JP7355368B2 - 哺乳動物初期胚の凍結保存方法 - Google Patents

哺乳動物初期胚の凍結保存方法 Download PDF

Info

Publication number
JP7355368B2
JP7355368B2 JP2019133275A JP2019133275A JP7355368B2 JP 7355368 B2 JP7355368 B2 JP 7355368B2 JP 2019133275 A JP2019133275 A JP 2019133275A JP 2019133275 A JP2019133275 A JP 2019133275A JP 7355368 B2 JP7355368 B2 JP 7355368B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
embryos
embryo
solution
thawing
rate
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2019133275A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2021016336A (ja
Inventor
信輔 関
康義 福田
和俊 西島
恵太 場▲崎▼
愛美 矢野
孝弘 小畑
美沙子 東谷
恭一 尾野
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Akita University NUC
Original Assignee
Akita University NUC
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Akita University NUC filed Critical Akita University NUC
Priority to JP2019133275A priority Critical patent/JP7355368B2/ja
Publication of JP2021016336A publication Critical patent/JP2021016336A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7355368B2 publication Critical patent/JP7355368B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)

Description

本発明は、凍結保存後の哺乳動物初期胚を融解する方法や、凍結保存された哺乳動物初期胚を含む胚移植用キットに関する。
哺乳動物において、雌の生殖器から回収した受精卵(初期胚)や体外受精によって作製した胚を、レシピエント(受卵動物)に移植する胚移植技術は広く普及している。この技術において、胚は、レシピエントの性周期に応じた時期に移植する必要があるため、生存性や機能を低下させずに胚を凍結保存する技術が必要とされる。現在までに、胚の凍結保存として、緩慢法(非特許文献1)、ガラス化法(非特許文献2)、超急速ガラス化法(非特許文献3)等が知られている。
ガラス化法とは、グリセロールやエチレングリコール、DMSO(ジメチルスルホキシド)などの耐凍剤を多量に含む水溶液の凝固点降下により、氷点下でも氷晶が形成されにくくなる原理を用いたものである。この水溶液を急速に液体窒素中で冷却させると氷晶が形成されないまま固体化させることができる。また、超急速ガラス化法とは、胚を少量のガラス化液とともに液体窒素に浸漬するという方法である。ガラス化保存法を用いると、細胞内外の何れにも氷晶が生じないために凍結時及び融解時の細胞への物理的障害(凍害)を回避することができるが、ガラス化液に含まれる耐凍剤には化学的毒性があり、細胞の凍結保存時にはガラス化液が少ない方が好ましく、さらには解凍後ただちにガラス化液を希釈する必要がある。
これらガラス化保存法を用いた卵子、胚の凍結保存法としては様々なものが提案されている。例えば、特許文献1及び2には、ストローにガラス化液を充満させた中で卵子又は胚をガラス化保存させ、解凍時に素早く希釈液と接触させて再生率を向上させる試みがなされている。また、特許文献3には、卵子又は胚の周囲に付着した余分なガラス化液を濾紙などの吸収体により吸収させることにより、優れた生存性で凍結保存させる方法が開示されている。さらに、特許文献4及び5では、人の不妊治療分野で使用されているクライオトップ法という方法で、卵付着保持用ストリップとして短冊状の可撓性かつ無色透明なフィルムを使用し、該フィルム上にごく少量のガラス化液と共に卵子又は胚を顕微鏡下で付着させ、凍結保存する方法が開示されている。
しかし、クライオトップ法は一度に10個以下の少数の胚しか凍結保存できないこと、また、使用する器具が高額であるという問題点があり、ラット等の実験動物で使用することは実用的ではない。このため、胚の生存率や機能を維持しながら、より大量の胚を安価で凍結保存するための技術の開発が求められていた。
特開平5-176946号公報 特開平10-248860号公報 特開2005-40073号公報 特開2002-315573号公報 特開2006-271395号公報
Whittingham DG, Leibo SP, Mazur P: Survival of mouse embryos frozen to -196and -269℃, Science, 178, 411-141 (1972) Rall WF, Fahy GM: Ice-free cryopreservation ofmouse embryos at -196℃ by vitrification,Nature, 313, 573-575 (1985) Martino A, SongsasenN, Leibo SP: Development into blastocysts of bovineoocytes cryopreserved by ultra-rapid cooling, Biol Reprod, 54, 1059-1069 (1996)
本発明の課題は、クライオチューブ内で凍結保存された哺乳動物初期胚を、その生存率や質(例えば、胚発生能)を低下させることなく融解する方法を提供することにある。
本発明者らは、以前より上記課題を解決すべく鋭意研究を重ね、凍結保存された哺乳動物初期胚の融解速度が、融解後の胚の生存率及び質に大きな影響を及ぼす可能性を示唆してきた(Seki S and Mazur P, Cryobiology and Cryotechnology, 62, No. 2, 105-108, 2016、Seki S et al.Cryobiology, 81, 132-137, 2018)。しかし、当該技術分野においては、初期胚を含む動物細胞は、タンパク質の変性等を防ぐために生体内での温度(37~39度程度)以下の条件下で操作しなければならないと信じられており、上記文献においても、本発明者らは、融解速度を高めるために23℃又は37℃の溶液を使用するに留まっていた。
一方、本研究において、本発明者らは凍結保存されたラット及びウサギの1細胞期胚を、50℃という高温の融解用液を用いて急速融解することより、いずれの動物種においても融解後の生存率、卵割率、及び/又は発生率が向上するという予想外の実験結果を得た。本発明の融解工程においては、ラット及びウサギの1細胞期胚は一時的に50℃近い高温になるが、それでも、急速融解により胚の質が維持されたことは、当業者にとって驚くべきことである。本発明は、以上のような予想外の知見に基づいて、はじめて完成されたものである。
すなわち、本発明は、(1)凍結状態の哺乳動物初期胚を40~60℃の融解用液と接触させる融解工程を含む、凍結保存後の前記哺乳動物初期胚を融解する方法や、(2)融解用液が50℃である、上記(1)に記載の方法や、(3)融解用液がスクロースを含む溶液である、上記(1)又は(2)に記載の方法や、(4)哺乳動物初期胚が、ガラス化されたものである、上記(1)~(3)のいずれかに記載の方法や、(5)哺乳動物初期胚が、クライオチューブ内で凍結保存されている、上記(1)~(4)のいずれかに記載の方法や、(6)哺乳動物が、ラット又はウサギである、上記(1)~(5)のいずれかに記載の方法や、(7)初期胚が、1細胞期胚である、上記(1)~(6)のいずれかに記載の方法や、(8)凍結保存後の哺乳動物初期胚の生存率及び/又は発生率を改善するための、上記(1)~(7)のいずれかに記載の方法に関する。
また、本発明は、(9)凍結状態の哺乳動物初期胚を40~60℃の融解用液と接触させる融解工程を行う旨が記載された説明書が共にパッケージされた、凍結保存された哺乳動物初期胚を含む胚移植用キットや、(10)50℃の融解用液と接触させる融解工程を行う旨が記載された説明書が共にパッケージされた、上記(9)に記載のキットや、(11)スクロースを含む融解用液をさらに備える、上記(9)又は(10)に記載のキットや、(12)哺乳動物初期胚が、ガラス化されたものである、上記(9)~(11)のいずれかに記載のキットや、(13)哺乳動物初期胚が、クライオチューブ内で凍結保存されている、上記(9)~(12)のいずれかに記載のキットや、(14)哺乳動物が、ラット又はウサギである、上記(9)~(13)のいずれかに記載のキットや、(15)初期胚が、1細胞期胚である、上記(9)~(14)のいずれかに記載のキットに関する。
本発明によれば、クライオトップよりも安価なクライオチューブを用いて、哺乳動物初期胚を大量に凍結保存することが可能となる。
本発明のラット又はウサギ1細胞期胚の凍結方法の概略を示す図である。 本発明のラット又はウサギ1細胞期胚の融解方法の概略を示す図である。 凍結ラット胚の生存率及び卵割率に及ぼす融解速度の影響を示す図である。 凍結ウサギ胚の卵割率及び胚盤胞期までの発生率に及ぼす融解速度の影響を示す図である。
本発明の「凍結保存後の哺乳動物初期胚を融解する方法」としては、凍結状態の哺乳動物初期胚を40~60℃の融解用液と接触させる融解工程を含むものであれば特に制限されない(以下、かかる方法を、「本発明の方法」と称する場合がある)。上記本発明の方法は、凍結保存後の哺乳動物初期胚の生存率及び/又は発生率を改善するために用いることができ、ここで「生存率及び/又は発生率を改善する」とは、融解工程において生じる哺乳動物初期胚への物理的又は機能的な損傷を軽減し、融解後の初期胚における(i)生存率、(ii)卵割率、(iii)胚盤胞期までの発生率、又は(iv)受胎率の低下を抑制若しくは防止することを意味する。上記「哺乳動物初期胚」としては、ラット、ウサギ、マウス、ウシ、ブタ、ハムスター、イヌ、サル、ヤギ、ネコ、ヒツジ等の非ヒト哺乳動物由来の初期胚、及び/又はヒト由来の初期胚であれば特に制限されないが、非ヒト哺乳動物由来の初期胚であることが好ましく、ラット又はウサギ由来の初期胚であることがさらに好ましい。また、上記「初期胚」としては、1細胞期胚から胚盤胞段階までの発生初期段階の胚であればどのようなものであってもよいが、1細胞期胚(通常、胚発生開始後16時間以内)、2細胞期胚(通常、胚発生開始後16~24時間の範囲内)、4細胞期胚(通常、胚発生開始後約48時間)、又は8細胞期胚(通常、胚発生開始後約72時間)であることが好ましく、1細胞期胚であることが特に好ましい(以下、かかる哺乳動物初期胚を単に「胚」と称する場合がある)。
本発明の方法に用いる「胚」は、緩慢法、ガラス化法、超急速ガラス化法などの公知の方法で凍結保存されたものであれば特に制限されない。ここで、「緩慢法」とは、比較的低濃度の凍結保護剤を含む保存液中で、胚を0.3~0.5℃/分の速度で-30℃前後まで冷却した後に、液体窒素に浸漬して凍結する方法であり、大がかりな装置を用いることなく凍結保存後の胚を融解することが可能であるが、冷却過程において、細胞外に氷晶が形成され、この氷晶が胚に物理的な損傷を与えるため、胚の生存性及び受胎率が低くなる傾向があることが知られている。一方、「ガラス化法」とは、高濃度の凍結保護剤を含む保存液(ガラス化液)を用いて、胚を液体窒素に浸漬して液体窒素の温度まで急速に冷却する方法であり、また、「超急速ガラス化法」とは、胚を少量のガラス化液と共に液体窒素に浸漬する方法であり、これらの方法では、細胞内外での氷晶の形成を抑制して、細胞の内外をガラス化する方法であり、緩慢法と比較して胚の生存性及び受胎率を高く保つことができる。
したがって、本発明の方法に用いる「胚」は、ガラス化法又は超急速ガラス化法により凍結保存された胚、すなわち、細胞内に凍結保護剤が浸透するように処理された、ガラス化された胚であることが特に好ましい。上記「ガラス化液」としては、例えば、エチレングリコール、フィコール、スクロース、グリセロール、DMSO(ジメチルスルホキシド)、プロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)等の凍結保護剤を単独又は組み合わせて含有する溶液であれば特に制限されないが、エチレングリコール、フィコール、及びスクロースを組み合わせて含有するEFS溶液を特に好適に挙げることができる。また、上記「ガラス化された胚」は、上記ガラス化液に浸漬又は懸濁された状態で、クライオチューブ(低温チューブ)、クライオトップ、クライオストロー(低温ストロー)、クライオバッグ(低温バッグ)等の凍結保存用容器中に保存されていることが好ましく、クライオチューブ又はクライオトップ中に保存されていることがより好ましく、クライオチューブ中に保存されていることが特に好ましい。
本発明の方法における「融解工程」は、上記凍結保存方法によって凍結状態にある胚を、40~60℃の範囲内に保持された融解用液と接触させて、急速融解することを特徴とする。上記「融解用液」の温度としては、40~60℃の範囲内であれば特に制限されないが、例えば、42~60℃、45~60℃、47~60℃、42~57℃、45~57℃、47~57℃、42~55℃、45~55℃、47~55℃、42~53℃、45~53℃、47~53℃、48~52℃、48~51℃、49~51℃等の範囲であることが好ましく、47、48、49、50、51、52、又は53℃であることがより好ましく、50℃であることがさらに好ましい。また、上記融解工程における融解速度としては、例えば、6,800℃/分以上であることが好ましく、7,200℃/分以上であることがより好ましく、7,500℃/分以上であることがさらに好ましく、7,800℃/分以上であることが特に好ましい。
上記融解用液としては、「凍結状態の哺乳動物初期胚を融解するため」という用途に特定された液であれば特に制限されず、哺乳動物初期胚の生存が可能な液(例えば、等張液、低張液、高張液)であればよく、等張液を好適に例示することができる。本明細書において「等張液」とは、体液や細胞液の浸透圧とほぼ同じ浸透圧を有する液を意味し、具体的には、250~380mOsm/Lの範囲内の浸透圧を有する液を意味する。また、本明細書において「低張液」とは、体液や細胞液の浸透圧よりも低い浸透圧を有する液を意味し、具体的には、250mOsm/L未満の浸透圧を有する液を意味する。かかる低張液としては、細胞が破裂しない程度の低張液(具体的には、100~250mOsm/L未満の範囲内の浸透圧を有する液)が好ましい。また、本明細書において「高張液」とは、体液や細胞液の浸透圧よりも高い浸透圧を有する液を意味し、具体的には、浸透圧が380mOsm/L超(好ましくは380mOsm/L超~1000mOsm/Lの範囲内)を意味する。
上記等張液としては、体液や細胞液の浸透圧とほぼ同じになるようにナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン等によって塩濃度や糖濃度等を調整した等張液であれば特に制限されず、具体的には生理食塩水や、緩衝効果のある生理食塩水(例えば、PBS、トリス緩衝生理食塩水[Tris BufferedSaline;TBS]、HEPES緩衝生理食塩水)、リンゲル液、乳酸リンゲル液、酢酸リンゲル液、重炭酸リンゲル液、5%グルコース水溶液、動物細胞培養液(例えば、PB1、DMEM、EMEM、RPMI-1640、α-MEM、F-12、F-10、M-199)、等張剤(例えば、ブドウ糖、D-ソルビトール、D-マンニトール、ラクトース、塩化ナトリウム)等を挙げることができ、後述する本実施例において、その効果が実証されているため、PB1が好ましい。等張液は、市販のものであっても、自ら調製したものであってもよい。
上記融解用液としては、スクロース又はトレハロースを含むものが好ましく、かかるスクロースやトレハロースの濃度としては、例えば、0.2~0.7Mの範囲内、好ましくは、約0.5M(0.4~0.6Mの範囲内)である。
上記融解工程において「胚を40~60℃の融解用液と接触させる」方法としては、例えば、クライオチューブ内で凍結保存された胚を用いる場合には、該クライオチューブを液体窒素から取り出し、30~60秒、好ましくは約60秒間室温に置き、次に、上記胚を含む凍結液(例えば、ガラス化液)の10~300倍量、好ましくは200倍量の所定温度の融解用液を、上記クライオチューブに注入して胚を急速融解し、その後、37℃以下の温度に保持した融解用液等で胚を洗浄すればよい。また、例えば、クライオトップ内で凍結保存された胚を用いる場合には、該クライオトップを液体窒素から取り出し、所定温度の融解用液中に直ちに浸漬することにより胚を急速融解し、その後、37℃以下の温度に保持した融解用液等で胚を洗浄すればよい。かかる工程において、胚は一時的に40~60℃という高温に曝されるが、それにも関わらず、融解後の胚の生存率や機能は高いまま維持される(以下の実施例を参照のこと)。
さらに、本発明は、凍結保存された哺乳動物初期胚を含む胚移植用キットにも関する。かかるキットは、凍結状態の上記胚を40~60℃の融解用液と接触させる融解工程を行う旨が記載された説明書が共にパッケージされたものであれば特に制限されないが、上記融解用液をさらに備えるものであることが好ましい。本発明のキットに含まれる胚はガラス化されたものであることが好ましく、また、かかる胚はクライオチューブ内で凍結保存されていることが特に好ましい。具体的には、本発明のキットとしては、1~100個、50~100個、25~50個、10~50個、5~20個、7~15個、又は5~10個の胚、好ましくは、100、75、50、30、20、10、又は5個の胚が凍結保存されたクライオチューブを備えたものであって、かかる胚が3~100μL、5~75μL、5~50μL、5~25μL、又は10~20μLのガラス化液、好ましくは、3、5、10μLのガラス化液に懸濁された状態で凍結保存されているキットを好適に挙げることができる。また、本発明のキットに使用される融解用液は、上記クライオチューブとは別の容器に保存されていることが好ましく、その量は、上記ガラス化液の10~300倍量であることが好ましく、200倍量であることがより好ましい。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない
(1)ラット1細胞期胚の凍結融解
(1-1)1細胞期胚の採取
発情期後期の成熟雌ラット(9-16週齢)に、150 IU/kgのPMSGを腹腔内投与し、さらに48時間後に、75 IU/kgのhCGを腹腔内投与した。その後、雄ラットと自然交配させ、hCG投与から24時間後に、0.1%のヒアルロニダーゼを含むM2培地を用いた卵管灌流により、受精卵(1細胞期胚)を回収した。回収後の1細胞期胚は、M2培地で洗浄した後に、0.5mg/mLのヒアルロニダーゼを含むM2培地で懸濁することによって、卵丘細胞を除去した。以下、ここで得られたラット1細胞期胚を単に「ラット胚」と称する場合がある。
(1-2)ラット胚のガラス化保存
図1に示す方法に従って、上記(1-1)で得られたラット胚をガラス化保存した。具体的には、上記ラット胚を、7.5%又は10%のエチレングリコール(EG)を含む耐凍剤液中(30μLのドロップ)に浸漬して、23℃で5~10分間インキュベートした。インキュベート後の胚を回収して、さらに、ガラス化保存液であるEFS40溶液中[40%(v/v)エチレングリコール、18%(w/v)フィコール70,及び0.3Mスクロースを含むPB1液](30μLのドロップ)中に浸漬した。そして、胚を含む5μLのEFS40溶液をクライオチューブ(凍結保存関連製品セラムチューブ、住友ベークライト株式会社製)に移してキャップをした。これらのラット胚とEFS40溶液とを接触させる工程は、23℃で合計1分となるように行った。キャップを閉めたクライオチューブを液体窒素に直接浸漬して、ガラス化したラット胚凍結し、以下の実験まで液体窒素中で保存した。
(1-3)ラット胚の融解
図2に示す方法に従って、上記(1-2)で凍結保存したラット胚を融解した。具体的には、0.5Mのスクロースを含むPB1液(以下、「スクロース液」と称する場合がある)を調製して、23℃、37℃、及び50℃の3つの温度のスクロース液を用意した。そして、上記クライオチューブを液体窒素から取り出してキャップを外し、チューブ内の液体窒素を捨てた後に、1mLの上記スクロース液(23℃、37℃、又は50℃)を各チューブに加えて、ラット胚を融解した。23℃、37℃、及び50℃のスクロース液を用いた場合の融解速度、及び融解に要する時間(カッコ内に記載)はそれぞれ、4,600℃/分(0.6秒)、6,600℃/分(0.4秒)、7,800℃/分(0.3秒)であった。融解したラット胚を、23℃のスクロース液中(30μLのドロップ)に5分間浸した後に回収し、HTF(100μLのドロップ)で培養した。1日間培養後のラット胚の生存率及び卵割率を測定した(n=3)。
(1-4)ラット胚の生存率及び卵割率に及ぼす融解速度の影響
上記(1-3)により得られた結果を図3に示す。図3に示されるように、融解に要する時間が0.6秒であった群(融解温度が23℃)では、ラット胚の生存率は20%以下であり、卵割率はほぼ0%であった。また、融解に要する時間が0.4秒であった群(融解温度が37℃)では、ラット胚の生存率は50%程度まで上昇したが、卵割率は5%程度と低い水準であった。一方、融解に要する時間が0.3秒であった群(融解温度が50℃)では、ラット胚の生存率及び卵割率はともに100%に近く、無処理群(凍結融解をしていない新鮮ラット1細胞期胚)と同程度の高いレベルであった。
以上の結果から、融解速度が凍結ラット胚の生存性や機能に大きな影響を及ぼすことが明らかとなった。また、50℃のスクロース液を用いて凍結ラット胚を急速融解(7,800℃/分)することによって、新鮮胚と同等の高い生存率及び卵割率を維持できることが明らかとなった。
(2)ウサギ1細胞期胚の凍結融解
(2-1)1細胞期胚の採取
発情期後期の成熟雌ウサギ(16-20週齢)に、150 IU/kgのPMSGを腹腔内投与し、さらに72時間後に、100 IU/kgのhCGを腹腔内投与した。その後、採取したウサギ精子を用いて人工授精を施し、hCG投与16時間後に、10%FBSを含む199培地(FBS-199)を用いた卵管灌流により、受精卵(1細胞期胚)を回収した。回収後の1細胞期胚は、上記199培地で洗浄した後に、懸濁することによって、卵丘細胞を除去した。以下、ここで得られたウサギ1細胞期胚を単に「ウサギ胚」と称する場合がある。
(2-2)ウサギ胚のガラス化保存
図1に示す方法に従って、上記(2-1)で得られたウサギ胚をガラス化保存した。具体的には、上記ウサギ胚を、7.5%又は10%のエチレングリコール(EG)を含む耐凍剤液中(30μLのドロップ)に浸漬して、23℃で5~10分間インキュベートした。インキュベート後の胚を回収して、さらに、ガラス化保存液であるEFS30溶液中[30%(v/v)エチレングリコール、21%(w/v)フィコール70、及び0.35Mスクロースを含むPB1液](30μLのドロップ)中に浸漬した。そして、胚を含む5μLのEFS30溶液をクライオチューブ(凍結保存関連製品セラムチューブ、住友ベークライト株式会社製)に移してキャップをした。これらのウサギ胚とEFS30溶液とを接触させる工程は、23℃で合計1分となるように行った。キャップを閉めたクライオチューブを液体窒素に直接浸漬して、ガラス化したウサギ胚凍結し、以下の実験まで液体窒素中で保存した。
(2-3)ウサギ胚の融解
図2に示す方法に従って、上記(2-2)で凍結保存したウサギ胚を融解した。具体的には、0.5Mのスクロースを含むPB1液(以下、「スクロース液」と称する場合がある)を調製して、23℃、37℃、及び50℃の3つの温度のスクロース液を用意した。そして、上記クライオチューブを液体窒素から取り出してキャップを外し、チューブ内の液体窒素を捨てた後に、23℃、37℃、又は50℃のスクロース液をチューブに加えて、ウサギ胚を融解した。23℃、37℃、及び50℃のスクロース液を用いた場合の融解速度、及び融解に要する時間(カッコ内に記載)はそれぞれ、4,600℃/分(0.6秒)、6,600℃/分(0.4秒)、7,800℃/分(0.3秒)であった。融解したウサギ胚を、23℃のスクロース液中(30μLのドロップ)に5分間浸した後に回収し、10%FBSを含むM199培地中(200μLのドロップ)で培養した。5日間培養後のウサギ胚の卵割率及び胚盤胞期までの発生率を測定した(n=2)。
(2-4)ウサギ胚の生存率及び発生率に及ぼす融解速度の影響
上記(2-3)により得られた結果を図4に示す。図4に示されるように、融解に要する時間が0.6秒であった群(融解温度が23℃)では、ウサギ胚の卵割率は40%程度であり、胚盤胞期までの発生率は20%以下であった。また、融解に要する時間が0.4秒であった群(融解温度が37℃)では、ウサギ胚の卵割率は70%程度であり、胚盤胞期までの発生率は50%程度であった。一方、融解に要する時間が0.3秒であった群(融解温度が50℃)では、ウサギ胚の卵割率は100%程度に、胚盤胞期までの発生率は80%以上までそれぞれ上昇し、無処理群(凍結融解をしていない新鮮ウサギ1細胞期胚)と同程度の高いレベルであった。
以上の結果から、ラットと同様に、ウサギにおいても、融解速度が凍結胚の機能に大きな影響を及ぼすことが明らかとなった。また、50℃のスクロース液を用いて凍結ウサギ胚を急速融解(7,800℃/分)することによって、新鮮胚と同等の高い卵割率及び胚盤胞期までの発生率を維持できることが明らかとなった。

Claims (8)

  1. 凍結状態の哺乳動物初期胚を4550℃の融解用液と接触させる融解工程を含む、凍結保存後の前記哺乳動物初期胚を融解する方法であって、前記融解工程における融解速度が、7,500℃/分以上である、前記方法
  2. 融解用液が、50℃である、請求項1に記載の方法。
  3. 融解用液が、スクロースを含む液である、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 哺乳動物初期胚が、ガラス化されたものである、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
  5. 哺乳動物初期胚が、クライオチューブ内で凍結保存されている、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
  6. 哺乳動物が、ラット又はウサギである、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
  7. 初期胚が、1細胞期胚である、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
  8. 凍結保存後の哺乳動物初期胚の生存率及び/又は発生率を改善するための、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
JP2019133275A 2019-07-19 2019-07-19 哺乳動物初期胚の凍結保存方法 Active JP7355368B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019133275A JP7355368B2 (ja) 2019-07-19 2019-07-19 哺乳動物初期胚の凍結保存方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019133275A JP7355368B2 (ja) 2019-07-19 2019-07-19 哺乳動物初期胚の凍結保存方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2021016336A JP2021016336A (ja) 2021-02-15
JP7355368B2 true JP7355368B2 (ja) 2023-10-03

Family

ID=74562990

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019133275A Active JP7355368B2 (ja) 2019-07-19 2019-07-19 哺乳動物初期胚の凍結保存方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7355368B2 (ja)

Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005040073A (ja) 2003-07-23 2005-02-17 Yoshinori Fukuda 生殖細胞の凍結保存方法及び凍結保存容器
WO2006059626A1 (ja) 2004-12-03 2006-06-08 Nipro Corporation 生物学的試料保存用デバイス

Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005040073A (ja) 2003-07-23 2005-02-17 Yoshinori Fukuda 生殖細胞の凍結保存方法及び凍結保存容器
WO2006059626A1 (ja) 2004-12-03 2006-06-08 Nipro Corporation 生物学的試料保存用デバイス

Non-Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
Seki S. et al.,Cryobiology,2018年,Vol. 81,pp. 132-137

Also Published As

Publication number Publication date
JP2021016336A (ja) 2021-02-15

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Kasai et al. Survival of mouse embryos frozen and thawed rapidly
Kasai et al. Cryopreservation of animal and human embryos by vitrification
Nishijima et al. Effects of type III antifreeze protein on sperm and embryo cryopreservation in rabbit
Rayos et al. Quick freezing of unfertilized mouse oocytes using ethylene glycol with sucrose or trehalose
An et al. Viable spermatozoa can be recovered from refrigerated mice up to 7 days after death
JP2002543041A (ja) 生体試料のガラス化方法
An et al. Factors affecting the survival of frozen–thawed mouse spermatozoa
Han et al. Vitrification of rat embryos at various developmental stages
Maurer Freezing mammalian embryos: a review of the techniques
JP3044323B1 (ja) 細胞の凍結保存方法
Honaramooz Cryopreservation of testicular tissue
JP7355368B2 (ja) 哺乳動物初期胚の凍結保存方法
JP2686405B2 (ja) 牛受精卵の凍結保存方法
US8852078B2 (en) High-throughput and non-invasive method to vitrify porcine embryos
Gajda et al. Oocyte and embryo cryopreservation-state of art and recent developments in domestic animals.
JP2005261413A (ja) 動物胚凍結保存液とそれを用いた動物胚凍結保存法
Otoi et al. Developmental competence of bovine oocytes frozen at different cooling rates
WO2008070412A2 (en) Methods and compositions for reanimating cryopreserved oocytes
Seidel et al. Field trials with cryopreserved bovine embryos
US20080113431A1 (en) Methods and compositions for cryopreserving oocytes
Songsasen et al. -A Historical Overview of Embryo and Oocyte Preservation in the World of Mammalian In Vitro Fertilization and Biotechnology
JPH056983B2 (ja)
TAKEO et al. Application of Cryotechnology to Establish Efficient Research Infrastructure for Genetically Engineered Mice (Papers presented at the Seminar," Dormancy in Organisms, its Role as a Survival Strategy to Adapt against Cold/Drought Stresses")
Rall Cryobiology of gametes and embryos from nonhuman primates
Wyns et al. Vitrification of human testicular tissue, spermatogonia, and spermatozoa

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20220607

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20230424

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20230508

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20230607

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20230911

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20230913

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7355368

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150