JP7440134B2 - 特異的機能性物質の探索方法、特異的機能性物質探索装置、特異的機能性物質探索方法、及び、プログラム - Google Patents

特異的機能性物質の探索方法、特異的機能性物質探索装置、特異的機能性物質探索方法、及び、プログラム Download PDF

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Description

本発明は、選択的機能性物質の探索方法、選択的機能性物質探索装置、選択的機能性物質探索方法、および、プログラムに関する。
医薬品などの有用化合物は、疾患発症に関連するタンパク質の機能阻害を指標とした評価・探索によって、数百万個の化合物の中から発見される。がんや精神疾患、生活習慣病などの多くは、遺伝子変異や環境要因の影響によって疾患の原因となる酵素などの活性が亢進することで発症する。そのため医薬品の有効性は、主成分である化合物が標的となる疾患関連タンパク質に結合し、その活性を抑制することで発揮される。このような化合物は医療に欠かせないものであり、特定のタンパク質と選択的に結合する化合物の評価・探索が、医薬品開発の第一段階として実施されている。
例えば、非特許文献1では、321種類のリン酸化酵素のタンパク質を標的として、阻害活性をもつ阻害化合物候補の評価を行っていることが開示されている。
また、非特許文献2では、培養細胞を用いた化合物スクリーニングとして、化合物の薬理作用を細胞内シグナル変化として検出するスクリーニング系について開示されている。
また、非特許文献3では、無細胞タンパク質翻訳系を用いて化合物評価を行うことが開示されている。
カルナバイオサイエンス株式会社,"プロファイリングサービス 321種類の完成型リン酸化酵素に対する阻害活性評価",[online],掲載日不明,[令和2年11月20日検索],インターネット<URL:https://www.carnabio.com/japanese/product/search.cgi?mode=profiling> カルナバイオサイエンス株式会社,"NanoBRET TE Intracellular Kinase セルベースアッセイサービス",[online],掲載日不明,[令和2年11月20日検索],インターネット<URL:https://www.carnabio.com/japanese/product/nanobret-sevices.html> ジーンフロンティア株式会社,"PUREfrex 再構成型無細胞タンパク質合成キット",[online],掲載日不明,[令和2年11月20日検索],インターネット<URL:https://www.genefrontier.com/solutions/purefrex/>
しかしながら、ヒトでは約2万種類のタンパク質が細胞内で合成されているものの、これらの中で化合物の標的となり得るものは数千種類しかなく、さらにそれらのタンパク質の化合物結合部位は限定的でタンパク質あたり1~2カ所のみであり、天文学的な数に及ぶ化合物の構造多様性には到底及ばず、従来の探索方法では、有用な機能性物質を発見できる確率は非常に低いという問題があった。
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、化合物の多様性とタンパク質結合部位の数の間の大きなギャップを改善して、有用な機能性物質を発見できる確率を高めることができる、選択的機能性物質の探索方法、選択的機能性物質探索装置、選択的機能性物質探索方法、および、プログラムを提供するものである。
このような目的を達成するため、本発明の選択的機能性物質の探索方法は、タンパク質の非天然構造に選択的に結合し、前記タンパク質の機能に影響を与える機能性物質を探索する選択的機能性物質の探索方法であって、前記タンパク質を、少なくとも部分的に、不安定化させるステップと、機能性物質候補の存在下で、前記不安定化された前記タンパク質を供し、再安定化を促すステップと、前記機能性物質候補の存在による前記タンパク質の機能影響効果を判定するステップと、を含む。
また、本発明の選択的機能性物質探索装置は、タンパク質の非天然構造に選択的に結合し、前記タンパク質の機能に影響を与える機能性物質を探索する、少なくとも記憶部と制御部を備えた選択的機能性物質探索装置であって、前記記憶部は、少なくとも1つの機能性物質候補に関する構造データを記憶しており、前記制御部は、シミュレーションにより、前記タンパク質を、少なくとも部分的に、不安定化させ、前記機能性物質候補の存在下で、前記不安定化された前記タンパク質を供する不安定化部と、前記機能性物質候補の存在による前記タンパク質の機能影響効果を判定する判定部と、を備える。
また、本発明の選択的機能性物質探索方法は、タンパク質の非天然構造に選択的に結合し、前記タンパク質の機能に影響を与える機能性物質を探索するため、少なくとも記憶部と制御部を備えたコンピュータに実行させる選択的機能性物質探索方法であって、前記記憶部は、少なくとも1つの機能性物質候補に関する構造データを記憶しており、前記制御部において実行される、シミュレーションにより、前記タンパク質を、少なくとも部分的に、不安定化させ、前記機能性物質候補の存在下で、前記不安定化された前記タンパク質を供する不安定化ステップと、前記機能性物質候補の存在による前記タンパク質の機能影響効果を判定する判定ステップと、を含む。
また、本発明のプログラムは、タンパク質の非天然構造に選択的に結合し、前記タンパク質の機能に影響を与える機能性物質を探索するため、少なくとも記憶部と制御部を備えたコンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記記憶部は、少なくとも1つの機能性物質候補に関する構造データを記憶しており、前記制御部において実行される、シミュレーションにより、前記タンパク質を、少なくとも部分的に、不安定化させ、前記機能性物質候補の存在下で、前記不安定化された前記タンパク質を供する不安定化ステップと、前記機能性物質候補の存在による前記タンパク質の機能影響効果を判定する判定ステップと、を実行させるためのプログラムである。
また、本発明は、上記の選択的機能性物質の探索方法、選択的機能性物質探索装置、選択的機能性物質探索方法、または、プログラムにおいて、前記不安定化において、前記タンパク質を含む溶液に対して、温度変化、圧力変化、pH変化、変性剤添加、もしくは、前記タンパク質の荷電変化を行う。
また、本発明は、上記の選択的機能性物質の探索方法、選択的機能性物質探索装置、選択的機能性物質探索方法、または、プログラムにおいて、前記タンパク質は、リン酸化酵素、タンパク質分解酵素などの酵素、発光タンパク質、その他の機能性タンパク質である。
また、本発明は、上記の選択的機能性物質の探索方法、選択的機能性物質探索装置、選択的機能性物質探索方法、または、プログラムにおいて、前記タンパク質を不安定化させるとは、温度変化を行うことであり、不安定化させる温度は、50℃~70℃である。
また、本発明は、上記の選択的機能性物質の探索方法、選択的機能性物質探索装置、選択的機能性物質探索方法、または、プログラムにおいて、前記タンパク質を前記温度変化により所定の加熱温度時間だけ不安定化させ、および/もしくは、前記タンパク質の再安定化を促すために冷却を行う。
また、本発明は、上記の選択的機能性物質の探索方法、選択的機能性物質探索装置、選択的機能性物質探索方法、または、プログラムにおいて、前記タンパク質の機能は、基質ないし結合物質の存在下で発揮されるものである。
また、本発明は、上記の選択的機能性物質の探索方法、選択的機能性物質探索装置、選択的機能性物質探索方法、または、プログラムにおいて、界面活性剤またはハイドロトロープの存在下で、前記不安定化された前記タンパク質に対する前記機能性物質候補の活性を1.5倍以上のダイナミックレンジにて検出するものである。
また、本発明は、上記の選択的機能性物質の探索方法、選択的機能性物質探索装置、選択的機能性物質探索方法、または、プログラムにおいて、前記機能性物質候補は、低分子、中分子、高分子、ペプチド、抗体、または、核酸アプタマーである。
また、本発明は、上記の選択的機能性物質の探索方法、選択的機能性物質探索装置、選択的機能性物質探索方法、または、プログラムにおいて、前記機能性物質は、前記タンパク質の阻害剤、促進剤、凝固剤、安定化剤、または、活性化剤である。ここで、「阻害剤」とは、例えば、標的とするタンパク質の非天然構造に結合し、タンパク質の機能を阻害する物質を意味してもよい。また、「促進剤」とは、例えば、標的とするタンパク質の非天然構造に結合し、タンパク質の機能を促進する物質を意味してもよい。また、「凝固剤」とは、例えば、標的とするタンパク質の非天然構造に結合し、タンパク質の凝固を引き起こす物質を意味してもよい。また、「安定化剤」とは、例えば、標的とするタンパク質の非天然構造に結合し、タンパク質を安定化することで、タンパク質の機能を向上させる物質を意味してもよい。また、「活性化剤」とは、例えば、標的するタンパク質の非天然構造に結合し、タンパク質の機能を活性化する物質を意味してもよい。
本発明によれば、化合物の多様性とタンパク質結合部位の数の間の大きなギャップを改善して、有用な機能性物質を発見できる確率を高めることができる、選択的機能性物質の探索方法、選択的機能性物質探索装置、選択的機能性物質探索方法、および、プログラムを提供することができる。
図1は、本発明にかかる本実施形態の概要を概念的に示した図である。 図2は、ペプチドから完成型タンパク質へとフォールディングされる機序とフォールディング中間体阻害剤の例を示す図である 図3は、フォールディング中間体構造の再現例を示す図である。 図4は、再現されたフォールディング中間体構造に対する阻害剤FINDYの阻害効果を示すグラフ図である。 図5は、本実施形態が適用される本選択的機能性物質探索装置100の一例を示すブロック図である。 図6は、選択的機能性物質探索装置100の不安定化部102aと判定部102bによる選択的機能性物質探索方法の一例を示すフローチャートである。 図7Aは、2種類のフォールディング中間体特異的阻害剤における、加熱・急冷による完成型酵素活性の阻害効果を示す図である。 図7Bは、2種類のフォールディング中間体特異的阻害剤における、加熱・急冷による完成型酵素活性の阻害効果に濃度依存性があることを示す図である。 図7Cは、コントロールとして既知の物質RD0392および既知の物質Harmineを用いて阻害効果を測定した図である。 図7Dは、培養細胞での実験結果を示す図である。 図7Eは、フォールディング中間体特異的阻害剤No.2化合物における、加熱・急冷による完成型酵素活性の阻害効果を示す図である。 図7Fは、No.2化合物におけるウェスタンブロット検出結果を示す図である。 図7Gは、リン酸化酵素DYRK1Aに対する阻害剤および活性化剤の小規模スクリーニング結果を示す図である。 図7Hは、スクリーニングの結果、本実施形態の阻害剤として見出された20番化合物の阻害効果を示す図である。 図8Aは、ATPの濃度と阻害効果の関係を示すグラフ図である。 図8Bは、ADP、GDP、キシレンスルホン酸ナトリウム、p-トルエンスルホン酸ナトリウムの濃度と阻害効果の関係を示すグラフ図である。 図9は、3種類のフォールディング中間体特異的阻害剤FINDYと168、No.2による加熱・冷却なしでの阻害活性を示す図である。 図10Aは、3種類のフォールディング中間体特異的阻害剤FINDYと168による加熱・冷却ありでの阻害活性を示す図である。 図10Bは、2種類のフォールディング中間体特異的阻害剤における、加熱・急冷による完成型酵素活性の阻害効果に濃度依存性があることを示す図である。 図10Cは、コントロールとして既知の物質RD0392および既知の物質Harmineを用いて阻害効果を測定した図である。 図10Dは、3種類のフォールディング中間体特異的阻害剤FINDYと168、No.2による加熱・冷却の有無におけるリン酸化酵素SRCに対する阻害活性を示す図である。 図10Eは、3種類のフォールディング中間体特異的阻害剤FINDYと168、No.2による加熱・冷却の有無におけるリン酸化酵素ABLに対する阻害活性を示す図である。 図11は、常に加熱した状態でタンパク質の酵素活性が失われる温度t1を示す図である。 図12は、20秒の比較的短時間で加熱した後に急冷した場合であっても酵素活性が失われてしまった温度t2を示す図である。 図13は、長時間で失活する温度t1と短時間の加熱と急冷でも失活する温度t2の間の温度t(t1<t<t2)を示す図である。 図14は、各種温度条件による阻害効果を示すグラフ図である。 図15Aは、各種温度条件による阻害効果を示すグラフ図である。 図15Bは、図14および図15Aを、より分かりやすく表したデータである。 図15Cは、リン酸化酵素DYRK1Aについて、一定温度で加熱した場合(冷却ステップなし)の相対的酵素活性を示す図である。 図15Dは、リン酸化酵素DYRK1Aについて、冷却速度を変えた場合の阻害効果を示す図である。 図16は、リン酸化酵素DYRK1Aの上限温度と下限温度の検討結果を示す図である。 図17は、リン酸化酵素DYRK1Bの上限温度と下限温度の検討結果を示す図である。 図18は、リン酸化酵素SRCの上限温度と下限温度の検討結果を示す図である。 図19は、リン酸化酵素ABLの上限温度と下限温度の検討結果を示す図である。 図20は、モノアミン酸化酵素MAO-Aの上限温度と下限温度の検討結果を示す図である。 図21は、モノアミン酸化酵素MAO-Aに対する阻害剤の小規模スクリーニング結果を示す図である。 図22は、タンパク質分解酵素Calpain-Iの上限温度と下限温度の検討結果を示す図である。 図23は、タンパク質分解酵素Calpain-Iに対する阻害剤の小規模スクリーニング結果を示す図である。 図24は、別の小規模な構造類縁体ライブラリ(1~26番)についてのスクリーニング結果を示す図である。 図25は、(1)DYRK1A―FINDYの計算系と初期構造を示す図である。 図26は、(2)温度ジャンプMDシミュレーションの設定における温度設定の模式図である。 図27は、各加熱温度を、400Kとしたときのシミュレーション結果を示す図である。 図28は、各加熱温度を、450Kとしたときのシミュレーション結果を示す図である。 図29は、各加熱温度を、500Kとしたときのシミュレーション結果を示す図である。 図30は、各加熱温度を、550Kとしたときのシミュレーション結果を示す図である。 図31は、各加熱温度を、600Kとしたときのシミュレーション結果を示す図である。 図32は、各加熱温度を、リガンドのみ、600Kとしたときのシミュレーション結果を示す図である。 図33は、各加熱温度を、リガンドのみ、800Kとしたときのシミュレーション結果を示す図である。 図34は、各加熱温度を、リガンドのみ、1000Kとしたときのシミュレーション結果を示す図である。 図35は、系全体を温度ジャンプさせた場合の定量的なグラフである。 図36は、リガンドのみ温度ジャンプさせた場合の定量的なグラフである。
以下に、本発明の本実施の形態にかかる選択的機能性物質の探索方法、選択的機能性物質探索装置、選択的機能性物質探索方法、および、プログラム、並びに、記録媒体の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
以下、本発明にかかる本実施の形態の概要、構成および処理、ならびに実施例等について様々な実施例を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明において、「50℃~70℃」といった数値範囲で記載する場合、上限と下限を含むものとする。また、手動によるものとして記載された手法を、自動により行ってもよく、その逆に、自動によるものとして記載された手法を、手動により行ってもよく、あるいは、それらを任意に組み合わせてもよいものである。同様に、in vivoまたはin vitroなどで実施するものとして記載されている手法を、in silicoなどシミュレーションによりコンピュータ上で実施してもよく、その逆に、in silicoなどシミュレーションにより実施するものとして記載されている手法を、in vivoまたはin vitroなどで実施してもよく、それらを任意に組み合わせてもよい。
[本実施形態の概要]
まず、本発明にかかる本実施形態の概要について説明する。図1は、本発明にかかる本実施形態の概要を概念的に示した図である。
上述したように、ヒトでは約2万種類のタンパク質が細胞内で合成されているものの、これらの中で化合物の標的となり得るものは数千種類しかなく、さらにそれらのタンパク質の化合物結合部位は極めて限定的である。一方、機能性物質候補となりうる化合物の構造多様性は、天文学的な数に及ぶため、両者の間には、大きなギャップが存在しており、従来の方法では、有用な機能性物質を発見できる確率は極めて低いという問題があった。より具体的な課題例としては以下の問題があった。
すなわち、これまで同定されてきたタンパク質の化合物結合部位(結合ポケット)の多くは、タンパク質の種類によって構造が保存されている。例えば、リン酸化酵素ではアデノシン三リン酸(ATP)が結合する部位(ポケット)が該当する。このような構造が保存された結合ポケットを標的とする限りにおいて、選択的な阻害剤などの機能性物質を取得することは困難であった。また、そのような構造が保存された結合ポケットを標的とする阻害剤などの機能性物質は、疾患関連タンパク質以外のタンパク質に対しても、活性を示すため、副作用が生じる問題があった(参考文献:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7527212/、
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6088748/、
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0969212619303910?via%3Dihub、
隠れた結合部位(天然構造ではなく、非天然構造において出現する化合物が結合する部位)についての参考文献:
https://www.amed.go.jp/news/seika/kenkyu/20201005.html)。
本願発明者らは、上記問題点に鑑みて鋭意検討を行い、本実施形態を含む本発明を考案するに至った。
具体的には、本発明の一実施形態である本実施形態は、タンパク質の非天然構造に選択的に結合し、タンパク質の機能に影響を与える機能性物質(阻害剤など)を探索する選択的機能性物質の探索方法であって、まず、タンパク質を、少なくとも部分的に、不安定化させる(ステップA)。これにより、タンパク質は、安定状態の天然構造から準安定状態の非天然構造に変化する。
ここで、「天然構造」とは、自由エネルギーが最も低い最安定構造である等として定義してもよい。また、一例として、非天然構造は、細胞内で、ペプチドから高次構造へと折りたたまれる(フォールディングされる)過程や、火傷など高熱にさらされたとき、ユビキチンなどでタンパク質の構造変更が促進される過程などで出現しうる。なお、フォールディング過程は、例えば、ペプチドが折りたたまれて高次の3次元構造のタンパク質へと立体化していく過程として定義してもよい。なお、再安定化するリフォールディング過程とは、タンパク質の三次元構造が元に戻ろうとして、ゆらぐ過程等として定義してもよい。なお、本実施形態において、「選択的」(selective)を「特異的」に読み替えて実施してもよく、その逆であってもよい。なお、一例として、aに「選択的」とは、例えば、bよりもaの方が比較的に選ばれやすい状態を指し、一方、aに「特異的」とは、aのみを対象として、a以外のbなどを対象としない状態を指すものとして定義してもよい。
また、一例として、不安定化は、タンパク質を含む溶液に対する、温度変化(例:40℃~100℃、好ましくは50℃~70℃の加熱)、圧力変化(例:200~400MPa)、pH変化(例:pH 2~pH 12)、変性剤添加(例:尿素、グアニジン塩酸塩、ドデシル硫酸ナトリウムなど界面活性剤、ジメチルスルホキサイドなどの有機溶媒)、または、タンパク質の荷電変化(例:生理的条件下でのタンパク質の電荷を100%とした場合、これを1%までの任意の数値まで低下させる)を与える工程が挙げられこれらは併用してもよい。タンパク質の再安定化を促すために初期の状態に戻す工程があってもよい。例えば加熱での温度変化を不安定化に採用する場合には、温度を冷却することで再安定化することができる。圧力変化であれば加圧状態を元に減圧すればよい。再安定化工程はその速度は限定されないが、スループットを高めるのであれば工程時間を短くすればよい。
加熱での温度変化にて不安定化を行うには、加熱はタンパク質が不安定状態になるに必要な温度と時間であればよく、温度を高くして時間を短くするなど調整することが好ましい。温度50℃~70℃であれば1秒以上、好ましくは3秒以上あればよく、長時間、高温すぎることで酵素活性が無くならない加熱条件で選択すればよい。
また、標的とするタンパク質は、リン酸化酵素、タンパク質分解酵素などの酵素、発光タンパク質、その他の機能性タンパク質など任意のタンパク質であってもよい。リン酸化酵素としては、神経疾患関連DYRK1A・GSK3が分類されるCMGCファミリー、がん関連ABL・EGFRや免疫疾患関連JAKが分類されるTKファミリー、がん関連BRAF・AKTが分類されるTKLファミリー、がん関連MAPKが分類されるSTEファミリー、体内調節関連CKが分類されるCK1ファミリー、がん関連S6K・PKCが分類されるAGCファミリー、がん関連CHKや神経疾患関連CaMKが分類されるCAMKファミリーなどが挙げられる。より具体的には、リン酸化酵素は、リン酸化酵素DYRK1B、リン酸化酵素SRC、リン酸化酵素ABLであってもよい。タンパク質分解酵素などの酵素としては、がん関連マトリックスメタロプロテアーゼMMP、がん関連プロテアーゼBMP-1、アンジオテンシン変換酵素、ウイルス関連プロテアーゼHIV-PR、カスパーゼ、カテプシン、タンパク質分解酵素Calpain-I、神経疾患関連セクレターゼ、細菌保有プロテアーゼ、感染性虫保有プロテアーゼなどが挙げられる。発光タンパク質としては、ホタル由来ルシフェラーゼ、エビ由来ルシフェラーゼ、キノコ由来ルシフェラーゼなどが挙げられる。その他の機能性タンパク質としては、ウイルス由来ポリメラーゼ、Gタンパク質共役型受容体、モノアミン酸化酵素MAO-A、イオンチャネル、チューブリン・アクチンなど構造タンパク質、RNA・DNAポリメラーゼ、脱リン酸化酵素、ユビキチン転移酵素、脱ユビキチン酵素、プロテアソーム、核膜孔複合体構成タンパク質、細胞膜受容体タンパク質、サイトカイン、分子シャペロン、トランスポーター、インテグリン、核内受容体、エステラーゼ、代謝酵素、ウイルス外殻タンパク質などが挙げられる。
つぎに、本実施形態は、機能性物質候補の存在下で、不安定化されたタンパク質を供する(ステップB)。ここで、機能性物質候補は、不安定化の前に、タンパク質と共存させてもよく、不安定化中や不安定化後に共存させてもよい。機能性物質候補は、低分子、中分子、高分子、ペプチド、抗体、核酸アプタマーなどの任意の物質である。機能性物質候補は、タンパク質1モルに対して少なくとも1モルの量で用いることができ、反応液中での機能性物質候補濃度は、1ピコモル/L~1モル/Lの濃度で用いることができる。なお、本実施形態は、更に、不安定化されたタンパク質の再安定化を促してもよい。また、タンパク質の不安定化の前後で、基質、結合物質、界面活性剤やハイドロープ等を共存させてもよい。基質は酵素の作用を受けて化学反応を起こす物質として知られており、具体的には、リン酸化酵素に結合し、リン酸化酵素によりATPからリン酸化基が転移するペプチド、および、タンパク質が挙げられる。プロテアーゼに結合し、内部配列が切断されるペプチド、および、タンパク質が挙げられる。修飾酵素に結合し、その構造を変化させる化合物が挙げられる。界面活性剤は、親油基と疎水基を持つ物質として定義してもよく、ハイドロープは、分子中に親水基と疎水基を有し、タンパク質等の他の有機化合物を水や塩類の水溶液中に高濃度に融解させる特徴を有する物質として定義してもよい。ハイドロトロープの例には、アデノシン三リン酸(ATP)、アデノシン二リン酸(ADP)、p-トルエンスルホン酸ナトリウム、グアノシン三リン酸(GTP)、尿素、トシレート、クメンスルホン酸塩およびキシレンスルホン酸塩が含まれる。ハイドロトロープや界面活性剤は反応液中にて1ナノモル/L~1モル/Lの濃度で用いることができる。これらの反応に必要な素材は、必要な溶媒にて溶解させて用いることができる。使用できる溶媒としては、DMSO、THF、DMFなどが挙げられる。
最後に、本実施形態は、機能性物質候補の存在によるタンパク質の機能影響効果を判定する(ステップC)。例えば、機能性物質として阻害剤を探索する場合には阻害効果、促進剤を探索する場合には促進効果、凝固剤を探索する場合には凝固効果、安定化剤を探索する場合には安定化効果、活性化剤を探索する場合には活性化効果などを判定する。タンパク質の機能が機能性物質候補の存在によって1.5倍以上(好適には2倍以上、なお実施例では阻害効果10倍以上を実現)機能に影響(例えば機能阻害効果)を与えていれば、有用な機能性物質として検出してもよい。一例として、この工程はPromega Kinase Glo assay kitなどを用いてチューブに残存するATP量を定量し、酵素活性を測定すること判定することができる。なお、阻害効果の判定には、前記kitなどの使用に限定されるものではない。
以上が、本発明にかかる本実施形態の概要である。なお、本実施形態は、in vivoやin vitroなどを含め、手動により実施してもよく自動化(オートメーション)により実施してもよくシミュレーションにより実施してもよいものである。
上記のように、タンパク質を不安定化させることにより、タンパク質の構造や結合部位の多様化が図られ、機能性物質となり得る物質群とマッチングする確率が高められ、新たな医薬品等を創出できる可能性を高めることができる(図1参照)。
ここで、本発明の本実施形態により上記のような効果が得られる原理について説明する。図2は、ペプチドから完成型タンパク質へとフォールディングされる機序とフォールディング中間体阻害剤の例を示す図である。
図2に示すように、本願発明者は、本発明に先立って、多様化への前段階となる技術を見出した。この技術において、ペプチドが折り畳まれ、タンパク質(この例ではリン酸化酵素DYRK1A)へと成熟する過程の途中にある一過的遷移状態(フォールディング中間体)が化合物(この例では阻害剤FINDY)の標的となり得ることが実証された(Kii et al. Nat Commun 2016; 10)。
この知見に基づいて鋭意検討することにより、本願発明者らは、フォールディング中間体が多様な構造をとるため、タンパク質の化合物結合部位を飛躍的に増加させることができ、創薬のチャンスを飛躍的に高めることができるという本発明の実施形態の原理を見出すに至った。
そして、さらに検討を進めた結果、本願発明者は、細胞内に一過的かつごく短時間しか存在しないフォールディング中間体構造を簡易的に試験管内で再現する技術を確立するに至った。図3は、フォールディング中間体構造の再現例を示す図である。
すなわち、一例として図3に示すように、完成型のタンパク質を加熱することにより、安定化状態から準安定状態に移行させることができ、タンパク質のフォールディング過程を再現できることを本願発明者らは見出した。ここで、図4は、再現されたフォールディング中間体構造に対する阻害剤FINDYの阻害効果を示すグラフ図である。なお、阻害効果を確認する実験条件等は、上述の論文(Kii et al. Nat Commun 2016; 10)を参照されたい。
図4に示すように、本実施形態のタンパク質不安定化の一例である加熱・冷却のプロセス(本手法)により再現されたフォールディング中間体構造に対して、実際にフォールディング中間体に特異的な阻害剤であるFINDYが結合して機能阻害が生じていることが実証された。なお、完成型タンパク質に対する機能阻害実験(従来の評価法)では機能阻害は生じていないことが確かめられた。
このように、本実施形態では、加熱・冷却等のプロセスによってタンパク質を不安定化させ、安定化状態から準安定状態に移行させることによって、標的となるタンパク質の多様な構造を人為的に作り出し、標的タンパク質に対して多様な化合物結合部位を出現させることで、化合物とのマッチングパターンを拡大させ、創薬等の効率を高めるものである。なお、上記の加熱・冷却のプロセスによる不安定化の方法は一例であって、本実施形態は、温度変化、圧力変化、pH変化、変性剤添加、および/または、タンパク質の荷電変化などの様々な方法によって、タンパク質を不安定化させることも包含するものである。
また、上記ではリン酸化酵素DYRK1Aを標的タンパク質の一例として説明を行ったが、本実施形態は、原理的に全てのタンパク質に対して適用可能である。すなわち、リン酸化酵素以外の酵素や、酵素以外の様々なタンパク質に適用可能である。そのため、本実施形態によれば、これまで化合物結合部位がないため創薬の標的ではなかったタンパク質でも、フォールディング過程には化合物結合部位が出現する可能性があり、新規標的の創出にも貢献することができる。
また、上記では医薬品などの創薬を目的として説明を行ったが、本実施形態で得られる機能性物質は、医薬品に限らず、植物・害虫・病原菌などの防除標的タンパク質に特異的な農薬や、抗酸化に依存しない新規作用機序の食品機能性成分などを生み出すことにも利用することができる。なお、本実施の形態の説明では、主に、探索する機能性物質として阻害剤を例として説明することがあるが、これに限られず、本発明は、促進剤、凝固剤、安定化剤、活性化剤などの機能性物質の探索に適用してもよいものである。
[選択的機能性物質探索装置の構成]
次に、上述した本実施形態をシミュレーションにより実施する形態の一例である選択的機能性物質探索装置100の構成について図5を参照して説明する。なお、以下の記載事項を手動または自動による方法に適用してもよいものである。図5は、本実施形態が適用される本選択的機能性物質探索装置100の一例を示すブロック図であり、該構成のうち本実施形態に関係する部分を中心に概念的に示している。
図5に示すように、本実施形態における選択的機能性物質探索装置100は、概略的に、制御部102と記憶部106を少なくとも備え、本実施形態において、更に、入出力制御インターフェイス部108と通信制御インターフェイス部104を備える。
ここで、制御部102は、選択的機能性物質探索装置100の全体を統括的に制御するCPU等である。また、通信制御インターフェイス部104は、通信回線等に接続されるルータ等の通信装置(図示せず)に接続されるインターフェイスであり、入出力制御インターフェイス部108は、入力部114や出力部116に接続されるインターフェイスである。また、記憶部106は、各種のデータベースやテーブルなどを格納する装置である。これら選択的機能性物質探索装置100の各部は任意の通信路を介して通信可能に接続されている。更に、この選択的機能性物質探索装置100は、ルータ等の通信装置および専用線等の有線または無線の通信回線を介して、ネットワーク300に通信可能に接続されている。
記憶部106に格納される各種のデータベースやテーブル(構造ファイル106a等)は、固定ディスク装置等のストレージ手段である。例えば、記憶部106は、各種処理に用いる各種のプログラム、テーブル、ファイル、データベース、および、ウェブページ等を格納する。
これら記憶部106の各構成要素のうち、構造ファイル106aは、構造データを記憶する構造データ記憶手段である。構造データは、標的とするタンパク質の構造データや、機能性物質候補等の物質の構造データのほか、水分子や溶質、タンパク質の基質や結合物質、界面活性剤やハイドロープ等の構造データであってもよい。構造ファイル106aは、入力部114やネットワーク300等を介して入手された構造データ等を記憶してもよい。なお、構造ファイル106aにおける構造データは、2次元空間や3次元空間における各原子の座標等を含む。
図5において、入出力制御インターフェイス部108は、入力部114や出力部116の制御を行う。ここで、出力部116としては、モニタやスピーカ、プリンタを用いることができる。また、入力部114としては、キーボード、マウス、およびマイク等を用いることができる。なお、これに限られず、出力部116は、PCR装置等のように、加熱・冷却等を行える不安定化手段・再安定化手段であってもよく、入力部114は、リアルタイムPCR装置等のように、蛍光色素等によりタンパク質の機能性を判定できる判定手段であってもよい。
また、図5において、制御部102は、OS(Operating System)等の制御プログラムや、各種の処理手順等を規定したプログラム、および、所要データを格納するための内部メモリを有する。そして、制御部102は、これらのプログラム等により、種々の処理を実行するための情報処理を行う。制御部102は、機能概念的に、不安定化部102a、判定部102b、および、機器制御部102cを備える。
このうち、不安定化部102aは、構造ファイル106aに記憶された構造データに基づいて、シミュレーションにより、タンパク質を、少なくとも部分的に、不安定化させ、機能性物質候補の存在下で、不安定化されたタンパク質を供する不安定化手段である。
一例として、不安定化部102aは、構造ファイル106aに記憶された標的タンパク質の3次元構造データを、シミュレーションにより、溶液中で、温度変化、圧力変化、pH変化、変性剤添加、および/または、タンパク質の荷電変化をさせることにより不安定化させてもよい。例えば、不安定化部102aは、構造を構成する原子の速度を変化させることにより、温度変化・圧力変化を反映したシミュレーションを行ってもよい。また、不安定化部102aは、ポテンシャルエネルギーを変化させることにより、静電相互作用・ファンデルワールス相互作用・結合エネルギーの変化を反映したシミュレーションを行ってもよい。また、不安定化部102aは、標的タンパク質自体を直接的に不安定化させることに限らず、標的タンパク質の表面を不安定化させることによって間接的に標的タンパク質を不安定化させてもよい。例えば、標的タンパク質の周囲にある、水分子、基質、結合物質、機能性物質候補、界面活性剤、ハイドロープ等を温度変化等させることにより、間接的に標的タンパク質を表面から加熱等することにより不安定化させてもよい。
そして、不安定化部102aは、一例として、不安定化させたタンパク質の立体構造と、構造ファイル106aに記憶された機能性物質候補データによる立体構造とをシミュレーション上で相互作用させる。なお、機能性物質候補は、シミュレーション上で、タンパク質の不安定化の前に加えてもよく後に加えてもよく、さらに不安定化とは逆の再安定化プロセスを追加してもよい。また、不安定化は、タンパク質に対してのみならず、共存下の機能性物質候補や溶媒分子等に対しても、部分的または全体的に変更したシミュレーションが実施されてもよい。なお、不安定化部102aによる3次元構造の不安定化方法や相互作用シミュレーションは、in silicoスクリーニング等の公知の手法を利用してもよい。
また、図5に示すように、判定部102bは、不安定化部102aによるシミュレーションにおける、機能性物質候補の存在によるタンパク質の機能影響効果を判定する判定手段である。例えば、判定部102bは、機能性物質として阻害剤を探索する場合には阻害効果を判定し、促進剤を探索する場合には促進効果を判定し、凝固剤を探索する場合には凝固効果を判定し、安定化剤を探索する場合には安定化効果を判定し、活性化剤を探索する場合には活性化効果を判定してもよい。一例として、判定部102bは、タンパク質の立体構造(天然構造および非天然(不安定化)構造)に対する、機能性物質候補のフィッティングの程度によって、機能性影響効果(例えば、タンパク質の機能に対する阻害効果、促進効果、安定化効果、活性化効果など)を判定してもよい。例えば、タンパク質の天然構造には機能性物質候補はフィッティングが弱いが、不安定化部102aにより不安定化されたタンパク質の非天然構造(不安定化構造)に対して機能性物質候補が強くフィッティングする場合、判定部102bは、タンパク質の非天然構造に選択的に結合して機能に影響を与える効果(すなわち機能影響効果)があると判定してもよい。なお、判定部102bは、タンパク質の機能性に関与し得るポケット構造に対してフィッティングする場合に、機能影響効果を判定してもよい。より具体的には、特定のポケット構造に結合すると阻害効果や活性化効果などを示すことが既知の場合、判定部102bは、そのポケット構造にフィッティングしたことをもって阻害効果や活性化効果を評価することができる。
ここで、図6は、選択的機能性物質探索装置100の不安定化部102aと判定部102bによる選択的機能性物質探索方法の一例を示すフローチャートである。なお、以下では、主に、探索する機能性物質の機能として阻害効果を例として説明しているが、これに限られず、促進効果、安定化効果、活性化効果などの機能を評価して、機能性物質を探索してもよいものである。すなわち、以下の例では、主に、阻害剤を探索する場合を例として説明することがあるが、同様にして、促進剤、凝固剤、安定化剤、活性化剤などの機能性物質の探索に適用してもよい。したがって、本実施の形態(実施例を含む)において、「阻害剤」等の語や、「促進剤」、「凝固剤」、「安定化剤」、「活性化剤」、「機能性物質」等の語は、それぞれ探索対象の目的に応じて読み替えて適用してもよいものである。上述したように不安定部102aが天然構造を不安定化させた非天然構造をシミュレートすると(ステップ1)、判定部102bは、阻害剤候補構造データと非天然構造の結合能力を計算する(ステップ2)。計算手法の一例として、判定部102bは、(1)結合エネルギー・結合スコアの計算、(2)結合状態割合の計算、(3)結合自由エネルギーの計算のうち、一部または複数を組み合わせて、阻害剤候補の阻害能力を判定してもよい。そして、判定部102bは、結合既知化合物のエネルギーまたは結合状態割合と比較することで阻害効果を決定してもよい。なお、上述のように、図示のごとく、阻害剤候補は、シミュレーション上で、タンパク質の不安定化の前に加えてもよく後に加えてもよい。同様に、シミュレーション上で、タンパク質の不安定化の前または後で、タンパク質の基質や結合物質、界面活性剤やハイドロープ等の構造データが加えられてもよい。なお、判定部102bによる判定結果は、評価ファイル106bに格納されてもよい。
また、機器制御部102cは、入力部112や出力部114や外部装置200等の機器を制御する制御手段である。一例として、機器制御部102cは、モニタやプリンタ等の出力部114に、判定部102bの判定結果を出力してもよく、外部機器200に判定結果を送信してもよい。
これに限られず、機器制御部102cは、本実施の形態の不安定化/再安定化プロセスや、判定プロセスを実行するよう機器制御を行ってもよい。例えば、機器制御部102cは、上述のようにリアルタイムPCR装置等のような不安定化手段・再安定化手段、判定手段を備えた入力装置112および出力部114を制御して、本実施の形態の不安定化/再安定化ステップや、判定ステップを実行させる制御を行ってもよいものである。例えば、機器制御部102cは、上述した不安定部102aと判定部102bのシミュレーションにより阻害効果の高い判定結果が得られた阻害剤候補のみについて、リアルタイムPCR装置等を利用した自動による不安定化/再安定化ステップと判定ステップ等が実行されるよう制御してもよい。
以上が、本実施形態における選択的機能性物質探索装置100の構成の一例である。なお、選択的機能性物質探索装置100は、ネットワーク300を介して外部機器200に接続されてもよく、この場合、通信制御インターフェイス部104は、選択的機能性物質探索装置100とネットワーク300(またはルータ等の通信装置)との間における通信制御を行う。すなわち、通信制御インターフェイス部104は、他の端末と通信回線を介してデータを通信する機能を有する。また、ネットワーク300は、選択的機能性物質探索装置100と外部機器200とを相互に接続する機能を有し、例えば、インターネット等である。
また、外部システム200は、ネットワーク300を介して、選択的機能性物質探索装置100と相互に接続され、構造データや、各種パラメータや、シミュレーション結果データ等の各種データに関する外部データベースや、接続された情報処理装置に立体構造計算等の演算方法を実行させるためのプログラム等を提供する機能を有してもよい。
ここで、外部機器200は、WEBサーバやASPサーバ等として構成していてもよい。また、外部機器200のハードウェア構成は、一般に市販されるワークステーション、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置およびその付属装置により構成していてもよい。また、外部機器200の各機能は、外部機器200のハードウェア構成中のCPU、ディスク装置、メモリ装置、入力装置、出力装置、通信制御装置等およびそれらを制御するプログラム等により実現される。
以上で、本実施形態の構成および処理の例の説明を終える。
[実施例]
以下、上述した図4以外にも、本発明にかかる実施形態の様々な実施例について説明を行う。ここで、図7Aは、2種類のフォールディング中間体特異的阻害剤における、加熱・急冷による完成型酵素活性の阻害効果を示す図である。また、図7Bは、2種類のフォールディング中間体特異的阻害剤における、加熱・急冷による完成型酵素活性の阻害効果に濃度依存性があることを示す図である。また、図7Cは、コントロールとして既知の物質RD0392および既知の物質Harmineを用いて阻害効果を測定した図である。また、図7Dは、培養細胞での実験結果を示す図である。なお、FINDYと化合物168(別名:CBT-168/dp-FINDY)は、以下の化学式で表され、上述のように本願発明者により2種類のフォールディング中間体特異的阻害剤としての効果をもつものとして確かめられている。なお、Harmineは、植物由来のアルカロイド化合物であり、リン酸化酵素DYRK1Aに対する阻害活性が多数の論文により報告されていることから、従来技術のポジティブコントロールとして使用した。
Figure 0007440134000001
図7Aに示すように、この2種類のフォールディング中間体特異的阻害剤FINDYと168(CBT-168/dp-FINDY)は、加熱・冷却を行わない完成型タンパク質に対しては阻害効果を示さなかったが、本実施形態の不安定化・再安定化である加熱・冷却を行った場合は、阻害効果を示した。したがって、本実施形態の不安定化・再安定化によって、フォールディング中間体の構造が再現されていることが確かめられた。また、図7Bに示すように、これら2種類のフォールディング中間体特異的阻害剤FINDYと168(CBT-168/dp-FINDY)が濃度依存的に阻害効果を示すことが確かめられた。なお、図7Cのコントロール実験に示すように、リン酸化酵素DYRK1Aに対する阻害活性が既知のRD0392およびHarmineでは、加熱・冷却を行わない完成型タンパク質に対しても阻害効果が示され、本実施形態(図7A、図7B等)のように、不安定化・再安定化である加熱・冷却を行ったフォールディング中間体に対してのみ特異的な阻害効果は示されなかった。
また、化合物168(別名:CBT-168/dp-FINDY)は、培養細胞においても阻害効果を示すことが確かめられた。より具体的には、培養細胞株HEK293を用いてウェスタンブロットによる検討を行った。すなわち、HEK293細胞株を化合物168(dp-FINDY)存在下で4日間培養し、その後、細胞抽出液を調整した。SDS-PAGEとWestern Blot法により、それぞれに対する特異的抗体を用いて検出した。その結果、図7Dに示すように、dp-FINDY添加量依存的にDYRK1Aのバンドが薄くなっており、dp-FINDYが、培養細胞内で標的リン酸化酵素DYRK1Aを分解・除去する活性を有することが確かめられた。
また、上記の実験に関連して、追加的に検討を行った結果、以下の化合式に示すNo.2化合物を本実施の形態にかかる阻害剤として発見した。図7Eは、フォールディング中間体特異的阻害剤No.2化合物における、加熱・急冷による完成型酵素活性の阻害効果を示す図であり、図7Fは、No.2化合物におけるウェスタンブロット検出結果を示す図である。なお、No.2化合物は、緑茶カテキンEGCGの構造類縁体の1つである(参考:以下の論文のcompound5参照。https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20596600/、https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20045338/)。
Figure 0007440134000002
図7Eに示すように、新たに発見したNo.2化合物は、不安定化・再安定化である加熱・冷却を行ったフォールディング中間体に対してのみ特異的な阻害効果が示された。また、培養細胞株HEK293を用いたウェスタンブロット検出も行った。すなわち、HEK293細胞株をNo.2化合物存在下で4日間培養し、その後、細胞抽出液を調整した。SDS-PAGEとWestern Blot法により、DYRK1AとGAPDHをそれぞれに対する特異的抗体を用いて検出した。その結果、図7Fに示すように、No.2化合物添加量依存的にDYRK1Aのバンドが薄くなり、No.2化合物は、培養細胞内で標的リン酸化酵素DYRK1Aを分解・除去する活性を有することが確かめられた。
また、上記の実施例を拡張して本実施の形態におけるフォールディング中間体に対する特異的な阻害剤および活性化剤を探索すべくスクリーニングを行った。図7Gは、リン酸化酵素DYRK1Aに対する阻害剤および活性化剤の小規模スクリーニング結果を示す図である。このライブラリは、本願発明者の研究室が保有する小規模な構造類縁体ライブラリ(1~26番)である。図7Hは、スクリーニングの結果、本実施形態の阻害剤として見出された20番化合物の阻害効果を示す図である。
図7Gに示すように、26種類の小規模な構造類縁体ライブラリにおいて、不安定化・再安定化である加熱・冷却(すなわち温度ジャンプ)を行ったフォールディング中間体に対して特異的に阻害活性を有する化合物として11番、13番、19番、20番の化合物が見出された。また、図7Hに示すように、20番化合物について、濃度依存的な阻害効果が確かめられた。なお、図7H下図に示すように、上記と同様に、培養細胞株HEK293におけるウェスタンブロッティング検出を行った。その結果、図7H下図に示すように、20番化合物添加により、DYRK1Aバンドが消滅し、培養細胞内で標的リン酸化酵素DYRK1Aを分解・除去する活性を有することが確かめられた。ここで、図8Aは、ATPの濃度と阻害効果の関係を示すグラフ図である。
図8Aに示すように、高濃度のATPが存在した場合に、2種類のフォールディング中間体特異的阻害剤FINDYと168(CBT-168/dp-FINDY)の阻害効果が一層向上することが確かめられた。ATPはハイドロトロープ(Hydrotrope)の一種であるので、ハイドロトロープの存在によって、阻害剤と非天然構造(中間体)の複合体の安定化に寄与する可能性が示唆された。ここで、図8Bは、ADP、GDP、キシレンスルホン酸ナトリウム、p-トルエンスルホン酸ナトリウムの濃度と阻害効果の関係を示すグラフ図である。
図8Bに示すように、ADP、GDP、キシレンスルホン酸ナトリウム、p-トルエンスルホン酸ナトリウムが存在した場合に、2種類のフォールディング中間体特異的阻害剤FINDYと168(CBT-168/dp-FINDY)の阻害効果が向上することが確かめられた。したがって、これらADP、GDP、キシレンスルホン酸ナトリウム、p-トルエンスルホン酸ナトリウムも、ハイドロトロープとして、阻害剤と非天然構造(中間体)の複合体の安定化に寄与する可能性が示唆された。
ここで、図9は、3種類のフォールディング中間体特異的阻害剤FINDYと168、No.2による加熱・冷却なしでの阻害活性を示す図であり、図10Aは、3種類のフォールディング中間体特異的阻害剤FINDYと168、No.2による加熱・冷却ありでの阻害活性を示す図である。
図9に示すように、加熱・冷却なしでは、フォールディング中間体特異的阻害剤の阻害活性は示されないのに対して、本実施形態の加熱・急冷を行うと、阻害活性が顕著に示された(図10A)。したがって、本実施形態により不安定化されたタンパク質の構造に選択的に阻害剤が阻害効果を示すことが確かめられた。ここで、図10Bは、2種類のフォールディング中間体特異的阻害剤における、加熱・急冷による完成型酵素活性の阻害効果に濃度依存性があることを示す図である。また、図10Cは、コントロールとして既知の物質RD0392および既知の物質Harmineを用いて阻害効果を測定した図である。
図10Bに示すように、これら2種類のフォールディング中間体特異的阻害剤FINDYと168(CBT-168/dp-FINDY)が濃度依存的にリン酸化酵素DYRK1Bに対して阻害効果を示すことが確かめられた。なお、図10Cのコントロール実験に示すように、リン酸化酵素DYRK1Bに対して、RD0392およびHarmineでは、加熱・冷却を行わない完成型タンパク質に対しても阻害効果が示され、本実施形態(図10A、図10B等)のように、不安定化・再安定化である加熱・冷却を行ったフォールディング中間体に対してのみ特異的な阻害効果は示されなかった。
ここで、他のリン酸化酵素に対する阻害効果の検討を行った。図10Dは、3種類のフォールディング中間体特異的阻害剤FINDYと168、No.2による加熱・冷却の有無におけるリン酸化酵素SRCに対する阻害活性を示す図である。なお、FINDY、CBT-168はDYRK1Aの温度ジャンプ阻害のIC80濃度を使用している。また、図10Eは、3種類のフォールディング中間体特異的阻害剤FINDYと168、No.2による加熱・冷却の有無におけるリン酸化酵素ABLに対する阻害活性を示す図である。
その結果、図10Dに示すように、FINDY、CBT-168は、リン酸化酵素SRCを温度ジャンプ依存的に阻害した。しかし、その阻害活性はDYRK1Aに対するものよりも弱かった。このように、リン酸化酵素間で、3種類のフォールディング中間体特異的阻害剤における選択性の比較が可能であった。また、図10Eに示すように、FINDYは、温度ジャンプ依存的に、リン酸化酵素ABLを強力に阻害した。その阻害活性は、DYRK1Aに対するものよりも強かった。また、培養細胞株HEK293を用いたウェスタンブロット検出を行った。すなわち、HEK293細胞株をFINDY存在下で4日間培養し、その後、細胞抽出液を調整した。SDS-PAGEとWestern Blot法により、ABLとGAPDHをそれぞれに対する特異的抗体を用いて検出した。その結果、図10E下図に示すように、FINDY添加量依存的にABLのバンドが薄くなった。そのため、FINDYは、培養細胞内で標的リン酸化酵素ABLを分解・除去する活性を有することが確かめられた。
つぎに、本実施形態の加熱・急冷の温度条件について検討を行った結果を示す。図11に示すように、常に加熱した状態でタンパク質の酵素活性が失われる温度t1を加熱の下限値とした。また、図12に示すように、20秒の比較的短時間で加熱した後に急冷した場合であっても酵素活性が失われてしまった温度t2を加熱の上限値とした。
すなわち、図13に示すように、これら長時間で失活する温度t1と短時間の加熱と急冷でも失活する温度t2の間の温度t(t1<t<t2)が、本実施形態の最大範囲の温度変化条件となる。したがって、好適には、加熱温度t=(t1+t2)/2がよいものと推定される。
そこで、この温度t(t1<t<t2)のうちで、より適切な温度条件を検討するために以下の実験を行った。
[実験条件]
リン酸化酵素DYRK1Aタンパク質量 25 ng
DMSO濃度:0.3% in 25μL
ATP・基質ペプチド(DYRKtideペプチド:アミノ酸配列RRRFRPASPLRGPPK)濃度: 5μM each
酵素反応時のVol:25μL
サーマルサイクラー(Biometra TAdvancedモデル96SG)内Vol:15μL
酵素反応時間:2時間30分
加熱時間:20秒
加熱速度:8℃/秒
加熱温度:37℃~65℃
阻害剤:FINDY・化合物168 各30μM
[実験の手順]
1. 白色96-well PCRプレートのチューブ内でDYRK1Aタンパク質、阻害剤(阻害剤0μM時は溶媒DMSOのみを添加)、バッファー(終濃度:5 mM MOPS pH 7.2、2.5 mM beta-glycerol-phosphate、5 mM MgCl、1 mM EGTA、0.4 mM EDTA、0.05 mM DTT)、超純水を混合した。[ボリューム:15μL DYRK1Aタンパク質量:25 ng 阻害剤濃度:30μM]
2. プレートをサーマルサイクラーにセットし、各加熱温度で20秒間加熱、その後3℃で10秒間冷却した。[加熱速度・冷却速度共に8℃/秒]
3. 冷却が終わったら、直ちに取り出し、ATP・基質ペプチド混合溶液を10μL加えた。[ボリューム:15μL→25μL ATP・基質ペプチド濃度 5μM]
4. サーマルサイクラーに再びセットし、20℃で2時間30分酵素反応させた。
5. サーマルサイクラーから取り出し、kinase Glo反応液を25μL加え、その発光値から残存ATP量を測定し酵素活性を評価した。[ボリューム:25μL→50μL]
その結果、以下の表1(グラフ図14)および表2(グラフ図15)の結果が得られた。各数値は、n=2の結果の平均値であり、バラツキはなかった。
Figure 0007440134000003
Figure 0007440134000004
図14および図15Aに示すように、55℃~65℃の実験温度条件のうち、FINDYでは、58℃~62ないし63℃付近で、相対的酵素活性が0.7以下となり、より強い阻害効果が得られた。また、化合物168では、55℃~63℃付近で、相対的酵素活性が0.7以下となり、より強い阻害効果が得られた。したがって、37℃付近を適温とする酵素タンパク質を対象とする場合、55℃~63℃付近の加温条件で、非天然構造に選択的に結合し機能阻害する阻害剤を探索しやすいものと推測された。
なお、図15Bは、図14および図15Aを、より分かりやすく表したデータである。なお、化合物濃度は、温度ジャンプでのIC80濃度を使用している。また、「IC80」は、酵素活性を80%阻害する濃度(20%活性が残る)を意味している。図15Bに示すように、加熱温度が低いとリン酸化酵素DYRK1Aに対する阻害がかからないことがしめされた。また、加熱温度が高いとデータのばらつきが大きいことがわかった。換言すると、図15Bは、57.5℃/DMSOでの酵素活性を1.0とした場合の各条件での相対的酵素活性を示しており、60℃未満では、FINDYによる阻害活性は弱い。64℃までは、DMSOに対するFINDYによる阻害活性は強く検出される。一方、65.2℃を越すと酵素活性が大きく低下し、データがばらつく。以上から、最適温度が存在することが確認された。
ここで、本実施形態において再構成ステップとしての冷却ステップの必要性についての検討を行った。図15Cは、リン酸化酵素DYRK1Aについて、一定温度で加熱した場合(冷却ステップなし)の相対的酵素活性を示す図である。化合物濃度は、温度ジャンプでのIC80濃度を使用している。図15Cに示すように、54.2℃以降では、20%~30%程度の阻害活性が見られる。しかし、冷却ステップを加えることで80%阻害する化合物濃度であるため、冷却ステップがない本実験では、十分な阻害活性を検出できないことが確かめられた。
また、本実施形態において冷却速度についての検討を行った。図15Dは、リン酸化酵素DYRK1Aについて、冷却速度を変えた場合の阻害効果を示す図である。この実験以外では、8℃/s(秒)で冷却した。放置は、96-wellプレートを加熱ブロックから取り外し、室温にて自然に冷却した場合である。図15Dに示すように、冷却速度は、室温での自然冷却までは結果に影響しなかった。これらの条件よりゆっくり冷却した場合は不明だが、酵素活性の失活が大きくなると予想される。
ここで、図11~図13の上限温度と下限温度の設定方法として、リン酸化酵素DYRK1A、DYRK1A、SRC、ABLのそれぞれについて追加の検討を行った。図16は、リン酸化酵素DYRK1Aの上限温度と下限温度の検討結果を示す図であり、図17は、リン酸化酵素DYRK1Bの上限温度と下限温度の検討結果を示す図であり、図18は、リン酸化酵素SRCの上限温度と下限温度の検討結果を示す図である。また、図19は、リン酸化酵素ABLの上限温度と下限温度の検討結果を示す図である。なお、相対的酵素活性は、37℃での酵素活性を1.0として計算した。
その結果、図16に示すように、リン酸化酵素DYRK1Aでは、実測データから、上限温度67.0℃、下限温度57.5℃が温度条件として算出された。その結果、温度ジャンプ実験での設定加熱温度は、62.0℃とした。また、図17に示すように、リン酸化酵素DYRK1Bでは、実測データから、上限温度58.4℃、下限温度48.9℃が温度条件として算出された。その結果、温度ジャンプ実験での設定加熱温度は、53.7℃とした。また、図18に示すように、リン酸化酵素SRCでは、実測データから、上限温度59.6℃、下限温度51.4℃が温度条件として算出された。その結果、温度ジャンプ実験での設定加熱温度は、55.5℃とした。また、図19に示すように、リン酸化酵素ABLでは、実測データから、上限温度55.6℃、下限温度47.3℃が温度条件として算出された。その結果、温度ジャンプ実験での設定加熱温度は、52.0℃とした。
[リン酸化酵素以外の実施例]
つづいて、上述したリン酸化酵素以外のタンパク質として、モノアミン酸化酵素MAO-Aと、タンパク質分解酵素Calpain-Iについて、阻害剤および活性化剤の探索と検討を行った。
なお、実験に用いた植物由来化合物ライブラリ(1~34)は、以下の会社から商業的に入手可能なフラボノール・カテキン類化合物である(富士フィルム和光純薬株式会社、東京化成工業株式会社、Merck、ナカライテスク)。
また、図11~図13の上限温度と下限温度の設定方法として、モノアミン酸化酵素MAO-Aについて検討を行った。図20は、モノアミン酸化酵素MAO-Aの上限温度と下限温度の検討結果を示す図である。なお、MAO-A―GloTM Assay Systems Promega製品のマニュアル通りに実験を行った。なお、相対的酵素活性は、40℃での酵素活性を1.0として計算した。
その結果、図20に示すように、リン酸化酵素MAO-Aでは、実測データから、上限温度76.4℃、下限温度62.0℃が温度条件として算出された。その結果、温度ジャンプ実験での設定加熱温度は、69.2℃とした。図21は、モノアミン酸化酵素MAO-Aに対する阻害剤の小規模スクリーニング結果を示す図である。
スクリーニングの結果、図21に示すように、2番の化合物において、温度ジャンプ依存的な阻害活性が確認された(より詳細な結果は、図21下図に示す)。また、9番の化合物について、温度ジャンプ依存的な活性向上が確認された。
また、図11~図13の上限温度と下限温度の設定方法として、タンパク質分解酵素Calpain-Iについて検討を行った。図22は、タンパク質分解酵素Calpain-Iの上限温度と下限温度の検討結果を示す図である。なお、Calpain-GloTM Assay Systems Promega製品のマニュアル通りに実験を行った。なお、相対的酵素活性は、40℃での酵素活性を1.0として計算した。
その結果、図22に示すように、タンパク質分解酵素Calpain-Iでは、実測データから、上限温度76.4℃、下限温度57.5℃が温度条件として算出された。その結果、温度ジャンプ実験での設定加熱温度は、60.0℃とした。なお、この温度は、上限と下限の中央値ではない。上限と下限の差が大きすぎたため、温度を上限温度設定の際の活性が半分になるあたりに設定した。図23は、タンパク質分解酵素Calpain-Iに対する阻害剤の小規模スクリーニング結果を示す図である。
スクリーニングの結果、図23に示すように、28番、30番の化合物において、温度ジャンプ依存的な阻害活性が確認された(30番の化合物のより詳細な結果は、図23下図に示す)。また、33番の化合物について、温度ジャンプ依存的な活性向上が確認された。また、図24は、別の小規模な構造類縁体ライブラリ(1~26番)についてのスクリーニング結果を示す図である。
図24に示すように、このライブラリでは、1番、7番、8番、19番、25番の化合物において、温度ジャンプ依存的な阻害活性が確認された。
[in silicoの実施例]
温度ジャンプの分子動力学(MD)シミュレーションの実施例について以下に説明する。
なお、MDシミュレーションでの加熱・冷却の繰り返し回数の条件としては、計算時間を100nsとした。すなわち、10ns冷却・10ns加熱で20nsとして、それを5回繰り返した。
ここで、図25は、(1)DYRK1A-FINDYの計算系と初期構造を示す図である。また、図26は、(2)温度ジャンプMDシミュレーションの設定における温度設定の模式図である。図27~図31は、各加熱温度を、それぞれ400K、450K、500K、550K、600Kとしたときのシミュレーション結果を示す図である。
図27~図31に示すように、加熱温度400K(図27)、450K(図28)、500K(図29)では、タンパク質の構造が保たれているが、550K(図30)、600K(図31)となると一部の構造がほどけた。その結果、系全体を温度ジャンプする場合、加熱温度450~600Kが良好であると考えられた。
また、系全体を加熱するのではなく、リガンドのみを温度ジャンプさせることにより、間接的にタンパク質の表面を加熱させることも検討した。図32~図34は、各加熱温度を、リガンドのみ、それぞれ600K、800K、1000Kとしたときのシミュレーション結果を示す図である。
その結果、600K(図32)、800K(図33)、1000K(図34)のいずれの場合でも、タンパク質の構造が保たれることが分かった。したがって、リガンドのみ温度ジャンプさせる場合には、リガンド加熱温度800~1000Kが良好であると考えられた。
さらに、計算時間中で同定された構造の多様性を解析した。図35は、系全体を温度ジャンプさせた場合の定量的なグラフであり、図36は、リガンドのみ温度ジャンプさせた場合の定量的なグラフである。なお、DYRK1AのRMSD値は、計算構造における天然構造からのズレの指標を示す(RMSD:Root Mean Square Deviation)。また、リガンドの1ns移動距離は、リガンドが1nsに並進移動した距離を示す。
図35および図36に示すように、各温度の構造のゆらぎを計算した結果が得られた。すなわち、温度依存的に構造のゆらぎが確認できる。例えば、図35(系全体の温度ジャンプ)では、加熱温度を上げると、DYRK1A構造は天然構造とはかけ離れてしまうことがわかった。また、図36(リガンドのみ温度ジャンプ)では、DYRK1A構造を保ちつつ、リガンドの分散性が良くなることが分かった。
以上で、実施例を含む本実施形態の説明を終える。
以上、上述した実施の形態によれば、化合物の多様性とタンパク質結合部位の数の間の大きなギャップを改善して、有用な機能性物質を発見できる確率を高めることができる。加えて、従来技術では標的とされていなかったタンパク質にある隠れた化合物結合部位を露出させることで、従来技術で同定されてきた化合物とは異なる構造を持つ化合物による機能性効果について評価・探索することができる。
[他の実施の形態]
さて、これまで本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上述した実施の形態以外にも、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内において種々の異なる実施の形態にて実施されてよいものである。
例えば、実施の形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。
また、本発明および本実施の形態において、「探索」との記載を「評価」との記載に置換して実施してもよいものである。また、「阻害」、「機能(性)」、「促進」、「凝固」、「安定化」、「活性化」等の語は、それぞれに置換して実施してもよいものである。
このほか、上記文献中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各処理のデータや条件等のパラメータを含む情報、図示されていない画面例、データベース構成については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
また、選択的機能性物質探索装置100に関して、例えば、装置がスタンドアローンの形態で処理を行うよう説明したが、これに限られず、クライアント端末(利用者の携帯端末など)からの要求に応じて処理を行ってもよいものである。また、図示の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。
例えば、各装置が備える処理機能、特に制御部102にて行われる各処理機能については、その全部または任意の一部を、CPU(Central Processing Unit)および当該CPUにて解釈実行されるプログラムにて実現してもよく、また、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現してもよい。尚、プログラムは、後述する、コンピュータに本発明に係る方法を実行させるためのプログラム化された命令を含む、一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されており、必要に応じて電子機器制御装置に機械的に読み取られる。すなわち、ROMまたはHDD(Hard Disk Drive)などの記憶部106などには、OS(Operating System)と協働してCPUに命令を与え、各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録されている。このコンピュータプログラムは、RAMにロードされることによって実行され、CPUと協働して制御部を構成する。
また、このコンピュータプログラムは、装置に対して任意のネットワークを介して接続されたアプリケーションプログラムサーバに記憶されていてもよく、必要に応じてその全部または一部をダウンロードすることも可能である。
また、本発明に係るプログラムを、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納してもよく、また、プログラム製品として構成することもできる。ここで、この「記録媒体」とは、メモリーカード、USBメモリ、SDカード、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、EPROM、EEPROM、CD-ROM、MO、DVD、および、Blu-ray(登録商標)Disc等の任意の「可搬用の物理媒体」を含むものとする。
また、「プログラム」とは、任意の言語や記述方法にて記述されたデータ処理方法であり、ソースコードやバイナリコード等の形式を問わない。なお、「プログラム」は必ずしも単一的に構成されるものに限られず、複数のモジュールやライブラリとして分散構成されるものや、OS(Operating System)に代表される別個のプログラムと協働してその機能を達成するものをも含む。なお、実施の形態に示した各装置において記録媒体を読み取るための具体的な構成、読み取り手順、あるいは、読み取り後のインストール手順等については、周知の構成や手順を用いることができる。プログラムが、一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されたプログラム製品として本発明を構成してもよい。
記憶部106に格納される各種のファイルやデータベース等は、RAM、ROM等のメモリ装置、ハードディスク等の固定ディスク装置、フレキシブルディスク、および、光ディスク等のストレージ手段であり、各種処理やウェブサイト提供に用いる各種のプログラム、テーブル、データベース、および、ウェブページ用ファイル等を格納する。
また、選択的機能性物質探索装置100は、既知のパーソナルコンピュータ、ワークステーション、携帯機器、スマートフォン等の情報処理装置として構成してもよく、また、該情報処理装置に任意の周辺装置を接続して構成してもよい。また、装置100は、該情報処理装置に本発明の方法を実現させるソフトウェア(プログラム、データ等を含む)を実装することにより実現してもよい。
更に、装置の分散・統合の具体的形態は図示するものに限られず、その全部または一部を、各種の付加等に応じて、または、機能負荷に応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。すなわち、上述した実施形態を任意に組み合わせて実施してもよく、実施形態を選択的に実施してもよい。
以上詳述に説明したように、本発明によれば、化合物の多様性とタンパク質結合部位の数の間の大きなギャップを改善して、有用な機能性物質を発見できる確率を高めることができる、選択的機能性物質の探索方法、選択的機能性物質探索装置、選択的機能性物質探索方法、および、プログラムを提供することができる。具体的には、化合物探索でのヒット率向上を目的として、標的タンパク質の構造を多様化し、化合物との適合パターンを拡大する技術を提供することができ、様々な分野での有用化合物の探索を促進することができるので、これら有用化合物の探索と発見を通じて、健康寿命の延伸や、新しい市場の創出に貢献することができる。
100 選択的機能性物質探索装置
102 制御部
102a 不安定化部
102b 判定部
102c 機器制御部
104 通信制御インターフェイス部
106 記憶部
106a 構造ファイル
106b 評価ファイル
108 入出力制御インターフェイス
112 入力部
114 出力部
200 外部機器
300 ネットワーク

Claims (11)

  1. タンパク質の非天然構造に特異的に結合し、前記タンパク質の機能に影響を与える機能性物質を探索する特異的機能性物質の探索方法であって、
    前記タンパク質を、少なくとも部分的に、加熱により不安定化させるステップと、
    機能性物質候補の存在下で、前記不安定化された前記タンパク質を供し、冷却により再安定化を促すステップと、
    前記機能性物質候補の存在による前記タンパク質が有する機能に対して影響を与える効果を判定するステップと、
    を含む特異的機能性物質の探索方法。
  2. 請求項1に記載の特異的機能性物質の探索方法において、
    前記タンパク質は
    素、発光タンパク質、その他の機能性タンパク質であり、
    前記その他の機能性タンパク質は、Gタンパク質共役型受容体、イオンチャンネル、構造タンパク質、核膜孔複合体構成タンパク質、細胞膜受容体タンパク質、サイトカイン、分子シャペロン、トランスポーター、インテグリン、核内受容体、またはウイルス外殻タンパク質である、
    特異的機能性物質の探索方法。
  3. 請求項2に記載の特異的機能性物質の探索方法において、
    前記酵素は、リン酸化酵素、タンパク質分解酵素、またはモノアミン酸化酵素MAO-Aである、特異的機能性物質の探索方法。
  4. 請求項1~3のいずれかに記載の特異的機能性物質の探索方法において、
    前記タンパク質を不安定化させる温度は、50℃~70℃である
    特異的機能性物質の探索方法。
  5. 請求項1~4のいずれかに記載の特異的機能性物質の探索方法において、
    前記タンパク質の機能は、基質ないし結合物質の存在下で発揮されるものである
    特異的機能性物質の探索方法。
  6. 請求項1~5のいずれかに記載の特異的機能性物質の探索方法において、
    界面活性剤またはハイドロトロープの存在下で、前記不安定化された前記タンパク質に対する前記機能性物質候補の活性を、機能性物質候補が存在しない場合のタンパク質の機能に対して、機能性物質候補が存在する場合のタンパク質の機能が1.5倍以上高まるか又は低下するような条件下で、検出するものである
    特異的機能性物質の探索方法。
  7. 請求項1~6のいずれかに記載の特異的機能性物質の探索方法において、
    前記機能性物質候補は、
    低分子、中分子、高分子、ペプチド、抗体、または、核酸アプタマーである
    特異的機能性物質の探索方法。
  8. 請求項1~7のいずれかに記載の特異的機能性物質の探索方法において、
    前記機能性物質は、
    前記タンパク質の阻害剤、促進剤、凝固剤、安定化剤、または、活性化剤である
    特異的機能性物質の探索方法。
  9. タンパク質の非天然構造に特異的に結合し、前記タンパク質の機能に影響を与える機能性物質を探索する、少なくとも記憶部と制御部を備えた特異的機能性物質探索装置であって、
    前記記憶部は、少なくとも1つの機能性物質候補に関する構造データを記憶しており、
    前記制御部は、
    シミュレーションにより、前記タンパク質を、少なくとも部分的に、加熱により不安定化させ、前記機能性物質候補の存在下で、前記不安定化された前記タンパク質を供し、さらに冷却により再安定化を促す不安定化/再安定化部と、
    前記機能性物質候補の存在による前記タンパク質が有する機能に対して影響を与える効果を判定する判定部と、
    を備えたことを特徴とする特異的機能性物質探索装置。
  10. タンパク質の非天然構造に特異的に結合し、前記タンパク質の機能に影響を与える機能性物質を探索するため、少なくとも記憶部と制御部を備えたコンピュータに実行させる特異的機能性物質探索方法であって、
    前記記憶部は、少なくとも1つの機能性物質候補に関する構造データを記憶しており、
    前記制御部において実行される、
    シミュレーションにより、前記タンパク質を、少なくとも部分的に、加熱により不安定化させ、前記機能性物質候補の存在下で、前記不安定化された前記タンパク質を供し、さらに冷却により再安定化を促す不安定化/再安定化ステップと、
    前記機能性物質候補の存在による前記タンパク質が有する機能に対して影響を与える効果を判定する判定ステップと、
    を含むことを特徴とする特異的機能性物質探索方法。
  11. タンパク質の非天然構造に特異的に結合し、前記タンパク質の機能に影響を与える機能性物質を探索するため、少なくとも記憶部と制御部を備えたコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
    前記記憶部は、少なくとも1つの機能性物質候補に関する構造データを記憶しており、
    前記制御部において実行される、
    シミュレーションにより、前記タンパク質を、少なくとも部分的に、加熱により不安定化させ、前記機能性物質候補の存在下で、前記不安定化された前記タンパク質を供し、さらに冷却により再安定化を促す不安定化/再安定化ステップと、
    前記機能性物質候補の存在による前記タンパク質が有する機能に対して影響を与える効果を判定する判定ステップと、
    を実行させるためのプログラム。
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