JP7363978B1 - ウェーハ研磨条件の決定方法、ウェーハの製造方法およびウェーハ片面研磨システム - Google Patents

ウェーハ研磨条件の決定方法、ウェーハの製造方法およびウェーハ片面研磨システム Download PDF

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Abstract

【課題】適切な研磨条件を設定してウェーハ片面研磨工程において面内研磨量差を容易に制御することを可能にすること。【解決手段】研磨装置によってウェーハ片面を研磨する研磨条件の決定方法。上記研磨装置は、少なくとも、定盤と、この定盤上に配置された研磨パッドと、この研磨パッドの上方に配置された研磨チャックと、を含む。上記研磨条件決定方法は、ウェーハ研磨量面内差の目標範囲を設定すること、ウェーハ研磨量面内差とウェーハ研磨圧力面内差との相関関係に基づき、上記目標範囲のウェーハ研磨量面内差を達成可能と予測されるウェーハ研磨圧力面内差の予測範囲を決定すること、および、ウェーハ研磨圧力面内差と研磨チャックの押圧面形状値との相関関係に基づき、上記予測範囲のウェーハ研磨圧力面内差を達成可能と予測される研磨チャックの押圧面形状値範囲を決定すること、を含む。【選択図】なし

Description

本発明は、ウェーハ研磨条件の決定方法、ウェーハの製造方法およびウェーハ片面研磨システムに関する。
ウェーハの表面を研磨する装置には、ウェーハの片面を研磨する片面研磨装置と、ウェーハの両面を研磨する両面研磨装置とがある。片面研磨装置では、通常、研磨チャックに保持されたウェーハの研磨対象表面を、定盤に貼り付けられた研磨パッドに押し付けながら、研磨チャックと定盤とをそれぞれ回転させて、ウェーハの研磨対象表面と研磨パッドとを接触させる。こうして接触する研磨対象表面と研磨パッドとの間に研磨剤を供給することにより、ウェーハの研磨対象表面を研磨することができる(例えば特許文献1参照)。
特開2007-274012号公報
片面研磨装置を用いるウェーハ研磨工程(以下、「ウェーハ片面研磨工程」とも記載する。)では、ウェーハの研磨対象表面の面内において研磨量差が生じ得る。例えば特許文献1には、面内研磨量差が生じることにより研磨後のウェーハ外周部が反り上がることを抑制するために、ウェーハとウェーハを保持するテンプレートとの間に環状のスペーサを取り付けることが提案されている(特許文献1の請求項1、段落0009等参照)。しかし、スペーサによって面内研磨量差を制御することは、スペーサの形状、配置位置等を調整する必要があるため、容易ではない。また、研磨条件を適切に設定することがウェーハ片面研磨における面内研磨量差を制御することに寄与し得るが、従来、そのような研磨条件を見出すためには、多くの試行錯誤を繰り返さざるを得なかった。
本発明の一態様は、適切な研磨条件を設定してウェーハ片面研磨工程において面内研磨量差を容易に制御することを可能にすることを目的とする。
本発明の一態様は、以下の通りである。
[1]研磨装置によってウェーハ片面を研磨する研磨条件の決定方法(以下、「研磨条件決定方法」とも記載する。)であって、
上記研磨装置は、少なくとも、定盤と、該定盤上に配置された研磨パッドと、該研磨パッドの上方に配置された研磨チャックと、を含み、
ウェーハ研磨量面内差の目標範囲を設定すること、
ウェーハ研磨量面内差とウェーハ研磨圧力面内差との相関関係に基づき、上記目標範囲のウェーハ研磨量面内差を達成可能と予測されるウェーハ研磨圧力面内差の予測範囲を決定すること、および、
ウェーハ研磨圧力面内差と研磨チャックの押圧面形状値との相関関係に基づき、上記予測範囲のウェーハ研磨圧力面内差を達成可能と予測される研磨チャックの押圧面形状値範囲を決定すること、
を含む、上記研磨条件の決定方法。
[2]ウェーハ研磨量面内差とウェーハ研磨圧力面内差との上記相関関係は、比例関係である、[1]に記載の研磨条件の決定方法。
[3]上記研磨チャックの押圧面形状は、上記研磨パッド側に対して中央部が外周部より凹んでいる凹形状であるか、または、上記研磨パッド側に対して中央部が外周部より突出している凸形状であり、
上記決定される押圧面形状値範囲は、上記凹形状の凹み深さ範囲または上記凸形状の突出高さ範囲である、[1]または[2]に記載の研磨条件の決定方法。
[4]ウェーハ研磨圧力面内差と研磨チャックの押圧面形状値との上記相関関係は、ウェーハ研磨圧力面内差と上記凹み深さとの線形関係またはウェーハ研磨圧力面内差と上記突出高さとの線形関係である、[3]に記載の研磨条件の決定方法。
[5]上記研磨チャックの押圧面形状を、径方向の断面形状を二次関数に近似して決定することを更に含む、[3]または[4]に記載の研磨条件の決定方法。
[6]上記凹形状の凹み深さ範囲または上記凸形状の突出高さ範囲を、更に上記研磨パッドの厚さおよび硬さの一方または両方に基づき決定する、[3]~[5]のいずれかに記載の研磨条件の決定方法。
[7]実研磨に使用する研磨パッドの厚さを決定すること、および、
上記決定した研磨パッドの厚さが予め定めた基準厚さより薄い場合、上記凹形状の凹み深さ範囲または上記凸形状の突出高さ範囲をより狭い範囲に決定すること、
を更に含む、[6]に記載の研磨条件の決定方法。
[8]実研磨に使用する研磨パッドの硬さを決定すること、および、
上記決定した研磨パッドの硬さが予め定めた基準硬さより硬い場合、上記凹形状の凹み深さ範囲または上記凸形状の突出高さ範囲をより狭い範囲に決定する、[6]または[7]に記載の研磨条件の決定方法。
[9][1]~[8]のいずれかに記載の研磨条件の決定方法によって研磨条件を決定すること、および、
決定された押圧面形状値範囲の形状の押圧面を有する研磨チャックを含む研磨装置によってウェーハ片面を研磨すること、
を含む、研磨面を有するウェーハの製造方法。
[10]上記研磨チャックは、凹み深さが5μm以上20μm以下の凹形状の押圧面を有する、[9]に記載の製造方法。
[11]上記研磨装置は、厚さが0.864mm±20%であり且つヤング率0.27MPa±20%である研磨パッドを含む、[9]または[10]に記載の製造方法。
[12]上記ウェーハは半導体ウェーハである、[9]~[11]のいずれかに記載の製造方法。
[13]上記半導体ウェーハはシリコンウェーハである、[12]に記載の製造方法。
[14]少なくとも、定盤と、該定盤上に配置された研磨パッドと、該研磨パッドの上方に配置された研磨チャックと、を含む研磨装置と、
[1]~[8]のいずれかに記載の研磨条件の決定方法によって研磨条件を決定する研磨条件決定部と、
を有する、ウェーハ片面研磨システム。
本発明の一態様によれば、適切な研磨条件を設定してウェーハ片面研磨工程において面内研磨量差を容易に制御することが可能になる。
研磨装置の一例の一部概略断面図である。 押圧面形状が研磨パッド側に対して中央部が外周部より凹んでいる凹形状である研磨チャック(凹チャック)の概略断面図である。 押圧面形状が研磨パッド側に対して中央部が外周部より突出している凸形状である研磨チャック(凸チャック)の概略断面図である。 凹チャックを使用した場合および凸チャックを使用した場合のウェーハ研磨量(実測値)の面内分布を示すグラフである。 ウェーハの研磨対象表面に掛かる圧力をシミュレーションで計算する際に使用した2次元軸対称モデルの概念図である。 凹チャックを使用した場合および凸チャックを使用した場合にウェーハの研磨対象表面に掛かる圧力の面内分布(実測結果およびシミュレーション)を示すグラフである。 周方向平均取り代GBIRとp_max-p_minを示す。 各種押圧面形状の研磨チャックを使用する場合にウェーハの研磨対象表面に掛かる圧力をシミュレーションで計算した結果を示す。 各種押圧面形状の研磨チャックを使用する場合にウェーハの研磨対象表面に掛かる圧力をシミュレーションで計算した結果を示す。 研磨チャックの押圧面について、径方向の断面形状を二次関数で近似した結果を示す。 ウェーハ研磨圧力面内差の研磨パッドの厚さ依存性および硬さ依存性を示すグラフである。
[研磨条件決定方法]
本発明の一態様は、研磨装置によってウェーハ片面を研磨する研磨条件の決定方法に関する。
上記研磨装置は、少なくとも、定盤と、この定盤上に配置された研磨パッドと、この研磨パッドの上方に配置された研磨チャックと、を含む。
上記研磨条件決定方法は、
ウェーハ研磨量面内差の目標範囲を設定すること、
ウェーハ研磨量面内差とウェーハ研磨圧力面内差との相関関係に基づき、上記目標範囲のウェーハ研磨量面内差を達成可能と予測されるウェーハ研磨圧力面内差の予測範囲を決定すること、および、
ウェーハ研磨圧力面内差と研磨チャックの押圧面形状値との相関関係に基づき、上記予測範囲のウェーハ研磨圧力面内差を達成可能と予測される研磨チャックの押圧面形状値範囲を決定すること、
を含む。
以下に詳述するように、本発明者は、ウェーハ研磨量面内差とウェーハ研磨圧力面内差とが相関すること、および、ウェーハ研磨圧力面内差と研磨チャックの押圧面形状値とが相関すること、を新たに見出した。上記ウェーハ研磨条件の決定方法では、それらの相関関係に基づいて、所望のウェーハ研磨量面内差を達成可能と予測される研磨条件を容易に決定することができる。
以下、上記ウェーハ研磨条件の決定方法について、更に詳細に説明する。本発明および本明細書において、「上方」、「下面」等の表記は、研磨装置が研磨処理を行う状態に置かれたときの「上方」、「下面」等を意味する。以下では、図面に基づき説明する場合があるが、図面に示す形態は例示であって、かかる形態に本発明は限定されない。
<研磨対象>
研磨対象のウェーハは、例えば半導体ウェーハであることができる。半導体ウェーハは、例えば、単結晶シリコンウェーハ等のシリコンウェーハであることができる。例えば、シリコンウェーハは、以下の方法により作製できる。単結晶シリコンインゴットをカットしてブロックを得る。単結晶シリコンインゴットは、CZ法(チョクラルスキー法)、FZ法(浮遊帯域溶融(Floating Zone)法)等の公知の方法で育成できる。得られたブロックをスライスしてウェーハとする。このウェーハに各種加工を施すことにより、シリコンウェーハを作製することができる。上記加工としては、面取り加工、平坦化加工(ラップ、研削、研磨)等を挙げることができる。上記研磨条件決定方法により研磨条件が決定されるウェーハ片面研磨工程は、例えば、これらのウェーハ加工の最終工程である仕上げ研磨工程における研磨方法として好適である。
<研磨装置>
(研磨装置の構成例)
上記研磨装置は、ウェーハ片面研磨装置であり、少なくとも、定盤と、この定盤上に配置された研磨パッドと、この研磨パッドの上方に配置された研磨チャックと、を含む。かかる研磨装置の一例の一部概略断面図を図1に示す。
図1に示す研磨装置1は、定盤11、研磨パッド12および研磨チャック14を有し、更に、バックパッド13を有する。図1中の矢印は、研磨チャック14の上部が加圧されている状態を模式的に示している。
研磨装置1は、定盤11および研磨チャック14を、それぞれ回転機構(図示は省略)により回転させながら、研磨対象のウェーハWの研磨対象表面と定盤11上に貼り合わされた研磨パッド12とを摺接させる。研磨装置の研磨剤供給機構(図示は省略)から排出される研磨剤が、ウェーハWの研磨対象表面(ウェーハWの下面)と研磨パッド12との間に供給され、ウェーハWの研磨対象表面が研磨される。研磨剤としては、CMP(chemical Mechanical Polishing)に通常使用される研磨スラリーを用いることができる。
研磨チャック14は、下面14aを含む一部が剛体からなるか、または研磨チャック全体が剛体からなる研磨チャックであることができる。剛体は、例えばセラミックス(ceramics)であることができる。研磨チャック14の下面14aは、バックパッド13を介してウェーハWを押圧する押圧面である。研磨装置1では、研磨チャック14の押圧面(下面)14aに、バックパッド13が貼り合わされている。バックパッド13は、接着剤の使用等の公知の方法によって研磨チャック14の押圧面14aと貼り合わせることができる。バックパッド13としては、例えば、水を含むと水の表面張力により吸着性を示す材料(例えば発泡ポリウレタン等)製の円盤状の板を用いることができる。これにより、研磨時に水を含んだバックパッド13にウェーハWを保持させること(所謂水張り)ができる。
(研磨チャックの押圧面形状)
図1に示す研磨装置1において、研磨チャック14の押圧面14aの面形状は平面である。ただし、上記研磨条件決定方法により研磨条件が決定されるウェーハ片面研磨工程において使用される研磨装置では、研磨チャックの押圧面形状は、平面に限定されず、一形態では研磨パッド側に対して中央部が外周部より凹んでいる凹形状であることができ、他の一形態では研磨パッド側に対して中央部が外周部より突出している凸形状であることができる。なお、研磨チャックの押圧面は、通常、平面視は円形である。本発明および本明細書における形状に関する記載は、通常生じ得る誤差を許容するものとする。例えば、円形は、完全な円形に加えて、研磨チャックの製造時等に通常生じ得る範囲で円形から形状誤差が生じた形状も包含するものとする。以下において、押圧面形状が研磨パッド側に対して中央部が外周部より凹んでいる凹形状である研磨チャックを「凹チャック」と呼び、押圧面形状が研磨パッド側に対して中央部が外周部より突出している凸形状である研磨チャックを「凸チャック」と呼ぶ。
図2は、押圧面形状が研磨パッド側に対して中央部が外周部より凹んでいる凹形状である研磨チャック(凹チャック)24の概略断面図である。図2中、矢印で示す方向が、研磨パッド側である。この点は、後述の図3についても同様である。凹形状について、「凹み深さ」は、押圧面の中央部と外周部との鉛直方向距離であり、例えば図2に示す深さDである。凹み深さは、例えば0μm超50μm以下の範囲であることができるが、この範囲に限定されるものではない。
図3は、押圧面形状が研磨パッド側に対して中央部が外周部より突出している凸形状である研磨チャック(凸チャック)34の概略断面図である。凸形状について、「突出高さ」は、押圧面の中央部と外周部との鉛直方向距離であり、例えば図3に示す高さHである。突出高さは、例えば0μm超30μm以下の範囲であることができるが、この範囲に限定されるものではない。
<研磨条件の決定の具体例>
本発明者は、適切な研磨条件を設定してウェーハ片面研磨工程において面内研磨量差を容易に制御することを可能にするために鋭意検討を重ねる中で、以下の測定およびシミュレーションを行った。
直径300mmのシリコンウェーハのウェーハ片面研磨工程を、凹チャックおよび凸チャックをそれぞれ使用して実施した。使用した凹チャックは、図2に示す凹み深さDが10μmの凹チャックであり、使用した凸チャックは、図3に示す突出高さHが2μmの凸チャックである。研磨パッドとしては、厚さが0.486mmであり、ヤング率が0.27MPaの研磨パッドを使用した。
図4は、凹チャックを使用した場合および凸チャックを使用した場合のウェーハ研磨量(相対値)の面内分布を示すグラフである。研磨量は、研磨前のウェーハ厚さと研磨後のウェーハ厚さとの差分(「研磨前のウェーハ厚さ」-「研磨後のウェーハ厚さ」)として求めることができる。図4中、ウェーハ研磨量は、ウェーハ研磨量の狙い値を基準とした相対値として示されている。図4に示すグラフから、凸チャックを使用した場合、外周部の研磨量と比べて中心部の研磨量が多いことが確認できる。また、図4に示すグラフから、凹チャックを使用した場合、凸チャックを使用した場合と比べて、ウェーハ面内の研磨量の差が小さいことが確認できる。
本発明者は、図5に概念図を示す2次元軸対称モデルを用いて、上記凹チャックを用いたウェーハ片面研磨工程および上記凸チャックを用いたウェーハ片面研磨工程において、研磨チャックに圧力Pを加えた状態について、ウェーハの研磨対象表面に掛かる圧力をシミュレーションで計算した。シミュレーションは、厚さが0.486mmであり、ヤング率が0.27MPaの研磨パッドを使用した場合について行った。圧力のシミュレーションは、ダッソー・システムズ社製ABAQUS(汎用非線形構造解析ソフト)を使用して圧力計算(有限要素法)によって行った。
また、先に記載したウェーハ片面研磨工程で使用した研磨装置において、定盤を固定し、研磨チャックに上記シミュレーションと同じ圧力Pを加えた状態においてウェーハの研磨対象表面に掛かる圧力を市販の面圧シートを用いて実測した。実測では、繰り返し測定回数N=3でデータを平均し、更に周方向で平均した圧力分布を求めた。
図6は、凹チャックを使用した場合および凸チャックを使用した場合にウェーハの研磨対象表面に掛かる圧力の面内分布(実測結果およびシミュレーション)を示すグラフである。図6中、圧力は、上記圧力Pを基準とした相対値として示されている。図6より、シミュレーションでの計算結果がおおよそ実測結果を再現していることが確認できる。また、図4および図6から、凸チャックを使用した場合と比べてウェーハ面内の研磨量差が小さい凹チャックを使用した場合において、ウェーハ面内の圧力差も凸チャックを使用した場合より小さいことが確認できる。
図7は、周方向平均取り代GBIRとp_max-p_minを示す。縦軸の周方向平均取り代GBIRとは、図4の周方向平均をとった研磨量の最大値と最小値との差である。横軸のp_max-p_minとは、図6に示すシミュレーションで得られた圧力分布の最大値と最小値との差である。十分なシミュレーション精度および測定精度を確保するために、計算にはウェーハの端から5mmを除去したデータを用いた。図7中、左側のプロットが凹チャックを使用した場合の結果を示し、右側のプロットが凸チャックを使用した場合の結果を表す。図7より、ウェーハ面内の圧力分布がより均一であるほど、ウェーハ面内の研磨量がより均一になることが確認できる。
以上の結果から、ウェーハ研磨量面内差とウェーハ研磨圧力面内差との間には相関関係が存在することが確認できる。図7に示す結果から、その相関関係は比例関係であり得ることも確認できる。例えば、図7に基づくと、ウェーハ研磨量面内差の目標範囲を「周方向平均取り代GBIR<30nm」に設定すれば、この目標範囲のウェーハ研磨量面内差は、ウェーハ研磨圧力面内差を「p_max-p_min<1.5kPa」とすることで達成可能と予測することができる。
本発明者は更に、ウェーハ片面研磨工程について、ウェーハの研磨対象表面にかかる圧力分布の研磨チャックの押圧面形状依存性を検討するために、以下のシミュレーションも行った。シミュレーションでは、図5に概念図を示す2次元軸対称モデルを用いて、ダッソー・システムズ社製ABAQUS(汎用非線形構造解析ソフト)を使用し、圧力計算は有限要素法によって行った。
直径300mmのシリコンウェーハのウェーハ片面研磨工程について、図5に概念図を示す2次元軸対称モデルを用いて、各種押圧面形状の研磨チャックを使用し、厚さが0.486mmであり、ヤング率が0.27MPaの研磨パッドを使用する場合にウェーハの研磨対象表面に掛かる圧力をシミュレーションで計算した。シミュレーション結果を図8に示す。
上記の各種押圧面形状の研磨チャックは、
押圧面形状が平面の研磨チャック(後述の図8中、「flat」)、
図2に示す凹み深さDが10μm、20μm、30μm、40μmの凹チャック(図8中、凹10μm、凹20μm、凹30μm、凹40μm)、
図3に示す突出高さHが10μm、20μmの凸チャック(図8中、凸10μm、凸20μm)、
である。
図8および図9は、各種押圧面形状の研磨チャックを使用する場合にウェーハの研磨対象表面に掛かる圧力をシミュレーションで計算した結果を示す。
図8は、計算によって得られた圧力の面内分布である。研磨チャックの押圧面形状が凹形状から凸形状に変化するにしたがって、圧力の面内分布も同様の傾向で変化している。このようにウェーハ研磨圧力面内差(例えばp_max-p_min)と研磨チャックの押圧面形状値とが相関することが確認できる。
図9は、図8で求めた圧力の面内分布から、先に記載したようにp_max-p_minを計算し、研磨チャックの押圧面形状値についてプロットしたグラフである。この押圧面形状値とは、上記の凹み深さまたは突出高さであり、平面の場合は0μmである。図9中、点線L1は、研磨チャックの押圧面形状値が-20μm(凹20μm)、研磨チャックの押圧面形状値が-30μm(凹30μm)および研磨チャックの押圧面形状値が-40μm(凹40μm)の3点のプロットを通る直線である。図9中、点線L2は、研磨チャックの押圧面形状値が0μm(flat)、研磨チャックの押圧面形状値が10μm(凸10μm)および研磨チャックの押圧面形状値が20μm(凸20μm)の3点のプロットを通る直線である。図9より、ウェーハ研磨圧力面内差と研磨チャックの押圧面形状値とが相関し、線形関係が成り立つと言えることが確認できる。具体的には、ウェーハ研磨圧力面内差と凹チャックの凹形状の凹み深さとの間に線形関係が存在すると言うことができ、ウェーハ研磨圧力面内差と凸チャックの凸形状の突出高さとの間に線形関係が存在すると言うことができる。より詳しくは、研磨チャックの押圧面形状値が-13μmから-40μmまでの場合には図9中の点線L1により示される線形関係が存在し、研磨チャックの押圧面形状値が-13μmから0μmまでの場合および0μmから20μmの場合には図9中の点線L2により示される線形関係が存在するということができる。
先に記載したように、例えば、図7に基づき、ウェーハ研磨量面内差の目標範囲を「周方向平均取り代GBIR<30nm」に設定すれば、この目標範囲のウェーハ研磨量面内差は、ウェーハ研磨圧力面内差を「p_max-p_min<1.5kPa」とすることで達成可能と予測することができる。更に、図9の点線L1により表される線形関係およびL2により表される線形関係に基づけば、「p_max-p_min<1.5kPa」のウェーハ研磨圧力面内差の予測範囲は、凹形状の凹み深さが4μm以上21μm以下(図9中、研磨チャックの押圧面形状値が-4μmから-21μmまでの範囲)の凹チャックを使用することによって達成可能と予測することができる。
なお、図9には、複数のプロットを通る直線として点線L1および点線L2を示した。ただし、上記線形関係は、かかる例に限定されるものではない。例えば、複数のプロットについて最小二乗法等の公知のフィッティング処理によって線形近似を行い一次関数を取得し、この一次関数によって表される線形関係に基づき、上記予測を行うこともできる。
一形態では、研磨チャックの押圧面形状を、径方向の断面形状を二次関数に近似して決定することができる。かかる二次関数による近似は、例えば以下のように行うことができる。
研磨チャックの押圧面(平面視が円形)について、最外周位置を半径r=167.5mmの位置とし、押圧面中心と最外周位置との鉛直方向距離を、凹チャックについては凹形状の凹み深さ、凸チャックについては凸形状の突出高さとする。また、以下では、突出高さを正(+)の値、凹み深さを負(-)の値として表記する。平面、突出高さ10μm、突出高さ20μm、凹み深さ10μm、凹み深さ20μm、凹み深さ30μm、凹み深さ40μmの押圧面形状は、押圧面形状値(具体的には突出高さまたは凹み深さ)が決定されば、二次関数として次の式:「y=a*r+b」を用いて、押圧面の面内各部における押圧面中心との鉛直方向距離を「y」として算出し、算出値を2次元軸対称モデルに適用することで決定することができる。上記式中、bは相対高さまたは相対深さを表す。押圧面形状値をCとすると、aは、a=C/(167.5)により求められる。具体的には、上記の各押圧面形状値の押圧面の形状を算出するための上記式中のaおよびbは、以下の表1に示す値となる。なお、表1中、「E-07」等の表示は、公知の通り指数表示である。表1に示すaおよびbを用いて上記式によって算出されたyの算出値を半径方向にプロットして作成された、研磨チャックの押圧面の径方向の断面形状を図10に示す。
以上説明したように、本発明者の鋭意検討の結果、ウェーハ研磨量面内差とウェーハ研磨圧力面内差とが相関すること、および、ウェーハ研磨圧力面内差と研磨チャックの押圧面形状値とが相関すること、が新たに見出された。それらの相関関係に基づいて、以下の手順にしたがい、所望のウェーハ研磨量面内差を達成可能と予測される研磨条件を容易に決定することができる。
まず、ウェーハ研磨量面内差の目標範囲を設定する。ウェーハ研磨量面内差の目標範囲は、実研磨を経て製造されるウェーハに望まれる品質に応じて設定することができる。研磨量面内差がより小さいウェーハ片面研磨工程を行う観点からは、ウェーハ研磨量面内差の目標範囲をより小さく設定することは望ましい。実研磨とは、製品製造のために実際に行われる研磨をいうものとする。
上記目標範囲の設定後、ウェーハ研磨量面内差とウェーハ研磨圧力面内差との相関関係に基づき、上記記目標範囲のウェーハ研磨量面内差を達成可能と予測されるウェーハ研磨圧力面内差の予測範囲を決定する。
更にその後、ウェーハ研磨圧力面内差と研磨チャックの押圧面形状値との相関関係に基づき、上記予測範囲のウェーハ研磨圧力面内差を達成可能と予測される研磨チャックの押圧面形状値範囲を決定する。
例えば、一形態では、研磨パッドの厚さおよび硬さを特定の値として、上記のようなシミュレーションによって、ウェーハ研磨量面内差とウェーハ研磨圧力面内差との相関関係情報(例えばグラフ、関係式等)および研磨圧力面内差と研磨チャックの押圧面形状値との相関関係情報(例えばグラフ、関係式等)を取得することができる。そして、取得した相関関係情報に基づき、上記の手順にしたがい、所望のウェーハ研磨量面内差を達成可能と予測される研磨チャックの押圧面形状値範囲を決定することができる。
また、一形態では、更に研磨パッドの厚さおよび硬さの一方に基づき、研磨チャックの押圧面形状値範囲を決定することができる。この点について、以下に更に詳細に説明する。
図11は、ウェーハ研磨圧力面内差の研磨パッドの厚さ依存性および硬さ依存性を示すグラフである。図11は、以下のように作成されたグラフである。
先に記載したシミュレーションは、厚さ(以下、「基準厚さ」)が0.486mmであり、ヤング率(以下、「基準硬さ」)が0.27MPaの研磨パッドを使用した場合について行った。先に記載したシミュレーションを、研磨パッドの厚さまたは硬さ(具体的にはヤング率)を変更して実施した。具体的には、研磨パッドの厚さおよびヤング率を、それぞれ基準値(基準厚さ、基準硬さ)±20%振った場合のウェーハにかかる圧力分布を計算し、p_max-p_min=1.5kPaとなる凹み深さ、突出高さの上限値を図11にプロットした。
図11に示すように、研磨パッドの厚さが薄くなるほど、研磨パッドの硬さが硬くなるほど、「p_max-p_min<1.5kPa」となる研磨チャックの押圧面形状値(凹み深さまたは突出高さ)の範囲は狭くなる。図11に示す例では、「p_max-p_min<1.5kPa」となる研磨チャックの押圧面形状値の範囲は、凹形状で5μm以上20μm以下である。
以上の結果から、研磨パッドの厚さが薄いほど、予測範囲のウェーハ研磨圧力面内差を達成可能と予測される研磨チャックの押圧面形状値範囲は、より狭い範囲に設定することが好ましいことが確認できる。また、研磨パッドの硬さが硬いほど、予測範囲のウェーハ研磨圧力面内差を達成可能と予測される研磨チャックの押圧面形状値範囲は、より狭い範囲に設定することが好ましいことが確認できる。
したがって、例えば、実研磨に使用する研磨パッドの厚さを決定した後、決定した研磨パッドの厚さが予め定めた基準厚さより薄い場合、凹チャックの凹形状の凹み深さ範囲または凸チャックの凸形状の突出高さ範囲をより狭い範囲に決定することができる。例えば、実研磨に使用する研磨パッドの硬さを決定した後、決定した研磨パッドの硬さが予め定めた基準硬さより硬い場合、凹チャックの凹形状の凹み深さ範囲または凸チャックの凸形状の突出高さ範囲をより狭い範囲に決定することができる。上記の基準厚さおよび基準硬さは、例えば、先に記載した相関関係情報取得のためのシミュレーションで採用した厚さおよび硬さであることができる。
<研磨面を有するウェーハの製造方法>
本発明の一態様は、上記研磨条件決定方法によって研磨条件を決定すること、および、決定された押圧面形状値範囲の形状の押圧面を有する研磨チャックを含む研磨装置によってウェーハ片面を研磨すること、を含む、研磨面を有するウェーハの製造方法に関する。
上記製造方法では、先に記載したように決定された押圧面形状値範囲の形状の押圧面を有する研磨チャックを含む研磨装置によってウェーハ片面を研磨すること以外、研磨面を有するウェーハの製造方法に関する公知技術を適用することができる。研磨対象のウェーハ、研磨装置の構成、研磨処理等の詳細については、先の記載を参照できる。
上記製造方法の一形態では、先に記載した決定結果に基づき、凹み深さが5μm以上20μm以下の凹形状の押圧面を有する研磨チャックを用いることができる。また、一形態では、先に記載したシミュレーション結果に基づき、研磨パッドとして、厚さが0.864mm±20%であり且つヤング率0.27MPa±20%である研磨パッドを用いることができる。
また、本発明の一態様は、 凹み深さが5μm以上20μm以下の凹形状の押圧面を有する研磨チャックと、厚さが0.864mm±20%であり且つヤング率0.27MPa±20%である研磨パッドと、を含む研磨装置によってウェーハ片面を研磨することを含む、研磨面を有するウェーハの製造方法に関する。かかる製造方法について、詳細は先の記載を参照できる。
<ウェーハ片面研磨システム>
本発明の一態様は、少なくとも、定盤と、この定盤上に配置された研磨パッドと、この研磨パッドの上方に配置された研磨チャックと、を含む研磨装置と、上記研磨条件決定方法によって研磨条件を決定する研磨条件決定部と、を有する、ウェーハ片面研磨システムに関する。
上記研磨条件決定部では、例えば、ウェーハ研磨量面内差の目標範囲を入力すると、先に記載したように取得されたウェーハ研磨量面内差とウェーハ研磨圧力面内差との相関関係情報(例えばグラフ、関係式等)および研磨圧力面内差と研磨チャックの押圧面形状値との相関関係情報(例えばグラフ、関係式等)から、予測範囲のウェーハ研磨圧力面内差を達成可能と予測される研磨チャックの押圧面形状値範囲を決定することができる。また、更に研磨パッドの厚さおよび硬さの一方または両方に基づき、予測範囲のウェーハ研磨圧力面内差を達成可能と予測される研磨チャックの押圧面形状値範囲を決定することができる。研磨チャックの押圧面形状値範囲を決定のための各種計算は、公知の計算ソフトを用いて行うことができる。
上記システムでは、上記研磨条件決定部において研磨チャックの押圧面形状値を決定することができ、更には、先に記載したように径方向の断面形状を二次関数に近似することによって研磨チャックの押圧面形状を決定することもできる。例えば、こうして決定された押圧面形状を有する研磨チャックを、複数の研磨チャックの中から選択して自動または手動で研磨装置に装着させてウェーハ片面研磨工程を実施することができる。
本発明の一態様は、シリコンウェーハ等の半導体ウェーハの技術分野において有用である。

Claims (13)

  1. 研磨装置によってウェーハ片面を研磨する研磨条件の決定方法であって、
    前記研磨装置は、少なくとも、定盤と、該定盤上に配置された研磨パッドと、該研磨パッドの上方に配置された研磨チャックと、を含み、
    前記研磨チャックは、押圧面を含む一部が剛体からなるか、または、研磨チャック全体が剛体からなる研磨チャックであり、
    ウェーハ研磨量面内差の目標範囲を設定すること、
    ウェーハ研磨量面内差とウェーハ研磨圧力面内差との相関関係に基づき、前記目標範囲のウェーハ研磨量面内差を達成可能と予測されるウェーハ研磨圧力面内差の予測範囲を決定すること、および、
    ウェーハ研磨圧力面内差と研磨チャックの押圧面形状値との相関関係に基づき、前記予測範囲のウェーハ研磨圧力面内差を達成可能と予測される研磨チャックの押圧面形状値範囲を決定すること、
    を含
    前記研磨チャックの押圧面形状は、前記研磨パッド側に対して中央部が外周部より凹んでいる凹形状であるか、または、前記研磨パッド側に対して中央部が外周部より突出している凸形状であり、
    前記決定される押圧面形状値範囲は、前記凹形状の凹み深さ範囲または前記凸形状の突出高さ範囲である、前記研磨条件の決定方法。
  2. ウェーハ研磨量面内差とウェーハ研磨圧力面内差との前記相関関係は、比例関係である、請求項1に記載の研磨条件の決定方法。
  3. ウェーハ研磨圧力面内差と研磨チャックの押圧面形状値との前記相関関係は、ウェーハ研磨圧力面内差と前記凹み深さとの線形関係またはウェーハ研磨圧力面内差と前記突出高さとの線形関係である、請求項に記載の研磨条件の決定方法。
  4. 前記研磨チャックの押圧面形状を、径方向の断面形状を二次関数に近似して決定することを更に含む、請求項に記載の研磨条件の決定方法。
  5. 前記凹形状の凹み深さ範囲または前記凸形状の突出高さ範囲を、更に前記研磨パッドの厚さおよび硬さの一方または両方に基づき決定する、請求項に記載の研磨条件の決定方法。
  6. 実研磨に使用する研磨パッドの厚さを決定すること、および、
    前記決定した研磨パッドの厚さが予め定めた基準厚さより薄い場合、前記凹形状の凹み深さ範囲または前記凸形状の突出高さ範囲をより狭い範囲に決定すること、
    を更に含む、請求項に記載の研磨条件の決定方法。
  7. 実研磨に使用する研磨パッドの硬さを決定すること、および、
    前記決定した研磨パッドの硬さが予め定めた基準硬さより硬い場合、前記凹形状の凹み深さ範囲または前記凸形状の突出高さ範囲をより狭い範囲に決定する、請求項に記載の研磨条件の決定方法。
  8. 請求項1~のいずれか1項に記載の研磨条件の決定方法によって研磨条件を決定すること、および、
    決定された押圧面形状値範囲の形状の押圧面を有する研磨チャックを含む研磨装置によってウェーハ片面を研磨すること、
    を含む、研磨面を有するウェーハの製造方法。
  9. 前記研磨チャックは、凹み深さが5μm以上20μm以下の凹形状の押圧面を有する、請求項に記載の製造方法。
  10. 前記研磨装置は、厚さが0.864mm±20%であり且つヤング率0.27MPa±20%である研磨パッドを含む、請求項に記載の製造方法。
  11. 前記ウェーハは半導体ウェーハである、請求項に記載の製造方法。
  12. 前記半導体ウェーハはシリコンウェーハである、請求項11に記載の製造方法。
  13. 少なくとも、定盤と、該定盤上に配置された研磨パッドと、該研磨パッドの上方に配置された研磨チャックと、を含む研磨装置と、
    請求項1~のいずれか1項に記載の研磨条件の決定方法によって研磨条件を決定する研磨条件決定部と、
    を有する、ウェーハ片面研磨システム。
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