させることができる。さらに、インデクサロボットIRは、鉛直方向に沿った軸を中心として回転(自転)することで、ハンドHの向きを変更することができる。インデクサロボットIRは、受渡位置(図1でインデクサロボットIRが描かれている位置)を通る経路において配列方向Dに沿って移動する。受渡位置は、平面視したときにインデクサロボットIRと基板載置部PASSとが配列方向Dに直交する方向において対向する位置である。インデクサロボットIRは、任意のキャリアCおよび基板載置部PASSにそれぞれハンドHを対向させることができる。ここで、例えば、インデクサロボットIRはハンドHを移動させることにより、キャリアCに基板Wを搬入する搬入動作と、キャリアCから基板Wを搬出する搬出動作とを行うことができる。また、例えば、インデクサロボットIRは受渡位置においてハンドHを移動させることにより、基板載置部PASSに基板Wを搬入する搬入動作と、基板載置部PASSら基板Wを搬出する搬出動作とを行うことができる。
図1の例では、センターロボットCRは、インデクサロボットIRと同様に、平面視U字状のハンドHを有している。ここでは、センターロボットCRは2つのハンドHを有する。2つのハンドHは、互いに異なる高さに配置される。各ハンドHは基板Wを水平な姿勢で支持することができる。センターロボットCRは各ハンドHを水平方向および鉛直方向に移動させることができる。さらに、センターロボットCRは、鉛直方向に沿った軸を中心として回転(自転)することで、ハンドHの向きを変更することができる。センターロボットCRは、平面視したときに、複数台の処理ユニット110に取り囲まれている。センターロボットCRは、任意の処理ユニット110および基板載置部PASSのいずれかにハンドHを対向させることができる。ここで、例えば、センターロボットCRはハンドHを移動させることにより、各処理ユニット110に基板Wを搬入する搬入動作と、各処理ユニット110から基板Wを搬出する搬出動作とを行うことができる。また、例えば、センターロボットCRはハンドHを移動させることにより、基板載置部PASSに基板Wを搬入する搬入動作と、基板載置部PASSら基板Wを搬出する搬出動作とを行うことができる。
未処理の基板WはキャリアCからインデクサロボットIRによって取り出され、基板載置部PASSを経由してセンターロボットCRに受け渡される。センターロボットCRはこの未処理の基板Wを処理ユニット110に搬入する。処理ユニット110は基板Wに対して処理を行う。処理済みの基板WはセンターロボットCRによって処理ユニット110から取り出され、必要に応じて他の処理ユニット110を経由した上で、基板載置部PASSを介してインデクサロボットIRに受け渡される。インデクサロボットIRは処理済みの基板WをキャリアCに搬入する。以上により、基板Wに対する処理が行われる。
<第1の実施の形態>
図2は、処理ユニット110の一例である基板処理装置10の構成の一例を概略的に示す図である。基板処理装置10は、基板Wを1枚ずつ処理する枚葉式の処理装置である。基板Wは例えば半導体基板であって、円板形状を有する。
基板処理装置10には供給調整部20が接続される。供給調整部20は基板処理装置10に処理液を供給する。基板処理装置10は、供給調整部20からの処理液を基板Wの主面に供給して、当該処理液の種類に基づいた処理を基板Wに対して行う。基板処理装置10および供給調整部20は制御装置30によって制御される。
基板処理装置10は、チャンバー11と、スピンチャック12と、ノズル13と、供給配管14と、ノズル移動部15と、液受け部16とを含む。
チャンバー11は箱形状を有する。チャンバー11は、スピンチャック12、ノズル13、供給配管14の一部、ノズル移動部15および液受け部16を収容する。スピンチャック12は基板Wを保持して回転する。スピンチャック12は「基板保持部」の一例に相当する。具体的には、スピンチャック12は、チャンバー11内で基板Wを水平姿勢で保持しながら、回転軸線A1のまわりに基板Wを回転させる。ここでいう水平姿勢とは、基板Wの厚み方向が鉛直方向に沿う姿勢をいう。回転軸線A1は、スピンチャック12によって保持された基板Wの中央部(より具体的には中心)を通り、鉛直方向に平行な軸である。
図2の例では、スピンチャック12は、複数のチャック部材12aと、スピンベース12bと、スピンモーター12cとを含む。複数のチャック部材12aは基板Wの周縁を把持して基板Wを水平姿勢で保持する。スピンベース12bは円板形状を有し、複数のチャック部材12aを支持する。スピンモーター12cはスピンベース12bを回転させることによって、複数のチャック部材12aに保持された基板Wを回転軸線A1のまわりに回転させる。スピンモーター12cは制御装置30によって制御される。
ノズル13は基板Wの主面に向けて処理液を吐出する。処理液は、例えばエッチング液等の薬液を含む。例えば、シリコン窒化膜が形成された基板に対してエッチング処理を実行する場合は、処理液は燐酸を含む。例えば、レジストの除去処理を実行する場合は、処理液は、硫酸と過酸化水素水との混合液(Sulfuric acid/Hydrogen Peroxide Mixture:SPM)を含む。燐酸またはSPMを含む処理液は、高温で使用される処理液の一例である。高温で使用される処理液の他の例としては、希釈アンモニア水(dNH4OH)、希釈過酸化水素水(dH2O2)、希フッ酸(DHF)、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)などを挙げることができる。
供給配管14はノズル13に接続される。供給配管14は、ノズル13に処理液を供給する配管である。供給配管14に供給される処理液の温度は、例えば、供給配管14よりも上流に配置される循環配管(後述)において、室温(例えば20~30℃)よりも高い温度に維持されている。ノズル13が規定温度の処理液を基板Wに供給することにより、基板Wに対して規定の処理レート(例えば、規定のエッチングレートまたは規定の対象物除去レート)で処理を行うことができる。換言すれば、規定温度は、基板Wに対して、規定時間内に規定の処理結果(例えば、規定のエッチング量または規定の対象物除去量)を達成できる温度を示す。規定温度は、燐酸を含む処理液では、例えば、175℃である。規定温度は、SPMを含む処理液では、例えば、100℃以上である。なお、SPMは、硫酸と過酸化水素水との化学反応に伴って発熱する。よって、混合前の過酸化水素水および硫酸の温度は必ずしも規定温度で循環する必要はなく、それぞれが、より低い温度で循環してもよい。また、過酸化水素水および硫酸の両方を加熱して循環させる必要はない。以下では、処理液としてSPMを採用し、硫酸を循環させる具体例について述べる。
供給調整部20は可変の供給量で基板処理装置10に処理液を供給する。換言すれば、供給調整部20は、基板処理装置10(具体的にはノズル13)に供給する処理液の供給量を調整する。供給調整部20はチャンバー11の外部において、供給配管14に介装される。なお、供給調整部20は、チャンバー11の内部において供給配管14に介装されてもよい。供給調整部20は、ノズル13への処理液の供給量をゼロにして、ノズル13への処理液の供給を停止し、ノズル13への処理液の供給量をゼロより多くして、ノズル13へ処理液を供給する。供給調整部20は、ノズル13へ供給する処理液の流量を調整することができる。
図2の例では、供給調整部20は処理液としてSPMを供給する。図2の例では、供給調整部20は、混合部21と、供給配管22a,22bと、流量計23a,23bと、流量調整バルブ24a,24bと、バルブ25a,25bとを含んでいる。混合部21は供給配管14,22a,22bに接続される。混合部21には、供給配管22aを経由して過酸化水素水が供給されつつ、供給配管22bを経由して硫酸が供給される。混合部21は過酸化水素水および硫酸を混合し、その混合液(SPM)を供給配管14に供給する。
供給配管22aは過酸化水素水供給源40aにも接続されている。過酸化水素水供給源40aは供給配管22aの内部に過酸化水素水を供給する。流量計23a、流量調整バルブ24aおよびバルブ25aは供給配管22aに介装されている。バルブ25aは開閉バルブであり、開状態と閉状態とに切り替え可能である。開状態とは、混合部21に向かって供給配管22a内を流れる過酸化水素水を通過させる状態のことである。閉状態とは、混合部21への過酸化水素水の供給を停止する状態のことである。バルブ25aは制御装置30によって制御される。
流量計23aは、混合部21に供給される過酸化水素水の流量を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置30に出力する。流量調整バルブ24aは、混合部21に供給される過酸化水素水の流量を調整する。バルブ25aが開くことにより、過酸化水素水が、流量調整バルブ24aの開度に対応する流量で供給配管22aから混合部21に供給される。開度は、流量調整バルブ24aが開いている程度を示す。流量調整バルブ24aは制御装置30によって制御される。具体的には、制御装置30は、流量計23aによって検出された流量が目標範囲内となるように、流量調整バルブ24aを制御する。
供給配管22bは硫酸供給源40bにも接続されている。硫酸供給源40bは供給配管22bの内部に硫酸を供給する。硫酸供給源40bは硫酸を加熱し、加熱後の硫酸を供給配管22bの内部に供給する。流量計23b、流量調整バルブ24bおよびバルブ25bは供給配管22bに介装されている。バルブ25bは開閉バルブであり、開状態と閉状態とに切り替え可能である。開状態とは、混合部21に向かって供給配管22b内を流れる硫酸を通過させる状態のことである。閉状態とは、混合部21への硫酸の供給を停止する状態のことである。バルブ25bは制御装置30によって制御される。
流量計23bは、混合部21に供給される硫酸の流量を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置30に出力する。流量調整バルブ24bは、混合部21に供給される硫酸の流量を調整する。バルブ25bが開くことにより、硫酸が、流量調整バルブ24bの開度に対応する流量で供給配管22bから混合部21に供給される。開度は、流量調整バルブ24bが開いている程度を示す。流量調整バルブ24bは制御装置30によって制御される。具体的には、制御装置30は、流量計23bによって検出された流量が目標範囲内となるように、流量調整バルブ24bを制御する。
図2の例では、供給配管22bの上流端は循環配管42に接続されている。循環配管42には高温の硫酸が流れて、硫酸供給源40b内を循環する。高温の硫酸が循環することにより、当該循環路における配管の温度を高温に維持することができ、配管の温度低下に伴う硫酸の温度低下を回避することができる。循環中の硫酸の温度は、高温の一定温度に維持される。
なお、図2の例では、硫酸は、流量計23b、流量調整バルブ24bおよびバルブ25bの一組に対して上流側において、循環配管42内を循環する。しかしながら、これに限らず、循環位置は適宜に変更し得る。例えば、上流端が流量調整バルブ24bとバルブ25bとの間で供給配管22bに接続され、下流端が循環配管42に接続された第2の循環配管を設けてもよい。これにより、高温の硫酸が供給配管22bの一部も経由して循環するので、当該供給配管22bの一部内の処理液の温度も高温に維持できる。
バルブ25a,25bの両方が開くことにより、混合部21に過酸化水素水および高温の硫酸が供給される。過酸化水素水は、流量調整バルブ24aの開度に応じた流量で混合部21に供給され、硫酸は、流量調整バルブ24bの開度に応じた流量で混合部21に供給される。混合部21は、供給配管22aからの過酸化水素水、および、供給配管22bからの硫酸を混合し、その混合液(SPM)を供給配管14に供給する。この処理液は供給配管14を経由してノズル13の吐出口から吐出される。過酸化水素水および硫酸の混合に伴う反応熱によって、処理液の温度は規定温度(例えば、100℃以上)以上に昇温する。
バルブ25a,25bの両方が閉じることにより、過酸化水素水および硫酸の混合部21への供給が停止し、ノズル13からの処理液の吐出が停止する。
図2の例では、サックバック配管27が設けられている。サックバック配管27の一端は供給配管14に接続される。サックバック配管27には、例えば、不図示のバルブが介装される。当該バルブは処理液の吐出を終了する際に開く。これにより、処理液をノズル13から供給配管14側に吸い込むサックバック処理が行われる。このようなサックバック処理を行うことにより、ノズル13からの処理液の吐出停止時にぼた落ちが生じる可能性を低減することができる。ぼた落ちとは、処理液の塊がノズル13の吐出口から落下することである。なお、サックバック処理は、必ずしもサックバック配管27によって行われる必要はなく、例えばサックバック用のバルブが供給配管14等に設けられてもよい。
次に、図2および図3を参照して、ノズル移動部15、液受け部16およびプリディスペンス処理について説明する。図3は、基板処理装置10の構成の一例を概略的に示す平面図である。ノズル移動部15はノズル13を処理位置PS1と待機位置PS2との間で移動させる。処理位置PS1は、例えば、スピンチャック12によって保持された基板Wよりも上方の位置を示す。図2および図3では、処理位置PS1に位置するノズル13が二点鎖線で示されている。待機位置PS2は、例えば、スピンチャック12およびカップ17よりも外側の位置を示す。
図2および図3の例では、ノズル移動部15は、アーム151と、支持部材152と、モーター153とを含む。アーム151は水平に延びており、その一端がノズル13に連結され、他端が支持部材152に連結される。支持部材152は鉛直に延びている。モーター153は支持部材152を、鉛直方向に平行な回転軸線A2のまわりに回動させる。これにより、ノズル移動部15は処理位置PS1と待機位置PS2との間で、ノズル13を水平に移動させることができる。
また、ノズル移動部15は、ノズル13を鉛直に移動させることもできる。鉛直の移動は、例えば、ボールねじ構造によって実現できる。ノズル移動部15は制御装置30によって制御される。
液受け部16は平面視において、スピンチャック12およびカップ17よりも外側に位置する。具体的には、液受け部16は、ノズル13の待機位置PS2の下方に位置する。液受け部16は、プリディスペンス処理において、ノズル13によって吐出される処理液を受け止める。液受け部16は、例えば、上方に開口した箱形状を有する。
プリディスペンス処理は、基板Wに処理液を供給する前に、液受け部16に処理液を供給する処理を示す。具体的には、基板処理装置10がプリディスペンス処理を実行するときに、ノズル移動部15はノズル13を待機位置PS2から下降させて、ノズル13を液受け部16まで移動させる。そして、ノズル13は液受け部16に向けて処理液を吐出する。
プリディスペンス処理の終了後にノズル13が処理位置PS1まで移動し、回転中の基板Wの主面に対して処理液を吐出する。基板Wの主面に着液した処理液は、基板Wの回転に伴う遠心力を受けて基板Wの周縁側に流れ、当該周縁から外側に飛散する。このように処理液が基板Wの主面に作用することにより、処理液の種類に基づいた処理が基板Wに対して行われる。
図2の例では、基板処理装置10にはカップ17が設けられている。カップ17は、スピンチャック12を取り囲む筒形状を有し、チャンバー11内に収容される。カップ17は、回転中の基板Wの周縁から飛散した処理液を受け止める。
制御装置30は基板処理装置10および供給調整部20を制御する。具体的には、制御装置30は、スピンチャック12、ノズル移動部15、流量計23a,23b、流量調整バルブ24a,24bおよびバルブ25a,25bと電気的に接続される。
図4は、基板処理システム100の電気的な構成の一例を概略的に示す図である。制御装置30は電子回路であって、例えば制御部31および記憶部32を有していてもよい。図4の例では、制御部31と記憶部32とはバス33を介して相互に接続されている。制御部31は例えばCPU(Central Processor Unit)などの演算処理装置であってもよい。記憶部32は非一時的な記憶媒体(例えばROM(Read Only Memory)またはハードディスク)321および一時的な記憶媒体(例えばRAM(Random Access Memory))322を有していてもよい。非一時的な記憶媒体321には、例えば制御装置30が実行する処理を規定するプログラムが記憶されていてもよい。制御部31がこのプログラムを実行することにより、制御装置30が、プログラムに規定された処理を実行することができる。もちろん、制御装置30が実行する処理の一部または全部が、論理回路等のハードウェアによって実行されてもよい。
なお、基板処理装置10は、複数の処理液を切り替えて順次に基板Wに供給可能な構成を有していてもよい。例えば、基板処理装置10は、それぞれの処理液に対応した複数のノズルを含んでいてもよい。
<処理液の温度>
上述のように、基板処理装置10は高温の処理液を基板Wに供給することで、適切に基板Wを処理できる。しかしながら、ノズル13から吐出される処理液の温度は変動する。なぜなら、ノズル13からの処理液の吐出を停止すると、その停止期間(以下、アイドル時間とも呼ぶ)では、処理液は各配管(例えば供給配管14)およびノズル13内で静止して放熱し、処理液の温度が時間の経過とともに低下するからである。このアイドル時間においては、処理液の温度のみならず、ノズル13および各配管の温度も処理液と同様に、時間の経過とともに低下する。
なお、図2に例示するように、循環配管42が設けられる場合には、アイドル時間であっても、高温の処理液が循環配管42内を循環するので、循環配管42および循環配管42内の処理液は高温に維持される。なお、第2の循環配管が設けられる場合、当該第2の循環配管およびその内部の処理液の温度も高温に維持される。
図2の例では、アイドル時間において、処理液は供給配管22b、混合部21、供給配管14およびノズル13内で静止するので、この領域内の処理液の温度が低下する。
また、サックバック処理が行われる場合、吐出停止の際に処理液が上流側に吸い込まれるので、アイドル時間において、処理液はノズル13内には存在しない場合もある。この場合、ノズル13の温度の低下速度は比較的に高くなる。吸い込み量が多い場合には、供給配管14のうち下流側の一部でも処理液が存在しなくなるので、当該一部での温度の低下速度も高くなる。
この状態でノズル13からの処理液の吐出を再開すると、初期的には、低温の処理液が低温の供給配管14およびノズル13の内部を流れて、ノズル13から吐出される。よって、ノズル13から吐出される処理液の温度は初期的には低い。そして、硫酸供給源40b側から高温の処理液が各配管およびノズル13を流れることにより、各配管およびノズル13が徐々に温められる。逆に言えば、配管およびノズル13が処理液から奪う熱量は徐々に低下する。よって、ノズル13から吐出される処理液の温度は時間の経過とともに高まり、温度低下はいずれ解消される。
以上のように、アイドル時間の直後にノズル13から吐出される処理液の温度は低い。このような低温の処理液を基板Wに供給すると、所定の処理レートで基板Wを処理することができない。
そこで、基板Wに処理液を供給する本処理の前にプリディスペンス処理を行う。このプリディスペンス処理では、処理液がノズル13から液受け部16に吐出される。プリディスペンス処理においてノズル13から吐出される処理液の温度は、時間の経過とともに高まる。
そして、プリディスペンス処理の後に、基板Wに処理液を供給する(本処理)。具体的には、ノズル13からの処理液の吐出を中断し、ノズル移動部15がノズル13を処理位置PS1に移動させた上で、ノズル13が処理液を再び吐出する。これにより、高温の処理液を基板Wに供給することができる。
しかしながら、プリディスペンス処理の所要時間(以下、プリディスペンス時間と呼ぶ)が一定である場合、プリディスペンス処理の終了時における処理液の温度がばらつく場合がある。以下、図5を参照して、処理液の温度変化について述べる。
図5は、温度プロファイルの例を示すグラフである。ここでは、ロット単位で基板Wを処理する例について述べる。1ロットは例えば25枚の基板Wによって構成される。1ロット内の複数の基板Wは順次に基板処理装置10に搬送される。
基板処理装置10は、センターロボットCRによって搬入された1枚の基板に対して、例えば、所定の前処理(例えば洗浄処理)を行い、その後、プリディスペンス処理および本処理をこの順に行い、その後、所定の後処理(例えばリンス処理および乾燥処理)を行う。処理済みの1枚の基板WがセンターロボットCRによって搬出された後、次の1枚の基板Wが基板処理装置10に搬入される。以下、同様にして、基板処理装置10は基板Wを1枚ずつ順次に処理する。そして、1ロット内の25枚の基板Wの処理が終了すると、次のロットの基板Wが順次に基板処理装置10に対して搬入される。
このような基板処理の流れにおいて、1ロット内での基板Wの処理間でのアイドル時間はさほど長くないのに対して、ロット間でのアイドル時間は長くなり得る。
図5は、前回のロットの最後の基板Wに対する基板処理から、ロット間のアイドル時間が経過した後に、次のロットに対する基板処理を実行したときの、処理液の温度の時間変化の一例を示している。図5では、ロット間のアイドル時間が異なる3つのグラフG1~G3が示されている。グラフG1は、ロット間のアイドル時間が5分であるときの温度プロファイルを示し、グラフG2は、ロット間のアイドル時間が30分であるときの温度プロファイルを示し、グラフG3は、ロット間のアイドル時間が60分であるときの温度プロファイルを示す。図5では、ロットのうち最初の3枚の基板Wに対する処理時の温度プロファイルを示している。
処理液の温度としては、供給配管14のうち、サックバック配管27との接続箇所よりも少し上流側の位置で、処理液の温度を測定した。当該位置では、アイドル時間であっても処理液が存在するので、適切に処理液の温度を測定できる。
まず、グラフG1を参照しつつ、基板Wに対する処理と、その処理に対応した処理液の温度変化の一例を説明する。基板処理装置10には、ロットの1枚目の基板Wが搬入される。基板処理装置10は、必要に応じて種々の前処理を基板Wに対して行う。この前処理では、処理液(SPM)は各配管(例えば供給配管14)内で静止しており、図5の例では、その温度は時間の経過によらず一定である。そして、種々の前処理が終了した時刻t1において、1枚目の基板Wについてのプリディスペンス処理が実行される。具体的には、ノズル13から液受け部16へと処理液(SPM)が吐出される。このプリディスペンス処理により、処理液の温度は開始温度T1から増加する。プリディスペンス時間は例えば5秒である。
プリディスペンス時間が経過すると、ノズル13から液受け部16への処理液の吐出が停止される。これにより、プリディスペンス処理が終了する。次に、ノズル13が処理位置PS1に移動する。この移動時には、処理液の温度の増加速度は緩和する。続いて、ノズル13から処理液が1枚目の基板Wに吐出される(本処理)。この処理液の吐出により処理液の温度が再び時間の経過とともに高まりつつ、いずれ飽和する。所定の処理時間が経過した時刻t2において、1枚目の基板Wに対する本処理を終了すべく、ノズル13からの処理液の吐出を停止し、ノズル13が待機位置PS2へ移動する。本処理の処理時間は例えば30秒である。本処理では、例えば、基板Wの主面のレジストをSPMにより除去する。
ノズル13からの処理液の吐出が停止すると、静止中の処理液、各配管およびノズル13の温度は、放熱により、時間の経過とともに低下する。そして、1枚目の基板Wに対する種々の後処理(例えばリンス処理および乾燥処理など)が終了すると、1枚目の基板WがセンターロボットCRによって基板処理装置10から搬出される。
続いて、2枚目の基板WがセンターロボットCRによって基板処理装置10に搬入される。必要に応じて、当該基板Wに対する種々の前処理が行われた後に、時刻t3にて、2枚目の基板Wについてのプリディスペンス処理が行われる。
ロット内のアイドル時間(例えば時刻t2,t3間の時間)は、ロット間のアイドル時間よりも短いので、2枚目の基板Wについてのプリディスペンス処理の開始時の開始温度T2は、開始温度T1よりも高い。このプリディスペンス処理より、処理液の温度が再び時間の経過とともに増加する。プリディスペンス時間が経過すると、処理液の吐出が中断されてノズル13が処理位置PS1に移動し、処理液が2枚目の基板Wに供給される。これにより、処理液の温度はさらに増加し、いずれ飽和する。所定の処理時間が経過した時刻t4において、2枚目の基板Wに対する本処理を終了すべく、ノズル13からの処理液の吐出を停止し、ノズル13が待機位置PS2へ再び移動する。
ノズル13からの処理液の吐出が停止すると、静止中の処理液、各配管およびノズル13の温度は再び時間の経過とともに低下する。そして、2枚目の基板Wに対する種々の後処理が終了すると、2枚目の基板WがセンターロボットCRによって基板処理装置10から搬出され、3枚目の基板WがセンターロボットCRによって基板処理装置10に搬入される。必要に応じて、3枚目の基板Wに対する種々の前処理が行われた後に、時刻t5にて、3枚目の基板Wについてのプリディスペンス処理が行われる。以後、同様の処理が繰り返され、処理液の温度は同様の時間変化を繰り返す。図5の各グラフG1~G3では、3枚の基板の処理時における処理液の温度変化が示されている。
図5のグラフG1に示すように、2回目のプリディスペンス処理の終了温度T4は1回目のプリディスペンス処理の終了温度T3よりも高く、温度差ΔT1が生じている。これは、2回目のディスペンス処理の開始温度T2が1回目のプリディスペンス処理の開始温度T1よりも高いからである。この開始温度T1,T2の温度差は、その直前のアイドル時間の差によって生じる。具体的には、1回目のプリディスペンス処理の直前のアイドル時間は、ロット間のアイドル時間であるのに対して、2回目のプリディスペンス処理の直前のアイドル時間(時刻t2,t3間の時間)は、ロット内のアイドル時間である。ロット間のアイドル時間はロット内のアイドル時間よりも長いので、処理液の温度はロット間のアイドル時間においてより低下し、1回目のプリディスペンス処理の開始温度T1が、2回目のプリディスペンス処理の開始温度T2よりも低くなる。よって、開始温度T1,T2の間に温度差が生じる。ひいては、1回目および2回目のプリディスペンス処理の終了温度T3,T4の間に、温度差ΔT1が生じる。
温度差ΔT1が生じると、1枚目の基板Wに対する本処理の処理結果と、2枚目の基板Wに対する本処理の処理結果との間に、温度差ΔT1に応じた差異が生じる。つまり、本処理の処理結果は1枚目の基板Wと2枚目の基板Wとの間でばらつく。
図5のグラフG1に示すように、3回目のプリディスペンス処理の終了温度は2回目のプリディスペンス処理の終了温度T4と同程度である。よって、図5のグラフG1では、2枚目の基板Wと3枚目の基板Wとの間の処理結果のばらつきは小さくなる。
次に、ロット間のアイドル時間の長短の影響について、グラフG1~G3を参照して説明する。以下では、グラフG1~G3のそれぞれについてのパラメータを区別すべく、当該パラメータの符号にグラフの符号を付記して説明する。例えば、グラフG1についての開始温度T1を開始温度T1[G1]と呼ぶ。
ロット間のアイドル時間が長くなるほど、静止中の処理液、各配管およびノズル13の温度は低下する。よって、1回目のプリディスペンス処理の開始温度T1は、ロット間のアイドル時間が長いほど低くなる。つまり、開始温度T1[G3]は開始温度T1[G2]よりも低く、開始温度T1[G2]は開始温度T1[G1]よりも低い。したがって、1回目のプリディスペンス処理の終了温度T3も、ロット間のアイドル時間が長いほど低くなる。つまり、終了温度T3[G3]は終了温度T3[G2]よりも低く、終了温度T3[G2]は終了温度T3[G1]よりも低い。つまり、1枚目の基板Wに対する本処理は、ロット間のアイドル時間が長いほど、より低い処理液の温度で開始される。
そして、1枚目の基板Wに対する本処理の開始から所定の処理時間が経過した時刻t2にて、本処理を終了すべく、ノズル13からの処理液の吐出を停止し、ノズル13が待機位置PS2に移動する。この処理液の吐出の停止により、静止中の処理液、各配管およびノズル13の温度は時間の経過とともに低下する。
ところで、本処理後の処理液の温度の低下速度は周囲環境の温度に依存し、より具体的には、周囲環境の温度が低いほど高くなる。つまり、周囲環境の温度が低いほど、静止中の処理液の温度は高い速度で低下する。この周囲環境の温度も、アイドル時間が長いほど低い。例えば、グラフG3では、ロット間のアイドル時間が最も長いので、1枚目の基板Wに対する本処理後の周囲環境の温度も最も低くなる。よって、当該本処理後の処理液の温度は、グラフG3において、最も低下する。つまり、2回目のプリディスペンス処理の開始温度T2は、グラフG3において、最も低い。要するに、開始温度T2[G3]は開始温度T2[G2]よりも低く、開始温度T2[G2]は開始温度T2[G1]よりも低い。
したがって、2回目のプリディスペンス処理の終了温度T4も、ロット間のアイドル時間が長いほど低くなる。つまり、終了温度T4[G3]は終了温度T4[G2]よりも低く、終了温度T4[G2]は終了温度T4[G1]よりも低い。
一方で、ロット内のアイドル時間はロット間のアイドル時間よりも短いので、開始温度T2は開始温度T1までは低下しない。つまり、開始温度T2[G1]は開始温度T2[G1]よりも高く、開始温度T2[G2]は開始温度T1[G2]よりも高く、開始温度T2[G3]は開始温度T1[G3]よりも高い。
したがって、各グラフG1~G3において、2回目のプリディスペンス処理の終了温度T4は、1回目のプリディスペンス処理の終了温度T3よりも高くなり、終了温度T3,T4の間には温度差ΔT1が生じる。よって、グラフG1~G3の各々において、本処理の処理結果は1枚目および2枚目の基板Wの間でばらつく。
また、終了温度T3,T4の温度差ΔT1は、ロット間のアイドル時間が長いほど大きくなる。つまり、温度差ΔT1[G3]は温度差ΔT1[G2]よりも大きく、温度差ΔT1[G2]は温度差ΔT1[G1]よりも大きい。したがって、本処理の処理結果の1枚目および2枚目の基板Wの間のばらつきは、ロット間のアイドル時間が長いほど大きくなる。
ただし、ロット内で処理される基板Wの枚数が多くなるほど、周囲環境が十分に温められてその温度が安定するので、プリディスペンス処理の開始温度は一定値に近づき、ひいては、プリディスペンス処理の終了温度も一定値に近づく。図5の例では、各グラフG1~G3において、温度差ΔT2は温度差ΔT1よりも低減している。よって、枚数が多くなると、基板Wに対する本処理の処理結果のばらつきは低減する。
逆に言えば、周囲環境を十分に温めることにより、温度差ΔT1,ΔT2を小さくすることができる。そこで、制御部31は、ロット間のアイドル時間が長いほど、少なくとも1回目のプリディスペンス時間を長く設定する。これにより、1回目のプリディスペンス処理において、周囲環境をより高い温度まで昇温することができ、温度差ΔT1,ΔT2を小さくすることができる。以下、プリディスペンス時間の設定方法について詳述する。
<アイドル時間とプリディスペンス時間との関係>
第1の実施の形態では、温度差ΔT1,ΔT2の両方が規定値以下となるように、アイドル時間とプリディスペンス時間との関係を示す関係情報を記憶部32に記憶しておく。表1および表2は、当該関係情報の一例を示す表である。
表1は、アイドル時間およびプリディスペンス時間の各々を順次に異ならせたときの温度差ΔT1を示す表である。表1は例えば実験またはシミュレーションにより得ることができる。表1において、アイドル時間が時間ta1であり、プリディスペンス時間が時間tp1であるときの温度差ΔT1が温度差ΔT11である。
既述のように、温度差ΔT1は、アイドル時間が長いほど大きくなるので、ΔT11<ΔT14<ΔT17,ΔT12<ΔT15<ΔT18,ΔT13<ΔT16<ΔT19が成立する。
一方で、プリディスペンス時間が長くなるほど、プリディスペンス処理において、各配管、ノズル13および周囲環境がより温められる。よって、温度差ΔT1は小さくなる。つまり、ΔT11>ΔT12>ΔT13,ΔT14>ΔT15>ΔT16,ΔT17>ΔT18>ΔT19が成立する。
表2は、アイドル時間とプリディスペンス時間とを順次に異ならせたときの温度差ΔT2を示す表である。表2も例えば実験またはシミュレーションにより得ることができる。表2において、アイドル時間が時間ta1であり、プリディスペンス時間が時間tp1であるときの温度差ΔT2が温度差ΔT21である。
アイドル時間およびプリディスペンス時間に変化がなければ、温度差ΔT2は温度差ΔT1よりも小さい。よって、ΔT1n(nは1~9)>ΔT2nが成立する。また、温度差ΔT2も、アイドル時間が長いほど大きくなるので、ΔT21<ΔT24<ΔT27,ΔT22<ΔT25<ΔT28,ΔT23<ΔT26<ΔT29が成立する。また、温度差ΔT2も、プリディスペンス時間が長いほど小さくなるので、ΔT21>ΔT22>ΔT23,ΔT24>ΔT25>ΔT26,ΔT27>ΔT28>ΔT29が成立する。
<プリディスペンス時間の設定>
制御部31はプリディスペンス時間を設定する。具体的には、制御部31は、ロット間のアイドル時間を示すアイドル情報を取得し、当該アイドル時間と、記憶部32の関係情報とに基づいてプリディスペンス時間を設定する。
アイドル情報は例えば次のようにして取得される。例えば、上流側の装置から制御部31へとアイドル情報が通知されてもよい。あるいは、作業員が不図示の入力デバイスにアイドル情報を入力し、当該入力デバイスがアイドル情報を制御部31に出力してもよい。あるいは、制御部31はタイマー回路を有して、ロット間のアイドル時間を測定してもよい。
制御部31は、温度差ΔT1が規定値以下となるように、取得したロット間のアイドル時間、および、記憶部32に記憶された関係情報に基づいて、プリディスペンス時間を設定する。例えば、アイドル時間が時間ta2であり、温度差ΔT15が規定値よりも大きく、温度差ΔT16が規定値以下であれば、制御部31はプリディスペンス時間を時間tp3に設定する。
温度差ΔT2は温度差ΔT1よりも小さいので、プリディスペンス時間を時間tp3に決定すれば、温度差ΔT2も規定値以下とすることができる。
しかしながら、プリディスペンス処理で吐出される処理液は基板Wの処理に寄与しないので、プリディスペンス時間は短い方が好ましい。そこで、2回目以降のプリディスペンス時間を1回目のプリディスペンス時間よりも短く設定してもよい。より具体的な一例として、ロット間のアイドル時間が時間ta2であり、1回目のプリディスペンス時間が時間tp3に設定された場合について述べる。このとき、温度差ΔT25が規定値以下であれば、制御部31は2回目以降のプリディスペンス時間を、1回目のプリディスペンス時間の時間tp3よりも短い時間tp2に設定してもよい。これにより、処理液の消費を抑えることができる。
同様に、制御部31は、3回目以降のプリディスペンス時間を2回目のプリディスペンス時間よりも短く設定してもよい。例えば、制御部31は3回目以降のプリディスペンス時間を予め最小値(例えば時間tp1)に設定してもよい。
<基板処理の流れ>
図6は、基板処理装置10の動作の一例を示すフローチャートである。ここでは、ロット単位で順次に基板Wを処理する例について述べる。まず、制御部31は、ロット間のアイドル時間を示すアイドル情報を取得する(ステップS1:取得工程)。
次に、制御部31は、取得したアイドル情報と、記憶部32に記憶された関係情報に基づいて、プリディスペンス時間を設定する(ステップS2:設定工程)。
次に、センターロボットCRから基板Wが基板処理装置10に搬入される(ステップS3)。次に、必要に応じて、基板処理装置10は基板Wに対して前処理(例えば洗浄処理)を行う(ステップS4)。
次に、基板処理装置10は、設定されたプリディスペンス時間でプリディスペンス処理を行う(ステップS5:プリディスペンス工程)。これにより、各基板Wに対して適切なプリディスペンス時間でプリディスペンス処理を行うことができる。次に、基板処理装置10は基板Wに対して本処理(SPM処理)を行う(ステップS6:処理工程)。適切なプリディスペンス時間でプリディスペンス処理が行われているので、本処理の初期から適切な温度で処理液が基板Wに供給される。
次に、必要に応じて、基板処理装置10は基板Wに対して後処理(例えばリンス処理および乾燥処理)を行う(ステップS7)。次に、センターロボットCRは処理済みの基板Wを基板処理装置10から搬出する(ステップS8)。
次に、制御部31は、すべての基板Wの処理が終了したか否かを判断する(ステップS9)。未だすべての基板Wに対する処理が終了していないときには、次の未処理の基板WについてステップS3が実行される。すべての基板Wの処理が終了しているときには、処理を終了する。
以上のように、第1の実施の形態によれば、適切なプリディスペンス時間でプリディスペンス処理を行うことができる。よって、本処理による処理結果の基板Wの間のばらつきを低減することができる。
しかも、第1の実施の形態によれば、アイドル情報と関係情報との照合という簡易な処理により、プリディスペンス時間を適切に設定することができる。
また、上述の例では、関係情報には、複数のアイドル時間の各々および複数のプリディスペンス時間の各々に対応した温度差の情報が含まれている。温度差についての規定値は、例えば、基板Wの種類または処理液の各成分濃度等によっても変化し得るところ、この規定値が変化したとしても、温度差がその規定値以下となる際のプリディスペンス時間を、アイドル情報および関係情報に基づいて設定することができる。具体的な動作の一例として、制御部31は、温度差の規定値を示す規定値情報を取得する。制御部31はこの規定値情報を、例えば、上流側の装置から通知されてもよく、あるいは、入力デバイスから入力されてもよい。制御部31は、温度差が規定値以下となるように、アイドル情報および関係情報に基づいて、プリディスペンス時間を決定する。
なお、関係情報は、複数のアイドル時間、および、当該アイドル時間に対応したプリディスペンス時間のみを含む表を採用してもよい。具体的な一例として、以下の表3を1回目のプリディスペンス時間についての関係情報として採用してもよい。
表3は、複数のアイドル時間と、温度差ΔT1が規定値以下となるプリディスペンス時間との対応関係を示している。例えばアイドル時間が時間ta3であるときには、プリディスペンス時間を時間tp3に設定することで、温度差ΔT1を規定値以下にすることができる。なお、規定値が複数ある場合には、規定値ごとに表3を記憶部32に記憶してもよい。この場合、制御部31は複数の表3の一つを規定値情報に基づいて選択し、選択された表3とアイドル情報とに基づいてプリディスペンス時間を設定してもよい。
また、上述の例では、プリディスペンス時間を時間tp1~tp3のいずれかに決定しているものの、必ずしもこれに限らない。制御部31は、各表に対する補間処理(例えば線形補間)を行って、プリディスペンス時間をより細かく設定してもよい。
また、上述の例では、関係情報は、最初の2回のプリディスペンス時間を設定すべく、2つの表(表1および表2)を含んでいる。しかしながら、関係情報に含まれる表の個数は必ずしも2つに限らない。最初のN枚の基板Wにおける処理液の温度変化を測定し、表1および表2と同様な(N-1)個の関係情報を記憶部32に記憶しておいてもよい。この場合、制御部31は温度差が規定値以下となるように、アイドル情報および関係情報に基づいて、1回目から(N-1)回目までのプリディスペンス時間を個別に設定してもよい。表3についても同様である。
<複数の基板処理部>
過酸化水素水供給源40aおよび硫酸供給源40bの各々は複数の基板処理装置10(処理ユニット110)に対して処理液を供給してもよい。図7は、硫酸供給源40bと複数の基板処理装置10との配管接続の一例を概略的に示す図である。図7に示すように、基板処理システム100は、各タワーTW(図1参照)において、処理ユニット110(基板処理装置10)ごとに、供給配管14と供給調整部20とを含んでいる。供給調整部20は、タワーTWに対応する流体ボックス120(図1参照)に収容される。各供給配管14の一部はチャンバー11に収容され、各供給配管14の他の一部は流体ボックス120に収容される。
また、硫酸供給源40bは、タンク41と、循環配管42と、ポンプ43と、フィルター44と、温度調整器45とを含む。タンク41とポンプ43とフィルター44と温度調整器45とは、処理液キャビネット130(図1参照)に収容される。循環配管42の一部は処理液キャビネット130に収容され、循環配管42の他の一部は流体ボックス120に収容される。
循環配管42は、タンク41から下流に延びる上流配管42aと、上流配管42aから分岐した複数の個別配管42bと、各個別配管42bからタンク41まで下流に延びる下流配管42cとを含む。
上流配管42aの上流端はタンク41に接続されている。下流配管42cの下流端はタンク41に接続されている。上流配管42aの上流端は循環配管42の上流端に相当し、下流配管42cの下流端は循環配管42の下流端に相当する。各個別配管42bは、上流配管42aの下流端から下流配管42cの上流端に延びている。
複数の個別配管42bは、それぞれ、複数のタワーTWに対応している。1つのタワーTWに含まれる3つの基板処理装置10に対応する3つの供給配管22bは、1つの個別配管42bに接続されている。
ポンプ43はタンク41内の処理液を循環配管42に送る。フィルター44は、循環配管42を流れる処理液から異物を除去する。温度調整器45は、タンク41内の処理液の温度を調整する。温度調整器45は、例えば、処理液を加熱するヒーターである。ポンプ43および温度調整器45は制御装置30によって制御される。
ポンプ43、フィルター44および温度調整器45は、上流配管42aに介装されている。タンク41内の処理液は、ポンプ43によって上流配管42aに送られ、上流配管42aから複数の個別配管42bに流れる。個別配管42b内の処理液は、下流配管42cに流れ、下流配管42cからタンク41に戻る。タンク41内の処理液は、所定温度(例えば40℃)になるように温度調整器45によって加熱されて上流配管42aに送り込まれる。したがって、循環配管42を循環する処理液の温度は、所定温度に維持される。そして、循環配管42内で所定温度に維持されている処理液が、供給配管22bに供給される。
このような配管構造において、処理液キャビネット130と各流体ボックス120との間の距離は互いに相違するので、個別配管42bの長さも互いに相違する。よって、各個別配管42b内の処理液の温度もばらつき得る。また、各供給配管22bまたは各供給配管14の長さも相違し得るので、ノズル13から吐出される処理液の温度は、基板処理装置10ごとに相違し得る。
そこで、記憶部32に記憶される関係情報は、基板処理装置10(処理ユニット110)ごとに作成されても構わない。つまり、記憶部32には、複数の基板処理装置10に対応した複数の関係情報が記憶されてもよい。このような関係情報は、対応する基板処理装置10を用いた実験またはシミュレーションによって予め設定され得る。
制御部31は、基板Wをどの基板処理装置10で処理するのかを示す装置情報を取得する。例えば、制御部31はこの装置情報を、上流側の装置から通知されてもよく、入力デバイスから入力されてもよい。あるいは、制御部31は、基板Wをどの基板処理装置10で処理するのかを決定してもよい。制御部31は、処理対象となる基板処理装置10に対応する関係情報を記憶部32から読み出し、当該関係情報を用いて、プリディスペンス時間を設定する。
これによれば、基板処理装置10に対応した関係情報を適切に用いてプリディスペンス時間を設定することができる。よって、処理結果の基板Wの間のばらつきを、基板処理装置10ごとに、より適切に低減することができる。
<アイドル時間の他の例>
上述の例では、制御部31はロット間のアイドル時間に応じてプリディスペンス時間を設定している。しかしながら、アイドル時間は必ずしもロット間のアイドル時間に限らない。
例えば、アイドル時間の他の具体的な一例として、作業員が基板処理装置10の動作を停止させることもある。例えば、作業員が規定のスケジュールにしたがって基板処理装置10の電源を遮断して、基板処理装置10の動作を中断し、所定時間の経過後に、作業員が再び基板処理装置10の電源を投入して、基板処理装置10の動作を再開させることもある。この電源遮断によるアイドル時間も、1ロット内の基板Wの処理間で生じるアイドル時間に比べて長い。また、スケジュールは適宜に変更されるので、電源遮断によるアイドル時間も変動する。
そこで、制御部31は当該アイドル時間を取得し、そのアイドル時間と、記憶部32の関係情報(例えば表1および表2)に基づいて、プリディスペンス時間を設定してもよい。具体的には、制御部31は、当該アイドル時間の直後の1ロットにおける各基板についてのプリディスペンス時間を、上述のように設定する。
また、アイドル時間の他の具体的な一例として、基板処理装置10の異常等により、基板処理装置10が動作を中断する場合もある。そして、異常が解消すると、基板処理装置10は動作を再開する。このような異常によるアイドル時間も、ロット内の基板Wの処理間で生じるアイドル時間に比べて長い。また、異常が解消できる時間は、その異常の種類または程度によって相違するので、この異常によるアイドル時間も変動する。
制御部31は当該アイドル時間を取得する。異常によるアイドル時間は予めに決まっていないので、制御部31はタイマー回路により、当該アイドル時間を測定するとよい。制御部31は、そのアイドル時間と、記憶部32の関係情報(例えば表1および表2)に基づいて、プリディスペンス時間を設定してもよい。具体的には、制御部31は、1ロットのうち残りの各基板(言い換えれば、再開後の各基板)についてのプリディスペンス時間を、上述のように設定する。
<第2の実施の形態>
第2の実施の形態にかかる基板処理装置10は、第1の実施の形態にかかる基板処理装置10と同様である。ただし、第2の実施の形態では、処理液中の溶存酸素濃度を調整する。図8は、処理液供給源40および供給調整部20の構成の一例を概略的に示す図である。供給調整部20は、処理液供給源40からの処理液を基板処理装置10に供給する。処理液供給源40は、処理液を循環させる循環系51と、処理液の溶存酸素濃度を調整する濃度変更部57とを含む。処理液は、例えば、アルカリ性の薬液を含む。より具体的には、TMAH(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド)などの有機アルカリ、または、希釈アンモニア水(dNH4OH)などのエッチング液を採用できる。
循環系51は、処理液を貯留するタンク52と、タンク52内の処理液を循環させる環状の循環路を形成する循環配管53とを含む。循環系51は、さらに、タンク52内の処理液を循環配管53に送るポンプ54と、循環路を流れる処理液からパーティクルなどの異物を除去するフィルター56とを含む。循環系51は、これらに加えて、処理液の加熱または冷却によってタンク52内の処理液の温度を変更する温度調整器55を含んでいてもよい。
循環配管53の上流端および下流端は、タンク52に接続されている。供給配管14の上流端は、循環配管53に接続されており、供給配管14の下流端は、ノズル13に接続されている。ポンプ54、温度調整器55、およびフィルター56は、循環配管53に介装されている。温度調整器55は、室温(例えば20~30℃)よりも高い温度で液体を加熱するヒーターであってもよいし、室温よりも低い温度で液体を冷却するクーラーであってもよいし、加熱および冷却の両方の機能を有していてもよい。
ポンプ54は、常時、タンク52内の処理液を循環配管53内に送る。処理液は、タンク52から循環配管53の上流端に送られ、循環配管53の下流端からタンク52に戻る。これにより、タンク52内の処理液が循環路を循環する。処理液が循環路を循環している間に、処理液の温度が温度調整器55によって調整される。これにより、タンク52内の処理液は、一定の温度に維持される。
供給配管14には、供給調整部20のバルブ25が介装される。バルブ25は制御装置30によって制御される。バルブ25が開くことにより、循環配管53内を流れる処理液の一部が、供給配管14を介してノズル13に供給される。なお、供給調整部20は、第1の実施の形態と同様に、流量計および流量調整バルブを含んでいてもよい。
濃度変更部57は、タンク52内にガスを供給することによりタンク52内の処理液にガスを溶け込ませるガス供給配管58を含む。濃度変更部57は、さらに、不活性ガスをガス供給配管58に供給する供給配管59と、供給配管59からガス供給配管58に不活性ガスが流れる開状態と不活性ガスが供給配管59でせき止められる閉状態との間で開閉するバルブ60と、供給配管59からガス供給配管58に供給される不活性ガスの流量を変更する流量調整バルブ61とを含む。
ガス供給配管58は、タンク52内の処理液中に配置されたガス吐出口58pを含むバブリング配管である。バルブ60が開くことにより、窒素ガスなどの不活性ガスが、流量調整バルブ61の開度に対応する流量でガス吐出口58pから吐出される。これにより、タンク52内の処理液中に多数の気泡が形成され、不活性ガスがタンク52内の処理液に溶け込む。このとき、溶存酸素が処理液から排出され、処理液の溶存酸素濃度が低下する。タンク52内の処理液の溶存酸素濃度は、ガス吐出口58pから吐出される窒素ガスの流量を変更することにより変更される。バルブ60および流量調整バルブ61は制御装置30によって制御される。
濃度変更部57は、不活性ガス用の供給配管59等に加えて、クリーンエアーなどの酸素を含む酸素含有ガスをガス供給配管58に供給する供給配管62と、供給配管62からガス供給配管58に酸素含有ガスが流れる開状態と酸素含有ガスが供給配管62でせき止められる閉状態との間で開閉するバルブ63と、供給配管62からガス供給配管58に供給される酸素含有ガスの流量を変更する流量調整バルブ64とを含んでいてもよい。
バルブ63が開くことにより、酸素含有ガスの一例である空気が、流量調整バルブ64の開度に対応する流量でガス吐出口58pから吐出される。これにより、タンク52内の処理液中に多数の気泡が形成され、空気がタンク52内の処理液に溶け込む。空気は、その体積の約21%が酸素であるのに対し、窒素ガスは、酸素を含まないもしくは極微量しか酸素を含まない。したがって、タンク52内に空気を供給しない場合に比べて、短時間でタンク52内の処理液の溶存酸素濃度を上昇させることができる。例えば処理液の溶存酸素濃度が設定値よりも低くなりすぎた場合は、タンク52内の処理液に意図的に空気を溶け込ませてもよい。バルブ63および流量調整バルブ64は制御装置30によって制御される。
濃度変更部57は、さらに、処理液の溶存酸素濃度を測定する酸素濃度計65を含んでいてもよい。図8は、酸素濃度計65が測定配管66に介装されている例を示している。酸素濃度計65は、循環配管53に介装されていてもよい。測定配管66の上流端は、フィルター56に接続されており、測定配管66の下流端は、タンク52に接続されている。測定配管66の上流端は、循環配管53に接続されていてもよい。循環配管53内の処理液の一部は、測定配管66に流れ込み、タンク52に戻る。酸素濃度計65は、測定配管66内に流入した処理液の溶存酸素濃度を測定する。流量調整バルブ61および流量調整バルブ64の少なくとも一つの開度は、酸素濃度計65の測定値に応じて変更される。具体的には、酸素濃度計65は、測定値を示す信号を制御装置30に出力し、制御装置30は測定値が目標範囲内となるように、流量調整バルブ61,64の少なくともいずれか一方を制御する。
<溶存酸素濃度と処理レート>
図9は、基板Wの上面に処理液を供給してエッチング対象膜をエッチングしたときの処理レートの分布を示す概念図である。ここでは、処理レートはエッチングレートを示す。図9は、基板Wの上面の中心と基板Wの上面の周縁に位置する2点とを通る直線上における基板Wの上面のエッチングレート(単位時間あたりのエッチング量)の分布を示している。エッチングレートは、エッチング速度に相当する。
図9の例では、2つのグラフG4,G5が示されている。グラフG4における処理液の溶存酸素濃度は、グラフG5における処理液の溶存酸素濃度よりも高い。図9に示すように、溶存酸素濃度が低いほど、基板Wの中央部のエッチングレートと、その他の領域のエッチングレートとの差が大きくなる。
処理液の溶存酸素濃度がばらつくと、基板Wのエッチングレートの分布が互いに相違し、所望の分布で基板Wをエッチングできない。エッチングレートの分布を示す指標としては、例えば、エッチングレートの最大値と最小値との差(以下、ギャップと呼ぶ)を採用することができる。当該ギャップの基板Wの間の差(以下、ギャップ差と呼ぶ)Δgが大きいことは、エッチングレート分布の基板Wの間のばらつきが大きいことを示す。
<アイドル時間>
ところで、ノズル13からの処理液の吐出を停止しているアイドル時間において、処理液は、溶存酸素濃度が調整されるタンク52を介した循環路を循環しているので、循環路における処理液の溶存酸素濃度は低い値に維持される。
一方で、供給配管14およびノズル13内の処理液はアイドル時間において静止する。供給配管14内で静止中の処理液は空気に触れるので、空気中の酸素が処理液に混入する。これにより、処理液の溶存酸素濃度は時間の経過とともに高まってしまう。よって、アイドル時間が長いほど、処理液の溶存酸素濃度は高くなる。
また、アイドル時間において、濃度変更部57が動作を停止している場合には、タンク52および循環配管53内の処理液の溶存酸素濃度も、アイドル時間の経過とともに高くなる。
<プリディスペンス処理>
第2の実施の形態でも、処理液を基板Wに供給する本処理の前にプリディスペンス処理が行われる。ロット間のアイドル時間が経過した後のプリディスペンス処理において、ノズル13から液受け部16に処理液が吐出されるので、供給配管14内の溶存酸素濃度の高い処理液が液受け部16に吐出される。
そして、プリディスペンス処理において、ノズル13から吐出される処理液の溶存酸素濃度は時間の経過とともに低下する。例えばプリディスペンス時間として、それぞれ、X秒、2X秒、4X秒に設定したときの、プリディスペンス処理の終了時の処理液の溶存酸素濃度は、それぞれ、Yppb、Y/2ppb、Y/4ppbであった。なお、ここで、Xは任意の時間(単位は秒)であり、Yは任意の溶存酸素量(単位はppb)である。
また、ロット間のアイドル時間が長いほど、静止中の処理液の溶存酸素濃度が高まるので、同じプリディスペンス時間であれば、ロット間のアイドル時間が長いほど、静止中の処理液の溶存酸素濃度は高くなる。
よって、プリディスペンス時間が一定であれば、プリディスペンス処理の終了時における処理液の溶存酸素濃度はロット間のアイドル時間が長いほど高くなる。処理液の吐出時間が長くなるほど、溶存酸素濃度が低下するので、1回目のプリディスペンス処理の終了時の溶存酸素濃度が2回目のプリディスペンス処理の終了時の溶存酸素濃度よりも高くなり得る。したがって、エッチング分布(ギャップ差)の基板Wの間のばらつきが大きくなる。
そこで、第2の実施の形態でも、制御部31は、ロット間のアイドル時間が長いほど、少なくとも1回目のプリディスペンス時間を長く設定する。以下、プリディスペンス時間の設定方法について詳述する。
<アイドル時間とプリディスペンス時間との関係>
第2の実施の形態では、ギャップ差Δgが規定値以下となるように、言い換えれば、基板Wに対するエッチング分布のばらつきが規定範囲内となるように、アイドル時間とプリディスペンス時間との関係を示す関係情報を記憶部32に記憶しておく。表4は、当該関係情報の一例を示す表である。
表4は、アイドル時間およびプリディスペンス時間の各々を順次に異ならせたときの、1枚目の基板Wのギャップと、2枚目の基板Wのギャップとのギャップ差Δgを示す表である。表4は例えば実験またはシミュレーションにより得ることができる。表4において、アイドル時間が時間ta1であり、プリディスペンス時間が時間tp1であるときのギャップ差Δgはギャップ差Δg11である。
既述のように、ギャップ差Δgは、アイドル時間が長いほど大きくなるので、Δg11<Δg14<Δg17,Δg12<Δg15<Δg18,Δg13<Δg16<Δg19が成立する。
一方で、プリディスペンス時間が長くなるほど、プリディスペンス処理において、溶存酸素濃度が低下する。よって、ギャップ差Δgは小さくなる。つまり、Δg11>Δg12>Δg13,Δg14>Δg15>Δg16,Δg17>Δg18>Δg19が成立する。
<プリディスペンス時間>
制御部31は第1の実施の形態と同様に、アイドル情報を取得し、記憶部32に記憶された関係情報と、当該アイドル情報とに基づいて、プリディスペンス時間を決定する。具体的には、制御部31は、ギャップ差Δgが規定値以下となるように、取得したロット間のアイドル時間、および、記憶部32に記憶された関係情報に基づいて、プリディスペンス時間を設定する。例えば、アイドル時間が時間ta2であり、ギャップ差Δg15が規定値よりも大きく、ギャップ差Δg16が規定値以下であれば、制御部31はプリディスペンス時間を時間tp3に設定する。
これにより、基板処理装置10は、適切なプリディスペンス時間でプリディスペンス処理を行うことができ、本処理の初期から適切な溶存酸素濃度で処理液を基板Wに供給することができる。したがって、処理結果の基板Wの間のばらつき(ギャップ差Δg)を低減することができる。
なお、第2の実施の形態でも、2回目以降のプリディスペンス時間を1回目のプリディスペンス時間よりも短く設定してもよい。また、基板処理装置10ごとに関係情報を記憶部32に記憶し、基板Wが処理される基板処理装置10に対応した関係情報を用いてプリディスペンス時間を設定してもよい。
以上のように、基板処理装置および基板処理方法は詳細に説明されたが、上記の説明は、すべての局面において、例示であって、この基板処理装置および基板処理方法がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この開示の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。上記各実施の形態および各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせたり、省略したりすることができる。