以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
図1は、この発明の実施の形態に係る無線通信システム1の概略構成を示す機能ブロック図である。
無線通信システム1は、HUB局2(「基地局」などとも呼ばれる)と複数の端局3A,3B,3C(「移動局」などとも呼ばれる)それぞれとの間で、通信衛星4を介して(言い換えると、衛星通信回線を使用して)、HUB局2から各端局3A,3B,3Cへの送信(即ち、下り回線)において時分割多重化(TDM)方式に従うとともに各端局3A,3B,3CからHUB局2への送信(即ち、上り回線)において時分割多元接続(TDMA)方式に従う無線フレームフォーマットに準拠したフレームを用いて、双方向の無線通信を行う。図に示す例では、端局を3台示しているが、端局の台数は2台または4台以上でもよい。また、端局3B,3Cの構成は端局3Aと同様であるので図示を省略している。下記では、複数の端局3A,3B,3Cのそれぞれに共通する動作を説明する場合は複数の端局3A,3B,3Cを包含する意味で「端局3」と表記する。
HUB局2は、各端局3との間で通信衛星4を介して(言い換えると、衛星通信回線を使用して)下り回線において時分割多重化(TDM)方式に従うとともに上り回線において時分割多元接続(TDMA)方式に従う無線フレームフォーマットに準拠したフレームを利用して双方向の無線通信を行う機序であり、主として、制御部21と、バッファメモリ22と、送信部23と、受信部24と、送受共用器25と、アンテナ26と、HUB局タイマ27と、を有する。
制御部21は、HUB局2を構成する各部の動作を制御する機能を備え、中央処理装置211(CPU:Central Processing Unit),入出力部212(I/O:Input/Output),および記憶部213を含む。
制御部21は、入出力部212を介してHUB局2の各部と接続しており、HUB局2を構成する各部の処理の開始,内容,および終了を統制して制御する。煩雑になるので、入出力部212から各部への信号線の図示を省略している。
記憶部213は、中央処理装置211が通信処理を行う際に生成されるデータや情報などを一時的に記憶などするための作業領域となったり各種の情報,プログラム,およびデータなどを記憶して格納などするための記憶領域となったりする機能を備え、例えば、RAM(Random Access Memory),ROM(Read Only Memory),ストレージなどの記憶媒体から構成される。
記憶部213には、制御部21がHUB局2全体の動作を制御するための制御プログラムが格納される。制御部21は、記憶部213に格納される制御プログラムなどに従ってHUB局2全体の動作を制御して各機能を実現する。
バッファメモリ22は、送信源(図示していない)から出力される送信対象のデータの入力を受け、HUB局2からのデータ/フレームの送信タイミングを調整するための先入れ先出し(FIFO:First In,First Out)の機能を備える。
送信部23は、バッファメモリ22から出力される送信対象のデータの入力を受け、時分割多重化(TDM)方式に準拠して複数のデータ列を時分割多重して各端局3へと送信処理する機能を備える。
受信部24は、送受共用器25から出力される信号の入力を受け、時分割多元接続(TDMA)方式に準拠して各端局3から送信されたフレーム/データを受信処理する機能を備える。
送受共用器25は、送受信の切替えを行う機能を備え、送信部23から出力される信号の入力を受けてアンテナ26へと出力したり、アンテナ26から出力される信号の入力を受けて受信部24へと出力したりする。
アンテナ26は、無線信号を送受信する機能を備える。
HUB局タイマ27は、時計機能を備え、時刻を供給可能に構成される。
HUB局2では、送信源(図示していない)から出力される送信対象のデータがバッファメモリ22へと送出されると、送信部23により、時分割多重化(TDM)方式の無線フレームフォーマットに準拠して前記送信対象のデータが予め定められる所定の時間に分割され多重化されて各端局3へと送信される。
例えば図2(A)に示すように、時分割多重化(TDM)方式の無線フレームフォーマットに準拠して時間的に区切られたフレーム(尚、ヘッダHとデータDとを含む)が連続する信号がHUB局2から各端局3へと送信される。
端局3は、HUB局2との間で通信衛星4を介して(言い換えると、衛星通信回線を使用して)下り回線において時分割多重化(TDM)方式に従うとともに上り回線において時分割多元接続(TDMA)方式に従う無線フレームフォーマットに準拠したフレームを利用して双方向の無線通信を行う機序であり、主として、制御部31と、バッファメモリ32と、送信部33と、受信部34と、送受共用器35と、アンテナ36と、端局タイマ37と、を有する。
制御部31は、端局3を構成する各部の動作を制御する機能を備え、中央処理装置311(CPU),入出力部312(I/O),および記憶部313を含む。
制御部31は、入出力部312を介して端局3の各部と接続しており、端局3を構成する各部の処理の開始,内容,および終了を統制して制御する。煩雑になるので、入出力部312から各部への信号線の図示を省略している。
記憶部313は、中央処理装置311が通信処理を行う際に生成されるデータや情報などを一時的に記憶などするための作業領域となったり各種の情報,プログラム,およびデータなどを記憶して格納などするための記憶領域となったりする機能を備え、例えば、RAM,ROM,ストレージなどの記憶媒体から構成される。
記憶部313には、制御部31が端局3全体の動作を制御するための制御プログラムが格納される。制御部31は、記憶部313に格納される制御プログラムなどに従って端局3全体の動作を制御して各機能を実現する。
バッファメモリ32は、送信源(図示していない)から出力される送信対象のデータの入力を受け、端局3からのデータ/フレームの送信タイミングを調整するための先入れ先出し(FIFO)の機能を備える。
送信部33は、バッファメモリ32から出力される送信対象のデータの入力を受け、時分割多元接続(TDMA)方式に準拠してデータ列をHUB局2へと送信処理する機能を備える。
受信部34は、送受共用器35から出力される信号の入力を受け、時分割多重化(TDM)方式に準拠して時分割多重されてHUB局2から送信されたフレーム/データを受信処理する機能を備える。
送受共用器35は、送受信の切替えを行う機能を備え、送信部33から出力される信号の入力を受けてアンテナ36へと出力したり、アンテナ36から出力される信号の入力を受けて受信部34へと出力したりする。
アンテナ36は、無線信号を送受信する機能を備える。
端局タイマ37は、自走式のタイマにより構成され、時計機能を備え、時刻を供給可能に構成される。
端局3では、送信源(図示していない)から出力される送信対象のデータがバッファメモリ32へと送出されると、送信部33により、時分割多元接続(TDMA)方式に準拠して前記送信対象のデータがHUB局2へと送信される。
すなわち、時分割多元接続(TDMA)方式の無線フレームフォーマットに準拠して時間的に区切られてフレーム単位で時間的に間欠的なバースト信号が所定の間隔で(言い換えると、TDMA方式に準拠するバースト信号の送信タイミングで)端局3からHUB局2へと送信される。
そして、HUB局2では、例えば図2(B)に示すように、端局3Aから送信されるフレーム(尚、ヘッダHaとデータDaとを含む),端局3Bから送信されるフレーム(尚、ヘッダHbとデータDbとを含む),および端局3Cから送信されるフレーム(尚、ヘッダHcとデータDcとを含む)などが、各端局3に対して割り当てられているタイムスロットにて受信される。
このとき、各端局3から送信されるフレームをHUB局2が受信する際の上り回線のフレーム間のスペース(即ち、各タイムスロットの間に挿入される無通信時間)が小さいほど、回線の利用効率・伝送効率が向上する。
そして、実施の形態に係る無線通信システム1は、HUB局2から各端局3A,3B,3Cへの送信(即ち、下り回線)において時分割多重化(TDM)方式に従うとともに各端局3A,3B,3CからHUB局2への送信(即ち、上り回線)において時分割多元接続方式(TDMA)に従う無線フレームフォーマットに準拠したフレームを用いて通信衛星4を介して双方向の無線通信を行うHUB局2と端局3とを有し、端局3が、HUB局2から送信されるフレームのヘッダの先頭の送信タイミングの時刻thの差と端局3における前記フレームのヘッダの先頭の受信タイミングの時刻tsの差との比率Δfを用いてHUB局2のHUB局タイマ27の周波数と端局3の端局タイマ37の周波数とを同期させる周波数同期部314と、送信タイミングの時刻thと受信タイミングの時刻tsとの差を用いてHUB局タイマ27の時刻と端局タイマ37の時刻とを調整する時刻調整部315を有し、さらに、HUB局2が、時分割多元接続(TDMA)に準拠するタイムスロットごとにフレームを受信する予定時刻と実際の受信時刻との差である時刻誤差Δtdを算出する時刻誤差算出部214を有し、端局3が、時刻誤差Δtdに基づいてHUB局2へのフレームの送信タイミングを調整する時刻誤差調整部316を有する、ようにしている。
まず、HUB局2のHUB局タイマ27の周波数と各端局3の端局タイマ37の周波数との同期処理が行われる。
具体的には、HUB局2が、図3に示すように、FEC(Forward Error Correction:前方誤り訂正)フレームのヘッダHの先頭の送信タイミングでHUB局タイマ27から供給される時刻をFECフレームにタイムスタンプ情報TSとして付加して各端局3へと送信する。
図3に示す例では、HUB局2から各端局3へのFECフレームの送信において、<i>番目のFECフレームのヘッダHの先頭の送信タイミングでHUB局タイマ27から供給される時刻th_iが<i+2>番目のFECフレームにタイムスタンプ情報TSとして付加され、また、<i+1>番目のFECフレームのヘッダHの先頭の送信タイミングでHUB局タイマ27から供給される時刻th_i+1が<i+3>番目のFECフレームにタイムスタンプ情報TSとして付加される。
図3に示す例では、HUB局タイマ27から供給される時刻を取得してタイムスタンプ情報TSとして付加する処理にかかる時間を考慮して、各FECフレームについてのタイムスタンプ情報TSが2つ後のFECフレームに付加されるようにしているが、各FECフレームについてのタイムスタンプ情報TSが当該のFECフレームに付加されたり1つ後のFECフレームに付加されたりなどするようにしてもよい。
また、図3に示す例では、<i>番目のFECフレームについてのタイムスタンプ情報TSと<i+1>番目のFECフレームについてのタイムスタンプ情報TSとがFECフレームに付加されて端局3へと送信されるようにしているが、例えば、<i>番目のFECフレームについてのタイムスタンプ情報TSと<i+2>番目のFECフレームについてのタイムスタンプ情報TSとがFECフレームに付加されて端局3へと送信されるようにしてもよい。すなわち、時間的に前後する複数のFECフレームについてのタイムスタンプ情報TSがHUB局2から端局3へと送信されればよい。
HUB局2から各端局3へとタイムスタンプ情報TSが送信される際には、タイムスタンプ情報TSを含むFECフレームであることを示す例えばフラグがヘッダHに含められ、これにより、当該のFECフレームにはタイムスタンプ情報TSが含まれていることを端局3が認識する。
端局3は、HUB局2から送信されるFECフレームを受信すると、当該のFECフレームのヘッダHの先頭の受信タイミングで端局タイマ37から供給される時刻を取得して記憶部313などに記憶させるとともに、当該のFECフレームにタイムスタンプ情報TSが付加されているときは前記タイムスタンプ情報TSを取得して記憶部313などに記憶させる。
図3,図4に示す例では、HUB局2から送信されたFECフレームの端局3における受信において、<i>番目のFECフレームのヘッダHの先頭の受信タイミングで端局タイマ37から供給される時刻ts_iが取得されて記憶部313などに記憶され、また、<i+1>番目のFECフレームのヘッダHの先頭の受信タイミングで端局タイマ37から供給される時刻ts_i+1が取得されて記憶部313などに記憶される。
図3,図4に示す例では、また、<i+2>番目のFECフレームにタイムスタンプ情報TSとして付加されている時刻th_iが取得されて記憶部313などに記憶され、また、<i+3>番目のFECフレームにタイムスタンプ情報TSとして付加されている時刻th_i+1が取得されて記憶部313などに記憶される。
そして、端局3の制御部31の周波数同期部314は、HUB局2のHUB局タイマ27における経過時間と端局3の端局タイマ37における経過時間との比率(言い換えると、HUB局タイマ27の時間経過のはやさの度合いと端局タイマ37の時間経過のはやさの度合いとの比率)から、下記の数式1に従ってHUB局タイマ27と端局タイマ37との周波数誤差Δfを算出する。
(数1) Δf = (ts_i+1-ts_i)/(th_i+1-th_i)
上記の数式1は、各FECフレームに付加されているタイムスタンプ情報TSがどのFECフレームについてのタイムスタンプ情報TSであるかが考慮されて適用される。例えば、図3,図4に示す例では、各FECフレームに付加されているタイムスタンプ情報TSは2つ前のFECフレームについてのタイムスタンプ情報TSであることが考慮される。
具体的には、図3,図4に示す例では、上記の数式1において、「th_i」は、HUB局2において<i>番目のFECフレームのヘッダHの先頭の送信タイミングでHUB局タイマ27から供給される時刻であり、図に示す例では<i+2>番目のFECフレームに付加されているタイムスタンプ情報TSである。そして、「ts_i」は、端局3において前記<i>番目のFECフレームのヘッダHの先頭の受信タイミングで端局タイマ37から供給される時刻である。
また、「th_i+1」は、HUB局2において<i+1>番目のFECフレームのヘッダHの先頭の送信タイミングでHUB局タイマ27から供給される時刻であり、図に示す例では<i+3>番目のFECフレームに付加されているタイムスタンプ情報TSである。そして、「ts_i+1」は、端局3において前記<i+1>番目のFECフレームのヘッダHの先頭の受信タイミングで端局タイマ37から供給される時刻である。
端局3の制御部31の周波数同期部314は、記憶部313などに記憶されている端局タイマ37から供給される時刻(ここでは、ts_i,ts_i+1)ならびにFECフレームに付加されているタイムスタンプ情報TS(ここでは、th_i,th_i+1)を読み出し、上記の数式1に従って周波数誤差Δfを算出し、前記周波数誤差Δfに基づいて端局タイマ37の周波数を補正する。周波数同期部314は、すなわち、上記の数式1の算出結果として得られる周波数誤差Δfの逆数を端局タイマ37の周波数に乗じることによって周波数を変化させる。
以上により、HUB局2のHUB局タイマ27の周波数と各端局3の端局タイマ37の周波数とが同期される。図に示す例では、周波数同期が為されたタイミングでの端局タイマ37における時刻をtfとする。
次に、HUB局2のHUB局タイマ27の時刻と各端局3の端局タイマ37の時刻との調整処理が行われる。
具体的には、端局3の制御部31の時刻調整部315が、HUB局2のHUB局タイマ27の時刻と端局3の端局タイマ37の時刻との差から、下記の数式2に従ってHUB局タイマ27と端局タイマ37との時刻差Δtを算出する。
(数2) Δt = ts_j-th_j
上記の数式2は、各FECフレームに付加されているタイムスタンプ情報TSがどのFECフレームについてのタイムスタンプ情報TSであるかが考慮されて適用される。例えば、図5に示す例では、図3に示す例と同様に、各FECフレームに付加されているタイムスタンプ情報TSは2つ前のFECフレームについてのタイムスタンプ情報TSであることが考慮される。
具体的には、図5に示す例では、上記の数式2において、「th_j」は、HUB局2において<j>番目のFECフレームのヘッダHの先頭の送信タイミングでHUB局タイマ27から供給される時刻であり、図に示す例では<j+2>番目のFECフレームに付加されているタイムスタンプ情報TSである。そして、「ts_j」は、端局3において前記<j>番目のFECフレームのヘッダHの先頭の受信タイミングで端局タイマ37から供給される時刻である。時刻ts_jは、周波数同期が為された時刻tfよりも後の時刻である。前記の時刻「th_j」や「ts_j」は記憶部313などに記憶される。
端局3の制御部31の時刻調整部315は、記憶部313などに記憶されている端局タイマ37から供給される時刻(ここでは、ts_j)ならびにFECフレームに付加されているタイムスタンプ情報TS(ここでは、th_j)を読み出し、上記の数式2に従って時刻差Δtを算出し、前記時刻差Δtに基づいて端局タイマ37の時刻を補正する。時刻調整部315は、すなわち、上記の数式2の算出結果として得られる時刻差Δtを端局3の時刻から減じることによって時刻を変化させる。
以上により、HUB局2のHUB局タイマ27の時刻と端局3の端局タイマ37の時刻とが調整される。図に示す例では、時刻調整が為されたタイミングでの端局タイマ37における時刻をttとする。
時刻の調整処理が完了した後は、HUB局2はタイムスタンプ情報TSの付加・送信を停止する。タイムスタンプ情報TSの付加・送信は、例えば、タイムスタンプ情報TSの付加・送信の開始から予め定められる所定時間が経過するまで行われるようにしてもよく、或いは、各端局3からHUB局2へと所定の停止信号が送信されるまで行われるようにしてもよい。
次に、各端局3からHUB局2へのフレームの送信タイミングの調整処理が行われる。
具体的には、HUB局2が、端局3A,3B,3Cのそれぞれから送信されるFECフレーム(言い換えると、上りバースト信号)を受信し、当該のFECフレームのヘッダHの情報の受信完了タイミングでHUB局タイマ27から供給される時刻(「FECフレームのヘッダHの受信完了時刻」と呼ぶ)を取得して記憶部213などに記憶させる。
図6に示す例では、HUB局2において、端局3Aから送信されるFECフレーム<A>が、前記端局3Aに対して割り当てられているタイムスロット<k>にて受信され、当該のFECフレーム<A>のヘッダHの受信完了時刻がth_aである。また、HUB局2において、端局3Bから送信されるFECフレーム<B>が、前記端局3Bに対して割り当てられているタイムスロット<k+1>にて受信され、当該のFECフレーム<B>のヘッダHの受信完了時刻がth_bである。さらに、HUB局2において、端局3Cから送信されるFECフレーム<C>が、前記端局3Cに対して割り当てられているタイムスロット<k+2>にて受信され、当該のFECフレーム<C>のヘッダHの受信完了時刻がth_cである。
HUB局2における、時分割多元接続(TDMA)方式に準拠するタイムスロットごとの、当該のタイムスロットに割り当てられている端局3から送信されるFECフレームのヘッダHの情報の受信開始タイミング(「FECフレームのヘッダHの受信開始予定時刻」と呼ぶ)は予め定められている。
図6に示す例では、HUB局2における、端局3Aに対して割り当てられているタイムスロット<k>のFECフレームのヘッダHの受信開始予定時刻がth_kであり、端局3Bに対して割り当てられているタイムスロット<k+1>のFECフレームのヘッダHの受信開始予定時刻がth_k+1であり、端局3Cに対して割り当てられているタイムスロット<k+2>のFECフレームのヘッダHの受信開始予定時刻がth_k+2である。
HUB局2の制御部21の時刻誤差算出部214は、タイムスロットごとに、言い換えると、当該のタイムスロットに割り当てられている端局3ごとに、FECフレームのヘッダHの受信開始予定時刻と実際の受信完了時刻との差(「時刻誤差Δtd」と呼ぶ)を算出する。時刻誤差Δtdは、HUB局2が想定する伝搬遅延の基準値に対する偏差に相当する。
下記の数式3Aによって算出される時刻誤差Δtdは、端局3Aに対して割り当てられているタイムスロット<k>のFECフレームのヘッダHの受信開始予定時刻th_kとFECフレーム<A>の実際の受信完了時刻th_aとの差である時刻誤差Δtdaであり、端局3AについてHUB局2が想定する伝搬遅延の基準値に対する偏差に相当する。
(数3A) Δtda = th_k-th_a
下記の数式3Bによって算出される時刻誤差Δtdは、端局3Bに対して割り当てられているタイムスロット<k+1>のFECフレームのヘッダHの受信開始予定時刻th_k+1とFECフレーム<B>の実際の受信完了時刻th_bとの差である時刻誤差Δtdbであり、端局3BについてHUB局2が想定する伝搬遅延の基準値に対する偏差に相当する。
(数3B) Δtdb = th_k+1-th_b
下記の数式3Cによって算出される時刻誤差Δtdは、端局3Cに対して割り当てられているタイムスロット<k+2>のFECフレームのヘッダHの受信開始予定時刻th_k+2とFECフレーム<C>の実際の受信完了時刻th_cとの差である時刻誤差Δtdcであり、端局3CについてHUB局2が想定する伝搬遅延の基準値に対する偏差に相当する。
(数3C) Δtdc = th_k+2-th_c
HUB局2の制御部21の時刻誤差算出部214は、上記の数式3A,3B,3Cの算出結果として得られる時刻誤差Δtdを各端局3へと送信する。図6に示す例では、上記の数式3Aに従って算出される時刻誤差Δtdaがタイムスロット<k>に関する(或いは、タイムスロット<k>に割り当てられている端局3Aに関する)時刻誤差として<n>番目のFECフレームに付加されて、また、上記の数式3Bに従って算出される時刻誤差Δtdbがタイムスロット<k+1>に関する(或いは、タイムスロット<k+1>に割り当てられている端局3Bに関する)時刻誤差として<n+1>番目のFECフレームに付加されて、さらに、上記の数式3Cに従って算出される時刻誤差Δtdcがタイムスロット<k+2>に関する(或いは、タイムスロット<k+2>に割り当てられている端局3Cに関する)時刻誤差として<n+2>番目のFECフレームに付加されて、HUB局2から送信される。
端局3の制御部31の時刻誤差調整部316は、HUB局2から送信されるFECフレームに付加されている、自身に対して割り当てられているタイムスロットに関する時刻誤差Δtdを取得し、前記時刻誤差Δtdに基づいて、HUB局2へのフレームの送信タイミングを調整する。
図6に示す例では、<n>番目のFECフレームに付加されているタイムスロット<k>に関する(言い換えると、タイムスロット<k>に割り当てられている端局3Aに関する)時刻誤差Δtdaに基づいて、端局3AからHUB局2へのフレームの送信タイミングが調整される。具体的には、端局3AからHUB局2へのフレームの送信タイミングの予定時刻がTsaであるとき、下記の数式4Aに従って算出されるT'saが、端局3AからHUB局2へのフレームの送信タイミングの調整後の予定時刻とされる。
(数4A) T'sa = Tsa+Δtda
また、<n+1>番目のFECフレームに付加されているタイムスロット<k+1>に関する(言い換えると、タイムスロット<k+1>に割り当てられている端局3Bに関する)時刻誤差Δtdbに基づいて、端局3BからHUB局2へのフレームの送信タイミングが調整される。具体的には、端局3BからHUB局2へのフレームの送信タイミングの予定時刻がTsbであるとき、下記の数式4Bに従って算出されるT'sbが、端局3BからHUB局2へのフレームの送信タイミングの調整後の予定時刻とされる。
(数4B) T'sb = Tsb+Δtdb
さらに、<n+2>番目のFECフレームに付加されているタイムスロット<k+2>に関する(言い換えると、タイムスロット<k+2>に割り当てられている端局3Cに関する)時刻誤差Δtdcに基づいて、端局3CからHUB局2へのフレームの送信タイミングが調整される。具体的には、端局3CからHUB局2へのフレームの送信タイミングの予定時刻がTscであるとき、下記の数式4Cに従って算出されるT'scが、端局3CからHUB局2へのフレームの送信タイミングの調整後の予定時刻とされる。
(数4C) T'sc = Tsc+Δtdc
ここで、FECフレームのヘッダHの受信開始予定時刻と実際の受信完了時刻とにはタイムラグがあるところ、すべての端局3が受信開始予定時刻から一定のタイムラグ後の時刻を基準時刻としてこの基準時刻に対する時間差の分を調整することにより、結果として各端局3からHUB局2へのフレームの送信タイミングが調整されてHUB局2におけるフレーム同士(別言すると、バースト同士)の衝突が防止される。
以上により、各端局3からHUB局2へのフレームの送信タイミングが調整される。
次に、各端局3からHUB局2へのフレームの送信タイミングの保持処理が行われる。
具体的には、上記によって各端局3からHUB局2へのフレームの送信タイミングが一旦調整された後も、HUB局2が、引き続き、図6に示す例と同様に、端局3A,3B,3Cのそれぞれから送信されるFECフレーム(言い換えると、上りバースト信号)のヘッダHの受信完了時刻を取得して記憶部213などに記憶させるとともに、制御部21の時刻誤差算出部214が、タイムスロットごとに、言い換えると、当該のタイムスロットに割り当てられている端局3ごとに、FECフレームのヘッダHの受信開始予定時刻と実際の受信完了時刻との差である時刻誤差Δtdを算出する。
HUB局2の制御部21の時刻誤差比較部215は、タイムスロットごとの(言い換えると、端局3ごとの)時刻誤差Δtdが予め定められる時刻誤差閾値Tthr以上であるか否かを判定し、前記時刻誤差Δtdが前記時刻誤差閾値Tthr以上であるとき、時刻誤差閾値Tthr以上となっているタイムスロットに関する時刻誤差Δtdを、前記タイムスロットに割り当てられている端局3へと送信する。
具体的には例えば、図6に示す例を用いて説明すると、端局3Aに対して割り当てられているタイムスロット<k>のFECフレームのヘッダHの受信開始予定時刻th_kとFECフレーム<A>の実際の受信完了時刻th_aとの差である時刻誤差Δtda(上記の数式3A参照)が時刻誤差閾値Tthr以上であるとき、前記時刻誤差Δtdaがタイムスロット<k>に関する(或いは、タイムスロット<k>に割り当てられている端局3Aに関する)時刻誤差として<n>番目のFECフレームに付加されてHUB局2から送信される。
また、端局3Bに対して割り当てられているタイムスロット<k+1>のFECフレームのヘッダHの受信開始予定時刻th_k+1とFECフレーム<B>の実際の受信完了時刻th_bとの差である時刻誤差Δtdb(上記の数式3B参照)が時刻誤差閾値Tthr以上であるとき、前記時刻誤差Δtdbがタイムスロット<k+1>に関する(或いは、タイムスロット<k+1>に割り当てられている端局3Bに関する)時刻誤差として<n+1>番目のFECフレームに付加されてHUB局2から送信される。
時刻誤差閾値Tthrは、特定の値に限定されるものではなく、例えば各端局3から送信されるフレームをHUB局2が受信する際の上り回線のフレーム間のスペース(即ち、各タイムスロットの間に挿入される無通信時間)をできる限り小さくしつつそれでもフレーム同士(別言すると、バースト同士)の衝突を回避し得ることが考慮されるなどしたうえで適当な値に適宜設定される。
端局3の制御部31の再調整部317は、時刻誤差調整部316によるフレームの送信タイミングの調整処理が行われた後に、HUB局2から送信されて自身に対して割り当てられているタイムスロットにて受信されるFECフレームに時刻誤差Δtdが付加されている場合に、前記時刻誤差Δtdを取得し、前記時刻誤差Δtdに基づいてHUB局2へのフレームの送信タイミングを調整する。
具体的には例えば、図6に示す例を用いて説明すると、端局3Aおいて、当該端局3Aに対して割り当てられているタイムスロット<k>にて受信される<n>番目のFECフレームに時刻誤差Δtdaが付加されている場合に、前記時刻誤差Δtdaに基づいて、端局3AからHUB局2へのフレームの送信タイミングが調整される(上記の数式4A参照)。
また、端局3Bおいて、当該端局3Bに対して割り当てられているタイムスロット<k+1>にて受信される<n+1>番目のFECフレームに時刻誤差Δtdbが付加されている場合に、前記時刻誤差Δtdbに基づいて、端局3BからHUB局2へのフレームの送信タイミングが調整される(上記の数式4B参照)。
なお、HUB局2の時刻誤差算出部214と端局3の時刻誤差調整部316とによる各端局3からHUB局2へのフレームの送信タイミングの調整処理は、最初は、タイムスロットごとの時刻誤差Δtdの大きさに関係なくすべての(使用中の)タイムスロットについて(言い換えると、すべての通信中の端局3について)行われることを前提として上記では説明したが、最初から、タイムスロットごとの時刻誤差Δtdが時刻誤差閾値Tthr以上であるときのみ行われるようにしてもよい。この場合は、HUB局2の時刻誤差算出部214は、時刻誤差Δtdを各端局3へと送信する処理を行わない。また、端局3の時刻誤差調整部316と再調整部317とが1つのものとして構成される(具体的には、再調整部317に相当する機能を備えるものとして構成されればよい)。
また、各端局3からHUB局2へのフレームの送信タイミングの保持処理が行われている段階で、タイムスロットごとの(言い換えると、端局3ごとの)時刻誤差Δtdが予め定められる最大誤差閾値Tmax以上であるとき、または、タイムスロットごとの(言い換えると、端局3ごとの)時刻誤差Δtdが予め定められる時刻誤差閾値Tthr以上となる頻度が高いときは、上記の、HUB局2のHUB局タイマ27の周波数と各端局3の端局タイマ37の周波数との同期処理、および、HUB局2のHUB局タイマ27の時刻と端局3の端局タイマ37の時刻との調整処理があらためて行われ、そのうえで、各端局3からHUB局2へのフレームの送信タイミングの調整処理や、各端局3からHUB局2へのフレームの送信タイミングの保持処理があらためて行われるようにしてもよい。
最大誤差閾値Tmaxは、特定の値に限定されるものではなく、例えばフレーム同士(別言すると、バースト同士)の衝突が発生してしまう臨界に相当する時刻誤差Δtdの大きさが考慮されるなどしたうえで適当な値に適宜設定される。
また、上記の特にHUB局2のHUB局タイマ27の時刻と各端局3の端局タイマ37の時刻との調整処理が行われる前に端局3がHUB局2へとフレーム(言い換えると、上りバースト信号)を送信すると、他の端局のフレーム(上りバースト信号)と衝突する可能性がある。そこで、図7に示すように、1つのスロット周期内に、通信用スロットに加えて予備スロットが設けられるようにしてもよい。
図7に示す例では、1つのスロット周期内に、通信用スロットとしてスロット0001からスロット1000までが設けられ、さらに、予備スロットとしてスロット1001からスロット1005までが設けられる。予備スロットの個数は、図7に示す例における5個に限定されるものではなく、伝送効率を極端に悪化させないことが考慮されるなどしたうえで適当な個数に適宜設定される。
予備スロットは、例えば、上記のHUB局2のHUB局タイマ27の周波数と各端局3の端局タイマ37の周波数との同期処理が行われる前に、端局3がFECフレームをHUB局2へと送信する際に使用される。例えば、HUB局2から端局3Aに対してスロット1002を使用する(言い換えると、スロット1002のタイミングでフレームを送信する)内容の指示が送られ、端局3Aはスロット1002のタイミングでFECフレームをHUB局2へと送信する。
すなわち、この場合の無線通信システム1は、HUB局2から各端局3A,3B,3Cへの送信(即ち、下り回線)において時分割多重化(TDM)方式に従うとともに各端局3A,3B,3CからHUB局2への送信(即ち、上り回線)において時分割多元接続方式(TDMA)に従う無線フレームフォーマットに準拠したフレームを用いて通信衛星4を介して双方向の無線通信を行うHUB局2と端局3とを有し、端局3からHUB局2へとフレームを送信するタイミングを調整する処理が行われる無線通信システムであり、時分割多元接続(TDMA)に準拠するタイムスロットについての1つのスロット周期内に、通信用スロットに加えて予備スロットが設けられ、フレームを送信するタイミングを調整する処理(例えば、周波数同期部314による処理)が行われる前に端局3が予備スロットを使用してフレームをHUB局2へと送信する、ようにしている。
このとき、隣り合うスロットを使用するとフレーム同士(別言すると、バースト同士)の衝突が発生するおそれがあるので、通信用スロットと隣り合っていない予備スロットを使用することが好ましい。図7に示す例では、予備スロットのうち、通信用スロットのスロット1000と隣り合うスロット1001ではなく、通信用スロットのスロット1000と隣り合っていないスロット1002を使用することが好ましい。また、フレームを送信するタイミングを調整する処理が行われる前の端局3が2つあって予備スロットのうちの2つを同時に使用する場合には、予備スロットのうち、通信用スロットのスロット1000と隣り合っていないスロット1002と、前記スロット1002と隣り合っていないスロット1004と、を使用することが好ましい。これにより、HUB局2でのフレーム同士(別言すると、バースト同士)の衝突を一層確実に防止することが可能となる。
予備スロットの設定・使用は、HUB局2や端局3が上記のようなタイマの周波数の同期処理、タイマの時刻の調整処理、フレームの送信タイミングの調整処理、およびフレームの送信タイミングの保持処理を行う場合には限られない。すなわち、端局3からHUB局2へとフレームを送信するタイミングを調整する(何らかの)処理が行われる無線通信システムにおいて、前記フレームを送信するタイミングを調整する処理が行われる前に端局3からHUB局2へのフレームの送信が行われる場合に予備スロットの設定・使用は有用である。
実施の形態に係る無線通信システム1によれば、HUB局2のHUB局タイマ27の周波数と各端局3の端局タイマ37の周波数とが同期されるようにしているので、各端局3からHUB局2へのフレームの送信タイミングの調整における前提であるHUB局2と端局3との周波数同期を実現することが可能となる。
実施の形態に係る無線通信システム1によれば、HUB局タイマ27の時刻と端局タイマ37の時刻とが調整されるようにしているので、各端局3からHUB局2へのフレームの送信タイミングの調整における前提であるHUB局2と端局3との時刻調整を実現することが可能となる。
実施の形態に係る無線通信システム1によれば、各端局3から送信されるフレームのHUB局2での受信タイミングに基づく各端局3とHUB局2との間それぞれの伝搬遅延に基づいて各端局3からHUB局2へのフレームの送信タイミングが調整されるようにしているので、端局3それぞれの伝搬遅延による時刻誤差(言い換えると、端局3それぞれの伝搬遅延のばらつき)を吸収/補償することができ、各端局3に対して割り当てられているタイムスロットのタイミングに合わせてフレームを送信することが可能となり、延いては上り回線のフレーム間のスペース(即ち、各タイムスロットの間に挿入される無通信時間)を小さくして回線の利用効率・伝送効率を向上させることが可能となる。
実施の形態に係る無線通信システム1によれば、各端局3からHUB局2へのフレームの送信タイミングが一旦調整された後は、フレームを受信する予定時刻と実際の受信時刻との差である時刻誤差Δtdが時刻誤差閾値Tthr以上であるときのみ各端局3からHUB局2へのフレームの送信タイミングの保持処理が行われるようにしているので、HUB局2と各端局3との間におけるフレームの送信タイミングの保持処理に纏わるデータ伝送量の増加を抑制して回線の利用効率・伝送効率の低下を回避することが可能となる。
実施の形態に係る無線通信システム1によれば、1つのスロット周期内に通信用スロットに加えて予備スロットが設けられるようにしているので、端局3からHUB局2へとフレームを送信するタイミングを調整する処理が行われる前におけるHUB局2でのフレーム同士(別言すると、バースト同士)の衝突を防止することが可能となり、このため、フレーム間のスペース(即ち、各タイムスロットの間に挿入される無通信時間)を小さくすることが可能となり、延いては回線の利用効率・伝送効率を向上させることが可能となる。
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。
例えば、上記の実施の形態では、端局3の周波数同期部314によるHUB局2のHUB局タイマ27の周波数と各端局3の端局タイマ37の周波数との同期処理、端局3の時刻調整部315によるHUB局2のHUB局タイマ27の時刻と各端局3の端局タイマ37の時刻との調整処理、HUB局2の時刻誤差算出部214および端局3の時刻誤差調整部316による各端局3からHUB局2へのフレームの送信タイミングの調整処理、ならびに、HUB局2の時刻誤差算出部214と時刻誤差比較部215および端局3の再調整部317による各端局3からHUB局2へのフレームの送信タイミングの保持処理が行われるようにしているが、前記4つの処理は、それぞれ、必要に応じて単独で用いられたり他の処理と組み合わされて用いられたりするようにしてもよい。すなわち、例えば、必要に応じて上記の周波数の同期処理のみが行われたり、上記の周波数の同期処理が行われたうえで他の時刻の調整処理などが行われたりするようにしてもよい。