JP7370046B2 - 抗癌剤の選択方法 - Google Patents

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Description

本発明は癌に罹患した患者の治療に適した抗癌剤を患者特異的に選択する方法に関する。特に本発明は、癌に罹患した患者に適した、少量で治療効果のある患者特異的抗癌剤の候補を選択する方法に関する。
一般に抗癌剤治療は、臨床試験で決められたエビデンス(科学的根拠)に基づいて、最大耐用量かそれに近い用量を標準用量として投与して癌の治療を行う。すなわち、特定の抗癌剤の定められた用量を特定の癌に使用するのが一般的な抗癌剤治療である。
抗癌剤治療の開始に当たって、病理学的検査などにより癌の特徴を明らかにすることが一般に行われる。さらに、場合により免疫学的特殊染色や遺伝子検査といった特殊病理診断を併用して癌の特徴を更に解析し、治療に使用する抗癌剤を選択する。しかし、このようにして選択した抗癌剤を所定の用量で治療に用いても,期待した効果が得られる患者と期待した効果が得られない患者に分かれることが臨床的に知られている。したがって、個々の患者に特に適した抗癌剤の選択が望まれている。
一方、少量の抗癌剤を使用しても癌が制御され得ることが臨床試験の中で観察されている。たとえば、多くの癌で使用されているパクリタキセル(タキソール)の最大耐容量を250mg/m2と結論づけた1987年に発表された第I相試験の論文中に、1/5の用量である50mg/m2で7ヶ月の疾患制御が得られた症例があったことが記載されている(非特許文献1参照)。これ以外にも少量の抗癌剤の使用が癌制御に結びついているという報告がある(非特許文献2参照)。しかしながら、一般に抗癌剤は標準使用量の半分以下の用量では効果が無いとされているので、少量の抗癌剤(たとえば、標準使用量の半分よりも少ない量)を使用して癌の治療を行う場合、個々の患者でどの抗癌剤を使用すれば有効であるのかは従来十分に検討されてこなかった。
Phase I clinical and pharmacokinetic study of taxol.Wiernik PH,et al. Cancer Res.1987;47:2486-93 Metronomic chemotherapy:new rationale for new directions.Pasquier E, Kavallaris M, Andre N.et al.Nat Rev Cin Oncol.2010;7(8):455-465
癌は多様な性質を有する癌細胞の集合体であり、個々の患者の生体内環境、癌の発生臓器、癌の組織型等によってそこに含まれる癌細胞の構成は異なる。また、癌に有効な抗癌剤は、たとえ同じ型の癌であっても患者ごとに変動が有り、個々の患者に有効な抗癌剤を迅速かつ適切に選択することは容易ではない。そこで、癌の発生臓器、癌の組織型等によらずに有効な抗癌剤を簡便に選択できる方法が望まれる。
本発明は、癌の発生臓器、癌の組織型等に依存せず、個々の患者の治療に特に適した抗癌剤、特に少量でも十分な効果を有する抗癌剤の候補を選択する方法を提供する。
癌病巣に存在する癌細胞は、さまざまな固有の細胞学的、生物学的特性を有する癌細胞の集合体であり、それぞれの癌細胞はその増殖に適した至適環境(コンパートメント)において盛んに増殖すると考えられる。すなわち、各コンパートメント毎に特性の異なる癌細胞が増殖すると考えられる。したがって、癌発生組織や病理学的組織型によらず、特定のコンパートメントで増殖している癌細胞は同じ抗癌剤に感受性であると考えられる。
本発明は、「発生臓器や組織型によらず、癌は特性に対応したコンパートメントで増殖している多様な癌細胞の集合体である」という考えに基づいている。癌に罹患した患者の血液検査の結果は個々の患者における癌細胞群の多様性を反映していると考えられるので、血液検査の結果は患者の癌における多様な癌細胞を反映していると考えられる。
したがって、本発明は以下を含む、個々の患者に特に有効な抗癌剤の候補を選択する方法である。
〔1〕患者において治療効果が見られた抗癌剤について、前記抗癌剤を投与された複数の患者から採取した複数の血液サンプルの血液検査結果を前記複数の患者について比較し、各血液検査結果について前記複数の患者における共通のパターンを同定し、前記共通のパターンを示す1以上の血液検査項目又は血液検査項目の組を、前記共通のパターンを示す患者に投与すべき薬剤として前記抗癌剤を選択するための指標とする、抗癌剤の選択方法。
〔2〕共通のパターンを示す全ての血液検査項目を抗癌剤を選択するための指標とする、前記〔1〕記載の方法。
〔3〕下記の表Aの右欄に示す血液検査項目の結果に基づいて左欄に示す抗癌剤を候補として選択する、前記〔1〕又は〔2〕記載の方法:
表A
Figure 0007370046000001
〔4〕前記〔1〕~〔3〕のいずれか1項記載の方法であって、
各血液検査項目の検査結果と選択される抗癌剤との対応が、以下の表Bに記載の基準値に関連付けて、以下の表C右欄に示す血液検査項目の結果に基づいて表C左欄に示す抗癌剤を候補として選択する工程(ただし、血清アミロイドA及びα1アンチトリプシンの範囲は、基準値に関連付かない)を含む、方法:
表B
Figure 0007370046000002
表C
Figure 0007370046000003

Figure 0007370046000004

Figure 0007370046000005

Figure 0007370046000006

Figure 0007370046000007

Figure 0007370046000008

Figure 0007370046000009
本発明は、本発明の抗癌剤選択方法にしたがって選択した抗癌剤に加えて更なる追加の抗癌剤又は前記選択した抗癌剤の代替えの抗癌剤を選択することを含む、抗癌剤の選択方法でもある。
特に、本発明は、一旦選択した抗癌剤の効果が治療期間中に不十分になった場合に、本発明の抗癌剤選択方法にしたがって更なる追加又は代替えの抗癌剤を選択することを含む、抗癌剤の選択方法でもある。
また、本発明は以下を含む、患者の癌を治療する方法でもある:
i)上述した本発明の方法にしたがって、1以上の抗癌剤候補を選択する;
ii)選択した1以上の抗癌剤候補から1つの抗癌剤を選択する;
iii)選択した1つの抗癌剤を患者に投与する;
iv)投与した抗癌剤の前記患者における有効性及び/又は副作用を評価する;
v)iv)で投与した抗癌剤が有効でありかつ顕著な副作用が無い場合は投与を継続し、副作用を認める場合は中止する;及び、
v)iv)で副作用が強い場合又は有効でない場合は、i)における抗癌剤候補の中から、ii)で選択した抗癌剤とは異なる、抗癌剤を選択し、上記iii)~v)を繰り返す。
ここで、上記副作用が強い場合又は有効でない場合が生じる原因としては、選択された抗がん剤が間違っているのではなく、対象となるがん細胞の代謝が不活性であり、抗がん剤が作用しにくいことが考えられる。
なお、当該血液検査は、治療に入る前に行われることが好ましい。
さらに本発明は、上記方法においてiii)における投与量がii)で選択した抗癌剤についての標準的な1回の投与量もしくは最大耐用量の1/10~1/20、好ましくは1/5~1/20の用量をもって、患者の癌をくり返し治療する方法でもある。したがって、本発明は少量の抗癌剤によって癌を治療する方法でもある。
また、本発明は上記癌を治療する方法においてiv)における有効性及び/又は副作用の評価が問診、血液所見及び/又は画像診断によって行われる、患者の癌を治療する方法でもある。
特に、本発明は、iv)で一旦選択した抗癌剤の効果が治療期間中に不十分になった場合に、本発明の抗癌剤選択方法にしたがって新たな抗癌剤を選択し、当初選択した抗癌剤に代えて、あるいは併用して前記新たな抗癌剤を追加併用投与して治療を継続する、癌の治療方法でもある。
本発明の奏する代表的な効果をいくつか列挙する。
本発明の方法によれば、癌の発生臓器や癌の病理組織型などの多様性を超えて、癌に有効な一群の抗癌剤を各患者について個別に選択することができる。本発明の方法にしたがって抗癌剤の候補を選択する場合、各患者にカスタマイズされた一群の抗癌剤を選択することができるので、多様な癌細胞を含む癌に含まれる(まだ十分には増加していないが活発に代謝・増殖している)少数の癌細胞を標的とする抗癌剤を選択することも可能である。これにより、治療期間中にある抗癌剤によってある特性の癌細胞の増殖が抑えられている間に同じ癌病巣中に元々存在していた他の特性を有する癌細胞が増殖してきて一見「抗癌剤耐性癌細胞が出現」したように見える場合であっても、前記選択した一群の抗癌剤の中から別の抗癌剤を選択することによって癌を抑制することができる。
本発明の方法によれば、各患者の治療に特に適した抗癌剤を選択することができるので、標準的な抗癌剤治療における1回の投与量もしくは最大耐用量よりも少ない量、たとえば1回の投与量もしくは最大耐用量の1/5~1/20程度の用量で十分な治療効果を得ることができる。投与量が少ないことは副作用の危険性を低減することができるので、患者にとって大きな利益となろう。
実施例1の態様を示す図である。 実施例2の態様を示す図である。 実施例3の態様を示す図である。 実施例4の態様を示す図である。 実施例5の態様を示す図である。
生体内の微小循環系は狭義には、毛細血管網とその前後にある細動脈、細静脈を一括した血液の流れのことを指すが、広義には、微小循環内の血流に加えて、系内血液―間質液―組織細胞間の物質移動、間質液の流れとリンパ系を通じての輸送などをも包括する。微小循環系は構造的には微少であっても、生体の全血管系の90%以上を占めている。この微小循環内の環境は均一なものではなく、さらにミクロには複数の多様な細胞生活環境(コンパートメント)からなっていると考えられる。
1個の癌細胞から増殖して臨床レベルに成長した癌(癌病巣)は、増殖途中で生じた変異により多様な特性を有する癌細胞の集合体と考えられ、病理学的に同じ組織型と判定された癌病巣においてさえも癌病巣を構成するそれぞれの癌細胞はその増殖に適した至適環境において盛んに増殖すると考えられ、この至適環境は上述した微小循環中のコンパートメントに対応すると考えられる。そのように増殖してきた癌細胞は増殖してきたコンパートメントに対応した特性(たとえば種々の抗癌剤に対する感受性)を有すると考えられる。すなわち、コンパートメント毎に特性の異なる癌細胞が増殖すると考えられ、病理学的に同じ組織型と判定された癌においてさえも各コンパートメントに対応した特性の異なる多様な癌細胞が存在すると考えられる。したがって、癌病巣中に存在する癌細胞の多様性(たとえば、種々の抗癌剤に対する感受性)はコンパートメントの多様性に起因すると考えられる。
さらに、多様な癌細胞群が増殖して、全体として臨床レベルの大きさの癌に(「臨床癌」)に成長しても、個々の癌細胞については増殖してきたコンパートメントと対応した特性が依然として維持されていると考えられる。したがって、癌全体の抗癌剤に対する感受性が多様であるのは、癌を構成する癌細胞の多様性に起因すると考えられる。
本明細書において、癌の多様性を説明する上述の仮説を「微小循環理論」又は「コンパートメント理論」とも称する。
したがって、本発明は「微小循環理論に基づいて抗癌剤を選択する方法」又は「コンパートメント理論に基づいて抗癌剤を選択する方法」と称することもできる。
また、本理論に基づき行う治療を「コンパートメント療法」、「微小循環療法」または「微小循環治療」とも称することとする。
1つの癌細胞が増殖している過程で変異し、どのコンパートメントを至適環境とする癌細胞が出現するかは各患者毎に異なり得る(「微小循環理論」又は「コンパートメント理論」)。したがって、癌を構成する癌細胞の多様性は個々の患者において異なっている可能性がある。癌の種類によって抗癌剤の組合せを固定している一般的な標準抗癌剤治療は、このような患者毎の癌細胞群の多様性には対応していないと考えられるので、その効果も限定的である。一般的な標準抗癌剤治療の奏功率の低さ(2~3割)と生存期間の短さはこのことを反映していると考えられる。
本発明者らは、宿主は癌の発生初期から防御システムを起動して防御反応を示している筈であるから、癌細胞が増殖するに従って多様な癌細胞の集合体(臨床レベルの癌)となった場合、各患者における全体的な生体防御反応は多様な癌細胞の中の特定の特性を有する癌細胞に応答した個別の生体防御反応の総和であると考える。
ある抗癌剤が治療効果を奏する場合、その抗癌剤に感受性がある癌細胞が癌病巣に存在することを意味し、宿主にはその癌細胞に対する生体防御反応が生じている筈である。したがって、ある抗癌剤が治療効果を奏した患者においてどのような生体防御反応が生じているかを明らかにすれば、各生体防御反応とその防御反応に関連した特定の性質を有する癌細胞に対する有効な(効果を奏した)抗癌剤とを対応させることができる。
宿主が防御システムを発動すると、血液中の免疫細胞だけでなく、インターロイキンやインターフェロンといったサイトカインを始め、様々な宿主防御システムに関係する内因性物質(後述)も刺激を受けて動きを見せるようになる。癌に対して発動している宿主防御システムに関連した血液内の免疫細胞や内因性物質等の動きは、血液検査を通して捉えることができる。したがって、血液検査の結果は、上述の生体防御反応を反映していると考えられるので、血液検査の結果は個々の患者における癌細胞の多様性と関連しており、その患者に有効である抗癌剤と対応すると考えられる。
そこで、特定の抗癌剤が治療的に有効であった一群の患者の血液検査結果を重畳的に分析することによって、特定の抗癌剤が有効であった患者の血液検査結果の共通パターンを同定することができる。
癌に罹患した患者の血液検査の数値データは個々の患者における癌細胞群の多様性を反映していると考えられるので、前記同定された共通のパターンは前記特定の抗癌剤に対して感受性である癌細胞群が前記パターンを有する患者に共通して存在していることを示すと考えられる。したがって、前記同定されたパターンを示す癌患者に対して、前記特定の抗癌剤を治療薬として選択することができる。この場合、適切な共通パターンを同定するためには交絡因子含有症例を除外して約200~300あるいはそれ以上の症例における血液検査結果を分析することが好ましい。除外する症例には、たとえば終末期の癌患者、肝転移に対する血管内治療など他の治療を併用している患者、途中で通院しなくなって追跡できなかった患者、効果の有無が判定できない特殊症例などが含まれる。
本発明において利用できる血液検査項目の例は以下の通りである。
表1.抗癌剤の選択に利用することができる血液検査項目
Figure 0007370046000010
上記表1において、
IAP(免疫抑制酸性蛋白)値が直接測定できない場合はα1アシドグリコプロテイン値に相関係数を乗じて決定する。相関係数は別途検査機関/検査会社等に依頼して入手することが可能である。本明細書において具体的なIAP値を使用する場合はこの相関係数として4.83を使用する。
各抗癌剤を選択するための指標となる血液検索項目は以下の通りである。
1)イリノテカン、ナブパクリタキセル又はパクリタキセル(ドセタキセル)を抗癌剤の候補として選択するときの指標となる検索項目にはα1アンチトリプシンと血清アミロイドAが含まれる。
2)ゲフィチニブ、エルロチニブ又はセツキシマブを候補として選択するときの指標となる検索項目には、IAP/F、血清アミロイド及び好中球数が含まれる。
3)ゲムシタビン、ラムシルマブ又はベバシズマブを候補として選択するときの指標となる検索項目には、IAP/F、好中球数及び血小板数が含まれる。
4)5FU系を候補として選択するときの指標となる検索項目には、可溶性IL-2レセプター、α1アシドグリコプロテイン、IAP/F、好中球数及び血清アミロイドAが含まれる。本発明において、5FU系とは、フルオロウラシル(5FU)、カペシタビン、及びTS1(テガフール・ギメラシル.オテラシルカリウム)から選択されるいずれかの薬剤を指す。
5)ブレオマイシンを候補として選択するときの指標となる検索項目には、IAP/F及び好中球数が含まれる。
6)白金製剤(シスプラチン、カルボプラチン、ネダプラチン)を候補として選択するときの指標となる検索項目には、IAP/F、好中球数及び血清アミロイドAが含まれる。
7)シクロホスファミド又はイホスファミドを候補として選択するときの指標となる検索項目には、IAP/F、好中球数及び血清アミロイドAが含まれる。
8)アフィニトールを候補として選択するときの指標となる検索項目には、IAP/F、好中球数及び血清アミロイドAが含まれる。
9)マイトマイシンCを候補として選択するときの指標となる検索項目には、IAP/F、Hb値及び好中球数が含まれる。
10)ドキソルビシン又はエピルビシンを候補として選択するときの指標となる検索項目には、IAP/F、好中球数、血小板数及びIAP/可溶性IL-2レセプターが含まれる。
11)ニムスチン選択の指標となる検索項目には、リンパ球数及び血小板数が含まれる。
12)アムルビシンを候補として選択するときの指標となる検索項目には、Hb値、IAP、IAP/F、好中球数、可溶性IL-2レセプター、IAP/可溶性IL-2レセプター及び血小板数が含まれる。
13)トラスツズマブを候補として選択するときの指標となる検索項目には、IAP/F、IAP/可溶性IL-2レセプター、可溶性IL-2レセプター/α1アシドグリコプロテイン及びα1アシドグリコプロテイン/可溶性IL-2レセプターが含まれる。
14)ペメトレキセド又はメトトレキサートを候補として選択するときの指標となる検索項目には、IAP/F、好中球数及び血清アミロイドAが含まれる。
15)オキサリブラチンを候補として選択するときの指標となる検査項目には、IAP/F、血清アミロイドA、IAP/可溶性IL-2レセプター、可溶性IL-2レセプター/α1アシドグリコプロテイン及びα1アシドグリコプロテイン/可溶性IL-2レセプターが含まれる。
各血液検査項目における具体的な数値基準は使用する検査キットに依存して多少変動するが、一般に検査キット毎にそのキットを使用する場合の検査結果の基準値、上限値、中間値、下限値が表示されているので、どのキットを用いる場合でも各検査キットについて定められている基準値、上限値、中間値、下限値に基づいて適切な抗癌剤を選択することができる。
別の態様として、本発明においては、検査結果の基準値は、以下の表2に示される上限値・中央値・下限値に関連付けて、適切な抗癌剤を選択することができる。本発明において、選択すべき抗癌剤の候補と血液検査項目の結果を表3に示す対応で適切な抗癌剤を選択することができる。
表2.各検査結果の基準値
Figure 0007370046000011

α1AGの基準値は、患者群が高齢であることを考慮して採用した値である。このα1AGの基準値は、田村啓二ら、免疫抑制蛋白(IAP)、日本臨床 43:484-486、1985に記載される、1歳から77歳の580名の患者群に基づいて設定される基準値と同じであったことから、適切な範囲であることが裏付けられている。また、IAP/Fの基準値の下部に記載された、1.22及び0.87は、本発明者らが膨大なデータに基づいて経験値として導き出した参考値である。また、血清アミロイドAの基準値については、健康な者を対象にした値(市販の検査キットにおいて共通した値)と、罹患者(病気との関連での基準値)を対象とした値(「最新 臨床検査項目辞典」監修:櫻林郁之介ら、医歯薬出版 2008)の双方を示す。
ここで、本発明における血清アミロイドAの数値範囲(表3)の臨界値(上限、下限)は、0,3,5,19.5,∞であるため、上記血清アミロイドAの基準値(表2)と直接関連づけられないものである。
また、本発明におけるα1アンチトリプシンの数値範囲(表3)の臨界値(上限、下限)は、175であるため、上記α1アンチトリプシンの基準値(表2)と直接関連付けられない。
これら血清アミロイド及びα1アンチトリプシンの数値範囲に関し、考えられる1つの理由は基準値の設定が、がんとそれ以外の様々な病気を対象にしていることが挙げられる。
また、市販の検査キットにおいては、いずれも基準値は同じであるため、実測値(測定値)をそのまま本発明の条件にあてはめて抗がん剤の選別に使うことに何ら問題はない。
表3.候補として選択される抗癌剤と血液検査結果との対応
Figure 0007370046000012

Figure 0007370046000013

Figure 0007370046000014

Figure 0007370046000015

Figure 0007370046000016

Figure 0007370046000017

Figure 0007370046000018

上記表3において、下限値、中間値、上限値は、表2に示された値、及び、それぞれ使用する検査キットにおいて指定されている値である。
より具体的には各血液検査において表4に示すキットを用いて測定した場合の、検査項目の結果と選択される抗癌剤の対応を表5に示す。

表4.各血液検査項目に使用しうる試薬キットの例
Figure 0007370046000019

*1 IAP=α1AG×4.83
*2 好中球数=白血球数×好中球の割合(%)
*3 リンパ球数=白血球数×リンパ球の割合(%)
表5.表4記載のキットを使用した場合の候補として選択される抗癌剤と血液検査項目結果との対応
Figure 0007370046000020

Figure 0007370046000021

Figure 0007370046000022

Figure 0007370046000023

Figure 0007370046000024

Figure 0007370046000025

Figure 0007370046000026
本発明の方法は、ある患者の血液検査結果に基づいて、その患者の癌を構成する癌細胞を少量で効果的に抑制又は死滅させ得る抗癌剤の候補を選択する方法である。したがって本発明は、本発明によって選択される抗癌剤候補を無条件に患者に投与することを推奨するものではなく、治療に使用すべき抗癌剤を一義的又は排他的に決定する方法ではない。たとえば、実際に臨床の場で使用する場合には、本発明によって選択された抗癌剤の使用条件(添付文書に記載の「禁忌」、「使用上の注意」等)、患者の生理状態等の医学的観点、製薬的観点、及び、臨床的に要求されるその他の条件を更に加味して、上記血液検査の結果に基づいて選択される抗癌剤の候補のいずれを実際の治療に採用するか否かが判断されるであろう。
選択した抗癌剤の有効性評価
本発明の方法にしたがって選択した抗癌剤の有効性及び顕著な副作用は、問診、血液所見及び画像診断等によって確認することができる。
たとえば、薬剤投与後の体感・感覚に異常が無いことを問診によって確認する、好中球/リンパ球の比率が大きく変動していないこと、血小板数が顕著に増減していないこと、肝機能の指標となるGOT(AST)、GPT(ALT)、ALP、γ-GTP、T-Bil等の検査項目の数値が増悪傾向にないこと、腎機能の指標値、たとえば尿量、尿検査、血液検査の電解質、BUN、クレアチニン値が悪化していないこと、腫瘍マーカーの値が顕著に増加していないことを血液所見によって確認する、腫瘍の増大が停止又は縮小していることを画像診断によって確認する、などによって選択した抗癌剤が治療的に有効であったことを確認することができる。
それぞれの癌について抗癌剤の組合せが固定される一般的な標準抗癌剤治療とは対照的に、「発生臓器や組織型によらず、癌はそれぞれの増殖に適したコンパートメントで増殖している癌細胞の集合体である」という考えに基づく本発明によれば、個々の患者に有効な抗癌剤を「臓器横断的」あるいは「癌の病理組織型非依存的」に簡便に選択することができ、癌の発生臓器が不明である原発不明癌についても適切な抗癌剤を選択することができる。また、希少癌のように患者の数が少なく、標準的治療が確立していない癌についても本発明の方法によって有効な抗癌剤を選択することが可能である。
本発明にしたがって抗癌剤を選択した場合、一般には複数の抗癌剤が選択肢となるが、それらをどのような順序、及び/又は組合せでどのような形態で投与するかは各抗癌剤の添付文書の記載事項、抗癌剤の価格、健康保険の適用の有無、患者の健康状態(たとえば、それまでの治療薬による副作用の有無)などを考慮して医師の判断などにしたがって行うことができる。1つの癌病巣中に存在する癌細胞の多様性を考慮すると、一般には最終的には選択肢の中から複数の抗癌剤を選択するのが好ましい。
また、治療中、選択した抗癌剤の効果が時間経過にしたがって十分に奏されなくなる場合もあり得る。上述した癌細胞の多様性を考慮すると、これは元々の癌病巣中に選択した抗癌剤に非感受性の癌細胞が存在しており、その癌細胞が増殖してきたことが原因である可能性が考えられるので、前記の選択肢の中から追加又は代替えの抗癌剤を選択してその効果を評価することによって、適切な追加又は代替えの抗癌剤を選択することができる。1つの癌病巣中に存在する癌細胞の多様性を考慮すると、治療期間中に十分な効果が見られなくなった場合にも、それまでに選択した抗癌剤に感受性の癌細胞は(少数であったとしても)依然として癌病巣中に存在している可能性が考えられるので、それらが再び増殖するのを抑制するため、新たに選択される抗癌剤はそれまでに投与されてきた抗癌剤の代替えではなく追加の抗癌剤として投与することを考慮するのが好ましい。
本発明の方法によれば、標準的な抗癌剤治療における1回の投与量もしくは最大耐用量の1/10~1/20、好ましくは1/5~1/20程度の用量の抗癌剤により治療効果を得ることができる。したがって、患者に対する副作用を顕著に低減することができる。一般に抗癌剤は標準的な使用量の半分以下の用量では効果がないと言われていることを考慮すれば、本発明は先行技術からは予測できない顕著な効果を有する。
以下の実施例において、抗癌剤の投与量は医学界の一般慣習に従い、mg/m2(体表面積1平方メートルあたりのmg数)で表す。ヒトの体表面積(m2)は以下の式により身長(cm)と体重(kg)から計算することができる。
体表面積(m2)=(身長(cm))0.725 ×(体重(kg))0.425 × 0.007184
例えば身長170cm、体重60kgのヒトの場合体表面積は約1.7m2である。
また、1個体あたりの総投与量はmg/bodyで表す。
症例1:肺癌術後再発症例
本発明に係る薬剤の選択方法を行った時点で、本実施例の患者は、肺癌の左副腎転移巣を切除した後の腹腔内リンパ節転移を患っていた。当該患者は、本発明に係る薬剤の選択方法以前の治療において、副腎転移巣切除後、腫瘍が減少したため、腫瘍マーカーのCEAが一気に下がったが、その後、CT検査で大動脈周囲リンパ節転移が確認され、同時にCEAが増加していた状態であった。
当該患者の血液検査を行い、本発明に係る抗癌剤の選択方法で用いる必要な検査項目を調べた。下記表は、当該患者における、各検査項目の実測値(測定値、計測値も同義で用いる)と計算値である。本発明に係る抗癌剤の選択方法によって、当該患者に選出された薬剤は、タキサン系(パクリタキセル.ドセタキセル)、ゲムシタビン、5FU系、白金製剤、イホスファミド、エトポシド、ニムスチン、アムルビシン、ペメトレキセドであった。
≪肺がん副腎転移切除後再発症例≫

Figure 0007370046000028
本発明に係る薬剤の選択方法を行う前に、当該患者は、過去の治療において、パクリタキセル、白金製剤、アムルビシンを用いて治療されており、効果を認めていた時期もあったものの、ゲフィチニブは使用しても効果がなく中止していた。過去の治療で使用した薬剤と本発明に係る抗癌剤の選択方法により選出された薬剤を見比べると、効果のあったタキサン系(パクリタキセル.ドセタキセル)、白金製剤、アムルビシンは選出されており、効果のなかったゲフィチニブは選出されなかった。したがって、本発明に係る抗癌剤の選択方法が実際に効果を有する薬剤を選出できていることが示唆された。
本実施例では、病状と腫瘍マーカーの動きが相関していたため、図1に示す結果において、腫瘍マーカーの動きと合わせて説明する。
選択された薬剤の中から、まずはTS1(5FU系)とゲムシタビンを選択した。それぞれ、TS1 50mg/body隔日服用、ゲムシタビン200mg/body週1回投与の少量使用で体感的に問題なく副作用もなかった。血液検査では、腫瘍マーカーのCEAは減少傾向にあり、さらにCT検査で傍腹部大動脈リンパ節転移巣の縮小を認めた。体に負担をかけずに癌制御につながっていると判断した。
しかしながら、およそ4ヶ月経過したところで、腫瘍マーカーが徐々に上昇してきたため(図1参照)、癌細胞の多様性に、そしてこの癌細胞集団に、いつまでも2剤でコントロールすることはできないことが示唆された。
腫瘍マーカーのCEAが上昇してきたところで、白金製剤を追加して,「5FU 250mg+ゲムシタビン200mg+ネダプラチン(白金製剤)10mg」の3剤を、週1回点滴投与とした。
その後、腫瘍マーカーCEA値の上昇はおさまり、9ヵ月以降は300ng/mL(ナノグラム/ミリリットル)前後で横ばいとなった。腫瘍マーカーが横ばいになったことから、疾患制御が得られたことが示唆された。
また、一連の治療で副作用は一切認められなかった。当該患者は、副作用がなかったため、週1回2時間ほどの通院治療をしながら仕事を続けていた。
以上の治療の経緯と腫瘍マーカーの一連の動きを通して、「癌細胞集団の経時的変化」を推測した(図1参照)。当該患者の癌腫瘤はもともと、5FU系、ゲムシタビン、白金製剤にそれぞれ感受性のある3種類の「多様」な癌細胞を含んでいたことが推察された。最初に投与した5FU系とゲムシタビンに感受性のある細胞は、「TS1+ゲムシタビン」の組み合わせで縮小したものと考えられる。また、最初からもう1種類、白金製剤に感受性のある癌細胞が潜んでいたが、少量抗癌剤治療開始時点では、相対的に絶対数が少なかったため臨床的に目立たず、5FU系、ゲムシタビン感受性のある癌細胞が減っていく一方で、白金製剤に感受性のある癌細胞は少しずつ増えていったことも推測された。そのためか、白金製剤の追加が功を奏した。先行した2種類の抗癌剤では制御できない、白金製剤感受性の癌細胞に白金製剤(ネダプラチン)が効き、結果的に「癌の多様性」に対応することになり、「癌全体」の制御に結びついたことが示唆された。
症例2:尿路上皮癌・多発肺転移症例
本発明に係る薬剤の選択方法を行った時点で、本実施例の患者は、治療法がなく、後は緩和療法にすべきとされ、尿路上皮癌・両側多発肺転移を患っていた。進行尿路上皮癌に対する標準化学療法としては、メトトレキサート、ビンブラスチン、ドキソルビシン、シスプラチンを併用するM-VAC療法やゲムシタビンとシスプラチンを併用するGC療法が知られているが、標準治療には適さないと判断されていた。
当該患者の血液検査を行い、本発明に係る抗癌剤の選択方法で用いる必要な検査項目を調べた。下記表は、当該患者における、各検査項目の測定値と計算値である。本発明に係る抗癌剤の選択方法によって、当該患者に選出された薬剤は、タキサン系(パクリタキセル.ドセタキセル)、ゲムシタビン、白金製剤、シクロホスファミド、ドキソルビシン(エピルビシン)、ペメトレキセドであった。
≪尿路上皮がん・両側多発肺転移≫

Figure 0007370046000030
これら選出された薬剤で、保険適応薬での治療を考えた。本発明に係る薬剤の選択方法を行う前に、当該患者は、過去の治療において、白金製剤を使用した標準抗癌剤治療をすでに行っており、その副作用による末梢神経障害でADL(activities of daily living:日常生活動作)が損なわれていたため、末梢神経障害の少ないエピルビシン10mg/body/週の投与から開始した。
投与薬剤が合っているかどうかは、患者の体感、血液検査データの推移等で総合的に判断した。少なくとも、エピルビシン10mg/body/週で体感的に副作用はなかった。また、エピルビシン投与開始から、10mg/dLほどあった炎症の指標であるCRPが3mg/dL台に減少、Hb(ヘモグロビン)値が9.9g/dLと貧血気味だったのが、10.8g/dLと上昇傾向を示し、腫瘍マーカーのTPA、BFPが横ばいから減少傾向となったことを認めたため(図2参照)、生化学データ的にもエピルビシンは、当該患者に合っていると判断した。
しかしながら、癌を構成する癌細胞の多様性を考慮すると、エピルビシン一剤のみで、癌のコントロールができるとは考えにくいため、次の適用薬剤を探り、保険適応薬であるゲムシタビンを投与することにした。ゲムシタビンの投与量は200mg/body/週から開始した。投与後の患者の体感は悪くはなかったが、ゲムシタビンを追加投与した1週間後の採血で10g/dL台まで上昇していたHb値が9g/dL台になり、血小板数が31万/μLから16万/μLに減少した。高値を示す血小板数が緩徐に減少傾向を取らずに急に半分ほどの値になり、かつ、Hb値が下がり傾向にあることも踏まえて、2回目の投与からゲムシタビンを減量し、最終的にゲムシタビンは50mg/body/週まで減量し、併用したエピルビシンも5mg/body/週に減量して維持投与量とした(図2参照)。
本症例の治療効果は、胸部レントゲンの転移巣の縮小傾向という形で顕著に確認でき、また、ゲムシタビン追加以降、腫瘍マーカーは更に減少傾向にあった。
最終的に、本実施例においては、ゲムシタビンとエピルビシンの2剤の少量併用使用に落ち着いた。このゲムシタビンとエピルビシンの組み合わせは、標準治療で提示される薬剤の組み合わせとは全く異なるが、この患者においては、この2剤を使用する治療が、この患者の癌細胞の多様性に合わせた治療ということが示唆された。
今後、病状の進行や変化が認められた場合、癌細胞集団の経時的変化に対応していくために、パクリタキセルや白金製剤といった他剤の使用を検討していくこととなるだろう。
症例3:未分化多形肉腫
本発明に係る薬剤の選択方法を行った時点で、本実施例の患者は、未分化多形肉腫を患っていた。肉腫を始めとした、患者の数が少ない希少癌の場合、標準治療が存在しないことが少なくない。未分化多形肉腫とは、一昔前はMFH(悪性線維性組織球腫)と呼ばれていた腫瘍で、一般的に抗癌剤、放射線治療が効きにくく、治療に苦慮する悪性腫瘍として知られている。
当該患者の血液検査を行い、本発明に係る抗癌剤の選択方法で用いる必要な検査項目を調べた。下記表は、当該患者における、各検査項目の測定値と計算値である。本発明に係る薬剤の選択方法時に、5FU系の適応がなかったので、腫瘍マーカーのシフラ(サイトケラチン19フラグメント)を測定し、高値であることを確認した。結果として、当該患者に選出された薬剤は、マニュアルに沿って見ていくと、タキサン系(パクリタキセル.ドセタキセル)、ゲフィチニブ、ブレオマイシン、白金製剤、ドキソルビシン(エピルビシン)、メトトレキサートであった。
≪未分化多形肉腫≫

Figure 0007370046000032
本実施例では、まずシスプラチン(白金製剤)、メトトレキサートの使用から開始したが、副作用は無いものの期待するほどの効果は得られなかった。この場合、シスプラチンとメトトレキサートに感受性の癌細胞が存在しないのではなく、このような癌細胞がこの時点では活発な増殖活動をしていないと判断した。そこで、この2剤を止めて有用な薬剤を探った。
その結果、ドキソルビシン5mg/bodyを投与した2週間後の胸部レントゲン写真で、転移巣Aの著明な縮小が認められた(図3参照)。図3に示すように、転移巣Aを構成する多様な癌細胞の中に、ドキソルビシンに感受性を示す癌細胞が多数存在したことを示唆している。したがって、ドキソルビシンは「合っている」薬として、そのまま使用継続としたところ、図3に示すように、転移巣Aは縮小したが、転移巣Bに動きがなかった。したがって、転移巣Bには、感受性の異なる癌細胞が多くいると判断し、追加薬剤を探り、癌細胞の多様性への対応を試みた。そこで、選出されていたブレオマイシンを追加したところ、転移巣Bも縮小した。
本症例では、転移巣Aはドキソルビシンに、転移巣Bはブレオマイシンに感受性のある癌細胞の比率が高かったことが示唆された。この患者の肉腫治療はドキソルビシンとブレオマイシンの組み合わせという、一般の肉腫治療では、見聞きすることのない抗癌剤の組み合わせで全体の奏功を見るという結果になった。つまり、この薬剤の組み合わせが、本実施例の患者の肉腫を構成する癌細胞の性質(多様性)に合わせたオーダーメイド治療となっている(図3参照)。
症例4:カルチノイド・多発肺転移症例
本発明に係る薬剤の選択方法を行った時点で、本実施例の患者は、骨盤内カルチノイドの多発肺転移症を患っていた。骨盤内カルチノイドの多発肺転移症は、肺転移巣を契機に発見され、腫瘍摘出及び直腸合併切除で原発巣は取り除いてあったので、肺転移巣が病状を左右する状態であった。カルチノイドは神経内分泌腫瘍に分類され、緩徐に増殖する比較的予後の良い低悪性度腫瘍として知られているが、一般に、抗癌剤治療、放射線治療は効果がなく、手術が完治につながる唯一の治療法であるというのが一般的な当業者の認識である。
当該患者の血液検査を行い、本発明に係る抗癌剤の選択方法で用いる必要な検査項目を調べた。下記表は、当該患者における、各検査項目の測定値と計算値である。当該患者に選出された薬剤は、イリノテカン、ゲムシタビン、5FU系、白金製剤、シクロホスファミド、ニムスチン、トラスツズマブであった。
≪骨盤内カルチノイド・多発肺転移症例≫

Figure 0007370046000034
当該患者は、当初5FU、シスプラチン、シクロホスファミドの3薬剤の少量併用により、腫瘍増殖にブレーキを掛けていたと実感できていた。しかしながら、肺転移巣が増大してくるに連れて、これらの3剤での疾患制御が困難と判断し、治療内容を変更することにした。ここで5FUを外し、ニムスチンを代わりに併用してみたところ、予想以上に反応し、転移巣は縮小し始めたため、ニムスチン、シスプラチン、シクロホスファミドという新しい3剤の組み合わせで、病態をコントロールすることになった(図4参照)。
ニムスチン、シスプラチン、シクロホスファミドという新しい3剤の薬剤の少量併用使用でカルチノイドに効いたという報告はないが、本実施例において、当該患者には効果が見られた。しかしながら、全てのカルチノイドの患者に、この組み合わせで同様に効くということはなく、この薬剤の組み合わせは、本実施例の患者のカルチノイド腫瘍にあわせた本発明の薬剤選択方法から導かれ、効果を奏したものと考えられる。
症例5:直腸癌症例
本実施例の患者は、合併症(心筋梗塞の既往、うっ血性心不全の既往のある、心臓機能の悪い)のある直腸癌を患う83歳の男性であった。
Figure 0007370046000035
当該患者の血液検査を行い、本発明に係る抗癌剤の選択方法で用いる必要な検査項目を調べた。下記表は、当該患者における、各検査項目の測定値と計算値である。当該患者に選出された薬剤は、5FU、白金製剤、シクロホスファミド、イリノテカン、ベバシズマブ、エトポシド、トラスツズマブであった。
≪直腸がん症例≫

Figure 0007370046000037
図5に示すように、3剤の併用で治療に入ったところ、本発明に係る抗癌剤の選択前に訴えのあった血便がなくなった。本発明に係る抗癌剤の選択後の投与薬剤による副作用はなく、血便が消失するという臨床症状の改善を見たので、5FU、シスプラチン、シクロホスファミドの3剤少量併用療法を継続した。本実施例でベバシズマブを使用しなかったのは、抗凝固剤が別途処方されていたため、副作用の消化管出血を懸念したためであった。
その後に大腸内視鏡検査で原発巣を確認したところ、図5に示すように腫瘍の明らかな縮小傾向を認めた。腫瘍表面の出血もなくなったので、血便が消失したという症状の改善とも合致した。
このように、高齢であるか、合併症が理由で治療方法がないとされる患者でも、本発明を利用した治療の導入を検討することが可能である。

Claims (5)

  1. 患者において治療効果が見られた抗癌剤について、前記抗癌剤を投与された複数の患者から採取した複数の血液サンプル、癌に対して発動している宿主防御システムに関連した血液内の免疫細胞の数及び/又は内因性物質の値からなる血液検査結果を前記複数の患者について比較し、各血液検査結果について前記複数の患者における共通のパターンを同定し、前記共通のパターンを示す1以上の血液検査項目又は血液検査項目の組を、前記共通のパターンを示す患者に投与すべき薬剤として前記抗癌剤を選択するための指標とする、方法。
  2. 共通のパターンを示す全ての血液検査項目を抗癌剤を選択するための指標とする、請求項1記載の方法。
  3. 請求項1で得られたパターンに基づいて、下記の表Aの右欄に示す血液検査項目の結果に基づいて左欄に示す抗癌剤を候補として選択する、方法:
    表A
    Figure 0007370046000038
  4. 請求項1で得られたパターンに基づいて、
    各血液検査項目の検査結果と選択される抗癌剤との対応、以下の表Bに記載の基準値に関連付ける方法。
    表B
    Figure 0007370046000039
  5. 以下の表C右欄に示す血液検査項目の結果に基づいて表C左欄に示す抗癌剤を候補として選択する、方法。
    表C
    Figure 0007370046000040

    Figure 0007370046000041

    Figure 0007370046000042

    Figure 0007370046000043

    Figure 0007370046000044

    Figure 0007370046000045

    Figure 0007370046000046
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