以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当する要素同士には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
(第1実施形態)
まず、X線発生装置の第1実施形態について説明する。図1及び図2に示されるように、本実施形態におけるX線発生装置1は、例えば、被検体の内部構造を観察するX線非破壊検査に用いられる微小焦点X線源である。X線発生装置1は、X線管10、装置筐体部20、及び電源部30を備える。
X線管10は、真空筐体部100、電子銃部110、及びターゲットTを備えている。電子銃部110は、出射軸MXに沿って電子ビームM(電子)を出射する。X線管10は、電子銃部110からの電子ビームMがターゲットTに入射することにより発生し、且つ当該ターゲットT自身を透過したX線XRを、X線出射窓104から出射する透過型のX線管である。X線管10は、真空の内部空間Rを有する真空筐体部100を備えた真空封止型のX線管である。なお、以下では、説明の便宜上、電子銃部110に対してターゲットTが設けられている側を「前側」とし、その反対側を「後ろ側」とする。
真空筐体部100は、電子銃部110、及びターゲットTを収容する。真空筐体部100は、X線管10の管軸AXに沿って延在する略円柱状の外形を呈する。なお、本実施形態においては、管軸AXは、出射軸MXと同軸となっている。管軸AXと出射軸MXとが同軸であるため、以下では、これらをまとめて軸Lとも称する。真空筐体部100は、金属材料(例えば、ステンレス、銅、銅合金、鉄合金等)により形成されたヘッド部101と、絶縁材料(例えば、ガラス、セラミック等)により形成されたバルブ部102とを備える。ヘッド部101は、バルブ部102の前側に配置されている。ヘッド部101とバルブ部102とは、コバール等の金属材料からなるバルブフランジ103によって互いに連結されている。
バルブ部102には、電子銃部110が連結される。バルブ部102は、X線管10の管軸AX(軸L)に沿って延在する円筒形状を呈している。バルブ部102の後ろ側の端部には、前側に向かって折り返されるようにX線管10の管軸AXに沿って延在して形成された円筒形状の凹部102wが設けられている。すなわち、バルブ部102は、外筒102aと、外筒102a内に配置される内筒102bと、外筒102aの後ろ側の端部(一方の端部)と内筒102bの後ろ側の端部(一方の端部)とを連結する筒連結部102cとを有している。外筒102a及び内筒102bは、軸Lに沿って延在している。
内筒102bの前側の端部(他方の端部)の開口部には、当該開口部を封止するように電子銃部110が連結される。つまり、凹部102wによって、ヘッド部101と電子銃部110との沿面距離を延ばして耐電圧特性を向上させると共に、内部空間R内において電子銃部110をターゲットTに近づけて配置することで、電子ビームMを微小焦点化させやすくしている。
ヘッド部101は、金属材料により形成され、電位的にX線管10のアノードに相当する。ヘッド部101は、両端に開口を備え、軸Lに沿って延在する略円筒形状を呈する。ヘッド部101は、後ろ側の開口において、軸Lに沿って延在するバルブ部102と連通する(図2参照)。
ヘッド部101の前側面には、ヘッド部101の前側の開口101aを覆うようにX線出射窓104が固定されている。X線出射窓104は、例えば、円形の板状を呈する。X線出射窓104は、例えば、ベリリウム、アルミニウム、ダイヤモンド等のX線透過性の高い材料で形成されている。
ターゲットTは、電子銃部110と対向するように配置される。本実施形態において、ターゲットTは、軸L方向において、電子銃部110と対向している。すなわち、ターゲットTと電子銃部110との対向方向は、軸L方向となっている。ターゲットTは、X線出射窓104の内部空間R側の面に設けられている。本実施形態において、ターゲットTは、X線出射窓104の内部空間R側の面に成膜されている。ターゲットTは、電子ビームM(電子)の入射によりX線を発生する。ターゲットTとしては、例えば、タングステン、モリブデン、銅等が用いられる。
電子銃部110は、電子銃120と、電子銃120をバルブ部102(内筒102bの前側の端部)に連結するための連結フランジ130とを有している。電子銃120は、電子を出射する。電子銃120は、ヒーター121、カソード122、第1グリッド電極123、第2グリッド電極124、及び電子銃筐体部125を備えている。
ヒーター121は、通電によって発熱するフィラメントにより形成されている。カソード122は、ヒーター121によって加熱されることによって電子を放出する電子放出源となる。第1グリッド電極123は、カソード122から放出される電子の量を制御する。第2グリッド電極124は、第1グリッド電極123を通過した電子をターゲットTに向けて集束する円筒形状を呈している。第2グリッド電極124は、電子ビームMを構成する電子を引き出すための電界を形成する引き出し電極としても機能する。第1グリッド電極123は、カソード122と第2グリッド電極124との間に配置されている。電子銃筐体部125は、導電材料(例えばステンレス等)からなり、円筒形状を呈している。電子銃筐体部125は、ヒーター121、カソード122、及び第1グリッド電極123を収容する。電子銃筐体部125は、第2グリッド電極124に連結されており、第2グリッド電極124に対する給電経路にもなっている。
連結フランジ130は、電子銃120に固定されると共に、バルブ部102に連結される。連結フランジ130は、内筒102bの前側の端部の開口を封止する。連結フランジ130は、フランジ131、ステム部132、及びステムフランジ133を備えている。フランジ131は、導電材料(例えばコバール等)からなり、電子銃120の電子銃筐体部125が固定されると共に、内筒102bの前側の端部に連結される。
より詳細には、フランジ131は、軸L方向に沿って延在する円筒形状を呈する外側フランジ131a及び内側フランジ131bと、環状部131cとを備えている。内側フランジ131bは、外側フランジ131aの内側に配置されている。環状部131cは、環形状を呈している。環状部131cは、外側フランジ131aの前側端部と内側フランジ131bの前側端部とを連結する。外側フランジ131aの後ろ側の端部は、内筒102bの前側の端部に連結される。
ここで、外側フランジ131aと内筒102bとの連結部Hのうち、内部空間Rに面する部分が、内部空間R内の真空領域(絶縁体)に接している。また、外側フランジ131aと内筒102bとの連結部Hのうち、真空筐体部100の外側領域に面する部分が、後述する絶縁油22(絶縁体)に接している。すなわち、連結部Hは、トリプルジャンクションとなる。本実施形態において、連結部H(トリプルジャンクション)は、軸L(出射軸MX)周りに環状に延在している。
ステム部132は、絶縁材料(例えば、セラミック、ガラス等)からなり、円形の板状を呈している。ステムフランジ133は、導電材料(例えばコバール等)からなり、円筒形状を呈している。ステムフランジ133の内側には、ステム部132が固定されている。ステムフランジ133は、フランジ131の内側フランジ131b内に嵌め込まれて固定されている。
ステム部132には、ステムピンSが設けられている。ステムピンSは、真空筐体部100の内部領域と外部領域とにわたってステム部132を貫通した状態で延在している。ステムピンSは、電子銃部110の各構成要素(ヒーター121等)に電気的に接続されている。
また、X線管10は、連結部Hを包囲する内側電極140及び外側電極150を備えている。連結部Hは、内側電極140と外側電極150との間に位置している。すなわち、トリプルジャンクションは、内側電極140と外側電極150との間に位置しており、換言すれば、内側電極140と外側電極150とで、トリプルジャンクションを挟み込むように配置されている。
内側電極140は、真空筐体部100の内側領域(内部空間R内)に設けられている。内側電極140は、バルブ部102とは離間して設けられている。内側電極140は、導電材料(例えば、ステンレス等)からなる。内側電極140は、連結部Hから離間し、且つ連結部Hに対向配置されている。また、内側電極140は、環状に延在する連結部Hを軸Lに沿った方向から見て外側から包囲する。
より詳細には、内側電極140は、包囲部141、及び環状部142を備えている。包囲部141は、円筒形状を呈し、軸Lに沿って延在するように配置される。包囲部141は、環状に延在する連結部Hを軸Lに沿った方向から見て外側から包囲する。包囲部141は、軸L方向において、連結部Hを跨いで電子銃部110のフランジ131とバルブ部102の内筒102bとにわたって延在している。すなわち、包囲部141の前側の端部は、軸L方向において連結部Hよりも前側(ターゲットT側)に位置している。包囲部141の後ろ側の端部は、軸L方向において連結部Hよりも後ろ側に位置している。
環状部142は、環形状を呈している。環状部142は、包囲部141の前側の端部と、電子銃部110とを連結する。ここでは、環状部142は、一例として、包囲部141の前側の端部と、電子銃部110の電子銃筐体部125とを連結している。
このように、内側電極140は、電子銃部110との連結部分から後ろ側に向って延在し、連結部Hを軸Lに沿った方向から見て外側から包囲する。すなわち、内側電極140は、軸L方向(電子銃部110とターゲットTとの対向方向)において、連結部Hを跨いで電子銃部110側からバルブ部102の内筒102b側に向って(後ろ側に向って)突出している。ここで、軸L方向において、連結部Hの位置からの内側電極140(包囲部141)の突出高さ(突出長さ)をCとする。また、内側電極140と連結部Hとの間隔をDとする。ここでの間隔Dとは、環状に延在する連結部Hの径方向(軸Lに対して垂直に交わる方向)における内側電極140(包囲部141)と連結部Hとの距離である。突出高さCと間隔Dとは、
C≧0.5D
を満たしている。
外側電極150は、真空筐体部100の外側領域(内部空間R外)において、内筒102bの内側に設けられている。外側電極150は、バルブ部102とは離間して設けられている。外側電極150は、導電材料(例えば、ステンレス等)からなる。外側電極150は、連結部Hから離間し、且つ連結部Hに対向配置されている。また、外側電極150は、環状に延在する連結部Hを軸Lに沿った方向から見て内側から包囲する。
より詳細には、外側電極150は、円筒形状を呈し、軸Lに沿って延在するように配置される。外側電極150は、ステムフランジ133の後ろ側の端部及びフランジ131の内側フランジ131bの後ろ側の端部の少なくともいずれかに連結されている。外側電極150は、軸L方向において、連結部Hを跨いで電子銃部110のフランジ131とバルブ部102の内筒102bとにわたって延在している。すなわち、外側電極150の前側の端部は、軸L方向において連結部Hよりも前側(ターゲットT側)に位置している。外側電極150の後ろ側の端部は、軸L方向において連結部Hよりも後ろ側に位置している。
このように、外側電極150は、ステムフランジ133から後ろ側に向って延在し、連結部Hを軸Lに沿った方向から見て内側から包囲する。すなわち、外側電極150は、軸L方向(電子銃部110とターゲットTとの対向方向)において、連結部Hを跨いで電子銃部110側からバルブ部102の内筒102b側に向って(後ろ側に向って)突出している。ここで、軸L方向において、連結部Hの位置からの外側電極150の突出高さ(突出長さ)をAとする。また、外側電極150と連結部Hとの間隔をBとする。ここでの間隔Bとは、環状に延在する連結部Hの径方向(軸Lに対して垂直に交わる方向)における外側電極150と連結部Hとの距離である。突出高さAと間隔Bとは、
A≧0.5B
を満たしている。
ここで、本実施形態において、内側電極140及び外側電極150は、導電材料からなる電子銃筐体部125、フランジ131、及びステムフランジ133によって電気的に接続されている。このため、内側電極140、外側電極150、フランジ131は、同電位となっている。
内側電極140及び外側電極150の前側の端部は、それぞれ電子銃部110に連結されている。内側電極140及び外側電極150は、電子銃部110から後ろ側に向って延びて、連結部Hを覆っている。内側電極140及び外側電極150は、バルブ部102(内筒102b)に当接していない。すなわち、内側電極140及び外側電極150の後ろ側の端部は他の部材に当接していない。このため、内側電極140と外側電極150との間の空間は、後ろ側が開口している。外側電極150の突出高さA及び内側電極140の突出高さCが高くなると、後ろ側から内側電極140及び外側電極150の間を通って連結部Hへ至るまでの距離が長くなる。
装置筐体部20は、筒部材(収容部)21と、電源部30の一部である電源ケース33とを備える。筒部材21は、金属により形成されている。筒部材21は、その両端に開口を有する円筒形状を呈し、内部空間21cを有する。筒部材21は、その一端側の開口21aにX線管10のバルブ部102が挿入されている。これにより、筒部材21は、X線管10の少なくとも一部を収容する。より具体的には、筒部材21は、本実施形態においてはバルブ部102の全体を収容している。
筒部材21の開口21aは、X線発生装置1のヘッド部101によって封止されている。筒部材21の内部空間21cには、液状の電気絶縁性物質である絶縁油22が封入されている。
電源部30は、X線管10に電力を供給する機能を有する。電源部30は、モールドされた固体の絶縁材料、例えば絶縁樹脂であるエポキシ樹脂からなる絶縁ブロック31と、絶縁ブロック31中にモールドされた昇圧部32と、それらを収容し矩形箱状を呈する電源ケース33とを有する。昇圧部32は、X線発生装置1の外部から導入した導入電圧を昇圧して生成した昇圧電圧を、各種条件に基づき、必要に応じて調整することによって高圧電圧を発生させる。絶縁ブロック31は、昇圧部32を絶縁材料(例えばエポキシ樹脂等)により封止する。電源部30(電源部ケース34)には、筒部材21の他端側が固定されている。これにより、筒部材21の他端側の開口21bが封止され、絶縁油22が筒部材21の内部空間21cに封入される。
また、X線発生装置1は、昇圧部32とX線管10とを電気的に接続する給電部40を備えている。給電部40は、電源部30からX線管10へ電力(高圧電圧)を供給する。より詳細には、給電部40の一方の端部は、昇圧部32に接続される。給電部40の他方の端部は、X線管10のバルブ部102の凹部102wに挿入され、ステム部132において真空の内部空間Rから突出するステムピンSと電気的に接続されている。給電部40は、電力を供給するための複数本の配線を有している。
なお、本実施形態においては、一例として、ターゲットT(アノード)を接地電位とし、電源部30からは-100kVの高圧電圧が給電部40を介してX線管10(電子銃部110)に供給される。なお、実際には、電子銃部110の各電極には-100kVの高圧電圧を各電極の機能に合わせて調整した電圧が印可されるが、以降は説明を平易にするために、電子銃部110への印可電圧を-100kVと仮定して記載する。
次に、X線管10への電力供給時に連結部H(トリプルジャンクション)周りに生じる電界について説明する。電子銃部110に電力が供給されると、内側電極140、外側電極150、及びフランジ131も高電位(本実施形態では-100kV)となる。上述したように、連結部Hは、互いに同電位である内側電極140と外側電極150との間に挟み込まれた状態で位置している。このため、連結部Hにおいて電界が集中することが抑制される。
X線管10で生じる電界のシミュレーション結果(等電位線)について説明する。ここでは、図3に示されるX線発生装置のモデルを用い、電子銃部110を高圧電位(-100kV)とし、ヘッド部101を接地電位(0V)としてシミュレーションを行った。図4に示されるシミュレーション結果のように、連結部Hが内側電極140と外側電極150とによって挟み込まれていることで、連結部Hへ向かう電界の回り込み(等電位線の周り込み)が抑制され、連結部Hでの電界の集中が抑制された。
なお、図4では、連結部Hの位置からの外側電極150の突出高さAを、外側電極150と連結部Hとの間隔Bと同じとし、連結部Hの位置からの内側電極140の突出高さCを、内側電極140と連結部Hとの間隔Dと同じとした場合のシミュレーション結果である。
図5に、外側電極150及び内側電極140の突出高さを図4に示される場合よりも更に高くした場合のシミュレーション結果を示す。ここでは、連結部Hの位置からの外側電極150の突出高さAを、外側電極150と連結部Hとの間隔Bの2倍とし、連結部Hの位置からの内側電極140の突出高さCを、内側電極140と連結部Hとの間隔Dの2倍とした。この場合、図5に示されるように、X線管10の後ろ側から連結部Hへ向かう電界の回り込みが更に抑制され、連結部Hでの電界の集中が更に抑制された。このように、外側電極150の突出高さA及び内側電極140の突出高さCを高くすることにより、連結部Hでの電界の集中が更に抑制された。
ここで、比較のため、連結部Hが内側電極140及び外側電極150によって包囲されていない場合についてもシミュレーションを行った。ここでは、図6に示されるように、内側電極140及び外側電極150の軸L方向の長さを短くし、連結部Hが内側電極140及び外側電極150によって挟まれていない(包囲されていない)X線発生装置のモデルを用いた。この場合、図6に示されるように、連結部Hへ電界が回り込み、連結部Hでの電界強度が高くなった。
以上のように、X線管10においては、電子銃部110とバルブ部102(内筒102b)との連結部Hが、内側電極140と外側電極150との間に位置している。すなわち、このX線管10では、トリプルジャンクションとなる連結部Hが、内側電極140と外側電極150との間に位置している。これにより、X線管10に電力が供給された場合に、内側電極140と外側電極150との間に位置する連結部H(トリプルジャンクション)に電界が集中することが抑制される。従って、X線管10は、電子銃部110とバルブ部102との連結部Hでの電界の集中を抑制し、放電の発生を抑制できる。
内側電極140は、環状に延在する連結部Hを環状の外側から包囲する。外側電極150は、環状に延在する連結部Hを環状の内側から包囲する。これにより、X線管10は、内側電極140及び外側電極150によって連結部Hを内側及び外側から包囲して、連結部Hにおける電界の集中をより一層抑制できる。
内側電極140及び外側電極150のそれぞれは、軸L方向において、連結部Hを跨いで電子銃部110のフランジ131とバルブ部102の内筒102bとにわたって延在している。これにより、X線管10は、内側電極140及び外側電極150によって、連結部Hを効果的に覆うことができ、連結部Hにおける電界の集中をより一層抑制できる。
外側電極150における突出高さA、及び、外側電極150と連結部Hとの間隔Bは、A≧0.5Bを満たしている。これにより、X線管10は、外側電極150によって、バルブ部102の内筒102b側から連結部Hへ向かって電界が回り込むことを効果的に抑制でき、連結部Hにおける電界の集中をより一層抑制できる。
内側電極140における突出高さC、及び、内側電極140と連結部Hとの間隔Dは、C≧0.5Dを満たしている。これにより、X線管10は、内側電極140によって、バルブ部102の内筒102b側から連結部Hへ向かって電界が回り込むことを効果的に抑制でき、連結部Hにおける電界の集中をより一層抑制できる。
バルブ部102は、外筒102aと、外筒102a内に配置された内筒102bと、外筒102a及び内筒102bの後ろ側の端部同士を連結する筒連結部102cとを備え、電子銃部110は、内筒102bの前側の端部に連結され、外側電極150は、内筒102bの内側に配置されている。すなわち、X線管10は、一方の端部が折り返されたような形状のバルブ部102を備え、電子銃部110は円筒形状の凹部102w内で固定されている。この場合、連結部Hが絶縁材料からなる外筒102aに包囲された空間内に収容されるため、連結部HとX線管10の周囲の構成(例えばX線発生装置1の一部である筒部材21)との間における放電の発生を抑制できる。
(X線管の第1変形例)
次に、第1実施形態におけるX線管10の第1変形例について説明する。以下では、第1実施形態におけるX線管10との相違点を中心に説明し、共通の構成については説明を省略する。以下で説明する他の変形例及び実施形態においても、相違点のみを中心に説明する。図7に示されるように、X線管10Aは、第1実施形態におけるX線管10のフランジ131及びステムフランジ133に代えて、フランジ131A及びステムフランジ133Aを備えている。
フランジ131Aは、導電材料(例えばコバール等)からなる。フランジ131Aは、軸L方向に沿って延在する円筒形状を呈する外側フランジ131a及び内側フランジ(フランジ対向部)131dと、環状部131cとを備えている。内側フランジ131dは、第1実施形態における内側フランジ131bに比べて後ろ側まで延びている。内側フランジ131dは、バルブ部102の内筒102bとは離間して設けられている。内側フランジ131dは、真空筐体部100の外側領域に位置すると共に、連結部Hから離間し且つ連結部Hに対向配置されている。具体的には、内側フランジ131dは、軸L方向において、連結部Hを跨いで外側フランジ131aとバルブ部102の内筒102bとにわたって延在している。すなわち、内側フランジ131dの前側の端部は、軸L方向において連結部Hよりも前側(ターゲットT側)に位置している。内側フランジ131dの後ろ側の端部は、軸L方向において連結部Hよりも後ろ側に位置している。
ステムフランジ(フランジ対向部)133Aは、導電材料(例えばコバール等)からなり、円筒形状を呈している。ステムフランジ133Aの内側には、ステム部132が固定されている。ステムフランジ133Aは、フランジ131Aの内側フランジ131d内に嵌め込まれている。ステムフランジ133Aは、第1実施形態におけるステムフランジ133に比べて後ろ側まで延びている。ステムフランジ133Aは、バルブ部102とは離間して設けられている。ステムフランジ133Aは、真空筐体部100の外側領域に位置すると共に、連結部Hから離間し且つ連結部Hに対向配置されている。具体的には、ステムフランジ133Aは、軸L方向において、連結部Hを跨いで外側フランジ131aとバルブ部102の内筒102bとにわたって延在している。すなわち、ステムフランジ133Aの前側の端部は、軸L方向において連結部Hよりも前側(ターゲットT側)に位置している。ステムフランジ133Aの後ろ側の端部は、軸L方向において連結部Hよりも後ろ側に位置している。
X線管10Aは、第1実施形態における外側電極150と同様の機能を有する外側電極150Aを備えている。外側電極150Aは、フランジ131Aの内側フランジ131dと、ステムフランジ133Aとによって構成されている。なお、外側電極150Aは、内側フランジ131d及びステムフランジ133Aのいずれか一方によって構成されていてもよい。
以上のように、本変形例においてX線管10Aは、内側フランジ131d及びステムフランジ133Aを外側電極150Aとして機能させることができ、外側電極150Aを別部材として設けることが不要となり、構成を簡素化できる。
(X線管の第2変形例)
次に、第1実施形態におけるX線管10の第2変形例について説明する。図8に示されるように、X線管10Bは、反射型のX線管である。X線管10Bは、電子銃部110の前側の位置においてターゲットTを支持するターゲット支持体105を備えている。ターゲット支持体105は、ターゲットTにおける電子銃部110側の面の法線方向と、軸L方向とが交差するようにターゲットTを支持する。
X線管10Bのヘッド部101Bは、電子銃120の前側の正面位置とは異なる位置に開口101aを有している。ヘッド部101Bは、第1実施形態におけるX線管10のヘッド部101と同様に、金属材料により形成され、電位的にX線管10Bのアノードに相当する。ヘッド部101Bの開口101aは、X線出射窓104によって覆われている。X線管10Bは、電子銃部110からの電子ビームMがターゲットTに入射することにより発生したX線を、X線出射窓104から出射する。このように、X線管として反射型のX線管10Bが用いられる場合であっても、第1実施形態と同様の作用効果が奏される。
(X線管の第3変形例)
次に、第1実施形態におけるX線管10の第3変形例について説明する。図9に示されるように、X線管10Cは、第1実施形態のX線管10とは異なり、バルブ部102Cが円筒形状を呈している。X線管10Cは、真空筐体部100C、電子銃部110C、及びターゲットTを備えている。
真空筐体部100Cは、電子銃部110C、及びターゲットTを収容する。真空筐体部100Cは、管軸AX(軸L)に沿って延在する略円柱状の外形を呈する。真空筐体部100Cは、金属材料(例えば、ステンレス、銅、銅合金、鉄合金等)により形成されたヘッド部101Cと、絶縁材料(例えば、ガラス、セラミック等)により形成されたバルブ部102Cとを備える。ヘッド部101Cは、金属材料により形成され、電位的にX線管10Cのアノードに相当する。ヘッド部101Cとバルブ部102Cとは、コバール等からなるバルブフランジ103によって互いに連結されている。
バルブ部102Cは、X線管10Cの管軸AXに沿って延在する円筒形状に形成されている。バルブ部102Cの後ろ側の端部には、電子銃部110Cが連結される。バルブ部102Cの前側の端部の開口は、ヘッド部101によって封止されている。
電子銃部110Cは、電子銃120と、電子銃120をバルブ部102Cの後ろ側の端部に連結するための連結フランジ130Cとを有している。連結フランジ130Cは、電子銃120に固定されると共に、バルブ部102Cに連結される。連結フランジ130Cは、バルブ部102Cの後ろ側の端部の開口を封止する。
より詳細には、連結フランジ130Cは、フランジ131C、ステム部132、及びステムフランジ133を備えている。フランジ131Cは、導電材料(例えばコバール等)からなり、円筒形状を呈している。フランジ131Cの内側には、ステムフランジ133及びステム部132が配置されている。
フランジ131Cの前側の端部は、バルブ部102Cの後ろ側の端部に連結される。ここで、フランジ131Cとバルブ部102Cとの連結部Hのうち、内部空間Rに面する部分が、内部空間R内の真空領域(絶縁体)に接している。また、フランジ131Cとバルブ部102Cとの連結部Hのうち、真空筐体部100Cの外側領域に面する部分が、筒部材21内に封入された絶縁油22(絶縁体)に接している。すなわち、連結部Hは、トリプルジャンクションとなる。本変形例において、連結部H(トリプルジャンクション)は、軸L(出射軸MX)周りに環状に延在している。
また、X線管10Cは、連結部Hを包囲する内側電極140C及び外側電極150Cを備えている。連結部Hは、内側電極140Cと外側電極150Cとの間に位置している。すなわち、トリプルジャンクションは、内側電極140Cと外側電極150Cとの間に位置しており、換言すれば、内側電極140Cと外側電極150Cとで、トリプルジャンクションを挟み込むように配置されている。
内側電極140Cは、真空筐体部100Cの内側領域(内部空間R内)に設けられている。内側電極140Cは、バルブ部102Cとは離間して設けられている。内側電極140Cは、導電材料(例えば、ステンレス等)からなる。内側電極140Cは、連結部Hから離間し、且つ連結部Hに対向配置されている。また、内側電極140Cは、環状に延在する連結部Hを軸Lに沿った方向から見て内側から包囲する。
より詳細には、内側電極140Cは、包囲部141C、及び環状部142Cを備えている。包囲部141Cは、円筒形状を呈し、軸Lに沿って延在するように配置される。包囲部141Cの内側には、電子銃120が通されている。包囲部141Cは、環状に延在する連結部Hを軸Lに沿った方向から見て内側から包囲する。包囲部141Cは、軸L方向において、連結部Hを跨いで電子銃部110Cのフランジ131Cとバルブ部102Cとにわたって延在している。すなわち、包囲部141Cの前側の端部は、軸L方向において連結部Hよりも前側(ターゲットT側)に位置している。包囲部141Cの後ろ側の端部は、軸L方向において連結部Hよりも後ろ側に位置している。
環状部142Cは、環形状を呈している。環状部142Cは、包囲部141Cの後ろ側の端部と、フランジ131Cの内周面とを連結する。
このように、内側電極140Cは、電子銃部110Cにおけるフランジ131Cとの連結部分から前側に向って延在し、連結部Hを軸Lに沿った方向から見て内側から包囲する。すなわち、内側電極140Cは、軸L方向において、連結部Hを跨いで電子銃部110Cのフランジ131C側からバルブ部102C側に向って(前側に向って)突出している。ここで、軸L方向において、連結部Hの位置からの内側電極140C(包囲部141C)の突出高さ(突出長さ)をCとする。また、内側電極140Cと連結部Hとの間隔をDとする。ここでの間隔Dとは、環状に延在する連結部Hの径方向(軸Lに対して垂直に交わる方向)における内側電極140C(包囲部141C)と連結部Hとの距離である。突出高さCと間隔Dとは、
C≧0.5D
を満たしている。
外側電極150Cは、真空筐体部100Cの外側領域(内部空間R外)において、真空筐体部100Cの外側に設けられている。外側電極150Cは、X線発生装置1の筒部材21に収容されている。外側電極150Cは、バルブ部102Cとは離間して設けられている。外側電極150Cは、導電材料(例えば、ステンレス等)からなる。外側電極150Cは、連結部Hから離間し、且つ連結部Hに対向配置されている。また、外側電極150Cは、環状に延在する連結部Hを軸Lに沿った方向から見て外側から包囲する。
より詳細には、外側電極150Cは、包囲部151C、及び環状部152Cを備えている。包囲部151Cは、円筒形状を呈し、軸Lに沿って延在するように配置される。包囲部151Cの内側には、真空筐体部100C及び電子銃部110Cが通されている。包囲部151Cは、環状に延在する連結部Hを軸Lに沿った方向から見て外側から包囲する。包囲部151Cは、軸L方向において、連結部Hを跨いで電子銃部110Cのフランジ131Cとバルブ部102Cとにわたって延在している。すなわち、包囲部151Cの前側の端部は、軸L方向において連結部Hよりも前側(ターゲットT側)に位置している。包囲部151Cの後ろ側の端部は、軸L方向において連結部Hよりも後ろ側に位置している。
環状部152Cは、環形状を呈している。環状部152Cは、包囲部151Cの後ろ側の端部と、フランジ131Cの外周面とを連結する。
このように、外側電極150Cは、電子銃部110Cにおけるフランジ131Cとの連結部分から前側に向って延在し、連結部Hを軸Lに沿った方向から見て外側から包囲する。すなわち、外側電極150Cは、軸L方向において、連結部Hを跨いで電子銃部110Cのフランジ131C側からバルブ部102C側に向って(前側に向って)突出している。ここで、軸L方向において、連結部Hの位置からの外側電極150C(包囲部151C)の突出高さ(突出長さ)をAとする。また、外側電極150Cと連結部Hとの間隔をBとする。ここでの間隔Bとは、環状に延在する連結部Hの径方向(軸Lに対して垂直に交わる方向)における外側電極150Cと連結部Hとの距離である。突出高さAと間隔Bとは、
A≧0.5B
を満たしている。
ここで、本実施形態において、内側電極140C及び外側電極150Cは、導電材料からなるフランジ131Cによって電気的に接続されている。このため、内側電極140C、外側電極150C、フランジ131Cは、同電位となっている。
内側電極140C及び外側電極150Cの後ろ側の端部は、それぞれ電子銃部110Cのフランジ131Cに連結されている。内側電極140C及び外側電極150Cは、電子銃部110Cのフランジ131Cから前側に向って延びて、連結部Hを覆っている。内側電極140C及び外側電極150Cは、バルブ部102Cに当接していない。すなわち、内側電極140C及び外側電極150Cの前側の端部は他の部材に当接していない。このため、内側電極140Cと外側電極150Cとの間の空間は、前側が開口している。外側電極150Cの突出高さA及び内側電極140Cの突出高さCが高くなると、前側から内側電極140C及び外側電極150Cの間を通って連結部Hへ至るまでの距離が長くなる。
以上のように、X線管10Cにおいては、電子銃部110C(フランジ131C)とバルブ部102Cとの連結部Hが、内側電極140Cと外側電極150Cとの間に位置している。このため、第1実施形態におけるX線管10と同様の種々の作用効果を奏することができる。すなわち、X線管10Cは、製造の容易な筒形状を呈するバルブ部102Cを用い、外側電極150Cが電子銃部110C(フランジ131C)とバルブ部102Cとの連結部Hを内側に収容する場合であっても、連結部Hでの電界の集中を抑制し、放電の発生を抑制できる。
(X線管の第4変形例)
次に、第1実施形態におけるX線管10の第4変形例について説明する。図10に示されるように、本変形例に係るX線管10Dは、上記第3変形例に係るX線管10Cの外側電極150Cとフランジ131Cとが一体に構成されている。より詳細には、X線管10Dは、第3変形例に係るX線管10Cのフランジ131C及び外側電極150Cに代えて、フランジ134を備えている。
フランジ134は、導電材料(例えばコバール等)からなる。フランジ134は、筒部134a、及び張り出し部134bを備えている。筒部134aと張り出し部134bとは一体に構成されている。筒部134aは、円筒形状を呈している。筒部134aは、上記第3変形例に係るX線管10Cのフランジ131Cと同様の構成となっている。筒部134aの前側の端部には、バルブ部102Cが連結される。筒部134aの内周面には、内側電極140Cが連結される。
張り出し部134bは、筒部134aの前側の端部外周面から外方(バルブ部102Cから離間する方向)に向けて張り出し且つ前側に向って延在している。張り出し部134bは、筒部134aとバルブ部102Cとの連結部Hを軸Lに沿った方向から見て外側から包囲する。より詳細には、張り出し部134bは、包囲部134c、及び環状部134dを備えている。張り出し部134bの包囲部134c及び環状部134dは、上記第3変形例に係るX線管10Cにおける外側電極150Cの包囲部151C及び環状部152Cと同様の構成である。すなわち、フランジ134の張り出し部134bは、上記第3変形例に係るX線管10Cの外側電極150Cと同様の機能を有する外側電極150Dとして機能する。
以上のように、本変形例においてX線管10Dは、フランジ134の張り出し部134bを外側電極150Dとして機能させることができ、外側電極150Dを別部材として設けることが不要となり、構成を簡素化できる。
(X線管の第5変形例)
次に、第1実施形態におけるX線管10の第5変形例について説明する。図11に示されるように、本変形例に係るX線管10Eは、電子銃120Eの電子銃筐体部126が、上記第3変形例に係るX線管10Cの内側電極140Cの機能を兼ねている。
より詳細には、X線管10Eは、第3変形例に係るX線管10Cの電子銃120に代えて電子銃120Eを備えている。電子銃120Eは、第3変形例に係るX線管10Cの電子銃120の電子銃筐体部125に代えて、電子銃筐体部126を備えている。
電子銃筐体部126は、導電材料(例えばステンレス等)からなり、略円筒形状を呈している。より詳細には、電子銃筐体部126は、筐体大径部126a、第1環状部126b、筐体小径部(筐体対向部)126c、及び第2環状部126dを有している。
筐体大径部126aは、円筒形状を呈し、フランジ131Cの内側に配置される。筐体大径部126aの外径は、フランジ131Cの内径と略等しい。筐体大径部126aの外周面が、フランジ131Cの内周面に連結されている。または、筐体大径部126aの後ろ側の端部が、ステムフランジ133の前側の端部に連結されていてもよい。筐体小径部126cは、円筒形状を呈している。筐体小径部126cの外径は、筐体大径部126aの外径よりも小さい。筐体小径部126cは、筐体大径部126aの前側の位置に配置されている。筐体大径部126aの前側の端部と、筐体小径部126cの後ろ側の端部とは、環形状を呈する第1環状部126bによって連結されている。筐体小径部126cは、連結部Hから離間し、且つ連結部Hに対向するように配置されている。
このように、電子銃筐体部126の筐体小径部126cは、真空筐体部100Cの内部空間R(内側領域)に配置されると共に、連結部Hから離間し且つ連結部Hに対向配置される筐体対向部となる。筐体小径部126cは、環状の連結部Hを軸Lに沿った方向から見て内側から包囲している。筐体小径部126cの前側の端部と第2グリッド電極124の後ろ側の端部とは、環状の第2環状部126dによって連結されている。電子銃筐体部126は、バルブ部102Cとは離間して設けられている。
ここで、電子銃筐体部126の第1環状部126bと筐体小径部126cとによって、上記第3変形例に係るX線管10Cの内側電極140Cと同様の形状が形成されている。すなわち、第1環状部126b及び筐体小径部126cは、上記第3変形例に係るX線管10Cの内側電極140Cと同様の機能を有する内側電極140Eとして機能する。換言すると、内側電極140Eは、電子銃筐体部126の第1環状部126b及び筐体小径部126cによって構成されている。
以上のように、本変形例においてX線管10Eは、電子銃筐体部126の一部(第1環状部126b及び筐体小径部126c)を内側電極140Eとして機能させることができ、内側電極140Eを別部材として設けることが不要となり、構成を簡素化できる。
(X線管の第6変形例)
次に、第1実施形態におけるX線管10の第6変形例について説明する。図12に示されるように、本変形例に係るX線管10Fは、反射型のX線管である。このX線管10Fは、透過型のX線管である上記第3変形例に係るX線管10Cの構成の一部を変更したものである。X線管10Fは、電子銃部110Cの前側の位置においてターゲットTを支持するターゲット支持体105を備えている。ターゲット支持体105は、銅等の金属材料からなる。ターゲット支持体105は、ターゲットTにおける電子銃部110C側の面の法線方向と、軸L方向とが交差するようにターゲットTを支持する。
X線管10Fのヘッド部101Fは、電子銃120の前側の正面位置とは異なる位置に開口101aを有している。ヘッド部101Fは、第1実施形態におけるX線管10のヘッド部101と同様に、金属材料により形成され、電位的にX線管10Fのアノードに相当する。ヘッド部101Fの開口101aは、X線出射窓104によって覆われている。X線管10Fは、電子銃部110Cからの電子ビームMがターゲットTに入射することにより発生したX線を、X線出射窓104から出射する。このように、X線管として反射型のX線管10Fが用いられる場合であっても、上記第3変形例に係るX線管10Cと同様の作用効果が奏される。
(X線管の第7変形例)
次に、第1実施形態におけるX線管10の第7変形例について説明する。図13に示されるように、本変形例に係るX線管10Gは、上記第6変形例に係るX線管10Fと同様に、反射型のX線管である。但し、本変形例に係るX線管10Gは、ターゲットTを支持するターゲット支持体105が、保持バルブ部107によって保持されている。
より詳細には、真空筐体部100Gは、バルブ部102C、筐体部106、及び保持バルブ部107を備えている。筐体部106は、金属材料(例えば、ステンレス、銅、銅合金、鉄合金等)により形成されている。筐体部106は、円筒形状を呈し、軸L方向に沿って延在するように配置されている。筐体部106には、開口部106aが設けられている。開口部106aは、X線出射窓104によって覆われている。筐体部106の後ろ側の端部は、バルブフランジ103によってバルブ部102Cの前側の端部と連結されている。
保持バルブ部107は、絶縁材料(例えば、ガラス、セラミック等)により形成されている。保持バルブ部107は、円筒形状を呈し、軸L方向に沿って延在するように配置されている。保持バルブ部107の後ろ側の端部は、コバール等の金属材料からなる接続部108によって筐体部106の前側の端部と連結されている。
ターゲットTを支持するターゲット支持体105は、筐体部106及び保持バルブ部107内に配置されている。ターゲット支持体105は、保持バルブ部107の前側の端部に連結され、保持バルブ部107との連結部から電子銃部110C側に向って延びている。保持バルブ部107は、コバール等の金属材料からなる接続部109によってターゲット支持体105と連結されている。X線管10Gは、電子銃部110Cからの電子ビームMがターゲットTに入射することにより発生したX線を、X線出射窓104から出射する。
ここで、本変形例のX線管10Gでは、電子銃部110Cが絶縁体(バルブ部102)で支持されると共に、ターゲットT(ターゲット支持体105)も絶縁体(保持バルブ部107)で支持されている。これにより、電子銃部110C側とターゲットT側とのそれぞれに電圧を印加できる。すなわち、例えば、X線管10GがX線の照射に100kvの電圧を必要とする場合、筐体部106を接地電位とし、電子銃部110C側に-50kVの電圧を印加し、ターゲットT側に50kVの電圧を印加する。これにより、必要とされる100kVの電位差を、ターゲットTと電子銃部110Cとの間で得ることができる。このように、必要な電圧を分圧してターゲットT側と電子銃部110C側とに印加することにより、それぞれの部位に印加する電圧値自体を下げることができ、それぞれの部位に要求される耐電圧能を下げることができる。
(第2実施形態)
次に、X線発生装置の第2実施形態について説明する。ここで、上述した第1実施形態に係るX線発生装置1のX線管10及び第1~第7変形例に係るX線管10A~10Gは、外側電極150,150A,150C,150Dを構成要素として備えていた。これに対し、本実施形態に係るX線発生装置では、X線管とは別に外側電極を備えている。
具体的には、図14に示されるように、本実施形態に係るX線発生装置1Aは、X線管10H、給電部40H、及び外側電極150Hを備えている。また、X線発生装置1Aは、更に、第1実施形態に係るX線発生装置1の装置筐体部20及び電源部30と同様に、図示を省略する装置筐体部及び電源部を備えている。X線発生装置1Aが備える装置筐体部及び電源部は、第1実施形態におけるX線発生装置1が備える装置筐体部20及び電源部30と同様の構成であり、詳細な説明及び図示を省略する。
ここで、X線管10Hは、上述した第1実施形態に係るX線発生装置1のX線管10に対し、外側電極150を備えていない点のみが異なる。すなわち、X線管10Hにおいて、第1実施形態に係るX線管10の外側電極150以外の構成は、第1実施形態に係るX線管10の構成と同様であり、同一符号を付して詳細な説明を省略する。本実施形態において、給電部40Hは、電源部からX線管10Hへ電力(高圧電圧)を供給する。給電部40Hは、第1実施形態に係るX線発生装置1の給電部40と同様の構成を有している。
外側電極150Hは、装置筐体部20の筒部材21内に収容されている。外側電極150Hは、真空筐体部100の外側領域に配置される。外側電極150Hは、X線管10Hのバルブ部102とは離間して設けられている。外側電極150Hは、導電材料(例えば、ステンレス等)からなる。外側電極150Hは、連結部Hから離間し、且つ連結部Hに対向配置されている。また、外側電極150Hは、環状に延在する連結部Hを軸Lに沿った方向から見て内側から包囲する。本実施形態において外側電極150Hは給電部40Hの少なくとも一部を内側に収容する筒形状を呈している。すなわち、外側電極150Hは、給電部40Hの少なくとも一部を覆う。
より詳細には、外側電極150Hは、円筒形状を呈し、軸Lに沿って延在するように配置される。外側電極150Hは、軸L方向に沿って延在する給電部40Hの外周面を覆っている。外側電極150Hは、バルブ部102の内筒102bの内側に配置されている。すなわち、外側電極150Hは、バルブ部102の凹部102wに差し込まれている。
外側電極150Hは、一例として、ステムフランジ133の後ろ側の端部及びフランジ131の内側フランジ131bの後ろ側の端部の少なくともいずれかに当接されている。ここで、外側電極150Hは、ステムフランジ133の後ろ側の端部及びフランジ131の内側フランジ131bの後ろ側の端部の少なくともいずれかに当接されていることに限定されない。外側電極150Hは、フランジ131及び内側電極140と同電位となるように、例えば配線等を介してこれらと電気的に接続されていてもよい。
外側電極150Hは、軸L方向において、連結部Hを跨いで電子銃部110のフランジ131とバルブ部102の内筒102bとにわたって延在している。すなわち、外側電極150Hの前側の端部は、軸L方向において連結部Hよりも前側(ターゲットT側)に位置している。外側電極150Hの後ろ側の端部は、軸L方向において連結部Hよりも後ろ側に位置している。
このように、外側電極150Hは、ステムフランジ133から後ろ側に向って延在し、連結部Hを軸Lに沿った方向から見て内側から包囲する。すなわち、外側電極150Hは、軸L方向において、連結部Hを跨いで電子銃部110側から電源部30側に向って(後ろ側に向って)突出している。ここで、軸L方向において、連結部Hの位置からの外側電極150Hの突出高さ(突出長さ)をAとする。また、外側電極150Hと連結部Hとの間隔をBとする。ここでの間隔Bとは、環状に延在する連結部Hの径方向(軸Lに対して垂直に交わる方向)における外側電極150Hと連結部Hとの距離である。突出高さAと間隔Bとは、
A≧0.5B
を満たしている。
以上のように、X線発生装置1Aにおいては、連結部Hを内側から囲む外側電極150Hを備えている。従って、X線発生装置1Aは、第1実施形態に係るX線発生装置1のX線管10と同様に、電子銃部110とバルブ部102との連結部Hでの電界の集中を抑制し、放電の発生を抑制できる。
筒形状の外側電極150Hの内側には、給電部40Hが収容されている、この場合、外側電極150Hは、給電部40Hを収容して保護する機能と、連結部Hでの電界の集中を抑制する機能とを兼ねることができる。
バルブ部102は、外筒102aと、外筒102a内に配置された内筒102bと、外筒102a及び内筒102bの後ろ側の端部同士を連結する筒連結部102cとを備え、電子銃部110は、内筒102bの前側の端部に連結され、外側電極150Hは、内筒102bの内側に配置されている。すなわち、X線発生装置1AのX線管10Hは、一方の端部が折り返されたような形状のバルブ部102を備え、電子銃部110は円筒形状の凹部102w内で固定されている。この場合、連結部Hが絶縁材料からなる外筒102aに包囲された空間内に収容されるため、連結部HとX線発生装置1Aの一部(例えば筒部材21)との間における放電の発生を抑制できる。
(第2実施形態に係るX線発生装置の変形例)
次に、第2実施形態に係るX線発生装置の変形例について説明する。図15に示されるように、本変形例に係るX線発生装置1Bは、X線管10J、給電部40J、及び外側電極150Jを備えている。また、X線発生装置1Bは、更に、第1実施形態に係るX線発生装置1の装置筐体部20及び電源部30と同様に、図示を省略する装置筐体部及び電源部を備えている。X線発生装置1Bが備える装置筐体部及び電源部は、第1実施形態におけるX線発生装置1が備える装置筐体部20及び電源部30と同様の構成であり、詳細な説明及び図示を省略する。
ここで、X線管10Jは、上述した第3変形例に係るX線管10Cに対し、外側電極150を備えていない点のみが異なる。すなわち、X線管10Jにおいて、第3変形例に係るX線管10Cの外側電極150以外の構成は、第3変形例に係るX線管10Cの構成と同様であり、同一符号を付して詳細な説明を省略する。本実施形態において、給電部40Jは、電源部からX線管10Jへ電力(高圧電圧)を供給する。給電部40Jは、第1実施形態に係るX線発生装置1の給電部40と同様の構成を有している。
外側電極150Jは、真空筐体部100Cの外側領域に配置される。なお、外側電極150Jは、装置筐体部の筒部材(図1の筒部材21に相当)内に収容されている。外側電極150Jは、X線管10Jのバルブ部102Cとは離間して設けられている。外側電極150Jは、導電材料(例えば、ステンレス等)からなる。外側電極150Jは、連結部Hから離間し、且つ連結部Hに対向配置されている。また、外側電極150Jは、環状に延在する連結部Hを軸Lに沿った方向から見て外側から包囲する。本実施形態において外側電極150Jは給電部40Jの少なくとも一部(X線管10Jに接続される側の端部)を内側に収容する筒形状を呈している。すなわち、外側電極150Jは、給電部40Jの少なくとも一部を覆う。
より詳細には、外側電極150Jは、円筒形状を呈し、軸Lに沿って延在するように配置される。外側電極150Jは、軸L方向に沿って延在する給電部40Jの外周面を覆っている。すなわち、外側電極150Jは、バルブ部102Cにおける電子銃部110C(フランジ131C)が連結される側の端部を外側から覆っている。
外側電極150Jは、フランジ131C及び内側電極140Cと同電位となるように、例えば配線等を介してこれらと電気的に接続されている。
外側電極150Jは、軸L方向において、連結部Hを跨いで電子銃部110Cのフランジ131Cとバルブ部102Cとにわたって延在している。すなわち、外側電極150Jの前側の端部は、軸L方向において連結部Hよりも前側(ターゲットT側)に位置している。外側電極150Jの後ろ側の端部は、軸L方向において連結部Hよりも後ろ側に位置している。
このように、外側電極150Jは、軸L方向において、連結部Hを跨いで電子銃部110Cのフランジ131C側からターゲットT側に向って(前側に向って)突出している。ここで、軸L方向において、連結部Hの位置からの外側電極150Jの突出高さ(突出長さ)をAとする。また、外側電極150Jと連結部Hとの間隔をBとする。ここでの間隔Bとは、環状に延在する連結部Hの径方向(軸Lに対して垂直に交わる方向)における外側電極150Jと連結部Hとの距離である。突出高さAと間隔Bとは、
A≧0.5B
を満たしている。
以上のように、X線発生装置1Bにおいては、連結部Hを内側から囲む外側電極150Jを備えている。従って、X線発生装置1Bは、第1実施形態に係るX線発生装置1のX線管10と同様に、電子銃部110Cとバルブ部102Cとの連結部Hでの電界の集中を抑制し、放電の発生を抑制できる。また、X線発生装置1Bは、製造の容易な筒形状を呈するバルブ部102Cを用い、外側電極150Jが電子銃部110C(フランジ131C)とバルブ部102Cとの連結部Hを内側に収容する場合であっても、連結部Hでの電界の集中を抑制し、放電の発生を抑制できる。
以上、本発明の種々の実施形態及び変形例について説明したが、本発明は、上記実施形態及び変形例に限定されるものではない。例えば、上記の種々の実施形態及び種々の変形例の少なくとも一部が任意に組み合わせられてもよい。