JP7375269B2 - 延性を備えたフィルム及び延性を備えたフィルムの設計方法 - Google Patents

延性を備えたフィルム及び延性を備えたフィルムの設計方法 Download PDF

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Description

本発明は、延性を備えたフィルム及び延性を備えたフィルムの設計方法に関わるものである。
例えば医療分野などで用いられる貼付剤は、皮膚に貼付して薬剤を経皮的に投薬するものである。一般的に、貼付剤支持体であるフィルムの表面に薬剤を添加した粘着層を設け、不織布と積層したものが、貼付剤として人体に貼付される。
ここで貼付剤支持体に求められる特性の一つとして延性が挙げられる。延性とは、貼付剤支持体が引っ張られた際に降伏点に到達するまでに伸びる比率のことを指し、延性が高いと貼付剤を皮膚に貼付した際に体の動きに追従することができ、貼付による突っ張り感が軽減されることから、貼付剤を用いるユーザーにとっては好ましい特性である。
延性を有する貼付剤として、特許文献1では、フィルム表面に切れ目を入れた樹脂層を設けたものが提案されている。しかしながら、フィルム表面に切れ目を設けることで応力集中が生じ、小さな引っ張り荷重でも破断を招きやすいという問題がある。
一方、切れ目を用いずに延伸するフィルムとして、例えば表裏面に凹凸構造を持ったフィルムが考えられる。このような凹凸構造を持ったフィルムは、フラットなフィルムと比較し、凹凸構造が変形することで高延性を確保できる。凹凸構造を持ったフィルムの製造方法としては、たとえば熱プレスや押出成形等の方法が想定される。押出成形では、冷却工程において凹凸形状が設けられた冷却ロールを用いて、樹脂の表面にニップ圧力を付加しながら冷却する。これにより冷却ロールが版の役割をはたし、フィルムの表裏面に連続的な凹凸構造を設けることができる。
押出成形の製造条件には、冷却ロールの温度や樹脂吐出量があり、これらを適切に調整することで連続的にフィルムを成形することができる。しかしながら、例えば冷却ロール温度を厳密に温度コントロールすることは困難であり、ロール表面温度の経時的な変動が生じることを前提に製造を行わざるを得ないなど、一般的に製造条件はある程度ばらつくことが想定される。このように製造条件が変動すると、押し出された溶融樹脂が冷却ロールの版形状の奥深くまで十分に到達せず、設計通りの凹凸構造が得られないということが起こりうる。引っ張り時の特性は凹凸構造に強く影響を受けることから、凹凸構造のばらつきにより延性も大きく変わってしまうという問題がある。例えば、設計したフィルム形状に応じて冷却ロールの版を製作し、この版を用いた樹脂成形を通じて試作したフィルムを引っ張り試験に供試した結果、実際のフィルム形状では目標の延性が得られないことが判明した場合、冷却ロールの版から製作し直さなければならない虞れがあり、それにより膨大な工数が費やされる。
一方、設計者がコントロールできない、すなわち製造ばらつきなどの外乱がある場合に、その影響を最小限にしながら、所望の特性を満たす製品を設計する手法として、ロバスト設計手法が知られている。ロバスト設計手法によれば、形状を規定する設計因子と、外乱である誤差因子に分けたときに、これらの組み合わせの効果に着目し、誤差因子の水準が変化しても、特性が変化しない設計因子の水準を決定することができる。ロバスト設計手法に関する文献は多数発行されているが、例えば非特許文献1において詳細な解説がなされている。
特許第5349837号
河村敏彦著,「統計モデルによるロバストパラメータ設計」、日科技連出版社発行、2013年6月
しかるに、例えば貼付剤支持体用フィルムにおいて、製造時における外乱の影響に着目し、この影響を考慮して行う設計は、従来なされていなかった。また、ロバスト設計手法を用いて貼付剤支持体用フィルムの設計を行うとしても、どのような設計因子に着目すれば、有効な設計が行えるかという知見がなかった。
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、フィルム特性に対するフィルム形状のばらつきの影響を最小限に抑えたフィルム及びその設計方法を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明のフィルムは、エチレン-ビニルアルコール共重合体からなり、第1斜面部と、頂上部と、第2斜面部と、底面部とをこの順序で連結してなる凹凸ユニット構造が、所定方向に沿って繰り返しつつ連続する形状を有する延性を備えたフィルムであって、前記所定方向における前記頂上部の長さをUとし、前記所定方向における前記第1斜面部の長さと前記頂上部の長さと前記第2斜面部の長さの和をLとし、前記所定方向に直交する方向における前記頂上部と前記底面部の距離をHとし、前記所定方向における前記第1斜面部の長さと前記頂上部の長さと前記底面部の長さと前記第2斜面部の長さの和をPとしたとき、U/Lの値が0.50以上、0.83以下、L/Pの値が0.51以上、0.66以下、H/Lの値が0.28以上、0.67以下となる、
ことを特徴とする。
また、本発明のフィルムは、エチレン-ビニルアルコール共重合体からなり、第1斜面部と、頂上部と、第2斜面部と、底面部とをこの順序で連結してなる凹凸ユニット構造が、所定方向に沿って繰り返しつつ連続する形状を有する延性を備えたフィルムであって、
前記所定方向における前記頂上部の長さをUとし、前記所定方向における前記第1斜面部の長さと前記頂上部の長さと前記第2斜面部の長さの和をLとし、前記所定方向に直交する方向における前記頂上部と前記底面部の距離をHとし、前記所定方向における前記第1斜面部の長さと前記頂上部の長さと前記底面部の長さと前記第2斜面部の長さの和をPとしたとき、H/Lの値が0.3以上、0.41以下であるときに、U/Lの値が0.64以上、0.8以下、L/Pの値が0.58以上、0.66以下である、
ことを特徴とする。
また、本発明のフィルムは、エチレン-ビニルアルコール共重合体からなり、第1斜面部と、頂上部と、第2斜面部と、底面部とをこの順序で連結してなる凹凸ユニット構造が、所定方向に沿って繰り返しつつ連続する形状を有する延性を備えたフィルムであって、
前記所定方向における前記頂上部の長さをUとし、前記所定方向における前記第1斜面部の長さと前記頂上部の長さと前記第2斜面部の長さの和をLとし、前記所定方向に直交する方向における前記頂上部と前記底面部の距離をHとし、前記所定方向における前記第1斜面部の長さと前記頂上部の長さと前記底面部の長さと前記第2斜面部の長さの和をPとしたとき、H/Lの値が0.4以上、0.51以下であるときに、U/Lの値が0.62以上、0.83以下、L/Pの値が0.54以上、0.61以下である、
ことを特徴とする。
また、本発明のフィルムは、エチレン-ビニルアルコール共重合体からなり、第1斜面部と、頂上部と、第2斜面部と、底面部とをこの順序で連結してなる凹凸ユニット構造が、所定方向に沿って繰り返しつつ連続する形状を有する延性を備えたフィルムであって、
前記所定方向における前記頂上部の長さをUとし、前記所定方向における前記第1斜面部の長さと前記頂上部の長さと前記第2斜面部の長さの和をLとし、前記所定方向に直交する方向における前記頂上部と前記底面部の距離をHとし、前記所定方向における前記第1斜面部の長さと前記頂上部の長さと前記底面部の長さと前記第2斜面部の長さの和をPとしたとき、H/Lの値が0.5以上、0.61以下であるときに、U/Lの値が0.56以上、0.83以下、L/Pの値が0.51以上、0.58以下である、
ことを特徴とする。
さらに本発明のフィルムの設計方法は、エチレン-ビニルアルコール共重合体からなり、第1斜面部と、頂上部と、第2斜面部と、底面部とをこの順序で連結してなる凹凸ユニット構造が、所定方向に沿って繰り返しつつ連続する形状を有する延性を備えたフィルムの設計方法であって、前記所定方向における前記頂上部の長さをUとし、前記所定方向における前記第1斜面部の長さと前記頂上部の長さと前記第2斜面部の長さの和をLとし、前記所定方向に直交する方向における前記頂上部と前記底面部の距離をHとし、前記所定方向における前記第1斜面部の長さと前記頂上部の長さと前記底面部の長さと前記第2斜面部の長さの和をPとしたとき、U/Lを矩形度とし、L/Pを凹凸部比とし、H/Lをアスペクト比として、前記矩形度、前記凹凸部比、及び前記アスペクト比をそれぞれ軸とする3次元空間に、前記矩形度、前記凹凸部比、及び前記アスペクト比を変化させた点をプロットする工程と、前記3次元空間にプロットされた各点ごとに、フィルムの降伏点変位の範囲と平均とを計算する工程と、前記降伏点変位の範囲閾値0.05以下、平均閾値0.5以上を目標値とし、該目標値を満たす点を求めて、その範囲を決定する工程と、前記目標値を満たす点の範囲に基づいて、前記フィルムの前記矩形度、前記凹凸部比、及び前記アスペクト比を選択する工程と、を有することを特徴とする。
本発明によれば、製造条件がばらつくことにより、支持体用フィルムの形状がばらついたとしても安定したフィルム特性を得ることが可能となるフィルム及びその設計方法を提供することができる。
図1は、本発明の貼付剤支持体用フィルムの一実施形態を示した断面図である。 図2は、本発明の貼付剤支持体用フィルムの一実施形態を示した斜視図である。 図3は、貼付剤支持体用フィルムの延伸時の荷重と相対変位を計算した結果の一例を示す図である。 図4(a)は、貼付剤支持体用フィルムの1パターンで、設計通りに成形された場合のフィルムの断面図であり、図4(b)は、貼付剤支持体用フィルムの1パターンで、設計通りに成形されない場合のフィルムの断面図である。 図5は、形状パラメータの実験水準を表す散布図行列である。 図6は、矩形度と成形率に対する降伏点変位の関係を表す図である。 図7は、3次元空間内においてランダムにプロットされたNG点及びOK点を示す図である。 図8は、降伏点変位が目標値を満たす例を表す図である。 図9は、降伏点変位が目標値を満たす別な例を表す図である。 図10は、図7の3次元空間を、アスペクト比を特定して薄くスライスした図である。 図11は、スライスされた空間ごとに、NG点を灰色で示し、OK点を黒色で示した図である。
次に、図面を参照して本発明に関わる貼付剤支持体用フィルム及び設計方法の実施形態について、以下に説明する。
図1および図2は、本発明に記載の貼付剤支持体用フィルムの実施形態の一例を示した図である。貼付剤支持体用フィルム(以下、単にフィルムという)1は、凹凸ユニット構造が繰り返し形成されたパターンを有するもので、図の水平方向への引っ張りに対して高い延性を発揮する。具体的には、表面2及び裏面3を備えたフィルム1は、第1斜面部表面2cと第1斜面部裏面3cとに挟まれた第1斜面部と、頂上部表面2aと頂上部裏面3aとに挟まれた頂上部と、第2斜面部表面2dと第2斜面部裏面3dとに挟まれた第2斜面部と、底面部表面2bと底面部裏面3bとに挟まれた底面部とを、この順序で連結してなる凹凸ユニット構造が、所定方向(図1では左右方向)に沿って繰り返しつつ連続する形状を有する。なお、図1において、左右方向を水平方向とし、上下方向を垂直方向とする。頂上部と底面部は水平方向に延在してなり、第1斜面部及び第2斜面部を介してその端部同士が相互に連結されている。
図1において、頂上部の長さを上底Uと定義する。同様に、頂上部の長さと第1斜面部と第2斜面部の水平方向の長さの和を下底L、頂上部の長さと底面部の長さと第1斜面部と第2斜面部の水平方向の長さの和をピッチP、頂上部と底面部の垂直方向の距離を高さH、フィルム1の膜厚をTと定義する。ただし、上底U、下底L、ピッチP、高さHは、フィルム1の膜厚方向の中心線CLを基準に定義する。
フィルム1の材質としては、キャスティング成形、インフレーション成形、熱プレス成形、押出成形、カレンダー成形、などのような所望の製膜方法に適し、かつ所望の薬剤に対するバリア性を持った樹脂を適宜選択すればよい。具体的には、ポリエチレンテレフタラート、シクロオレフィンコポリマー、シクロオレフィンポリマー、ポリアクリロニトリル、エチレン-ビニルアルコール共重合体、およびそれらの変性重合体、を用いれば良好な薬剤バリア性が発現されるため好ましい。
図3は、フィルム1を図1の左右方向に引っ張ったときの荷重と相対変位を計算により求め、この一例をグラフ化したものである。荷重および相対変位の計算には、有限要素解析ソフトMarc(登録商標)を用いた。なお、相対変位は、初期状態のピッチPに対する変位量の割合である。
フィルム1の引っ張り時の特徴としては、図3に示すように初期段階では、各凹凸ユニット構造が変形することで荷重の緩やかな増加に対し、相対変位量が大きくなる。これによりフィルム1の良好な延性を得ることができる。一方、凹凸ユニット構造が伸びきってフィルム全体がフラット形状に近づくと降伏点YPに到達し、その後も荷重は漸次増加するが、最大荷重に達した後に急激に低下し、変形が進行する。荷重が低下する領域では、フィルム全体が一様に伸びるのではなく、局所的な伸びが進行して最終的に破断する。
フィルム1を引っ張った際の相対変位すなわちフィルムの伸びは、凹凸ユニット構造の形状の違いによって大きく異なることが実験的に明らかになっている。たとえば、フィルム1の高さを大きく、またピッチを細かく設定すると、フィルムがフラットになるまでの相対変位が大きくなるため、結果として伸び量は大きくなる。
図4は、製造条件の違いによって成形されるフィルムの形状の違いを説明する図である。(a)に示すフィルム断面では、不図示の版の隅(成形面の交差部)に対して十分に樹脂が入り込み、設計通りに凹凸ユニット構造が成形された状態を表している。一方、(b)に示すフィルム断面では、版の隅に樹脂が十分に入りきる前に樹脂が固化したために、頂上部表面2aと第1斜面部表面2c及び第2斜面部表面2dの交差部や、底面部表面2bと第2斜面部表面2dの交差部がラウンド形状を表している。裏面においても同様である。(a)、(b)に示すフィルムは形状が異なるため、当然ながら延性に違いが現れる。
ここで、凹凸ユニット構造が設計通りに成形されているか、もしくは設計通りに成形されていない(角が丸まっている)かを示す指標として成形率(0~1)を定義する。この成形率に依らず、伸びが安定して得られるフィルム形状を設計できると好ましい。
安定した伸びを発現する形状範囲の同定には、実験計画法、応力シミュレーションおよび応答曲面モデリングの手法を用いて算出することができる。詳細な流れを以下に記載する。なお、実験計画法、応力シミュレーションおよび応答曲面モデリングの手法については、例えば非特許文献1に具体的に記載されているため、その詳細は省略する。
まず、実験計画法を用いて、形状パラメータ(上底U、下底L、ピッチP、高さH、膜厚T)、および誤差因子(成形率)を併せた6パラメータについて、主効果、交互作用効果、2乗項効果を検討するための実験水準を決定する。実験水準を決める方法は様々であるが、たとえば直交計画や応答曲面計画、最適計画等を用いることができる。なお、成形できる凹凸形状から、上底U<下底L、下底L<ピッチP、高さH>膜厚×2という制約のもとで実験水準を決定する。
図5は、各実験水準を散布図行列でプロットしたものである。因子名どうしが交差するセルがそれぞれの因子間の散布図を表している。
次に実験水準の各形状について2Dの有限要素モデルを作成し、応力解析によって引っ張り時の荷重と相対変位を計算する。計算では、概ね図3のような荷重-相対変位の関係が得られる。このとき、各形状について、降伏点を特定し、このときの伸び量を把握する。こうして、形状パラメータの組み合わせと引っ張り時の降伏点変位の対応関係表(不図示)を取得する。
続いて、降伏点変位を目的変数としたときに、形状パラメータに対する応答曲面モデルを構築する。応答曲面モデルの構築、すなわち回帰係数の推定に関しては、最小二乗法や最尤法などの手法を用いることができる。構築した応答曲面モデルは、以下に示すような28変数を含むモデルである。
降伏点変位=a+b1×上底+b2×下底+・・・
+c1×上底×下底+c2×上底×ピッチ+・・・
+d1×上底×上底+d2×下底×下底+・・・
ここで、応答曲面モデルに新たな形状パラメータを代入することによって、未知の凹凸ユニット構造の形状に対して、降伏点変位の予測を行うことが可能となる。
形状パラメータの別の指標(設計因子)として、矩形度(上底U/下底L)、凹凸部比(下底L/ピッチP)、アスペクト比(高さH/下底L)を考える。矩形度の値が1に近いと凹凸ユニット構造の断面が矩形になり、0に近いとその断面が三角形状に近づく。図6は、矩形度の水準を約0.1から0.9まで細かく変化させ、それぞれの水準において、さらに成形率を変化させたときの降伏点変位の値を予測し、箱ひげ図で表したものである。矩形度の水準によって、箱ひげの長さが異なっているが、これは矩形度が小さいと成形率の変化に対する降伏点変位の変動幅が大きいが、矩形度がある程度大きくなると成形率の変化に対して降伏点変位の変動幅が小さくなることを示している。このように、形状の違いによって、成形率から受ける影響の度合いが異なる様子がわかる。
成形率の変化に強い形状をくまなく調べるために、矩形度、凹凸部比、アスペクト比のいずれもが変化する空間(矩形度、凹凸部比、アスペクト比をそれぞれ軸とする3次元空間)の中に、大量にランダムに配置した点を考える。3次元座標を(矩形度、凹凸部比、アスペクト比)とする各点に対して、成形率が0~1のときの降伏点変位を計算し、範囲(=降伏点変位の最大値-降伏点変位の最小値)と平均(降伏点変位の合計/成形率の水準数)を計算する。なお、計算に当たっては、エチレン-ビニルアルコール共重合体をフィルムの材質として想定した。
降伏点変位の範囲は範囲閾値として0.05以下であれば誤差が十分小さいと考えられ、また降伏点変位の平均が平均閾値として0.5以上であれば貼付剤支持体用フィルムとして十分な延性があると考えられる。そこで、範囲閾値0.05以下、平均閾値0.5以上を目標値として設定し、各設計因子を組み合わせた点ごとに、降伏点変位を評価する。図7は、3次元空間内においてランダムにプロットされた点を示す図であり、灰色点は降伏点変位が目標値を満たさない組み合わせ(NG点という)であり、黒色点は降伏点変位が目標値を満たす組み合わせ(OK点という)である。ただし、凹凸ユニット構造断面の曲率半径を15~31μmで変更し、計算が不能な点は除いている。
図8は、図7の3次元空間のOK点のみを各軸方向に沿って投影した図であり、(a)は矩形度と凹凸部比との関係を示し、(b)は矩形度とアスペクト比との関係を示し、(c)は凹凸部比とアスペクト比との関係を示している。OK点は、図8(a)、(b)から、矩形度(U/L)が0.19以上、0.83以下の範囲に存在することがわかり、図8(a)、(c)から、凹凸部比(L/P)が0.51以上、0.70以下の範囲に存在することがわかり、図8(b)、(c)から、アスペクト比(H/L)が0.28以上、0.67以下の範囲に存在することがわかる。つまり、以上の範囲内で、フィルム1の凹凸ユニット構造を構成する矩形度、凹凸部比、アスペクト比を選択する設計を行えば、実際にフィルム1の製造を行った際に、誤差の影響を少なくしつつ、十分な延性が得られるフィルムを成形することができる可能性が高まり、設計効率が向上する。換言すれば、それ以外の範囲から矩形度、凹凸部比、アスペクト比を選択すると、十分な延性が得られないフィルムとなる可能性が高い。
一方、図8では記載を省略しているが、上記範囲内にNG点を含んでいる可能性がある。これに対し、図9は、凹凸ユニット構造断面の曲率半径を15~40μmで変更した上で、3次元空間のOK点のみを各軸方向に沿って投影した図であり、(a)は矩形度と凹凸部比との関係を示し、(b)は矩形度とアスペクト比との関係を示し、(c)は凹凸部比とアスペクト比との関係を示している。曲率半径の範囲が増えると、降伏点変位の範囲が広がることになるから、図9に示す例では、図8に示す例に対し、よりNG点が排除されており、つまりOK点の確度が高くなっている。
この例では、OK点は、図9(a)、(b)から、矩形度(U/L)が0.50以上、0.83以下の範囲に存在することがわかり、図9(a)、(c)から、凹凸部比(L/P)が0.51以上、0.66以下の範囲に存在することがわかり、図9(b)、(c)から、アスペクト比(H/L)が0.28以上、0.67以下の範囲に存在することがわかる。以上の範囲にてフィルム1の凹凸ユニット構造の設計を行った場合、設計の自由度が少し制限されるものの、十分な延性が得られるフィルムを確実に成形することができる。
さらに、OK点の範囲を細かく分析するために、図7の3次元空間を、図10に示すようにアスペクト比を特定して薄くスライスする。図11は、スライスされた空間ごとに、NG点を灰色で示し、OK点を黒色で示した図である。図11から明らかであるが、OK点はまとまって一つのグループを形成しており、またアスペクト比が変化するにつれて、OK点のグループの位置は移動している。
図11より、アスペクト比が0.3以上、0.41以下であるときに、矩形度が0.64以上、0.8以下、凹凸部比が0.58以上、0.66以下であることがわかる。
また、アスペクト比が0.4以上、0.51以下であるときに、矩形度が0.62以上、0.83以下、凹凸部比が0.54以上、0.61以下であることがわかる。
また、アスペクト比が0.5以上、0.61以下であるときに、矩形度が0.56以上、0.83以下、凹凸部比が0.51以上、0.58以下であることがわかる。
本発明によれば、製造ばらつきにより凹凸ユニット構造に形状誤差が生じても安定した特性を有する貼付剤支持体用フィルムを得ることが可能である。また安定した特性を有する貼付剤支持体用フィルムを製造するために製造条件を厳格にする必要がなくなり、製造がしやすくなり、コスト低減が可能になる。なお、本発明は貼付剤支持体用フィルムに限られず、延性を備えた各種のフィルムに適用可能である。
1・・・貼付剤支持体用フィルム
2・・・表面
2a・・・頂上部表面
2b・・・底面部表面
2c・・・第1斜面部表面
2d・・・第2斜面部表面
3・・・裏面
3a・・・頂上部裏面
3b・・・底面部裏面
3c・・・第1斜面部裏面
3d・・・第2斜面部裏面

Claims (5)

  1. エチレン-ビニルアルコール共重合体からなり、第1斜面部と、頂上部と、第2斜面部と、底面部とをこの順序で連結してなる凹凸ユニット構造が、所定方向に沿って繰り返しつつ連続する形状を有する延性を備えたフィルムであって、
    前記所定方向における前記頂上部の長さをUとし、前記所定方向における前記第1斜面部の長さと前記頂上部の長さと前記第2斜面部の長さの和をLとし、前記所定方向に直交する方向における前記頂上部と前記底面部の距離をHとし、前記所定方向における前記第1斜面部の長さと前記頂上部の長さと前記底面部の長さと前記第2斜面部の長さの和をPとしたとき、U/Lの値が0.50以上、0.83以下、L/Pの値が0.51以上、0.66以下、H/Lの値が0.28以上、0.67以下となる、
    ことを特徴とするフィルム。
  2. エチレン-ビニルアルコール共重合体からなり、第1斜面部と、頂上部と、第2斜面部と、底面部とをこの順序で連結してなる凹凸ユニット構造が、所定方向に沿って繰り返しつつ連続する形状を有する延性を備えたフィルムであって、
    前記所定方向における前記頂上部の長さをUとし、前記所定方向における前記第1斜面部の長さと前記頂上部の長さと前記第2斜面部の長さの和をLとし、前記所定方向に直交する方向における前記頂上部と前記底面部の距離をHとし、前記所定方向における前記第1斜面部の長さと前記頂上部の長さと前記底面部の長さと前記第2斜面部の長さの和をPとしたとき、H/Lの値が0.3以上、0.41以下であるときに、U/Lの値が0.64以上、0.8以下、L/Pの値が0.58以上、0.66以下である、
    ことを特徴とするフィルム。
  3. エチレン-ビニルアルコール共重合体からなり、第1斜面部と、頂上部と、第2斜面部と、底面部とをこの順序で連結してなる凹凸ユニット構造が、所定方向に沿って繰り返しつつ連続する形状を有する延性を備えたフィルムであって、
    前記所定方向における前記頂上部の長さをUとし、前記所定方向における前記第1斜面部の長さと前記頂上部の長さと前記第2斜面部の長さの和をLとし、前記所定方向に直交する方向における前記頂上部と前記底面部の距離をHとし、前記所定方向における前記第1斜面部の長さと前記頂上部の長さと前記底面部の長さと前記第2斜面部の長さの和をPとしたとき、H/Lの値が0.4以上、0.51以下であるときに、U/Lの値が0.62以上、0.83以下、L/Pの値が0.54以上、0.61以下である、
    ことを特徴とするフィルム。
  4. エチレン-ビニルアルコール共重合体からなり、第1斜面部と、頂上部と、第2斜面部と、底面部とをこの順序で連結してなる凹凸ユニット構造が、所定方向に沿って繰り返しつつ連続する形状を有する延性を備えたフィルムであって、
    前記所定方向における前記頂上部の長さをUとし、前記所定方向における前記第1斜面部の長さと前記頂上部の長さと前記第2斜面部の長さの和をLとし、前記所定方向に直交する方向における前記頂上部と前記底面部の距離をHとし、前記所定方向における前記第1斜面部の長さと前記頂上部の長さと前記底面部の長さと前記第2斜面部の長さの和をPとしたとき、H/Lの値が0.5以上、0.61以下であるときに、U/Lの値が0.56以上、0.83以下、L/Pの値が0.51以上、0.58以下である、
    ことを特徴とするフィルム。
  5. エチレン-ビニルアルコール共重合体からなり、第1斜面部と、頂上部と、第2斜面部と、底面部とをこの順序で連結してなる凹凸ユニット構造が、所定方向に沿って繰り返しつつ連続する形状を有する延性を備えたフィルムの設計方法であって、
    前記所定方向における前記頂上部の長さをUとし、前記所定方向における前記第1斜面部の長さと前記頂上部の長さと前記第2斜面部の長さの和をLとし、前記所定方向に直交する方向における前記頂上部と前記底面部の距離をHとし、前記所定方向における前記第1斜面部の長さと前記頂上部の長さと前記底面部の長さと前記第2斜面部の長さの和をPとしたとき、U/Lを矩形度とし、L/Pを凹凸部比とし、H/Lをアスペクト比として、前記矩形度、前記凹凸部比、及び前記アスペクト比をそれぞれ軸とする3次元空間に、前記矩形度、前記凹凸部比、及び前記アスペクト比を変化させた点をプロットする工程と、
    前記3次元空間にプロットされた各点ごとに、フィルムの降伏点変位の範囲と平均とを計算する工程と、
    前記降伏点変位の範囲閾値0.05以下、平均閾値0.5以上を目標値とし、該目標値を満たす点を求めて、その範囲を決定する工程と、
    前記目標値を満たす点の範囲に基づいて、前記フィルムの前記矩形度、前記凹凸部比、及び前記アスペクト比を選択する工程と、を有する、
    ことを特徴とするフィルムの設計方法。
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