ところで、特装車は主に商業用途に用いられる車両であり、事業者によって所有される。一般的に、事業者は複数台の特装車を所有し、それら複数台の特装車を工場や配送センターなどの駐車場に一括して停めている。作業員は、駐車場に並べられた複数台の特装車の一つに乗り込み、現場に向かう。また、現場での作業を終えた作業員は、特装車に乗って駐車場に戻り、駐車場にて降車する。特装車を利用した一連の作業は、作業員が特装車に乗り込むことから始まり、特装車から降りることによって終了する。特装車のメンテナンス等は、一連の作業の前後に行われる場合が多い。そのため、特装車のデータの収集は、駐車場において、作業員が特装車に乗り込む前または特装車から降りた後に行われることが多い。
ところが、駐車場に複数台の特装車が並んで駐車してある場合、作業員が端末装置を操作して無線通信を始めるときに、ペアリングの候補先として、複数台の特装車が挙がってくることがある。ブルートゥース(登録商標)を利用する従来のシステムでは、作業員は、複数の候補先から、端末装置が受信する電波の強度が最も高い相手を選んでペアリングを行うこととしていた。
しかし、端末装置は作業員に携帯されるものであり、ペアリングを行うときの端末装置の位置は、作業員の位置次第である。例えば、図19に示すように、それぞれ車体の左側にコントロールユニット201、202、203を有する特装車101、102、103が左右に並んで駐車されている場合、特装車102に乗ろうとする作業員は、運転席のある車体の右側にいるときにペアリングを行いがちである。また、雨が降っているときや風が強いときなどでは、悪天候の影響を避けるために、作業員が運転席でペアリングを行う場合もある。このような場合、作業員が持つ端末装置Tと特装車102のコントロールユニット202との距離は、端末装置Tと特装車103のコントロールユニット203との距離よりも長くなってしまう。そのため、端末装置Tが受信する電波の強度が最も高い相手は、コントロールユニット202ではなく、コントロールユニット203となってしまう。その結果、作業員は、自分が乗り込もうとしている特装車102のコントロールユニット202ではなく、その右隣の特装車103のコントロールユニット203とペアリングを行ってしまいがちである。これにより、作業員は、端末装置Tをコントロールユニット203と無線接続してしまい、端末装置Tに特装車102のデータではなく、誤って特装車103のデータを収集してしまうことがある。
このようにペアリングを誤って行うことを防止するために、予め作業員が特装車102のコントロールユニット202の位置を把握しておき、特装車102の車体の左側にてペアリングを行うようにすることが考えられる。しかし、特装車の仕様は様々である。コントロールユニットの設置位置は、特装車によって相違する。そのため、例えば、図20に示すように、特装車102の左側に特装車104が停めてあり、その特装車104のコントロールユニット204が車体の右側に設置されている場合、作業員が特装車102の左側にいる場合であっても、端末装置Tと特装車102のコントロールユニット202との距離が、端末装置Tと特装車104のコントロールユニット204との距離よりも長くなってしまうことがある。この場合、端末装置Tが受信する電波の強度が最も高い相手は、作業員が乗り込もうとしている特装車102のコントロールユニット202ではなく、その左隣の特装車104のコントロールユニット204となってしまう。そのため、作業員は、他の特装車104のコントロールユニット204とペアリングを行ってしまいがちである。その結果、作業員は、端末装置Tをコントロールユニット204と無線接続してしまい、端末装置Tに特装車102のデータではなく、誤って特装車104のデータを収集してしまうことがある。なお、車体の後部にコントロールユニットが設けられた特装車(例えば、荷役装置付運搬車)や、キャブの内部またはキャブの後部にコントロールユニットが設けられた特装車(例えば、塵芥収集車、コンテナの脱着が可能なコンテナ荷役車両)などが混在する駐車状況の場合、適切なデータ収集は更に困難となる。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、携帯可能な端末装置と特装車との間で無線通信を行う際に、誤って他の特装車に端末装置を無線接続してしまうことを防止することである。
本発明に係る特装車の無線通信システムは、特装車に設けられ、前記特装車を識別するための識別情報を含んだ識別体と、前記特装車に備えられたコントロールユニットと、携帯可能な端末装置と、を備える。前記コントロールユニットは、前記識別情報に関するデータが保存された識別データ記憶装置と、無線通信を行う通信装置と、前記識別データ記憶装置に保存された前記データを前記通信装置により発信させる発信制御装置と、を有している。前記端末装置は、前記コントロールユニットの通信装置と無線通信可能な通信機と、演算装置と、前記識別体に接近させたときに前記識別情報を読み取る読み取り装置と、を有している。前記端末装置の前記演算装置は、前記コントロールユニットの前記通信装置から発信されたデータに含まれる識別情報が入力される第1識別情報入力部と、前記読み取り装置により読み取られた識別情報が入力される第2識別情報入力部と、を有している。
上記無線通信システムによれば、特装車が他の特装車と並んで駐車されている場合、端末装置の通信機は、それぞれの特装車のコントロールユニットの通信装置から、それぞれの特装車の識別データ記憶装置に保存されたデータを受信する。また、ユーザが当該特装車に設けられた識別体に端末装置を接近させることにより、端末装置の読み取り装置は当該識別体の識別情報を読み取る。端末装置の演算装置には、コントロールユニットの通信装置から発信されたデータに含まれる識別情報(以下、受信識別情報という)に加えて、読み取り装置により読み取られた識別情報(以下、読み取り識別情報という)が入力される。ここで、読み取り識別情報により識別される特装車が、所望する無線接続先である。上記無線通信システムによれば、端末装置に受信識別情報および読み取り識別情報の両方が入力されるので、端末装置が複数の特装車の通信装置と無線通信可能であって、複数の受信識別情報のデータを受信している場合であっても、読み取り識別情報に一致する受信識別情報を正確に特定することができる。したがって、所望の通信接続先を正確に特定することができるので、誤って他の特装車に端末装置を無線接続してしまうことを防止することができる。
本発明の好ましい一態様によれば、前記端末装置は表示装置を有している。前記端末装置の前記演算装置は、前記第1識別情報入力部に入力された識別情報と前記第2識別情報入力部に入力された識別情報とを前記表示装置に表示させる識別情報表示部を有している。
上記態様によれば、端末装置の表示装置に、コントロールユニットの通信装置から発信されたデータに含まれる識別情報と、読み取り装置により読み取られた識別情報との両方が表示される。よって、ユーザは、端末装置の表示装置を見ることにより、所望の通信接続先を正確に特定することができる。
本発明の好ましい一態様によれば、前記識別情報には、前記特装車の種類を特定する情報が含まれている。前記端末装置は表示装置を有している。前記端末装置の前記演算装置は、少なくとも前記第2識別情報入力部に入力された前記識別情報に基づいて前記特装車の種類を特定し、前記特装車の種類に応じた操作画像または稼働状態表示画像を前記表示装置に表示させる画像表示部を有している。
上記態様によれば、少なくとも読み取り装置により読み取られた識別情報に基づいて特装車の種類が特定され、特装車の種類が確認されたうえで、端末装置の表示装置に操作画像または稼働状態表示画像が表示される。表示装置には、特装車の種類に応じた操作画像または稼働状態表示画像が表示され、誤った種類の特装車の操作画像または稼働状態表示画像が表示されてしまうことはない。そのため、ユーザが端末装置を用いて誤った操作またはデータ収集を行ってしまうことを防止することができる。
本発明の好ましい一態様によれば、前記端末装置は、ユーザにより操作される入力装置を有している。前記端末装置の前記演算装置は、前記ユーザの前記入力装置の操作に基づいて、前記コントロールユニットを無線接続相手として承認する接続承認部を有している。
上記態様によれば、接続承認部が当該特装車のコントロールユニットを無線通信の相手として承認することにより、端末装置は当該特装車のコントロールユニットのみと無線通信する。したがって、端末装置が他の特装車のコントロールユニットと無線通信してしまうことを防止することができる。
本発明の好ましい一態様によれば、前記コントロールユニットは、前記特装車の車両データが保存される車両データ記憶装置と、前記コントロールユニットの前記通信装置から前記端末装置の前記通信機に前記車両データを送信させる車両データ送信制御装置と、を有している。前記無線通信システムは、前記端末装置の前記通信機と無線通信可能に接続されたサーバを備えている。
上記態様によれば、特装車のコントロールユニットから端末装置に車両データを送信し、その車両データを端末装置からサーバに送信することができる。そのため、サーバにおいて、特装車の運転履歴の管理、故障診断等を行うことができる。また、サーバから端末装置にデータを送信することにより、サーバの管理データまたは故障診断の結果等をユーザに迅速かつ正確に知らせることができる。
本発明に係るコンピュータプログラムは、通信機と演算装置と読み取り装置とを有する携帯可能な端末装置を特装車の無線通信システムの端末装置として機能させるためのコンピュータプログラムである。前記特装車は、前記特装車を識別するための識別情報を含んだ識別体と、コントロールユニットとを備えている。前記コントロールユニットは、前記識別情報に関するデータが保存された識別データ記憶装置と、無線通信を行う通信装置と、前記識別データ記憶装置に保存された前記データを前記通信装置により発信させる発信制御装置と、を有している。前記コンピュータプログラムは、前記端末装置の前記演算装置を、前記コントロールユニットの通信装置から発信された前記データを前記端末装置の通信機により受信する通信部、前記読み取り装置が前記識別体に接近したときに前記読み取り装置により前記識別情報を読み取る読み取り部、前記通信部が受信したデータに含まれる識別情報が入力される第1識別情報入力部、および、前記読み取り装置により読み取られた識別情報が入力される第2識別情報入力部、として機能させるものである。
本発明の好ましい一態様によれば、前記識別体は視認可能な識別体であり、前記読み取り装置は撮像装置である。
上記態様によれば、端末装置に備えられた撮像装置により、特装車の識別情報を容易に読み取ることができる。
本発明の好ましい一態様によれば、前記識別体は非接触式ICタグであり、前記読み取り装置は、前記非接触式ICタグと無線通信するリーダである。なお、ここで言う非接触式ICタグには、当該タグ自体にデータ管理やセキュリティ機能を備えたものと、これら機能を備えていないものとの両方が含まれる。
上記態様によれば、端末装置に内蔵されたリーダにより、特装車の識別情報を容易に読み取ることができる。
本発明に係る特装車は、携帯可能な端末装置の読み取り装置によって読み取られる識別情報を含んだ識別体と、コントロールユニットとを備えており、前記コントロールユニットは、前記識別情報に関するデータが保存された識別データ記憶装置と、前記端末装置の通信機と無線通信を行う通信装置と、前記識別データ記憶装置に保存された前記データを前記通信装置により発信させる発信制御装置と、を有している。
前記識別体は特に限定されないが、例えば、マトリックス型二次元コードが好ましい。このことにより、識別体の情報量を増やすことができる。また、小さなスペースに識別体を設けることができる。
本発明の好ましい一態様によれば、前記特装車には、前記識別体が表示されたシールが貼り付けられている。
上記態様によれば、識別体が表示されたシールを特装車の所定部位に貼り付けるという簡単な作業により、特装車に識別体を付与することができる。また、シールを用いることにより、識別体の位置の選択自由度を高めることができる。
本発明の好ましい一態様によれば、前記特装車は、前記識別体を覆う透明なカバーを有している。
上記態様によれば、識別体がカバーにより保護されるので、識別体が摩耗により視認し難くなったり、消えてしまうことを防止することができる。
本発明の好ましい一態様によれば、前記コントロールユニットは、少なくとも前記発信制御装置を覆うケースを有し、前記識別体は前記ケースに設けられている。
上記態様によれば、予めコントロールユニットのケースに識別体を設けておくことにより、コントロールユニットを特装車に取り付けるだけで、特装車に識別体を容易に付与することができる。
特装車において識別体が設けられる部分は特に限定されないが、特装車の後部には、例えば荷箱の扉などのように、可動部分が配置されることが多い。そこで、前記識別体は、前記特装車の側部に設けられていてもよい。また、前記特装車は車両前後方向に延びるサイドフレームを有し、前記識別体は前記サイドフレームの車幅方向の外側に設けられていてもよい。また、前記特装車は、バンパと前記バンパを支持するバンパアームとを備え、前記識別体は前記バンパアームに設けられていてもよい。
本発明に係る特装車の無線通信方法は、特装車に備えられかつ通信装置を有するコントロールユニットと、通信機を有しかつ携帯可能な端末装置とを無線通信させる特装車の無線通信方法である。前記特装車には、前記特装車を識別するための識別情報を有する識別体が設けられている。前記無線通信方法は、前記識別情報のデータを含んだ信号を前記特装車の通信装置から発信するステップと、前記特装車の通信装置から発信された前記信号を前記端末装置の通信機により受信するステップと、前記端末装置を前記識別体に接近させ、前記端末装置に備えられた読み取り装置により前記識別体の前記識別情報を読み取るステップと、前記端末装置の通信機により受信した前記信号に含まれる識別情報と、前記端末装置の前記読み取り装置により読み取られた前記識別体の識別情報とが一致するか否かを判定するステップと、前記両識別情報が一致すると判定されると、前記コントロールユニットを前記端末装置の無線接続相手として承認するステップと、を含んでいる。
上記無線通信方法によれば、端末装置の通信機により受信した識別情報と読み取り装置により読み取られた識別情報とが一致することを確認したうえで、端末装置の無線接続相手が承認される。したがって、所望の通信接続先を正確に特定することができる。上記無線通信方法によれば、誤って他の特装車のコントロールユニットに端末装置を無線接続してしまうことを防止することができる。
本発明に係る他の特装車の無線通信方法は、特装車に備えられかつ通信装置を有するコントロールユニットと、通信機を有しかつ携帯可能な端末装置とを無線通信させる特装車の無線通信方法である。前記特装車には、前記特装車を識別するための識別情報を含んだ識別体が設けられている。前記無線通信方法は、前記識別情報のデータを含んだ信号を前記特装車の通信装置から発信するステップと、前記特装車の通信装置から発信された前記信号を前記端末装置の通信機により受信するステップと、前記特装車の架装物に関する操作が前記端末装置に入力されると、前記識別体の前記識別情報を読み取ることを促す出力を前記端末装置が行うステップと、前記端末装置に備えられた読み取り装置により前記識別体の前記識別情報を読み取るステップと、前記端末装置の前記通信機により受信した前記信号に含まれる識別情報と、前記端末装置の前記読み取り装置により読み取られた前記識別体の識別情報とが一致するか否かを判定するステップと、前記両識別情報が一致すると判定されると、前記端末装置と前記コントロールユニットとを無線接続し、前記端末装置の表示装置に前記架装物の操作画像を表示するステップと、を含んでいる。
上記無線通信方法によれば、架装物に関する操作が端末装置に入力されると、特装車の識別体の識別情報を読み取ることが促される。そして、識別情報を読み取った後、端末装置の通信機により受信した識別情報と読み取り装置により読み取った識別情報とが一致することが確認されたうえで、端末装置の表示装置に架装物の操作画像が表示される。そのため、端末装置の表示装置には、特装車に応じた正しい操作画像が表示される。したがって、ユーザが誤った特装車の架装物に対して指示を送ってしまうことを防止することができる。
以上のように、本発明によれば、携帯可能な端末装置と特装車との間で無線通信を行う際に、誤って他の特装車に端末装置を無線接続してしまうことを防止することができる。
(第1実施形態)
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。図1に示すように、本実施形態に係る無線通信システム1は、特装車5に備えられたコントロールユニット10と、ユーザ3が携帯する携帯式の端末装置20と、インターネット2を介して端末装置20と通信可能(データの送受信可能)なサーバ30とから構成されている。特装車5の種類は何ら限定されないが、ここでは、図1~図3に示す荷役装置付運搬車を例に挙げて説明する。
本実施形態に係る特装車5は、キャブ41と、シャーシ42と、左右の前輪43と、左右の後輪44と、シャーシ42に支持された荷箱45と、荷箱45の後部に設けられた荷役装置46とを備えている。荷役装置46は、直立状態と水平状態とに回動可能なテールゲート46Aと、テールゲート46Aを回動および昇降させる駆動装置46Bとを有している。
本実施形態では、コントロールユニット10は特装車5の側部に配置されている。コントロールユニット10は、特装車5の右側部分に設けられていてもよいが、ここでは左側部分に設けられている。また、コントロールユニット10は、左の後輪44よりも後方、かつ、荷役装置46よりも前方に配置されている。ただし、ここで説明するコントロールユニット10の配置は一例である。コントロールユニット10の位置は特に限定される訳ではない。
図3および図4に示すように、コントロールユニット10は、ケース10Aと、ケース10Aの内部に設けられた電子回路基板10Bとを含んでいる。ケース10Aには、QRコード(登録商標)等のマトリックス型二次元コード(以下、二次元コードという)15が印刷されたシール16が貼り付けられている。特装車5には、出荷前に製造現場において製造番号が登録されている。製造番号の登録は特装車5の一台一台について行われ、特装車5は固有の登録番号を有している。上記二次元コード15には、特装車5を識別するための識別情報として、当該特装車5の製造番号がコード化されて含まれている。本実施形態では、二次元コード15が「識別体」に対応し、製造番号が「識別情報」に対応する。なお、製造番号の登録の時期は出荷前に限らず、出荷後でもよい。また、登録の場所は製造現場に限られない。登録は出荷後でもよいため、本発明は新品の特装車5に限らず、既に使用されている特装車5にも適用することができる。
図5は、無線通信システム1のブロック図である。図5に示すように、特装車5のコントロールユニット10は、無線通信を行う通信装置11と、演算装置12と、識別データメモリ13と、車両データメモリ14とを備えている。識別データメモリ13には、特装車5を識別するための識別情報(ここでは、特装車5の製造番号)に関するデータ(以下、識別データという)が記憶されている。この識別データに基づいて、特装車5を他の特装車から区別することができ、特装車5を一義的に特定することができる。車両データメモリ14には、特装車5の車両データが保存される。識別データメモリ13および車両データメモリ14は物理的に同一のメモリにより構成されていてもよく、異なるメモリにより構成されていてもよい。なお、車両データとは、特装車5に関する各種のデータ(例えば、特装車5の仕様、運転状態、運転履歴、メンテナンス等に関するデータ)である。特装車5は、図示しない複数のセンサを備えている。例えば、これらセンサにより検出される各種のデータおよびそれらデータを組み合わせて得られるデータが車両データを構成する。車両データに基づいて、例えば特装車5の運転履歴の確認、故障診断、修理依頼などを行うことができる。
端末装置20は、携帯式の端末装置である。ここで、携帯式の端末装置とは、ユーザ3が携帯可能な情報端末装置のことである。携帯式の端末装置は、例えば、スマートフォン、携帯電話、タブレット式のコンピュータ、ノート型のコンピュータなどの汎用的な携帯式端末装置の他、本無線通信システム1のための専用の携帯式端末装置であってもよい。端末装置20は、無線通信を行う通信機21と、入力装置22と、表示装置23と、撮像装置としてのカメラ24と、演算装置25と、メモリ26とを有している。入力装置22は、ユーザ3が情報を入力するために用いる装置であり、例えば、ボタンまたはタッチパネル式ディスプレイなどである。入力装置22として、音声入力装置を用いることも可能である。表示装置23は、文字、図形または画像等を表示する装置であり、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどである。
本実施形態では、端末装置20はスマートフォンにより構成されている。メモリ26には、本スマートフォンを特装車の無線通信システム1の端末装置20として機能させるアプリケーションソフト(コンピュータプログラム)が保存されている。このアプリケーションソフトを起動させることにより、汎用的なスマートフォンを特装車の無線通信システム1の端末装置20として機能させることができる。上記アプリケーションソフトを起動することにより、演算装置25は、コントロールユニット10の通信装置11から発信されたデータを端末装置20の通信機21により受信する通信部として機能する。また、演算装置25は、カメラ24により二次元コード15を撮影し、特装車5の製造番号を読み取る読み取り部として機能する。更に、演算装置25は、後述する第1識別情報入力部27A、第2識別情報入力部27B、識別情報表示部29、および接続承認部28として機能する。
サーバ30は、例えば、特装車5の車両データに基づいて特装車5の管理等を行うコンピュータである。サーバ30は、例えば、特装車5を製造するメーカ、特装車5のメンテナンスを行う業者、または、特装車5のユーザ3が属する会社等の敷地内に設置されている。後述するように、端末装置20は、特装車5のコントロールユニット10から車両データを収集する。端末装置20に収集された車両データは、インターネット2を介してサーバ30に送信される。サーバ30は、例えば、収集した車両データに基づいて特装車5の故障診断などを行い、その結果を端末装置20に送信する。ユーザは端末装置20の表示装置23を見ることにより、その結果を容易に把握することができる。
次に、図6のフローチャートを参照しながら、本実施形態に係る無線通信システム1を用いて特装車5の車両データを収集する方法について説明する。ここでは、端末装置20の通信機21と特装車5のコントロールユニット10の通信装置11とは、ブルートゥース(登録商標)による無線通信を行うものとする。図7に示すように、ユーザ3が乗ろうとしている特装車5は、他の特装車5L、5Rと共に駐車場に並べて停められているものとする。特装車5の左隣、右隣に駐車されている特装車5L、5Rは、それぞれ特装車5のコントロールユニット10と同様のコントロールユニット10L、10Rを備えている。特装車5L、5、5Rの製造番号は、それぞれ「111111」、「222222」、「333333」であるとする。
まずユーザ3は、自らが携帯する端末装置20を操作して、前述のアプリケーションソフトを起動する(図6のステップS1)。ここで、コントロールユニット10、10L、10Rからは、それぞれの特装車5、5L、5Rの製造番号を含むデータ(識別データ)が発信されている(ステップS2)。なお、この際、コントロールユニット10、10L、10Rの演算装置12は、発信制御装置として機能する。端末装置20の通信機21は、ペアリングを行うために、周囲の特装車5、5L、5Rのコントロールユニット10、10L、10Rから発信される信号を受信する(ステップS3)。コントロールユニット10、10L、10Rから発信される信号には、それぞれの特装車5、5L、5Rの製造番号のデータが含まれる。端末装置20の演算装置25には、それぞれの特装車5、5L、5Rの製造番号が入力される。この際、演算装置25は、第1識別情報入力部27A(図5参照)として機能する。そして、図8に示すように、端末装置20の表示装置23には、接続先の候補として、特装車5Lの製造番号「111111」と、特装車5の製造番号「222222」と、特装車5Rの製造番号「333333」とが一覧表示される。なお、信号の強度は、端末装置20と各コントロールユニット10、10L、10Rとの距離に依存する。端末装置20が受信する信号の強度は、ユーザ3の位置によって変化する。ここで、端末装置20を持つユーザ3の位置によっては、特装車5のコントロールユニット10から受信する信号よりも、他の特装車5L、5Rのコントロールユニット10L、10Rから受信する信号の方が、強度が大きい場合があり得る。
また、前記アプリケーションソフトを起動すると、図8に示すように、端末装置20の表示装置23に、特装車の二次元コードを読み取ることを促す画像33が表示される。ここでは、ユーザ3は特装車5に乗り込む。特装車5では、二次元コード15が印刷されたシール16は、特装車5の左側に設置されたコントロールユニット10のケース10Aに貼られている。そのため、上記画像33を見たユーザ3は、コントロールユニット10のケース10Aの手前に移動する(図7の矢印参照)。
次に、ユーザ3は、端末装置20のカメラ24を二次元コード15に向け、このカメラ24により二次元コード15を読み取る(ステップS4)。なお、表示装置23には、カメラ24の撮影画像34が表示される。撮影画像34の中に二次元コード15が含まれるようにユーザ3が端末装置20の位置を調整することにより、端末装置20によって二次元コード15を容易に読み取ることができる。
二次元コード15には、特装車5の製造番号に関するデータが含まれている。端末装置20の演算装置25は、カメラ24で読み取った特装車5の二次元コード15から製造番号を抽出する。この際、演算装置25は、カメラ24で読み取った識別情報が入力される第2識別情報入力部27Bとして機能する。そして、演算装置25は、図9に示すように、表示装置23にその製造番号を表す画像35を表示させる。この際、演算装置25は、識別情報表示部として機能する。
ユーザは、表示装置23を見ながら、ペアリングの候補先の中に、この製造番号が含まれるか否かを判定する(ステップS5)。すなわち、ユーザは、コントロールユニット10の通信装置11から発信されたデータに含まれる識別情報(言い換えると、通信機21が受信した識別データに含まれる識別情報)と、カメラ24によって読み取られた識別情報とが一致するか否かを判定する。
ユーザは、上記両識別情報が一致すると判定すると、当該製造番号を含む識別データを送信しているコントロールユニット10を無線接続の相手として選択する。すなわち、コントロールユニット10、10L、10Rから、コントロールユニット10をペアリングの相手として選択する。すると、演算装置25は、コントロールユニット10をペアリングの相手として承認する(ステップS6)。この際、演算装置25は接続承認部28(図5参照)として機能する。
詳しくは、ここでは図8および図9に示すように、ペアリングの候補先として製造番号「111111」、「222222」、「333333」が挙がっており、二次元コード15から読み取った製造番号「222222」が含まれるため、この製造番号「222222」の特装車5のコントロールユニット10がペアリングの相手として承認される。例えば、ユーザは、表示装置23に表示される「222222」(図8参照)を指でタップし、製造番号「222222」を選択する。これにより、製造番号「222222」の特装車5のコントロールユニット10がペアリングの相手として承認される。その結果、演算装置25は、特装車5のコントロールユニット10とペアリングを行う。すなわち、端末装置20と特装車5のコントロールユニット10とは、互いの無線通信を許可する認証動作を行う。ペアリングが終了すると、端末装置20はコントロールユニット10に接続され(図9参照)、端末装置20とコントロールユニット10とは1対1の無線通信を行う。
ペアリング終了後、ユーザ3が端末装置20を操作することにより、コントロールユニット10の演算装置12は通信装置11から、車両データメモリ14に保存されている車両データを送信し、端末装置20の通信機21はその車両データを受信する。なお、この際、コントロールユニット10の演算装置12は、車両データ送信制御装置として機能する。これにより、特装車5のコントロールユニット10から端末装置20に車両データが収集される(ステップS7)。
端末装置20に収集した車両データは適宜に利用することができる。例えば、端末装置20に収集された車両データは、インターネット2を介してサーバ30に送信される。そして、サーバ30は、車両データに基づいて、この特装車5の運転履歴の管理、故障診断等を行う。端末装置20は、サーバ30から適宜に情報を受信する。ユーザ3は、端末装置20の表示装置23を見ることにより、特装車5に関する各種の情報を得ることができる。
以上のように、本実施形態によれば、駐車場に複数台の特装車5、5L、5Rが並んで駐車されている場合であっても、ユーザ3は、端末装置20と所望する特装車5のコントロールユニット10とを的確に無線接続することができる。よって、ユーザ3が端末装置20を他の特装車5L、5Rのコントロールユニット10L、10Rに誤って無線接続してしまうことを防止することができる。したがって、誤った特装車5L、5Rから車両データを収集してしまうことを防止することができ、携帯式の端末装置20を用いた無線通信により、特装車5の車両データを的確に収集することができる。
特装車5から端末装置20に収集した車両データを端末装置20からサーバ30に送信することにより、メンテナンス業者等に対して、特装車5に関する的確な情報を伝えることができる。また、サーバ30から端末装置20に情報を送信することにより、メンテナンス業者等がユーザ3に対して、迅速かつ正確に的確な指示を出すことができる。それにより、ユーザ3は的確な対応を行うことが可能となる。
また、スマートフォン等を特装車の無線通信システム1の端末装置20として機能させるアプリケーションソフト(コンピュータプログラム)は、ブルートゥース(登録商標)通信を用いたラジコン機能を有していてもよい。なお、このような機能は周知であるため、詳しい説明は省略する。無線通信システム1を前述のような特装車5のメンテナンスに用いるだけでなく、特装車5の実作業(例えば荷物の積みおろしなど)に用いる場合であっても、的確なペアリングを実現できることで、安全面でも非常に大きな効果を発揮することができる。
本実施形態では、特装車5に設けられた識別体は、視認可能な二次元コード15であり、その二次元コード15を読み取る読み取り装置は、端末装置20に内蔵されたカメラ24である。本実施形態によれば、端末装置20に内蔵されたカメラ24により、特装車5の識別情報を容易に読み取ることができる。
本実施形態では、視認可能な識別体は、マトリックス型二次元コード15である。二次元コード15はバーコード(一次元コード)に比べて情報量が多いため、二次元コード15を用いることによって、より多くの情報を読み込むことができる。また、二次元コードのなかでも、マトリックス型としたことにより、単に情報量が多いだけでなく、小さなスペースに設置することができる。設置する領域が限定されている場合、例えば、一方向に長いスペース(横長のスペース)がない場合でも、マトリックス型の二次元コード15であれば、無理なく設置することができる。
本実施形態では、識別体(二次元コード15)はシール16に印刷されている。そのため、シール16を特装車5の所定部位に貼り付けるという簡単な作業により、特装車5に識別体を付与することができる。また、コントロールユニット10の位置に規制されずに、ユーザが読み取りやすい位置にシール16を貼ることで、その読み取り作業自体を容易化することができる。
シール16を貼り付ける箇所は特に限定されないが、本実施形態では、シール16はコントロールユニット10のケース10Aに貼り付けられている。そのため、シール16が貼り付けられたコントロールユニット10を特装車5に取り付けることにより、特装車5に識別体を容易に付与することができる。
(第2実施形態)
次に第2実施形態として、第1実施形態のようにペアリングが終了した後に、端末装置20を特装車のコントロールユニットと無線通信可能とし、この端末装置20を用いて、特装車の架装物(例えば、荷役装置付運搬車5の荷役装置46)を操作する形態について説明する。端末装置20の表示装置23に操作用の画像(以下、操作画像という)を表示することにより、ユーザは端末装置20を用いて架装物を容易に操作することができる。
図10に示すように、荷役装置付運搬車5用の操作画像50には、架装物である荷役装置46のテールゲート46Aを操作するためのアイコンボタン(以下、ボタンという)50a~50dが含まれる。ここでは、ユーザがボタン50aおよび50cを同時に押すとテールゲート46Aは上方に移動し、ボタン50aおよび50dを同時に押すとテールゲート46Aは下方に移動する。ユーザがボタン50bおよび50cを同時に押すとテールゲート46Aは開き、ボタン50bおよび50dを同時に押すとテールゲート46Aは閉じる。なお、コントロールユニット10は、ユーザがボタン50a~50dを押すことで出力される操作信号を受信可能で、駆動装置46Bなどを制御するための制御信号を出力可能に設けられている(例えば、特開2011-31860号公報の図3等参照)。
本実施形態のように、ペアリングに利用した端末装置20を荷役装置46の操作装置として兼用できることで、ユーザが持ち運ぶツール数が減って好ましい。さらに、上述した各種のデータ(運転履歴か故障診断に関する車両のデータまたは駆動装置46Bなどの架装物のデータ)が表示される端末装置20を利用して架装物を操作できるので、ユーザは架装物の状態を常時把握しながら操作することができる。
特に、操作画像および端末装置20の表示装置23に架装物の稼働状態を表す画像(以下、稼働状態表示画像という)は、表示の切換が可能な別々の画像であってもよく、同一の画面に併せて表示されてもよい。図10は、荷役装置付運搬車5用の操作画像50および稼働状態表示画像60が端末装置20の表示装置23に併せて表示される形態を示しており、併せて表示されることでユーザが駆動装置46Bなどの経年変化に迅速に気づくことができるなどのメリットを奏する。ただし、端末装置20の表示装置23に表示される画像は、特に限定されない。端末装置20の表示装置23に表示される画像は、利用状況に適宜合わせて架装物の操作画像のみであってもよく、稼働状態表示画像のみであってもよい。あるいは、操作画像および稼働状態表示画像の少なくとも一方と共に他の画像が表示されてもよい。あるいは、操作画像および稼働状態表示画像に代えて、他の画像が表示されてもよい。
(第3実施形態)
続いて、前述したペアリングに関し、ペアリングの正誤を確認可能な構成を加えた形態を第3実施形態として説明する。第1実施形態では、端末装置20の通信機21が受信した識別情報と、カメラ24によって読み取られた識別情報とが一致するか否かの判定は、ユーザによって行われる。詳しくは、ユーザは、図8に示すように端末装置20の表示装置23に表示された複数のペアリングの候補先、すなわち、製造番号「111111」、「222222」、「333333」の中から、カメラ24によって読み取られた製造番号「222222」(図9参照)を指でタップすることにより、ペアリング先を選択する。しかし、この際、ユーザが誤って他の製造番号「111111」または「333333」をタップしてしまう可能性がある。例えば、ユーザが手袋を着用している場合、「222222」をタップしようとして、誤って「111111」または「333333」をタップしてしまう場合がある。この場合、端末装置20は、誤って特装車5Lのコントロールユニット10Lまたは特装車5Rのコントロールユニット10Rとペアリングされてしまうことになる。
例えば、端末装置20が誤って特装車5Lのコントロールユニット10Lとペアリングされてしまった場合、ユーザが端末装置20を用いて架装物の操作を行うと、特装車5Lの架装物が駆動されてしまい、ユーザの意図しない動作が行われることになる。そこで、端末装置20を用いて架装物の操作を行う場合には、直ちに操作可能とするのではなく、操作を開始する前にカメラ24により特装車5の二次元コード15を読み取り、正しいペアリング先とペアリングできているかを確認するようにしてもよい。
図11は、本実施形態に係る無線通信システム1の動作を説明するフローチャートである。本実施形態では、第1実施形態と同様、ステップS1~S6の処理が行われ、端末装置20と特装車のコントロールユニットとのペアリングが行われる。また、ステップS7の処理が行われ、車両データが収集される。
図12に示すように、端末装置20の表示装置23には、収集した車両データに基づいて、架装物の稼働状態を表す稼働状態表示画像60が表示される。本実施形態では、架装物の操作画像と稼働状態表示画像60とは、表示の切換が可能となっている。稼働状態表示画像60の右上部分には、架装物の操作画像に切り替えるためのボタン55が表示されている。
ユーザがボタン55をタップすると、端末装置20は、特装車5の二次元コード15を読み取ることを促す出力を行う。ここでは、端末装置20の表示装置23に、二次元コード15を読み取ることを促す画像(例えば、図8の画像33参照)が表示される(ステップS8)。ただし、二次元コード15を読み取ることを促す出力は、画像を表示することに限らず、音声を出力すること、端末装置20を振動させること等であってもよい。二次元コード15を読み取ることを促す出力の方式は特に限定されない。
二次元コード15を読み取ることを促す画像を見たユーザ3は、特装車5のコントロールユニット10の手前に移動し、端末装置20のカメラ24により二次元コード15を読み取る(ステップS9)。そして、ステップS9で読み取った識別情報がステップS6で承認された接続先の識別情報と一致しているか否かが判定され(ステップS10)、一致していることが確認されると接続が承認される(ステップS11)。なお、図13に示すように本実施形態に係る端末装置20の演算装置25は判定部29Cを有しており、ステップS10の判定は、演算装置25の判定部29Cにより行われる。そして、ステップS6において端末装置20が正しい特装車5のコントロールユニット10に接続されていれば、その接続が継続される。一方、ステップS6において端末装置20が誤った特装車5Lまたは5Rのコントロールユニット10Lまたは10Rに接続された場合、接続先が誤っていることを示すエラーメッセージを端末装置20に表示する(ステップS10a)。その後、特装車との接続を最初からやり直すか、もしくは特装車との接続を終了するかの選択を促す表示を端末装置20に表示する(ステップS10b)。ステップ10bにおいてやり直す選択がされた場合は、ステップS1に戻って前述の処理を繰り返し、端末装置20が正しい特装車5のコントロールユニット10に接続された後、端末装置20の表示装置23に、架装物の操作画像(例えば図10参照)が表示される(ステップS12)。ユーザは、この操作画像を用いて架装物を操作することができる。なお、ステップ10bにおいて終了する選択がされた場合は、このフローを終了する。
本実施形態によれば、端末装置20を用いて特装車5の架装物を操作する際に、表示装置23に誤った特装車5Lまたは5Rの操作画像が表示されることが防止される。そのため、ユーザが端末装置20を用いて誤った特装車5L,5Rの架装物に対して操作を行ってしまうことを防止することができる。これにより、ユーザの意図しない動作が発生することを確実に防止することができる。
本実施形態では、端末装置20を架装物の操作装置として利用する際に上述したペアリングの正誤確認を行っているが、第1実施形態のように単にペアリング専用機として端末装置20を利用する場合にも適用できる。つまり、ユーザが第2識別情報入力部27Bの情報を確認しつつ、ペアリングの候補先の中から判定(ステップ5)した後に、上述したような判定部29Cを用いた確認手段を用いた構成としても良い。
以上、本発明の実施形態について説明したが、前記各実施形態は例示に過ぎず、他にも様々な実施形態が可能である。次に、他の実施形態の例について説明する。
まず、特装車5は荷役装置付運搬車であるが、特装車の種類は何ら限定されない。特装車は、例えば、コンテナの脱着が可能なコンテナ荷役車両5A(図14参照)であってもよく、塵芥収集車5B(図15参照)であってもよい。なお、図14のコンテナ荷役車両5Aおよび図15の塵芥収集車5Bにおいて、前述の特装車5と同様の部分または対応する部分には同様の符号を付している。
こうした複数の種類の特装車を対象とする無線通信システムの場合、特装車の識別情報には、当該特装車の種類を特定する情報が含まれているとよい。例えば、識別情報には、荷役装置付運搬車、コンテナ荷役車両、塵芥収集車などを特定する情報が含まれているとよい。
また、前述したように、ペアリングの終了後、特装車のコントロールユニットから端末装置20に車両データが収集され(ステップS7参照)、稼働状態表示画像を表示することにより、ユーザは端末装置20を用いて架装物の稼働状態を容易に把握することができる。この架装物の稼働状態は、架装物に取り付けられた各種センサの検出値、架装物に備えられたアクチュエータに対する入力値(例えば、電流値、電圧値)などによって特定することができる。稼働状態表示画像は、例えば、上記センサの検出値、アクチュエータの入力値などを表示する画像である。なお、稼働状態の表示方式は何ら限定されない。稼働状態のデータの表示は、例えば、オンタイムの表示(言い換えるとリアルタイム表示)であってもよく、ピークホールドの表示(ピークの値のみの表示)であってもよい。例えば架装物を操作しながら表示させる場合は、オンタイムの表示の方が状態を把握しやすいため便利である。一方、稼働状態を統計的に把握する場合、ピークホールドの表示の方が異常の有無等を判断しやすく、便利である。
ところで、架装物は特装車の種類によって相違する。そのため、架装物の操作画像および稼働状態表示画像として、特装車の種類毎に専用の操作画像および稼働状態表示画像を用意しておくことが好ましい。
図13に示す端末装置20の演算装置25は、表示装置23に操作画像および稼働状態表示画像を表示させる画像表示部29Bを有している。端末装置20の演算装置25は、ペアリングが終了すると、特装車の識別情報から当該特装車の種類を特定する情報を読み取る。また、特装車のコントロールユニットから車両データを収集する。そして、演算装置25の画像表示部29Bは、端末装置20の表示装置23に、特装車の種類に応じた操作画像および稼働状態表示画像を表示させる。例えば画像表示部29Bは、特装車が荷役装置付運搬車5の場合は、図10に示すような操作画像50および稼働状態表示画像60を表示させ、特装車が塵芥収集車5Bの場合は、図16に示すような操作画像51および稼働状態表示画像61を表示させる。
図16は、塵芥収集車5B用の操作画像51および稼働状態表示画像61の一例を表す。塵芥収集車5B用の操作画像51には、架装物である塵芥収集装置のホッパおよび排出板等を操作するためのボタン51a~51eが含まれる。
本実施形態によれば、特装車の種類に応じて端末装置20の表示装置23に操作画像または稼働状態表示画像が表示される。表示装置23には、特装車の種類に応じた操作画像または稼働状態表示画像が表示され、誤った種類の特装車の操作画像または稼働状態表示画像が表示されてしまうことはない。そのため、ユーザが端末装置20を用いて誤った操作またはデータ収集を行ってしまうことを防止することができる
さらに、ユーザによって行われる端末装置20の通信機21が受信した識別情報と、カメラ24によって読み取られた識別情報とが一致するか否かの判定も特に限定される訳ではなく、上記判定は端末装置20の演算装置25等が行ってもよい。すなわち、上記判定を自動的に行ってもよい。無線接続の承認を自動的に行ってもよい。
前記実施形態では、二次元コード15が印刷されたシール16は、コントロールユニット10のケース10Aに貼り付けられている。しかし、前述したように、シール16を貼り付ける箇所は何ら限定されない。ただし、二次元コード15は、ユーザ3が携帯する端末装置20によって読み取られるため、端末装置20によって読み取りやすい箇所に設けることが好ましい。例えば、シール16は、リアバンパ17(図3参照)、リアバンパ17を支持するバンパアーム18、荷箱45の側面、荷役装置46、シャーシ42(図1参照)、またはキャブ41に貼り付けられていてもよい。図1に示すように、シャーシ42は車両前後方向に延びるサイドフレーム42Aを有し、シール16がサイドフレーム42Aの車幅方向の外側に貼り付けられていてもよい。シール16はキャブ41の外部に限らず、キャブ41の内部に貼り付けられていてもよい。
図14に示すようにコンテナ荷役車両5Aにおいて、コンテナを脱着させるためのフックアーム49よりも前方にコントロールユニット10を設け、このコントロールユニット10のケース10Aにシール16を貼り付けるようにしてもよい。あるいは、コンテナ荷役車両5Aの他の部位にシール16を貼り付けてもよい。図15に示すように塵芥収集車5Bにおいて、前輪43よりも後方かつ後輪44よりも前方の位置にコントロールユニット10を配置し、このコントロールユニット10のケース10Aにシール16を貼り付けるようにしてもよい。あるいは、塵芥収集車5Bの他の部位にシール16を貼り付けるようにしてもよい。
シール16は、特装車(例えば前述の荷役装置付運搬車、コンテナ荷役車両、塵芥収集車)の製造番号等が表示された図示しない製造プレート(銘板)に貼り付けられていてもよい。製造プレート自体は、通常見やすい位置に設置されるものであるので、その製造プレートにシール16を貼り付けることにより、ユーザは二次元コード15を容易に視認することができ、カメラ24により容易に撮影することができる。また、通常、製造プレートは車両部品にリベットやビスにより固定されるものであるが、その車両部品は損傷等すると、交換される。その場合、製造プレートを他の箇所に付け替えることがある。シール16を製造プレートに貼り付けておけば、このように製造プレートを付け替える場合に、改めて新しいシールを貼り付ける必要がない。
前記実施形態では、視認可能な識別体はマトリックス型二次元コード15であるが、識別体の形態は特に限定されない。視認可能な識別体は、例えば、バーコード(一次元コード)であってもよい。また、視認可能な識別体は、文字、図形、記号、色彩、またはそれらの組み合わせなどであってもよい。識別体は特装車に付された製造番号の文字自体であり、端末装置20は、カメラ24で撮影した画像から公知の画像認識技術を利用して製造番号を読み取るように構成されていてもよい。
前記実施形態では、識別体に含まれる識別情報は、特装車5の製造番号である。しかし、識別情報は特装車5を一義的に特定できる情報であれば足り、特装車5の製造番号に限定されない。識別情報は、特装車5の製造番号と異なる番号であってもよい。
前記実施形態では、二次元コード15等の視認可能な識別体をシール16に印刷し、そのシール16をコントロールユニット10のケース10Aに貼り付けることとしている。識別体は、シール16を介して特装車5に間接的に設けられている。しかし、識別体は特装車5に直接表示されていてもよい。例えば識別体は、コントロールユニット10のケース10A、特装車5の車体、車体に取り付けられた他の機器の一部、または製造プレートに直接印刷されていてもよく、刻印されていてもよい。例えば、コントロールユニット10のケース10Aの表面に二次元コード15を直接印刷してもよい。
特装車5が雨の日に走行する場合、コントロールユニット10のケース10A等は汚れやすくなる。また、工事現場などで用いられる特装車は、特に汚れやすい傾向がある。二次元コード15等の識別体に泥や埃が付着すると、カメラ24で正確に読み取りにくくなる。そのため、識別体は汚れにくい箇所に設けられていることが好ましい。また、識別体が表示される部分(例えば、前記実施形態におけるシール16)に、泥や埃が付着しにくくなるような処理、または、雑巾などで拭くことにより、付着した泥や埃が容易に取り除かれるようになる処理(例えば、撥水性処理)を施すようにしてもよい。
また、識別体が容易に消えないよう、識別体を覆う透明なカバーを設けるようにしてもよい。例えば、図17に示すように、コントロールユニット10のケース10Aに、シール16の表面を覆うアクリル製の透明なカバー19を設けるようにしてもよい。
前記実施形態では、識別体は二次元コード15であり、視認可能な識別体である。識別体の識別情報を読み取る読み取り装置は、端末装置20に内蔵されたカメラ24である。しかし、読み取り装置は、識別体に接近させたときに識別情報を読み取る装置であれば足り、カメラ24に限られない。例えば、NFC(Near Field Communication)を利用してもよい。図18に示すように、識別体は識別情報を電子データとして有する非接触ICタグ16Bであり、読み取り装置はその非接触ICタグ16Bと無線通信するリーダ24Bであってもよい。識別体は超音波などの音波を出力するように構成され、読み取り装置はその音波を受信するように構成されていてもよい。識別体と読み取り装置が近距離無線通信を行う場合、無線接続の承認を自動的に行ってもよい。
前記実施形態では、コントロールユニット10の通信装置11は、演算装置12と共にケース10Aの内部に収容されている。しかし、通信装置11は演算装置12と別々に配置されていてもよい。例えば図15に示すように、通信装置11は、ケース10Aの外部に配置されていてもよい。本発明に係るコントロールユニットには、一体的に形成されたものに限らず、特装車の異なる部位に互いに分離して配置された複数の部品により構成されるものも含まれる。
前記実施形態では、ユーザ3が特装車5に乗り込む前に端末装置20とコントロールユニット10とを無線通信させることとしていたが、端末装置20とコントロールユニット10との無線通信を行う時期は特に限定されない。ユーザ3が特装車5から降りた後であってもよい。また、端末装置20とコントロールユニット10との無線通信を行う場所も何ら限定されず、駐車場でなくてもよい。
前記実施形態では、無線通信システム1にはサーバ30が含まれているが、サーバ30は必ずしも必要ではない。本発明に係る無線通信システムは、特装車のコントロールユニットおよび携帯式の端末装置のみにより構成されていてもよい。
図6等に示すように、前記実施形態では、識別データの発信(ステップS2)、識別データの受信(ステップS3)、識別情報の読み取り(ステップS4)の順に処理を行う場合について説明した。しかし、ステップS4の識別情報の読み取りは、ステップS2の識別データの発信と同時またはそれ以前に行ってもよい。ステップS4の識別情報の読み取りは、ステップS3の識別情報の受信と同時またはそれ以前に行ってもよい。
前述の第3実施形態のように、再度二次元コード15を読み込むことで正しい特装車5と接続されているかを確認する方法に代えて、例えばコントロールユニット10に有線で接続されたリモコン(図示せず)と端末装置20とを用いて確認する方法でも良い。この方法では、リモコンに確認用の専用スイッチを設けておくことが好ましい。専用スイッチの操作によってコントロールユニット10に信号が入力されるが、この信号によって架装物が作動しない。
上記確認方法について、図10を参照して説明する。まず、端末装置20の画面下段のボタン50cまたは50dをタップする。このとき、画面上段のボタン50aおよび50bをタップしないので、ボタンタップによってテールゲート46Aが作動することがない。次に、端末装置20のボタン50cまたは50dをタップしたまま、リモコンの専用スイッチを操作する。ステップS6で接続された特装車と、有線によりリモコンと接続された特装車とが一致する場合、特装車のコントロールユニット10には、端末装置20のボタン50cまたは50dのタップに対応する信号と、専用スイッチの操作に対応する信号との両方が同時に入力される。この場合、正しい特装車5と接続されていることを端末装置20の画面に表示する。この後、リモコンおよび端末装置20への操作を一旦解除し、端末装置20のボタン50cまたは50dをタップすることでテールゲート46Aを操作できる。
一方、ステップS6で接続された車両と不一致の場合、特装車のコントロールユニット10には、専用スイッチの操作に対応する信号が入力されるが、端末装置20のボタン50cまたは50dのタップに対応する信号が入力されない。この場合、誤った(意図しない別の)特装車と端末装置20が接続されているので、端末装置20にエラーメッセージを表示するとともに、特装車と端末装置20との再接続を促す表示を行う。表示に従って再接続することで、正しい特装車5と接続して、端末装置20を用いて意図する特装車5のテールゲート46Aを操作できる。