JP7410349B1 - 基準価格算出装置及び基準価格算出方法 - Google Patents

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Abstract

Figure 0007410349000001
【課題】発電事業者と需要家の間で、納得感のある基準価格を定める。
【解決手段】本発明の基準価格算出装置は、発電事業者から需要家への環境価値の権利移転を行う際の、電力市場価格を参照する差金決済に供する基準価格算出装置であって、前記発電事業者と前記需要家との間の差金決済の方向及び金額を定義するバイアスを設定するバイアス設定部と、発電電力量シナリオデータ及び電力市場価格シナリオデータに基づき、前記発電事業者及び前記需要家が見込む前記差金決済の精算総額が前記バイアスに基づくバイアス総額と同値になるように前記差金決済の方向を決定する基準価格を算出する基準価格算出部と、を備えること、を特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、基準価格算出装置及び基準価格算出方法に関する。
再生可能エネルギーをめぐる事業環境の変化に伴い、発電事業者及び需要家は、事業形態を模索している。固定価格買取制度の買取価格低下及び新規受付終了に伴い、発電事業者は、固定価格買取制度によらない発電事業を模索している。一方、需要家は、RE100(事業活動で消費するエネルギーを100%再生可能エネルギーで賄うことをめざす国際的なイニシアティブ)をはじめとする国際的な低炭素化の流れを受けて、環境価値(発電時に二酸化炭素を排出しない価値)の調達手段を模索している。
再生可能エネルギーに係る事業形態として、PPA(Power Purchase Agreement)、すなわち発電事業者と需要家との間で電力を売買する契約が注目されている。PPAはオンサイトPPAと、オフサイトPPAとに大別できる。発電事業者は、オンサイトPPAでは需要家の敷地内に発電所を設置し、オフサイトPPAでは需要家の敷地外に発電所を設置する。
また、オフサイトPPAは、フィジカルPPAと、バーチャルPPAとに大別できる。フィジカルPPAでは、発電事業者は、電力と環境価値の両方を需要家に供給する。バーチャルPPAでは、発電事業者は、電力を電力取引市場に供給し、環境価値を需要家に供給する。環境価値の供給とは、再生可能エネルギーの発電によって生じた環境価値の権利を、発電事業者から需要家に移転することである。
バーチャルPPAは、需要家にとって導入しやすいというメリットがある。オンサイトPPAと比較すると、バーチャルPPAは、再生可能エネルギーに適した土地を持たない需要家でも導入でき、需要家の保有する設備を改造する必要がない。フィジカルPPAと比較すると、バーチャルPPAは、電力の調達先を変更する必要がない。一方、バーチャルPPAは、発電事業者にとって売電価格が変動してしまうというデメリットもある。なぜならば、発電された電力は、電力取引市場に供給されるからである。売電価格が変動すると、売電収益の見通しが立たず、発電事業の資金調達に困難が生じ得る。
発電事業者の売電価格を固定化するため、バーチャルPPAを締結する発電事業者と需要家との間で差金決済する方法がある。これは、発電事業者と需要家との間で基準価格を定めておき、基準価格と電力市場価格との差額を精算する方法である。基準価格よりも電力市場価格が高い場合、発電事業者は、需要家に差分を支払う。逆に、基準価格よりも電力市場価格が低い場合、需要家は、発電事業者に差分を支払う。この方法により、発電事業者の売電価格は、基準価格に固定され、発電事業者は、電力市場価格の変動リスクを需要家に転嫁できる。換言すると、発電事業者は、需要家に環境価値を提供(権利を移転)し、一方、需要家は、発電事業者に差金決済という価値を提供する。
特許文献1は、スポット価格シナリオデータ、調整力価格シナリオデータ、調整力発動割合シナリオデータ、発電機データ、及び、燃料価格データに基づいて、目的関数が表す損益を最小化する最適化問題を解くことにより、発電機運転計画と、スポット市場及び需給調整市場での取引計画とを作成する技術を開示している。また、特許文献1は、先物市場における電力取引による売電金額及び差金決済額を考慮する技術も開示している。ここで、電力に係る先物市場は、事業者が電力市場価格の変動リスクをヘッジできるように東京商品取引所が提供している電力先物市場であると解釈できる。
しかし、特許文献1は、発電事業者から需要家への環境価値の権利移転を目的として電力市場価格を参照する差金決済に関する技術に言及していない。また、特許文献1が直接的に得る結果は、発電機運転計画、スポット市場での取引計画、需給調整市場での取引計画等であり、差金決済の基準価格ではない。
特開2021-136832号公報
差金決済では、基準価格を適切に決める必要がある。基準価格が低ければ発電事業者が受け取る総額が少なくなり、基準価格が高ければ需要家が受け取る総額が少なくなる。発電事業者は、自身の発電設備の発電コストを算出し、発電コストを基準価格として設定してもよい。しかし、再生可能エネルギー発電設備の発電コストは年々低下している一方、電力市場価格は高騰しているため、発電コストを基準価格とすると、発電事業者が受け取る総額が少なくなる懸念もある。一方、昨今の電力市場価格の平均値を基準価格としてしまうと、契約期間の電力市場価格の推移を取り込めなくなる懸念もある。そのため、発電事業者と需要家の間で、納得感のある基準価格の定め方が求められていた。
本発明の基準価格算出装置は、発電事業者から需要家への環境価値の権利移転を行う際の、電力市場価格を参照する差金決済に供する基準価格算出装置であって、前記発電事業者と前記需要家との間の契約期間における差金決済の総額であって、前記差金決済の方向を示す正又は負の符号を有するバイアス総額を設定するバイアス設定部と、前記契約期間内の時点tにおける発電電力量G の時系列データである発電電力量シナリオデータ、前記契約期間内の時点tにおける電力市場価格P の時系列データである電力市場価格シナリオデータ、及び、前記設定したバイアス総額に基づき、「Σ(max(P -α,0)×G )-Σ(max(α-P ,0)×G )」が前記設定したバイアス総額と同値になるような、前記差金決済の方向を決定する基準価格αを算出する基準価格算出部と、を備え、前記Σは、前記契約期間における総和を示し、前記maxは、引数のうち最大のものを返す関数であること、を特徴とする。
その他の手段については、発明を実施するための形態のなかで説明する。
本発明によれば、発電事業者と需要家の間で、納得感のある基準価格を定めることができる。
実施形態1に係る基準価格算出装置の構成を示す図である。 精算価格を算出するフローチャートである。 基準価格を算出するフローチャートである。 電力市場価格シナリオデータを設定するフローチャートである。 電力システムを要素に分解して、要素ごとにシナリオを設定する様子を示す図である。 ある時刻の電力市場価格を算出する様子を示す図である。 実施形態1に係る電力市場価格と基準価格との関係を示した図である。 バイアス価格が0の場合の、電力市場価格シナリオデータ、発電電力量シナリオデータ、及び、基準価格の関係を示す図である。 バイアス価格が正の場合の、電力市場価格シナリオデータ、発電電力量シナリオデータ、及び、基準価格の関係を示す図である。 実施形態2に係る基準価格算出装置の構成を示す図である。 実施形態2に係る電力市場価格と基準価格との関係を示す図である。 実施形態3に係る基準価格算出装置の構成を示す図である。 実施形態3に係る基準価格を算出するフローチャートである。 重み設定部の設定例である。 実施形態4に係る基準価格算出装置の構成を示す図である。 実施形態5に係る基準価格算出装置の構成を示す図である。 出力抑制量シナリオデータを作成するフローチャートである。 ある時刻の出力抑制量を算出する様子を示す図である。
以降、本発明を実施するための形態(“本実施形態”という)を、図等を参照しながら詳細に説明する。本実施形態は、実施形態1、実施形態2、実施形態3、実施形態4及び実施形態5を有する。
<実施形態1>
図1は、実施形態1に係る基準価格算出装置1の構成を示す図である。基準価格算出装置1は、一般的なコンピュータであり、中央制御装置11、マウス、キーボード等の入力装置12、ディスプレイ等の出力装置13、主記憶装置14及び補助記憶装置15を備える。これらは、バスで相互に接続されている。主記憶装置14における、基準価格算出部21及びバイアス設定部22は、プログラムである。以降において“〇〇部は”と動作主体を記した場合、それは、中央制御装置11がこれらのプログラムを補助記憶装置15から主記憶装置14に読み出すことによって、それぞれのプログラムの機能(詳細後記)を実現することを意味する。補助記憶装置15は、発電電力量シナリオデータ31及び電力市場価格シナリオデータ32(詳細後記)を格納している。
図2は、発電事業者から需要家への環境価値の権利移転を目的として電力市場価格を参照する差金決済をする際の、発電事業者と需要家との精算価格を算出するフローチャートである。基準価格算出部21は、基準価格を算出した後(詳細後記)、当該フローチャートの各ステップを実行する。基準価格とは、電力市場価格に対して適用される一種の閾値であり、差金決済の方向(発電事業者から需要家への支払い、又は、需要家から発電事業者への支払い)を決定する基準となる価格である。
ステップS101において、基準価格算出部21は、発電事業者及び需要家が日本卸電力取引所(Japan Electric Power Exchange;JEPX)から取得した電力市場価格を、入力装置12を介して取得する。
ステップS102において、基準価格算出部21は、基準価格を電力市場価格と比較する。基準価格算出部21は、電力市場価格のほうが大きい場合(ステップS102“Yes”)、ステップS103に進み、それ以外の場合(ステップS102“Nо”)、ステップS104に進む。
ステップS103において、基準価格算出部21は、電力市場価格から基準価格を減算した値を精算価格とする。ここでの精算価格は、発電事業者から需要家に支払われる。
ステップS104において、基準価格算出部21は、基準価格から電力市場価格を減算した値を精算価格とする。ここでの精算価格は、需要家から発電事業者に支払われる。
このように発電事業者と需要家との間で精算することで、発電事業者の売電価格は、需要家との間で決定した基準価格で固定される。すなわち、発電事業者は、電力市場価格の変動リスクを需要家に転嫁することができる。
図3は、基準価格を算出するフローチャートである。
ステップS201において、基準価格算出部21は、発電電力量シナリオデータ31を設定する。発電電力量シナリオデータ31のデータ形式は、時系列である。発電電力量シナリオデータ31の期間は、差金決済の契約期間を含む。具体的には、基準価格算出部21は、まず気象に関するシナリオデータ(気象シナリオデータ)を作成し、気象シナリオデータと発電出力との関係式に基づいて発電電力量に関するシナリオデータ(発電電力量シナリオデータ31)を設定する。基準価格算出部21は、このようにして設定された発電電力量シナリオデータ31を補助記憶装置15に記憶する。
気象シナリオデータを作成する方法は、以下のように2種類ある。
(方法1)方法1は、将来予測して気象シナリオデータを作成する。
(方法2)方法2は、過去の気象が繰り返すと仮定して、過去の気象シナリオデータで、将来の気象シナリオデータを代用する。
方法1で作成された気象シナリオデータの例として、データ統合・解析システム(Data Integration and Analysis System;DIAS)で公開されている“全球及び日本域150 年連続実験データ”が挙げられる。当該データは、1950年から2099年を対象とする、気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change;IPCC)の温室効果ガス濃度シナリオ(Representative Concentration Pathway;RCP)である。但し、当該データは、気象庁気象研究所の全球大気モデル(MRI-AGCM3.2)で数値実験された後、当該研究所の非静力学地域気候モデル(NHRCM)でダウンスケール(時間及び空間分解能を細分化する処理)されている。
方法2で代用された気象シナリオデータの例として、過去の日射量及び風速の時系列として、気象庁が観測して公開しているデータ、長期再解析データ(長期間にわたって高品質で均質な気候データセット)等が挙げられる。長期再解析データとして、米国国家航空宇宙局のMERRA-2、欧州中期予報センターのERA5、気象庁のJRA-55等が挙げられる。
気象シナリオデータと発電出力との関係式は、発電方式によって異なる。再生可能エネルギーが太陽光発電である場合、関係式は、出力係数(日射量と発電出力との関係式)である。気象シナリオデータのうちの日射量に出力係数を乗算することで、日射量は発電出力に変換され、その結果、発電電力量シナリオデータ31が得られる。再生可能エネルギーが風力発電である場合、関係式は、パワーカーブ(風速と発電出力との関係式)である。気象シナリオデータのうちの風速にパワーカーブを乗算することで、風速は発電出力に変換され、発電電力量シナリオデータ31が得られる。
ステップS202において、基準価格算出部21は、電力市場価格シナリオデータ32を設定する。電力市場価格シナリオデータ32のデータ形式も、時系列である。電力市場価格シナリオデータ32の期間も、差金決済の契約期間を含む。基準価格算出部21は、電力市場価格シナリオデータ32を設定し、補助記憶装置15に記憶する。
電力市場価格シナリオデータ32を設定する方法は、以下のように3種類ある。
(方法11)方法11は、電力市場価格の実績に基づいて電力市場価格シナリオデータ32を設定する。方法11は、ある時刻の電力市場価格を設定する際、過去の電力市場価格が繰り返すと仮定して、過去の同日同時刻の電力市場価格と同値とする。過去の電力市場価格はJEPXで公開されている。
(方法12)方法12は、電力市場価格と気象との関係に基づいて電力市場価格シナリオデータ32を設定する。例えば気温が高い時及び低い時は、冷暖房のため、電力市場価格が高くなりやすい。また、日射量が多いときは、太陽光発電の発電電力量が多くなり、電力市場価格が低くなりやすい。まず、基準価格算出部21は、電力市場価格と気象の実績を入手し、気象を説明変数、電力市場価格を目的変数とする回帰式を推定する。ここで推定した回帰式は、気温による2次回帰式であったとする。次に、基準価格算出部21は、ステップS201で作成した気象シナリオデータのうち、気温を抽出し、気温シナリオデータとする。次に、基準価格算出部21は、2次回帰式に気温シナリオデータを入力して電力市場価格を得る。
(方法13)方法13は、電力システムのシナリオを設定(図4のステップS301及びS302)し、当該シナリオから電力市場価格シナリオデータ32を得る(図4のステップS303~S306)。
図3の途中であるが、説明は一旦、図4及び図5に移る。
図4は、電力市場価格シナリオデータ32を設定するフローチャートである。
図5は、電力システムを要素に分解して、要素ごとにシナリオを設定する様子を示す図である。
ステップS301において、基準価格算出部21は、電力システムを要素に分解する。基準価格算出部21は、図5左部のように、樹形図を使用することで、視覚的に分かりやすく電力システムを分解できる。分解する階層は、任意に設定されてよいが、データが入手できる階層まで分解する方法が実用的である。
電力システムの要素には、発電、送配電、及び、需要がある。発電に係る要素には、電源種別、すなわち、火力、原子力、水力、及び、再生可能エネルギー(再エネ)がある。送配電に係る要素には、エリア間を結ぶ連系線、及び、エリア内を通る地内送電線がある。需要に係る要素には、業務部門、家庭部門、及び、運輸部門がある。さらに、各要素は、エリアごとに分解できる。エリアとは、電力会社の管轄地域であり、北海道、東北、東京、中部、北陸、関西、中国、四国、九州、及び、沖縄である。このように、電力システムを要素に分解し、各要素をさらに分解していく。
ステップS302において、基準価格算出部21は、種々の情報源に基づいて要素ごとにシナリオを設定する。長期的な見通しを得るための情報源として、例えばエネルギー政策基本法に基づいて策定されたエネルギー基本計画が挙げられる。2021年に閣議決定された第6次エネルギー基本計画によると、例えば需要に係る要素に関して、人口統計及び経済水準の推計に基づいて算出された最終エネルギー消費の見通しが得られる。
また、電力広域的運営推進機関(Organization for Cross-regional Coordination of Transmission Operators;OCCTO)の広域連系系統マスタープラン、及び、各電力会社のプレスリリースによると、発電に係る要素及び送配電に係る要素に関して、各設備の新設、増設、及び、廃設の見通しが得られる。さらに、2020年に公開された環境省の再生可能エネルギー情報提供システム(Renewable Energy Potential System)によると、発電に係る要素のうち再生可能エネルギーに係る要素に関して、地域別の導入ポテンシャルの見通しが得られる。
ステップS303において、基準価格算出部21は、1年ごとの処理を開始する。基準価格算出部21は、開始年及び終了年を、差金決済の契約期間に合わせて設定する。契約期間は、例えば10年又は20年である。繰り返し処理の周期は、ここでは1年ごとと記載されているが、厳密に1年である必要はなく、0.5年(半年)又は2年(隔年)であってもよい。図5の円筒形は、発電、送配電及び需要に係る各年の異なる電力量の想定値を省略的に示している。
ステップS304において、基準価格算出部21は、Y年目(Y=1,2,3,・・・)の想定値を統合する。図5右部の通り、基準価格算出部21は、各要素からY年目の電力量の想定値を取得し、これらを統合する。統合は、燃料費及び起動費の最小化問題に帰着する。ある発電所の燃料費は、当該発電所の出力を微増(例えば1kW)させる際に、追加的に必要となる費用である。起動費は、停止状態から起動状態に移行する際に必要となる費用である。電力システム(電力系統)全体に係る制約条件として、需給バランス制約(電力系統全体の需要量と供給量を一致させる制約)がある。発電要素に係る制約条件として、最大出力制約、最小出力制約、及び、定期検査による出力不可制約がある。送配電要素に係る制約条件として、送電線を通過する電力の上限制約がある。
ステップS305において、基準価格算出部21は、統合結果から、時刻ごとに、電力市場価格を算出する。図4の途中であるが、説明は一旦、図6に移る。
図6は、ある時刻の電力市場価格を算出する様子を示す図である。図6の縦軸は、燃料費(価格)であり、横軸は、最大出力による発電電力量である。ある発電所の燃料費を縦の長さとし最大出力による発電電力量を横の長さとする長方形を、燃料費の順番で並べたとき、各長方形の上辺を結んだ線は、供給曲線となる。図6の供給曲線は、不連続な直線であり曲線ではない。しかしながら、この不連続な直線は、経済学の慣用にならって供給曲線と表記されている。
一般的に、再生可能エネルギー発電は、燃料費が低い(又は0と近似できる)。火力発電のうち石油火力発電は、燃料費が高い。ハッチングは、起動停止状態を表現する。点でハッチングした長方形は、起動状態にある。ハッチングのない白塗りの長方形は、停止状態にある。また、需要曲線は、ここでは曲線のように描かれているが、電力需要の価格弾力性は低い(価格が変動しても需要量が大きく変動しない)ため、簡易的には垂直であってもよい。ある時刻において、供給曲線及び需要曲線に基づいて電力市場価格を決める方法は2種類ある。
(方法21)方法21は、当該時刻において起動状態にある発電所の燃料費のうち最高値を電力市場価格とする。この場合、電力市場価格は、図6のCとなる。Cは、供給曲線と需要曲線との交点であり、均衡価格に相当する。
(方法22)方法22は、当該時刻において起動状態にあり、かつ、最大出力を使い切っている発電所の燃料費のうち最高値を電力市場価格とする。左から4番目の長方形が示す発電所の上辺は、需要曲線と交差している。つまり、当該発電所は、最大出力を使い切っていない。左から1~3番目の長方形が示す発電所は、最大出力を使いきっている。したがって、この場合、電力市場価格は、図6のCとなる。統合する際、発電機の起動状態及び停止状態は、燃料費の大小関係だけではなく、種々の制約条件にも依存する。燃料費は大きいが起動費は小さい発電機を起動する断面もあり得る。方法22に比して、当該断面で方法21を採用すると、電力市場価格を過大評価する懸念がある。説明は、図4に戻る。
基準価格算出部21は、ステップS304及びS305を繰り返した後、ステップS306において、1年ごとの処理を終了する。基準価格算定部21は、繰り返し処理を終了した後、ステップS305で算出した電力市場価格を時系列に並べることで、電力市場価格シナリオデータ32を得る。説明は、図3に戻る。
ステップS203において、基準価格算定部21は、発電事業者と需要家との精算総額と基準価格の関係式を導出する。電力市場価格シナリオデータ32のうち、時刻tにおける値(円/kWh)をPとする。基準価格(円/kWh)をαとする。このとき、時刻tにおいて発電事業者が需要家に支払う価格(円/kWh)は、電力市場価格から基準価格を減算した価格を引数とする正規化線形関数の返り値“max(P-α,0)”である。一方、時刻tにおいて需要家が発電事業者に支払う価格(円/kWh)は、基準価格から電力市場価格を減算した価格を引数とする正規化線形関数の返り値“max(α-P,0)”である。
正規化線形関数は、引数が正である場合、引数を返し、引数が負である場合、ゼロを返す関数である。“max(a,a)”を引数a及びaのうち最大の引数を返す関数とすると、引数aに対する正規化線形関数は“max(a,0)”と表記される。
発電電力量シナリオデータ31のうち、時刻tにおける値(kWh)をGとする。このとき、時刻tにおいて発電事業者が需要家に支払う金額(円)は、“max(P-α,0)×G”である。一方、時刻tにおいて需要家が発電事業者に支払う金額(円)は、“max(α-P,0)×G”である。
発電事業者が需要家に支払う見込みの総額(円)は、発電事業者が需要家に支払う金額を契約期間で総和した“Σ(max(P-α,0)×G)”である。一方、需要家が発電事業者に支払う見込みの総額(円)は、需要家が発電事業者に支払う金額を契約期間で総和した“Σ(max(α-P,0)×G)”である。発電事業者及び需要家が見込む精算総額は、これらを引き合わせて、“Σ(max(P-α,0)×G)-Σ(max(α-P,0)×G)”である。ここで、P及びGは、所与であるため、αを定めれば精算総額を算出することができる。
本実施形態において、精算総額は、気候及び電力需給に基づき客観的に与えられるP及びGと、基準価格であるαに基づいて算出される値である。これに対し、後記する“バイアス総額(価格)”は、発電事業者と需要家との間の公平感に応じて定まる政策的な値である。
ステップS204において、バイアス設定部22は、バイアスを設定する。バイアスの使途は、ステップS205及びS206で後記する。バイアスの設定方法は、以下のように2種類ある。
(方法31)方法31は、バイアス価格δ(円/kWh)を設定する。
(方法32)方法32は、バイアス総額Δ(円)を設定する。
“バイアス”とは、発電事業者と需要家との間の差金決済の方向及び金額を定義するものであり、バイアスが正である場合、差金は、発電事業者から需要家に支払われる。バイアスが負である場合、差金は、需要家から発電事業者に支払われる。バイアスの値に応じて、差金決済の金額が変化する。“バイアス”は、“バイアス価格”及び“バイアス総額”を含む概念である。
ステップS205において、バイアス設定部22は、バイアス総額を算出する。バイアス設定部22がバイアス価格δを設定した場合、時刻tにおけるバイアス金額は“δ×G(円)”である。このとき、バイアス総額は、バイアス金額を契約期間で総和した“Σ(δ×G)(円)”である。バイアス設定部22がバイアス総額Δを設定した場合、当然、バイアス総額は、Δ(円)である。ここで、“Δ=Σ(δ×G)”とおくと、総和Σは斉次性がある(定数倍した後、総和をした値と、総和をした後、定数倍した値が等しい)ので、“Σ(δ×G)=δ×Σ(G)”である。よって“δ=Δ/Σ(G)”である。ステップS206以降では、δ、又は、Δに基づいて算出されたδを、δ(円/kWh)と略記する。
ステップS206において、基準価格算出部21は、発電事業者及び需要家が見込む精算総額が、バイアス総額と同値になるように、基準価格を算出する。つまり、基準価格算出部21は、電力市場価格シナリオデータ32のP、発電電力量シナリオデータ31のG、及び、バイアス設定部22が設定したδに基づいて、式1を満たすαを算出する。基準価格算出部21は、算出した基準価格を出力装置13に表示する。
Σ(max(P-α,0)×G)-Σ(max(α-P,0)×G)=Σ(δ×G) … (式1)
ここで、正規化線形関数は、絶対値を用いて、式2及び式3のように式変形できる。また、絶対値の性質より、式4が得られる。式2、式3及び式4より、式5が得られる。
図7は、実施形態1に係る電力市場価格と基準価格との関係を示した図である。横軸は、ある時刻の電力市場価格Pである。“max(P-α,0)”から“max(α-P,0)”を減算すると、“P-α”が得られることが分かる。
max(P-α,0)=((P-α)+|P-α|)/2 … (式2)
max(α-P,0)=((α-P)+|α-P|)/2 … (式3)
|P-α|=|α-P| … (式4)
max(P-α,0)-max(α-P,0)=P-α … (式5)
式5より、式1は、式6のように式変形できる。総和Σは斉次性があるので、式6は、式7のように式変形できる。さらに、式7は、式8のように式変形できる。
Σ((P-α)×G)=Σ(δ×G) … (式6)
Σ(P×G)-α×ΣG=δ×ΣG … (式7)
α=(Σ(P×G))/ΣG-δ … (式8)
以上より、式1を式変形することで式8が得られる。基準価格算出部21は、電力市場価格シナリオデータ32のP、発電電力量シナリオデータ31のG、及び、バイアス設定部22が設定したδに基づいて、式8を満たすαを算出すればよい。基準価格算出部21は、以下のように、δの値に応じたαを算出する。
(δを0とする場合)
基準価格算出部21は、差金決済の結果、発電事業者が需要家に支払う見込みの総額が、需要家が発電事業者に支払う見込みの総額と同値になるようなαを算出する。換言すると、基準価格算出部21は、発電事業者及び需要家が見込む精算総額が0になるようなαを算出する。なお、式8の性質上、δを0とする場合、αは、電力市場価格を発電電力量で加重平均した値となる。
(δを正とする場合)
基準価格算出部21は、差金決済の結果、発電事業者が需要家に支払う見込みの総額が、需要家が発電事業者に支払う見込みの総額よりも大きくなるようなαを算出する。この場合、差金決済の価値が環境価値よりも大きい。この場合は、例えば発電事業者がより確実に収益を固定化したい場合である。
(δを負とする場合)
基準価格算出部21は、差金決済の結果、発電事業者が需要家に支払う見込みの総額が、需要家が発電事業者に支払う見込みの総額よりも小さくなるようなαを算出する。この場合、環境価値が差金決済の価値よりも大きい。この場合は、例えば需要家の環境価値への支払意欲が高い場合である。
図8は、バイアス価格が0である場合の、電力市場価格シナリオデータ32のP、発電電力量シナリオデータ31のG、及び、基準価格αの関係を示す図である。基準価格算出部21は、発電事業者から需要家に支払う見込みの総額(max(P-α,0)×Gが囲む面積)と、需要家から発電事業者に支払う見込みの総額(max(α-P,0)×Gが囲む面積)が同値になるようなαを算出する。
図9は、バイアス価格が正である場合の、電力市場価格シナリオデータ32のP、発電電力量シナリオデータ31のG、及び、基準価格αの関係を表す図である。図9のP及びGは、図8のP及びGと同じである。図9ではバイアス価格が正であるので、基準価格算出部21は、発電事業者から需要家に支払う見込みの総額(max(P-α,0)×Gが囲む面積)が、需要家から発電事業者に支払う見込みの総額(max(α-P,0)×Gが囲む面積)及びバイアス総額(δ×Gt)の和と同値になるようなαを算出する。バイアス価格が正であるため、バイアス総額も正であり、結果として、図9のαは、図8のαよりも小さくなる。ステップS206において、基準価格算出部21は、図8又は図9のように、発電電力量シナリオデータ31、電力市場価格シナリオデータ32及び前記算出した基準価格の大小関係を時系列で比較可能な態様で出力装置13に表示してもよい。
(ステップS204の補足)
バイアス設定部22がバイアスを設定する方法として、バイアス価格を設定する方法、及び、バイアス総額を設定する方法があることを前記した。
バイアス価格を設定する方法は、需要家が環境価値を調達する他の手段とバイアス価格を比較する場合に有用である。需要家が環境価値を調達する手段として、例えば再エネ価値取引市場から“FIT(Feed-in Tariff)非化石証書”を調達する手段がある。2022年度第2回オークションにおけるFIT非化石証書の約定価格は、0.3(円/kWh)であった。FIT非化石証書の約定価格は、JEPXにより公開されている。
バイアス価格が負である場合、需要家が発電事業者に支払う見込みの総額は、発電事業者が需要家に支払う見込みの総額よりも、バイアス総額の絶対値分だけ多くなる。換言すると、需要家は、発電事業者から環境価値を調達する。FIT非化石証書の約定価格よりもバイアス価格の絶対値が低い場合、このことは、需要家が再エネ価値取引市場よりも安価に環境価値を調達できることを意味する。
バイアス価格が正である場合、発電事業者が需要家に支払う見込みの総額は、需要家が発電事業者に支払う見込みの総額よりも多い。このことは、需要家が再エネ価値取引市場よりも安価に環境価値を調達できることを意味している。
バイアス価格と比較される環境価値は、“FIT非化石証書”だけではなく、“非FIT非化石証書”又は“Jクレジット”であってもよい。Jクレジットはt‐CO2当たりの価格(円/t‐CO2)で取引されるので、Jクレジットに排出係数(t‐CO2/kWh)を乗算することで、Jクレジットは、kWh当たりの価格(円/kWh)に換算される。バイアス総額を設定する方法は、需要家が差金決済に使える予算が決まっている場合に有用である。
<実施形態2>
発電事業者と需要家との精算価格(発電事業者から需要家に支払う価格、又は、需要家から発電事業者に支払う価格)に上限を設定することも考えられる。
図10は、実施形態2に係る基準価格算出装置1の構成を示す図である。実施形態1と異なり、実施形態2に係る基準価格算出装置1は、価格上限設定部23を備える。ある時刻tにおいて発電事業者から需要家に支払う価格(差金決済の価格)の上限をbとし、当該時刻tにおいて、需要家から発電事業者に支払う価格(差金決済の価格)の上限をbとする。ここで、“min(a、a)”を引数aとaのうち最小の引数を返す関数とすると、引数aに対して上限をbとする関数は、“min(a、b)”と表記できる。
時刻tにおいて発電事業者が需要家に支払う価格(円/kWh)は、bを上限とし、電力市場価格から基準価格を減算した価格を引数とする正規化線形関数の返り値“min(max(P-α,0),b)”である。一方、時刻tにおいて需要家が発電事業者に支払う価格(円/kWh)は、bを上限とし、基準価格から電力市場価格を減算した価格を引数とする正規化線形関数の返り値“min(max(α-P,0),b)”である。
時刻tにおいて発電事業者が需要家に支払う金額(円)は、“min(max(P-α,0),b)×G”である。一方、時刻tにおいて需要家が発電事業者に支払う金額(円)は、“min(max(α-P,0),b)×G”である。発電事業者が需要家に支払う見込みの総額(円)は、発電事業者が需要家に支払う金額を契約期間で総和した“Σ(min(max(P-α,0),b)×G)”である。一方、需要家が発電事業者に支払う見込みの総額(円)は、需要家が発電事業者に支払う金額を契約期間で総和した“Σ(min(max(α-P,0),b)×G)”である。実施形態2に係る基準価格算出部21は、電力市場価格シナリオデータ32のP、発電電力量シナリオデータ31のG、バイアス設定部22が設定したδ、及び、価格上限設定部23が設定したb及びbに基づいて、式9を満たすαを算出する。
Σ(min(max(P-α,0),b)×G)+Σ(δ×G)=Σ(min(max(α-P,0),b)×G) … (式9)
図11は、実施形態2に係る電力市場価格と基準価格との関係を示す図である。ここで、式10のように関数fを定める。横軸は、ある時刻の電力市場価格Pである。“min(max(P-α,0),b)”から、“min(max(α-P,0),b)”を減算すると、f(P|α,b,b)が得られることが分かる。
f(P|α,b,b)=min(max(P-α,0),b)-min(max(α-P,0),b) … (式10)
fを使用して式9を式変形すると式11が得られる。実施形態2に係る基準価格算出部21は、電力市場価格シナリオデータ32のP、発電電力量シナリオデータ31のG、バイアス設定部22が設定したδ、及び、価格上限設定部23が設定したb及びbに基づいて、式11が定めるεを0にするようなαを算出すればよい。求根アルゴリズムとして、二分法及びブレント法が挙げられる。
ε=Σ(f(P|α,b,b)×G)+Σ(δ×G) … (式11)
<実施形態3>
単一のシナリオデータに基づいて基準価格を算出するのではなく、複数のシナリオデータを考慮して基準価格を算出することも考えられる。実施形態3においては、発電電力量シナリオデータ31が複数存在し、電力市場価格シナリオデータ32も複数存在する。
図12は、実施形態3に係る基準価格算出装置1の構成を示す図である。実施形態1と異なり、実施形態3に係る基準価格算出装置1は、重み設定部24を備える。
図13は、実施形態3に係る基準価格を算出するフローチャートである。
ステップS401において、重み設定部24は、発電電力量シナリオデータ31及び電力市場価格シナリオデータ32をそれぞれ複数設定する。
ステップS402において、重み設定部24は、各シナリオデータの重みを設定する。重みは、影響度、蓋然性、又は、重要度、と言い換えられてもよい。図13の途中であるが、説明は一旦、図14に移る。
図14は、重み設定部24の設定例である。重み設定部24は、発電電力量シナリオデータ31を、高位シナリオデータ、中位シナリオデータ、及び、低位シナリオデータとして3種類設定し、これらに、重みとして、それぞれ20%、70%及び10%を関連付けている。また、重み設定部24は、電力市場価格シナリオデータ32を、高位シナリオデータ、中位シナリオデータ、及び、低位シナリオデータとして3種類設定し、これらに、重みとして、それぞれ15%、80%及び5%を関連付けている。重み設定部24は、それぞれの重みを乗算して、各シナリオデータの重みを得る。
例えば、発電電力量が中位(70%)であり、電力市場価格が中位(80%)である場合、重み設定部24は、当該組み合わせに対し付与する重みを56%(=70%×80%)とする。重みを付与する方法として、例えばデルファイ法(複数の専門家に匿名で重みを付与してもらい、得られた集計結果を該専門家にフィードバックし、再び重みを付与してもらうアンケート手法)が挙げられる。説明は、図13に戻る。
ステップS403において、基準価格算出部21は、各シナリオデータにおいて基準価格を算出する。ここでは、9通りの基準価格が算出されることになる。
ステップS404において、基準価格算出部21は、ステップS403において算出した複数の基準価格を、ステップS402において設定した重みで加重平均し、得られた値を最終的な基準価格とする。このようにして得られた基準価格は、複数のシナリオデータを織り込んだバランスの取れた基準価格となる。なお、極端な基準価格を排除する目的で、基準価格算出部は、トリム加重平均を算出してもよい。トリム加重平均とは、ステップS403において算出された基準価格のうち、最大値又は最大値付近の値、及び、最小値又は最小値付近の値を削除した後の加重平均である。
<実施形態4>
基準価格算出装置1は、発電事業者から需要家への環境価値の権利移転を目的として電力市場価格を参照する差金決済に供する。発電事業者と需要家との間の取引の主目的は、環境価値の権利移転である。両者間の取引が環境価値の権利移転に仮託した金融取引とならないようにする必要がある。そこで、過去の電力市場価格と比較して、基準価格が乖離している場合に、乖離している旨を出力する機能は有用である。
図15は、実施形態4に係る基準価格算出装置1の構成を示す図である。実施形態1と異なり、実施形態4に係る基準価格算出装置1は、電力市場価格実績データ33及び乖離判定部25を備える。電力市場価格実績データ33は、過去の電力市場価格を表す時系列データである。過去の電力市場価格は、JEPXで公開されている。乖離判定部25は、電力市場価格実績データ33と比較して、基準価格算出部21の算出結果が所定の閾値を超えて乖離しているか否かを判定し、乖離している場合、乖離している旨を出力装置13に出力する。
乖離判定する条件として、例えば以下が挙げられる。
・基準価格算出部21の算出結果が、電力市場価格実績データ33の最大値に所定の値を乗算した(例えば10倍した)値を上回る。
・基準価格算出部21の算出結果が、電力市場価格実績データ33の平均値と、その標準偏差に所定の値を乗算した(例えば3倍した)値との和を上回る。
<実施形態5>
従来、再生可能エネルギーは出なり(出力抑制なし)で運用されてきた。昨今、再生可能エネルギーの導入量が急増するにつれて、電力需給及び送電線混雑を理由とした出力抑制も課せられるようになってきた。そこで、基準価格を算出する際、出力抑制量を考慮できると有用である。
図16は、実施形態5に係る基準価格算出装置1の構成を示す図である。実施形態1と異なり、実施形態5に係る基準価格算出装置1は、出力抑制量シナリオデータ34を備える。基準価格算出部21は、まず、発電電力量シナリオデータ31からある時刻の発電電力量Gを取得する。基準価格算出部21は、次に、出力抑制量シナリオデータ34から当該時刻の出力抑制量Rを取得する。基準価格算出部21は、その次に、発電電力量(出力抑制前)から出力抑制量を減算した値“G-R”を発電電力量と読み替えて、基準価格を算出する。
図17は、出力抑制量シナリオデータ34を作成するフローチャートである。図17のステップS301~S304及びS306は、図4のステップS301~S304及びS306と同じである。
ステップS501において、基準価格算出部21は、統合結果から時刻ごとに再生可能エネルギーの出力抑制量を算出する。図17の途中であるが、説明は一旦、図18に移る。
図18は、ある時刻の出力抑制量を算出する様子を示す図である。当該時刻では価格Cの長方形が再生可能エネルギーであったとする。当該長方形の横の長さが、再生可能エネルギー(出力抑制前)を表す。需要曲線と供給曲線との位置関係から、再生可能エネルギーが最大出力で発電してしまうと供給過多となることがわかる。そのため当該時刻では出力抑制が必要である。再生可能エネルギー発電電力量(出力抑制後)は、需要曲線と供給曲線の交点である。基準価格算出部21は、再生可能エネルギー発電電力量(出力抑制前)から再生可能エネルギー発電電力量(出力抑制後)を減算することで、再生可能エネルギー出力抑制量を得る。基準価格算出部21は、このように得た出力抑制量を、出力抑制量シナリオデータ34として補助記憶装置15に格納する。
結局、ステップS501において、基準価格算出部21は、発電電力量シナリオデータ31から所定の出力抑制量を減算した第2の発電電力量シナリオデータに基づいて基準価格を算出する。説明は、図17に戻る。
ステップS502において、基準価格算出部21は、再生可能エネルギー出力抑制量を、再生可能エネルギー発電電力量(出力抑制前)で除算することで、出力抑制率を得る。
ステップS503において、基準価格算出部21は、得られた出力抑制率を、当該時刻の発電電力量シナリオデータ31の値に乗算することで、当該時刻における出力抑制量を得る。基準価格算出部21、このようにして得られた出力抑制量を時系列に並べることで、出力抑制量シナリオデータ34を得ることができる。
本実施形態の効果は、以下の通りである。
(1)基準価格算出装置は、発電事業者と需要家との間で、納得感のある基準価格を算出することができる。基準価格算出装置は、発電事業者と需要家の双方にとって受容しやすいバーチャルPPAを締結するのに有用である。
(2)基準価格算出装置は、差金決済の価格の上限を設定することができる。
(3)基準価格算出装置は、複数のシナリオデータを織り込んだバランスのとれた基準価格を算出することができる。
(4)基準価格算出装置は、基準価格が市場価格から乖離するのを防ぐことができる。
(5)基準価格算出装置は、特に再エネの出力抑制を反映して基準価格を算出することができる。
(6)基準価格算出装置は、発電電力量シナリオデータ、電力市場価格シナリオデータ及び基準価格の関係を可視化することができる。
なお、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
また、前記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウエアで実現してもよい。また、前記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウエアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしもすべての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆どすべての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
1 基準価格算出装置
11 中央制御装置
12 入力装置
13 出力装置
14 主記憶装置
15 補助記憶装置
21 基準価格算出部
22 バイアス設定部
23 価格上限設定部
24 重み設定部
25 乖離判定部
31 発電電力量シナリオデータ
32 電力市場価格シナリオデータ
33 電力市場価格実績データ
34 出力抑制量シナリオデータ

Claims (7)

  1. 発電事業者から需要家への環境価値の権利移転を行う際の、電力市場価格を参照する差金決済に供する基準価格算出装置であって、
    前記発電事業者と前記需要家との間の契約期間における差金決済の総額であって、前記差金決済の方向を示す正又は負の符号を有するバイアス総額を設定するバイアス設定部と、
    前記契約期間内の時点tにおける発電電力量G の時系列データである発電電力量シナリオデータ、前記契約期間内の時点tにおける電力市場価格P の時系列データである電力市場価格シナリオデータ、及び、前記設定したバイアス総額に基づき、
    「Σ(max(P -α,0)×G )-Σ(max(α-P ,0)×G )」が前記設定したバイアス総額と同値になるような、前記差金決済の方向を決定する基準価格αを算出する基準価格算出部と、
    を備え
    前記Σは、前記契約期間における総和を示し、
    前記maxは、引数のうち最大のものを返す関数であること、
    を特徴とする基準価格算出装置。
  2. 前記差金決済の価格の上限を設定する価格上限設定部を備えること、
    を特徴とする請求項1に記載の基準価格算出装置。
  3. 複数の前記発電電力量シナリオデータのうちの1つと、複数の前記電力市場価格シナリオデータのうちの1つとの組み合わせに対して、重みを設定する重み設定部を備え、
    前記基準価格算出部は、
    前記組み合わせのそれぞれについて、前記基準価格を算出し、当該算出した基準価格を前記設定した重みで加重平均すること、
    を特徴とする請求項1に記載の基準価格算出装置。
  4. 前記基準価格が電力市場価格実績データから乖離しているか否かを判定する乖離判定部を備えること、
    を特徴とする請求項1に記載の基準価格算出装置。
  5. 前記発電電力量G に対し、前記契約期間内の時点tにおける出力抑制R が課される場合、
    前記基準価格算出部は、
    「Σ(max(P -α,0)×(G -R ))-Σ(max(α-P ,0)×(G -R ))」が前記設定したバイアス総額と同値になるような、前記差金決済の方向を決定する基準価格αを算出すること、
    を特徴とする請求項1に記載の基準価格算出装置。
  6. 前記基準価格算出部は、
    前記発電電力量シナリオデータ、前記電力市場価格シナリオデータ及び前記算出した基準価格の大小関係を時系列で比較可能に表示すること、
    を特徴とする請求項1に記載の基準価格算出装置。
  7. 発電事業者から需要家への環境価値の権利移転を行う際の、電力市場価格を参照する差金決済に供する基準価格算出装置による基準価格算出方法であって、
    前記基準価格算出装置のバイアス決定部は、
    前記発電事業者と前記需要家との間の契約期間における差金決済の総額であって、前記差金決済の方向を示す正又は負の符号を有するバイアス総額を設定し、
    前記基準価格算出装置の基準価格算出部は、
    前記契約期間内の時点tにおける発電電力量G の時系列データである発電電力量シナリオデータ、前記契約期間内の時点tにおける電力市場価格P の時系列データである電力市場価格シナリオデータ、及び、前記設定したバイアス総額に基づき、
    「Σ(max(P -α,0)×G )-Σ(max(α-P ,0)×G )」が前記設定したバイアス総額と同値になるような、前記差金決済の方向を決定する基準価格αを算出し、
    前記Σは、前記契約期間における総和を示し、
    前記maxは、引数のうち最大のものを返す関数であること、
    を特徴とする基準価格算出方法。
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