以下、本開示の技術の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、本明細書にて用いる「第1」、「第2」、及び「第3」等の用語は、構成要素の混同を避けるために付したものであり、投射レンズ又は投射装置内に存在する構成要素の数を限定するものではない。
本明細書の説明において、「平行」とは、完全な平行の他に、本開示の技術が属する技術分野で一般的に許容される誤差を含めた意味合いでの平行を指す。本明細書の説明において、「同一」とは、完全な同一の他に、本開示の技術が属する技術分野で一般的に許容される誤差を含めた意味合いでの同一を指す。
[第1実施形態]
一例として図1及び図2に示すように、投射レンズ10は、投射装置11に組み込まれる。本開示の技術に係る投射装置11は、一例として輸送機器用であり、輸送機器の一例である自動車12のダッシュボード13に設けられる。投射装置11の内、投射レンズ10の一部は、ダッシュボード13の上部から露出している。投射装置11は、投射レンズ10を通じて、一例として、自動車12のフロントガラス14に画像Pを投射する。
投射装置11は、一例として、自動車12の停車中にフロントガラス14に画像Pを投射する。また、将来的に自動車12の自動運転が可能になった場合、投射装置11は、自動運転中にフロントガラス14に画像Pを投射してもよい。なお、自動運転とは、自動車の走行に必要となる、アクセル、ブレーキ、方向指示器、及びハンドル15等の操作が自動車12に設けられた制御装置(図示省略)により自律的に行われる運転を指す。
投射レンズ10は、一例として図2に示すように、出射側部分10Aと入射側部分10Bとに大別される。本例において、投射レンズ10は、出射側部分10Aが上部に、入射側部分10Bが下部に位置する姿勢でダッシュボード13に設けられている。出射側部分10Aである投射レンズ10の上部側は、ダッシュボード13から露出している。また、投射レンズ10の入射側部分10Bである下部側は、ダッシュボード13内に収容されている。投射レンズ10の出射側部分10Aは、カバー16により覆われている。カバー16は、例えばダッシュボード13と同一の素材から成る。カバー16は、後述する第2光学系L3の回転に伴って回転する。カバー16は、本開示の技術に係る「カバー部」の一例である。投射レンズ10の出射側部分10Aの光路の出射端部には、出射レンズLEが配されている。出射レンズLEは、画像Pをフロントガラス14に向けて出射する。
投射レンズ10の入射側部分10Bにおいて、光が入射する入射側の端部には、画像形成ユニット20が接続されている。この画像形成ユニット20と投射レンズ10とは、投射装置11を構成する。なお、以下では、光が入射する入射側である画像形成ユニット20の側を「縮小側」、光が出射する出射側である出射レンズLEの側を「拡大側」ということがある。
一例として図2に示すように、投射レンズ10は、ダッシュボード13からフロントガラス14に画像Pを投射するため、投射距離が数十cm程度である。また、投射レンズ10は、フロントガラス14の長さ方向及び幅方向に亘って広い範囲に画像Pを投射する。このため、投射レンズ10には、室内用の一般的な投射装置に用いられる投射レンズに比較して、超短焦点かつ超広角という光学性能が要求される。
また、投射レンズ10によって投射される画像Pの中心と出射レンズLEの光軸とは一致していない。より詳しくは、投射レンズ10は、レンズシフト機能によって、投射される画像Pの中心が、出射レンズLEの光軸よりも上方に位置する、いわゆる打ち上げ方式で画像Pを投射する。また、投射レンズ10は、フロントガラス14上において、出射レンズLEの光軸の延長線上にある点に、画像Pの下辺が位置するよう画像Pを投射する、いわゆるゼロオフセット投射が可能である。
画像形成ユニット20は、投射レンズ10を通じてフロントガラス14に投射する画像を形成する。画像形成ユニット20は、画像形成パネル21、光源22、及び導光部材(図示省略)等を備えている。光源22は、画像形成パネル21に光を照射する。導光部材は、光源22からの光を画像形成パネル21に導光する。
画像形成ユニット20は、一例として、画像形成パネル21としてDMD(Digital Micromirror Device:登録商標)を使用した反射型である。DMDは、光源22から照射される光の反射方向を変化させることが可能な複数のマイクロミラーを有しており、各マイクロミラーを画素単位で二次元に配列した画像表示素子である。DMDは、画像に応じて各マイクロミラーの向きを変化させることで、光源22からの光の反射光のオンオフを切り替えることにより、画像に応じた光変調を行う。DMDは、本開示の技術に係る「電気光学素子」の一例である。
光源22の一例としては、白色光を発する白色光源が挙げられる。白色光源は、一例として、レーザ光源と蛍光体とを組み合わせることで実現される。具体的には、レーザ光源は、蛍光体に対する励起光として青色光を発する。レーザ光源から発せられた青色光によって励起された蛍光体は、黄色光を発する。白色光源は、レーザ光源から発せられる青色光と、蛍光体から発せられる黄色光とを組み合わせることで、白色光を発する。画像形成ユニット20には、さらに、光源22が発する白色光を、青色光、緑色光、及び赤色光の各色光に時分割で選択的に変換する回転カラーフィルタが設けられている。青、緑、及び赤の各色光が画像形成パネル21に選択的に照射されることで、青、緑、及び赤の各色の画像情報が担持された画像光が得られる。こうして得られた各色の画像光が、投射レンズ10に選択的に入射されることで、フロントガラス14に向けて投射される。各色の画像光は、フロントガラス14上で統合される。この結果、フロントガラス14には、有彩色又は無彩色の画像Pが表示される。
投射レンズ10には、画像形成ユニット20で形成された画像を表す光束が画像形成ユニット20から入射される。投射レンズ10は、入射された光束に基づく画像光を拡大して結像する。これにより、投射レンズ10は、画像形成ユニット20で形成された画像の拡大像である画像Pをフロントガラス14に投射する。
ところで、自動車12に設けられるフロントガラス14は、車種、型式によって、ダッシュボード13に対する角度が変わる場合がある。一例として図3に示すように、フロントガラス14が、ダッシュボード13に対して成す角度が、図2の例と比較して、角度α1だけ変化したとする。投射レンズ10の姿勢が変化せずに、フロントガラス14の角度だけ変化すると、投射される画像Pは歪んでしまう。そのため、画像Pをフロントガラス14に正確に投影するためには、フロントガラス14の角度変化に応じて、投射レンズ10のフロントガラス14に対する姿勢が変更される必要がある。具体的には、一例として図3に示すように、光軸A3が、回転前と比較して角度α1だけ上向きとなるように、投射レンズが回転される必要がある。ここで、投射レンズ10の第3光学系L3を、図2及び図3において上下方向に回転させることをチルトと呼ぶ。投射レンズ10は、フロントガラス14に対する光軸A3の角度を調整できるように、光軸A3のチルト機能を備えている。
一例として図4に示すように、投射レンズ10は、屈曲光学系を備えている。屈曲光学系は、第1光軸A1、第2光軸A2、及び第3光軸A3を有する。第1光軸A1は、画像形成ユニット20からの光が通る光軸である。第2光軸A2は、第1光軸A1に対して90°屈曲した光軸である。第3光軸A3は、一例として、第2光軸A2に対して90°屈曲した光軸である。このため、第1光軸A1及び第3光軸A3は平行である。なお、ここでいう90°とは、設計上許容される誤差を含む値である。
以下の説明では、第1光軸A1及び第3光軸A3と平行な方向をY方向、第2光軸A2と平行な方向をZ方向、Y方向及びZ方向と直交する方向をX方向と表現する。
投射レンズ10は、第1鏡筒部30、第2鏡筒部31、及び第3鏡筒部32を有する。第1鏡筒部30は、最も入射側に位置し、第3鏡筒部32は、最も出射側に位置する。第2鏡筒部31は、第1鏡筒部30と第3鏡筒部32の間に位置する。各鏡筒部30~32は、それぞれレンズを保持している。第1鏡筒部30に保持されているレンズは第1光軸A1上に配置されている。また、第2鏡筒部31に保持されているレンズは第2光軸A2上に配置されている。さらに、第3鏡筒部32に保持されているレンズは第3光軸A3上に配置されている。
第1鏡筒部30の中心軸は第1光軸A1と略一致している。また、第2鏡筒部31の中心軸は第2光軸A2と略一致している。さらに、第3鏡筒部32の中心軸は第3光軸A3と略一致している。なお、図4では、説明を簡略化するため、複数枚のレンズを省略して1枚のレンズのように表現している場合がある。
第1鏡筒部30は、第1光学系L1を保持する。第1光学系L1は、一例として、レンズL11、レンズL12、レンズL13、レンズL14、補正レンズLC、及びレンズL15で構成され、第1光軸A1に沿って配置される。第1光学系L1は、画像形成パネル21の光学像の中間像MIを結像する。また、レンズL13とレンズL14との間には、固定絞り33が設けられている。固定絞り33は、画像形成ユニット20から入射した光束を絞る。第1鏡筒部30の少なくとも一部は、一例として樹脂材料により形成されている。
レンズL11、レンズL12、及びレンズL13は、保持枠34に保持されている。レンズL11及びレンズL12は、一例としてズームレンズ群を構成する。レンズL14は保持枠35に保持されている。補正レンズLCは補正レンズ保持枠36に保持されている。レンズL15は保持枠37に保持されている。
保持枠37は、補正レンズLCとは非接触で、かつ補正レンズ保持枠36を保持する。
補正レンズ保持枠36は、一例として樹脂により形成されている。対して他の保持枠34、保持枠35、及び保持枠37は、一例としてアルミニウム等の金属により形成されている。
補正レンズLCは、主として、像面湾曲収差といった収差を補正する機能を担うレンズである。補正レンズLCは、収差補正に有利な非球面レンズであり、一例として樹脂で形成されている。
一方、補正レンズLC以外の第1光学系L1を構成するレンズは、本実施形態においては全てガラスで形成されている。投射レンズ10が配置されるダッシュボード13はフロントガラス14を通じて直射日光を受けるため、投射レンズ10は120℃程度の高温環境に晒される場合がある。このように投射レンズ10は高温環境下で使用されるため、耐熱性を考えれば、樹脂よりもガラスでレンズを形成するほうが好ましい。
第2鏡筒部31は、第2光学系L2を保持する。第2光学系L2は、一例として、レンズL20で構成され、第2光軸A2に沿って配置される。レンズL20は、ガラスで形成されている。本実施形態において、第2光学系L2は、リレーレンズとして機能する。具体的には、第2光学系L2は、第1光学系L1により結像された中間像MIを被写体として、中間像MIを表す光束を第3鏡筒部32に中継する。
また、第2光学系L2の入射側には、第1ミラー38が配置されており、第2光学系L2の出射側には第2ミラー39が配置されている。第1ミラー38及び第2ミラー39は、それぞれ、屈曲光学系を構成する光学素子の1つであり、光軸を屈曲させる。第1ミラー38は、第1光軸A1の光を反射させて第2光軸A2の光とする。第2ミラー39は、第2光軸A2の光を反射させて第3光軸A3の光とする。
第1鏡筒部30と第2鏡筒部31との間には、第1ミラー38を収容する第1ミラー収容部46が設けられている。また、第2鏡筒部31と第3鏡筒部32との間には、第2ミラー39を収容する第2ミラー収容部47が設けられている。
第1ミラー収容部46において、第1ミラー38は、第1光軸A1及び第2光軸A2のそれぞれに対して反射面が45°の角度をなす姿勢で保持される。同様に、第2ミラー収容部47において、第2ミラー39は、第2光軸A2及び第3光軸A3のそれぞれに対して反射面が一例として45°の角度をなす姿勢で保持される。第1ミラー38及び第2ミラー39は、ガラス等の透明部材に反射膜をコーティングした鏡面反射型のミラーである。なお、第1ミラー38及び第2ミラー39は、光を全反射させるプリズムを用いたミラーであってもよい。第1ミラー38及び/又は第2ミラー39は、本開示の技術に係る「反射部」の一例である。また、第1ミラー38は、本開示の技術に係る「第1反射部」の一例である。第2ミラー39は、本開示の技術に係る「第2反射部」の一例である。
第2鏡筒部31は、第1鏡筒部30の保持枠34、保持枠35、及び保持枠37と同じく、一例としてアルミニウム等の金属により形成されている。
第3鏡筒部32は、第3光学系L3を保持する。第3光学系L3は、第2ミラー39によって反射された光を投射レンズ10の外部に出射する出射光学系である。第3鏡筒部32は、レンズL31、レンズL32、レンズL33、レンズL34、及び出射レンズLEで構成され、第3光軸A3に沿って配置される。なお、第3光学系L3は、本開示の技術に係る「出射光学系」の一例である。
レンズL31及びレンズL32は、保持枠40に保持されている。レンズL31及びレンズL32は、一例としてフォーカスレンズ群を構成する。レンズL33及びレンズL34は、保持枠41に保持されている。出射レンズLEは、出射レンズ保持枠42に保持されている。
保持枠41は、出射レンズLEとは非接触で、かつ出射レンズ保持枠42を保持する。
出射レンズ保持枠42は、補正レンズ保持枠36と同じく、一例として樹脂により形成されている。一方、他の保持枠40及び保持枠41は、一例としてアルミニウム等の金属により形成されている。
出射レンズLEは、第3光軸A3よりも下側の外縁部の一部が直線状にカットされた形状を有する。すなわち、出射レンズLEは、平面視において輪郭がD字状のレンズである。出射レンズLEは、補正レンズLCと同じく非球面レンズである。出射レンズLEは、例えば樹脂で形成されている。また、出射レンズLEの入射側に位置するレンズL33及びレンズL34は、球面のレンズ面を有する球面レンズである。レンズL33及びレンズL34は、ガラスで形成されている。
投射レンズ10は、上述のように、超短焦点かつ超広角という光学性能が要求される。このため、レンズL33及びレンズL34は、投射する画像Pを拡大させるために負の屈折力を有しており、光束を発散させる。
投射レンズ10の半画角は、63°以上、より好ましくは65°以上である。こうした広い半画角を確保するために、レンズL33及びレンズL34は高い屈折力を有する。高い屈折力を確保するために、レンズL33及びレンズL34は、一例としてガラス製のレンズであり、また、重量増を抑制するために、比較的小径のレンズが使用される。
一方、出射レンズLEは、第3光学系L3において、主として収差を補正する機能を担う。出射レンズLEは、球面レンズと比べて収差補正に有利な非球面レンズである。なお、出射レンズLEは、収差を補正する観点及び上述したような広い半画角を得る観点から、縮小側の表面の第3光軸A3付近に凹部を、縮小側の表面のレンズ端付近に凸部を有するレンズであると好ましい。
また、一例として図4に示すように、投射レンズ10の入り口から第1ミラー38までの距離LA1と第1ミラー38から第2ミラー39までの距離LA2との和が、第2ミラー39から投射レンズ10の出口までの距離LA3の2倍よりも長くなるように設定されている。換言すれば、第2ミラー39を一例として示す第2反射部から出射レンズLEを一例として示す出射レンズまでの距離LA3の2倍が、投射レンズ10の入り口から、第1ミラー38を一例として示す第1反射部までの距離LA1と第1反射部から第2反射部までの距離LA2との合計よりも短くなる様に設定されている。具体的には、距離LA1~LA3について、以下の関係式(1)が成り立つ。なお、投射レンズ10の入り口とは、本例においてはレンズL11の入射側の面である。また、投射レンズ10の出口とは、本例においては出射レンズLEの出射側の面である。
2×LA3<LA1+LA2 ・・・・・(1)
一例として図5Aに示すように、第2ミラー収容部47を含む第3鏡筒部32は、第2鏡筒部31に対して、回転軸ROを回転中心として回転可能とされている。また、第2鏡筒部31の上部は、第2ミラー収容部47と連結されている。このため、一例として図5Bに示すように第3鏡筒部32は、回転軸ROを中心として回転する。回転軸ROは、第2ミラー39における光軸A2及びA3の交点と一致している。第3鏡筒部32は、本開示の技術に係る「第2筒部」の一例である。
第3鏡筒部32の第2ミラー収容部47内には、ミラー保持部50が配置されている。ミラー保持部50は、一例として図5Aにおいて、第2ミラー39の上方、背面(Y軸方向において出射側とは反対側)、及び側方(X方向に沿う幅方向における両側)を覆う。つまり、ミラー保持部50は、第2ミラー39に対する光の入射側(第2光軸A2側)と、光の出射側(第3光軸A3側)とが開口された枠状の部材である。第2ミラー39は、ミラー保持部50の内周面に対して、例えば、外縁が接着されることにより、ミラー保持部50に固定されている。ミラー保持部50によって第2ミラー39が保持されていることで、ミラー保持部50とともに第2ミラー39が回転する。ミラー保持部50は、第3鏡筒部32の第2ミラー収容部47と同様に回転軸ROを中心として回転する。ミラー保持部50は、第3鏡筒部32の回転に伴って回転する。しかし、後述するように、第3鏡筒部32の回転角度とミラー保持部50の回転角度とは一致せず、第3鏡筒部32の回転角度は、ミラー保持部50の回転角度より大きい。具体的には、第3鏡筒部32の回転角度は、ミラー保持部50の回転角度の2倍である。逆に言えば、ミラー保持部50の回転角度は、第3鏡筒部32の回転角度の1/2である。ミラー保持部50は、一例として、アルミニウム等の金属材料から構成される。ミラー保持部50は、本開示の技術に係る「第1筒部」の一例である。
第3鏡筒部32が回転すると、当然ながら第3鏡筒部32の第2ミラー収容部47と第2鏡筒部31との間には隙間が生じる。このため、第2ミラー収容部47と第2鏡筒部31との間には、隙間を覆う遮光部材48が設けられている。遮光部材48は、投射レンズ10からの光の漏れ及び投射レンズ10内への外光の侵入を防止する。第2ミラー収容部47と第2鏡筒部31との間の隙間の大きさは、第2ミラー収容部47の回転角度に応じて変化する。そのため、遮光部材48としては、可撓性を有する材料で形成される。遮光部材48としては、一例として、伸縮可能なゴムなどの弾性材料を用いて、蛇腹形状とした態様が採用される。もちろん、遮光部材48としては、可撓性を有していればよく、ゴムに代えて、布又は革などを用いてもよい。また、遮光部材48の形状も蛇腹形状に限定されず、大きさが変化する隙間を覆うことができる形状であればよい。
第2鏡筒部31の上端から第2ミラー収容部47内に固定部材51が延出されている。すなわち、固定部材51は、一例として、一端が第2鏡筒部31の上端に固定された一対の板状部材である。一対の固定部材51は、ミラー保持部50のX方向における両側に配置されている。これにより、ミラー保持部50は、一対の固定部材51の間に配置される。ミラー保持部50は、固定部材51に対して回転可能に取り付けられている。
また、第3鏡筒部32も、固定部材51に対して回転可能に取り付けられている。これにより、第2鏡筒部31に対して第3鏡筒部32を図5A及び図5Bにおいて上下方向に回転させることが可能である。すなわち、投射レンズ10は、出射光学系である第3光学系L3のチルト機能を有している。これにより、投射レンズ10において、第3光学系L3の光軸A3と、第2光学系L2の光軸A2とが成す角度を変化させることができる。この結果、一例としてフロントガラス14のダッシュボード13に対する角度が変更された場合でも、チルト機能による第3光学系L3の角度調整によって対応が可能となる。これにより、投射レンズ10は、様々な種類の輸送機器の投射面に対して対応が可能となる。
回転機構49は、第3光学系L3のチルト機能を実現するための機構であり、第3鏡筒部32とミラー保持部50との両方を、第2鏡筒部31に対して回転させる回転機構の一例である。詳しくは後述するが、回転機構49は、第3鏡筒部32を回転させ、かつ、第3鏡筒部32の第2ミラー収容部47内において、第3鏡筒部32の回転角度よりも、ミラー保持部50を小さな角度で回転させる。具体的には、第3鏡筒部32を回転させることにより、第2光軸A2に対して第3光軸A3を回転させる場合は、第3光軸A3の回転角度に対して第2ミラー39の回転角度が1/2に設定される。すなわち、ミラー保持部50の回転角度は、第3鏡筒部32の回転角度の1/2である。
ミラー保持部50の回転角度が第3鏡筒部32の回転角度の1/2になる理由は、投射レンズ10が、第2ミラー39によって第2光軸A2を第3光軸A3に屈曲させる屈曲光学系を有していることに起因する幾何光学的な理由である。すなわち、図6Aに示すように、第2光軸A2に対して第3光軸A3を90°屈曲させる状態を初期状態とすると、初期状態においては、第2ミラー39は、上述のとおり、反射面を第2光軸A2及び第3光軸A3のそれぞれに対して45°傾けた状態で配置される。初期状態においては、第2光軸A2を通って第2ミラー39の反射面に入射する入射光の入射角β1は45°であり、入射光は、第2ミラー39の反射面で反射して第3光軸A3に沿って出射する。反射の法則に従って、反射角も入射角β1と同様にβ1であり、すなわち45°である。入射角β1及び反射角β1は、それぞれ第2ミラー39の反射面の法線H0に対する角度である。
次に、図6Aに示す初期状態から、図6Bに示す状態に第3光学系L3の第3光軸A3を回転軸RO回りに上方にチルトさせた場合(例えば、図6Bにおいて時計方向に回転させた場合)を考える。図6Bに示すように、初期状態からの第3光軸A3の回転角度をα1、第2ミラー39の反射面の回転角度をα2とする。図6Bに示すように、第2ミラー39の回転角度がα2である場合における第2ミラー39の反射面の法線をH1とすると、反射面がα2回転するため、当然ながら、法線H1も、初期状態における第2ミラー39の反射面の法線H0に対してα2だけ時計方向に回転する。第2光軸A2は回転しないため、第2ミラー39の反射面に対する第2光軸A2を通る光の入射角β2は、初期状態の入射角β1に加えてα2分だけ大きくなる。すなわち、β2=β1+α2・・・式(A1)である。
反射の法則により、反射角も入射角β2と同様にβ2になる。このように、第2ミラー39の反射面がα2回転すると、第2光軸A2を通る入射光の入射角β2と、第2ミラー39の反射面で反射して第3光軸A3に沿って出射する反射光の反射角β2のそれぞれは、β1に対してα2ずつ大きくなる。
図6Aに示す初期状態の第2光軸A2と第3光軸A3の成す角度はβ1の2倍であり、2×β1である。対して、第2ミラー39がα2回転した場合を示す図6Bの状態の第2光軸A2と第3光軸A3の成す角度はβ2の2倍であり、2×β2である。そうすると、図6Aに示す初期状態における第2光軸A2と第3光軸A3の成す角度である2×β1と、図6Bに示す状態における第2光軸A2と第3光軸A3の成す角度との差α1を求める以下の式(A2)が得られる。
α1=(2×β2)-(2×β1)・・・式(A2)
式(A2)に式(A1)を代入すると、
α1=2×(β1+α2)-(2×β1)=2×α2・・・式(A3)
α2の式に変換すると、α2=(α1)/2となる。
回転機構49は、ミラー保持部50の回転角度α2と第3鏡筒部32の回転角度α1との関係が、上記式(A3)の関係を満たすように、ミラー保持部50と第3鏡筒部32の両方を回転させる。
図7及び図8に回転機構49の具体的な構成の一例を示す。本例の回転機構49は、一対の固定部材51と、複数のギアによって構成されるギア機構とを備えている。ギア機構は、第3鏡筒部32の後端に位置する第2ミラー収容部47とミラー保持部50との間に配置される。
まず、一例として図7に示すように、回転軸ROの軸方向であるX方向における外側から、第2ミラー収容部47の側壁47A、固定部材51、及びミラー保持部50の側壁50Aの順に配置される。図7においては、第3鏡筒部32の入射側から見て、左側のみを示しているが、右側についても同様である。そして、一例として図7及び図8に示すように、回転機構49は、第1ギア61及び第2ギア62を有している。さらに、回転機構49は、第1アイドラギア63及び第2アイドラギア64を有している。第1ギア61、第1アイドラギア63、及び第2アイドラギア64はすべて外周に歯が設けられた外歯ギアである。一例として図8において、一点鎖線で示した第1アイドラギア63及び第2アイドラギア64は、回転機構49の組み立て状態での第1アイドラギア63及び第2アイドラギア64の仮想的な位置を示している。
第1ギア61は、第2ミラー収容部47の側壁47Aにおいて、固定部材51に対向する内側の面に設けられる。第1ギア61は、第2ミラー収容部47を含む第3鏡筒部32と一体的に回転する。第1ギア61は、第1アイドラギア63及び第2アイドラギア64を介して、第2ギア62を回転させる。第2ミラー収容部47は第2筒部の一例である第3鏡筒部32の一部であるため、第1ギア61は、本開示の技術に係る「第2筒部に設けられた第1ギア」の一例である。
第1ギア61は、回転軸ROを有しており、回転軸ROを中心軸として回転可能である。回転軸ROは、固定部材51及びミラー保持部50に挿通されている。回転軸ROによって、第1ギア61及び第2ギア62は、同軸で回転可能とされている。第3鏡筒部32とミラー保持部50とは回転軸ROが共通であり、固定部材51に対して同軸で回転する。
第2ギア62は、ミラー保持部50の側壁50Aにおいて、固定部材51と対向する外側の面に設けられている。第2ギア62の回転に伴って、ミラー保持部50も回転する。第2ギア62は、リング形状の部材の内周に歯が形成された内歯ギアであり、第2アイドラギア64と内周側で噛み合っている。第2ギア62には、第1アイドラギア63及び第2アイドラギア64を介して第1ギア61からの回転力が伝達される。ミラー保持部50は第1筒部の一例であるため、第2ギア62は、本開示の技術に係る「第1筒部に設けられた第2ギア」の一例である。
第1アイドラギア63は、第1ギア61と噛み合って、第1ギア61からの回転力を第2アイドラギア64へ伝達する。第1アイドラギア63は、受動ギア63Aと、軸部63Bと、駆動ギア63Cとを有する。受動ギア63Aと駆動ギア63Cは、軸部63Bの両端に設けられることにより、連結される。受動ギア63Aと駆動ギア63Cは軸部63Bに固定されている。受動ギア63A、駆動ギア63C、及び軸部63Bは、固定部材51に対して一体的に回転する。軸部63Bは、固定部材51を貫通している。受動ギア63Aと駆動ギア63Cは、固定部材51を挟んで、受動ギア63Aが側壁47A側に、駆動ギア63Cが側壁50A側に配置される。このように、第1アイドラギア63は、軸部63Bを介して、固定部材51に対して回転可能に取り付けられている。
第2アイドラギア64は、第1アイドラギア63に噛み合うとともに、第2ギア62と噛み合うことで、第1アイドラギア63を介して第1ギア61から入力される回転力を第2ギア62へ伝達する。第2アイドラギア64は、固定部材51に対して回転可能に取り付けられている。第2アイドラギア64は、第1アイドラギア63の駆動ギア63Cと噛み合っている。また、第2アイドラギア64は、第2ギア62の内周側で、第2ギア62と噛み合っている。回転機構49において、第1ギア61と第2ギア62の間に、第1アイドラギア63及び第2アイドラギア64の2つのアイドラギアを介在させる構成とすることで、第1ギア61の回転方向と、第2ギア62の回転方向が一致する。
一例として図9に示すように、回転前の状態から、投射レンズ10の回転角度を調整するため、第3鏡筒部32が回転される。このとき、第1ギア61の回転力は、先ず第1アイドラギア63へ伝達される。第1アイドラギア63に伝達された回転力は、第2アイドラギア64へ伝達され、さらに第2ギア62へ伝達される。
ここで、第2ギア62と第1ギア61との歯車比(歯数の比)と、半径の比は、以下の関係式(2)及び関係式(3)を満たすように設定されている。
まず、第1ギア61と第2ギア62のそれぞれの歯のピッチを同一とした場合、T1を第1ギア61の歯数、T2を第2ギア62の歯数とすると、第2ギア62と第1ギア61との歯車比は、下記の関係式(2)を満たすように設定される。
T1:T2=1:2 ・・・・・(2)
また、r1を第1ギア61の半径、r2を第2ギア62の半径とすると、第2ギア62と第1ギア61の半径r1と半径r2の比は、下記の関係式(3)を満たすように設定される。
r1:r2=1:2 ・・・・・(3)
上記関係式(2)及び関係式(3)を満たすことにより、ミラー保持部50の回転角度は、第3鏡筒部32の回転角度の1/2となる。なお、第1ギア61と第2ギア62のそれぞれの歯のピッチを同一とした場合、関係式(2)と関係式(3)は、一方を満足させると、他方も満足する関係にある。すなわち、関係式(2)を満たすように歯数を設定すると、必然的に関係式(3)を満たす半径の比になる。
自動車12の車種等に応じて、回転機構49によりミラー保持部50の回転角度が調整された後、回転機構49は、回転しないように固定される。一例として、固定用のボルト等の締結部材(図示省略)によって、固定部材51に対してミラー保持部50が回転不能となる様に、第1ギア61及び第2ギア62が固定される。また、接着剤などを用いて、固定部材51に対してミラー保持部50及び第3鏡筒部32が回転しないように固定してもよい。
次に、上記構成による作用について説明する。一例として図3に示すように、自動車12のフロントガラス14のダッシュボード13に対する角度に応じて、投射レンズ10の第3光学系L3の角度が調整される。この調整作業は、例えば、手動により第3鏡筒部32を回転させることにより行われる。
例えば、図6Aに示す初期状態から、第3鏡筒部32を回転軸RO回りに、フロントガラス14の角度に応じた目標の角度まで回転させる。例えば、図6Bに示すように、第3鏡筒部32を、回転軸ROを中心に時計方向に回転角度α1だけ回転させる。これにより、図9に示すように、第3鏡筒部32の回転に伴って第1ギア61が回転する。第1ギア61が回転すると、第1アイドラギア63及び第2アイドラギア64を介して、第1ギア61の回転力が第2ギア62に伝達される。第1ギア61と第2ギア62の間には第1アイドラギア63と第2アイドラギア64の2つのアイドラギアが設けられているため、第2ギア62は、第1ギア61と同じ方向に回転する。
また、第1ギア61と第2ギア62の歯車比及び半径の比は、1:2であり、上記関係式(2)及び関係式(3)を満足している。そのため、第1ギア61の回転角度α1に対して、第2ギア62は、α1の半分の回転角度α2だけ回転する。第2ギア62が回転すると、第2ギア62が設けられたミラー保持部50も回転角度α2だけ回転する。その結果、第3鏡筒部32の回転角度α1の回転に連動して、ミラー保持部50はα1の1/2の回転角度α2回転する。これにより、投射レンズ10のように、第2光軸A2を第3光軸A3に屈曲させる第2ミラー39を有する屈曲光学系を備えている場合において、第2光軸A2に対して第3光軸A3をチルトさせた場合でも、第2光軸A2と第3光軸A3との間の幾何光学的な関係がチルト前後において適切に維持される。
一例として図6Bに示すように、本開示の技術に係る投射レンズ10は、第2ミラー39(反射部の一例)と、第2ミラー39によって反射された光を出射する第3光学系L3(出射光学系の一例)と、ミラー保持部50(第1筒部の一例)と、第3鏡筒部32(第2筒部の一例)と、ミラー保持部50と第3鏡筒部32の両方を回転させる回転機構49(回転機構の一例)とを備えている。そして、回転機構49は、第3鏡筒部32よりもミラー保持部50を小さな角度で回転させる。そのため、光軸を屈曲させる第2ミラー39(反射部の一例)を有する場合でも、第3光学系L3(出射光学系の一例)のチルトが可能になる。
また、一例として図7に示すように、回転機構49は、第3鏡筒部32(第2筒部の一例)に連動してミラー保持部50(第1筒部の一例)を回転させる。すなわち、回転機構49によって、第3鏡筒部32の回転力が、ミラー保持部50に伝達され、ミラー保持部50が回転される。これにより、第3鏡筒部32と、ミラー保持部50とをそれぞれ別々に回転させる場合と比較して、調整作業の手間も軽減される。また、回転機構49が1つで済み、投射レンズ10の省スペース化、簡素化も実現される。
また、回転機構49は、第3鏡筒部32の回転させる回転角度α1に対して1/2の角度α2でミラー保持部50を回転させる。これにより、第2ミラー39によって屈曲される第2光軸A2と第3光軸A3との間の幾何光学的な関係がチルト前後において適切に維持される。
また、回転機構49は、第3鏡筒部32の第2ミラー収容部47に設けられた第1ギア61と、ミラー保持部50に設けられた第2ギア62とを有する。回転機構49は、第1ギア61と第2ギア62とを含むギア機構によって、第3鏡筒部32の回転とミラー保持部50の回転とを連動させるため、ギア機構を用いない場合と比較して構造を簡素化することができる。また、ギア機構によれば、上述した歯車比及び半径の比の設定により、第3鏡筒部32の回転角度と、ミラー保持部50の回転角度との設定を行うことができる。そのため、ギア機構を用いない場合と比較して、回転角度の調整を比較的簡単に行うことができる。
また、投射レンズ10において、ミラー保持部50と第3鏡筒部32の回転軸ROは共通である。このため、ミラー保持部50と第3鏡筒部32の回転軸を別々に設ける場合と比較して、構造を簡素化できる。
一例として図4に示すように、投射レンズ10は、第1ミラー38と第2ミラー39とを有しており、第2ミラー39は、第1ミラー38よりも拡大側に配置されている。また、ミラー保持部50は、第2ミラー39を保持している。仮に、第1ミラー38を回転させる構成とすると、第1ミラー38よりも拡大側の部位を回転させる必要があり、回転機構49が大型化する。対して、本例の投射レンズ10は、第3鏡筒部32の回転に伴ってミラー保持部50を回転させることにより、第2ミラー39を回転させている。これにより、第1ミラー38を回転させる場合は第1ミラー38以降の部位を回転させる必要があり、投射レンズ10における回転する部位が大型かつ重量が重くなるが、投射レンズ10における回転する部位が小型軽量となるため、回転動作が安定し、かつ、回転機構49を簡素化することも可能となる。
また、第3光学系L3のレンズ群の配置及びそれらを保持する構成が大型化すると、投射レンズ10を回転させる構成も大型化、又は高強度化する必要がある。そこで、本例の投射レンズ10では、上記関係式(1)で示したように、第2ミラー39から投射レンズ10の出口までの距離LA3の2倍が、投射レンズ10の入り口から第1ミラー38までの距離LA1と第1ミラー38から第2ミラー39までの距離LA2との和よりも、短くされている。換言すれば、第2ミラー39(第2反射部の一例)から出射レンズLEまでの距離の2倍が、投射レンズ10の入り口から、第1ミラー38(第1反射部の一例)までの距離と、第1ミラー38から第2ミラー39までの距離との合計よりも短くなる様に設定されている。
このため、出射光学系である第3光学系L3が、第1光学系L1等と比較して、相対的に小型軽量化される。従って、第2ミラー39から投射レンズ10の出口までの距離LA3の2倍が、投射レンズ10の入り口から第1ミラー38までの距離LA1と第1ミラー38から第2ミラー39までの距離LA2との和よりも長い場合と比較して、本例の投射レンズ10においては、第3光学系L3を有する第3鏡筒部32の回転動作が安定する。
また、一例として図5Bに示すように、第3鏡筒部32の回転角度の調整の際、第3鏡筒部32と第2鏡筒部31とが連結される部分には隙間が生じる場合がある。本例の投射レンズ10では、第3鏡筒部32と第2鏡筒部31とが連結される部分は、遮光部材48によって覆われている。このため、隙間を通じて投射レンズ10内へ外光が進入すること及び隙間から投射レンズ10外へ光が漏れることを防止することができる。
また、遮光部材48は、可撓性を有している。これにより、剛体の遮光部材と比較して、回転に伴う各部材の変位を吸収でき、回転動作の妨げとならない。
また、投射レンズ10の設置環境によっては、投射レンズ10の設置環境が高温になる場合がある。一例として、投射レンズ10が自動車12のダッシュボード13に取り付けられる場合、夏場の炎天下では、投射レンズ10周辺は、高温環境となる。そこで、ミラー保持部50と第3鏡筒部32とは、金属材料から構成される。一方、第1鏡筒部30の補正レンズ保持枠36は、樹脂材料から構成される。このように、第2ミラー39を正確な位置に配置するために寸法精度が求められるミラー保持部50等は、熱膨張係数が、樹脂材料等に比べて小さい金属材料から構成される。一方、第1鏡筒部30等、第3鏡筒部32以外の他の筒部の少なくとも一部は、樹脂材料から構成される。これにより、軽量化を実現することができる。
上記第1実施形態では、回転機構49としてのギア機構が、第1ギア61及び第2ギア62を有する形態例を示したが、本開示の技術はこれに限定されない。回転機構49としてのギア機構におけるギアの数、配置、又は各ギアの歯数等は、要求される回転力、又は角度調整における精度等によって適宜設定される。
[第2実施形態]
上記第1実施形態では回転機構49がギア機構によって構成される形態例を説明したが、回転機構はギア機構に限定されず、本第2実施形態の回転機構91のように、リンク機構によって構成されてもよい。なお、本第2実施形態では、上記第1実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。以下では、上記第1実施形態と異なる部分について説明する。
一例として図10に示すように、本第2実施形態に係る回転機構91としてのリンク機構は、第3鏡筒部32に加えられた回転力をミラー保持部50に伝達する。第2実施形態の回転機構91においては、回転軸ROに沿うX方向において、固定部材51、第2ミラー収容部47の側壁47A、リンク部材71、ミラー保持部50の側壁50Aの順に外側から配置されている。
固定部材51には、リンク部材71と対向する内側の面に回転軸ROが設けられている。第3鏡筒部32及びミラー保持部50が、回転軸ROを介して、固定部材51に回転可能に取り付けられている。第3鏡筒部32(図10における側壁47A)が回転軸ROを中心に回転すると、回転力がリンク部材71を介して、ミラー保持部50に伝達される。回転機構91において、各部材に設けられたピン、もしくは長孔の長さ、角度等は、ミラー保持部50の回転角度が第3鏡筒部32の回転角度よりも小さくなるように設定される。
より具体的には、一例として図11に示すように、固定部材51には、回転軸ROに加えて、第1長孔72が設けられている。回転軸ROは、第3鏡筒部32の側壁47A及びミラー保持部50に挿通されている。これにより、第3鏡筒部32の側壁47A及びミラー保持部50が、固定部材51に対して共通の回転軸で回転可能となっている。第1長孔72は、一例として図11に示すY方向に長手方向を有する貫通孔である。第1長孔72には、後述する第2ピン75が挿通される。
第3鏡筒部32の側壁47Aには、リンク部材71と対向する位置にリンク部材71に向かって突出する第1ピン73が設けられている。第1ピン73は、後述するリンク部材71に設けられた第2長孔74に挿通される。
リンク部材71は、長尺の板状部材であり、第3鏡筒部32の側壁47A及びミラー保持部50の側壁50Aの間に配置される。リンク部材71は、長手方向(一例として、図11に示すZ方向)の上端側に、固定部材51に向かって突出した第2ピン75を有している。第2ピン75は、上述した第2長孔74に挿通される。第2ピン75と第2長孔74との係合により、リンク部材71は、第2長孔74が延びるY方向に沿って直線移動する。
また、リンク部材71は、長手方向(一例として、図11に示すZ方向)の中間部に、ミラー保持部50の側壁50Aに向けて突出した第3ピン76を有している。第3ピン76は、後述するミラー保持部50に設けられた第3長孔77に挿通される。
さらに、リンク部材71は、長手方向(一例として、図11に示すZ方向)の中央から下端側に向かって延びる第2長孔74を有している。第2長孔74は、リンク部材71の長手方向に沿って延在された貫通孔である。第2長孔74には、上述した第1ピン73が挿通される。
ミラー保持部50の側壁50Aには、第3長孔77が形成されている。第3長孔77は、ミラー保持部50のリンク部材71と対向する部位に設けられた貫通孔である。第3長孔77は、長手方向が、Y方向及びZ方向に対して傾斜する方向に延びている。第3長孔77の傾斜角は、ミラー保持部50の回転角度が、第3鏡筒部32の回転角度よりも小さくなるように設定される。
回転機構91の動作例を図12及び図13を用いて説明する。一例として図12に示す状態は、一例として図5Aに示した第3光軸A3と第2光軸A2とが直交する初期状態である。一方、一例として図13に示す状態は、一例として図5Bに示したように、初期状態から第3光軸A3を上方に向けて回転角度α1だけチルトさせた状態を示す。
一例として図12に示すように、回転前の初期状態から、投射レンズ10の回転角度を調整するため、第3鏡筒部32(一例として図12における側壁47A)を回転軸ROを中心に回転させることにより、一例として図13に示す状態にする場合を考える。
一例として図12に示す初期状態から、第3鏡筒部32(一例として図12における側壁47A)が回転すると、一例として図13に示すように、第1ピン73が、回転軸ROを中心に図12において時計方向に回転する。この回転には、第1ピン73のZ方向とY方向に移動する成分が含まれる。つまり、第1ピン73は、リンク部材71の第2長孔74内をZ方向に移動しつつ、第2長孔74を介してリンク部材71に対して、Y方向成分の力を伝達する。第1ピン73からのY方向の力を受けたリンク部材71は、第1長孔72にガイドされてY方向に移動する。
リンク部材71がY方向に移動することにより、第3ピン76が、第3長孔77に沿って(一例として図13におけるY方向に沿って)直線移動する。このとき、第3ピン76は、第3長孔77を介してミラー保持部50に対してY方向の力を伝達する。ミラー保持部50は、第3ピン76からY方向の力を受けると、回転軸ROを中心に回転する。このときのミラー保持部50の回転角度は、第3長孔77の傾斜角の設定により、第3鏡筒部32の回転角度よりも小さく設定されている。より具体的には、ミラー保持部50の回転角度は、第3鏡筒部32の回転角度の1/2となるように設定されていると好ましい。
このように、リンク機構によって構成される回転機構91を用いても、第3鏡筒部32の回転とミラー保持部50の回転とを連動させることができる。
上記第2実施形態では、回転機構91としてのリンク機構が、リンク部材71を有する形態例を示したが、本開示の技術はこれに限定されない。回転機構91としてのリンク機構におけるリンク部材の数、又は長孔の形状もしくはピンの数もしくは配置等は、要求される回転力、又は角度調整における精度等によって適宜設定される。
[第3実施形態]
本第3実施形態では、投射レンズ10が、第2ミラー39よりも拡大側の光学系である第3光学系L3と第2ミラー39よりも縮小側の光学系である第2光学系L2とを相対的に移動させて、第2光軸A2及び第3光軸A3を調整する調整機構80をさらに備える場合について説明する。なお、本第3実施形態では、上記第1実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。以下では、上記第1実施形態と異なる部分について説明する。
本形態例に係る投射レンズ10においては、上述したように、回転角度を調整するため投射レンズ10の第3光学系L3側には種々の機構が設けられている。そのため、投射レンズ10において、第2光軸A2及び第3光軸A3の位置を調整する際、第2ミラー39の周辺構造を変位させて、光軸調整を行おうとすると、さらに投射レンズ10の第3光学系L3側の構造が複雑化する。また、調整後の回転角度が変化する等の悪影響が生じることも考えられる。そこで、第3実施形態の投射レンズ10においては、調整機構80を設けて、第2ミラー39の周辺構造を変位させずに、光軸調整を可能としている。
一例として図14に示すように、調整機構80は、第2鏡筒部31に設けられる。具体的には、調整機構80は、第2鏡筒部31において、第1ミラー38よりも拡大側に設けられる。第2鏡筒部31は、調整機構80が設けられる箇所において分離され、別体とされている。調整機構80は、第2鏡筒部31の分離された箇所において、第3光学系L3と第2光学系L2とを相対的に移動させて、光軸を調整する。ここで、第3光学系L3は、本開示の技術に係る「反射部よりも拡大側の光学系」の一例である。また、第2光学系L2は、本開示の技術に係る「反射部よりも縮小側の光学系」の一例である。さらに、調整機構80は、本開示の技術に係る「調整機構」の一例である。
より具体的には、調整機構80は、第2鏡筒部31の第3光学系L3側に設けられた第1フランジ81と、第2鏡筒部31の第2光学系L2側に設けられた第2フランジ82とを備える。第1フランジ81及び第2フランジ82は、第2鏡筒部31の外周から図14に示すX-Y平面に沿って、外側へ向かって延出された平板状の部位である。第1フランジ81と第2フランジ82とは、互いに対向し、面接触している。
第1フランジ81及び第2フランジ82は、締結部材によって締結されている。一例として図15に示すように、第1フランジ81及び第2フランジ82には、複数の調整孔83が設けられている。さらに、調整孔83に挿通されたボルト84が、ナット85と螺合することで、第1フランジ81及び第2フランジ82が締結される。調整孔83の内径は、ボルト84の軸部の外径よりも大きく設定されている。これにより、第1フランジ81と第2フランジ82とを相対的に変位させた状態で、両者をボルト84及びナット85により締結することが可能となっている。
一例として図16に示すように、光軸調整に際し、調整機構80によって第3光学系L3は、第2光学系L2に対して移動可能とされる。光軸調整完了後、調整機構80の第1フランジ81と第2フランジ82とが締結される。この結果、投射レンズ10が一体として機能する。
本実施形態では、調整機構80によって、第3光学系L3及び第2ミラー39が第2光学系L2に対して相対移動可能とされている。これにより、第2ミラー39の周辺構造に対して、回転機構49の他に移動機構を付加することなく、第2ミラー39及び第2光学系L2の光軸調整が可能となる。また、第2ミラー39の周辺構造を変位させる場合と比較して、第3光学系L3における調整後の回転角度に対する光軸調整の影響を少なくすることができる。
また、調整機構80は、第2鏡筒部31において、第1ミラー38よりも拡大側に設けられている。このため、中間像結像位置よりも拡大側で光軸の調整が実現されるので、中間像結像位置よりも縮小側で光軸の調整を行う場合と比較して、光軸調整の精度が向上する。
[第4実施形態]
上記第1実施形態では、一例として図3に示すようにカバー16が第3光学系L3のチルト方向の回転とともに回転される形態例を説明したが、本第4実施形態のように、カバー16は、ダッシュボード13に対してチルト方向に回転しなくてもよい。また、本第4実施形態のように、投射レンズ10は、カバー16と第3鏡筒部32との隙間を覆う可撓性部材17を有してもよい。なお、本第4実施形態では、上記第1~第3実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。以下では、上記第1実施形態と異なる部分について説明する。
一例として図17に示すように、投射装置11は、第3鏡筒部32を覆うカバー16を有している。本形態例に係るカバー16は、ダッシュボード13に対して固定されている。また、本形態例に係る投射装置11におけるカバー16と第3鏡筒部32との間には、可撓性部材17が設けられている。可撓性部材17は、出射レンズLEよりも縮小側であってミラー収容部47よりも拡大側の領域に設けられている。一例として図18に示すように、投射装置11の正面視(一例として図18に示すY方向視)において、可撓性部材17は、カバー16の内周面と第3鏡筒部32の外周面との間の隙間を塞いでいる。
また、上述したように、カバー16は、ダッシュボード13に対して固定されている。すなわち、一例として図19に示すように、カバー16は、第3鏡筒部32の回転に関わらず姿勢が固定されている。従って、第3鏡筒部32を上方にチルトさせた場合(一例として図19における時計方向に回転させた場合)、第3鏡筒部32とカバー16との間隔が変化する。具体的には、一例として図19に示すように、第3鏡筒部32の上方側の間隔が小さくなり、第3鏡筒部32の下方側の間隔が大きくなる。このとき、可撓性部材17は、部分的に伸縮することで、第3鏡筒部32とカバー16との間の間隔の変化に対応する。具体的には、可撓性部材17の内、第3鏡筒部32の上方側の隙間を覆う部位が屈曲または収縮し、第3鏡筒部32の下方側を覆う部位が伸長する。つまり、第3鏡筒部32の回転の前後においても、可撓性部材17によって、第3鏡筒部32とカバー16との隙間が覆われる。
このように第3鏡筒部32とカバー16との隙間を覆うことにより、可撓性部材17は、水、又は埃等の異物がカバー16と第3鏡筒部32との隙間に進入することを防止する。可撓性部材17は、異物の進入を防止できるとともに、第3鏡筒部32の回転に伴うカバー16との隙間の変化に対応可能な可撓性を有する材料から形成される。一例として、可撓性部材17は、ゴム、布、又は皮革等の材料から形成される。なお、可撓性部材17は、本開示の技術に係る「可撓性を有する部材」の一例である。
本実施形態では、可撓性部材17によって、第3鏡筒部32とカバー16との間の隙間が覆われていることで、水又は埃等の異物が、投射装置11内に進入することが抑制される。さらに、可撓性部材17が、可撓性を有することにより、第3鏡筒部32の回転によって、第3鏡筒部32とカバー16との隙間の間隔の変化に対応することができる。すなわち、第3鏡筒部32とカバー16との隙間を金属板等の剛性の高い材料から形成した部材により覆う場合と比較して、本実施形態では、第3鏡筒部32の回転への影響を抑えながら、第3鏡筒部32とカバー16との隙間を覆うことができる。
上記実施形態では、第1光学系L1、第2光学系L2及び第3光学系L3を有する投射レンズ10の形態例を示したが、本開示の技術はこれに限定されない。一例として、投射レンズ10は、第2光学系L2及び第3光学系L3を有する屈曲光学系であってもよい。この場合、第2光学系L2の入射側端部に画像形成ユニット20が設けられる。
上記実施形態では、一つの回転機構49によってミラー収容部47とミラー保持部50とが回転される形態例を示したが、本開示の技術はこれに限定されない。一例として、ミラー収容部47を回転させる回転機構と、ミラー保持部50を回転させる回転機構とをそれぞれ有するように構成してもよい。
保持枠37及び保持枠41は、例示した金属に限らない。ただし、金属は一般的に耐熱性に優れている。また、金属は剛性が比較的高く、撓みにくい。この撓みにくいという性質は、本例の輸送機器用の投射レンズ10においては輸送機器の走行中の振動が加わるため、特に必要な性質である。このため、金属は、保持枠37及び保持枠41の材料として適している。
上記実施形態では、樹脂で形成されたレンズとして、いずれも非球面レンズの補正レンズLC及び出射レンズLEを例示したが、これに限らない。樹脂で形成された球面レンズであってもよい。また、樹脂で形成されたレンズは、最も入射側に配されたレンズであってもよい。
上記実施形態では、輸送機器として自動車12を例示したが、これに限らない。輸送機器は、建築車両、鉄道、船舶、及び飛行機等でもよい。また、上記実施形態では、輸送機器用の投射レンズ10を例示したが、これに限らない。一例として屋外使用を想定した投射レンズであってもよい。
上記実施形態では、投射装置11によって画像Pがフロントガラス14に投射される形態例を示したが、本開示の技術はこれに限定されない。一例として、画像Pは、フロントガラス14ではなく、リアガラス、ドアガラス等に投射されてもよい。また、画像Pは、フロントガラス14に投射されなくてもよく、自動車12の車室内に設けられた映写幕に投射されてもよい。
画像形成パネル21としては、DMDの代わりに液晶表示素子(LCD;Liquid Crystal Display)を使用した透過型画像形成パネルを用いてもよい。また、DMDの代わりに、LED(Light Emitting Diode)、有機EL(Electro Luminescence)のような自発光型素子を用いたパネルを用いても良い。さらに、上記実施形態の鏡面反射型の第1ミラー38、第2ミラー39の代わりに、全反射型のミラーを用いてもよい。
上記実施形態では、光源22としてレーザ光源を用いる例を説明したが、これに限らず、水銀ランプ、LED等を光源22として用いてもよい。また、上記実施形態では、青色レーザ光源と黄色蛍光体を用いたが、これに限らず、黄色蛍光体の代わりに緑色蛍光体と赤色蛍光体を用いてもよい。また、黄色蛍光体の代わりに緑色レーザ光源と赤色レーザ光源を用いてもよい。
本開示の技術は、上述の種々の実施形態と種々の変形例を適宜組み合わせることも可能である。また、上記実施形態に限らず、要旨を逸脱しない限り種々の構成を採用し得ることはもちろんである。
以上に示した記載内容及び図示内容は、本開示の技術に係る部分についての詳細な説明であり、本開示の技術の一例に過ぎない。一例として、上記の構成、機能、作用、及び効果に関する説明は、本開示の技術に係る部分の構成、機能、作用、及び効果の一例に関する説明である。よって、本開示の技術の主旨を逸脱しない範囲内において、以上に示した記載内容及び図示内容に対して、不要な部分を削除したり、新たな要素を追加したり、置き換えたりしてもよいことはいうまでもない。また、錯綜を回避し、本開示の技術に係る部分の理解を容易にするために、以上に示した記載内容及び図示内容では、本開示の技術の実施を可能にする上で特に説明を要しない技術常識等に関する説明は省略されている。
本明細書において、「A及び/又はB」は、「A及びBのうちの少なくとも1つ」と同義である。つまり、「A及び/又はB」は、Aだけであってもよいし、Bだけであってもよいし、A及びBの組み合わせであってもよい、という意味である。また、本明細書において、3つ以上の事柄を「及び/又は」で結び付けて表現する場合も、「A及び/又はB」と同様の考え方が適用される。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願及び技術規格は、個々の文献、特許出願及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。