以下、この発明の一実施形態を図面と共に説明する。
図1は、血管断面を含む医用画像を処理する医用画像処理装置1の構成の一例を示すブロック図である。医用画像処理装置1は、少なくとも画像処理機能を有している電子機器(コンピュータ)である。医用画像処理装置1は、据置型のコンピュータまたは可搬型のコンピュータであり、デスクトップPC、ノート(ラップトップ)PC、タブレットPC等の汎用のコンピュータ(端末)で構成されている。
また、医用画像は、医用画像撮影装置で撮影された被検体(患者)の断層画像であり、少なくとも血管断面の像を含む画像である。すなわち、医用画像とは、少なくとも人間の血管断面の像を含む画像のことである。たとえば、医用画像は、CT装置によって撮影された、患者の体軸方向の複数スライス位置における断面像、または血管芯線に直交する断面像(横断面像)を含む画像(CT画像)である。なお、医用画像は、CT画像に限定されるものではなく、MRI装置等で撮影された画像であってもよい。
図1に示すように、医用画像処理装置1は、制御部11、入力部12、表示部13、記憶媒体接続部14、通信部15、および補助記憶部16を備える。入力部12、表示部13、記憶媒体接続部14、通信部15、および補助記憶部16のそれぞれは、通信線等を介して制御部11に電気的(コンピュータで処理可能な信号が相互に送受信可能)に接続されている。
制御部11は、演算部11aおよび主記憶部11bを含み、医用画像処理装置1における各種演算および制御動作を実行する。演算部11aは、CPUまたはMPUなどを有している演算処理部である。主記憶部11bは、RAM(DRAM)およびROMなどを有している。RAMは、演算部11aのワーク領域およびバッファ領域として用いられる。RAMには、補助記憶部16に記憶されているプログラムのデータやプログラムの実行に必要なデータ等が適宜展開される。ROMは、医用画像処理装置1の起動プログラムや各種情報についてのデフォルト値等を記憶する。
入力部12は、医用画像処理装置1の利用者の操作入力を受け付ける入力部品と、入力部品と演算部11aとの間に介在する入力検出回路を含む。入力部品は、たとえばタッチパネル(タッチ入力手段)、ハードウェアの操作キー(ハードウェアキー)およびコンピュータマウス等である。タッチパネルとしては、静電容量方式、電磁誘導方式、抵抗膜方式、赤外線方式など、任意の方式のものを用いることができる。入力検出回路は、各入力部品の操作(操作入力)に応じた操作信号ないし操作データを演算部11aに出力する。
表示部13は、ディスプレイ、およびディスプレイと演算部11aとの間に介在する表示制御回路を含む。ディスプレイとしては、たとえばLCD(液晶ディスプレイ)または有機ELディスプレイなどを用いることができる。表示制御回路は、GPUおよびVRAMなどを含む。演算部11aの指示の下、GPUは、RAMに記憶された画像生成用のデータを用いてディスプレイに種々の画面(後述する画像処理画面100等)を表示するための表示画像データをVRAMに生成し、VRAMに生成し表示画像データに対応する表示画像をディスプレイに出力する。
入力部12がタッチパネルを有する場合には、タッチパネルは、表示部13のディスプレイの表示面上に重なるように設けられてもよい。この場合、タッチパネルは、表示部13のディスプレイと協働して、タッチパネル付きディスプレイ(タッチパネルディスプレイ)を構成する。また、タッチパネルディスプレイが構成されている場合、表示部13のディスプレイには、ソフトウェアキー(操作キーまたは操作ボタン)を含むGUI(Graphical User Interface:グラフィカルユーザインタフェース)が表示されることがある。この場合、GUI(操作画面)を介して操作入力を受け付けることができる。なお、ソフトウェアキーとは、たとえば表示部13のディスプレイの表示面にソフトウェア的に再現された操作キー(操作ボタン)のことをいう。以下、GUIに設けられる(表示される)ソフトウェアキーのことを単に「ボタン」という。
記憶媒体接続部14は、USBメモリなどの各種の記憶媒体(以下、「外部メモリ」という)からデータを読み出したり、外部メモリにデータを書き込んだりするためのインターフェイス(外部メモリ接続部)である。たとえば、外部メモリは、光ディスク(たとえばCD-R、DVD-RおよびBD-Rなど)およびフラッシュメモリ(たとえばUSBメモリ、SDメモリカードおよびメモリースティックなど)などである。記憶媒体接続部14は、各種の外部メモリを装着するための装着部(たとえば光ディスクを装着可能な光学ドライブまたはフラッシュメモリを装着可能なメモリスロットなど)を有している。制御部11は、記憶媒体接続部14に接続された外部メモリからデータを読み取ることもできるし、記憶媒体接続部14に接続された外部メモリにデータを書き込むこともできる。
通信部15は、専用回線またはインターネットのような公衆回線(公衆ネットワーク)に接続するための通信回路を含む。通信回路は、有線通信回路または無線通信回路であり、演算部11aからの指示に従って、専用回線または公衆回線を介して、X線CT装置またはMRI装置等の医用画像撮影装置等の他の電子機器(外部コンピュータ)と相互に通信可能に接続されている。
補助記憶部16は、HDD、SSD、フラッシュメモリ、EEPROMなどの他の不揮発性メモリで構成され、演算部11aが医用画像処理装置1の動作を制御するためのプログラムおよび各種データなどを記憶する。
医用画像処理装置1の補助記憶部16には、医用画像処理を実行するためのデータなど、医用画像処理装置1で利用される各種データが記憶(登録)されている。また、補助記憶部16には、医用画像処理装置1の利用者の操作入力に応じて医用画像処理装置1の各種動作を実行するためのユーザプログラム20と、医用画像処理装置1の動作に必要なユーザデータ21とが記憶されている。
ユーザプログラム20およびユーザデータ21は、必要に応じて補助記憶部36から読み出され主記憶部11b(RAM)に記憶される(展開される)。医用画像処理装置1の動作は、演算部11aが主記憶部11b(RAM)に展開されたユーザプログラム20を実行することによって実現される。
ユーザプログラム20は、医用画像処理を実行するための複数のプログラムを含有している。たとえば、ユーザプログラム20は、医用画像処理装置1が備える各種機能を選択および実行するためのメイン処理プログラム20a、表示部13のディスプレイに各種画面を表示するための画面表示プログラム20b、医用画像から血管内壁の表面に対応する輪郭線(閉断面)を抽出するための輪郭線抽出プログラム20c、輪郭線の周方向における半径変化率を検出するための半径変化率検出プログラム20d、輪郭線の周方向における曲率を検出するための曲率検出プログラム20e、輪郭線の外接円からの距離に対応する凹みの深さ(凹みの度合い:凹み度)を検出するための凹み度検出プログラム20f、および輪郭線(血管断面)における血栓症のリスクに応じて定められる評価値(医用画像における平均評価値設定部を含む)を設定するための評価値設定プログラム20g等を含有している。また、ユーザプログラム20は、輪郭線の粗さを検出するための粗さ検出プログラムを含有していてもよい。
ユーザデータ21は、医用画像のデータ(医用画像データ)21a、医用画像から抽出された輪郭線のデータ(輪郭線データ)21b、輪郭線における半径変化率のデータ(半径変化率データ)21c、輪郭線における曲率のデータ(曲率データ)21d、輪郭線における凹み度のデータ(凹み度データ)21e、半径変化率、曲率、または凹み度から評価値を設定するための基準値等のデータ(評価用データ)21f、および輪郭線における評価値のデータ(評価値データ)21g等のデータを含有している。
なお、図1および図2に示す医用画像処理装置1の構成は、単なる一例であり、これに限定される必要はなく、医用画像処理装置1の仕様などの必要に応じて適宜変更可能である。
<医用画像処理の動作例>
本発明の医用画像処理装置1では、制御部11の動作により、医用画像から血栓症のリスクに応じた評価値を設定する医用画像処理が実行される。すなわち、医用画像処理では、医用画像について設定された評価値から血栓症のリスクを推定することができる。
図3~図13は、医用画像を用いた医用画像処理に関する各種画面または各種画像の一例を示す説明図である。医用画像処理に関する各種画面または各種画像は、制御部11において画面表示プログラム20bが実行されることによって表示部13のディスプレイに表示される。図3~図13を参照して、医用画像処理装置1で実行される医用画像処理の動作例を説明する。なお、各種動作は、制御部11が医用画像処理装置1を構成するハードウェアを制御し、医用画像処理装置1に記憶された各種プログラムに従って動作することにより実現する。
図3に示すように、医用画像処理が実行されると、医用画像処理装置1の表示部13には、画像処理画面100が表示される。以下、図3~図13に示す各種操作画面は、医用画像処理装置1の表示部13のディスプレイに表示されているものとする。
画像処理画面100は、医用画像処理における基本画面であり、画像処理対象(分析対象)となる医用画像(分析対象の医用画像)を取得し、分析対象の医用画像を分析し、血栓症のリスクに応じて設定された分析対象の医用画像における評価値を表示するための画面である。
図3の画像処理画面100は、初期状態であり、分析対象の医用画像が表示される(取得される)前の状態を示している。画像処理画面100には、動作実行部101、画像表示部102、機能選択部103、およびキャンセルボタン104等が設けられている。
動作実行部101は、分析対象の医用画像の読み出し、および、分析対象の医用画像に対する血栓症のリスクに応じた評価値の設定等の動作を医用画像処理装置1に実行させるために設けられる。動作実行部101は、医用画像取得ボタン101aおよび分析実行ボタン101bを有している。
医用画像取得ボタン101aは、分析対象の医用画像を取得する(読み出し可能な医用画像の中から分析対象の医用画像を指定する)機能が割り当てられたボタンである。医用画像取得ボタン101aが選択(操作)されると、取得する医用画像を選択するためのウインドウ(画像選択ウインドウ)が表示され、任意の医用画像を分析対象として選択(指定)することができる。図示は省略するが、画像選択ウインドウでは、補助記憶部16内のディレクトリ、または記憶媒体接続部14に接続された外部メモリ内のディレクトリを選択し、任意のディレクトリに記憶されている医用画像のデータを選択することによって、任意の医用画像を取得することができる(医用画像のデータが読み出される)。
本発明の医用画像処理においては、1つ(単体)の医用画像を分析対象の医用画像として取得することができ、また、血管の軸方向の位置が異なる複数の医用画像をまとめて(複数の医用画像を含有する画像セットとして)分析対象の医用画像として取得することもできる。複数の医用画像が分析対象の医用画像として取得された場合、複数の医用画像のそれぞれに番号(ページ番号)が割り当てられ、画像処理画面100に設けられた番号選択部100aで医用画像を切り替えることができる。
分析実行ボタン101bは、分析対象の医用画像における評価値を表示する機能が割り当てられたボタンである。ただし、図3に示すように、分析実行ボタン101bは、分析対象の医用画像が取得される前の状態(医用画像非表示状態)では、無効化されており、選択できないようになっている。なお、分析実行ボタン101bは、無効化された状態では、半透明、グレーアウト、あるいは低輝度の色で表示されている。
図4の画像処理画面100は、分析対象の医用画像が取得された後の状態を示している。図4に示すように、分析実行ボタン101bは、分析対象の医用画像が取得された後の状態(医用画像表示状態)では、有効化され、選択可能となっている。
なお、医用画像取得ボタン101aおよび分析実行ボタン101b並びにその他の各種ボタンを選択する操作としては、タッチパネルにおけるタップ操作や、コンピュータマウス(マウスポインタ)によるクリック操作などがある。
また、キャンセルボタン104は、医用画像取得ボタン101aまたは分析実行ボタン101bが選択され、各種処理(医用画像の読み出し処理または分析処理)が実行されているとき(医用画像の読み出し処理または分析処理の完了前)に、実行されている処理を停止する(取り消す)機能が割り当てられている。たとえば、データ量が大きい医用画像の読み出しに時間がかかっている場合や、分析処理に時間がかかっている場合等に、キャンセルボタン104を選択して実行されている処理を停止させることができる。
図3および図4に示すように、画像表示部102は、分析対象の医用画像の一部または全部、若しくは分析対象の医用画像に関連した各種画像が表示される領域である。本実施形態では、画像表示部102は、画像処理画面100の中央上部に配置されている。
また、画像表示部102の表示領域は、画像処理画面100の面積の内、40%~60%の面積を占めている。このように、画像表示部102の表示領域を大きくすることによって、分析対象の医用画像を大きく表示させることができ、分析対象の医用画像の視認性を向上させることができる。
また、図3に示すように、分析対象の医用画像の取得前は、画像表示部102には単色(たとえば無彩色)の背景画像が表示されているだけである。一方、分析対象の医用画像が取得されると、図4に示すように、画像表示部102に分析対象の医用画像が表示された状態となる。
画像表示部102に表示された医用画像は、拡大/縮小および移動可能である。たとえば、入力部12がコンピュータマウスを有している場合、マウスホイールの操作により医用画像を拡大/縮小することができ、ドラッグ(医用画像の表示領域内へのタッチ後のスライド操作)により医用画像を移動(画像表示部102の表示領域に対して相対的に移動)させることができる。
また、画像表示部102の近傍には、医用画像に対する画像表示部102の表示領域を上下方向へ移動(スクロール)させるためのスクロールバー102aが設けられている。スクロールバー102aは棒状に延びるバーと、バーの上端部および下端部のそれぞれに配置された矢印ボタン(アロー)と、バー上に移動可能に設けられたノブとを有している。画像表示部102に表示された医用画像は、ノブの位置に応じて上下に移動する。本実施形態では、スクロールバー102aは、画像表示部102の右端部に隣接するように縦長に配置されている。すなわち、スクロールバー102aは、縦スクロールバーである。
医用画像表示状態で分析実行ボタン101bが選択(操作)されると、医用画像に含まれる血管断面の像(血管断面像)から血管内壁の表面に対応する輪郭線が抽出される。そして、抽出された輪郭線の形状(血管内壁の形状)から血栓症のリスクに応じた(プラークの性状に応じた)評価値が設定される。
以下、評価値の設定方法について説明する。まず、輪郭線抽出プログラム20cに従って、医用画像から、血管内壁表面の輪郭形状に相当する輪郭線が抽出される(輪郭線抽出ステップ)。輪郭線抽出ステップについて簡単に説明する。たとえば、図5Aに示すような、血管断面の像(血管断面像)121を含有する医用画像120が分析対象の医用画像として設定されているとする。図5Aにおける血管断面像121は、医用画像120の中央下部に位置する略円形の像のことである。このような医用画像120から、図5Bに示すようなマスク画像130を生成する。マスク画像130は、医用画像120のうち、血管の内部領域(血管内壁の内側、すなわち血管内腔に相当する領域)と推定される領域(血管内腔領域)131と、血管内腔領域以外の領域(血管外領域)132のそれぞれを異なる色で塗りつぶした画像である。ここで、血管内腔領域の色の濃さと、血管外領域の色の濃さとは、コンピュータ処理において異なる領域であることが明確に区別できるような濃さとされている。たとえば、血管内腔領域の色および血管外領域の色は無彩色とすることができ、血管内腔領域を白色、血管外領域を黒色とすることが好ましい。
なお、血管領域の推定には、U-netなどの領域抽出に用いられる公知のAIアルゴリズムを用いることができる。U-netを例に挙げると、図5Aに示すような医用画像120を元画像とし、図5Bに示すような血管内腔領域を含むマスク画像130とのペアを教師データとして学習させておくことによって、未知の医用画像から血管内腔領域および血管外領域を推定(血管内腔領域を抽出)できる。
血管内腔領域131が抽出されたマスク画像130が生成されると、マスク画像130に対し2値化処理が施される。本実施形態では、2値化処理により、血管内腔領域を白色、血管外領域を黒色とする。2値化処理後、血管内腔領域の外輪郭を血管内壁の輪郭形状に相当する輪郭線(閉断面の外輪郭)131aとして抽出する(図6参照)。これにより、輪郭線抽出ステップが完了する。
続いて、輪郭線131aから、評価値を設定するための事前処理が行われる(事前処理ステップ)。事前処理ステップでは、輪郭線131aに対する最小外接円131b、最小外接円131bの中心位置131cをそれぞれ設定する。これ以降、中心位置131cは、血管の中心位置(血管中心位置)として定義される(血管中心位置として取り扱われる)。
次に、輪郭線131aを複数の点または領域(以下、「測定点」という。)に分解し、輪郭線131aを構成する複数の測定点のそれぞれと、中心位置131cとの距離(半径)Rを測定する(半径測定ステップ)。
そして、半径Rが最も短い(中心位置131cに最も近い)測定点を開始点(基点)として、時計回りまたは反時計回り(本実施形態では時計回り)に周方向における複数の測定点のそれぞれの半径R(すなわち、中心位置131cを中心とした血管内壁の断面形状)に応じて評価値を設定する(評価値設定ステップ)。
本発明では、評価値は、複数種類の評価指標によって設定可能である。評価指標の種類によって評価値が異なることがある。評価指標としては、「凹み度」、「半径変化率」、「曲率」、「粗さ」と、これらの評価指標のうち2つ以上を組み合わせた「複合評価」とがある。以下、各評価指標の内容について説明する。
「凹み度」は、輪郭線131aを構成する測定点と、最小外接円131bからの距離(離間距離)Lの大きさに応じて定まる(図7参照)。すなわち、最小外接円131bに対する輪郭線131aの凹み深さに対応する離間距離Lに応じて、測定点毎に凹み度が設定される。また、「凹み度」は、凹み度検出プログラム20fに従って設定される。評価用データ21fには、離間距離Lから凹み度を設定(たとえば離間距離Lを凹み度に換算)するための凹み度設定用のデータが含有されており、凹み度検出プログラム20fが実行されると、凹み度設定用のデータに従って凹み度が設定される。評価指標が「凹み度」である場合、凹み度に比例して評価値(血栓症リスク)が設定される。
「半径変化率」は、輪郭線131aの周方向における半径Rの変化率(半径変化率)のことである。半径変化率は、輪郭線131aに基づいて設定されるものであるが、半径変化率検出プログラム20dに従って測定点毎に設定される。半径変化率は、周方向において連続する半径Rの値を微分して得ることができる。図7は、或る実験例において得られた輪郭線131aを構成する複数の測定点と中心位置131cとの距離(半径R)を示すグラフである。たとえば、図7に示す折れ線グラフにおいてある領域Qに着目した場合の半径変化率は、その領域Qの部分の折れ線グラフの傾きθに相当する。仮に輪郭線131aが略真円であるとすると、周方向において半径が変化しないため、半径変化率は0(ゼロ)となる。一方、血管内壁に凹凸が存在する場合、半径が変化し、なだらかな凹凸よりも急峻な凹凸ほど半径変化率が大きくなる。評価指標が「半径変化率」である場合、半径変化率(最大変化率または累積変化率)に比例して評価値が設定される。
「曲率」は、輪郭線131aの周方向における曲率のことである。曲率は、半径変化率の値を微分して得ることができる。曲率は、輪郭線131aに基づいて設定されるものであるが、曲率検出プログラム20eに従って測定点毎に設定される。半径変化率の変化率(周方向の長さに対する半径変化率の変化の割合)が大きいほど(半径変化率が急激に変化するほど)、曲率が大きくなる。評価指標が「曲率」である場合、曲率(最大曲率または累積曲率)に比例して評価値が設定される。
「粗さ」は、周方向において連続する半径Rの値をグラフ化(連続曲線化)し、元の連続曲線(輪郭線)と、元の連続曲線を平滑化した曲線(平滑化曲線)との差分Dの大きさに応じて定まる(図8参照)。比較的細かい半径Rの変化は、平滑化することにより変化が小さくなり、元の連続曲線との差分Dが大きくなる。すなわち、「粗さ」は、比較的細かい変化を補足するのに有効である。評価指標が「粗さ」である場合、粗さ(最大差分Dの大きさまたは差分Dを累積した値)に比例して評価値が設定される。
「複合評価」は、「凹み度」、「半径変化率」、「曲率」、「粗さ」のうち2つ以上の指標を組み合わせたものである。ただし、本発明では、「複合評価」においては、「半径変化率」および「曲率」の少なくとも1つが採用される。「凹み度」、「半径変化率」、「曲率」、「粗さ」のそれぞれの単一の評価指標毎に評価値を算出し、評価指標毎の評価値のうち、最大値を採用することによって「複合評価」とすることができる。また、「凹み度」、「半径変化率」、「曲率」、「粗さ」の全てを組み合わせた場合「総合評価」ということもできる。
図9は、複合評価の一例を示す説明図である。図9に示す例では、「凹み度」、「半径変化率」、「曲率」、「粗さ」の全てにおいて評価値を算出し、これらの最大値を採用しているため、「総合評価」ということができる。
以上のような手順で、各評価指標に基づいて、分析対象の医用画像に含まれる血管断面(輪郭線131a)における血栓症のリスクに応じて定められる評価値を自動的に設定することができる。評価値は、評価値設定プログラム20gに従って設定される。複数の医用画像が分析対象の医用画像として選択(取得)された場合には、複数の医用画像のそれぞれにおける評価値が自動的に設定される。
評価値が設定されると、図10および図11に示すように、画像処理画面100には、評価値が様々な形態で表示される。たとえば、評価値に応じた態様で表示された環状の画像(環状画像)105aを医用画像の血管内壁の位置に重畳して表示した環状画像表示部105、および、評価値を輪郭線(血管内壁の断面形状)の周方向の位置に対応させて折れ線グラフ106aとして表示(グラフ表示)する第1グラフ表示部106などによって、視覚的に評価値が認識できるように表示される。
環状画像105aは、環状画像105aを構成する測定点のそれぞれが評価値に応じた色に着色されている。たとえば、評価値が最も低い測定点(評価値最低点)は青色、評価値が最も高い測定点(評価値最高点)は赤色に着色されており、評価値最低点および評価値最高点以外の測定点については、評価値に応じて、色相環における青色と赤色の間の色に着色されている。具体的には、環状画像105aでは、評価値が低い部分から順に、青緑、緑、黄緑、黄、橙などの色が着色されている。このため、環状画像105aのうち赤色または赤色に近い色のついている部分は評価値が高いこと、すなわち血栓症リスクが高いことが視覚的に認できる。
第1グラフ表示部106で表示されている折れ線グラフ106aは、医用画像に含まれる血管内壁の表面の最下点で切り開いて水平に展開した形態となっている。折れ線グラフ106aは、縦軸が評価値を示し、横軸が周方向における位置を示している。また、折れ線グラフ106aを構成する測定点のそれぞれについても、環状画像105aと同様に、評価値に応じた色に着色されている。
また、複数の医用画像が分析対象の医用画像として選択(取得)されている場合には、複数の医用画像のそれぞれの血管断面(輪郭線131a)における評価値の平均である平均評価値が算出されている。たとえば、平均評価値は、輪郭線131aを構成する全ての測定点の評価値の合計値を、輪郭線131aを構成する測定点の数で割ることによって求めることができる。
複数の医用画像が分析対象の医用画像として選択されている場合、図10ないし図12に示すように、複数の医用画像のそれぞれの平均評価値を血管の軸方向の位置に対応させた折れ線グラフ107aとして表示(グラフ表示)する第2グラフ表示部107が表示される。折れ線グラフ107aは、横軸が評価値を示し、縦軸が血管の軸方向の位置を示している。したがって、1つの断面における評価値だけでなく、血管の軸方向においてどのように評価値が推移しているかを視認することができ、本来円形である血管の内側形状が一部凹み形状になっている部位、すなわち血管内に付着しているプラークを容易に発見することができる。
また、図12に示すように、第2グラフ表示部107に折れ線グラフ107aが表示されている場合、現在画像表示部102に表示されている医用画像の血管軸方向の位置(現在の断面位置)を示す指標画像107bが表示されていてもよい。指標画像107bをドラッグするか、あるいは、第2グラフ表示部107の表示領域内の任意の位置を選択(マウスクリックまたはタッチ操作など)することによって現在の(画像処理画面100に表示される)断面位置を変更することができる。また、複数の医用画像が分析対象の医用画像として選択されている場合、血管の軸方向において平均評価値が高い位置(断面位置)から順に、画像処理画面100に表示される断面位置を選択できるようにしてもよい。すなわち、複数の医用画像(断面位置)における平均評価値を高い順に並べ、平均評価値を高い順に、断面位置の表示順序を設定する。さらに、複数の医用画像が分析対象の医用画像として選択されている場合、平均評価値が所定の閾値を超えた断面位置のみを選択できるように(平均評価値が所定の閾値を超えない断面位置を非表示に)してもよい。
機能選択部103は、画像処理画面100における各種機能を選択(設定)するために設けられる。画像処理画面100における機能は、表示に関する機能(表示機能)とデータの記憶に関する機能(記憶機能)とに大別されており、機能選択部103には、表示機能を選択するためのタブ(表示機能タブ)103aと、記憶機能を選択するためのタブ(記憶機能タブ)103bとが切り替え可能に設けられている。
図10ないし図12では、表示機能タブ103aが有効化された(選択された)状態を示している。図10ないし図12に示すように、表示機能タブ103aには、評価指標を選択するための評価指標選択部103c、および表示する事項(表示事項)を選択するための表示事項選択部103dが設けられている。
評価指標選択部103cでは、評価値の設定に係る評価指標(評価値の算出の方法)を選択することができる。たとえば、評価指標としては、「凹み度」、「半径変化率」、「曲率」、「粗さ」、「複合評価(総合評価)」等を選択することができる。本実施形態では、各評価指標を選択するためのラジオボタンが縦並びに配置されている。これらのラジオボタンを操作して、選択可能な「凹み度」、「半径変化率」、「曲率」、「粗さ」のいずれか1つの評価指標が選択されると、選択された評価指標のみから設定された評価値に応じた表示内容となる。「複合評価」が選択されると、2以上の評価指標の組み合わせから設定された評価値に応じた表示内容となる。初期状態(デフォルト)では「複合評価」が選択されている。このようにすれば、医用画像処理装置1のユーザが評価指標を自由に選択することができる。特に、医用画像処理装置1のユーザが医療関係者である場合、様々な観点から血管断面における評価値を確認する(参考にする)ことによって、血栓症リスクをより適切に診断することができる。
表示事項選択部103dでは、画像表示部102に表示される表示事項の表示/非表示を選択することができる。たとえば、表示事項としては、「医用画像の検査情報」、「血管内壁の輪郭線」、「血管内壁の最小外接円」、「最小外接円の中心位置」等を選択することができる。本実施形態では、各表示事項の表示/非表示を選択するためのチェックボックスが縦並びに配置されている。これらのチェックボックスを操作してそれぞれの表示事項を表示するか、あるいは非表示とするかを選択することができる。ここで、「血管内壁の輪郭線」は輪郭線131aに対応し、「血管内壁の最小外接円」は最小外接円131bに対応し、「最小外接円の中心位置」は中心位置131cに対応する。このようにすれば、医用画像処理装置1のユーザが視認し易いように表示事項の表示/非表示を自由にカスタマイズでき、医用画像処理装置1の使い勝手を向上させることができる。
図13では、記憶機能タブ103bが有効化された(選択された)状態を示している。記憶機能タブ103bには、各種データを記憶するための記憶メニューが表示されており、医用画像を医用画像処理装置1に記憶させるための画像記憶選択部103e、および医用画像における評価値のデータ(評価値データ)を医用画像処理装置1に記憶させるための評価値記憶ボタン103fが設けられている。
画像記憶選択部103eでは、複数種類の形態(記憶モード)での医用画像の記憶方法(保存方法)を選択することができる。たとえば、画像全体をそのまま記憶する「RAW IMAGE」、画像表示部102に表示されている領域を切り取って記憶する「DISPLAYED IMAGE」、血管の中心位置(中心位置131c)を画像中心とし、血管内腔領域が画像に収まるように拡大した画像を記憶する「ZOOM VESSEL」等を選択することができる。本実施形態では、各評価指標を選択するためのラジオボタンが縦並びに配置されている。これらのラジオボタンを操作して、選択可能な「RAW IMAGE」、「DISPLAYED IMAGE」、「ZOOM VESSEL」のいずれか1つの記憶モードが選択された状態で記憶実行ボタン103gが操作されると、選択された記憶モードに従って画像が記憶される。
評価値記憶ボタン103fには、医用画像に対して設定された評価値データを医用画像処理装置1に記憶させる機能が割り当てられている。なお、医用画像処理装置1に記憶された評価値データは、対応する医用画像に紐づけられて記憶されている。
本発明によれば、医用画像撮影装置で撮影された医用画像に含まれる血管断面の像から血管内壁の表面に対応する輪郭線131aを抽出し、少なくとも輪郭線131aの周方向における半径変化率または輪郭線131aの周方向における曲率から血栓症のリスクに応じて定められる評価値を設定し、評価値を表示部13のディスプレイに表示する。したがって、医用画像処理装置1を利用する医療関係者(特に医師)は、血管断面における評価値を確認する(参考にする)ことができる。すなわち、医用画像処理装置1によって血栓症リスクの診断を適切に支援することができる。また、本発明では、2次元の断面画像のみから評価値を設定できるため、簡単な処理で血栓症リスクの高いプラークを推定することができる。
また、本発明によれば、半径変化率および曲率を組み合わせて評価値を設定することが可能であるから、より正確に評価値を設定することができ、血栓症リスクの診断をより適切に支援することができる。
さらに、本発明によれば、輪郭線131aの外接円からの距離に対応する凹み度を検出することができ、半径変化率、曲率および凹み度のうち少なくとも2つ以上の組み合わせから評価値を設定することが可能であるから、より正確に評価値を設定することができ、血栓症リスクの診断をより適切に支援することができる。
さらにまた、本発明によれば、評価値を輪郭線131aの周方向の位置に対応させてグラフ表示するから、評価値の視認性を向上させ、血栓症リスクの診断をより適切に支援することができる。
また、本発明によれば、血管の軸方向の位置が異なる複数の医用画像のそれぞれにおける輪郭線を抽出し、複数の医用画像のそれぞれにおける輪郭線から、複数の医用画像のそれぞれの評価値の平均である平均評価値を算出し、平均評価値を表示する。これにより、医用画像処理装置1を利用する医療関係者(特に医師)は、血管の軸方向の位置に応じた評価値を確認する(参考にする)ことができる。すなわち、医用画像処理装置1によって血栓症リスクの診断を適切に支援することができる。また、本発明によれば、評価値を確認でき、またその評価値の評価がなされた部位の血管断面の像を確認できるため、例えば医師が評価値の高い部位の血管断面から順番に血栓症リスクを診断していくことができる。このため、医師が医用画像処理装置1を操作して血管断面を血管の長さに沿ってずっと見ていくような作業時間をかけることなく、物理的に血管内に凹みが生じている部位(評価値が高い部位)のみを詳細に確認して適切に診断するといったことが短時間で可能になる。
この発明における生体音取得支援装置は、医用画像処理装置1に対応し、以下同様に、画像取得部は医用画像取得ボタン101aに対応し、輪郭線抽出部は輪郭線抽出プログラム20cおよびこれに従って動作する制御部11に対応し、半径変化率検出部は、半径変化率検出プログラム20dおよびこれに従って動作する制御部11に対応し、曲率検出部は、曲率検出プログラム20eおよびこれに従って動作する制御部11に対応し、評価値設定部は、評価値設定プログラム20gおよびこれに従って動作する制御部11に対応し、評価値表示部は、環状画像表示部105および第1グラフ表示部106などに対応し、凹み度検出部は、凹み度検出プログラム20fおよびこれに従って動作する制御部11に対応し、グラフ表示部は、第1グラフ表示部106に対応し、平均評価値設定部は、評価値設定プログラム20gおよびこれに従って動作する制御部11に対応するが、この発明は本実施形態に限られず他の様々な実施形態とすることができる。また、上述の実施形態で挙げた画面および具体的な構成等は一例であり、実際の製品に応じて適宜変更することが可能である。
たとえば、上述の実施形態では、医用画像処理装置1が汎用のコンピュータである場合を例にあげて説明したが、これに限定される必要は無い。たとえば、医用画像処理装置1は、X線CT装置またはMRI装置等の医用画像撮影装置の一部に組み込まれていてもよい。また、医用画像処理装置1は、医用画像撮影装置と連携して医療画像処理システムを構成してもよい。
また、本発明は、医用画像処理装置として提供するだけでなく、医用画像処理装置を用いて、医用画像処理の方法、プログラム、およびプログラムを記憶した非一時的な(非一過性の)有形の記憶媒体としても提供することができる。