JP7435769B2 - 衛星通信システムにおけるアンテナ方向調整方法、可搬局装置およびアンテナ方向調整プログラム - Google Patents

衛星通信システムにおけるアンテナ方向調整方法、可搬局装置およびアンテナ方向調整プログラム Download PDF

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Description

本発明は、広域大規模災害などにより衛星通信事業者と連絡不能時の衛星通信システムにおいて、可搬型の地球局装置が通信衛星に初期接続する際のアンテナ方向を調整する技術に関する。
可搬型の地球局装置を備える衛星通信システムとして、VSAT(Very Small Aperture Terminal)システムが知られている。VSATシステムは、超小型の開口型アンテナを備える可搬型の小型のVSAT地球局装置を用い、通信衛星が捕捉可能な場所から通信できるため、災害時の通信確保等に活用されている。しかし、可搬型の地球局装置(可搬局装置と称する)を設置する場合、運用開始時に、目的の通信衛星に対するアンテナ方向の調整を行う必要がある。アンテナ方向は、例えば、GPS(Global Positioning System)などから取得した自装置の地理的位置(緯度・経度)と目的の通信衛星の情報(経度)とに基づいて、計算で求められる。可搬局装置のアンテナは、計算で求められた方向に粗調整された後、通信衛星から送信されるビーコン信号が最大レベルとなるようにアンテナの方位角、仰角および偏波角の微調整が行われる(例えば、特許文献1参照)。そして、アンテナ方向の調整後に、可搬局装置は、基地局装置の送信する制御信号を受信して同期を確立することにより、目的の通信衛星であることを最終的に確認し、運用開始時の処理を終了する。
特許第5592983号公報
広域大規模災害などにより基地局装置からの制御信号を利用できない場合に、複数の可搬局装置の1つを基地局装置として使用し、他の可搬局装置と通信を行うことができる。この場合、基地局装置として使用する可搬局装置は、制御信号による最終確認を行うことができず、通信衛星のビーコン信号で目的の通信衛星を捕捉する必要がある。
ところが、ビーコン信号の周波数が重複する複数の通信衛星がある場合、アンテナ方向の調整後の通信衛星が目的の通信衛星であるか否かを確認できない。このため、同一周波数のビーコン信号を送信する他の通信衛星が誤って捕捉される可能性がある。
本発明は、広域大規模災害などにより基地局装置の制御信号が利用できない場合でも、ビーコン信号およびテレメトリ信号の周波数の組み合わせに基づいて、目的の通信衛星を確実に捕捉することができる衛星通信システムにおけるアンテナ方向調整方法、可搬局装置およびアンテナ方向調整プログラムを提供することを目的とする。
本発明は、可搬局装置を備える衛星通信システムにおけるアンテナ方向調整方法であって、前記可搬局装置は、複数の通信衛星の経度、ビーコン信号およびテレメトリ信号に関する衛星情報から取得する目的の通信衛星の経度と、自装置の設置場所とに基づいて、目的の通信衛星に対するアンテナ方向を算出し、算出したアンテナ方向に自装置のアンテナ方向を粗調整する粗調整処理と、粗調整したアンテナ方向で受信するビーコン信号およびテレメトリ信号のそれぞれの周波数を測定する測定処理と、前記衛星情報に記憶された目的の通信衛星のビーコン信号およびテレメトリ信号のそれぞれの周波数を参照して、前記測定処理で測定したビーコン信号およびテレメトリ信号のそれぞれの周波数が正しいか否かを判定する判定処理と、前記測定処理で測定したビーコン信号およびテレメトリ信号のそれぞれの周波数が正しい場合、粗調整したアンテナ方向で受信するビーコン信号の受信レベルが最大になるように、アンテナ方向を微調整する微調整処理とを実行することを特徴とする。
また、本発明は、衛星通信システムで用いる可搬局装置において、複数の通信衛星の経度、ビーコン信号およびテレメトリ信号に関する衛星情報を記憶する記憶部と、通信衛星からビーコン信号およびテレメトリ信号を受信して、それぞれの周波数を測定する測定部と、前記衛星情報から取得する目的の通信衛星の経度と、自装置の設置場所とに基づいて、目的の通信衛星に対するアンテナ方向を算出し、アンテナ方向の駆動部を制御して算出したアンテナ方向に自装置のアンテナ方向を粗調整する粗調整処理と、前記衛星情報に記憶された目的の通信衛星のビーコン信号およびテレメトリ信号のそれぞれの周波数を参照して、前記測定部が測定したビーコン信号およびテレメトリ信号のそれぞれの周波数が正しいか否かを判定する判定処理と、前記測定部が測定したビーコン信号およびテレメトリ信号のそれぞれの周波数が正しい場合、粗調整したアンテナ方向で受信するビーコン信号の受信レベルが最大になるように、アンテナ方向を微調整する微調整処理と、を実行する制御部とを有することを特徴とする。
また、本発明のアンテナ方向調整プログラムは、前記可搬局装置の前記制御部が行う処理をコンピュータに実行させることを特徴とする。
本発明に係る衛星通信システムにおけるアンテナ方向調整方法、可搬局装置およびアンテナ方向調整プログラムは、広域大規模災害などにより基地局装置の制御信号が利用できない場合でも、ビーコン信号およびテレメトリ信号の周波数の組み合わせに基づいて、目的の通信衛星を確実に捕捉することができる。
本実施形態に係る衛星通信システムの一例を示す図である。 通常の衛星通信システムの一例を示す図である。 複数の通信衛星の配置例を示す図である。 衛星情報テーブルの一例を示す図である。 親局装置の構成例を示す図である。 子局装置の構成例を示す図である。 アンテナ方向の調整処理例(1/2)を示す図である。 アンテナ方向の調整処理例(2/2)を示す図である。
以下、図面を参照して本発明に係る衛星通信システムにおけるアンテナ方向調整方法、可搬局装置およびアンテナ方向調整プログラムの実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る衛星通信システム100の一例を示す。ここで、本実施形態では、例えば、次のような衛星通信システム100を想定する。複数の可搬局装置のうち、いずれか1つの可搬型装置(図1では可搬局装置101)は、通常のVSATシステムの制御局装置および基地局装置に相当する親局装置として機能する。そして、親局装置以外の可搬局装置(図2では可搬局装置102)は、通常のVSATシステムのVSAT地球局装置に相当する子局装置である。そして、衛星通信システム100は、広域大規模災害などにより、制御局装置などのオペレーションシステムを持たず、親局装置の可搬局装置101と子局装置の可搬局装置102は、P-P通信、またはP-MP通信によるプライベートネットワークを構築する。
ここで、以降の説明において、親局装置の可搬局装置101を親局装置101、子局装置の可搬局装置102を子局装置102と称する。
図1の衛星通信システム100において、子局装置102は、通信衛星103を介して親局装置101から送信される制御信号により同期を確立し、親局装置101との間で通信信号の送受信を行うことができる。なお、子局装置102と同様の子局装置が複数ある場合でも同様に各子局装置が親局装置101の制御信号により同期を確立し、親局装置101との間で通信信号の送受信を行うことができる。
図1において、衛星通信システム100は、複数の可搬型の地球局装置(図1では、可搬局装置101と可搬局装置102)を備え、通信衛星103が捕捉可能な場所であれば使用できるため、災害時の通信確保等に有効である。しかし、広域大規模災害などにより基地局装置との間で制御信号の送受信を行えない場合、親局装置101は、運用開始時に、目的の通信衛星103に対するアンテナ方向の調整を行う必要がある。
図2は、通常の衛星通信システム800の一例を示す。図2において、衛星通信システム800は、可搬局装置801、基地局装置802および通信衛星803を備え、基地局装置802は、常に制御信号(CSCO信号)を送信している。可搬局装置801は、アンテナ方向を調整した後、基地局装置802のCSCO信号を受信して基地局装置802との間で同期を確立することにより、目的の通信衛星803を確実に捕捉して通信を行うことができる。しかし、広域大規模災害などにより基地局装置との間で制御信号の送受信を行えない場合、目的の通信衛星803を捕捉して通信を行うことは難しい。
これに対して、図1に示す衛星通信システム100は、広域大規模災害などにより基地局装置と制御信号の送受信を行えない場合でも、複数の可搬局装置の1つ(図1では可搬局装置101)が親局装置101として基地局装置や制御局装置の動作を行う。そして、親局装置101は、ビーコン信号およびテレメトリ信号に基づいて、目的の通信衛星103を捕捉し、子局装置102は、親局装置101と制御信号の送受信を行って同期を確立することにより、目的の通信衛星103を補足する。
図1において、親局装置101は、複数の通信衛星の経度、ビーコン信号およびテレメトリ信号などに関する衛星情報が事前に記憶された衛星データベースを有する。ここで、ビーコン信号およびテレメトリ信号に関する情報は、それぞれの信号のV偏波およびH偏波の周波数である。また、ビーコン信号は、予め決められた周波数のCW(Continuous Wave)信号、テレメトリ信号は、通信衛星の状態(温度や電気的計測値など)をモニタするための予め決められた周波数の信号である。
そして、親局装置101は、衛星データベースに記憶された衛星情報から取得する目的の通信衛星の経度と、自装置の設置場所とに基づいて、目的の通信衛星に対するアンテナ方向を算出し、自装置のアンテナ方向を粗調整する。
親局装置101は、粗調整後に測定したビーコン信号の偏波を含む周波数とテレメトリ信号の偏波を含む周波数との組み合わせが衛星データベースに記憶されている目的の通信衛星の周波数の組み合わせに合致しているか否かを判定する。測定した周波数の組み合わせが衛星データベースに記憶されている目的の通信衛星103の周波数の組み合わせに合致している場合、親局装置101は、粗調整後のアンテナ方向が目的の通信衛星103に対するアンテナ方向であると確認できる。そして、親局装置101は、粗調整後のアンテナ方向で受信するビーコン信号の受信レベルが最大になるように、アンテナ方向を微調整する。なお、測定した周波数の組み合わせが衛星データベースに記憶されている目的の通信衛星103の周波数の組み合わせに合致しない場合、アンテナ方向の粗調整をやり直し、同様の処理が行われる。
このようにして、本実施形態に係る衛星通信システム100は、基地局装置の制御信号が利用できない場合であっても、また複数の通信衛星においてビーコン周波数が重複している場合であっても、アンテナ方向を調整して目的の通信衛星103を捕捉できる。なお、子局装置102は、図2で説明した通常の可搬局装置801と同様に、基地局装置802の代わりに親局装置101との間で制御信号を送受信して、親局装置101と同期を確立することにより、目的の通信衛星103を確実に捕捉できる。
図3は、複数の通信衛星の配置例を示す。例えば図3では、日本の地上に親局装置101(可搬局装置101)が設置され、目的の通信衛星103を含む複数の通信衛星113(1)および通信衛星113(2)の3つの通信衛星が南方上空の異なる東経方向に位置している。図3では、目的の通信衛星103は東経X度、通信衛星113(1)は東経Y度、通信衛星113(2)は東経Z度、の方向にそれぞれ位置している。
ここで、親局装置101は、アンテナ方向を調整して、南方上空の複数の通信衛星から目的の通信衛星103を捕捉する必要がある。
図4は、衛星情報テーブル151の一例を示す。衛星情報テーブル151には、図3で説明した複数の通信衛星の衛星情報が予め登録されている。なお、図4に示した3つの通信衛星は、図3に示した3つの通信衛星にそれぞれ対応する。
図4において、衛星情報テーブル151には、各衛星について、東経(度)、ビーコン信号のH偏波の周波数(Hz)とV偏波の周波数(Hz)、およびテレメトリ信号のH偏波の周波数(Hz)とV偏波の周波数(Hz)、が記載されている。ここで、BCNはビーコン信号、TLMはテレメトリ信号を示す。
例えば、図4の衛星情報テーブル151には、東経X度の目的の通信衛星103の情報として、H偏波のBCNの周波数がAHz、V偏波のBCNの周波数がBHz、H偏波のTLMの周波数がCHz、V偏波のTLMの周波数がDHz、が記憶されている。また、東経Y度の通信衛星の情報として、H偏波のBCNの周波数がCHz、V偏波のBCNの周波数がAHz、H偏波のTLMの周波数がDHz、V偏波のTLMの周波数がBHz、が記憶されている。同様に、東経Z度の通信衛星の情報として、H偏波のBCNの周波数がDHz、V偏波のBCNの周波数がCHz、H偏波のTLMの周波数がBHz、V偏波のTLMの周波数がAHz、が記憶されている。
ここで、衛星情報テーブル151に記憶されるビーコン信号およびテレメトリ信号に関する情報は、図4に示すように、H偏波およびV偏波の両方であることが望ましいが、H偏波またはV偏波のいずれかであってもよい。
(親局装置101)
図5は、親局装置101の構成例を示す。親局装置101は、アンテナ(ANT)200、偏分波器(OMT(V/H))201、送信機(BUC)202、低雑音増幅器(LNB)203、分配器(DIV)204、変復調装置(MODEM)205、アンテナ駆動部206および自動捕捉制御部207を有する。ここで、送信系および受信系の偏波は、ANT200を電波の進行方向に垂直な面で回転させることにより、V偏波またはH偏波のいずれかが選択される。なお、正対方向の偏波は、電波の進行方向に対する偏波であり、図5の例では、通信衛星103に送信する電波のV偏波(H偏波)が正対方向、通信衛星103から受信する電波のH偏波(V偏波)が正対方向となる。
ANT200は、例えばパラボラ等のアンテナであり、アンテナ駆動部206の制御により方向調整を行うためのアンテナ駆動機構を有し、通信衛星103との間で無線電波の送信および受信を行う。なお、ANTはANTennaの略である。
OMT(V/H)201は、V偏波の信号とH偏波の信号とを分離する偏分波器であり、送信および受信の双方向に機能する。例えば、ANT200が受信するH偏波の信号はLNB203に出力され、BUC202から送信される信号はV偏波の信号としてANT200に出力される。あるいは、ANT200が受信するV偏波の信号はLNB203に出力され、BUC202から送信される信号はH偏波の信号としてANT200に出力される。なお、OMTは、Ortho Mode Transducerの略である。
BUC202は、例えばMODEM205が出力する1.2GHz帯信号を14GHz帯に周波数変換する機能と、大電力増幅機能とが一体となった送信機である。なお、BUCはBlock Up Converterの略である。
LNB203は、ANT200で受信したH偏波(またはV偏波)の12GHz帯信号を低雑音で増幅し、さらに例えば1.2GHz帯に周波数変換する機能が一体となった低雑音増幅器である。なお、LNBはLow Noise Block converterの略である。
DIV204は、入力する信号を2つに分配して出力する分配器である。例えば、DIV204は、LNB203が出力する信号をMODEM205および自動捕捉制御部207のMON304に出力する。なお、DIVはDIViderの略である。
MODEM205は、変復調装置であり、例えば384kbit/sの通信速度でデータ信号を変調して送信し、1.5Mbit/sの通信速度の変調信号を受信してデータ信号に復調する。なお、MODEMは、MOdulator-DEModulatorの略である。
アンテナ駆動部206は、自動捕捉制御部207の指令に基づいてANT200のアンテナ駆動機構を動作させ、ANT200の方位角、仰角および偏波角の3方向を調整する。なお、方位角はアンテナを中心として真北から東まわりの角度(経度に対応)、仰角は水平面から上方への角度、偏波角は水平面と電波の偏波面との角度である。
自動捕捉制御部207は、予め決められたプログラムを実行するコンピュータ機能を有し、通信衛星103の自動捕捉や運用時の調整および確認など実行する。例えば、自動捕捉制御部207は、親局装置101のBUC202の送信レベルの制御、MODEM205の変復調処理の制御、アンテナ駆動部206の制御などを行う。
図5において、自動捕捉制御部207は、制御部301、方位センサ302、位置センサ303、MON304および衛星DB305を有する。
制御部301は、コンピュータのCPU(Central Processing Unit)に相当し、予め内部に記憶されたプログラムに基づいて動作する。例えば、制御部301は、方位センサ302、位置センサ303、MON304および衛星DB305の各部と連携して、アンテナ駆動部206によるANT200のアンテナ方向の調整や制御信号による子局装置との通信などを実施する。また、制御部301は、BUC202の送信レベルの調整や、MODEM205の制御(CWの送信や変復調方式の指定など)なども行う。
方位センサ302は、ANT200の方位角を計測するセンサである。例えば、方位センサ302は、方位磁針などから得られる情報に基づいて、アンテナ駆動部206で駆動されるANT200の方位角を計測する。ここで、方位角は、経度に対応する。
位置センサ303は、親局装置101(ANT200)の設置場所(緯度経度)を計測するセンサである。例えばGPS(Global Positioning System)などが利用される。
MON304は、受信レベルと周波数とを測定可能な測定器(例えばスペクトラムアナライザなど)で構成され、DIV204から出力されるH偏波またはV偏波の信号の受信レベルと周波数とを測定する。ここで、MON304は、測定部に対応する。
衛星DB305は、ハードディスクやメモリなどの記憶媒体で構成されるデータベースである(記憶部に対応)。例えば、目的の通信衛星103を含む複数の通信衛星の衛星情報として、図4で説明した衛星情報テーブル151を有し、各衛星の位置情報(東経など)やビーコン信号およびテレメトリ信号の情報(各偏波の周波数など)などが記憶されている。
図5においてアンテナ方向の調整を行う場合、制御部301は、位置センサ303で計測した親局装置101の設置場所(緯度経度)と、衛星DB305に記憶された目的の通信衛星の経度とに基づいて、目的の通信衛星に対するアンテナ方向を算出する。そして、親局装置101は、アンテナ駆動部206に指令して、算出されたアンテナ方向にANT200の方向を粗調整する。
粗調整後、制御部301は、ANT200で受信する偏波を切替て、ビーコン信号およびテレメトリ信号のH偏波およびV偏波の各周波数をMON304で測定する。そして、制御部301は、MON304で測定した各周波数の組み合わせと、衛星DB305に記憶されている目的の通信衛星103の各周波数の組み合わせとが合致しているか否かを判定する。測定した周波数の組み合わせが衛星DB305に記憶されている目的の通信衛星103の周波数の組み合わせに合致している場合、制御部301は、粗調整後のアンテナ方向が目的の通信衛星103に対するアンテナ方向であると判断できる。
例えば図4の場合、MON304でモニタするH偏波およびV偏波のビーコン信号の周波数がAHzおよびBHz、H偏波およびV偏波のテレメトリ信号の周波数がCHzおよびDHzであれば、目的の通信衛星103が捕捉されていると判断できる。
そして、制御部301は、粗調整後のアンテナ方向で受信するビーコン信号の受信レベルが最大になるように、アンテナ駆動部206を制御してANT200の方位角、仰角および偏波角の3方向を微調整する。
このようにして、本実施形態に係る親局装置101は、ビーコン信号およびテレメトリ信号の各偏波の周波数に基づいて、目的の通信衛星103を確実に捕捉することができる。
(子局装置102)
図6は、子局装置102の構成例を示す。子局装置102は、アンテナ(ANT)400、偏分波器(OMT(V/H))401、送信機(BUC)402、低雑音増幅器(LNB)403、変復調装置(MODEM)404、アンテナ駆動部405および自動捕捉制御部406を有する。図6では、送信系はV偏波、受信系はH偏波が正対方向の例を示す。
なお、子局装置102は、通常の可搬局装置801と同様の構成であり、基地局装置802との間で制御信号の通信を行って同期を確立し、通信信号の送受信を行うことができる。しかし、広域大規模災害などで基地局装置802が機能しない場合、子局装置102は、基地局装置802の機能を代替する他の可搬局装置(本実施形態の親局装置101)との間で制御信号の通信を行って同期を確立し、通信信号の送受信を行うことができる。
図6において、ANT400、OMT(V/H)401、BUC402、LNB403、MODEM404およびアンテナ駆動部405は、図5で説明したANT200、OMT(V/H)201、BUC202、LNB203、MODEM205およびアンテナ駆動部206と同様の機能を有する。自動捕捉制御部406は、制御部501、方位センサ502および位置センサ503を有する。なお、方位センサ502および位置センサ503は、図5で説明した自動捕捉制御部207の方位センサ302および位置センサ303と同様の機能を有する。
制御部501は、ANT400の方向が衛星DB305に記憶されている目的の通信衛星103の方向になるように、調整すべきANT400の方位角、仰角および偏波角の3方向を計算し、アンテナ駆動部405によりANT400の方向を調整する。なお、ANT400の方向は、位置センサ503から取得する子局装置102(ANT400)の設置場所(緯度経度)と、方位センサ502から取得するANT400の現在の方向(経度)とに基づいて、計算される。その後、制御部501は、MODEM404を介して、親局装置101から制御信号(CSCO信号)を受信し、同期を確立する。
このようにして、子局装置102は、アンテナ方向の調整および親局装置101との間の同期を確立し、親局装置101または他の可搬局装置との間で通信を行うことができる。
次に、本実施形態に係る衛星通信システム100における親局装置101のアンテナ方向の調整処理について説明する。
[アンテナ方向の調整処理]
図7および図8は、アンテナ方向の調整処理の一例を示す。なお、図7および図8の処理は、図5に示した親局装置101の自動捕捉制御部207の制御部301に予め記憶されたプログラムにより実行される。
ステップS101において、親局装置101の使用者は、装置の電源を投入し、アンテナ方向の調整を開始する。具体的には、使用者は、電源投入後、図5の自動捕捉制御部207の操作インターフェース(操作ボタンや操作パネルなど(不図示))により、制御部301にアンテナ方向の調整開始を指示する。この指示を受けて、制御部301は、ANT200のアンテナ方向を調整して目的の通信衛星103を捕捉するための処理を開始する。
ステップS102において、制御部301は、設置場所の緯度経度を取得する。具体的には、図5の自動捕捉制御部207において、制御部301は、位置センサ303により、自装置の設置場所の緯度経度を計測する。
ステップS103において、制御部301は、目的の通信衛星103の経度と設置場所の緯度経度から方位角、仰角および偏波角を算出する。ここで、方位角はAZ(AZimuth)、仰角はEL(ELevation)、偏波角はPOL(POLarization)と称する。具体的には、制御部301は、衛星DB305から取得した目的の通信衛星103の東経および正対方向の偏波(例えば、ここではH偏波)と、ステップS102で計測した自装置の緯度経度とに基づいて、可搬局装置101の設置場所における目的の通信衛星103の方向(AZ、ELおよびPOL)を算出する。
ステップS104において、制御部301は、ステップS103で算出したAZ、ELおよびPOLにより、アンテナ方向の粗調整を行う(粗調整処理)。具体的には、制御部301は、アンテナ駆動部206により、ANT200のAZ方向、EL方向およびPOL方向の3つの方向がそれぞれステップS103で算出したAZ、ELおよびPOLになるように制御する。なお、アンテナ駆動部206は、例えばAZ、ELおよびPOLの3方向を独立して調整可能な3軸の駆動装置を有する。
ステップS105において、制御部301は、正対方向のH偏波のビーコン信号の周波数(BCN周波数と称する)を測定する。具体的には、制御部301は、ANT200、OMT201、LNB203およびDIV204を介して受信するH偏波のビーコン信号のBCN周波数をMON304で測定する(測定処理)。
ステップS106において、制御部301は、衛星DB305を参照して、ステップS105で測定したH偏波のBCN周波数が正しいか否かを判定する(判定処理)。そして、制御部301は、判定結果が正しい(YES)場合、次のステップS107の処理に進み、正しくない(NO)場合、ステップS101の処理に戻って同様の処理を実行する。具体的には、ステップS104の粗調整により、図3および図4で説明した東経X度の目的の通信衛星103を捕捉している場合、ステップS105で測定されるH偏波のBCN周波数はAHzとなり、判定結果はYESである。もし、ステップS104の粗調整により、東経Y度の通信衛星113(1)を誤って捕捉している場合、ステップS105で測定されるH偏波のBCN周波数はCHzとなり、判定結果はNOである。
ステップS107において、制御部301は、正対方向のH偏波のテレメトリ信号の周波数(TLM周波数と称する)を測定する。具体的には、制御部301は、ANT200、OMT201、LNB203およびDIV204を介して受信するH偏波のテレメトリ信号のTLM周波数をMON304で測定する(測定処理)。
ステップS108において、制御部301は、衛星DB305を参照して、ステップS107で測定したH偏波のTLM周波数が正しいか否かを判定する(判定処理)。そして、制御部301は、判定結果が正しい(YES)場合、図8の(A)の処理に進み、正しくない(NO)場合、ステップS101の処理に戻って同様の処理を実行する。具体的には、ステップS104の粗調整により、図3および図4で説明した東経X度の目的の通信衛星103を捕捉している場合、ステップS107で測定されるH偏波のTLM周波数はCHzとなり、判定結果はYESである。もし、ステップS104の粗調整により、東経Y度の通信衛星113(1)を誤って捕捉している場合、ステップS107で測定されるH偏波のTLM周波数はDHzとなり、判定結果はNOである。
ここで、制御部301は、図7の処理に続いて、図8の処理を実行する。
ステップS109において、制御部301は、アンテナ駆動部206に指令してANT200の偏波角(POL)を90度回転し、逆方向のV偏波に調整する。
ステップS110において、制御部301は、逆方向のV偏波のビーコン信号のBCN周波数を測定する(測定処理)。具体的には、制御部301は、ANT200、OMT201、LNB203およびDIV204を介して受信するV偏波のビーコン信号のBCN周波数をMON304で測定する。
ステップS111において、制御部301は、衛星DB305を参照して、ステップS110で測定したV偏波のBCN周波数が正しいか否かを判定する(判定処理)。そして、制御部301は、判定結果が正しい(YES)場合、次のステップS112の処理に進み、正しくない(NO)場合、図7の(B)からステップS101の処理に戻って同様の処理を実行する。具体的には、ステップS104の粗調整により、図3および図4で説明した東経X度の目的の通信衛星103を捕捉している場合、ステップS110で測定されるV偏波のBCN周波数はBHzとなり、判定結果はYESである。もし、ステップS104の粗調整により、東経Y度の通信衛星113(1)を誤って捕捉している場合、ステップS105で測定されるV偏波のBCN周波数はAHzとなり、判定結果はNOである。
ステップS112において、制御部301は、逆方向のV偏波のテレメトリ信号のTLM周波数を測定する(測定処理)。具体的には、制御部301は、ANT200、OMT201、LNB203およびDIV204を介して受信するV偏波のテレメトリ信号のTLM周波数をMON304で測定する。
ステップS113において、制御部301は、衛星DB305を参照して、ステップS112で測定したV偏波のTLM周波数が正しいか否かを判定する(判定処理)。そして、制御部301は、判定結果が正しい(YES)場合、次のステップS114の処理に進み、正しくない(NO)場合、図7の(B)からステップS101の処理に戻って同様の処理を実行する。具体的には、ステップS104の粗調整により、図3および図4で説明した東経X度の目的の通信衛星103を捕捉している場合、ステップS112で測定されるV偏波のテレメトリ信号のTLM周波数はDHzとなり、判定結果はYESである。もし、ステップS104の粗調整により、東経Y度の通信衛星113(1)を誤って捕捉している場合、ステップS112で測定されるV偏波のテレメトリ信号のTLM周波数はBHzとなり、判定結果はNOである。
ステップS114において、制御部301は、アンテナ駆動部206に指令してANT200の偏波角(POL)を逆方向のV偏波から正対方向のH偏波に戻す。そして、制御部301は、MON304で測定するH偏波の受信レベルが最大になるように、アンテナ駆動部206を制御してANT200のAZ、ELおよびPOLの3方向を微調整する(微調整処理)。ここで、本実施形態では、制御部301は、H偏波のビーコン信号の受信レベルが最大になるように微調整を行うが、H偏波のテレメトリ信号の受信レベルが最大になるように微調整を行ってもよい。あるいは、制御部301は、逆方向のV偏波のビーコン信号またはテレメトリ信号の受信レベルが最大になるように微調整を行ってもよいが、正対方向のH偏波に戻す際に若干のずれが生じる可能性がある。
ステップS115において、制御部301は、アンテナ方向の調整を完了する。
このようにして、本実施形態に係る衛星通信システム100は、アンテナ方向の粗調整後に微調整を行うことにより、目的の通信衛星103の方向にアンテナを向けることができる。特に、本実施形態に係る衛星通信システム100は、目的の通信衛星103の周辺にビーコン信号の周波数が重複する他の通信衛星がある場合でも、偏波を含むテレメトリ信号の周波数との組み合わせにより、目的の通信衛星103を確実に捕捉できる。
なお、親局装置101の自動捕捉制御部207は、主にコンピュータとプログラムによっても実現できる。プログラムは、記憶媒体に予め記憶されていてもよいし、ネットワークを通して提供されてもよい。
以上、実施形態で説明したように、本発明に係る衛星通信システムにおけるアンテナ方向調整方法、可搬局装置およびアンテナ方向調整プログラムは、広域大規模災害などにより基地局装置の制御信号が利用できない場合でも、ビーコン信号およびテレメトリ信号の周波数の組み合わせに基づいて、目的の通信衛星を確実に捕捉することができる。
100,800・・・衛星通信システム;101・・・可搬局装置(親局装置);102・・・可搬局装置(子局装置);103,113,803・・・通信衛星;151・・・衛星情報テーブル;200,400・・・ANT;201,401・・・OMT;202,402・・・BUC;203,403・・・LNB;204・・・DIV;205,404・・・MODEM;206,405・・・アンテナ駆動部;207,406・・・自動捕捉制御部;301,501・・・制御部;302,502・・・方位センサ;303,503・・・位置センサ;304・・・MON;305・・・衛星DB;801・・・可搬局装置;802・・・基地局装置

Claims (5)

  1. 可搬局装置を備える衛星通信システムにおけるアンテナ方向調整方法であって、
    前記可搬局装置は、
    複数の通信衛星の経度、ビーコン信号およびテレメトリ信号に関する衛星情報から取得する目的の通信衛星の経度と、自装置の設置場所とに基づいて、目的の通信衛星に対するアンテナ方向を算出し、算出したアンテナ方向に自装置のアンテナ方向を粗調整する粗調整処理と、
    粗調整したアンテナ方向で受信するビーコン信号およびテレメトリ信号のそれぞれの周波数を測定する測定処理と、
    前記衛星情報に記憶された目的の通信衛星のビーコン信号およびテレメトリ信号のそれぞれの周波数を参照して、前記測定処理で測定したビーコン信号およびテレメトリ信号のそれぞれの周波数が正しいか否かを判定する判定処理と、
    前記測定処理で測定したビーコン信号およびテレメトリ信号のそれぞれの周波数が正しい場合、粗調整したアンテナ方向で受信するビーコン信号の受信レベルが最大になるように、アンテナ方向を微調整する微調整処理と
    を実行することを特徴とするアンテナ方向調整方法。
  2. 請求項1に記載のアンテナ方向調整方法において、
    前記ビーコン信号および前記テレメトリ信号に関する情報は、ビーコン信号および前記テレメトリ信号のそれぞれの正対方向の偏波の周波数と逆方向の偏波の周波数であり、
    前記粗調整処理および前記微調整処理で行うアンテナ方向は、目的の通信衛星に対するアンテナの方位角、仰角および偏波角である
    ことを特徴とするアンテナ方向調整方法。
  3. 衛星通信システムで用いる可搬局装置において、
    複数の通信衛星の経度、ビーコン信号およびテレメトリ信号に関する衛星情報を記憶する記憶部と、
    通信衛星からビーコン信号およびテレメトリ信号を受信して、それぞれの周波数を測定する測定部と、
    前記衛星情報から取得する目的の通信衛星の経度と、自装置の設置場所とに基づいて、目的の通信衛星に対するアンテナ方向を算出し、アンテナ方向の駆動部を制御して算出したアンテナ方向に自装置のアンテナ方向を粗調整する粗調整処理と、前記衛星情報に記憶された目的の通信衛星のビーコン信号およびテレメトリ信号のそれぞれの周波数を参照して、前記測定部が測定したビーコン信号およびテレメトリ信号のそれぞれの周波数が正しいか否かを判定する判定処理と、前記測定部が測定したビーコン信号およびテレメトリ信号のそれぞれの周波数が正しい場合、粗調整したアンテナ方向で受信するビーコン信号の受信レベルが最大になるように、アンテナ方向を微調整する微調整処理と、を実行する制御部と
    を有することを特徴とする可搬局装置。
  4. 請求項3に記載の可搬局装置において、
    前記ビーコン信号および前記テレメトリ信号に関する情報は、ビーコン信号および前記テレメトリ信号のそれぞれの正対方向の偏波の周波数と逆方向の偏波の周波数であり、
    前記粗調整処理および前記微調整処理で行うアンテナ方向は、目的の通信衛星に対するアンテナの方位角、仰角および偏波角である
    ことを特徴とする可搬局装置。
  5. 請求項3または請求項4に記載の前記可搬局装置の前記制御部が行う処理をコンピュータに実行させることを特徴とするアンテナ方向調整プログラム。
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