本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰り返さない。
<検出システムの全体構成>
図1は、本実施の形態に係る検出システム1000の全体構成を示す模式図である。図1に示すように、検出システム1000は、診療装置1と、検出装置100とを備える。
診療装置1は、たとえば、術者が患者に対して歯科の診療を行うためのチェアユニットである。診療装置1は、チェア11と、ベースンユニット12と、トレーテーブル13と、診療器具15を保持する器具ホルダ14と、フットコントローラ16と、ディスプレイ17と、操作パネル18と、照明装置(オペライト)19と、器具制御装置21と、表示制御装置22と、スピーカ35とを備える。
チェア11は、診療時に患者が座ったり横たわったりするための診療椅子である。チェア11は、患者の頭を支えるヘッドレスト11aと、患者の背中を支える背もたれ11bと、患者の尾尻を支える座面シート11cと、患者の足を支える足置き台11dとを含む。なお、診療装置1は、チェア11に代えて、患者が横たわる診療台を備えてもよい。
ベースンユニット12は、排水口が形成された鉢12aと、コップが載置されるコップ台12bと、コップに給水するための給水栓12cとを含む給水・排水装置である。
トレーテーブル13は、診療時の物置台として用いられる。トレーテーブル13は、チェア11またはチェア11が設置された床から延びるアーム(図示は省略する。)に接続されている。なお、トレーテーブル13は、チェア11またはチェア11が設置された床から延びるアーム(図示は省略する。)によって吊り下げられてもよい。たとえば、トレーテーブル13は、チェア11またはチェア11が設置された床から延びるポール5の上部で分岐するアーム6によって吊り下げられてもよい。術者は、トレーテーブル13をチェア11に対して手動で回動、水平移動、および垂直移動させることができる。診療中において、術者は、トレーテーブル13の上面にトレー30を置くことがある。トレー30には、患者を診療するための1または複数の診療器具が置かれる。
「診療器具」は、ラバーダム防湿一式、ラバーダムシート、根管長測定器、バーセット、ファイル(リーマ)、口角対極、ファールクリップ、ブローチ、洗浄用ニードル、洗浄用シリンジ、仮封材充填器、クレンザー、タービン、ピンセット、ミラー、エキスカベーター、探針、および根管材料注入器など、術者によって診療中に用いられる診療用の器具である。なお、診療装置1の器具ホルダ14によって保持される診療器具15も「診療器具」に含まれるが、トレー30には、器具ホルダ14によって保持されない診療器具が主に置かれる。
診療器具15は、たとえば、エアタービンハンドピース60(図2参照)、マイクロモータハンドピース、超音波スケーラ、およびバキューム70(図2参照)などの歯科診療用のインスツルメントであり、器具制御装置21の制御によって駆動する。なお、診療器具15は、これらに限らず、口腔内カメラ、光重合用照射器、根管長測定器、3次元スキャナ、および根管拡大器などであってもよいし、ミラー、注射器、および充填器具など、駆動しない器具であってもよい。
フットコントローラ16は、術者の足踏み操作を受け付ける複数のスイッチ(ペダル)を有する。術者は、これら複数のスイッチの各々に対して所定の機能を割り当てることができる。たとえば、術者は、チェア11の態様を変更する機能をフットコントローラ16のスイッチに対して割り当てることができ、フットコントローラ16が術者による当該スイッチの足踏み操作を受け付けると、当該足踏み操作に基づきヘッドレスト11aなどが駆動する。さらに、術者は、診療器具15を駆動する機能をフットコントローラ16のスイッチに対して割り当てることもでき、フットコントローラ16が術者による当該スイッチの足踏み操作を受け付けると、当該足踏み操作に基づく器具制御装置21の制御によって診療器具15が駆動する。なお、術者は、照明装置19の照明および消灯を制御する機能など、フットコントローラ16のスイッチに対してその他の機能を割り当てることもできる。
ディスプレイ17は、トレーテーブル13に取り付けられており、表示制御装置22の制御によって各種の画像を表示する。
操作パネル18は、チェア11および診療器具15などの動作、あるいは当該動作の設定を行うためのスイッチを含む。たとえば、チェア11を動作させるための入力操作を操作パネル18が受け付けると、当該入力操作に基づきチェア11が動作する。たとえば、エアタービンハンドピース60の回転速度(回転数)などの設定を行うための入力操作を操作パネル18が受け付けると、当該入力操作に基づきエアタービンハンドピース60の回転速度(回転数)などの設定を行うことができる。
照明装置19は、チェア11またはチェア11が設置された床から延びるポール5の上部で分岐するアーム6の先端に設けられている。照明装置19は、患者の口腔内を中心に光を照射することによって術者による診療をサポートする。なお、照明装置19に限らず、ディスプレイ17も、ポール5またはアーム6の先端に取り付けられてもよい。
さらに、検出システム1000は、歯科診療中の術者および患者の様子を撮影し、撮影によって得られた画像(以下、「撮影画像」とも称する。)を蓄積して記憶するように構成されている。
具体的には、検出システム1000は、ディスプレイ17に取り付けられたトレーカメラ51と、ポール5の上部に取り付けられた全体カメラ52と、照明装置19に取り付けられた患者カメラ53とを備える。トレーカメラ51、全体カメラ52、および患者カメラ53は、CCD(Charge Coupled Devices)イメージセンサおよびCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサなどのイメージングデバイスを搭載したカメラである。
トレーカメラ51は、トレー30を少なくとも含む領域を動画または静止画で撮影するように配置されている。トレーカメラ51によって得られた撮影情報を含む画像データ(以下、「トレー画像データ」とも称する。)は、検出装置100によって取得される。トレーカメラ51におけるシャッタースピードなどの各種設定は、トレー30に置かれた診療器具の有無、形状、種類、およびトレーカメラ51の撮影領域における診療器具の位置などを検出装置100が認識できる程度に予め調整されている。なお、トレーカメラ51は、トレー30を少なくとも含む領域を撮影することができる場所であれば、いずれの場所に設置されてもよい。
全体カメラ52は、診療装置1を含む診療空間を少なくとも含む領域を動画または静止画で撮影するように配置されている。具体的には、全体カメラ52は、診療装置1を用いた診療中の診療空間における、少なくとも、歯科医師、歯科助手、および患者を含む広い領域を動画または静止画で撮影するように配置されている。全体カメラ52は、ポール5の上部に取り付けられているため、診療中の歯科医師、歯科助手、および患者の各々の行動と、診療装置1の動作とを上空から俯瞰して撮影する。
「診療空間」は、診療空間に含まれるオブジェクト全体を含む空間に限らず、診療中の術者、患者、および診療装置1など、診療空間に含まれるオブジェクトのうちの一部のオブジェクトを含む空間であってもよい。全体カメラ52によって得られた撮影情報を含む画像データ(以下、「全体画像データ」とも称する。)は、検出装置100によって取得される。全体カメラ52におけるシャッタースピードなどの各種設定は、診療中の歯科医師や歯科助手などの術者の行動、患者の行動、および診療装置1の動作などを検出装置100が認識できる程度に予め調整されている。
なお、全体カメラ52は、患者を診療する診療空間を少なくとも含む領域を撮影することができる場所であれば、いずれの場所に設置されてもよい。全体カメラ52は、診療空間を平面で認識する他に、診療空間を奥行き方向で認識可能なデプスカメラであってもよい。全体カメラ52は、診療空間を全方位で撮影可能な360度カメラであってもよい。さらに、全体カメラ52は、診療空間に存在する撮影対象(たとえば、術者および患者などの人物)を追尾することができるものであってもよい。
患者カメラ53は、患者の口腔内を少なくとも含む領域を動画または静止画で撮影するように配置されている。具体的には、患者カメラ53は、患者の口腔内を主として、患者の顔および顔の周辺を撮影する。
患者カメラ53によって得られた撮影情報を含む画像データ(以下、「患者画像データ」とも称する。)は、検出装置100によって取得される。患者カメラ53におけるシャッタースピードなどの各種設定は、診療中の患者の口腔内を検出装置100が認識できる程度に予め調整されている。
上述したトレー画像データ、全体画像データ、および患者画像データをまとめて「画像関連データ」とも称する。なお、「画像関連データ」という用語は、トレー画像データ、全体画像データ、および患者画像データの全てを意味する場合もあるが、トレー画像データ、全体画像データ、および患者画像データのうちの少なくともいずれか1つを意味する場合もある。
検出装置100は、主にトレー画像データおよび患者画像データに基づき、撮影画像に含まれる診療器具などのオブジェクトの有無やその種類を検出する。検出装置100は、主に全体画像データに基づき、撮影画像に含まれる歯科医師、歯科助手、および患者などの人物の位置を検出する。「画像関連データ」は、上述した検出装置100による検出結果を含んでいてもよい。つまり、「画像関連データ」は、トレー画像データ、全体画像データ、および患者画像データそのものを含んでいてもよいし、これらのデータに基づき検出装置100の画像認識によって取得された検出結果を含んでいてもよい。
歯科医院においては、歯科医師などの術者がエアタービンハンドピース60およびバキューム70などの診療器具15を用いて患者の歯科診療を行う。エアタービンハンドピース60は、ヘッド部に設けられた切削工具を圧縮空気の力で高速回転させることによって歯牙を切削する診療器具である。術者は、フットコントローラ16の踏み込み量を調整することで圧縮空気の出力量を調整し、エアタービンハンドピース60の切削工具の単位時間当たりの回転数(回転速度)を調整することができる。なお、以下では、エアタービンハンドピース60の切削工具の単位時間当たりの回転数(回転速度)を、単にエアタービンハンドピース60の回転数(回転速度)とも称する。
術者などのユーザは、歯の診療(治療)中におけるエアタービンハンドピース60の回転数を検出することができれば、検出した回転数に基づき様々な制御を実現可能である。たとえば、ユーザは、エアタービンハンドピース60の回転数に基づき、エアタービンハンドピース60の異常を検出することが可能である。ユーザは、エアタービンハンドピース60の回転数に基づき、エアタービンハンドピース60をフィードバック制御することが可能である。さらに、ユーザは、エアタービンハンドピース60の回転数に基づき、エアタービンハンドピース60による治療の態様(治療履歴)を確認することができ、患者の予後の回復に治療が寄与する貢献度を確認することができる。
ここで、エアタービンハンドピース60の回転数は、切削工具が空回りしている状態と、治療中に切削工具が歯に接触している状態とで異なり得る。具体的には、切削工具が歯を削っている場合は切削工具と歯との間の摩擦力が生じることで、エアタービンハンドピース60の回転数が減少する。このため、切削工具が歯に接触している状態においては、切削工具が空回りしている状態よりも、エアタービンハンドピース60の回転数が小さくなる。さらに、切削工具と歯との間の摩擦力は、切削工具と歯との接触具合によって変化するため、エアタービンハンドピース60の回転数は歯の治療中に変化し得る。すなわち、非治療中におけるエアタービンハンドピース60の回転数は、フットコントローラ16の踏み込み量(圧縮空気の出力量)に比例するが、治療中におけるエアタービンハンドピース60の実際の回転数は、フットコントローラ16の踏み込み量(圧縮空気の出力量)に比例するとは限らない。マイクロモータハンドピースのようなモータ駆動によって切削工具を回転させる診療器具であれば、モータに接続されたエンコーダを用いて回転数を検出することができるが、エアタービンハンドピース60の場合は実際(特に治療中)の回転数を検出することは難しい。
そこで、本実施の形態に係る検出システム1000において、検出装置100は、エアタービンハンドピース60を用いた歯の治療中の音を収集し、収集した音(以下、「収集音」とも称する。)に基づきエアタービンハンドピース60の回転数を検出するように構成されている。
具体的には、検出システム1000は、診療装置1の近傍に設置されるマイクロホン40を備える。マイクロホン40は、診療装置1の照明装置19に取り付けられている。歯科診療中においては、照明装置19が患者の口腔を照明するために患者の口腔近くに移動して配置されることで、マイクロホン40も患者の口腔近くに移動して配置される。マイクロホン40は、歯科診療中の音を収集し、検出装置100に収集音を検出装置100に出力する。より具体的には、マイクロホン40は、収集音に対応する音圧波形データ(図4(A)参照)を検出装置100に出力する。なお、検出システム1000は、1つのマイクロホン40を備える場合に限らず、複数のマイクロホン40を備えていてもよい。検出システム1000が複数のマイクロホン40を備えた場合、検出装置100は、主音である回転音と、回転音以外の雑音とを区別して取得することができる。
収集音は、歯科診療中にマイクロホン40によって収集される様々な音を含む。たとえば、収集音は、診療器具15が発する駆動音、診療器具15によって歯を治療するときに生じる治療音、歯科医院で流れる音楽、および歯科医と患者との会話などを含む。診療器具15の駆動音は、エアタービンハンドピース60の回転音、およびバキューム70が発する吸気音などを含む。歯の治療音は、エアタービンハンドピース60による歯の切削音などを含む。言い換えると、収集音は、エアタービンハンドピース60の回転音と、回転音以外の雑音とを含む。雑音は、上述したように、バキューム70が発する吸気音、歯の治療音、歯科医院で流れる音楽、および人の会話などを含む。
たとえば、歯科診療が行われる歯科診療室の大きさは、9.9m2以上であり、歯科医師一人につき1室が好ましいとされている。また、歯科診療室の大きさが9.9m2の2倍または3倍の大きさであっても、収納部またはカーテンなどによって約9.9m2ごとに部屋が分けられ、2つまたは3つの診療室が設けられることがある。このような歯科診療室が用いられるため、マイクロホン40によって収集される収集音は、一定の物(たとえば、予め決められた種類の物)から発生する音のみとなる傾向がある。
また、複数の診療装置1のそれぞれから複数の回転音が発せられる場合、指向性の高いマイクロホン40を複数の診療装置1の各々に向けることによって、検出装置100は、複数の診療装置1のそれぞれから発せられる複数の回転音を区別して取得することができる。さらに、検出装置100は、診療装置1においてエアタービンハンドピース60が回転する際の動作ログ(後述する診療関連データ)と、回転音とを同期させることによって、現在発せられている回転音が複数の診療装置1のいずれから発せられたものかを判別することができる。
このように、収集音には、エアタービンハンドピース60の回転音に限らず、バキューム70が発する吸気音などの雑音も含まれるため、エアタービンハンドピースの回転数を精度よく検出するためには、収集音からエアタービンハンドピースの回転音を精度よく抽出することが必要である。
そこで、本実施の形態に係る検出システム1000において、検出装置100は、AI(Artificial Intelligence)技術を用いて、エアタービンハンドピース60の駆動中にマイクロホン40によって収集された収集音から雑音を取り除くことで、エアタービンハンドピース60の回転音を推定する。そして、検出装置100は、エアタービンハンドピース60の回転音に基づきエアタービンハンドピース60の回転数(回転速度)を検出する。
なお、検出システム1000は、1つのマイクロホン40に限らず、複数のマイクロホン40を備えていてもよい。また、診療装置1が少なくとも1つのマイクロホン40を備えていてもよいし、検出装置100が少なくとも1つのマイクロホン40を備えていてもよい。
なお、本実施の形態においては、表示装置110が検出装置100に接続されているが、表示装置110に限らずキーボードやマウスなどの操作ツール(ユーザインターフェース)が検出装置100に接続されていてもよい。
<検出システムの内部構成>
図2は、本実施の形態に係る検出システム1000の内部構成を示すブロック図である。図2に示すように、検出システム1000は、複数のカメラ(トレーカメラ51、全体カメラ52、患者カメラ53)と、診療装置1と、検出装置100とを備える。
[診療装置の内部構成]
診療装置1は、チェア11と、器具制御装置21と、表示制御装置22と、音制御装置32と、ベースンユニット12とを備える。診療装置1の内部において、チェア11、器具制御装置21、表示制御装置22、音制御装置32、およびベースンユニット12の各々は、CAN(Controller Area Network)通信を介してデータの送受信を行うことができる。また、診療装置1は、検出装置100との間で、有線または無線のLAN(Local Area Network)通信、たとえばWiFiによる通信を介してデータの送受信を行うことができる。なお、診療装置1は、検出装置100との間で、USB(Universal Serial Bus)接続による通信を介してデータの送受信を行ってもよいし、その他の接続による通信を介してデータの送受信を行ってもよい。
チェア11は、ヘッドレスト11aと、背もたれ11bと、座面シート11cと、足置き台11dとを含み、これらの各々は、チェア制御部111の制御に基づき駆動する。具体的には、チェア制御部111は、フットコントローラ16または操作パネル18によって受け付けられた術者の操作に基づく制御データ、あるいは、検出装置100からの制御データを受信すると、当該制御データに基づき、座面シート11cを上昇または下降させたり、ヘッドレスト11a、背もたれ11b、および足置き台11dを座面シート11cに対して垂直方向または水平方向に移動させたりする。ヘッドレスト11a、背もたれ11b、および足置き台11dが座面シート11cに対して垂直方向に位置すると、チェア11が起立した態様となる。これにより、患者がチェア11に座った姿勢になる。ヘッドレスト11a、背もたれ11b、および足置き台11dが座面シート11cに対して水平方向に位置すると、チェア11が傾斜した態様となる。これにより、患者がチェア11に横たわり、仰向け姿勢になる。このように、チェア制御部111は、ヘッドレスト11a、背もたれ11b、座面シート11c、および足置き台11dを駆動させてチェア11の姿勢を変更する。
器具制御装置21は、器具制御部211を含む。器具制御部211は、フットコントローラ16または操作パネル18によって受け付けられた術者の操作に基づく制御データ、あるいは、検出装置100からの制御データを受信すると、当該制御データに基づき、診療器具15の駆動または設定内容を制御する。たとえば、術者が、フットコントローラ16におけるエアタービンハンドピース60を駆動するためのスイッチを足踏み操作すると、器具制御装置21は、エアタービンハンドピース60のヘッド部に保持された切削工具を回転させる。たとえば、検出装置100が、エアハンドピース50の回転方向または回転速度(回転数)などを制御するための制御データを出力すると、器具制御装置21は、制御データに基づき、エアタービンハンドピース60の回転方向または回転数(回転速度)などを設定する。このように、器具制御装置21は、フットコントローラ16または操作パネル18に対する術者の操作に基づき診療器具15の駆動を制御する。
表示制御装置22は、ディスプレイ制御部221と、パネル制御部222とを含む。ディスプレイ制御部221は、検出装置100からの制御データを受信すると、当該制御データに基づき、ディスプレイ17を制御する。パネル制御部222は、検出装置100の制御に基づく制御データを受信すると、当該制御データに基づき、操作パネル18を制御する。
ベースンユニット12は、ベースン制御部121と、照明制御部122とを含む。ベースン制御部121は、検出装置100からの制御データを受信すると、当該制御データに基づき、ベースンユニット12における給水および排水を制御する。照明制御部122は、検出装置100からの制御データを受信すると、当該制御データに基づき、照明装置19の照明および消灯を制御する。
上述したチェア制御部111、器具制御部211、ディスプレイ制御部221、パネル制御部222、ベースン制御部121、および照明制御部122の各々は、図示しない基板上に実装されたCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、およびRAM(Random access memory)などによって構成される。なお、チェア制御部111、器具制御部211、ディスプレイ制御部221、パネル制御部222、ベースン制御部121、および照明制御部122の各々は、予め診療装置1に備え付けられていてもよいし、モジュール化されることでオプションとして任意に診療装置1に取り付け可能であってもよい。
チェア制御部111、器具制御部211、ディスプレイ制御部221、パネル制御部222、ベースン制御部121、および照明制御部122の各々におけるCAN通信では、各制御部におけるログデータを含む診療関連データを通信パケットにして、制御部間で互いに通信が行われる。なお、制御部間の通信では、診療関連データが送受信されさえすれば当該診療関連データを必ずしも通信パケットにする必要はない。
「診療関連データ」は、診療装置1が備えるチェア11、ベースンユニット12、照明装置19、器具制御装置21、表示制御装置22、診療器具15、フットコントローラ16、ディスプレイ17、操作パネル18の少なくともいずれか1つにおける過去および現在の少なくとも1つの制御データを含む。たとえば、上述したように、「診療関連データ」は、診療装置1が備えるチェア11、ベースンユニット12、照明装置19、器具制御装置21、表示制御装置22、診療器具15、フットコントローラ16、ディスプレイ17、および操作パネル18の各々における動作および制御の履歴を示すログデータを含む。なお、「診療関連データ」は、ログデータのように各種装置における動作および制御の履歴データに限らず、各種装置における動作および制御のリアルタイムのデータを含んでいてもよい。さらに、「診療関連データ」は、各種装置における現在のステータスに関するデータを含んでいてもよい。たとえば、「診療関連データ」は、チェア11の現在の態様(姿勢および位置など)を特定するためのデータを含んでいてもよい。
ベースンユニット12は、診療装置1内のログデータを含む診療関連データを蓄積する蓄積部123と、蓄積部123によって蓄積された診療関連データを通信によって検出装置100に出力するための通信部124とを含む。
蓄積部123は、チェア制御部111、器具制御部211、ディスプレイ制御部221、パネル制御部222、ベースン制御部121、および照明制御部122の各々との間でCAN通信することで、各制御部から診療関連データを収集して蓄積する。蓄積部123は、図示しない基板上に実装されたROMまたはRAMなどのメモリによって構成されてもよいし、メモリカードなどの不揮発の記憶媒体で構成されてもよい。
通信部124は、有線または無線のLAN通信、USB接続、あるいはその他の接続によって検出装置100との間で通信する。なお、蓄積部123がメモリカードなどの不揮発の記憶媒体で構成されている場合、検出装置100は、通信装置101によって診療装置1の通信部124を介して、当該記憶媒体に蓄積されている診療関連データを取得してもよい。また、検出装置100は、一時的に記憶する揮発性の記憶媒体を介して、CAN通信に流れている診療関連データを、直接的に取得してもよい。
[検出装置の内部構成]
検出装置100は、通信装置101と、演算装置102と、記憶装置103とを備える。
通信装置101は、診療装置1との間で通信する一方で、トレーカメラ51、全体カメラ52、および患者カメラ53の各々との間で通信可能である。通信装置101は、有線または無線のLAN通信、あるいはUSB接続によって各カメラとの間で通信することで、各カメラから画像関連データを取得する。なお、通信装置101は、その他の形式で各カメラから画像関連データを取得してもよい。たとえば、通信装置101は、各カメラから取り出されたメモリカードなどの不揮発の記録媒体に一時的に記録される画像関連データを取得してもよい。なお、診療装置1との間の通信と、各カメラとの間の通信とは、互いに別の装置で行われてもよい。
通信装置101は、有線または無線のLAN通信、あるいはUSB接続によって診療装置1との間で通信可能である。たとえば、通信装置101は、診療装置1との間で通信することで、診療装置1から診療関連データを取得する。なお、通信装置101は、その他の形式で診療装置1から診療関連データを取得してもよい。たとえば、上述したように、蓄積部123がメモリカードなどの不揮発の記憶媒体で構成されている場合、検出装置100は、通信装置101によって診療装置1の通信部124を介して、当該記憶媒体に蓄積されている診療関連データを取得してもよい。
さらに、通信装置101は、診療装置1との間で通信することで、演算装置102によって検出されたエアタービンハンドピース60の回転数を示す回転数データを診療装置1に出力する。診療装置1は、検出装置100から回転数データを取得すると、取得した回転数データに基づき、エアタービンハンドピース60を制御するための制御データを生成してもよい。
通信装置101は、マイクロホン40との間で通信することで、マイクロホン40によって収集される収集音に対応する音圧波形のデータを取得する。通信装置101に入力された収集音は、演算装置102によって処理される。
通信装置101は、表示装置110との間で通信することで、表示装置110が表示する画像に対応する画像データを表示装置110に出力する。
なお、検出装置100は、通信装置101を介して、診療装置1、トレーカメラ51などの各カメラ、マイクロホン40、および表示装置110の各装置との間でデータを送受信するが、これら複数の装置のそれぞれと通信可能な複数の通信装置(インターフェース)を備えていてもよい。すなわち、検出装置100は、診療装置1、トレーカメラ51などの各カメラ、マイクロホン40、および表示装置110の各装置に対して共通または異なる通信装置(インターフェース)を備えていてもよい。
演算装置102は、各種のプログラムを実行することで、各種の処理を実行する演算主体(コンピュータ)である。演算装置102は、たとえば、CPU、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、およびGPU(Graphics Processing Unit)などで構成される。
なお、演算装置102は、CPU、FPGA、およびGPUの少なくとも1つで構成されてもよいし、CPUとFPGA、FPGAとGPU、CPUとGPU、あるいはCPU、FPGA、およびGPUから構成されてもよい。また、演算装置102は、演算回路(processing circuitry)で構成されてもよい。
記憶装置103は、演算装置102が任意のプログラムを実行するにあたって、プログラムコードやワークメモリなどを一時的に格納する揮発性の第1記憶領域(たとえば、ワーキングエリア)を含む。たとえば、記憶装置103は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)またはSRAM(Static Random Access Memory)などの揮発性メモリデバイスで構成される。さらに、記憶装置103は、不揮発性の第2記憶領域を含む。たとえば、記憶装置103は、ハードディスクまたはSSD(Solid State Drive)などの不揮発性メモリデバイスで構成される。
なお、本実施の形態においては、揮発性の第1記憶領域と不揮発性の第2記憶領域とが同一の記憶装置103に含まれる例を示したが、揮発性の第1記憶領域と不揮発性の第2記憶領域とが互いに異なる記憶装置に含まれていてもよい。たとえば、演算装置102が揮発性の第1記憶領域を含んでいてもよい。検出装置100は、演算装置102と、記憶装置103とを含むマイクロコンピュータを備えていてもよい。
記憶装置103は、検出装置100が備えるものに限らない。たとえば、診療装置1に通信可能に接続された院内サーバが記憶装置103を備えていてもよいし、診療装置1が設置された診療空間外に設置された院外サーバが記憶装置103を備えていてもよい。さらに、記憶装置103は、複数の診療装置1のそれぞれが備える複数の検出装置100が通信可能なクラウドコンピューティングの態様で存在してもよい。このようにすれば、複数の診療装置1から取得した画像関連データおよび診療関連データを記憶装置103によって一律に蓄積しかつ管理することができる。
記憶装置103は、推定モデル151と、検出プログラム152とを格納する。推定モデル151は、ニューラルネットワーク1511(図3参照)と、ニューラルネットワークにおける処理で用いられるパラメータ1512(図3参照)(判定閾値、重み係数など)とを含む。パラメータ1512は、ニューラルネットワーク1511による計算に用いられる重み付け係数と、推定の判定に用いられる判定値とを含む。ニューラルネットワーク1511は、畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolution Neural Network)、リカレントニューラルネットワーク(再帰型ニューラルネットワーク)(RNN:Recurrent Neural Network)、あるいはLSTMネットワーク(Long Short Term Memory Network)など、収集音に基づきエアタービンハンドピース60の回転音を推定することができるニューラルネットワークであれば、いずれのニューラルネットワークであってもよい。
演算装置102は、通信装置101から入力される収集音と、推定モデル151とに基づき、収集音からエアタービンハンドピース60の回転音以外の雑音を取り除くことで、エアタービンハンドピース60の回転音を推定する。推定モデル151は、通信装置101から入力される収集音に基づき、エアタービンハンドピース60の回転音を推定するように、機械学習を行うことで最適化(調整)される。
具体的には、推定モデル151は、ニューラルネットワーク1511における処理で用いられるパラメータ1512が教師データなどに基づいて適正化されることで、エアタービンハンドピース60の回転音の推定精度を向上させることができる。
たとえば、推定モデル151の学習段階において用いられる教師データは、入力データとして収集音の音圧波形データ(図4(A)参照)と、正解データとして回転音の音圧波形データ(図4(B)参照)とを含む。入力データである収集音の音圧波形データとしては、歯科医院などで実際に歯科診療中にマイクロホン40によって収集された雑音を含む収集音の音圧波形データが用いられる。たとえば、入力データとしては、雑音が生じる歯科医院などにおいてエアタービンハンドピース60を100000~400000rpmの間で変動させながら回転させた状態で歯科診療を行った場合の収集音の音圧波形データが用いられる。また、正解データとしては、雑音が生じない環境においてエアタービンハンドピース60を100000~400000rpmの間で変動させながら回転させた場合の収集音の音圧波形データが用いられる。
学習段階において、推定モデル151は、ある特定の回転パターンでエアタービンハンドピース60が回転した場合の入力データが入力されると、入力データに基づきエアタービンハンドピース60の回転音の音圧波形データを推定する。推定モデル151によって推定された回転音の音圧波形データ(推定結果)は、同じくある特定の回転パターンでエアタービンハンドピース60が回転した場合の正解データと比較され、両者の差が小さくなるようにパラメータ1512が調整される。これにより、推定モデル151は、収集音の音圧波形データに基づき、エアタービンハンドピース60の回転音の音圧波形データを推定するように学習する。
演算装置102は、推定したエアタービンハンドピース60の回転音に基づき、エアタービンハンドピース60の回転数を検出する。また、演算装置102は、検出したエアタービンハンドピース60の回転数に基づき、エアタービンハンドピース60の異常を検出するための処理を実行したり、エアタービンハンドピース60の回転数を所望の回転数にするフィードバック制御のための処理を実行したりすることができる。さらに、演算装置102は、エアタービンハンドピース60による治療の態様(治療履歴)をユーザに確認させるための処理を実行することもできる。たとえば、演算装置102は、エアタービンハンドピース60を用いた治療中におけるエアタービンハンドピース60の回転数を取得しておくことによって、エアタービンハンドピース60の回転数と、治療後の患者の歯の状態の経過の相関とを分析することができる。
また、演算装置102がエアタービンハンドピース60の回転音を推定する処理を「推定処理」とも称し、演算装置102が推定モデルを学習する処理を「学習処理」とも称する。学習処理によって最適化された推定モデルを、特に「学習済モデル」とも称する。つまり、本実施の形態においては、学習前の推定モデルおよび学習済みの推定モデルをまとめて「推定モデル」と総称する一方で、特に、学習済みの推定モデルを「学習済モデル」とも称する。さらに、演算装置102が推定処理によって推定されたエアタービンハンドピース60の回転音に基づき、エアタービンハンドピース60の回転数を検出する処理を「検出処理」とも称する。
検出プログラム152は、演算装置102が推定処理、学習処理、および検出処理を実行するためのプログラムである。
検出装置100には、表示装置110が接続されている。表示装置110は、たとえば、回転数に基づきエアタービンハンドピース60の異常が検出された場合には、術者などのユーザに当該異常を知らせる内容(文字、アイコン、画像など)を表示する。また、表示装置110は、回転数に基づきエアタービンハンドピース60がフィードバック制御される場合には、ユーザにエアタービンハンドピース60の回転数の調整を指示する内容(文字、アイコン、画像など)を表示する。さらに、表示装置110は、回転数に基づき患者の治療の態様(治療履歴)が確認される場合には、ユーザに患者の治療の態様(治療履歴)を知らせる内容(文字、アイコン、画像など)を表示する。
なお、表示装置110に限らずキーボードやマウスなどの操作ツール(ユーザインターフェース)が検出装置100に接続されていてもよく、術者などのユーザによって学習処理用のデータが入力されるように構成されてもよい。表示装置110は、検出装置100が備えていてもよい。
上述した例では、検出装置100が診療装置1と別体となるように構成されていたが、検出装置100は、エッジコンピューティングの態様で、診療装置1の内部に小型のコンピュータとして実装されてもよい。この場合、検出装置100は、診療装置1に含まれるチェア11、器具制御装置21、表示制御装置22、音制御装置32、およびベースンユニット12の各々との間で、CAN通信を介してデータの送受信を行ってもよい。
<検出装置による回転数の検出処理>
図3~図6を参照しながら、検出装置100によるエアタービンハンドピース60の回転数の検出処理について説明する。図3は、本実施の形態に係る検出装置100の機能構成を示すブロック図である。
図3に示すように、検出装置100は、主な機能部として、入力部1101と、検出部1020と、記憶部1030と、出力部1012とを備える。なお、入力部1101および出力部1012は、通信装置101の機能部であり、検出部1020は、演算装置102の機能部であり、記憶部1030は、記憶装置103の機能部である。また、図3においては、マイクロホン40の機能部が、集音部140として示されている。
入力部1101は、集音部140によって収集される収集音を取得する。収集音は、エアタービンハンドピース60の回転音と、当該回転音以外の雑音とを含む。たとえば、図4は、収集音に基づき回転音から雑音を分離させた場合の音圧波形の一例を示す図である。図4においては、横軸に時間をとり、縦軸に音圧をとった音圧波形のグラフが示されている。図4(A)に示すように、入力部1101には、回転音と雑音とを含む収集音の音圧波形データが入力される。
図3に戻り、検出部1020は、推定部1021と、FFT(Fast Fourier Transform)部1022と、BPF(Band Pass Filter)部1023とを備える。
推定部1021は、入力部1101から入力される収集音と、記憶部1030に記憶された推定モデル151とに基づき、収集音から雑音を取り除くことで、エアタービンハンドピース60の回転音を推定する。具体的には、推定部1021は、図4(A)に示す収集音の音圧波形を、図4(B)に示す回転音の音圧波形と、図4(C)に示す雑音の音圧波形とに音源分離させることで、回転音の音圧波形を算出する。推定部1021による回転音の推定結果(図4(B)の音圧波形データ)は、FFT部1022に出力される。
FFT部1022は、推定部1021によって推定されたエアタービンハンドピース60の回転音に対して高速フーリエ変換を行うことで、回転音の周波数特性を算出する。たとえば、図5は、回転音の音圧波形に高速フーリエ変換を行った場合の回転音の周波数特性の一例を示す図である。図5(A)においては、横軸に時間をとり、縦軸に音圧をとった音圧波形が示されている。図5(B)においては、横軸に周波数をとり、縦軸に音圧をとった周波数特性のグラフが示されている。FFT部1022は、推定部1021から取得した図5(A)に示す回転音の音圧波形に対して高速フーリエ変換を行うことで、図5(B)に示す回転音の周波数特性のデータを算出する。FFT部1022による回転音の周波数特性のFFT結果(図5(B)の周波数特性のデータ)は、BPF部1023に出力される。
BPF部1023は、回転音の周波数特性のデータに対してバンドパスフィルタをかけることで、エアタービンハンドピース60の回転周波数を算出する。たとえば、図6は、バンドパスフィルタがかけられた回転音の周波数特性一例を示す図である。図6においては、横軸に周波数をとり、縦軸に音圧をとった周波数特性のグラフが示されている。図6に示すように、BPF部1023は、FFT部1022によって取得された回転音の周波数特性のデータに対して、有効回転数領域でバンドパスフィルタをかけることで、エアタービンハンドピース60の回転数を算出する。図6の例においては、BPF部1023は、約3333Hz(約200000rpm)~約6666Hz(約400000rpm)の回転周波数(回転数)を算出している。BPF部1023によって算出されたBPF結果(回転周波数(回転数))は、出力部1012に出力される。
出力部1012は、エアタービンハンドピース60の回転周波数(回転数)を示す回転数データを、外部に出力する。たとえば、検出装置100は、出力部1012によって、回転数データを診療装置1に出力する。
<検出装置の検出処理>
図7を参照しながら、検出装置100が実行する検出処理について説明する。図7は、本実施の形態に係る検出装置100が実行する検出処理の一例を説明するためのフローチャートである。図7に示す各ステップ(以下、「S」で示す。)は、検出装置100の演算装置102が検出プログラム152を実行することで実現される。なお、検出装置100は、診療中に限らず検出処理を常に繰り返し実行してもよいし、患者がチェア11に座った後に検出処理を繰り返し実行してもよいし、患者がチェア11に座って診療が開始された後に検出処理を繰り返し実行してもよい。さらに、検出装置100は、エアタービンハンドピース60が駆動したことを条件として、検出処理を所定周期(たとえば、1秒間隔)で繰り返し実行してもよい。なお、検出装置100は、エアタービンハンドピース60の駆動が停止してから所定時間(たとえば、3秒間)が経過したことを条件に、検出処理を終了してもよい。
図7に示すように、まず、検出装置100は、マイクロホン40によって収集される収集音を取得する(S1)。次に、検出装置100は、収集音の音圧が一定値以上であるか否かを判定する(S2)。検出装置100は、収集音の音圧が一定値未満である場合(S2でNO)、本処理フローを終了する。一方、検出装置100は、収集音の音圧が一定値以上である場合(S2でYES)、S3の処理に移行する。このように、検出装置100は、収集音の音圧が一定値未満であるために収集音を推定モデル151による推定に上手く利用できない場合は、S3以降の処理を実行しないため、検出装置100の処理負荷を低減することができる。
S3の処理において、検出装置100は、収集音と推定モデル151とに基づき、収集音から雑音を取り除くことで、エアタービンハンドピース60の回転音を推定する(S3)。次に、検出装置100は、収集音と推定モデル151とに基づきエアタービンハンドピース60の回転音を推定することができたか否かを判定する(S4)。検出装置100は、エアタービンハンドピース60の回転音を推定することができなかった場合(S4でNO)、本処理フローを終了する。一方、検出装置100は、エアタービンハンドピース60の回転音を推定することができた場合(S4でYES)、S5の処理に移行する。このように、検出装置100は、エアタービンハンドピース60の回転音を推定することができない場合は、S5以降の処理を実行しないため、検出装置100の処理負荷を低減することができる。
S5の処理において、検出装置100は、推定したエアタービンハンドピース60の回転音に対して高速フーリエ変換を行うことで、回転音の周波数特性を算出する(S5)。次に、検出装置100は、回転音の周波数特性のデータに対してバンドパスフィルタをかけることで、エアタービンハンドピース60の回転周波数を算出する(S6)。その後、検出装置100は、本処理フローを終了する。
以上のように、検出装置100は、エアタービンハンドピース60の駆動中に収集される収集音と、ニューラルネットワーク1511を含む推定モデル151とに基づき、エアタービンハンドピース60の回転音を推定し、推定した回転音に基づき回転数を検出する。これにより、検出装置100は、収集音に回転音以外の雑音が含まれていた場合でも、エアタービンハンドピース60の回転音に基づき、回転数を精度よく検出することができる。
<変形例>
本開示は、上記の実施例に限られず、さらに種々の変形、応用が可能である。以下、本開示に適用可能な変形例について説明する。
[推定モデルについて]
本実施の形態においては、検出装置100は、エアタービンハンドピース60の駆動中に収集される収集音と推定モデル151とに基づき、エアタービンハンドピース60の回転音を推定していたが、さらに他の情報に基づきエアタービンハンドピース60の回転音を推定してもよい。
たとえば、検出装置100は、収集音に加えて、エアタービンハンドピース60の駆動制御に関する駆動制御情報を取得し、収集音および駆動制御情報と推定モデル151とに基づき、エアタービンハンドピース60の回転音を推定してもよい。具体的には、入力部1101には、集音部140によって収集される収集音に加えて、エアタービンハンドピース60の駆動制御に関する駆動制御情報が入力されてもよい。検出部1020は、収集音および駆動制御情報と推定モデル151とに基づき、エアタービンハンドピース60の回転音を推定してもよい。駆動制御情報は、エアタービンハンドピース60を駆動させるための圧縮空気の供給量を含む。たとえば、検出装置100は、術者がフットコントローラ16の踏み込み量を調整することによって変化する圧縮空気の供給量を定期的に取得し、取得した圧縮空気の供給量と推定モデル151とに基づき、収集音から雑音を取り除いて回転音を推定してもよい。
学習段階において、推定モデル151は、ある特定の回転パターンでエアタービンハンドピース60が回転した場合の収集音の音圧波形データと、その際の圧縮空気の供給量とが入力されると、入力データに基づきエアタービンハンドピース60の回転音の音圧波形データを推定する。推定モデル151によって推定された回転音の音圧波形データは、同じくある特定の回転パターンでエアタービンハンドピース60が回転しかつ圧縮空気が供給された場合の正解データと比較され、両者の差が小さくなるようにパラメータ1512が調整される。これにより、推定モデル151は、収集音の音圧波形データおよび圧縮空気の供給量に基づき、エアタービンハンドピース60の回転音の音圧波形データを推定するように学習する。
あるいは、検出装置100は、診療装置1の制御に関する診療制御情報を取得し、収集音および診療制御情報と推定モデル151とに基づき、エアタービンハンドピース60の回転音を推定してもよい。具体的には、入力部1101には、集音部140によって収集される収集音に加えて、診療関連データが入力されてもよい。検出部1020は、収集音および診療関連データと推定モデル151とに基づき、エアタービンハンドピース60の回転音を推定してもよい。診療関連データは、チェア11、ベースンユニット12、照明装置19、器具制御装置21、表示制御装置22、診療器具15、フットコントローラ16、ディスプレイ17、操作パネル18の少なくともいずれか1つにおける過去および現在の少なくとも1つの制御データを含む。すなわち、診療関連データは、術者による患者の歯科治療の際の診療装置1の動作を示しているため、推定モデル151は、診療関連データに基づき、たとえば、診療装置1の動作(エアタービンハンドピース60に対する圧縮空気の供給量など)を学習することができる。
より具体的には、検出装置100は、診療装置1の制御に関する診療制御情報としてバキューム70の制御情報を取得し、収集音およびバキューム70の制御情報に基づき、収集音からバキューム70が発する吸気音などの雑音を取り除くことで、エアタービンハンドピース60の回転音を推定してもよい。すなわち、検出装置100は、バキューム70の動作を学習することで、収集音からバキューム70が発する吸気音を取り除くことで、エアタービンハンドピース60の回転音を推定してもよい。
学習段階において、推定モデル151は、ある特定の回転パターンでエアタービンハンドピース60が回転した場合の収集音の音圧波形データと、その際の診療関連データとが入力されると、入力データに基づきエアタービンハンドピース60の回転音の音圧波形データを推定する。推定モデル151によって推定された回転音の音圧波形データは、同じくある特定の回転パターンでエアタービンハンドピース60が回転しかつ診療装置1が動作した場合の正解データと比較され、両者の差が小さくなるようにパラメータ1512が調整される。これにより、推定モデル151は、収集音の音圧波形データおよび画像関連データに基づき、エアタービンハンドピース60の回転音の音圧波形データを推定するように学習する。
あるいは、検出装置100は、患者を診療する診療空間の撮影画像を取得し、収集音および撮影画像と推定モデル151とに基づき、エアタービンハンドピース60の回転音を推定してもよい。具体的には、入力部1101には、集音部140によって収集される収集音に加えて、診療空間の撮影画像のデータが入力されてもよい。検出部1020は、収集音および撮影画像のデータと推定モデル151とに基づき、エアタービンハンドピース60の回転音を推定してもよい。撮影画像のデータは、トレー画像データ、全体画像データ、および患者画像データといった画像関連データを含む。すなわち、画像関連データは、術者による患者の歯科治療の様子を映し出した画像のデータを含むため、推定モデル151は、画像関連データに基づき、たとえば、術者の行動(エアタービンハンドピース60の取り出し、フットコントローラ16の踏み込みなど)を学習することができる。
学習段階において、推定モデル151は、ある特定の回転パターンでエアタービンハンドピース60が回転した場合の収集音の音圧波形データと、その際の画像関連データとが入力されると、入力データに基づきエアタービンハンドピース60の回転音の音圧波形データを推定する。推定モデル151によって推定された回転音の音圧波形データは、同じくある特定の回転パターンでエアタービンハンドピース60が回転しかつ術者および患者が動作した場合の正解データと比較され、両者の差が小さくなるようにパラメータ1512が調整される。これにより、推定モデル151は、収集音の音圧波形データおよび画像関連データに基づき、エアタービンハンドピース60の回転音の音圧波形データを推定するように学習する。
[検出装置の出力について]
本実施の形態においては、検出装置100は、出力部1012によって、推定した回転数を示す回転数データを診療装置1に出力していたが、このような制御以外の制御を実行してもよい。
たとえば、検出装置100は、推定した回転数に基づきエアタービンハンドピース60を制御するための制御データを生成し、出力部1012によって、制御データを診療装置1に出力してもよい。診療装置1の器具制御装置21(器具制御部211)は、検出装置100から取得した制御データに基づき、エアタービンハンドピース60を駆動してもよい。
あるいは、検出装置100は、推定した回転数を示す回転数データを、エアタービンハンドピース60の異常を検出する異常検出部に出力してもよい。異常検出部は、検出装置100から取得した回転数データに基づき、エアタービンハンドピース60の異常を検出してもよい。なお、異常検出部は、診療装置1が備える構成であってもよいし、診療装置1とは異なる他の装置が備える構成であってもよい。
あるいは、検出装置100は、推定した回転数に基づきエアタービンハンドピース60の異常を検出するための検出データを生成し、出力部1012によって、検出データを診療装置1または表示装置110に出力してもよい。診療装置1は、検出装置100から取得した検出データに基づき、エアタービンハンドピース60の異常をユーザに通知してもよい。また、表示装置110は、検出装置100から取得した検出データに基づき、エアタービンハンドピース60の異常をユーザに通知する内容(文字、アイコン、画像など)を表示してもよい。
あるいは、検出装置100は、検出したエアタービンハンドピース60の回転数を、図示しない外部の記録装置へ出力してもよい。記録装置は、検出装置100によって入力された回転数を、メモリおよびハードディスクなどの記憶媒体へ時系列に記録する。なお、この記録媒体は、検出装置100が備えていてもよい。この場合、検出装置100が備える記録媒体が、検出されたエアタービンハンドピース60の回転数を時系列に記録する。
[検出装置について]
本実施の形態においては、検出装置100は、診療装置1が設置された診療空間内に配置されていたが、診療空間内に設置されたサーバであってもよい。この場合、検出装置100は、診療空間内に設置された複数の診療装置1に接続され、これら複数の診療装置1の各々について、収集音に基づきエアタービンハンドピース60の回転音を推定してもよい。このようにすれば、検出装置100による機械学習の頻度が上がり、検出装置100は、より精度よく回転音を推定することができる。
検出装置100は、診療装置1が設置された診療空間外に設置されたサーバなど、クラウドコンピューティングの態様で存在してもよい。この場合、検出装置100は、診療空間内に設置された複数の診療装置1に接続されるとともに、他の歯科医院に設置された複数の診療装置1にも接続され、これら複数の診療装置1の各々について、収集音に基づきエアタービンハンドピース60の回転音を推定してもよい。このようにすれば、検出装置100による機械学習の頻度がさらに上がり、検出装置100は、より精度よく回転音を推定することができる。また、推定精度が十分な推定モデルを不必要にチューニングして過学習させないようにすることができる。検出装置100がクラウドコンピューティングの態様で収集した大量のデータを用いて機械学習を行えば、少量のデータを用いて機械学習を行うよりも、過学習を抑制することができる。
上述した検出装置100は、先に、マイクロホン40によって収集された収集音と推定モデル151とに基づき回転音を推定し、その後に、推定した回転音に対して高速フーリエ変換を行うことで回転音の周波数成分を算出するように構成されていた。しかしながら、図8および図9に示すように、変形例に係る検出装置100Aは、先に、マイクロホン40によって収集された収集音に対して高速フーリエ変換を行うことで雑音および回転音を含む収集音の周波数特性を算出し、その後に、収集音の周波数特性結果と推定モデル151とに基づき回転音の周波数成分を推定してもよい。
図8は、変形例に係る検出装置100Aの機能構成を示すブロック図である。図8に示すように、検出装置100Aは、検出部1120と、記憶部1030に記憶された推定モデル161とを備える。検出部1120は、FFT部1122と、推定部1121と、BPF部1123とを備える。推定モデル161は、ニューラルネットワーク1611と、パラメータ1612とを備える。
FFT部1122は、入力部1101から入力される収集音に対して高速フーリエ変換を行うことで、収集音の周波数特性を算出する。推定部1121は、収集音の周波数特性結果と、推定モデル161とに基づき、収集音の周波数成分から雑音の周波数成分を取り除くことで、エアタービンハンドピース60の回転音の周波数成分を推定する。BPF部1123は、回転音の周波数特性のデータに対してバンドパスフィルタをかけることで、エアタービンハンドピース60の回転周波数を算出する。
図9は、変形例に係る検出装置100Aが実行する検出処理の一例を説明するためのフローチャートである。図9に示すように、まず、検出装置100Aは、マイクロホン40によって収集される収集音を取得する(S11)。次に、検出装置100Aは、収集音の音圧が一定値以上であるか否かを判定する(S12)。検出装置100Aは、収集音の音圧が一定値未満である場合(S12でNO)、本処理フローを終了する。一方、検出装置100Aは、収集音の音圧が一定値以上である場合(S12でYES)、S13の処理に移行する。このように、検出装置100Aは、収集音の音圧が一定値未満であるために収集音を推定モデル161による推定に上手く利用できない場合は、S13以降の処理を実行しないため、検出装置100Aの処理負荷を低減することができる。
S13の処理において、検出装置100Aは、収集音に対して高速フーリエ変換を行うことで、収集音の周波数特性を算出する(S13)。次に、検出装置100Aは、収集音の周波数特性結果と推定モデル161とに基づき、収集音の周波数成分から雑音の周波数成分を取り除くことで、エアタービンハンドピース60の回転音の周波数成分を推定する(S14)。次に、検出装置100Aは、収集音の周波数特性結果と推定モデル161とに基づきエアタービンハンドピース60の回転音の周波数成分を推定することができたか否かを判定する(S15)。検出装置100Aは、エアタービンハンドピース60の回転音の周波数成分を推定することができなかった場合(S15でNO)、本処理フローを終了する。一方、検出装置100Aは、エアタービンハンドピース60の回転音の周波数成分を推定することができた場合(S15でYES)、S16の処理に移行する。このように、検出装置100Aは、エアタービンハンドピース60の回転音の周波数成分を推定することができない場合は、S16の処理を実行しないため、検出装置100Aの処理負荷を低減することができる。次に、検出装置100Aは、回転音の周波数特性のデータに対してバンドパスフィルタをかけることで、エアタービンハンドピース60の回転周波数を算出する(S16)。その後、検出装置100Aは、本処理フローを終了する。
以上のように、検出装置100Aは、エアタービンハンドピース60の駆動中に収集される収集音と、ニューラルネットワーク1511を含む推定モデル151とに基づき、エアタービンハンドピース60の回転音の周波数成分を推定し、推定した周波数成分に基づき回転数を検出する。これにより、検出装置100Aは、収集音に回転音以外の雑音が含まれていた場合でも、エアタービンハンドピース60の回転音に基づき、回転数を精度よく検出することができる。なお、検出装置100Aにおける上述した構成以外の構成については、検出装置100と同じ構成を備える。
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。なお、本実施の形態で例示された構成および変形例で例示された構成は、適宜組み合わせることができる。