JP7440988B1 - 周波数下方変換装置、及び通信装置 - Google Patents

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Abstract

周波数下方変換の変換利得を改善すること。赤外線光周波数帯の互いに異なる周波数を持つ光データ信号及び光サブキャリア信号を入力とし、ラジオ波帯又はベースバンドの周波数を持つデータ信号を出力する周波数下方変換装置が提供される。装置は、ソース電極と、ドレイン電極と、平行に配置される複数の第1のフィンガーを持つ第1のゲート電極と、平行に配置される複数の第2のフィンガーを持つ第2のゲート電極とがメサ上に配置された電界効果トランジスタの構造を有し、複数の第1のフィンガーと複数の第2のフィンガーとは入れ子状に配置され、第2のゲート電極には、光データ信号の周波数と光サブキャリア信号の周波数との差周波数に近い、サブテラヘルツ帯からテラヘルツ帯の帯域にある周波数を持つ局部発信信号が入力され、第1のゲート電極から、所定の周波数と差周波数との絶対差に対応する周波数を持つデータ信号が出力される。

Description

本発明は、周波数下方変換装置、及び通信装置に関する。
無線通信の高速化及び広帯域化が進み、次世代(beyond 5G、B5G)無線通信技術では、無線通信1チャネルの伝送速度が、光ファイバ通信1チャネルの伝送速度にまで達しうる。従来は両者の伝送速度が乖離していたため、光ファイバ通信と無線通信との間で異なるコーディング方式が採用されていた。そのため、光データ信号をデコーディングしてデータを取得し、そのデータを無線通信のコーディング方式で再コーディングして無線データ信号を生成する必要があった。しかし、両者の伝送速度が同程度になることでコーディング方式を統一することが可能になり、搬送波周波数の変換だけで光データ信号から無線データ信号を生成することが可能になる。これにより、信号処理が大幅に単純化されるだけでなく、システムの消費電力を大幅に低減することが可能になる。
上述した搬送波周波数の変換を実現するには、光データ信号を中間周波数帯のデータ信号に変換するための周波数下方変換装置が必要になる。特に、次世代無線通信信号の搬送波周波数はサブテラヘルツ帯からテラヘルツ帯の帯域にあり、中間周波数帯はラジオ波帯であることから、非常に広帯域の変換処理が可能な周波数下方変換装置が必要になる。そのような周波数下方変換装置の機能を実現しうるデバイスとして、最近、非対称二重回折格子ゲート(A-DGG)電界効果トランジスタ(FET)(特許文献1、2を参照)、及び、単一の高電子移動度トランジスタ(HEMT)とフォトダイオード(PD)とをモノシリック集積化した光電子融合トランジスタ(非特許文献1、2を参照)が提案された。
特許第5747420号公報 米国特許第7915641号公報
A.Satou et al., "Unitraveling-Carrier-Photodiode-Integrated High-Electron-Mobility Transistor for Photonic Double-Mixing", Journal of Lightwave Technology, Vol.39, No.10, pp.3341-3349 (2021) A.Satou et al., "UTC-PD-integrated HEMT for optical-to-terahertz carrier frequency down-conversion", Proceedings of SPIE, Vol.11390 (2020) A.Satou, T.Otsuji, "Recent progress in the development of grating-gate InGaAs-channel HEMTs for fast and sensitive THz detection", Proceedings of SPIE, Vol.12230 (2022)
しかしながら、特許文献1、2及び非特許文献1、2のデバイスでは、実用上必要となる変換利得が得られておらず、変換利得の更なる改善が必要である。
本発明者は、最近、非常に高い検出感度を持つ整流検波機構を備えたテラヘルツ波検出器を提案している(非特許文献3を参照)。このテラヘルツ波検出器では、特定周波数の光波入力を光電圧信号に変換するデバイスとしてゲート読み出し型FETを採用することで検出感度の改善を実現している。その知見を生かし、本発明者は、周波数の異なる複数の入力信号の差周波数の成分を取り出すことによって周波数変換を実現する周波数下方変換装置について理論的な考察を行い、周波数下方変換装置における変換利得を1桁以上引き上げる仕組みを発明した。本発明は、高い変換利得を持つ周波数下方変換装置及びそれを備えた通信装置の提供を目的とする。
本発明の第1の態様によれば、赤外線光周波数帯の互いに異なる周波数を持つ光データ信号及び光サブキャリア信号を入力とし、ラジオ波帯又はベースバンドの周波数を持つデータ信号を出力する周波数下方変換装置が提供される。装置は、ソース電極と、ドレイン電極と、一定の間隔を空けて平行に配置される複数の第1のフィンガーを持つ第1のゲート電極と、一定の間隔を空けて平行に配置される複数の第2のフィンガーを持つ第2のゲート電極とがメサ上に配置された電界効果トランジスタの構造を有する。複数の第1のフィンガーと複数の第2のフィンガーとは入れ子状に配置される。第2のゲート電極には、光データ信号の周波数と光サブキャリア信号の周波数との差周波数に近い、サブテラヘルツ帯からテラヘルツ帯の帯域にある所定の周波数を持つ局部発信信号が入力される。この装置は、第1のゲート電極から、所定の周波数と差周波数との絶対差に対応する周波数を持つデータ信号を出力するように構成される。かかる構成によれば、高い変換利得が実現される。
本発明の第2の態様によれば、赤外線光周波数帯の互いに異なる周波数を持つ光データ信号及び光サブキャリア信号を入力とし、ラジオ波帯又はベースバンドの周波数を持つデータ信号を出力する周波数下方変換装置が提供される。装置は、ソース電極と、ドレイン電極と、一定の間隔を空けて平行に配置される複数のフィンガーを持つゲート電極とがメサ上に配置された電界効果トランジスタの構造を有する。ドレイン電極には、光データ信号の周波数と光サブキャリア信号の周波数との差周波数に近い、サブテラヘルツ帯からテラヘルツ帯の帯域にある所定の周波数を持つ局部発信信号が入力される。この装置は、ゲート電極から、所定の周波数と差周波数との絶対差に対応する周波数を持つデータ信号を出力するように構成される。任意選択で、この装置は、メサ上に配置された、各フィンガーから一定の距離を置いて配置される複数のフローティングパッチ電極をさらに有してもよい。かかる構成によれば、高い変換利得が実現される。
本発明の第3の態様によれば、光ファイバを介して伝送される前記光データ信号及び前記光サブキャリア信号を、第1の態様又は第2の態様のいずれかの周波数下方変換装置に入力する光処理部と、前記周波数下方変換装置と、前記周波数下方変換装置から出力される前記データ信号を無線信号に変換し、アンテナを介して前記無線信号を送信する無線処理部とを備える、通信装置が提供される。かかる構成によれば、周波数下方変換装置で高い変換利得が実現され、小型で消費電力が低い通信装置を実現することが可能になる。
本発明の一態様によれば、高い変換利得を持つ周波数下方変換装置及びそれを備えた通信装置を実現することが可能になる。
周波数下方変換装置の機能構成について説明するための模式図である。 周波数下方変換装置の電極構造について説明するための模式図である。 周波数下方変換装置の層構造及び電極配置について説明するための模式図である。 ピーク出力光電圧のゲートバイアス電圧依存性を示した図である。 異なるバイアス電圧領域について出力光電圧波形を比較した図である。 異なる化合物半導体ヘテロエピタキシャル層構造について出力光電圧波形を比較した図である。 変形例に係る周波数下方変換装置の構成について説明するための模式図である。 周波数下方変換装置を実装する通信装置の構成例を示す模式図である。
以下では、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、本明細書及び図面において実質的に同一の機能を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略することがある。
既に説明したように、次世代(B5G)の無線通信ネットワークでは、無線通信1チャネルの伝送速度が光ファイバ通信1チャネルの伝送速度にまで達しうる。そのため、光ファイバ通信と無線通信との間で同じコーディング方式を採用することが可能になり、光データ信号をデコーディングしてから、無線通信用にデータを再コーディングする必要がなくなる。言い換えると、光データ信号の搬送波周波数を下方変換するだけで無線データ信号が得られる。これにより、信号処理が大幅に単純化されると共に消費電力を大幅に低減することが可能になる。
以前は、テラヘルツ帯の光データ信号から単一素子で中間周波数帯又はベースバンドの信号(以下、IF/BB信号)を得る周波数下方変換装置の実現は難しいとされてきた。しかし、最近になって、広帯域の変換処理を可能にするデバイスとして、非対称二重回折格子ゲートFET(特許文献1、2を参照)、及び、単一の高電子移動度トランジスタ(HEMT)とフォトダイオード(PD)とをモノシリック集積化した光電子融合トランジスタ(非特許文献1、2を参照)が提案された。これらのデバイスは単一素子で広帯域の変換処理を可能にするが、実用レベルの変換利得が得られておらず、更なる変換利得の改善が必要である。
本発明者は、最近、非常に高い検出感度を持つ整流検波機構を備えたテラヘルツ波検出器を提案している(非特許文献3を参照)。このテラヘルツ波検出器では、特定周波数の光波入力を光電圧信号に変換するデバイスとしてゲート読み出し型FETを採用することによって検出感度の改善を実現している。つまり、本発明者は、ドレイン電極から光電圧信号を読み出す従来の方式に代えて、ゲート電極から光電圧信号を読み出す新たな方式を採用することによって検出感度の改善を果たした。しかし、周波数下方変換装置の動作機構とテラヘルツ波検出器の動作機構とは異なるため、単純にゲート読み出し方式を周波数下方変換装置に適用しても変換利得の改善を果たせるかは不明であった。
そこで、本発明者は、周波数下方変換装置にゲート読み出し方式を適用することによる変換利得の改善効果を評価するために、信号入力に対する周波数下方変換装置の非線形応答をモデル化し、周波数変換の機構を明らかにすると共に、変換利得の改善効果について理論的に考察した。その結果、ゲート読み出し方式の適用によって変換利得が大幅に向上することが明らかになった。以下では、この考察のもとになる周波数下方変換装置のモデルについて簡単に説明した上で、ゲート読み出し方式による変換利得の評価方法及び改善効果を示す評価結果について述べる。
(周波数下方変換装置の構成)
まず、図1を参照しながら、本実施形態に係る周波数下方変換装置(周波数下方変換装置1)の機能について説明する。図1に示すように、周波数下方変換装置1には、搬送波周波数がf1である光データ信号S1及び周波数f2を持つ光サブキャリア信号S2が入力される。また、周波数下方変換装置1には、局部発振器(不図示)から、周波数f4を持つ局部発信(LO)信号S4が入力される。
周波数下方変換装置1では、光データ信号S1と光サブキャリア信号S2とが混合し、周波数f1、f2の差周波数Δfopt(Δfopt=|f1-f2|)を持つ信号成分(光混合信号S3)が生じる(光ミキシング1a)。さらに、周波数下方変換装置1では、光混合信号S3とLO信号S4とが混合し、周波数Δfopt、f4の差周波数f5(f5=|Δfopt-f4|)を持つ信号成分が生じる(RFミキシング1b)。本実施形態に係る周波数下方変換装置1では、この信号成分をIF/BB信号S5としてゲート電極から読み出す。
周波数f1、f2は、互いに異なる赤外線光周波数帯の周波数である。LO信号S4の周波数f4は、周波数f1、f2の差周波数Δfoptに近い、サブテラヘルツ帯からテラヘルツ帯の帯域にある周波数に設定される。差周波数Δfoptと周波数f4との絶対差|Δfopt-f4|に対応する周波数がIF/BB信号S5の周波数f5になるため、周波数f4は、周波数f5が所望の周波数(中間周波数又はベースバンド周波数)になるように設定される。
周波数下方変換装置1は、電界効果トランジスタ、例えば、HEMTの構造を有する。周波数下方変換装置1の電極構造は、特許文献1、2及び非特許文献1~3のいずれかに記載の電極構造、即ち、ソース電極、ドレイン電極、及び複数のゲート電極を含み、それらのゲート電極が回折格子状に配置された回折格子ゲート構造であってよい。電極下の層構成は、例えば、特許文献1、2及び非特許文献1~3のいずれかに記載の層構成であってよい。もちろん、本実施形態に係る技術の適用範囲は、特許文献1、2及び非特許文献1~3に記載の電極構造及び層構成に限定されず、後述する理論が適用可能な任意の電極構造及び層構成がその範囲に含まれうる。
以下では、図2及び図3に示した電極構造及び層構成を例に説明する。図2は、周波数下方変換装置1の電極構造等を例示した模式図である。図3は、電極下の層構成等を例示した模式図である。なお、図2及び図3に示した電極構造及び層構成は、説明のための単なる例に過ぎず、本実施形態の適用範囲はこれらの例に限定されない。
図2の例において、周波数下方変換装置1は、ソース電極12と、ドレイン電極13と、第1のゲート電極14と、第2のゲート電極15とを有する。各電極は、メサ11上に配置される。以下の説明では、第1のゲート電極14をG1と表記し、第2のゲート電極15をG2と表記することがある。第1のゲート電極14は、一定の間隔を空けて平行に配置される複数の第1のフィンガー14a、…、14dを有する。第2のゲート電極15は、一定の間隔を空けて平行に配置される複数の第2のフィンガー15a、…、15dを有する。また、複数の第1のフィンガー14a、…、14dと複数の第2のフィンガー15a、…、15dとは入れ子状に配置される。
ソース電極12は接地される。ドレイン電極13は開放されてもよいし、一定の直流バイアス電圧がドレイン電極13に印加されてもよい。第2のゲート電極15には、光データ信号S1の周波数f1と光サブキャリア信号S2の周波数f2との差周波数Δfoptに近い周波数f4を持つLO信号S4が入力される。これらの入力に応じて、周波数下方変換装置1では、光ミキシングによって光混合信号S3が生じ、さらに、RFミキシングによって周波数f5を持つIF/BB信号S5が生じる。そして、IF/BB信号S5が第1のゲート電極14から出力される。
図3の例において、メサ11は、電極側から順に、主に、キャップ層11a、11f(Cap)、バリア層11b(Barrier)、チャネル及びチャネル周辺層11c(Carrier-supply/Spacer/Channel又はChannel/Spacer/Carrier-supply)、バッファ層11d(Buffer)、及び基板11e(Substrate)を有する。各層の構成としては、例えば、特許文献1、2及び非特許文献1~3のいずれかに記載の構成を適用してもよいし、それ以外の構成を適用してもよい。ここでは、チャネル層(Channel)、キャリア供給層(Carrier-supply)、及びスペーサ層(Spacer)をまとめてチャネル及びチャネル周辺層11cと称している。キャリア供給層及びスペーサ層は、チャネル層の上又は下に配置される。参考までに、HEMTの層構成例を表1(通常層タイプ:Normal-type、上述のチャネル及びチャネル周辺層11c構成Carrier-supply/Spacer/Channelに対応)及び表2(反転層タイプ:Inversed-type、上述のチャネル及びチャネル周辺層11c構成Channel/Spacer/Carrier-supplyに対応)に示す。
Figure 0007440988000001

Figure 0007440988000002

通常のヘテロエピタキシャル層構造(電子走行チャネル層へ電子キャリアをドープするためのキャリアドープ層及びスペーサ層がゲート電極金属と電子走行チャネル層との中間に位置する)型素子(通常層タイプ)では、表1のように、チャネル層の上にスペーサ層及びキャリア供給層が配置される。反転したヘテロエピタキシャル層構造(電子走行チャネル層へ電子キャリアをドープするためのキャリアドープ層及びスペーサ層が電子走行チャネル層よりも下側に位置する)型素子(反転層タイプ)では、表2のように、チャネル層の下にスペーサ層及びキャリア供給層が配置される。なお、後述する理論は通常層タイプ、反転層タイプのいずれにも成り立ち、また、赤外線光波の照射方向(素子の表面から照射する表面照射方式、素子の基板裏面から照射する裏面照射方式、及び素子面内から導波路などを利用して照射する面内照射方式など)に依らず成り立つため、本実施形態のアイデアは、いずれのヘテロエピタキシャル層構造にも、いずれの赤外線光照射方式にも適用可能である。
また、周波数下方変換装置1は、炭素原子の単原子層材料(グラフェン)を電子走行チャネル層とする電界効果トランジスタの構造を有してもよい。その場合、図3の層構成において、キャップ層11a、11fを金属下地層と読み替え、バリア層11bをゲート絶縁膜層と読み替え、チャネル及びチャネル周辺層11cをグラフェンチャネル層と読み替え、バッファ層11dを下地絶縁膜層と読み替えればよい。この構造では、電子走行チャネル層であるグラフェンとゲート電極である金属とが極薄のゲート絶縁膜層を介して対峙しており、ダイオード型の非線形電流電圧特性を与えることができる。例えば、文献「Andreas Hemmetter, Xinxin Yang, Zheng Wang, Martin Otto, Burkay Uzlu, Marcel Andree, Ullrich Pfeiffer, Andrei Vorobiev, Jan Stake, Max C. Lemme, Daniel Neumaier, "Terahertz Rectennas on flexible substrates based on one-dimensional metal-insulator-graphene diodes", ACS Applied Electronic Materials, vo. 3, pp. 3747-3752, 2021」に公表されているように、この構造は、上記のダイオード型の非線形電流電圧特性を利用して高周波(マイクロ波/ミリ波)帯電磁波を直流信号に整流変換する素子として機能し、レクテナ(Rectenna:Rectifying Antenna(整流作用を有するアンテナ素子))として知られている。この構造を適用した場合も、前述したHEMT素子の場合と同様の非線形整流効果が得られる。一例として、表3にて各層の構成材料を紹介する。ゲート電極金属及び下地層金属の仕事関数(表3の構成例ではそれぞれ、5.4 eV及び4.25 eV)が、ソース・ドレイン電極金属の仕事関数(表3の構成例では5.6 eV)より小さくなるように材料を選択すると、ゲート電極に正のバイアスを印加したときにダイオード順方向バイアス特性が得られ、上述のHEMT素子と同様の非線形整流効果が得られる。
Figure 0007440988000003
(非線形応答のモデル化)
ソース電極12とドレイン電極13とを結ぶ方向(チャネル長方向)に平行な偏光成分を持つテラヘルツ波が周波数下方変換装置1に照射されると、チャネル層内に二次元プラズモンが励起される。そして、プラズモン流体非線形性及びそれに続く、第2のゲート電極15(G2)とチャネル層との間で生じるダイオード電流非線形性を介してチャネル層に電子伝導電流(光電流)が生じる。光データ信号S1及び光サブキャリア信号S2が照射される場合、光ミキシングによって差周波数Δfoptを持つ電流成分(光混合信号S3)が生じる。
また、第2のゲート電極15にLO信号S4が入力されると、入力信号がダイオード電流非線形性を介してプラズモン流体非線形性の影響を受け、チャネル層に基本波及び高次高調波の電流成分が励起される。そして、その電流成分と光混合信号S3とが混合され(RFミキシング)、さらに、ダイオード電流非線形性を介して増強された周波数f5を持つ信号成分(IF/BB信号S5)が第1のゲート電極14から出力される。このような周波数下方変換装置1における非線形応答をモデル化し、ゲート読み出し方式による変換利得の改善効果について考察する。
(プラズモン流体非線形性)
まず、プラズモン流体非線形性について考察する。光信号又はLO信号の入力によって生じる入力電圧信号をVと表記し、プラズモン流体非線形性によって生じる出力信号を非線形応答関数F(V)で表す。このとき、微小な振幅δV及び角振動数ωを持つ入力電圧信号V(V=δV・cos(ωt))に対する出力信号は、三次以降の非線形項を省略すると、下記の式(1)のようになる。式中のF”(0)及びF’(0)は、それぞれV=0における関数Fの一階及び二階微分の値である。
Figure 0007440988000004
式(1)の右辺第一項は、入力された電圧信号Vに対する直流二乗検波成分である。
既に説明したように、周波数下方変換装置1では、テラヘルツ波検出器とは異なり、光データ信号S1及び光サブキャリア信号S2が一緒にトランジスタへと入力される。さらに、LO信号S4がトランジスタへと入力される。そのため、周波数が異なる2種類の入力電圧信号V1(V1=δV1・cos(ω1t))及びV2(V2=δV2・cos(ω2t))に対するプラズモン流体非線形性の影響について考える必要がある。入力電圧信号V=V1+V2に対する出力信号は、三次以降の非線形項を省略すると、下記の式(2)のようになる。
Figure 0007440988000005
周波数下方変換装置1では、式(2)のうち、右辺第一項の直流二乗検波成分ではなく、右辺第四項にある差振動数Δω(Δω≡(ω1-ω2))で振動する成分が重要になる。
例えば、光データ信号S1及び光サブキャリア信号S2に対応する入力電圧信号をそれぞれV1及びV2とすると、上記の式(2)から、これらの信号入力に対し、式(2)の右辺第四項にある差振動数Δωで振動する成分が生じることが分かる。この差振動数Δωは、光データ信号S1の周波数f1と光サブキャリア信号S2の周波数f2との差周波数Δfoptに対応する。つまり、プラズモン流体非線形性によって、周波数Δfoptに対応する振動数Δωで振動する成分(光混合信号S3)が得られる。
次に、光混合信号S3に対応する入力電圧信号がV1であるとし、LO信号S4に対応する入力電圧信号がV2であるとすると、上記の式(2)から、これらの信号入力に対し、式(2)の右辺第四項にある差振動数Δωで振動する成分が生じることが分かる。この差振動数Δωは、光混合信号S3の周波数ΔfoptとLO信号S4の周波数f4との差周波数f5に対応する。つまり、上記の式(2)は、プラズモン流体非線形性によって、絶対差|Δfopt-f4|に対応する振動数で振動する成分(IF/BB信号S5)が得られることを示している。
(ダイオード電流非線形性と三次元整流効果)
但し、LO信号S4を第2のゲート電極15から入力する場合(ゲートLO入力)では、LO信号S4がトランジスタへと入力する際に、後述するダイオード電流非線形性による影響を受ける。ダイオード電流非線形性は、順方向の電圧増加に伴って指数関数的に電流が増加する非線形特性であり、入力信号Vinに対する出力信号は、G(Vin)=exp(αVin)-1に比例する。この影響を考慮すると、光混合信号S3及びLO信号S4の入力に対応する入力電圧信号Vは、下記の式(3)のようになる。なお、LO信号S4をドレイン電極13から入力する場合(ドレインLO入力)では、上記の式(2)が成り立つ。
Figure 0007440988000006
式中の積αβは、ドレインLO入力でのLO信号S4に対応する入力電圧に対する、ゲートLO入力でのLO信号S4に対応する入力電圧の比を表している。積αβは、ドレイン/ゲートの入力インピーダンスによって決まるパラメータである。インピーダンス不整合による損失が十分に小さいとして無視し、αβ=1であると仮定すると、式(3)の入力電圧信号Vに対する非線形応答関数F(V)は、下記の式(4)のようになる。
Figure 0007440988000007
式(4)を上記の式(2)と比較すると、式(4)の右辺第一項にゲート端子入力による整流成分が追加されていることが分かる。この整流成分の有無がドレインLO入力とゲートLO入力との違いであり、後述するように、その違いが変換利得に影響する。
周波数下方変換装置1では、IF/BB信号S5を第1のゲート電極14から出力するため、上記の式(4)で表現される出力信号に対し、更にダイオード電流非線形性が作用する。つまり、第1のゲート電極14から出力される出力信号はG(F(V))となる。上記の式(4)をダイオード電流非線形性による非線形応答関数Gに代入し、差振動数Δω(Δω=ω1-ω2)の成分Gω1-ω2を抽出すると、下記の式(5)のようになる。
Figure 0007440988000008
因みに、IF/BB信号をドレイン電極から読み出す既存方式(ドレイン読み出し方式)の場合、ドレイン電極から読み出される出力信号は、下記の式(6)で表される。式(5)と式(6)とを比較すると、式(6)には指数関数因子が無いことが分かる。つまり、ゲート読み出し方式では、この指数関数因子の分だけ出力信号が増強され、変換利得が向上する。このように、プラズモン流体非線形性とダイオード電流非線形性との相乗効果によって出力信号が増強される効果を「三次元整流効果」と称することがある。
Figure 0007440988000009
(指数関数因子の定量的な評価)
参考文献「M. Dyakonov and M. Shur, "Detection, mixing, and frequency multiplication of terahertz radiation by two-dimensional electronic fluid", IEEE Trans. Electron Devices, vol.43, no.3, pp.380-387 (1996)」によれば、Fの二階微分F”は下記の式(7)のようになる。
Figure 0007440988000010
ここで、e=1.6×10-19[C](電荷素量の絶対値)であり、N0は二次元電子チャネル内の電子密度、Wgはチャネル-ゲート間隔であり、εは二次元電子チャネル周辺材料の比誘電率であり、ε0=8.85×10-12[F/m](真空の誘電率)であり、f(ωτ,sτ/Lg)はプラズモン共鳴の強度を表す因子である。ωは入力信号の周波数であり、τは二次元電子チャネル内の電子運動量緩和時間であり、Lgはゲート長であり、sは、下記の式(8)で表されるプラズモンの位相速度である。式(8)中のm*は二次元電子チャネル内の電子有効質量である。
Figure 0007440988000011
InP-HEMTにおける一般的な値として、ε=12、Wg=20[nm]、N0=1016[m-2]、m*=3.92×10-32[kg]、τ=0.27[ps]を用いると、s=1.11×106[m/s]、sτ/Lg=1.5となる。入力信号の周波数ωを1THzと仮定すると、ωτ=1.7になる。これらの数値及び上記の参考文献(図3(a)を参照)から、プラズモン共鳴の強度を表す因子f(ωτ,sτ/Lg)は5程度になる。これらの数値を上記の式(7)に代入すると、F”(0)=16.6[V-1]となる。
ダイオード電流非線形性を表す関数Gに含まれる因子αは、下記の式(9)で表される。
Figure 0007440988000012
ここで、kB=1.38×10-23[J/K](ボルツマン定数)であり、Tは温度(室温:T=300[K])であり、ηはダイオード電流-電圧特性の理想係数である(ここではη=1と仮定する)。これらの数値を式(9)に代入すると、α=38[V-1]となる。
LO信号S4の生成には、代表的なテラヘルツ発信素子である、アレイ化された共鳴トンネルダイオードを用いることを想定して、1THzにおける出力電力を0.7mWとし、電極入力時の結合効率を20%とすると、第2のゲート電極15に入力される信号強度は0.14mWとなり、LO信号S4の入力電圧振幅(δV2)は0.118[V]となる。上記のα、F”(0)、δV2の数値を、上記の式(5)の指数関数因子に代入すると、下記の式(10)のようになる。
Figure 0007440988000013
上記の結果から、上記の周波数下方変換装置1(ゲート読み出し方式、かつゲートLO入力)の構成では、既存のドレイン読み出し方式の構成に比べて二桁程度、変換利得を向上できることが明らかになった。この効果は、ゲート読み出し型テラヘルツ波検出器による検出感度の向上とは原理的に異なるものであり、上記のような理論的考察を経ずして、このような変換利得の改善効果を予測することは困難である。つまり、当業者であっても、既存のゲート読み出し型テラヘルツ波検出器についての知識から、本実施形態に係る周波数下方変換装置1の構成に容易に想到できないことは明らかである。
(実装例1:非対称回折格子ゲート構造)
次に、図2及び図3を参照しながら、非対称回折格子ゲート構造について説明する。図2及び図3の例では、複数の第1のフィンガー14a、…、14dと、複数の第2のフィンガー15a、…、15dとは入れ子状に配置されている。ここで、隣接する第1のフィンガーと第2のフィンガーとを「フィンガー対」と呼ぶことにする。図2及び図3の例では、隣り合うフィンガー対の間の距離d3は一定であり、フィンガー対が周期的に配置された電極構造になっている。
各フィンガー対における第1のフィンガーと第2のフィンガーとの間の距離を第1の距離d1と表記し、また、あるフィンガー対の第2のフィンガーと、その隣のフィンガー対の第1のフィンガーとの間の距離を第2の距離d2と表記すると、図2及び図3の例では、d1≠d2であり、非対称な電極構造になっている。このように、非対称な電極構造にすると、d1の部分でのインピーダンスZ1と、d2の部分でのインピーダンスZ2との差により、チャネル層に生じる光電流が一方向(ソース電極12からドレイン電極13への方向)に制御される。そのため、ドレイン電極13にバイアス電圧を印加しなくても出力信号を得ることができる。
(実装例2:応答時間特性の改善)
次に、図4~図8を参照しながら、周波数下方変換装置1の応答時間特性について考察する。本発明者は、通常層タイプの周波数下方変換装置1と同じ構成のデバイスを試作し、第2のゲート電極15に印加するバイアス電圧VG2を変えながら、単一テラヘルツ光パルスを照射して光応答特性を調べた。まず、第1のゲート電極14からのピーク出力光電圧とバイアス電圧VG2との間には、図4に示すような関係があることが確認された。ここで、バイアス電圧VG2が正の領域でピーク光電圧が0になる点のバイアス電圧VG2を「第1の閾値電圧TH1」と呼び、バイアス電圧VG2が負の領域でピーク光電圧が0になる点のバイアス電圧VG2を「第2の閾値電圧TH2」と呼ぶことにする。
バイアス電圧VG2が第1の閾値電圧TH1より大きい領域(以下、第1のバイアス電圧領域)では、バイアス電圧VG2の増加につれてピーク出力光電圧が大きく増加している。一方、バイアス電圧VG2が第2の閾値電圧TH2より小さい領域(以下、第2のバイアス電圧領域)では、バイアス電圧VG2の減少に伴ってピーク出力光電圧がやや増加し、その後も、ある程度のピーク出力光電圧が得られている。このことから、ゲート読み出し方式では、第1のバイアス電圧領域及び第2のバイアス電圧領域の両方において十分なデータ信号出力が得られると考えられる。
また、本発明者は、第1のバイアス電圧領域及び第2のバイアス電圧領域における出力光電圧の時間変化特性について、図5に示す結果を得た。上段のグラフは第1のバイアス電圧領域(VG2=2.1[V]の場合)における出力光電圧の時間変化を示し、下段のグラフは第2のバイアス電圧領域(VG2=-1.5[V]の場合)における出力光電圧の時間変化を示す。
両グラフを比較すると、上段のグラフでは3000[ps]以降も出力光電圧が0に収束せず、一定以上の値を維持しながら緩やかに減少し続けているのに対し、下段のグラフでは、600[ps]付近で出力光電圧がほぼ0に収束している。このことから、通常層タイプの周波数下方変換装置1では、応答時間特性を改善する観点からは、第2の閾値電圧TH2より小さい負のバイアス電圧VG2を第2のゲート電極15に印加する構成にするのが好ましい。
さらに、本発明者は、第1のバイアス電圧領域(VG2=2.1[V]の場合)における出力光電圧の時間変化について、通常層タイプ(図6のグラフ61)と反転層タイプ(図6のグラフ62)との比較結果を得た。この比較結果から、第1のバイアス電圧領域において、通常層タイプとは異なり、反転層タイプでは短時間で出力光電圧がほぼ0に収束することが分かった。このことから、応答時間特性を改善する観点からは、通常層タイプよりも反転層タイプの方が好ましく、また、反転層タイプの周波数下方変換装置1では、第1の閾値電圧TH1より大きい正のバイアス電圧VG2を第2のゲート電極15に印加する構成にするのが好ましい。
(変形例1:二次元回折格子ゲート構造)
ここまでは、2つの櫛形ゲート電極を入れ子状に配置した電極構成を例に説明してきたが、本実施形態のアイデアを適用可能な電極構成はこの例に限定されない。例えば、図7に示すような電極構成(二次元回折格子ゲート構造)も適用範囲に含まれる。図7に示した周波数下方変換装置2は、本実施形態の変形例に係る周波数下方変換装置の一例である。
図7の例において、周波数下方変換装置2は、ソース電極22と、ドレイン電極23と、ゲート電極24と、複数の電極ブロック25a、…、25dとを有する。各電極は、メサ21上に配置される。ゲート電極24は、一定の間隔を空けて平行に配置される複数のフィンガー24a、…、24dを有する。複数の電極ブロック25a、…、25dはそれぞれ、複数のフローティングパッチ電極を含む。各電極ブロックの隣接する2つのフローティングパッチ電極は、一定の間隔を空けて配置される。また、各電極ブロックの複数のフローティングパッチ電極は、隣接するゲート電極24のフィンガーに対して一定の間隔を空けて配置される。
ソース電極22は接地され、ドレイン電極23にはLO信号S4が入力される。また、ドレイン電極23には、一定のバイアス電圧が印加されてもよい。LO信号S4は、光データ信号S1の周波数f1と光サブキャリア信号S2の周波数f2との差周波数Δfに近い周波数f4を持つ。周波数下方変換装置2は、ゲート電極24から、周波数f4と差周波数Δfとの絶対差|Δf-f4|に対応する周波数f5を持つIF/BB信号S5を出力する。ゲート電極24は、上述した第1のゲート電極14に対応する。メサ21は、上述したメサ11と同じ層構成を有する。
上述した周波数下方変換装置1と同様、チャネル長方向に平行な偏光成分(第1偏光成分)を持つテラヘルツ波が周波数下方変換装置2に照射されると、メサ21内に二次元プラズモンが励起されてチャネル層に光電流が生じる。さらに、複数のフローティングパッチ電極が、チャネル長方向に垂直な偏光成分(第2偏光成分)についても回折ゲート電極として働くため、テラヘルツ波の第2偏光成分によって二次元プラズモンを励起することができる。従って、周波数下方変換装置2では、第1及び第2偏光成分の両方に対する応答が得られる。このように、フローティングパッチ電極を設けることで、入射光波の各偏光成分を光電流に変換することが可能になる。
上記のように、周波数下方変換装置2では、上述した周波数下方変換装置1と同様にゲート読み出し方式が採用されている。一方で、LO信号S4の入力がゲート電極(第2のゲート電極15)ではなく、ドレイン電極23に変更されている。つまり、周波数下方変換装置2は、ドレインLO入力を採用している。つまり、光混合信号S3とLO信号S4との混合プロセスについて、上記の式(2)が成り立つ。そのため、ダイオード電流非線形性を考慮した出力信号G(F(V))は、差振動数Δω(Δω=ω1-ω2)のみを抽出すると、以下の式(11)のようになる。
Figure 0007440988000014
上記の式(5)と同様に、式(11)の右辺にも指数関数因子が現れる。上記の式(10)と同様に、指数関数因子の具体的な値を計算すると、下記の式(12)のようになる。
Figure 0007440988000015
上記の結果から、上記の周波数下方変換装置2(ゲート読み出し方式、かつドレインLO入力)の構成では、既存のドレイン読み出し方式の構成に比べて一桁程度、変換利得を向上できることが明らかになった。この効果は、ゲート読み出し型テラヘルツ波検出器による検出感度の向上とは原理的に異なるものであり、上記のような理論的考察を経ずして、このような変換利得の改善効果を予測することは困難である。つまり、当業者であっても、既存のゲート読み出し型テラヘルツ波検出器についての知識から、本実施形態の変形例に係る周波数下方変換装置2の構成に容易に想到できないことは明らかである。
ところで、ゲートLO入力の周波数下方変換装置1に比べると、ドレインLO入力の周波数下方変換装置2は変換利得が一桁程度小さくなるが、ある程度大きな振幅を有するLO信号S4を入力することができれば、十分に実用的なレベルの変換利得を実現することが可能である。LO信号S4の振幅制御は比較的容易であるため、周波数下方変換装置2の構成も有用である。
(変形例2:三電極構成)
上記の変形例に係る周波数下方変換装置2では、チャネル長方向及びそれに垂直な方向の偏光成分に対する応答を得るためにフローティングパッチ電極を設けていたが、周波数下方変換装置2からフローティングパッチ電極を省略した構成、即ち、三電極構成(ソース電極22、ドレイン電極23、及びゲート電極24のみの構成)でも、上記の理論が成り立つ。言い換えると、三電極構成に変形しても、三次元整流効果によって、上記の式(12)に示した指数関数因子による増強が得られるため、変換利得の改善効果を得ることができる。このような変形についても当然に本実施形態の技術的範囲に属する。
(通信装置)
ここで、図8を参照しながら、上記の周波数下方変換装置1、2を実装可能な通信装置100について説明する。図8に示すように、通信装置100は、光処理部101、周波数下方変換装置102、局部発振器103、及び無線処理部104を有する。周波数下方変換装置102は、ゲート読み出し方式の周波数下方変換装置であり、例えば、上述した周波数下方変換装置1、2である。
光処理部101は、光ファイバFCを介して伝送される光データ信号S1及び光サブキャリア信号S2を受信し、周波数下方変換装置102に入力する。周波数下方変換装置102には、局部発振器103からLO信号S4が入力される。例えば、上述した周波数下方変換装置1の構成では、第2のゲート電極15にLO信号S4が入力される。一方、上述した周波数下方変換装置2の構成では、ドレイン電極23にLO信号S4が入力される。
周波数下方変換装置102では、光データ信号S1及び光サブキャリア信号S2の光ミキシングによって光混合信号S3が生じ、光混合信号S3とLO信号S4とのRFミキシングによってIF/BB信号S5が生じる。IF/BB信号S5は、周波数下方変換装置102のゲート電極(第1のゲート電極14又はゲート電極24など)から読み出され、無線処理部104へと出力される。無線処理部104は、IF/BB信号S5から無線信号を生成し、アンテナ105を介して送信する。
通信装置100は、光処理部101、周波数下方変換装置102、局部発振器103、及び無線処理部104の動作を制御するための制御装置(不図示)をさらに含んでよい。制御装置は、例えば、プロセッサ及びメモリを有する。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などであってよい。メモリは、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリなどの記憶媒体であってよい。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属する。
1、2、102 周波数下方変換装置
11、21 メサ
11a、11f キャップ層
11b バリア層
11c チャネル及びチャネル周辺層
11d バッファ層
11e 基板
12、22 ソース電極
13、23 ドレイン電極
14 第1のゲート電極
15 第2のゲート電極
14a、…、14d、15a、…、15d フィンガー
24 ゲート電極
25a、…、25d 電極セット(フローティングパッチ電極)
100 通信装置
101 光処理部
103 局部発振器
104 無線処理部
105 アンテナ
FC 光ファイバケーブル
S1 光データ信号
S2 光サブキャリア信号
S3 光混合信号
S4 局部発信信号(LO信号)
S5 中間周波数信号/ベースバンド信号(IF/BB信号)

Claims (8)

  1. 赤外線光周波数帯の互いに異なる周波数を持つ光データ信号及び光サブキャリア信号を入力とし、ラジオ波帯又はベースバンドの周波数を持つデータ信号を出力する周波数下方変換装置であって、
    前記装置は、ソース電極と、ドレイン電極と、一定の間隔を空けて平行に配置される複数の第1のフィンガーを持つ第1のゲート電極と、一定の間隔を空けて平行に配置される複数の第2のフィンガーを持つ第2のゲート電極とがメサ上に配置された電界効果トランジスタの構造を有し、前記複数の第1のフィンガーと前記複数の第2のフィンガーとは入れ子状に配置され、
    前記第2のゲート電極には、前記光データ信号の周波数と前記光サブキャリア信号の周波数との差周波数に近い、サブテラヘルツ帯からテラヘルツ帯の帯域にある所定の周波数を持つ局部発信信号が入力され、前記装置は、前記第1のゲート電極から、前記所定の周波数と前記差周波数との絶対差に対応する周波数を持つ前記データ信号を出力するように構成される、
    周波数下方変換装置。
  2. 1つの第1のフィンガーに隣接する2つの第2のフィンガーのうち、前記1つの第1のフィンガーと一方の第2のフィンガーとの間の第1の距離は、前記1つの第1のフィンガーと他方の第2のフィンガーとの間の第2の距離とは異なる、
    請求項1に記載の周波数下方変換装置。
  3. 前記装置は、電子走行チャネル層に電子キャリアを供給するリモートドープ層及びスペーサ層がゲート金属電極と前記電子走行チャネル層との中間に位置する通常層タイプの電界効果トランジスタの構造を有し、
    前記第2のゲート電極には、負の第2の閾値より小さいバイアス電圧が印加される、
    請求項1に記載の周波数下方変換装置。
  4. 前記装置は、電子走行チャネル層に電子キャリアを供給するリモートドープ層及びスペーサ層が前記電子走行チャネル層の下側に位置する反転層タイプの電界効果トランジスタの構造を有し、
    前記第2のゲート電極には、正の第1の閾値より大きいバイアス電圧が印加される、
    請求項1に記載の周波数下方変換装置。
  5. 前記装置は、ソース/ドレイン電極金属層と、ゲート電極金属層と、前記ゲート電極の下側に配置される下地金属層と、ゲート絶縁膜層と、電子走行チャネル層と、下地絶縁膜層と、基板とを備えた電界効果トランジスタの構造を有し、前記ソース/ドレイン電極金属層は、前記ソース電極及び前記ドレイン電極成し、前記第1のゲート電極及び前記第2のゲート電極は、前記ゲート電極金属層を成し、前記電子走行チャネル層は、グラフェンで形成され、前記ソース/ドレイン電極金属層は、前記ゲート電極金属層及び前記下地金属層よりも仕事関数が大きい金属種で形成され、
    前記第2のゲート電極には、正の第1の閾値より大きいバイアス電圧が印加される、
    請求項1に記載の周波数下方変換装置。
  6. 光ファイバを介して伝送される前記光データ信号及び前記光サブキャリア信号を、請求項1に記載の周波数下方変換装置に入力する光処理部と、前記周波数下方変換装置と、前記周波数下方変換装置から出力される前記データ信号を無線信号に変換し、アンテナを介して前記無線信号を送信する無線処理部とを備える、通信装置。
  7. 赤外線光周波数帯の互いに異なる周波数を持つ光データ信号及び光サブキャリア信号を入力とし、ラジオ波帯又はベースバンドの周波数を持つデータ信号を出力する周波数下方変換装置であって、
    前記装置は、ソース電極と、ドレイン電極と、一定の間隔を空けて平行に配置される複数のフィンガーを持つゲート電極とがメサ上に配置された電界効果トランジスタの構造を有し、
    前記ドレイン電極には、前記光データ信号の周波数と前記光サブキャリア信号の周波数との差周波数に近い、サブテラヘルツ帯からテラヘルツ帯の帯域にある所定の周波数を持つ局部発信信号が入力され、前記装置は、前記ゲート電極から、前記所定の周波数と前記差周波数との絶対差に対応する周波数を持つ前記データ信号を出力するように構成される、
    周波数下方変換装置。
  8. 前記装置は、前記メサ上に配置された、各フィンガーから一定の距離を置いて配置される複数のフローティングパッチ電極をさらに有する、
    請求項7に記載の周波数下方変換装置。
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