JP7385254B2 - 電動化航空機及びその姿勢制御方法 - Google Patents

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Description

本発明は、電動モータによって駆動される電動推進系を用いた電動化航空機及びその姿勢制御方法に関する。
航空機の安全性を改善するには操縦の自動化・自律化が有効だが、従来のエルロンやエレベータ等の空力デバイスをアクチュエータで駆動・制御する自動化方式では、莫大なコストが必要となることから、事故率の高い小型航空機への適用が困難だった。これは、アクチュエータや制御コンピュータ等の単一故障による墜落のリスクを回避するためにアクチュエータや制御コンピュータで構成される姿勢制御システムの全系統の冗長化が必須となるからである。
空力デバイスとアクチュエータの組み合わせとは別の方式で、機体の姿勢制御に必要な空気力を発生させる手段として、プロペラ等で増速した後流を翼に作用させ揚力を増す手法が公知である(非特許文献1)。
なお、本発明に関連する公知技術として、増加した揚力を機体制御に応用する手法が報告されている(非特許文献2、3)。また、突風を受けた主翼の荷重軽減を目的とした既存舵面の操舵利用についても非特許文献4に挙げられている。更に、本発明に関連する公知技術として、特許文献1や非特許文献5がある。
特開2014-172435号公報
https://www.jstage.jst.go.jp/article/tsj1973/14/3/14_3_138/_pdf http://hflab.k.u-tokyo.ac.jp/papers/2016/samcon_ikegami.pdf http://hflab.k.u-tokyo.ac.jp/papers/2015/ICM2015_konishi.pdf 日本航空宇宙学会論文集Vol.56, No.655, pp.355-362, 2008 http://www.aero.jaxa.jp/research/star/uas/uarms/
しかし、プロペラ等で増速した後流を翼に作用させ揚力を増す手法で十分な空気力を発生させるにはプロペラ等への投入エネルギが通常の飛行に必要な値より過大となり、燃費性能を損なうと共に同時に発生した推力等に起因する意図しない空気力も発生してしまうという問題点があった。加えて、上記手法や既存舵面の操作では主翼全体の揚力を変化させることになるため、突風を受けた際に主翼構造を保護するように主翼揚力の「分布」を変化させることはできなかった。
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、燃費性能を損なうことなく、空気力を過不足なく発生することができる電動化航空機及びその姿勢制御方法を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明に係る電動化航空機は、推進用の第1のプロペラ又はファンと、前記第1のプロペラ又はファンを駆動する第1の電動モータとを有する第1の電動推進系と、前記第1の電動推進系の推力を負の値まで調節することが可能な制御部とを具備する。
本発明に係る電動化航空機の姿勢制御方法は、推進用のプロペラ又はファンを電動モータによって駆動し、前記推進用のプロペラ又はファンと前記電動モータとを有する電動推進系による推力を負の値まで調節する。
本発明では、プロペラ又はファンの推力を負の値まで調節することを可能にすることで、来の空力デバイスに代わる空気力を効率的に発生させ、燃費性能を損なうことなく、空気力を過不足なく発生することができる。
本発明では、多発分散化が容易な電動モータによって駆動される電動推進系を用いることで、安価かつ高い信頼性を保ちつつ従来制御システムを代替あるいはバックアップすることができる。
本発明の一形態に係る電動化航空機は、主翼及び尾翼のうち少なくとも一方の翼の揚力に寄与するように、あるいは、翼に作用する推進系後流の動圧を増減させるように、前記翼の前方に配置された推進用の第1のプロペラ又はファンと、前記第1のプロペラ又はファンを駆動する第1の電動モータとを有する第1の電動推進系、前記第1の電動推進系の推力を負の値まで、あるいは、前記第1のプロペラ又はファンを回生・逆転するまで調節することが可能な制御部とを具備する。
本発明の一形態に係る電動化航空機では、主翼や尾翼にプロペラ又はファンを含む電動推進系を設置し、プロペラ又はファンの推力を負の値まで調節することを可能にすることで、つまり推進系による回生・逆転機能の併用により翼に作用する推進系後流の動圧を増減させることで、従来の空力デバイスに代わる空気力を効率的に発生させる。これにより、燃費性能を損なうことなく、空気力を過不足なく発生することができる
本発明の一形態に係る電動化航空機では、機軸に対し左右に設けられた主翼を具備し、前記第1の電動推進系は、各前記主翼の揚力に寄与するように各前記主翼の前方にそれぞれ1又は2以上配置され、前記制御部は、前記左右の主翼のうち一方の前記主翼に配置された前記第1の電動推進系の推力を正の値、かつ、前記左右の主翼のうち他方の前記主翼に配置された前記第1の電動推進系の推力を負の値、又は前記左右の主翼のそれぞれに配置された前記第1の電動推進系の推力を負の値に調節する。
本発明の一形態に係る電動化航空機では、前記第1の電動推進系は、各前記主翼の揚力に寄与するように各前記主翼の前方にそれぞれ2以上配置され、前記制御部は、左右の前記主翼のうち少なくとも一方の前記主翼に配置された2以上の前記第1の電動推進系の推力を正負が互い逆の値に調節する。
本発明の一形態に係る電動化航空機では、左右の前記主翼の後方で、かつ、前記第1のプロペラ又はファンの後流が作用する位置に配置された第2のプロペラ又はファンと、それぞれの前記第2のプロペラ又はファンを駆動する第2の電動モータとを有する第2の電動推進系を更に具備する。
本発明の一形態に係る電動化航空機では、前記制御部は、各前記第2のプロペラ又はファンが各前記主翼の翼内舷側を振り上げる方向に回転し、かつ、前記第1の電動推進系の運転状態に対応して前記第2の電動推進系の運転状態を調節する。
本発明の一形態に係る電動化航空機では、翼の揚力に寄与するように翼の前方に配置された前記第1の電動推進系を含む1又は2以上の電動推進系を有し、前記制御部は、前記電動推進系の運転状態に関する変数と前記翼に発生する空気力との関係が線形の範囲を維持するように、前記電動推進系を調節する。
本発明の一形態に係る電動化航空機では、前記第1の電動推進系は、翼の揚力に寄与するように翼の前方に配置され、前記制御部は、前記第1の電動推進系の運転状態又は気流状態に関する変数の変化に際して、前記電動推進系の運転状態に関する変数と前記翼に発生する空気力との関係に基づいて、前記電動推進系による合計推力又は空気力が所定の値又は所定の範囲になるように、前記電動推進系を調節する。
本発明の一形態に係る電動化航空機では、前記第1の電動推進系の運転状態に関する変数と前記翼に発生する空気力との関係のデータ群を記憶する記憶装置を具備し、前記制御部は、前記第1の電動推進系の運転状態に関する変数と前記翼に発生する空気力との関係に基づいて、前記第1の電動推進系を調節する。
本発明の一形態に係る電動化航空機では、前記第1のプロペラの回転数、出力、推力若しくはピッチ角、前記第1の電動モータのモータトルク、電流、電圧、前記翼の揚力、又はこれらの加工情報のうち1又は複数を訓練データとして学習し、前記第1のプロペラの回転数、前記第1の電動モータのモータ出力若しくはモータトルク、又はこれらの加工情報に関する情報により、前記前記第1の電動推進系の運転状態に関する変数と前記翼に発生する空気力との関係を得て、この得られた情報に基づいて、前記電動推進系を調節する。
本発明の一形態に係る電動化航空機では、機軸に対し左右に設けられた主翼と、機体構造の後流中に配置された第3のプロペラ又はファンと、前記第3のプロペラ又はファンを駆動する第3の電動モータとを有する第3の電動推進系とを具備し、前記第1の電動推進系は、前記主翼の揚力に寄与するように前記主翼の前方に配置され、更に、前記第1の電動推進系の推力軸と前記第3の電動推進系の推力軸とが機体重心に対し鉛直方向に互いに反対側に存在する。
本発明の一形態に係る電動化航空機では、更に、前記第3のプロペラ又はファンの後流が作用する位置に配置された尾翼を具備する。
本発明の一形態に係る電動化航空機では、前記第3のプロペラ又はファンの推力軸の機体重心に対する鉛直方向位置は、前記尾翼の発生する揚力と同じ方向にある。
本発明の一形態に係る電動化航空機では、前記第3のプロペラ又はファンの推力軸が、前記尾翼より前記尾翼の発生する揚力の方向にある。
本発明によれば、燃費性能を損なうことなく、空気力を過不足なく発生することができる。
本発明の第1の実施形態に係る電動化航空機の構成を示す図である。 本発明の第1の実施形態に係る電動化航空機の作用の説明図である。 本発明の第1の実施形態に係る電動化航空機での最大モータ電力と空気力変化との関係を示すグラフである。 本発明の第1の実施形態に係る電動化航空機での翼弦位置に対するプロペラ推力軸高さと空気力変化との関係を示すグラフである。 本発明の第2の実施形態に係る電動化航空機の構成を示す平面図である。 本発明の第2の実施形態に係る電動化航空機の構成を示すブロック図である。 本発明の第2の実施形態に係る電動化航空機の旋回時の平面から見た軌道を従来例と比較して示した図である。 本発明の第2の実施形態に係る電動化航空機の旋回時の軌道の時間軸上の位置(Y軸方向座標)を従来例と比較して示したグラフである。 本発明の第2の実施形態に係る電動化航空機の旋回時の仕事量を従来例と比較して示したグラフである。 本発明の第2の実施形態に係る電動化航空機で発生する空気量を各形態で比較したグラフである。(a)は既存舵面単体、(b)はプロペラ単体、(c)は既存舵面とプロペラの併用の場合を示している。 本発明の第3の実施形態に係る電動化航空機の構成を示す平面図である。 本発明の第3の実施形態に係る電動化航空機の構成を示すブロック図である。 図11の主翼端部付近を拡大して示した説明図である。 本発明の第3の実施形態に係る軸動力と推力との関係を示すグラフである。 本発明の第3の実施形態に係る動圧と回生動力との関係を示すグラフである。 本発明の第3の実施形態に係るモータ出力指令と進行率との関係を示すグラフである。 本発明の第4の実施形態に係る電動化航空機の構成を示す平面図である。 本発明の第4の実施形態に係る推進系の運転状態の各軸運動への影響の度合いを示す表1である。 本発明の第4の実施形態に係る推進系の運転状態の各軸運動への影響の度合いを示す表2である。 本発明の第4の実施形態に係るプロペラ比推力の変化と揚力の変化との関係を示すグラフである。 本発明の第5の実施形態に係る電動化航空機の構成を示す平面図である。 本発明の第5の実施形態に係る電動化航空機を正面から見た、当該電動化航空機に作用する曲げモーメントの分布を示す図である。 本発明の第5の実施形態に係るトルク係数と比推力との関係を示すグラフである。 本発明の第6の実施形態の第1の態様に係る電動化航空機の構成を示す側面図である。 図24に示した電動化航空機の平面図である。 本発明の第6の実施形態の第2の態様に係る電動化航空機の構成を示す側面図である。 図26に示した電動化航空機の平面図である。 発明の第6の実施形態の第1及び第2の態様に係る電動化航空機の構成を示すブロックである。 発明の第6の実施形態に係る作用を説明するための比較構成例を示す側面図である。 発明の第6の実施形態に係るモータ出力指令とピッチモーメントとの関係を示すグラフである。 発明の第6の実施形態に係る経路角変化を従来手法と比較して示すグラフである。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電動化航空機の構成を示す図である。
図1に示すように、この実施形態に係る電動化航空機1は、翼10の前縁に、推進用のプロペラ21及びこれを駆動する電動モータ22により構成される電動推進系20を、この電動推進系20による後流が翼10に作用するよう配置している。電動化航空機1では、翼10は典型的には主翼であるが、尾翼などあってもよい。また、電動推進系20は、1つであってもよく、2以上であってもよい。なお、図1では、胴体等は図示していない。
電動化航空機1は、電動モータ22の駆動を制御する制御部30を備える。制御部30は、典型的には、電源装置40と電動モータ22との間に介挿されたインバータ50を制御して、電動モータ22に電力を供給しプロペラ21の推力を発生すると共にプロペラ21を介して風力を動力として取り出す。電動化航空機1は、電動モータ22で発電することで回生する機能、あるいはプロペラ21を逆回転させる機能を備える。なお、電動化航空機1が2以上の電動推進系20を有する場合には、制御部30は別個に電動推進系20のモータ出力を制御できるように構成してもよい。
ここで、図2(a)、(b)に示すように、上記のプロペラ21の推力を増すことで翼10の空気力11が増加することは非特許文献1で知られており、その増加した空気力11を機体の縦方向運動の制御に用いる例が非特許文献2、3に示されている。この制御には通常の飛行に必要な空気力11と電動推進系20の運転状態により変化した空気力11の差を制御力として用いるため、制御力は上記空気力11の変化幅12に左右される。ここで、運転状態とは、プロペラ21の推進状態(動圧増加の状態、図2(a)の状態)、プロペラ21の回生又は逆転状態(動圧減少の状態、図2(c)の状態)、あるいはこれらの程度をいう。
この空気力11の変化幅12は、図3に示すように、プロペラ21を駆動力に依存するため、上記のような制御には従来大きな制御力を得るために通常の飛行に必要なプロペラ21の駆動力以上の動力を推進系で発生させる必要があり、推進系重量の増加を招く原因となる可能性があった。
これに対して、本実施形態に係る電動化航空機1は、駆動力を増すだけではなくプロペラ21の推力を負の値まで調節し、つまり電動推進系20を回生、あるいは逆回転させることでプロペラ21の後流を減速させ、翼10に作用する動圧を低下させ空気力11を減少させることができるように構成されている(図2(c)参照)。ここで、図20を参照すれば、図20の横軸の値は水平巡航中の推力に対して出力可能な値で、この値が0なら水平巡航に必要な推力を出しているということになる。図20の「Pitch1」を例にとると、巡航中なら正の推力は横軸の約1.3目盛分出せるが、負の推力は逆回転までさせるなら3.6目盛盛分程度である、正の推力の最大で2~3倍の範囲、乃至、正の推力の最大で約2.76倍出せることになる。
なお、ここで、正の推力とは、飛行方向に対する推力であり、負の推力とは、飛行方向とは反対方向の推力である。
この結果、本実施形態に係る電動化航空機1では、上記の空気力11の変化幅12を増加させることができ、より大きな制御力を、電動推進系20の動力(=重量)を増すことなく得ることができる。加えて、この時プロペラ21を用いて回生する場合は上記制御に必要なエネルギの一部を回収でき、燃費性能を改善することもできる。
本実施形態に係る電動化航空機1は、プロペラ21に可変ピッチプロペラを用い、逆転あるいは回生の際にピッチを変更するように構成してもよい。これにり、例えば回生を行う場合はより低いピッチ角とすることで、回生エネルギ量の増加と共に空気力11の変化幅12も増大するという相乗効果が得られる。
本実施形態に係る電動化航空機1は、プロペラ21の推力軸が主翼負圧面側(例えば図1中翼10の上方側)にあることが好ましい。この場合に、図4に示すように、回生運転状態を含めてプロペラ21の後流に生じた動圧変化をより効果的に主翼に作用することができ、空気力11の変化幅12をさらに大きくすることができるという格別の効果を得ることができる。図4から分かるように、プロペラ21の推力軸は、主翼負圧面側にある場合、翼弦位置に対してプロペラ直径×0.27の高さにあれば空気力変化が最も大きくなる。
なお、典型的には、プロペラ21の回転数あるいは後述の比推力と翼10の揚力に関するデータ群を備えた記憶装置(図示せず)を有し、制御部30が記憶装置よりデータを読み出し、これに基づき制御部30からインバータ50へのトルクあるいは回転数指令値が出力されるが、飛行中または地上試験におけるプロペラ21の回転数や後述の比推力と翼10の揚力の関係についてニューラルネットワークによる学習を行う制御部30を用いることで、記憶装置に事前にデータ群を備える必要がなくプロペラ21や翼10の性状の変化(表面への虫・汚れの付着)により上記回転数や比推力と揚力の関係が変化した場合にも適切な制御を行うことができる。
<第2の実施形態>
図5は本発明の第2の実施形態に係る電動化航空機の平面図、図6はその構成をブロック図である。
図5及び図6に示すように、この実勢形態に係る電動化航空機2は、胴体60の左側の主翼71及び右側の主翼72のそれぞれの前縁にプロペラ21を備えた電動推進系20を、電動推進系20の後流が主翼71、72に作用するよう複数、ここでは各4つ配置している。各電動推進系20は、プロペラ21及び電動モータ22を備える。
電動化航空機2は、各電動モータ22の駆動を制御する制御部30を備える。制御部30は、スロットル、操縦桿、ラダーペダル、無線操作装置などの指令装置80の指令の応じた制御を行う。また、制御部30には、ジャイロ、加速度計、GPS、ピトー管などのセンサ類90からのデータが入力される。
制御部30は、左右それぞれの電源装置40と各電動モータ22との間に介挿された各インバータ50を制御して、各電動モータ22に電力を供給しプロペラ21の推力を発生すると共にプロペラ21を介して風力を動力として取り出す。電動化航空機2は、電動モータ22で発電することで回生する機能、あるいはプロペラ21を逆回転させる機能を備える。
ここで、旋回時に航空機のロール軸姿勢を変化させるローリングモーメントを得るために、左右の主翼で発生する揚力に差分を生じさせる際、非特許文献1に記載されているように片側主翼の推進系推力を増加させることで、推進系後流の速度を増加させ揚力を増加させることが考えられる。この場合には、揚力増加と同時に機体全体の推力も飛行に必要な所望の値となるように増加する必要がある。また従来のエルロンを用いた旋回では操舵により発生するヨーイングモーメントが旋回方向と逆方向に発生するため、一般にはこのヨーモーメントを補正するため方向舵等を備える必要があった。
これに対し、本実施形態に係る電動化航空機2は、片側主翼のプロペラ推力を増加させ、反対側主翼のプロペラ推力を回生又は逆転により負の値まで減少させるように構成される。本実施形態に係る電動化航空機2は、例えば図5に示したように、左側の主翼71のプロペラ21による推力を増加させ、右側の主翼72のプロペラ21による推力を回生又は逆転により負の値まで減少させる。
これにより、本実施形態に係る電動化航空機2は、機体全体の揚力を飛行に必要な所望の値に保ちながら旋回することが可能となる。加えて、片側主翼のプロペラ推力を増加させ、反対側主翼のプロペラ推力を負の値まで減少することで発生するヨーイングモーメントは旋回方向と同じ方向に働き、かつ、各プロペラ推力の分布により調整が可能なため、ヨーモーメントを旋回の動きを助長する値に調整することで、エルロンや方向舵等の既存舵面を代替あるいは省略できる。
加えて、本実施形態に係る電動化航空機2による旋回では、図7に示すように、既存舵面を用いて旋回を行う場合より、旋回開始地点から180度ターン地点までのY軸方向距離を小さくし、図8に示すように180度ターンを完了するまでの時間を短縮することができると共に、図9に示すように180度ターンを完了するまでに必要な仕事も既存舵面を用いる場合に比べ減少させることができるという格別の効果を得ることができる。
また、本実施形態に係る電動化航空機2では、電動推進系20に不具合があり一つ又は複数の電動推進系20で正の推力が発生できない場合においても、負の推力を発生し回生した電動推進系20の発電電力を活用し正常な電動推進系20に正の推力を発生させ姿勢制御を行うことができる。一方、主翼71、72に設置したすべての電動推進系20で負の推力を発生させつつ、例えば右翼端(主翼72の翼端)に近い電動推進系20ほど回生により大きな負の推力を発生させることで、回生で得られた電力をアビオニクスやアクチュエータの動作に充てつつ右旋回を行うといった、機内の全電源が使用不能な状態でも安全に機体を運用することが可能となる。
さらに、本実施形態に係る電動化航空機2(図5及び6に示した構成)をエルロンなどの既存舵面を備える機体に適用した場合、プロペラ21はそれらにより増速または減速される後流が既存舵面に作用する中に既存舵面が来るよう配置し既存舵面があえてプロペラ21の後流の影響を受けるようにすることで、プロペラ21と併用せず既存舵面のみで発生させるロールモーメントよりも大きなロールモーメントを生じさせることができるだけでなく、図10に示すように、両者を併用した場合(図10(c))では既存舵面を操舵した場合(図10(a))とプロペラ21単体(図5及び6に示した構成)で適用した場合(図10(b))とのそれぞれで生じるロールモーメントを足し合わせた場合よりも大きなロールモーメントを発生させることができ、プロペラ21単体(図5及び6に示した構成)と既存舵面の相乗効果により大きなロールモーメントを得ることができる。
<第3の実施形態>
図11は本発明の第3の実施形態に係る電動化航空機の平面図、図12はその構成をブロック図である。図13は図11の一部を拡大した説明図である。なお、図11及び図12において、上記の実施形態に示した要素と同じ要素には同一の符号を付している。
図11及び図12に示すように、この実勢形態に係る電動化航空機3は、第2の実施形態に係る電動化航空機2と同様に、胴体60の左側の主翼71及び右側の主翼72のそれぞれの前縁にプロペラ21を備えた電動推進系20を、電動推進系20の後流が主翼71、72に作用するよう複数、ここでは各4つ配置している。各電動推進系20は、プロペラ21及び電動モータ22を備える。電動化航空機3は、これらの構成に加え、各主翼71、72の翼端の後方にも同様の電動推進系120を配置している。各電動推進系120は、プロペラ121及び電動モータ122を備える。
電動化航空機3は、各電動モータ22、122の駆動を制御する制御部30を備える。制御部30は、スロットル、操縦桿、ラダーベルト、無線操作装置などの指令装置80の指令の応じた制御を行う。また、制御部30には、ジャイロ、加速度計、GPS、ピトー管などのセンサ類90からのデータが入力される。
制御部30は、左右それぞれの電源装置40と各電動モータ22、122との間に介挿された各インバータ50を制御して、各電動モータ22、122に電力を供給しプロペラ21、121の推力を発生すると共にプロペラ21、121を介して風力を動力として取り出す。電動化航空機3は、電動モータ22、122で発電することで回生する機能、あるいはプロペラ21、121を逆回転させる機能を備える。
ここで、航空機のロール軸姿勢を変化させるロールモーメントを得るために、揚力を増加させたい側の主翼(図11中の主翼71とする。)では推力を増加させると共に、反対側の主翼(図11中の主翼72とする。)においては推進系に回生又は逆転運転をさせ抗力を発生させると、主翼71、72における推力差分に起因するヨーモーメントが発生してしまい、このモーメントが過大な場合には主翼72が失速に陥る可能性がある。
これに対して、本実施形態に係る電動化航空機3は、主翼71、72の最も翼端近くの後縁に設置した電動推進系120において、主翼71側の電動推進系120では回生、主翼72側の電動推進系120では推力増加と、それぞれの主翼71、72において翼端近くの後縁に設置した電動推進系120とそれ以外に設置した電動推進系20で推力の変化が逆の符号を持つように運転することができるように構成されている。
これにより、主翼71、72における翼端近くの後縁のプロペラ121に流入する流れは前縁に設置したプロペラ21の後流の影響を受け、翼端のプロペラ121が推力を増加させる場合には流入動圧は下がっており、図14に示すように、より少ないプロペラ動力で所望の推力(ヨーモーメント)を発生できる。図14中Q1はプロペラ21の影響を受けて低下した状態でプロペラ121に流入する動圧(本実施形態に係る構成による)、Q2はプロペラ21の影響を受けずに流入した動圧(従来の構成による)を示している。逆に、翼端のプロペラ121が回生動作をする場合には流入動圧は増加しておりヨーモーメントを発生するだけでなく、図15に示すように、より大きなエネルギを回生できる。
加えて、本実施形態に係る電動化航空機3では、主翼71、72の翼端後方に設置したプロペラ121は主翼71、72の内舷側を振り上げる回転(InboardUp)方向で運用する(図13中符号130)。この時、前縁のプロペラ21により主翼71、72の揚力が増減した結果、翼端渦の強度が変化し翼端以外の場所にあるプロペラ21と異なり翼端のプロペラ121では動作する進行率が、図16に示すように、実効的に変化する。この時、翼端のプロペラ121を、前縁のプロペラ21の運転状態をモニタしながらInboardUp方向で運転状態(回転数)を変化させることにより、翼端のプロペラ121への流入速度の変化と同時に変化する進行率の変化を小さくしながら運転ができ、推力を発生あるいは回生のどちらの運転状態でも効率の高い進行率を保ち、より効率的な運転ができる。
<第4の実施形態>
図17は第4の実施形態に係る電動化航空機の平面図である。図18の表1及び図19の表2は各推進系の運転状態の各軸運動への影響の度合いを示している。
図17に示すように、第4の実施形態に係る電動化航空機4は、図11及び図12に示した電動化航空機3の平面配置で機軸上に設置された機軸上プロペラCをさらに備える。この実施形態では、電動化航空機3の主翼71、72の前縁のプロペラ21を主翼プロペラA、電動化航空機3の主翼71、72の翼端のプロペラ121を翼端プロペラBとする。機軸上プロペラCも、主翼プロペラA及び翼端プロペラBと同様に、電動モータ(図示を省略)により駆動される。この電動モータには、電源装置(図示を省略)からインバータ(図示を省略)を介して動力が供給させる。機軸上プロペラCのインバータは主翼プロペラA及び翼端プロペラBと共通する制御部(図示を省略)により制御される。
ここで、ロール軸の運動に主翼プロペラAや翼端プロペラBの運転状態を変化させるとヨー軸などの横方向運動だけでなく、揚力方向などの縦方向運動に影響が発生するため、運動制御則に各軸の干渉効果を含んだ複雑な6自由度制御モデルを構築する必要があり、制御システムのコスト増加要因となる。
これに対して、本実施形態に係る電動化航空機4では、固定翼航空機で一般に用いられる簡便な縦・横3自由度に分離した制御モデルを用いるために、プロペラを主翼プロペラA、翼端プロペラB、機軸上プロペラCに分け、主翼プロペラA、翼端プロペラB、機軸上プロペラC(以下ではこれらを総称してプロペラA、B、Cとする。)の推力をそれぞれT_A,T_B,T_Cとし、以下のとおり制御する。
図18の表1に示すようにT_A,T_Bについては6軸のうち横力軸以外の5軸の運動に影響するため、単にこれらを制御変数にした場合には縦・横方向に分離した制御モデルを構築することは困難である。
そこで、まず推力を比推力Tc=T/(0.5ρUDp)と無次元化し(ρ:空気密度、 U:対気速度、Dp:プロペラ直径)、さらにTc_A,Tc_Bについてはそれぞれ機軸に対し左右の推力の和をΣTc_A,ΣTc_B、及び差をΔTc_A,ΔTc_Bとしこれらを制御変数とする。
比推力の変化と対応する翼に発生する揚力変化の関係は図20に示すようになるため、これらが「線形である範囲」で各プロペラA、B、Cを運転することで、左右の主翼71、72に発生する揚力変化の和はΣTc_A,ΣTc_Bに、差はΔTc_A,ΔTc_Bのみに影響することから、揚力変化の和(機体全体の揚力変化)と差(機体全体のロールモーメント変化)を分離してΣTc_A,ΣTc_B,ΔTc_A,ΔTc_Bによって指定することができる。なお、図20中、pitchのp1、p2はそれぞれプロペラA、B、Cのピッチ角が違う場合を示しており、_ReverseはプロペラA、B、Cを逆転した場合を示している。
本実施形態に係る電動化航空機4では、運転状態に関する変数(ここでは比推力)と所望の空気力(揚力)が線形となるよう、プロペラA、B、Cのそれぞれのピッチ角あるいは回転方向、つまり電動推進系を制御部が調節する。これにより、図19の表2に示すように各比推力の線形結合値の影響を縦・横の3自由度のどちらかに限定することができ、下記式(1)のように縦・横方向に分離した制御モデルを構築することができる。
式(1)
なお、この実施形態では、運転状態に関する変数として比推力を用いたが、運転状態に関する変数としては、推力と動圧の比などであってもよい。
<第5の実施形態>
図21は第5の実施形態に係る電動化航空機の平面図である。
図21に示すように、第5の実施形態に係る電動化航空機5は、図5及び図6に示した電動化航空機2と同様の構成である。なお、ここでは、説明を簡略化するため、ここでは電動推進系を左右それぞれ3つとしている。また、図21では、電動化航空機5に突風の作用を受ける状態を示している。
図21に示すように、飛行中の電動化航空機5の主翼71、72は前方からの気流により揚力Fzを得るが、機体の対気速度は常に対地速度と等しい訳ではなく、対地速度に突風などの風の影響が重畳しており、発生する揚力及び揚力に起因する主翼71、72の曲げモーメントも風の影響を受ける。
ここで、定常飛行している機体に突風が作用したとき、対気速度が突発的に増加するため、上記揚力及び曲げモーメントも増加し、機体構造はそれまでの飛行状態より大きな荷重を受けるため、既存舵面の操作などにより突風の影響の低減が図られている(非特許文献4参照)。
本実施形態に係る電動化航空機5では、主翼71、72の前縁に設置したプロペラ21の運転状態を変化させることにより上記荷重を低減する。ライダなどの検知手段(図6のセンサ類90)により得られた前方気流の情報に基づき、制御部30(図6参照)が一部のプロペラ21の推力を減少あるいは運転状態を回生運転に切り替えることにより、図22に示すように、上記揚力及び曲げモーメントの変化を緩和することができる。図22ではその電動化航空機を正面から見た、当該電動化航空機に作用する曲げモーメントの分布を示す図であり、ここでは左側の主翼71に分布する曲げモーメントは回生運転がない場合、右側の主翼72に分布する曲げモーメントは回生運転がある場合を示している。
また、モータ電流から推定されたプロペラ21のトルクと、トルク係数及び進行率の関係を用いて対気速度を推定する方法が特許文献1に記載されている。
本実施形態に係る電動化航空機5では、図23に示すトルク係数と比推力の関係及び図20に示した関係を用いて、Fz及び曲げモーメントを、上記検知手段を用いずに調節することができる。上記のように突風などによる機体構造への荷重変化を緩和することで、機体構造に要求される強度要求を低減、すなわち構造重量の軽量化が可能となる。なお、図23においてV1~V4は対気速度である。
<第6の実施形態>
図24は第6の実施形態の第1の態様に係る電動化航空機の構成を示す側面図、図25はその平面図である。図26は第6の実施形態の第2の態様に係る電動化航空機の構成を示す側面図、図25はその平面図である。第1の態様と第2の態様との違いは、第1の態様に係る電動化航空機6が水平尾翼を備えず、第2の態様に係る電動化航空機7が水平尾翼140を備えている点である。図28は電動化航空機6、7の構成示すブロックである。
電動化航空機6、7は、胴体60の左側の主翼71及び右側の主翼72のそれぞれの前縁にプロペラ21を備えた電動推進系20を、電動推進系20の後流が主翼71、72に作用するよう配置している。電動推進系20は2以上配置されても勿論よい。各電動推進系20は、プロペラ21及び電動モータ22を備える。
電動化航空機6、7は、これらの構成に加え、電動推進系220を有する。電動推進系220は、プロペラ221及び電動モータ222を備える。
電動化航空機6、7は、各電動モータ22、222の駆動を制御する制御部30を備える。制御部30は、スロットル、操縦桿、ラダーペダル、無線操作装置などの指令装置80の指令の応じた制御を行う。また、制御部30には、ジャイロ、加速度計、GPS、ピトー管などのセンサ類90からのデータが入力される。
制御部30は、電源装置40と各電動モータ22、222との間に介挿された各インバータ50を制御して、各電動モータ22、222に電力を供給しプロペラ21、221の推力を発生すると共にプロペラ21、221を介して風力を動力として取り出す。電動化航空機6、7は、電動モータ22、222で発電することで回生する機能、あるいはプロペラ21、221を逆回転させる機能を備える。
ここで、通常ピッチ方向の機体運動の制御には水平尾翼及び昇降舵等が用いられるが、水平尾翼で発生する揚力が機体を支える主翼揚力に比べて非常に小さいにもかかわらず水平尾翼及びそれを支える胴体尾部構造は飛行中常に抗力を発生しており、燃費性能を損なっている。
その一方、図24及び図25に示すように、尾翼のない無尾翼機では上記の燃費性能に関する問題は回避できるものの、静安定性を確保するため低速で飛行する機体においても主翼に後退角Γを付与せざるを得ず、このことが主翼71、72の空力性能の悪化又は構造重量増大の原因となる。
第6の実施形態の第1の態様に係る電動化航空機6は、機体重心Gに対し鉛直方向(図中左右方向)に離れた位置に、複数の電動推進系20、220を重心位置に対し互いに逆方向に配置することで、回生・逆転によりそれぞれの電動推進系20、220が符号の異なる推力を発生させることで正の推力のみを発生させる場合より大きなピッチモーメントを発生するように構成されており、例えば主翼71、72における揚力の作用点が機体重心Gより後方にある場合には主翼71、72の前縁のプロペラ21の後流動圧の増減に起因する主翼71、72の揚力の変化がさらにピッチモーメントを発生する格別の効果を得ることができる。
また、第6の実施形態の第1の態様及び第2の形態に係る電動化航空機6、7では、電動推進系220が機体構造の後流に発達する動圧の低下した領域に設置されている。これにより、機体構造後流中の電動推進系220はより小さい動力で大きな正の推力を発生させることができ推進効率が向上することができる。これに加え、主翼71、72の前縁に設置された電動推進系20を高い動圧の気流において回生又は逆転運転をすることでやはり大きな負の推力(抗力)を発生させられることから、これらの電動推進系220と電動推進系20の併用により得られる推力差分からさらに大きな制御力(ピッチモーメント)を得ることができ、上記の水平尾翼140や主翼71、72における燃費又は構造重量に関するデメリットも回避できる。
一方、機体重心Gの機軸方向位置によっては水平尾翼140などが必要となる場合も発生するが、水平尾翼140は機体構造の後流中に設置されると発生する空気力が減少し姿勢制御機能が著しく低下する。
このため非特許文献5に開示されたUARMSなどの航空機では後流の影響を受けにくい位置に水平尾翼を設置する、あるいはモーメントアームを確保するために、図29のように胴体60の尾部あるいは垂直尾翼等を利用したサポート部141により水平尾翼140を支えることになる。しかし、上記サポート部141なども揚力の発生に直接関与しないにもかかわらず飛行中常に抗力を発生しており、燃費性能を損なう原因となるため、なるべく小さくすることが望まれる。
そこで、第6の実施形態の第2の態様に係る電動化航空機7では、図26及び図27に示したように、あえて水平尾翼140を、サポート部141を含めて胴体60の後流中かつプロペラ221の後方に設置し、サポート部141の発生する抗力を最小化すると共に、プロペラ221を胴体後流で動作させることで通常の航空機において水平尾翼に作用する気流より高い動圧を水平尾翼140に作用させることができることができる。
加えて、胴体60で偏向された後流を上記プロペラ221により効果的に水平尾翼140に作用させることができると共に、プロペラ221が胴体60の後流中にあるためにプロペラ221の逆転時により小さい動力で水平尾翼140に作用する動圧を減少させることができる。このように水平尾翼140に作用する動圧をより小さい動力で大きく変化させられる、すなわちピッチ制御時においてもエネルギを節約できると共に昇降舵のような可動部がなくともピッチモーメントを変化させることができる。
図30及び図31に示すように、第6の実施形態の第1の態様及び第2の形態に係る電動化航空機6、7では、昇降舵のない水平安定板だけでも昇降舵と同程度のピッチモーメントを発生させることができ経路角の指令にも追従させることができるため、上記の燃費性能に関連するメリットの他に、既存舵面と水平尾翼から可動部である昇降舵の省略による信頼性の改善という格別の効果を得ることができる。
また、プロペラ221の推力軸の機体重心Gに対する位置は、水平尾翼140の発生する揚力の方向と一致させることにより、プロペラ221の推力に起因するピッチモーメントが水平尾翼140の発生するピッチモーメントに重畳するためより高い姿勢制御機能を得ることができる。さらに、プロペラ221の推力軸が、水平尾翼140より水平尾翼140の発生する揚力の方向(負圧面側)にあることで、負圧面側の動圧がより高くなることでさらに大きな空気力を発生させることができる。
<結論>
以上のとおり、本発明によれば、燃費性能を損なうことなく、空気力を過不足なく発生することができる。加えて、今後空飛ぶ車に代表されるように新たな大市場と目される一方で旅客機に比べ事故率の非常に高い小型航空機の操縦自動化(Fly-by-Wire化)による安全性の劇的な改善を可能とすることから、産業利用の可能性は極めて高い。さらに、高価な姿勢制御システムを搭載する旅客機の機体コストの低下にも有効である。
<その他>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。
例えば、上記の各実施形態では、電動化航空機が推進用のプロペラを有していたが、推進用のプロペラに代えて推進用のファンを用いてもよい。
また、制御部は、プロペラの回転数、出力、推力若しくはピッチ角、電動モータのモータトルク、翼の揚力、又はこれらの加工情報のうち1又は複数を訓練データとして学習し、第1のプロペラの回転数、第1の電動モータのモータ出力若しくはモータトルク、又はこれらの加工情報を出力するように構成してもよい。このような制御は、上記の実施形態のいずれのプロペラや電動モータについても実施してよい。上記の学習は、典型的には公知の機械学習の手法を広く用いることができ、特にニューラルネットワーク、ベイズ推論、回帰木、あるいはこれらを組み合わせたアンサンブル学習を好適に用いることができる。回帰木など複数の手法で学習した結果を組み合わせたアンサンブル学習を用いることで予測精度をより高めることができる。
1~7 :電動化航空機
10 :翼
11 :空気力
20、120、220 :電動推進系
21、121、221 :プロペラ
22、122、222 :電動モータ
30 :制御部
71 :主翼
72 :主翼
120 :電動推進系
121 :プロペラ
122 :電動モータ
140 :水平尾翼
221 :プロペラ
222 :電動モータ
A :主翼プロペラ
B :翼端プロペラ
C :機軸上プロペラ
Fz :揚力
G :機体重心

Claims (14)

  1. 推進用の第1のプロペラ又はファンと、前記第1のプロペラ又はファンを駆動する第1の電動モータとを有し、翼の揚力に寄与するように翼の前方に配置された第1の電動推進系と、
    前記第1の電動推進系の推力を負の値まで調節し、前記第1の電動推進系を回生又は逆回転させることで前記第1のプロペラ又はファンの後流を減速させ、前記翼に作用する動圧を低下させ、飛行に必要な空気力と前記第1の電動推進系の運転状態により変化する空気力との差の変化幅を増加することで、前記変化幅に依存する機体の縦方向運動の制御力を増加することが可能な制御部と
    を具備する電動化航空機。
  2. 請求項1に記載の電動化航空機であって、
    前記翼として、機軸に対し左右に設けられた主翼を具備し、
    前記第1の電動推進系は、各前記主翼の揚力に寄与するように各前記主翼の前方にそれぞれ1又は2以上配置され、
    前記制御部は、
    前記左右の主翼のうち一方の前記主翼に配置された前記第1の電動推進系の推力を正の値、かつ、前記左右の主翼のうち他方の前記主翼に配置された前記第1の電動推進系の推力を負の値、又は
    前記左右の主翼のそれぞれに配置された前記第1の電動推進系の推力を負の値
    に調節する
    電動化航空機。
  3. 請求項1に記載の電動化航空機であって、
    前記翼として、機軸に対し左右に設けられた主翼を具備し、
    前記第1の電動推進系は、各前記主翼の揚力に寄与するように各前記主翼の前方にそれぞれ2以上配置され、
    前記制御部は、左右の前記主翼のうち少なくとも一方の前記主翼に配置された2以上の前記第1の電動推進系の推力を正負が互い逆の値に調節する
    電動化航空機。
  4. 請求項2又は3に記載の電動化航空機であって、
    左右の前記主翼の後方で、かつ、前記第1のプロペラ又はファンの後流が作用する位置に配置された第2のプロペラ又はファンと、それぞれの前記第2のプロペラ又はファンを駆動する第2の電動モータとを有する第2の電動推進系
    を更に具備する電動化航空機。
  5. 請求項4に記載の電動化航空機であって、
    前記制御部は、各前記第2のプロペラ又はファンが各前記主翼の翼内舷側を振り上げる方向に回転し、かつ、前記第1の電動推進系の運転状態に対応して前記第2の電動推進系の運転状態を調節する
    電動化航空機。
  6. 請求項1に記載の電動化航空機であって、
    前記翼の揚力に寄与するように前記翼の前方に配置された前記第1の電動推進系を含む1又は2以上の電動推進系を有し、
    前記制御部は、前記電動推進系の運転状態に関する変数と前記翼に発生する空気力との関係が線形の範囲を維持するように、前記電動推進系を調節する
    電動化航空機。
  7. 請求項1に記載の電動化航空機であって、
    前記制御部は、前記第1の電動推進系の運転状態又は気流状態に関する変数の変化に際して、前記電動推進系の運転状態に関する変数と前記翼に発生する空気力との関係に基づいて、前記電動推進系による合計推力又は空気力が所定の値又は所定の範囲になるように、前記電動推進系を調節する
    電動化航空機。
  8. 請求項1に記載の電動化航空機であって、
    前記第1の電動推進系の運転状態に関する変数と翼に発生する空気力との関係のデータ群を記憶する記憶装置を具備し、
    前記制御部は、前記第1の電動推進系の運転状態に関する変数と前記翼に発生する空気力との関係に基づいて、前記第1の電動推進系を調節する
    電動化航空機。
  9. 請求項1に記載の電動化航空機であって、
    前記制御部は、前記第1のプロペラの回転数、出力、推力若しくはピッチ角、前記第1の電動モータのモータトルク、翼の揚力、又はこれらの加工情報のうち1又は複数を訓練データとして学習し、前記第1のプロペラの回転数、前記第1の電動モータのモータ出力若しくはモータトルク、又はこれらの加工情報に関する情報により、前記第1の電動推進系の運転状態に関する変数と前記翼に発生する空気力との関係を得て、この得られた情報に基づいて、前記電動推進系を調節する
    電動化航空機。
  10. 請求項1に記載の電動化航空機であって、
    前記翼として、機軸に対し左右に設けられた主翼と、
    機体構造の後流中に配置された第3のプロペラ又はファンと、前記第3のプロペラ又はファンを駆動する第3の電動モータとを有する第3の電動推進系とを具備し、
    前記第1の電動推進系は、前記主翼の揚力に寄与するように前記主翼の前方に配置され、更に、
    前記第1の電動推進系の推力軸と前記第3の電動推進系の推力軸とが機体重心に対し鉛直方向に互いに反対側に存在する
    電動化航空機。
  11. 請求項10に記載の電動化航空機であって、更に、
    前記第3のプロペラ又はファンの後流が作用する位置に配置された尾翼
    を具備する電動化航空機。
  12. 請求項11に記載の電動化航空機であって、
    前記第3のプロペラ又はファンの推力軸の機体重心に対する鉛直方向位置は、前記尾翼の発生する揚力と同じ方向にある
    電動化航空機。
  13. 請求項12に記載の電動化航空機であって、
    前記第3のプロペラ又はファンの推力軸が、前記尾翼より前記尾翼の発生する揚力の方向にある
    電動化航空機。
  14. 推進用の第1のプロペラ又はファンと、前記第1のプロペラ又はファンを駆動する第1の電動モータとを有し、翼の揚力に寄与するように翼の前方に配置された第1の電動推進系の推力を負の値まで調節し、前記第1の電動推進系を回生又は逆回転させることで前記第1のプロペラ又はファンの後流を減速させ、前記翼に作用する動圧を低下させ、飛行に必要な空気力と前記第1の電動推進系の運転状態により変化する空気力との差の変化幅を増加することで、前記変化幅に依存する機体の縦方向運動の制御力を増加する
    電動化航空機の姿勢制御方法。
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