JP7359332B1 - 高強度鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

1320MPa以上の引張強さを有し、穴広げ性および耐遅れ破壊特性に優れる高強度鋼板を提供する。上記高強度鋼板は、特定の成分組成を有し、鋼中拡散性水素が0.50質量ppm以下であり、焼戻しマルテンサイトおよびベイナイトが70.0%以上であり、フレッシュマルテンサイトが15.0%以下であり、焼戻しマルテンサイトおよびベイナイトに存在する鉄基炭化物は、平均円相当半径が0.10μm以下、平均アスペクト比が4.5以下であり、長軸の向きが0~10°の範囲内で同じ方向を向く鉄基炭化物を7~35個/μm2の個数密度で含む焼戻しマルテンサイトおよびベイナイトの割合pが25~70%である。

Description

本発明は、高強度鋼板およびその製造方法に関する。
近年、地球環境保全の観点から、自動車の燃費向上のため、自動車の車体を軽量化するニーズが高まっている。
このとき、車体の強度を維持しつつ、車体を軽量化する。例えば、従来、引張強さ(TS)が980MPa以上である高強度鋼板が使用されている(特許文献1)。
国際公開第2020/045219号
近年、車体のキャビン周辺の骨格部品に、引張強さ(TS)が1320MPa以上である高強度鋼板を使用することが望まれている。
ところで、鋼板の高強度化に伴い、鋼板の成形性が不十分となり、鋼板を複雑な形状にプレス加工することが難しくなる場合がある。成形性の指標の1つとして、穴広げ試験によって評価される穴広げ性が挙げられる。
また、引張強さが1320MPa以上である高強度鋼板を例えば冷間プレスすることにより得られた部品については、遅れ破壊が生じるおそれがある。
遅れ破壊とは、応力が付加された部品が水素侵入環境下に置かれたとき、その内部に水素が侵入して、原子間結合力を低下させたり、局所的な変形を生じさせたりすることにより、微小亀裂が生じ、その微小亀裂が進展することで部品が破壊する現象である。
このため、高強度鋼板には、十分な穴広げ性のほか、良好な耐遅れ破壊特性も要求される。
本発明は、以上の点を鑑みてなされたものであり、1320MPa以上の引張強さを有し、穴広げ性および耐遅れ破壊特性に優れる高強度鋼板を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討した結果、下記構成を採用することにより、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[7]を提供する。
[1]質量%で、C:0.130~0.350%、Si:0.50~2.50%、Mn:2.00~4.00%、P:0.100%以下、S:0.0500%以下、Al:0.001~2.000%、N:0.0100%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成と、ミクロ組織と、を有し、鋼中拡散性水素が、0.50質量ppm以下であり、上記ミクロ組織においては、焼戻しマルテンサイトおよびベイナイトの合計の面積率が、70.0%以上であり、フレッシュマルテンサイトの面積率が、15.0%以下であり、上記焼戻しマルテンサイトおよび上記ベイナイトに存在する鉄基炭化物は、平均円相当半径が0.10μm以下、平均アスペクト比が4.5以下であり、上記焼戻しマルテンサイトおよび上記ベイナイトのうち、長軸の向きが0~10°の範囲内で同じ方向を向く鉄基炭化物を7~35個/μmの個数密度で含む焼戻しマルテンサイトおよびベイナイトの割合pが、25~70%である、高強度鋼板。
[2]上記成分組成は、更に、質量%で、Ti:0.100%以下、Nb:0.100%以下、V:0.500%以下、W:0.500%以下、B:0.0100%以下、Ni:2.000%以下、Cо:2.000%以下、Cr:1.000%以下、Mo:1.000%以下、Cu:1.000%以下、Sn:0.500%以下、Sb:0.500%以下、Ta:0.100%以下、Zr:0.200%以下、Hf:0.020%以下、Ca:0.0100%以下、Mg:0.0100%以下、および、REM:0.0100%以下からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する、上記[1]に記載の高強度鋼板。
[3]表面にめっき層を有する、上記[1]または[2]に記載の高強度鋼板。
[4]上記めっき層が、合金化めっき層である、上記[3]に記載の高強度鋼板。
[5]上記[1]または[2]に記載の高強度鋼板を製造する方法であって、上記[1]または[2]に記載の成分組成を有する鋼スラブを、1100℃以上に加熱し、850~950℃の仕上げ圧延終了温度で熱間圧延することにより、熱延鋼板を得て、上記熱延鋼板を、700℃以下の巻取温度で巻き取り、次いで、冷間圧延することにより、冷延鋼板を得て、上記冷延鋼板に熱処理を施し、上記熱処理では、上記冷延鋼板を、800~950℃の温度域T1で30秒以上保持し、その後、250℃以下の冷却停止温度T2まで冷却し、次いで、6.0~14.0℃/sの昇温速度で250~400℃の温度域T3まで昇温させてから30秒以上保持し、上記冷却では、上記冷延鋼板を、下記式1および式2を満たす条件で、10.0~50.0℃/sの平均冷却速度Rで温度Tまで1次冷却し、次いで、平均冷却速度Rで上記冷却停止温度T2まで2次冷却する、高強度鋼板の製造方法。
式1:0.10<(R/R)<0.70
式2:(21.52×T+5630)×R -0.022≧12200
[6]上記熱処理の後、上記冷延鋼板に対して、めっき層を形成するめっき処理を施す、上記[5]に記載の高強度鋼板の製造方法。
[7]上記めっき処理が、上記めっき層を合金化する合金化めっき処理を含む、上記[6]に記載の高強度鋼板の製造方法。
本発明によれば、1320MPa以上の引張強さを有し、穴広げ性および耐遅れ破壊特性に優れる高強度鋼板を提供できる。
[高強度鋼板]
本発明の高強度鋼板は、後述する成分組成およびミクロ組織を有し、かつ、後述する鋼中拡散性水素量を満足する。
以下、「高強度鋼板」を、単に、「鋼板」ともいう。
鋼板の板厚は、特に限定されず、例えば、0.3~3.0mmであり、0.5~2.8mmが好ましい。
高強度とは、引張強さ(TS)が1320MPa以上であることを意味する。
本発明の高強度鋼板は、1320MPa以上の引張強さを有し、かつ、穴広げ性および耐遅れ破壊特性にも優れる。このため、本発明の高強度鋼板は、自動車、電気機器などの産業分野での利用価値が非常に大きく、特に、自動車の車体の骨格部品の軽量化に対して極めて有用である。
〈成分組成〉
本発明の高強度鋼板の成分組成(以下、便宜的に、「本発明の成分組成」ともいう)について説明する。
本発明の成分組成における「%」は、特に断らない限り「質量%」を意味する。
《C:0.130%~0.350%》
Cは、焼戻しマルテンサイト、ベイナイトおよびフレッシュマルテンサイトの強度を上昇させる。
更に、Cは、焼戻しマルテンサイトおよびベイナイトの内部に水素のトラップサイトとなる微細な炭化物を析出させ、耐遅れ破壊特性を向上させる。
これらの効果を十分に得るため、C量は、0.130%以上であり、0.150%以上が好ましく、0.170%以上がより好ましい。
一方、C量が多すぎると、鋼板の強度が過度に高くなることで、鋼の水素脆化感受性が高くなり、十分な耐遅れ破壊特性を得ることができない。更に、自動車部品を接合する際に重要となる溶接性が劣化する。
このため、C量は、0.350%以下であり、0.330%以下が好ましく、0.310%以下がより好ましい。
《Si:0.50%~2.50%》
Siは、炭化物の過度な形成および成長を抑制する。このため、後述する熱処理において再加熱する際に、形成される炭化物(鉄基炭化物)が同じ向きを向きやすくなり、耐遅れ破壊特性が向上する。更に、炭化物と各組織との硬度差に起因する穴広げ性の低下が抑制される。
このような効果を得る観点から、Si量は、0.50%以上であり、0.55%以上が好ましく、0.60%以上がより好ましい。
一方、Si量が多すぎると鋼板が脆化して、良好な穴広げ性を得ることが困難となる。
このため、Si量は、2.50%以下であり、2.30%以下が好ましく、2.00%以下がより好ましい。
《Mn:2.00%~4.00%》
Mnは、焼戻しマルテンサイトおよびベイナイトを主体とするミクロ組織を形成し、これにより、各組織間の硬度差を抑制し、穴広げ性を向上させる。Mn量が過小であると、フェライトなどの軟質相が生成し、各組織間に無視できないほどの硬度差が発生して、十分な穴広げ性が得られない。
このため、Mn量は、2.00%以上であり、2.20%以上が好ましく、2.50%以上がより好ましい。
一方、Mn量が多すぎると鋼板が脆化して、良好な穴広げ性を得ることが困難となる。
このため、Mn量は、4.00%以下であり、3.70%以下が好ましく、3.50%以下がより好ましい。
《P:0.100%以下》
Pは、粒界偏析により鋼板を脆化させ、耐遅れ破壊特性および溶接性に対して悪影響を及ぼす。このため、P量は、0.100%以下であり、0.080%以下が好ましく、0.070%以下がより好ましく、0.030%以下が更に好ましく、0.010%以下が特に好ましい。
《S:0.0500%以下》
Sは、粒界に偏析して、熱間加工の際に、鋼板を脆化させる。更に、Sは、硫化物を形成することにより、耐遅れ破壊特性に悪影響を及ぼす。このため、S量は、0.0500%以下であり、0.0400%以下が好ましく、0.0300%以下がより好ましく、0.0100%以下が更に好ましく、0.0050%以下が特に好ましい。
《Al:0.001~2.000%》
Alは、脱酸剤として作用することにより、鋼板中の介在物を低減する。このため、Al量は、0.001%以上であり、0.005%以上が好ましく、0.010%以上がより好ましく、0.015%以上が更に好ましい。
一方、Alが多すぎると、鋼スラブを鋳造する際に鋼スラブに割れが発生する危険性が高まり、製造性を低下させる。このため、Al量は、2.000%以下であり、1.500%以下が好ましく、1.000%以下がより好ましく、0.500%以下が更に好ましく、0.100%以下が特に好ましい。
《N:0.0100%以下》
Nは、窒化物の形成により耐遅れ破壊特性に対し悪影響を及ぼす。N量が多すぎると、粗大な窒化物が形成され、耐遅れ破壊特性の劣化が顕著となる。このため、N量は、少ないほど好ましい。具体的には、N量は、0.0100%以下であり、0.0080%以下が好ましく、0.0070%以下がより好ましい。
《その他の元素》
本発明の成分組成は、更に、質量%、以下に記載する元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含有してもよい。
(Ti:0.100%以下、Nb:0.100%以下、V:0.500%以下)
Ti、NbおよびVは、析出強化に寄与するので、鋼板の高強度化に有効である。更に、Ti、NbおよびVは、旧オーステナイト粒径を微細化したり、それに伴い、焼戻しマルテンサイトおよびベイナイトを微細化したり、水素のトラップサイトとなる微細な析出物を形成したりして、耐遅れ破壊特性をより良好にする。
一方、Ti、NbおよびVが多すぎると、熱間圧延において鋼スラブを加熱する際に、Ti、NbおよびVが未固溶で残存し、粗大な析出物が増加して、遅れ破壊特性が劣化する場合がある。
このため、Ti量およびNb量は、それぞれ、0.100%以下が好ましく、0.080%以下がより好ましく、0.050%以下が更に好ましい。V量は、0.500%以下が好ましく、0.450%以下がより好ましく、0.400%以下が更に好ましい。
下限は特に限定されないが、これらの元素の添加効果を得る観点から、Ti量、Nb量およびV量は、それぞれ、0.001%以上が好ましく、0.003%以上がより好ましく、0.005%以上が更に好ましい。
(W:0.500%以下)
Wは、鋼板の焼入れ性を向上させる。更に、Wは、水素のトラップサイトとなるWを含む微細な炭化物を生成したり、焼戻しマルテンサイトおよびベイナイトを微細化したりして、耐遅れ破壊特性をより良好にする。
もっとも、Wが多すぎると、熱間圧延において鋼スラブを加熱する際に、未固溶で残存するWNやWSなどの粗大な析出物が増加し、耐遅れ破壊特性が劣化する。このため、W量は、0.500%以下が好ましく、0.300%以下がより好ましく、0.150%以下が更に好ましい。
W量の下限は、特に限定されないが、Wの添加効果を得る観点からは、例えば、0.010%であり、0.050%が好ましい。
(B:0.0100%以下)
Bは、焼入れ性の向上に有効である。更に、Bは、焼戻しマルテンサイトおよびベイナイトを主体とするミクロ組織を形成し、穴広げ性の低下を防ぐ。
もっとも、Bが多すぎると、成形性が低下する場合がある。このため、B量は、0.0100%以下が好ましく、0.0070%以下がより好ましく、0.0050%以下が更に好ましい。
B量の下限は、特に限定されないが、Bの添加効果を得る観点からは、例えば、0.0005%であり、0.0010%が好ましい。
(Ni:2.000%以下)
Niは、固溶強化により鋼の強度を上昇させる。
もっとも、Ni量が多すぎると、フレッシュマルテンサイトの面積率が過大となり、穴広げ性が低下する。このため、Ni量は、2.000%以下が好ましく、1.000%以下がより好ましく、0.500%以下が更に好ましい。
Ni量の下限は、特に限定されないが、Niの添加効果を得る観点から、例えば、0.010%であり、0.050%が好ましい。
(Cо:2.000%以下)
Coは、焼入れ性の向上に有効な元素であり、鋼板の強化に有効である。
もっとも、Coが多すぎると、成形性の劣化を引き起こす。このため、Co量は、2.000%以下が好ましく、1.000%以下がより好ましく、0.500%以下が更に好ましい。
Co量の下限は、特に限定されないが、Coの添加効果を得る観点から、例えば、0.010%であり、0.050%が好ましい。
(Cr:1.000%以下)
Crは、強度と延性とのバランスを向上させる。
もっとも、Crが多すぎると、後述する熱処理において再加熱する際に、セメンタイト固溶速度が遅延され、セメンタイトなどのFeを主成分とする比較的粗大な炭化物が未固溶のまま残存し、耐遅れ破壊特性が劣化する。このため、Cr量は、1.000%以下が好ましく、0.800%以下がより好ましく、0.500%以下が更に好ましい。
Cr量の下限は、特に限定されないが、Crの添加効果を得る観点から、例えば、0.030%であり、0.050%が好ましい。
(Mo:1.000%以下)
Moは、強度と延性とのバランスを向上させる。更に、Moは、水素のトラップサイトとなるMoを含む微細な炭化物を生成したり、焼戻しマルテンサイトおよびベイナイトを微細化したりして、耐遅れ破壊特性をより良好にする。
もっとも、Moが多すぎると、化成処理性が著しく劣化する。このため、Mo量は、1.000%以下が好ましく、0.800%以下がより好ましく、0.500%以下が更に好ましい。
Mo量の下限は、特に限定されないが、Moの添加効果を得る観点から、例えば、0.010%であり、0.050%が好ましい。
(Cu:1.000%以下)
Cuは、鋼の強化に有効な元素である。更に、Cuは、鋼板に水素が侵入することを抑制するため、耐遅れ破壊特性がより優れる。
もっとも、Cuが多すぎると、フレッシュマルテンサイトの面積率が過大となり、穴広げ性が劣化する。このため、Cu量は、1.000%以下が好ましく、0.500%以下がより好ましく、0.200%以下が更に好ましい。
Cu量の下限は、特に限定されないが、Cuの添加効果を得る観点から、例えば、0.010%であり、0.050%が好ましい。
(Sn:0.500%以下、Sb:0.500%以下)
SnおよびSbは、鋼板の表面の窒化または酸化によって生じる、鋼板の表層領域(鋼板の表面から深さ数十μm程度の領域)の脱炭を抑制し、鋼板の表面において焼戻しマルテンサイトの面積率が減少することを防止する。
もっとも、これらの元素が多すぎると、靭性の低下を招く。このため、Sn量およびSb量は、それぞれ、0.500%以下が好ましく、0.100%以下がより好ましく、0.050%以下が更に好ましい。
Sn量およびSb量の下限は、特に限定されないが、SnおよびSbの添加効果を得る観点から、それぞれ、例えば、0.001%であり、0.003%が好ましい。
(Ta:0.100%以下)
Taは、合金炭化物または合金炭窒化物を生成して、高強度化に寄与する。更に、Taは、Nb炭化物またはNb炭窒化物に一部固溶し、(Nb,Ta)(C,N)などの複合析出物を生成することで、析出物の粗大化を著しく抑制し、析出強化による強度への寄与を安定化させる。
もっとも、Taを過剰に添加しても、これらの効果が飽和するうえ、コストも増加する。このため、Ta量は、0.100%以下が好ましく、0.080%以下がより好ましく、0.070%以下が更に好ましい。
Ta量の下限は、特に限定されないが、Taの添加効果を得る観点から、例えば、0.005%であり、0.010%が好ましい。
(Zr:0.200%以下)
Zrは、鋼板の焼入れ性を向上させる。更に、Zrは、水素のトラップサイトとなるZrを含む微細な炭化物を生成したり、焼戻しマルテンサイトおよびベイナイトを微細化したりして、耐遅れ破壊特性をより良好にする。
もっとも、Zrが多すぎると、介在物等の増加を引き起こして、鋼板の表面および内部の欠陥を引き起こし、耐遅れ破壊特性を劣化させる。このため、Zr量は、0.200%以下が好ましく、0.150%以下がより好ましく、0.100%以下が更に好ましい。
Zr量の下限は、特に限定されないが、Zrの添加効果を得る観点から、例えば、0.005%であり、0.010%が好ましい。
(Hf:0.020%以下)
Hfは、酸化物の分布状態に影響を及ぼし、耐遅れ破壊特性をより良好にする。
もっとも、Hfが多すぎると、鋼板の成形性を劣化させる。このため、Hf量は、0.020%以下が好ましく、0.015%以下がより好ましく、0.010%以下が更に好ましい。
Hf量の下限は、特に限定されないが、Hfの添加効果を得る観点から、例えば、0.001%であり、0.003%が好ましい。
(Ca:0.0100%以下、Mg:0.0100%以下、REM:0.0100%以下)
Ca、MgおよびREM(希土類金属)は、硫化物の形状を球状化し、穴広げ性に対する硫化物の悪影響を改善する。
もっとも、これらの元素が多すぎると、介在物等の増加を引き起こして、鋼板の表面および内部の欠陥などを引き起こし、耐遅れ破壊特性を劣化させる。このため、Ca量、Mg量およびREM量は、それぞれ、0.0090%以下が好ましく、0.0080%以下がより好ましく、0.0070%以下が更に好ましい。
Ca量、Mg量およびREM量の下限は、特に限定されないが、Ca、MgおよびREMの添加効果を得る観点から、それぞれ、例えば、0.0005%であり、0.0010%が好ましい。
《残部:Feおよび不可避的不純物》
本発明の成分組成における残部は、Feおよび不可避的不純物からなる。
〈ミクロ組織〉
次に、本発明の高強度鋼板のミクロ組織(以下、便宜的に、「本発明のミクロ組織」ともいう)を説明する。
本発明の効果を得るためには、上述した本発明の成分組成を満足するだけでは不十分であり、以下に説明する本発明のミクロ組織を満足することを要する。
以下、面積率は、ミクロ組織全体に対する面積率である。各組織の面積率は、後述する[実施例]に記載の方法により求める。
《焼戻しマルテンサイトおよびベイナイトの合計の面積率:70.0%以上》
焼戻しマルテンサイトおよびベイナイトは、引張強さに寄与する。
また、焼戻しマルテンサイトおよびベイナイトを主体とすることは、高強度を保ちつつ穴広げ性を高めるのに有効である。
これらの効果を十分に得るため、ベイナイトおよび焼戻しマルテンサイトの合計の面積率は、70.0%以上であり、72.0%以上が好ましく、74.0%以上がより好ましい。
一方、上限は特に限定されないが、製造条件を鑑みると、焼戻しマルテンサイトおよびベイナイトの合計の面積率は、95.0%以下が好ましく、93.0%以下がより好ましく、90.0%以下が更に好ましい。
《フレッシュマルテンサイトの面積率:15.0%以下》
フレッシュマルテンサイトは、焼戻しマルテンサイトおよびベイナイトとの間に大きな硬度差を生じるため、打ち抜き時に、その硬度差に起因して穴広げ性を低下させる。このため、フレッシュマルテンサイトが鋼板に過剰に存在することを避ける必要がある。
具体的には、良好な穴広げ性を得る観点から、フレッシュマルテンサイトの面積率は、15.0%以下であり、14.0%以下が好ましく、13.0%以下がより好ましい。
《残部組織》
焼戻しマルテンサイト、ベイナイトおよびフレッシュマルテンサイトを除く組織(残部組織)としては、例えば、残留オーステナイト、フェライト、パーライトなどが挙げられる。本発明の効果を阻害しないという理由から、本発明のミクロ組織における残部組織の面積率は、15.0%以下が好ましい。
《鉄基炭化物》
次に、鉄基炭化物を説明する。
鉄基炭化物は、焼戻しマルテンサイトおよびベイナイトの中に存在する。
鉄基炭化物は、セメンタイト(θ炭化物)、ε炭化物、χ炭化物などの主にFeおよびCからなる炭化物であり、主として、セメンタイトを指す。
鉄基炭化物に含まれるFeの一部は、Mn、Si、Crなどの他の元素で置換されていてもよい。
(平均円相当半径:0.10μm以下)
鉄基炭化物の平均円相当半径が大きすぎると、鉄基炭化物は過度に粗大であるため、プレス加工時に鉄基炭化物を起点としたボイドが発生しやすくなり、穴広げ性が劣化する。
このため、鉄基炭化物の平均円相当半径は、0.10μm以下であり、0.08μm以下が好ましく、0.06μm以下がより好ましい。
(平均アスペクト比:4.5以下)
鉄基炭化物の平均アスペクト比が大きすぎると、プレス加工時に応力が集中し、特にせん断端面において鉄基炭化物の割れによるボイドが発生しやすくなり、良好な穴広げ性が得られない。
このため、鉄基炭化物の平均アスペクト比は、4.5以下であり、4.3以下が好ましく、4.5以下がより好ましい。
鉄基炭化物の平均円相当半径および平均アスペクト比は、後述する[実施例]に記載の方法により求める。
《割合p:25~70%》
次に、焼戻しマルテンサイトおよびベイナイトのうち、長軸の向きが0~10°の範囲内で同じ方向を向く鉄基炭化物を7~35個/μmの個数密度で含む焼戻しマルテンサイトおよびベイナイトの割合p(便宜的に、単に「割合p」ともいう)を説明する。
上述したように、鉄基炭化物は、焼戻しマルテンサイトおよびベイナイトに存在する。
まず、鉄基炭化物が存在する/しないにかかわらず、ミクロ組織において、焼戻しマルテンサイトおよびベイナイトの粒が占める全面積を、仮に、面積SA1とする。
次いで、鉄基炭化物が存在する粒(焼戻しマルテンサイトおよびベイナイト)のうち、向きが揃った鉄基炭化物を適度に含む粒に着目する。より詳細には、長軸の向きが0~10°の範囲内で同じ方向を向く鉄基炭化物を7~35個/μmの個数密度で含む粒に着目し、その粒が占める面積を、仮に、面積SA2とする。
割合p(単位:%)は、面積SA1に対する面積SA2の割合(=100×SA2/SA1)である。
割合pが一定値以上であることにより、穴広げ性を損なうことなく、耐遅れ破壊特性を向上できる。
通常、ラス境界および/またはブロック境界に存在する粗大な鉄基炭化物は、変形中にボイドの発生源となる。しかし、向きが揃った鉄基炭化物は、微細かつ極端に伸長していないため、穴広げ性に及ぼす悪影響が小さい。
また、鉄基炭化物の向きが揃っている組織は、そうでない組織と比較して、鉄基炭化物の個数が多い傾向にあり、そのような組織を鋼板に含ませることで、水素のトラップサイト数を増やし、耐遅れ破壊特性を向上できる。
したがって、割合pの値は、25%以上であり、26%以上が好ましく、29%以上がより好ましく、30%以上が更に好ましく、35%以上が特に好ましく、39%以上が最も好ましい。
一方、鉄基炭化物の向きが揃っている組織が鋼板に過剰に含まれると、鋼板の加工時に、セメンタイトを起点とするボイドが形成される可能性が高まり、穴広げ性に悪影響を及ぼす。
このため、良好な穴広げ性を得る観点から、割合pの値は、70%以下であり、65%以下が好ましく、60%以下がより好ましい。
割合pは、後述する[実施例]に記載の方法により求める。
〈鋼中拡散性水素量:0.50質量ppm以下〉
良好な耐遅れ破壊特性を確保する観点から、鋼中拡散性水素量は、0.50質量ppm以下であり、0.40質量ppm以下が好ましく、0.30質量ppm以下がより好ましい。
鋼中拡散性水素量の下限は、特に限定されないが、生産技術上の制約から、例えば、0.01質量ppmである。
鋼中拡散性水素量は、後述する[実施例]に記載の方法により求める。
〈めっき層〉
本発明の高強度鋼板は、その表面上に、めっき層を備えてもよい。めっき層は、後述するめっき処理によって形成される。
めっき層としては、亜鉛めっき層(Znめっき層)、Alめっき層などが挙げられ、なかでも、亜鉛めっき層が好ましい。亜鉛めっき層は、Al、Mgなどの元素を含有していてもよい。めっき層は、合金化されためっき層(合金化めっき層)であってもよい。
めっき層の付着量(片面あたりの付着量)は、めっき層の付着量の制御上の観点および耐食性の観点から、20g/m以上が好ましく、25g/m以上がより好ましく、30g/m以上が更に好ましい。
一方、密着性の観点から、めっき層の付着量は、120g/m以下が好ましく、100g/m以下がより好ましく、70g/m以下が更に好ましい。
[高強度鋼板の製造方法]
次に、本発明の高強度鋼板の製造方法(以下、便宜的に、「本発明の製造方法」ともいう)を説明する。
〈鋼スラブ〉
本発明の製造方法においては、まず、上述した本発明の成分組成を有する鋼スラブ(鋼素材)を準備する。
鋼スラブは、例えば、連続鋳造法などの公知の方法によって、溶鋼から鋳造される。
溶鋼を製造する方法は、特に限定されず、転炉、電気炉などを用いた公知の方法を採用できる。
〈熱間圧延〉
本発明の製造方法においては、準備された鋼スラブを、以下に説明する条件(加熱温度および仕上げ圧延終了温度)で熱間圧延することにより、熱延鋼板を得る。
《加熱温度:1100℃以上》
熱間圧延においては、鋼スラブを加熱する。
鋼スラブを加熱する段階で存在する析出物は、最終的に得られる鋼板においては、粗大な析出物として存在し、強度に寄与しないばかりか、耐遅れ破壊特性に悪影響を及ぼす。
粗大な析出物の存在は、鉄基炭化物の形成を抑制するため、後述する熱処理後において、割合pが過小になり、耐遅れ破壊特性が劣化する。
このため、鋼スラブの鋳造の際に析出した粗大な析出物は、可能な限り再溶解させる必要がある。鋼スラブの加熱温度が低すぎる場合、再溶解が不十分となり、強度または耐遅れ破壊特性が劣る。
したがって、鋼スラブの加熱温度は、1100℃以上であり、1150℃以上が好ましい。
圧延荷重を減少させる観点、および、鋼スラブの表層欠陥(気泡、偏析など)をスケールオフして、得られる鋼板の表面を平滑にする観点からも、鋼スラブの加熱温度は、上記範囲内であることが好ましい。
鋼スラブの加熱温度の上限は、特に限定されないが、高すぎると、酸化量の増加に伴いスケールロスが増大する。このため、鋼スラブの加熱温度は、1400℃以下が好ましく、1350℃以下がより好ましい。
《仕上げ圧延終了温度:850~950℃》
上述した加熱温度に加熱された鋼スラブは、仕上げ圧延を含む熱間圧延が施されて、熱延鋼板となる。
仕上げ圧延終了温度が低すぎると、熱延鋼板のミクロ組織にフェライトまたはパーライトが過剰に生成し、後述する熱処理後のミクロ組織において、焼戻しマルテンサイトおよびベイナイトの合計の面積率が過小となり、強度(引張強さ)が低下する。更に、圧延荷重が増大して、圧延負荷が大きくなる。
このため、仕上げ圧延終了温度は、850℃以上であり、855℃以上が好ましく、860℃以上がより好ましい。
一方、仕上げ圧延終了温度が高すぎると、鋼スラブを加熱する段階で存在する析出物の過度な成長および新たな粗大な析出物の生成が促進される。粗大な析出物の存在は、鉄基炭化物の形成を抑制するため、後述する熱処理後において、割合pが過小になり、耐遅れ破壊特性が劣化する。
なお、酸化物(スケール)の生成量が急激に増大し、後述する酸洗および冷間圧延の後に、表面品質が劣化する傾向にある。
また、酸洗によって十分にスケールを取り除くことができない場合、穴広げ性に悪影響を及ぼす。
更に、結晶粒径が過度に粗大となり、プレス加工時に表面荒れを生じる場合がある。
このため、仕上げ圧延終了温度は、950℃以下であり、940℃以下が好ましく、930℃以下がより好ましい。
〈巻き取り〉
熱間圧延により得られた熱延鋼板は、以下に説明する巻取温度で巻き取りされる。
《巻取温度:700℃以下》
巻取温度が高すぎると、熱延鋼板のミクロ組織にフェライトまたはパーライトが過剰に生成し、後述する熱処理後のミクロ組織において、焼戻しマルテンサイトおよびベイナイトの合計の面積率が過小となり、強度(引張強さ)が低下する原因となり得る。更に、熱延鋼板の表面に酸洗によって除去することが困難な酸化被膜が生成し、冷間圧延後の表面外観を損ねるほか、穴広げ性を劣化させる原因となり得る。
このため、巻取温度Tは、700℃以下であり、680℃以下が好ましく、670℃以下がより好ましい。
一方、巻取温度は、低くてもよいが、生産性の観点から、400℃以上が好ましく、420℃以上がより好ましく、430℃以上が更に好ましい。巻取温度が、この範囲であれば、冷間圧延での圧延負荷を低減しやすく、また、冷間圧延によって得られる冷延鋼板の形状を良好にしやすい。
巻き取りされた熱延鋼板(コイル)に対しては、後述する冷間圧延の前に、必要に応じて、酸洗を実施してもよい。酸洗の方法は常法に従えばよい。形状矯正および酸洗性の向上のために、スキンパス圧延を実施してもよい。
〈冷間圧延〉
巻き取りされた熱延鋼板は、必要に応じて酸洗が実施された後、冷間圧延が施されて、冷延鋼板となる。
冷間圧延における圧下率は、25%以上が好ましく、30%以上がより好ましい。
一方、過度の圧下は、圧延加重が過大となり、冷間圧延に用いるミルの負荷増大を招く。このため、圧下率は、75%以下が好ましく、70%以下がより好ましい。
〈熱処理〉
冷間圧延によって得られた冷延鋼板は、以下に説明する条件で、熱処理が施される。
概略的には、冷延鋼板を、温度域T1で保持(加熱)し、その後、冷却停止温度T2まで冷却し、次いで、温度域T2で保持(再加熱)する。
《温度域T1:800~950℃》
温度域T1の温度が低すぎる場合、二相域での保持となるため、最終的に得られるミクロ組織において、焼戻しマルテンサイトおよびベイナイトの合計の面積率が過小になる。
このため、温度域T1の温度は、800℃以上であり、820℃以上が好ましく、840℃以上がより好ましい。
一方、温度域T1の温度が高すぎる場合、旧オーステナイト粒径が増大し、続く温度域T3での保持において析出する鉄基炭化物の向きが揃わなくなり、割合pが過小になるため、遅れ破壊特性が劣化する。
このため、950℃以下であり、940℃以下が好ましく、920℃以下がより好ましい。
《温度域T1での保持時間:30秒以上》
温度域T1での保持時間が短すぎる場合、十分な再結晶が実施されない。また、オーステナイトの生成が不十分となり、最終的に得られるミクロ組織において、焼戻しマルテンサイトおよびベイナイトの合計の面積率が過小になる。
このため、温度域T1での保持時間は、30秒以上であり、65秒以上が好ましく、100秒以上がより好ましい。
温度域T1での保持時間の上限は、特に限定されず、例えば、800秒であり、500秒が好ましく、200秒がより好ましい。
《冷却停止温度T2:250℃以下》
冷却停止温度T2が高すぎる場合、冷却を停止させたときに残存するオーステナイトが多量となり、最終的に得られるミクロ組織において、フレッシュマルテンサイトの面積率が過大となる。
このため、冷却停止温度T2は、250℃以下であり、240℃以下が好ましく、230℃以下がより好ましい。
冷却停止温度T2の下限は、特に限定されず、例えば、100℃であり、120℃が好ましい。
《冷却》
温度域T1から冷却停止温度T2までの冷却では、下記式1および式2を満たす条件で、10.0~50.0℃/sの平均冷却速度Rで温度Tまで1次冷却し、次いで、平均冷却速度Rで冷却停止温度T2まで2次冷却する。
式1:0.10<(R/R)<0.70
式2:(21.52×T+5630)×R -0.022≧12200
2次冷却の平均冷却速度Rを、1次冷却の平均冷却速度Rと、1次冷却の終了温度(温度T)とによって決定する。
(式1)
上記式1に示すように、2次冷却の平均冷却速度Rを、1次冷却の平均冷却速度Rよりも緩やかにする。その理由は、2次冷却中に、鉄基炭化物の核生成を促し、最終的に得られるミクロ組織において、微細な鉄基炭化物を広範囲に存在させるためである。
すなわち、上記式1中の(R/R)が0.70未満であることにより、割合pの値が過小になることが抑制される。
(式2)
上記式2を満たすことにより、鉄基炭化物の適切な核生成が促進されるので、後述する温度域T3での保持(再加熱)において、平均アスペクト比が過大な鉄基炭化物が形成されることが抑制される。
また、上記式2を満たすことにより、二次冷却において鉄基炭化物の核生成が起こり、最終的に得られるミクロ組織において、割合pが過小になることが抑制される。
このため、上記式2の左辺の値は、12200以上であり、12250以上がより好ましく、12290以上が更に好ましい。
上限は特に限定されないが、上記式2の左辺の値は、14500以下が好ましく、14250以下がより好ましく、14200以下が更に好ましい。
上記式2は、温度変動が生じる場合の焼戻しパラメータの算出結果から導かれる。
非特許文献1によると、温度変動が生じる場合の焼戻しパラメータを算出する場合、熱処理の全過程を、それと等価な、ある一定温度である時間だけ保持を実施する焼戻しに変換する必要がある。
・非特許文献1:土山聡宏、「焼戻しパラメータの物理的意味の解釈と連続加熱・冷却熱処理過程への応用」、熱処理、一般社団法人日本熱処理技術協会、2002年6月、第42巻、第3号、p.163-168
2次冷却の開始温度から冷却停止温度までの時間を、例えばΔtで分割し、平均冷却速度から求められる各区間の初期温度をT、T、T、…Tとする。冷却開始からΔt経過時点での焼戻しパラメータをT×(log(Δt)+20)とするとき、この値と同等の焼戻しを次区間の温度Tで実施するための換算時間Δt′は、
×(log(Δt)+20)=T×(log(Δt′)+20)
であり、1番目から2番目の区間終了までの焼戻しパラメータを求めると、
×(log(Δt′+Δt)+20)
となる。
ここで、t=Δt′+Δtとし、この操作をn番目の区間まで実施し、2次冷却による焼戻しを冷却停止温度で保持する焼戻しに換算すると、相当恒温保持時間tは、
log(t)=(Tn-1/T)×((logtn-1+20)-20)
となる。この相当恒温保持時間tと2次冷却の停止温度Tsqとを用い、次の式を用いることにより、連続冷却する際の焼戻しパラメータを算出できる。
sq×(log(t)+20)
この式に種々の冷却停止温度Tsqおよび相当恒温保持時間tを代入して得られる値から近似式を求め、目的とするミクロ組織が得られる焼戻しパラメータの最小値を勘案すると、上記式2が得られる。
《温度域T3:250~400℃》
温度域T3の温度が低すぎる場合、焼戻しによる鉄基炭化物の成長が起こらず、割合pが過小となり、耐遅れ破壊特性が劣る。
このため、温度域T3の温度は、250℃以上であり、260℃以上が好ましく、270℃以上がより好ましい。
一方、温度域T3の温度が高すぎると、焼戻しマルテンサイトおよびベイナイト中の鉄基炭化物が粗大化して、鉄基炭化物の平均円相当半径が過大となり、せん断端面に初期亀裂が生じやすくなり、鋼板の穴広げ性が劣化する。
このため、温度域T3の温度は、400℃以下であり、380℃以下が好ましく、360℃以下がより好ましい。
《温度域T3までの昇温速度:6.0~14.0℃/s》
温度域T3までの昇温速度が低すぎると、焼戻しマルテンサイトおよびベイナイト中の鉄基炭化物が粗大化して、鉄基炭化物の平均円相当半径が過大となり、せん断端面に初期亀裂が生じやすくなり、鋼板の穴広げ性が劣化する。
このため、温度域T3までの昇温速度は、6.0℃/s以上であり、6.5℃/s以上が好ましく、7.0℃/s以上がより好ましい。
一方、温度域T3までの昇温速度が高すぎると、焼戻しによる鉄基炭化物の成長が起こらず、割合pが過小となり、耐遅れ破壊特性が劣る。
このため、温度域T3までの昇温速度は、14.0℃/s以下であり、13.0℃/s以下が好ましく、12.0℃/s以下がより好ましい。
《温度域T3での保持時間:30秒以上》
温度域T3での保持時間が短すぎる場合、最終的に得られるミクロ組織において、フレッシュマルテンサイトの面積率が過大となる。
このため、温度域T3での保持時間は、30秒以上であり、100秒以上が好ましく、180秒以上がより好ましい。
温度域T3での保持時間の上限は、特に限定されず、例えば、800秒であり、500秒が好ましく、300秒がより好ましい。
〈めっき処理〉
上述した熱処理が施された冷延鋼板に対して、めっき層を形成するめっき処理を施してもよい。めっき処理としては、例えば、溶融亜鉛めっき処理が挙げられる。この場合、めっき層として、亜鉛めっき層が形成される。
溶融亜鉛めっき処理を実施する場合、例えば、上述した熱処理が施された冷延鋼板を、440~500℃の溶融亜鉛めっき浴中に浸漬する。浸漬後、ガスワイピング等によって、めっき層の付着量を調整する。
溶融亜鉛めっき浴には、Al、Mg、Si等の元素が混入していてもよく、更に、Pb、Sb、Fe、Mg、Mn、Ni、Ca、Ti、V、Cr、Co、Sn等の元素が混入していてもよい。溶融亜鉛めっき浴のAl量は、0.08~0.30%が好ましい。
めっき処理は、形成されためっき層を合金化する合金化処理を含んでいてもよい。
溶融亜鉛めっき処理後に合金化処理を実施する場合、450~600℃の温度(合金化温度)で亜鉛めっき層を合金化する。合金化温度が高すぎると、未変態オーステナイトがパーライトに変態し、残留オーステナイトの面積率が過小になる。
合金化された亜鉛めっき層のFe濃度は、8~17質量%が好ましい。
めっき処理を施す場合は、熱処理およびめっき処理が施された冷延鋼板が、本発明の高強度鋼板に相当する。
一方、めっき処理を施さない場合は、熱処理が施された冷延鋼板が、本発明の高強度鋼板に相当する。
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施例に限定されない。
〈鋼板の製造〉
下記表1に示す成分組成を有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる溶鋼を転炉にて製造し、連続鋳造法によって鋼スラブを得た。
得られた鋼スラブに対して、下記表2に示す条件で、熱間圧延、巻き取り、冷間圧延および熱処理を施して、板厚が1.4mmである冷延鋼板(CR)を得た。冷間圧延の圧下率は、50%とした。
幾つかの冷延鋼板に対しては、溶融亜鉛めっき処理を施すことにより、両面に亜鉛めっき層を形成して、溶融亜鉛めっき鋼板(GI)を得た。亜鉛めっき層の付着量(片面あたりの付着量)は、45g/mとした。
更に、幾つかの溶融亜鉛めっき鋼板(GI)に対しては、合金化処理を施すことにより、形成した亜鉛めっき層を合金化して、合金化溶融亜鉛めっき鋼板(GA)を得た。合金化処理では、合金化された亜鉛めっき層のFe濃度が9~12質量%の範囲内になるように、調整した。
溶融亜鉛めっき鋼板(GI)には、Al量が0.19質量%である溶融亜鉛めっき浴を使用した。合金化溶融亜鉛めっき鋼板(GA)には、Al量が0.14質量%である溶融亜鉛めっき浴を使用した。浴温は、いずれも、465℃とした。
以下、便宜的に、冷延鋼板(CR)、溶融亜鉛めっき鋼板(GI)および合金化溶融亜鉛めっき鋼板(GA)を、いずれも、単に、「鋼板」と呼ぶ。
下記表2中の「種類」の欄には、得られた鋼板に応じて、「CR」、「GI」および「GA」のいずれかを記載した。
〈ミクロ組織の観察〉
得られた鋼板を、圧延方向に平行な板厚1/4位置(鋼板の表面から深さ方向で板厚の1/4に相当する位置)の断面(L断面)が観察面となるように、研磨して、観察試料を作製した。
作製した観察試料を用いて、以下のようにして、ミクロ組織を観察し、各組織の面積率などを求めた。結果を下記表3に示す。
下記表3では、焼戻しマルテンサイトを「TM」、ベイナイトを「B」、フレッシュマルテンサイトを「FM」と表記する。
《焼戻しマルテンサイト、ベイナイトおよびフレッシュマルテンサイトの面積率》
観察試料の観察面を、ナイタールを用いて腐食させてから、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて2000倍の倍率で、10視野分を観察し、SEM画像を得た。
得られたSEM画像について、各組織の面積率(単位:%)を求めた。10視野の平均面積率を、各組織の面積率とした。
SEM画像において、明灰色の領域をフレッシュマルテンサイトと判定し、炭化物が析出している暗灰色の領域を焼戻しマルテンサイトおよびベイナイトと判定した。
フレッシュマルテンサイトと残留オーステナイトとは、SEM画像中で明瞭に判別がつかないため、フレッシュマルテンサイトの面積率は、明灰色の領域の面積率から、後述する方法により求めた残留オーステナイトの面積率を差し引いた値とした。
《鉄基炭化物の平均円相当半径および平均アスペクト比》
観察試料の観察面を、ナイタールを用いて腐食させてから、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて5000倍の倍率で、10視野分を観察し、SEM画像を得た。
得られたSEM画像について、焼戻しマルテンサイトおよびベイナイトの中に存在する各鉄基炭化物の長軸aおよび短軸bを測定した。
各鉄基炭化物の円相当半径(単位:μm)を、√(a×b)/2の式からを求めた。更に、各鉄基炭化物のアスペクト比(a/b)を求めた。
10視野分の円相当半径およびアスペクト比の平均値を、それぞれ、鉄基炭化物の平均円相当半径および平均アスペクト比とした。
《割合p》
観察試料の観察面を、ナイタールを用いて腐食させてから、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて5000倍の倍率で、3視野分を観察し、SEM画像を得た。
得られたSEM画像について、焼戻しマルテンサイトおよびベイナイトの粒が占める面積SA1を測定した。
次いで、長軸の向きが0~10°の範囲内で同じ方向を向く鉄基炭化物を7~35個/μmの個数密度で含む粒(焼戻しマルテンサイトおよびベイナイト)が占める面積SA2を測定した。
そのうえで、面積SA1に対する面積SA2の割合p(単位:%)を算出した。
このとき、粒内に存在する鉄基炭化物のうち、長軸の軸方向が右回りまたは左回りで10°以内である鉄基炭化物どうしを「長軸の向きが0~10°の範囲内で同じ方向を向く鉄基炭化物」であると判定した。
〈鋼中拡散性水素量の測定〉
得られる鋼板から、5mm×30mmのサイズの試験片を切り出した。めっき層(亜鉛めっき層または合金化された亜鉛めっき層)が形成されている場合は、ルータ(精密グラインダ)を用いて、めっき層を除去した。
試験片を石英管内に入れ、石英管内をアルゴンガス(Ar)で置換した。その後、石英管内を200℃/hrの速度で400℃まで昇温させ、昇温中に石英管内から発生した水素量を、ガスクロマトグラフを用いた昇温分析法によって測定した。
室温(25℃)以上250℃未満の温度域で検出された水素量の累積値を、鋼中拡散性水素量(単位:質量%)として求めた。結果を下記表3に示す。
〈評価〉
得られた鋼板を、以下の試験により評価した。結果を下記表3に示す。
《引張試験》
得られた鋼板から、圧延方向に対して直角の方向を引張方向とするJIS5号試験片を採取した。採取した試験片を用いて、JIS Z 2241(2011年)に準拠して、引張試験を実施して、引張強さ(TS)を測定した。
TSが1320MPa以上であれば、高強度であると評価した。
《穴広げ試験》
得られた鋼板について、JIS Z 2256(2010年)に準拠して、穴広げ試験を実施した。
具体的には、得られた鋼板を切断して、100mm×100mmのサイズの試験片を採取した。採取した試験片に、クリアランス12±1%で直径10mmの穴を打ち抜いた。その後、内径75mmのダイスを用いて、しわ押さえ力9tonで抑えた状態で、頂角60°の円錐ポンチを穴に押し込み、亀裂発生限界における穴径D(単位:mm)を測定した。初期の穴径をD(単位:mm)として、下記式から、穴広げ率λ(単位:%)を求めた。λが35%以上であれば、穴広げ性に優れると評価した。
λ={(D-D)/D}×100
《耐遅れ破壊特性評価試験》
得られた鋼板から、試験片を採取した。めっき層が形成されている場合は、希釈塩酸を用いて溶解除去し、室温で1日保管(脱水素処理)してから、試験片を採取した。
試験片のサイズは、長辺の長さ(圧延直角方向の長さ)を100mm、短辺の長さ(圧延方向の長さ)を30mmとした。
試験片において、長辺側の端面を評価端面とし、短辺側の端面を非評価端面とした。
評価端面の切り出しは、せん断加工とした。せん断加工のクリアランスは10%、レーキ角は0.5度とした。評価端面は、せん断加工ままの状態とした。つまり、バリを除去する機械加工を施さなかった。一方、非評価端面に対しては、バリを除去する機械加工を施した。
このような試験片に対して、曲げ加工を実施した。曲げ加工は、曲げ半径Rと試験片の板厚tとの比(R/t)が4.0となり、かつ、曲げ角度が90度(V字曲げ)となる条件で実施した。
例えば、板厚tが2.0mmである場合、先端半径が8.0mmであるポンチを用いた。より詳細には、上述した先端半径を有し、かつ、U字形状(先端部分が半円形状、かつ、胴部の厚さが2R)であるポンチを用いた。
更に、曲げ加工には、コーナーの曲げ半径が30mmのダイを用いた。
曲げ加工では、ポンチが試験片を押し込む深さを調整することにより、曲げ角度が90度である曲げ加工部を、試験片に形成した。
曲げ加工部が形成された試験片を、油圧ジャッキを用いて挟んで締め込み、曲げ加工部の最表層に、以下の残留応力S1、S2またはS3が負荷された状態でボルト締めした。
・残留応力S1:1300MPa以上1500MPa以下の残留応力
・残留応力S2:1500MPa超1700MPa以下の残留応力
・残留応力S3:1700MPa超1900MPa以下の残留応力
負荷する残留応力S1、S2およびS3ごとに、試験片の数は、2個とした。
必要な締め込み量は、CAE(Computer Aided Engineering)解析によって算出した。
ボルト締めは、あらかじめ試験片の非評価端面から10mm内側に設けた楕円形状(短軸:10mm、長軸:15mm)の穴にボルトを通すことにより実施した。
ボルト締め後の試験片を、pHが4である塩酸(塩化水素水溶液)中に浸漬させ、25℃の条件で、pHを一定に管理した。塩酸の量は、試験片1個あたり、1L以上とした。
浸漬後、48時間経過してから、塩酸中の試験片について、目視できる(約1mmの長さを有する)微小亀裂の有無を確認した。この微小亀裂は、遅れ破壊の初期状態を示す。
微小亀裂の有無に応じた結果(以下に示す「×」、「△」、「○」または「◎」)を下記表3に記載した。
×:残留応力S1が負荷された試験片において、1つ以上の微小亀裂が認められた。
△:残留応力S1が負荷された試験片においては、微小亀裂は認められなかったが、残留応力S2が負荷された試験片においては、1つ以上の微小亀裂が認められた。
○:残留応力S1および残留応力S2が負荷された試験片においては、微小亀裂は認められなかったが、残留応力S3が負荷された試験片においては、1つ以上の微小亀裂が認められた。
◎:いずれの試験片においても、微小亀裂は認められなかった。
「△」、「○」または「◎」であれば、耐遅れ破壊特性に優れると評価した。
耐遅れ破壊特性がより優れるという理由から「○」または「◎」が好ましく、耐遅れ破壊特性が更に優れるという理由から「◎」がより好ましい。
下記表1~表3中の下線は、本発明の範囲外を意味する。
Figure 0007359332000001
Figure 0007359332000002
Figure 0007359332000003
〈評価結果まとめ〉
上記表3に示すように、1、3、5~6、9~12、15、19~21、24~26、29~30および34の鋼板は、引張強さ、穴広げ性および耐遅れ破壊特性の少なくともいずれかが不十分であった。
これに対して、2、4、7~8、13~14、16~18、22~23、27~28、
31~33および35~39の鋼板は、いずれも、引張強さが1320MPa以上であり、かつ、穴広げ性および耐遅れ破壊特性に優れることが分かった。
これらの鋼板について、耐遅れ破壊特性の評価結果を見ると、割合pが26%以上(28%未満)の鋼板は「△」、割合pが29%以上(38%未満)の鋼板は「○」、割合pが39%以上の鋼板は「◎」であった。

Claims (7)

  1. 質量%で、
    C:0.130~0.350%、
    Si:0.50~2.50%、
    Mn:2.00~4.00%、
    P:0.100%以下、
    S:0.0500%以下、
    Al:0.001~2.000%、
    N:0.0100%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成と、ミクロ組織と、を有し、
    鋼中拡散性水素が、0.50質量ppm以下であり、
    前記ミクロ組織においては、
    焼戻しマルテンサイトおよびベイナイトの合計の面積率が、70.0%以上であり、
    フレッシュマルテンサイトの面積率が、15.0%以下であり、
    前記焼戻しマルテンサイトおよび前記ベイナイトに存在する鉄基炭化物は、平均円相当半径が0.10μm以下、平均アスペクト比が4.5以下であり、
    前記焼戻しマルテンサイトおよび前記ベイナイトのうち、長軸の向きが0~10°の範囲内で同じ方向を向く鉄基炭化物を7~35個/μmの個数密度で含む焼戻しマルテンサイトおよびベイナイトの割合pが、25~70%である、高強度鋼板。
  2. 前記成分組成は、更に、質量%で、
    Ti:0.100%以下、
    Nb:0.100%以下、
    V:0.500%以下、
    W:0.500%以下、
    B:0.0100%以下、
    Ni:2.000%以下、
    :2.000%以下、
    Cr:1.000%以下、
    Mo:1.000%以下、
    Cu:1.000%以下、
    Sn:0.500%以下、
    Sb:0.500%以下、
    Ta:0.100%以下、
    Zr:0.200%以下、
    Hf:0.020%以下、
    Ca:0.0100%以下、
    Mg:0.0100%以下、および、
    REM:0.0100%以下からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する、請求項1に記載の高強度鋼板。
  3. 表面にめっき層を有する、請求項1または2に記載の高強度鋼板。
  4. 前記めっき層が、合金化めっき層である、請求項3に記載の高強度鋼板。
  5. 請求項1または2に記載の高強度鋼板を製造する方法であって、
    請求項1または2に記載の成分組成を有する鋼スラブを、1100℃以上に加熱し、850~950℃の仕上げ圧延終了温度で熱間圧延することにより、熱延鋼板を得て、
    前記熱延鋼板を、700℃以下の巻取温度で巻き取り、次いで、冷間圧延することにより、冷延鋼板を得て、
    前記冷延鋼板に熱処理を施し、
    前記熱処理では、前記冷延鋼板を、800~950℃の温度域T1で30秒以上保持し、その後、250℃以下の冷却停止温度T2まで冷却し、次いで、6.0~14.0℃/sの昇温速度で250~400℃の温度域T3まで昇温させてから30秒以上保持し、
    前記冷却では、前記冷延鋼板を、下記式1および式2を満たす条件で、10.0~50.0℃/sの平均冷却速度Rで温度Tまで1次冷却し、次いで、平均冷却速度Rで前記冷却停止温度T2まで2次冷却する、高強度鋼板の製造方法。
    式1:0.10<(R/R)<0.70
    式2:(21.52×T+5630)×R -0.022≧12200
  6. 前記熱処理の後、前記冷延鋼板に対して、めっき層を形成するめっき処理を施す、請求項5に記載の高強度鋼板の製造方法。
  7. 前記めっき処理が、前記めっき層を合金化する合金化めっき処理を含む、請求項6に記載の高強度鋼板の製造方法。
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