JP7431438B2 - 緑色葉物野菜の葉の厚さ及び大きさの制御方法 - Google Patents

緑色葉物野菜の葉の厚さ及び大きさの制御方法 Download PDF

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特許法第30条第2項適用 2019年2月7日公開,https://www.biorxiv.org/content/10.1101/543538v1 https://www.biorxiv.org/content/10.1101/543538v1.full.pdf
特許法第30条第2項適用 2019年3月10日公開,http://c-bio.mine.utsunomiya-u.ac.jp/%E5%85%90%E7%8E%89-%E8%B1%8A-%E5%87%86%E6%95%99%E6%8E%88%E3%81%AE%E7%A0%94%E7%A9%B6%E3%82%B0%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%97%E3%81%8C%E8%91%89%E3%81%AE%E3%80%8C%E5%A4%A7%E3%81%8D%E3%81%95%E3%80%8D%E3%81%A8/
特許法第30条第2項適用 2019年4月8日公開,http://c-bio.mine.utsunomiya-u.ac.jp/%E5%85%90%E7%8E%89-%E8%B1%8A-%E5%87%86%E6%95%99%E6%8E%88%E3%81%8C%E5%B9%B3%E6%88%9031%E5%B9%B4%E5%BA%A6%E7%A7%91%E5%AD%A6%E6%8A%80%E8%A1%93%E5%88%86%E9%87%8E%E3%81%AE%E3%80%8C%E6%96%87%E9%83%A8/
特許法第30条第2項適用 Elsevier B.V.,Scientia Horticulturae,volume251,page20-24,2019年6月1日発行
本発明は、レタス等の緑色葉物野菜の苗に強度の異なる青色光を、所定温度で一定期間照射し、細胞内の葉緑体の配置を調節することを特徴とする葉の厚さ及び大きさを制御する方法に関する。
光の情報(強さ,入射方向,波長など)に従って葉緑体が細胞内での配置や存在場所を変える現象は葉緑体光定位運動[chloroplast photo-relocation movement]と呼ばれ、一般的には青色光によって誘導される。弱光(数W m-2 s-1以下)下では葉緑体は葉の表面側に集合し、強光(10 W m-2 s-1以上)下では葉緑体は光を避けて光と平行な細胞壁面に逃避する。前者を集合反応(弱光反応)、後者を逃避反応(強光反応)という。集合反応は光合成の効率を上げ、逃避反応は光傷害を避けるという生理学的意義がある。
光合成の最適化のために、葉緑体光定位運動を利用して、植物のサイズを制御し、種子の収量改善の試みがなされている。光合成の最適化のため、葉緑体の細胞内配置は、光や温度などの環境条件に応じて変化する(非特許文献1及び2)。例えば、暖かい条件における強い光の下では、葉緑体は、逃避反応と呼ばれるプロセスで、光から遠ざかることにより、垂層細胞壁に沿って局在化する(非特許文献2)。同様に、寒冷条件下における弱い光の下では、葉緑体は寒冷逃避反応と呼ばれるプロセスによって、垂層細胞壁に沿って局在化する(非特許文献3及び4)。逃避反応及び寒冷逃避反応は、それぞれ暖かい条件及び寒冷条件において、光阻害によって引き起こされる葉緑体の光損傷を軽減する可能性がある(非特許文献5及び6)。さらに、暖かい条件下における弱い光の下では、葉緑体は集合反応と呼ばれるプロセスで光に向かって移動することにより、周辺細胞壁に沿って局在化する。生理学的に、集合反応は光合成を最大化すると考えられている。このことは、葉緑体が異常な位置にあることが示される様々なシロイヌナズナ変異体間の比較を通じて、実験的に最近確認された理論と一致する(非特許文献7)。しかしながら、野菜など経済的に重要な種における野生型の植物の成長に関しては、これらの反応の影響は、いまだ確認されていない。
葉緑体の逃避反応及び集合反応は、青色光(BL)視細胞フォトトロピン青色光(BL)受容体フォトトロピンを介して行われる(非特許文献8~10)。最近、本発明者らは、フォトトロピンが寒冷逃避反応を介する温度センサー分子であることを報告した(非特許文献11)。また最近、光の情報(強さ,波長など)を利用した植物の栽培方法や育成方法が多数提案されている。
例えば、380nm以上490nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する発光素子と、前記発光素子からの光により励起されて580nm以上680nm以下の範囲内に少なくとも一つの発光ピーク波長を有する光を発する赤色蛍光体を備え、400nm以上490nm以下の範囲における青色光の光量子束Bに対する620nm以上700nm以下の範囲における赤色光(RL)の光量子束Rの比(R/B)が20を超えて200以下である発光装置を用いた植物の成長を促進可能な植物栽培方法が提案されている(特許文献1)。
また、植物苗に人工光を照射して生育を促進させる植物苗の栽培方法であって、青色照明光を連続的に照射する期間(A)を有し、前記青色照明光を連続的に照射する期間(A)を行う時間の30以上80%未満が、青色照明光及び赤色照明光を連続的に照射する期間(A-1)である、徒長が無く、茎の太い、定植後にも生育が良好な苗を栽培できる植物苗の栽培方法が提案されている(特許文献2)。
また、果菜類の苗に対して、人工光である赤色照明光と青色照明光とを、交互かつ繰り返し照射して行う育苗方法であって、栽培面に照射する赤色照明光、青色照明光の日積算光合成有効光量子量を、それぞれ10~25mol/m・day-1、4~15mol/m・day-1とし、前記赤色照明光、前記青色照明光の一日当たりの照射時間の合計を、16~24時間とする、定植後に根がよく発達し、均質で活着がよく、生育が良好な高品質の果菜類苗を安価に育苗することが可能な、果菜類苗の育苗方法が提案されている(特許文献3)。
そしてまた、赤色光照明光を植物に照射する赤色光照射ステップS1と、青色光照明光を植物に照射する青色光照射ステップS2と、を行う植物栽培方法において、各ステップの照射時間を3時間以上48時間未満とし、赤色光照射ステップと、青色光照射ステップと、からなる照射サイクルC1、C2を一定期間内に少なくとも2サイクル以上行い、かつ照射サイクルにおいて赤色光照射ステップ又は青色光照射ステップのいずれか一つのステップで手順を開始する植物栽培方法であって、簡便で、エネルギー効率が良く、優れた生長促進効果などの植物栽培効果を得ることが可能な人工光照射による植物栽培方法が提案されている(特許文献4)。
さらに、植物に太陽光を照射する領域と、赤色光および/または青色光を含む人工光を植物に照射する光照射部と、前記光照射部を制御して、赤色光を植物に照射するステップと、青色光を植物に照射するステップとを一定期間内に別個独立に実行する制御部とを備える植物栽培装置を用いる、人工光と太陽光とを植物に照射して生長を促進させることができるとともに、優れたエネルギー効率が得られる植物栽培方法が提案されている(特許文献5)。
特開2019-161076号公報 特開2018-121589号公報 特開2017-169509号公報 特開2015-142585号公報 特開2014-166178号公報
Fujii and Kodama、Plant Signaling & Behavior 2018; 13(3): e1411452. (3 pages); Wada, Plant Sci. 2013;210:177-182 Kodama et al., J Plant Res. 2008;121:441-8 Ogasawara et al., Plant Cell Environ. 2013;36:1520-8. Fujii et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 2017;114:9206-11 Kasahara et al., Nature 420: 829-832, 2002 Gotoh et al. Plant Physiol 178:1358-1369、2018 Jarillo et al.Nature 410: 952-954,2001 Kagawa et al.,Science 16 Mar: Vol. 291, Issue 5511, pp. 2138-2141,2001 Sakai et al,,Proc Natl Acad Sci USA 98: 6969-6974, 2001 Fujii et al., PNAS first published August 7, 2017 https://doi.org/10.1073/pnas.1704462114 2017
集合反応では、葉緑体は弱い青色光に向かって移動し、周辺細胞壁に沿って局在する。対照的に、逃避反応では、葉緑体は強い青色光から遠ざかり、垂層細胞壁に沿って局在する。集合反応は光の捕獲を最大化し、逃避反応は光損傷を低減する。葉緑体の細胞内配置は、光合成を最適化するために重要であり、光合成に影響を及ぼす別の要因である葉の形態を決定するレギュレーターと共通のシグナルを有する可能性がある。本発明の課題は、葉緑体の細胞内配置を使用して、レタス(Lactuca sativa)の将来の葉の形態(葉の厚さ及び大きさ)を予測することにある。
本発明者ら上記課題を解決するために鋭意研究した。多くの植物種では、葉緑体配置は青色光(BL)の強度の変化と温度の変化とに応じて変更される。植物成長施設(又は植物工場)のような人工的な条件下では、温度が通常一定に保たれるため、葉緑体配置はBL強度によってのみ影響を受けることになる。本発明者らは、植物工場で栽培される野菜類について、植物の葉緑体配置の影響を調べるために、一定の暖かい温度において、逃避反応を誘導する強いBLの下で育ったレタス(Lactuca sativa)と、集合反応を誘導する弱いBLの下で育ったレタスにおける影響を分析した。
すなわち、レタスの苗に適切な強度の青色光を照射することでレタス細胞の集合反応又は逃避反応を誘導し、植物の成長を観察したところ、集合反応を誘発する弱い青色光に応じて葉の面積が増加し、逃避反応を誘発する強い青色光に応じて葉の厚さが増加することを見いだし、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下の事項により特定されるものである。
(1)緑色葉物野菜の苗に強度の異なる青色光を、所定温度で一定期間照射し、細胞内の葉緑体の配置を調節することを特徴とする葉の厚さ及び大きさを制御する方法。
(2)緑色葉物野菜がレタスであることを特徴とする上記(1)記載の葉の厚さ及び大きさを制御する方法。
(3)青色光が、青色発光ダイオードに由来する青色光であることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の葉の厚さ及び大きさを制御する方法。
(4)強度の異なる青色光に加えて、強度の異なる赤色光を同時に照射することを特徴とする上記(1)~(3)のいずれか記載の葉の厚さ及び大きさを制御する方法。
(5)赤色光が、赤色発光ダイオードに由来する赤色光であることを特徴とする上記(4)記載の葉の厚さ及び大きさを制御する方法。
(6)強度の異なる青色光が、5又は50μmol・m-2・S-1であることを特徴とする上記(1)~(5)のいずれか記載の葉の厚さ及び大きさを制御する方法。
(7)強度の異なる赤色光が、125又は250μmol・m-2・S-1であることを特徴とする上記(4)~(6)のいずれか記載の葉の厚さ及び大きさを制御する方法。
(8)所定の温度が、15~25℃であることを特徴とする上記(1)~(7)のいずれか記載の葉の厚さ及び大きさを制御する方法。
(9)一定期間が、14~28日間であることを特徴とする上記(1)~(8)のいずれか記載の葉の厚さ及び大きさを制御する方法。
(10)植物工場又は温室内で細胞内の葉緑体の配置を調節することを特徴とする上記(1)~(9)のいずれか記載の葉の厚さ及び大きさを制御する方法。
本発明によると、緑色葉物野菜の苗に照射する青色光の強度を変えるだけで、細胞内の葉緑体の配置を調節することにより、緑色葉物野菜の葉の厚さ及び大きさを制御することが可能となる。
図1A(TopとBottom)は、BL5を3時間照射したレタス細胞における葉緑体の配置を示す。図1B(TopとBottom)は、BL50を3時間照射したレタス細胞における葉緑体の配置を示す。 種々の波長の組合せの照射条件下で、栽培したレタスの写真である。図2Aは、BL5とRL125を照射したレタス、図2Bは、BL50とRL125を照射したレタス、図2Cは、BL5とRL250を照射したレタス、図2Dは、BL50とRL250を照射したレタスである。白いバーは10cmを示す。 BL5又はBL50と、RL125とを組み合わせて照射した場合(図3A)、BL5又はBL50と、RL250とを組み合わせて照射した場合(図3B)の葉の面積のグラフである。BL5又はBL50と、RL125とを組み合わせて照射した場合(図3C)、BL5又はBL50と、RL250とを組み合わせて照射した場合(図3D)の葉の厚さのグラフである。 BL5又はBL50と、RL125とを組み合わせて照射した場合(図4A)、BL5又はBL50と、RL250とを組み合わせて照射した場合(図4B)の地上部バイオマスの生重量(新鮮重量)のグラフである。BL5又はBL50と、RL125とを組み合わせて照射した場合(図4C)、BL5又はBL50と、RL250とを組み合わせて照射した場合(図4D)の地上部バイオマスの乾燥重量のグラフである。
本発明の緑色葉物野菜の葉の厚さ及び大きさの制御方法は、緑色葉物野菜の苗に強度の異なる青色光、例えば5μmol・m-2・S-1の青色光と50μmol・m-2・S-1の青色光を、所定温度で一定期間照射し、細胞内の葉緑体の配置を調節することを特徴とする。上記青色光としては、青色発光ダイオードに由来する青色光を好適に挙げることができ、例えばピークを波長480nm付近に有する波長440~520nm範囲の青色光を具体的に示すことができる。
上記強度の異なる青色光(BL)としては、4~6μmol・m-2・S-1、好ましくは5μmol・m-2・S-1の青色光(弱光)と、40~60μmol・m-2・S-1、好ましくは50μmol・m-2・S-1の青色光(強光)を挙げることができる。青色光(弱光)下では葉緑体は葉の表面側に集合し(集合反応)、青色光(強光)下では葉緑体は光を避けて光と平行な細胞壁面に逃避する(逃避反応)。また、青色光(弱光)を照射した場合、青色光(強光)を照射した場合に比べて、葉の面積が大きく、かつ地上部バイオマスの生重量も重くなることがわかった。他方、青色光(強光)を照射した場合、青色光(弱光)を照射した場合に比べて、葉の厚さが大きくなることがわかった。バイオマスの乾燥重量は、青色光(弱光)を照射した場合と、青色光(強光)を照射した場合とで、差異はなかった。
また、強度の異なる青色光に加えて、強度の異なる赤色光(RL)を同時に照射することが好ましい。前記青色光は葉緑体の配置の調節に寄与するが、赤色光は葉緑体の配置の調節に関与せず、光合成に寄与する。かかる赤色光としては赤色発光ダイオードに由来する赤色光を好適に挙げることができ、例えばピークを波長660nm付近に有する波長620~680nm範囲の赤色光を具体的に示すことができる。
上記強度の異なる赤色光としては、例えば120~130μmol・m-2・S-1、好ましくは125μmol・m-2・S-1の赤色光(弱光)と、240~260μmol・m-2・S-1、好ましくは250μmol・m-2・S-1の赤色光(強光)を挙げることができる。
上記緑色葉物野菜としては、レタス(キク科)、シュンギク(キク科)、モロヘイヤ(アオイ科)、キャベツ(アブラナ科)、ハクサイ(アブラナ科)、コマツナ(アブラナ科)、チンゲンサイ(アブラナ科)、ミズナ(アブラナ科)、ルッコラ(アブラナ科)、クレソン(アブラナ科)、エゴマ(シソ科)、バジル(シソ科)、シソ(シソ科)、ツルムラサキ(ツルムラサキ科)、ホウレンソウ(ヒユ科)、ニラ(ユリ科)などを挙げることができるが、中でもレタスを好適に例示することができる。
上記所定の温度としては、緑色葉物野菜の種類によって異なるが、概ね15~25℃、好ましくは20℃を挙げることができる。各緑色葉物野菜の生育適温を以下例示する。レタス(15~20℃)、シュンギク(15~20℃)、モロヘイヤ(20~30℃)、キャベツ(15~20℃)、ハクサイ(18~20℃)、コマツナ(15~25℃)、チンゲンサイ(18~20℃)、ミズナ(15~20℃)、ルッコラ(15~25℃)、クレソン(15~20℃)、エゴマ(20~25℃)、バジル(20~25℃)、シソ(20~23℃)、ツルムラサキ(20~30℃)、ホウレンソウ(15~20℃)、ニラ(15~25℃)である。
上記一定の期間としては、14~28日間、好ましくは21日間を挙げることができる。栽培期間が14日未満であると本発明の効果が奏しえない可能性があるが、28日を超えても本発明の効果を奏する可能性がある。
このように緑色葉物野菜は、所定の温度で一定の期間栽培されるが、栽培は光と温度のコントロールが可能な植物工場や温室内で行われる。植物工場や温室内など内部環境をコントロールした閉鎖的又は半閉鎖的な空間で緑色葉物野菜を計画的に栽培することにより、緑色葉物野菜の葉の厚さや大きさを効率よく制御することができる。また、植物工場や温室内などでの還流式水耕栽培も有利に実施することができる。
以下実施例により本発明を説明するが、本発明の技術的範囲はかかる実施例によって限定されるものではない。
1.材料と方法
1-1 植物材料と成長条件
レタス(Lactuca sativa)種子(No. 03503、株式会社トーホク、栃木、日本)を使用した。 種子は土壌に植えられ栽培された。苗はインキュベーター(IJ101、ヤマト科学株式会社. 東京、日本)内で20°Cにて21日間、青色発光ダイオード(LED)及び赤色LED(ISL-150x150-H4RB、CCS Inc.、京都、日本)の光の下で成長した。
1-2 葉緑体の配置決定の観察
葉緑体を観察するために、温度と照度の切り替えができる人工気象器(LH-240SP、株式会社日本医化器械製作所、大阪、日本、)内で、レタスの苗を、蛍光灯の白色光の下で18日間成長させた後、弱いBL(5μmolm-2-1:BL5)又は強いBL(50μmolm-2-1:BL50)下に移行した。葉肉細胞を明確に観察するために、切り離したレタスの葉を脱気し、水を浸透させた。 葉肉細胞は、光学顕微鏡(BX60、オリンパス、東京、日本)を用いて、100倍の油浸対物レンズ(UPlanApo、100×/1.35オイル)の下で観察した。cellSensソフトウェア(オリンパス)を搭載したデジタルカメラ(DP72;オリンパス)を使用して画像を撮影した。
レタス細胞の葉緑体配置を光学的に制御するために、弱いBLとして5μmol m-2-1(BL5)を使用し、強いBLとして50μmolm-2-1(BL50)を使用して、レタスの成長を比較した。レタス細胞にBL5を3時間照射すると、葉緑体は葉肉細胞の上部の細胞周辺に局在し、細胞の底部の周辺細胞壁に沿って集合した(図1A Bottom)。レタス細胞において、BL5が誘導する葉緑体配置は、強い日光の下で成長する植物種において、弱い光によって誘導される配置(Higa and Wada、Plant Cell Environ. 2016, 39:871-82; Ishishita et al. J Plant Res. 2016, 129:175-87.)と類似する。レタス細胞にBL50を3時間照射すると、葉緑体が周辺位置から脱出した(図1B)。以下、BL5を集合条件と呼び、BL50を逃避条件と呼ぶこととする。なお、15及び20℃においては、葉緑体はBL5で集合し、BL50及びBL500で逃避し、10℃においては、BL5、BL50及びBL500のいずれも逃避することを確かめた。
レタスについて、より長期に栽培する場合には、光合成に十分な光エネルギーを提供する必要があるため、赤色光125μmol-2-1(RL125)又は250μmol-2-1(RL250)を、BL5とBL50とにそれぞれ追加して、レタスの苗を、20℃にて3週間栽培した。 なお、BL5とRL62.5では胚軸が徒長する異常形態となった。
(結果)
図2から明らかなとおり、BL5とRL125を照射したレタス(図2A)と、BL5とRL250を照射したレタス(図2C)が、BL50とRL125を照射したレタス(図2B)と、BL50とRL250を照射したレタス(図2D)よりも、成長が促進しているように思われたので、結果を定量的に評価するために、葉の面積、厚さ、及びバイオマスについて測定を行った。
葉の面積を測定するために、レタスの葉を透明なプラスチックフォルダーに挟んで平らにし、スキャナー(imageRUNNER ADVANCE C5045、キャノン株式会社)を使用して画像を撮影した。 画像から、ImageJによって葉の面積を測定し、平均値と標準偏差とを計算した。 葉の厚さは、デジタルノギス(MonotaRO Co.、Ltd.、日本)を使用して、平均値と標準偏差とを計算した。 バイオマスを測定するために、収穫されたレタスの、地上のバイオマスを生重量として測定し、その後、乾燥重量の測定のために105℃にてオーブン乾燥した。 重量の平均値と標準偏差とを計算した。葉の面積の測定結果を図3A及びBに示す。葉の厚さの測定結果を図3C及びDに示す。
[結果]
(葉面積)
BL5又はBL50と、RL125とを組み合わせて照射した場合(図3A)、BL5又はBL50と、RL250とを組み合わせて照射した場合(図3B)のいずれにおいても、葉面積は、BL5が、BL50よりも有意に大きかった。
(葉の厚さ)
BL5又はBL50と、RL125とを組み合わせて照射した場合(図3C)、BL5又はBL50と、RL250とを組み合わせて照射した場合(図3D)のいずれにおいても、葉の厚さは、BL50が、BL5よりも有意に大きかった。なお、すべてのパネルで、アスタリスクは条件間の静的な有意差を示した(生徒のt検定、P<0.01)。バーは標準偏差を示す。
以上の結果は、BL5は葉の面積を大きくし、BL50は葉の厚さを厚くすることを示すものであった。
(バイオマスの測定)
BL5又はBL50と、RL125とを組み合わせて照射した場合(図4A)、BL5又はBL50と、RL250とを組み合わせて照射した場合(図4B)のいずれにおいても、地上部バイオマスの生重量は、BL5が、BL50よりも有意に重かった。すなわち、アスタリスクは、有意差を示す(スチューデントt検定、P <0.01)。
しかし、バイオマスの乾燥重量については、BL5又はBL50と、RL125とを組み合わせて照射した場合(図4C)、BL5又はBL50と、RL250とを組み合わせて照射した場合(図4D)のいずれにおいても、BL5とBL50の値はほぼ同じであり、集合条件(BL5)及び逃避条件(BL50)下において、正味のバイオマス生産量は同等であることが示された。すなわち、スチューデントt検定は、2つのサンプル間に有意差がないことを示した(図4(C)でP=0.86、図4(D)でP=0.63)。なお、BL500とRL250、及びBL50とRL500では、乾燥重量でばらつき(標準偏差)が大きかった(20℃)。
今回の結果は、野生型植物と葉緑体の配置に関する突然変異を有するシロイヌナズナを使用した以前の研究で、集合反応を誘発する条件で葉面積とバイオマス(新鮮及び乾燥重量)が増加したという研究(非特許文献7)とは異なる結果が出たが、BL5とBL50という光の条件のみで比較した結果として重要と考えらえる。
2つのBL条件下で成長した植物の新鮮な重量(生重量)を比較すると、BL5で成長した植物の重量はBL50で成長した植物の重量よりも顕著に重かった(図4A及びB)。
2つの条件下での乾燥重量が同等であったことを考えると(図4C及びD)、これはBL5で成長したレタスの水分含有量が高いことを意味する。BLの強度が高いほど気孔の開き具合が大きくなるため(Kinoshita et al.Nature 2001, 414:656-60.)、BL50の状態では気孔がさらに開き、気孔からの蒸散が大きくなり、水分量が少なくなると考えられる。
葉の形態は、集合条件(BL5)下のレタスと、逃避条件(BL50)下のレタスとで大きく異なったが、乾燥重量は同程度であった(図4C及びD)。したがって、2つの条件下での植物の光合成生産は同じように思われ、BL50と比較してBL5の下では、レタスに何らかの形の代償成長が起こることを示唆している(つまり、恒常性)。この代償的な成長は、レタスの成長中に葉の光を取り込むための様々な戦略に基づいている可能性がある。
これらの結果は、葉緑体の配置がレタスの葉の形態を制御するシグナルに応答することを示唆するものである。集合反応は葉の面積を拡げるシグナルとして機能し、逃避反応は、葉の厚さを厚くするシグナルとして機能する。かかる結果に基づくと、葉緑体の配置を観察することにより、一定条件下におけるレタスの将来の葉の形態を予測できるとともに、光の条件を変えることにより葉の形態を調節できることになる。葉の形態は多くの食用作物にとって重要であることを考えると、このような制御方法は、経済的に重要な野菜等の栽培に有用である。
緑色葉物野菜の葉の厚さ及び大きさを制御することができる本発明は、野菜の栽培・育成という農業の分野で有用である。

Claims (7)

  1. 緑色葉物野菜の苗に、強度4~6μmol・m -2 ・S -1 の青色光又は強度40~60μmol・m -2 ・S -1 青色光と、強度120~130μmol・m -2 ・S -1 の赤色光とを、15~25℃の温度で14~28日間照射し、細胞内の葉緑体の配置を調節する方法。
  2. 緑色葉物野菜がレタスであることを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. 青色光が、青色発光ダイオードに由来する青色光であることを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
  4. 赤色光が、赤色発光ダイオードに由来する赤色光であることを特徴とする請求項1~3のいずれか記載の方法。
  5. 強度4~6μmol・m -2 ・S -1 青色光が、強度μmol・m -2 ・S -1 の青色光であり、強度40~60μmol・m -2 ・S -1 の青色光が、強度50μmol・m-2・S-1 の青色光であることを特徴とする請求項1~のいずれか記載の方法。
  6. 強度120~130μmol・m -2 ・S -1 赤色光が、強度125μmol・m-2・S-1 の赤色光であることを特徴とする請求項のいずれか記載の方法。
  7. 植物工場又は温室内で細胞内の葉緑体の配置を調節することを特徴とする請求項1~のいずれか記載の方法。
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