JP7354708B2 - 複合タングステン酸化物微粒子の製造方法、複合タングステン酸化物微粒子分散液の製造方法、および複合タングステン酸化物微粒子分散体の製造方法 - Google Patents
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赤外線吸収特性を有する複合タングステン酸化物微粒子の製造方法であって、
熱プラズマ法により熱プラズマ合成複合タングステン酸化物微粒子を合成し、
前記熱プラズマ合成複合タングステン酸化物微粒子へ還元雰囲気下において400℃以上600℃以下の温度で熱処理を施し、前記熱プラズマ合成複合タングステン酸化物微粒子を粒成長させて、複合タングステン酸化物微粒子を製造することを特徴とする複合タングステン酸化物微粒子の製造方法を完成した。
本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子は、その結晶子径が15nm以上40nm以下の熱プラズマ法で合成した複合タングステン酸化物微粒子を、還元雰囲気下において400℃以上600℃以下の温度で熱処理したものである。
以下、本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子について、(1)組成、(2)結晶構造、(3)結晶子径、(4)BET比表面積、の順に説明する。
本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子は、一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、I、Ybの内から選択される1種以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.0<z/y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物微粒子であることが好ましい。
一般式MxWyOz中のM元素、x、y、zおよびその結晶構造は、複合タングステン酸化物微粒子の自由電子密度と密接な関係があり、赤外線遮蔽特性に大きな影響を及ぼす。
ここで本発明者らは、当該タングステン酸化物へ、M元素(但し、M元素は、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、I、Ybの内から選択される1種以上の元素)を添加して複合タングステン酸化物とすることで、当該複合タングステン酸化物中に自由電子が生成され、赤外線領域に自由電子由来の遮蔽特性が発現し、波長1000nm付近の赤外線遮蔽材料として有効なものとなり、且つ、当該複合タングステン酸化物は化学的に安定な状態を保ち、耐候性に優れた赤外線遮蔽材料として有効なものとなることを知見したものである。さらに、M元素は、Cs、Rb、K、Tl、Ba、Cu、Al、Mn、Inが好ましいこと、なかでも、M元素がCs、Rbであると、当該複合タングステン酸化物が六方晶構造を取り易くなる。この結果、可視光線を透過し、赤外線を吸収し遮蔽することから、特に好ましいことも知見したものである。
x/yの値が0.001以上であれば、十分な量の自由電子が生成され目的とする赤外線遮蔽特性を得ることが出来る。そして、M元素の添加量が多いほど、自由電子の供給量が増加し、赤外線遮蔽特性も上昇するが、x/yの値が1程度で当該効果も飽和する。また、x/yの値が1以下であれば、複合タングステン微粒子に不純物相が生成されるのを回避できるので好ましい。
一般式MxWyOzで示される複合タングステン酸化物微粒子において、z/yの値は、2.0<z/y≦3.0であることが好ましく、より好ましくは2.2≦z/y≦3.0であり、さらに好ましくは2.6≦z/y≦3.0、最も好ましくは2.7≦z/y≦3.0である。このz/yの値が2.0を超えていれば、当該複合タングステン酸化物中に目的以外であるWO2の結晶相が現れるのを回避することが出来ると伴に、材料としての化学的安定性を得ることが出来るので、有効な赤外線遮蔽材料として適用できるためである。一方、このz/yの値が3.0以下であれば、当該タングステン酸化物中に必要とされる量の自由電子が生成され、効率よい赤外線遮蔽材料となる。
複合タングステン酸化物微粒子は、六方晶以外に、正方晶、立方晶のタングステンブロンズの構造をとるが、いずれの構造をとるときも赤外線遮蔽材料として有効である。しかしながら、当該複合タングステン酸化物微粒子がとる結晶構造によって、赤外線領域の遮蔽位置が変化する傾向がある。即ち、赤外線領域の遮蔽位置は、立方晶よりも正方晶のときが長波長側に移動し、六方晶のときは正方晶のときよりも、さらに長波長側へ移動する傾向がある。また、当該遮蔽位置の変動に付随して、可視光線領域の遮蔽は六方晶が最も少なく、次に正方晶であり、立方晶はこの中では最も大きい。
以上の知見から、可視光領域の光をより透過させ、赤外線領域の光をより遮蔽する用途には、六方晶のタングステンブロンズを用いることが最も好ましい。複合タングステン酸化物微粒子が六方晶の結晶構造を有する場合、当該微粒子の可視光領域の透過が向上し、赤外領域の遮蔽が向上する。
上述した複合タングステン酸化物微粒子の結晶子径は、当該微粒子の赤外線吸収特性や耐光性に影響する。
ここで、熱処理前の結晶子径が40nm以下であれば、温度400℃以上600℃以下の熱処理で粒成長したときであっても、結晶子径は80nmを超えて粒成長しない。熱処理後の結晶子径が80nm以下であれば、可視光透明性と赤外線吸収特性に優れた複合タングステン酸化物微粒子となる。また、熱処理前の結晶子径が15nm以上であれば、温度400℃以上600℃以下の熱処理で結晶子径20nm以上まで粒成長させることができ、耐光性を向上させ光着色を抑制することができる。
上述した複合タングステン酸化物微粒子のBET比表面積は、当該微粒子の粒度と密接な関係があるが、それと共に、当該微粒子自体の赤外線吸収特性や耐光性にも影響する。
本発明に係る熱プラズマ合成複合タングステン酸化物微粒子の合成方法について説明する。尚、本発明において、後述する「[c]複合タングステン酸化物微粒子の熱処理方法」を施す前の複合タングステン酸化物微粒子を「熱プラズマ合成複合タングステン酸化物微粒子」と記載する。
本発明に係る熱プラズマ合成複合タングステン酸化物微粒子の合成方法としては、熱プラズマ中にタングステン化合物出発原料を投入する熱プラズマ法が挙げられる。
以下、熱プラズマ法について説明する。
本発明に係る熱プラズマ合成複合タングステン酸化物微粒子を、熱プラズマ法で合成する際には、タングステン化合物と、M元素化合物との混合粉体を原料として用いることができる。
タングステン化合物としては、タングステン酸(H2WO4)、タングステン酸アンモニウム、六塩化タングステン、アルコールに溶解した六塩化タングステンに水を添加して加水分解した後溶媒を蒸発させたタングステンの水和物、から選ばれる1種以上であることが好ましい。
また、M元素化合物としては、M元素の酸化物、水酸化物、硝酸塩、硫酸塩、塩化物、炭酸塩、から選ばれる1種以上を用いることが好ましい。
本発明で用いる熱プラズマとして、例えば、直流アークプラズマ、高周波プラズマ、マイクロ波プラズマ、低周波交流プラズマ、のいずれか、または、これらのプラズマの重畳したもの、または、直流プラズマに磁場を印加した電気的な方法により生成するプラズマ、大出力レーザーの照射により生成するプラズマ、大出力電子ビームやイオンビームにより生成するプラズマ、が適用出来る。尤も、いずれの熱プラズマを用いるにしても、10000~15000Kの高温部を有する熱プラズマであり、特に、微粒子の生成時間を制御できるプラズマであることが好ましい。
その後、反応容器内にプラズマガスとして、アルゴンガス、アルゴンとヘリウムの混合ガス(Ar-He混合ガス)、またはアルゴンと窒素の混合ガス(Ar-N2混合ガス)から選択されるいずれかのガスを、プラズマガス供給ノズル4から導入する。一方、プラズマ領域のすぐ外側に流すシースガスとして、Ar-He混合ガスを、シースガス供給ノズル3から導入する。
そして、高周波コイル2に交流電流をかけて、高周波電磁場(周波数4MHz)により熱プラズマ1を発生させる。このとき、プレート電力は30~40kWとする。
また、プラズマガス流量を20L/min以上45L/min以下、シースガス流量を40L/min以上70L/min以下とすることが好ましい。プラズマガスは10000~15000Kの高温部を有する熱プラズマ領域を保つ機能があり、シースガスは反応容器内における石英トーチの内壁面を冷やし、石英トーチの溶融を防止する機能がある。それと同時に、プラズマガスとシースガスはプラズマ領域の形状に影響を及ぼすため、それらのガスの流量はプラズマ領域の形状制御に重要なパラメータとなる。プラズマガスとシースガス流量を上げるほどプラズマ領域の形状がガスの流れ方向に延び、プラズマ尾炎部の温度勾配が緩やかなるので、合成される微粒子の生成時間が長くなり結晶子径は増加する。逆に、プラズマガスとシースガス流量を下げるほどプラズマ領域の形状がガスの流れ方向に縮み、プラズマ尾炎部の温度勾配が急になるので、生成される微粒子の生成時間が短くなり結晶子径は減少する。そこでこれらの条件を適宜調整して、結晶子径15nm以上40nm以下の熱プラズマ合成複合タングステン酸化物微粒子を合成する。
本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子は、還元雰囲気下において温度400℃以上600℃以下で、0.5時間以上24時間以下の熱処理をされたものである。そして当該熱処理の結果、その結晶子径が15nm以上40nm以下のものが、結晶子径20nm以上80nm以下となったものである。
本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子分散液は、本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子が液体媒質中に分散しているものである。当該液体媒質としては、有機溶剤、油脂、液状プラスチック用可塑剤、液状樹脂、硬化により高分子化される化合物(高分子単量体)、水、から選択される1種以上の液体媒質を用いることが出来る。
本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子分散液について(i)製造方法、(ii)使用する有機溶剤、(iii)使用する油脂、(iv)使用する液状プラスチック用可塑剤、(v)使用する硬化により高分子化される化合物(高分子単量体)、(vi)使用する分散剤、(vii)複合タングステン酸化物微粒子分散液の使用方法、の順に説明する。
本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子分散液を製造するには、複合タングステン酸化物微粒子を、上述した液体媒質中に添加して分散させればよい。
本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子分散液に使用する有機溶剤としては、アルコール系、ケトン系、炭化水素系、グリコール系、水系、等を使用することが出来る。
具体的には、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコールなどのアルコール系溶剤;
アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなどのケトン系溶剤;
3-メチル-メトキシ-プロピオネートなどのエステル系溶剤;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテートなどのグリコール誘導体;
フォルムアミド、N-メチルフォルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドンなどのアミド類;
トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;
エチレンクロライド、クロルベンゼン、等を使用することが出来る。
そして、これらの有機溶剤中でも、特に、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸n-ブチル、等を好ましく使用することが出来る。
本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子分散液に使用する油脂としては、植物油脂または植物由来油脂が好ましい。
植物油としては、アマニ油、ヒマワリ油、桐油、エノ油等の乾性油、ゴマ油、綿実油、菜種油、大豆油、米糠油、ケシ油等の半乾性油、オリーブ油、ヤシ油、パーム油、脱水ヒマシ油等の不乾性油、等を使用することが出来る。
植物油由来の化合物としては、植物油の脂肪酸とモノアルコールを直接エステル反応させた脂肪酸モノエステル、エーテル類、等を使用することが出来る。
また、市販の石油系溶剤も油脂として用いることが出来る。
市販の石油系溶剤として、アイソパー(登録商標)E、エクソール(登録商標)Hexane、Heptane、E、D30、D40、D60、D80、D95、D110、D130(以上、エクソンモービル社製)、等を使用することが出来る。
本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子分散液に使用する液状のプラスチック用可塑剤としては、例えば、一価アルコールと有機酸エステルとの化合物である可塑剤、多価アルコール有機酸エステル化合物等のエステル系である可塑剤、有機リン酸系可塑剤等のリン酸系である可塑剤、等を使用することが出来る。尚、いずれも室温で液状であるものが好ましい。
なかでも、多価アルコールと脂肪酸から合成されたエステル化合物である可塑剤を好ましく使用することが出来る。当該多価アルコールと脂肪酸とから合成されたエステル化合物は特に限定されないが、例えば、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコールと、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2-エチル酪酸、ヘプチル酸、n-オクチル酸、2-エチルヘキシル酸、ペラルゴン酸(n-ノニル酸)、デシル酸等の一塩基性有機酸との反応によって得られた、グリコール系エステル化合物、等を使用することが出来る。
また、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコールと、前記一塩基性有機とのエステル化合物等も挙げられる。
なかでも、トリエチレングリコールジヘキサネート、トリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート、トリエチレングリコールジ-オクタネート、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノネート等のトリエチレングリコールの脂肪酸エステル、等を使用することが出来る。さらに、トリエチレングリコールの脂肪酸エステルも好ましく使用することが出来る。
本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子分散液に使用する、硬化により高分子化される化合物は、重合等により高分子を形成する単量体やオリゴマーである。
具体的には、メチルメタクリレート単量体、アクレリート単量体、スチレン樹脂単量体、等を使用することが出来る。
本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子分散液中において、複合タングステン酸化物微粒子の分散安定性を一層向上させ、再凝集による分散粒子径の粗大化を回避する為に、各種の分散剤、界面活性剤、カップリング剤などの添加も好ましい。
当該分散剤、カップリング剤、界面活性剤は用途に合わせて選定可能であるが、アミンを含有する基、水酸基、カルボキシル基、スルホ基、または、エポキシ基を官能基として有するものであることが好ましい。これらの官能基は、複合タングステン酸化物微粒子の表面に吸着して凝集を防ぎ、均一に分散させる効果を持つ。これらの官能基のいずれかを分子中にもつ高分子系分散剤は、さらに好ましい。
上述のようにして製造された本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子分散液は、適宜な基材の表面に塗布し、ここに分散膜を形成して赤外線吸収基材として利用することが出来る。つまり、当該分散膜は、複合タングステン酸化物微粒子分散液の乾燥固化物の一種である。
また、当該複合タングステン酸化物微粒子分散液を乾燥し、粉砕処理して、本発明に係る粉末状の複合タングステン酸化物微粒子分散体(本発明において「分散粉」と記載する場合もある。)とすることが出来る。つまり、当該分散粉は、複合タングステン酸化物微粒子分散液の乾燥固化物の一種である。当該分散粉は複合タングステン酸化物微粒子が固体媒質中(分散剤等)に分散された粉末状の分散体である。当該分散粉は分散剤を含んでいるため、適宜な媒質と混合することで複合タングステン酸化物微粒子分散液を媒質中へ容易に再分散させることが可能である。
例えば、複合タングステン酸化物微粒子を未硬化の熱硬化性樹脂へ添加する、または、本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子を適宜な溶媒中に分散した後、未硬化の熱硬化性樹脂を添加することにより、硬化型インク組成物を得ることが出来る。当該硬化型インク組成物は、所定の基材上に設けられ、赤外線などの電磁波を照射されて硬化した際、当該基材への密着性に優れたものである。そして、当該硬化型インク組成物は、従来のインクとしての用途に加え、所定量を塗布し、ここへ赤外線などの電磁波を照射して硬化させて積み上げ、後3次元物体を造形する光造形法に最適な硬化型インク組成物となる。
本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子分散体は、本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子が固体媒質中に分散しているものである。尚、当該固体媒質としては、樹脂、ガラス、等の固体媒質を用いることが出来る。
固体媒質として樹脂を用いた場合、例えば、厚さ0.1μm~50mmのフィルムまたはボードを構成する形態であってもよい。
この場合、さらに、当該複合タングステン酸化物微粒子を樹脂に混合してペレット化し、当該ペレットを各方式でフィルムやボードを形成することも可能である。例えば、押し出し成形法、インフレーション成形法、溶液流延法、キャスティング法等により形成可能である。この時のフィルムやボードの厚さは、使用目的によって適宜設定すればよく、樹脂に対するフィラー量(すなわち、本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子の配合量)は、基材の厚さや必要とされる光学特性、機械特性に応じて可変であるが、一般的に樹脂に対して50質量%以下が好ましい。
樹脂に対するフィラー量が50質量%以下であれば、固体状樹脂中での微粒子同士が造粒を回避出来るので、良好な透明性を保つことが出来る。また、本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子の使用量も制御出来るのでコスト的にも有利である。
実施例および比較例における分散液中の微粒子の結晶子径は、まず粉末X線回折装置(スペクトリス株式会社PANalytical製X’Pert-PRO/MPD)を用いて粉末X線回折法(θ―2θ法)によりX線回折パターンを測定し、リートベルト法による解析で算出した。BET比表面積は、全自動比表面積測定装置(株式会社マウンテック製Macsorb)を用いたガス吸着法により測定した。吸着に用いるガスは、窒素ガスとした。
実施例および比較例中の分散液、分散体(硬化膜)の光学特性は、分光光度計(日立製作所株式会社製U-4100)を用いて測定し、可視光透過率と日射透過率は、JISR3106に従って算出した。
耐光性の評価方法は次の通りとした。まず、可視光透過率80%前後の硬化膜を用意し、塗布膜へ10mW/cm2の強度でメタルハライドランプによる1時間の紫外線照射を行う。次に、分光光度計により光学特性を測定し、照射前後で可視光透過率の変化量を算出する。そして、例えば六方晶セシウムタングステンブロンズの場合は、当該照射前後における可視光透過率の変化量の絶対値が20%以下のものを耐光性が良好と判断し、変化量の絶対値が20%を超えるものは耐光性が不足と判断した。
尚、ここでいう硬化膜の光学特性値(可視光透過率、ヘイズ値)は、基材であるガラス板の光学特性値を含む値である。
水0.330kgにCs2CO30.216kgを溶解し、これをH2WO41.000kgに添加して十分攪拌した後、乾燥し、狙いの組成であるCs0.33WO3混合粉体を得た。
その結果、混合粉体は熱プラズマ中にて瞬時に蒸発し、プラズマ尾炎部に至る過程で急冷凝固して微粒子化した。当該生成した微粒子は、回収フィルターに堆積した。当該堆積した微粒子を回収し、結晶子径を測定したところ、29nmであった。また、BET比表面積を測定したところ、42m2/gであった。
熱プラズマ中に供給する混合粉体の割合を30g/minから、45g/min(実施例2)、または60g/min(実施例3)に変更したこと以外は実施例1と同様に操作して、実施例2および3に係る複合タングステン酸化物微粒子と硬化膜とを得た。得られた微粒子と硬化膜とに対して、実施例1と同様の評価を実施した。当該製造条件を表1に、評価結果を表2に示す。
実施例1の高周波熱プラズマ反応装置の回収フィルターにて堆積した微粒子を熱処理せずに、そのまま複合タングステン酸化物微粒子に用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1に係る複合タングステン酸化物微粒子と硬化膜を得た。得られた微粒子と硬化膜に対して、実施例1と同様の評価を実施した。紫外線照射による可視光透過率の変化量の絶対値は22.1%と大きく、耐光性は悪いことを確認した。当該製造条件を表1に、評価結果を表2に示す。
2 高周波コイル
3 シースガス供給ノズル
4 プラズマガス供給ノズル
5 原料粉末供給ノズル
6 チャンバー
7 回収フィルター
Claims (6)
- 赤外線吸収特性を有する複合タングステン酸化物微粒子の製造方法であって、
前記複合タングステン酸化物微粒子が、一般式M x W y O z (但し、Mはアルカリ金属の内から選択される1種以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.0<z/y≦3.0)で標記される複合タングステン酸化物の微粒子であり、
熱プラズマ法により、熱プラズマ合成複合タングステン酸化物微粒子を合成し、
前記熱プラズマ合成複合タングステン酸化物微粒子へ還元雰囲気下において400℃以上600℃以下の温度で熱処理を施し、前記熱プラズマ合成複合タングステン酸化物微粒子を粒成長させて、複合タングステン酸化物微粒子を製造することを特徴とする複合タングステン酸化物微粒子の製造方法。 - 前記還元雰囲気が、水素ガスと不活性ガスとを含み、前記水素ガスの濃度が5体積%以下であることを特徴とする請求項1に記載の複合タングステン酸化物微粒子の製造方法。
- 前記複合タングステン酸化物微粒子のBET比表面積が、20m2/g以上200以下m2/gであることを特徴とする請求項1または2に記載の複合タングステン酸化物微粒子の製造方法。
- 前記複合タングステン酸化物微粒子が、六方晶の結晶構造を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の複合タングステン酸化物微粒子の製造方法。
- 請求項1から4のいずれかに記載の複合タングステン酸化物微粒子の製造方法により製造された複合タングステン酸化物微粒子を、水、有機溶媒、油脂、液状樹脂、液状プラスチック用可塑剤、高分子単量体から選択される1種以上の液状媒体中に分散させることを特徴とする複合タングステン酸化物微粒子分散液の製造方法。
- 請求項1から4のいずれかに記載の複合タングステン酸化物微粒子の製造方法により製造された複合タングステン酸化物微粒子を、固体媒体中に分散させることを特徴とする複合タングステン酸化物微粒子分散体の製造方法。
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