JP7311639B2 - ビーム変換素子を備えた半導体部品およびビーム変換素子を製造するための方法 - Google Patents

ビーム変換素子を備えた半導体部品およびビーム変換素子を製造するための方法 Download PDF

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Description

本出願は、ビーム変換素子を備えた半導体部品、およびビーム変換素子を製造するための方法に関する。
赤外線スペクトル範囲で発光する発光ダイオード、特に、1000nmを超える発光波長を有する発光ダイオードは、GaP基板上に製造することができる。ただし、これらの基板は非常に高価であり、限られた範囲しか利用できないことに加え、既知のエミッタは、比較的大きな側方発光性を示し、これによって、光学的撮像は困難である。
1つの課題は、赤外線スペクトル範囲で効率的なビーム生成を達成することである。
この課題は、とりわけ、請求項1による半導体部品によって、もしくは請求項10によるビーム変換素子を製造するための方法によって解決される。さらなる構成および実用性は、従属請求項の対象である。
半導体部品の少なくとも1つの実施形態によれば、半導体部品は、半導体チップを備える。この半導体チップは、特に、ピーク波長を有する一次ビームを生成するために設けられた活性領域を有する。半導体チップへの電圧の印加により、半導体部品の動作中に、電荷担体は、反対側から活性領域に入り、そこでビームを発光しながら再結合することができる。
半導体部品の少なくとも1つの実施形態によれば、半導体部品は、ビーム変換素子を備える。このビーム変換素子は、特に半導体チップ上に配置され、例えば固定されている。
半導体部品の少なくとも1つの実施形態によれば、一次ビームのピーク波長は、赤外線スペクトル範囲内にある。例えば、ピーク波長は、900nm以上1100nm以下にある。例えば、ピーク波長は、920nm以上1080nm以下にある。
半導体部品の少なくとも1つの実施形態によれば、ビーム変換素子は量子構造部を有する。
量子構造部という用語には、本出願の枠内では、特に、電荷担体が閉じ込め(confinement)によってエネルギー状態の量子化を被ることができるあらゆる構造部が含まれる。特に、量子構造部という用語には、量子化の次元に関する情報は含まれていない。したがって、量子構造部という用語には、とりわけ、量子井戸、量子細線、量子ドット、ならびにこれらの構造部のあらゆる組み合わせが含まれる。
例えば、量子構造部は複数の量子層を有し、それらの間にはバリア層が配置されている。例えば、量子層とバリア層とは、多重量子井戸(Multi Quantum Well;MQW)構造部を形成する。ビーム変換素子は、例えば、一次ビームに対して透過性の基板を有する。この基板は、特に、量子構造部の機械的な安定化に用いられる。例えば、基板は、量子構造部の少なくとも2倍または少なくとも5倍の厚さである。基板は、例えば、量子構造部のエピタキシャル堆積のための成長基板である。代替的に、基板は、量子構造部のための成長基板とは異なっていてもよい。さらに、ビーム変換素子は、基板によって覆われなくてもよい。
半導体部品の少なくとも1つの実施形態によれば、量子構造部は、一次ビームを少なくとも部分的に二次ビームに変換し、ここで、二次ビームの発光極大値の発光波長は、ピーク波長よりも大きい。発光極大値は、例えば、二次ビームの広域極大値もしくは二次ビームの局所的極大値である。
ビーム変換素子を用いることにより、半導体チップの活性領域のために使用される材料系では容易に達成することができないであろう波長範囲でビーム生成を行うことができる。例えば、二次ビームの少なくとも1つの発光極大値は、1000nm以上1700nm以下にある。
半導体部品の少なくとも1つの実施形態では、半導体部品は、半導体チップおよびビーム変換素子を備え、ここで、ビーム変換素子は、半導体チップ上に配置されている。半導体チップは、ピーク波長を有する一次ビームを生成するために設けられた活性領域を有する。ビーム変換素子は、量子構造部を有する。一次ビームのピーク波長は、赤外線スペクトル範囲内にある。量子構造部は、一次ビームを少なくとも部分的に二次ビームに変換し、この場合、二次ビームの発光極大値の発光波長は、ピーク波長よりも大きい。
半導体部品の少なくとも1つの実施形態によれば、量子構造部は、バリア層によって相互に分離された複数の量子層を有し、ここで、バリア層は、ピーク波長を有するビームのエネルギーよりも大きいバンドギャップを有する。
換言すれば、ピーク波長を有するビームのエネルギーは、価電子帯から伝導帯へバリア層内で電荷担体を励起するためには十分ではない。つまり、ビーム変換素子における一次ビームのビーム吸収は、実質的に量子層内で直接行われる。
半導体部品の少なくとも1つの実施形態によれば、量子構造部は、それらのバンドギャップに関して相互に異なる少なくとも2つの量子層を有する。換言すれば、量子構造部の発光スペクトルは、少なくとも2つの発光帯を有し、それらの発光極大値は相互に異なる。例えば、二次ビームの2つの発光極大値間のスペクトル距離は、発光極大値の半値半幅の合計よりも大きい。これらの発光極大値は、発光スペクトルにおいて明確に解決される。代替的に、隣接する極大値間のスペクトル距離は、発光帯の重畳が全体的に発光スペクトルの拡幅につながるくらいに小さくてもよい。
半導体部品の少なくとも1つの実施形態によれば、量子構造部は、InPの格子定数を有する。つまり、量子構造部のために使用される半導体材料は、例えば、MBEまたはMOVPEを用いて、InPを有する成長基板上にエピタキシャル堆積させることができる。この材料は、張力が結晶内に亀裂を引き起こさない限り、格子適合化または張力を形成することができる。
半導体部品の少なくとも1つの実施形態によれば、量子構造部は、以下の材料系のグループ、すなわち、Ga In1-x As1-y、In Ga1-x As Sb1-y、In Ga1-x As、In Ga1-x Sb1-y、In Al1-x Sb1-yからの少なくとも1つの材料を有し、ただし、xおよびyは、それぞれ、材料の格子定数がInPの格子定数に対応するように選択され、この場合、x≦1であり、y≦1である。特に、前述の半導体材料を用いることにより、直接的なバンドギャップを得ることができ、そのため、光の吸収も発光も効率的に行うことが可能である。
材料の格子定数がInPの格子定数に対応するということは、材料の固有の格子定数がInPの格子定数と同じであるか、あるいは少なくとも、材料が弛緩することなくInP上で緊張したまま成長するくらいに偏差が少ないことを意味する。
例えば、量子構造部のための材料の固有の格子定数は、InPの格子定数と最大で2%、特に最大で1%異なっている。
上記の材料を用いれば、1000nm以上1700nm以下の発光波長を確実に達成することができる。
半導体部品の少なくとも1つの実施形態によれば、ビーム変換素子は、半導体部品の平面図で見て、半導体チップの活性領域の少なくとも90%を覆っている。特に、ビーム変換素子は、活性領域を完全に覆うこともできる。つまり、活性領域の主要延在面に対して垂直に放射されたビームは、事前にビーム変換素子を通過することなく、半導体部品から、全く出射できないか、比較的僅かな割合しか出射することができない。この種の構成は、特に、半導体部品の発光スペクトルにおける一次ビームが望ましくないか、少なくとも必要とされない半導体部品に対して適している。
半導体部品の少なくとも1つの実施形態によれば、ビーム変換素子は、半導体部品の平面図で見て、半導体チップの活性領域の最大80%を覆っている。この場合、半導体部品からは一次ビームのかなりの部分も出射する。これにより、発光スペクトルの全体的なスペクトル幅が拡大する。一次ビームもスペクトル全体に含まれる半導体部品は、特に、広帯域発光が望まれる用途、例えばバイオセンサシステム用途に適している。
半導体部品の少なくとも1つの実施形態によれば、ビーム変換素子は、最大で200μmの厚さを有する。この厚さは、ここでは、活性領域の主要延在面に対して垂直な拡がりに関連している。ビーム変換素子が薄いほど、半導体部品の動作中にビーム変換素子から側方に放射されるビームは一層少なくなる。そのため、総じて放射されるビームは、半導体部品の下流に配置される光学素子によってより容易に成形することができる。
半導体部品の少なくとも1つの実施形態によれば、半導体チップは、支持体を有し、ここで、活性領域と支持体との間にミラー層、特に金属ミラー層が配置されている。
特に、支持体は、半導体チップの活性領域のための成長基板とは異なる。この種の半導体チップは、薄膜半導体チップとも称される。そのような薄膜半導体チップの場合、側方の放射は減少し、ミラー層とは反対側の半導体チップのビーム出射面を通る放射の増加に有利になる。
特に、記載されたビーム変換素子に関連する薄膜半導体チップは、半導体部品の側方の放射を低減し、発光されたビームの光学的結像性を改善するために適している。さらに、半導体チップから側方に出射し、その結果、ビーム変換素子に入射しない一次ビームの割合を低減することができる。これにより、発光スペクトルにおける一次ビームの割合が、特に比較的大きな放射角度で増加する可能性もある。
さらに、複数のビーム変換素子を製造するための方法が提示されている。
本方法の少なくとも1つの実施形態によれば、量子構造部を有する半導体積層体が、例えばMBEまたはMOVPEを用いて基板上に堆積される。
量子構造部は、例えば、単結晶層として格子整合されてInPを含む基板上に堆積される。特に、基板の少なくとも1つの堆積表面は、InPによって形成される。これにより、最適な吸収および発光効率を備えた高い層品質を特に確実に達成することができる。
本方法の少なくとも1つの実施形態によれば、半導体積層体は、多数のビーム変換素子に個別化される。つまり、ウェーハ複合体において複数のビーム変換素子を同時に製造することができ、この場合、複合体の個別化の際に複数のビーム変換素子が生じる。
本方法の少なくとも1つの実施形態によれば、基板は、特に個別化の前に、少なくとも部分的に量子構造部から除去される。つまり、基板は、完成したビーム変換素子にはもはや存在しないか、特に厚みの薄くなった一部のみが存在している。
本方法の少なくとも1つの実施形態によれば、量子構造部から基板を少なくとも部分的に除去するために犠牲層が除去される。この犠牲層は、量子構造部と、量子構造部とは反対側の基板裏側との間に、例えば、量子構造部と基板の堆積面との間に位置している。犠牲層は、例えば、化学的手法によって簡単かつ確実に除去することができる層である。
本方法の少なくとも1つの実施形態によれば、分離核が基板に導入され、これらの分離核に沿って基板の一部が分離される。これらの分離核は、例えば、イオン注入によって導入することができる。分離は、例えば、基板の加熱を用いて行うことができる。
本方法の少なくとも1つの実施形態によれば、基板の少なくとも一部は、本方法のさらなる製造サイクルにおいて、量子構造部を有する半導体積層体の堆積のために再利用される。これにより、ビーム変換素子のための製造コストがさらに低減され得る。
本方法の少なくとも1つの実施形態によれば、基板は、個別化の前に薄膜化される。これは、例えば、機械的手法、例えば研削、研磨、またはラッピングなどによって行われる。基板が薄いほど、ビーム変換素子からの側方の発光を一層少なくすることができる。それに対して、量子構造部のための半導体積層体の堆積中、基板の厚さをより大きくすることができ、そのため、半導体積層体のための堆積の温度が比較的高い場合であっても、基板は十分な機械的安定性を有する。
記載の方法は、上記でさらに説明したビーム変換素子の製造に特に適している。それゆえ、本方法に関連して説明された特徴は、ビーム変換素子にも使用することができ、その逆も可能である。
記載の半導体部品もしくは記載の方法を用いることにより、特に、以下の効果を達成することができる。
活性領域については、特に電気的励起によって一次ビームを効率的に生成することができる材料系が使用できる。これにより、特に、半導体チップ用の新規の材料系の確立に比べて、所望のより長い波長を有するビームを生成するために比較的僅かな技術的コストしか生じない。
半導体チップの製造のために、人間の目には白く見えるビームもしくは可視スペクトル範囲の他のビームを生成する、ビーム生成光源のための確立された技術に類似した製造プロセスを使用することができる。
量子構造部を有するビーム変換素子を用いることにより、半導体部品のビームのスペクトル特性は、例えば、量子構造部の量子層のバンドギャップおよび/または層厚さの変化を用いて、予め設定された要件に特に容易にかつ確実に適合化させることができる。これとは異なり、赤外スペクトル範囲で発光する蛍光体の発光スペクトルはほとんど変化しない。二次ビームの発光波長は、1000nm~1800nmまでの全スペクトル範囲にわたって調整可能である。
さらに、必要に応じて、ビーム変換素子の量子層の変化を介して、マルチバンド発光および/または広域スペクトル発光を容易に達成することができる。
励起は、比較的長波のビームで行うことができる。一次ビームと二次ビームとの間の僅かなスペクトル距離によって、半導体部品の高い効率が、少ないストークスシフト(Stokes Shift)と同時に達成される。
さらなる構成および実用性は、図面に関連した以下の実施例の説明から明らかになる。
半導体部品についての実施例の概略的断面図である。 半導体部品についての実施例の概略的平面図である。 半導体部品についての実施例の概略的平面図である。 半導体部品についての実施例の概略的平面図である。 半導体部品についての実施例の概略的平面図である。 ビーム変換素子のバンド構造部の実施例の概略図である。 ビーム変換素子のバンド構造部の実施例の概略図である。 半導体部品の発光スペクトルについての一実施例である。 半導体部品の発光スペクトルについての一実施例である。 半導体部品の発光スペクトルについての一実施例である。 半導体部品の発光スペクトルについての一実施例である。 様々な半導体材料系を用いて達成できる可能性のある発光波長の図であり、ここでは、バンドギャップE(左方のスケール)と関連する発光波長λ(右方のスケール)とが格子定数dの関数として示されている。 様々な発光ダイオードについての波長に依存した任意の単位での強度についての測定データの例である。 任意の単位の線形スケール(左方)および対応する対数スケール(右方)での2つの異なる電流の際の発光ダイオードについての波長に依存した強度についての測定データの例である。 波長に依存した様々な量子構造部を有する2つのエピタキシャル基板における任意の単位での電気光学的強度測定の例である。 ビーム変換素子を製造するための方法についての概略的に示された中間ステップに基づく一実施例である。 ビーム変換素子を製造するための方法についての概略的に示された中間ステップに基づく一実施例である。 ビーム変換素子を製造するための方法についての概略的に示された中間ステップに基づく一実施例である。 ビーム変換素子を製造するための方法についての概略的に示された中間ステップに基づく一実施例である。 ビーム変換素子を製造するための方法についての概略的に示された中間ステップに基づく一実施例である。 ビーム変換素子を製造するための方法についての概略的に示された中間ステップに基づく一実施例である。 ビーム変換素子を製造するための方法についての概略的に示された中間ステップに基づく一実施例である。 ビーム変換素子を製造するための方法についての概略的に示された中間ステップに基づく一実施例である。 ビーム変換素子を製造するための方法についての概略的に示された中間ステップに基づく一実施例である。 ビーム変換素子を製造するための方法についての概略的に示された中間ステップに基づく一実施例である。 ビーム変換素子を製造するための方法についての概略的に示された中間ステップに基づく一実施例である。 ビーム変換素子を製造するための方法についての概略的に示された中間ステップに基づく一実施例である。 ビーム変換素子を製造するための方法についての概略的に示された中間ステップに基づく一実施例である。 ビーム変換素子を製造するための方法についての概略的に示された中間ステップに基づく一実施例である。
同一、同種、もしくは作用が同じ要素には、図面中同じ参照記号が付されている。
これらの図はそれぞれ概略図であり、それゆえ、必ずしも縮尺通りではない。むしろ、比較的小さな要素、特に層厚さは、明確化のために誇張的に大きく示される場合がある。
図1Aには、図1Bに示される線AA’に沿った断面図における半導体部品1の一実施例が示されている。この半導体部品1は、一次ビームを生成するために設けられた活性領域20を有する半導体チップ2を備えている。この活性領域は、半導体チップの第1の半導体層21と第2の半導体層22との間に位置している。例えば、第1の半導体層21はn導電性であり、第2の半導体層22はp導電性であり、またはその逆も可能である。半導体チップの接点45とさらなる接点46との間で外部電圧を印加することにより、電荷担体は、第1の半導体層21と、反対側の第2の半導体層22とを介して活性領域20に到達し、そこで一次ビームを発光しながら再結合することができる。
半導体チップ2上にはビーム変換素子3が配置されている。このビーム変換素子3は、接着層4を用いて半導体チップ2に取り付けられている。例えば、接着層にはシリコーンもしくはエポキシが含まれている。接着層4は、好適には、活性領域20で生成されたビームに対して透過性である。
ビーム変換素子3は、量子構造部30を有する。図示を簡単化するために、図1Aでは2つの量子層31および2つのバリア層32が示されている。しかしながら、量子層の数は、例えば、1以上50以下の量子層など、広範囲において変更可能である。
量子構造部30は、ビーム変換素子3の基板35上に配置されている。例えば、基板は、特に、量子構造部30のエピタキシャル堆積のための成長基板である。しかしながら、量子構造部30の半導体層のための成長基板は、半導体部品1内に完全に含まれる必要があるのではなく、むしろ、ビーム変換素子3の製造中に完全にもしくは部分的に除去されてもよい。
一次ビームのピーク波長は、例えば、赤外線スペクトル範囲内にある。例えば、ピーク波長は、920nm以上1070nm以下、特に940nm以上1000nm以下にある。
例えば、半導体チップ2の活性領域20は、In Ga Al1-x-y As1-zの材料系に基づいている。材料組成x、y、およびzのパラメータは、特に、材料が成長基板としてのGaAs基板上に単結晶で堆積可能となるように選択される。
図示の実施例では、半導体チップ2は、活性領域20を有する半導体積層体のための成長基板が、完成した半導体チップ内にもはや存在しない薄膜半導体チップとして構成されている。活性領域20を有する半導体積層体は、接続層26を用いて支持体29に固定されている。支持体29自体は、成長基板の結晶純度に課せられた高い要件を満たす必要はない。活性領域20と支持体29との間に、さらに、特に金属製のミラー層25が配置されており、そのため、活性領域20において生成され、支持体29の方向に放射されるビームが反射され、半導体チップ2の支持体29とは反対側のビーム出射面200から出射する。
活性領域20で生成された一次ビームは、ビーム変換素子3の量子構造部30において、少なくとも部分的に二次ビームに変換される。
バリア層は、それらの材料組成に関して、好適には、それらが、ピーク波長を有する一次ビームのビームエネルギーよりも大きいバンドギャップを有するように選択されている。このことは、図2Aにおいて、量子構造部30の価電子帯Eおよび伝導帯Eの概略図に基づいて示されている。矢印によって示されている一次ビーム5は、バリア層32においてではなく、量子層31において吸収される。これによって生じる励起51は、矢印によって表されている。
その後、矢印によって示されているより長い波長を有する二次ビーム6が発光可能になる。この発光は、例えば、量子層によって形成された量子井戸の基底状態から行われる。つまり、量子層31の直接的な光励起が行われ、それによって、特に効率的なビーム変換が行われる。
図2Aに示される実施例では、量子層31のバンドギャップは、相互に異ならないか、相互に僅かに異なるだけである。これにより、スペクトル的に狭帯域の発光スペクトルが生じる。
これとは異なりに、図2Bには、少なくとも2つの量子層31がそれらのバンドギャップに関して相互に異なる実施例が示されている。量子構造部30の量子層31についての材料パラメータの選択を介して、半導体部品の発光スペクトルが、予め設定されたビーム特性に容易にかつ確実に適合化可能である。
図3A~図3Dには、半導体部品の発光スペクトルの様々な構成が示されており、ここでは、それぞれ強度が、波長λの関数として任意の単位で示されている。特性曲線901は、それぞれ一次ビームを表し、特性曲線902は二次ビームを表す。図3Aに示される実施例では、二次ビームは、厳密に1つの発光極大値を有し、これは広域な最大値を表している。
しかしながら、相互に異なる量子層によれば、図3Bに示されるように、二次ビームが、相互に異なる発光極大値9021もしくは9022を有する相互に離間された2つ以上の発光帯を有している発光スペクトルも達成することができる。例えば、2つの発光極大値9021,9022間のスペクトル距離は、発光帯の半値半幅(half width at half maximum;HWHM)の合計よりも長くなってもよく、そのため、この発光スペクトルは、二次ビームにおいて相互に明らかに異なる発光極大値を有する。
代替的に、図3Cに示されるように、隣接する発光極大値間の距離がより僅かであってもよい。この場合、発光極大値9021、9022、および9023は、共通のスペクトル的に拡幅された発光ピークまで重畳することができ、そのため、半導体部品1は、スペクトル的に特に広幅なビームによって際立っている。つまり、量子層の所期の変化により、二次ビームの発光スペクトルを拡幅することができる。
図3Dに示されるように、一次ビーム901のスペクトルも、2つ以上の発光極大値、例えば、発光極大値9011およびさらなる発光極大値9012を有することができる。
量子構造部30には、InP上にエピタキシャル堆積可能である材料が特に適している。
例えば、量子構造部は、以下の材料系のグループ、すなわち、Ga In1-x As1-y、In Ga1-x As Sb1-y、In Ga1-x As、In Ga1-x Sb1-y、In Al1-x Sb1-yからの少なくとも1つの材料を有し、ただし、xおよびyは、それぞれ、材料の格子定数がInPの格子定数に対応するようにもしくは少なくとも近似するように選択される。一次ビームには、少なくとも920nm、例えば少なくとも930nmもしくは少なくとも940nmであるピーク波長が特に適しており、そのため、一次ビームは、ビーム変換素子3のInP基板35および同じ材料からなるバリア層32によって吸収されない。
半導体部品1の発光スペクトルにおける一次ビームの割合は、半導体チップ2のビーム出射面200のビーム変換素子3による被覆率を用いて設定することもできる。このことは、図1B~図1Eに基づいて示されている。図1Bに示される実施例では、半導体チップ2は、半導体チップ2のコーナー領域に前面側接点45を有する。ビーム変換素子3は、凹部39を有しており、そのため、接点45は、例えばワイヤボンディング結合を用いて、半導体部品1の外部との電気的接触接続のためにアクセス可能である。活性領域20は、完全に覆われているか、少なくとも実質的に完全に、例えば少なくとも90%の被覆率で覆われている。つまり、ビーム出射面200を通って出射する一次ビームは、それが半導体部品1の前面10から出射することができる前に、ビーム変換素子3を通過しなければならない。
これとは異なり、図1Cに示される実施例におけるビーム変換素子3は、例えば最大で80%または最大で60%の被覆率で、半導体チップ2の活性領域20を部分的にのみ覆う。これにより、一次ビームのかなりの割合が、半導体部品1の前面10におけるビーム変換素子3の側方から出射する。このことは、一次ビームが半導体部品1の発光スペクトルにおいて望まれる場合に特に有利である。
図1Dおよび図1Eの実施例は、接点45がコーナー領域ではなく、半導体チップ2の側面27に沿って延在している点で、図1Bおよび図1Cによる実施例とは異なっている。図1Dに示される実施例では、ビーム変換素子3は、図1Cに関連して説明したように、半導体チップ2の活性領域20を所定の領域でのみ覆い、そのため、半導体チップ2のビーム出射面のかなりの割合はビーム変換素子によって覆われないままである。図1Eに示される実施例では、ビーム出射面は、完全にもしくは実質的に完全にビーム変換素子3によって覆われている。この目的のために、ビーム変換素子は、単純な、例えば矩形の形態を有することができる。
図4では、特定の材料系を用いてどの発光波長が達成できるかが示されている。直線905および906は、ここではガリウムヒ素もしくはリン化インジウムの格子定数を示している。ここからは、ガリウムヒ素の格子定数を用いても、1000nm以上1700nm以下のスペクトル範囲の発光を容易に達成できないことが明らかである。InN、GaN、およびAlNのコーナーポイントを有する窒化物半導体の材料系990は、その他の図示の材料系とは異なって、閃亜鉛鉱構造部ではなく、ウルツ鉱構造部で成長し、それゆえ、その他の図示の材料系と容易に組み合わせることはできない。
ただし、InPの格子定数を用いれば、1000nm以上1700nm以下のスペクトル範囲を達成することができる。このことは、2本の直線907の間の矢印908に基づいて示されている。
図5Aには、それぞれGaAs基板上に堆積された様々な発光ダイオードについての放射されたビームの強度の測定値が示されている。ピーク波長が950nm~1000nmのビームは効率的に生成することができるのに対して、ピーク波長が1000nmを超える比較サンプルについては強度が大幅に低下している。つまり、1000nmを超えるピーク波長のビームの直接の生成については、この材料系は、条件付きでのみ適している。
図5Bには、様々な2つの動作電流における発光ダイオードについての強度の測定値が、波長に依存して示されている。この発光ダイオードについては、いくつかの量子層での活性領域において層厚さが拡大している。これにより、約15nm相互に離間された2つの発光帯が生じる。このことは、結果として拡幅された発光スペクトルを生じさせる。この手順は、記載のビーム変換素子の量子構造部や他の発光波長にも移行可能であり、これにより、二次ビームのより拡幅された発光スペクトルが達成可能である(図3C参照)。
図5Cには、トンネル接合部を介して相互に電気的に接続された2つの活性領域がそれぞれ堆積されている2つの基板についての電気光学的測定値が示されている。特性曲線910は、第1の活性領域が、810nmでの発光のための量子層と、1020nmでの発光のための量子層とを有する構造部に基づいている。第2の活性領域は、850nmでの発光のための量子層と、940nmでの発光のための量子層とを有している。この手順は、記載のビーム変換素子の量子構造部や他の発光波長にも移行可能であり、これにより、相互に離間された個々の発光帯を有する二次ビームの発光スペクトルが達成可能である(図3D参照)。
特性曲線920は、810nmおよび850nmでの発光帯のいくつかの量子層が、所期のようにより厚い層厚さで形成された修正構造部に基づいている。これにより、付加的な発光がやや長い波長で生じる。つまり、このスペクトルは、個々の発光帯を有しており、ここでは、発光ピークが部分的に所期のように拡幅されている。
総じて、図5Bおよび図5Cの測定結果は、量子構造部の発光スペクトルの設計における高い融通性を裏付けている。
図6A~図6Cには、ビーム変換素子を製造するための方法についての実施例が記載されている。基板35上には、図6Bに示されるように、量子構造部30を有する半導体積層体300がエピタキシャルに堆積される。その後、複数のビーム変換素子3への個別化が行われる。この個別化は、例えば、機械的に、例えば鋸引きによって、または化学的に、例えばエッチングによって、あるいはレーザー切断を用いて行われる。
個別化の前もしくはその最中に、製造すべきビーム変換素子のための凹部を実現することもできる。それにより、矩形の断面を有していないビーム変換素子を簡単なやり方で製造することができる(図1Bに示されるビーム変換素子3と凹部39との比較参照)。
そのようにして製造されたビーム変換素子は、その他の点では、先の図面に関連して説明されたように構成されてもよく、それゆえ、ここではより詳細には説明しない。
個別化されたビーム変換素子3は、その後、半導体部品の製造のために半導体チップ上に載置され、これに固定され得る。
これにより、ビーム変換素子3のための基板35のサイズは、半導体チップの製造が行われる基板のサイズには依存しない。そのため、例えば、半導体チップの製造が6インチ基板のプロセスに基づいて行われる場合であっても、費用効果のより高い4インチ基板をビーム変換素子のために使用することができる。
図7A~図7Cに示される実施例は、基板35が、量子構造部30の堆積後(図7A)に、例えば研磨などの機械的な方法(図7B)によって薄くなるという点で、図6A~図6Cに関連して説明される実施例とは異なる。その後、個別化が行われる(図7C)。これにより、ビーム変換素子3に残留する基板の厚さを低減することができる。基板の厚さが少ないほど、ビーム変換素子から側方に出射するビームの割合を一層低減することができる。
例えば、ビーム変換素子は、薄膜化後、最大で200μmの厚さを有する。
図8A~図8Dには、元の基板によって覆われないビーム変換素子3を製造することができる方法が記載されている。この目的のために、基板35と量子構造部30との間に、犠牲層37が配置されている(図8B)。この犠牲層は、その後、例えば、選択的エッチング手法によって除去することができる。そのため、量子構造部30および基板35は、相互に分離される(図8C)。
この量子構造部および基板の分離は、好適には、個別化の前に行われ(図8D)、そのため、基板35は、さらなる製造サイクルにおいて半導体積層体の堆積のために改めて使用することができる。比較的コストのかかる成長基板のこの再利用によって、ビーム変換素子のための製造コストをさらに低減することができる。さらに、特に薄いビーム変換素子が製造可能である。
図9Aから図9Dに記載された実施例では、基板35は分離核38を有する。これらの分離核は、例えば、イオン注入によって基板に導入することができる。例えば、水素イオンの注入が適している。
このことは、量子構造部30(図9B)のための半導体積層体が堆積される前に既に行うことができる。これとは異なって、最初に量子構造部30を堆積させ、それに続いて分離核38を形成することも考えられる。
この分離核38に沿って、基板35は、例えば熱ブラストによって、分割することができる(図9C)。これによって、基板の分離部分351が生じる。
最終的に、個別化は、前述の実施例において説明したように行うことができる(図9D)。
分離部分351は、場合によっては、図8A~図8Dに関連して説明したように、基板の表面が準備された後に再び使用することができる。
説明してきた半導体部品1および説明してきた製造方法を用いることにより、赤外線スペクトル範囲、特に1000nm以上1700nm以下の範囲のビームを、特に効率的なやり方で生成することができる。発光スペクトルは、特に量子構造部の量子層に対する材料組成と層厚さとを選択することによって、半導体部品の各用途に簡単に適合化させることができる。
例えば、半導体部品は、例えば水分もしくは湿度検出などの分析用途のための光源として適している。二次ビームは、半導体部品の発光スペクトルを単独で形成してもよいし、一次ビームに対して付加的に存在していてもよい。
さらに、特に、薄膜半導体チップとして形成された半導体チップ2に関連して、半導体部品の前面側において優勢なビーム発光を達成することができ、そのため、空間ビーム特性が下流の光学素子を介して簡略的に形成可能である。
この目的のために、GaAs成長基板が除去される薄膜技術を用いることができる。
本特許出願は、独国特許出願第102019115351.4号の優先権を主張するものであり、これによって、その開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。
本発明は、実施例に基づく説明により限定されるものではない。むしろ、本発明は、任意の新しい特徴だけでなく、あらゆる新規の特徴ならびにこれらの特徴のあらゆる組み合わせを包含し、これは、特に、それらの特徴もしくはそれらの組み合わせ自体が特許請求の範囲もしくは実施例において明示的に示されていなくても、特許請求の範囲における特徴のあらゆる組み合わせを含んでいる。
1 半導体部品
10 前面
2 半導体チップ
20 活性領域
200 ビーム出射面
21 第1の半導体層
22 第2の半導体層
25 ミラー層
26 接続層
27 側面
29 支持体
3 ビーム変換素子
30 量子構造部
300 半導体積層体
31 量子層
32 バリア層
35 基板
351 分離部分
37 犠牲層
38 分離核
39 凹部
4 接着層
45 接点
46 さらなる接点
5 一次ビーム
51 励起
6 二次ビーム
901 特性曲線
9011 極大値
9012 極大値
902 特性曲線
9021 極大値
9022 極大値
9023 極大値
905 直線
906 直線
907 直線
908 矢印
910 特性曲線
920 特性曲線
990 窒化物半導体の材料系

Claims (15)

  1. 半導体チップ(2)と、該半導体チップ上に配置されたビーム変換素子(3)とを備えた半導体部品(1)であって、
    前記半導体チップは、ピーク波長を有する一次ビーム(5)を生成するために設けられた活性領域(20)を有し、
    前記ビーム変換素子は、量子構造部(30)を有し、
    前記量子構造部は、バリア層(32)によって相互に分離された複数の量子層(31)を有し、
    前記一次ビームの前記ピーク波長は、赤外線スペクトル範囲内にあり、
    前記量子構造部は、前記一次ビームを少なくとも部分的に二次ビーム(6)に変換し、前記二次ビームの発光極大値の発光波長は、1000nm以上1700nm以下の範囲であり、前記ピーク波長よりも大きい、半導体部品(1)。
  2. 前記バリア層(32)は、前記ピーク波長を有する前記一次ビームのエネルギーよりも大きいバンドギャップを有する、請求項1記載の半導体部品。
  3. 前記量子構造部は、前記量子構造部のバンドギャップに関して相互に異なる少なくとも2つの量子層を有する、請求項1または2記載の半導体部品。
  4. 前記量子構造部は、InPの格子定数を有する、請求項1から3までのいずれか1項記載の半導体部品。
  5. 前記量子構造部は、以下の材料系のグループ、すなわち、Ga In1-x As1-y、In Ga1-x As Sb1-y、In Ga1-x As、In Ga1-x Sb1-y、In Al1-x Sb1-yからの少なくとも1つの材料を有し、ただし、前記xおよび前記yは、それぞれ、前記材料の格子定数がInPの格子定数に対応するように選択される、請求項1から4までのいずれか1項記載の半導体部品。
  6. 前記ビーム変換素子は、前記半導体部品の平面図で見て、前記半導体チップの前記活性領域の最大80%を覆っている、請求項1から5までのいずれか1項記載の半導体部品。
  7. 前記ビーム変換素子は、前記半導体部品の平面図で見て、前記半導体チップの前記活性領域の少なくとも90%を覆っている、請求項1から5までのいずれか1項記載の半導体部品。
  8. 前記ビーム変換素子は、最大200μmの厚さを有する、請求項1から7までのいずれか1項記載の半導体部品。
  9. 前記半導体チップは、支持体(29)を有し、前記活性領域と前記支持体との間にミラー層(25)が配置されている、請求項1から8までのいずれか1項記載の半導体部品。
  10. 請求項1から9までのいずれか1項記載の半導体部品を製造するための方法であって、
    a)量子構造部(30)を有する半導体積層体(300)を、基板(35)上に堆積させるステップと、
    b)前記半導体積層体を、複数のビーム変換素子(3)に個別化するステップと
    c)個別化された前記ビーム変換素子(3)を、接着剤(4)を用いて前記半導体チップ(2)上に取り付けるステップとを含む、方法。
  11. 前記基板を、少なくとも部分的に前記量子構造部から除去する、請求項10記載の方法。
  12. 前記量子構造部(30)と前記基板(35)の堆積面との間に位置する犠牲層(37)が除去される、請求項11記載の方法。
  13. 分離核(38)が前記基板に導入され、前記分離核に沿って前記基板の一部が分離される、請求項11記載の方法。
  14. 前記基板の少なくとも一部は、前記方法のさらなる製造サイクルにおいて前記ステップa)のために再利用される、請求項10から13までのいずれか1項記載の方法。
  15. 前記基板は、前記ステップb)の前に薄膜化される、請求項10から13までのいずれか1項記載の方法。
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