JP7415337B2 - エンジンの制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、エンジンの制御装置に関する。
特許文献1に開示されているように、車両等に設けられるエンジンでは、エンジントルクを高めるために吸気通路に過給機を設けることや、NOxの排出を抑制するために排気ガスの一部を吸気通路に還流させることが行われている。
具体的には、特許文献1のエンジンには、その吸気通路に、エンジン本体1によって駆動される過給機であっていわゆるスーパーチャージャーが設けられるとともに、過給機をバイパスするバイパス通路が設けられており、過給機の駆動時には過給機を通って空気が気筒に導入される一方、過給機の停止時には過給機を迂回して空気が気筒に導入されるようになっている。この過給機では、排気通路に設けられたタービンによって過給機が回転駆動されるターボ過給機と異なり、エンジンの背圧を高めることなく過給を行うことができ、エンジントルクを効果的に高めることができる。
また、特許文献1のエンジンには、排気通路と吸気通路とを接続するEGR通路と、EGR通路を開閉する弁とを備えたEGR装置が設けられている。前記のEGR通路は、吸気通路のうち前記過給機よりも上流側の部分に接続されており、排気ガスの一部が過給機よりも上流側の部分に還流するようになっている。過給機の駆動時は過給機よりも下流側の部分の圧力は高くなる。これに対して、前記特許文献1のエンジンでは、前記のようにEGR通路が過給機よりも上流側の部分であって下流側の部分よりも圧力の低い部分に接続されている。そのため、排気通路内の圧力を吸気通路内の圧力よりも確実に高くして多くのEGRガスを吸気通路に還流させることができる。
特開2019-39383号公報
吸気系の構成を特許文献1のようにした場合、過給機が停止するとEGRガスは主としてバイパス通路を通って気筒に導入されることになり、過給機が配設された通路内のEGRガスの割合は低くなる。そのため、過給機の駆動が開始して過給機が配設された通路内のガスが気筒に導入されるようになると、一時的に気筒内に十分にEGRガスが導入されず、混合気の燃焼の進行度が過度に速くなるおそれがある。混合気の燃焼の進行度が過度に速くなると、所望のタイミングよりも混合気が燃焼を開始したり、混合気が急激に燃焼して燃焼騒音が増大する。
本発明は、前記のような事情に鑑みてなされたものであり、燃焼騒音の増大を確実に防止できるエンジンの制御装置を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、本発明は、気筒に導入される吸気が流通する吸気通路と、気筒から排出された排気ガスが流通する排気通路と、前記吸気通路に設けられて吸気を過給する過給機と、前記吸気通路に設けられて前記過給機をバイパスするバイパス通路と、前記排気通路内の排気ガスの一部であるEGRガスを前記吸気通路のうち前記過給機よりも上流側の部分に還流させるEGR装置とを備えるエンジンの制御装置であって、気筒内の混合気の燃焼の進行を抑制可能な燃焼抑制手段と、気筒内の全ガス量に対する気筒内のEGRガス量の割合であるEGR率が所定の基準EGR率未満であるか否かを判定する判定手段と、前記過給機および前記燃焼抑制手段を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、停止状態にある前記過給機を駆動する過給開始時において、前記EGR率が前記基準EGR率未満であることが前記判定手段により判定された場合、前記EGR率が前記基準EGR率以上のときに比べて気筒内の混合気の燃焼の進行が抑制されるように前記燃焼抑制手段を制御する燃焼緩慢化制御を実施し、前記EGR率が前記基準EGR率以上であることが前記判定手段により判定された場合、前記燃焼緩慢化制御の実施を禁止するとともに、前記過給開始時でない場合、前記燃焼緩慢化制御の実施を禁止し、気筒内に燃料を噴射するとともに前記燃焼抑制手段として機能する燃料噴射手段を備え、前記燃焼緩慢化制御の実行時、前記制御手段は、気筒への燃料噴射の実施時期が前記燃焼緩慢化制御の非実行時に比べて遅くなるように前記燃料噴射手段を制御する、ことを特徴とする(請求項1)。
この構成によれば、EGRガスが吸気通路のうち過給機よりも上流側の部分に還流されることで、吸気通路および気筒に導入されるEGRガスの量を確保できる。しかも、この構成では、停止状態にある過給機の駆動を開始した場合においてEGR率が基準EGR率未満であってEGR率が低いときは、気筒内の混合気の燃焼を緩慢にする燃焼緩慢化制御が実施される。そのため、過給機の駆動の開始時に混合気の空燃比が過度にリーンになることに伴って燃焼騒音が増大になるのを防止できる。そして、EGR率が比較的高く混合気の空燃比が過度にリーンになっていない場合には、燃焼を緩慢にする燃焼緩慢化制御が禁止されることで、燃焼が過度に緩慢になるのを回避して燃費性能を良好にできる。
ここで、燃料が噴射される時期が遅くなると、圧縮上死点付近までの燃料と空気の混合時間および反応時間が短くなるため、圧縮上死点付近において反応の進んだ混合気が気筒内に多量に生成されるのを防止できる。従って、この構成によれば、燃料が噴射される時期を遅くするという簡単な構成で、圧縮上死点付近における混合気の反応を抑制して燃焼を緩慢にできる。
前記構成において、好ましくは、前記燃料噴射手段は、第1の燃料噴射と、当該第1の燃料噴射よりも噴射時期の遅い第2の燃料噴射とを実施し、前記燃焼緩慢化制御の実行時、前記制御手段は、前記第2の燃料噴射が圧縮行程の後半に実施されるように前記燃料噴射手段を制御する(請求項)。
この構成によれば、圧縮上死点付近までの燃料と空気の混合時間および反応時間を確実に短くして、圧縮上死点付近に至るまでの混合気の反応を抑制して燃焼を緩慢化できる。
前記構成において、好ましくは、前記燃焼緩慢化制御の実行時、前記制御手段は、気筒に導入される空気量が多く且つ気筒に導入されるEGRガスの量が少ないときほど、1燃焼サイクルに気筒に供給される燃料の総量に対する前記第2の燃料噴射によって気筒に供給される燃料の量の割合が大きくなるように、前記燃料噴射手段を制御する(請求項)。
この構成では、気筒に導入される空気量が多く且つEGRガス量が少ないほど、第2の燃料噴射に係る燃料の量の割合が大きくされる。つまり、混合気の空燃比がより大きくなって燃焼騒音が増大しやすいときほど、圧縮上死点付近までの混合時間および反応時間を短く抑えることのできる燃料の量が多くされる。そのため、より確実に、圧縮上死点付近に至るまでの混合気の反応を抑制して燃焼を緩慢化できる。
前記構成において、好ましくは、前記燃焼緩慢化制御の実行時、前記制御手段は、前記第1の燃料噴射と前記第2の燃料噴射の双方を圧縮行程に実施する(請求項)。
この構成によれば、第1の燃料噴射に係る燃料と第2の燃料噴射に係る燃料の双方の圧縮上死点付近までの混合時間および反応時間を短くして、混合気の燃焼の進行度を確実に遅くできる。
前記構成において、好ましくは、気筒に導入される空気の量である空気充填量を変更可能な空気充填量変更手段を有し、前記制御手段は、予め設定された目標EGR率に対する前記EGR率の不足量が所定の判定値以上というEGR率不足条件の成立時、前記空気充填量が低下するように前記空気充填量変更手段を制御する(請求項)。
この構成によれば、EGR率の目標EGR率に対する不足量が大きく気筒内の混合気の空燃比が過度に大きいことに伴って燃焼騒音が増大しやすいときに、気筒に導入される空気の量を低減して燃焼騒音の増大を抑制することができる。
前記構成において、好ましくは、前記制御手段は、前記EGR率不足条件の成立時で、且つ、気筒に導入される吸気の温度が所定の判定吸気温以上のときに、前記空気充填量が低下するように前記空気充填量変更手段を制御する(請求項)。
この構成によれば、EGR率の目標EGR率に対する不足量が大きく且つ吸気の温度が高いことに伴って燃焼騒音が増大しやすいときに、気筒に導入される空気の量を低減して燃焼騒音の増大を抑制することができる。
前記構成において、好ましくは、前記排気通路に設けられて排気ガス中のNOxを浄化可能な浄化装置を備え、前記EGR装置は、前記浄化装置よりも下流側の前記排気通路内の排気ガスを前記吸気通路に還流させる(請求項)。
混合気に含まれるOHラジカルが多い方が混合気の燃焼の進行度は速くなる。また、NOxが浄化装置をすり抜けるとOHラジカルが生成されるということが分かっている。そのため、浄化装置の下流側の排気通路内の排気ガスが吸気通路に還流されて気筒に導入されるエンジンでは、気筒内のOHラジカルが多くなって混合気の燃焼の進行度が速くなりやすく燃焼騒音が増大しやすい。そのため、前記の構成が、前記排気通路に設けられて排気ガス中のNOxを浄化可能な浄化装置を備え、前記EGR装置が、前記浄化装置よりも下流側の前記排気通路内の排気ガスを前記吸気通路に還流させるように構成されたエンジンに適用されれば、効果的に燃焼騒音の増大を抑制できる。
前記の構成が適用されるエンジンとしては、気筒内の混合気に点火を行う点火手段を備え、前記制御手段は、前記点火手段からの点火によって気筒内の混合気の一部が火花点火燃焼するとともに残りの混合気が自着火により燃焼するように前記点火手段を制御するように構成されるものが挙げられる(請求項)。
以上説明したように、本発明のエンジンの制御装置によれば、燃焼騒音の増大を確実に防止できる。
本発明の一実施形態に係るエンジンの全体構成を概略的に示すシステム図である。 エンジンの制御系統を示すブロック図である。 エンジンの運転領域を運転モードの相違により区分けしたマップ図である。 SPCCI燃焼時の熱発生率の波形を示すグラフである。 第2運転領域での通常制御時の燃料の噴射パターンと熱発生率の波形を示した図である。 過給機回りのガスの流れを示した図であり、(a)は過給機の停止時、(b)は過給機の駆動時の図である。 燃焼騒音防止制御の流れを示したフローチャートである。 燃焼騒音防止制御実施時の燃料の噴射パターンと熱発生率の波形を示した図である。 燃焼騒音防止制御実施時の空気充填量およびEGRガス量と燃料の噴射時期との関係を示した図である。 燃焼騒音防止制御実施時の空気充填量およびEGRガス量と後段噴射の噴射量の割合との関係を示した図である。 EGR率不足量、吸気温およびエンジン水温とスロットル弁の開度の低減量との関係を示した図である。 燃焼騒音防止制御実施時の各パラメータの時間変化を示した図である。 混合気の温度および混合気の当量比と混合気の自着火のしやすさとの関係を示した図である。 プリイグ発生時の燃料噴霧の様子を示した図であり、(a)は前段噴射の実施直後の図、(b)は圧縮上死点付近の図である。 燃焼室6内に存在する各温度と各空燃比の混合気の分布を示した図であり、(a)は後段噴射の割合が5%のときの図、(b)は後段噴射の割合が30%のときの図である。
(1)エンジンの全体構成
図1は、本発明のエンジンの制御方法および制御装置が適用されたエンジンの全体構成を概略的に示したシステム図である。本図に示されるエンジンシステムは、車両に搭載されており、走行用の動力源となるエンジン本体1を備える。本実施形態では、エンジン本体1として、4サイクルのガソリン直噴エンジンが用いられている。エンジンシステムは、エンジン本体1に加えて、エンジン本体1に導入される吸気が流通する吸気通路30と、エンジン本体1から排出される排気が流通する排気通路40と、排気通路40を流通する排気の一部を吸気通路30に還流するEGR装置50を備えている。
エンジン本体1は、気筒2が内部に形成されたシリンダブロック3と、気筒2を上から閉塞するようにシリンダブロック3の上面に取り付けられたシリンダヘッド4と、気筒2にそれぞれ往復摺動可能に挿入されたピストン5とを有している。エンジン本体1は、複数の気筒2(例えば、図1の紙面と直交する方向に並ぶ4つの気筒2)を有する多気筒型のものであるが、ここでは簡略化のため、1つの気筒2のみに着目して説明を進める。
ピストン5の上方には燃焼室6が画成されており、燃焼室6には、ガソリンを主成分とする燃料が、後述するインジェクタ15からの噴射によって供給される。そして、供給された燃料が燃焼室6で空気と混合されつつ燃焼し、その燃焼による膨張力で押し下げられたピストン5が上下方向に往復運動する。なお、燃焼室6に噴射される燃料には、主成分としてガソリンを含有したものが用いられる。この燃料には、ガソリンに加えてバイオエタノール等の副成分が含まれてもよい。インジェクタ15は、1燃焼サイクル中に複数回にわけて燃料を噴射できるように構成されている。
ピストン5の下方には、エンジン本体1の出力軸であるクランク軸7が設けられている。クランク軸7は、ピストン5とコネクティングロッド8を介して連結され、ピストン5の往復運動(上下運動)に応じて中心軸回りに回転駆動される。
気筒2の幾何学的圧縮比、つまりピストン5が上死点にあるときの燃焼室6の容積とピストン5が下死点にあるときの燃焼室6の容積との比は、後述するSPCCI燃焼(部分圧縮着火燃焼)に好適な値として、13以上30以下に設定される。
シリンダブロック3には、クランク軸7の回転角度(クランク角)およびクランク軸7の回転数(エンジン回転数)を検出するクランク角センサSN1が設けられている。また、シリンダブロック3には、シリンダブロック3に形成されたウォータジャケットを流通してエンジン本体1を冷却するためのエンジン冷却水の温度つまりエンジン水温を検出するエンジン水温センサSN2が設けられている。
シリンダヘッド4には、燃焼室6に開口する吸気ポート9および排気ポート10と、吸気ポート9を開閉する吸気弁11と、排気ポート10を開閉する排気弁12とが設けられている。なお、当実施形態のエンジンのバルブ形式は、吸気2バルブ×排気2バルブの4バルブ形式であり、吸気ポート9、排気ポート10、吸気弁11および排気弁12は、1つの気筒2についてそれぞれ2つずつ設けられている。本実施形態では、1つの気筒2に接続された2つの吸気ポート9のうちの一方に、開閉可能なスワール弁18が設けられており、気筒2内のスワール流(気筒軸線の回りを旋回する旋回流)の強さが変更されるようになっている。
吸気弁11および排気弁12は、シリンダヘッド4に配設された一対のカム軸等を含む動弁機構13、14により、クランク軸7の回転に連動して開閉駆動される。
吸気弁11用の動弁機構13には、吸気弁11の少なくとも開時期を変更可能な吸気VVT13aが内蔵されている。同様に、排気弁12用の動弁機構14には、排気弁12の少なくとも閉時期を変更可能な排気VVT14aが内蔵されている。
本実施形態では、吸気VVT13aおよび排気VVT14aの制御により、排気弁12の閉弁時期が吸気弁11の開弁時期よりも遅角側の時期となって吸気弁11および排気弁12がともに所定の期間開弁するバルブオーバーラップが実現されるようになっている。また、吸気VVT13aおよび排気VVT14aの制御により、吸気弁11と排気弁12の双方が開弁する期間であるバルブオーバーラップ期間が変更されるようになっている。吸気弁11と排気弁12とがバルブオーバーラップするように駆動されると、燃焼室6から吸気通路30と排気通路40の少なくとも一方に既燃ガスが排出された後、この既燃ガスが再び燃焼室6に導入される。これにより、燃焼室6に既燃ガスが残留することになる。燃焼室6に残留する既燃ガスの量は、バルブオーバーラップ期間によって変化し、前記のバルブオーバーラップ期間の調整によって燃焼室6に残留する既燃ガスの量が調整される。なお、吸気VVT13a(排気VVT14a)は、吸気弁11(排気弁12)の開時期(閉時期)を固定したまま閉時期(開時期)のみを変更するタイプの可変機構であってもよいし、吸気弁11(排気弁12)の開時期および閉時期を同時に変更する位相式の可変機構であってもよい。
シリンダヘッド4には、燃焼室6に燃料(主にガソリン)を噴射するインジェクタ15と、インジェクタ15から燃焼室6に噴射された燃料と燃焼室6に導入された空気との混合気に点火する点火プラグ(点火手段)16とが設けられている。シリンダヘッド4には、さらに、燃焼室6の圧力である筒内圧を検出する筒内圧センサSN3が設けられている。
インジェクタ15は、その先端部に複数の噴孔を有した多噴孔型のインジェクタであり、当該複数の噴孔から放射状に燃料を噴射することが可能である。インジェクタ15は、その先端部がピストン5の冠面の中心部と対向するように設けられている。なお、本実施形態では、ピストン5の冠面に、その中央部を含む領域をシリンダヘッド4とは反対側(下方)に凹陥させたキャビティが形成されている。
点火プラグ16は、インジェクタ15に対し吸気側に幾分ずれた位置に配置されている。
吸気通路30は、吸気ポート9と連通するようにシリンダヘッド4の一側面に接続されている。吸気通路30の上流端から取り込まれた空気(吸気、新気)は、吸気通路30および吸気ポート9を通じて燃焼室6に導入される。
吸気通路30には、その上流側から順に、燃焼室6(気筒2)に導入される吸気(空気)に含まれる異物を除去するエアクリーナ31と、スロットル弁32と、吸気を圧縮しつつ送り出す過給機33と、過給機33により圧縮された吸気を冷却するインタークーラ35と、サージタンク36とが設けられている。スロットル弁32は、スロットル弁32は、吸気通路30を開閉する開閉弁であり、スロットル弁32の開度によって燃焼室6(気筒2)に導入される空気の量である空気充填量が変更される。本実施形態では、このスロットル弁32が、請求項の「空気充填量変更手段」に相当する。
吸気通路30の各部には、吸気の流量である吸気量を検出するエアフローセンサSN4と、吸気の温度である吸気温を検出する吸気温センサSN5とが設けられている。エアフローセンサSN4は、吸気通路30におけるエアクリーナ31とスロットル弁32との間の部分に設けられ、当該部分を通過する吸気の流量を検出する。吸気温センサSN5は、サージタンク36に設けられ、当該サージタンク36内の吸気の温度を検出する。
過給機33は、エンジン本体1と機械的に連係された機械式の過給機(スーパーチャージャ)である。過給機33の具体的な形式は特に問わないが、例えばリショルム式、ルーツ式、または遠心式といった公知の過給機のいずれかを過給機33として用いることができる。
過給機33とエンジン本体1との間には、締結と解放を電気的に切り替えることが可能な電磁クラッチ34が介設されている。電磁クラッチ34が締結されると、エンジン本体1から過給機33に駆動力が伝達されて、過給機33による過給が行われる。一方、電磁クラッチ34が解放されると、前記駆動力の伝達が遮断されて、過給機33による過給が停止される。
吸気通路30には、過給機33をバイパスするためのバイパス通路38が設けられている。バイパス通路38は、サージタンク36と後述するEGR通路51とを互いに接続している。バイパス通路38には開閉可能なバイパス弁39が設けられている。バイパス弁39は、サージタンク36に導入される吸気の圧力つまり過給圧を調整するための弁である。例えば、バイパス弁39の開度が大きくなるほど、バイパス通路38を通過する吸気の流量が多くなる結果、過給圧は低くなる。
排気通路40は、排気ポート10と連通するようにシリンダヘッド4の他側面に接続されている。燃焼室6で生成された既燃ガス(排気)は、排気ポート10および排気通路40を通じて外部に排出される。
排気通路40には触媒コンバータ41が設けられている。触媒コンバータ41には、排気に含まれる有害成分(HC、CO、NOx)を浄化するための三元触媒41aと、排気中に含まれる粒子状物質(PM)を捕集するためのGPF(ガソリン・パティキュレート・フィルタ)41bとが、この順で上流側から内蔵されている。なお、触媒コンバータ41の下流側に、三元触媒やNOx触媒等の適宜の触媒を内蔵した別の触媒コンバータを追加してもよい。
EGR装置50は、排気通路40と吸気通路30とを接続するEGR通路51と、EGR通路51に設けられたEGRクーラ52およびEGR弁53とを有している。EGR通路51は、排気通路40における触媒コンバータ41よりも下流側の部分と、吸気通路30におけるスロットル弁32と過給機33との間の部分とを互いに接続している。これにより、EGRガスは、吸気通路30のうち過給機33よりも上流側の部分に還流する。詳細には、本実施形態では、EGR通路51はバイパス通路38の途中部に接続されており、吸気通路30のうち過給機33が配設された通路についてEGRガスは過給機33よりも上流側の部分に導入される。このように、EGRガスが吸気通路30の過給機33よりも上流側の部分に還流するように構成されていることで、EGR通路51の吸気側の圧力は排気側の圧力よりも確実に低くなる。これより、多量のEGRガスを還流させることができる。具体的には、過給機33が駆動されると過給機33の下流側の圧力は高くなる。そのため、仮に、過給機33の下流側の部分にEGR通路51を接続すると、EGR通路51の吸気側の圧力を十分に低くできずEGRガスの還流が抑制される。これに対して、本実施形態では、前記のようにEGR通路51の吸気側の圧力を十分に低くできるためEGRガスを確実に還流させることができる。EGRクーラ52は、EGR通路51を通じて排気通路40から吸気通路30に還流される排気ガスであるEGRガスを熱交換により冷却する。EGR弁53は、EGRクーラ52よりも下流側(吸気通路30に近い側)のEGR通路51に開閉可能に設けられ、EGR通路51を流通する排気ガスの流量を調整する。
EGR通路51には、EGR弁53の上流側の圧力と下流側の圧力との差を検出するための差圧センサSN6が設けられている。
(2)制御系統
図2は、エンジンの制御系統を示すブロック図である。本図に示されるECU100は、エンジンを統括的に制御するためのマイクロプロセッサであり、周知のCPU150、メモリ160(ROM、RAM)等から構成されている。
ECU100には各種センサによる検出信号が入力される。例えば、ECU100は、前述したクランク角センサSN1、エンジン水温センサSN2、筒内圧センサSN3、エアフローセンサSN4、吸気温センサSN5、差圧センサSN6と電気的に接続されており、これらのセンサによって検出された情報(つまりクランク角、エンジン回転数、エンジン水温、筒内圧、吸気量、吸気温、EGR弁53の前後差圧)がECU100に逐次入力されるようになっている。
また、車両には、当該車両を運転するドライバーにより操作されるアクセルペダルの開度を検出するアクセルセンサSN8が設けられており、このアクセルセンサSN8による検出信号もECU100に入力される。
ECU100は、前記各センサからの入力信号に基づいて種々の判定や演算等を実行しつつエンジンの各部を制御する。すなわち、ECU100は、吸気VVT13a、排気VVT14a、インジェクタ15、点火プラグ16、スワール弁18、スロットル弁32、電磁クラッチ34、バイパス弁39、およびEGR弁53等と電気的に接続されており、前記演算の結果等に基づいてこれらの機器にそれぞれ制御用の信号を出力する。
このECU100は、請求項の「制御手段」に相当する。また、ECU100には、機能的に、後述するようにEGR率が下限EGR率よりも小さいか否かを判定するEGR率判定部110が設けられており、このEGR率判定部110が請求項の「判定手段」に相当する。
(3)基本制御
図3は、エンジン回転数とエンジン負荷とに応じた運転モードの相違を説明するためのマップ図である。本図に示すように、エンジンの運転領域は、3つの運転領域、第1運転領域Aと第2運転領域Bと第3運転領域Cとに大別される。
第3運転領域Cは、エンジン回転数が所定のSI実施回転数N1以上の領域である。第1運転領域Aは、エンジン回転数がSI実施回転数N1未満の領域のうちエンジン負荷が所定の切替負荷T1未満の領域である。第2運転領域Bは、第1運転領域Aと第3運転領域C以外の残余の領域であり、エンジン回転数がSI実施回転数N1未満の領域のうちエンジン負荷が切替負荷T1以上の領域である。
第1運転領域Aおよび第2運転領域Bでは、SI燃焼とCI燃焼とをミックスした圧縮着火燃焼(以下、これをSPCCI燃焼という)が実行される。なお、SPCCI燃焼における「SPCCI」とは、「Spark Controlled Compression Ignition」の略である。
SI燃焼とは、火花点火燃焼であって、点火プラグ16により混合気に点火し、その点火点から周囲へと燃焼領域を拡げていく火炎伝播により混合気を強制的に燃焼させる形態のことである。CI燃焼とは、ピストン5の圧縮により高温・高圧化された環境下で混合気を自着火により燃焼させる形態のことである。そして、これらSI燃焼とCI燃焼とをミックスしたSPCCI燃焼とは、混合気が自着火する寸前の環境下で行われる火花点火により燃焼室6内の混合気の一部をSI燃焼させ、当該SI燃焼の後に(SI燃焼に伴うさらなる高温・高圧化により)燃焼室6内の残りの混合気を自着火によりCI燃焼させる、という燃焼形態のことである。
図4は、SPCCI燃焼が起きたときのクランク角に対する熱発生率(J/deg)の変化と熱発生量の変化とを示したグラフである。SPCCI燃焼では、SI燃焼時の熱発生がCI燃焼時の熱発生よりも穏やかになる。例えば、SPCCI燃焼が行われたときの熱発生率の波形は、図4に示すように、立ち上がりの傾きが相対的に小さくなる。また、燃焼室6における圧力変動(つまりdP/dθ:Pは筒内圧 θはクランク角度)も、SI燃焼時はCI燃焼時よりも穏やかになる。言い換えると、SPCCI燃焼時の熱発生率の波形は、SI燃焼によって形成された相対的に立ち上がりの傾きが小さい第1熱発生率部(M1で示した部分)と、CI燃焼によって形成された相対的に立ち上がりの傾きが大きい第2熱発生部(M2で示した部分)とが、この順に連続するように形成される。
SI燃焼によって、燃焼室6内の温度および圧力が高まると、これに伴い未燃混合気が自着火し、CI燃焼が開始される。図4に例示するように、この自着火のタイミング(つまりCI燃焼が開始するタイミング)で、熱発生率の波形の傾きが小から大へと変化する。すなわち、SPCCI燃焼における熱発生率の波形は、CI燃焼が開始するタイミングで現れる変曲点(図4のX)を有している。
CI燃焼の開始後は、SI燃焼とCI燃焼とが並行して行われる。CI燃焼は、SI燃焼よりも熱発生が大きいため、熱発生率は相対的に大きくなる。ただし、CI燃焼は、圧縮上死点の後に行われるため、熱発生率の波形の傾きが過大になることはない。すなわち、圧縮上死点を過ぎるとピストン5の下降によりモータリング圧力が低下するので、このことが熱発生率の上昇を抑制する結果、CI燃焼時のdP/dθが過大になることが回避される。このように、SPCCI燃焼では、SI燃焼の後にCI燃焼が行われるという性質上、燃焼騒音の指標となるdP/dθが過大になり難く、単純なCI燃焼(全ての燃料をCI燃焼させた場合)に比べて燃焼騒音を抑制することができる。
CI燃焼の終了に伴いSPCCI燃焼も終了する。CI燃焼はSI燃焼に比べて燃焼速度が速いので、単純なSI燃焼(全ての燃料をSI燃焼させた場合)に比べて燃焼終了時期を早めることができる。言い換えると、SPCCI燃焼では、燃焼終了時期を膨張行程内において圧縮上死点に近づけることができる。これにより、SPCCI燃焼では、単純なSI燃焼に比べて燃費性能を向上させることができる。
(a)第1運転領域A
第1運転領域Aでは、燃費性能を高めるために、燃焼室6内の空燃比(A/F)が理論空燃比よりも高く(リーンに)されつつSPCCI燃焼が実施される。第1運転領域Aでは、燃焼室6内で生成されるNOxであるrawNOxの量が十分に小さくなる程度にまで燃焼室6内の空燃比が高くされる。例えば、第1運転領域Aにおいて燃焼室6内の空燃比は30程度とされる。
第1運転領域Aでは、前記の燃焼が実現されるようにエンジンの各部が次のように駆動される。
第1運転領域Aでは、インジェクタ15は、燃焼室6内の空燃比(A/F)が前記のように理論空燃比よりも高くなるような量の燃料を燃焼室6に噴射する。本実施形態では、1燃焼サイクル中に燃焼室6に供給すべき燃料のほぼ全量が吸気行程中に燃焼室6に噴射されるように、インジェクタ15が駆動される。例えば、第1運転領域Aでは、吸気行程中に大半の燃料が噴射され、圧縮行程中に2回に分けて残りの燃料が噴射される。
第1運転領域Aでは、点火プラグ16は、圧縮上死点付近で混合気に点火する。この点火をきっかけにSPCCI燃焼が開始され、燃焼室6内の一部の混合気が火炎伝播により燃焼(SI燃焼)し、その後に残りの混合気が自着火により燃焼(CI燃焼)する。なお、混合気を活性化させるために、圧縮上死点付近で実施する点火よりも前に追加で点火を行ってもよい。
第1運転領域Aでは、スロットル弁32の開度は全開または全開に近い開度とされる。
第1運転領域Aでは、EGR弁53は全閉とされて、EGR通路51を介して燃焼室6に導入されるEGRガスの量がゼロとされる。
燃焼室6に高温の既燃ガスが残留すれば、混合気の温度が高められることで混合気を適切にCI燃焼させることができる。これより、第1運転領域Aでは、吸気VVT13aおよび排気VVT14aは、吸気弁11と排気弁12をこれらがバルブオーバーラップするように駆動する。本実施形態では、吸気弁11と排気弁12とが、排気上死点を跨いで所定期間開弁するように駆動される。
第1運転領域Aでは、スワール弁18は全閉もしくは全閉に近い低開度まで閉じられる。
第1運転領域Aでは、過給機33の駆動は停止される。すなわち、電磁クラッチ34が解放されて過給機33とエンジン本体1との連結が解除されるとともに、バイパス弁39が全開とされることにより、過給機33による過給が停止される。
(b)第2運転領域
エンジン負荷が高い領域では、燃焼室6内に供給される燃料の量が多いことで混合気の空燃比をリーンにするのが困難になる。これより、第1運転領域Aよりもエンジン負荷が高い第2運転領域Bでは、燃焼室6内の空燃比を理論空燃比以下としつつ混合気をSPCCI燃焼させる。本実施形態では、第2運転領域Bにおいて、混合気の空燃比はほぼ理論空燃比とされる。
第2運転領域Bでは、スロットル弁32の開度は、エンジン負荷に対応した空気量が燃焼室6に導入されるように設定される。
第2運転領域Bでは、インジェクタ15は、前記のように空燃比が理論空燃比となるような量の燃料を燃焼室6に噴射する。本実施形態では、噴射パターンを後述するプリイグ回避パターンにする場合を除き、基本的に、第1運転領域Aと同様に、インジェクタ15は、1燃焼サイクル中に燃焼室6内に噴射すべき燃料の大半を吸気行程中に噴射する。また、噴射パターンを後述するプリイグ回避パターンにする場合を除き、基本的に、インジェクタ15は、残りの燃料を吸気行程の後半から圧縮行程の前半にかけて噴射する。例えば、第2運転領域Bでは、図5に示すように、圧縮行程の中央付近(圧縮上死点前300°CA等)で1回目の燃料噴射(Q1)が開始され、吸気下死点(BDC、圧縮上死点前180°CA)で2回目の燃料噴射(Q2)が開始される。2回目の燃料噴射の噴射量(1回目にインジェクタ15から噴射される燃料の質量)は、1回目の燃料噴射の噴射量(2回目にインジェクタ15から噴射される燃料の質量)よりも少ない。例えば、1燃焼サイクル中に燃焼室6に噴射される燃料の総量に対する2回目の燃料噴射の噴射量の割合は、10%程度とされる。以下では、前記のようにインジェクタ15が2回に分けて燃料を噴射する場合において、1回目の燃料噴射を前段噴射といい、2回目の燃料噴射を後段噴射という。
第2運転領域Bでも、点火プラグ16は、圧縮上死点付近で混合気に点火する。第2運転領域Bにおいても、この点火をきっかけにSPCCI燃焼が開始され、燃焼室6内の一部の混合気が火炎伝播により燃焼(SI燃焼)し、その後に残りの混合気が自着火により燃焼(CI燃焼)する。
第2運転領域Bでは、燃焼室6で生成されるNOxを低減するべく、EGR弁53が開かれてEGR通路51を介してEGRガスが燃焼室6に導入される。ただし、エンジン負荷が高いときは多量の空気を燃焼室6に導入せねばならないため、EGRガスの燃焼室6への導入量を低減する必要がある。これより、第2運転領域Bでは、燃焼室6に導入されるEGRガスの量が高負荷側ほど少なくなるようにEGR弁53の開度が制御され、エンジン負荷が最大となる領域ではEGR弁53は全閉にされる。
第2運転領域Bでも、吸気VVT13aおよび排気VVT14aは、吸気弁11と排気弁12を、これら吸気弁11と排気弁12とがバルブオーバーラップするように駆動する。
第2運転領域Bでは、スワール弁18は、全閉/全開を除いた適宜の中間開度まで開かれ、その開度は、エンジン負荷が高いほど大きくされる。
過給機33は、第2運転領域Bのうちエンジン回転数およびエンジン負荷がともに低い側では、停止される。一方、第2運転領域Bのその他の領域では、過給機33は稼働される。すなわち、電磁クラッチ34が締結されて過給機33とエンジン本体1とが連結される。このとき、サージタンク36内の圧力(過給圧)が運転条件(エンジン回転数/エンジン負荷)ごとに予め定められた目標圧力に一致するように、バイパス弁39の開度が制御される。
(c)第3運転領域
第3運転領域Cでは、比較的オーソドックスなSI燃焼が実行される。このSI燃焼の実現のために、第3運転領域Cでは、インジェクタ15は、少なくとも吸気行程と重複する所定の期間にわたって燃料を噴射する。点火プラグ16は、圧縮上死点付近で混合気に点火する。第3運転領域Cでは、この点火をきっかけにSI燃焼が開始され、燃焼室6内の混合気の全てが火炎伝播により燃焼する。
第3運転領域Cでは、過給機33は稼働される。スロットル弁32は全開とされる。EGR弁53は、燃焼室6内の空燃比が理論空燃比以下となるようにその開度が制御される。例えば、第3運転領域Cでは、燃焼室6内の空燃比が理論空燃比もしくはこれよりやや小さくなるようにEGR弁53の開度が制御される。第3運転領域Cでは、スワール弁18は全開とされる。
(4)燃焼騒音増大防止制御
前記のように、第1運転領域Aでは過給機33が停止され、第2運転領域Bでは大半の領域で過給機33が駆動される。そのため、第1運転領域Aから第2運転領域Bへの移行に伴って停止状態にある過給機33の駆動が開始された過給開始時には、燃焼室6に導入される空気の量が過大になって混合気の空燃比が過度にリーン(大きく)なりやすい。空燃比が過度にリーンになると燃焼騒音が増大するおそれがある。
図6(a)、(b)を用いて具体的に説明する。図6(a)、(b)は、吸気通路30の過給機33周辺のEGRガスの流れを模式的に示した図であり、図6(a)は過給機33の停止時、図6(b)は過給機33の駆動開始時の図である。図6(a)に示すように、過給機33の停止中、EGRガスはEGR通路51を通過した後主としてバイパス通路38を通って燃焼室6に流入する。これより、過給機33が配設された吸気通路30に導入されるEGRガスの量は少なくなり、過給機33が配設された吸気通路30内のガスFAは、EGRガスの量の割合が低く新気の量の割合が高いガスとなる。この状態で過給機33の駆動が開始すると、ガスの主たる流れが過給機33が配設された通路側に切り替えられる。特に、過給機33の駆動開始に伴ってバイパス弁39が全閉にされると、バイパス通路38を介した燃焼室6へのガスの流れは停止する。そのため、図6(b)に示すように、過給機33が配設された吸気通路30内に存在してEGRガスの割合の低いガスFAが燃焼室6にまず導入されることになる。従って、停止状態にある過給機33の駆動が開始されたとき、燃焼室6内に導入されるEGRガスの量は少なくなり混合気の空燃比が過度にリーンになるおそれがある。
また、過給機33の駆動状態に関わらず燃焼室6に導入されるEGRガスが不足したときも、燃焼室6内の混合気の空燃比が過度にリーンとなるおそれがある。
燃焼室6内の混合気の空燃比がリーンになると混合気の反応が促進されて燃焼の進行度が速くなる。燃焼の進行度が速くなると、混合気が所望のタイミングよりも早いタイミングで燃焼を開始したり、混合気の燃焼速度が過剰に速くなって、筒内圧が急上昇する。そのため、混合気の空燃比が過度にリーンになると、燃焼騒音が増大するおそれがある。
そこで、本実施形態では、過給機33の駆動の開始やEGRガスの不足に伴って燃焼騒音が増大するおそれがあるときに、燃焼騒音の増大を防止するべく混合気の燃焼を緩慢にする制御を実施する。
ECU100によって実施される燃焼騒音の増大を防止するための制御について、図7のフローチャートを用いて説明する。
まず、ステップS1にて、ECU100は、停止状態にある過給機33の駆動が開始したか否か(過給機33がOFFからONになったか否か)を判定する。つまり、電磁クラッチ34が締結されて過給機33とエンジン本体1とが連結されたか否かを判定する。
ステップS1の判定がNOであって過給機の駆動開始時でない場合は、ステップS4に進む。一方、ステップS1の判定がYESであって停止状態にある過給機の駆動が開始した場合は、ステップS2に進む。
ステップS2にて、ECU100は、燃焼室6内の混合気のEGR率が予め設定された下限EGR率未満である否かを判定する。本実施形態では、このステップS2の判定は、EGR率判定部110により実施される。混合気のEGR率は、燃焼室6内の全ガス量つまり燃焼室6内のガスの総量(質量)に対する燃焼室6内のEGRガスの量(質量)の割合である。ECU100は、エアフローセンサSN4により検出された吸気量および差圧センサSN6により検出されたEGR弁53の前後差圧に基づいて、混合気のEGR率を推定する。ステップS2では、この推定されたEGR率(以下、適宜、推定EGR率という)が下限EGR率未満であるか否かを判定する。本実施形態では、下限EGR率は、エンジン回転数、エンジン負荷、吸気温、エンジン水温について予め設定されてECU100に記憶されている。ECU100は、現在のエンジン回転数、エンジン負荷、吸気温、エンジン水温に対応する値を抽出して、ステップS2の判定に用いる。なお、前記の下限EGR率は、請求項の「基準EGR率」に相当する。
ステップS2の判定がNOであってEGR率が下限EGR率以上の場合は、ステップS4に進む。一方、ステップS2の判定がYESであってEGR率が下限EGR率未満の場合は、ステップS3に進む。
ステップS3にて、ECU100は、燃料噴射を遅角させて燃料噴射のパターンをプリイグ回避パターンに変更し、このプリイグ回避パターンでインジェクタ15に燃料を噴射させる。
具体的には、図8の破線で示すように、また、前記のように、第2運転領域Bにおける通常制御時(ステップS3の非実施時)の燃料噴射のパターンは、前段噴射(Q1)が吸気行程中に開始されて、後段噴射(Q2)が吸気行程の後半から圧縮行程の前半にかけて開始されるパターンである。これに対して、プリイグ回避パターンは、図8の実線で示すように、圧縮行程の前半に前段噴射(Q11)が開始され、圧縮行程の後半に後段噴射(Q12)が開始されるパターンであり、プリイグ回避パターンの実施時は、通常制御時(プリイグ回避パターンの非実行時)に対して、前段噴射と後段噴射の双方の実施時期(噴射時期)が遅角される。また、プリイグ回避パターンでは、前段噴射(Q11)は吸気弁11の閉弁時期IVCよりも遅角側とされる。例えば、プリイグ回避パターンでは、前段噴射(Q11)が圧縮上死点前100°CA程度で開始され、後段噴射(Q12)が圧縮上死点前5~20°CA程度に開始される。このプリイグ回避パターンにおける前段噴射(Q11)は、請求項の「第1の燃料噴射」に相当し、前記のプリイグ回避パターンにおける後段噴射(Q12)は、請求項の「第2の燃料噴射」に相当する。
本実施形態では、プリイグ回避パターンにおける前段噴射(Q11)と後段噴射(Q12)の各開始時期は、燃焼室6に導入される空気の量である空気充填量、燃焼室6内のEGRガス量、吸気温およびエンジン水温に基づいて設定される。具体的には、図9に示すように、空気充填量が多く且つEGRガス量が少ないほど、各噴射(Q11、Q12)の開始時期は遅くされる。また、吸気温が高いほど各噴射(Q11、Q12)の開始時期は遅くされ、エンジン水温が高いほど各噴射(Q11、Q12)の開始時期は遅くされる。なお、ECU100は、エアフローセンサSN4の検出値等から空気充填量を推定し、これと推定EGR率等とから燃焼室6内のEGRガス量を推定する。
また、プリイグ回避パターンでは、1燃焼サイクル中に燃焼室6に噴射される燃料の総量に対する後段噴射の噴射量の割合が、通常制御時よりも多くされる。例えば、通常制御時の後段噴射の噴射量の割合が10%程度とされるのに対して、プリイグ判定時は20~40%程度とされる。
本実施形態では、プリイグ回避パターンにおける後段噴射の噴射量の割合は、空気充填量、燃焼室6内のEGRガス量、吸気温およびエンジン水温に基づいて設定される。具体的には、図10に示すように、空気充填量が多く且つEGRガス量が少ないほど、後段噴射の噴射量の割合は大きくされる。また、吸気温が高いほど後段噴射の噴射量の割合は大きくされ、エンジン水温が高いほど後段噴射の噴射量の割合は大きくされる。
ステップS3の処理は、ステップS1の判定がYES且つステップS2の判定がYESとなってステップS3の処理が開始されてから、ステップS2の判定がNOとなるまで実施される。つまり、各燃料噴射の実施時期(噴射時期)を遅角させるステップS3の制御は、EGR率が下限EGR率未満の状態で過給機33の駆動が開始されるのに伴って開始されてEGR率が下限EGR率以上になるまで継続して続けられる。
なお、本実施形態では、ステップS3の制御、つまり、燃料噴射の実施時期を遅角させて燃料噴射のパターンをプリイグ回避パターンに変更する制御が、請求項の「燃焼緩慢化制御」に相当する。そして、このプリイグ回避パターンを実現して後述するように混合気の燃焼を緩慢化させるインジェクタ15が、請求項の「燃料噴射手段」および「燃焼抑制手段」に相当する。
ステップS3の後はステップS4に進む。ステップS4にて、ECU100は、EGR率の目標値である目標EGR率に対するEGR率の不足量が所定の判定不足量以上であるか否かを判定する。つまり、EGR率の不足量が所定の判定不足量以上であるというEGR率不足条件が成立するか否かを判定する。この判定には、前記の推定EGR率が用いられる。目標EGR率は予め設定されてECU100に記憶されている。例えば、目標EGR率は、エンジン回転数とエンジン負荷等に応じて予め設定されてECU100にマップで記憶されており、ECU100は現在のエンジン回転数とエンジン負荷とに対応する値をこのマップから抽出する。また、前記の判定不足量も予め設定されてECU100に記憶されている。以下では、EGR率の目標EGR率に対する不足量を単にEGR率の不足量という。前記の判定不足量は、請求項の「判定値」に相当する。
ステップS4の判定がNOであってEGR率の不足量が判定不足量未満の場合は、そのまま処理を終了する(ステップS1に戻る)。一方、ステップS4の判定がYESであってEGR率の不足量が判定不足量以上の場合は、ステップS5に進む。
ステップS5にて、ECU100は、吸気温が所定の判定吸気温以上あるいはエンジン水温が所定の判定水温以上であるという条件が成立してか否かを判定する。判定吸気温および判定水温は予め設定されてECU100に記憶されている。
ステップS5の判定がNOであって吸気温が判定吸気温未満であり且つエンジン水温が判定水温未満であるときは、そのまま処理を終了する(ステップS1に戻る)。
一方、ステップS5の判定がYESであって吸気温が判定吸気温以上である、あるいは、エンジン水温が判定水温以上であるときは、ステップS6に進む。
ステップS6にて、ECU100は、空気充填量を低減させる。具体的には、ECU100は、スロットル弁32の開度を小さく(閉じ側に)する。このとき、ECU100は、図11に示すように、EGR率の不足量が大きい方がスロットル弁32の開度低減量を大きくする。また、ECU100は、吸気温およびエンジン水温が高い方がスロットル弁32の開度低減量を大きくする。ステップS6の後は、処理を終了する(ステップS1に戻る)。
このようにして、本実施形態では、過給機33の駆動開始時において、EGR率が低いときは燃料噴射の実施時期が遅角され、EGR率が高いときはこの燃料噴射の遅角制御が停止される。そして、過給機33の駆動開始時を含む各運転条件において、EGR率の不足量が大きいときは空気充填量が低減される。ただし、本実施形態では、EGR率の不足量が大きいときであっても吸気温およびエンジン水温が低いときは、空気充填量を低減する制御は実施されず、スロットル弁32の開度は通常制御時(ステップS6の非実施時)の開度とされる。
以上の制御を実施したときの過給機33の駆動開始前後の各パラメータの時間変化を図12に示す。図12には、上から順に、アクセル開度、過給機33の回転数、空気充填量、燃焼室6内のEGRガスの量、燃料噴射の実施時期(燃料噴射時期)、スロットル弁32の開度の各グラフを示している。
時刻t1にてアクセルペダルが踏み込まれて運転ポイントが第2運転領域B内の運転ポイントに移行すると、時刻t2にて過給機33の駆動が開始されて過給機33の回転数が増大していく。このように過給機33の駆動が開始されることで、時刻t2では、空気充填量が増大し始めるとともにEGRガス量が低減し始める。そして、EGRガス量の低下が進みEGR率が下限EGR率未満になった時刻t3にて、燃料噴射の実施時期が遅角される。時刻t5までの間、EGRガス量の低減とともに燃料の噴射時期の遅角量は増大される。時刻t5の後は、EGRガス量が増大を開始し、これに伴って燃料の噴射時期の遅角量は低減される。そして、時刻t6にてEGR率が下限EGR率を超えることで燃料の噴射時期の遅角は終了する。また、EGRガス量の低下が進み、時刻t4にてEGR率の不足量が判定不足量以上になると、スロットル弁32の開度が低減される。そして、時刻t5以降は、EGRガス量の増大に伴ってスロットル弁32の開度の低減量は小さくされていく。図12の例では、時刻t6のしばらく後に、EGR率の不足量が判定不足量未満になることに伴い、スロットル弁32の開度は通常制御時の開度に戻る。
(5)作用等
以上のように、本実施形態では、過給機33の駆動が開始されたときで、且つ、EGR率が下限EGR率未満の場合、燃料噴射のパターンがプリイグ回避パターンに変更されて、燃料噴射の噴射時期が遅角される。そのため、過給機33の駆動の開始時にEGR率が下限EGR率未満となって混合気の空燃比が過度にリーンになった場合であっても、燃焼騒音の増大を抑制できる。具体的には、燃料が噴射される時期が遅くなると、圧縮上死点付近までの燃料と空気の混合時間および反応時間が短くなる。そのため、圧縮上死点付近において反応の進んだ混合気が燃焼室6内に多量に存在するという事態の発生を防止できる。従って、圧縮上死点付近における混合気の燃焼の進行度を遅くすることができる。つまり、圧縮上死点付近において混合気の反応が過度に促進されることで、混合気が過度に早いタイミングで燃焼を開始したり混合気の燃焼速度が過度に速くなるのを防止できる。従って、燃焼室6内の圧力の急上昇を回避して燃焼騒音の増大を抑制できる。
一方で、本実施形態では、過給機33の駆動が開始したときであってもEGR率が下限EGR率以上であり混合気の空燃比が過度にリーンになっていない場合には、燃料噴射の実施時期を遅角する制御が停止される。そのため、空燃比が過度にリーンになっておらずこれにより燃焼騒音の増大が回避できるときに燃焼の進行度が遅くなるのを回避して、混合気を適切に燃焼させることができる。
また、本実施形態では、プリイグ回避パターンにおいて、後段噴射(Q12)の実施時期が圧縮行程の後半に設定される。そのため、圧縮上死点付近までの燃料と空気の混合時間および反応時間を確実に短くして、混合気の燃焼の進行度を確実に遅くできる。
また、プリイグ回避パターンでは、空気充填量が多く且つ気筒に導入されるEGRガスの量が少ないときほど、後段噴射の噴射量の割合が大きくされる。そのため、空気充填量が多く且つ気筒に導入されるEGRガスの量が少ないことに伴って燃焼の進行度が速くなりやすいときに、より多くの燃料の圧縮上死点付近までの混合時間および反応時間を短くできる。従って、圧縮上死点付近における混合気の燃焼の進行度をより確実に遅くできる。
さらに、プリイグ回避パターンでは、前段噴射(Q11)と後段噴射(Q12)の双方が圧縮行程に実施される。そのため、全燃料について、空気との混合および反応時間を短くでき、より一層確実に混合気の燃焼の進行度を遅くできる。特に、本実施形態では、前段噴射(Q11)が吸気弁11の閉弁後に実施される。そのため、さらに確実に混合気の燃焼の進行度を遅くできる。前段噴射(Q11)と後段噴射(Q12)の実施時期が前記のように設定されることの効果について、図13等を用いて具体的に説明する。
図13は、燃焼室6内の温度である筒内温度つまり燃焼室6内の混合気の温度および混合気の当量比(理論空燃比を空燃比で割った値)と混合気の自着火のしやすさとの関係を調べた結果である。図13のグラフの横軸は筒内温度、縦軸は自着火のしやすさを表している。具体的には、縦軸は、混合気を自着火させるのに必要なOHラジカルの量であり、この量が多く混合気を自着火させるのに多量のOHラジカルが必要なときは、混合気は自着火しにくいといえる。図13のグラフの3つのラインは混合気の当量比(空燃比)が互いに異なるラインであり、下側のラインほど当量比が大きく空燃比は小さく(リッチに)なっている。
図13に示されるように、混合気は、筒内温度つまり混合気の温度が高いほど自着火しやすい。ここで、燃焼室6の中央部分は外周部分に比べて高温になる。これより、混合気の自着火は燃焼室6の中央部分でまず開始する。これに対して、本実施形態では、前段噴射(Q11)と後段噴射(Q12)とが前記のような時期に実施されることで燃焼室6の中央部分での混合気の燃焼が過度に促進されるのが防止される。
具体的には、圧縮行程の前半且つ吸気弁11の閉弁後は、ピストン5の上昇中および吸気弁11の閉弁後であることに伴い燃焼室6内の吸気流動が弱い。そのため、前段噴射(Q11)が圧縮行程の前半且つ吸気弁11の閉弁後に実施されることで、図14(a)に示すように、前段噴射(Q11)によって噴射された燃料F1の拡散は抑制され、この燃料F1の大部分は燃焼室6の外周付近に留まることになる。そして、図14(b)に示すように、この燃料分布は圧縮上死点付近まで概ね維持される。そのため、前段噴射(Q11)に係る燃料と空気の混合および反応は主として燃焼室6の外周付近で生じ、この反応に伴う燃焼室6の中央付近の昇温量は小さく抑えられる。また、圧縮上死点付近において燃焼室6の中央に分布する自着火直前の状態の混合気の量が少なく抑えられることになる。従って、燃焼室6の中央付近で開始する混合気の自着火のタイミングが遅くされて、燃焼の進行度が遅くされる。なお、通常制御時(燃焼騒音防止制御の実施時以外の時)は、前段噴射(Q1)が吸気行程中に実施されることで前段噴射の燃料は燃焼室6の全体に拡散する。
ここで、プリイグ回避パターンでは圧縮行程の後半に後段噴射が実施される。圧縮行程の後半であってピストン5が圧縮上死点に近いタイミングで燃料が噴射されると、燃料は燃焼室6の中央付近に供給されることになる。また、プリイグ回避パターンでは、後段噴射の噴射量の割合が増大される。これより、プリイグ回避パターンでは、圧縮上死点付近において燃焼室6の中央付近の混合気の空燃比は小さく(リッチに)なり、空燃比の点からは燃焼室6の中央付近において混合気は自着火しやすくなるといえる。しかしながら、前記のように、プリイグ回避パターンでは、前段噴射による燃焼室6の中央付近の昇温量は小さく抑えられる。また、前記のように、後段噴射から圧縮上死点までの時間が短いことで圧縮上死点付近において後段噴射に係る燃料と空気の反応は十分に進んでおらず、これによっても燃焼室6の中央付近の温度上昇は抑制される。従って、燃焼室6の中央付近にて混合気の自着火が過度に促進されることはなく、混合気の燃焼の進行度は遅くなる。
このことは、図15(a)と(b)との比較からも明らかである。図15(a)、(b)は、圧縮上死点において、燃焼室6内に存在する各温度と各空燃比の混合気の分布を示した図である。図15(a)、(b)では、色の濃い方が混合気の分布割合が多いことを表している。また、図15(a)は、後段噴射の割合を5%としたとき(前段噴射の割合を95%としたとき)の図であり、図15(b)は後段噴射の割合を30%としたとき(前段噴射の割合を70%としたとき)の図である。これら図15(a)、(b)に示した破線は、自着火のしやすさが同じになる温度と空燃比とをつないだラインである。図15(a)に示すように、前段噴射の割合が大きく後段噴射の割合が小さい場合は、空燃比は比較的大きい(リーンである)が高温である混合気、の割合が大きくなる。これに対して、図15(b)に示すように、前段噴射の割合が小さく後段噴射の割合が大きい場合は、空燃比は比較的小さい(リッチである)が低温である混合気、の割合が大きくなる。そして、図15(a)の場合に比べて図15(b)の場合の方が、自着火しにくい領域に多くの混合気が分布することになる。従って、プリイグ回避パターンでは、後段噴射の割合が大きくされて燃焼室6の中央付近に空燃比の高い混合気が形成されるものの、混合気は自着火しにくい状態とされて混合気の燃焼の進行度が遅くされる。
また、本実施形態では、EGR率不足量が判定不足量以上というEGR率不足条件の成立時に、スロットル弁32の開度が低減されて空気充填量が低減される。そのため、EGR率の目標EGR率に対する不足量が大きく燃焼室6内の混合気の空燃比が適正な値よりも大きいことに伴って燃焼騒音が増大しやすいときに、効果的に空気充填量を低減でき、燃焼騒音の増大を確実に防止できる。
特に、本実施形態では、前記EGR率不足条件の成立時で、且つ、吸気温が判定吸気温以上のときに、空気充填量が低減される。そのため、EGR率の目標EGR率に対する不足量が大きく且つ吸気の温度が高いことに伴って燃焼騒音が増大しやすいときに、燃焼室6に導入される空気の量が低減されて燃焼騒音の増大が効果的に抑制される。そして、空気充填量が低減される機会が過度に多くなるのを防止してエンジントルクを確保できる。
ここで、混合気に含まれるOHラジカルが多い方が混合気の燃焼は促進される。また、NOxが浄化装置をすり抜けるとOHラジカルが生成されるということが分かっている。これより、三元触媒41aの下流側の排気通路40内の排気ガスが吸気通路30に還流されて気筒に導入されるように構成された本実施形態のエンジンでは、気筒2内のOHラジカルが多くなって混合気の燃焼の進行度が速くなり、燃焼騒音が増大しやすい。これに対して、本実施形態では、前記のように、燃焼騒音の増大が抑制されるようにスロットル弁32およびインジェクタ15が制御される。そのため、効果的に燃焼騒音の増大を抑制できる。
(6)変形例
前記の実施形態では、エンジンがSPCCI燃焼が実施されるものである場合を説明したが、エンジンで実施される燃焼形態はこれに限らない。
また、過給機33が駆動される運転領域は前記に限らない。
また、前記の実施形態では、EGR通路51がバイパス通路38の途中部に接続されている場合について説明したが、EGR装置50は、EGRガスが吸気通路30の過給機33よりも上流側の部分に還流されるように構成されればよく、EGR通路51の接続箇所は上記に限らない。例えば、吸気通路30のうちバイパス通路38の上流端よりも上流側の位置や、吸気通路30のうちバイパス通路38の上流端と過給機33との間の位置に、EGR通路51が接続されてもよい。この場合においても、過給機33の停止時に主としてEGRガスがバイパス通路38を通って燃焼室6に導入されることで、過給機33よりも上流側の部分のEGRガスの割合は小さくなり、過給機33の駆動開始時に燃焼室6内の混合気が過度にリーンになるおそれがある。これより、前記の場合においても、前記の実施形態に係る制御を実施すれば、燃焼騒音の増大を確実に抑制できる。
1 エンジン本体
2 気筒
6 燃焼室
15 インジェクタ(燃料噴射手段、燃焼抑制手段)
30 吸気通路
32 スロットル弁(空気充填量変更手段)
33 過給機
38 バイパス通路
40 排気通路
50 EGR装置
100 ECU(制御手段)

Claims (8)

  1. 気筒に導入される吸気が流通する吸気通路と、気筒から排出された排気ガスが流通する排気通路と、前記吸気通路に設けられて吸気を過給する過給機と、前記吸気通路に設けられて前記過給機をバイパスするバイパス通路と、前記排気通路内の排気ガスの一部であるEGRガスを前記吸気通路のうち前記過給機よりも上流側の部分に還流させるEGR装置とを備えるエンジンの制御装置であって、
    気筒内の混合気の燃焼の進行を抑制可能な燃焼抑制手段と、
    気筒内の全ガス量に対する気筒内のEGRガスの量の割合であるEGR率が所定の基準EGR率未満であるか否かを判定する判定手段と、
    前記過給機および前記燃焼抑制手段を制御する制御手段とを備え、
    前記制御手段は、
    停止状態にある前記過給機を駆動する過給開始時において、前記EGR率が前記基準EGR率未満であることが前記判定手段により判定された場合、前記EGR率が前記基準EGR率以上のときに比べて気筒内の混合気の燃焼の進行が抑制されるように前記燃焼抑制手段を制御する燃焼緩慢化制御を実施し、前記EGR率が前記基準EGR率以上であることが前記判定手段により判定された場合、前記燃焼緩慢化制御の実施を禁止するとともに、
    前記過給開始時でない場合、前記燃焼緩慢化制御の実施を禁止し、
    気筒内に燃料を噴射するとともに前記燃焼抑制手段として機能する燃料噴射手段を備え、
    前記燃焼緩慢化制御の実行時、前記制御手段は、気筒への燃料噴射の実施時期が前記燃焼緩慢化制御の非実行時に比べて遅くなるように前記燃料噴射手段を制御する、ことを特徴とするエンジンの制御装置。
  2. 請求項1に記載のエンジンの制御装置において、
    前記燃料噴射手段は、第1の燃料噴射と、当該第1の燃料噴射よりも噴射時期の遅い第2の燃料噴射とを実施し、
    前記燃焼緩慢化制御の実行時、前記制御手段は、前記第2の燃料噴射が圧縮行程の後半に実施されるように前記燃料噴射手段を制御する、ことを特徴とするエンジンの制御装置。
  3. 請求項2に記載のエンジンの制御装置において、
    前記燃焼緩慢化制御の実行時、前記制御手段は、気筒に導入される空気量が多く且つ気筒に導入されるEGRガスの量が少ないときほど、1燃焼サイクルに気筒に供給される燃料の総量に対する前記第2の燃料噴射によって気筒に供給される燃料の量の割合が大きく
    なるように、前記燃料噴射手段を制御する、ことを特徴とするエンジンの制御装置。
  4. 請求項2または3に記載のエンジンの制御装置において、
    前記燃焼緩慢化制御の実行時、前記制御手段は、前記第1の燃料噴射と前記第2の燃料噴射の双方を圧縮行程に実施する、ことを特徴とするエンジンの制御装置。
  5. 請求項1~4のいずれか1項に記載のエンジンの制御装置において、
    気筒に導入される空気の量である空気充填量を変更可能な空気充填量変更手段を有し、
    前記制御手段は、予め設定された目標EGR率に対する前記EGR率の不足量が所定の判定値以上というEGR率不足条件の成立時、前記空気充填量が低下するように前記空気充填量変更手段を制御する、ことを特徴とするエンジンの制御装置。
  6. 請求項5に記載のエンジンの制御装置において、
    前記制御手段は、前記EGR率不足条件の成立時で、且つ、気筒に導入される吸気の温度が所定の判定吸気温以上のときに、前記空気充填量が低下するように前記空気充填量変更手段を制御する、ことを特徴とするエンジンの制御装置。
  7. 請求項1~6のいずれか1項に記載のエンジンの制御装置において、
    前記排気通路に設けられて排気ガス中のNOxを浄化可能な浄化装置を備え、
    前記EGR装置は、前記浄化装置よりも下流側の前記排気通路内の排気ガスを前記吸気通路に還流させる、ことを特徴とするエンジンの制御装置。
  8. 請求項1~7のいずれか1項に記載のエンジンの制御装置において、
    気筒内の混合気に点火を行う点火手段を備え、
    前記制御手段は、前記点火手段からの点火によって気筒内の混合気の一部が火花点火燃焼するとともに残りの混合気が自着火により燃焼するように前記点火手段を制御する、ことを特徴とするエンジンの制御装置。
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