本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰り返さない。
[適用例]
図1は、本実施の形態に係るデータ処理装置の適用例を示す模式図である。
図1に示すように、ユーザ1は、スキャナシステム10を用いることで、対象者2が有する歯牙を含む口腔内の三次元形状のデータ(三次元データ)を取得することができる。なお、「ユーザ」は、歯科医師などの術者、歯科助手、歯科大学の先生または生徒、歯科技工士、メーカの技術者、製造工場の作業者など、スキャナシステム10を用いる者であればいずれであってもよい。「対象者」は、歯科医院の患者、歯科大学における被験者など、スキャナシステム10の対象となる者であればいずれであってもよい。また、「対象者」は、生身の人間に限らず、人体模型であってもよいし、頭部模型であってもよい。
本実施の形態に係るスキャナシステム10は、三次元スキャナ200と、データ処理装置100と、ディスプレイ300とを備える。三次元スキャナ200は、内蔵された三次元カメラによってスキャン対象の三次元データを取得する。具体的には、三次元スキャナ200は、対象者2の口腔内をスキャンすることで、スキャン対象の部位を構成する複数の点のそれぞれの位置情報(たとえば、歯牙の横方向、奥行き方向、高さ方向の座標)や色情報(たとえば、歯牙の表面の色)を、光学センサなどを用いて取得する。データ処理装置100は、三次元スキャナ200によって取得された三次元データに基づき三次元画像を生成し、生成した三次元画像をディスプレイ300に表示する。
具体的には、ユーザ1は、対象者2の欠損歯牙の欠損箇所に適合した補綴物を作製するための補綴物データをコンピュータ上でデジタル設計するために、三次元スキャナ200によって対象者2の口腔内を撮像する。ユーザ1が口腔内を撮像するごとに三次元データが順次取得され、少なくとも欠損歯牙を含む口腔内の三次元画像がディスプレイ300に表示される。ユーザ1は、ディスプレイ300に表示された三次元画像を確認しながら三次元データの不足部分を重点的にスキャンしていく。このようにして記録された三次元データは、補綴物の作製に用いられる。
「欠損歯牙」には、たとえば、支台歯、窩洞、およびインプラント体など、う蝕または治療時の切削によってその形状が欠損している歯牙が含まれる。「補綴物」には、たとえば、クラウン、ブリッジ、インプラント、インレーなど、補綴歯科で採用される公知の種々の詰め物や被せ物が含まれる。
たとえば、クラウンによって欠損歯牙の欠損箇所を補綴する場合、術者は、先ずタービンなどの切削器具によって歯のう蝕部分を削り取って支台歯を形成し、その上にクラウンを装着する。このとき、マージンと呼ばれる支台歯の外縁と、クラウンの外縁とを密着させなければ、二次う蝕の原因になる。インレーによって欠損箇所を補綴する場合も同様に、歯のう蝕部分を削り取った後の窩洞に対して、インレーを密着させなければ、二次う蝕の原因になる。
また、補綴物の作製においては、欠損箇所(欠損歯牙)の周辺の歯牙(以下、「周辺歯牙」とも称する)、つまり、欠損歯牙に隣合う歯牙(以下、「隣接歯牙」とも称する)と補綴物との間の距離、および欠損箇所(欠損歯牙)に対向する歯牙(以下、「対向歯牙」とも称する)と補綴物との間の距離が適切であることも重要である。なお、「隣合う」とは、欠損歯牙に接しながら当該欠損歯牙の隣に位置すること、または欠損歯牙に接することなく当該欠損歯牙の隣に位置することを含む。
さらに、詳しくは後述するが、歯牙には、中切歯、側切歯、犬歯、第1小臼歯、第2小臼歯、第1大臼歯、第2大臼歯、および第3大臼歯といったように、様々な種類がある。また、歯牙の種類に応じてその形状が特徴的であり、これらの形状は歯の噛み合わせなどに影響する。よって、欠損歯牙と同じ種類の補綴物、すなわち出来る限り欠損歯牙と同じ形状(特徴)を有する補綴物を作製することが重要である。
このように、補綴物の作製においては、重要な点が多数存在するが、ユーザ1である術者や歯科技工士の技術レベルは様々であるため、欠損箇所に適切な補綴物データを生成することは必ずしも容易ではない。
そこで、本実施の形態に係るスキャナシステム10は、データ処理装置100が有するAI(人工知能:Artificial Intelligence)を利用して、三次元スキャナ200によって取得された三次元データに基づき、欠損箇所に適切な補綴物データを生成するように構成されている。
具体的には、ユーザ1が三次元スキャナ200を用いて対象者2の口腔内をスキャンすると、少なくとも欠損歯牙を含む三次元データがデータ処理装置100に入力される。データ処理装置100は、入力された三次元データおよび生成モデルに基づき、欠損箇所に適合する補綴物データを自動的に生成する。補綴物データは、補綴物そのものを作製するための三次元データとして、補綴物を構成する複数の点のそれぞれの位置情報(縦方向、横方向、高さ方向の各軸の座標)を含む。補綴物データの出力形式は、PCDファイル、STLファイル、またはPLYファイルなどが適用される。
このようにしてデータ処理装置100によって生成された補綴物データは、歯科技工所に出力される。歯科技工所においては、データ処理装置100から取得した補綴物データに基づき、歯科技工士が補綴物を作製する。
また、補綴物を自動で製造可能な自動製造装置600が歯科医院内に配置されている場合、データ処理装置100によって生成された補綴物データは、自動製造装置600に出力されてもよい。このようにすれば、ユーザ1は、自動製造装置600によっても補綴物データに基づき補綴物を作製することができる。自動製造装置600の一例としては、ミリングマシンおよび3Dプリンタなどが挙げられる。
このように、本実施の形態に係るスキャナシステム10によれば、データ処理装置100が有するAIを利用して、三次元スキャナ200によって取得された三次元データに基づき補綴物データが自動的に生成される。スキャナシステム10は、AIを利用することで、ユーザ1では抽出できない歯牙の特徴を見出すこともでき、これにより、ユーザ1は、より簡単に適切な補綴物を得ることができる。
[スキャン対象となる歯牙の一例]
図2は、本実施の形態に係る三次元スキャナ200のスキャン対象となる歯牙の一例を示す模式図である。なお、図2においては、三次元スキャナ200のスキャン対象となる歯牙が線図によって表されている。
図2に示すように、三次元スキャナ200のスキャン対象となる歯牙が上顎の切歯である場合、得られる三次元画像が、上唇側の部位、口蓋側の部位、および切縁側の部位の画像を少なくとも含むように、ユーザ1によって対象者2の口腔内がスキャンされる。また、三次元スキャナ200のスキャン対象となる歯牙が上顎の犬歯および臼歯である場合、得られる三次元画像が、頬側の部位、口蓋側の部位、および咬合する部位の画像を少なくとも含むように、ユーザ1によって対象者2の口腔内がスキャンされる。三次元スキャナ200のスキャン対象となる歯牙が下顎の切歯である場合、得られる三次元画像が、下唇側の部位、舌側の部位、および切縁側の部位の画像を少なくとも含むように、ユーザ1によって対象者2の口腔内がスキャンされる。三次元スキャナ200のスキャン対象となる歯牙が下顎の犬歯および臼歯である場合、得られる三次元画像が、頬側の部位、舌側の部位、および咬合する部位の画像を少なくとも含むように、ユーザ1によって対象者2の口腔内がスキャンされる。
一般的に、対象者2の歯牙は、その種類によって形状および大きさが異なる。たとえば、上顎の切歯の場合、上唇側の面は一般的にU字形であるのに対して、上顎の犬歯の場合、頬側の面は一般的に五角形である。各歯牙は、形状および大きさがその種類に応じて特徴的である。よって、各歯牙の特徴(種類)を見極めながら補綴物データをデジタル設計することは、術者や歯科技工士の知見に大きく依存することになる。
[スキャン対象となる歯牙の種類]
図3は、本実施の形態に係る三次元スキャナ200のスキャン対象となる歯牙の種類を説明するための模式図である。
図3に示すように、各歯牙には、その種類および位置に応じて、中切歯、側切歯、犬歯、第1小臼歯、第2小臼歯、第1大臼歯、第2大臼歯、および第3大臼歯といったように名称が付されている。また、口腔内において、上顎右側、上顎左側、下顎右側、および下顎左側のそれぞれに、上述した各歯牙が一般的には存在する。
さらに、各歯牙には、その種類および位置に応じて、所定の番号が割り当てられている。たとえば、中切歯には1番が割り当てられ、側切歯には2番が割り当てられ、犬歯には3番が割り当てられ、第1小臼歯には4番が割り当てられ、第2小臼歯は5番が割り当てられ、第1大臼歯には6番が割り当てられ、第2大臼歯には7番が割り当てられ、第3大臼歯には8番が割り当てられている。
[データ処理装置の学習段階における機能構成]
図4は、本実施の形態に係るデータ処理装置100の学習段階における機能構成を示す模式図である。なお、データ処理装置100は、歯牙の補綴物を作製するための補綴物データを生成する機能を有していてもよく、「データ生成装置」とも称される。
図4に示すように、データ処理装置100は、入力部1102と、データ生成部1104と、識別部1106とを有する。これらの各機能は、後述するデータ処理装置100の演算装置130が、OS127、識別用プログラム120、学習用プログラム121、およびデータ処理用プログラム125などを実行することで実現される。なお、データ処理用プログラム125は、補綴物データを生成する処理を含んでいてもよく、「データ生成用プログラム」とも称される。
入力部1102には、歯牙の三次元データが入力される。入力部1102に入力される三次元データは、任意の歯牙、当該任意の歯牙と隣合う隣接歯牙、当該任意の歯牙と対向する対向歯牙、対向歯牙と隣合う歯牙、および当該任意の歯牙の反対側(はんたいそく)の歯牙の少なくともいずれか1つの三次元データを含む。
たとえば、図3を参照して、任意の歯牙が上顎左側の犬歯(3番)である場合、各歯牙を以下のように例示することができる。たとえば、上顎左側の犬歯(3番)と隣合う隣接歯牙としては、上顎左側の側切歯(2番)、中切歯(1番)、第1小臼歯(4番)、または第2小臼歯(5番)などが挙げられる。上顎左側の犬歯(3番)と対向する対向歯牙としては、下顎左側の犬歯(3番)などが挙げられる。上顎左側の犬歯(3番)と対向する対向歯牙と隣合う歯牙としては、下顎左側の側切歯(2番)または第1小臼歯(4番)などが挙げられる。また、任意の歯牙の反対側の歯牙とは、任意の歯牙が属する歯列における左右の反対側の歯牙のことである。たとえば、上顎左側の犬歯(3番)の反対側の歯牙としては、上顎右側の犬歯(3番)などが挙げられる。
なお、入力部1102には、三次元スキャナ200によって取得された実際の歯牙の三次元データに限らず、学習用に予め用意された三次元データのモデルが入力されてもよい。さらに、入力部1102には、ユーザによって入力された、任意の歯牙、隣接歯牙、対向歯牙、対向歯牙と隣合う歯牙、および反対側の歯牙などの三次元データに含まれる各歯牙の種類(名称または番号)を特定するためのデータ(たとえば、歯牙の名称または番号)が入力される。
図4に示すように、学習段階の一例として、入力部1102には、任意の歯牙が省略された歯列における各歯牙の三次元データ、および当該歯列における各歯牙の種類(名称や番号)を特定するためのデータが入力されてもよい。
データ生成部1104は、歯牙の三次元データを生成する生成部1144を含む。たとえば、生成部1144は、入力部1102から入力された三次元データおよび生成モデル1144aに基づき、任意の歯牙に適合する三次元データ(以下、補綴物データともいう)を生成する。このような生成部1144による補綴物データを生成する処理を「データ生成処理」とも称する。また、三次元データに含まれる各歯牙の種類(名称または番号)が入力部1102に入力された場合、生成部1144は、ユーザによって入力された、三次元データに含まれる各歯牙の種類(名称または番号)にさらに基づいて、補綴物データを生成する。
ここで、図5を参照しながら、データ生成部1104について具体的に説明する。図5は、本実施の形態に係るデータ生成部1104の機能構成を示す模式図である。図5に示すように、データ生成部1104は、取得部1141と、抽出部1142と、蓄積部1143と、生成部1144とを有する。
取得部1141は、入力部1102から入力された三次元データを取得する。抽出部1142は、抽出モデル1142aに基づいて、取得部1141によって取得された三次元データから、歯牙の特徴に関する潜在変数を抽出する。
具体的には、抽出モデル1142aは、複数のデータから潜在変数を抽出するために機械学習が行われたアルゴリズム(「第1アルゴリズム」に対応する)を含む。たとえば、抽出モデル1142aは、図示しないニューラルネットワークと、当該ニューラルネットワークによって用いられるパラメータとを含む。抽出モデル1142aのニューラルネットワークにおいては、中間層が多層構造になることで、ディープラーニングによる処理が行われる。なお、抽出モデル1142aのニューラルネットワークの仕組みには既存のものが適用されてもよい。
抽出部1142は、エンコーダと称される機能を有し、抽出モデル1142aに基づき、取得部1141によって取得された歯牙の三次元データを解析することで、当該歯牙の特徴を多面的に捉え、その結果に基づいて、歯牙の三次元データから当該歯牙の種類を特徴付ける潜在的な変数を潜在変数として抽出する。たとえば、抽出部1142は、歯牙の形状(全体の大きさ、全体の形状、エッジの形状など)、歯牙の位置、歯牙の色、周辺歯牙との関係(位置関係、接触具合など)といった歯牙を特徴付ける各要素について、その特徴となるものを潜在変数として抽出する。なお、抽出部1142は、1回の三次元データの取得ごとに1つの潜在変数を抽出するものに限らず、1回の三次元データの取得ごとに複数の潜在変数を抽出するものであってもよい。
蓄積部1143は、抽出部1142によって抽出された潜在変数を特定するためのデータ(以下、「潜在変数データ」とも称する)を蓄積する。なお、蓄積部1143における潜在変数データの蓄積については、図9および図10を参照しながら後述する。
生成部1144の生成モデル1144aは、複数の潜在変数に基づきデータを生成するために機械学習が行われたアルゴリズム(「第2アルゴリズム」に対応する)を含む。たとえば、生成モデル1144aは、図示しないニューラルネットワークと、当該ニューラルネットワークによって用いられるパラメータとを含む。生成モデル1144aのニューラルネットワークにおいては、中間層が多層構造になることで、ディープラーニングによる処理が行われる。なお、生成モデル1144aのニューラルネットワークの仕組みには既存のものが適用されてもよい。
生成部1144は、デコーダと称される機能を有し、任意の歯牙が省略された歯列における各歯牙の三次元データが取得部1141によって取得されると、生成モデル1144aに基づき、任意の歯牙の周辺に位置する歯牙である周辺歯牙(たとえば、任意の歯牙と隣合う隣接歯牙、任意の歯牙と対向する対向歯牙、対向歯牙と隣合う歯牙、任意の歯牙の反対側の歯牙)の特徴に関する潜在変数と、蓄積部1143によって既に蓄積されている潜在変数データによって特定される潜在変数とを用いて、任意の歯牙に適合する三次元データ(補綴物データ)を生成する。たとえば、生成部1144は、任意の歯牙の種類(名称または番号)と同じ種類(名称または番号)の歯牙の三次元データ(補綴物データ)を生成する。
上述したデータ生成部1104には、3次元画像に特化した処理を行うプログラムとして、たとえば、AAE、“Learning Representations and Generative Models”、ShapeVAE、“Shape Generation using Spatially Partitioned Point Clouds”、FoldingNet、P2P-Net、PCN(Point Completion Network)、PPF-FoldingNet、PC-GAN、およびDeepSDFなどが用いられるが、その他のプログラムが用いられてもよい。
図4に戻り、生成部1144によって生成された補綴物データは、識別部1106に出力される。識別部1106は、生成部1144によって生成された補綴物データと、ユーザによって入力された正解データとに基づき、当該補綴物データが適切か否かを識別する。補綴物データが適切か否かの識別としては、補綴物データに基づき作製される補綴物の形状が正解データとして入力された見本となる歯牙の形状と一致しているか否かを識別すること、補綴物データに基づき作製される補綴物の形状と正解データとして入力された見本となる歯牙の形状との類似度が基準値以上であるか否かを識別すること、補綴物データに基づき作製される補綴物の歯牙の種類(名称または番号)が正解データとして入力された任意の歯牙の種類(名称または番号)と一致しているか否かを識別すること、などが挙げられる。このような識別部1106による補綴物データが適切か否かを識別する処理を「識別処理」とも称する。
本実施の形態においては、識別部1106は、生成部1144によって生成された補綴物データに基づき作製される補綴物の形状と正解データとして入力された見本となる歯牙の形状とが一致するか否かを識別する。
たとえば、任意の歯牙として、下顎右側における6番の第1大臼歯が省略された場合、ユーザ1は、正解データとして当該6番の第1大臼歯に対応する三次元データをデータ処理装置100に予め入力する。データ処理装置100においては、6番の第1大臼歯が省略されている口腔内の三次元データが入力されると、生成部1144は、入力された三次元データと生成モデル1144aとに基づき、出来る限り6番の第1大臼歯の特徴を有する補綴物を作製するための補綴物データを生成しようとする。識別部1106は、生成部1144によって生成された補綴物データと、ユーザによって予め入力された6番の第1大臼歯に対応する三次元データとを比較し、両者が一致するか否かを識別する。
識別部1106によって得られた識別結果は、生成部1144にフィードバックされる。生成モデル1144aは、識別部1106からフィードバックされた識別結果に基づき、機械学習される。このような生成モデル1144aを機械学習させる処理を「学習処理」とも称する。
たとえば、学習処理において、生成モデル1144aは、識別結果に基づき、生成部1144によって生成された補綴物データが、正解データと一致すると判定すればパラメータを更新しない一方で、一致しないと判定すれば両者が一致するようにパラメータを更新することで、パラメータの最適化を図る。なお、生成モデル1144aは、生成部1144によって生成された補綴物データと正解データとが完全に一致する場合に限らず、生成部1144によって生成された補綴物データと正解データとの一致度が所定の基準値を超える場合に両者が一致すると判断してもよい。このように、学習処理において、生成モデル1144aは、パラメータが最適化されることで機械学習される。なお、生成モデル1144aにおいて、パラメータが更新されるものに限らず、ニューラルネットワーク(たとえば、ニューラルネットワークのアルゴリズム)が更新されるものであってもよい。
このように構成されたデータ処理装置100においては、三次元スキャナ200によって取得された三次元データ、あるいは学習用に予め用意された三次元データが入力される。学習前において、生成部1144は、省略された任意の歯牙に適合する適切な補綴物データを生成することはできないが、先ずは、自身の予測に従って、三次元データおよび生成モデル1144aに基づき補綴物データを生成してみる。識別部1106は、生成部1144によって生成された補綴物データが、正解データと一致するか否かを識別し、その識別結果を生成部1144にフィードバックする。生成部1144は、フィードバックされた識別結果に基づき、生成モデル1144aを機械学習することで、学習前よりも一層、正解データに近づくように、適切な補綴物データを生成するようになる。また、このような機械学習を繰り返すことによって、生成部1144による補綴物データの生成の精度が向上する。
さらに、任意の歯牙、隣接歯牙、対向歯牙、対向歯牙と隣合う歯牙、および反対側の歯牙などの三次元データに含まれる各歯牙の種類(名称または番号)が入力部1102に入力される場合、生成部1144は、三次元データに含まれる各歯牙の種類(名称または番号)に基づいて補綴物データを生成することになる。この場合、生成部1144は、ユーザによって入力された各歯牙の種類(名称または番号)も考慮して機械学習を行うこととなり、より精度の高い補綴物データを生成することができるようになる。
[データ処理装置の実用段階における機能構成]
図6は、本実施の形態に係るデータ処理装置100の実用段階における機能構成を示す模式図である。
図4および図5で説明した学習処理によって、生成部1144における生成モデル1144aが機械学習される度に、生成モデル1144aは、より適切な補綴物を作製するための補綴物データを生成できるようになる。生成部1144が基準を満たす適切な補綴物を作製するための補綴物データを生成できるようになると、ユーザは、データ処理装置100を実用段階で使用することになる。つまり、学習済みのデータ処理装置100を搭載したスキャナシステム10が市場に投入されることで、ユーザ1である術者によって実際の患者の補綴物を作製するための補綴物データが取得される。
図6に示すように、実用段階においては、生成モデル1144aの機械学習を必要としないため、データ処理装置100は、学習処理に係る識別部1106を備えなくてもよい。術者が三次元スキャナ200を用いて実際の患者の口腔内の三次元データを取得すると、取得された三次元データが入力部1102から入力される。生成部1144は、入力部1102から入力された三次元データおよび学習済みの生成モデル1144aに基づき、補綴物データを生成する。生成部1144によって生成された補綴物データは、歯科技工所または自動製造装置600に送信される。そして、補綴物データに基づき患者の口腔内における欠損箇所に適した補綴物が作製される。なお、補綴物データの生成後に、ユーザが生成された補綴物データを微調整して最終的に補綴物を完成させた場合、完成させた補綴物データを正解データとして生成モデル1144aを機械学習させてもよい。
なお、データ処理装置100は、実用段階においても識別部1106を備えていてもよく、さらに、実用段階においても学習処理を実行するものであってもよい。このようにすれば、データ処理装置100を搭載したスキャナシステム10が製品として市場に投入された後であっても、実際の患者の口腔内の三次元データに基づき、生成モデル1144aを機械学習させることができる。これにより、実用段階において、生成部1144による補綴物データの生成精度を向上させることができる。
[システムの全体構成]
図7は、本実施の形態に係るシステムの全体構成を示す模式図である。
図7に示すように、スキャナシステム10は、複数のローカルA~Cのそれぞれに配置されている。たとえば、ローカルAおよびローカルBは歯科医院であり、当該歯科医院の院内において、ユーザ1である術者は、スキャナシステム10を利用して対象者2である患者の歯牙を含む三次元データを取得するとともに、補綴物データを生成する。また、ローカルCは歯科大学であり、当該歯科大学において、ユーザ1である先生や生徒は、対象者2である被験者の口腔内の三次元データを取得するとともに、補綴物データを生成する。ローカルA~Cのそれぞれで取得された口腔内の三次元データおよび補綴物データは、ネットワーク5を介して、ローカルDである歯科技工所に送信される。
なお、ローカルA~Cのそれぞれで取得された口腔内の三次元データおよび補綴物データは、ネットワーク5を介して、管理センターに配置されたサーバ装置500に出力されてもよい。管理センターにおいては、サーバ装置500が、ローカルA~Cのそれぞれから取得した三次元データおよび補綴物データを蓄積して記憶し、ビッグデータとして保持する。
なお、サーバ装置500は、歯科医院などのローカルとは異なる管理センターに配置されるものに限らず、ローカル内に配置されてもよい。たとえば、ローカルA~Cのうちのいずれかのローカル内にサーバ装置500が配置されてもよい。また、1つのローカル内に複数のデータ処理装置100が配置されてもよく、さらに、当該1つのローカル内に当該複数のデータ処理装置100と通信可能なサーバ装置500が配置されてもよい。また、サーバ装置500は、クラウドサービスの形態で実現されてもよい。
歯科技工所においては、ローカルA~Cのように、様々な所から口腔内の三次元データおよび補綴物データが集約される。このため、歯科技工所で保持されている口腔内の三次元データおよび補綴物データは、ネットワーク5を介して管理センターに送信されてもよいし、あるいは、CD(Compact Disc)およびUSB(Universal Serial Bus)メモリなどのリムーバブルディスク550を介して管理センターに送られてもよい。
なお、ネットワーク5を介さずに、ローカルA~Cのそれぞれからも、リムーバブルディスク550を介して口腔内の三次元データおよび補綴物データが管理センターに送られてもよい。また、ローカルA~Cのそれぞれの間においても、ネットワーク5またはリムーバブルディスク550を介して口腔内の三次元データおよび補綴物データを互いに送り合ってもよい。
各ローカルA~Cのデータ処理装置100が保持する生成モデル1144aは、各ローカルA~Cのデータ処理装置100間で共通化されてもよい。
また、サーバ装置500がデータ処理装置100の機能を有していてもよい。たとえば、各ローカルA~Cは、取得した口腔内の三次元データをサーバ装置500に送信し、サーバ装置500は、各ローカルA~Cから受信したそれぞれの三次元データと、自身が保持する生成モデルとに基づき、それぞれにおける補綴物データを生成してもよい。そして、サーバ装置500は、各ローカルA~Cまたは歯科技工所に補綴物データを送信してもよい。このように、各ローカルA~Cのデータ処理装置100は、サーバ装置500が保持する生成モデルをクラウドサービスの形態で共有してもよい。このようにすれば、各ローカルA~Cは、三次元データをサーバ装置500に送信するだけで、サーバ装置500に補綴物データを生成させることができる。
[データ処理装置のハードウェア構成]
図8は、本実施の形態に係るデータ処理装置100のハードウェア構成を示す模式図である。データ処理装置100は、たとえば、汎用コンピュータで実現されてもよいし、スキャナシステム10専用のコンピュータで実現されてもよい。
図8に示すように、データ処理装置100は、主なハードウェア要素として、スキャナインターフェース102と、ディスプレイインターフェース103と、周辺機器インターフェース105と、ネットワークコントローラ106と、メディア読取装置107と、PCディスプレイ108と、メモリ109と、ストレージ110と、演算装置130とを備える。
スキャナインターフェース102は、三次元スキャナ200を接続するためのインターフェースであり、データ処理装置100と三次元スキャナ200との間のデータの入出力を実現する。
ディスプレイインターフェース103は、ディスプレイ300を接続するためのインターフェースであり、データ処理装置100とディスプレイ300との間のデータの入出力を実現する。ディスプレイ300は、たとえば、LCD(Liquid Crystal Display)または有機ELD(Electroluminescence Display)などで構成される。
周辺機器インターフェース105は、キーボード601およびマウス602などの周辺機器を接続するためのインターフェースであり、データ処理装置100と周辺機器との間のデータの入出力を実現する。
ネットワークコントローラ106は、ネットワーク5を介して、歯科技工所に配置された装置、管理センターに配置されたサーバ装置500、自動製造装置600、および他のローカルに配置された他のデータ処理装置100のそれぞれとの間でデータを送受信する。ネットワークコントローラ106は、たとえば、イーサネット(登録商標)、無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)などの任意の通信方式に対応する。
メディア読取装置107は、三次元データおよび補綴物データなどの各種データを、リムーバブルディスク550に書き出したり、リムーバブルディスク550から読み出したりする。
PCディスプレイ108は、データ処理装置100専用のディスプレイである。PCディスプレイ108は、たとえば、LCDまたは有機ELディスプレイなどで構成される。なお、本実施の形態においては、PCディスプレイ108は、ディスプレイ300と別体であるが、ディスプレイ300と共通化されてもよい。
メモリ109は、演算装置130が任意のプログラムを実行するにあたって、プログラムコードやワークメモリなどを一時的に格納する記憶領域を提供する。メモリ109は、たとえば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)またはSRAM(Static Random Access Memory)などの揮発性メモリデバイスで構成される。
ストレージ110は、識別処理、学習処理、およびデータ生成処理などに必要な各種のデータを格納する記憶領域を提供する。ストレージ110は、たとえば、ハードディスクまたはSSD(Solid State Drive)などの不揮発性メモリデバイスで構成される。
ストレージ110は、スキャン情報112と、抽出モデル1142aと、生成モデル1144aと、潜在変数データ1143aと、識別用プログラム120と、学習用プログラム121と、データ処理用プログラム(データ生成用プログラム)125と、OS(Operating System)127とを格納する。
スキャン情報112は、三次元スキャナ200によって取得された口腔内の三次元データ122と、当該三次元データ122に基づきデータ生成処理により生成された補綴物データ123と、当該補綴物データ123に対する識別処理による識別結果124とを含む。補綴物データ123および識別結果124は、三次元データ122に関連付けられてストレージ110に格納される。
識別用プログラム120は、識別処理を実行するためのプログラムである。学習用プログラム121は、生成モデル1144aの学習処理を実行するためのプログラムである。データ処理用プログラム125は、データ生成処理を実行するためのプログラムであり、データ生成用プログラムとも称される。
潜在変数データ1143aは、学習段階において抽出された潜在変数を特定するためのデータであり、ストレージ110内において1または複数の潜在変数データが蓄積されている。なお、学習段階に限らず、実用段階においても、潜在変数が抽出される度に当該潜在変数を特定するための潜在変数データがストレージ110に蓄積されてもよい。このようにすれば、学習段階に限らず、実用段階においても、補綴物データを生成する際に参照される潜在変数データを増やすことができ、補綴物データの生成精度を向上させることができる。
演算装置130は、各種のプログラムを実行することで、識別処理、学習処理、およびデータ生成処理などの各種の処理を実行する演算主体であり、コンピュータの一例である。演算装置130は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)132、FPGA(Field-Programmable Gate Array)134、およびGPU(Graphics Processing Unit)136などで構成される。
[潜在変数データの蓄積]
図9および図10を参照しながら、学習段階における潜在変数データの蓄積の一例について説明する。図9および図10は、潜在変数データの蓄積を説明するための模式図である。
先ず、図9を参照しながら、1つの歯牙ごとに行われる潜在変数データの蓄積について説明する。図9に示すように、学習段階においては、1つの任意の歯牙の三次元データから、抽出部1142によって当該歯牙の特徴に関する潜在変数が抽出される。抽出部1142によって抽出された潜在変数を特定するための潜在変数データは、蓄積部1143によって蓄積される。
たとえば、下顎右側の第3大臼歯(8番)の三次元データから、当該第3大臼歯(8番)の特徴に関する潜在変数が抽出されて蓄積部1143に蓄積される。下顎右側の第2大臼歯(7番)から、当該第2大臼歯(7番)の特徴に関する潜在変数が抽出されて蓄積部1143に蓄積される。下顎右側の第1大臼歯(6番)から、当該第1大臼歯(6番)の特徴に関する潜在変数が抽出されて蓄積部1143に蓄積される。下顎右側の第2小臼歯(5番)から、当該第2小臼歯(5番)の特徴に関する潜在変数が抽出されて蓄積部1143に蓄積される。下顎右側の第1小臼歯(4番)から、当該第1小臼歯(4番)の特徴に関する潜在変数が抽出されて蓄積部1143に蓄積される。
なお、下顎右側における他の歯牙、および下顎左側における各歯牙についても同様に、1つの歯牙ごとに潜在変数が抽出されて蓄積部1143に蓄積される。また、下顎の歯列弓に限らず、上顎の歯列弓についても同様に、1つの歯牙ごとに潜在変数が抽出されて蓄積部1143に蓄積される。
このようにして、上顎および下顎の歯列弓ごとに、各歯牙を任意の歯牙として、当該歯牙の特徴に関する潜在変数が蓄積される。たとえば、1つの歯牙ごとに、歯牙の形状(全体の大きさ、全体の形状、エッジの形状など)、歯牙の位置、および歯牙の色といった歯牙を特徴付ける各要素について、その特徴となるものが潜在変数として抽出されて、潜在変数データとして蓄積部1143に蓄積される。
次に、図10を参照しながら、複数の歯牙ごとに行われる潜在変数データの蓄積について説明する。図10に示すように、学習段階においては、複数の歯牙の三次元データから、抽出部1142によって複数の歯牙の特徴に関する潜在変数が抽出される。抽出部1142によって抽出された潜在変数を特定するための潜在変数データは、蓄積部1143によって蓄積される。
たとえば、下顎右側の第1大臼歯(6番)、第2大臼歯(7番)、および第3大臼歯(8番)の三次元データから、当該第1大臼歯(6番)、第2大臼歯(7番)、および第3大臼歯(8番)の特徴に関する潜在変数が抽出されて蓄積部1143に蓄積される。下顎右側の第2小臼歯(5番)、第1大臼歯(6番)、および第2大臼歯(7番)の三次元データから、当該第2小臼歯(5番)、第1大臼歯(6番)、および第2大臼歯(7番)の特徴に関する潜在変数が抽出されて蓄積部1143に蓄積される。下顎右側の第1小臼歯(4番)、第2小臼歯(5番)、および第1大臼歯(6番)の三次元データから、当該第1小臼歯(4番)、第2小臼歯(5番)、および第1大臼歯(6番)の特徴に関する潜在変数が抽出されて蓄積部1143に蓄積される。下顎右側の犬歯(3番)、第1小臼歯(4番)、および第2小臼歯(5番)の三次元データから、当該犬歯(3番)、第1小臼歯(4番)、および第2小臼歯(5番)の特徴に関する潜在変数が抽出されて蓄積部1143に蓄積される。下顎右側の側切歯(2番)、犬歯(3番)、および第1小臼歯(4番)の三次元データから、当該側切歯(2番)、犬歯(3番)、および第1小臼歯(4番)の特徴に関する潜在変数が抽出されて蓄積部1143に蓄積される。下顎右側の中切歯(1番)、側切歯(2番)、および犬歯(3番)の三次元データから、当該中切歯(1番)、側切歯(2番)、および犬歯(3番)の特徴に関する潜在変数が抽出されて蓄積部1143に蓄積される。
なお、下顎右側における他の歯牙、および下顎左側における各歯牙についても同様に、複数の歯牙ごとに潜在変数が抽出されて蓄積部1143に蓄積される。また、下顎の歯列弓に限らず、上顎の歯列弓についても同様に、複数の歯牙ごとに潜在変数が抽出されて蓄積部1143に蓄積される。
このようにして、上顎および下顎の歯列弓ごとに、複数の歯牙をまとめて任意の歯牙として、当該複数の歯牙の特徴に関する潜在変数が蓄積される。たとえば、複数の歯牙ごとに、各歯牙の形状(全体の大きさ、全体の形状、エッジの形状など)、各歯牙の位置、各歯牙の色、および周辺歯牙との関係(位置関係、接触具合など)といった歯牙を特徴付ける各要素について、その特徴となるものが潜在変数として抽出されて、潜在変数データとして蓄積部1143に蓄積される。
なお、1つの歯牙や隣合う複数の歯牙などの任意の歯牙に限らず、当該任意の歯牙と対向する対向歯牙、対向歯牙と隣合う歯牙、および当該任意の歯牙の反対側(はんたいそく)の歯牙についても同様に、潜在変数が抽出されて蓄積部1143に蓄積されてもよい。このようにすれば、データ処理装置100は、任意の歯牙の周辺に位置する歯牙の特徴に関する潜在変数を用いて、当該任意の歯牙に適合する補綴物データを生成することができる。
[潜在変数データの一例]
図11は、蓄積された潜在変数データの一例を示す模式図である。説明の便宜上、図11においては、抽出された複数の潜在変数のうちから2つの潜在変数を選択して2次元でマッピングした場合の潜在変数データの分布を表すが、歯牙を特徴付ける要素が多ければ多いほど、多数の次元で潜在変数データの分布を表すことができる。なお、図中においては、横軸で表される潜在変数を「Z(1)」、縦軸で表される潜在変数を「Z(2)」としている。
図11に示すように、複数の潜在変数のうちから特徴的な2つの潜在変数を選択し、その潜在変数データを2次元でマッピングした場合、歯牙の種類(歯牙の番号)に応じてその配置箇所が集まる傾向にある。たとえば、1番の歯牙から抽出された潜在変数データは、白色の丸で表されており、各々のデータが近距離に位置する。2番の歯牙から抽出された潜在変数データは、菱形で表されており、各々のデータが近距離に位置する。3番の歯牙から抽出された潜在変数データは、バツ印で表されており、各々のデータが近距離に位置する。4番の歯牙から抽出された潜在変数データは、黒色の丸で表されており、各々のデータが近距離に位置する。5番の歯牙から抽出された潜在変数データは、星で表されており、各々のデータが近距離に位置する。6番の歯牙から抽出された潜在変数データは、三角で表されており、各々のデータが近距離に位置する。7番の歯牙から抽出された潜在変数データは、白色の四角で表されており、各々のデータが近距離に位置する。8番の歯牙から抽出された潜在変数データは、黒色の四角で表されており、各々のデータが近距離に位置する。
上述したように、歯牙の種類に応じてその形状が特徴的であり、同じ種類の歯牙間では似たような特徴を有する。このため、歯牙ごとに抽出された潜在変数データも、同じ種類の歯牙間で似たような値を取る傾向にある。
[学習段階における補綴物データの生成]
図12は、学習段階における補綴物データの生成の一例を示す模式図である。図12に示す例では、学習段階において、5番の歯牙の三次元データが省略された歯列における各歯牙の三次元データが入力部1102から入力される。
学習段階において、抽出部1142は、抽出モデル1142aに基づいて、取得部1141によって取得された三次元データから、歯牙の特徴に関する潜在変数を抽出する。具体的には、抽出部1142は、5番の歯牙に隣合う4番および6番の歯牙の各々の特徴に関する潜在変数を抽出する。
ここで、図9~図11を参照しながら説明したように、蓄積部1143には、既に複数の潜在変数データが蓄積されており、たとえば、選択された特徴的な2つの潜在変数が2次元のデータ分布としてマッピングされている。生成部1144は、生成モデル1144aに基づいて、4番の歯牙に対応する潜在変数データと、6番の歯牙に対応する潜在変数データとを用いて、5番の歯牙に対応する潜在変数データを特定し、当該5番の歯牙に対応する潜在変数データに基づいて、省略された5番の歯牙に対応する補綴物データを生成する。
このようにして生成された補綴物データは、識別部1106によって識別処理が実行され、識別結果のフィードバックによって生成モデル1144aが機械学習される。
[実用段階における補綴物データの生成]
図13は、実用段階における補綴物データの生成の一例を示す模式図である。図13に示す例では、実用段階において、5番の歯牙が欠損した歯列における各歯牙の三次元データが入力部1102から入力される。
実用段階において、抽出部1142は、抽出モデル1142aに基づいて、取得部1141によって取得された三次元データから、歯牙の特徴に関する潜在変数を抽出する。具体的には、抽出部1142は、5番の欠損歯牙に隣合う4番および6番の歯牙の各々の特徴に関する潜在変数を抽出する。
生成部1144は、生成モデル1144aに基づいて、4番の歯牙に対応する潜在変数データと、6番の歯牙に対応する潜在変数データとを用いて、5番の歯牙に対応する潜在変数データを特定し、当該5番の歯牙に対応する潜在変数データに基づいて、5番の欠損歯牙に対応する補綴物データを生成する。
なお、上述した例では、生成部1144は、補綴対象である下顎右側の5番の欠損歯牙の「周辺歯牙」に対応する潜在変数データとして、下顎右側の4番の歯牙に対応する潜在変数データ、および下顎右側の6番の歯牙に対応する潜在変数データに基づいて、下顎右側の5番の欠損歯牙に対応する補綴物データを生成しているが、その他の周辺歯牙に対応する潜在変数データに基づいて、下顎右側の5番の欠損歯牙に対応する補綴物データを生成してもよい。たとえば、生成部1144は、下顎右側の5番の欠損歯牙に対向する対向歯牙である上顎右側の5番の歯牙に対応する潜在変数データを特定し、当該上顎右側の5番の歯牙に対応する潜在変数データに基づいて、下顎右側の5番の欠損歯牙に対応する補綴物データを生成してもよい。
このようにして、三次元スキャナ200によって取得された欠損歯牙および当該欠損歯牙の周辺歯牙を含む歯列の三次元データに基づき、欠損歯牙に対応する補綴物データが生成される。
[学習処理のフローチャート]
図14は、本実施の形態に係るデータ処理装置100が実行する学習処理を説明するためのフローチャートである。図14に示す各ステップは、データ処理装置100の演算装置130が、OS127、識別用プログラム120、学習用プログラム121、およびデータ処理用プログラム(データ生成用プログラム)125などを実行することで実現される。
図14に示すように、データ処理装置100は、学習処理の開始条件が成立したか否かを判定する(S1)。開始条件は、たとえば、データ処理装置100において学習処理を実行するための何らかのアクションが行われたときに成立するものであればよい。たとえば、学習アプリケーションの学習開始アイコンがユーザによって操作されたことを開始条件としてもよい。
データ処理装置100は、開始条件が成立していない場合(S1でNO)、本処理を終了する。一方、データ処理装置100は、開始条件が成立した場合(S1でYES)、三次元データを取得したか否かを判定する(S2)。たとえば、データ処理装置100は、補綴物データを生成するのに十分な量の三次元データを取得したか否かを判定する。データ処理装置100は、十分な量の三次元データを取得していない場合(S2でNO)、S2の処理を繰り返す。
一方、データ処理装置100は、十分な量の三次元データを取得した場合(S2でYES)、抽出モデル1142aに基づき、三次元データから任意の歯牙の周辺に位置する周辺歯牙の潜在変数を抽出する(S3)。なお、三次元データは、補綴物データの生成対象となる任意の歯牙の周辺に位置する周辺歯牙の三次元データを少なくとも含む。
データ処理装置100は、生成モデル1144aに基づき、抽出した潜在変数、および既に蓄積された潜在変数とを用いて、任意の歯牙に対応する三次元データ(補綴物データ)を生成する(S4)。
次に、データ処理装置100は、生成した任意の歯牙に対応する補綴物データと、正解データである当該任意の歯牙に対応する三次元データとを比較する(S5)。データ処理装置100は、両者が一致する場合(S6でYES)、本処理を終了する。なお、データ処理装置100は、生成した補綴物データと正解データとが完全に一致する場合に限らず、生成した補綴物データと正解データとの一致度が所定の基準値を超える場合に両者が一致すると判断してもよい。
一方、データ処理装置100は、両者が一致しない場合(S6でNO)、生成モデル1144aを調整する(S7)。たとえば、データ処理装置100は、生成モデル1144aが含むニューラルネットワークまたはパラメータを調整して生成モデル1144aの最適化を図る。その後、データ処理装置100は、S3に戻る。
[データ生成処理のフローチャート]
図15は、本実施の形態に係るデータ処理装置が実行するデータ生成処理を説明するためのフローチャートである。図15に示す各ステップは、データ処理装置100の演算装置130が、OS127、識別用プログラム120、およびデータ処理用プログラム(データ生成用プログラム)125などを実行することで実現される。
図15に示すように、データ処理装置100は、データ生成処理の開始条件が成立したか否かを判定する(S11)。開始条件は、たとえば、データ処理装置100においてデータ生成処理を実行するための何らかのアクションが行われたときに成立するものであればよい。具体的には、開始条件は、三次元スキャナ200の電源を立ち上げたときに成立してもよいし、三次元スキャナ200の電源を立ち上げた後にデータ生成処理に対応するモードに切り替えられたときに成立してもよい。あるいは、開始条件は、データ生成処理に対応するアイコン(たとえば、AIアシストアイコン)が操作されてアイコンが点滅状態になった後に開始スイッチが操作されたときに成立してもよい。
データ処理装置100は、開始条件が成立していない場合(S11でNO)、本処理を終了する。一方、データ処理装置100は、開始条件が成立した場合(S11でYES)、三次元データを取得したか否かを判定する(S12)。たとえば、データ処理装置100は、補綴物データを生成するのに十分な量の三次元データを取得したか否かを判定する。データ処理装置100は、十分な量の三次元データを取得していない場合(S12でNO)、S12の処理を繰り返す。
一方、データ処理装置100は、十分な量の三次元データを取得した場合(S12でYES)、抽出モデル1142aに基づき、三次元データから欠損歯牙の周辺に位置する周辺歯牙の潜在変数を抽出する(S13)。なお、三次元データは、補綴物データの生成対象となる欠損歯牙の周辺に位置する周辺歯牙の三次元データを少なくとも含む。
データ処理装置100は、生成モデル1144aに基づき、抽出した潜在変数、および既に蓄積された潜在変数とを用いて、欠損歯牙を補綴するための補綴物データを生成する(S14)。
次に、データ処理装置100は、生成した補綴物データを、歯科技工所、自動製造装置600、またはサーバ装置500に出力する(S15)。その後、データ処理装置100は、本処理を終了する。
[主な構成]
以上のように、本実施の形態では以下のような開示を含む。
データ処理装置100は、歯牙の三次元データを取得する取得部1141と、複数のデータから潜在変数を抽出するために機械学習が行われたアルゴリズムを含む抽出モデル1142aに基づいて、取得部1141によって取得された三次元データから、歯牙の特徴に関する潜在変数を抽出する抽出部1142と、抽出部1142によって抽出された潜在変数を蓄積する蓄積部1143とを備える。
これにより、データ処理装置100は、取得した三次元データから、歯牙の特徴に関する潜在変数を抽出して蓄積することができるため、蓄積した潜在変数を用いて欠損歯牙などの任意の歯牙の三次元データ(補綴物データ)を生成することができる。したがって、ユーザ1は、データ処理装置100を利用することによって、補綴物データを自らデジタル設計する必要が無く、より簡単に適切な補綴物を得ることができる。
取得部1141は、任意の歯牙、当該任意の歯牙と隣合う歯牙、当該任意の歯牙と対向する歯牙、当該対向する歯牙と隣合う歯牙、および当該任意の歯牙の反対側の歯牙の少なくともいずれか1つの三次元データを取得する。
これにより、データ処理装置100は、隣接歯牙、対向歯牙、および任意の歯牙の反対側の歯牙の少なくともいずれか1つの三次元データから、歯牙の特徴に関する潜在変数を抽出して蓄積することができるため、任意の歯牙の周辺に位置する周辺歯牙の特徴を考慮して当該任意の歯牙に適合する補綴物データを生成することができる。
データ処理装置100は、任意の歯牙の三次元データを生成する生成部1144を備える。抽出部1142は、任意の歯牙の周辺に位置する歯牙である周辺歯牙を少なくとも含む三次元データから、当該周辺歯牙の特徴に関する潜在変数を抽出する。生成部1144は、複数の潜在変数に基づきデータを生成するために機械学習が行われたアルゴリズムを含む生成モデル1144aに基づいて、抽出部1142によって抽出された周辺歯牙の特徴に関する潜在変数と、蓄積部1143によって蓄積されている潜在変数とを用いて、任意の歯牙の種類と同じ種類の歯牙の三次元データを生成する。
これにより、データ処理装置100は、任意の歯牙の周辺に位置する周辺歯牙の三次元データから抽出した潜在変数と、既に蓄積されている潜在変数とを用いて、任意の歯牙に適合する補綴物データを生成することができるため、任意の歯牙の周辺に位置する周辺歯牙の特徴を考慮して当該任意の歯牙に適合する補綴物データを生成することができる。
データ処理装置100は、正解データとして入力された任意の歯牙の三次元データに基づいて、生成部1144によって生成された任意の歯牙の種類と同じ種類の歯牙の三次元データが適切か否かを識別する識別部1106を備える。生成モデル1144aは、識別部1106による識別結果に基づいて、機械学習される。
これにより、データ処理装置100は、生成した三次元データ(補綴物データ)が適切か否かを識別することで、生成モデル1144aを機械学習させることができるため、補綴物データの生成精度を向上させることができる。
データ生成装置(データ処理装置100)は、欠損した歯牙である欠損歯牙の周辺に位置する歯牙である周辺歯牙を少なくとも含む三次元データを取得する取得部1141と、複数のデータから潜在変数を抽出するために機械学習が行われたアルゴリズムを含む抽出モデル1142aに基づいて、取得部1141によって取得された三次元データから、周辺歯牙の特徴に関する潜在変数を抽出する抽出部1142と、予め歯牙の特徴に関する複数の潜在変数を蓄積する蓄積部1143と、複数の潜在変数に基づきデータを生成するために機械学習が行われたアルゴリズムを含む生成モデル1144aに基づいて、抽出部1142によって抽出された周辺歯牙の特徴に関する潜在変数と、蓄積部1143によって蓄積されている潜在変数とを用いて、欠損歯牙の欠損箇所に適合する補綴物を作製するための補綴物データを生成する生成部1144とを備える。
これにより、データ生成装置(データ処理装置100)は、取得した三次元データから、周辺歯牙の特徴に関する潜在変数を抽出し、抽出した潜在変数と既に蓄積している潜在変数とを用いて、欠損歯牙の欠損箇所に適合する補綴物を作製するための補綴物データを生成することができる。したがって、ユーザ1は、補綴物データを自らデジタル設計する必要が無く、より簡単に適切な補綴物を得ることができる。
スキャナシステム10は、三次元カメラを用いて欠損した歯牙である欠損歯牙の周辺に位置する歯牙である周辺歯牙を少なくとも含む三次元データを取得する三次元スキャナ200と、三次元スキャナ200によって取得された三次元データに基づき、欠損歯牙の欠損箇所に適合する補綴物を作製するための補綴物データを生成するデータ生成装置(データ処理装置100)とを備える。データ生成装置(データ処理装置100)は、周辺歯牙を少なくとも含む三次元データを取得する取得部1141と、複数のデータから潜在変数を抽出するために機械学習が行われたアルゴリズムを含む抽出モデル1142aに基づいて、取得部1141によって取得された三次元データから、周辺歯牙の特徴に関する潜在変数を抽出する抽出部1142と、予め歯牙の特徴に関する複数の潜在変数を蓄積する蓄積部1143と、複数の潜在変数に基づきデータを生成するために機械学習が行われたアルゴリズムを含む生成モデル1144aに基づいて、抽出部1142によって抽出された周辺歯牙の特徴に関する潜在変数と、蓄積部1143によって蓄積されている潜在変数とを用いて、欠損歯牙の欠損箇所に適合する補綴物を作製するための補綴物データを生成する生成部1144とを含む。
これにより、スキャナシステム10のデータ生成装置(データ処理装置100)は、取得した三次元データから、周辺歯牙の特徴に関する潜在変数を抽出し、抽出した潜在変数と既に蓄積している潜在変数とを用いて、欠損歯牙の欠損箇所に適合する補綴物を作製するための補綴物データを生成することができる。したがって、ユーザ1は、データ生成装置(データ処理装置100)を利用することによって、補綴物データを自らデジタル設計する必要が無く、より簡単に適切な補綴物を得ることができる。
データ処理方法は、任意の歯牙の周辺に位置する歯牙である周辺歯牙を少なくとも含む三次元データを取得するステップ(S2)と、複数のデータから潜在変数を抽出するために機械学習が行われたアルゴリズムを含む抽出モデル1142aに基づいて、取得された三次元データから、周辺歯牙の特徴に関する潜在変数を抽出するステップ(S3)と、複数の潜在変数に基づきデータを生成するために機械学習が行われたアルゴリズムを含む生成モデル1144aに基づいて、抽出された周辺歯牙の特徴に関する潜在変数と、蓄積されている歯牙の特徴に関する潜在変数とを用いて、任意の歯牙の三次元データを生成するステップ(S4)と、正解データとして入力された任意の歯牙の種類と同じ種類の歯牙の三次元データに基づいて、生成された任意の歯牙の種類と同じ種類の歯牙の三次元データが適切か否かを識別するステップ(S5)とを含む。生成モデル1144aは、識別するステップによる識別結果に基づいて、機械学習される。
これにより、取得した三次元データから、周辺歯牙の特徴に関する潜在変数を抽出し、抽出した潜在変数と既に蓄積している潜在変数とを用いて、任意の歯牙に適合する補綴物データを生成することができる。したがって、ユーザ1は、補綴物データを自らデジタル設計する必要が無く、より簡単に適切な補綴物を得ることができる。さらに、取得した三次元データに基づき生成した補綴物データが適切か否かの識別結果を利用して生成モデル1144aを機械学習させることによって、より適切な補綴物データを生成することができるようになる。
データ処理用プログラムは、コンピュータ(演算装置130)に、任意の歯牙の周辺に位置する歯牙である周辺歯牙を少なくとも含む三次元データを取得するステップ(S2)と、複数のデータから潜在変数を抽出するために機械学習が行われたアルゴリズムを含む抽出モデル1142aに基づいて、取得された三次元データから、周辺歯牙の特徴に関する潜在変数を抽出するステップ(S3)と、複数の潜在変数に基づきデータを生成するために機械学習が行われたアルゴリズムを含む生成モデル1144aに基づいて、抽出された周辺歯牙の特徴に関する前記潜在変数と、蓄積されている歯牙の特徴に関する潜在変数とを用いて、任意の歯牙の種類と同じ種類の歯牙の三次元データを生成するステップ(S4)と、正解データとして入力された任意の歯牙の三次元データに基づいて、生成された任意の歯牙の種類と同じ種類の歯牙の三次元データが適切か否かを識別するステップ(S5)とを実行させる。生成モデル1144aは、識別するステップによる識別結果に基づいて、機械学習される。
これにより、取得した三次元データから、周辺歯牙の特徴に関する潜在変数を抽出し、抽出した潜在変数と既に蓄積している潜在変数とを用いて、任意の歯牙に適合する補綴物データを生成することができる。したがって、ユーザ1は、補綴物データを自らデジタル設計する必要が無く、より簡単に適切な補綴物を得ることができる。さらに、取得した三次元データに基づき生成した補綴物データが適切か否かの識別結果を利用して生成モデル1144aを機械学習させることによって、より適切な補綴物データを生成することができるようになる。
データ生成方法は、欠損した歯牙である欠損歯牙の周辺に位置する歯牙である周辺歯牙を少なくとも含む三次元データを取得するステップ(S12)と、複数のデータから潜在変数を抽出するために機械学習が行われたアルゴリズムを含む抽出モデル1142aに基づいて、取得された三次元データから、周辺歯牙の特徴に関する潜在変数を抽出するステップ(S13)と、複数の潜在変数に基づきデータを生成するために機械学習が行われたアルゴリズムを含む生成モデル1144aに基づいて、抽出された周辺歯牙の特徴に関する潜在変数と、蓄積されている歯牙の特徴に関する潜在変数とを用いて、欠損歯牙の欠損箇所に適合する補綴物を作製するための補綴物データを生成するステップ(S14)とを含む。
これにより、取得した三次元データから、周辺歯牙の特徴に関する潜在変数を抽出し、抽出した潜在変数と既に蓄積している潜在変数とを用いて、欠損歯牙の欠損箇所に適合する補綴物データを生成することができる。したがって、ユーザ1は、補綴物データを自らデジタル設計する必要が無く、より簡単に適切な補綴物を得ることができる。
データ生成用プログラムは、コンピュータ(演算装置130)に、欠損した歯牙である欠損歯牙の周辺に位置する歯牙である周辺歯牙を少なくとも含む三次元データを取得するステップ(S12)と、複数のデータから潜在変数を抽出するために機械学習が行われたアルゴリズムを含む抽出モデル1142aに基づいて、取得された三次元データから、周辺歯牙の特徴に関する潜在変数を抽出するステップ(S13)と、複数の潜在変数に基づきデータを生成するために機械学習が行われたアルゴリズムを含む生成モデル1144aに基づいて、抽出された周辺歯牙の特徴に関する潜在変数と、蓄積されている歯牙の特徴に関する潜在変数とを用いて、欠損歯牙の欠損箇所に適合する補綴物を作製するための補綴物データを生成するステップ(S14)とを実行させる。
これにより、取得した三次元データから、周辺歯牙の特徴に関する潜在変数を抽出し、抽出した潜在変数と既に蓄積している潜在変数とを用いて、欠損歯牙の欠損箇所に適合する補綴物データを生成することができる。したがって、ユーザ1は、補綴物データを自らデジタル設計する必要が無く、より簡単に適切な補綴物を得ることができる。
[変形例]
本発明は、上記の実施例に限られず、さらに種々の変形、応用が可能である。以下、本発明に適用可能な変形例について説明する。
データ処理装置100(データ生成装置)において、歯列の三次元データとともに、当該歯列の所有者である対象者2の属性データが入力されるものであってもよい。属性データには、年齢、性別、人種、身長、体重、および居住地など、対象者2に関する属性情報(プロファイル)が含まれる。さらに、データ処理装置100は、対象者2に関する属性情報(プロファイル)を考慮して、補綴物データを生成してもよい。
一般的に歯牙の形状は、年齢、性別、人種、身長、体重、および居住地など、遺伝または生活環境などに依存してその特徴が異なる。たとえば、一般的に、大人の永久歯は、子供の乳歯よりも大きく、両者でその形状が異なる。また、一般的に、男性の歯牙は、女性の歯牙よりも大きく、両者でその形状が異なる。また、一般的に、欧米人の歯牙は、硬い肉やパンを噛み切り易いように先端が尖る傾向があるのに対して、日本人の歯牙は、柔らかい米や野菜をすり潰し易いように先端が滑らかになる傾向がある。このため、属性情報(プロファイル)に基づき生成モデル1144aを機械学習させれば、遺伝または生活環境などを考慮して対象者2に関する属性情報(プロファイル)に適合した補綴物を作製するための補綴物データを生成することができる。
また、データ処理装置100(データ生成装置)において、歯列の三次元データとともに、隣接歯牙および対向歯牙の少なくともいずれか一方における咬合運動に関する運動データが入力されるものであってもよい。咬合運動には、たとえば、食べ物を潰すための下顎の上下運動、食べ物をすり潰すための下顎の前後運動などが含まれる。さらに、データ処理装置100は、隣接歯牙および対向歯牙の少なくともいずれか一方における咬合運動を考慮して、各歯牙について潜在変数を抽出してもよく、抽出された潜在変数を利用して補綴物データを生成してもよい。
このように、入力部1102には、顎が運動した場合における当該顎の運動データが入力されてもよい。このようにすれば、学習段階において、顎の運動データを考慮した潜在変数が蓄積される。さらに、実用段階において、欠損歯牙の周辺に位置する周辺歯牙の三次元データに加えて顎の運動データが入力されてもよく。このようにすれば、顎の運動データを考慮して、補綴物の形状を決めることができるため、ユーザ1は、より適切な補綴物を得ることができる。
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。なお、本実施の形態で例示された構成および変形例で例示された構成は、適宜組み合わせることができる。