JP7440174B2 - 音響装置、音響処理方法及びプログラム - Google Patents
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Description
特許文献1には、関連する技術として、仮想サラウンドサウンドに関する技術が開示されている。
しかしながら、スピーカ数を増やして録音した場合、再現度の高い頭部インパルス応答を実現するための演算が一般的に複雑になる。そのため、3つ以上のスピーカであればスピーカ数によらず録音した頭部インパルス応答の情報から網羅的な方位について立体感のある音を容易に再現するインパルス応答を生成することのできる技術が求められている。
<各実施形態に共通の考え方>
本発明の各実施形態による音響装置1は、マルチチャンネルサウンド技術を活用し、頭部インパルス応答で立体感のある音を作り出す装置でありながらも、スピーカ数に依存することなくスピーカごとに畳み込み演算が1回で済む装置である。なお、マルチチャンネルサウンド技術とは、3つ以上のスピーカを用いたオーディオシステムの技術総称である。本発明の各実施形態による音響装置1は、マルチチャンネルサウンド技術のうち、パンニングと呼ばれる音像定位技術を活用する。
例えば、図1に示すように、2つのスピーカを用いて仮想音源を配置した場合には、オーディオシステムの中心にいる観測者の耳に届く音を摸式化する。図2に示すように、再生する音の信号をS(t)とし、角度θに仮想音源を配置する場合に左右それぞれのスピーカで再生する音の音圧係数をGL(θ)、GR(θ)とする。なお、図1~図2に示す例では、角度θは15度である。
また、同様に、右のスピーカから再生された音S(t)・GR(θ)は、観測者の左右の耳までの伝達経路に依存する頭部インパルス応答HRIRRL及び頭部インパルス応答HRIRRRを畳み込んだ音として、観測者の耳元に到着する。よって、右のスピーカから観測者の左耳には、音S(t)・GR(θ)*HRIRRLが届き、右のスピーカから観測者の右耳には、音S(t)・GR(θ)*HRIRRRが届く。
したがって、観測者が実際に観測する波形は、これらの音の合成として表現される。つまり、観測者の左耳に届く音は、S(t)・GL(θ)*HRIRLL+S(t)・GL(θ)*HRIRLRとなり、観測者の右耳に届く音は、S(t)・GR(θ)*HRIRRL+S(t)・GR(θ)*HRIRRRとなる。
よって、観測者が実際に観測する音の波形は、次の式(1)となる。
本発明の第1実施形態による音響装置1は、図3に示すように、スピーカ10a、10b、10c、10d、信号出力制御部20、頭部インパルス応答取得部30、インパルス応答生成部40(乗算手段の一例、記録手段の一例)、インパルス応答記憶部50(記憶手段の一例)、インパルス応答選択部60(選択手段の一例)、畳み込み処理部70(演算手段の一例)、音再生部80を備える。
スピーカ10は、スピーカ10a、10b、10c、10dの順番にインパルス信号そのもの、または、演算によってインパルス応答を求められる信号を出力する。演算によってインパルス応答を求められる信号とは、例えば、M系列信号、TSP(Time Stretched Pulse)信号などである。スピーカ10それぞれが出力する信号に対応する音によって、観測者の左右の外耳道入り口の頭部インパルス応答が測定される。
具体的には、再生する音源であるスピーカから再生された音S(t)に対して選択したインパルス応答HRIRを畳み込む演算を行う。
ここでは、図5~図6に示す音響装置1の処理フローについて説明する。
スピーカ10a、10b、10c、10dは、観測者を中心とした同心円状に固定されて配置される。観測者は、頭部インパルス応答取得部30を装着して、スピーカ10のそれぞれから等距離なる中心位置に着席する。
頭部インパルス応答取得部30は、取得した信号に基づいて頭部インパルス応答を特定する(ステップS2)。
例えば、頭部インパルス応答取得部30は、取得した信号がインパルス信号以外である場合、取得した信号からスピーカ10それぞれについて頭部インパルス応答を生成する。また、頭部インパルス応答取得部30は、取得した信号がインパルス信号の場合は、取得した信号そのものが頭部インパルス応答となる。
なお、方位の分解能は、どこまでも細かくすることが可能であるが、データ量と音の立体感との関係から、5度程度の分解能が妥当である。マルチチャンネルオーディオシステムにおいて得られる音圧係数は、DVD(Digital Versatile Disc)やBlue-Rayディスクに保存されている5.1chで利用しているVBAP方式を用いた場合、例えば、2つのスピーカについての次に示す式(4)を5つのスピーカに対応する式に拡張し、5つのスピーカに対応する音圧係数をG1=D1/D_t、G2=D2/D_t、G3=D3/D_t、G4=D4/D_t、及び、G5=D5/D_tのそれぞれをその拡張した式に代入することによって計算される。また、7.1chで利用しているVBAP方式を用いた場合についても同様に、式(4)を6つのスピーカに対応する式にさらに拡張し、7つのスピーカに対応する音圧係数をG1=D1/D_t、G2=D2/D_t、G3=D3/D_t、G4=D4/D_t、G5=D5/D_t、G6=D6/D_t、及び、G7=D7/D_tのそれぞれをその拡張した式に代入することによって計算される。
インパルス応答選択部60は、読み出したインパルス応答のうち、音を再現したい位置に最も近い位置に該当するインパルス応答を選択する(ステップS12)。
具体的には、任意の角度θごとの音圧係数と、頭部インパルス応答とを乗算したインパルス応答に、再生する音の信号S(t)を畳み込む演算を行う。
音響装置1において、信号出力制御部20は、観測者を中心とした同心円状に配置されたスピーカ10からインパルス信号を出力させる。頭部インパルス応答取得部30は、観測者の頭部インパルス応答を取得する。インパルス応答生成部40は、その中心から任意の角度に配置した仮想音源からインパルス音を発生させた場合のスピーカ10の音圧係数と、頭部インパルス応答とを乗算する。インパルス応答生成部40は、乗算結果を、任意の位置のインパルス応答としてインパルス応答記憶部50に記録する。
こうすることにより、音響装置1は、3つ以上のスピーカであればスピーカ数によらず録音した頭部インパルス応答の情報から網羅的な方位について立体感のある音を容易に再現するインパルス応答を生成することができる。
本発明の第2実施形態による音響装置1は、本発明の第1実施形態による音響装置1と同様に、スピーカ10a、10b、10c、10d、信号出力制御部20、頭部インパルス応答取得部30、インパルス応答生成部40、インパルス応答記憶部50、インパルス応答選択部60、畳み込み処理部70、音再生部80を備える。また、本発明の第2実施形態による音響装置1は、さらに、スピーカ10e、10f、10g、10hを備える。
頭部インパルス応答取得部30は、取得した信号に基づいて頭部インパルス応答を特定する。
インパルス応答生成部40は、生成した任意の方位のインパルス応答をインパルス応答記憶部50に記録する。
そのため、スピーカが8つの場合、マルチチャンネルオーディオシステムにおいて8つのスピーカについて得られるスピーカ10の音圧係数を、G1=D1/D_t、G2=D2/D_t、G3=D3/D_t、G4=D4/D_t、G5=D5/D_t、G6=D6/D_t、G7=D7/D_t、G8=D8/D_tとし、式(6)~(10)を8つのスピーカに対応する式に拡張して、3つのスピーカの場合と同様に考えればよい。なお、nは8である。
例えば、スピーカが8つの場合、θが45度、315度の2つ、φが45度、135度、225度、315度の4つであり、マルチスピーカの座標は、θとφの組み合わせによって、8つの座標となる。
インパルス応答選択部60は、読み出したインパルス応答のうち、音を再現したい位置に最も近い位置に該当するインパルス応答を選択する。
こうすることにより、音響装置1は、スピーカ10を三次元に配置した場合であっても、少数のスピーカを用いて録音した頭部インパルス応答の情報から網羅的な方位について立体感のある音を再現するインパルス応答を生成することができる。
本発明の第3実施形態による音響装置1は、スピーカ10a、信号出力制御部20、頭部インパルス応答取得部30、インパルス応答生成部40、インパルス応答記憶部50、インパルス応答選択部60、畳み込み処理部70、音再生部80を備える。また、本発明の第3実施形態による音響装置1は、観測者を90度ずつ回転させる椅子を備える。本発明の第3実施形態による音響装置1は、本発明の第1実施形態による音響装置1におけるスピーカ10をスピーカ10aの1つにした装置であり、観測者を90度ずつ回転させる椅子を追加した装置である。
本発明の第3実施形態による音響装置1と本発明の第1実施形態による音響装置1との違いは、頭部インパルス応答取得部30がスピーカ10から出力される信号を取得する方法である。
図9に示すように、観測者を椅子に座らせて、椅子を90度ずつ回転させる。
頭部インパルス応答取得部30は、取得した信号に基づいて頭部インパルス応答を特定する。
こうすることで、音響装置1は、1つのスピーカ10aのみを備えればよく、任意の方位のインパルス応答を生成することができる。
本発明の第4実施形態による音響装置1は、スピーカ10a、スピーカ10b、信号出力制御部20、頭部インパルス応答取得部30、インパルス応答生成部40、インパルス応答記憶部50、インパルス応答選択部60、畳み込み処理部70、音再生部80を備える。また、本発明の第4実施形態による音響装置1は、観測者を90度ずつ回転させる椅子を備える。スピーカ10aとスピーカ10bは、図10に示すように、例えば棒状の部材Bによって互いに接続された形状となっている。
本発明の第4実施形態による音響装置1は、本発明の第3実施形態による音響装置1におけるスピーカ10aを、互いに接続されたスピーカ10aとスピーカ10bとした装置である。
本発明の第4実施形態による音響装置1と本発明の第3実施形態による音響装置1との違いは、頭部インパルス応答取得部30がスピーカ10から出力される信号を取得する方法である。
図9に示すように、観測者を椅子に座らせて、椅子を90度ずつ回転させる。
頭部インパルス応答取得部30は、取得した信号に基づいて頭部インパルス応答を特定する。
接続されていない単体のスピーカを平面の4か所に配置した場合、4つのスピーカからのインパル応答を取得するのみであるため、音響装置は、二次元平面方向の音のみしか再現できない。それに対して、本発明の第4実施形態による音響装置1は、2つが接続されたスピーカを平面の4か所に配置した場合に8つのスピーカからの情報を取得することができ、三次元(同心球状)の信号を取得できる。その結果、本発明の第4実施形態による音響装置1は、三次元の音を再生することができる。
本発明の第5実施形態による音響装置1は、図11に示すように、スピーカ10a、10b、10c、10d、信号出力制御部20、頭部インパルス応答取得部30、インパルス応答生成部40、インパルス応答記憶部50、音再生部80、サラウンド用インパルス応答選択部90、サラウンド用畳み込み処理部100を備える。
こうすることで、サラウンド用畳み込み処理部100は、サラウンド用インパルス応答選択部90が選択したインパルス応答をマルチチャンネル分の音源に畳み込み処理を行うことにより、サラウンドで音を再現することができる。
本発明の実施形態による最小構成の音響装置1は、図12に示すように、信号出力制御部20、頭部インパルス応答取得部30、乗算部40a、記録部40bを備える。
頭部インパルス応答取得部30は、観測者の頭部インパルス応答を取得する。
乗算部40aは、前記中心から任意の角度に配置した仮想音源からインパルス音を発生させた場合の前記スピーカの音圧係数と、前記頭部インパルス応答とを乗算する。
記録部40bは、乗算部40aが乗算した乗算結果を、任意の位置のインパルス応答として記憶部に記録する。
こうすることにより、音響装置1は、スピーカを三次元に配置した場合であっても、少数のスピーカを用いて録音した頭部インパルス応答の情報から網羅的な方位について立体感のある音を再現するインパルス応答を生成することができる。
ここでは、図13に示す処理フローについて説明する。
頭部インパルス応答取得部30は、前記観測者の頭部インパルス応答を取得する(ステップS22)。
乗算部40aは、前記中心から任意の角度に配置した仮想音源からインパルス音を発生させた場合の前記スピーカの音圧係数と、前記頭部インパルス応答とを乗算する(ステップS23)。
記録部40bは、乗算部40aが乗算した乗算結果を、任意の位置のインパルス応答として記憶部に記録する(ステップS24)。
この音響装置1により、3つ以上のスピーカであればスピーカ数によらず録音した頭部インパルス応答の情報から網羅的な方位について立体感のある音を容易に再現するインパルス応答を生成することができる。
図14は、少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
コンピュータ5は、図14に示すように、CPU6(ベクトルプロセッサを含む)、メインメモリ7、ストレージ8、インターフェース9を備える。
例えば、上述の音響装置1、その他の制御装置のそれぞれは、コンピュータ5に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でストレージ8に記憶されている。CPU6は、プログラムをストレージ8から読み出してメインメモリ7に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU6は、プログラムに従って、上述した各記憶部に対応する記憶領域をメインメモリ7に確保する。
5・・・コンピュータ
6・・・CPU
7・・・メインメモリ
8・・・ストレージ
9・・・インターフェース
10、10a、10b、10c、10d・・・スピーカ
20・・・信号出力制御部(信号出力制御手段)
30・・・頭部インパルス応答取得部(頭部インパルス応答取得手段)
40・・・インパルス応答生成部(インパルス応答生成手段)
40a・・・乗算部(乗算手段)
40b・・・記録部(記録手段)
50・・・インパルス応答記憶部(インパルス応答記憶手段)
60・・・インパルス応答選択部(インパルス応答選択手段)
70・・・畳み込み処理部(畳み込み処理手段)
80・・・音再生部(音再生手段)
90・・・サラウンド用インパルス応答選択部(サラウンド用インパルス応答選択手段)
100・・・サラウンド用畳み込み処理部(サラウンド用畳み込み処理手段)
Claims (7)
- 観測者を中心とした同心球状に配置された複数のスピーカからインパルス信号を出力させる信号出力制御手段と、
前記観測者の頭部インパルス応答を取得する頭部インパルス応答取得手段と、
前記中心から任意の角度に配置した仮想音源からインパルス音を発生させた場合の前記複数のスピーカの音圧係数と、前記頭部インパルス応答とを乗算する乗算手段と、
乗算手段が乗算した乗算結果を、任意の位置のインパルス応答として記憶手段に記録する記録手段と、
前記記憶手段が記憶するインパルス応答のうち、音を再現したい1つの位置に最も近い位置に対応するインパルス応答を選択する選択手段と、
前記選択手段が選択した前記インパルス応答である乗算結果に前記音の信号を畳み込む演算を行う演算手段と、
を備える音響装置。 - 前記複数のスピーカは、
前記同心球において等間隔に配置される、
請求項1に記載の音響装置。 - 前記複数のスピーカは、
観測者を中心とした同心球に含まれる同心円状に配置される、
請求項1または請求項2に記載の音響装置。 - 前記同心球状に配置された複数のスピーカは、
前記複数のスピーカが固定され、前記観測者が1つの位置で回転することによって実現される、
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の音響装置。 - 前記複数のスピーカを備える、請求項1から請求項4の何れか一項に記載の音響装置。
- 観測者を中心とした同心球状に配置された複数のスピーカからインパルス信号を出力させることと、
前記観測者の頭部インパルス応答を取得することと、
前記中心から任意の角度に配置した仮想音源からインパルス音を発生させた場合の前記複数のスピーカの音圧係数と、前記頭部インパルス応答とを乗算することと、
乗算した乗算結果を、任意の位置のインパルス応答として記憶手段に記録することと、
前記記憶手段が記憶するインパルス応答のうち、音を再現したい1つの位置に最も近い位置に対応するインパルス応答を選択することと、
選択した前記インパルス応答である乗算結果に前記音の信号を畳み込む演算を行うことと、
を含む音響処理方法。 - 音響装置のコンピュータに、
観測者を中心とした同心球状に配置された複数のスピーカからインパルス信号を出力させることと、
前記観測者の頭部インパルス応答を取得することと、
前記中心から任意の角度に配置した仮想音源からインパルス音を発生させた場合の前記複数のスピーカの音圧係数と、前記頭部インパルス応答とを乗算することと、
乗算した乗算結果を、任意の位置のインパルス応答として記憶手段に記録することと、
前記記憶手段が記憶するインパルス応答のうち、音を再現したい1つの位置に最も近い位置に対応するインパルス応答を選択することと、
選択した前記インパルス応答である乗算結果に前記音の信号を畳み込む演算を行うことと、
を実行させるプログラム。
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