[00194] 以下で添付図面を参照して例示的な実施形態について記載する。本開示の精神及び教示から逸脱することなく多くの異なる形態及び実施形態が可能であるので、本開示は本明細書に述べられる例示的な実施形態に限定されるものと解釈するべきではない。これらの例示的な実施形態は、本開示が網羅的かつ完全であるように、かつ本開示の範囲を当業者に伝えるように提供される。図面において、層及び領域の大きさ及び相対的な大きさは明確さのために誇張される場合がある。本記載全体を通して、同様の参照番号は同様の要素を指す。
[00195] 他の規定がある場合を除いて、本明細書で用いられる全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。更に、一般的に使用される辞書で定義されるような用語は、本出願及び関連技術の文脈における意味と一致する意味を有すると解釈するべきであり、本明細書で明示的に規定される場合を除いて理想化された意味又は過度に形式的な意味に解釈するべきでないことは理解されよう。本明細書における本発明の記載で使用される用語は、特定の実施形態を記載する目的だけのものであり、本発明を限定することは意図されない。本明細書に記載されるものと同様又は同等の多くの方法及び物質が本開示の実施において使用可能であるが、本明細書ではいくつかの例示的な物質及び方法のみを記載する。
[00196] 本明細書で言及される全ての公報、特許出願、特許、又は他の引例は、全体が援用により本願に含まれる。用語に矛盾がある場合は、本明細書が支配する。
[00197] デバイス、システム、方法等を含む本開示の様々な態様は、1つ以上の例示的な実施を参照して説明され得る。本明細書で用いる場合、「典型的な(exemplary)」及び「例示的な(illustrative)」という用語は、「例、インスタンス、又は例示として機能すること」を意味し、本明細書に開示される他の実施よりも優先される又は有利であると必ずしも解釈するべきではない。更に、本開示又は本発明の「実施(implementation)」又は「実施形態(embodiment)」という場合は、その1つ以上の実施形態に対する具体的な言及を含み、その逆も同様であり、以下の記載でなく添付の特許請求の範囲によって示される本発明の範囲を限定することなく説明のための例を与えることが意図される。
[00198] 本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、内容上明らかに他の意味が規定される場合を除いて複数の言及を含むことに留意するべきである。従って、例えば「タイル(a tile)」という場合は、1つ、2つ、又はそれ以上のタイルを含む。同様に、複数の指示対象に対する言及は、内容上及び/又は文脈上明らかに他の意味が規定される場合を除いて、単一の指示対象及び/又は複数の指示対象を含むと解釈するべきである。従って、「タイル(tiles)」という場合は、必ずしも複数のそのようなタイルを必要としない。活用とは無関係に、本明細書では1つ以上のタイルが想定されることは認められよう。
[00199] 本出願全体を通して、「~できる(can)」及び「~し得る(may)」が使用される場合、これは強制の意味(すなわち「~しなければならない(must)」を意味する)でなく、許容の意味(すなわち「~する可能性がある(having the potential to)」を意味する)で用いられる。更に、「含んでいる(including)」、「有している(having)」、「伴っている(involving)」、「含有している(containing)」、「~によって特徴付けられる(characterized by)」という用語、それらの変形(例えば「含む(includes)」、「有する(has)」、「伴う(involves)」、「含有する(contains)」等)、及び、特許請求項を含めて本明細書で使用される同様の用語は、包含的である及び/又はオープンエンドであるものとし、「備えている(comprising)」という言葉及びその変形(例えば「備える(comprise、comprises)」と同じ意味を有するものとし、例えば、言及されていない追加の要素又は方法ステップを除外しない。
[00200] 本明細書で使用される場合、「上部(top)」、「下部(bottom)」、「左(left)」、「右(right)」、「上(up)」、「下(down)」、「上方(upper)」、「下方(lower)」、「内(inner)」、「外(outer)」、「内側(internal)」、「外側(external)」、「内部(interior)」、「外部(exterior)」、「近位(proximal)」、「遠位(distal)」、「前方(forward)」、「後方(reverse)」等の方向の用語及び/又は任意の用語は、単独で用いて相対的な方向及び/又は方位を示すことができ、明細書、発明、及び/又は特許請求の範囲を含む本開示の範囲を限定することは意図されない場合がある。
[00201] ある要素が別の要素に「結合されている」、「接続されている」、又は別の要素に「応じる」、又は別の要素「の上にある」という場合、この要素は、別の要素に直接結合されるか、接続されるか、応じるか、もしくは上にある可能性があり、又は介在する要素も存在する可能性があることは理解されよう。これに対して、ある要素が別の要素に「直接結合されている」、「直接接続されている」、「直接応じる」、又は「直接上にある」という場合、介在する要素は存在しない。
[00202] 本発明の概念の例示的な実施形態について、例示的な実施形態の理想的な実施形態(及び中間構造)の概略図である断面図を参照して本明細書で説明する。このため、例えば製造技法及び/又は公差の結果として、図示された形状からのばらつきが予想される。従って、本発明の概念の例示的な実施形態は本明細書に示される領域の特定の形状に限定されると解釈するべきではなく、例えば製造の結果として生じる形状の逸脱を含む。従って、図面に示された領域は性質上概略的であり、それらの形状はデバイスの領域の実際の形状を示すことは意図されず、例示的な実施形態の範囲を限定することも意図されない。
[00203] 様々な要素を記述するため、本明細書において「第1の」、「第2の」等の用語を使用できるが、これらの要素はこれらの用語によって限定されないことは理解されよう。これらの用語は単に1つの要素を別のものから区別するために用いられる。従って、本実施形態の教示から逸脱することなく、「第1の」要素は「第2の」要素と呼ばれる可能性がある。
[00204] また、本明細書に記載される様々な実施は、本開示の範囲から逸脱することなく、記載又は開示される他の任意の実施と組み合わせて利用できることは理解されよう。従って、本開示のいくつかの実施に従った生成物、部材、要素、デバイス、装置、システム、方法、プロセス、組成物、及び/又はキットは、本開示の範囲から逸脱することなく、本明細書に開示される他の実施(システム、方法、装置等を含む)に記載された特性、特徴、コンポーネント、部材、要素、ステップ等を含むか、組み込むか、又は他の方法で備えることができる。このため、1つの実施に関する特定の特徴に対する言及は、この実施内での適用のみに限定されると解釈するべきではない。
[00205] 本明細書で使用される見出しは、整理の目的のためだけのものであり、記載の範囲又は特許請求の範囲を限定するために用いることは意図されない。理解を容易にするため、可能な場合は複数の図に共通する同様の要素を示すために同様の参照番号を用いている。更に、可能な場合は様々な図において要素に同様の番号付けを用いている。更に、特定の要素の代替的な構成はそれぞれ、要素番号に付随した別個の文字を含み得る。
[00206] 本明細書で用いる場合、「約(about)」という用語は、ほぼ、~の領域内、概ね、又はおおよそを意味する。「約」という用語は、ある数値範囲と共に使用される場合、明記された数値よりも上及び下に境界を広げることによってその範囲を限定する。一般に、本明細書では「約」という用語を用いて、数値が5%大きく又は小さく限定される。そのような範囲が表された場合、別の実施形態は、一方の特定の値から及び/又は他方の特定の値までを含む。同様に、値の前に「約」を用いることでその値が近似値として表された場合、その特定の値が別の実施形態を形成することは理解されよう。更に、各範囲の終点は他の終点との関連で及び他の終点とは独立しての双方において重要であることは理解されよう。
[00207] 本明細書で用いる場合、「又は(or)」という言葉は、特定のリスト内のいずれか1つのメンバを意味し、そのリスト内のメンバの任意の組み合わせも含む。
[00208] 「サンプル」は、動物、ヒト動物を含むがこれには限定されない動物からの組織もしくは器官、細胞(対象(例えばヒト又は非ヒト動物)内のもの、対象から直接取得されたもの、もしくは培養中に維持されているか培養細胞株からの細胞)、細胞溶解物(もしくは溶解物画分)もしくは細胞抽出物、細胞、細胞物質、もしくはウイルス物質(例えばポリペプチドもしくは核酸)に由来する1つ以上の分子を含有する溶液、又は、非自然発生の核酸を含有する溶液を意味し、本明細書で記載されるようにアッセイされる。また、サンプルは、宿主もしくは病原体の細胞、細胞成分、又は核酸を含有する場合も含有しない場合もある任意の体液又は排出物(例えば、限定ではないが、血液、尿、便、唾液、涙、胆汁、又は脳脊髄液)であり得る。また、サンプルは、限定ではないが、土、水(新鮮な水、廃水等)、空気モニタリングシステムサンプル(例えばエアフィルタろ過剤で捕捉された物質)、表面のスワブ、及び媒介生物(例えば蚊、ダニ、ノミ等)を含む、環境サンプルも含み得る。
[00209] 本明細書で用いる場合、「核酸」という言葉は、自然発生又は合成のオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドを指し、DNA又はRNA又はDNA-RNAハイブリッド、一本鎖又は二本鎖、センス又はアンチセンスにかかわらず、ワトソンクリック塩基対合によって相補的核酸に対するハイブリダイゼーションが可能なものである。また、本発明の核酸は、ヌクレオチド類似体(例えばBrdU)及び非リン酸ジエステルインターヌクレオシド(internucleoside)結合(例えばペプチド核酸(PNA)又はチオジエステル(thiodiester)結合)も含み得る。特に、核酸は、限定はないが、DNA、RNA、mRNA、rRNA、cDNA、gDNA、ssDNA、dsDNA、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。
[00210] 「プローブ」、「プライマー」、又は「オリゴヌクレオチド」は、相補配列(「標的」)を含有する第2の核酸分子に対して塩基対合できる定義された配列の一本鎖核酸分子を意味する。得られるハイブリッドの安定性は、発生する塩基対合の長さ、GC含量、及び程度に依存する。塩基対合の程度は、プローブと標的分子との相補性の程度及びハイブリダイゼーション条件の厳密さの程度のようなパラメータに影響される。ハイブリダイゼーションの厳密さの程度は、温度、塩濃度、及びホルムアミド等の有機分子の濃度のようなパラメータに影響され、当業者に既知の方法によって決定される。プローブ、プライマー、及びオリゴヌクレオチドは、当業者に周知の方法により、放射能によって、蛍光によって、又は非放射性に、検出可能に標識することができる。dsDNA結合色素を用いてdsDNAを検出することができる。「プライマー」は特にポリメラーゼによって拡張されるように構成されるのに対し、「プローブ」又は「オリゴヌクレオチド」はそのように構成される場合もそうでない場合もあることは理解されよう。
[00211] 「dsDNA結合色素」は、二本鎖DNAに結合された場合、一本鎖DNAに結合された場合又は溶液中で遊離している場合とは異なるように蛍光を発する、通常はより強く蛍光を発する色素を意味する。dsDNA結合色素に言及するが、本明細書において任意の適切な色素を使用できることは理解されよう。そのいくつかの非限定的な例示の色素は、援用により本願に含まれる米国特許第7,387,887号に記載されている。核酸の増幅及び融解を検出するために他の信号生成物質を用いることも可能であり、例としては、当技術分野において既知の酵素、抗体等がある。
[00212] 「特異的にハイブリダイゼーションする」は、プローブ、プライマー、又はオリゴヌクレオチドが、極めて厳密な条件下で実質的に相補的な核酸(例えばサンプル核酸)を認識して物理的に相互作用(すなわち塩基対合)し、かつ、他の核酸とは実質的に塩基対合しないことを意味する。
[00213] 「極めて厳密な条件」は、典型的に、ほぼ融解温度(Tm)マイナス5℃(すなわちプローブのTmよりも5°低い)で発生することを意味する。機能上、極めて厳密な条件は、少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を同定するため用いられる。
[00214] 「溶解粒子」は、細胞、ウイルス、芽胞、及びサンプル内に存在し得る他の様々な物質の溶解のための粒子もしくはビーズを意味する。様々な例ではケイ酸ジルコニウム(「Zr」)又はセラミックビーズを用いるが、ガラス及び砂溶解粒子を含む他の溶解粒子も既知であり、この用語の範囲内である。「細胞溶解成分」という用語は、溶解粒子を含み得るが、当技術分野において既知の化学的溶解のための成分のような他の成分も含むことができる。
[00215] PCRは本明細書の例において使用される増幅方法であるが、プライマーを使用するいかなる増幅方法も適切であり得ることは理解されよう。そのような適切な手順には、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、鎖置換増幅(SDA:strand displacement amplification)、核酸塩基配列増幅(NASBA:nucleic acid sequence-based amplification)、カスケードローリングサークル増幅(CRCA:cascade rolling circle amplification)、DNAのループ媒介等温増幅(LAMP:loop-mediated isothermal amplification)、等温キメラプライマー核酸増幅(ICAN:isothermal and chimeric primer-initiated amplification of nucleic acid)、標的ベースヘリカーゼ依存増幅(HDA:target based-helicase dependent amplification)、転写媒介性増幅(TMA:transcription-mediated amplification)等が含まれる。従って、PCRという用語を使用する場合、他の代替的な増幅方法を含むことが理解されよう。個別サイクルなしの増幅方法では、複数のサイクル、倍加時間、又はクロッシングポイント(Cp:crossing point)で測定が行われる反応時間を使用することができ、本明細書に記載される実施形態では追加のPCRサイクルが加えられる追加の反応時間を加えることができる。これに応じてプロトコルを調整する必要があり得ることは理解されよう。
[00216] 本明細書における様々な例は人の標的及び人の病原体に言及するが、これらの例は単に説明のためのものである。本明細書に記載される方法、キット、及びデバイスを用いて、人のサンプル、家畜サンプル、工業サンプル、及び環境サンプルを含む、多種多様なサンプルから多種多様な核酸配列を検出及び配列決定することができる。
[00217] 本明細書に開示される様々な実施形態は、自己完結型の核酸分析パウチを用いて、例えば単一の閉鎖系における抗原及び核酸配列のような様々な生物学的物質の存在についてサンプルをアッセイする。パウチ及びこのパウチと共に使用される器具を含むそのようなシステムは、米国特許第8,394,608号、第8,895,295号、及び米国特許出願第2014-0283945号に、更に詳しく開示されている。これらは援用により本願に含まれる。しかしながら、そのようなパウチは単なる例示であり、本明細書で検討される核酸の調製及び増幅反応は、当技術分野において既知である様々な核酸の精製及び増幅システムを用いて、96ウェルプレート、他の構成のプレート、アレイ、カルーセル等を含む、当技術分野において既知の様々な開放系又は閉鎖系のサンプル容器のいずれにおいても実行できることは理解されよう。「サンプルウェル」、「増幅ウェル」、「増幅容器」等という用語を本明細書で用いるが、これらの用語は、これらの増幅システムで使用されるウェル、チューブ、及び他の様々な反応容器を包含することが意図される。一実施形態では、パウチを用いて複数の病原体のアッセイを行う。パウチは、例示的に閉鎖系においてサンプルウェルとして使用される1つ以上のブリスタを含み得る。例として、任意選択的に使い捨て可能なパウチ内で様々なステップを実行することができる。様々なステップは、核酸調製、一次大容量(primary large volume)マルチプレックスPCR、一次増幅生成物の希釈、及び、任意選択的なリアルタイム検出又は融解曲線分析のような増幅後分析で終わる二次PCRを含む。更に、本発明のパウチ内で様々なステップを実行できるが、特定の用途ではそれらのステップの1つ以上が省略され、それに応じてパウチ構成が変更され得ることは理解されよう。本明細書における多くの実施形態は第1段階増幅のためにマルチプレックス反応を使用するが、これは単なる例示であり、いくつかの実施形態では第1段階増幅がシングルプレックスであり得ることは理解されよう。1つの説明のための例において、第1段階シングルプレックス増幅はハウスキーピング遺伝子を標的とし、第2段階増幅は同定のためにハウスキーピング遺伝子における差を使用する。従って、様々な実施形態では第1段階マルチプレックス増幅について検討するが、これが単なる例示であることは理解されよう。
[00218] 図1は、様々な実施形態において使用できるか又は様々な実施形態のために再構成できる例示的なパウチ510を示す。パウチ510は米国特許第8,895,295号の図15と同様であり、同様の品目には同じ番号が付けられている。装備品590には入口チャネル515a~515lが設けられ、これらは試薬貯蔵部又は廃棄物貯蔵部としても機能する。例示的に、試薬は装備品590内で凍結乾燥させ、使用前に再水和することができる。ブリスタ522、544、546、548、564、及び566は、それぞれチャネル514、538、543、552、553、562、及び565を備え、米国特許第8,895,295号の図15と同じ番号のブリスタと同様である。図1の第2段階反応ゾーン580は米国特許第8,895,295号のものと同様であるが、高密度アレイ581の第2段階ウェル582は多少異なるパターンに配列されている。図1の高密度アレイ581のより円形のパターンでは角部のウェルがないので、第2段階ウェル582のいっそう均一な充填が可能となる。図示のように、高密度アレイ581は102の第2段階ウェル582を備えている。パウチ510は、FilmArray(登録商標)器具(BioFire Diagnostics, LLC、ユタ州ソルトレークシティ)で使用するのに適している。しかしながら、このパウチの実施形態が単なる例示であることは理解されよう。
[00219] 他の容器を使用してもよいが、例示としてパウチ510は、2層の可撓性プラスチックフィルム又は他の可撓性材料で形成することができる。材料は例えば、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、それらの混合物、組み合わせ、及び層であり、パウチ510は、押し出し成形、プラズマ堆積、及び積層を含む当技術分野において既知の任意のプロセスによって作製できる。例えば各層は、単一のタイプ又は2つ以上のタイプの材料の1つ以上の層を積層したもので構成できる。また、アルミニウム積層を用いた金属フォイル又はプラスチックも使用できる。ブリスタ及びチャネルを形成するように密封できる他のバリア材料も当技術分野において既知である。プラスチックフィルムを用いる場合、これらの層は、例示的に熱シールによって接合することができる。例示的に、材料は低い核酸結合能と低いタンパク結合能を有する。
[00220] 蛍光による監視を用いる実施形態では、動作波長において吸収度及び自家蛍光が充分に低いプラスチックフィルムが好適である。そのような材料は、様々なプラスチック、様々な可塑剤、及び複合比、更にはフィルムの様々な厚さを試験することによって特定できる。アルミニウム又は他のフォイル積層を用いるプラスチックでは、蛍光検出デバイスによって読み取られるパウチの部分はフォイルなしにしておくことができる。例えば、パウチ510の第2段階反応ゾーン580の第2段階ウェル582で蛍光が監視される場合、ウェル582における一方又は双方の層をフォイルなしにしておく。PCRの例では、約0.0048インチ(0.1219mm)厚さのポリエステル(デラウェア州ウイルミントンDupont社のMylar)及び0.001~0.003インチ(0.025~0.076mm)厚さのポリプロピレンフィルムから成るフィルム積層物が良好に機能する。例示的に、パウチ510は、入射光の約80~90%を透過することができる透明材料で作製される。
[00221] 例示的な実施形態では、ブリスタ及びチャネルに対して例えば空気圧等の圧力を加えることによって、ブリスタ間で物質を移動させる。従って、圧力を用いる実施形態では、圧力によって所望の効果を達成できるように、パウチ材料は例えば充分に可撓性である。本明細書で用いる場合、「可撓性」という用語はパウチ材料の物理的特性を表す。本明細書において「可撓性」という用語は、亀裂、破損、細かいひび割れ等を生じることなく本明細書で使用される圧力レベルによって容易に変形可能なものと規定される。例えば、Saran(商標)ラップ及びZiploc(登録商標)バッグ等の薄いプラスチックシート、並びにアルミニウムフォイル等の薄い金属フォイルは可撓性である。しかしながら、空気圧を用いる実施形態であっても、可撓性である必要があるのはブリスタ及びチャネルの特定の領域のみである。更に、ブリスタ及びチャネルが容易に変形可能である限り、可撓性である必要があるのはブリスタ及びチャネルの一方側のみである。パウチ510の他の領域は、剛性材料で作製するか又は剛性材料で補強することが可能である。従って、「可撓性パウチ」又は「可撓性サンプル容器」等の用語を使用する場合、そのパウチ又はサンプル容器の一部のみが可撓性である必要があることは理解されよう。
[00222] 例示として、パウチ510にはプラスチックフィルムが使用される。例えばアルミニウム又は他の適切な材料の金属シートを圧延又は他の方法で切断して、隆起面パターンを有するダイを生成することができる。例えば195℃の動作温度に調節した空気プレス(例えばウイスコンシン州ミルトンJanesville Tool Inc.のA-5302-PDS)に取り付けた場合、空気プレスは印刷機と同様に作用し、ダイがプラスチックフィルムと接触している箇所だけでフィルムのシール面を溶融させる。同様に、パウチ510に用いられる1又は複数のプラスチックフィルムを、レーザ切断及び溶接デバイスを用いて切断し溶接することも可能である。PCRプライマー(例えばフィルム上にスポットして乾燥させる)、抗原結合物質、磁気ビーズ、及びケイ酸ジルコニウムビーズのような様々な成分を、パウチ510を形成する際に様々なブリスタ内に密封することができる。サンプル処理のための試薬を、一括して又は個別に、密封前にフィルム上にスポットすることができる。一実施形態では、ポリメラーゼ及びプライマーとは別にヌクレオチド三リン酸(NTP)をフィルム上にスポットすることで、反応物が水性サンプルにより水和されるまでポリメラーゼの活性を基本的に排除する。水和前に水性サンプルが加熱された場合、これは真のホットスタートPCRのための条件を生成し、高価な化学ホットスタート成分の必要性を低減させるか又は排除する。別の実施形態では、成分を粉末又はピル形態で提供し、最終的な密封の前にブリスタ内に配置することができる。
[00223] パウチ510は、米国特許第8,895,295号に記載されたものと同様に使用することができる。1つの例示的な実施形態では、試験対象のサンプル(100μl)及び溶解緩衝剤(200μl)を含む300μlの混合物を、装備品590の入口チャネル515aの近くの注入ポート(図示せず)に注入して、このサンプル混合物を入口チャネル515a内に引き入れる。また、装備品590の入口チャネル515lに隣接した第2の注入ポート(図示せず)に水を注入し、装備品590に設けられたチャネル(図示せず)を介して分配させることにより、入口チャネル515b~515lに前もって乾燥形態で提供されている最大で11の異なる試薬を水和させる。サンプル及び水和流体(例えば水又は緩衝剤)を注入するための例示的な方法及びデバイスは、援用により全体が本願に含まれる米国特許出願第2014-0283945号に開示されているが、これらの方法及びデバイスは単なる例示であり、パウチ510内にサンプル及び水和流体を導入する他の方法も本開示の範囲内であることは理解されよう。これらの試薬は例えば、凍結乾燥PCR試薬、DNA抽出試薬、洗浄液、免疫測定試薬、又は他の化学物質を含み得る。例示として試薬は、核酸抽出、第1段階マルチプレックスPCR、マルチプレックス反応物の希釈、及び第2段階PCR試薬の調製、並びに対照反応のためのものである。図1に示されている実施形態では、注入する必要があるものは、一方の注入ポートのサンプル溶液と他方の注入ポートの水だけである。注入後、これら2つの注入ポートを密封してもよい。パウチ510及び装備品590の様々な構成の更なる詳細については、すでに援用により本願に含めた米国特許第8,895,295号を参照のこと。
[00224] 注入後、サンプルを注入チャネル515aからチャネル514を介して溶解ブリスタ522内へ移動させることができる。溶解ブリスタ522は、セラミックビーズ又は他の研摩要素のようなビーズ又は粒子534が提供されており、FilmArray(登録商標)器具内に設けられた回転ブレード又はパドルを用いた詰め込みによってボルテックスを行うように構成されている。ケイ酸ジルコニウム(ZS)ビーズ534等の溶解粒子の存在下でサンプルの振とう、ボルテックス、超音波処理、及び同様の処理を行うことによるビーズ粉砕(bead-milling)は、溶解物を形成する効果的な方法である。本明細書で用いる場合、「溶解」、「溶解している」、及び「溶解物」等の用語は細胞を破裂させることに限定されず、そのような用語がウイルスのような非細胞粒子の破壊を含むことは理解されよう。別の実施形態では、援用により全体が本願に含まれるPCT/US2017/044333号に記載されているような往復運動するか又は交互に移動するパドルを用いたパドルビーターを、この実施形態及び本明細書に記載されている他の実施形態において溶解のために使用してもよい。
[00225] 図4は、図2に示されている器具800の支持部材802の第1の側811に搭載され得るブレード821を含むビーズ破砕(bead beating)モータ819を示す。ブレードは、スロット804を貫通してパウチ510に接触することができる。しかしながら、モータ819を器具800の他の構造に搭載してもよいことは理解されよう。1つの例示的な実施形態において、モータ819は、支持部材802に搭載されたMabuchi RC-280SA-2865DCモータ(日本国千葉県)である。1つの例示的な実施形態において、モータは5,000~25,000rpmで、更に例示的には10,000~20,000rpmで、更に例示的には約15,000~18,000rpmで回転する。Mabuchiモータでは、7.2Vが溶解に充分なrpmを与えることがわかっている。しかしながら、ブレード821がパウチ510に衝突している場合、実際の速度は多少遅くなり得ることは理解されよう。使用されるモータ及びパドルに応じて、他の電圧及び速度を溶解のために用いることも可能である。任意選択的に、溶解ブリスタ522に隣接した袋822内へ、制御された少量の空気を提供してもよい。いくつかの実施形態では、隣接した袋に1以上の少量の空気を部分的に充填すると、溶解プロセス中の溶解ブリスタの位置決め及び支持に役立つことがわかっている。あるいは、例えば溶解ブリスタ522の周りで剛性のもしくは柔軟なガスケット又は他の保持構造のような他の構造を用いて、溶解中にパウチ510を拘束することも可能である。また、モータ819は単なる例示であり、サンプルの粉砕、振とう、又はボルテックスのために他のデバイスも使用できることは理解されよう。いくつかの実施形態では、機械的溶解に加えて又はその代わりに、化学物質又は熱を用いることも可能である。
[00226] 一度サンプル物質が充分に溶解したら、サンプルを核酸抽出ゾーンへ移動させる。例えばサンプルを、チャネル538、ブリスタ544、及びチャネル543を介してブリスタ546へ移動させ、このゾーン内で、シリカでコーティングされた磁気ビーズ533のような核酸結合物質とサンプルを混合する。あるいは、磁気ビーズ533を、例えば入口チャネル515c~515eのうち1つから提供された流体を用いて再水和し、次いでチャネル543を介してブリスタ544へ、次いでチャネル538を介してブリスタ522へ移動させてもよい。混合物は、例示的に約10秒~10分までの適切な時間長にわたってインキュベートさせる。器具内でブリスタ546に隣接して配置された格納式磁石が、溶液から磁気ビーズ533を捕捉することで、ブリスタ546の内面にペレットを形成する。ブリスタ522内でインキュベーションが行われる場合は、捕捉のために溶液の複数部分をブリスタ546へ移動させる必要があり得る。次いで液体をブリスタ546から出し、ブリスタ544を介してブリスタ522内へ戻す。ブリスタ522はこの時点で廃棄物の容器として使用される。注入チャネル515c~515eの1つ以上からの1以上の洗浄緩衝剤が、ブリスタ544及びチャネル543を介してブリスタ546に与えられる。任意選択的に、磁石は引っ込められ、ブリスタ544及び546間でチャネル543を介して磁気ビーズ533を往復移動させることによってビーズが洗浄される。一度磁気ビーズ533が洗浄されたら、磁石の活性化によって磁気ビーズ533をブリスタ546内で再び捕捉し、次いで洗浄液をブリスタ522に移動させる。このプロセスを必要に応じて繰り返して、核酸結合磁気ビーズ533から溶解緩衝剤及びサンプル残屑を洗浄することができる。
[00227] 洗浄の後、注入チャネル515fに保管された溶出緩衝剤をブリスタ548に移動させ、磁石を引っ込める。溶液はチャネル552を介してブリスタ546と548との間で循環して、ブリスタ546内の磁気ビーズ533のペレットを破壊し、捕捉した核酸をビーズから分離させて溶液内に入れる。磁石を再び活性化して、ブリスタ546内の磁気ビーズ533を捕捉し、溶出核酸溶液をブリスタ548に移動させる。
[00228] 注入チャネル515gからの第1段階PCRマスター混合物が、ブリスタ548内で核酸サンプルと混合される。任意選択的に、この混合物は、チャネル553を介して548と564との間で混合物を移動させることによって混合される。いくつかの混合サイクル後、溶液はブリスタ564内に収容され、ここで、各標的に少なくとも1つのプライマーセットで第1段階PCRプライマーのペレットが提供され、第1段階マルチプレックスPCRが実行される。RNA標的が存在する場合、第1段階マルチプレックスPCRの前に又はこれと同時に逆転写(RT:reverse transcription)ステップが実行され得る。FilmArray(登録商標)器具における第1段階マルチプレックスPCR温度サイクリングは例示的に15~20サイクル実行されるが、特定の用途の要件に応じて他の増幅レベルが望ましい場合もある。第1段階PCRマスター混合物は、当技術分野において既知の様々なマスター混合物のうち任意のものとすればよい。1つの例示的な例において、第1段階PCRマスター混合物は、1サイクル当たり20秒以下を要するPCRプロトコルと共に用いるため、援用により本願に含まれる米国特許出願公開第2015/0118715号に開示された化学物質のいずれかとすればよい。
[00229] 第1段階PCRの所望の数のサイクルを行った後、例えば、サンプルのほとんどをブリスタ548に戻してブリスタ564内に少量だけを残し、注入チャネル515iから第2段階PCRマスター混合物を追加することによって、サンプルを希釈することができる。あるいは、希釈緩衝剤を515iからブリスタ566へ移し、次いで流体をブリスタ564と566との間で往復移動させることによってブリスタ564内の増幅サンプルと混合させることができる。所望の場合、注入チャネル515j及び515kからの希釈緩衝剤を用いて希釈を数回繰り返すことができ、又は、注入チャネル515kはシークエンシングもしくは他のPCR後分析のために取っておき、注入チャネル515hから第2段階PCRマスター混合物を希釈増幅サンプルの一部又は全部に追加することができる。希釈ステップ数を変更することによって、又は、希釈緩衝剤もしくは第2段階PCRマスター混合物との混合前に廃棄されるサンプルの割合を変更することによって、希釈レベルを調整できることは理解されよう。第2段階PCRマスター混合物は、例えばポリメラーゼ、dNTP、及び適切な緩衝剤のような増幅用の成分を含むが、特に非PCR増幅方法では他の成分も適切であり得る。所望の場合、サンプルと第2段階PCRマスター混合物のこの混合物を、第2段階の増幅のため第2段階ウェル582へ移動させる前にブリスタ564内で予熱してもよい。このような予熱は、第2段階PCR混合物におけるホットスタート成分(抗体、化学物質、又は他のもの)の必要性をなくすことができる。
[00230] 一実施形態では、例示的な第2段階PCRマスター混合物は不完全であり、プライマー対を含まず、102の第2段階ウェル582の各々に特定のPCRプライマー対が予め投入されている。他の実施形態では、マスター混合物は他の成分(例えばポリメラーゼ、Mg2+等)を含まない場合があり、含まれない成分をアレイに予め投入しておくことができる。所望の場合、第2段階PCRマスター混合物は他の反応成分を含まない場合があるので、これらの成分も第2段階ウェル582に予め投入しておくことができる。各プライマー対は第1段階PCRプライマー対と同様もしくは同一であるか、又は第1段階プライマー対内にネスト化することができる。ブリスタ564から第2段階ウェル582へのサンプル移動によってPCR反応混合が完成する。一度高密度アレイ581が充填されたら、当技術分野において既知のように任意の数の手段によって個々の第2段階反応物をそれぞれの第2段階ブリスタ内に密封する。二次汚染を生じることなく高密度アレイ581を充填して密封する例示的な方法は、すでに援用により本願に含めた米国特許第8,895,295号で検討されている。例示的に、高密度アレイ581のウェル582内の様々な反応物は、例えば1つ以上のペルチェ素子によって同時に又は個別に熱サイクリングを行うが、熱サイクリングのための他の手段も当技術分野において既知である。
[00231] いくつかの実施形態において、第2段階PCRマスター混合物は、増幅を示す信号を発生させるためのdsDNA結合色素LCGreen(登録商標)Plus(BioFire Diagnostics, LLC)を含む。しかしながら、この色素は単なる例示であること、及び他の信号を使用できることは理解されよう。例えば、当技術分野において既知のように、蛍光、放射能、化学発光、酵素等によって標識される他のdsDNA結合色素及びプローブを使用できる。あるいは、信号を用いることなくアレイ581のウェル582を提供し、以降の処理によって結果を報告することも可能である。
[00232] 空気圧を用いてパウチ510内の物質を移動させる場合、一実施形態では「袋」を使用することができる。袋アセンブリ810は、一部が図2から図3に示されており、複数の膨張可能袋822、844、846、848、864、及び866を収容した袋プレート824を含む。これらの袋の各々は、例えば圧縮ガスソースによって個々に膨張可能である。袋アセンブリ810は圧縮ガスが与えられ、複数回使用される可能性があるので、パウチよりも強靭かつ厚い材料で作製され得る。あるいは、袋822、844、846、848、864、及び866は、ガスケット、シール、バルブ、及びピストンと共に固定された一連のプレートから形成してもよい。他の構成も本発明の範囲内である。あるいは、アレイ又は機械的アクチュエータ及びシールを用いて、チャネルを密封し、ブリスタ間の流体の移動を誘導することも可能である。本明細書に記載される器具のために適合され得る機械的シール及びアクチュエータのシステムは、すでに援用により本願に含めたPCT/US2017/044333号に詳しく記載されている。
[00233] 二次PCR反応の成功は、マルチプレックス第1段階反応によって発生したテンプレートに左右される。典型的に、PCRは高い純度のDNAを用いて実行される。フェノール抽出のような方法、又は市販のDNA抽出キットは、高い純度のDNAを与える。パウチ510によって処理されるサンプルは、純度の低い調製を補償するため便宜を図る必要があり得る。PCRは、潜在的な障害である生物サンプルの成分によって阻害される可能性がある。例えば、ホットスタートPCR、タックポリメラーゼ(Taq polymerase)酵素の高濃度化、MgCl2濃度の調整、プライマー濃度の調整、阻害剤に耐性のある遺伝子操作酵素の追加、及びアジュバント(DMSO、TMSO、又はグリセロール等)の追加を任意選択的に用いることで、低い核酸純度を補償できる。純度の問題は第1段階増幅に関連が深い可能性があるが、第2段階増幅においても同様の調整を実行できることは理解されよう。
[00234] パウチ510が器具800内に配置された場合、袋アセンブリ810はパウチ510の一面に押圧されるので、ある特定の袋が膨張すると、圧力によってパウチ510内の対応するブリスタから液体が押し出される。袋アセンブリ810は、パウチ510のブリスタの多くに対応する袋に加えて、パウチ510の様々なチャネルに対応する袋又は空気圧駆動ピストンのような追加の空気圧式アクチュエータも有し得る。図2から図3は、パウチ510のチャネル538、543、553、及び565に対応する例示的な複数のピストン又はハードシール838、843、852、853、及び865、並びに装備品590への逆流を最小限に抑えるシール871、872、873、及び874を示す。ハードシール838、843、852、853、及び865は、活性化されると、対応するチャネルを締め付けて閉じるピンチバルブを形成する。パウチ510のある特定のブリスタ内に液体を閉じ込めるには、そのブリスタへのチャネル及びそのブリスタからのチャネル上のハードシールを活性化して、それらのチャネルを締め付けて閉じるピンチバルブとしてアクチュエータを機能させる。例えば、異なるブリスタ内の2つの液体体積を混合するには、これらを接続しているチャネルを密封しているピンチバルブアクチュエータを活性化し、これらのブリスタ上の空気袋を交互に加圧して、これらのブリスタを接続しているチャネルを介して液体を往復移動させることで内部の液体を混合させればよい。ピンチバルブアクチュエータは様々な形状及び大きさとすることができ、一度に2つ以上のチャネルを締め付けるように構成できる。本明細書では空気圧式アクチュエータについて検討するが、パウチに圧力を与える他の方法も想定されることは理解されよう。他の方法には、リニアステッパモータ、モータ駆動カムのような様々な電気機械式アクチュエータ、空気圧、水圧、又は電磁力で駆動される剛性パドル、ローラ、ロッカアーム、場合によってはコックばね(cocked spring)等が含まれる。更に、チャネルの軸に対して垂直な圧力を加えること以外にも、可逆的又は不可逆的にチャネルを閉じる様々な方法がある。これらには、チャネルを横切るように袋をねじること、熱シール、アクチュエータを回転させること、並びに、バタフライバルブ及びボールバルブのようなチャネル内に密封された様々な物理バルブが含まれる。更に、小さいペルチェ素子又は他の温度調節器をチャネルに隣接して配置し、流体を凍結させるのに充分な温度に設定することで、実質的にシールを形成してもよい。また、図1の設計はブリスタ及びチャネルの各々に対して位置決めされたアクチュエータ要素を特徴とする自動化器具のために適合されているが、アクチュエータを不動の状態に維持すると共にパウチ510を移動させて、サンプル破壊、核酸捕捉、第1段階及び第2段階PCR、並びに免疫測定及び免疫PCRのようなパウチ510の他の用途を含む処理ステーションのいくつかに対して少数のアクチュエータを使用できることも想定される。ステーション間でパウチ510を平行移動させる構成では、チャネル及びブリスタに作用するローラが特に有用である可能性がある。従って、ここに開示される実施形態では空気圧式アクチュエータを使用するが、「空気圧式アクチュエータ」という用語を本明細書で用いる場合、パウチ及び器具の構成に応じて他のアクチュエータ及び圧力を与える他の方法も使用できることは理解されよう。
[00235] 図2に戻ると、各空気圧式アクチュエータはバルブ899を介して圧縮空気ソース895に接続されている。図2にはいくつかのホース878のみが図示されているが、各空気圧部品がホース878を介して圧力ガスソース895に接続されていることは理解されよう。圧縮ガスソース895はコンプレッサとするか、あるいは圧縮ガスソース895は二酸化炭素ボンベのような圧縮ガスボンベとすればよい。圧縮ガスボンベは、携帯性が望まれる場合は特に有用である。他の圧縮ガスソースも本発明の範囲内である。本明細書に記載されるパウチ内の流体移動の制御のため、同様の空気圧式制御を例えば図28A及び図28Bの器具に提供すること、又は他のアクチュエータやサーボ等を提供することも可能である。
[00236] また、器具810のいくつかの他のコンポーネントも圧縮ガスソース895に接続されている。支持部材802の第2の側814に搭載される磁石850は、例えばホース878を介した圧縮ガスソース895からのガスを用いて展開及び後退させるが、磁石850を移動させる他の方法も当技術分野では既知である。磁石850は、支持部材802のくぼみ851に置かれている。磁石850がパウチ510のブリスタ546に接触できるように、くぼみ851は支持部材802を貫通する通路であり得ることは理解されよう。しかしながら、磁石850が展開された場合に磁石850がブリスタ546に充分な磁界を与えるため充分に近付き、かつ、磁石850が引っ込められた場合に磁石850がブリスタ546内に存在する磁気ビーズ533に大きな影響を及ぼさないならば、支持部材802の材料に応じて、くぼみ851が支持部材802全体を貫通する必要はないことは理解されよう。格納式の磁石850に言及しているが、電磁石を使用することも可能であり、電磁石を流れる電流を制御することによって電磁石を活性化及び非活性化できることは理解されよう。従って、本明細書では磁石の後退又は格納について検討するが、これらの用語は磁界を後退させる他の方法を組み込むように充分に広義であることは理解されよう。空気接続部は空気ホース又は空気マニホルド(pneumatic air manifold)とすることができ、これによって必要なホース又はバルブの数を減らせることは理解されよう。同様の磁石及び磁石を活性化させるための方法が図28A及び図28Bの実施形態で使用され得ることは理解されよう。
[00237] また、空気圧ピストンアレイ869の様々な空気圧ピストン868もホース878を介して圧縮ガスソース895に接続されている。2つのホース878のみが空気圧ピストン868を圧縮ガスソース895に接続しているものとして図示されているが、空気圧ピストン868の各々が圧縮ガスソース895に接続されていることは理解されよう。12の空気圧ピストン868が図示されている。
[00238] 支持802の第2の側814に1対の温度制御要素が搭載されている。本明細書で用いる場合、「温度制御要素」という用語は、サンプルに熱を加えるか又はサンプルから熱を取り除くデバイスを指す。温度制御要素の説明のための例は、限定ではないが、ヒータ、クーラ、ペルチェ素子、抵抗ヒータ、誘導ヒータ、電磁ヒータ、薄膜ヒータ、印刷要素ヒータ、正温度係数ヒータ、及びそれらの組み合わせを含む。温度制御要素は、複数のヒータ、複数のクーラ、複数のペルチェ素子等を含み得る。一態様において、所与の温度制御要素は2種以上のヒータ又はクーラを含み得る。例えば、温度制御要素の説明のための例は、ペルチェ素子であって、この素子の上面及び/又は下面に別個の抵抗ヒータを備えたものを含み得る。本明細書全体を通して「ヒータ」という用語を使用するが、サンプルの温度を調整するために他の温度制御要素を使用できることは理解されよう。
[00239] 上記で検討したように、第1段階ヒータ886は、第1段階PCRのためブリスタ564の内容物を加熱及び冷却するように位置決めできる。図2に示されているように、第2段階ヒータ888は、第2段階PCRのためパウチ510のアレイ581の第2段階ブリスタ582の内容物を加熱及び冷却するように位置決めできる。しかしながら、特定の用途に合わせて適宜、これらのヒータは他の加熱目的にも使用できること、及び他のヒータも含まれ得ることは理解されよう。
[00240] 上記で検討したように、2つ以上の温度間で熱サイクルするペルチェ素子がPCRには有効であるが、いくつかの実施形態ではヒータを一定温度に維持することが望ましい場合がある。例えば、これを用いると、サンプル温度の遷移に必要な時間以外のヒータ温度の遷移に必要な時間を排除することによって実行時間を短縮できる。また、このような構成は、小さいサンプル及びサンプル容器を熱サイクルさせるだけでよく、はるかに大きい(熱質量が大きい)ペルチェ素子についてはその必要がないので、システムの電気効率を向上させることができる。例えば器具は複数(すなわち2つ以上)のヒータを含み、これらのヒータは、例えばアニーリング、伸長、変性のための温度に設定し、パウチに対して位置決めして熱サイクリングを達成することができる。多くの用途では2つのヒータで充分である可能性がある。様々な実施形態において、ヒータを移動させるか、パウチを移動させるか、又は流体をヒータに対して移動させることで、熱サイクリングを実行できる。例えばヒータは、線形や円形等に配列すればよい。適切なヒータのタイプについては、第1段階のPCRを参照してすでに上記で検討した。
[00241] 蛍光検出が望ましい場合、光学アレイ890を提供することができる。図2に示されているように、光学アレイ890は、例示的にフィルタLED光源、フィルタ白色光、又はレーザ照明である光源898と、カメラ896と、を含む。カメラ896は例えば複数の光検出器を有し、各光検出器はパウチ510内の第2段階ウェル582に対応する。あるいは、カメラ896が第2段階ウェル582の全てを含む像を撮影し、この像を第2段階ウェル582の各々に対応した別個のフィールドに分割してもよい。構成に応じて、光学アレイ890は不動とするか、又は1つ以上のモータに取り付けた移動部(mover)に配置して移動させることで各第2段階ウェル582から信号を取得してもよい。他の構成も可能であることは理解されよう。図18に示されている第2段階のヒータの実施形態は、図2に示されているものに対してパウチ510の反対側にヒータを提供する。このような配向は単なる例示であり、器具内の空間的な制約によって決定すればよい。第2段階反応ゾーン580が光学的に透明な材料で設けられているならば、光検出器及びヒータはアレイ581のいずれの側にも配置できる。
[00242] 図示のように、コンピュータ894は圧縮空気ソース895のバルブ899を制御し、従って器具800の空気力学の全てを制御する。更に、他の実施形態では、器具における空気圧システムの多くを機械的アクチュエータや圧力適用手段等によって置換してもよい。コンピュータ894は、ヒータ886及び888、並びに光学アレイ890も制御する。これらのコンポーネントの各々は、例示的にケーブル891を介して電気的に接続されているが、他の物理的接続又は無線接続も本発明の範囲内である。コンピュータ894は、器具800内に収容されるか又は器具800に外部にあり得ることは理解されよう。更にコンピュータ894は、コンポーネントのいくつか又は全てを制御する内蔵回路ボードを含み、また、光学アレイからのデータを受信し表示するためのデスクトップ又はラップトップPCのような外部コンピュータも含み得る。例えばキーボードインタフェースのようなインタフェースを提供することができ、これは、温度やサイクル時間のような情報及び変数を入力するためのキーを含む。例示的に、ディスプレイ892も提供されている。ディスプレイ892は、例えばLED、LCD、又は他のそのようなディスプレイとすればよい。
[00243] 従来技術において既知である他の器具は、密封された可撓性容器内でのPCRを教示している。例えば、米国特許第6,645,758号、第6,780,617号、及び第9,586,208号を参照のこと。これらは援用により本願に含まれる。しかしながら、密封されたPCR容器内に細胞溶解を含むことは、特に試験対象のサンプルがバイオハザードを含み得る場合、使いやすさ及び安全性を向上させることができる。本明細書に例示される実施形態において、細胞溶解から及び他の全てのステップからの廃棄物は、密封されたパウチ内に留まる。しかしながら、更に試験を行うためパウチ内容物を取り出す可能性があることは理解されよう。
[00244] 図2に戻ると、器具800は、ケーシングの壁を形成するか又はケーシング内に搭載することができる支持部材802を含む。器具800は第2の支持部材(図示せず)も含むことができ、これは任意選択的に、パウチ510の挿入及び引き抜きを可能とするように支持部材802に対して移動可能である。例示的に、一度パウチ510が器具800に挿入されたら、パウチ510を蓋で覆ってもよい。別の実施形態では、双方の支持部材は固定されており、パウチ510は他の機械手段によって又は空気圧によって所定位置に置くことができる。
[00245] 例示的な器具800において、ヒータ886及び888は支持部材802に搭載されている。しかしながら、この配置は単なる例示であり、他の配置も可能であることは理解されよう。例示的なヒータは、当技術分野において既知の、ペルチェ素子及び他のブロックヒータ、抵抗ヒータ、電磁ヒータ、及び薄膜ヒータを含み、ブリスタ864及び第2段階反応ゾーン580の内容物を熱サイクルする。袋822、844、846、848、864、866を備えた袋プレート810、ハードシール838、843、852、853、及びシール871、872、873、874は、袋アセンブリ808を形成し、これを例えばパウチ510の方へ移動できる可動支持構造に搭載することで、空気圧式アクチュエータをパウチ510に接触した状態に配置できる。パウチ510を器具800に挿入し、可動支持部材を支持部材802の方へ移動させた場合、パウチ510の様々なブリスタは袋アセンブリ810の様々な袋及びアセンブリ808の様々なシールに隣接した位置にあるので、空気圧式アクチュエータを活性化すると、パウチ510のブリスタの1つ以上から液体が移動するか、又はパウチ510の1つ以上のチャネルに対するピンチバルブが形成され得る。パウチ510のブリスタ及びチャネルとアセンブリ808の袋及びシールとの関係は、図3に更に詳しく示されている。
自己完結型反応容器
[00246] 図5Aは、パウチ5000(本明細書では「科学カード」とも称する)の別の例示的な実施形態を示す。このパウチ5000は、様々な実施形態で使用することができ、又は、PCR、微生物試験、もしくは多種多様な他の試験向けに、本明細書に記載される様々な実施形態のため再構成することができる。パウチ5000は、援用により本願に含まれるPCT/US2017/18748号に記載されている器具、又は多種多様な他の器具における使用のために構成できる。図5Aの例示的なパウチ5000は、サンプル調製、核酸増幅、及び検出を実行できる多数のゾーン又はブリスタを含む。例示的なパウチ5000は、増幅及び分析対象の核酸を含むサンプルがパウチ5000内に導入されるサンプル調製ブリスタ5005と、第1段階PCRブリスタ5010と、第2段階PCRの前に第1段階PCRからの生成物の一部を測定するための体積希釈ウェル5015と、多数の個別反応ウェル5082を含む第2段階PCRアレイ5081と、を含む。体積ウェル5015はブリスタ5020及び5025に流体結合することができ、ここで第2段階PCR用の試薬が導入されて希釈ウェル5015の内容物と混合される。従って、第1段階核酸増幅反応(例えばPCR反応)の生成物の特定の体積(例えば1~5μl)を体積希釈ウェル5015に分注し、特定の体積の希釈剤(例えば100μl)と組み合わせることで、第2段階PCR反応のアレイを充填する前に第1段階PCR増幅のいっそう精密な希釈を達成できる。一例においては、ブリスタ5020と5025との間で体積ウェル5015の内容物と第2段階PCR用の試薬を繰り返し混合することにより、第2段階PCR用のサンプルを調製できる。第2段階アレイ5081は廃棄物容器5035に流体接続することができる。あるいは、ブリスタ5010をサンプル調製と第1段階PCRの双方のために使用し、ブリスタ5005を例えば1又は複数のサンプル調製廃棄物のための廃棄物容器として使用してもよい。他の構成も可能である。
[00247] ブリスタ5005、5010、5020、及び5025、希釈ウェル5015、及び第2段階アレイ5081は、チャネル5050a~5050eによって流体接続することができる。サンプル及び試薬は、入口チャネル5040a~5040f及び入口ポート5045a~5045fを介してパウチ5000に投入できる。これらの入口ポートは、剥がして再び使えるもの、壊れやすいもの、セルフシール、キャップ付きのもの、熱シール可能なもの、使い捨てのもの(one-way)、又は当技術分野において既知である他のタイプの入口ポートとすればよい。あるいはパウチ5000は、パウチ5000内にサンプル及び試薬を導入するため、図1の装備品590と同様の形態のデバイスを装着してもよい。更にパウチ5000は、装備品又は同様の構造内に脱水(例えば凍結乾燥)試薬を含み、これをパウチの使用前に適切な水和緩衝剤で水和させてもよい。更に別の実施形態では、パウチ5000内に液体試薬を提供することができる。
[00248] 一実施形態において、パウチ5000は、パウチ5000を形成するように密封された多数の材料層(同一材料の層、又は異なるタイプの材料の層)から製造することができる。図5B及び図5Cに、線B-B及び線C-Cに沿った切断図が示され、パウチ5000の異なる部分を製造するために使用できる材料層が例示されている。図5Bに示されているパウチ5000の一領域では、例示的なパウチ5000は、第1のフィルム層5090を第2のフィルム層5098に接合することから製造できる。層5090及び5098は、限定ではないが例えば接着剤、熱及び圧力、音波溶接、又はレーザ溶接のような、当技術分野において既知である従来の手段によって接合できる。また、図5Bは、フィルム層5090と5098との間に開いたエリアを残し、開口に沿って密封したマージンでこの開いたエリアの境界を画定することによって、ブリスタ又はチャネル(例えばチャネル5040c)をパウチ5000に形成できることを示す。図5A及び図5Bに例示的な溶接部が5084で示されている。図5Cは、第2段階アレイ5081のウェルを形成するために使用できる厚いカード材料を含むパウチ5000の別の領域を示す。例示的なパウチ5000のこの領域は、第1のフィルム層5090、感圧接着層5092、カード層5094、第2の感圧接着層5096、及び第2のフィルム層5098から製造できる。1つの説明のための例では、第2段階アレイ5081のウェル5082はカード層5094に形成することができる。図5Bに示されているように、フィルム層(例えばフィルム層5090及び5098)の間に開いた空間を残すことによってチャネル(例えばチャネル5040c)及びブリスタ(例えばブリスタ5005)を形成することの代わりに、カード5094層を拡大し、このカード層5094に適切な切り欠きを作製することによって、ブリスタ及び/又はチャネルを形成してもよい。同様に、第1又は第2の感圧接着層5092及び5096のいずれかに適切な切り欠きを作製することによってチャネル5050a~5050e及び入口チャネル5040a~5040fを形成してもよい。他の構成も可能であることは認められよう。例示的なブリスタエリアは可撓性であるが、カード層5094は任意選択的に可撓性を低くして剛性とすることができ、この場合も可撓性サンプル容器の一部であり得ることは理解されよう。従って、「可撓性パウチ」は特定のゾーンにおいてのみ可撓性であればよいことは理解されよう。この代わりに又はこれに加えて、フィルム層5090よりも上方又はフィルム層5098よりも下方に、別のフィルム層、管類、又は剛性層を追加し、これらの層を共に溶接し、これらの層の間に開いたブリスタエリア及びチャネルを残すことによって、ブリスタエリア間にフローチャネルを形成してもよい。
[00249] 他の材料も使用され得るが、パウチ5000のフィルム層は例えば、図1に記載されているパウチ510と同様の可撓性プラスチックフィルム又は他の可撓性材料から形成できる。例えばパウチ5000は、限定ではないが、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、それらの組み合わせ、混合物、及び積層層のような材料から製造することができ、押し出し成形、プラズマ堆積、及び積層を含む当技術分野において既知の任意のプロセスによって作製できる。カード層5094に同様の材料(例えばポリカーボネート)を使用してもよい。また、アルミニウム積層を用いた金属フォイル又はプラスチックを含む他の材料も使用できる。ブリスタ及びチャネルを形成するように密封できる他のバリア材料も当技術分野において既知である。プラスチックフィルムを用いる場合、これらの層は、例示的に熱シール又はレーザ溶接によって接合することができる。例示的に、材料は低い核酸結合能と低いタンパク結合能を有する。蛍光検出が用いられる場合、パウチの適切なエリアで(例えば第2段階アレイの近傍において)光学的に透明な材料を使用することができる。
[00250] パウチ5000は、パウチ510について上述したのと同様に、及び/又は米国特許第8,895,295号に記載されているのと同様に使用できる。再び図5Aを参照して、パウチを充填し、サンプルを調製し、第1段階PCRを実行し、第2段階PCRを実行するための、2つの代替的なシーケンスを説明する。第1の例示的な方法では、サンプル調製と第1段階PCRを別個のブリスタで実行することができる。これを本明細書では「3ゾーン方法」と呼ぶ。3つのゾーンは、サンプル調製、第1段階PCR、及び第2段階PCRである。「3ゾーン方法」及び「2ゾーン方法」を記載する以下の例では、パウチ5000がパウチの一実施形態であること、及び、他のパウチ構成(例えば図1のパウチ510、図7のパウチ7000、図11A及び図11Bのパウチ10000、図17A及び図17Bのパウチ3900、図17Cのパウチ4000、又は図28Aのパウチ21000)を3ゾーン及び/又は2ゾーン方法に適合できることは認められよう。
[00251] 第1のステップでは、充填チャネル5040aを介してブリスタ5005にサンプルを注入する。一実施形態では、ブリスタ5005内で、本明細書の他の箇所で詳しく記載されるワイピングシステムを用いて、細胞やウイルス等を溶解することができる。あるいは細胞溶解は、限定ではないが、超音波処理デバイス、ビーズビーター、パドルビーターのような代替的な溶解デバイスを用いて、又は化学的溶解によって実行できる。任意選択的に、溶解を促進するため、本明細書の他の箇所で詳しく記載されるヒータアセンブリの1つ以上のヒータ要素によってサンプルを(例えば約70~90℃に)加熱してもよい。溶解の後、熱電クーラ要素(すなわちペルチェ素子)によってサンプルを約0℃~約20℃の範囲内の温度(例えば約10~15度)に冷却して、例えばシリカでコーティングされた磁気ビーズによる核酸回収を促進することができる。他のクーラ要素には、限定ではないが、流体又はガス熱交換要素、ファン冷却ヒートシンク、ヒートパイプ、凝縮ユニット等が含まれる。
[00252] 溶解物から核酸を回収する際に用いるため、充填チャネル5040a又は5040bを介してブリスタ5005に磁気ビーズを注入することができる。あるいは、溶解前に、溶解対象の細胞、溶解粒子、磁気ビーズ、溶解緩衝剤等を、一緒に又は連続的にブリスタ5005に注入するか、又は使用前に磁気ビーズをブリスタ5005内に提供しておくことができる。例示的に、磁気ビーズと溶解物を低温で(例えばヒータのうち1つの温度を調整することによって、約0~10℃の範囲内で)混合することができる。一度磁気ビーズと溶解物が充分な時間にわたって完全に混合されたら、例示的に器具内に提供されている磁石を用いてブリスタ5005内で磁気ビーズを収集し、使用済み溶解物はチャネル5040bを介して液体廃棄所に送出することができる。次いで、充填チャネル5040aを介して洗浄緩衝剤を注入できる。洗浄緩衝剤と磁気ビーズを低温で(例えば約0~10℃の範囲内で)混合することができる。磁気ビーズを再び収集し、使用済み洗浄緩衝剤はチャネル5040bを介して液体廃棄所に流すことができる。洗浄サイクルは少なくとも1回以上繰り返すことができる。洗浄の後、充填チャネル5040aを介してブリスタ5005に溶出緩衝剤を(任意選択的に、第1段階PCRプライマーも)注入することができる。任意選択的に、溶出緩衝剤(及び第1段階PCRプライマー)と磁気ビーズを、例えば1つ以上のヒータの制御下で、高温で(例えば約70~90℃で)混合することができる。溶解及び/又は洗浄中の加熱及び冷却は単なる例示であり、いくつかの実施形態では、これらのステップ中に温度を調節する必要がないことは理解されよう。また、溶解及び/又は洗浄中の温度の制御は、本明細書に記載される他のパウチ実施形態又は他のサンプル容器を組み込んでいる方法に含めてもよいことは理解されよう。
[00253] 第1段階PCRのため、充填チャネル5040cを介してブリスタ5010に、PCRマスター混合物(例えばポリメラーゼ、dNTP、及び当技術分野において既知である他の増幅成分)を注入することができる。磁気ビーズからの溶出液を導入する前に、PCRマスター混合物を(例えば約57℃に)加熱することによって、物理的な「ホットスタート」を実行できる。ブリスタ5005において、磁気ビーズを再び収集し、チャネル5050aを介してブリスタ5010に溶出液を送出することができる。
[00254] 一実施形態では、図18から図21に示されると共にPCT/US2017/18748号(すでに援用により本願に含めた)に記載されているワイパシステムの回転移動を用いて、例示的に2つのヒータの温度制御下で、ブリスタ5010内で第1段階PCRを実行することができる。あるいは、第1段階PCRの熱サイクリングを実行するため、ヒータアセンブリ又はパウチ5000を平行移動させることで、ブリスタ5010を、2つの異なる温度(例えばアニーリング温度と変性温度)の2つの異なるヒータを含むヒータアセンブリのうち一方のヒータの制御下に置き、次いで他方のヒータの制御下に置くことができる。第1段階PCRの間、ブリスタ5010内へ及びブリスタ5010外へ通じるチャネルは、例示的に図2及び図3を参照して記載されたものと同様のハードシールを用いて閉鎖できる。いくつかの実施形態では、体積低減プロトコル(volume reduction protocol)を利用することによって、パウチにおける第1段階PCRを加速できる可能性がある。例えば体積低減プロトコルは、ブリスタ5010内で初期体積(例えば~100μL)を用いてPCRのいくつかの(例えば5~10の)サイクルを実行し、ブリスタ5010の体積の約半分をパージし、PCRのいくつかの(例えば5~10の)サイクルを更に実行し、再びブリスタ5010の体積の約半分をパージすることを含み得る。液体の体積を低減させると、より大きい体積に比べ、熱質量が低減すると共に熱サイクルを迅速に実行できるので、体積低減はPCR反応のサイクル時間を短縮することができる。
[00255] 第1段階PCRの充分な数のサイクル(例えば20~30サイクル)の後、第1段階PCR混合物の少量のサンプル(例えば~1.5μL)を、チャネル5050bを介して希釈ウェル5015に送出することができる。チャネル5050c~5050eは閉鎖することができる。例示的に、希釈ウェル5015が適切な少量のサンプルのみを受容できるように希釈ウェル5015を適切な小さい体積で形成することによって、希釈に用いられる第1段階PCR混合物の体積を制御できる。チャネル5040eを介してブリスタ5025に第2段階PCRマスター混合物を注入することにより、第2段階PCR用の混合物を調製することができる。シールチャネル5050b及び5050eを閉鎖し、シール5050c及び5050dを開放し、ブリスタ5025及び5020並びにウェル5015の間の混合によってウェル5015内のサンプルをマスター混合物と混合することで、第1段階PCR生成物を第2段階PCRのために希釈することができる。ブリスタ5020及び5025並びにウェル5015は、第2段階PCR混合物の完了前に、物理的な「ホットスタート」のため混合前又は混合中に加熱することができる(すなわち、第2段階ウェルの各々にプライマーが含まれる場合)。次いでチャネル5050eを開放し、シール5050c及び5050dを閉鎖して、第2段階PCR混合物を第2段階PCRアレイ5081内へ移送すればよい。別の実施形態では、パウチ5000は、ウェル5015並びにブリスタ5025及び5020の下流かつアレイ5081の上流に、1つ以上の追加の希釈ウェル及び混合ブリスタセットを含み得る。例えば、高濃度の第1段階PCRプライマー又は極めて高濃度の生成物を用いるいくつかの実施形態では、第1段階プライマー及び生成物を、1つの希釈ウェルで達成できるよりも高度に希釈することが望ましい場合がある。例示的に、本明細書の他の箇所で詳しく記載されるようにヒータアセンブリを前後に平行移動させることによって、アレイ5081における第2段階PCRのための熱サイクリングを達成できる。
[00256] 第2の例示的な方法では、サンプル調製及び第1段階PCRを同一のブリスタで実行することができる。これを本明細書では「2ゾーン方法」と呼ぶ。この場合、サンプル調製及び第1段階PCRが1つのゾーンで実行され、第2段階PCRが第2のゾーンで実行される。第1のステップでは、充填チャネル5040cを介してブリスタ5010にサンプルを注入することができる。一実施形態では、ブリスタ5010内で、本明細書の他の箇所で詳しく記載されるワイピングシステムを用いて、細胞やウイルス等を溶解することができる。あるいは細胞溶解は、限定ではないが、超音波処理デバイス、ビーズビーター、パドルビーターのような代替的な溶解デバイスを用いて、又は化学的溶解によって実行できる。溶解を促進するため、本明細書の他の箇所で詳しく記載されるヒータアセンブリの1つ以上のヒータ要素によってサンプルを高温に(例えば約70~90℃に)加熱してもよい。溶解の後、任意選択的に、熱電クーラ要素(すなわちペルチェ素子)によってサンプルを低温に(例えば、限定ではないが~約0℃から約10℃等、周囲温度未満の温度に)冷却してもよい。
[00257] 溶解物から核酸を回収するため、充填チャネル5040cを介してブリスタ5010に磁気ビーズを注入することができる。一実施形態では、溶解後に磁気ビーズと溶解物を低温で(例えば約0~10℃の範囲内の温度で)混合することができる。別の実施形態では、溶解対象の細胞、溶解緩衝剤、磁気ビーズ、及び、任意選択的な溶解粒子を組み合わせて、一緒にブリスタ5010に注入して、溶解と核酸捕捉を実質的に同時に実行してもよい。一度磁気ビーズと溶解物が充分な時間にわたって完全に混合されたら、磁石を用いてブリスタ5010内で磁気ビーズを収集し、使用済み溶解物はチャネル5050aを介してブリスタ5005(すなわちこの例では液体廃棄物ブリスタ)液体廃棄所に送出することができる。次いで、充填チャネル5040cを介してブリスタ5010に洗浄緩衝剤を注入できる。任意選択的に、洗浄緩衝剤と磁気ビーズを低温で(例えば約0~10℃の範囲内の温度で)混合することができる。磁気ビーズを再び収集し、使用済み洗浄緩衝剤をブリスタ5005に流すことができる。所望の場合、洗浄サイクルは少なくとも1回以上繰り返すことができる。洗浄の後、ブリスタ5010に溶出緩衝剤(及び第1段階のPCRプライマー)を注入することにより、ビーズから核酸を溶出させることができる(任意選択的に、例えば約70~90℃の高温で)。磁気ビーズ及び(存在する場合は)残りの溶解粒子をブリスタ5010の上流半分に収集し、チャネル5050aを介して廃棄物ブリスタ5005に送出することができる。上記で検討したように、溶解及び/又は洗浄中の加熱及び冷却は単なる例示であり、いくつかの実施形態では、これらのステップ中に温度を調節する必要がないことは理解されよう。
[00258] 第1段階のPCRのために、ワイパシステムをセットし、第1段階PCRマスター混合物をチャネル5040dに注入し、真のホットスタートが望ましい場合は任意選択的に高温(例えば約57℃)に保持することができる。第1段階PCRマスター混合物をブリスタ5010内でプライマー及びテンプレートと混合し、上述のように第1段階PCRを実行すればよい。
[00259] 第1段階PCRの後、プロトコルは、「3ゾーン方法」について上述したのと同様に第2段階PCRに進むことができる。
[00260] 蛍光検出が望ましい場合、光学アレイを提供することができる。光学アレイは、例示的にフィルタLED光源、フィルタ白色光、又は照明である光源と、カメラと、を含み得る。カメラは例えば複数の光検出器を有し、各光検出器はパウチ5000のアレイ5081内の第2段階ウェルに対応する。あるいは、カメラが第2段階ウェルの全てを含む像を撮影し、この像を第2段階ウェルの各々に対応した別個のフィールドに分割してもよい。構成に応じて、光学アレイは不動とするか、又は1つ以上のモータに取り付けた移動部に配置して移動させることで各第2段階ウェルから信号を取得してもよい。他の構成も可能であることは理解されよう。
[00261] ここで図6Aを参照すると、第2段階PCRに使用することができるウェルのアレイ6000が詳細に示されている。アレイ6000は、スタンドアロンのアレイとするか、又はアレイ5081の一部のようなより大きいアレイの一部として含めることができる。アレイ6000は、個々のウェル6002、6004、6006、6008、及び6010を含む。ウェル6002、6004、6006、6008、及び6010の各々を、第2段階PCR反応のために使用できる。例示された実施形態では、ウェル6002、6004、6006、6008、及び6010は、充填チャネル6012に流体接続されている。各ウェルを充填するため、充填チャネル6012に孔6014、6016、6018、6020、及び6022が形成されている。一実施形態において、第2段階アレイのウェル(例えばウェル6002、6004、6006、6008、及び6010)は、充填チャネル6012からウェル内への流体の引き込みを容易にするため部分真空下に置くことができる。一実施形態において、ウェル6002、6004、6006、6008、及び6010は、6024で示された領域内に又はこの領域周辺にシール(例えば熱シール)又は圧力を加えることによって、充填チャネル6012から密封し、かつ相互に密封することができる(すなわちウェル間のクロストークを防止できる)。従って、6024で示された領域に単一のシールを適用して、ウェル6002、6004、6006、6008、及び6010をチャネル6012から遮断し、かつ相互に遮断することで、ウェル間のクロストークを防止できる。図6B及び図6Cに、アレイ6000及びウェルを充填するための流路の断面構造が示されている。また、アレイ6000は、充填チャネル6012に関連付けられた5つのウェル6002、6004、6006、6008、及び6010によって示されているが、これよりも多数又は少数の反応ウェルを充填チャネルに関連付けられること、及び、複数の充填チャネルを複数のウェルクラスタに流体接続できることは認められよう。複数のアレイ6000を組み合わせて用いることで、より大きいアレイを生成してもよい。
[00262] ここで図6B及び図6Cを参照すると、図6Bは図6Aの線B-Bに沿って示された断面図であり、図6Cはウェル充填システムの異なる実施形態を示す代替的な実施形態である。図6B及び図6Cに断面で示されているアレイ6000の一部は、図5Cに示したものと同様の層で構成され、アレイ6000はアレイ5081でなく図5Aに示されているパウチ5000の一部として含められることに留意するべきである。図6Bに示されているウェル6006bは、第1のフィルム層6030b、第2のフィルム層6032b、接着層6034b、ウェル6006bが画定され得る第1の側面又は端部6050b及び第2の側面又は端部6051bを有するカード層6036b、第2の接着層6038b、及び第3の(外側)フィルム層6040bによって画定できる。図6Cに示されているウェル6006cは、極めて類似しており、第1のフィルム層6030c、第2のフィルム層6032c、接着層6034c、ウェル6006cが形成され得る第1の側面又は端部6050c及び第2の側面又は端部6051cを有するカード層6036c、第2の接着層6038c、及び第3の(外側)フィルム層6040cによって画定できる。図6Bと図6Cの重要な違いは、ウェル6006b及び6006cが周囲の層にどのように形成され、どのように充填され得るかである。
[00263] 図6Bにおいて、第1及び第2のフィルム層6030b及び6032bの間に液体が流れることができるギャップを残すことにより、充填チャネル6012bを形成できる。図6Cは、第1及び第2のフィルム層6030c及び6032cの間にギャップを残すことにより形成された同様の充填チャネル6012cを示す。これらの充填チャネルは、アレイ周囲で第1及び第2のフィルム層を密封する溶接ライン6026b又は6026cによって画定できる。どのようにこれらの溶接を行うかを示す一例が、図6Aにおいて、充填チャネル6012及びウェル周囲の空間を画定する外側溶接部6026a及び内側溶接部6026bを含む溶接領域6026で図示されている。図6Bにおいて、第2のフィルム層6032b及び第1の接着層6034bに選択的な切り欠きを作製することにより、充填孔6018bを形成できる。図6Cにおいて、第1の接着層6034cの対応する切り欠きに隣接している第2のフィルム層6032cの選択的な切り欠きを作製することにより、充填孔6018cを形成できる。充填孔6018b及び6018cは第2段階反応ウェル6006b及び6006cに隣接しているが、位置合わせされていない。すなわち充填孔6018b及び6018cは、第2段階反応ウェル6006b及び6006cに流体接続されているが、第2段階反応ウェル6006b及び6006cに対してずれている。すなわち充填孔6018b及び6018cは、第2段階反応ウェル6006b及び6006cに重なっていない。
[00264] 図6Bにおいて、カード層6036bに切り欠き6042bを作製し、第2の接着層6038bに切り欠き6044bを作製することによって、ウェル6006bを充填するためウェルの周囲及び上方を流れるウェル充填チャネルを形成できるが、これらのチャネルを形成する他の方法も可能である。図6Bのウェル充填チャネルの設計は、例えばウェル間のクロストーク又は二次汚染を低減するのに役立ち得る。その理由は、ウェル6006bに出入りする流路が何度も曲がりくねっている、すなわち流路が入り組んでいるからである。クロストーク又は二次汚染を低減させる他の間接的な経路も想定されており、それらのいくつかは本明細書の他の実施形態において、例えば図8A、図8B、図17A、及び図17B(例えばらせん形ウェル充填経路3930を参照のこと)、及び図20Aから図20Eに示されていることは理解されよう。プライマーは通常はウェル6006bのようなアレイウェルにスポットされるので、アンプリコンは主にウェル内で見出されるはずである。従って、切り欠き領域6042b及び6044bは、ウェル間のアンプリコン及びプライマーの漏れ(すなわちクロストーク)を最小限に抑えるように機能できる。更に、層6030b及び6032bによって形成され、充填孔6018bを含むチャネル6012bは、インサイチュで(in situ)で容易に密封されて、1又は複数のウェルに対するアクセスを実質的に阻止する。例えば、充填孔6018b及びウェル6006bに対するアクセスは、例示的に熱シールデバイスによって密封するか、又は例示的に図6Aの6024に隣接した領域で膨張する袋による圧力、もしくはアレイ6000の全体もしくは一部に対する圧力によって密封することができる。図6Cにおいて、ウェル充填チャネル6018cはウェル6006cに直接流れ込んでおり、充填孔6018cをウェル6006cに流体接続する第1の接着層6034cの切り欠き6046cを作製することによって形成できる。図6Cの充填設計も一般にウェル間のクロストークを抑制することが予想される。しかしながら図6Cの設計は、例示的に、圧力のみよりも良好な密封を提供し得る熱シールデバイスを用いて密封することができる。
[00265] ここで図7を参照すると、パウチ7000の別の実施形態が示されている。パウチ7000は図5Aのパウチ5000と同様であり、同様に使用することができる。パウチ7000とパウチ5000との違いは、限定ではないが、内蔵試薬再水和溶液(例えば水又は緩衝剤)と溶解緩衝剤を提供すること、及び一体型サンプル調製チャンバを提供することを含む。例えば脱水試薬(例えば磁気ビーズ、PCR成分等)の再水和を目的とする試薬再水和溶液の代わりに、パウチ7000のいくつかの実施形態は、すぐに使える(ready-to-use)液体試薬を含み、これを製造時にパウチに含めることができる。パウチ7000は、サンプル混合、サンプル調製、(必要な場合)技術者による入力や操作なしのパウチ内での試薬再水和のようなステップを実行するために構成されているので、パウチ7000及び同様のパウチは使いやすい。使いやすさは例えば、米国のFDAや他の国の規制機関による試験の規制に大きな影響を及ぼし得る。例えばFDAによって、試験が非常に簡単なのでエラーのリスクがほとんどないと判定された場合、試験はほとんどの臨床検査室改善修正法案(CLIA:Clinical Laboratory Improvement Amendments)要件を免除される可能性がある。パウチ7000は、本明細書で詳しく記載される器具800又は器具1200のような器具における使用向けに構成することができる。
[00266] パウチ7000は、反応ゾーンや流路チャネル等を形成するように接合されている2つ以上の材料層(例えば本明細書の他の箇所で記載されるプラスチックフィルム層)から製造できる。パウチ7000は一体型サンプル調製(ISP)ゾーン7005を含み、これは、分析対象のサンプル(例えば、未知の細胞及び/又は病原体を含む疑いがあるサンプル)を受容し、第1段階及び第2段階の核酸増幅を用いる核酸増幅及び分析のためにサンプルを調製するよう構成されている。例示されている実施形態において、ISPゾーン7005はチャネル7009を介して一体型流体ブリスタ7001に流体接続されている。一実施形態において、一体型流体ブリスタ7001は、パウチ材料層間に形成されて製造時に流体が充填された開放可能シール(例えば連結させたフィルムによるシール(tacked together film seal)又は破裂可能シール(burstable seal))を有する流体充填ブリスタとすればよい。一実施形態において、一体型流体ブリスタ7001はある体積(例えば200μl)の溶解緩衝剤を収容することができ、これは、例えばサンプル水和及び/又は溶解を促進するためサンプルと共にISPゾーン7005に導入することができる。
[00267] 一実施形態において、パウチ7000は、チャネル7008を介して一連の試薬ウェル7045a~7045kに流体接続されている内蔵ブリスタ7002も含むことができる。内蔵ブリスタ7002は、ある体積(例えば800μl)の試薬再水和溶液(例えば精製水)を含むことができ、これは、チャネル7008及び試薬ウェル7045a~7045kに導入されて、そこで脱水試薬を再水和するか又は高濃度試薬を希釈することができる。試薬ウェル7045a~7045kには入口チャネル7046a~7046dが設けられ、これらは、任意選択的にフローチャネル7008に沿った試薬ウェル間の流れと共に使用されて、パウチ7000の様々なサンプル調製ゾーン及び反応ゾーン内に試薬を導入することができる。4つの入口チャネル7046a~7046dのみが図示されているが、追加の入口チャネルが想定されること、及び複数の試薬ウェルをパウチ7000の様々なブリスタに接続できることは理解されよう。一実施形態において、試薬ウェル7045a~7045kは、図1に示されている装備品590と同様の構造に配置することができる。別の実施形態において、試薬ウェル7045a~7045kは、パウチの材料層に形成された(例えば熱成形された)ブリスタ又はウェルを含むことができる。そのような試薬ブリスタの説明のための例が図11A及び図11Bに示されており、以下で図11C及び図12Aから図12Dを参照して、乾燥試薬ブリスタ及び液体試薬ブリスタの具体例を詳しく検討する。例示的に試薬ウェル7045a~7045kは、使用前に再水和させことができる凍結乾燥試薬(例えば乾燥粉末及び/又は凍結乾燥試薬ピル)を含むか、又は試薬ウェル7045a~7045kは、液体試薬、又は乾燥試薬と液体試薬の組み合わせを含み得る。
[00268] 例示されている実施形態において、ISPゾーン7005は、パウチ7000の製造に使用される材料層に形成する(例えば熱成形する)ことができるサンプル注入ポート7003に隣接している。一実施形態においてサンプル注入ポートは、液体サンプル、サンプルスワブ、固体又は半固体のサンプル等のISPゾーン7005への投入を容易にする逆円錐形とすることができる。他の形状及び構成も本開示の範囲内である。更にISPゾーン7005は、ISPゾーン7005にサンプルが投入された後に密封できる密封可能ゾーン7004を含む。例えば密封可能ゾーン7004は、プラスチック袋タイプのジッパーシール、剥がして再び使える接着片、熱シール、又は別のシールを用いて密封できる。一実施形態では、ISPゾーン7005内で、限定ではないが超音波処理デバイス、ビーズビーター、パドルビーターのような溶解デバイスを用いて、又は化学的溶解によって、細胞やウイルス等を溶解することができる。溶解を促進するため、サンプルを(例えば約70~90℃に)加熱してもよい。一実施形態では、細胞溶解を改善するため、ISPゾーン7005に溶解粒子(例えばケイ酸ジルコニウム又は金属ビーズ)を含ませてもよい。そのようなビーズは、製造時にISPゾーン7005に含ませるか、又は下流ブリスタ(例えばブリスタ7006又は7007)から、試薬ブリスタ(例えばブリスタ7045a)から、又はサンプルと共に、ISPゾーン7005に導入することができる。
[00269] 溶解物から核酸を回収するため、シリカでコーティングされた磁気ビーズをISPゾーン7005に投入することができる。そのようなビーズは、製造時にISPゾーン7005に含ませるか、又は下流ブリスタ(例えばブリスタ7006又は7007)から、もしくは試薬ウェル7045a~7045kのうち1つからISPゾーン7005に導入すればよい。ビーズが下流ブリスタから導入される場合、磁気ビーズを、例示的に試薬ウェルのうち1つから提供される流体を用いて又は溶解物によって再水和させ、次いでチャネル7050b又は7050dを介してチャネル7050aへ、更にISPゾーン7005へ移動させることができる。図1及び図2を参照して本明細書で詳しく説明したように、磁気ビーズ及び溶解物は充分な時間期間にわたって混合させ、次いで器具内の磁石の活性化によって磁気ビーズを捕捉して、少なくとも1つの洗浄ステップのためにブリスタ7006又は7007に移動させ、その後、捕捉した核酸を磁気ビーズから溶出させることができる。
[00270] 本明細書に記載されている様々なパウチと同様、パウチ7000は、第1段階PCRブリスタ7010と、第2段階PCRの前に第1段階PCRからの生成物の一部を測定するための体積希釈ウェル7015と、多数の個別反応ウェル7082を含む第2段階PCRアレイ7081と、を含む。第1段階PCRブリスタ7010及び第2段階PCRアレイ7081は、本明細書の他の箇所で記載されるように、第1及び第2段階のPCRのために使用することができる。
[00271] 体積ウェル7015は、例示的にブリスタ7020及び7025である1つ以上のブリスタに流体結合することができ、ここで、第2段階PCR用の試薬が導入されて希釈ウェル7015の内容物と混合される。一例においては、ブリスタ7020と7025との間で体積ウェル7015の内容物と第2段階PCR用の試薬を繰り返し混合することにより、第2段階PCR用のサンプルを調製できる。ブリスタ7005、7010、7020、及び7025、希釈ウェル7015、及び第2段階アレイ7081は、チャネル7050a~7050hによって流体接続することができる。例示されている実施形態において、第2段階アレイ7081のウェル7082は、図6aに示されている充填チャネル6012と同様に機能する分岐充填チャネル7012を介してチャネル7050hに流体接続されている。アレイ7081は分岐充填チャネル7012と共に示されているが、例えば、限定ではないがらせん形、蛇行形、図6Aに示されているものと同様のクラスタ等、他の充填チャネル構成も使用できることは認めらよう。
[00272] 一実施形態において、パウチ7000は、パウチ7000を形成するように密封された多数の材料層(同一材料の層、又は異なるタイプの材料の層)から製造することができる。他の材料も使用され得るが、パウチ7000のフィルム層は例えば、図1に示されているパウチ510と同様の可撓性プラスチックフィルム又は他の可撓性材料から形成できる。例えばパウチ7000は、限定ではないが、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、それらの組み合わせ、混合物、及び積層層のような材料から製造することができ、押し出し成形、プラズマ堆積、及び積層を含む当技術分野において既知の任意のプロセスによって作製できる。また、アルミニウム積層を用いた金属フォイル又はプラスチックを含む他の材料も使用できる。ブリスタ及びチャネルを形成するように密封できる他のバリア材料も当技術分野において既知である。プラスチックフィルムを用いる場合、これらの層は、例示的に熱シール又はレーザ溶接によって接合することができる。例示的に、材料は低い核酸結合能と低いタンパク結合能を有する。第2段階アレイは、本明細書の他の箇所で検討されるようなカード材料を用いて製造できる。蛍光検出が用いられる場合、パウチの適切なエリアで(例えば第2段階アレイの近傍において)光学的に透明な材料を使用することができる。
[00273] いくつかの実施形態において、第2段階アレイのウェルは、第2段階PCRにおいて流体によるウェルの充填を容易にするため部分真空下に置くことができる。一般にこれは、製造時から、使用時にサンプルパウチの周りのパッケージを開くまで、パウチが部分真空下で保管されることを意味し得る。図8A、図8B、図9Aから図9E、図10A及び図10Bは、第2段階アレイにおける信頼性の高いウェル充填を可能としながら真空保管の代わりに使用できる第2段階アレイ構成を示す。以下で詳しく検討されるように、図8A及び図8Bは、エリア8050a及び8050bを含む第2段階アレイのウェルの切断図を示す。これらのエリアは、空気及び余分な流体をウェル8006a及び8006bから逃がすことで、パウチ及びアレイを真空下に維持する必要なく、流体が充填チャネル8012a及び8012bからウェル内に流れることを可能とする。本明細書の他の箇所で詳しく検討されるように、図10A及び図10Bは、例示的に液体充填チャネルに形成することができる真空経路を含むアレイを概略的に示す。これは、例えば器具においてパウチ内でアッセイを実行している間にインサイチュでアレイを部分真空に引くことができる。
[00274] ここで図8A及び図8Bを参照すると、ウェル充填システムの2つの設計の断面図が示されている。これらの図は図6B及び図6Cに示された図と同様である。図8Aに示されているウェル8006aは、第1のフィルム層8030a、第2のフィルム層8032a、接着層8034a、ウェル8006aが形成され得るカード層8036a、第2の接着層8038a、及び第3の(外側)フィルム層8040aから製造できる。図8Bに示されているウェル8006bは、極めて類似しており、第1のフィルム層8030b、第2のフィルム層8032b、接着層8034b、ウェル8006bが形成され得るカード層8036b、第2の接着層8038c、及び第3の(外側)フィルム層8040bから製造できる。
[00275] 図8Aにおいて、第1及び第2のフィルム層8030a及び8032aの間に液体が流れることができるギャップを残すことにより、充填チャネル8012aを形成できる。図8Bは、第1及び第2のフィルム層8030b及び8032bの間にギャップを残すことにより形成された同様の充填チャネル8012bを示す。第1の接着層8034bの対応する切り欠きに隣接している第2のフィルム層8032bの選択的な切り欠きを作製することにより、充填孔8018bを形成できる。
[00276] 図8Aにおいて、切り欠き8042a及び切り欠き8044aを通ってウェル8006a内へ流入するウェル充填チャネルを通る液体の流れによって加圧され得るウェル8006a内の空気は、カード層8036a及び第2の接着層8038aに切り欠きを作製することで形成されたチャンバ8050aに逃げることができる。図8Bにおいて、充填孔8018b及び切り欠き8046bを通ってウェル8006b内へ流入するウェル充填チャネルを通る液体の流れによって加圧され得るウェル8006b内の空気は、カード層8036bに切り欠きを作製することで形成されたチャンバ8050bに逃げることができる。8050a及び8050bのような空気逃しチャンバはそれぞれ1つのウェルに接続されて図示されているが、いくつかの実施形態では、そのような空気逃しチャンバを複数の隣接したウェルに接続してもよいことは理解されよう。同様に、8050a及び8050bのような空気逃しチャンバは止まり穴として示されているが、いくつかの実施形態では、空気逃し経路を他の層に接続し、更には外気又は真空源に接続してもよいことは理解されよう。図6Bから図6Cはパウチ5000に関連付けて示され、図8Aから図8Bはパウチ7000に関連付けて示されているが、本明細書に記載されている第2段階ウェルは本明細書に記載された様々なパウチにおいて使用することができ、特定の用途の必要によってのみ限定されることは理解されよう。
[00277] ここで図9Aから図9Eを参照すると、本明細書に記載されている様々な科学カード又はパウチで使用される第2段階ウェルの別の実施形態が示されている。例示的に真空なしで充填できるウェル9004a~9004cが図示されている。ウェル9004a~9004cは、第1のプラスチック層に形成することができ、例示的に第2段階増幅用のプライマー対をスポットし、次いでウェルの開放端部を第2のプラスチック層で覆うことができる。次いでウェル9004a~9004cを平坦化し、これにサポート層を提供することができる。サポート層はウェルを取り囲み、とりわけ使用中にウェルが再び平坦化するのを防止できる。
[00278] 図9Aに示されている実施形態では、第1のフィルム層9002(例えば熱可塑性ポリマー層)にウェル9004a~9004cを形成する(例えば熱成形する)ことができる。形成の後、ウェル9004a~9004cに第2段階PCR用のプライマーをスポットすることができ(概略的に9005a~9005cで示されている)、これは例示的に、第1のフィルム層9002が上下逆さまである間に実行される。一実施形態において、ウェルを形成するための設備(fixture)は、ウェル形成時にプライマーをスポットするための流体接続部を含み得る。図9Bに示されている第2のステップでは、第1のフィルム層9002に第2のフィルム層9006を接合する(例えばレーザ溶接する)ことができる。一実施形態において、第2のフィルム層9006は単一のフィルム層とすることができ、第2段階ウェル9004a~9004cに対応する充填孔9020a~9020cがフィルム層に形成されている。別の実施形態では、第2のフィルム層9006は1つ以上の層から形成することができ、第2段階ウェル9004a~9004cを充填すると共に好ましくはウェル間のクロストークを防止するための、1又は複数の充填チャネル、充填孔、及びその他の任意選択的な流れ構造を備えている。
[00279] 図9Cに示されている第3のステップでは、図9Aで形成されたウェル9004a~9004cを設備9008によって実質的に平坦に圧縮することができる。平坦化の後、図9Dに示されているように、蛍光データ獲得中のウェル間の光学的クロストークを防止するため、不透明とすることができる層9010をウェル間に追加できる。一実施形態において、不透明層9010は、剛性又は半剛性材料(例えばアレイ581又は5081を製造するために使用される厚いカード材料)から製造することができ、アレイのウェルが第2段階PCRサイクリングで充填された後に再び平坦化することから保護できる。図9Dはウェル形成及び平坦化の後に不透明層9010を追加することを示すが、不透明層9010をウェル形成又は平坦化の前に追加してもよいことは認められよう。一実施形態において、不透明層9010は、反射性材料(例えばアルミめっきマイラー(aluminized Mylar)のようなフォイル又は金属化プラスチック材料)から製造できる。例えば反射性材料は、ウェル間の光学的クロストークを防止しながら、個々のウェル内に反射を与えて光学信号を増大させることができる。いくつかの実施形態では、剛性又は半剛性の層に加えて反射性材料を追加できる。同様に、反射性材料はウェル形成及び/又は平坦化の前又は後に追加することができる。
[00280] 一実施形態では、図9Eに例示された実施形態に示されているように、以前に平坦化したウェル9004a~9004cを、流体を充填することによって再膨張させることができる。平坦化したウェル内には閉じ込められた空気が実質的に存在しないので、例示的にウェル9004a~9004cを弱い圧力で充填することによって、アレイを部分真空下に置くことなくウェル9004a~9004cを充填することが可能である。本明細書に記載されている方法の1つ以上に従った核酸増幅のため、ウェル9004a~9004cを熱サイクルさせることができる。
[00281] 図10A及び図10Bは、パウチを部分真空下で製造及び保管することなく充填できる第2段階アレイ11000の別の実施形態を示す。第2段階アレイ11000は、図6Aに示されている第2段階アレイ6000と同様である。部分的に溶接ライン11026によって画定される第2段階アレイ11000は、第2段階ウェル11002、11004、11006、11008、及び11010を含み、これらの各々は、特定の第2段階プライマー対が提供され、第2段階PCR用の成分(例えば、第1段階PCRからの希釈生成物、ポリメラーゼ、dNTP等)を充填し、本明細書の他の箇所で詳しく記載されるように、第2段階分析のため熱サイクルさせることができる。第2段階ウェルは充填チャネル11012から充填可能であり、充填チャネル11012は、各第2段階ウェルに関連付けられている充填孔11014、11016、11028、11020、及び11022、並びに流体ビア11052a~11052eと流体連通している。充填チャネルに一体的に形成され、充填孔、ビア、及び第2段階ウェルの各々と流体連通しているのは、例示的な真空経路11050である。真空経路11050は、アレイから離れているパウチの一部に配置され得るポート11051と流体連通している。一実施形態において、ポート11051は、前もって形成するか又はインサイチュで形成して真空経路への流体アクセスを提供できる開口11051aを含み得る。例示的に、開口11051aは層11030又は11032のいずれかに形成できる。例えば真空経路11050を用いて、(例えばパウチ動作中に器具内の真空ポンプによって)インサイチュで第2段階ウェルを部分真空に引くことで、パウチを真空下で製造又は保管する必要をなくすことができる。一実施形態において、真空チャネル11050は例示的に、真空源に接続できるパウチ上の遠隔真空ハブに接続することができる。
[00282] ここで図10Bを参照すると、充填チャネル11012及び真空経路11050の断面が示されている。図示されている実施形態において、充填チャネル11012は、11026においてエッジで接合された(例えば熱溶接又はレーザ溶接された)2つのフィルム層11030及び11032の間の開いた空間として形成されている。例示的に、真空経路11050は、層11030又は11032の一方又は双方におけるサブチャネルとして形成できる。図示されている実施形態において、真空経路11050は、チャネル11012を開放した状態に保持すると共に、充填孔、ビア、及び第2段階ウェルを真空経路11050及びポート11051を介して真空源に接続するように設計されたアーチ形状を有する。真空チャネル11050が存在しなかったら、チャネル11012に真空が与えられた場合にチャネルは閉じる(「kiss」shut)傾向があり、第2段階アレイ11000の排気を防ぐ可能性がある。一実施形態において、真空チャネル11050は、熱成形設備を用いて(例えば適切な形状に作られた熱「デボス加工(debossing)」ワイヤ)、層のうち1つに形成することができる。他の実施形態では、成形、レーザエッチング、ジューログラフィ(xurography)等によって真空チャネル11050を形成できる。図10Bに示されているように、熱成形されたチャネルの一例である真空経路11050は、プラスチック層に形成されたチャネルを含む。好ましくはチャネル11050は、真空によって第2段階ウェルから空気を引くことができるようにプラスチックを支持すると共にチャネルを開いた状態に保持するアーチ形状を有する。しかしながら、例えばポート11051の近傍かつアレイウェルから離れた真空経路11050上に熱シールを適用することで層11030及び11032を接合することにより、真空経路11050を密封してもよい。
[00283] 一実施形態では、器具において、第2段階アレイに対して少なくとも1~150ミリバール(例えば2~10ミリバール、より好ましくは2~5ミリバール)の真空を10~120秒間引くことができる。真空を引いた後、真空チャネルを密封し(例えば熱シール)、真空をポート11051で開放し、これによってアレイのウェルを部分真空下に置くことができる。上述したものと同様の真空チャネルを備えたプロトタイプのアレイでの実験によって、インサイチュで真空を引くことは、真空下でパウチを製造し保管することと少なくとも同程度に効果的であり、おそらくはそれよりも効果的であり得ることが示されている。
[00284] ここで図11A及び図11Bを参照すると、パウチ10000の別の実施形態が示されている。パウチ10000は、本明細書に記載されている他のパウチと同様に使用することができる。パウチ10000は、図7のISPゾーン7005と同様の一体型サンプル調製(ISP)ゾーン10005を含む。ISPゾーン10005は、(血液、痰、便、唾液、土等からの)サンプル収集に使用できる吸収チップ10070を備えたスワブ10060を含む。使用時、ISPゾーン10005を10003で開き(例えば破って開くか又はシールを開くことによって)、サンプル収集のためスワブ10060を取り出すことができる。収集の後、スワブ10005をISPゾーン10005に再び挿入し、図11Bに示されているように分割ライン10065で折ることができる。図11Bに示されている一実施形態において、ISPゾーン10005は、サンプル調製の完了前にISP10005を密封するため使用できるシール10004(例えばジッパーシール、剥がして再び使えるシール、ねじ蓋シール等)を含み得る。あるいは、サンプル調製の完了前に容器を密封するためISPゾーン10005に熱シール等を適用することも可能である。任意選択的に、シール10004の位置でISPゾーン10005を密封するため、パウチ10000を動作させるよう構成された器具に熱シールバーを提供してもよい。
[00285] サンプル調製及び別のサンプル処理のため、パウチ10000は内蔵の流体貯蔵部10001及び10002a~10002eを含む。一実施形態において、流体貯蔵部は製造時に、あるいはパウチ使用前にユーザによって充填することができる。一実施形態において、流体貯蔵部10001はサンプル溶解緩衝剤10057及びサンプル溶解成分10056を含むことができる。サンプル溶解成分10056は、サンプル溶解物からの核酸回収に使用できるサンプル溶解粒子(例えばケイ酸ジルコニウムビーズ)及び/又はシリカでコーティングされた磁気ビーズを含み得る。図示されている実施形態において、流体貯蔵部10001は、ISPゾーン10005から貯蔵部10001の内容物を分離する、剥がして再び使えるシール又は壊れやすいシールのような開放可能シール10075を含む。一実施形態において、開放可能シール10075はパウチ製造中に据え付けられる破裂可能シールとするか、又は、パウチ10000を製造するため使用されるフィルム層は相互に多少の自然の親和性を持っていて緩く接合する傾向があり得るので、チャネルにおいて連結させたフィルム層によってシール10075を形成することも可能である。例えば、フィルムを一時的に(例えば剥がせるように)接合するのには充分であるが層を溶融して永久的な接合を形成するには不充分な熱をフィルム層に加える(例えば加熱ローラの間に通す)ことにより、フィルム層を連結させることができる。このシール及び本明細書で検討される他のシールは、当技術分野において既知のように、剥がして再び使えるシール、壊れやすいシール、連結シール、使い捨てシール、圧力シール、又は他のシールとすればよい。
[00286] 使用時、貯蔵部10001の内容物10056及び10057を、サンプル溶解のためISPゾーン10005に移すことができる。貯蔵部10001の内容物10056及び10057は、ユーザによって貯蔵部10001を手作業で操作することによりISPゾーン10005に移すことができる。又は、器具は圧力適用デバイスを含むことができ、これによって、パウチ10000を器具に挿入した後に貯蔵部10001の内容物10056及び10057を移すことも可能である。
[00287] 溶解及び核酸回収は、本明細書の他の箇所で前述したように(スワブ10060の存在下で)進めることができる。一実施形態において、溶解及び核酸回収は同時に進めることができる(すなわち、溶解粒子及び磁気ビーズを一緒にISPゾーン10005に導入できる)。別の実施形態において、試薬ブリスタ10045aは磁気ビーズの「ピル」10055aを含み、これを、溶解前、溶解中、又は溶解後に、チャネル10077aを介してISPゾーン10005に投入することができる。磁気ビーズ10055aのピルは、圧力によって形成するか又は溶ける材料で提供することができ、例えば剥がして再び使えるシール又は破裂可能な壊れやすいシール10076aを開くことにより、流体貯蔵部10002aからの流体10058aで再水和することによって、ISPゾーン10005内に導入できる。更に別の実施形態では、磁気ビーズを貯蔵部10001に含ませ、ピル10055aはプロテアーゼやヌクレアーゼ阻害剤のような別の溶解又は細胞調整試薬を含むことができる。他の組み合わせも想定されており、試薬ブリスタ10045a及び他のブリスタに提供される1又は複数の成分はピル以外の形態でブリスタに提供され得ることは理解されよう。
[00288] 本明細書の他の箇所で記載されるように、磁気ビーズは、関連付けられた器具内に提供された作動可能磁石によってISPゾーン10005から捕捉し回収することができる。洗浄及び溶出のため、磁気ビーズをブリスタ10006及び/又は10007に移送できる。試薬ブリスタ10045b及び10045cに示されている洗浄試薬ピル10055b及び10055c(例えば、限定ではないがpHが約4~5であるクエン酸ナトリウム等の酸性緩衝剤成分)は、シール10076bを開くことで貯蔵部10002bからの流体10058bによって再水和することができ、この再水和した試薬を、チャネル10077bを介してブリスタ10006及び10007に導入することができる。パウチ10000は、2回の洗浄に使用され得る試薬ピル10055b及び10055cと共に図示されているが、パウチが1回のみの洗浄又は3回以上の洗浄のための試薬を含み得ることは認められよう。同様に、試薬ピル10055b及び10055cは、1、2、3、又はそれ以上の洗浄ステップのために再水和して使用され得る。また、パウチ10000は、試薬ブリスタ10045d内に、磁気ビーズから核酸を溶出させるため使用できる溶出試薬ピル10055dも含む。一実施形態において、溶出試薬ピルは緩衝成分を含むことができ、再水和された場合にpHが約8~9である緩衝剤を生成する。別の実施形態において溶出試薬ピルは、pHが約8~9である緩衝成分と、第1段階PCR反応の1つ以上の成分(例えばdNTP、Mg、BSA等)を含み得る。例えば剥がして再び使えるシールを開くか又は壊れやすいシール10076cを破り、チャネル10077cを介して溶出試薬を導入することで、貯蔵部10002c内の流体10058cによってピル10055dを再水和できる。本明細書の他の箇所で記載されるように、洗浄及び溶出のため、作動可能磁石を用いて磁気ビーズを捕捉することができる。
[00289] また、パウチ10000は、第1段階PCRブリスタ10010と、第2段階PCRの前に第1段階PCRからの生成物の一部を測定するための体積希釈ウェル10015と、多数の個別反応ウェル10082を含む第2段階PCRアレイ10081と、を含む。第1段階PCR用の試薬は、試薬ブリスタ10045e内の試薬ピル10055eに含めることができる。試薬ピル10055eは、破裂可能シール10076d及びチャネル10077dを介して貯蔵部10002d内の流体10058dによって再水和することができる。体積ウェル10015はブリスタ10020及び10025に流体結合することができ、ここで、第2段階PCR用の試薬が導入されて希釈ウェル10015の内容物と混合される。第2段階PCR用の試薬は、試薬ブリスタ10045f内の試薬ピル10055fに含めることができる。試薬ピル10055fは、破裂可能シール10076f及びチャネル10077fを介して貯蔵部10002f内の流体10058fによって再水和することができる。シール10075と同様、シール10076a~10076eは、例えば壊れやすいシール又は開放可能もしくは剥がして再び使えるシールとすることができ、例えば、フィルムの熱間圧延又は同様の処理によって、フィルムを溶融して永久的なシールを形成することなく接合することにより、チャネル10077a~10077eにおいてフィルムを連結させることで形成される。一例においては、ブリスタ10020と10025との間で体積ウェル10015の内容物と第2段階PCR用の試薬を繰り返し混合することにより、第2段階のPCR用のサンプルを調製できる。いくつかの実施形態では、試薬ピル10055a~10055fの代わりに液体試薬をパウチ10000に提供することができる。例えば流体ブリスタ10001及び10002a~10002eは、核酸回収、磁気ビーズ洗浄、溶出、第1段階PCR、第2段階PCR等のための液体試薬を含むことができ、すぐに使える液体試薬の代わりに試薬ピル10055a~10055fのいくつか又は全てを省略してもよい。
[00290] ブリスタ10005、10006、10007、10010、10020、及び10025、希釈ウェル10015、及び第2段階アレイ10081は、チャネル10050a~10050fによって流体接続することができる。パウチ10000内での、入口チャネル10077a~1077eからブリスタ間チャネル10050a~10050fを介した流体移動は、例えば図2を参照して上述したように、チャネルに作用するシールを用いることで制御し方向付けることができる。ブリスタ間の流体移動は、例えば図2を参照して上述したように、ピストン等によって作動させることができる。
[00291] 一実施形態において、パウチ10000は、パウチ10000を形成するように密封された多数の材料層(同一材料の層、又は異なるタイプの材料の層)から製造することができる。他の材料も使用され得るが、パウチ10000のフィルム層は例えば、図1に示されているパウチ510と同様の可撓性プラスチックフィルム又は他の可撓性材料から形成できる。例えばパウチ10000は、限定ではないが、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、それらの組み合わせ、混合物、及び積層層のような材料から製造することができ、押し出し成形、プラズマ堆積、及び積層を含む当技術分野において既知の任意のプロセスによって作製できる。アレイ10081に同様の材料(例えばポリカーボネート)を使用してもよい。また、アルミニウム積層を用いた金属フォイル又はプラスチックを含む他の材料も使用できる。ブリスタ及びチャネルを形成するように密封できる他のバリア材料も当技術分野において既知である。プラスチックフィルムを用いる場合、これらの層は、例示的に熱シール又はレーザ溶接によって接合することができる。例示的に、材料は低い核酸結合能と低いタンパク結合能を有する。蛍光検出が用いられる場合、パウチの適切なエリアで(例えば第2段階のアレイの近傍において)光学的に透明な材料を使用することができる。
[00292] ここで図11Cを参照すると、例示的な試薬ブリスタ10045の断面図が示されている。図示されている実施形態において、試薬ブリスタ10045は第1のフィルム材料層10080及び第2のフィルム材料層10085から製造されている。図示されている実施形態では、第1のフィルム層10080を成形して(例えば熱成形して)ブリスタ形状を形成することができる。第1のフィルム層10080及び第2のフィルム層10085は、10090で概略的に示されている溶接ライン(例えばレーザ溶接ライン)によって、ブリスタ周辺部の少なくとも一部で接合することができる。例えば図11A及び図11Bに示されているように、試薬ブリスタ10045に対する流体流の出入りを可能とするため、溶接ライン10090は連続していない場合がある。
[00293] 試薬ピル10055は、パウチ10000及び本明細書に記載されている方法において使用するのに適した化学物質や酵素等を含み得る。試薬ピル10055は、凍結乾燥のために化学物質や酵素等を安定化させるため、当技術分野において既知の添加物も含み得る。一実施形態において、ピル10055は、層10080に形成されたブリスタ10081に追加される前に急速冷凍又は凍結乾燥させることができる。例えば、凍結乾燥させた試薬ピルをホッパー等に配置し、自動化又は半自動化製造プロセスで、10081のような形成されたブリスタに追加することができる。本発明者等は、この場合、例えば図11A及び図11Bに示されている貯蔵部10002a~10002eからの水性溶媒に暴露されると、そのような試薬ピルが容易に再水和することを見出した。図11Cは試薬ピル10055を示すが、いくつかの実施形態では試薬を乾燥粉末として試薬ブリスタに分配してもよい。例えば試薬は、試薬ピルに形成し、凍結乾燥し、粉末にし、次いで粉末の形態で試薬ブリスタに分配することができる。代替的な実施形態では、何らかの試薬(例えば逆転写酵素及び、任意選択的に緩衝剤及び安定剤)を媒質(例えば濾紙)に適用し、空気乾燥し、細かく分割し、次いで、乾燥試薬を有する媒質片として試薬ブリスタに分配することができる。別の代替的な実施形態では、液体試薬(例えば液体試薬の液滴及び、任意選択的に緩衝剤や安定剤等)を、試薬ブリスタを形成するため使用されるフィルムに直接加え、次いで、試薬ブリスタの領域内又は領域周辺の所定位置で、あるいは直接に反応ブリスタ内で又は反応ブリスタ周辺で、空気乾燥させことができる。
[00294] 図7、図11A、及び図11Bは、内蔵された水、溶解緩衝剤、又は他の液体試薬を含み得るパウチを示す。いくつかの実施形態では、製造時に水や溶解緩衝剤等をパウチのパウチフィルム層間に追加することができる。内蔵された水や溶解緩衝剤等によって、例えばパウチを使いやすくすることができる。すなわち、オペレータが必ずしも高度な訓練を受けた技術者である必要はなくなる。図11A及び図11Bの例では、ユーザがやるべきことは、提供されているスワブを用いてサンプル(例えば血液、唾液、痰、又は環境サンプル)を収集し、サンプルの付いたスワブを提供されているサンプル調製チャンバ(すなわちISPゾーン10005)に戻し、任意選択的にスワブを折り、サンプル調製チャンバを密封し、パウチを器具内に配置することだけである。器具は、サンプルを調製し分析するために必要なステップの残り部分を実行するようプログラムできる。このステップの残り部分は、限定ではないが、サンプル及び試薬の水和、サンプル調製、核酸回収、第1段階PCR、及び第2段階PCRを含む。水や溶解緩衝剤等はパウチのパウチフィルム層間に加えることができるが、図12Aから図12Dは、様々なパウチ実施形態に内蔵の水及び緩衝剤を配置するいくつかの他の可能性を示している。
[00295] 図12A及び図12Bは、一実施形態において、図11A及び図11Bに示されている貯蔵部10001と同様の貯蔵部10001aに配置することができる水性溶媒パケット12000の実施形態の図を示す。水性溶媒パケット12000は、例えば精製水や緩衝剤等を充填することができ、貯蔵部10001aに取り付けるように製造できる。一実施形態において、水性溶媒パケット12000は、水性溶媒パケット12000の一部の周りで二重に密封し(12002)、別の部分の周りで単一の密封を行うことができる(12004)。そのような実施形態では、水性溶媒パケット12000を外周全体にわたって密封することで水性溶媒パケット12000の内容物の完全性及び予め選択された体積を維持しながら、単一密封部12004が容易に破裂可能な部分を提供するので、パケットの内容物をパウチ内へ投入することができる。一実施形態において、水性溶媒パケット12000は、パケットの内容物を投入するため加えられた圧力が破裂可能シール部に集中するような形状とすることができる。例えば図示されている実施形態では、パケット12000は破裂可能シール部12004の方に向かって幅が狭くなるので、二重密封部分12002でなく部分12004において破裂し、加えられた圧力が緩和する傾向がある。図12Aは、選択的に破裂可能なシールを有する水性溶媒パケットに可能である1つの設計を示す。他の破裂可能シールも可能であり、本開示の範囲内である。
[00296] 図12Bは、貯蔵部10001a及び水性溶媒パケット12000の断面図を示す。水性溶媒パケット12000は、第1の材料層12010及び第2の材料層12012から製造することができる。一実施形態において、第1及び/又は第2の材料層12010及び12012は、限定ではないが、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、それらの組み合わせ、混合物、及び積層層のような材料から製造できる。別の実施形態では、第1及び/又は第2の材料層12010及び12012は、限定ではないが、アルミニウムフォイル、プラスチック/金属フィルム、及び金属化プラスチックフィルム(例えばアルミめっきマイラー)等の金属フォイル材料から製造できる。そのような金属フォイル(例えばアルミニウムフォイル)は、真空下での長期(例えば最長で1年又は2年)にわたる保管のため、水性溶媒パケット12000の内容物12014(例えば緩衝剤や水等)を保存することができる。従って、水性溶媒パケットは製造時にパウチの適切な部分に配置され、その後パウチを真空下で出荷及び保管することができる。
[00297] 一実施形態において、水性溶媒パケット12000は、パウチとは別個に製造された水性溶媒のパケットとすることができ、例えばパウチ10000の貯蔵部10001等のような、パウチ内に形成されている選択されたポケットにぴったり収まるような大きさ及び形状である。別の実施形態において、水性溶媒パケット12000はパウチと同時に製造され、パウチを製造するため使用される材料層に形成されてこれらの材料層の間に密封することができる。図12Bに示されているように、例えば貯蔵部10001aは層12006及び12008から製造され、水性溶媒パケット12000は、12016に示された領域において層12006及び12008に接合する(例えば熱シール又はレーザ溶接)ことができる。水性溶媒パケット12000を別個に製造及び充填し、次いで貯蔵部の製造中にパウチに取り付けて密封できるので、製造を容易にすることができる。同様に、パウチ層の間に水性溶媒パケット12000を密封することで、圧力を加えた場合にパケットから放出される流体流の誘導を促進することができる。
[00298] 図12C及び図12Dは、貯蔵部10001bのための別の水性溶媒パケットを示す。図12Cの水性溶媒パケット12020は図12Aの水性溶媒パケット12000と同様である。水性溶媒パケット12020は、水や緩衝剤等を収容するフォイル又はプラスチックフィルムの容器とすることができ、例えば外圧に応じて適切な時点でパウチ内へ内容物を投入するように構成できる。水性溶媒パケット12020は、パケット12020の外周部の周りで二重に密封して(12022)、パケット12020の内容物を保護することができる。水性溶媒パケット12020は、パケット12020からの流体の自由な流れを防止するため開放可能シール(図示せず)を設けることができる。流体を放出するため、水性溶媒パケット12020には出口チューブ12024が設けられており、これを、例えば12028で示されるパウチチャネルに接続できる。一例においてパウチチャネル12028は、図11A及び図11Bに示されているチャネル10077a~10077eのうち1つと同様とすることができる。流体が貯蔵部(例えば貯蔵部10001)内へ逆流することを防ぐため、また、流体がチャネル12028に流入することを保証するため、12026の領域に示されているように出口チューブ12024をパウチ材料に密封する(例えば熱シール又はレーザ溶接)ことができる。
[00299] 図12Dは、容易に破裂可能な薄い材料層12034及び厚い材料層12036から製造されている水性溶媒パケット12030を示す。圧力に応じて層12034が破裂すると、流体12038が放出される。一例において、層12034は薄いフォイル層であり、層12036は厚いフォイル層である。層12034は破裂可能であるので、層12034及び12036は例えば、パケット12030の外周全体にわたって単一密封又は二重密封する(12032)ことができる。これは、図12Aが12004において単一密封部を含み、ここで好ましくはパケット12000が破裂して流体を放出するのとは異なっている。
[00300] ここで図13を参照すると、図11Aから図11Bのサンプル調製チャンバ10005aと同様の、サンプル調製チャンバ10005aの一実施形態の断面図が示されている。サンプル調製チャンバ10005aの図示されている実施形態は、13010で接合されてサンプル調製チャンバ10005aの背面を形成する第1及び第2のフィルム層13008及び13012、並びに、13018で接合されてサンプル調製チャンバ10005aの前面を形成する第3及び第4のフィルム層13014及び13016から製造されている。サンプル調製チャンバ10005aに溶解緩衝剤を充填すると共に溶解物を回収するため使用できる充填チャネル13006及び充填孔13007が、層13012に形成されて、チャネル13006をチャンバ10005aに接続している。サンプル調製チャンバ10005aを密封するためにシールを提供できる領域が13020に示されている。
[00301] サンプル調製チャンバ10005aを用いるための方法は、図11A及び図11Bを参照して記載した。図13において、サンプル調製チャンバ10005aは任意選択的なフィルタ13004を含む。使用時、溶解緩衝剤はチャネル13006を介してサンプル調製チャンバ10005a内に導入されて、スワブ10060及び吸収スワブ端部10070aのサンプルを水和することができる。図13に示されている実施形態では、サンプル調製チャンバ10005a内のピル13002に、サンプル調製媒質(例えば溶解粒子及び/又はシリカでコーティングされた磁気ビーズ)が配置されている。溶解緩衝剤がサンプル調製チャンバ10005a内に導入された場合、緩衝剤は水和し、サンプルを分散させ、サンプル調製媒質を分散させる。サンプル調製は例えば、ビーズビーターモータ又は本明細書の他の箇所で詳しく記載される他の方法によってサンプル調製チャンバ10005aを叩くことで実行できる。溶解の後、サンプル調製チャンバ10005aからフィルタ13004及びチャネル13006を介して溶解物を放出することができる。
[00302] 一実施形態において、フィルタ13004は、溶解粒子がフィルタを通り抜けて流れることはできないが磁気ビーズはこれを容易に貫通できるような大きさである。例えば、本明細書に記載される実施形態で典型的に使用される溶解粒子は約100~200μmの大きさを有し、本明細書に記載される実施形態で使用される磁気ビーズは約1~5μmの大きさを有し得る。従って一実施形態では、磁気ビーズを溶解混合物に含ませ、溶解後に溶解物と磁気ビーズをサンプル調製チャンバ10005aから放出させると共に、これより大きい溶解粒子は残しておくことができる。他の実施形態では、溶解はケイ酸ジルコニウムビーズを用いて本明細書の他の箇所で記載されるように実行され、ビーズ破砕の後、溶解物はフィルタ13004を介してサンプル調製チャンバ10005aから放出させると共に溶解粒子は残しておくことができる。本明細書の他の箇所で記載されるように、下流に導入された磁気ビーズを用いて核酸回収を実行できる。
[00303] ここで図14Aを参照すると、第2段階PCRアレイ14081の代替的な実施形態が示されている。図14Aはパウチの一部分のみを示し、図14Aに示されている特徴部は本明細書に記載される様々な例示的なパウチに組み込まれ得ることは理解されよう。第2段階PCRアレイ14081は、第2段階反応ウェル14082の「n」個の列14004a、14004b、14004c、...14004(n)を含み、これらはそれぞれ充填チャネル14005a、14005b、14005c、...14005(n)に流体接続されている。第2段階PCRアレイ14081は、第1段階PCR反応ゾーン14010、希釈ウェル14015、並びに第2段階反応混合ブリスタ14020及び14025に流体接続されている。第2段階PCRアレイ14081、希釈ウェル14015、並びに第2段階反応混合ブリスタ14020及び14025は、充填チャネル14002に流体接続されている。充填チャネル14002は一実施形態において、ウェルの列14004a、14004b、14004c、...14004(n)を一度に1つずつ充填させるよう選択的に開放及び閉鎖することができる。ブリスタ14025と充填チャネル14002との間にシール14008を配置し、各アレイ充填チャネル14005a、14005b、14005c、...14005(n)と交差するようにシール14006a、14006b、14006c、...14006(n)を位置決めし、及び/又は充填チャネル14002と交差するようにシール14007a、14007b、...14007(n)を配置することで、第2段階反応ウェル14082の各列の充填を制御できる。シールは格納式シールとするか、又はヒートシールとするか、又は格納式シールとヒートシールの組み合わせ、又は当技術分野において既知の他のシールとすればよい。同様に、シールは手作業で適用するか、又は器具に適用することができる。
[00304] 一実施形態では、充填チャネル14005aに接続されたウェル14082にブリスタ14010からの流体を充填する(希釈ウェル14015並びに混合ブリスタ14020及び14025を用いるか、又はブリスタ14010から流体を直接用いる)には、シール14008を格納し、シール14007aを所定位置に保持し、ブリスタ14010から流体チャネル14002内へ流体サンプルを移動させればよい。充填チャネル14005aに接続されたウェル14082を充填した後、シール14006aを配置すればよい。充填チャネル14005bに接続されたウェル14082を充填するには、シール14007aを開放し、シール14007b及び14006aを所定位置に保持し、ブリスタ14010から流体チャネル14002内へ流体サンプルを移動させればよい。充填チャネル14005bに接続されたウェル14082を充填した後、シール14006bを閉鎖すればよい。充填チャネル14005cに接続されたウェル14082を充填するには、シール14006cを開放し、シール14007(n)、14006a、及び14006bを所定位置に保持し、ブリスタ14010から流体チャネル14002内へ流体サンプルを移動させればよい。充填チャネル14005cに接続されたウェル14082を充填した後、シール14006cを閉鎖すればよい。充填チャネル14005(n)に接続されたウェル14082を充填するには、シール14006(n)及びシール14007a~14007(n)を開放し、シール14006a~14006cを所定位置に保持し、ブリスタ14010から流体チャネル14002内へ流体サンプルを移動させればよい。充填チャネル14005cに接続されたウェル14082を充填した後、シール14006(n)を閉鎖すればよい。
[00305] 別の実施形態では、アレイ充填チャネル14005a、14005b、14005c、...14005(n)に接続されたウェル14082を、前述の例とは逆の順序で充填することができる。充填チャネル14005(n)に接続されたウェル14082を充填するには、シール14006a~14006cを所定位置に保持し、シール14006(n)を開放して、ブリスタ14010から流体チャネル14002内へ流体サンプルを移動させればよい。充填チャネル14005(n)に接続されたウェル14082を充填した後、シール14006(n)を閉鎖すればよい。充填チャネル14005(c)に接続されたウェル14082を充填するには、シール14006a、14006b、及び14006(n)を所定位置に保持し、シール14006(c)を開放して、ブリスタ14010から流体チャネル14002内へ流体サンプルを移動させればよい。充填チャネル14005(c)に接続されたウェル14082を充填した後、シール14006(c)を閉鎖すればよい。充填チャネル14005(b)に接続されたウェル14082を充填するには、シール14006a、14006c、及び14006(n)を所定位置に保持し、シール14006(b)を開放して、ブリスタ14010から流体チャネル14002内へ流体サンプルを移動させればよい。充填チャネル14005(b)に接続されたウェル14082を充填した後、シール14006(b)を閉鎖すればよい。次いで、充填チャネル14005(a)に接続されたウェル14082を充填するには、シール14006b、14006c、及び14006(n)を所定位置に保持し、シール14006(a)を開放して、ブリスタ14010から流体チャネル14002内に流体サンプルを移動させればよい。充填チャネル14005(a)に接続されたウェル14082を充填した後、シール14006(a)を閉鎖すればよい。これらの例では、充填チャネル14005a、14005b、14005c、...14005(n)に接続されたウェル14082は、順位(a、b、c、...(n)、又は(n)...c、b、a)で充填されるが、これらの例で記載されているように選択したシールを開放及び閉鎖することによって他の充填順序を使用できることは認められよう。
[00306] 一実施形態において、列14004a~14004(n)における第2段階反応ウェル14082の内容物は相互に実質的に同一である(すなわち、対応するウェル内の第2段階プライマーは同一である)。このため、例えば、第1段階PCRの選択された数のサイクル(例えば10サイクル)の後、列14004aにおいて第2段階PCRを開始し、第1段階PCRの選択された追加の数のサイクル(例えば合計で15サイクル)の後、列14004bを充填して列14004bにおいて第2段階PCRを開始し、第1段階PCRの選択された更に追加の数のサイクル(例えば合計で20サイクル)の後、列14004cを充填して列14004cにおいて第2段階PCRを開始することができる等である。複数の連続した第2段階PCR反応を、反応におけるテンプレート分子数に寄与する第1段階PCR反応サイクル数によって区切るので、平行反応においてクロッシングポイント(Cp)又は飽和に達するのに必要な第2段階PCR反応サイクル数を用いて、例えば、オリジナルのサンプル内の微生物の相対濃度又は溶解物から回収されたオリジナルのテンプレートの濃度を逆算することができる。
[00307] 別の実施形態では、列14004a~14004(n)における第2段階反応ウェル14082の内容物は同一でない場合がある。列14004aのウェルでは、開始サンプルに最も高い力価で存在することが予想されると共に予想外の陽性(positive)のリスクが最も高い微生物からの標的核酸配列を増幅するため、例えば列14004aの第2段階ウェルの各々に異なるプライマー対を提供することができ、列14004bのウェルでは、高い力価で存在すると共に予想外の陽性のリスクが中程度である微生物からの標的核酸配列を増幅するため、例えば列14004bの第2段階ウェルの各々に異なるプライマー対を提供することができ、列14004cのウェルでは、低い力価で存在すると共に予想外の陽性のリスクが低い微生物からの標的核酸配列を増幅するため、例えば列14004cの第2段階ウェルの各々に異なるプライマー対を提供することができる。「n」までの追加の列においても、異なる特徴及び異なる力価を有するサンプル内の異なる微生物セットを同定するためのプライマー対をウェル内に提供できる。この実施形態では、列14004a~14004(n)のウェルを実質的に同時に第2段階PCRのため充填し、熱サイクルすることができる。第2段階PCRの異なる数のサイクルの後、列14004a~14004(n)のセット内の微生物検出のための融解を実行できる。例えば、第2段階PCRの20サイクルの後、14004aのセット内の微生物からの核酸増幅を検出する融解を実行し、第2段階PCRの26サイクルの後、14004bのセット内の微生物からの核酸増幅を検出する融解を実行し、第2段階PCRの32サイクルの後、14004cのセット内の微生物からの核酸増幅を検出する融解を実行することができる等である。更に検討するには、例えば援用により本願に含まれる米国特許公報第2015/0232916号を参照のこと。第2段階アレイのこのような構成は、適宜、本明細書に記載されるパウチの任意のものと共に使用できることは理解されよう。
[00308] 図14Bは、アッセイデバイスにおいて使用できるアレイカード14100の別の実施形態を示す。アレイカード14100は、図14Aに示されているアッセイ装置14000におけるアレイの特徴部の多くを有する。アレイカード14100は、スタンドアロンのアレイとして使用されるか、又は本明細書に記載され図示されている様々な例示的なパウチに第2段階アレイとして組み込むことができる。アレイカード14100はPCR分析のためアッセイパウチにおいて使用することができ、その例は図14Aを参照してすでに検討した。又は、アレイカードを他のアッセイに使用することも可能である。アレイカード14100を使用できる用途の一例については図14Cを参照して後述する。
[00309] アレイカード14100は、それぞれウェル14182a~14182eを含む別々に充填可能な5列のウェル14104a~14104eを含む。しかしながら、5列のウェルは単なる例示であり、アレイカードはこれよりも多数又は少数の別個のウェル列を含み得ることは認められよう。列内のウェルは、本明細書において他の実施形態で記載されているように1つ以上の流体貯蔵部(例えば第1段階増幅ゾーン)に接続できる充填チャネル14102a~14102eを介してアクセス可能であり、更に、列14104a~14104eにグループ化されたウェルを各充填チャネルに流体接続する流体ビア14103a~14103eを介してアクセス可能である。具体的には、流体ビア14103a~14103eは、流体チャネル14114a~14114e及びウェル充填チャネル14115a~14115eを介してウェル14182a~14182eに流体接続されている。例えば、充填チャネル14102aに流入する流体は、流体ビア14103a、流体チャネル1411a、ウェル充填チャネル14115a、及びウェル14182aを含む相互接続された流体システムを介して、列14104aのウェル14182aを充填することができる。行14104b~14104eのウェル14182b~14182eも同様に充填できる。
[00310] 図10A及び図10Bを参照して検討したように、本明細書に記載されているアッセイ装置のいくつかの実施形態は、アレイの1つ以上のウェルにインサイチュで真空を与えることができる真空システムを含む。アレイカード14100はそのような真空システムを含む。真空システムは、真空ポート14110、真空チャネル14112、及び真空チャネル14113a~14113eを含む。真空チャネル14113a~14113eは、流体チャネル14114a~14114e及びウェル充填チャネル14115a~14115eを介してアレイウェル14182a~14182eに流体接続されている。アレイカード14100は、アッセイパウチに含まれる場合、アレイの上面及び下面を密封する2つ以上のプラスチックフィルム層の間で密封することができる。従って、真空ポート14110が(例えばポートを覆うフィルムに穿孔することで)開放され、ポートに真空が加えられた場合、真空はアレイ14100の流体接続されたウェルの全てを部分的に排気することができる。チャネル14113a~14113e上で領域14120に適用されたシール(例えば熱シール)は、真空ポート14110及び真空チャネル14112からの経路(channel)の全てを同時に密封し、これらの経路の全てを相互に密封するので、例えば列1414aに流入する流体は真空チャネルを介して他の列にアクセスできないようになっている。アッセイパウチのアレイ又は別の部分に真空をインサイチュで与えることについての更に詳しい検討は、援用により全体が本願に含まれるPCT/US18/34194号に述べられている。
[00311] 一実施形態において、図14Bのアレイ14100は、図14Aに示されている14000のようなパウチに組み込むか、又はアレイ14100は、限定ではないが、図1、図5A、図7、図11A及び図11B、図17Aから図17C、又は図21Aのパウチのような、本明細書に示されている別のパウチに一体化することができる。図14Cは、どのようにアレイカード14100をアッセイ物品(assay article)14200に組み込めるかを示す一実施形態を概略的に表す。簡略化のため、図14Cはアレイカード14100の詳細の多くを示していない。アッセイ物品14200は、アッセイを実行するために使用できる一連の流体ブリスタ14210a~14210eに流体接続されたアレイカード14100を示す。例えば流体ブリスタ14210a~14210eは、一連の連続希釈(ブリスタ14210a~14210d)及び標準14120eによってアッセイを実行するために使用できる。流体ブリスタ14120aは、このブリスタ14210a内へ流体サンプルを注入できるサンプル入口ポイント14212を含む。ブリスタ14210aは、一連の流体チャネル14212a~14212cによってブリスタ14210b~14210dに接続されている。チャネル14212a~14212cに出入りする流体流は、シール14214a~14214c及び14251a~14215cによって制御できる。シールは格納式シールとするか、又はヒートシールとするか、又は格納式シールとヒートシールの組み合わせ、又は当技術分野において既知の他のシールとすればよい。同様に、シールは手作業で適用するか、又は自動的に器具内部に適用することができる。
[00312] 一実施形態において、例えばチャネル14212を介してブリスタ14210aにサンプルが投入され、ブリスタ14210aに投入されたこのサンプルの一連の希釈を実行するため、流体ブリスタ14210b~14210dに選択された体積の流体を与えることができる。一実施形態において、流体チャネル14212a~14212cは、図14Aに示されているウェル14105と同様の体積希釈ウェルを含むことができ、あるいは別の実施形態において、チャネル14214a~14214cは、選択された体積の流体を受容するような大きさ及び寸法とすることができる。例えば、ブリスタ14210aからのサンプルをチャネル14212a内に(希釈ウェル内に又はチャネル自体内に)与えるには、シール14214aを開放し、ある体積の流体をチャネル14121aに投入し、シール14214aを閉鎖してシール14215aを開放し、チャネルの内容物をブリスタ14210b内の流体と混合すればよい。このようなシーケンスを14210c及び14210dについて繰り返して、ブリスタ14210a内のオリジナルのサンプルの一連の希釈を実行することができる(例えば0.1倍、0.01倍、及び0.001倍の希釈シリーズ)。1つの任意選択的な実施形態では、ブリスタ14210a~14210d内のサンプルの基準を与えるため、流体ブリスタ14210eを既知の標準溶液で予め充填することができる。
[00313] ブリスタ内の流体をウェル列14104a~14104eに投入するには、流体をブリスタ14210a~14210eから各充填チャネル14102a~14102eを介してウェル14182a~14182e内へ移動させればよい。一実施形態では、ウェル14182a~14182eに、選択されたアッセイを実行するための試薬(例えば乾燥試薬)を提供することができる。一実施形態では、ウェル14182a~14182eに、PCRベースのアッセイを実行するための成分を提供できる。別の実施形態では、ウェル14182a~14182eに、多種多様な化学又は生物学ベースのアッセイのいずれかを実行するための試薬及び反応成分を提供できる。例えばウェル14182a~14182eには、当業者に既知のように、比濁又は発色エンドトキシンアッセイを実行するための1つ以上の乾燥試薬を提供できる。一実施形態では、ウェル14182a~14182eに同一の試薬及び/又は成分を提供するか、又は、アッセイの1つ以上の試薬もしくは成分の一連の希釈物を提供することができる。
[00314] ここで図15Aから図15Cを参照すると、本明細書に記載されているパウチにおいてブリスタ間で流体を移動させるための「スポンジポンプ(sponge pump)」が示されている。図15Aに示されているのは、例示的なパウチ15000の1対のブリスタ15002及び15004である。チャネル15003がブリスタ15002及び15004を接続している。チャネル15003は吸収部材15006(例えばスポンジ又は別の吸収媒質)を有し、これを用いて、15008及び15010に示されているような流体体積を一方から他方のブリスタへ移動させることができる。図15Aはパウチの一部分のみを示しており、図15Aに示されている特徴部は本明細書における様々な例示のパウチ又は他の実施形態に組み込めることは理解されよう。
[00315] 図15B及び図15Cに示されているように、吸収部材15006aはフィルム層15012及び15014に接合できる。図15Bに示されているように、吸収部材15006aは膨張して流体を吸収し、次いで図15Cに見られるように圧縮して流体を放出することができる。チャネル15003の端部15005a及び15005bを(例えば器具内のシールを用いて)閉鎖することで、吸収部材によって移動させる流体に方向性を与えることができる。例えば図示されている実施形態では、チャネルの端部15005aを開放すると共に端部15005bを閉鎖して、ブリスタ15002から流体15008を引き入れ、更に端部15005aを閉鎖すると共に端部15005bを開放して、ブリスタ15004内のボリューム15010に流体を移動させることができる。更に、吸収部材15006は予想可能な体積の流体を吸収及び放出するので、図15Aから図15Cに示されているシステムを用いて、選択された体積の流体を本明細書に記載されているパウチ内で移動させることが可能である。例えば「スポンジポンプ」は、第1及び第2段階のPCR間で希釈を実行するために使用するか、又は本明細書の他の箇所で記載されるように、磁気ビーズの洗浄及び磁気ビーズからの核酸の溶出のため所定の体積の流体を分配するために使用できる。更に、乾燥試薬ピル(例えば図11Cを参照のこと)の代わりに、試薬(例えば緩衝剤やポリメラーゼ等)を吸収材料15006内で乾燥させてもよい。吸収材料15006は予想可能かつ既知の体積の液体を吸収及び放出できるので、所定の体積の液体で試薬を再水和するために吸収材料15006を使用することができる。
[00316] 図16は、閉鎖化学カードにおけるサンプル調製及びPCRのために使用できるパウチ16000の別の実施形態を示す。パウチ16000のレイアウトは、本明細書に記載されている他のパウチ及び化学カードとは異なるが、パウチ16000は、異なるプロセスを実行できる異なるブリスタエリアを含むという点で同様である。
[00317] 例示的に、パウチ16000は、外側壁16020及び内側壁16022によって画定された1対のネスト化リングを含む。例示的に、外側壁16020及び内側16022はレーザ溶接ラインによって画定できる。外側壁16020と内側16022との間の空間に多数のブリスタ、チャネル、及び空間が画定されており、これらは、パウチ16000と共に動作するよう構成された器具と連携して作業空間として使用できる。例示的に、ブリスタ16005はサンプル調製ブリスタであり、上流ブリスタ16036は、サンプルをパウチ16000内に導入するために及び/又は廃棄物レセプタクルとして使用され、チャネル16026は、限定ではないが核酸回収、洗浄、及び溶出を含む別のサンプル調製のためのゾーンであり、ブリスタ16010は第1段階PCRのために使用され得る。更に、ブリスタ16028は、試薬(例えば逆転写酵素やポリメラーゼ等)を第1段階PCRブリスタ16010に導入するために使用され、希釈ウェル16015を含み得るチャネル16031は、第1段階PCRの生成物を下流の第2段階PCRアレイ(図示せず)に移送するために使用され得る。パウチ16000は例示的に、パウチ16000のブリスタ及びチャネルに試薬を送出するよう位置決めされている、外側壁16020の外部に配置された試薬ブリスタ16045a~16045dも含む。パウチ16000は4つの試薬ブリスタを含むが、これは単なる例示であり、他の実施形態はこれよりも多数又は少数の試薬ブリスタを含み得る。サンプル調製や第1段階PCR等のためのこれらのブリスタ、ゾーン、及びチャネルの使用については、以下で更に詳しく説明する。
[00318] 図16は、サンプル調製及び流体移動のような機能を達成するためパウチ16000に対して作用することができる器具16100の要素も概略的に示す。要素16102はパウチ16000の内壁16022と同心の器具内壁であり、16108はパウチ16000の外側壁16020と同心の器具外壁である。器具内壁16102は開口16104を含み、これは、内側壁16022の開口(例えば開口16024、16030、及び16032)と位置合わせされて、第1段階PCRブリスタ16010に出入りする流路を生成するように開放できる。同様に、内壁16102は、内側壁16022の開口(例えば開口16024、16030、及び16032)を覆うように位置合わせされて、流路を遮断することも可能である。同様に、器具外壁16108は開口16105を含み、これは、例えば試薬ブリスタ16045a~16045dとサンプル調製チャネル16026との間の開口と位置合わせすることができる。
[00319] 器具16100は第1のワイパ16106及び第2のワイパ16107も含み、これらを用いて、パウチ16000内の空間から空間へ流体を押しやると共に、パウチ16000内の様々な作業空間を画定することができる。1つの説明のための実施形態において、ワイパ16106は、サンプル調製チャネル16026への入口でサンプル調製ブリスタ16005を閉鎖するよう位置決めすることができ、ワイパ16107は、ブリスタ16036からサンプル調製ブリスタ16060内へサンプルを「押し込む(squeegee)」ことができる。本明細書に記載されている他のサンプル調製ブリスタと同様、サンプル調製ブリスタ16060は溶解粒子を含み、例えばサンプル調製ブリスタ16060をビーズビーター又はパドルビーター装置に接触させることによって細胞溶解を達成することができる。細胞溶解の後、ワイパ16106を上流に移動させることで試薬ブリスタ16045a~16045のうち1つに隣接した作業空間を画定し、ワイパ16107を用いて流体を適切な作業空間に移動させることができる。例示的に、試薬ブリスタ16045aは核酸回収のための磁気ビーズを含み、試薬ブリスタ16045b及び16045cは磁気ビーズを洗浄するための試薬を含み、試薬ブリスタ16045dは磁気ビーズから核酸を溶出するための試薬を含むことができる。
[00320] 試薬ブリスタ16045bの近傍に、ワイパ16106及び16107を用いて作業空間を画定することが概略的に示されている。すなわち、ワイパ16106及び16107は、試薬ブリスタ16045bの近傍に流体、試薬、及び材料を収容できる作業空間16060を画定するためサンプル調製チャネル16026の領域を限定するよう位置決めされている。図示されているように、ワイパ16106及び16107は、試薬ブリスタ16045bと作業空間16060との間にチャネル16105も画定する。例示的に、器具16100は、試薬ブリスタを圧縮して試薬を作業空間16060内に放出することができるデバイス16110を含む。ワイパ16106及び16107の移動について前述したが、ワイパ16106及び16107のうち1つ以上を固定すると共に、パウチ16000を回転させて作業空間を画定し、領域から領域へと流体を押しやる等も可能であることは認められよう。従って、ワイパ16106及び16107は選択リング16111の各部分を形成し、選択リング16111の回転によって材料をパウチ16000内の様々な領域へ、例示的にチャネル16034を介して移動させることができる。このため、パウチの他のレイアウトに比べて、チャネル及びコンプレッサの数を減らすことができる。
[00321] 例示的に、核酸の溶出の後、開口16104を開口16024と位置合わせして、サンプル調製チャネル16026から第1段階PCRブリスタ16010内への流路を生成できる。第1段階PCR用の試薬は、例示的にブリスタ16010内に収容するか、又はコンパートメント16028内に収容するか、又はいくつかの試薬を双方に収容することができる。サンプル調製チャネル16026からブリスタ16010及び16028内へ流体を導入することで、第1段階PCR用の試薬を水和させることができる。第1段階PCRは、本明細書の他の箇所で、例示的に図25、図26、図27Aから図27D、及び図28Aから図28Bで示されるように、ワイパ及び2つの温度ゾーンを有するヒータを備えたブリスタ16010において実行できる。同様に第1段階PCRは、ブリスタ16010において、変性温度、アニーリング温度、及び延伸温度の間でサイクルする従来の熱サイクリングヒータ/クーラデバイスを用いて実行できる。第1段階PCRの後、反応の生成物の少なくとも一部を、開口16032を介してチャネル16031へ放出することができる。生成物の一部をウェル16015において測定し、残りを廃棄物チャンバ(図示せず)に送出するか又はブリスタ16010に戻し、次いでこれを廃棄物ブリスタとして使用すればよい。測定された生成物を第2段階PCR用の試薬と組み合わせ、チャネル16034を介して、例えば図1のアレイ581又は本明細書に記載されている他のアレイ実施形態のような第2段階PCRアレイである第2段階PCR反応ゾーン(図示せず)に送出することができる。
[00322] ここで図17A及び図17Bを参照して、これらの方法及び器具と共に使用できる可撓性パウチ3900の別の実施形態について説明する。可撓性パウチ3900は単一のチャンバ3902(本明細書では「多機能チャンバ」と称する)を含み、これは、サンプル調製、核酸回収、第1段階マルチプレックス核酸増幅反応のため、あるいは直接、流体接続された第2段階反応ゾーンにおけるシングルプレックスリアルタイム核酸増幅反応に使用することができる。これらの機能を単一のチャンバ内で実行することで、パウチを簡略化すると共に、パウチを動作させるために使用される器具を簡略化することができる。また、単一の多機能チャンバを使用すると、多くの流体移動ステップを簡略化もしくは排除できるか、又は複数のステップを同時に実行できるので、パウチ内で実行され得るアッセイの時間を節約することができる。同様に、サンプル調製及び核酸回収を同一チャンバ内で実行すると、本明細書に記載されている方法で核酸回収のために使用される核酸回収媒質(典型的にシリカでコーティングした磁気ビーズ)が溶解物の形成前に又は形成と同時に再水和されて溶解物中に分散されるので、時間を節約し、器具実行ステップを減らすことができる。追加の利点として、このようなプロセスでは、核酸回収媒質が溶解物の全体積中に分散されるので、感度が増大し、検出までの時間を短縮することができる。
[00323] 前述の例と同様、可撓性パウチ3900は、2層の可撓性プラスチックフィルム又は他の可撓性材料で形成することができる。材料は例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルメタクリレート、それらの混合物、組み合わせ、及び層であり、パウチ3900は、押し出し成形、プラズマ堆積、及び積層を含む当技術分野において既知の任意のプロセスによって作製できる。例えば各層は、単一のタイプ又は2つ以上のタイプの材料の1つ以上の層を積層したもので構成できる。1つの適切な例は、本明細書の他の箇所で検討したように、PET層とPP層を含む2層プラスチックフィルムである。アルミニウム積層を用いた金属フォイル又はプラスチックも使用できる。例示的に、材料は低い核酸結合能と低いタンパク結合能を有する。プラスチックフィルムを用いる場合、これらの層は、例示的に熱シールによって接合することができる。
[00324] いくつかの実施形態では、可撓性パウチ3900を形成するために使用される層のうち1つ以上においてバリアフィルムを使用することができる。例えばいくつかの用途では、バリアフィルムは従来のプラスチックフィルムよりも水蒸発及び/又は酸素透過率が低いために望ましい場合がある。例えば典型的なバリアフィルムの水蒸気透過率(WVTR:water vapor transmission rate)は、約0.01g/m2/24時間~約3g/m2/24時間の範囲内、好ましくは約0.05g/m2/24時間~約2g/m2/24時間の範囲内(例えば約1g/m2/24時間以下)であり、酸素透過率は、約0.01cc/m2/24時間~約2cc/m2/24時間の範囲内、好ましくは約0.05cc/m2/24時間~約2cc/m2/24時間の範囲内(例えば約1cc/m2/24時間以下)である。バリアフィルムの例は、限定ではないが、金属(例えばアルミニウムもしくは別の金属)の蒸着によって金属化できるか、又は酸化物(例えばAl2O3もしくはSiOX)もしくは別の化学組成でスパッタコーティングできるフィルムを含む。金属化フィルムの一般的な例は、金属コーティングされた二軸延伸PET(BoPET:biaxially oriented PET)であるアルミめっきマイラーである。いくつかの用途では、コーティングしたバリアフィルムに、ポリエチレン、PP、又は同様の熱可塑性物質の層を積層して、密封性を与えると共に穿刺抵抗を向上させることができる。従来のプラスチックフィルムと同様、パウチを製造するために使用されるバリアフィルムは、例示的に熱シールによって接合できる。例示的に、材料は低い核酸結合能と低いタンパク結合能を有する。ブリスタ及びチャネルを形成するように密封できる他のバリア材料も当技術分野において既知である。
[00325] 図17A及び図17Bに示されている実施形態では、多機能チャンバ3902に溶解粒子3904及び核酸回収ビーズ3906(典型的にシリカでコーティングされた磁気ビーズ)を提供することができる。例示の目的のため、溶解粒子3904及び核酸回収ビーズ3906は別々に示されている。しかしながら、溶解粒子3904及び核酸回収ビーズ3906は多機能チャンバ3902において混合した状態で提供され得ることは認められよう。同様に、多機能チャンバ3902に溶解粒子3904及び核酸回収ビーズ3906が提供された状態が示されているが、溶解粒子3904及び核酸回収ビーズ3906の一方もしくは双方を試薬ブリスタ3908aのような可撓性パウチ3900の試薬ブリスタ内に提供してもよく、又は一方もしくは双方をサンプルと共に提供してもよいことは認められよう。いくつかの実施形態では、溶解粒子3904を省略することができる。多くの分析物では、溶解緩衝剤(例えば緩衝剤、カオトロープ(chaotrope)、及び洗剤)の存在下で熱を加えて又は熱を加えないで撹拌すれば溶解を誘発するのに充分であり、溶解ビーズを省略することができる。他の分析物では、回収ビーズが溶解及び回収の双方の機能を提供できる。一実施形態では、溶解緩衝剤を多機能チャンバ3902又はブリスタ3908aのような試薬ブリスタに提供することができる。本明細書で検討されている実施形態のいずれにおいても、溶解中に磁気ビーズが存在し得ることは理解されよう。
[00326] 図示されている実施形態において、可撓性パウチ3900の多機能チャンバ3902は多数の試薬ブリスタ3908a~3908fに流体接続されている。これらの試薬ブリスタは、製造時に様々な試薬を提供することができ、例えばサンプル調製、核酸回収、1回以上の洗浄、第1段階PCR、及び第2段階PCRのための試薬を多機能チャンバ3902内に導入するため使用できる。しかしながら別の実施形態では、より後の時点で、例えば使用の直前にエンドユーザによって試薬を導入できる1つ以上の空の試薬ブリスタを可撓性パウチに提供してもよいことは認められよう。一実施形態において、試薬ブリスタ3908a~3908f内の試薬のうち1つ以上は乾燥した形態で提供できる(例えば図11Cを参照のこと)。別の実施形態において、試薬ブリスタ3908a~3908f内の試薬のうち1つ以上は液体の形態で提供できる(例えば図11A及び図11Bを参照のこと)。例示的な実施形態において、試薬ブリスタ3908a~3908fからの試薬は、試薬ブリスタに外圧を加えて流体をブリスタからチャンバ3902へ押しやることによって、チャネル3909a~3909fを介して多機能チャンバ3902内に導入することができる。一実施形態では、チャネル3908a~3908fを製造時に開放可能に密封することでブリスタから多機能チャンバ3902への試薬の漏れを防止するか、又は、試薬ブリスタ3908a~3908fの内容物を図12Cのパケット12020と同様のパケット内に提供することができる。
[00327] また、図示されている実施形態において、パウチ3900はサンプル受容チャンバ3910を含む。一実施形態において、サンプル受容チャンバ3910はサンプルを受容するよう構成されたキャビティ(例えば管状ウェル又はブリスタ)を含み得る。このようなキャビティを形成するには、限定ではないが、パウチ3900を製造するため使用される材料を加熱し、この材料を型(例えばモールド)で形作る等、当技術分野において既知の方法を使用できる。別の実施形態では、サンプル受容チャンバ3910を形成するため、製造時にサンプルチューブ(例えばプラスチックチューブ)をフィルム層内に密封することができる。いずれの場合でも、サンプル受容チャンバ3910は多機能チャンバ3902に流体接続されて、サンプルを多機能チャンバ3902内へ導入すると共に廃棄物を多機能チャンバ3902から排出できるようになっている。図示されている実施形態において、サンプル受容チャンバ3910はチャネル3916及び3918によって多機能チャンバ3902に接続されている。しかしながらこれは単なる例示であり、可撓性パウチは、多機能チャンバ3902をサンプル受容チャンバ3910に接続するこれよりも多数又は少数のチャネルを含み得ることは認められよう。
[00328] 一実施形態において、サンプル受容チャンバ3910はサンプル収集スワブ3912を含み得る。サンプル収集スワブを用いて、サンプル(例えば鼻水、痰、血液、便、土等)を収集し、このサンプルをサンプル受容チャンバ3910に送出することができる。別の実施形態では、サンプル収集スワブ3912を用いる代わりに又はこれに加えて、液体、固体、又は半固体のサンプルを直接サンプル受容チャンバ3910内に注入してもよい。別の実施形態では、全量ピペット(transfer pipette)、毛細管(例えば採血毛細管)、サンプルを含むティッシュペーパー(すなわち汚れたティッシュペーパー)等を、サンプル受容チャンバ3910内に受容することができる。図示されている実施形態において、スワブ3912は軸3914を含む。軸3914を用いて、サンプル収集のためスワブを扱う際にスワブを保持すると共に、スワブをサンプル受容チャンバ3910に戻すことができる。図17Bに示されているように、サンプル受容チャンバ3910の上部3935を開放又は取り外して3923で示すように開口を生成することで、スワブ3912をサンプル収集のため取り出すと共に分析のため戻すことができる。
[00329] 一実施形態において、軸3914及びサンプル受容チャンバ3910は、1つ以上のシール(例えば熱シール)が軸3914と交差するように配置されてサンプル受容チャンバ3910を密封できるように構成されている。軸と交差するように密封すると、ユーザにとってパウチの使用が簡単になり、例えば図11A及び図11Bのスワブで使用される軸のような破壊可能スワブ軸の必要性をなくすことができる。図示されている実施形態では、軸3914を横切るように3つのシール3911a~3911cを配置できる。しかしながら、これが単なる例示であり、これよりも多数又は少数のシールを配置できることは認められよう。一実施形態では、これらのシールを配置することでサンプル受容チャンバ3910内に異なるサブチャンバを生成できる。図示されている実施形態では、例えばシール3911aはサンプル再水和/分散チャンバ3910aを生成するよう配置され、シール3911a及び3911bは廃棄物チャンバ3910bを形成することができる。このため、チャネル3916を、サンプル再水和/分散及びサンプルの多機能チャンバ3902への導入のために使用し、チャネル3918を、多機能チャンバ3902から廃棄物(例えば使用済み溶解物及び洗浄緩衝剤)を放出するために使用することができる。シール3911cは、例えば漏れを防ぐように配置できる。シール3911cは図示のようにスワブ軸3914の一部に重ねて配置され得るが、シール3911cを軸の端部よりも上方に配置してもよいことは認められよう。一実施形態では、シール3911a~3911cのうち1つ以上を配置する前に、多機能チャンバ3902及びサンプル受容チャンバ3910から余分な空気を放出することができる。サンプル受容チャンバ3910の特徴部をパウチ10000と共に使用できること、及び、サンプル調製ゾーン10005の特徴部をパウチ3900と共に使用できることは理解されよう。また、サンプル受容チャンバ3900及びサンプル調製ゾーン10005の特徴部を、本明細書に記載されている他のパウチの任意のものと共に使用してもよい。
[00330] 軸3914と交差するようにサンプル受容チャンバ3910を熱シールする場合、軸を少なくとも部分的に軟化又は溶融させて、可撓性パウチ3900及びサンプル受容チャンバ3910を製造するため使用される材料に対して融合、固着、連結、又は接着することができる。1又は複数のシール内に軸を組み込むと、例えばシール周りの漏れを防止できる。同様に、サンプル受容チャンバ内にスワブを密封すると、全長にわたる軸を有すると共に及び破壊可能先端部を含まないスワブを使用することができ、更に、オペレータがサンプルを収集してこれをサンプル受容チャンバに戻すためにスワブを用いて実行しなければならない手作業操作の数が減る。また、破壊可能先端部を省略すると、例えば患者において誤って先端部を折ってしまう有害事象の可能性が低下する。ここで図43Aから図43Dを参照すると、使用され得る軸のいくつかの例が示されている。一実施形態において、図43Aは実質的に丸い軸4114aの断面である。実質的に丸い軸4114aは外側層4102及び内腔4103を含む。別の実施形態において、図43Bは実質的にダイヤモンド状の軸4114bの断面を示す。軸4114aと同様、軸4114bは中空内腔4105及び外側層4104を含む。一実施形態において、軸4114bの角部4104a~4104dの1つ以上は、図示のように丸めるか又は長く伸ばすことができる。図43Cは、楕円形の中実プロファイル4106を有する別の軸4114cを示す。軸4114cの楕円形は、より良い密封のため平坦化及び/又は長く伸ばすことができる。円形断面では軸に隣接したギャップ又は空隙が残る可能性があるので、例えば円形でない断面を有する4114b及び4114cのような軸を有するスワブの方が、円形断面よりも良好なシールを与え得る。図43Dは、中実コア4108に重なって配置された外側層4107を有する更に別の軸4114dを示す。一実施形態において、コア4108はワイヤ又は別の剛性部材及び/又は整形可能部材とすればよく、サンプル収集のためスワブをキャビティ内に押し込んで導入することを可能とする。ワイヤ又は他の薄い剛性の整形可能材料から作製された軸を有するスワブは当技術分野では既知であり、特定のサンプルタイプを収集するために使用できる。むろん、軸4114a~4114dは単なる例示であり、他の軸形状及び内腔形状が可能であり(例えば内腔の形状は必ずしも外側層の形状を反映する必要はなく、また、他の外側層又は中実の形状も使用できる)、本開示の範囲内であることは認められよう。
[00331] 一実施形態において、軸4114a~4114dを製造するため使用される1又は複数の材料は、パウチの製造に、より具体的にはサンプル受容チャンバの製造に使用されるフィルム材料とコンパチブルであるように選択される。本明細書において用いる場合、「コンパチブル」という用語は、融合させて安定した接合を形成できる材料を指す。接合される2つのポリマーは、必須ではないが、同一のタイプの材料とすることができる。これが当てはまる場合、パウチ及びスワブ軸の形成に使用されるプラスチックは、接合の良好な候補となるよう同様の特性を有することが予想される。これらのプラスチックをコンパチブルにする要因には、限定ではないが、ポリマー鎖の化学的構造、同様の及び重複するポリマー融点、並びにプラスチックの表面エネルギが含まれる。プラスチックのこれらの特徴が類似すればするほど、接合は良好になる。ほとんどの一般的な熱可塑性物質は、当技術分野において既知である多種多様な他の組み合わせと同様、相互に容易に接合する。
[00332] 例えばパウチ3900及びサンプル受容チャンバ3910は、ポリエチレンテレフタレート(PET)外側層とポリプロピレン(PP)内側層を含む2層フィルムから製造することができる。このような2層材料によって、融点の高い外側PET層の完全性を損なうことなくパウチフィルムの内側PP層を熱シールする(例えばレーザ又は熱溶接する)ことができる。PP材料と「コンパチブルである」可能性のあるプラスチック軸材料は、限定ではないが、ポリエチレン(PE)、PP、又はPEコポリマー、ブロックコポリマー、エチレン酢酸ビニル(EVA)やエチレン酢酸エチル(EEA)のような他の熱可塑性コポリマーを含む。PET/PPの2層材料からパウチを製造すること、及び前述したコンパチブルな軸材料の例は、単なる例示である。従って、本明細書の他の箇所で検討したようにパウチが他の材料から製造され得ること、及び、他のパウチフィルム材料とコンパチブルなスワブ軸材料が当業者に既知であることは理解されよう。
[00333] ここで図44Aを参照すると、サンプル受容チャンバ3910a内に密封することができる軸4214aの一例が断面で示されている。図示されている実施形態のサンプル受容チャンバ3910aは、第1の材料層4202及び第2の材料層4204から製造されている。これらの層は、4206及び4208のエッジで接合されてチャンバ3910aを形成する。図44Bは、軸と交差するようにシール3911を形成した後のサンプル受容チャンバ3910bを示す。シール3911において、軸4114aは完全につぶれて密封軸4214bを形成し、層4202及び4204は4210で示すように相互に及び軸4214bに対して完全に密封することができる。一実施形態において、軸形状、軸材料、及び密閉手順は、好ましくはシール3911の断面に空隙が存在しないように選択される。例えばいくつかの実施形態では、軸4114a及び4114bのような内腔を有する軸は材料が少なく、容易に溶融し得るので、これらの軸が好ましい場合がある。4114cのような軸は、容易に溶融し伸展してシールを形成できる。同様に、実質的にダイヤモンド状の軸4114bの角部4104a~4104dのうち1つ以上を、良好な密封のために丸めるか又は長く伸ばしてもよい。また、1つ以上の角部を丸めると、シール領域に孔を発生させる恐れがあるフィルム又は軸上のホットスポット形成の可能性を低下させることができる。
[00334] 再び17A及び17Bを参照すると、多機能チャンバ3902は、サンプル調製(例えば溶解)、核酸回収(例えば、シリカでコーティングした磁気ビーズのような核酸結合剤を用いた溶解物からの核酸の回収、使用済み溶解物の放出、洗浄緩衝剤による磁気ビーズの洗浄、ビーズからの核酸の溶出)、及び第1段階マルチプレックス核酸増幅反応のために構成されている。典型的なワークフローでは、例えば開口3923でパウチ開口を開くことによってパウチ3900のサンプル受容チャンバ3910を開放し、スワブ3912を取り出し、これを用いてサンプルを収集し、サンプルの付いたスワブ3912をサンプル受容チャンバ3910に戻すことができる。次いでパウチ3900を器具に挿入し、上述のようにサンプル受容チャンバ3910を密封することができる。多機能チャンバ3902内、ブリスタ3908a内、もしくは他のブリスタ内に提供するか、又はサンプルの投入と同時にもしくはその前に注入することができる溶解緩衝剤を、多機能チャンバ3902に外力を加えることによって多機能チャンバ3902からサンプル再水和/分散チャンバ3910a内へ移動させ、撹拌し、チャンバ3910aに外力を加えることによって多機能チャンバ3902に戻すことができる。サンプルをチャンバ3902内へ導入した後、シリカでコーティングした磁気ビーズ3906と、任意選択的に溶解粒子3904とを、試薬ブリスタ3908aに外力を加えることによって試薬ブリスタ3908aからチャネル3909aを介してチャンバ3902内へ導入することができる。任意選択的に、シリカでコーティングした磁気ビーズ3906及び任意選択的な溶解粒子3904をチャンバ3902内で溶解緩衝剤中に提供し、試薬ブリスタ3908aを別の成分のために使用してもよい。
[00335] 一実施形態において、多機能チャンバ3902における溶解は例えば、FilmArray(登録商標)内に提供されるような回転ブレードを用いた詰め込みによるボルテックスによって、又は、援用により全体が本願に含まれるPCT/US2017/044333号に記載されているもの等の往復運動するかもしくは交互に移動するパドルを用いたパドルビーターによって、実行され得る。一実施形態において、溶解は、(例えば40℃~100℃の範囲内の温度に)サンプルを加熱しながら撹拌すること(例えばボルテックス)を含み得る。別の実施形態では、撹拌を省略し、熱と化学作用の組み合わせによって溶解を実行してもよい。
[00336] 溶解の後、器具において外部磁石(図2の磁石850と同様)を活性化することによって多機能チャンバ3902内で磁気ビーズ3906を隔離し、チャンバ3902に外圧を加えることによって溶解物をチャネル3918を介して廃棄物チャンバ3910bへ放出することができる。一実施形態では、磁石の活性化及び溶解物の放出を行う前に、溶解物を制御された温度(例えば60℃~0℃の範囲内の温度)に設定して、シリカでコーティングした磁気ビーズに対する核酸結合を促進することができる。溶解物を放出させた後、磁石を遠ざけると共に、磁気ビーズ、任意選択的な溶解粒子、及び多機能チャンバ自体に、洗浄緩衝剤を用いた少なくとも1回の洗浄を行うことができる。一実施形態において、洗浄緩衝剤は酸性緩衝剤(例えばpHは約5)であり、1回又は複数回の洗浄は制御された温度で実行することができる(例えば60℃~0℃の範囲内の温度)。洗浄緩衝剤は、試薬ブリスタ3908bから、及び任意選択的に3908cから、チャネル3909b及び3909cを介してチャンバ3902内に導入できる。磁石の活性化によって磁気ビーズを隔離し、使用済み洗浄緩衝剤を廃棄物チャンバ3910bへ放出することができる。一実施形態において、1回又は複数回の洗浄は、チャンバ3902を撹拌して磁気ビーズ及び任意選択的な溶解粒子を洗浄緩衝剤中に分散させることを含み得る。
[00337] 1回又は複数回の洗浄の後、第1段階核酸増幅反応用の試薬をチャンバ3902に導入することができる。一実施形態において、第1段階核酸増幅反応用の試薬は試薬ブリスタのうち1つ以上から導入できる。一実施形態において、第1段階増幅試薬は、いくつかの試薬では液体の形態で試薬ブリスタ3908d及び3908eの各々に提供されるので、試薬ブリスタ3908d及び3908eの各々は、プライマーダイマー形成等を回避するため不完全な増幅反応物を含む。ブリスタ3908d及び3908eからの試薬はチャネル3909d及び3909eを介して提供される。一実施形態において、第1段階核酸増幅反応用の試薬は、磁気ビーズからの溶解物から回収された核酸を溶出することができる。一実施形態において、第1段階核酸増幅反応用の試薬のpHは約7~9とすることができる(例えばpH8.5)。一実施形態において、回収された核酸はRNAを含み得るので、第1段階マルチプレックス核酸増幅反応の前に又はそれと同時に多機能チャンバ3902内で逆転写ステップを実行することがある。一実施形態において、ブリスタ3908d及び3908eからの試薬は、逆転写ステップ及び第1段階マルチプレックス核酸増幅反応のための試薬を含む。一実施形態において、試薬ブリスタ3908dは逆転写ステップ用の成分を含み、ブリスタ3908eは第1段階マルチプレックスPCR反応用の成分を含むことができる。一実施形態において、多機能チャンバ3902は、多機能チャンバ3902の内容物を加熱及び冷却するよう熱サイクルできるペルチェ素子又は別のヒータを用いた熱サイクリングによって、又は、チャンバ3902の内容物を加熱及び冷却するために例えばアニーリング温度及び変性温度に設定された図28Bのヒータ1286及び1287のような1対のヒータを平行移動させることによって、あるいは、ヒータに対してパウチ3900を平行移動させることによって、増幅を行うために構成されている。
[00338] 一実施形態では、逆転写ステップをチャンバ3902内で溶解粒子及び磁気ビーズの存在下で実行するか、又は、逆転写ステップの実行前に磁気ビーズ及び溶解粒子のうち一方又は双方を隔絶することができる。一実施形態において、磁気ビーズを隔絶するには、図2の磁石850と同様のチャンバ3902に隣接した磁石を活性化すればよい。一実施形態において、溶解粒子が存在する場合にこれを隔絶するには、チャンバ3902内で沈殿させた後、例えば圧力部材を活性化して、3902b内の溶解粒子を隔離すると共に流体を3902aに放出すればよい。多くの場合、溶解粒子は多機能反応チャンバ3902内の他の成分よりも大きく、その大きさが沈殿を促進し得ることは理解されよう。3902b内で又は3902aの1つの分離エリア内で磁石を活性化することにより、溶解粒子が存在する場合はこれと共に磁気ビーズを隔離できる。一実施形態において、第1段階マルチプレックス核酸増幅反応は、多機能チャンバ3902内で、磁気ビーズ及び溶解粒子の双方の存在下で実行され得る。第1段階増幅中に磁気ビーズが存在する場合は、溶出ステップを省略して、磁気ビーズに標的核酸が結合したままの状態で第1段階増幅の一部を実行してもよいことは理解されよう。そのような実施形態では、磁気ビーズの存在下での増幅に対する阻害効果の中和を促進する成分が必要となり得る。そのような成分は、緩衝剤、BSAのようなコーティング分子、又は当技術分野において既知である他の成分を含み得る。別の実施形態では、例えば磁石及び圧力部材の活性化によって磁気ビーズ及び溶解粒子を3902b内で隔絶し、第1段階マルチプレックス核酸増幅反応のために溶出液を3902aへ放出することができる。
[00339] 第1段階マルチプレックス核酸増幅反応が所望の数のサイクルにわたって進行した後、任意選択的にサンプルを希釈するため、例えば、第1段階マルチプレックス核酸増幅反応の生成物の一部をチャンバ3910a及び3910bに放出し、生成物の少量のみを多機能チャンバ3902内に残すことができる。次いで、例示的に試薬ブリスタ3908fから多機能チャンバ3902内へ第2段階核酸増幅反応用の試薬を加えることによって生成物を希釈することができる。生成物を放出すると共に試薬を導入して、例えば、第1段階マルチプレックス核酸増幅反応の生成物の1:10~1:100の希釈を得ることができる。一実施形態では、試薬ブリスタ3908fを使わずに、試薬ブリスタ3908eからの第2段階核酸増幅反応用の試薬を用いて一次希釈を実行した後、ブリスタ3908fからの試薬を用いて希釈を繰り返すことができる。別の例示的な実施形態では、試薬ブリスタのうち1つ(例えばブリスタ3908e)は希釈剤(例えば緩衝剤)を含み、別の試薬ブリスタ(例えばブリスタ3908f)は第2段階核酸増幅反応用の試薬を含み得る。希釈ステップ数を変更することによって、又は、第2段階核酸増幅反応用の試薬と混合する前に廃棄されるサンプルの割合を変更することによって、希釈レベルを調整できることは理解されよう。いくつかの実施形態では、体積希釈チャンバを用いることができる。
[00340] 一実施形態において、第2段階核酸増幅反応用の試薬は増幅のためのマスター混合物を含み、これは例示的にポリメラーゼ、dNTP、及び適切な緩衝剤であるが、他の成分も適切である場合がある。別の実施形態では、第2段階核酸増幅反応用の試薬は、第2段階増幅用の成分のうち少なくとも1つを含まない不完全な反応混合物を含み、含まれない1又は複数の成分を第2段階ウェル3982の各々で乾燥させることができる。1つの例示的な実施形態では、第2段階核酸増幅反応用の試薬はプライマー対を含まず、第2段階ウェル3982の各々に特定のPCRプライマー対が予め投入されている。各プライマー対は第1段階PCRプライマー対と同様もしくは同一であるか、又は第1段階プライマー対内にネスト化することができる。1つの例示的な実施形態において、第2段階核酸増幅反応用の試薬は、プライマー対と、ポリメラーゼ(例えばクレンタク(klentaq))、Mg++、又は緩衝剤のうち1つ以上とを含まず、1又は複数の含まれない成分(例えばポリメラーゼ(及び安定化試薬)、Mg++、又は緩衝剤)を第2段階ウェル3982内で乾燥させることができる。これによって、乾燥させた成分の安定性の増大と、ポリメラーゼのような高価な試薬のコスト削減が可能となる。その理由は、こういった1又は複数の成分を含む過剰な体積でアレイをあふれさせて過剰分を排出するのではなく、1又は複数の成分が各アレイウェルにおいて反応に必要な量だけスポットされるからである。所望の場合、サンプルと第2段階核酸増幅用の試薬のこの混合物を、第2段階増幅のため第2段階ウェル3982へ移動させる前に多機能チャンバ3902内で予熱してもよい。このような予熱は、第2段階PCR混合物におけるホットスタート成分(抗体、化学物質、又は他のもの)の必要性をなくすことができる。リアルタイム又は増幅後の検出が望まれる場合、混合物又は第2段階ウェルは色素又は他の適切な検出成分を含み、関連付けられる器具は蛍光光度計又は他の検出機構を含むことができる。
[00341] 図示されている実施形態において、多機能チャンバ3902は、第2段階核酸増幅反応のための多数のウェル3982を含むアレイ3981に流体接続されている。アレイ3981及びウェル3982はチャネル3920を介して充填することができる。第2段階アレイのウェル充填については本明細書の他の箇所で詳しく検討されている。簡潔に述べると、ウェル3982の各々の充填は概して、アレイを部分真空下に置くことによって達成される。これは製造時に実行される(真空下の容器内にパウチを保管することで真空レベルを維持することができる)か、又はパウチの使用中にインサイチュで、例えば器具内でアレイに真空を与えることができる。後者のために構成できるアレイ3981は、真空ポート3924、真空路3926、真空貯蔵部3928、アレイフローチャネル3932、及びらせん形経路3930を含むが、入り組んだ経路の他の方向も使用され得る。本明細書では、図20Aから図20Eを参照してウェル充填経路のいくつかの説明のための例が示されている。アレイを充填する前に真空ポート3924に与えられた真空が、真空路3926、真空貯蔵部3928、アレイフローチャネル3932、及び例示的ならせん形経路3930を介して、ウェル3982を排気する。例えば領域3925に熱シールを適用して真空路3926を閉鎖することにより、この真空を維持することができる。第2段階アレイに真空をインサイチュで与えること、及びインサイチュで真空を与えるため構成された第2段階アレイ設計についての更なる検討は、すでに援用により全体を本願に含めたPCT/US18/34194号で見ることができる。
[00342] 本明細書に記載されている他の実施形態と同様、ウェル3982の各々は充填チャネル3920を介して多機能チャンバ3902に流体連通することができ、充填チャネル3920は一連のアレイフローチャネル3932と流体連通している。一実施形態において、充填チャネル3920は、磁気ビーズや溶解粒子等が多機能チャンバ3902からアレイ3981内へ移動するのを防ぐためのフィルタ3922(等)を含み得る。図17Aから図17Bに示されている説明のための例において、ウェル3982はアレイフローチャネル3932を介して多機能チャンバ3902に流体接続されている。アレイフローチャネル3932は、各ウェル3982の周りでらせん形になったらせん形経路3930を介して各ウェルに接続している。これは、アレイウェル間での望ましくない流体の混合(すなわちクロストーク)の防止に役立ち得る「入り組んだ」アレイウェル充填経路の別の例である。しかしながら、これらのアレイフローチャネル3932及びらせん形経路3930がウェル充填経路の単なる一例であること、他の入り組んだウェル充填経路も使用できることは理解されよう。他の入り組んだウェル充填経路は、図6B、図6C、図8A、図8B、及び図20Bから図20Eに示されている。二次汚染なしでウェル3982を充填する他の方法も想定される。例えば、援用により本願に含まれる米国特許第8,895,295号を参照のこと。第2段階アレイ3981を加熱及び冷却するための器具内のヒータ/クーラ(例えばペルチェ素子)位置によって、又は、チャンバ第2段階アレイ3981の内容物を加熱してから冷却するために例えばアニーリング温度及び変性温度に設定された図28Bのヒータ1286及び1287のような1対のヒータを平行移動させることによって、あるいは、ヒータに対してパウチ3900を平行移動させることによって、第2段階アレイ3981の内容物を熱サイクルさせることができる。
[00343] 一実施形態において、チャネル3909a~3909f、3916、3918、及び3912は、例示的に、パウチ製造中に配置することができるワックスもしくは接着剤のような接合材料の追加によって形成される、破裂可能シール、剥がして再び使えるシール、もしくは他の開放可能シールを用いて、又はパウチ3900を製造するフィルム層を用いて、密封することができる。これらのフィルム層は、相互に多少の自然の親和性を持っていて緩く接合する傾向があり得るので、チャネルにおいて連結させたフィルム層によってそのようなシールを形成できる。例えば、フィルムを一時的に接合するのには充分であるが永久的な接合を形成するには不充分な熱をフィルム層に加える(例えば加熱ローラの間に通す)ことにより、フィルム層を連結させることができる。このシール及び本明細書で検討される他のシールは、当技術分野において既知のように、剥がして再び使えるシール、壊れやすいシール、連結させたシール、使い捨てシール、圧力シール、又は他のシールとすればよい。チャネル3909a~3909f、3916、3918、及び3912は、可撓性パウチ3900内でアッセイを実行するため使用される器具内のハードシールを用いて密封してもよい。ハードシールの例は、図3に示すパウチのチャネルに示されている。
[00344] ここで図17Cを参照すると、可撓性パウチ4000の別の実施形態が示されている。パウチ4000はパウチ3900と同様であり、同様の要素には同様の番号が与えられている。例えば、多機能チャンバは図17A及び図17Bでは3902の番号を付けられると共に図17Cでは4002の番号を付けられ、サンプル受容チャンバは図17A及び図17Bでは3910の番号を付けられると共に図17Cでは4010の番号を付けられている。図17Aから図17Bの実施形態と図17Cの実施形態との主な違いは、図17Cの実施形態が、図25から図27Dに関連付けて記載されるワイパのようなワイパデバイスを用いた第1段階核酸増幅のために構成されている点である。
[00345] 特に多機能チャンバ4002を参照すると、多機能チャンバ4002には溶解粒子4004及び核酸回収ビーズ4006を提供することができる。図17A及び図17Bを参照して記載したように、溶解及び核酸回収は、溶解粒子4004及び核酸回収ビーズ4006の存在下で多機能チャンバ4002内で進行し得る。しかしながらいくつかの実施形態では、溶解粒子4004及び核酸回収ビーズ4006の一方又は双方が存在しない状態で第1段階マルチプレックス核酸増幅反応を実行することが望ましい場合がある。多機能チャンバ4002はこれに応じて構成することができる。
[00346] 溶解物からの核酸回収の後、例えば、溶解粒子4004及び核酸回収ビーズ4006の一方又は双方を沈殿させ、概略的に4005で示されている圧力デバイス(例えばチャンバ4002に隣接して位置決めされた器具内の外部圧力プレート)の活性化によって溶解粒子4004及び核酸回収ビーズ4006を多機能チャンバ4002の第2の部分4002b内で隔絶することができる。その間に、第1段階マルチプレックス核酸増幅のため多機能チャンバ4002の第1の部分4002a内に溶出液を隔絶できる。一実施形態では、多機能チャンバ4002のアーチ形端部4003に対応する湾曲部を有するリングを添付器具に提供し、これを用いて第1の部分4002aに溶出液を隔絶することができる。第1の部分における熱サイクリングは、例えば図25、図26、及び図27Aから図27Dを参照して以下に記載するように、ワイパと、高温及び低温に設定された2つのヒータと、を用いて進行し得る。他の方法は、すでに援用により本願に含めたPCT/US2017/18748号に与えられている。一実施形態では、4005のような圧縮部材を用いて第2の部分4002bから溶出液を放出して第2の部分4002b内の溶出液から溶解粒子4004及び核酸回収ビーズ4006を隔離することができ、溶出液を第1の部分4002aで熱サイクルすることができる。別の実施形態では、チャンバ4002に隣接した器具内の外部磁石を活性化することにより、1つ以上のステップで、シリカでコーティングした磁気ビーズを隔絶又は隔離できる。一実施形態において、圧縮部材は、例示されている円形の第1の部分4002aを形成する圧縮部材4005のようなプロファイルを有し得る。そのような場合、熱サイクリングは、図25、図26、図27Aから図27Dを参照して上述したようなワイパを用いて実行され得る。別の実施形態において、圧縮部材は、図25、図26、図27Aから図27Dに示されている熱サイクリングシステムと必ずしも適合性があるわけではないプロファイルを有し得る。そのような場合、第1の部分の内容物の熱サイクリングは、例えば図28Bに示されたものと同様の平行移動ヒータアセンブリを用いて、又は3温度熱サイクリングもしくは2温度熱サイクリングのために構成された固定ヒータを用いて実行され得る。
[00347] 一実施形態において、可撓性パウチ3900又は4000は例えば、サンプルから核酸を抽出するため及び/又はサンプル内の未知の微生物を同定するためのアッセイ方法において使用できる。一実施形態において、方法は、(a)磁気粒子を含む多機能チャンバを含む可撓性容器を提供することであって、多機能チャンバはサンプル調製及び核酸回収のために構成されている、ことと、(b)多機能チャンバ内にサンプルを導入することと、(c)磁気粒子の存在下で多機能チャンバ内に溶解物を発生させることと、(d)溶解物から磁気粒子を隔離することにより、磁気粒子を用いて核酸を回収することと、を含む。一実施形態では、多機能チャンバに隣接して外部磁石を配置することにより、溶解物から磁気粒子を隔離することができる。一実施形態において、多機能チャンバは溶解粒子(例えばケイ酸ジルコニウムビーズ)も含むことができる。一実施形態において、方法は、(e)多機能チャンバにおいて第1段階マルチプレックス核酸増幅反応で核酸を増幅させるステップを更に含む。
[00348] 一実施形態において、可撓性容器は、多機能チャンバと流体連通しているサンプル受容チャンバを更に含む。一実施形態において、可撓性容器に、サンプル受容チャンバ内のサンプルスワブを提供することができる。一実施形態において、方法は、サンプルスワブを用いてサンプルを収集することと、スワブをサンプル受容チャンバ内に挿入することと、スワブが内部に入っているサンプル受容チャンバを密封することと、を更に含み得る。方法は更に、多機能チャンバからサンプル受容チャンバ内へ溶解緩衝剤を導入することと、溶解緩衝剤を撹拌することと、サンプル溶解緩衝剤でサンプル受容チャンバ内のサンプルを分散させることと、サンプル及びサンプル溶解緩衝剤を多機能チャンバ内へ戻すことと、を含み得る。一実施形態では、多機能チャンバに溶解緩衝剤を提供するか、あるいは、サンプルスワブをサンプル受容チャンバに挿入する前に溶解緩衝剤を多機能チャンバ内へ導入することができる。一実施形態において、スワブは細長い軸を含み、密閉することは更に、(例えば熱シールデバイスを用いて)スワブの細長い軸と交差するようにサンプル受容チャンバを密閉することを含む。一実施形態において、方法は更に、細長い軸と交差するように2つ以上のシールを適用して、サンプル受容チャンバを少なくともサンプル再水和/分散チャンバと廃棄物チャンバとに分割することを含む。一実施形態において、多機能チャンバは、サンプル再水和/分散チャンバ及び廃棄物チャンバに流体接続されたチャネルを含む。一実施形態において、方法は更に、サンプル受容チャンバを密閉する前に多機能チャンバ及び/又はサンプル受容チャンバに圧力を加えることによってサンプル受容チャンバ及び多機能チャンバから空気をパージすることを含む。
[00349] 一実施形態において、溶解物を発生させることは、溶解物を発生させながらサンプルに熱を加えることを更に含む。一実施形態において、溶解物を発生させることは、多機能チャンバの外部に力又はエネルギを加えて磁気粒子及び流体サンプルを共に動かすことで溶解物を発生させることを含む。一実施形態において、多機能チャンバは更に溶解粒子(例えばケイ酸ジルコニウム粒子又は他の硬質及び/又は研摩要素)を含み、回転ブレード又はパドルを用いた詰め込みによるボルテックスのために構成されている。このため一実施形態では、力を加えることで溶解粒子及び磁気粒子及び流体サンプルを動かして高速衝撃を発生させ、結果として溶解物を生成する。ケイ酸ジルコニウム(ZS)ビーズ3904又は4004のような溶解粒子の存在下でサンプルの振とう、ボルテックス、超音波処理、及び同様の処理を行うことによるビーズ粉砕は、溶解物を形成する効果的な方法である。本明細書で用いる場合、「溶解」、「溶解している」、及び「溶解物」等の用語は細胞を破裂させることに限定されず、そのような用語がウイルスのような非細胞粒子の破壊を含むことは理解されよう。別の実施形態では、援用により本願に含まれるPCT/US2017/044333号に記載されているような往復運動するか又は交互に移動するパドルを用いたパドルビーターを、この実施形態及び本明細書に記載されている他の実施形態において溶解のために使用してもよい。
[00350] 一実施形態において、方法は、溶解物を発生させた後に多機能チャンバ内の溶解粒子を溶解物から隔絶することを更に含む。一実施形態において、方法は、多機能チャンバ内で溶解粒子を沈殿させることと、多機能チャンバに外部圧力を加えて溶解粒子を隔離すると共に溶解粒子から流体を放出させることと、を更に含み得る。一実施形態において、方法は、溶解物から核酸を回収した後に多機能チャンバ内で磁気粒子を隔絶することを更に含む。一実施形態において、磁気ビーズを隔絶するには、多機能チャンバに隣接して外部磁石を配置して磁気ビーズを捕捉すればよい。一実施形態において、磁気ビーズは溶解粒子と共に隔絶され得る。
[00351] 一実施形態において、溶解物を発生させることは、力を加えながらサンプルに熱を加えることを更に含む。一実施形態では、核酸を磁気粒子に結合するための条件下で溶解物を発生させる。好ましくは、多機能チャンバ内で溶解物を発生させている時に核酸は磁気ビーズに結合することができる。一実施形態において、溶解物は高温で発生され、核酸は溶解温度よりも低い制御された温度で溶解物から回収される。多機能チャンバの内容物を加熱及び冷却することができるヒータ/クーラデバイス(例えばペルチェデバイス)に隣接して多機能チャンバを位置決めすることにより、多機能チャンバの温度を制御できる。一実施形態において、溶解物を発生させるための高温は、40~100℃、好ましくは50~100℃、又はより好ましくは70~100℃の範囲内である。一実施形態において、核酸回収のための溶解温度よりも低い制御された温度は、60~0℃、好ましくは50~0℃、又はより好ましくは40~0℃(例えば40℃~20℃)の範囲内である。
[00352] 一実施形態において、磁気粒子を用いて核酸を回収することは、多機能チャンバに隣接して磁石を位置決めすることによって溶解物から磁気粒子を捕捉することと、溶解物を(例えば図17Bに示されている廃棄物チャンバ3910bに)放出させることと、多機能チャンバ内で磁気ビーズの少なくとも1回の洗浄を実行することであって、この洗浄は(例えば図17A及び図17Bに示されている試薬ブリスタ3908a~3908fのうち1つから)多機能チャンバ内に洗浄緩衝剤を導入することを含む、ことと、(例えば磁石を除去し、多機能チャンバの内容物を撹拌することによって)洗浄緩衝剤に磁気ビーズを分散させることと、磁石を用いて磁気ビーズを再捕捉することと、洗浄緩衝剤を(例えば廃棄物チャンバ3910bに)放出することと、磁気ビーズから核酸を溶出させることであって、溶出は(例えば図17A及び図17Bに示されている試薬ブリスタ3908a~3908fのうち1つから)多機能チャンバに溶出緩衝剤を導入することを含む、ことと、を更に含む。一実施形態において、溶出緩衝剤は第1段階マルチプレックス核酸増幅反応用の試薬を含む。
[00353] 一実施形態において、溶解物から回収された核酸はRNAを含み、方法は、多機能チャンバにおいて逆転写ステップを実行してRNAをDANに変換することを更に含む。一実施形態において、図17A及び図17Bに示されている試薬ブリスタ3908a~3908fのうち1つから多機能チャンバ内へ逆転写ステップ用の試薬を導入することができる。一実施形態において、多機能チャンバは、逆転写ステップのために多機能チャンバの内容物の温度を調整するためのヒータ/クーラの温度制御下に置くことができる。一実施形態において、方法は、逆転写ステップを実行する前に、(例えば多機能チャンバの外部に提供された磁石を用いて)多機能チャンバにおいて磁気粒子を隔絶することを更に含み得る。一実施形態において、方法は、逆転写ステップの後に又は逆転写ステップと同時に多機能チャンバにおいて第1段階マルチプレックス核酸増幅反応を実行することを含む。一実施形態において、多機能チャンバは、第1段階マルチプレックス核酸増幅反応のために多機能チャンバの内容物の温度を熱サイクルするためのヒータ/クーラの温度制御下に置くことができる。一実施形態では、第1段階マルチプレックス核酸増幅反応のために(例えば磁石を用いて)磁気粒子を隔絶するか、又は、第1段階マルチプレックス核酸増幅反応を磁気粒子の存在下で実行することができる。
[00354] 一実施形態において、可撓性容器は、多機能チャンバに流体接続された第2段階反応ゾーンを更に含み、第2段階反応ゾーンは複数の第2段階反応ウェルを含み、各第2段階反応ウェルはサンプルの更なる増幅のために構成された1対のプライマーを含み、第2段階反応ゾーンは複数の第2段階反応チャンバの全ての同時熱サイクリングのために構成されている。一実施形態において、方法は更に、第1段階核酸増幅反応の生成物(例えばアンプリコン)の一部を除いた全てを廃棄物チャンバ(例えばチャンバ3910b)に放出することと、第1段階核酸増幅反応の生成物の残り部分を、第2段階核酸増幅反応用の試薬(例えば図17A及び図17Bに示されている試薬ブリスタ3908a~3908fのうち1つ以上から提供される)と組み合わせて第2段階核酸増幅混合物を形成することと、第2段階反応ウェルの各々に第2段階核酸増幅反応混合物を充填することと、第2段階反応ゾーンの複数の第2段階反応ウェルにおいて第2段階核酸増幅反応を実行して、1つ以上の第2段階アンプリコンを発生させることと、を含む。
[00355] 一実施形態において、方法は、充填の後に第2段階反応ゾーンの複数の第2段階反応ウェルを密封することを更に含み得る。第2段階反応ゾーンの複数の第2段階反応ウェルを密封する方法は、本明細書の他の箇所で詳しく検討されている。簡潔に述べると、ウェルを密封するための方法は、限定ではないが、第2段階反応ウェルのアレイ上で膨張可能な袋を膨張させて外側層パウチプラスチックをアレイに対して圧縮してウェルを密封すること、及び/又は、1もしくは複数の熱シールを適用してウェル内への充填チャネル及びウェルからの充填チャネルを密封することを含む。例えば、ウェル3982に出入りする流体流を止めるには、実質的にチャネル3932に対して垂直に、ウェル3982間に一連のヒートシールを配置すればよい。一実施形態において、複数の第2段階反応ウェルにおいて第2段階核酸増幅反応を実行することは、ヒータ/クーラデバイスを用いて第2段階ウェルの内容物の温度を熱サイクルすることを含む。ヒータクーラデバイスは本明細書の他の箇所で検討されているが、簡潔に述べると、第2段階ウェルの内容物の温度を熱サイクルするためのヒータ/クーラは、第2段階ウェルの内容物を加熱及び冷却するように熱サイクルするペルチェ素子、又は、第2段階ウェルの内容物を加熱及び冷却するように平行移動できる少なくとも2つの固定点ヒータを備えたヒータアセンブリを含み得る(又は、ヒータアセンブリを固定すると共にパウチを平行移動させてもよいことは認められよう)。
[00356] 一実施形態において、方法は、第2段階核酸増幅反応後に様々な第2段階反応ウェルの各々において第2段階アンプリコンを融解させて、様々な第2段階反応ウェルの各々の融解曲線を生成することを更に含み得る。一実施形態において、第2段階ウェルの各々は、各第2段階ウェル内のアンプリコンの存在を検出するために使用できるdsDNA結合色素を含む。dsDNA結合色素の蛍光は典型的にdsDNAからssDNAへの融解に応じて変化するので、dsDNA結合色素を用いて第2段階ウェル内のDNAアンプリコンの特徴的な融解温度を検出することができる。このため、第2段階反応ウェルの温度を制御するため使用される1又は複数のヒータ/クーラデバイスは、第2段階ウェル内のアンプリコンの融解を引き起こす低速の温度勾配(temperature ramp)を実行するように構成することができ、パウチアッセイを実行するため使用される器具は、第2段階アンプリコンから蛍光を生成し検出するための、並びに融解温度及び融解曲線を検出するための励起及び検出光学系を含み得る。本明細書に記載され図示されている第2段階反応ゾーンのいずれも、図17Cの実施形態と共に使用できることは理解されよう。
[00357] 図11A、図11B、図17A、図17B、及び図17Cは、スワブ/サンプルチャンバを備えたパウチに挿入又は組み込むことができるスワブ10060、3912、及び4012の全体的な実施形態をそれぞれ示す。図18A及び図18Bは、図11A、図11B、図17A、図17B、及び図17Cに示されているものと同様のパウチに一体化できるスワブ18000の実施形態を示す。スワブ18000は、上部18002と、この上部18002を挿入することができるベース18004と、を含む。スワブ18000は更に、スワブ軸18006及びスワブ先端部18008を含む。一実施形態において、スワブ軸18002は上部18002に一体化されているか又は受容されている。図示されている実施形態において、上部18002は、ユーザがスワブを保持し操作するために使用できるハンドル18003を含む。一実施形態において、ベース18004はパウチに一体化することができる。例えば、スワブ18000をパウチに一体化するように、タブ18010をスワブチャンバ(例えば図17A及び図17Bのチャンバ3910)に挿入してスワブチャンバ内で密封することができる。図17A及び図17Bにおいて、例えばスワブ18000をスワブ3912の代わりに使用し、開口3923の近傍でスワブチャンバ3910に挿入することができる。一実施形態において、タブ18010を、パウチの製造に使用されるフィルム層に熱シールするか、又は、タブ18010もしくはスワブチャンバの開口のフィルム層に置いた接着剤でスワブチャンバの開口に接着することができる。
[00358] 図18Bはスワブ18000の一部分解図を示す。ベース18004は例示的に、上部18002のリング18012を挿入することができるアクセプタリング18014を含む。図示されている実施形態において、ベース18004のアクセプタリング18014は、上部18002をベース18004内にねじって入れた場合に上部18002のリング18012の相補的なタブ(図示せず)に着脱可能にロックできるロックタブ18016を含み得る。他のスワブシステムは例示的に、ねじ式機構、スナップ嵌め、摩擦嵌め等を含み得る。
[00359] 他の実施形態では、サンプルをパウチ内に導入するため、スワブの代わりに全量ピペット等を使用することができる。当技術分野において既知のタイプの全量ピペットを使用すればよい。図19A及び図19Bは、サンプルを捕捉し移送するために使用できる全量ピペット19000a及び19000bの2つの実施形態を示す。全量ピペット19000aは、球状部19002aと、軸19004aと、軸19004aの遠位端に位置決めされ得る媒質プラグ19008と、を含む。図示されている実施形態において、媒質19008は1対のフリット19006及び19010によって所定位置に保持することができる。全量ピペット19000bは、球状部19002bと、軸19004bと、軸19004bの遠位端のスワブ状材料19012とを含む。一実施形態において全量ピペットは、全量ピペット19000aの媒質19008と全量ピペット19000bのスワブ状材料19012を組み合わせてもよい。挿入リング18012と同様の挿入リングを、例えば球状部19002a又は19002bの下方に提供することで、全量ピペット19000a又は19000bを図18A及び図18Bのスワブと同様に用いてパウチを密封してもよい。
[00360] 媒質19008は、例えばサンプルから選択した1又は複数の被分析物を捕らえて濃縮するためのイオン交換媒質、サイズ排除媒質、疎水性媒質、親和性媒質(例えば捕捉抗体、ヒスチジンタグ等)等とすることができる。スワブ状材料19012は、媒質19008と同一の特徴の多くを有することができる。すなわちこれは、サンプルから選択した1又は複数の被分析物を捕らえて濃縮するためのイオン交換基、疎水性基、又は親和性基等を含み得る。いくつかの実施形態では、媒質19008又はスワブ状材料19012を介してサンプルをピペットで往復移動させて、サンプルから選択した1又は複数の被分析物を捕らえて濃縮することができる。スワブ状材料19012の場合、全量ピペットをサンプル内で振って(swish)、サンプルから選択した1又は複数の被分析物を捕らえて濃縮することができる。捕捉化学物質及び捕らえた1又は複数の被分析物の性質に応じて、1又は複数の被分析物を分析のためパウチに挿入する前にピペットの作用で洗浄してもよい。全量ピペット19000a及び19000bは、干渉性マトリックスを有する尿又は血液のようなサンプルを分析する場合は特に有用であり得る。捕捉特性を用いて、分析前に、微生物量の少ないサンプルから被分析物(例えば細菌又はウイルス)を濃縮することができる。例えば親和性捕捉を用いて、血液から又はわずか数時間の培養後の血液培養から直接に細菌又はウイルスを捕捉し濃縮することができる。これにより、例えば敗血症患者の診断のための時間を大幅に短縮できる。
[00361] ここで図20Aから図20Eを参照すると、アレイ内のウェルのための様々なウェル充填経路の例が示されている。図17A及び図17Bは、アレイフローチャネル3932及びらせん形経路3930を含む「入り組んだ」アレイウェル充填経路の一例を示している。図20Aから図20Eはウェル充填経路の他の例を示す。図20Aから図20Eの各例は、ウェル20004a~20004e及びアレイフローチャネル20002a~20002eを含む。図20Aは、ウェル20004aに通じる直行チャネル20006aを示す。図20Bは、ウェル20004bに通じるらせん形チャネル20006bの実施形態を示す。図20Cは、ウェル20004cに通じるスイッチバックチャネル20006cを示す。図20Dは、ウェル20004dに通じるらせん部20008d及びスイッチバック部20010dを含むチャネル20006dを示す。図20Eは、ウェル20004eに通じるらせん形スイッチバック部20008e及び平行スイッチバック部20010eを含むチャネル20006eを示す。図20Aから図20Eに示されているウェル及びチャネルは、パウチ内に配置された場合、少なくとも1つのフィルム層によって上部と下部で密封される。このため、ウェル内への流路はフローチャネルとウェルチャネルを通るものだけである。これらの経路の「入り組んでいる」程度は異なるが、概してフローチャネルとウェルチャネルの組み合わせによってウェルを相互に隔離し、ウェル間の混合(すなわちクロストーク)を抑制する。前述の例は入り組んだウェル充填経路を説明するための単なる例であり、他のウェル充填経路も使用できることは認められよう。
[00362] 閉鎖系におけるビーズ使用に伴う1つの問題は、ビーズが所望のサンプル成分と共に下流へ運ばれることがある点である。例えば、パウチ510で使用されるビーズ破砕ビーズ(例えばケイ酸ジルコニウムビーズ)又は磁気ビーズは、核酸回収もしくはPCR増幅に使用される下流のブリスタ内へ、又はビーズがシールに影響を及ぼし得るチャネル内へ運ばれることがある。同様に、溶解粒子及び磁気ビーズは空隙体積を有するので、いくつかの実施形態では、パウチ3900等のパウチにおいてPCRのようなプロセスから溶解粒子及び/又は磁気ビーズを分離することが望ましい場合がある。磁気ビーズは磁石によって隔離することができ、溶解粒子は大きさと質量によって沈殿するが、これらのプロセスは必ずしもパウチ内のビーズ移動を排除するわけではなく、また、必ずしもビーズ内に捕らえられる液体体積に対処するわけではない。
[00363] 一実施形態では、パウチ内の1つ以上のチャンバ間にフィルタ要素を挿入することによって、ビーズ(例えば溶解粒子)がブリスタからブリスタへ(また、ブリスタ間のチャネルを通って)流れるのを防止することができる。フィルタ要素を含むそのようなパウチの実施形態が図21Aに示されている。図21Bはフィルタの断面図を示し、図21C及び図21Dはパウチ内フィルタの代替的な実施形態を示す。図21Aに示されているパウチ21000は、図17A及び図17Bに示されているパウチと同様であるが、多機能チャンバが容器ゾーン21002と反応ゾーン21004に分割されている点が異なる。しかしながら、パウチ21000はフィルタを示すが、いくつかのパウチ実施形態ではフィルタを省略できることは理解されよう。図17Aから図17Cに示されている実施形態と同様、スワブ21012を用いてサンプルを収集し、このスワブをサンプルチャンバ21010に挿入することにより、サンプルをパウチ21000内に導入できる。あるいは、ピペットを用いてサンプルをサンプルチャンバ21010内に投入してもよい。いずれの場合も、サンプルチャンバを密封して、シール21011aによってサンプルチャンバ21010aを形成すると共にシール21011bによって廃棄物チャンバ21010bを形成することができる。いくつかの実施形態では、より多くのシールを配置してもよい。溶解のため、サンプル緩衝剤を21008aからサンプルチャンバに移動させてサンプルを水和及び/又は調製することができる。一実施形態において、サンプル溶解は溶解ゾーン21002内で(例えばビーズ破砕によって)、サンプル、ジルコニウム溶解粒子21003、及び溶解緩衝剤を用いて実行できる。溶解の後、溶解物を溶解ゾーン21002からフィルタ21024を介して反応ゾーン21004へ放出することができる。溶解粒子21003を溶解ゾーン21002から反応ゾーン21004へ移送できないように、フィルタ21024を所定位置で密封すればよい。
[00364] 溶解ゾーン21002における溶解と、反応ゾーン21004への溶解物の放出の後、パウチ3900についての記載と同様にパウチ21000を使用することができる。磁気シリケートビーズによる核酸回収、ビーズ洗浄による望ましくない溶解物成分の除去、溶出、第1段階PCR、及び第1段階PCR生成物の希釈といったプロセスを、反応ゾーン20004において実行できる。希釈した第1段階反応生成物を用いて、第2段階PCR用のアレイ21081のウェル21082を充填することができる。反応ゾーン21004で実行されるステップのための試薬は、試薬ブリスタ21008b、21008c、...21008(n)から提供できる。パウチ内の流体移動は、シール21009a~21009hのいくつか又は全てによって制御することができる。
[00365] 例示的にパウチ21000は、2層の可撓性プラスチックフィルム、又は、例えばポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルメタクリレート、及びそれらの混合物のような他の可撓性材料で形成することができる。一実施形態において、パウチ21000は、ブリスタ及びチャネルが形成されるように少なくとも2層のプラスチックフィルムを積層することによって製造される。例えば、これらのフィルム層を熱積層し、次いでレーザ溶接して、限定ではないがブリスタ、試薬チャンバ、及びサンプルチャンバのような様々な領域を画定する。一実施形態において、パウチ21000の製造は、フィルタ21024を挿入することができるポケット21020又は同様の構造を形成することを含む。一実施形態では、21026a及び21026bに示されているようにフィルタ21024の端部をパウチフィルム層に熱シールすることができる。フィルタ21024をポケット21020に挿入した後、フィルタポケットをシール21029aによって閉鎖すればよい。
[00366] 図21Bは、フィルム層21030と21032との間でポケット21020内に位置決めされたフィルタ21024の断面を示す。フィルタ21024の端部にシール21026a及び21026bを見ることができる。一実施形態において、シール21026a及び図21026bはフィルタの端部を押し合わせ、フィルタ材料とフィルム層を融合させる。シール21029aも図示されている。シール21029aはフィルタから離れた場所に形成されてポケットを閉じ、液体がポケットから流出するのを防止できる。図示されている実施形態において、フィルタ21024並びにフィルム層21030及び21032は、フィルム層に平行なフィルタの面で熱シールされている(21034)。これによって、材料がフィルタ周囲に流れるのを防止する。例えば、溶解ゾーン21002から反応ゾーン21004へ流れる流体はフィルタ21024を通って流れるが、フィルタ21024の周囲には流れない。代替的な実施形態(図示せず)では、フィルタはポケット内で熱シールされず、器具内でフィルタの面と端部を強く圧縮することによってフィルタの周囲に流体が流れるのを防止できる。いずれの場合も、フィルタはチャネルと交差するように配置され、例示的にチャネルよりも幅が広く、比較的大きい表面積を有するフィルタであるため、溶解物は詰まることなくフィルタを通って流れることができる。
[00367] フィルタ材料の選択は、サンプルのタイプ及び所望の細孔径に依存する。一般に、フィルタの細孔径は、溶解粒子以外の液体中の全ての材料を通過させ得るのに充分な大きさに選択される。一実施形態において、フィルタの細孔径は約5~100μm(例えば50~90μm又は7~12μm)の範囲である。好ましくは、フィルタ要素は、パウチの形成に使用される1又は複数の材料とコンパチブルな材料から作製され、パウチもフィルタも損なうことなくフィルタをポケット内で熱シールできるようになっている。適切なフィルタは、限定ではないが、Porexによって作製された様々なポリエチレンフィルタを含む(例えばPOR-4903及びXS-POR-7744)。
[00368] フィルタの設置及び位置決めと同様、アレイ21081をポケット21022に挿入し、パウチフィルム層間で熱シールし、次いで21029bで密封してアレイポケットを閉じることができる。また同様に、試薬ブリスタ21008a~21008cをフィルム層間のポケットとして形成することができる(他の実施形態ではこれよりも多数又は少数の試薬ブリスタが使用され得る)。これらの試薬ポケット内に液体もしくは乾燥試薬、又はこれらの組み合わせを配置し、次いでシール21028a~21028cを適用して試薬ブリスタの端部を密封することができる。
[00369] 図21C及び図21Dは、パウチ内にフィルタを配置する代替的な実施形態を示す。図21C及び図21Dの実施形態は、図21A及び図21Bに示されている実施形態と同様である。図21C及び図21Dに示されている実施形態の各々は、溶解ゾーン21002a及び21002b、各溶解ゾーン内の溶解粒子21003a及び21003b、並びに反応チャンバ21004a及び21004bを含む。図21C、図21D、及び図21Aの違いは、ポケット内にフィルタを配置する方法と、溶解ゾーン及びフィルタを密封する方法である。図21Cにおいて、フィルタ21024aは溶解ゾーン21002aの一端21029eにおいてポケット21020a内に配置される。フィルタの端部及びフィルムに平行な面は、図21Bに示されているように密封できる。溶解ゾーン21002aは、フィルタの反対側の21029cで密封されている。図21Dにおいて、フィルタポケット21020bは溶解ゾーン21002bの一端においてフィルタ21024bを受容するように形成できる。シール21029dは、溶解ゾーン21002bを閉鎖すると共にポケット21020b内にフィルタを密封するよう配置できる。
[00370] 図21Cでは、ビーズ21003aが重力によってフィルタ21024a上に沈殿すると共に、溶解物が重力と溶解ゾーン21002aに加えられた圧力の組み合わせによってフィルタ21024aを通って流れるように、溶解ゾーン21002aは反応チャンバ21004aに対して位置決めされている。図21Dでは、ビーズ21003bが重力によって溶解ゾーン21002bの端部21029fに(フィルタ21024bから離れた場所で)沈殿すると共に、流体が溶解ゾーン21002bに加えられた圧力によって溶解ゾーン21002bからフィルタ21024bを介して反応ゾーン21004bへ(図21Dに示されているように左から右へ横方向に)移動するように、溶解ゾーン21002bは反応チャンバ21004bに対して位置決めされている。図21C及び図21Dに示されている双方の実施形態では、フィルタの大きい表面積によって、溶解物中の細胞残屑や他の材料で詰まるリスクを抑えながら、流体がフィルタを通って流れることが可能となる。
[00371] 図22A及び図22Bを参照すると、ウェル22082a及び22082bの追加の実施形態が示されている。図22Aのウェル22082aはアレイカード22081aの一部であり、図22Bのウェル22082bはアレイカード22081bの一部である。ウェル22082a及び22082bは、ウェル内部の特徴をより良く図示するため切断図で示されている。ウェル22082a及び22082bは、充填チャネル22030及びウェル充填チャネル22032によってアクセスされる。図22Aのウェル22082aは、ウェル22082aの直径よりも小さい第1の直径によって画定された第1の壁22083aと、ステップ22084aと、ウェル22082aの直径と実質的に等しい第2の直径によって画定された第2の壁22085aと、ウェル充填チャネル22032に通じるステップ22086aと、を含む。図22Bのウェル22082bは、カード22081bの上部及び下部から隔離された第1の壁22083bと、第2の上部壁及び下部壁22085b及び22087bと、上部ステップ22084bと、下部ステップ(図示せず)と、を含む。
[00372] 一実施形態において、第1の壁22083a及び22083bはカードの少なくとも1つの表面から隔離することができるので、アレイカードの上部及び下部の一方又は双方に試薬及び/又は反応成分が接触することなくウェル内に化学物質を提供することができる。例えばいくつかの例では、ウェルに投入された液滴が充填チャネル22030及びウェル充填チャネル22032に接触し得る場合、液滴がこれらのチャネル内に毛管作用で運ばれる可能性があることが観察された。充填チャネル22030及びウェル充填チャネル22032から隔離されたウェルの領域に(例えば第1の壁22083a及び22083bに)液滴を投入することによって、液体が毛管作用で充填チャネル22030及びウェル充填チャネル22032及び他のウェルに運ばれることなく液滴を投入できる。ウェル22082bの第1の壁22083bはカードの上面及び下面から隔離されているので、試薬及び/又は反応成分を更に隔離し、汚染されにくくすることができる。
[00373] 図23A及び図23Bは、別々の試薬及び/又は反応成分をスポットすることができる2つの相互接続された同時充填可能ウェルを含む反応ウェルの実施形態を示す。これらの試薬及び/又は反応成分は、反応ウェルを流体であふれさせた場合に結合する可能性がある。反応ウェル23082は、アレイカード23081上のウェルアレイの一部とするか、又は別個のものとすることができる。反応ウェル23082は、ウェル内部の特徴をより良く図示するため、図23Aにおいて平面図で示されると共に図23Bにおいて切断図で示されている。反応ウェル23082は、充填チャネル23030及びウェル充填チャネル22032によってアクセスできる。反応ウェル23082は、第1のサブウェル23082aと、第2のサブウェル23082bと、第1及び第2のサブウェル間の共通表面を形成するステップ23084と、を含む。図23Bを参照すると、第1のサブウェル23082aは第1の実質的に円筒形の壁23083aを含み、第2のサブウェル23082aは第2の実質的に円筒形の壁23083bを含む。第1及び第2の壁23083a及び23083bは、ステップ23084と、反応ウェル23082を取り囲む第2の壁23085とに接続している。
[00374] 一実施形態において、第1のサブウェル23082aは第1の乾燥試薬及び/又は反応成分を含み、第2のサブウェル23082bは第2の乾燥試薬及び/又は反応成分を含み得る。これらの試薬及び/又は反応成分は、反応ウェル23082及び棚スペース23084を流体であふれさせた場合に結合する可能性がある。一実施形態において、第1及び第2のサブウェル23082a及び23082b内の試薬及び/又は反応成分は、分析方法において共に機能するよう意図された成分であるが、それにもかかわらず、必要となるまではそれらを分離したまま維持することが望ましい場合がある。例えば、第1のサブウェル23083a内の試薬及び/又は反応成分はDNAポリメラーゼ(例えばタックDNAポリメラーゼ)を含み、第2のサブウェル23083b内の試薬及び/又は反応成分はdNTPを含み得る。反応混合を完了させる成分(すなわちポリメラーゼ及びdNTP)は反応が開始するまで別々のコンパートメントに保持されるので、このような反応ウェルは「ホットスタート」方法を必要とすることなく適切に使用され得る。別の例では、第1のサブウェル23083a内の試薬及び/又は反応成分は酵素を含み、第2のサブウェル23083b内の試薬及び/又は反応成分は基質を含み得る。同様に、第1及び第2のサブウェル23083a及び23083b内の試薬及び/又は反応成分は、反応において1又は複数のエピトープの存在を検出するための抗体結合対を含み得る。図23A及び図23Bは、2つの相互接続された同時充填可能ウェルを含む反応ウェルの実施形態を示すが、このような反応ウェルが3つ以上(例えば3又は4又は5)の相互接続された同時充填可能ウェルを含み得ること、また、3つ以上の相互接続された同時充填可能ウェルの各々に、分析方法のためインサイチュで結合し得る試薬及び/又は反応成分を提供できることは認められよう。
アレイのスポット方法
[00375] 図24Aから図24Fは、アレイカード24081のウェル24082内に試薬及び/又は反応成分を適用する(すなわちスポットする)ための方法を示す。簡略化のため1つだけウェルが図示されているが、この方法を用いて2つ以上(例えば数十から数百)のウェルを同時にスポットできることは当業者には認められよう。一実施形態において、複数のウェルを同時にスポットすることには、援用により全体が本願に含まれる米国特許公報第2015/0283531号に記載されているスポット装置と同様の装置を使用すればよい。同様に、図24Aから図24Eに示されているウェル24082は図22Aを参照して記載されているウェルと同様であるが、これは単なる例示であり、スポットされる1又は複数のウェルが他の構成を有し得ることは当業者には認められよう。
[00376] 図24Aは初期状態を示す。アレイカード24081は、ウェル24082と、第1の壁24083と、ステップ24084と、第2の壁24085と、を含む。興味深いことに、アレイカード24081及びウェル24082は、試薬及び/又は反応成分を1又は複数のアレイウェルにスポットする前に適用される裏当てフィルム等を備えていない。試薬及び/又は反応成分の液滴をウェル24082へ送出するため、ウェル24082に対してカニューレ24002が位置決めされている。一実施形態において、カニューレはウェル24082を通過できるような大きさ及び寸法に形成されている。一実施形態において、ウェルをスポットするための装置(図示せず)は、カニューレ24002に対してカード24081を位置合わせするためのアライメントピン等を含み得る。米国特許公報第2015/0283531号に記載されているように、カニューレ24002を液体試薬及び/又は反応成分の貯蔵部に接続し、この貯蔵部から要求に応じてウェル24082に液体スポットを供給することができる。2つ以上のウェルをスポットするため2つ以上のカニューレを含む装置では、各カニューレをそのカニューレに固有の試薬及び/又は反応成分の貯蔵部に接続するか、又は、いくつかもしくは全てのカニューレを、同一の試薬及び/又は反応成分を有する1又は複数の共通の貯蔵部に接続することができる。
[00377] 図24Bでは、カニューレ24002をカード24081に対して下降させることでカニューレ24002はウェル24082を貫通している。あるいは、カニューレに対してカードを移動させてもよい。以下の記載ではカードに対してカニューレを移動させることに言及するが、本記載の精神から逸脱することなくカニューレに対してカードを移動させてもよいことは認められよう。また、カード24081は水平に図示され、カード24018よりも上方にカニューレ24002が位置決めされているが、カード24081を垂直に提供すると共にカニューレ24002をカード24081の側方から入るように位置決めすることを含む他の配向も可能である。
[00378] 図24Cに示されているように、カニューレがカードを貫通した状態で、カニューレ24002の中に試薬及び/又は反応成分24004を送り込み、カニューレ24002の端部に液滴24006aを形成することができる。図24Dに示されているように、次いでカニューレ24002を後退させればよい。カニューレ24002が後退している時に液滴24006bが壁24083で捕捉されるので、カニューレ24002が完全に後退すると(図24E)、液滴24006bはウェル24082内に残る。スポットの後、試薬及び/又は反応成分液滴24006b中の溶媒を蒸発させて、乾燥した試薬及び/又は反応成分をウェル24082内のフィルム又はリング24007に残すことができる(図24F)。しかしながら、図24Eに示されているフィルム又はリング24007は単なる例示であり、試薬及び/又は反応成分の組成及び濃度に応じて試薬及び/又は反応成分は他の形態に乾燥し得ることは認められよう。一実施形態において、ウェル内でスポットされる試薬及び/又は反応成分は、反応緩衝剤、安定化緩衝剤、ポリメラーゼ、dNTP、核酸結合色素、Mg++、又はアッセイ特異的プライマーのうち1つ以上を含み得る。しかしながら、PCR反応混合物の場合、ウェルが高温になって流体であふれるまで反応混合が完了しないように、反応混合の成分のうち少なくとも1つ(例えばdNTP又はポリメラーゼ)を概ね省略してもよい。すなわち、ウェルが流体であふれた時にのみ反応混合が完了するように、流体には概して1又は複数の足りない成分がある。
[00379] 一実施形態において、24081のようなアレイカード(試薬及び/又は反応成分が提供されているか又は提供されていない)を用いてパウチ(例えばパウチ3900又は21000)を製造するには、2つ以上のフィルム層の間に前もって形成されたポケット内にアレイを挿入し、(例えば熱シールによって)フィルムをアレイに密封してウェルの上面及び下面を密封し、(例えば熱シール、音波溶接、又はレーザ溶接によって)前もって形成されたポケットを密封すればよい。一実施形態では、2つ以上のフィルム層を積層し、画定されたエリア(例えば反応ブリスタ、試薬ブリスタ、1又は複数のポケット等)を形成した後に、フィルム層間にアレイを位置決めすることができる。別の実施形態では、少なくとも2つのフィルム間にアレイカードを位置決めし、このカードの周囲に、画定されたエリア(例えば反応ブリスタ、試薬ブリスタ、1又は複数のポケット等)を形成することができる。
[00380] 一実施形態では、アレイを流体であふれさせるように、アレイポケットを1又は複数の上流の流体ブリスタに流体接続することができる。一実施形態において、アレイは、例えば図17A及び図17Bに示されているもののような流体チャネルシステムを含み、アレイの個々のウェルに流体を充填できるようになっている。一実施形態において、アレイは、例えば図17A及び図17Bに示されているもののような真空ポート及び真空チャネルシステムを含み、アレイをインサイチュで部分的に排気できるようになっている。
器具類
[00381] 例えば図1、図5A、図7、図11A、図11B、図17A、図17B、図17C、又は図21Aを参照して本明細書に記載されているパウチは、図2に示されている器具と同様の器具で使用されるように構成できる。以下で、本明細書に記載されるパウチと共に使用され得る器具及び器具コンポーネントの代替的な実施形態について説明する。本明細書に記載されるパウチと共に使用され得る器具の追加の実施形態は、例えば、援用により全体が本願に含まれるPCT/US17/18748号で見ることができる。
[00382] 典型的に、PCR及び同様のプロセスのための熱サイクリングは、ヒータと熱的に接触している1つ以上のサンプルの温度を熱調節するように温度の上昇及び下降を行うヒータサイクルを用いて達成される。例えば図2のヒータ886及び888を参照のこと。ヒータ886及び888を熱サイクルさせることにより、PCR部分の実行時間は必然的に、ヒータが各遷移において適切な温度に到達するのに要する時間と少なくとも同じである必要がある。ヒータの温度を変更する必要がない場合は実行時間が短縮し得ることは理解されよう。図25から図27Dは、第1段階PCR増幅の別の実施形態を示す。この例示的な実施形態では、ブリスタ548及び564を単一のブリスタ549に置き換えることができ、例示的な器具はヒータ986及び987を含む温度制御要素を備えることができる。しかしながら、ブリスタ548及び564のうち1つを使用すると共に、より小さいヒータ986、987を使用してもよいことは理解されよう。また、ブリスタ549を単独で使用するか、又は、細胞溶解及び/又は追加の増幅のためのコンポーネントを含む場合も含まない場合もある他の実施形態と組み合わせて使用してもよいことは理解されよう。そのようなコンポーネントは例えば、限定ではないが、図5A、図7、図11A、図11B、図17A、図17B、及び図17Cを参照して記載されているパウチである。図25から図27Dの実施形態は、図17Cの多機能チャンバ4002aの内容物を熱サイクルさせるのに特に適している。
[00383] ヒータ986、987は、ペルチェ素子、抵抗ヒータ、誘導ヒータ、電磁ヒータ、薄膜ヒータ、印刷要素ヒータ、正温度係数ヒータ、当技術分野において既知の他のヒータ、又は複数のヒータタイプの組み合わせ(例えばペルチェ熱電ヒータ/クーラデバイスと抵抗ヒータとを含むヒータ要素)とすればよい。しかしながら、アニーリング温度と変性温度との間で熱サイクルするよう提供されているヒータ886とは異なり、一例では、ヒータ986を例えば94℃の適切な変性温度で提供し、ヒータ987を例えば60℃である適切なアニーリング温度で提供することができるが、当技術分野において既知のように他の例示的な変性温度及びアニーリング温度も使用できる。いくつかの実施形態では、ヒータ986を94℃よりも高い温度に設定すると共にヒータ987を60℃よりも高い温度に設定し、流体が温度に到達すると迅速にこれらのヒータの各々によって流体を循環させ、これによってランプレートを増大させることが望ましい場合がある。このような実施形態は、高いプライマー及びポリメラーゼ濃度と共に使用するのに適切であり得る。例示的に、ヒータ986とヒータ987との間に隔離スペーサ983を提供してもよい。発泡体、プラスチック、ゴム、空気、真空、ガラス、又は例示的に伝導率の低い他の任意の適切な材料を含む、任意の適切な絶縁性材料を使用できる。ヒータ986及び987が概ね一定の温度に保持される実施形態では、実行時間及びエネルギ使用を著しく低減することができる。
[00384] 説明のための例では、ワイパ989を含むワイパヘッド910がブリスタ549の上面549bに係合する(engage)。流体がブリスタ549内に移動すると、ワイパ989の本体913がブリスタ549をヒータ986、987に接触させるようにワイパ989を移動させ、このためブリスタ549の一部はヒータの各々に接触して、ヒータの各々からブリスタ549の一部への熱伝達を可能とする。次いで、1つ以上のブレード949を用いてブリスタ549の1つのエリアから別のエリアへサンプル572を移動させることができる。
[00385] 多くの場合、流体がコンパートメント内に入った時、流体がそのコンパートメントの入口近傍に留まることや、コンパートメントの内容物が充分に混合されないことがある。これは図27Aに概略的に示されている。図27Aに図示されているブリスタ549は不規則な形状を有し、ヒータ986及び987と良好に接触しないことがある。ブリスタ549の体積、追加されたサンプル572の体積、サンプルの内容物等に応じて、流体572は不規則な形状であり、流体の大部分はサンプルがブリスタに注入された場所の近くに集まることがある。これが特に当てはまるのは、コンパートメントが膨張可能であり、流体の追加前に部分的もしくは完全に折り畳まれている場合、又は流体がコンパートメントを完全に充填するには充分でない場合である。サンプル572がチャネル552aを介してブリスタ549内に入り、チャネル552aの近傍に留まるので、ブレード949の係合によってサンプル572のほとんど又は全てがセクション549c内に閉じ込められる実施形態を想像することができる。従って、ブレードの係合前に流体をコンパートメント全体に広げることが望ましい場合がある。このため、図27Bに示されているように、ワイパヘッド910をブリスタ549に接触するまで下降させて、サンプル572をブリスタ549全体に広げて流体572をブリスタ549内で均等に分散させることで、ブリスタ549を規則的な形状にすると共に、ヒータ986及び987と良好で一貫した接触状態になるようブリスタ549を押圧することができる。
[00386] 一実施形態において、ワイパヘッド910は、ブリスタ549に圧力を加えてサンプル572をブリスタ549全体に広げる圧力部材981を備えることができる。例示的に、部材981の使用はいくつかの利点を有する。その1つは、サンプル572の多くを薄い層でヒータ986、987全体に広げることで体積に対する表面積の比が増大するので、サンプル572との間の熱伝達が改善するはずである点である。同様に、流体は迅速に熱サイクルされている、すなわちサンプル572の液体はヒータ986及び987によって温度が迅速に上昇及び下降しているので、液体をブリスタ549内で薄い層に広げると、所与の温度における休止時間が短縮し、サンプルの多くが迅速にターゲット温度に到達できる。また、以下で検討するように、ワイパ989の形状に応じて、部材981からブリスタ549に対する圧力はサンプル572を広げるので、ワイパ989のブレード949の係合によりブリスタ549内のサンプル572が比較的均等な又は比例した体積に分割される。ブレード949の係合前に部材981から圧力を加えると、サンプル572の一部がブリスタ549の各セクションへ押しやられる。
[00387] 一実施形態において、部材981は圧縮可能又は半圧縮可能である(例えば、圧縮可能又は半圧縮可能材料で形成されているか又はそのような材料を含む)。そのような材料は、圧縮可能又は半圧縮可能な発泡体、プラスチック、もしくはゴムを含むか、又は、より硬い材料であるが、部材981とワイパ本体913との間に、ばね式、エラストマ、又は他の付勢のための部材もしくは力を有することで、サンプル572がブリスタ549内に移動した場合にサンプル572はブリスタ549全体に広がるが、部材981は適宜圧縮してサンプル572のための充分な空間を可能とするようになっている。当技術分野において既知である他の圧縮可能又は半圧縮可能材料も使用できる。あるいは、部材981は実質的に剛性であり、部材981とヒータ986、987との間に、サンプル572をブリスタ549全体に広げるために充分な空間のみを提供するような位置に設定することも可能である。
[00388] 例示的な実施形態では、図6に示されているように、ワイパ989はx字形ブレード949を有し、これは部材981を貫通して延出し、ワイパ989を4つのセクション945、946、947、948に分割する。図27C及び図27Dに示されているように、ワイパ989及びブレード949は少なくとも2つのモードでブリスタに接触できる。図27Cに示されているように、ワイパ989は、部材981が部分的に圧縮されてブレード949が部分的にブリスタ549に衝突するまで下降させることができる。図27Cのモードにおいてワイパヘッド910を回転させた場合、ブレード949の作用を用いて撹拌作用を与え、ブリスタ549の内容物572を完全に混合することができる。
[00389] 図27Dに示されているように、ワイパヘッドを更に下降させて部材981を更に圧縮させ、ブレード949がブリスタ549に充分に衝突した場合、ブレードはブリスタを別個のセクションに分割することができる。例えばx字形ブレード949では、図7に示されている通り、ブレード949がブリスタ549を対応する4つのセクション549a、549b、549c、549dに分割するように、ブレード949は充分な圧力でブリスタ549に接触できる。軸993を中心としてワイパ989を回転させると、ブリスタ549内の流体はブリスタ549内で円形運動を生じる。一実施形態では、ブレード949によって流体の各部分をヒータ986及び987の各々で同時に加熱することができ、流体の一部分を一方のヒータの温度制御から移動させながら流体の他の部分を他方のヒータの制御下に置くことができる。部材981はブリスタ549の内容物を圧縮する。従って部材981は、流体572をブリスタ549全体に広げ、ブリスタ549とヒータ986及び987との間の接触を改善することに加えて、ブリスタ549の内容物を別のブリスタへ押し込むことができる。例えば、第1段階熱サイクリングが完了した後に出口チャネルを開いて、流体がブリスタから流出する経路を開放することができ、これと共に部材981は元の形状に戻る。一実施形態において、流体は、チャネルに流体接続されているブリスタの四分円からのみ流出できる。各四分円が順番に出口チャネルに接続されるように、ワイパ989を回転させることができる。
[00390] 例示的にブレード949は、ゴムもしくはエラストマ材料とするか、又は、ブリスタ549を複数のセクションに分割してブリスタ549内の流体を移動させるのに充分な剛性を有するがブリスタ549に穴をあけたり破いたりしないテフロンもしくはデルリン等の汚れが付かない材料とすることができるが、そのような材料は単なる例示であり、当技術分野において既知である他の材料も使用できることは理解されよう。あるいは、ブレード949の代わりにローラ又はブリスタ549内の流体の移動を可能とする他の構成を用いてもよい。ワイパ989及びブレード949を含むワイパヘッド910は、任意のモータ、カム、クランク、ギア機構、油圧式機械、空気圧式機械、又は当技術分野において既知の他の手段によって、所定位置に移動させて回転させることができる。このような移動は連続的とするか、又は、ワイパ989及びブレード949を段階的に移動させ、例示的に0.1秒から1分以上停止させることでサンプルの各部分をヒータ986、987の各々の制御下に保持し、その後、次の位置に移動させてサンプルの異なる部分をヒータ986、987の各々の制御下に保持することができる。ワイパ989の動きは、時計回りもしくは反時計回りの円形運動とするか、又は時計回りと反時計回りが交互になるように方向を逆転させることができる。ワイパ本体913及びブレード949を単一の固定ユニットとし、単一の固定ユニットとして移動させるか、又はブレード949の移動とは別個に本体913をブリスタ549と接触するように及び接触しなくなるように移動させ得ることは理解されよう。また、ブリスタ549の円形の形状と回転運動は単なる例示であり、他のサンプル容器の形状も可能であること、更に、ブレード又はローラには、例えば線形、曲線、及び半円形の運動のような非回転の移動も可能であることは理解されよう。
[00391] 上記で検討したように、ワイパ989はx字形ブレード949を備え、これによって、図25で最もよく見られるようにワイパを4つのセグメント945、946、947、948に分割し、同様に、図26で最もよく見られるようにブリスタ549を4つのセグメント549a、549b、549c、及び549dに分割する。しかしながら、これは単なる例示であり、ブレード949の任意の形状を使用できることは理解されよう。ブレード949の形状の例として、ブリスタ549の直径に実質的に対応する単一の線形ブレード、s字形ブレード又はらせん形ブレードを含む単一又は複数の非線形ブレード、ブリスタ549の半径に対応する単一のブレード(時計の針と同様)、及び、ブリスタ549を複数のセグメントに分割する複数のブレードが挙げられる。ブリスタ549を複数の同様のセグメントに分割するブレードでは、異なるセグメント間での加熱制御が向上し、セグメント全体が一度にアニーリング温度及び変性温度になる可能性があるのに対し、s字形、らせん形、及び放射状ブレードでは、複数のボルテックス、渦、及び様々な混合パターンが発生し、ヒータ986、987によって生成された熱表面全体にサンプルが移動することは理解されよう。また、ブレード材料が少なくなるとヒータと緊密に接触するサンプル量が多くなり、ブレード材料が多くなると流体移動の制御が向上することは理解されよう。どのブレードパターンであっても、ブリスタ549内の流体の一部がアニーリング温度になり、他の部分が変性温度になり、更に別の部分がこれらの温度間の遷移状態である可能性があり、これらは全て単一のサンプル容器内にあることは理解されよう。ブレード949の形状の選択は、ブリスタの大きさ及び厚さ、ヒータの大きさ、並びに、第1段階熱サイクリングの完了後にブリスタ549から材料を放出するためワイパ989を使用する望ましさに依存する。
[00392] 例示的な実施形態では、ヒータ986及び987はそれぞれ例示的に94℃及び60℃の固定温度で提供される。しかしながらいくつかの実施形態では、使用中にヒータ986及び987の温度を調整することが望ましい場合がある。例えば、サンプルを最初にブリスタ549へ導入する際に一方又は双方のヒータの温度を上昇させて、流体がブリスタ549に入る時の低温を補償することが望ましい場合がある。以下の検討に当てはまる別の例では、ヒータがより迅速にブリスタ内の流体のターゲット温度を達成できるようにヒータを「過度に駆動する(overdrive)」ことが望ましい場合がある。例えば熱サイクリングのターゲット温度が94℃と60℃である場合、ヒータを高い方の温度よりも高く(例えば95~110℃の範囲内に)設定すると共に、低い方の温度よりも低く(例えば59~50℃の範囲内に)設定することで、サンプル内の流体をいっそう迅速に加熱及び冷却することを可能とする。また、2つのヒータが図示されているが、任意の数のヒータを使用できる。1つの説明のための例では3つのヒータを使用し、そのうち1つを変性温度に設定し、1つをアニーリング温度に設定し、第3のヒータを延伸温度に設定する。別の説明のための例では、第1のヒータは第2のヒータよりも大きいので、サイクルの中でサンプルが第1の温度である時間の方が長い。更に、ブリスタ549及びその内容物を固定した状態に維持し、ヒータ986、987を回転させるか又は横方向に平行移動させてもよいことは理解されよう。
[00393] 例示的に、流体は、図1のパウチのブリスタ546と同様の核酸抽出ゾーンからチャネル552aを介してブリスタ549内に入り、次いでチャネル552aを閉じることができる。次いで部材981がブリスタ549を押圧して、ブリスタ549とヒータ986及び987との接触を促進した後、ブレード949をヒータ986、987の方へ移動させ、ブリスタ549をセグメント549a、549b、549c、及び549dに分割させる。ワイパ989を回転させると、4つのセグメント549a、549b、549c、及び549dの各々におけるサンプルはヒータ986との接触からヒータ987との接触へ移り、また元に戻る。各セグメント内のサンプルを加熱及び冷却するのに必要な時間量は、ブリスタ549のフィルムの厚さ、ブリスタ549内の流体層の厚さ、ブリスタ549内のサンプルの混合、及びヒータとの接触の量等、多数のファクタに依存する。しかしながら、この例示的な実施形態においてワイパ989の1回転はPCRの1サイクルに対応することは理解されよう。
[00394] 上述した熱サイクリングデバイスに加えて、本明細書に記載されているヒータ及びミキサシステムは、閉鎖パウチにおける自動化サンプル調製のためにも使用できる。例えば、以下で更に詳しく記載されるように、ワイパ949によってサンプル調製ブリスタの内容物を混ぜながら、ヒータ986及び987の一方又は双方によって549のようなブリスタを加熱することを用いて、細胞(例えば細菌細胞及び哺乳類細胞)を溶解し、その内部の核酸を放出させることができる。この代わりに又はこれに加えて、ブリスタは、カオトロピック剤、洗剤、及び/又は溶解粒子(例えば図1のパウチ510の溶解ブリスタ522を参照のこと)を含み得る。同様に、熱電冷却デバイス(すなわちペルチェ素子)による加熱及び冷却と混合を用いて、他のサンプル調製プロセスの効率を上げることができる。例えば核酸は、低温(例えば~0~10℃)では磁気ビーズ(例えば図1の磁気ビーズ533)と高効率で結合し、高温(例えば~60~90℃)では磁気ビーズから高効率で溶出する。従って、溶解は例示的にブリスタ549がヒータ/クーラ986と接触している場合に生じ、磁気ビーズ結合は例示的にブリスタ549がヒータ/クーラ987と接触している場合に生じる可能性があり、以下で検討するように、これらのヒータは横方向に移動することができる。
[00395] ここで図28A及び図28Bを参照すると、例えば図5A、図7、図11A、図11B、図17A、図17B、及び図17Cを参照して本明細に記載されているパウチと共に使用するように構成できる器具1200が示されている。器具1200は、例えば図25を参照して検討したワイパ949と同様のワイパシステム1000と、図25のヒータ986及び987の特徴部の多くと、を含む。説明のための例において、器具1200はヒンジカバー1210及びシャーシカバー1220も含む。ヒンジカバー1210は、自己完結型PCR用の可撓性パウチを器具内のヒンジカバー1210とシャーシカバー1220との間に挿入するため開くことができる。シャーシカバー1220は、器具1200の内部コンポーネントの上に配置され、図5A、図7、図11A、図11B、図17A、図17B、及び図17Cに示されているもののような可撓性パウチを器具内に位置決めするためのレセプタクルを画定できる。レセプクタクルはパウチの一部と同一の広がりを持つことができる。レセプタクルは、器具内に可撓性パウチを受容するよう構成され、器具の様々なコンポーネントが可撓性パウチと相互作用できるように可撓性パウチを位置合わせすることができる。同様に、レセプタクルは、器具の内部コンポーネントが可撓性容器に接触できるように開口等を含み得る。同様に、ヒンジカバー1210は、器具の外部コンポーネントが可撓性容器と相互作用できるように開口等を含み得る。カバー1210及び1220の上方に、器具1200はワイパシステム1000を含む。ワイパシステム1000は、駆動モータ1030、ワイパヘッド1000、蛍光データを収集するためのカメラ/蛍光光度計1250及びマウント1260を含む。ワイパシステム1000は、パウチに接触するため、ベース1080の孔1240を介して、またヒンジカバー1210の1つ以上の孔を介して、矢印1020で示されるように上下に移動させることができる。
[00396] 図示されている実施形態では、ワイパシステム1000を例示的にレール1230上で左右に平行移動させることで、ワイパシステム1000は器具1200内に挿入されたパウチの様々な領域に接触できる。一実施形態では、ワイパシステム1000を平行移動させて、ワイパ1100がパウチの様々な部分と相互作用することを可能とする。例えばワイパシステム1000は、パウチ内サンプル調製と第1段階PCRステップのために使用され得る。代替的な実施形態では、ワイパシステム1000を固定状態に保持すると共にパウチを移動させて、ワイパがパウチの様々な部分に接触することを可能とする。しかしながら、この構成は例示であり、ワイパ、ヒータ、及びサンプル容器を移動させて位置合わせする他の構成が想定されることは理解されよう。ワイパ、ヒータ、及びパウチの任意の組み合わせを可動要素上に配置できること、また、ワイパ、ヒータ、及びパウチ等の平行移動について検討する場合、そのような移動の代わりに、可動要素と連携して動作するワイパ、ヒータ、又はパウチを反対方向に平行移動させることも可能であり、このような反対方向の平行移動が他の要素の構成と矛盾しない任意の実施形態においても利用され得ることは理解されよう。いくつかの実施形態では、パウチ及び他の器具要素の回転運動も想定される。
[00397] ここで特に図28Bを参照すると、器具1200の内部を更に明確に見られるようにカバー1210及び1220は除去されている。器具1200の内部は例示的に、例えばレール1292上で矢印1294で示されるように平行移動機によって平行移動で往復させることができるヒータアセンブリ1270を含む。ヒータアセンブリ1270は、第1のヒータ要素1286及び第2のヒータ要素1287を含む。図示されている実施形態において、ヒータアセンブリは、例示的に駆動モータ1296及び駆動部材(例えばねじ切りされたねじ)1298を含む平行移動機に機械的に結合できる。ヒータアセンブリ1270を、例えばレール1292上において平行移動で往復させて、ヒータ1286及び1287が器具内に設置されたパウチの様々な領域と相互作用することを可能とする。例えば、ヒータ1286及び1287を第1段階PCRのために図25から図27Dに示されているように位置決めできる。同様に、ブリスタ全体を一度に1つのヒータによって制御することができ、ブリスタ(例えば第1段階PCRブリスタ又は第2段階PCRブリスタ)を熱サイクルさせるため、平行移動機によってヒータアセンブリ1270を往復移動させて、選択されたブリスタを第1のヒータ1286の温度制御下に置き、次いで第2のヒータ1287の制御下に置くように繰り返すことができる。しかしながら、モータ及びレールは単なる例示であり、他の線形及び非線形の平行移動機も使用可能であることは理解されよう。図示されている実施形態は移動できるヒータを含むが、ヒータアセンブリを移動させる代わりにヒータに対してパウチを平行移動させることで1又は複数の同じ効果を達成可能であること、また、この移動は例えば線形、アーチ形(arcilinear)、又は回転経路に沿う場合があることは認められよう。この例では、パウチの一部の下方でヒータ1286及び1287を平行移動させることによって、又はワイパシステム1000と組み合わせることによって、本明細書に記載されているパウチの内容物を加熱及び冷却するためにヒータ1286及び1287が示されているが、本明細書に記載されているパウチの内容物を加熱及び冷却する他の方法も想定されることは理解されよう。例えば、流体が充填されたブリスタの内容物(例えば150~300μl)を2つのヒータ間で往復させて圧縮するため、米国特許第9,586,208号に記載されているシステムを使用することができる。米国特許第9,586,208号は援用により全体が本願に含まれる。
[00398] ヒータ1286及び1287は、ペルチェ素子、抵抗ヒータ、誘導ヒータ、電磁ヒータ、薄膜ヒータ、印刷要素ヒータ、正温度係数ヒータ、又は当技術分野において既知の他のヒータとすればよい。複数のヒータタイプを単一ユニットにおいて組み合わせてもよいことは認められよう(例えば、ヒータユニットはペルチェ素子を含み、ペルチェ素子の前側及び/又は裏側に抵抗ヒータを備えて、固定温度の維持を促進すること及び/又は加熱と冷却の効率と速度を増大させることができる)。「ヒータ」という用語は要素1286及び1287を指すために使用されるが、他の温度制御要素又は要素の組み合わせを用いてサンプルの温度を調整できることは理解されよう。PCRデバイスに典型的に含まれ、アニーリング温度と変性温度との間の熱サイクリングのため提供されるヒータとは異なり、ヒータ1287及びヒータ1286は固定温度に保持されるか、又は限定された温度範囲内で(例えばアニーリング温度と延伸温度との間で)熱サイクルさせることができる。例えば、図25から図27Dを参照して上記で詳しく説明したように、液体充填ブリスタの内容物を2つの静的温度ゾーン間で移動させることによってサンプルを熱サイクルさせることができる。一例において、ヒータ1287は例示的に94℃である適切な変性温度で提供され、ヒータ1286は例示的に60℃である適切なアニーリング温度で提供され得るが、当技術分野において既知のように他の例示的な変性温度及びアニーリング温度も使用できる。また、特定のプロトコルでは3つ以上のヒータが望ましい場合がある。
[00399] 一実施形態において、ヒータ1286及び1287の一方又は双方はペルチェ素子を含み得る。ヒータ1286及び1287は熱サイクルさせないことがあるが、例えば、ヒータ1286及び1287の一方又は双方にペルチェ素子を含ませることが望ましい場合がある。典型的な抵抗ヒータとは異なり、ペルチェ素子はサンプルを能動的に加熱すると共に冷却することができる。例えばサンプルを変性温度(例えば94℃)からアニーリング温度(例えば60℃)にする場合、サンプルをアニーリング温度まで冷却しなければならない。これは放射/伝導によって発生するが、これらのプロセスは比較的遅い。迅速な熱サイクリングのため、例えばペルチェ素子によってサンプルを能動的に冷却し、ペルチェの「冷たい」側を60度に設定すると共に、余分な熱が例示的にヒートシンクを介してポンプされ廃棄される「熱い」側をより高い温度に設定することが好ましい場合がある。
[00400] 器具1200はコンピュータ1299も含み、これは、ワイパ1100、ヒータ1286及び1287、熱サイクリングパラメータ(例えばワイパの移動、ヒータの温度、ワイパ及びヒータとサンプル容器とのアライメント等)のうち1つ以上、サンプル容器内の流体移動等を制御するように構成できる。同様にコンピュータ1299は、例えば光学システム1250からのような器具1200からのデータ収集及び解析のために構成できる。これらのコンポーネントの各々は、例示的にケーブル1291を介して電気的に接続されているが、他の物理的接続又は無線接続も本発明の範囲内である。コンピュータ1299は、器具1200内に収容されているか、又は器具1200の外部にあり得ることは理解されよう。更にコンピュータ1299は、コンポーネントのいくつか又は全てを制御する内蔵回路基板を含むことができ、また、器具1200からデータを受信し表示するデスクトップ又はラップトップPCのような外部コンピュータも含み得る。例示的に、温度やサイクル時間等の情報及び変数を入力するためのキーを含むキーボードインタフェースのようなインタフェースを提供することができる。例示的に、ディスプレイも提供できる。ディスプレイは例えば、LED、LCD、又は他のそのようなディスプレイとすればよい。
[00401] 本明細書に記載されているパウチのいくつかの実施形態(例えば図11A及び図11Bを参照のこと)に含まれるブリスタは、一実施形態において脱水試薬ピルを含み、これは再水和させてからパウチ内の様々な反応ゾーンに分配することができる。図29Aに、試薬ピル22055及び再水和流体(例えば水や緩衝剤等)22058を含むブリスタ22045の一例が示されている。一実施形態において、試薬ピル22055は、ブリスタ22045に水和流体22058が加えられるとほぼ即座に分散することができる。従って、図29Aの図は概略的なものに過ぎず、ピル22055は、水和流体22058が加えられた後は長い時間量にわたって図示のように維持されるようには構成されない場合があることは理解されよう。別の実施形態では、22045のようなパウチブリスタは液体試薬(例えばポリメラーゼやdNTP等)を含むことができ、パウチで使用される少なくともいくつかの反応成分では22055のような試薬ピルは省略され得る。
[00402] いずれのパウチ実施形態においても、図7、図11A、及び図11Bに示されているもののようなパウチを動作させるよう構成された器具は、図29Aに示されているブリスタ22045のような液体充填ブリスタから液体を予測可能に、かつ好ましくは体積に基づいて(volumetrically)分配するための1又は複数のデバイスを含み得る。一実施形態では、ブリスタ22045のような液体充填ブリスタを、図29Bのクラッシャ22000によって押しつぶすか、折り畳むか、又は圧縮することができる。一実施形態において、ブリスタは、22046で示されるように押しつぶされた場合に折り畳まれて流体を予測可能に、かつ好ましくは体積に基づいて分配するような大きさ及び形状とすることができる。同様に、クラッシャ22000は、流体充填ブリスタ内の流体を予測可能に、かつ、好ましくは体積に基づいて分配するような大きさ及び形状とすることができる。
[00403] 一実施形態において、クラッシャ22000を含む器具は、クラッシャ22000をパウチに対して移動させて、選択した時に選択したブリスタから選択した流体を分配できるように構成され得る。同様に、クラッシャ22000は上下に移動することで選択したブリスタを押しつぶすよう構成され、クラッシャに対してパウチを移動させて、選択した時に選択したブリスタから流体を分配できるようにする。図22は、例えば、一直線に位置決めされた一連のブリスタから流体を分配するために使用できるクラッシャホイール22010の例示的な実施形態を示す。図示されている実施形態では、図29Cのクラッシャホイール22010はクラッシャ22020a~22020dを含み、ホイールが回転した場合にこれらを用いて一連の離間したブリスタを押しつぶすことができる。例えば、ブリスタ22046aはクラッシャ22020aの作用によって押しつぶされ、ホイール22010が回転した場合にブリスタ22045bを押しつぶせるようにクラッシャ22020bはブリスタ22045bに対して離間されている。ホイール22010は4つの等しく離間したクラッシャについて例示的な間隔が図示されているが、クラッシャホイールがこれよりも多数又は少数のクラッシャを含み得ること、及び、選択されたパウチ上の多種多様な1又は複数の間隔のブリスタの流体内容物を分配するために間隔を調整できることは認められよう。
[00404] 本明細書に記載されているパウチと共に使用できる器具の更なる検討及び実施形態は、例えば、本明細書の他の箇所で援用により全体を本願に含めたPCT/US17/18748号で見ることができる。
[00405] 以下に、本明細書に記載されているもののようなパウチ及び器具を用いて実行した実験の実施例を提示する。実施例は概して、本明細書に記載さているパウチ及び器具のうち1つ以上の有用性を示す。しかしながら、実施例は例示であり、本明細書に記載されている1又は複数の発明の範囲を限定又は変更することは意図されない。
[00406] 実施例1:高密度PCR
[00407] 1つの実施例において、一般的な呼吸器系ウイルスのための標準的な市販用の免疫蛍光アッセイは7のウイルスを検出できることが知られている。すなわち、アデノウイルス、PIV1、PIV2、PIV3、RSV、インフルエンザA型、及びインフルエンザB型である。更に完全なパネルは、例えば、コロナウイルス、ヒトメタ肺炎ウイルス、ライノウイルス、及び非HRVエンテロウイルスを含む他のウイルス用のアッセイを含む。アデノウイルス又はHRVのような極めて変異性のウイルス(variable virus)では、ウイルス系統の全ての分枝を標的にするため、複数のプライマーを用いることが望ましい(例えば、それぞれ4の外側プライマーセット及び4の内側プライマーセット)。コロナウイルスのような他のウイルスでは、時期によって変動しない4の別々の系統(229E、NL63、OC43、HKU1)があるが、それらは、別個のプライマーセットを必要とするほど充分に分岐している。FilmArray(登録商標)呼吸器パネル(BioFire Diagnostics, LLC、ユタ州ソルトレークシティ)は、アデノウイルス、コロナウイルスHKU1、コロナウイルスNL63、コロナウイルス229E、コロナウイルスOC43、ヒトメタ肺炎ウイルス、ヒトライノウイルス/エンテロウイルス、インフルエンザA型、インフルエンザA/H1型、インフルエンザA/H3型、インフルエンザA/H1-2009型、インフルエンザB型、パラインフルエンザウイルス1型、パラインフルエンザウイルス2型、パラインフルエンザウイルス3型、パラインフルエンザウイルス4型、及び呼吸器合胞体ウイルスを含む。これらのウイルスに加えて、FilmArray(登録商標)呼吸器系パネルは3つの細菌、すなわち百日咳菌、肺炎クラミドフィラ(Chlamydophila pneumoniae)、マイコプラズマ肺炎を含む。高密度アレイ581は、そのようなパネルを単一のパウチ510内に収容できる。他のパネルもFilmArray(登録商標)で利用することができ、それぞれが少なくとも20の病原体をアッセイする。
[00408] 実施例2:高速PCR
[00409] 図25から図27Dのパウチ及びヒータ構成を用いたプロトタイプの器具を用いてDNAを増幅した。75μlのサンプルは、110bp合成DNA分子の10,000のコピーを含み、(すでに援用により本願に含めたUS2015-0118715号で教示されているような標準的なPCR濃度と比較して)10x倍高いプライマー(各プライマー5μM)及びDNAポリメラーゼ(2U/μL)濃度、並びに、0.45mMのdNTP及び5mMのMg++を用いた。検出には1XのLCGreenを使用した。反応混合物は単なる例示であることは理解されよう。サイクル時間に応じて、プライマー及びポリメラーゼ濃度の増大が有益であり得る。プライマー及びポリメラーゼ濃度の増大に関する更なる情報については、すでに援用により本願に含めた米国特許出願第2015-0118715号を参照のこと。例えば20秒未満のサイクル時間では、少なくとも0.5μMのポリメラーゼと、マルチプレックス反応における少なくとも1μMの各プライマー、又はシングルプレックス反応における2μMの各プライマーを有することが望ましい。ヒータ986を90℃に設定し、ヒータ987を57℃に設定した。この混合物をブリスタ549内に密封し、ワイパ989を10秒に1回転の速度で回転させて実行した。回転速度はサイクル時間に対応することは理解されよう。
[00410] 対照として、PCR化学反応物(プライマー及びポリメラーゼ濃度の増大を用いる)を、標準的なブロックサーモサイクラーにおいて、ハードウェアが許す限り高速で96℃と60℃との間で循環させた(1秒ホールド、1サイクル当たり48秒)。2つのシステムにおける増幅の効率を比較するため、各器具において、5、10、15、及び20サイクルの「サイクルコース」にわたって同一のPCR反応物を増幅させた。第1段階PCRの後、Roche LC480リアルタイムPCR器具において、これらの反応物をネスト化第2段階PCR反応物内で100倍に希釈し増幅した。
[00411] 図30及び図31は、図25から図27Dのプロトタイプの器具におけるPCRの結果を示す。図30では、様々な速度のワイパシステムにおける第1段階反応の融解曲線が、LC480における増幅の融解曲線と比較される。図31はサイクルコースの結果を示す。図25から図27Dのプロトタイプ及びLC480ブロックサーモサイクラーにおける増幅は重複し、R2値>0.99のラインによって適合される。図31において、これらのラインの勾配は、プロトタイプの1サイクルと比較したLC480の1サイクルの相対的な効率を示す。ブロックサイクラーの効率(1.08の勾配)は、約3分20秒で、ブロックサーモサイクラーの全効率よりもわずかに低いことを示すワイパブレードシステム(0.93)よりもわずかに高い。
[00412] 実施例3:2つの温度ゾーンを用いた3温度PCR
[00413] 上記で検討したように、いくつかのPCRプロトコルは3つの温度を使用する。すなわち、アニーリングのための第1の温度、例示的に酵素活性に基づいて選択される伸長のための多少高い温度、及び変性のための第3の最も高い温度である。これら3つの温度のために1つのヒータを熱サイクルさせることが通例であるが、いくつかの実施形態では、より大きい体積を迅速に熱サイクルさせることが望ましい場合がある。例えば、第1段階PCRを3つの温度に熱サイクルさせることが望ましいことがあるが、この場合、ヒータアセンブリ988のようなヒータは望まれるほど迅速にブリスタ564の内容物を加熱及び冷却しない可能性がある。
[00414] 1つのそのような実施形態では、図1のパウチ510における第1段階PCRに3ステップPCRプロトコルを使用することが望ましい場合がある。上記で検討したように、図2の第1段階ヒータ886は、第1段階PCR用のブリスタ564の内容物を加熱及び冷却するように位置決めされている。一実施形態において、ヒータ887はブリスタ548の内容物の温度を制御するよう提供することができ、ヒータ886及び887は一緒に制御すると共に一緒に循環させることができる。別の実施形態では、ヒータ886及び887は別個の制御のもとに置くことができ、例示的にヒータ887は適切なアニーリング温度を維持するよう提供され、ブリスタ886は適切な変性温度を維持するよう提供され得るが、これが単なる例示であり、これらのヒータを逆にしてもよいことは理解されよう。他の構成も可能である。2つの加熱ゾーンを用いる2温度PCRについては、援用により全体が本願に含まれる米国特許出願第2014-0038272号で更に充分に検討されている。
[00415] 一実施形態では、ヒータ887、888及び本明細書で検討されている他のヒータのために、ペルチェヒータ又は米国特許出願第15/099,721号に開示されているもののようなヒータを使用できるが、ヒータの温度が調整できるならば、当技術分野において既知の他のヒータ又はヒータアセンブリを用いて2つの温度ゾーンにおける3温度循環を得ることも可能である。一実施形態では、これらのヒータの能動的な制御が望ましい。
[00416] 図32に一例が示されている。図32において点線はサンプルの温度を示す。この例では、ヒータ887がアニーリング温度のために使用され、ヒータ887の温度は例示的に60℃である所望のアニーリング温度に設定され得るが、この温度が単なる例示であり、プライマーの長さ及びGC含量に応じて他のアニーリング温度を使用できることは理解されよう。サンプルをブリスタ548内に移動させた場合、サンプル全体がアニーリング温度に達するまでサンプルはブリスタ548内に保持され得る。いくつかの例示的なプロトコルでは、サンプルがアニーリング温度に達した後のある時間期間にわたってサンプルをブリスタ548内に保持することが望ましい場合がある。別の例示的な実施形態では、図32に破線で示されているように、ヒータ887は、アニーリング温度よりも数度低い、例えばアニーリング温度よりも2~20度低い温度に、例えば55℃に保持することができる(「低アニーリング温度」)が、他の温度も適切であり得る。ヒータ886の制御下にあって実質的にアニーリング温度よりも高温であるブリスタ564からサンプルを移動させた場合、ヒータ887はアニーリング温度未満であるので、サンプルをいっそう迅速にアニーリング温度まで冷却することができる。任意選択的に、袋848の動きによりブリスタ548内の流体サンプルを混合して、ブリスタ548内の温度をいっそう均一にしてもよい。実質的に全ての流体がアニーリング温度であるか又はほぼアニーリング温度である時間長にわたってサンプル流体がブリスタ548内に置かれたら、図32に破線(--)で示すようにヒータ887をアニーリング温度に調整することができる。例示的に2秒~5秒のホールドによって適正なアニーリングが可能となるが、使用される化学物質に応じてホールドは不必要であることもある。次いでサンプルをブリスタ564に移動させればよい。図32に示されているように、一度サンプルがブリスタ548を出たら、ヒータ887の温度を再び低アニーリング温度に調整して、次のサイクルの準備をすればよい。多くのヒータは加熱よりも冷却の方が時間を要し得るが、ブリスタ546が空であると共にヒータ887の熱負荷が最小である場合はヒータ887を冷却する方が速くなり得ることは理解されよう。
[00417] 一例においては、例えば72℃である適切な伸長温度が選択されるが、アンプリコン長、GC含量、及びポリメラーゼの選択に応じて、他の伸長温度が適切である可能性もある。図32の実線(――)で示すように、サンプルがブリスタ548内にある間に、ヒータ886を、伸長温度よりも数度高い、例示的に伸長温度よりも2~10度高い温度(「高伸長温度」)に調整することができる。実質的に全ての流体が伸長温度であるか又はほぼ伸長温度である時間長にわたってサンプル流体がブリスタ564内に置かれたら、図32に実線で示すようにヒータ887を高伸長温度から伸長温度に調整することができる。ブリスタ548について上記で検討したように、袋864の任意選択的な動きによりブリスタ564内の流体サンプルを混合して、ブリスタ564内の温度をいっそう均一にしてもよい。プロトコルに応じて、例示的に0秒~5秒のホールドによって適正な伸長を可能とする。このホールドの後、ヒータ886を変性温度に又は変性温度よりも数度高い温度に調整して核酸を変性することができる。ヒータ886を変性温度よりも高い温度に調整した場合、流体サンプルがいっそう迅速に変性に到達し得ることは理解されよう。この場合も、袋864の任意選択的な動きによりブリスタ564内の流体サンプルを混合して、ブリスタ564内の温度をいっそう均一にしてもよい。一度サンプルが変性したら、任意選択的に変性温度でホールドを行うか又は行うことなく、サンプルをブリスタ548に戻し、ヒータ886の温度を高伸長温度に調整することができる。これは、ブリスタ564内にサンプルが存在しない状態では高い効率で達成できる。このサイクルを増幅のために充分な回数だけ繰り返す。これが第1段階PCRであれば、標的の濃縮のために充分なサイクル数を減らすことが望ましい場合があるが、これが第2段階であるか又は単一段階であれば、分裂停止期(plateau phase)まで又は分裂停止期を過ぎるまで熱サイクルさせることが望ましい場合があることは理解されよう。
[00418] 例示的に1サイクル当たり20秒又はそれ以上の標準的なPCRサイクリングプロトコルで、標準的なPCR化学物質を用いて3温度循環を実行することができる。所望の場合、援用により本願に含まれる米国特許公報第2015-0118715号に開示されているように、高濃度のポリメラーゼ又はプライマーを用いた極端なPCR化学物質を追加し、より高速な熱サイクリングプロトコルを用いてもよい。サイクル時間を短縮しない限り、高濃度のポリメラーゼ又はプライマーによってプライマーダイマー及び他の非特異的増幅生成物が増大して形成され得ること、また、使用するポリメラーゼ又はプライマーの濃度が高くなればなるほどサイクル時間が高速になることは理解されよう。ポリメラーゼ及びプライマーの増大は、サイクル時間の短縮と概ね比例し得る。10秒以下のサイクル時間が可能でなければならない。
[00419] 実施例4:高速マルチプレックスPCR
[00420] 図25から図27Dのものと同様のパウチ及びヒータ構成を用いたプロトタイプの器具を、サンプルにおけるDNAのマルチプレックス増幅のために用いた。テンプレートは天然及び合成のテンプレートの混合物であった。テンプレートは、長さが105bpの合成アンプリコン(「メフィスト(mephisto)」と呼ぶ)、長さが164bpの合成アンプリコン(「バール3(Baal3)」と呼ぶ)、S.セレヴィシエ配列(天然の、長さが364bpのアンプリコンであり、内部で「ビール(beer)」と呼ぶ)、M13(天然の、長さが264bpのアンプリコン)、及びMS2(天然の、長さが309bpのアンプリコン)であった。各テンプレートの1000のコピー、各テンプレートに特有のフォワード及びリバースプライマー(各プライマー5μM)、DNAポリメラーゼ(2U/μL)、0.45mMのdNTP、及び5mMのMg++を含む、150μl及び75μlのサンプルを調製した。検出には1XのLCGreenを使用した。反応混合物は単なる例示であり、他の混合物を使用できることは理解されよう。これらの混合物の150μl及び75μlのアリコートをブリスタ(例えばブリスタ549)内に密封した。150μl反応では、第1のヒータ(例えばヒータ986)を103℃に設定し、第2のヒータ(例えばヒータ987)を55℃に設定した。75μl反応では、第1のヒータ(例えばヒータ986)を102℃に設定し、第2のヒータ(例えばヒータ987)を55℃に設定した。これらの反応物を、例えば図25から図27Dに記載されている手順に従って熱サイクルさせた。1又は複数のワイパブレード949をブリスタに接触させ、ワイパヘッド989を8秒に1回転の速度で回転させた(例えば、180度回転させ、4秒間ホールドし、180度回転させ、4秒間ホールドする等、又は、90度回転させ、2秒間ホールドし、90度回転させ、2秒間ホールドする等のサイクル。回転時間は無視できる)。回転速度はサイクル時間に相当し、1回転は1サイクルを表すことは理解されよう。また、この例では各4分の1回転の後のホールドを用いるが、これは単なる例示であり、連続的な回転も想定される。第1段階PCRの後、Roche LC480リアルタイムPCR器具において、これらの反応をネスト化第2段階PCR反応内で100倍に希釈し増幅した。
[00421] 図33は、第2段階PCRにおける融解実験の結果を示し、第1段階PCR反応の全てが成功であったことを示している。テンプレートは全て第1段階PCR及び第2段階PCRにおいて増幅され、生成物は全てそれらの予想温度で融解した。これは、プロトタイプのシステムをマルチプレックス第1段階PCRに使用できることを実証している。
[00422] 実施例5:高速PCR
[00423] この実施例では、標準的なPCRプロトコルに従って、LC480器具において合成DNAテンプレート(メフィスト)を第1段階PCRのために増幅した。第1段階反応からの増幅生成物を、第2段階増幅混合物(例えば特有のフォワード及びリバースプライマー(各プライマー5μM)、DNAポリメラーゼ(2U/μL)、0.45mMのdNTP、5mMのMg++、及び検出用の1XのLC Green)を用いて1:100に希釈し、図5Aのアレイ5081又は図6Aのアレイ6000と同様の5ウェルアレイに注入した。アレイの各ウェルの体積は約0.5μLである。図28Aから図28Bに示されている器具と同様のプロトタイプの器具において、サンプルを第2段階PCRのために熱サイクルさせた。ヒータアセンブリ1270と同様の2要素ヒータを使用し、第1のヒータを96℃に設定すると共に第2のヒータを60℃に設定して、アレイを熱サイクルさせた。アレイが第1のヒータの制御下に置かれ、第2のヒータの制御下に置かれ、再び第1のヒータの制御下に置かれるようにヒータを平行移動させることによって、アレイに第2段階PCRを実行した。第2段階PCRサンプルを含むアレイを、8秒/サイクル(96℃で4秒、60℃で4秒等)で、40サイクル熱サイクルさせた。
[00424] 図34及び図35は第2段階PCR反応の結果を示す。図34はアレイの各ウェルにおける蛍光の変化をサイクル数の関数として示し、図35はアレイの各ウェルにおけるDNA生成物(存在する場合)の融解曲線を示す。図34及び図35は、反応がアレイのウェル1において最も成功であったこと(図34)と、生成物がメフィスト生成物において予想温度の融解遷移を有したこと(図35)を示している。この実施例は、2温度ヒータによって第2段階PCRの実行を首尾よく実行できることを示しており、ヒータアセンブリをアレイに対して移動させることで、ヒータはアレイを温度間で遷移させることができる。熱サイクリングを達成するには、例えば、サンプル容器又は器具内にサンプル容器を位置決めするレセプタクルを横方向に平行移動させることで、ヒータ要素に対してアレイを移動させてもよいことは認められよう。
[00425] 実施例6:高速第1段階及び第2段階PCR
[00426] この実施例では、図5Aに示されているパウチ5000と同様の反応容器において、合成DNAテンプレート(メフィスト)を第1段階PCR及び第2段階PCRのために増幅させた。第1段階PCRでは、テンプレートDNAの~75,000のコピー、テンプレートに特有のフォワード及びリバースプライマー(各プライマー5μM)、DNAポリメラーゼ(2U/μL)、0.45mMのdNTP、及び5mMのMg++を組み合わせ、第1段階PCR反応用のブリスタ(例えばブリスタ5010)に75μLを注入して密封した。この反応容器を、PCR増幅のため器具1200と同様の器具に配置した。
[00427] 第1段階PCRでは、第1のヒータ(例えばヒータ1287)を58℃に設定し、第2のヒータ(例えばヒータ1286)を106℃に設定した。反応ブリスタの約半分の温度を第1のヒータによって制御すると共に残りの半分の温度を第2のヒータによって制御することができるように、ヒータアセンブリ(例えばヒータアセンブリ1270)を位置決めした。反応ブリスタの内容物を、例えば図25から図27Dに記載されている手順に従って器具内で熱サイクルさせた。1又は複数のワイパブレード(例えばワイパブレード949と同様)をブリスタに接触させ、ワイパヘッド(例えばワイパヘッド1100)を8秒に1回転の速度で回転させた(例えば、90度回転させ、2秒間ホールドし、90度回転させ、2秒間ホールドする等のサイクル)。回転速度はサイクル時間に相当し、1回転は1サイクルと同等であることは理解されよう。
[00428] 第1段階PCR反応ブリスタ(例えばブリスタ5010)における第1段階PCRの20サイクルの後、第1段階PCR反応物の一部(例えば~1μL)を体積ウェル(例えば体積ウェル5015)に移し、パウチのより大きい2つの体積ブリスタ(例えばブリスタ5020及び5025)間で混合することによって、第2段階PCR試薬(DNAポリメラーゼ(2U/μL)、0.45mMのdNTP、2mMのMg++、及び検出用の1XのLCGreen)と混合した。体積ウェルの体積を変更することによって、又は、第1段階PCRからのサンプルに加える希釈試薬(例示的に、ポリメラーゼ、dNTP、及び適切な緩衝剤であるが、特に非PCR増幅方法では他の成分も適切であり得る)の体積を変更することによって、希釈レベルを調整できることは理解されよう。所望の場合、サンプルと第2段階PCRマスター混合物のこの混合物を、第2段階増幅のため第2段階アレイへ移動させる前に体積ウェル5015並びにブリスタ5020及び5025内で予熱してもよい。このような予熱及びマスター混合物からのプライマーの分離は、第2段階PCR混合物におけるホットスタート成分(抗体、化学物質、又は他のもの)の必要性をなくすことができる。
[00429] 例えば体積ウェル5015並びにブリスタ5020及び5025において第2段階PCR用のサンプルを調製した後、サンプルを第2段階PCRのためのアレイ5081と同様のアレイに移動させることができる。アレイの各ウェルには特有のフォワード及びリバースPCRプライマーが予め投入されている。プライマーをアレイのウェル内に2.5μM又は5μMのいずれかでスポットした。アレイのウェルは、アレイを第2段階PCRマスター混合物であふれさせることによって充填される。アレイ上で透明な可撓性の袋を膨張させて充填チャネルに対するアクセスを封鎖することにより、アレイのウェルを熱シール及び/又は密封することができる。アレイ上で透明な可撓性の袋を膨張させることにより、アレイから余分な第2段階PCRマスター混合物をパージすることも可能である。この場合、透明な可撓性の袋は約20psiの圧力に膨張させた。第2段階PCRの熱サイクリングを実行するため、アレイの下方でヒータアセンブリ1270を平行移動で往復させて、アレイ及び各ウェルの内容物を第2のヒータ(例えば変性のためのヒータ1286)の温度制御下に置き、次いで第1のヒータ(例えばアニーリング及び延伸のためのヒータ1287)の温度制御下に置き、次いで再び第2のヒータ(変性のため)に置く等とすることができる。この実施例では、第2のヒータを102℃に設定すると共に第2のヒータの2秒間のホールドを実行し、第1のヒータを65℃に設定すると共に6秒間のホールドを実行した。第2段階の反応を合計で30サイクル熱サイクルさせた。図28A及び図28Bに示されているカメラ1250と同様のカメラを用いて、アレイにおける核酸増幅及びDNA融解を監視した。
[00430] 図36から図38は第2段階PCR反応の結果を示す。図36は、アレイのウェルにおける蛍光の増大をサイクル数の関数として示す。見てわかるように、アレイの全てのウェルでDNA増幅が発生した。同様に、各ウェルで増幅の同様の時間経過(例えばクロッシングポイント)が観察された。図37及び図38は、増幅されている生成物が正しい生成物であることを保証する融解実験の結果を示す。図37は未処理の融解曲線であり、図38は融解曲線の負の一次導関数(dF/dt)を示す。図37及び図38で見られるように、ウェルの全てにおける生成物は本質的に同一の温度において融解遷移を有する。ウェルの全てにおける融解遷移は約84℃で発生し、これはこの特定の合成アンプリコンに予想された融解温度である。
[00431] 実施例7:第2段階PCRアレイにおける温度較正及び熱サイクリング速度
[00432] 次に図39から図42を参照すると、アレイ5081又はアレイ6000と同様のアレイの1又は複数のウェルにおける流体の温度応答を試験するように設計された一連の実験の結果が示されている。これらの実験では、小さい熱電対をアレイの1つ以上のウェルに挿入し、フィルム層の間に密封した。熱サイクリングのため、アレイに水性PCR緩衝剤を充填し、器具1200と同様の器具に挿入し、ヒータアセンブリを平行運動で往復させて、アレイを第1のヒータの温度制御下に置き、第2のヒータの温度制御下に置き、再び第1のヒータの温度制御下に置く等とすることで、熱サイクリングを実行した。これらの実験では、器具内の透明な可撓性の袋をアレイ上で約20PSIに膨張させた。これらの実験は、高温度ヒータ及び低温ヒータにおける異なる休止時間によるアレイ内の流体の温度応答を示す。説明されている実施例の休止時間にかかわらず、ヒータの(例えば高温から低温へ、又は低温から高温への)遷移時間は休止時間に対して迅速である。これらのデータ及び図示されていない他のデータを用いて、ヒータの設定点、各温度における休止時間、及びアレイと内部の流体の熱応答を含む温度モデルを開発し、これによってユーザは、様々なプライマーセットを用いた様々なテンプレートの熱サイクリング及び増幅のためにアレイ内の流体の高ターゲット温度と低ターゲット温度を信頼性高く設定することが可能となる。
[00433] 図39に示されている実験では、ターゲット終点温度は95℃と62℃であった。ヒータを98℃と62℃に設定し、各温度ゾーンで4秒のホールド時間(すなわち休止時間)を用いた。ターゲット終点温度は95℃と62℃であった。この実験は比較的長いホールド時間を含むので、ヒータの設定点とターゲット温度は比較的近い。図39で見られるように、これらのヒータ設定点、ホールド時間、及び本明細書の他の箇所で記載されている平行移動ヒータプロトコルを用いて、1又は複数のウェル内の流体(~0.5μL)を、~95℃と~62℃の間で熱サイクルさせることができた。
[00434] 図40に示されている実験では、ヒータを97℃と62℃に設定し、各温度ゾーンで4秒のホールド時間を用いた。この実験で目的としたターゲット終点温度は94℃と62℃であった。図40で見られるように、これらのヒータ設定点、ホールド時間、及び平行移動ヒータプロトコルを用いて、1又は複数のウェル内の流体(~0.5μL)を、~94℃と~63℃の間で熱サイクルさせることができた。
[00435] 図41に示されている実験では、ヒータを99℃と56℃に設定し、各温度ゾーンで2秒のホールド時間を用いた。ターゲット終点温度は96℃と61℃であった。図41で見られるように、これらのヒータ設定点、ホールド時間、及び平行移動ヒータプロトコルを用いて、1又は複数のウェル内の流体(~0.5μL)を、~96℃と~61℃の間で熱サイクルさせることができた。
[00436] 図42に示されている実験では、ヒータを108℃と52℃に設定し、各温度ゾーンで1秒のホールド時間を用いた。ターゲット終点温度は95℃と63℃であった。図42で見られるように、1秒という短いホールド時間であっても、これらのヒータ設定点及び平行移動ヒータプロトコルを用いて、1又は複数のウェル内の流体(~0.5μL)を、~95℃と~63℃の間で熱サイクルさせることができた。例えば、上述の通り援用によって全体を本願に含めた米国特許公報第2015/0118715号及び米国特許公報第2016/0289736号に記載されているように、ポリメラーゼ及びプライマー濃度を上昇させた化学物質の調整により、ポリメラーゼ連鎖反応は、8秒、4秒、2秒、又はより短いサイクル時間に適合する速度で進行することができる。
[00437] 実施例8:単一の容器における溶解粒子及び核酸捕捉ビーズ
[00438] ここで図45Aから図47Bを参照すると、一連の実験の結果が示されている。これらの実験は、PCR増幅が、PCR反応物におけるシリカでコーティングされた磁気ビーズ(すなわち核酸捕捉ビーズ)の存在と矛盾しないこと、予想外であったが、負に荷電されたケイ酸ジルコニウムビーズが明らかに核酸と結合すること、及び、シリカでコーティングされた磁気ビーズの存在下で溶解を実行することによって核酸捕捉効率が大幅に向上し得ることを示すために設計されたものである。
[00439] 第1の実験では、TSAプレート(仏国bioMerieux)上で黄色ブドウ球菌細胞を一晩成長させた。次いで、濃度計(仏国bioMerieux)を用いて、懸濁培地中にコロニーを加えることにより、較正済み細菌懸濁液(MF0.5)を得た。内部バイオバンクから、コロナウイルス株229Eウイルス懸濁液を得た(仏国Verniolles)。各病原体懸濁液100μlを加えることにより、800μlのサンプル緩衝剤中に黄色ブドウ球菌及びコロナウイルスを混ぜた(co-spike)(援用により本願に含まれる米国特許第9,758,820号を参照のこと)。使用した濃度は、黄色ブドウ球菌では105CFU/mlであり、コロナウイルスでは5TCID50/mlであった。600mgのジルコニウムビーズ(米国Biospec Product)及び1.5mgの磁気シリカ(仏国bioMerieux)を含む溶解ブリスタ内に各懸濁液を移した。援用により本願に含まれる米国特許出願第15/769,044号に記載されているパドル溶解を用いて、機械的溶解を実行した。溶解の後、磁気シリカペレットを磁石(Quickpick(仏国Proteigene))で捕捉し、140μlの洗浄緩衝剤を含むチューブに移した(米国特許第9,758,820号に記載されている)。洗浄緩衝剤を除去し、シリカペレットに100μlの第1段階PCRマスター混合物を加え、第1段階PCR反応を実行した。第1段階PCRの完了後、第2段階PCR反応をセットアップした。磁気シリカの存在に対するPCRの効果を評価するため、溶出緩衝剤中で磁気シリカから溶出を行い、次いで溶出液に第1段階PCRマスター混合物を加えることにより、対照を実行した。
[00440] 図45Aから図45Bは、磁気シリカの存在下で、及び溶出させた対照において、増幅が成功したことを示す。表1に示されているように、黄色ブドウ球菌では、磁気シリカの存在下でPCRを実行すると約4サイクルの遅延が生じ、コロナウイルスでは、磁気シリカの存在下でPCRを実行すると約5サイクルの遅延が生じた。
[00441] これらの実験によって、2つのみの容器で分子診断プロセスを実行できることが示される。そのうち1つの容器は標的の溶解と磁気シリカへの結合のためのものであり、第2の容器は洗浄ステップと磁気シリカで直接行われる増幅のためのものである。別個の溶出ステップは必要なく、また、増幅反応物から磁気シリカを隔絶及び分離する必要もない。
[00442] 第2の実験では、単一の容器におけるケイ酸ジルコニウムビーズを用いた溶解及び磁気シリカを用いた結合を、別々の容器における溶解及び結合と比較した。この実験の目的は、同一の混合物において溶解及び結合を実行する適合性(compatibility)を示すことである。
[00443] TSAプレート上で黄色ブドウ球菌細胞を一晩成長させてコロニーを形成した。濃度計(bioMerieux)を用いて、懸濁培地中にコロニーを加えることにより、較正済み細菌懸濁液(MF0.5)を得た。600mgのケイ酸ジルコニウムビーズと600μlのサンプル緩衝剤(SB1A)を加えることで、6の溶解チューブを調製した。これらのチューブに100μlの細菌懸濁液を加えた。6の溶解チューブのうち3つに1.5mgの磁気シリカを加え、残りの3つのチューブには磁気シリカを加えなかった。3000rpmで5分間のボルテックスを用いて溶解を実行した。ジルコニウムと磁気シリカを含む溶解チューブでは、溶解の後、磁石を用いてシリカを洗浄緩衝剤中で移動させた。ジルコニウムビーズのみを含む溶解チューブでは、溶解の後、結合プロセスのため磁気シリカを加えた。次いで磁気シリカを洗浄緩衝剤中で移動させた。洗浄ステップの後、ビーズから核酸を溶出させ、溶出液に対して別々にPCR増幅を行った。
[00444] 図46は、1つの容器における溶解及び結合(-■-)と、別々の容器における溶解及び結合(-▲-)について、PCRの平均的な結果を示す。これらの実験により、溶解のためのジルコニウムビーズと、核酸の結合及び捕捉のための磁気シリカとを含む容器において、溶解を実行できることが示される。驚くべきことに、また予想しなかったことに、同一の容器において溶解及び結合を実行する場合、2PCRサイクルの利得が観察される。
[00445] 第3の実験では、1つの反応ブリスタにおいてケイ酸ジルコニウムビーズ及び磁気シリカビーズの双方の存在下で行ったFilmArrayパウチ内での溶解を、溶解粒子なしの条件及びFilmArray対照と比較した。対照では、ケイ酸ジルコニウムの存在下で1つのFilmArrayブリスタ内で溶解を実行し、溶解後に溶解ブリスタに磁気ビーズを加える。溶解粒子なしのパウチでは、ビーズビーターバー(bead beater bar)を用いて溶解ブリスタを叩いた後に溶解ブリスタに磁気ビーズを加えるが、溶解粒子なしでパウチを製造した。実験条件では、溶解後に溶解ブリスタに磁気ビーズを加えるのではなく、溶解粒子と共に磁気ビーズを溶解ブリスタ内に配置してパウチを製造した。
[00446] サンプルは、ゲノムサケ精子DNAと大腸菌の混合物を含んだ。サケ精子DNAはフラグメント解析装置で分析した。フラグメント解析装置で見るため、DNAは高品質で存在する必要がある。大腸菌DNAは卓上PCRアッセイneuCを用いて分析した。いずれの場合も、FilmArrayプロトコルを通常通り溶解、捕捉、洗浄によって実行し、次いで溶出後に終了した。いずれの場合も、溶出液をパウチから取り出し、2つの下流の分析装置に分割した。そのうち1つの体積分率をフラグメント解析装置(図47A)で処理し、他方の体積分率を卓上PCR(図47B)で処理した。
[00447] 図47Aでは、それぞれの場合で捕捉されたサケ精子DNAが溶液中の核酸の有効濃度として報告されている(ng/μl)。値が大きくなると溶液中のDNA量は多くなる。FilmArray対照では、3.6ng/μlのサケ精子DNAの有効濃度が観察された。同一容器における溶解及び磁気ビーズの実験条件では、6.2ng/μlの有効濃度が観察された。これは、サンプル調製と核酸抽出についてほぼ1.7倍の効率の増大を表している。図47Aは、実験条件の方が溶解粒子なしの対照よりも良好となり得ることを示している。これは、サケ精子DNAは磁気シリカビーズによって捕捉するために溶解する必要がないことを考慮すると、驚くべきことである。
[00448] 図47Bは、3つの条件におけるCp(すなわちアッセイが検出されたサイクル)を示す。図46Bに示されているように、対照はCpが~23.75という最悪の結果を生じ、実験条件はCpが~22.75という最良の結果を生じ、溶解粒子なしの条件は中間であった。1Cpのシフトは概ねDNAの倍増を示すので、23.75の対照条件から22.75の試験条件になるとサンプル調製抽出は2倍に増大することが示される。これは、溶解中に磁気ビーズが存在しても良好な溶解及び核酸回収が得られることを示している。驚くべきことに、これらのデータは、ケイ酸ジルコニウムビーズが核酸と結合すること、溶解中に磁気ビーズが存在すると捕捉のためにケイ酸ジルコニウムと競合する(compete)こと、更に、結果として溶解中に磁気ビーズが存在すると核酸捕捉の効率が増大し、アッセイの感度と同一PCRサイクリング時間を増大させ得ることも示すようである。
実施例9:代替的な増幅方法における核酸捕捉ビーズ
[00449] ここで図48から図50を参照すると、援用によりすでに全体を本願に含めた米国特許第9,586,208号に記載されている器具と同様の器具における一連の実験の結果が示されている。米国特許第9,586,208号の一実施形態では、2つのヒータ間で流体充填ブリスタの内容物(例えば150~300μl)を往復させて圧縮することにより、熱サイクリングを達成する。一方のヒータは例えば変性のため高い温度に設定し、第2のヒータは例えばアニーリングのため低い温度に設定する。典型的なサーモサイクラーは通常、3つ温度を使用する1つのヒータから構成され、より大きいサンプル体積を使用する。
[00450] ここで、より高速のサイクルを得るために、システムは、2つの固定ヒータ(それぞれ92℃と55~60℃)によって2つの加熱ゾーンで小さいサンプル体積を移動させ循環させるように設計されている。この実施例におけるDNA標的の増幅は、変性のため92℃で5秒間及びアニーリングのため55℃で10秒間のサイクルを40サイクル実行した。当技術分野において既知のように、LC Green及び蛍光検出を用いてリアルタイムで増幅生成物を検出した。PCRの後、100秒間にわたる温度ランプを用いて、アンプリコンのDNA融解の蛍光検出により、特異的な増幅生成物を同定した。
[00451] 106geqの入力と同等のKPC(Klebsiella Pneumoniae Carbapenemase)の純DNA標的を、1.5mgの磁気シリカビーズに結合させた。その後、磁気シリカビーズに結合したDNA標的を80μLのTrisHCL pH8.5に再懸濁し、次いで増幅のためPCRマスター混合物と混合した。増幅では、シリカ磁気ビーズを磁石で隔絶するか、又は磁気シリカを増幅中に自由に混合させた。ここで、増幅中に磁気シリカビーズを隔絶しない場合に最良の結果が達成された。図48に、この実験における増幅での蛍光の増大を示す。この実験のCpは約18~19であり、融解ピークはKPCに特異的である(86~87℃)。
[00452] 図49を参照すると、磁気シリカビーズの存在下での別の増幅実験における蛍光の増大が示されている。この実験では、溶解粒子及び磁気シリカビーズの存在下でKPC細胞を溶解した。ここに示されている例は、~500,000CFUのKPC細胞の入力に対応する。核酸を結合させた磁気シリカビーズを、第1の例と同様にサイクリング用の容器へ移した。増幅の前に、いくつか(プロトコルに応じて1~3)の洗浄ステップを用いて、PCR反応を阻害する可能性のある残留溶解成分(例えばグアニジン)を除去した。洗浄後、磁気シリカビーズを80μLのTrisHCL pH8.5に再懸濁し、次いで増幅のためPCRマスター混合物と混合した。図49に、この実験における増幅での蛍光の増大を示す。この実験のCpは約22~24である。この実験におけるCpは図48に対応する実験よりも遅かったが、第1の実験はDNAを用いて実行されて溶解を必要としなかったが、この実験はKPC細胞を用いて実行されて溶解を必要とした点に留意することが重要である。
[00453] 第3の実験では、磁気シリカビーズが蛍光検出と干渉しないことが示された。図50は、シリカなしの場合と磁気シリカビーズが存在する場合の相対的な蛍光を比較している。有意な差は見られなかった。しかしながら、より多いシリカ(例えば3mg)の存在下では、蛍光信号は測定されなかった(データは図示していない)。これはおそらく、シリカビーズがサンプルを通る光の透過を阻害するためである。
[00454] 本発明は、その精神又は本質的な特徴から逸脱することなく他の具体的な形態で具現化することができる。記載される実施形態は、全ての点において限定でなく単なる例示と見なされるものとする。従って、本発明の範囲は前述の記載ではなく添付の特許請求の範囲によって示される。本発明を説明する目的のため、本明細書及び添付の発明の開示において特定の実施形態及び詳細を含ませたが、添付の特許請求の範囲で規定される本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に開示される方法及び装置の様々な変更が実施できることは当業者には認められよう。特許請求の範囲の均等の意味及び範囲内に該当する全ての変更は、それらの範囲内に包含されるものとする。