JP7385196B2 - 押し込み試験装置 - Google Patents

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Description

本発明は、被検体の柔らかさを測定できるようにした押し込み試験装置に関するものである。
従来、物品の柔らかさなどを検出するための装置として、下記の特許文献1に記載されるような押し込み試験装置が提案されている。
このような押し込み試験装置は、先端を半球状にした圧子と、この圧子の先端を突出させるように収容するケーシングと、このケーシングと圧子との間に設けられたロードセルとを備えて構成されるものであって、圧子を被検体に押し込んで柔らかさを検出する際に、その被検体への押し込み量Δxや、押し込み時に圧子に作用する荷重F、圧子の半球面の直径φ、被検体のヤング率E、被検体の固有のポアソン比νなどを用いて、下式を用いて被検体のヤング率Eを柔らかさとして測定できるようにしたものである。
Figure 0007385196000001
このような装置を用いれば、圧子を被検体に押し込むことによって、その被検体の柔らかさを測定することができるため、肌の柔らかさ、食品や素材の柔らかさなどを測定することにより、食品の状態や物品の触感などを定量化することができるようになる。
特開2019-132623号公報
しかしながら、このような押し込み試験装置を用いて被検体の柔らかさを測定する場合、次のような問題がある。
すなわち、このような押し込み試験装置を被検体に押し込んで柔らかさを測定する場合、被検体の柔らかさは不変であるにも関わらず、押し込み状態によって測定されるヤング率Eが大きく変わってしまう。
具体的に、圧子の押し込み状態を変化させて押し込んだ際に測定されるヤング率Eを図4に示す。図4において、横軸は圧子の押し込み速度を示したものであり、0.1mm/sから2.0mm/sの範囲内で三種類のサンプルのヤング率Eを測定したものである。図に示すように、圧子を低速で押し込んだ場合と、圧子を高速で押し込んだ場合とでは、高速で圧子を押し込んだ場合の方が低速で圧子を押し込んだ場合に対して、ヤング率Eが高く測定されてしまう。これは、被検体の表面と圧子との粘性などの摩擦などによる影響が含まれていると考えられるが、このように押し込み速度によって、ヤング率Eが極端に大きく変化してしまうと、正確にヤング率Eを測定できているのかどうかが分からなくなる。
そこで、本発明は上記課題に着目して、圧子の押し込み速度に依存することなく、柔らかさを正確に検出できるようにした押し込み試験装置を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するために、柔らかさの測定対象である被検体に押し込まれる圧子と、当該圧子の先端を突出させた状態で圧子を収容するケーシングと、当該ケーシングから突出している圧子を被検体に押圧した際に、その圧子に作用する荷重を検出する荷重検出センサーと、を備えてなる押し込み試験装置において、前記圧子を被検体に押圧する押し込み速度が0.5mm/sから2.0mm/sの範囲内において、前記圧子が被検体に接触しうる先端部分の面積に反比例し、かつ、圧子の押し込み速度に比例する値と、圧子の径、ポアソン比、圧子の変位、被検体への接触力を用いて、被検体の柔らかさを測定する測定部を備えるようにしたものである。
このように構成すれば、押し込み速度に応じて生ずる誤差を補正することができ、正確に柔らかさを測定することができるようになる。
また、このような発明において、前記測定部で柔らかさを測定する場合、下記の数式を用いて被検体の柔らかさであるヤング率を測定する。
Figure 0007385196000002
さらに、前記数式を用いてヤング率を測定する場合、前記数式を時間で微分し、等速で被検体に押し込まれたことを条件として加速度項をゼロと仮定し、前記数式を時間で微分した式と前記数式を用いて、ヤング率と速度依存係数を算出する。
本発明によれば、柔らかさの測定対象である被検体に押し込まれる圧子と、当該圧子の先端を突出させた状態で圧子を収容するケーシングと、当該ケーシングから突出している圧子を被検体に押圧した際に、その圧子に作用する荷重を検出する荷重検出センサーと、を備えてなる押し込み試験装置において、前記圧子を被検体に押圧する押し込み速度が0.5mm/sから2.0mm/sの範囲内において、前記圧子が被検体に接触しうる先端部分の面積に反比例し、かつ、圧子の押し込み速度に比例する値と、圧子の径、ポアソン比、圧子の変位、被検体への接触力を用いて、被検体の柔らかさを測定する測定部を備えるようにしたので、押し込み速度に応じて生ずる誤差を補正することができ、正確に柔らかさを測定することができるようになる。
本発明の押し込み試験装置の構成を示す図 同形態における被検体に圧子を垂直方向に押し込んだ状態図 同形態における押し込み速度を変化させた場合のヤング率を示す比較表 従来例における押し込み速度を変化させた場合のヤング率を示す図
以下、本発明における一実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
この実施の形態における押し込み試験装置1は、被検体6の柔らかさの指標をヤング率Eとして測定できるようにしたものであって、図1に示すように、ケーシング2の内部に、被検体6に押圧される圧子4と、この圧子4を被検体6に押圧させるために駆動する押圧部3と、この押圧部3によって押圧された圧子4に作用する荷重を検出する荷重検出センサー5とを備えて構成される。そして、特徴的に、その圧子4を被検体6に押圧する際の変位Δx、押圧する際の荷重F、圧子4の先端部分の径Φに基づく接触面積Sなどのほか、圧子4を被検体6に押圧する際の速度を考慮して、被検体6の柔らかさの指標をヤング率Eとして出力できるようにしたものである。以下、本実施の形態における押し込み試験装置1について、図面を参照しながら詳細に説明する。
まず、この押し込み試験装置1の構造について、図1や図2を用いて説明する。
この押し込み試験装置1を構成するケーシング2は、内部に押圧部3や荷重検出センサ―や圧子4などを有するものであって、内部を中空に構成される。このケーシング2の先端部分には、被検体6に垂直に圧子4を押圧させるための平面状の接触部21を設けている。この接触部21は、可能な限り押し込み試験装置1の長手方向の軸線CLを被検体6の法線方向とできるように、上方の把持部20よりも外径を大きくしたリング形状としている。なお、ここでは、接触部21をリング形状としているが、把持部20よりも大きくした矩形状の形状であってもよく、その下端面を比較的大きな平面状とするようにしている。そして、このようなケーシング2を人間の手で把持して接触部21を被検体6に押圧させたり、あるいは、治具などに把持部を固定して、接触部21を被検体6に押圧させたりしている。
このケーシング2の内部に設けられる押圧部3は、圧子4を被検体6に押圧できるようにしたものであって、ここでは、サーボモーターで構成される。そして、そのサーボモーターを駆動することによって、その回転量に応じた上下方向の変位を測定できるようにしており、圧子4の変位量を測定しながら被検体6を押圧できるようにしている。なお、ここでは、サーボモーターで押圧部3を構成しているが、バネや手動による押圧によって圧子4を押し込めるようにしてもよい。このとき、圧子4の上下方向の変位が分かるように、変位センサーなどを設けるようにしておく。
荷重検出センサー5は、圧子4を被検体6に押圧した際に作用する荷重を検出できるようにしたものであって、圧子4の上端部分と押圧部3の間に設けられる。ここでは、荷重検出センサー5として、ロードセルを用いる。このロードセルは、周知のように、薄い金属板で構成された起歪部を四方向に設け、これを中央の作用部に向けて起立させてなるもので、その起歪部に掛かる荷重を電気信号の変化として検出できるように構成されるものである。そして、この電気信号の変化によって荷重を検出する際、その起歪部に貼り付けられたホイートストンブリッジによって、その起歪部の変形に伴って生ずる電圧変化を荷重として検出する。この荷重検出センサー5で荷重を検出する場合、ケーシング2の長手方向に沿った荷重を検出する。
この荷重検出センサー5が取り付けられる圧子4は、下端部分を半球面41としたものであって、ケーシング2の内壁に僅かな隙間をもって設けられる摺動部42によって上下動できるようになっている。そして、図2に示すように、圧子4をケーシング2から突出されて被検体6に押圧させ、その被検体6の柔らかさを測定できるようにしている。なお、この圧子4は、測定前においては、図1に示すようにケーシング2の内部に収容されており、その先端の半球面41をケーシング2の接触面21から突出させないようにしておく。そして、計測を開始した段階で、押圧部3を介して圧子4をケーシング2の接触面21から突出させるようにする。
このような構成のもと、圧子4の押圧によって被検体6の柔らかさを測定部を用いて測定する。
従来の測定方法では、被検体6の表面から圧子4を押圧した際の変位Δxや、その際に作用する荷重F、圧子4の半球状の押圧面21の直径Φ、被検体6のポアソン比νなどを用いて以下の数1を用いて測定している。
Figure 0007385196000003
なお、数1において、変位Δxはサーボモーターの回転数に応じて与えられる既知数であり、荷重Fはロードセルから得られる既知数となる。また、圧子4の半球面41の径Φは既知数であり、ポアソン比νは、材料の種類に応じて入力される。なお、ポアソン比νは、ヤング率Eと同様に材料の種類による柔らかさに依存するものであるが、ヤング率Eは材料の種類によって大きな幅を有するのに対して、ポアソン比νは金属で0.2~0.3、樹脂や天然ゴムなどで0.3~0.5程度と非常に幅が小さいものとなる。このため、あらかじめ測定される材料に対して、これらの値を既知数として入力しておく。
ところで、上述の数1を用いてヤング率Eを測定した場合、圧子4の押し込み速度によって、測定されるヤング率Eが大きく変化してしまう。これは、圧子4を押し込む際に、被検体6の表面と圧子4の間の粘性や摩擦などによって誤差が含まれるためと考えられるため、本実施の形態では、次の数2を用いて測定部を用いて測定する。
Figure 0007385196000004
ここで、既知数は、変位Δx、速度Δxの微分値、荷重F、圧子4の径Φや接触表面積S、ポアソン比νであり、未知数としては、ヤング率Eや速度依存係数cとなり、数2だけではヤング率Eや速度依存係数cを測定できない。そのため、数2を時間で微分した数3を用いる。
Figure 0007385196000005
ここで、被検体6を押圧する際の変位量はごく僅かであり、等速で押圧しているものと仮定すると、変位Δxの二回微分の項(加速度項)はゼロとなり、次の数4が得られる。
Figure 0007385196000006
このFの微分項は、荷重をサンプリング時間で割った値であるため、この数4や数2を用いて、ヤング率Eと速度依存係数cを測定することができる。
そして、このように測定されたヤング率Eや速度依存係数cなどを柔らかさの指標として表示可能に出力するとともに、その際の押圧速度も表示できるようにしておく。
このような構成を有する押し込み試験装置1を用いて被検体6を押圧した際のヤング率Eについて、数1を用いた場合と、数4を用いた場合の比較例を図3に示す。
図3においては、押し込み速度を0.5mm/s~10.0mm/sの範囲内で変化させ、サンプルを3種類変えて測定した。このときの押し込み力としては、0.5Nとし、押し込み変位を1mm~2mmとした。
図3から分かるように、数1を用いてヤング率Eを測定した場合、サンプル1では、0.1mm/sで押し込んだ場合のヤング率Eは「27.88kPa」である一方、10.0mm/sで押し込んだ場合のヤング率Eは「51.59kPa」と2倍近い値になる。これに対して、数4を用いた場合は、0.1mm/sで押し込んだ場合のヤング率Eが「26.42kPa」、10.0mm/sで押し込んだ場合のヤング率Eが「38.68kPa」なり、変化が少なくなっていることが分かる。他のサンプルにおいても、数1を用いたヤング率Eは1.5倍近くなるのに対して、数4を用いた方が、変化が少なくなっていることが分かる。
なお、数1や数4を用いて測定されたヤング率Eにおいて、0.1mm/sから2.0mm/sの範囲は、大きな振れがないのに対して、5.0mm/sを超えるとヤング率Eが急激に高く測定されてしまう。これは、被検体6と圧子4の表面の粘性や摩擦力が影響しているものと考えられるため、好ましくは、0.1mm/s~2.0mm/sの範囲内の速度で圧子4を押圧させるようにするのが良いと考えられる。
このように上記実施の形態によれば、柔らかさの測定対象である被検体6に押し込まれる圧子4と、当該圧子4の先端を突出させた状態で圧子4を収容するケーシング2と、当該ケーシング2から突出している圧子4を被検体6に押圧した際に、その圧子4に作用する荷重を検出する荷重検出センサー5とを備えてなる押し込み試験装置1において、前記圧子4を被検体6に押圧する押し込み速度(Δxの微分値)が0.5mm/sから2.0mm/sの範囲内において、前記圧子4が被検体6に接触しうる先端部分の面積Sに反比例し、かつ、圧子4の押し込み速度(Δxの微分値)に比例する値と、圧子の径φ、ポアソン比ν、圧子の変位Δx、被検体への接触力Fを用いて、被検体6の柔らかさであるヤング率Eを測定する測定部を備えるようにしたので、押し込み速度に応じて生ずる誤差を補正することができ、正確に柔らかさを測定することができるようになる。
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。
例えば、上記実施の形態では、圧子4として半球面41を有するものを用いるようにしたが、球状の圧子4を用いるようにしてもよい。この場合、球状の圧子4に棒状部材を用いて押し込むようにする。
また、上記実施の形態では、速度に応じてヤング率Eを補正するようにしたが、押し込み速度が、0.5mm/sよりも小さい場合は、測定値に振れを生じてしまい、一方、押し込み速度が大きい場合は、極端に測定値が大きく測定されてしまう。このため、0.5mm/sから2.0mm/sの範囲内で検査を許容し、押し込み速度が一定値を超えた場合に、正確な測定ができないと判断して、「測定エラー」の表示を行うようにしてもよい。この場合、押し込み速度としては、10.0mm/s以上の値としておくとよい。
さらに、上記実施の形態では、押し込み試験装置1を押し込んで停止させた際にヤング率Eを測定させる場合を想定して説明したが、逐次ヤング率Eを出力するようにしてもよい。この場合、その測定された際における押し込み量や押し込み速度とともにヤング率Eを表示させ、測定値を出力する際には、その測定されたすべてのヤング率Eに対する押し込み量・押し込み速度とともに出力するようにしてもよい。
また、上記実施の形態では、柔らかさの指標としてヤング率Eを出力するようにしたが、柔らかさを数段階にランク付けし、そのランクを表示させるようにしてもよい。この場合の柔らかさのランクとしては、100段階にランク付けされた柔らかさのうち、どの数値に該当するのか、あるいは、柔らかさを星付けして表示させるようにしてもよい。
1・・・押し込み試験装置
2・・・ケーシング
21・・・接触面
3・・・押圧部
4・・・圧子
41・・・半球面
42・・・摺動部
5・・・荷重検出センサー
6・・・被検体

Claims (4)

  1. 柔らかさの測定対象である被検体に押し込まれる圧子と、
    当該圧子の先端を突出させた状態で圧子を収容するケーシングと、
    当該ケーシングから突出している圧子を被検体に押圧した際に、その圧子に作用する荷重を検出する荷重検出センサーと、を備えてなる押し込み試験装置において、
    前記圧子を被検体に押圧する押し込み速度が0.5mm/sから2.0mm/sの範囲内で、前記圧子が被検体に接触しうる先端部分の面積に反比例し、かつ、圧子の押し込み速度に比例する値と、圧子の径、ポアソン比、圧子の変位、被検体への接触力を用いて、被検体の柔らかさを測定する測定部を備えたことを特徴とする柔らか押し込み試験装置。
  2. 前記測定部が、下記の数式を用いて被検体の柔らかさであるヤング率を測定するものである請求項1に記載の押し込み試験装置。
    Figure 0007385196000007
  3. 請求項2に記載の押し込み試験装置において、
    前記数式を時間で微分し、等速で被検体に押し込まれたことを条件として加速度項をゼロと仮定し、前記数式を時間で微分した式と前記数式を用いて、ヤング率と速度依存係数を算出するようにした請求項2に記載の押し込み試験装置。
  4. 柔らかさの測定対象である被検体に押し込まれる圧子と、
    当該圧子の先端を突出させた状態で圧子を収容するケーシングと、
    当該ケーシングから突出している圧子を被検体に押圧した際に、その圧子に作用する荷重を検出する荷重検出センサーと、を備えてなる押し込み試験装置を用いた押し込み試験方法において、
    前記圧子を被検体に押圧する押し込み速度が0.5mm/sから2.0mm/sの範囲内で、前記圧子が被検体に接触しうる先端部分の面積に反比例し、かつ、圧子の押し込み速度に比例する値と、圧子の径、ポアソン比、圧子の変位、被検体への接触力を用いて、被検体の柔らかさを測定するようにしたことを特徴とする柔らか押し込み方法。
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WO2015059878A1 (ja) 2013-10-22 2015-04-30 国立大学法人東京農工大学 粘性係数算出装置、押込試験装置、引張試験装置、粘性係数算出方法およびプログラム
JP2017203668A (ja) 2016-05-10 2017-11-16 国立大学法人京都工芸繊維大学 押込試験装置および押込試験方法

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