JP7355298B1 - 眼鏡の樹脂テンプル及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
しかし、段付き部や凹凸などの形状が変化する部分によって弾性を高めたテンプルは、金属製のテンプルであれば製造は容易であるが、樹脂製のテンプル(以下、「樹脂テンプル」と記載することがある)では、十分な弾性が得にくかったり、折損しやすくなったりするという問題がある。樹脂製のテンプルにおいても十分な強度と弾性を得るためには、テンプルの肉厚や幅を大きくすることが考えられるが、樹脂テンプルのデザインの自由度が制限されるという新たな問題が生じる。
しかし、シューティングは加熱した芯材で樹脂を溶かしながらテンプル内に芯材を挿入するものであるため、芯材の途中部位に段付き部や凹凸などの形状変化部が存在すると、このような形状変化部が障害になって芯材が途中で曲がったり、形状変化部が通過した部分に空洞が形成されたりして、テンプルを割れやすくする要因となったり、透明又は半透明の樹脂テンプルでは、前記空洞が外観に現れてデザイン性を低下させるおそれがあるなどの問題が生じる。そのため、樹脂テンプルにおいて挿入が可能な芯材は、ほぼ真直な棒状又は板状のものに限られている。
その一方で、金属製のテンプルと同等に高い弾性を有し、かつ、デザイン的にも汎用性も高い樹脂製のテンプルの開発が求められている。
また、例えば矩形状に形成された前記第一の板材及び前記第二の板材を用いる場合は、これらを貼り合わせた後に切り出しや切削の機械加工によって、所定形状のテンプルを得ることができる。
このように形成された樹脂製のテンプルは、テンプルの形状に応じた形状の芯材が挿入されているので、十分な弾性と強度を得ることができ、かつ、あらゆるデザインの樹脂テンプルに適用が可能である。
図1~図3は、本発明の第一の実施形態を説明する図で、図1はこの実施形態によって形成されるテンプルにかかり、(a)はその平面図、(b)はその側面図、図2(a)は図1のテンプルを形成するための芯材及び板材の分解平面図で、図2(b)は第二の板材の側面図、図3は、図1のテンプルの製法の手順を示す平面図である。
この実施形態のテンプル1は、中間部位に屈曲状の段付き部10aを有して略逆S字状を成す金属製の芯材10と、芯材10の周囲を被覆し、側面視して所定デザインのテンプル1を形成する樹脂製のテンプル本体11と、テンプル本体11の一端(図の左端)にボルト13でテンプル本体11に取り付けられた蝶番12とを有する。テンプル本体11は、芯材10の形状に沿うように途中部位に段付き部11aが形成されている。
芯材10は、眼鏡の樹脂テンプルに使用される一般的な芯材と同じ材料、例えばステンレスやチタンといった金属材料で形成される。
上記したように、シューティングで用いられる芯材10はほぼ真直棒状のものに限られるが、本発明のテンプル1は、真直棒状の芯材に限らず、ある程度の幅を有する板状の芯材や幅が大小変化する板状の芯材のほか、板状の表裏の平面から交叉方向に起立する凹凸や段付き部などの形状変化部を有する芯材であっても利用可能な点に利点がある。
この第一の実施形態では、図1,2に示すように、芯材1は途中部位がくびれるように幅方向の寸法が変化する板状のもので、幅小の部分に形状変化部である段付き部10aが起立状に形成されている。そのため、芯材1の前半部分と後半部分は、この段付き部10aを境界に段差が生じている。
この第一の実施形態においてテンプル本体11は、アセテートなどの樹脂板である一枚の矩形状の第一の板材111と、芯材10と、第一の板材111と同じ形状及び同じ大きさを有し、第一の板材111及び芯材10を両側から挟み込む二枚の第二の板材112から形成される。そして、第一の板材111と第二の板材112とを貼り合わせた後に、予め設定された形状に切り出しや切削・研削等の機械加工で削成する。
そして、上記のようにして形成されたテンプル本体11に、ボルト13で蝶番12を取り付けたり、その表面に模様や色彩、コーティングなどを施したりすることで、テンプル1が形成される。
この実施形態のように、第一の板材111に溝111b,111cを形成する場合、第一の板材111の肉厚Tは、図2(a)に示す芯材10の幅t(段付き部10aの段差の寸法に等しい)よりも、溝111bの深さを考慮して若干大きくし、溝111b,111cに嵌め込まれた芯材10の前半部分及び後半部分が第一の板材111の表裏面と面一になるか、僅かに111b,111c内に引っ込むように形成される。
長孔111aの幅及び長さは、芯材10の前半部分又は後半部分を挿通させることができ、かつ、前記前半部分を溝111bに嵌め込み、後半部分を溝111cに嵌め込んだときに、段付き部10aが長孔111a内に収まるものとする。この条件を満たす範囲内で、長孔111aの寸法は最小幅及び最小長さを選択するのが好ましい。
図1に示すテンプル1の製造手順を、図2及び図3を参照しながら説明する。
まず、図2に示した芯材10、第一の板材111及び第二の板材112を準備する。
そして、図3(a)に示すように、第一の板材111の長孔111aに、芯材10の前半部分又は後半部分を通し、段付き部10aを長孔111a内に位置させた状態で、前半部分を表面側の溝111bに嵌め込み、後半部分を裏面側の溝111cに嵌め込み、第一の板材111に芯材10を保持させる。
次いで、図3(b)に示すように、芯材10を保持する第一の板材111を二つの第二の板材112によって挟み込み、第一の板材111及び第二の板材112を両側から加熱・加圧して接着する。
これにより、三枚の板材111,112,112が接着されて一体となった樹脂板の圧着体110が形成される。なお、このとき、長孔111a、溝111b及び溝111cには溶けた第一の板材111又は第二の板材112の一部が流入して、長孔111a、溝111b及び溝111cを埋める。
この後、この圧着体110に切り出し、切削、研削等の機械加工を施すことで、芯材10の段付き部10aに応じた段付き部11aを有する所定形状のテンプル本体11が削成される。そして、このテンプル本体11にボルト13で蝶番12を取り付けたり、所定デザインの模様やコーティングを施したりすることで、図1に示すテンプル1が形成される。
上記の第一の実施形態では、矩形状の三枚の板材111,112,112を用い、これらを加圧・加熱して圧着体110を得た後に、切り出し、切削や研削などの機械加工を施して、所定形状のテンプル本体11を削成している。
この変形例では、特に図示はしないが、テンプル1のデザインに合わせた形状の第一の板材111及び第二の112を用いる。そして、先の実施形態と同様に、芯材10を保持する第一の板材111の両側に第二の板材112,112を重ね合わせ、両側から加熱・加圧してこれらを貼り合わせる。そして、第一の板材111と第二の板材112とを貼り合わせた後に、周縁を研磨等して仕上げ加工を行う。このようにして形成された圧着体10は、所定のデザインのテンプル1の形状に合わせた形状になっているので、仕上げ以外の工程を必要とせずに、図1に示すデザインのテンプル1を得ることができる。
次に、図4を参照しながら本発明の第二の実施形態について説明する。
この第二の実施形態では、特許文献1の図5に示されたようなデザインのテンプル1を形成するものとする。第二の実施形態で用いる芯材10は、図4(a)に示すように、複数(図示の例では三つ)の凹凸10bからなる波形部を有するものである。
また、この第二の実施形態において用いられる第一の板材111は、三つの凹凸10bを挿入できる幅及び長さで貫通形成された長孔111aを有する。
この第二の実施形態においても、図3に示す手順と同様の手順でテンプル1を製造することができる。
図5は、本発明の第二の実施形態の変形例にかかり、(a)は芯材の平面図、(b)は第一の板材111の側面図である。
この変形例では、第二の実施形態の芯材1と異なり、段付き部10aの前方と後方の両側に離間して、二つの凹凸11bが形成されている点である。
この変形例において用いられる第一の板材111には、前方の凹凸10bが嵌挿できる幅及び長さの長孔111a,段付き部10aが嵌挿される幅及び長さの長孔111a及び後方の凹凸10bが嵌挿できる幅及び長さの長孔111aが形成される。凹凸10bが嵌挿できる長孔111aは貫通孔であってもよいし、有底の孔であってもよい。
図6は、本発明の第三の実施形態にかかり、(a)は芯材を保持させた第一の板材を第二の板材で挟み込んだ状態の平面図、(b)は第一の板材と第二の第二の板材を加圧・加熱した圧着体の側面図、(c)はテンプル本体の平面図、(d)はテンプル本体の側面図である。
この第三の実施形態では、平板状の芯材10を二つに分割し、分割体101,102としている。そして、第一の板材111の表面に一方の分割体101を保持させ、裏面に他方の分割体102を保持させている。二つの分割体101,102の配置を前後にずらすことで、分割体101,102の間に段付き部が形成される。そのためこの実施形態では、分割体101,102の間が「形状変化部」となる。
この実施形態においても、第一の板材111の両側から第二の板材112で挟み込んで加圧・加熱等することで、テンプル本体110を得ることができる。また、先の実施形態と同様に、分割体101,102が嵌め込まれる第一の板材111の溝は、形成してもよいし、形成しなくてもよい。この第三の実施形態においても、図3に示す手順と同様の手順でテンプル1を製造することができる。
例えば、上記の説明において形状変化の一例として、段付き状や凹凸状のものを図示して説明したが、これには屈曲状や湾曲状、階段状などの形状変化も含まれる。また段付き状や凹凸状に限らず、他の形状変化にも適用が可能である。
また、上記の説明では一段の段付き部10aを例に挙げて説明したが、本発明は複数段の段付き部を有する場合にも適用が可能である。この場合は、複数枚の第一の板材111を準備して積層し、その両側から第二の板材112を貼り付けるようにすればよい。
10 芯材
101,102 分割体
10a 段付き部
10b 凹凸
11 テンプル本体
11a 段付き部
110 圧着体
111 第一の板材
111a 長孔
111b,111c 溝
112第二の板材
t 芯材の幅
T,t′ 第一の板材の肉厚
Claims (4)
- 眼鏡の樹脂テンプルにおいて、
段付き部を有する樹脂製のテンプル本体と、
このテンプル本体の形状に応じた段付き状の形状変化部を有し、前記テンプル本体の内部に挿入された芯材と、
を有し、
前記テンプル本体は、前記芯材を保持する樹脂製の第一の板材と、この第一の板材の表面及び裏面に貼り付けられた樹脂製の第二の板材とから形成され、
前記第一の板材には、表面から裏面まで貫通する貫通孔が形成され、
前記芯材は、
前記形状変化部が前記貫通孔を挿通するとともに前記貫通孔内に位置し、前記形状変化部より前の部分が前記第一の板材の表面又は裏面のいずれか一方の面に位置し、前記形状変化部より後の部分が前記第一の板材の表面又は裏面のいずれか他方の面に位置しているものであること、
を特徴とする眼鏡の樹脂テンプル。 - 前記第一の板材の表面又は裏面に、前記芯材が嵌め込まれる溝が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の眼鏡の樹脂テンプル。
- 段付き部を有するテンプル本体に芯材が挿入された眼鏡の樹脂テンプルの製造方法であって、
前記テンプル本体の形状に応じた段付き状の形状変化部を有する芯材と、樹脂製の第一の板材及び前記第一の板材の表面及び裏面に貼り付けられる樹脂製の第二の板材と、
を準備し、
前記第一の板材に表面から裏面まで貫通する貫通孔を形成し、
前記芯材の形状変化部を前記貫通孔に挿通させて、前記形状変化部を前記貫通孔内に位置させるとともに、前記芯材の前記形状変化部より前の部分を前記第一の板材の表面又は裏面のいずれか一方に位置させ、前記形状変化部より後の部分を前記第一の板材の表面又は裏面のいずれか他方に位置させ、
前記芯材を保持させた前記第一の板材の表面及び裏面に前記第二の板材を貼り付けたこと、
を特徴とする眼鏡の樹脂テンプルの製造方法。 - 前記第一の板材の表面又は裏面に、前記芯材が嵌め込まれる溝を形成し、前記溝に前記芯材を嵌め込むことで、前記第一の板材に前記芯材を保持させたことを特徴とする請求項3に記載の眼鏡の樹脂テンプルの製造方法。
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