JP7315939B2 - 噴霧ヘッドの設計方法 - Google Patents

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Description

本発明は、水などの液体を噴霧するための噴霧ヘッドの設計方法に関する。
放出口から吐出した液体をデフレクタに衝突させて散水するタイプの噴霧ヘッドが知られている。このタイプの噴霧ヘッドは、通常、デフレクタを支持するための一対のアーム(フレーム)を備えている(例えば特許文献1)。
特開平10-24119号公報
上記の噴霧ヘッドでは、放出口から吐出した液体がデフレクタへの衝突前にフレームに接触したり、デフレクタから飛散した液体がフレームに接触したりして、所望の粒子径分布を持つ液滴を得ることは困難である。そのため、実際に噴霧ヘッドを試作して試験してみなければ、その噴霧ヘッドから噴霧される液滴の粒子径分布を把握できない。
そこで、本発明は、所望の粒子径分布を持つ液滴を得ることができる噴霧ヘッドの設計方法を提供することを目的とする。
上述した課題を解決すべく、本発明は、液体の放出口を有する本体と、前記放出口から吐出した液体が衝突するデフレクタと、前記本体の内側に位置する第1端及び前記デフレクタを支持する第2端を含む支柱と、を備える噴霧ヘッドの設計方法であって、予め設定された前記本体の内部圧力及び前記液体の密度に基づいて、前記放出口における前記液体の速度を予測し、前記速度、予め設定された前記噴霧ヘッドの流量、及び前記支柱の外周面を流れる液体の膜厚に基づいて、前記放出口の径及び前記支柱の径を決定すること、を含む噴霧ヘッドの設計方法を提供する。
また、上記のような構成を有する本発明の噴霧ヘッドの設計方法では、更に前記本体の形状損失を考慮して、前記速度を予測すること、が好ましい。
上記のような構成を有する本発明の噴霧ヘッドの設計方法では、前記放出口における液体の縮流現象を考慮して、前記放出口の径及び前記支柱の径を決定すること、が好ましい。
また、上記のような構成を有する本発明の噴霧ヘッドの設計方法は、前記支柱の外周面を流れる液体が自由表面を含むように、前記本体と前記デフレクタとの間の距離を決定すること、を更に含むことが好ましい。
本発明によれば、所望の粒子径分布を持つ液滴を得ることができる噴霧ヘッドを設計することができる。
本発明の代表的な実施形態に係る噴霧設備1の概略図である。 図1の噴霧設備1に含まれる噴霧ヘッド10の一例を示す側面図及び上面図である。 図2の噴霧ヘッド10を構成する本体11の側面図及び上面図である。 図2の噴霧ヘッド10を構成する支柱21及びデフレクタ23の側面図及び上面図である。 噴霧ヘッド10における水の流れを示す模式図である。 噴霧ヘッド10における縮流現象を説明する模式図である。 本実施形態の変形例1に係る噴霧ヘッド110を示す模式図である。 本実施形態の変形例2に係る噴霧ヘッド210を示す側面図及び下面図である。 デフレクタへの衝突による液体の微粒化の過程のモデルを示す図である。 デフレクタへの衝突に伴う液膜形成のモデルを示す図である。 液膜の広がりに伴う液膜分裂のモデルを示す図である。 リガメント生成のモデルを示す図である。 リガメント分裂による液滴生成のモデルを示す図である。 噴霧ヘッドの設計手順を示すフローチャートである。 作製した噴霧ヘッドの試験結果を理論値と比較したグラフである。 作製したブレード付き噴霧ヘッドの試験結果を図15の試験結果及び理論値と比較したグラフである。
以下、本発明の代表的な実施形態に係る噴霧ヘッド及びこの噴霧ヘッドを含む噴霧設備を、図面を参照しつつ詳細に説明する。ただし、本発明はこれら図面に限定されるものではない。また、図面は、本発明を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために、必要に応じて寸法、比又は数を誇張又は簡略化して表している場合もある。
[噴霧設備の概要]
図1を参照して、本実施形態に係る噴霧設備を説明する。本実施形態では、噴霧設備の一例として消火設備を想定しているので、噴霧される液体は消火液となる。ただし、噴霧設備は例えば冷却設備のような他の設備でもよい。
噴霧設備1は、消火液の噴霧により火炎を消火する消火設備である。噴霧設備1は、開放型の消火設備でもよいし閉鎖型の消火設備でもよい。本実施形態では、消火液として水を想定しているが、消火薬剤が溶解された水溶液でもよい。
噴霧設備1は、図1に示すように、配管3、貯水槽5、ポンプ7及び噴霧ヘッド10を有している。噴霧設備1には、火炎や温度などを検知する各種センサが設けられてもよい。
配管3は、消火液の流路である。配管3には、消火液を貯留するための貯水槽5、貯水槽5から消火液を汲んで噴霧ヘッド10に供給するためのポンプ7、及び、消火液を噴霧するための噴霧ヘッド10が設けられている。また、配管3には、例えば流水検知装置、一斉開放弁のような各種弁装置が取り付けられていてもよい。なお、噴霧設備1が閉鎖型消火設備である場合には、火災検知により作動して配管3内の消火液を噴霧ヘッド10に導くための弁が、噴霧ヘッド10に付設されてもよい。
[噴霧ヘッドの構成]
図2~図6を参照して、上述した噴霧設備1に適用される噴霧ヘッドの構成を説明する。
本実施形態に係る噴霧ヘッド10は、図2に矢印Xで示される方向において概ね上方から下方にむかって、所望の粒子径分布を有する液体粒子を噴霧するように設計されており、図2に示すように、本体11、支柱21及びデフレクタ23を備える。以下、これらの構成について詳述する。
本体11は、例えば筒状または六角柱状または四角柱状などの形状の部材であり、配管3に例えばネジ19などの固定手段で固定されている。本体11は、消火液の放出口13を有する。放出口13の具体的な寸法については追って述べる。
放出口13の内径D2は本体11の内径D1よりも小さく、放出口13の内周面と本体11の内周面とは、放出口13に向かうにつれて内径が縮小する縮径部15によって接続されている。かかる縮径部15の存在により、放出口13を通過する消火液に縮流現象が生ずる。その結果、支柱21の外周面に沿って流れる消火液の厚みが薄くなる(図6参照)。したがって、かかる縮流現象を考慮して設計することで噴霧ヘッドのより適切な設計が可能となる。この点、噴霧ヘッド10の流量が例えば40L/min、80L/minのように比較的大きくなると、縮流現象の影響を無視し得なくなる。
なお、放出口13とは反対側に位置する流入口16の内径はD1よりも大きく、段差17を形成している。図2に示すように、段差17には、支柱21を本体11に固定するための固定部材31の両端が載置される。
次いで、デフレクタ23は、例えば図5に示すように、放出口13から吐出した消火液が衝突する部材である。本実施形態では、デフレクタ23は円盤状を呈しているが、これに限られない。
デフレクタ23と本体11(放出口13)との間の距離L(図2)は、予め設定された間隔(所定の間隔)以上であることが好ましい。この間隔は、支柱21に沿って流れる消火液が自由表面Sを含むように設定されるとよく(図10参照)、例えば放出口13と支柱21との間の距離、又は支柱21に沿って流れる消火液の厚みの予測値でもよい。詳細は追って述べる。
デフレクタ23は、消火液が衝突する衝突面25を有している。衝突面25は、支柱21に対して直交していてもよいが、外縁に向かうにつれて本体11(放出口13)から遠ざかるように傾斜することが好ましい。消火液が傾斜した衝突面25に衝突してデフレクタ23の外縁に向かって放出口13から遠ざかるように広がることで、消火液が図2の矢印Xにおける下方へと向かうようになる。すなわち、消火液の散布範囲を制御することができる。デフレクタ23の傾斜角度θ(図4)は、支柱21に直交する方向に対して0~60度であることが好ましい。
デフレクタ23の外径D4は、放出口13からの消火液がデフレクタ23に衝突するように、放出口13の外径D2よりも大きく設計される。具体的には、外径D4は、求められる散水性能(例えば散水距離や散水範囲)を満たすように設定されてよい。
支柱21の説明に移ると、これは、デフレクタ23を支持する棒状の部材である。支柱21は、上方の一端(第1端)において本体11の内側に位置し、下方の他端(第2端)において本体11の外側に位置するとともにデフレクタ23を支持する。したがって、放出口13から吐出した液体は、例えば図5に示すように、支柱21の外周面に沿って流れて液膜を形成することになる。
本実施形態では、支柱21は円柱状であることを想定しているが、例えば角柱のような他の形状の柱でも差し支えない。また、支柱21の外径D3は、噴霧ヘッド10の内部圧力、流量、縮流現象の考慮の要否などの諸条件に応じて決定される。本実施形態の支柱21の上方部分は、上方の一端の外径が上方に向かうにしたがって小さくなるように、傾斜している。外径D3の具体的な設計例については追って述べる。
本実施形態では、支柱21とデフレクタ23は一体的に作製されており単一の部材を構成している。したがって、デフレクタ23は鍔状であるとも言える。ただし、支柱21とデフレクタ23は一体的である必要はない。例えば、支柱21とデフレクタ23とは互いに着脱自在で、かつ、互いに接続固定されていてもよい。
また、支柱21は、図2に示すように、棒状の固定部材31を介して本体11に支持されているが、他の方法で本体11に取り付けられてもよい。
(変形例1)
図7を参照して、本実施形態の変形例1に係る噴霧ヘッド110を説明する。
変形例1の噴霧ヘッド110では、散水機構が入れ子状になっている。具体的には、噴霧ヘッド110は、放出口113を有する本体111、支柱121,127及びデフレクタ125,129を含んで構成されている。
支柱121は、一端において本体111の内側に位置し、他端において円盤状のデフレクタ125を支持している。支柱121及びデフレクタ125には、中心軸に沿って孔123が設けられ、この孔123に別の支柱127が挿入されている。支柱127の先端には、デフレクタ125よりも外径の小さい別のデフレクタ129が設けられている。
かかる噴霧ヘッド110では、消火液は、本体111と支柱121との間だけでなく、支柱121の内部(孔123)と支柱127との間にも流れ、デフレクタ125,129から飛散する。デフレクタ129から飛散する消火液の飛散距離は、デフレクタ125から飛散する消火液の飛散距離よりも短い。したがって、デフレクタ125からの消火液では十分にはカバーできない、噴霧ヘッド110の鉛直下方やその近傍に、適切な散水量を確保することができる。
なお、上述した散水機構の入れ子構造の個数に制限はない。
(変形例2)
図8を参照して、本実施形態の変形例2に係る噴霧ヘッド210を説明する。
変形例2に係る噴霧ヘッド210は、本実施形態に係る噴霧ヘッド10の各構成要素を備え、更にブレード241,243,245を含んでいる。このようなブレードは、大きな径を有する水粒子を増加させるために付設される。
変形例2では、ブレード241,243,245は、デフレクタ223の外側に、その周方向に沿って等間隔で配置されているが、等間隔で配置される必要はない。例えば、特定の方向に大きな径の水粒子を増やすために、その方向にブレードを多く配置してもよい。また、ブレードの本数は3本に限られない。
ここでは、ブレード241,243,245は同じ寸法であることを想定しているので、以下、1本のブレード241について具体的に説明することとする。ただし、全てのブレードが同じ寸法である必要はない。
ブレード241は、デフレクタ223の径方向における外側に配置され、本体211から遠ざかるように(即ち、図2の矢印Xの方向において上方から下方に)延びている。ブレード241は、デフレクタ223側を向くエッジ242を有する。デフレクタ223から飛散した消火液をブレード241で切ることにより、本実施形態に係る噴霧ヘッド10に比べて、比較的大きい粒径の液滴をより多く生成することができる(図16参照)。比較的大きい粒径の液滴は、火炎により深く進入し、気化により火炎内部の温度を下げることができる。
エッジ242の角度φは、10度以上かつ45度以下であることが好ましい。角度φが45度より大きいと、デフレクタ223からの液膜がエッジ242に衝突して微粒化し、粒径の比較的小さい液滴をより多く生成することとなる。また、角度φが10度未満であると、大きな径を有する水粒子を効果的に増加させることができない上に、ブレード241が細くなるため強度に難が生ずる。
なお、ここで述べたブレードは、デフレクタを支持する一対のアームを有する従来タイプの噴霧ヘッドにも適用することが可能である。
[噴霧ヘッドの設計を基礎付けるモデル及び理論]
図9~図16を参照して、上述した本実施形態の噴霧ヘッド10の設計思想を説明する。変形例1,2に係る噴霧ヘッド110,210も同様に設計することができる。なお、ここでは、噴霧される液体として水を想定している。
図9に、デフレクタへの衝突による水の微粒化の過程のモデルを示す。図示するように、噴霧ヘッドから吐出された水(消火液)は水柱を形成する。その水柱がデフレクタに衝突することで、デフレクタの外縁に向かって進展する液膜が生成される。このとき、液膜と外気との間の速度差に起因してケルビン・ヘルムホルツ不安定性が生じ、液膜が振動する。かかる液膜が更に外側に進展することでリング状のリガメントが生じ、更にはリガメントが分裂して水滴になる。
以下、液膜の生成、リガメントの生成、及び水滴の生成に関するモデルを順に説明する。なお、この微粒化モデルについては、Di Wu, Delphine Guillemin, Andre W. Marshall, A modeling basis for predicting the initial sprinkler spray, Fire Safety Journal, Vol. 42, 2007, pp. 283-294.を参照するとよい。
図10に、液膜生成のモデルを示す。このモデルでは、本体11の放出口13から速度Uで吐出した柱状の水(半径r)は、デフレクタ23(半径r)への衝突後、デフレクタ23の外縁に向かって広がって液膜を生成する。ここで、デフレクタ23から飛散した液膜は速度Uで外側に進展するものとし、デフレクタ23端における液膜の厚さをh、任意の位置rにおける液膜の厚さをhとする。このモデルでは、放出口13から吐出した水柱の外面Sは、外気との界面、つまり自由表面となっているが、これに限られるものではない。
このような液膜の生成を記述する支配方程式として、ここでは以下の数式1~数式5を用いた。これらの数式において、r,r,Δp,ρ,v,Q,K,U,U,h,hはそれぞれ、衝突前の水柱の半径[m]、デフレクタ23の半径[m]、本体11内のゲージ圧[Pa]、水の密度[kg/m]、水の動粘度[m/s]、流量[L/min]、Kファクター、衝突前の流速[m/s]、衝突後の液膜の速度[m/s]、デフレクタ23端での液膜厚さ[m]、任意の位置rでの液膜厚さ[m]である。Cは定数で1.659×10-2である。




図11に液膜分裂のモデルを、図12にリガメント生成のモデルを示す。図11に示すように、デフレクタ23の外側に進展した液膜はケルビン・ヘルムホルツ不安定性により振動し、その振動の波長をλとする。そして、図12に示すように、液膜の先端がr=rbu,shに到達したときに、液膜がリガメントに分裂する。そのときのリガメントの直径dligとする。
このような液膜分裂及びリガメントを記述する支配方程式として、ここでは以下の数式6~数式10を用いた。これらの数式において、f,σ,n,μ,λ,ρ,T,fcrit,sh,(ninvcrit,ncrit,sh,mlig,hbu,sh,rbu,sh,dligはそれぞれ、無次元振幅、表面張力[N/m]、波数、水の粘度[Pa・s]、波長[m]、空気の密度[kg/m]、液膜厚さ[m]、液膜の分裂臨界無次元振幅、非粘性時の分裂臨界波数[1/m]、液膜の分裂臨界波数[1/m]、リガメントの質量[kg]、分裂する液膜厚さ[m]、液膜の分裂半径[m]、リガメントの直径[m]である。fcrit,sh=12の時に液膜は分裂する。




図13にリガメント分裂のモデルを示す。図示するように、リガメントもまた不安定であり、大きい径の部分と小さい径の部分とがリガメントの軸方向に沿って繰り返し形成されるようになる。その繰り返しの1単位、つまり波長がλcrit,ligに至ると、リガメントは直径ddropの水滴に分裂する。
このようなリガメント分裂を記述する支配方程式として、ここでは以下の数式11~数式15を用いた。これらの数式において、λcrit,lig,ddrop,N,tbu,lig,rdrop,tbu,shはそれぞれリガメントの分裂臨界波長[m]、水滴の直径[m]、分裂後の水滴の数、リガメントの分裂までの時間[s]、水滴の半径[m]、液膜の分裂までの時間[s]である。





以上の数式を用いてシミュレーションを実行し、水の粒子径(平均径)を算出することとした。
ここで、粒子の平均径について述べる。
一般に、粒子の平均径にはいくつかの種類があり、粒数、粒径、表面積、体積の4つの要素の組み合わせから6通りの平均径が存在する。ここでは、そのうちの一つである次式のx31を用いることとするが、本発明はこれに限られるものではない。

ここでxは粒子径、nは粒子数である。
そして、噴霧粒子の粒数頻度分布を予測するために、ここでは棚沢の式を用いることとする。棚沢の式は、棚沢泰氏が実験値より求めた分布関数であり、水噴霧により微粒化された水粒子の粒径分布をよく表すと考えられる。棚沢の式の詳細については、棚沢泰,液体噴霧粒群の大きさの表し方,機械の研究,1963,第15巻,第4号,pp.9-18を参照するとよい。
棚沢の式は、次のように表わされる。

ここでnは粒子数、xは粒子径、α、βは任意の定数、A、Bはα、βとガンマ関数により定まる定数である。
この式の両辺の常用対数をとり整理すると、次式のように変形できる。
したがって、上式の左辺を縦軸に、右辺を横軸にとれば、グラフ上で分布を直線的に表わすことができる(図15、図16参照)。
上式の係数A、Bはガンマ関数と粒子の平均径を利用して求めることができる。この平均径として、上記シミュレーションによって得られる水の粒子径を用いればよい。
通常、定数α、βとして、α=1、β=1を用いる。
ところで、噴霧ヘッド10は縮径部15を有するため、放出口13において縮流現象が生ずる。つまり、図6に示すように、放出口13から吐出される水柱(液膜)の断面積は、放出口13の断面積よりも小さい。この縮流現象を考慮することで、より正確な粒子径分布を予測することが可能となると考えられる。
[噴霧ヘッドの設計]
上述の設計思想に基づいて、本実施形態に係る噴霧ヘッド10を設計する。図14に、噴霧ヘッドの設計手順の一例を示す。
噴霧ヘッド10の設計に当たっては、放出口13(出口)における水の流速(出口速度)U、放出口13の内径D2、支柱21の外径D3等を決定する必要がある。
まず出口速度Uを決定する(ステップS1)。そのために、噴霧ヘッド10の内部(中央部)と放出口13とでエネルギー等式を立てる。エネルギー等式であるベルヌーイの式は次式で表わされる。

ここでv、v、z、z、p、p、g、ρ、ξはそれぞれヘッド内部の流速[m/s]、出口流速[m/s]、ヘッドの位置(高さ)[m]、出口位置(高さ)[m]、ヘッド内部の圧力[Pa]、放出口13における水圧(出口圧力)[Pa]、重力加速度[m/s]、水の密度[kg/m]、形状損失係数である。
実際の設計では、ヘッド内部の流速vや、ヘッド内部の位置zと出口位置zとの差は無視できる。また出口圧力pを大気圧に等しいとすると、上記の数式19は次のように変形できる。

したがって、出口速度vはヘッド内部の圧力p、水の密度ρ及び形状損失係数ξから求めることができる。
次いで、放出口13の断面積(開口面積)Aを決定する(ステップS2)。噴霧設備1では通常、ヘッド内部の圧力pとヘッドの流量Qとが予め設定されているため、次式で示す連続の式を用いて、噴霧に必要となる放出口13の断面積Aを求めることができる。

ここで、Qは流量、Aは放出口13の断面積、vは出口速度(数式20におけるv)である。
このようにして決定した放出口13の断面積Aと、予め実験等から予測した液膜の厚さとに基づき、放出口13の内径D2と支柱21の外径D3とを決定する(ステップS3)。このとき、縮流現象を考慮してもよい。
そして、デフレクタ23の外径D4及びデフレクタ23と本体11との距離Lを決定する(ステップS4)。外径D4は、求められる散水性能に応じて決定すればよい。また、距離Lは、支柱21に沿って流れる水(液膜)が自由表面Sを有するように決定されることが好ましい。例えば、距離Lを、予測される液膜の厚み以上、又は、放出口13と支柱21との間の距離(図6の(d-d)/2)以上に設定することが考えられる。
[ヘッド設計の具体例]
ヘッド設計の具体例として、40L/minの噴霧ヘッドの設計手順を以下に示す。
まず数式20を用いて、出口速度vを計算した。ここで、噴霧ヘッド10の内部圧力Δpを0.3MPaと、損失係数ξを0.25と設定すると、水の密度ρは1000kg/mであるから、出口速度vとして

を得る。
噴霧ヘッド10の流量Qは40L/minと設定されているので、数式21より、放出口13の断面積Aとして、

を得る。
そして、別途行った12L/minの噴霧ヘッドの実験結果を踏まえ、液膜の厚さを0.6mmと予測した。この予測に基づき、支柱21の軸径dと、支柱21と液膜の膜厚とを合わせた径d’との関係は、

で表すことができる(図6参照)。
したがって、噴霧ヘッド10の放出口13に必要な断面積Aは、次式のように表すことができる。

この式を整理し、先に得た断面積Aの値を代入すると、d=15.5[mm]を得る。よってd’=16.7[mm]となる。
そして、別途行った12L/min及び18L/minの実験結果を踏まえ、縮流現象により支柱21上に形成される液膜が、縮流現象を考慮しない場合に比べて0.3mm程度減少すると予測した。かかる予測結果を踏まえ、放出口13の直径d=17.0[mm]とした。
その他、デフレクタ23の半径を支柱21の軸径dよりも2mm長い17.5mmとし、デフレクタ23と本体11との距離を2~3mmとした。
このようにして得た寸法に基づいて作製した噴霧ヘッドについて粒子径分布を調べた。動作圧力は0.3MPaであり、噴霧ヘッドと地面までの距離は0.5mである。地面にひまし油を入れたシャーレを置き、噴霧粒子を採取した。具体的には、噴霧ヘッドの直下を中心として所定の距離だけ離れた位置にシャーレを置き、噴霧粒子を所定の個数だけ採取した。このようにして得た結果を採取時間と採取面積に応じて補正し、粒子径の分布を計算した。
図15は、その試験結果(白丸)を理論値(直線)と比較したグラフである。ここでいう理論値は、棚沢の式に基づいて算出した粒子径分布である。図15から、理論値は試験結果と十分よく一致していると言えるから、上述した理論は、デフレクタへの衝突による水の微粒化現象を良く説明していると考えられる。
したがって、ここで述べた設計手法に従って噴霧ヘッドを設計することで、所望の粒子径分布を有する液体を噴霧ヘッドから飛散させることができると考えられる。
また、上記のとおり製作した噴霧ヘッドにブレードを装着したものを、変形例2に対応する試作例とする。つまり、3本のブレードを120度ごとに等間隔に配置した。ブレードの幅は1.5mmであり、エッジの角度は約30度である。
図16は、その試験結果(四角)を、ブレードのないタイプの試験結果(三角)及び理論値(直線)と比較したグラフである。図16から、800μmを超える直径の液滴が理論及びブレードのないタイプの試験結果よりも増加していることが分かる。
このように、上記理論に従って噴霧ヘッドを設計することで、噴霧ヘッドから散水される液体について所望の粒子径分布を得ることができる。
以上、本発明の代表的な実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、種々の設計変更が可能であり、それらも本発明に含まれる。
1・・・噴霧設備、
10,110,210・・・噴霧ヘッド、
11,111,211・・・本体、
13,113,213・・・放出口、
21,121,127,221・・・支柱、
23,125,129,223・・・デフレクタ、
241,243,245・・・ブレード。

Claims (3)

  1. 液体の放出口を有する本体と、前記放出口から吐出した液体が衝突するデフレクタと、前記本体の内側に位置する第1端及び前記デフレクタを支持する第2端を含む支柱と、を備える噴霧ヘッドの設計方法であって、
    下記式:
    (式中、v、p、ρ及びξは、それぞれ放出口における液体の速度(出口流速)[m/s]、予め設定した噴霧ヘッド内部の圧力[Pa]、液体の密度[kg/m]及び形状損失係数)により、前記放出口における前記液体の速度vを予測するステップと、
    下記式:
    (式中、Q、A及びvは、それぞれ予め設定した噴霧ヘッドにおける液体の流量[L/min]、放出口の断面積[m]及び放出口における液体の速度(出口流速)(=v))により得られる放出口の断面積Aと、前記支柱の外周面を流れる液体膜厚と、に基づいて、前記放出口の径D2及び前記支柱の径D3を決定するステップと、
    を含み、
    前記膜厚hは、下記の数3~数7(式中、r ,r ,Δp,ρ ,v ,Q,K,U ,U,h ,hはそれぞれ、衝突前の水柱の半径[m]、デフレクタの半径[m]、本体内のゲージ圧[Pa]、水の密度[kg/m ]、水の動粘度[m /s]、流量[L/min]、Kファクター、衝突前の流速[m/s]、衝突後の液膜の速度[m/s]、デフレクタ端での液膜厚さ[m]、任意の位置rでの液膜厚さ[m]である。C は定数で1.659×10 -2 である。)
    を含む液膜生成モデルにより得られること、
    を特徴とする噴霧ヘッドの設計方法。
  2. 前記放出口における液体の縮流現象を考慮して、前記放出口の径及び前記支柱の径を決定すること、
    を特徴とする請求項1に記載の噴霧ヘッドの設計方法。
  3. 前記支柱の外周面を流れる液体が自由表面を含むように、前記本体と前記デフレクタとの間の距離を決定すること、
    を更に含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の噴霧ヘッドの設計方法。
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