JP7357163B2 - 重合体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、重合体の製造方法に関する。
ポリオキサゾリン等、種々の重合体を製造する方法として、単量体を様々な方法で重合させる技術が知られている。例えば、ポリオキサゾリンは、オキサゾリンモノマーをリビングカチオン重合することによって調製される。当該リビングカチオン重合は、オキサゾリンモノマー、重合開始剤、および溶媒を含む溶液を、ヒータ等により加熱しながら行うことが一般的である。
しかしながら、当該方法では、混合液全体の温度が高まることで、重合開始剤やオキサゾリンモノマーの反応点の温度が高まり、反応が進行する。つまり、当該方法では、反応に寄与しない溶媒の温度も高める必要がある。したがって、熱効率が悪く、所望の反応に時間がかかる、等の課題があった。
これに対し、単量体や重合開始剤、溶媒等を含む溶液に、マイクロ波を照射し、より短時間で単量体を重合させる方法も提案されている(非特許文献1)。
Macromolecules,2005,38,p5025-5034
しかしながら、非特許文献1に記載されているような、一般的なマイクロ波の照射では、オキサゾリンモノマーの反応点であるカチオン部位ではなく、溶媒にエネルギーが伝わりやすい。そのため、当該方法においても、溶媒から間接的にカチオン部位に熱が伝わって、反応が進行する。したがって、非特許文献1の方法では、反応効率を高めることが難しかった。
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものである。すなわち、各種単量体を効率よく反応させることが可能である、新規な製造方法の提供を目的とする。
本発明の一態様に係る重合体の製造方法は、単量体、重合開始剤、および溶媒を含む混合液に電磁波を照射して、前記単量体をイオン重合させる工程を含み、前記電磁波の周波数は、1MHz以上1000MHz以下であり、かつ前記電磁波を前記溶媒のみに対して照射したとき、プローブ法にて測定される誘電正接が0.05未満となり、前記電磁波を前記混合液に対して照射したとき、プローブ法にて測定される誘電正接が0.05以上となる周波数である。
本発明の重合体の製造方法によれば、各種単量体を効率よく反応させることが可能である、新規な製造方法を提供できる。
図1Aは、本発明の一態様に係る重合体の製造方法に使用可能な反応装置の一例を示す模式図である。 図1Bは、図1Aに示す反応装置の電磁波照射部の断面の模式図である。 図2Aは、アセトニトリルに電磁波を照射したときの電磁波の周波数と、プローブ法にて測定される比誘電率および誘電正接(tanδともいう)との関係を示すグラフである。 図2Bは、アセトニトリルおよび2-エチル-2-オキサゾリンを含む混合液に電磁波を照射したときの電磁波の周波数と、プローブ法にて測定される比誘電率および誘電正接との関係を示すグラフである。 図3は、アセトニトリル、2-エチル-2-オキサゾリン、およびp-トルエンスルホン酸メチルを含む混合液に電磁波を照射したときの電磁波の周波数と、プローブ法にて測定される比誘電率および誘電正接との関係を示すグラフである。 図4Aは、クロロホルムに電磁波を照射したときの電磁波の周波数と、プローブ法にて測定される比誘電率および誘電正接との関係を示すグラフである。 図4Bは、クロロホルム、2-エチル-2-オキサゾリン、およびp-トルエンスルホン酸メチルを含む混合液に電磁波を照射したときの電磁波の周波数と、プローブ法にて測定される比誘電率および誘電正接との関係を示すグラフである。 図5Aは、ジメチルスルホキシドに電磁波を照射したときの電磁波の周波数と、プローブ法にて測定される比誘電率および誘電正接との関係を示すグラフである。 図5Bは、ジメチルスルホキシド、2-エチル-2-オキサゾリン、およびp-トルエンスルホン酸メチルを含む混合液に電磁波を照射したときの電磁波の周波数と、プローブ法にて測定される比誘電率および誘電正接との関係を示すグラフである。
本発明の一態様に係る重合体の製造方法は、単量体、重合開始剤、および溶媒を含む混合液に電磁波を照射して、単量体をイオン重合させる工程を含む。以下では、単量体をイオン重合させる工程をイオン重合工程と称することもある。イオン重合工程で混合液に照射する電磁波の周波数は、1MHz以上1000MHz以下である。また、イオン重合工程で照射する電磁波の周波数は、当該電磁波を上記溶媒のみに対して照射したときには、プローブ法にて測定される誘電正接が0.05未満となる周波数であって、当該電磁波を混合液に対して照射したときには、プローブ法にて測定される誘電正接が0.05以上となる周波数である。
本発明のイオン重合工程で照射する電磁波の周波数は、従来のオキサゾリンモノマーのリビングカチオン重合等に使用されてきた電磁波の周波数である、例えば2.45GHzと比較して非常に低い。従来の高周波数の電磁波では、単量体の反応部位のみを加熱することが難しく、溶媒等にもエネルギーが伝わってしまっていた。また、このような高周波数では、電磁波が浸透する距離が短く、反応容器をスケールアップした場合に、反応を十分に生じさせ難い、という課題もあった。
これに対し、本発明では、照射する電磁波の周波数を比較的低周波数である1MHz以上1000MHz以下とする。また、当該周波数を、溶媒が吸収し難い周波数、すなわち溶媒のみに対して電磁波を照射したとき、プローブ法にて測定される誘電正接が0.05未満となる周波数とする。そしてさらに、当該周波数を、重合開始剤および単量体の反応部位が吸収しやすい周波数、すなわち混合液に対して電磁波を照射したとき、プローブ法にて測定される誘電正接が0.05以上となる周波数とする。本発明では、このような周波数の電磁波を照射するため、単量体の反応部位に局所的にエネルギーを吸収させることができ、少ないエネルギー量で効率よくイオン重合させることが可能となる。また、低周波数の電磁波は、浸透距離が長い。したがって、重合装置のスケールアップをしやすい、という利点もある。
ここで、本発明の重合体の製造方法は、単量体をイオン重合によって重合する反応を含む重合体の製造方法であれば適用可能であり、カチオン重合およびアニオン重合のいずれにも使用できる。また特に、これらの中でもリビングカチオン重合に特に好適である。以下、本発明の重合体の製造方法のイオン重合工程、およびこれに適用可能な反応装置について、詳しく説明する。
(1)イオン重合工程
イオン重合工程に際し、まず、単量体と重合開始剤と、溶媒と、を含む混合液を準備する。混合液は、本発明の目的および効果を損なわない範囲において、これらの成分以外の成分を含んでいてもよい。各成分の混合順序は特に制限されず、全ての成分を一度に混合してもよく、一部の成分を先に混合し、後から残りの成分を混合してもよい。
本発明の製造方法に使用する単量体は、カチオン重合またはアニオン重合が可能であり、好ましくはリビングカチオン重合またはリビングアニオン重合が可能な構造を有する単量体であればよい。当該単量体は、通常モノマーであるが、オリゴマー等であってもよい。また、単量体は開環重合する単量体であってもよい。
単量体の具体例には、2-エチル-2-オキサゾリン、2-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロピル-2-オキサゾリン、2-シクロプロピル-2-オキサゾリン、2-ノニル-2-オキサゾリン、2-フェニル-2-オキサゾリン、および2-(m-ジフルオロフェニル)-2-オキサゾリン等のオキサゾリン系化合物;環状ビニルシラザン;フマル酸ジイソプロピル;ε-カプロラクトン;L-ラクチド;トリメチレンカーボネート;p-ジオキサノン;、ならびに[2.2]パラシクロファン等のカチオン開環重合、またはカチオン重合する単量体であってもよく、スチレン等のスチレン系化合物;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、およびフルオロアルキル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート系化合物;ビニルアルコール;ビニルエーテル;ビニルアセテート等のビニルエステル系化合物;N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、ジアルデヒドアンモニウムクロライド、N-ベンゼンスルホンアミドマレイミド、N-(メタ)アクリロイル-フェニルアミン等の含窒素系化合物;並びにシアノアクリレートなどのカチオン重合、またはアニオン重合する単量体であってもよい。なお、本明細書において(メタ)アクリレートとは、アクリレートまたはメタクリレート、もしくはこれらの両方を表す。混合液は、単量体を一種のみ含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。
上記単量体の中でも、反応温度を比較的高く設定でき、電磁波照射による加熱を適用しやすいという理由でオキサゾリン系化合物が好ましく、特に反応性等の観点で、2-エチル-2-オキサゾリン、2-メチル-2-オキサゾリン、および2-イソプロピル-2-オキサゾリンなどのカチオン開環重合する化合物が好ましい。
一方、単量体を重合する際に使用する重合開始剤は、電磁波の照射を受けて活性化し、上記単量体をイオン重合させることが可能な化合物であればよく、上記単量体の種類や、所望の反応性に合わせて適宜選択される。例えば、カチオン重合に使用する重合開始剤の例にはヨウ化メチル等のハロゲン化アルキル;、メチルトリフラート、およびフルオロ硫酸メチル;p-トルエンスルホン酸メチル、およびp-ニトロベンゼンスルホン酸メチルなどのトシラートおよびその誘導体;、塩化ベンジル、および臭化ベンジルなどの酸ハロゲン化物;、過塩素酸、硫酸、および臭化水素等のプロトン酸;、並びに、三フッ化ホウ素、および塩化アルミニウム等のルイス酸が含まれる。また、プレニルテトラメチレンスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、N-メチル-エチルオキサゾリン-メチルスルフェート、3,3-ジエトキシ-1-プロパノール、パーフルオロブチルエチレントリフラート、および/またはヨウ素等が含まれていてもよい。アニオン重合に使用する重合開始剤の例には、Li、n-ブチルリチウム、Grignard試薬、NaOH、および/または水等が含まれる。混合液は、重合開始剤を一種のみ含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。
ここで、単量体のモル量/重合開始剤のモル量で表される、混合液中の単量体と、重合開始剤とのモル比は、10~500が好ましく、15~200がより好ましい。単量体と重合開始剤とのモル比が当該範囲であると、電磁波を照射したときに、重合反応が十分に生じやすい。
また、溶媒は、上記単量体および重合開始剤を十分に溶解もしくは分散可能であれば特に制限されず、上述の単量体の種類や、重合開始剤の種類に合わせて適宜選択される。溶媒の例には、水;エタノール等のプロトン性有機溶媒;キシレン、トルエン、ベンゼン、およびシクロヘキサンなどの非極性溶媒;、ジエチルエーテル、ノナフルオロブチルエチルエーテル、クロロベンゼン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒が含まれる。
溶媒の量は、混合液の総量に対して、10~90質量%が好ましく、40~70質量%がより好ましい。溶媒の量が当該範囲であると、イオン重合反応を効率よく行うことができる。
また、上記混合液に電磁波を照射する装置は、混合液に所望の電磁波を所望の強度で照射可能であれば特に制限されず、公知の電磁波照射装置であってもよいが、後述の反応装置を用いることが特に好ましい。
ここで、上記混合液に対する電磁波の周波数は、上述のように、1MHz以上1000MHz以下であって、当該電磁波を上記溶媒のみに対して照射したとき、プローブ法にて測定される誘電正接が0.05未満となり、当該電磁波を混合液に対して照射したとき、プローブ法にて測定される誘電正接が0.05以上となる周波数であれば特に制限されない。
当該周波数は、以下のように決定できる。イオン重合工程を行う前に、上記混合液に使用する溶媒、および混合液をそれぞれ準備する。そして、当該溶媒および混合液に、それぞれ周波数を1MHzから1000MHz、測定の容易さから、好ましくは1MHzから500MHz、さらに好ましくは、10~400MHzまで変更しながら電磁波を照射する。そして、プローブ法により、このときの誘電正接を測定する。そして、溶媒のみに電磁波を照射した場合には、誘電正接が0.05以下となり、混合液に対して電磁波を照射した場合には、誘電正接が0.05以上となる周波数の領域を特定する。そして、特定された周波数の領域の中から、さらに混合液の誘電正接が好ましい値を示す、適宜周波数を選択することができる。
なお、上記誘電正接をプローブ法で測定する際の溶媒および混合液の温度は、イオン重合工程における混合液の温度と略同等が好ましい。ただし、イオン重合を還流しながら行う場合、すなわち溶媒の沸点以上の温度でイオン重合を行う場合には、当該温度で誘電正接を測定することが難しい。そこで、このような場合には、溶媒および混合液の両方の誘電正接を、イオン重合時の混合液の温度より低い温度、例えば室温等として20℃で測定してもよい。また、例えば、溶媒に電磁波照射するときにおいては、当該溶媒の沸点以下の温度で加熱し、かつ混合液に電磁波照射するときにおいては、重合時の反応熱を考慮し、溶媒の沸点以上の温度となる条件において加熱できるように、溶媒および混合液への電磁波の照射条件を設定してもよい。ここで、溶媒および混合液のそれぞれにおける、照射する電磁波における入力電力と反射電力との差と、反射電力/入力電力とは互いに等しくなるように設定するとよい。
ここで、溶媒のみに対して電磁波を照射したときの誘電正接は、溶媒が吸収する電磁波の量と比例する。つまり、溶媒に電磁波を照射したときの誘電正接が小さければ小さいほど、溶媒が電磁波を吸収し難くなる。そのため、電磁波の周波数は、溶媒のみに電磁波を照射したとき、誘電正接が0.05未満であり、0.03以下となる周波数がより好ましく、0.01以下となる周波数がさらに好ましい。
一方、混合液に対して電磁波を照射したときの誘電正接は、単量体および溶媒単独の作用に加えて、単量体と重合開始剤との反応によって生じたイオンによる吸収の寄与も新たに反映した値となる。つまり、混合液に電磁波を照射したときの、イオンによる吸収の寄与に起因する誘電正接が大きければ大きいほど、単量体の反応部位が電磁波を吸収し、反応が効率的に進む。このことは、後述の参考例1に示すように、溶媒と単量体とを含む混合液に、電磁波を照射した場合の誘電正接が、溶媒単体に電磁波を照射した場合の誘電正接と大きく変わらず、溶媒と単量体と重合開始剤とを混合して初めて誘電正接が大きく変化すること等から裏付けられる。したがって、反応効率の観点で、混合液に電磁波を照射したときの誘電正接は大きいことが好ましく、誘電正接が0.05以上であり、0.08以上となる周波数がより好ましく、0.1以上となる周波数がさらに好ましく、0.2以上となる周波数が最も好ましい。また、限定されるものではないが、混合液が導体としての性質を顕著に示すことによる放電を回避するという観点で、混合液に対して電磁波を照射したときの誘電正接は、3.0以下であることが好ましい。なお、誘電正接が1.0を超えるのは、混合液における見かけ上の誘電正接が電気の流れを反映した値になるためである。
また、イオン重合工程において電磁波照射することで加熱される混合液の温度は特に制限されず、溶媒の沸点未満、好ましくは40~80℃であってもよく、溶媒の沸点以上であってもよい。電磁波の照射によって、混合液の温度が溶媒の沸点以上となる場合には、溶媒を還流しながら電磁波照射することが好ましい。電磁波の照射によって、溶媒が沸騰していても、イオンにはそれ以上のエネルギー供給が可能であるため、溶媒の沸点以上で行うのがより好ましい。なお、電磁波照射による加熱のときにおける温度は、照射する電磁波における入力電力と反射電力との差、および反射電力/入力電力を調整することで調整すればよい。
また、イオン重合工程において電磁波照射しているときにおける雰囲気の圧力は特に制限されず、常圧であってもよく、減圧下であってもよく、加圧下であってもよい。特に、混合液を保持する容器の制約が少ない、という点で常圧下が特に好ましい。
また、電磁波の照射時間、すなわち単量体の重合時間は、単量体の種類や量、重合度に応じて適宜選択されるが、1~600分が好ましく、1~300分がより好ましい。
また、イオン重合工程における雰囲気は特に制限されず、例えば窒素やアルゴン等、不活性ガス環境下で行ってもよく、空気中で行ってもよい。単量体や重合開始剤の種類等に合わせて適宜選択される。
さらにイオン重合工程後、必要に応じてクエンチしたり、得られた重合体を精製したりしてもよい。
(2)反応装置
上述のように、混合液に電磁波を照射して、単量体をイオン重合させる装置は、公知の反応装置であってもよいが、以下の反応装置を用いることがより好ましい。以下の装置によれば、上述のイオン重合工程を、効率よく行うことができる。
上記イオン重合工程に用いる反応装置の模式図を図1Aに示す。図1Aに示すように、反応装置10は、電磁波を発振するための電磁波発振部1と、上述の混合液を保持し、単量体を反応させるための反応部2と、反応部2に入射する電磁波の入力電力、および反応部2から反射される電磁波の反射電力を監視するモニター3a、ならびに反射電力を調整するためのLC共振回路(図示せず)、を備えるインピーダンス調整部3と、を有する。
電磁波発振部1は、シグナルジェネレーター1aおよび増幅器1bを備える。シグナルジェネレーター1aは、周波数1MHzから1000MHzの電磁波を発生させるための部材であり、所望の周波数の電磁波を発振可能であれば、その種類は特に制限されない。また、増幅器1bは、シグナルジェネレーター1aから発振された電磁波を、所望の電力まで増幅させるための部材であり、公知の増幅器を使用できる。
一方、反応部2は、上述の混合液を保持するための混合液保持部2aやこれに接続された還流部(図示せず)、電磁波発振部1と導波管等によって接続された電磁波照射部2b等から構成される。また、必要に応じて、反応部2は、混合液の温度を測定するための温度計(図示せず)をさらに有していてもよい。混合液保持部2aは、上述の混合液を保持可能であり、かつ電磁波照射の影響を受け難い材料で構成されていることが好ましい。例えば、ガラス製の混合液保持部等とすることができる。また、図1Aでは、混合液保持部2aを一方が閉塞された円筒状の部材としているが、混合液保持部2aの構造は、当該構造に限定されない。
また、電磁波照射部2bは、その内部に、混合液保持部2aの少なくとも一部、言い換えれば、混合液が保持された領域を固定するための固定部(図示せず)と、電磁波発生部1から発振された電磁波を内部に入射させ、混合液保持部2a内の混合液に当該電磁波を照射するための構造(図示せず)と有する。図1Bに、電磁波照射部2bを、混合液保持部2aの長さ方向に直交するように切断した時の断面の模式図を示す。図1Bに示すように、電磁波照射部2b内には、混合液保持部2aを挟むように、後述のインピーダンス調整部3の平行平板3bも配置される。
インピーダンス調整部3は、電磁波発振部1から反応部2に入射する電磁波の電力(入力電力)、および反応部2から反射される電磁波の電力(反射電力)を監視するモニター3aと、可変コンデンサ(図示せず)およびコイル(図示せず)が組み合わされたLC共振回路(図示せず)と、を少なくとも有し、図1Aに示す反応装置では、さらに、電荷を蓄え、交番電場をその平板間に発生させるための平行平板3bを有する。インピーダンス調整部3は、モニター3aに接続された演算部(図示せず)をさらに有していてもよい。LC共振回路の可変コンデンサは、二枚で一組の扇形の極板(図示せず)を二組有し、当該二組の扇形の極板のそれぞれにおいて、二枚の内の片方の極板を、2つのハンドル2cそれぞれのつまみに合わせて回転させることで、両極板間の電気容量を変化させる。二枚で一組の平行平板3bは、上述のように、反応部2の電磁波照射部2b内にて互いに対向するように配置され、混合液保持部2aを挟持する。また、インピーダンス調整部3が演算部を有する場合、演算部によって、モニター3aで計測された入力電力に対する反射電力の量を演算し、出力することができる。
このような反応装置10で上述のイオン重合を行う場合、まず、電磁波発生部1のシグナルジェネレーター1aから、イオン重合反応に望ましい周波数の電磁波、言い換えればイオン重合工程で説明した方法によって決定される周波数の電磁波を発振し、増幅器1bに伝える。そして、当該増幅器1bは、当該信号を増幅させて、所望の電力に調整する。そして、当該電磁波を、反応部2の電磁波照射部2b側に出射させる。このとき、インピーダンス調整部3のモニター3aが、電磁波発生部1から反応部2に向かう、より具体的には、増幅器1bから電磁波照射部2bに向かう、電磁波の電力を監視する。
そして、電磁波照射部2bに配置された混合液保持部2a内の混合液に、電磁波が照射される。このとき、反応部2では、必要に応じて還流等を行ってもよく、さらに混合液保持部2a内の圧力を調整したりしてもよい。上記電磁波照射中、インピーダンス調整部3のモニター3aが、電磁波照射部2bから出射する反射電力を監視する。
そして、モニター3aに接続された演算部(図示せず)が、入力電力に対する反射電力の量を反射電力/入力電力として算出する。そして、当該値が0.4未満である場合には、そのままの条件で、電磁波の照射を続ける。一方で、反射電力/入力電力の値が0.4以上である場合には、自動もしくは手動で、電磁波照射部2bの外部に取り付けられたハンドル2cを操作し、可変コンデンサが備える二組の極板位置を調整する。これにより、可変コンデンサの静電容量が変化し、インピーダンス、ひいては反射電力/入力電力の値が調整される。
反射電力/入力電力の値が0.4以上になると、電磁波は効率よく反応部2の混合液に伝わらず、電磁波発生部1側に戻る電力(反射電力)が支配的になってしまう。つまり、効率的な反応が阻害される。またこの場合、電磁波発生部1(特にシグナルジェネレーター1a)が損傷する危険性がある。
なお、重合反応の進行とともに回路のインピーダンスは変化するため、可変コンデンサで静電容量を適宜調整して、反射電力/入力電力の値が0.4未満になるように常に維持することが好ましい。これらの機構を備えることにより、反応容器の内径が、センチメートルオーダーという大容量のスケールにおいても、1~1000MHzの電磁波の照射が可能となる。
このため、反応容器をスケールアップしても、例えば2.45GHzという一般的なマイクロ波の周波数では電磁波が浸透する距離が短いために、混合液内で電磁波が十分に届かず、反応速度を高め難い、という課題も解決できる。
〔まとめ〕
以上のように、本願の一態様(態様1)に係る重合体の製造方法は、単量体、重合開始剤、および溶媒を含む混合液に電磁波を照射して、前記単量体をイオン重合させる工程を含み、前記電磁波の周波数は、1MHz以上1000MHz以下であり、かつ、前記電磁波を前記溶媒のみに対して照射したとき、プローブ法にて測定される誘電正接が0.05未満となり、前記電磁波を前記混合液に対して照射したとき、プローブ法にて測定される誘電正接が0.05以上となる周波数である。
また、本願の態様2に係る重合体の製造方法は、上記態様1において、前記単量体をイオン重合させる工程で、前記単量体を、アニオン重合またはカチオン重合させるとよい。
また、本願の態様3に係る重合体の製造方法は、上記態様1または態様2において、前記単量体をイオン重合させる工程で、前記単量体を、リビングカチオン重合させるとよい。
また、本願の態様4に係る重合体の製造方法は、上記態様1~3のいずれか1つの態様において、前記単量体をイオン重合させる工程を、常圧下で行うとよい。
また、本願の態様5に係る重合体の製造方法は、上記態様1~4のいずれか1つの態様において、前記単量体をイオン重合させる工程を、還流下で行うとよい。
また、本願の態様6に係る重合体の製造方法は、上記態様1~5のいずれか1つの態様において、前記混合液を保持し、前記単量体をイオン重合させるための反応部と、前記反応部に前記電磁波を発振するための電磁波発振部と、前記反応部に入射する前記電磁波の入力電力および前記反応部から反射される前記電磁波の反射電力を監視するモニター、ならびに前記反射電力を調整するためのLC共振回路、を備えるインピーダンス調整部と、を有する反応装置を準備する工程をさらに有し、前記単量体をイオン重合させる工程において、前記反応部に保持された前記混合液に、前記電磁波発振部から発振された前記電磁波を照射すると共に、前記インピーダンス調整部で前記入力電力に対する前記反射電力の値が0.4未満になるように調整するとよい。
以下において、実施例を参照して本発明をより詳細に説明する。これらの実施例によって、本発明の範囲は限定して解釈されない。
[参考例1]
アセトニトリル(溶媒)のみと、アセトニトリル(溶媒)および2-エチル-2-オキサゾリン(単量体)を含む混合液Aと、アセトニトリル(溶媒)、2-エチル-2-オキサゾリン(単量体)、およびp-トルエンスルホン酸メチル(重合開始剤)を含む混合液Bとをそれぞれ試験管に準備した。そして、室温および60℃において、これらに電磁波を照射し、プローブ法にて比誘電率(ε’)および誘電正接(tanδ)をそれぞれ測定した。電磁波の照射は、図1Aに示す反応装置10にて行った。得られた結果を図2A(アセトニトリルのみ)、図2B(混合液A)、および図3(混合液B)に示す。なお、比誘電率および誘電正接は、標準試料として、20℃の水を用い、室温および60℃のそれぞれの条件において比誘電率・誘電正接測定装置(キーコム社製)を用いて測定した。
溶媒のみに電磁波を照射した場合((図2A)と、溶媒および単量体のみを含む混合液Aに電磁波を照射した場合(図2B)とのグラフを比較すると、これらは同様の挙動を示した。具体的には、10MHz~1000MHzにおいて、いずれも誘電正接が非常に小さい値であった。これに対し、溶媒、単量体、および重合開始剤を含む混合液Bに電磁波を照射した場合、誘電正接の値が非常に高まった(図3)。当該結果から、単量体にカチオンが生じると、誘電正接の値が高まるといえる。
[参考例2]
クロロホルム(溶媒)のみと、クロロホルム(溶媒)、2-エチル-2-オキサゾリン(単量体)、およびp-トルエンスルホン酸メチル(重合開始剤)を含む混合液とを準備した。そして、室温(20℃)において、これら溶媒と混合液とのそれぞれに電磁波を照射し、プローブ法にて比誘電率および誘電正接(tanδ)をそれぞれ測定した。電磁波の照射は、図1Aに示す反応装置10にて行った。得られた結果を図4A(クロロホルムのみ)および図4B(混合液)に示す。
溶媒のみに電磁波を照射した場合、10MHz~1000MHzにおいて、誘電正接が低かった(図4A)。これに対し、溶媒、単量体、および重合開始剤を含む混合液に電磁波を照射した場合、一部の周波数では誘電正接の値が非常に高まった(図4B)。
[参考例3]
ジメチルスルホキシド(溶媒)のみと、ジメチルスルホキシド(溶媒)、2-エチル-2-オキサゾリン(単量体)、およびp-トルエンスルホン酸メチル(重合開始剤)を含む混合液とを準備した。そして、20℃の室温において、これらに電磁波を照射し、プローブ法にて比誘電率および誘電正接をそれぞれ測定した。電磁波の照射は、図1Aに示す反応装置10にて行った。結果を図5A(クロロホルムのみ)および図5B(混合液)に示す。
溶媒のみに電磁波を照射した場合、10MHz~1000MHzにおいて、誘電正接が低かった(図5A)。これに対し、溶媒、単量体、および重合開始剤を含む混合液に電磁波を照射した場合、一部の周波数では、誘電正接の値が高まった。
[実施例1]
単量体である2-エチル-2-オキサゾリン(EtOx)4.00g、重合開始剤であるp-トルエンスルホン酸メチル(TsOMe)0.24g、重合溶媒であるアセトニトリル4.76gを混合し、外径16mm、高さ194mmの石英試験管(混合液保持部2a)に導入した。2-エチル-2-オキサゾリンのp-トルエンスルホン酸メチルに対するモル比([EtOx]/[TsOMe])は30であり、2-エチル-2-オキサゾリンの濃度[EtOx]は6.7mol/Lであった。上記試験管に還流冷却器をつけ、光ファイバー温度計を溶液に挿入し、系全体をアルゴン置換した。
当該石英試験管(混合液保持部2a)を、図1Aに示す反応装置10の電磁波照射部2b内の固定部(図示せず)に固定した。そして、シグナルジェネレーター1aにより適宜周波数を調整しつつ26~28MHzの周波数の電磁波を発振した。照射する電磁波の周波数は、図2Aのグラフから、60℃の溶媒に電磁波を照射した場合に誘電正接が0.05未満となる範囲を抽出し、図3のグラフから、60℃の混合液に電磁波を照射した場合に誘電正接が0.05以上となる周波数を抽出した。さらに、これらの両方を満たす領域を特定し、その中から選択した。
そして、シグナルジェネレーター1aから発振された上記周波数の電磁波を、増幅器1bにより30Wまで増幅させて、電磁波照射部2b側に出射させた。そして、モニター3aにて、電磁波発振部1から反応部2に向かう電磁波の入力電力と、反応部2から出射する反射電力とを測定し、反射電力/入力電力の値が0~0.15の範囲を維持するように、インピーダンス調整部3の可変コンデンサにおける扇形の極板間の面積を調整し、これにより静電容量を調整した。
そして、常に入力電力と反射電力との差が30Wとなるように、つまり反応部2に供給されるエネルギーが30Wとなるようにした。電磁波照射開始時点において、電磁波の発振周波数は26.67MHzであり、入力電力は30.05Wであり、反射電力は0.05Wであった。2分後に光ファイバー温度計が示す混合液の温度は90℃となり、混合液が沸騰した。その時点における発振周波数は26.82MHzであり、入力電力は35Wであり、反射電力は5Wであった。そして、温度計が90℃を示してから30分間、60分間、および90分間それぞれ反応を行った。
反応終了後、室温まで空冷し、NaOHの1%メタノール溶液でクエンチし、ジエチルエーテル、水による抽出操作を行い、水層に移動する生成物を回収した。そして、真空乾燥により回収物中の水分を飛ばした。その後、重量を測定し、収率を計算した。各反応時間としたときの収率を表1に示す。
[実施例2]
シグナルジェネレーター1aより、198~202MHzの周波数の電磁波を発振した以外は実施例1と同様に混合液に電磁波を照射した。当該周波数も、図2Aのグラフにおいて、誘電正接が0.05未満となる範囲、かつ図3Aのグラフにおいて、誘電正接が0.05以上となる周波数から選択した。また、この場合も、可変コンデンサで静電容量を適宜調整し、反射電力/入力電力の値が0.15以下になるように調整した。また、入力電力と反射電力との差は、常に30Wとした。
電磁波照射開始時点において、電磁波の発振周波数は198.9MHzであり、入力電力は30.1Wであり、反射電力は0.1Wであった。電磁波照射開始から2分後、光ファイバー温度計が示す温度が90℃となり、混合液が沸騰した。その時点における発振周波数は199.2MHzであり、入力電力は35Wであり、反射電力は5Wであった。そして、温度計が90℃を示してから30分間、60分間、および90分間それぞれ反応を行った。各反応時間における収率を表1に示す。
[比較例1]
単量体である2-エチル-2-オキサゾリン(EtOx)2.64g、重合開始剤であるp-トルエンスルホン酸メチル(TsOMe)0.16g、重合溶媒であるアセトニトリル3.12gを混合し、外径16mm、高さ194mmの石英試験管に導入した。前記2-エチル-2-オキサゾリンのp-トルエンスルホン酸メチルに対するモル比([EtOx]/[TsOMe])は30であり、2-エチル-2-オキサゾリンの濃度[EtOx]は6.7mol/Lであった。
試験管に還流冷却器をつけ、系全体をアルゴン置換した。熱電対で測定した温度が90℃であるオイルバスにより、上記石英試験管を加熱した。2分後には混合液が沸騰した。当該状態になってから30分間、60分間、および150分間それぞれ反応を行った。各反応時間における収率を表1に示す。
[比較例2]
単量体である2-エチル-2-オキサゾリン(EtOx)4.00g、重合開始剤であるp-トルエンスルホン酸メチル(TsOMe)0.24g、重合溶媒であるアセトニトリル4.76gを混合し、外径16mm、高さ194mmの石英試験管に導入した。前記2-エチル-2-オキサゾリンのp-トルエンスルホン酸メチルに対するモル比([EtOx]/[TsOMe])は30であり、2-エチル-2-オキサゾリンの濃度[EtOx]は6.7mol/Lであった。
上記石英試験管に還流冷却器をつけ、系全体をアルゴン置換した。温度は赤外放射温度計を用いて測定した。そして、富士電波工機社製の半導体式電磁波発振器(矩形導波管型共振器)の電場最大点に上記石英試験管を設置して、2.45GHzの電磁波を照射した。なお、当該半導体式電磁波発振器において、TE103シングルモードを採用した。当該半導体式電磁波発振器は、スリースタブチューナー、アイリス、およびプランジャーを備えた共振器、半導体式電磁波発振器、ならびに入力電力および反射電力を監視するモニターから構成される。
そして、当該半導体式電磁波発振器より30W、2.45GHzの電磁波を発振しつつ、スリースタブチューナーおよびプランジャーを調節することで、反射電力を0.1W未満に抑えた。電磁波照射2分後に、赤外放射温度計が示す温度が90℃となり、混合液が沸騰した。そして、温度計が90℃を示してから30分間、60分間、および90分間それぞれ反応を行った。各反応時間における収率を表1に示す。なお、2.45GHzにおける、誘電正接は図2Aおよび図3のグラフ(60℃)から求めた。
Figure 0007357163000001
上記表1に示されるように、単量体、重合開始剤、および溶媒を含む混合液に1MHz以上1000MHz以下であり、かつ電磁波を前記溶媒のみに対して照射したとき、プローブ法にて測定される誘電正接が0.05未満となり、電磁波を前記混合液に対して照射したとき、プローブ法にて測定される誘電正接が0.05以上となる周波数の電磁波を照射した場合(実施例1および2)、オイルバスを用いて加熱してイオン重合した場合(比較例1)と比較して、収率が格段に高かった。
また、たとえ電磁波を照射した場合であっても、その周波数が2.45GHzである場合(比較例2)には、オイルバスを用いた場合の収率と大きな差がなかった。
本発明の一態様に係る重合体の製造方法によれば、各種単量体を効率よく反応させることが可能である。したがって、各種重合体の製造方法に非常に有用である。
1 電磁波発生部
1a シグナルジェネレーター
1b 増幅器
2 反応部
2a 混合液保持部
2b 電磁波照射部
2c ハンドル
3 インピーダンス調整部
3a モニター
3b 平行平板
10 反応装置

Claims (6)

  1. 単量体、重合開始剤、および溶媒を含む混合液に電磁波を照射して、前記単量体をイオン重合させる工程を含み、
    前記電磁波の周波数は、
    1MHz以上1000MHz以下であり、かつ
    前記電磁波を前記溶媒のみに対して照射したとき、プローブ法にて測定される誘電正接が0.05未満となり、前記電磁波を前記混合液に対して照射したとき、プローブ法にて測定される誘電正接が0.05以上となる周波数である、
    重合体の製造方法。
  2. 前記単量体をイオン重合させる工程で、前記単量体を、アニオン重合またはカチオン重合させる、
    請求項1に記載の重合体の製造方法。
  3. 前記単量体をイオン重合させる工程で、前記単量体を、リビングカチオン重合させる、
    請求項2に記載の重合体の製造方法。
  4. 前記単量体をイオン重合させる工程を、常圧下で行う、
    請求項1~3のいずれか一項に記載の重合体の製造方法。
  5. 前記単量体をイオン重合させる工程を、還流下で行う、
    請求項1~4のいずれか一項に記載の重合体の製造方法。
  6. 前記混合液を保持し、前記単量体をイオン重合させるための反応部と、
    前記反応部に前記電磁波を発振するための電磁波発振部と、
    前記反応部に入射する前記電磁波の入力電力および前記反応部から反射される前記電磁波の反射電力を監視するモニター、ならびに前記反射電力を調整するためのLC共振回路、を備えるインピーダンス調整部と、
    を有する反応装置を準備する工程をさらに有し、
    前記単量体をイオン重合させる工程において、前記反応部に保持された前記混合液に、前記電磁波発振部から発振された前記電磁波を照射すると共に、前記インピーダンス調整部で前記入力電力に対する前記反射電力の値が0.4未満になるように調整する、
    請求項1~5のいずれか一項に記載の重合体の製造方法。
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