本発明を実施するための形態を説明する。
図1は、本発明の農作業機異常検知システムの一実施形態を示すブロック図である。
図1の実施形態では、農作業機異常検知システムとして、演算部21、記録部22、制御部23、入出力部24を備えている。これらは、制御ボックス20内に設けることができる。なお、制御ボックス20は周りをケースで覆い、防塵・防水機能を有することが可能である。さらに、図1の実施形態では、表示部31、操作部32を備えている。また、トラクタ1に備えるトラクタ制御部11から情報が出力される構成を用いることができる。さらに、作業機センサ部26を備えることができる。
ここで、制御ボックス20、作業機センサ部26は、トラクタ1に装着する農作業機2側に備えている。また、表示部31は、制御ボックス20からの情報に基づき遠隔で表示させることが可能な構成である。操作部32は制御ボックス20へ操作情報を遠隔で送信することが可能な構成である。このため、表示部31と操作部32は、トラクタ1の運転席付近に配置することが可能である。また、表示部31と操作部32は端末40として一体に構成することも可能である。
トラクタ制御部11は、トラクタ1側の制御のための処理を行うもので、トラクタ1に予め備えられているものを利用できる。そして、トラクタ制御部11からトラクタ1に関する情報を出力して、制御ボックス20の演算部21の処理に用いることができる。トラクタ1から出力される情報は、例えば、トラクタ1のPTO(Power take-off)トルク値、PTO回転数、ロワーリンクの位置(角度)、スリップ率、車速、位置情報等である。例えば、ロワーリンクの位置であれば、ロワーリンクの上下位置の信号(例えば、最上げが100%、最下げを0%とした場合のパーセント表示の信号等)を出力する。
演算部21は、トラクタ制御部11や作業機センサ部26からの情報を取得して、異常の判定や農作業機の状態を算出するための処理を行う。また、演算部21は、操作部32による操作の情報を受信して処理に用いることができる。また、演算部21は、表示部31での表示のための必要な処理を行うこともできる。演算部21は、CPU等の演算等のために必要な電子デバイス等で構成されている。また、必要に応じてタイマ等も備えている。
記録部22は、演算部21で算出された情報、作業機センサ部26からの情報、表示部31の表示情報、操作部32の操作情報等の情報を記録しておくことができる。このために必要なデバイスで構成される。
制御部23は、演算部21に対する演算の制御、演算部21や記録部22に対する情報の入出力の制御、作業機センサ部26からの情報の入力制御、表示部31への情報の出力制御、操作部32からの操作情報の入力制御等を行う。制御部23は、CPU等の制御等のために必要な電子デバイス等で構成されている。なお、演算部21と制御部23は処理部として一体に構成することもできる。
入出力部24は、トラクタ制御部11、作業機センサ部26、表示部31、操作部32と情報の入出力を行う。図1では、入出力部24は、トラクタ制御部11、作業機センサ部26、表示部31、操作部32とそれぞれ有線接続されている例が示されている。一方、表示部31と操作部32は、制御ボックス20と無線通信による情報のやりとりをする構成でもよく、この場合、入出力部24は、無線送受信部としての機能を果たす。さらに、トラクタ制御部11と制御ボックス20も無線通信による情報のやりとりをする構成でもよく、この場合、入出力部24は、無線送受信部としての機能を果たす。
作業機センサ部26は、農作業機2の状態を検出するために用いるセンサである。特に農作業機2のトルクを検知するためのセンサ、農作業機2の前後方向の傾きを検知するためのセンサ、農作業機の振動を検知するためのセンサ等を必要に応じて用いることができる。具体的には、作業機センサ部26のセンサとしては、トルクセンサ、加速度センサ、角速度センサ(ジャイロセンサ)、振動センサ、多軸センサ、傾斜センサ、地磁気センサ、温度センサ等を用いることができる。これ以外にも、作業機センサ部26のセンサとしては、例えば、回転センサ、ポテンショメータ、リミットスイッチ、ストロークセンサ等、農作業機の状態を検知するセンサ等を備えていてもよい。作業機センサ部26は、センサの種類によっては制御ボックス20内に設けることも可能である。
表示部31は、後述する農作業機2の状態や農作業機2の異常の情報を表示することができる。表示部31は、例えば、液晶、有機EL、LED等による表示画面を備えており、ここに必要な表示を行う。この他、LED等のランプによる点灯表示でもよい。
操作部32は、表示部31の表示のON(入)やOFF(切)、必要な設定の入力、リセット、停止解除、表示の切り替え等を行うためのスイッチ類等を備えている。
ここで、表示部31と操作部32は、一体にして、端末40としてもよい。具体的には、操作しやすくするために、表示画面をタッチパネルの方式を採用して端末40を構成してもよい。例えば、スマートフォンやタブレット型コンピュータ等の汎用の持ち運び可能な端末を適用できる。ここにアプリケーションを導入して、農作業機2の状態に関する表示や必要なボタンを表示させることができる。端末40は、入出力部24と通信を行う。特に端末40の機能に有している無線通信を利用することが有効である。
また、端末40はネットワーク200に接続可能なユーザ端末220aとして適用できる。ここで、ユーザ端末220aの情報は、他のユーザ端末220b、220c、220d、220e、220fの一部または全部と共有することが可能である。さらに、ネットワーク200に接続可能な管理コンピュータ230とも情報を送受信可能である。ネットワーク200としてはインターネット210等があげられる。
管理コンピュータ230は、各ユーザ端末220a、220b、220c、220d、220e、220fと情報の共有ができ、農作業機2の状態や農作業機2の異常の情報を得て、記録することができる。また、メンテナンスや修理に関する情報を各ユーザ端末220a、220b、220c、220d、220e、220fごとに必要な情報を分けて送ることができる。管理コンピュータ230は、サーバやパーソナルコンピュータ、記憶装置などの必要に応じた装置を用いることができる。また別の記憶装置と接続してもよい。
図2は、本発明の農作業機異常検知システムの一実施形態を示す平面概略図である。
図2では、トラクタ1側には、トラクタ制御部11が設けられると共に、端末40が配置されている。農作業機2側では、制御ボックス20と作業機センサ部26が有線接続されている。トラクタ制御部11に配線12が接続され、この配線の端部はコネクタ12aとなっている。制御ボックス20に配線28が接続され、この配線の端部はコネクタ28aとなっている。コネクタ12aとコネクタ28aは互いの着脱が可能なコネクタであり、トラクタ1と農作業機2の間で接続されている。これにより、トラクタ制御部11と制御ボックス20が有線接続される。さらに、端末40と制御ボックス20は無線通信により情報のやりとりが可能な構成となっている。
制御ボックス20内の演算部21では、トラクタ制御部11や作業機センサ部26からの情報に基づき農作業機2の状態や異常の有無を算出する。算出した情報は、無線通信を介して、端末40へ送信される。端末40では、受信した情報に基づき、農作業機2の状態や異常の有無に関する表示を行う。
(農作業機の例)
図3は、本発明の農作業機異常検知システムに適用可能な農作業機の例を示す平面図である。図4は、本発明の農作業機異常検知システムに適用可能な農作業機の例を示す側面図である。図5は、本発明の農作業機異常検知システムに適用可能な農作業機の伝動部分の例を示す部分断面図である。図3~5は、トラクタ1に装着する農作業機2としてロータリー作業機100による実施形態を示している。以下、ロータリー作業機100の進行方向を前方向として説明している。図3の左右方向がロータリー作業機100の横方向(左右方向)であり、図3の上下方向がロータリー作業機100の前後方向である。図4の左右方向がロータリー作業機100の前後方向であり、図4の上下方向がロータリー作業機100の上下方向である。また、図3ではトラクタ1の図示は省略し、図4ではトラクタ1の図示を簡略化し、後ろ側部分のみを示している。
トラクタ1の出力軸19から出力されたPTO動力は(図示を省略した)ジョイント等を介して、入力軸101から入力され、ミッションケース102内の第1ベベルギア151と第2ベベルギア152を介して、左フレームパイプ103内の駆動軸153に伝達される。駆動軸153からは、チェーンケース105内の第1スプロケット154、チェーン155、第2スプロケット156を介して、耕耘部カバー112の下側に位置する耕耘部130に伝達される。耕耘部130は、複数の耕耘爪132(図4では1つのみ図示、図5では一部のみ図示)を有する耕耘軸131等により構成され、耕耘軸131を回転させることにより耕耘爪132が回転して耕耘作業を行う。耕耘爪132は、耕耘軸131に接合等で固定されるフランジ部131aに対してボルト等により交換可能に固定される。
ここで、ミッションケース102の左側に左フレームパイプ103が備えられており、その左側端部はチェーンケース105が取り付けられている。ミッションケース102の右側に右フレームパイプ104が備えられており、その右側端部はブラケット107が取り付けられている。チェーンケース105及びブラケット107は下側に向けて設けられ、耕耘軸131の両端の側面まで延在している。左フレームパイプ103と右フレームパイプ104の途中には前方に向けて取付板108がそれぞれ備えられ、この前側でロワーアーム122が取り付けられている。ミッションケース102、左フレームパイプ103、右フレームパイプ104の下側には、チェーンケース105とブラケット107の間に渡って、耕耘部カバー112を備えている。さらに、耕耘部カバー112の後ろ側では、整地体114が、後方下側へ向けて、接続部材である蝶番115を介して耕耘部カバー112に対して横方向を回転軸として回動可能に取り付けられている。また、左右のフレームパイプ103、104と、整地体114を連結するように接地圧調整手段116がそれぞれ設けられている。また、耕耘部130の前側には、左右にそれぞれゲージ輪117が設けられている。また、サイドカバー118は、チェーンケース105及びブラケット107の後ろ側で左右にそれぞれ取り付けられている。
ここで、図3、4では、図1、2で示した制御ボックス20は耕耘部カバー112の上部面に取り付けられている。図3では、左側の取付板108付近の左フレームパイプ103の下の耕耘部カバー112上に取り付けられている。図3、4に示される制御ボックス20には、内部に作業機センサ部26が備えられており、この場合、作業機センサ部26は振動を検出するためのセンサや姿勢を検出するためのセンサで構成できる。特に、作業中の振動を検出することに適した位置となる。なお、作業機センサ部26は必要に応じて別の位置に設けてもよい。
図4に示されるように、ロータリー作業機100は、トラクタ1の後部に装着されている。このとき、マスト121やロワーアーム122を有する装着部120を、トラクタ1側の後部に取り付けられている連結部9に装着する。連結部9は、トラクタ1側のトップリンク15とロワーリンク16を介してトラクタ1側に取り付けられている。ここで、トップリンク15は、ロワーリンク16よりも上部に配置されている。作業者はロワーリンク16をトラクタ1の運転席から操作すると、ロワーリンク16はトラクタ1側の支点16aを中心に回動し、トップリンク15もトラクタ1側の支点15aを中心に回動する。これにより、連結部9が上下するのでロータリー作業機100を上下に位置移動できる。このとき、トップリンク15やロワーリンク16のリンク機構により、ロータリー作業機100を上に上げるに従い、ロータリー作業機100が前側に傾いていく構成になっている。このことは他の農作業機2でも同様である。なお、トップリンク15は、連結部9の左右中心付近に1つ、ロワーリンク16は連結部9の左右に2つ設けられている。
また、図5で示すように入力軸101から入力されたPTO動力は、所定の回転数N1で回転する。例えば、定格の回転数540rpm(revolutions per minute)等である。そして、ミッションケース102内では、入力軸101に固定される第1ベベルギア151と、駆動軸153に固定される第2ベベルギア152の噛み合いにより、回転数N1は回転数N2に1次減速される。例えば、第1ベベルギア151の歯数が12で、第2ベベルギア152の歯数が31であれば、12/31だけ減速される。さらに、チェーンケース105内では、駆動軸153に固定される第1スプロケット154と、耕耘軸131に固定される第2スプロケット156間のチェーン155を介する伝達により、回転数N2は回転数N3に2次減速される。例えば、第1スプロケット154の歯数が15で、第2スプロケット156の歯数が17であれば、15/17だけ減速される。
上述した例で計算すると、入力軸101と第1ベベルギア151の回転数N1が540rpm、駆動軸153と第2ベベルギア152と第1スプロケット154の回転数N2が209rpm、耕耘軸131と第2スプロケット156の回転数N3が184.4rpmとなり、伝動機構により減速していく。この場合の振動数は回転数に比例して、回転数/60(Hz)で表せられる。すると、入力軸101等の540rpmの場合が9Hz、駆動軸153等の209rpmの場合が3.5Hz、耕耘軸131等の184.4rpmの場合が3.1Hzとなる。すなわち、回転数の異なる部品ごとで振動の値が異なることが分かる。
(初期設定の例)
図6は、本発明の農作業機異常検知システムの初期設定の例を示すフローチャートである。ここでは、図1の演算部21による処理を示している。
電源が入ると(S101)、初期情報の記録が無いか否かを判定する(S102)。これは、初期設定のデータ(初期トルク値、限界値、初期振動値等)が記録部22に記録されていない場合や、今までトルクデータの記録等を行っていない場合等が初期情報の記録がない場合に該当する。初期情報の記録が有る場合はS103へ行き、初期情報の記録が無い場合はS104へ行く。
S103では、リセットするか否かを判定する。これは、操作部32(端末40)からの情報に基づいて行うことができる。例えば、操作部32(端末40)でリセットの操作を行った場合はリセットを行う。リセットを行う場合は、今までの初期設定をクリアして、S104へ行き、リセットを行わない場合は、S116へ行き処理が終了する。
S104では、トルク・作業条件のデータが入力されたか否かを判定する。ここでの判定は、トラクタ制御部11からの情報、または、作業機センサ部26からの情報に基づいてトルクデータや作業条件のデータが入力されているか否かを判定する。トラクタ制御部11からの情報であれば、トラクタ1に関するデータとして、例えば、PTOトルク値、PTO回転数、ロアーリンクの高さ(角度)、スリップ率、車速、位置情報等があげられる。また、作業機センサ部26からの情報であれば、農作業機2に関する情報として例えば、トルク値、傾斜角度、振動数、振幅、加速度などの情報があげられる。トルク値は、爪の回転動力に関するトルク値である。トラクタ制御部11であれば、PTOトルク値、ロータリー作業機100であれば、PTOから入力したトルク値、耕耘軸131にかかるトルク値、途中の伝動機構のトルク値等である。作業条件のデータは、S106やS114の補正で用いるために必要なデータである。どのデータが必要かは、予め演算する条件に合わせて設定することができる。S104では必要なデータが取得出来ているかどうかで判定し、トルク・作業条件のデータが入力されたと判定した場合はS105へ行き、トルク・作業条件のデータが入力されていないと判定した場合はS104のままとなる。
S105では、一定時間当りのトルクデータを記録する。ここでは、トラクタ制御部11から入力されたPTOトルク値、又は、作業機センサ部26から入力されたトルク値、又はその両方を用いて、予め定めた一定時間当りのトルクデータを記録部22に記録する。ここでのトルクデータは、農作業機2の作業中のトルクデータを想定しているため、作業中と想定されるトルクデータを記録する。
ここで作業中と想定される例について説明する。
1つ目の例は、取得したトルク値が予め定めた所定以上のトルク値である場合に作業中であると判定できる。これは、作業中は所定以上のトルク値がかかっていることが想定されるからである。ここでのトルク値は、トラクタ制御部11から入力されたPTOトルク値、又は、作業機センサ部26から入力されたトルク値を用いることができる。
2つ目の例は、農作業機2が所定高さ以下に下におろした状態の場合に作業中であると判定される。これは、作業中は農作業機2を所定高さ以下に下におろして圃場への作業を行うことが想定されるからである。この状態の検出は、トラクタ制御部11からの情報によりロワーリンク16(図4)の上下方向の位置を所定以下に下げたことを検出した場合に検出できる。また、前後方向の角度を検知できる作業機センサ部26のセンサにより農作業機2の前後方向の角度が前側に傾く方向を正方向としたときに所定以下になったことを検出した場合等があげられる。センサの例としては、加速度センサ、角速度センサ(ジャイロセンサ)、傾斜センサ、地磁気センサ等があげられる。
3つ目の例は、農作業機2の振動が所定以上である場合があげられる。これは、作業中は、例えば農作業機2の爪が圃場の土に接触して抵抗を受ける等により、農作業機2が所定以上振動することが想定されるからである。この状態の検出は振動を検知できる作業機センサ部26のセンサにより農作業機2の振動の値が所定以上と想定される場合を検出できる。振動の値としては、振動における、振幅値、加速度値、速度値、振動数等があげられる。センサの例としては、加速度センサ、角速度センサ、振動センサ等があげられる。
上述した3つの例は2以上を組み合わせて、より正確な判定を行ってもよい。例えば、1つ目の例と2つ目の例の組み合わせであれば、作業機センサ部26を設けなくても、トラクタ制御部11からの情報のみで作業中であるか否かを判定することができる。
次に、初期トルク値の算出を行う(S106)。ここでは、S105で記録したトルクデータやS104で入力された作業条件のデータを用いる。例えば、S105で記録したトルクデータからトルクの平均値や中央値等を求めることで初期トルク値とすることもできる。さらに、作業条件は、圃場の状態、トラクタ1の状態、農作業機2の状態等によるため、作業毎に異なる場合が多く、これにより、トルク値も影響を受ける可能性が高い。このため、初期トルク値を算出するにあたり、これらの作業条件をふまえた補正を行いトルク値の標準化を行うことができる。ここでの標準化は、標準となる作業条件に合わせる補正を行うものである。このことで、作業条件が異なっても、標準化したトルク値を算出することで、より正確な比較を行いやすい初期トルク値にできる。データの補正と標準化の例について、次に説明する。
第1の例は、農作業機2の作業深さに応じた補正を行うものである。例えば、作業深さが深ければトルクは大きくなり、浅ければトルクが小さくなることが想定される。このため、標準とする作業深さのトルク値に補正を行うものである。農作業機2の作業深さの測定は、例えば、トラクタ制御部11からのロワーリンク16の上下方向位置の情報により農作業機2の作業深さを算出できる。また、作業機センサ部26により農作業機2の前後方向の傾きを検出するセンサを用いて算出できる。また、作業機センサ部26とトラクタ制御部11の情報の両方を用いて算出してもよい。
第2の例は、作業する圃場の土壌の硬軟度に応じた補正を行うものである。例えば、土壌が硬ければトルクは大きくなり、土壌が柔らかければトルクが小さくなることが想定される。このため、標準とする土壌の硬さによるトルク値に補正を行うものである。土壌の硬軟度の測定は、例えば、トラクタ制御部11からのトラクタスリップ率の情報や、作業機センサ部26からの振動・振幅・加速度等の情報等から算出できる。これらの情報は少なくとも1つを用いることで算出し、複数用いて、より正確な算出を行ってもよい。
第3の例は、トラクタ1の牽引抵抗に応じた補正を行うものである。例えば、牽引抵抗が大きければトルクは大きくなり、牽引抵抗が小さければトルクが小さくなることが想定される。このため、標準とする牽引抵抗によるトルク値に補正を行うものである。牽引抵抗の測定は、例えば、トラクタ制御部11からの車速、スリップ率、位置情報等の情報から算出できる。これらの情報は少なくとも1つを用いることで算出し、複数用いて、より正確な算出を行ってもよい。なお、作業機センサ部26から、車速や位置情報のデーが取得できる場合は、それを用いてもよい。
上記第1~3の例は、少なくとも1以上を用いることができる。また、これ以外の例を、上記第1~3の例とは別に又は追加で用いても良い。S106の補正は、予め行った実験等により得られたデータから補正の程度(式や係数)を決定することができる。
次に、初期トルク値の記録を行う(S107)。これは、S106で算出した初期トルク値を記録部22に記録すればよい。
次に、限界係数が入力されたか否かを判定する(S108)。限界係数は、初期トルク値に対して何割程度まで使用可能にするかというものであり、限界値の算出前に予め定めておくことができる。これは、トルク値が減少すると、爪の摩耗も進行していることが想定されるため、この限界係数により爪の使用限度に相当するトルク値(限界値)を定めることが可能となる。限界係数は、少なくとも0より大きく1より小さい値である。例えば、0.3より大きく0.9より小さい値、さらには、0.5より大きく0.8よりも小さい値等である。最初は試験等で決めた推奨の限界係数を記録しておくことができる。そして、操作部32(端末40)の操作により任意で変更可能とできる。S108は、操作部32(端末40)の操作により作業者が限界係数の入力を行った場合、限界係数が入力されたと判定される。S108で、限界係数が入力された場合はS109へ行き、入力されない場合はS110へ行く。
S109では、限界係数の変更が行われる。これは、操作部32(端末40)から入力された値に変更することができる。
S110では、限界値の算出を行う。限界値は、S106で算出した初期トルク値に限界係数を乗ずること(初期トルク値×限界係数)で算出できる。限界値は、初期トルク値よりも小さい値となる。
次に、限界値の記録を行う(S111)。これは、S110で算出した限界値を記録部22に記録すればよい。
次に、振動データが入力されているか否かを判定する(S112)。ここでの判定は、作業機センサ部26からの情報に基づいて行うことができる。振動データは振動に関するデータであり、振動における、振幅値、加速度値、速度値、振動数(周波数)、波形等のデータがあげられる。例えば、作業機センサ部26からこれらの情報を取得することができる。振動データが入力されたと判定した場合はS113へ行き、振動データが入力されていないと判定した場合はS112のままとなる。
S113では、一定時間当りの振動データを記録する。作業機センサ部26からの情報に基づき入力した振動データから、予め定めた一定時間当りの振動データを記録部22に記録する。ここでの振動データは、農作業機2の作業中の振動データを想定しているため、作業中と想定される振動データを記録する。作業中と想定される例は、S105と同様である。なお、非作業時における振動データを記録することも可能である。
次に、初期振動値の算出を行う(S114)。ここでは、S113で記録した振動データやS104で入力された作業条件のデータを用いる。例えば、S113で記録した振動データから振動値の平均値や中央値等を求めることで初期振動値とすることもできる。ここで、振動値としては、振動における、振幅値、加速度値、速度値、振動数(周波数)、波形等があげられ、この他に、これらの値の組み合わせやこれらの値の少なくとも1つを用いたパラメータ等を用いることもできる。さらに、作業条件は、圃場の状態、トラクタ1の状態、農作業機2の状態等によるため、作業毎に異なる場合が多く、これにより、振動値も影響を受ける可能性が高い。このため、初期振動値を算出するにあたり、これらの作業条件をふまえた補正を行い振動値の標準化を行うことができる。ここでの標準化は、標準となる作業条件に合わせる補正を行うものである。このことで、作業条件が異なっても、標準化した振動値を算出することで、より正確な比較を行いやすい初期振動値にできる。データの補正と標準化の例について、次に説明する。
第1の例は、農作業機2の作業深さに応じた補正を行うものである。例えば、作業深さが深ければ、それだけ作業抵抗は大きくなるので、振動は大きくなり、浅ければ振動が小さくなることが想定される。このため、標準とする作業深さの振動値に補正を行うものである。農作業機2の作業深さの測定はS106と同様である。
第2の例は、作業する圃場の土壌の硬軟度に応じた補正を行うものである。例えば、土壌が硬ければ振動は大きくなり、土壌が柔らかければ振動が小さくなることが想定される。このため、標準とする土壌の硬さによる振動値に補正を行うものである。土壌の硬軟度の測定はS106と同様である。
第3の例は、トラクタ1の牽引抵抗に応じた補正を行うものである。例えば、牽引抵抗が大きければ振動は大きくなり、牽引抵抗が小さければ振動が小さくなることが想定される。このため、標準とする牽引抵抗による振動値に補正を行うものである。牽引抵抗の測定は、S106と同様である。
上記第1~3の例は、少なくとも1つ以上を用いることができる。また、これ以外の例を、上記第1~3の例とは別に又は追加で用いても良い。S114の補正は、予め行った実験等により得られたデータから補正の程度(式や係数)を決定することができる。
次に、初期振動値の記録を行う(S115)。これは、S114で算出した初期振動値を記録部22に記録すればよい。
これらの処理により初期設定が終了する(S116)。
(異常判定の第1の例)
図7は、本発明の農作業機異常検知システムの異常判定の第1の例を示す第1フローチャートである。図8は、本発明の農作業機異常検知システムの異常判定の第1の例を示す第2フローチャートである。図7と図8は、「A」同士、「B」同士で接続して構成されるフローチャートである。ここでは、図1の演算部21による処理を示している。
電源が入ると(S1001)、トルク・作業条件のデータが入力されたか否かを判定する(S1002)。ここでは、図6で説明したS104と同様のため説明は省略する。S1002で、トルク・作業条件のデータが入力されたと判定した場合はS1003へ行き、トルク・作業条件のデータが入力されていないと判定した場合はS1002のままとなる。
S1003では、一定時間当りのトルクデータを記録する。ここでは、図6で説明したS105と同様のため説明は省略する。ここでの一定時間は、例えば、現在よりある程度前の時間から現在までの一定時間とすることができる。
次に、現在トルク値の算出を行う(S1004)。ここでは、S1003で記録したトルクデータやS1002で入力された作業条件のデータを用いる。例えば、S1003で記録したトルクデータでトルクの平均値や中央値等を求めることで現在トルク値とすることもできる。一方で、作業条件は、作業毎に異なる場合が多く、これにより、トルク値も影響を受ける可能性が高い。このため、現在トルク値を算出するにあたり、これらの作業条件をふまえた補正を行いトルク値の標準化を行うことができる。これらの作業条件による補正と標準化は、図6で説明したS106と同様のため説明を省略する。
次に、振動データが入力されたか否かを判定する(S1005)。ここでは、図6で説明したS112と同様のため説明は省略する。S1005で、振動データが入力されたと判定した場合はS1006へ行き、振動データが入力されていないと判定した場合はS1005のままとなる。
S1006では、一定時間当りの振動データを記録する。ここでは、図6で説明したS113と同様のため説明は省略する。ここでの一定時間は、例えば、現在よりある程度前の時間から現在までの一定時間とすることができる。
次に、現在振動値の算出を行う(S1007)。ここでは、S1006で記録した振動データやS1002で入力された作業条件のデータを用いる。例えば、S1006で記録した振動データで振動の平均値や中央値等を求めることで現在振動値とすることもできる。一方で、作業条件は、作業毎に異なる場合が多く、これにより、振動値も影響を受ける可能性が高い。このため、現在振動値を算出するにあたり、これらの作業条件をふまえた補正を行い振動値の標準化を行うことができる。これらの作業条件による補正と標準化は、図6で説明したS114と同様のため説明を省略する。
次に、トルク変化がないか否かを判定する(S1008)。ここでの判定は、S1004で算出された現在トルク値と、図6のS107で記録された初期トルク値を比較して行う。これらの値があらかじめ定めた所定の値以上離れている場合は、トルク変化があると判定する。離れていない場合はトルク変化がないと判定する。例えば、現在トルク値が初期トルク値から±3%よりも値が離れていれば、トルク変化があると判定する等である。トルク変化がないと判定される場合はS1009へ行き、トルク変化があると判定される場合はS1301(図8)へ行く。
S1009では、振動変化がないか否かを判定する。ここでの判定は、S1007で算出された現在振動値と、図6のS115で記録された初期振動値を比較して行う。これらの値があらかじめ定めた所定の値以上離れている場合は、振動変化があると判定する。所定の値以上離れていない場合は振動変化がないと判定する。例えば、現在振動値が初期振動値から±3%よりも値が離れていれば、振動変化があると判定する等である。比較する振動値としては、例えば、振動数または振幅、これら両方の値等があげられる。振動変化がないと判定される場合はS1010へ行く。振動変化があると判定される場合はS1101へ行く。
S1010では、異常なしと特定される。ここでの情報は表示部31に表示させることもできる。あえて表示させなくてもよい。この後は、S1002へ戻る。すなわち、トルク変化がなく、振動変化がない場合は、異常なしと特定される。
S1101では、周期的異常振動がないか否かを判定する。ここでは、異常振動の波形が周期的なものかどうかで判定される。異常振動と判定される所定以上の現在振動値に一定の周期性があることが確認できれば、周期的異常振動があると判定し、確認できなければ周期的異常振動がないと判定することができる。周期性は、一定時間間隔の範囲内に振動値の値が他と比べ一定以上大きな値が検出される等で判定できる。周期的異常振動がないと判定される場合はS1102へ行き、周期的異常振動があると判定される場合はS1201へ行く。
S1102では、機体破損の異常と特定する。ここでの情報は表示部31(端末40)に表示させることができる。
次に、運転停止と特定する(S1103)。この運転停止の特定は、運転を続けた場合に、農作業機2の損傷が悪化することが見込まれ、運転を止めさせたほうがよい場合を想定している。この場合、表示部31に運転停止の表示を行う。また、トラクタ1と連動可能なときは、運転停止のための信号をトラクタ制御部11へ送信して、トラクタ1を停止させてもよい。このときの停止は、トラクタ1のPTO及び走行の停止が考えられる。また、PTOのみを停止させてもよい。また、農作業機2と連動可能なときは、農作業機2の関連する一部の作動または全部の作動を停止させてもよい。
次に、停止解除するか否かを判定し(S1104)、停止解除する場合は、S1002へ戻り、解除しない場合は、S1103の運転停止の状態を維持する。ここで、停止解除するか否かは、操作部32(端末40)から、停止解除の操作信号を受信したか否かで判定することができる。
S1201では、ギヤやスプロケットの欠損の異常と特定する。この状態は、図5であれば、第1ベベルギア151、第2ベベルギア152、第1スプロケット154、第2スプロケット156の破断が相当する。このとき、異常振動の周波数から、さらに詳しく部位を予測することができる。例えば、図5で説明したように、第1ベベルギア151、第2ベベルギア152と第1スプロケット154、第2スプロケット156、等の部位によって、周波数が異なる。これらの周波数をとらえることのできる範囲を設定しておくことで、異常振動の周波数がどの部位に相当するかを推定して、どの部位の故障かを判定することが可能となる。ここでの情報は表示部31(端末40)に表示させることができる。
次に、運転停止と特定する(S1202)。これは、S1103と同様である。
次に、停止解除するか否かを判定し(S1203)、停止解除する場合はS1002へ戻り、解除しない場合はS1202の運転停止の状態を維持する。ここで、停止解除するか否かの判定方法は、S1104と同様である。
図8のS1301では、トルクが減少したか否かを判定する。ここでの判定は、図7のS1004で算出された現在トルク値と、図6のS107で記録された初期トルク値を比較して行う。現在トルク値が、初期トルク値よりも減少していれば、トルク減少と判定しS1302へ行く。減少していなければ、トルク減少でないと判定しS1601へ行く。
S1302では、トルクが急減したか否かを判定する。ここでの判定は、図7のS1004で算出された現在トルク値と、図6のS107で記録された初期トルク値を比較して行う。現在トルク値が、初期トルク値よりも大きく減少していれば、トルク急減と判定しS1303へ行く。大きく減少していなければ、トルク急減でないと判定しS1501へ行く。ここで、トルクが大きく減少しているかは、例えば、現在トルク値が、初期トルク値よりも半分より小さくなった場合、さらには3分の1より小さくなった場合等があげられる。
S1303では、振動が増加したか否かを判定する。ここでの判定は、図7のS1007で算出された現在振動値と、図6のS115で記録された初期振動値を比較して行う。現在振動値が初期振動値よりも、あらかじめ定めた所定の値以上増加している場合は、振動が増加していると判定する。所定の値以上増加していない場合は、増加していないと判定する。ここで、所定の値以上は、現在振動値が初期振動値から3%よりも大きく増加している等である。振動増加している場合はS1304へ行き、振動増加していない場合は、S1401へ行く。
S1304では、耕耘爪欠損の異常と特定する。図4、5であれば耕耘爪132の欠損が相当する。耕耘爪が欠損した場合、全体のトルクは減少するが、残りの耕耘爪の配置のバランスがくずれ振動が増加することが想定される。ここでの情報は表示部31(端末40)に表示させることができる。この後は、S1002へ戻る。
S1401では、チェーン等の異常と特定する。この状態は、図5であれば、チェーン155の破断が相当する。この状態は耕耘軸131が回転しない状態が想定される。ここでの情報は表示部31(端末40)に表示させることができる。
次に、運転停止と特定する(S1402)。これは、S1103と同様である。
次に、停止解除するか否かを判定し(S1403)、停止解除する場合は、S1002へ戻り、解除しない場合はS1402の運転停止の状態を維持する。ここで、停止解除するか否かの判定方法は、S1104と同様である。
S1501では、現在トルク値が限界値よりも小さいか否かを判定する。ここでの判定は、S1004で算出された現在トルク値と、図6のS111で記録された限界値を比較して行う。現在トルク値が限界値よりも小さい場合はS1502へ行き、現在トルク値が限界値よりも小さくない場合は、S1002へ戻る。
S1502では、耕耘爪摩耗の異常と特定する。図4、5であれば耕耘爪132の摩耗が相当する。耕耘爪は摩耗によりトルクが減少することが想定される。耕耘爪使用の限界を上述した限界値として設定しておくことが可能である。ここでの情報は表示部31(端末40)に表示させることができる。この後は、S1002へ戻る。
S1601では、トルクが急増したか否かを判定する。ここでの判定は、S1004で算出された現在トルク値と、図6のS107で記録された初期トルク値を比較して行う。現在トルク値が、初期トルク値よりも大きく増加していれば、トルク急増と判定しS1602へ行く。大きく増加していなければ、トルク急増でないと判定しS1701へ行く。ここで、トルクが大きく増加しているかは、例えば、現在トルク値が、初期トルク値よりも3倍よりも大きくなった場合、さらには5倍よりも大きくなった場合等があげられる。
S1602では、駆動系大破や爪軸異物噛込の異常と特定する。このような状態はトルクが急増することが想定される。この状態は、図5であれば、入力軸101、第1ベベルギア151、第2ベベルギア152、駆動軸153、第1スプロケット154、チェーン155、第2スプロケット156の大破や、耕耘軸131に異物が噛みこんだ状態が相当する。ここでの情報は表示部31(端末40)に表示させることができる。
次に、運転停止と特定する(S1603)。これは、S1103と同様である。
次に、停止解除するか否かを判定し(S1604)、停止解除する場合は、S1002へ戻り、解除しない場合はS1603の運転停止の状態を維持する。ここで、停止解除するか否かの判定方法は、S1104と同様である。
S1701では、振動が増加したか否かを判定する。ここでの判定は、S1303と同様である。振動増加している場合はS1702へ行き、振動増加していない場合は、S1801へ行く。
S1702では、爪軸に雑物が付着している異常と特定する。このような状態はトルクが増加し振動が増加することが想定される。図4、5であれば耕耘軸131の雑物の付着が相当する。ここでの情報は表示部31(端末40)に表示させることができる。この後は、S1002へ戻る。
S1801では、カバー内に土が付着している異常と特定する。このような状態はトルクが増加し振動が増加しないことが想定される。図3、4であれば耕耘部カバー112の内側に土が付着していることが相当する。ここでの情報は表示部31(端末40)に表示させることができる。この後は、S1002へ戻る。
このように、異常判定の第1の例では、トルクの変化と振動の変化を考慮することにより、農作業機2のより的確な異常判定を行うことができる。そして、トルクの変化の増減や度合い、振動の変化や周期性を考慮することにより、どこの部位で異常が発生しているかをさらに詳しく判定することができる。さらに、表示部31(端末40)で、異常とその状態を知らせることで、作業者は、いち早くそれに気づくことができるとともに、状態の悪化を早めに防止できる。また、その原因が表示されることで、対処や修理も迅速に行うことが可能となる。
(異常判定の第2の例)
図9は、本発明の農作業機異常検知システムの異常判定の第2の例を示すフローチャートである。異常判定の第2の例では、図7、8で示した異常判定の第1の例に対して、S1201~S1203を、図9のS2001~S2004、S2101~S2104、S2201~S2203へ置き換えた構成である。それ以外は、図7、8と同様であるので説明は省略する。図9は演算部21で処理される。
図9のS1101~S1104は、図7のS1101~S1104と同じであるが、図9ではS1101で周期的異常振動があると判定される場合はS2001へ行く。
S2001では、周波数が1次減速前か否かを判定する。1次減速前であると判定する場合はS2002へ行き、1次減速前でないと判定する場合は、S2101へ行く。S2001の判定は、周期的異常振動の周波数が1次減速前の回転数と関係づけられる周波数であるか否かで判定する。すなわち農作業機2に入力された回転数と関係づけられる周波数である。例えば、図5であれは、入力軸101と第1ベベルギア151の回転数N1と関係づけられる周波数となる。ここで関連付けられる周波数としてN1/60があげられる。この場合は、例えば、第1ベベルギア151の歯が1つ損傷した場合は、1回転ごとに1回の異常振動となることが想定されるためこの周波数となる。また、歯が2つ損傷した場合は、異常振動の周波数が倍となることが想定されるため、この場合の周波数は(N1/60)×2となる。さらに、歯が3つ損傷した場合は3倍の周波数となる。これらの回転数と関係づけられる周波数は、(N1/60)×m(mは任意の整数)で表すことができる。現在の周期的異常振動の周波数がこの周波数であるか否かは、ある程度の幅をもたせてもよい。例えば、回転数と関係づけられる周波数の±3%の範囲内であれば、該当する等である。
ここで、回転数N1は、定格540rpmとすることもできるが、トラクタ1からの入力は状況に応じて変更される。このため、トラクタ1(トラクタ制御部11)から取得したPTO回転数を回転数N1とできる。なお、作業機センサ部26として農作業機2に設定した回転を検出可能なセンサを設け、回転数を検出してもよい。
S2002では、入力軸系損傷の異常と特定する。この状態は、図5であれば、入力軸101、第1ベベルギア151やこれらを支持する軸受けの損傷が想定される。ここでの情報は表示部31(端末40)に表示させることができる。
次に、運転停止と特定する(S2003)。これは、図7のS1103と同様である。
次に、停止解除するか否かを判定し(S2004)、停止解除する場合は、S1002へ戻り、解除しない場合はS2003の運転停止の状態を維持する。ここで、停止解除するか否かの判定方法は、図7のS1104と同様である。
S2101では、周波数が2次減速前か否かを判定する。2次減速前であると判定する場合はS2102へ行き、2次減速前でないと判定する場合は、S2201へ行く。S2101の判定は、周期的異常振動の周波数が2次減速前の回転数と関係づけられる周波数であるか否かで判定する。すなわち農作業機2に入力され1次減速された回転数と関係づけられる周波数である。例えば、図5であれは、駆動軸153と第2ベベルギア152と第1スプロケット154の回転数N2と関係づけられる周波数となる。ここで関連付けられる周波数としてN2/60があげられる。この場合は、例えば、第2ベベルギア152の歯が1つ損傷した場合は1回転ごとに1回の異常振動となることが想定されるため、この周波数となる。また、歯が2つ損傷した場合は、異常振動の周波数が倍となることが想定されるため、この場合の周波数は(N2/60)×2となる。さらに、歯が3つ損傷した場合は3倍の周波数となる。これらの回転数と関係づけられる周波数は、(N2/60)×m(mは任意の整数)で表すことができる。現在の周期的異常振動の周波数がこの周波数であるか否かは、ある程度の幅をもたせてもよい。例えば、回転数と関係づけられる周波数の±3%の範囲内であれば、該当する等である。
ここで、回転数N2は、N1に対して1次減速された後の回転数とできる。図5であれば、第1ベベルギア151の歯数が12で、第2ベベルギア152の歯数が31であれば、N1×(12/31)となる。N1が540rpmであれば、N2は209rpmとなる。
S2102では、ベベル・駆動軸系損傷の異常と特定する。この状態は、図5であれば、駆動軸153、第2ベベルギア152、第1スプロケット154やこれらを支持する軸受けの損傷が想定される。ここでの情報は表示部31(端末40)に表示させることができる。
次に、運転停止と特定する(S2103)。これは、図7のS1103と同様である。
次に、停止解除するか否かを判定し(S2104)、停止解除する場合は、S1002へ戻り、解除しない場合はS2103の運転停止の状態を維持する。ここで、停止解除するか否かの判定方法は、図7のS1104と同様である。
S2201では、耕耘軸系損傷の異常と特定する。これは、1次減速前及び2次減速前に該当しない2次減速後の損傷が想定されるからである。この状態は、図5であれば、耕耘軸131、第2スプロケット156やこれらを支持する軸受けの損傷が想定される。ここでの情報は表示部31(端末40)に表示させることができる。
次に、運転停止と特定する(S2202)。これは、図7のS1103と同様である。
次に、停止解除するか否かを判定し(S2203)、停止解除する場合は、S1002へ戻り、解除しない場合はS2202の運転停止の状態を維持する。ここで、停止解除するか否かの判定方法は、図7のS1104と同様である。
このように、異常判定の第2の例では、周期的異常振動の周波数の違いを判定し、その周波数に応じて、損傷部位をさらに詳しく特定することが可能となる。このように、損傷部位が詳しく特定され、その情報が表示されるため、異常の原因究明のための時間が短縮され、対処や修理をより早く行うことが可能となる。
(異常判定の第3の例)
図10は、本発明の農作業機異常検知システムの異常判定の第3の例を示す第1フローチャートである。図11は、本発明の農作業機異常検知システムの異常判定の第3の例を示す第2フローチャートである。図10と図11は、「C」同士、「D」同士で接続して構成されるフローチャートである。ここでは、図1の演算部21による処理を示している。また、図10、11では、図7、8と同じ処理は同じステップ番号が記載されており、基本的に説明を省略している。
図10において、S1001~S1009は図7と同様である。なお、S1009で振動変化なしと判定される場合はS3001へ行く。
S3001では、ミッションケースの油温が上昇したか否かを判定する。ミッションケースには、通常、潤滑のためのオイルが入っており、この温度が上昇したか否かを判定する。図5であれば、ミッションケース102内で第1ベベルギア151と第2ベベルギア152の潤滑をよくするための潤滑油が該当する。温度の測定は、作業機センサ部26として、温度を検出できるセンサを用いて、潤滑油の温度を測定する。また、熱は外にも伝わるためミッションケース102の温度(外側又は内側の温度)を測定してもよい。判定は、例えば、あらかじめ定めた所定温度以上になったら、ミッションケースの油温が上昇したと判定し、あらかじめ定めた所定温度に達しない場合は、ミッションケースの油温が上昇していないと判定することができる。上昇していないと判定された場合はS3002へ行き、上昇したと判定した場合は、S3201へ行く。
S3002では、チェーンケースの油温が上昇したか否かを判定する。チェーンケースには、通常、潤滑のためのオイルが入っており、この温度が上昇したか否かを判定する。図5であれば、チェーンケース105内で第1スプロケット154、チェーン155、第2スプロケット156の潤滑をよくするための潤滑油が該当する。温度の測定は、作業機センサ部26として、温度を検出できるセンサを用いて、潤滑油の温度を測定する。また、熱は外にも伝わるためチェーンケース105の温度(外側又は内側の温度)を測定してもよい。判定は、例えば、あらかじめ定めた所定温度以上になったら、チェーンケースの油温が上昇したと判定し、あらかじめ定めた所定温度に達しない場合は、チェーンケースの油温が上昇していないと判定することができる。上昇していないと判定された場合はS1010へ行き、上昇したと判定した場合は、S3101へ行く。
S1010は図7と同様である。この後は、S1002へ戻る。ここでは、トルク変化がなく、振動変化がなく、かつ、ミッションケースの油温上昇及びチェーンケースの油温上昇がない場合は、異常なしと特定される。
S3101では、チェーンケースのオイル異常と特定する。この状態は、図5であれば、チェーンケース105内のオイル異常が想定される。ここでの情報は表示部31(端末40)に表示させることができる。この後は、S1002へ戻る。
S3201では、ミッションケースのオイル異常と特定する。この状態は、図5であれば、ミッションケース102内のオイル異常が想定される。ここでの情報は表示部31(端末40)に表示させることができる。この後は、S1002へ戻る。
なお、S3101やS3201における油温の上昇の原因としては、例えば、オイル漏れ等によるオイル量の減少、オイルの劣化、水の混入による乳化等が考えられる。
また、S1009で、振動変化があると判定される場合はS1101へ行くが、S1101~S1104、S1201~S1203は、図7と同様である。
また、S1008で、トルク変化ありと判定される場合は、図11のS1301へ行くが、S1301~S1304、S1401~S1403、S1501~S1502は、図8と同様である。
また、図11の1301でトルクが減少していないと判定した場合は、S1601へ行く。S1601は、図8と同様であるが、トルクが急増していると判定した場合はS3301へ行き、トルクが急増していないと判定した場合は、S1701へ行く。S1701、S1702、S1801は、図8と同様である。
S3301では、チェーンケースの温度が上昇したか否かを判定する。図5であれば、チェーンケース105の温度である。温度の測定は、作業機センサ部26として、温度を検出できるセンサを用いて、チェーンケース105外側または内側の温度を測定することができる。判定は、例えば、あらかじめ定めた所定温度以上になったら、チェーンケースの温度が上昇したと判定し、あらかじめ定めた所定温度に達しない場合は、チェーンケースの温度が上昇していないと判定することができる。上昇したと判定した場合はS3302へ行き、上昇していないと判定した場合はS3401へ行く。
S3302では、耕耘軸系やチェーン系の噛込・大破の異常と特定する。これは、チェーンケースの温度が上昇すれば、S1601で判定されたトルク急増の原因は、チェーン系か耕耘軸系のトラブルであることが推定されるためである。図5であれば、第1スプロケット154、チェーン155、第2スプロケット156、耕耘軸131等の噛込や大破が該当する。
次のS1603とS1604は、図8と同様である。
S3401では、ベベルギアの大破の異常と特定する。これは、チェーンケースの温度が上昇しなければ、ミッションケース内のトラブルが推定されるためである。図5であれば、第1ベベルギア151や第2ベベルギア152等の大破が該当する。
次に、運転停止と特定する(S3402)。これは、図7のS1103と同様である。
次に、停止解除するか否かを判定し(S3403)、停止解除する場合は、S1002へ戻り、解除しない場合はS3402の運転停止の状態を維持する。ここで、停止解除するか否かの判定方法は、図7のS1104と同様である。
なお、図10のS3001、S3002、図11のS3301における、あらかじめ定めた所定温度は、それぞれ個別に設定することが可能であり、また、同一の温度とすることも可能である。
このように、異常判定の第3の例では、ミッションケースやチェーンケースに関する温度を測定することにより、異常の状態や部位をさらに詳しく特定することが可能となる。このように、異常の状態や部位が詳しく特定され、その情報が表示されることで、異常の原因究明のための時間が短縮され、対処や修理をいち早く行うことが可能となる。
(異常判定の第4の例)
異常判定の第4の例では、図10と図11で示した異常判定の第3の例に対して、S1201~S1203を、図9のS2001~S2004、S2101~S2104、S2201~S2203へ置き換える構成とするものである。図9のこの構成については異常判定の第2の例ですでに説明した通りである。
このように構成することで、異常判定の第4の例では、上述した異常判定の第3の例の特定に加えて、異常判定の第2の例と同様に、周期的異常振動の周波数の違いに応じて、損傷部位をさらに詳しく特定することが可能となる。
(端末の表示例)
図12は、本発明の農作業機異常検知システムにおける端末の第1の表示例を示す図である。図13は、本発明の農作業機異常検知システムにおける端末の第2の表示例を示す図である。図12、13では、図1、2で示した、端末40の具体的な表示例を示している。ここで、端末40の表示画面40aはタッチパネルで構成されている。この場合の端末40としては、例えば、タッチパネル機能を有する汎用のスマートフォンやタブレット型コンピュータを適用でき、ここにアプリケーションを導入することで、図12、13で示す表示や操作が実現可能となる。演算部21で演算され、制御部23、入出力部24を介して端末40へ無線送信された情報に基づき表示することが可能である。
図12では、端末40の表示画面40aの上部には、ODO表示41、TRIP表示42、リセット表示43が横方向に並んで表示されている。さらに、これらの下には、水平状態表示50と深さ状態表示60が横方向に並んで表示されている。さらに、これらの下の表示画面40aの下部には、異常情報表示(小)71と爪状態表示45が横方向に並んで表示されている。
ODO表示41は、初期からの作業中の積算時間を表示するものである。TRIP表示42は、前回にリセットされた時からの合計の作業中の積算時間が表示される。これらは、図12の表示ではHR(時間)の単位で表示されている。なお、作業中であることはS105で説明したように判定でき、この時間がカウントされ積算される。
リセット表示43は、リセット操作するための表示である。リセット表示43に触れると、その情報は、無線送信により、入出力部24、制御部23を介して演算部21へ送られる。リセット表示43のリセット操作を行うとTRIP表示42の表示が一度、0になる。さらに、このリセット操作により、図6で示したS103のリセット処理が行われる。
水平状態表示50では、農作業機2の水平に対する左右方向の傾き状態を示しており、上部にタイトル表示51(図12では「水平」)、下部には基準設定表示52とその横側に設定解除表示53が表示されている。基準設定表示52に触れると現在の傾きを水平の基準とする処理がされ、設定解除表示53に触れると現在の水平基準が解除される処理がされる。水平状態表示50のブロックの範囲を示す枠表示54の内側には、上側に図表示56がその下側に状態表示58が表示されている。図表示56は、図又は絵で農作業機2の水平に対する現在の傾き状態を表示するものである。状態表示58は、数値と目盛りの組み合わせにより水平に対する現在の傾き状態を分かり易く表示するものである。これらは、トラクタ制御部11から左右のロワーリンク16(図4)の高低差の情報や、作業機センサ部26から左右の傾きを用いることができる。
深さ状態表示60では、農作業機2の作業深さの状態を示しており、上部にタイトル表示61(図12では「深さ」)、下部には基準設定表示62とその横側に設定解除表示63が表示されている。基準設定表示62に触れると現在の作業深さを基準とする処理がされ、設定解除表示63に触れると現在の作業深さの基準が解除される処理がされる。深さ状態表示60のブロックの範囲を示す枠表示64内には、左側に図表示66が右側に状態表示68が表示されている。図表示66は、図又は絵で農作業機2の現在の作業深さの状態を表示するものである。状態表示68は、数値と目盛りの組み合わせにより現在の作業深さの状態を分かり易く表示するものである。これらは、トラクタ制御部11からロワーリンク16の上下方向の位置の情報や、作業機センサ部26から前後方向の傾きの情報等を用いることができる。
異常情報表示(小)71は、現在の異常の状態を知らせる表示である。例えば、図8、11のS1304、S1502、S1702、S1801に関する情報を表示する。なお、運転停止と特定する場合は、図13のように表示させることができる。なお、異常なしの旨の情報(例えば図10、12のS1010の状態)を表示してもよい。
爪状態表示45は、爪摩耗進度表示46と爪残存率表示47が表示される。爪摩耗進度表示46は、図6のS106で算出される初期トルク値に対して、図7、10のS1004で算出される現在トルク値がどの程度減少しているかに応じて算出される爪摩耗進度を表示する。図12では、目盛により段階的に表示する。爪摩耗の進度が爪交換表示46aまで達した場合は、現在トルク値が、図6のS110で算出される限界値より小さくなった場合に示される。これは、図8、11のS1502に相当する。爪残存率表示47は、図7、10のS1004で算出される現在トルク値が図6のS110で算出される限界値にどの程度近づいているかに応じて算出される爪残存率を表示する。図12の表示では、数字(%)による表示である。
図13は、異常情報表示(大)75が、端末40の表示画面40aの全体に表示される例を示す。ここで異常情報表示(大)75は、運転停止表示75a、異常内容表示75b、番号表示75c、停止解除ボタン表示75d、日時表示75eが表示されている。運転停止に該当するような場合に図12から図13の表示に変更することができる。
運転停止表示75aは、運転停止に該当する異常が発生した場合に、その旨の表示を文字や記号等で行う。また、絵や図を用いてもよい。図13では「運転停止」の文字と記号(「!」)で表示している。上述した例では、図7、10のS1103、S1202、図8、11のS1402、S1603、図11のS3402、図9のS1103、S2003、S2103、S2202の運転停止と特定する場合が該当する。運転停止表示75aは、中央に横方向全体にわたって大きく表示することで作業者に分かりやすく表示できる。
異常内容表示75bは、運転停止表示75aで表示する運転停止が原因となる部位や状態を表示する。上述した例では、図7、10のS1102、S1201、図8のS1401、S1602、図9のS1102、S2002、S2102、S2201、図11のS1401、S3302、S3401で特定した情報を表示する。図13では、「チェーン異常」と表示する例を示している。
番号表示75cは、異常の内容に応じてあらかじめ割り当てられた番号のうち、今回該当する番号を表示する。また、農作業機2の機種や機番を表示してもよい。このことで、修理担当者と情報を的確に共有できる。
停止解除ボタン表示75dは、当該異常情報表示を解除するためのボタンを表示している。ここに触れると異常表示が解除される。
日時表示75eは、異常の発生した日時を表示する。
図12のように、通常は、端末40で、農作業機2の状態と異常情報表示(小)71をあわせて表示することにより、作業者は多角的に農作業機2の状態を把握することができると共に、常に異常の状態をチェックすることが可能となる。また、運転停止に該当する大きな事象が発生した場合は、図13のように異常情報表示(大)75として、大きく表示することで、作業者は即座にそのことを把握することが可能となる。
(ネットワークに適用した一例)
図14は、本発明の農作業機異常検知システムをネットワークに適用した一例を示す概念図である。
本発明の農作業機異常検知システムは、グループごとに分けて情報を共有することが可能である。例えば、図14に示すようにグループA、B、Cと分けて、グループAでは、ユーザ端末220A1、220A2、220A3で情報を共有し、グループBでは、ユーザ端末220B1、220B2、220B3で情報を共有し、グループCでは、ユーザ端末220C1、220C2、220C3、220C4で情報を共有する。
グループAであれは、ユーザ端末220A1が上述した端末40の機能を備え、トラクタ1Aに装着した農作業機2Aの状態や異常情報を取得できる。この情報は、A修理担当者のユーザ端末220A1と、A販売店のユーザ端末220A3に送られ、情報が共有される。グループBやグループCでも、トラクタ1Bに装着した農作業機2Bやトラクタ1Cに装着した農作業機2Cに対して同様である。
これらの情報は、インターネット210を利用したネットワーク200によって共有される。この情報はリアルタイムで共有することが可能である。そして、グループごとの共有の範囲は、管理コンピュータ230、または、権限の与えられた端末で設定可能とすることができる。
共有する情報は、上述した端末40で表示される情報の他に、農作業機2の型式や製造番号等の識別情報や、ユーザ情報、販売店の情報、使用トラクタの情報等である。必要な情報は、制御ボックス20から送られてくるか、あらかじめ登録しておき、管理コンピュータ230もしくは管理コンピュータ230と連動する記憶装置に記録しておくことができる。また、過去の異常情報等のデータも記録してデータを蓄積することが可能となる。
このような構成とすることで、必要な情報を修理担当者や販売店が即座に知ることができ、迅速な対応が可能となる。また、グループ分けすることで、情報漏洩の可能性を低下させ、必要な情報のみを得ることができるようになる。
以上の様に、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、上述した以外の様々な変形例も含まれる。例えば、上記した実施形態に設けられた全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を削除したり、他の構成に置き換えたりすることも可能である。
例えば、上記実施形態では、農作業機の例として、ロータリー作業機100の例を示したが、本発明は、これ以外に、例えば、代掻き作業機、畦塗り機、施肥播種機、施肥機、草刈り機等のトラクタに装着する農作業機に適用することが可能である。
また、制御ボックス20は、農作業機2に備えることを説明したが、有線接続する等してトラクタ1側に備えることも可能である。
また、表示部31(端末40)の表示による報知以外に、音による報知を行ってもよい。例えば、異常情報表示(小)71や異常情報表示(大)75と併せて、警告音や音声で異常があることを知らせてもよい。これらの機能は、表示部31(端末40)に設けることができる。また、これとは別に設けてもよい。
また、図7、10のS1008、図8、11のS1301、S1302、S1601では、現在トルク値と初期トルク値を比較して行うことを説明したが、ここで、初期トルク値の代りに直近過去のN回(Nは整数で、例えば2以上、さらには3以上)の現在トルク値の平均値を記録して使用してもよい。
また、図7、10のS1009、図8、11のS1303、S1701では、現在振動値と初期振動値を比較して行うことを説明したが、ここで、初期振動値の代りに直近過去のN回(Nは整数で、例えば2以上、さらには3以上)の現在振動値の平均値を記録して使用してもよい。
また、図10、11における、ミッションケースとチェーンケースは、上記実施形態に限らず、ミッションケースはギア(歯車)が格納されたケースとして、チェーンケースはチェーンが格納されたケースとして適用可能である。
図11のS3301では、チェーンケースの温度が上昇したか否かを判定することを説明したが、S3401のベベルギア大破の場合は、ミッションケースの温度が上昇していることも想定される。このため、S3301をミッションケースの温度が上昇したか否かを判定するようにしてもよい。この場合の判定は、例えば、あらかじめ定めた所定温度以上になったら、ミッションケースの温度が上昇したと判定し、あらかじめ定めた所定温度に達しない場合は、ミッションケースの温度が上昇していないと判定することができる。上昇したと判定した場合はS3401へ行き、上昇していないと判定した場合はS3302へ行く。
また、図12、13では端末40について説明したが、これと同様の表示内容をトラクタ1に備える表示装置に表示をさせてもよい。この場合、データは演算部21から制御部23、入出力部24を介して表示装置に送られる。トラクタ1に備える表示装置ではアプリケーションを導入することでこれらのデータに基づく表示や操作ができる。
図13で示した、異常情報表示(大)75の大きさは、画面全体の表示で分かりやすく伝えることが可能であるが、これ以外に、例えば、表示画面40aの面積の4割以上、さらには6割以上の大きさがあれば、作業者にも気づきやすく表示することができる。
また、農作業機2(2A、2B、2C)が、無人運転の場合でも本発明を適用可能である。この場合、図14でも例示されるようにネットワーク200を介して遠隔で情報をリアルタイムで知ることが可能であるので有効となる。
また、図6から11で示した判定の処理は、AI(artificial intelligence)を用いてもよい。例えば、各判定の基準を、過去の実験データや実際にネットワーク200を介して各端末40から集められたデータに基づき、AIにより決定することが可能である。