以下、図面を用いて、香味吸引物品に用いるフィルタ、及び、香味吸引物品について説明する。
実施形態に係る香味吸引物品用部材は、ベース部材を含む。ベース部材は、例えば、たばこ材料と組み合わせて使用される香味吸引物品用部材である。ベース部材は、燃焼型香味吸引物品を構成する部材、非燃焼加熱型香味吸引物品を構成する部材及び非加熱型香味吸引物品を構成する部材のうちの少なくとも1種でありうる。
たばこ材料は、例えばたばこ刻である。たばこ刻の材料は特に限定されず、ラミナや中骨等の公知のものを用いることができる。たばこ材料は、たばこ刻のほか、例えば顆粒状であってもよい。
燃焼型香味吸引物品は、たばこ材料を燃焼させることによりたばこ香味を消費者に提供する喫煙物品である。
非燃焼加熱型香味吸引物品は、たばこ材料を燃焼させることなく、加熱することによりたばこ香味を消費者に提供する物品である。非燃焼加熱型香味吸引物品の加熱温度は、適宜に設定可能であるが、例えば常温に近い温度から、たばこ材料が燃焼しない温度まで、広範囲となる。非燃焼加熱型香味吸引物品の加熱温度は、一例として、例えば30℃から350℃程度である。
非加熱型香味吸引物品は、たばこ材料を燃焼も加熱もしないで、たばこ香味を消費者に提供する物品である。
[第1実施形態]
第1実施形態では、たばこ材料を含む燃焼型香味吸引物品(喫煙物品)10の代表例であるシガレットについて説明する。第1実施形態では、シガレット10の一例を、図1から図16Bを参照しながら説明する。
図1は、シガレット10の断面図である。シガレット10は、たばこロッド12と、フィルタ14と、チップペーパ16とを含む。シガレット10の全長は例えば65mmから100mm程度である。シガレット10の外径は、例えば5mmから10mm程度である。
たばこロッド12は、たばこ材料(たばこ刻)22と、たばこ材料22の周囲を巻装する巻紙24とを含む。本実施形態に係るたばこロッド12は、例えば直径が7mm程度で、長さが83mm程度である。
フィルタ14は、吸口側の第1フィルタプラグ32と、たばこロッド12側の第2フィルタプラグ34と、第1フィルタプラグ32及び第2フィルタプラグ34の外周を巻回する成形紙36とを有する。第1フィルタプラグ32の後述する長手軸Lに沿う長さをL1とし、第2フィルタプラグ34の長手軸Lに沿う長さをL2とする。
第1フィルタプラグ32は、第1フィルタ本体(フィルタ要素、濾材)42と、第1フィルタ本体42の外周を巻く第1巻取紙(筒状部)44とを有する。第1フィルタプラグ32の長さL1は、第1フィルタ本体42の長さと同じである。第1フィルタ本体42は、吸口側の第1端面(吸口側端面)46、及び、吸口側とは反対側の第2端面(たばこロッド12側の端面)48を有する。第1端面46及び第2端面48は例えば円形状である。第1フィルタ本体42には、第1端面46及び第2端面48に交差する長手軸(中心軸)Lが規定される。第1端面46は吸口側であり、第2端面48はたばこロッド12側である。第1端面46は外側に露出する。
第2フィルタプラグ34は、第2フィルタ本体(フィルタ要素、濾材)52と、第2フィルタ本体52の外周を巻く第2巻取紙(筒状部)54とを有する。第2フィルタプラグ34の長さL2は、第2フィルタ本体52の長さと同じである。第2フィルタ本体52は、第3端面56及び第4端面58を有する。第3端面56及び第4端面58の外形は、例えば略円形状である。第2フィルタ本体52には、第3端面56及び第4端面58に交差する長手軸(中心軸)Lが規定される。第3端面56は吸口側であり、第4端面58はたばこロッド12側である。第3端面56は、第2端面48に対向又は接触する。
第1フィルタ本体42及び第2フィルタ本体52には、例えば添加剤として、例えば、トリアセチン等の可塑剤、活性炭等の吸着剤、メンソール等の付香剤が付加され得る。
成形紙36は、第1巻取紙44及び第2巻取紙54の外周に巻かれ、第1巻取紙44及び第2巻取紙54を連結する。
チップペーパ16は、たばこロッド12とフィルタ14とを接続するように、たばこロッド12及びフィルタ14の外周を巻回する。
第1フィルタ本体42及び第2フィルタ本体52は、紙製のシート又は不織布製のシートで形成されている。本実施形態では、第1フィルタ本体42及び第2フィルタ本体52を形成するシート(原反)が紙製である例について説明する。紙製のシートとしては、いわゆる当業者がペーパフィルタとして用いることができるものをそのまま用いることができる。第1フィルタ本体42及び第2フィルタ本体52のシート(原反)として、上記の他、例えば、グラシン紙を用いることができる。
例えば紙製のシート102は、後述するクリンプツール100によりクリンプ処理される。クリンプ処理されたシート102は、フォールディング処理されて、例えば略120mmのロッド状に形成される。その後、適宜の長さに切断され、第1フィルタ本体42及び第2フィルタ本体52として形成される。第1フィルタ本体42は第1巻取紙44により形状が維持される。第2フィルタ本体52は第2巻取紙54により形状が維持される。第1フィルタ本体42及び第2フィルタ本体52が例えば適宜の長さに切断されるとき、第1フィルタ本体42及び第2フィルタ本体52には、それぞれ、平面状の端面(吸口側端面46,56、及び、たばこ側端面48,58)を形成する。
第1フィルタ本体42及び第2フィルタ本体52のクリンプ処理は、図2A及び図2Bに示すクリンプツール100に紙製のシート102を図2A及び図2B中の紙面手前から紙面を貫通する方向に通すことにより実行される。図2A及び図2Bに示すクリンプツール100は、紙面を貫通する方向に長く形成されている。クリンプツール100の紙面を貫通する方向の長さは、シート102をクリンプ処理可能な適宜の長さである。クリンプツール100の幅は、シート102の幅よりも大きく形成されていることが好適である。
クリンプツール100は、第1ベース112と、第2ベース114と、第1ベース112から第2ベース114に向かって突出する複数の第1凸部116と、第2ベース114から第1ベース112に向かって突出する複数の第2凸部118とを有する。第1ベース112及び第2ベース114は相対的に近接及び離隔可能である。第1ベース112に対する複数の第1凸部116の突出量は、略同一である。複数の第1凸部116は、幅方向に所定間隔に離間している。第2ベース114に対する複数の第2凸部118の突出量は、略同一である。複数の第2凸部118は、幅方向に所定間隔に離間している。第1ベース112と第2ベース114とを近接させたとき、第1凸部116と第2凸部118とはそれぞれ離間した位置にある。第1ベース112及び第2ベース114の近接及び離隔方向に沿って、第1凸部116の頂部116aと第2凸部118の頂部118aとの間の距離(図2A中の符号D1及び図2B中の符号D2)を噛み合い量とする。距離D1,D2は、例えば1mm程度、又は、それ以下とすることが好適である。クリンプツール100の噛み合い量を調整することで、紙製のシート102のクリンプ深さを調整することができる。クリンプ深さは、クリンプツール100のシート102の移動方向に直交する、隣接する凸部116,118の頂部116a,118a同士の距離に置き換えることができる。図2Aの距離D1と、図2Bの距離D2とを比較すると、距離D2の方が大きい。このとき、シート102のクリンプ深さは、図2Bに示す例の方が、図2Aに示す例よりも大きくなる。シート102をクリンプ処理中、クリンプツール100の第1ベース112、第2ベース114、第1凸部116、第2凸部118は、移動が停止され、位置関係が固定されている。
第1フィルタ本体42のシートは、第2フィルタ本体52のシートよりも大きいクリンプ深さにクリンプ(クレープ)処理される。すなわち、第1フィルタ本体42のシートのクリンプ深さ(シートの折り目間距離)は、第2フィルタ本体52のシートのクリンプ深さ(シートの折り目間距離)よりも大きい。
第1フィルタ本体42の紙製のシート(原反)の通気度は、クリンプ処理後、例えば1000CU(コレスタユニット)~30000CUである。第2フィルタ本体52の紙製のシート(原反)の通気度は、クリンプ処理後、例えば0CU~10000CUである。
ここで、図3Aには、第1フィルタ本体42及び第2フィルタ本体52に用いる紙製のシートのクリンプ処理後のクリンプ深さを横軸にとり、縦軸にクリンプ処理し第1フィルタ本体42及び第2フィルタ本体52となるフィルタ本体の1mmあたりの通気抵抗(mmH2O/mm)をとったグラフを示す。クリンプ深さが大きくなるほど、単位長さ当たりの通気抵抗は、大きくなることが認識される。図3A中の破線は、例えば、
y=17.965x2+6.6054x+0.1372 (R2=0.9963)
と近似できる。
図3Bには、第1フィルタ本体42及び第2フィルタ本体52に用いる紙製のシートのクリンプ処理後の通気度(CU)を横軸にとり、縦軸にクリンプ処理し第1フィルタ本体42及び第2フィルタ本体52となるフィルタ本体の1mmあたりの通気抵抗(mmH2O/mm)をとったグラフを示す。図3B中の左下のプロットは、クリンプ深さが0mmの場合の例である。図3B中の右上のプロットは、クリンプ深さが0.6mmである場合の例である。図3B中の残りのプロットは、クリンプ深さが0.3mmである場合の例である。クリンプ深さが大きくなるにつれて、通気抵抗だけでなく、通気度(CU)が大きくなることが認識される。図3B中の破線は、例えば、
y=-6*10-9x2+0.0006x+0.1687 (R2=1)
と近似できる。
第1フィルタ本体42の通気抵抗は、第2フィルタ本体52の通気抵抗よりも高いことが好適である。第1フィルタ本体42の通気抵抗は、例えば0mmH2O/mm~12mmH2O/mmであり、好ましくは、4mmH2O/mm~12mmH2O/mmである。第2フィルタ本体52の通気抵抗は、例えば0mmH2O/mm~12mmH2O/mmであり、好ましくは、3mmH2O/mm~12mmH2O/mmである。
第1巻取紙44、第2巻取紙54、及び、成形紙36は、例えばパルプから形成されている。第1巻取紙44、第2巻取紙54、及び、成形紙36は、第1フィルタ本体42及び第2フィルタ本体52の形状を維持するのに用いる。第1巻取紙44、第2巻取紙54、及び、成形紙36の坪量は、例えば30g/m2以上であることが好適である。
図4Aから図4Cには、クリンプ処理によるクリンプ深さを適宜に変化させた、シガレット10のフィルタ14の喫煙前の吸口側端面46を示す。図4Dには、参照例として、ある喫煙物品(ここでは、日本たばこ産業株式会社製のWinston compact 6mg)のアセテートフィルタの吸口側端部を示す。図4Aから図4Dに示すフィルタ14の外径は例えば6.8mmである。
図4Aに示す例をサンプルA、図4Bに示す例をサンプルB、図4Cに示す例をサンプルC、図4Dに示す例(参照例)をサンプルDとする。
キーエンス社製のデジタルマイクロスコープ(VHX2000)を用いて、各サンプルA,B,C,Dの空隙面積を測定した。今回は、各サンプルA,B,C,Dを300倍(10×30倍)で撮影した。このとき、通常の露光で撮影したものと、ゲイン(光の調節)を最大まで上げたものの2種類で撮影した。
撮影時、通常の光の強度でピントを合わせる。その後、光の強度を最大にして、端面46の色を白くした状態で撮影する。こうすることで、輝度値による各サンプルA,B,C,Dの端面46の抽出を簡便に行うことができる。
なお、面積計測処理において、
抽出パラメーター→暗い
閾値:49(たばこロッドの場合は35)
小分子除去、穴埋めのチェックを外す
陰になる部分がある場合、抽出領域を設定する
を設定し、実行した。そして、抽出後の画像(図4Aから図4D参照)、及び、各画像の空隙面積の結果を得た。
図4AのサンプルAの第1フィルタ本体(ペーパフィルタ)42のクリンプ深さ(クリンプツール100の頂部116a,118a間距離)は、0.6mmである。図4BのサンプルBの第1フィルタ本体(ペーパフィルタ)42のクリンプ深さは、0.3mmである。図4CのサンプルCの第1フィルタ本体(ペーパフィルタ)42のクリンプ深さは、0.1mmである。図4Dに示すアセテートフィルタについては、クリンプ処理は無関係である。
図5には、サンプルA,B,C,Dの空隙面積を示す。図4Aから図4C、及び、図5に示すように、フィルタ本体42,52を形成するシートのクリンプ深さが大きくなればなるほど、空隙は少なくなる。図4AのサンプルAに示す例の空隙面積は1.4~1.5mm2程度である。図4BのサンプルBに示す例の空隙面積は3.1~3.2mm2程度である。図4CのサンプルCに示す例の空隙面積は9.3~9.4mm2程度である。図4DのサンプルDに示す例の空隙面積は0.2mm2程度である。
図4AのサンプルAに示す例は、吸口側端面46の第1巻取紙44の内周面と第1フィルタ本体42の外周面との間の境界付近に多くの空隙が存在することが観察された。一方、境界付近よりも内側の領域には、ほとんど空隙が存在していないことが観察された。
図4DのサンプルDに示す例は、アセテートフィルタの外周面付近に多くの空隙が存在することが観察された。一方、アセテートフィルタの外周面付近よりも内側の領域には、ほとんど空隙が存在していないことが観察された。
図4AのサンプルAに示す第1フィルタ本体(ペーパフィルタ)42の吸口側端面46は、特にフィルタ14の中心軸Lと第1フィルタ本体42の外周面との間の領域において、アセテートフィルタの吸口側端部と同様に、ユーザが空隙を視認し難い。このため、クリンプ深さを適宜に大きくした第1フィルタ本体42の吸口側端面46は、適宜の美観性を有する。
第1フィルタ本体42の第1端面46を見たときの空隙の面積は、3mm2以下であることが好適である。坪量、シートの通気度、及びフィルタ本体の通気抵抗等、種々の要因に依存し、すなわち、シガレット10の求めるタール量、ニコチン量、一酸化炭素量、喫煙回数等の要素に依存するが、第1フィルタ本体42の第1端面46を見たときの空隙量は、アセテートフィルタの吸口端面の空隙量と同じか、それよりも大きいことが好適である。
例えばフィルタ14を含むシガレット10について考察する。図6及び図7に示すように、ここでは、第1ロットから第7ロットを準備した。
図6及び図7には、燃焼型香味吸引物品の第1ロットから第7ロットのフィルタ構造、フィルタ本体長、通気抵抗、タール量、ニコチン量、一酸化炭素量、吸煙回数を示す。図6及び図7に示すタール値及びニコチン値は、自動喫煙器を用いて測定する。ニコチン値は、自動喫煙器で決められた条件の下で主流煙の粒子部分を集め、集めた粒子を溶かして測定する。タール値は、主流煙の粒子の重さから、ニコチンと水分の重さを差し引いて測定する。
第1ロット及び第5ロットはペーパフィルタを用いない参照例である。第1ロット及び第5ロットは、例えば、第1フィルタ本体42に相当する吸口側フィルタにアセテートフィルタを用い、第2フィルタ本体52に相当するたばこロッド12側フィルタにチャコールフィルタを用いるものとする。
第1ロットは、フィルタ14にペーパフィルタを用いる第2ロットから第4ロットの参照例である。第1ロットは、日本国において、日本たばこ産業株式会社のWinston compact blue 6として販売され、タール量が6mg近辺にコントロールされているシガレットである。
第5ロットは、フィルタ14にペーパフィルタを用いる第6ロット及び第7ロットの参照例である。第5ロットは、日本国において、日本たばこ産業株式会社のWinston compact blue 1として販売され、タール量が1mg近辺にコントロールされているシガレットである。
第1ロットから第7ロットのシガレット10の全長は上述したように、例えば83mmである。ロッド12の組成は全て略共通である。たばこロッド12の全長は例えば56mmで略共通である。フィルタ14の全長は例えば略27mmで共通である。
図6に示す第2ロットから第4ロットのシガレット10は、タール量の目標を6mgに設定した。
第2ロットの吸口側の第1フィルタ本体42のシートのクリンプ深さを、第2ロットから第4ロットまでの間で最も大きい、0.6mmに設定した。第1フィルタ本体42の長さが9mmであるため、吸口側フィルタの通気抵抗は94.7mmH2O(=9(mm)×10.52(mmH2O/mm))となる。第2ロットのたばこロッド12側の第2フィルタ本体52のシートのクリンプ深さを、0.2mmに設定した。第2フィルタ本体52の長さが18mmであるため、たばこ側フィルタの通気抵抗は、ペーパフィルタとして通常用いられているペーパを用いると、計算上、例えば39.24mmH2O(=18(mm)×2.18(mmH2O/mm))となる。ここでは、第2ロットの第2フィルタ本体52は、グラシン紙を用いた。グラシン紙は、通気抵抗が低くなりやすいとされている。第2ロット2の例では、たばこ側フィルタの通気抵抗は3.0mmH2Oである。
第3ロットの吸口側の第1フィルタ本体42のシートのクリンプ深さを、第2ロットと第4ロットとの間の0.3mmに設定した。第1フィルタ本体42の長さが15mmであるため、吸口側フィルタの通気抵抗は59.3mmH2O(=15(mm)×3.96(mmH2O/mm))となる。第3ロットのたばこロッド12側の第2フィルタ本体52のシートのクリンプ深さを、第2ロットと同じ0.2mmに設定した。第2フィルタ本体52の長さが12mmであるため、たばこ側フィルタの通気抵抗は26.1mmH2O(=12(mm)×2.18(mmH2O/mm))となる。第3ロットのペーパフィルタ用の紙で形成された第2フィルタ本体52の通気抵抗は、グラシン紙で形成された第2ロットの第2フィルタ本体52の通気抵抗に対して大きくなっている。
第4ロットの吸口側の第1フィルタ本体42のシートのクリンプ深さを、最も小さい0.1mmに設定した。第1フィルタ本体42の長さが7mmであるため、吸口側フィルタの通気抵抗は4.1mmH2O(=7(mm)×0.36(mmH2O/mm))となる。第4ロットのたばこロッド12側の第2フィルタ本体52のシートのクリンプ深さを、0.3mmに設定した。第2フィルタ本体52の長さが20mmであるため、たばこ側フィルタの通気抵抗は79.1(mmH2O)(=20(mm)×3.96(mmH2O/mm))となる。
第2ロットから第4ロットのいずれのフィルタ14も、第1フィルタ本体42の第1端面46を見たときの空隙量(空隙面積)は、第2フィルタ本体52の第3端面56を見たときの空隙量(空隙面積)よりも小さい。
第2ロットから第4ロットのいずれのフィルタ14も、吸口側の第1フィルタ本体42の通気抵抗が、たばこロッド12側の第2フィルタ本体52の通気抵抗に比べて高く、第1フィルタ本体42が第2フィルタ本体52に比べて、たばこロッド12から吸口側端面46に向かう流体に対する、高い濾過性を有することが好適である。
図7に示す第6ロット及び第7ロットのシガレット10は、タール量の目標を1mgに設定した。
第6ロットの吸口側の第1フィルタ本体42のシートのクリンプ深さを、0.6mmに設定した。第1フィルタ本体42の長さが15mmであるため、吸口側フィルタの通気抵抗は157.9mmH2O(=15(mm)×10.52(mmH2O/mm))となる。第6ロットのたばこロッド12側の第2フィルタ本体52のシートのクリンプ深さを、0.2mmに設定した。第2フィルタ本体52の長さが12mmであるため、たばこ側フィルタの通気抵抗は26.1(mmH2O)(=12(mm)×2.18(mmH2O/mm))となる。第6ロットのフィルタ14は、吸口側の第1フィルタ本体42の通気抵抗が、たばこロッド12側の第2フィルタ本体52の通気抵抗に比べて高く、第1フィルタ本体42が第2フィルタ本体52に比べて高い濾過性を有する。
第7ロットの吸口側の第1フィルタ本体42のシートのクリンプ深さを、0.2mmに設定した。第1フィルタ本体42の長さが12mmであるため、吸口側フィルタの通気抵抗は26.1mmH2O(=12(mm)×3.96(mmH2O/mm))となる。第7ロットのたばこロッド12側の第2フィルタ本体52のシートのクリンプ深さを、0.6mmに設定した。第2フィルタ本体52の長さが15mmであるため、たばこ側フィルタの通気抵抗は157.9(mmH2O)(=15(mm)×10.52(mmH2O/mm))となる。第7ロットのフィルタ14は、吸口側の第1フィルタ本体42の通気抵抗が、たばこロッド12側の第2フィルタ本体52の通気抵抗に比べて低く、第2ロットから第4ロット、及び、第6ロットとは反対に、第2フィルタ本体52が第1フィルタ本体42に比べて高い濾過性を有する。
第6ロットのフィルタ14は、第1フィルタ本体42の第1端面46を見たときの空隙量(空隙面積)が、第2フィルタ本体52の第3端面56を見たときの空隙量(空隙面積)よりも小さい。一方、第7ロットのフィルタ14は、第1フィルタ本体42の第1端面46を見たときの空隙量(空隙面積)が、第2フィルタ本体52の第3端面56を見たときの空隙量(空隙面積)よりも大きい。
第2ロットから第4ロット、第6ロット及び第7ロットの、紙製の第1フィルタ本体42及び第2フィルタ本体52は、シートのクリンプ深さ及び長さを適宜に設定して、たばこロッド12から吸口側端面46に向かう流体に対し、適宜の濾過特性を発揮する。第2ロットから第4ロット、第6ロット及び第7ロットのように、第1フィルタ本体42及び第2フィルタ本体52の長さは、いずれが長くてもよい。なお、第1フィルタ本体42及び第2フィルタ本体52の長さは、同一でも良い。
図8から図11に示すように、喫煙前のシガレット10の第1ロットから第4ロットについて、シガレット10の全体の外観差、吸口側端面46の外観差、及び、シガレット10の外観の好嫌度の官能評価を行った。評価基準は、第1ロット(Winston compact 6mg)の外観である。すなわち、第1ロットに対する外観の違い、外観の好嫌度について評価を行った。評価者は19名である。
ここで、図8から図10に示す外観差は、第1ロットのシガレットとの比較である。外観差の評価は、
1点:かなり違いがある
2点:やや違いがある
3点:わずかに違いがある
4点:あまり違いがない
5点:全く違いがない
とした。すなわち、外観差は、評価点数の平均値(AVERAGE)が5点に近づくほど、ユーザが、第1ロットとの外観差が小さい、と判断していると評価できる。標準偏差(STDEV)の値が小さいほど、19人の評価の分散が少ない、と判断できる。
図8及び図9に示すように、シガレット10の全体の外観差について、第2ロットの評価点数は、平均が4.37点であり、第1ロットのシガレットと外観に差がない、と評価できる。第3ロットの評価点数も平均が3.74点であり、第1ロットのシガレットと外観に差が少ない、と評価できる。一方、第4ロットの評価点数は平均が2.84点であり、第1ロットのシガレットと外観に違いがある、と評価できる。
シガレット10の全体の外観差の第2ロットから第4ロットの標準偏差について、第2ロットの標準偏差が最も小さい。このため、第2ロットのシガレット10の全体の外観差の評価点数の平均は、第3ロット、第4ロットに対して評価のバラつきが小さい、といえる。しかしながら、第3ロット及び第4ロットの標準偏差も十分に小さいと言える。このため、第2ロットから第4ロットのシガレット10の全体の外観差の評価点数の平均は、総じて評価のバラつきが小さく、信頼性が高い、といえる。
図8及び図10に示すように、吸口側端面46の外観差について、第2ロットのシガレット10の吸口側端面46(図4A参照)は、評価点数の平均が3.53点であり、第1ロットのシガレットの吸口端面(図4D参照)と外観に差が少ない、と評価できる。第3ロットのシガレット10の吸口側端面46(図4B参照)は、評価点数の平均が2.37点であり、第1ロットのシガレットの吸口端面と外観に違いがある、と評価できる。第4ロットのシガレット10の吸口側端面46(図4C参照)は、評価点数の平均点が1.26点であり、第1ロットのシガレットの吸口端面と外観にかなりの違いがある、と評価できる。
シガレット10の吸口側端面46の外観差の第2ロットから第4ロットの標準偏差について、第4ロットの標準偏差が最も小さい。このため、第4ロットのシガレット10の吸口側端面46の外観差の評価点数の平均は、第2ロット、第3ロットに対してバラつきが小さい、といえる。しかしながら、第2ロット及び第3ロットの標準偏差も十分に小さいと言える。このため、第2ロットから第4ロットのシガレット10の吸口側端面46の外観差の評価点数の平均は、総じて評価のバラつきが小さく、信頼性が高い、といえる。
図8及び図11に示す好嫌度は、第1ロットのシガレットとの比較である。好嫌度の評価は、
1点:かなり嫌い
2点:やや嫌い
3点:どちらでもない
4点:やや好き
5点:かなり好き
とした。すなわち、好嫌度は、評価点数の平均値(AVERAGE)が5点に近づくほど、ユーザが、第1ロットとの外観を評価している、と判断できる。また、標準偏差(STDEV)の値が小さいほど、19人の評価の分散が少ない、と判断できる。
図8及び図11に示すように、シガレット10の全体の好嫌度について、第2ロットのシガレット10は、評価点数の平均が3.16点であり、第1ロットのシガレットと外観に差がない、と判断したと評価できる。第3ロットのシガレット10は、評価点数の平均が2.68点であり、第3ロットのシガレット10は、第1ロットのシガレットに対して、外観に違いが認められつつある、と評価できる。すなわち、第3ロットのシガレット10は、第2ロットのシガレット10よりは、外観が評価されなかった、と評価できる。第4ロットは、評価点数の平均が2.37点であり、第4ロットのシガレット10は、第1ロットのシガレットに対して、外観に違いが認められつつある、と評価できる。また、第4ロットのシガレット10は、第2ロット、第3ロットのシガレット10に対して外観が評価されなかった、と評価できる。
シガレット10の全体の好嫌度の第2ロットから第4ロットの標準偏差について、第3ロットの標準偏差が最も小さい。このため、第3ロットのシガレット10の好嫌度の評価点数の平均は、第2ロット、第4ロットに対して評価のバラつきが小さい、といえる。しかしながら、第2ロット及び第4ロットの標準偏差も十分に小さいと言える。このため、第2ロットから第4ロットのシガレット10の好嫌度の評価点数の平均は、総じて評価のバラつきが小さく、信頼性が高い、といえる。
図12及び図13に示すように、タール量を6mgに設定した第1ロット、第2ロット及び第4ロットについて、実際にシガレット10の喫煙を行って、喫味の評価を行った。ここでは、喫味として、甘さ、煙量感、刺激、たばこ感(吸い応え)の4つの観点で評価を行った。評価基準は第1ロット(Winston compact 6mg)の喫味(甘さ、煙量感、刺激、たばこ感)であり、これを3点とした。評価者は、上述した官能評価と一部重複し、16名である。甘さ、煙量感、刺激、たばこ感の、評価点数の平均値(AVERAGE)が3点に近づくほど、ユーザが、第1ロットとの差が小さい、と判断していると評価できる。標準偏差(STDEV)の値は小さいほど、16名の評価の分散が少ない、と判断できる。
甘さについて、第1ロットに対して、第2ロット及び第4ロットのいずれも低下した、と評価された。甘さは、第2ロットが第4ロットよりも第1ロットに近い。
煙量感について、第1ロットに対して、第2ロット及び第4ロットのいずれも低下した、と評価された。煙量感は、第4ロットが第2ロットよりも第1ロットに近い。
刺激について、第1ロットに対して、第2ロット及び第4ロットのいずれも向上(上昇)した、と評価された。刺激は、第2ロットと第4ロットで同程度である。
たばこ感について、第2ロット及び第4ロットがいずれも第1ロットとほぼ同程度と評価された。
図12に示すように、ロットごとの評価の標準偏差は、十分に小さい。このため、第2ロット及び第4ロットの各評価点数の平均の信頼性は高い、といえる。
図14及び図15に示すように、タール量を1mgに設定した第5ロット、第6ロット及び第7ロットについて、実際にシガレット10の喫煙を行って、甘さ、煙量感、刺激、たばこ感(吸い応え)の評価を行った。評価基準は第5ロット(Winston compact 1mg)の喫味(甘さ、煙量感、刺激、たばこ感)であり、これを3点とした。評価者は、上述した官能評価と一部重複し、16名である。甘さ、煙量感、刺激、たばこ感の、評価点数の平均値(AVERAGE)が3点に近づくほど、ユーザが、第5ロットとの差が小さい、と判断していると評価できる。標準偏差(STDEV)の値は小さいほど、16名の評価の分散が少ない、と判断できる。
甘さについて、第5ロットに対して、第6ロット及び第7ロットのいずれも僅かに低下した、と評価された。甘さは、第7ロットが第6ロットよりも第5ロットに近い。
煙量感について、第5ロットに対して、第6ロット及び第7ロットのいずれも低下した、と評価された。
刺激について、第5ロットに対して、第6ロットは向上(上昇)した、と評価され、第7ロットは第5ロットと同程度である、と評価された。
たばこ感について、第6ロット及び第7ロットがいずれも第5ロットに対して僅かに低下した、と評価された。
図14に示すように、ロットごとの評価の標準偏差は、十分に小さい。このため、第6ロット及び第7ロットの各評価点数の平均の信頼性は高い、といえる。
図13及び図15に示すように、シガレット10に紙製のフィルタ14を用いることで、概して、甘さ、煙量感が低下し、刺激が強くなる傾向がある、と評価できる。また、たばこ感(吸い応え)も僅かに低下する傾向にあるが、低下幅は小さい。たばこ感は、タール量を高すぎず、低すぎない6mgに設定した第2ロット及び第4ロットで第1ロットと略一致している。このため、第1ロット、第2ロット及び第4ロットのシガレット10の吸い応えは、ほとんど一致している、といえる。一方、低タール量とされる1mgに設定されたシガレット10において、たばこ感は、第5ロットに比べて第6ロット及び第7ロットが低下している。シガレットは、通常、タール量やニコチン量が大きいほど、たばこ感(吸い応え)が高いと考えられている。このため、タール量が6mgに対して低タールの1mgに設定した第5ロット、第6ロット及び第7ロットにおいて、たばこ感が得られ難い傾向は、容易に予測できる。
以上説明したように、本実施形態によれば、以下のことが言える。
紙製のシートで形成したフィルタ14を含むシガレット10を提供することができる。同一の外径のフィルタ14を考慮すると、紙製のシートで形成したフィルタ14は、紙製でありながら、第1端面(吸口側端面)46をアセテートフィルタと同程度の空隙量に形成することで、アセテートフィルタと同程度の美観性を有するものとすることができる。また、アセテートフィルタの吸口側端面の空隙量よりも少し第1端面(吸口側端面)46の空隙量を大きくしても、紙製のシートで形成したフィルタ14は、アセテートフィルタと同程度の美観性を有するものとすることができる。したがって、本実施形態に係るフィルタ14は、紙製でありながら、美観性を高めることができる。
また、紙製のシートで形成したフィルタ14は、第1フィルタ本体42及び第2フィルタ本体52の材質、坪量、シートの通気度、クリンプ深さ、空隙量、通気抵抗等を適宜に調整することで、タール量等をコントロールすることができ、喫味(甘さ、煙量感、刺激、たばこ感)をコントロールすることができる。このため、喫煙の際に、たばこロッド12から吸口側端面46に向かう流体に対する、適宜の濾過特性を有するフィルタ14が提供される。すなわち、適宜の濾過特性を有するフィルタ14を含むシガレット10が提供される。
第1実施形態では、主に、例えば紙製のシートをクリンプ処理することにより第1フィルタ本体42及び第2フィルタ本体52を形成する例について説明した。第1フィルタ本体42を例えばクリンプ処理により形成し、第2フィルタ本体52を例えばコルゲート処理により形成するなど、フィルタ本体を形成するシートに対する処理の種類は、適宜に組み合わせることができる。これは、後述する第2実施形態及び第3実施形態でも同様である。
本実施形態では、第1フィルタ本体42及び第2フィルタ本体52として、紙を用いる例について説明したが、材質、坪量、通気度、クリンプ深さ、空隙量、通気抵抗等を適宜に調整することで、不織布を用いることも可能である。
第1フィルタ本体42及び第2フィルタ本体52として不織布を用いる場合、図2A及び図2Bに示すようなクリンプツール102を用いない。不織布を用いる場合、クリンプツール100の代わりに、複数のシート152a,152b,152c,152dを重ねてフォールディング処理するシートフォールディング機150(図16A参照)を用いる。シートフォールディング機150は、図16A及び図16Bに示すように、不織布の複数のシート152a,152b,152c,152dの端部をずらして重ねた状態で、例えば複数のガイド162,164,166を用いて略S字状又は略Z字状に折り曲げながらフォールディング処理する。ガイド162,164,166はシート152a,152b,152c,152dの移動方向に沿って離間している。ガイド162,164,166はそれぞれ例えば盤状であるが、複数のシート152a,152b,152c,152dに対するフォールディング処理を進めるための開口溝162a,164a,166aが形成されている。端部をずらして重ねた複数のシート152a,152b,152c,152dをガイド162,164,166を通した後、無端ベルト158によりガイド166の前方のパイプ156内に誘導する。ガイド162,164,166の開口溝162a,164a,166aに順次通すことで、次第に、複数のシート152a,152b,152c,152dは、略S字状又は略Z字状に近づき、パイプ156内でフォールディングされる。第1フィルタ本体42がフォールディング処理された後、第1巻取紙44により第1フィルタ本体42の形状が維持される。第2フィルタ本体52がフォールディング処理される場合、第2巻取紙54により第2フィルタ本体52の形状が維持される。このため、第1フィルタ本体42及び第2フィルタ本体52は、一旦、例えば略120mmのロッド状に形成され、その後、適宜の長さに切断される。
不織布の第1フィルタ本体42の第1端面46を見たときの空隙量は、不織布又は紙製の第2フィルタ本体52の第3端面56を見たときの空隙量よりも小さい。不織布の第1フィルタ本体42の第1端面46を見たときの空隙の面積は、紙製の第1フィルタ本体42の第1端面46を見たときの空隙の面積と同様に、例えば3mm2以下であることが好適である。不織布の第1フィルタ本体42の第1端面46を見たときの空隙量は、吸口側でのアセテートフィルタの空隙量よりも大きいことが好適である。不織布の第1フィルタ本体42の通気抵抗は、不織布又は紙製の第2フィルタ本体52の通気抵抗よりも高いことが好適である。フィルタ14の第1フィルタ本体42が不織布製である場合も、紙製である場合と同様に、美観性を高めることができる。また、第1フィルタ本体42及び第2フィルタ本体52を不織布製にしても、紙製の第1フィルタ本体42及び第2フィルタ本体52と略同様のフィルタ性能(濾過特性)を発揮させることができる。
すなわち、本実施形態によれば、紙製のシート又は不織布製のシートで形成され、美観性を高め、且つ、適宜の濾過特性を有する、フィルタ14及び、フィルタ14を含むシガレット(喫煙物品)10が提供される。
本実施形態に係る、フィルタ14を含むシガレット10は、紙材、たばこ材料など、全て、又は、ほとんどが、自然由来の成分で形成可能である。このため、例えばアセテートフィルタ(第1ロット、第5ロット)を用いる場合に比べて、自然に対する環境負荷を低減することができる。
[第2実施形態]
第2実施形態について図17を用いて説明する。この実施形態は第1実施形態の変形例である。
香味吸引物品210は、非燃焼加熱型香味吸引物品を構成する部材の1つである。
図17に示す香味吸引物品210は、加熱器とともに用いられる交換可能なカートリッジである。香味吸引物品210は、一方向に沿って延びる柱状形状を有する。
図17に示すように、香味吸引物品210は、その一方の端部を形成する基材部212と、基材部212とは反対側の端部を形成するフィルタ214と、基材部212とフィルタ214との間の紙管部216とを有する。基材部212、紙管部216及びフィルタ214は、巻紙218により連結されている。紙管部216は、紙を円筒形に巻いて形成された紙管であり、内側は空洞である。
基材部212は、充填物222と、充填物222を巻装する第1巻紙224とを含む。
充填物222は、例えば、たばこ材料と、エアロゾル源とを含む。
エアロゾル源は、所定温度で加熱され、充填物222の香味源に由来する香味物質等の物質とともにエアロゾルを発生する。エアロゾル源として、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、トリアセチン、1,3-ブタンジオール、及びこれらの混合物を挙げることができる。充填物222中のエアロゾル源の含有量は、特に限定されず、十分な量のエアロゾルの発生と、良好な香味の付与の観点から、通常5質量%以上であり、好ましくは10質量%以上であり、また、通常50質量%以下であり、好ましくは25質量%以下である。
充填物222は、香味源としてたばこ材料を含む。たばこ材料は、例えば、たばこ刻である。香味吸引物品210における充填物222の含有量は、基材部212が周囲長22mm、長さ20mmの場合、例えば、200~400mgであり、250~320mgであることが好ましい。充填物222の水分含有量は、例えば、8~18質量%であり、10~16質量%であることが好ましい。このような水分含有量とすると、巻染みの発生を抑制し、基材部212の製造時の巻上適性を良好にすることができる。
フィルタ214は、第1フィルタプラグ232と、第2フィルタプラグ234と、これらを覆うことにより連結している成形紙236とを有する。第1フィルタプラグ232の長手軸Lに沿う長さをL1とし、第2フィルタプラグ234の長手軸Lに沿う長さをL2とする。第2フィルタプラグ234は、紙管部216と第1フィルタプラグ232との間に配置されている。
第1フィルタプラグ232は、第1フィルタ本体(フィルタ要素、濾材)242と、第1フィルタ本体242を巻装する第1プラグ巻取紙(筒状部)244とを有する。第1フィルタプラグ232の長さL1は、第1フィルタ本体242の長さと同じである。第1フィルタ本体242は、吸口側の第1端面(吸口側端面)246、及び、吸口側とは反対側の第2端面(基材部212側端面)248を有する。第1端面246及び第2端面248は例えば略円形状である。第1フィルタ本体242には、第1端面246及び第2端面248に交差する長手軸(中心軸)Lが規定される。第1端面246は吸口側であり、第2端面248は基材部212側である。第1端面246は外側に露出する。
第2フィルタプラグ234は、第2フィルタ本体(フィルタ要素、濾材)252と、第2フィルタ本体252の外周を巻く第2巻取紙(筒状部)254とを有する。第2フィルタプラグ234の長さL2は、第2フィルタ本体252の長さと同じである。第2フィルタ本体252は、第3端面256及び第4端面258を有する。第3端面256及び第4端面258の外形は、例えば略円形状である。第2フィルタ本体252には、第3端面256及び第4端面258に交差する長手軸(中心軸)Lが規定される。第3端面256は吸口側であり、第4端面258は基材部212側である。第3端面256は、第2端面248に対向又は接触する。
成形紙236は、第1巻取紙244及び第2巻取紙254の外周に巻かれ、第1巻取紙244及び第2巻取紙254を連結する。
巻紙218は、基材部212とフィルタ214とを紙管部216を介して接続するように、基材部212、紙管部216、及び、フィルタ214の外周を巻回する。
第1フィルタ本体242及び第2フィルタ本体252は、紙製のシート又は不織布製のシートで形成されている。第1フィルタ本体242及び第2フィルタ本体252の関係は、第1実施形態で説明した第1フィルタ本体42及び第2フィルタ本体52の関係と同じである。
このため、第1フィルタ本体242のシートは、第2フィルタ本体252のシートよりも大きくクリンプ処理されていることが好適である。第1フィルタ本体242の通気抵抗は、第2フィルタ本体252の通気抵抗よりも高いことが好適である。第1フィルタ本体242の通気抵抗は、第2フィルタ本体252の通気抵抗よりも低くてもよい。第1フィルタ本体242の通気抵抗は、例えば0mmH2O/mm~12mmH2O/mmであり、第2フィルタ本体252の通気抵抗は、例えば0mmH2O/mm~12mmH2O/mmであることが好適である。
第1フィルタ本体242のシートの通気度は、クリンプ処理の後、1000CU(コレスタユニット)~30000CUであり、第2フィルタ本体252のシートの通気度は、クリンプ処理の後、0CU~10000CUであることが好適である。
第1フィルタ本体242の吸口側端面246を見たときの空隙量は、吸口でのアセテートフィルタの空隙量と同じか、それよりも大きい。第1フィルタ本体242の吸口側端面246を見たときの空隙の面積は、3mm2以下であることが好適である。
このように、フィルタ214は、第1実施形態で説明したフィルタ14と同様に、美観性を有するとともに、基材部212の充填物222から吸口側端面246に向かう、充填物222の香味源に由来する香味物質等の物質を含むエアロゾルに対し、適宜の濾過特性を有する状態に形成されている。
以上説明したように、本実施形態によれば、以下のことが言える。
紙製のシートで形成したフィルタ14を含む香味吸引物品210を提供することができる。このとき、紙製のシートで形成したフィルタ214は、紙製でありながら、アセテートフィルタと同程度の空隙に形成することで、アセテートフィルタと同程度の美観性を有することができる。したがって、本実施形態に係るフィルタ214は、紙製でありながら、美観性を高めることができる。
また、紙製のシートで形成したフィルタ214は、第1フィルタ本体242及び第2フィルタ本体252の材質、坪量、シートの通気度、クリンプ深さ、空隙量、通気抵抗等を適宜に調整することで、喫味(甘さ、煙量感、刺激、たばこ感)をコントロールすることができる。このため、適宜の濾過特性を有するフィルタ214が提供される。すなわち、適宜の濾過特性を有するフィルタ214を含む香味吸引物品210が提供される。
本実施形態では、第1フィルタ本体242及び第2フィルタ本体252として、紙を用いる例について説明したが、材質、坪量、シートの通気度、クリンプ深さ、空隙量、通気抵抗等を適宜に調整することで、第1実施形態で説明した不織布のシート152a,152b,152c,152d(図16A参照)を用いることも可能である。すなわち、本実施形態によれば、紙製のシート又は不織布製のシートで形成され、美観性を高め、且つ、適宜の濾過特性を有する、フィルタ214及び、フィルタ214を含む香味吸引物品210が提供される。
図示しないが、香味吸引物品210の通気抵抗を適宜調整するために、フィルタ214に、開孔部を設けて外部からの空気を取り込む態様であってもよい。この場合、紙管部216に開孔部を設けることが望ましい。
香味吸引物品210の長手方向の寸法、すなわち長さは、40~90mmであることが好ましく、50~75mmであることがより好ましく、50~60mmであることがさらに好ましい。香味吸引物品210の周囲長は、15~25mmであることが好ましく、17~24mmであることがより好ましく、20~23mmであることがさらに好ましい。また、香味吸引物品210において、基材部212の長さは20mm、紙管部216の長さは20mm、第1フィルタプラグ232の長さは7mm、第2フィルタプラグ234の長さは8mmであってよいが、これら個々のセグメントの長さは、製造適性、要求品質等に応じて、適宜変更できる。
充填物222において用いるたばこ刻の大きさやその調製法については特に制限はない。例えば、乾燥したたばこ葉を、幅0.8~1.2mmに刻んだものを用いてもよい。また、乾燥したたばこ葉を平均粒径が20~200μm程度になるように粉砕して均一化したものをシート加工し、それを幅0.8~1.2mmに刻んだものを用いてもよい。さらに、上記のシート加工したものについて刻まずにギャザー加工したものをたばこ材料として用いてもよい。
第1巻紙244及び第2巻取紙254としては、それぞれ、第1実施形態で説明したシガレット10で使用される巻取紙44,54及びチップペーパ16と同じものを使用することができる。
本実施形態に係る、フィルタ214を含む香味吸引物品210は、紙材、たばこ材料など、全て、又は、ほとんどが、自然由来の成分で形成可能である。このため、フィルタに例えばアセテートフィルタを用いる場合に比べて、自然に対する環境負荷を低減することができる。
[第3実施形態]
第3実施形態について図18を用いて説明する。
香味吸引物品310は、非燃焼加熱型香味吸引物品を構成する部材の1つである。
図18に示す香味吸引物品(カプセル)310は、加熱器とともに用いられる交換可能なカートリッジである。香味吸引物品310は、一方向に沿って延びる柱状形状を有する。
図18に示すように、香味吸引物品310は、カプセル本体(筒状部)311と、カプセル本体311に封入されたたばこ材料312と、たばこ材料312が漏れ出すのを防止するフィルタ314と、カプセル本体311に対してフィルタ314を支持するリング状のキャップ(エンドピース)316とを有する。
カプセル本体311は、一端(吸口側)に開口322を有し、他端(たばこ材料312側)に網部324を有する。カプセル本体311は、フィルタ314が載置される段差326を有する。カプセル本体311の網部324は、例えば空気及び適宜の蒸気を通すが、たばこ材料312が漏れ出すのを防止するように、網目の大きさが調整されている。
カプセル本体311及びキャップ316は、紙材又は不織布など、適宜の素材が用いられる。カプセル本体311及びキャップ316は樹脂材で形成されてもよい。カプセル本体311及びキャップ316は樹脂材で形成されている場合、全部又は一部の素材がリサイクル可能であることが好適である。
たばこ材料312は、たばこ刻のほか、顆粒状のものが用いられる。
フィルタ314は、空気及び適宜の蒸気を通すことが可能で、略円柱状に形成されている。フィルタ314は、第1フィルタ本体342と、第2フィルタ本体352とを有する。第1フィルタ本体342の長手軸Lに沿う長さをL1とし、第2フィルタ本体352の長手軸Lに沿う長さをL2とする。第1フィルタ本体342及び第2フィルタ本体352は、カプセル本体(筒状部)311に保持される。カプセル本体311に対してキャップ(エンドピース)316が配置されたとき、キャップ316は、第1フィルタ本体342及び第2フィルタ本体352を支持し、第1フィルタ本体342及び第2フィルタ本体352がカプセル本体311から抜けるのを防止する。
第1フィルタ本体342は、第1実施形態で説明した第1フィルタ本体42、第2実施形態で説明した第1フィルタ本体242と同様に、適宜の紙材又は不織布で形成され、材質、坪量、シートの通気度、クリンプ深さ、空隙量、通気抵抗等が適宜に調整されている。第2フィルタ本体352は、第1実施形態で説明した第2フィルタ本体52、第2実施形態で説明した第2フィルタ本体252と同様に、適宜の紙材又は不織布で形成され、材質、坪量、シートの通気度、クリンプ深さ、空隙量、通気抵抗等が適宜に調整されている。
第1フィルタ本体342は、吸口側の第1端面(吸口側端面)346、及び、吸口側とは反対側の第2端面(たばこ材料312側端面)348を有する。第2フィルタ本体352は、第1端面356と第2端面358とを有する。第2端面348と第1端面356とは、対向又は接触する。第1端面346は外側に露出する。
第1フィルタ本体342のシートは、第2フィルタ本体352のシートよりも大きくクリンプ処理されている。第1フィルタ本体342の通気抵抗は、第2フィルタ本体352の通気抵抗よりも高いことが好適である。第1フィルタ本体342の通気抵抗は、第2フィルタ本体352の通気抵抗よりも低くてもよい。第1フィルタ本体342の通気抵抗は、例えば0mmH2O/mm~12mmH2O/mmであることが好適である。第2フィルタ本体352の通気抵抗は、例えば0mmH2O/mm~12mmH2O/mmであることが好適である。
第1フィルタ本体342のシートの通気度は、クリンプ処理の後、例えば1000CU(コレスタユニット)~30000CUであることが好適である。第2フィルタ本体352のシートの通気度は、クリンプ処理の後、例えば0CU~10000CUであることが好適である。
第1フィルタ本体342の第1端面346を見たときの空隙量は、吸口でのアセテートフィルタの空隙量と同じか、それよりも大きい。第1フィルタ本体342の第1端面346を見たときの空隙の面積は、3mm2以下であることが好適である。
このように、フィルタ314は、第1実施形態で説明したフィルタ14、第2実施形態で説明したフィルタ214と同様に、美観性を有するとともに、たばこ材料312から吸口側端面46に向かう、香味源に由来する香味物質等の物質及びエアロゾルに対し、適宜の濾過特性を有する状態に形成されている。
以上説明したように、本実施形態によれば、以下のことが言える。
紙製のシートで形成したフィルタ314を含む香味吸引物品310を提供することができる。このとき、紙製のシートで形成したフィルタ314は、紙製でありながら、アセテートフィルタと同程度の空隙に形成することで、アセテートフィルタと同程度の美観性を有することができる。したがって、本実施形態に係るフィルタ314は、紙製でありながら、美観性を高めることができる。
また、紙製のシートで形成したフィルタ314は、第1フィルタ本体342及び第2フィルタ本体352の材質、坪量、シートの通気度、クリンプ深さ、空隙量、通気抵抗等を適宜に調整することで、喫味(甘さ、煙量感、刺激、たばこ感)をコントロールすることができる。このため、適宜の濾過特性を有するフィルタ314が提供される。すなわち、適宜の濾過特性を有するフィルタ314を含む香味吸引物品310が提供される。
本実施形態では、第1フィルタ本体342及び第2フィルタ本体352として、紙を用いる例について説明したが、シートの材質、坪量、通気度、クリンプ深さ、空隙量、通気抵抗等を適宜に調整することで、第1実施形態で説明した不織布製のシート152a,152b,152c,152d(図16A参照)を用いることも可能である。すなわち、本実施形態によれば、紙製のシート又は不織布製のシートで形成され、美観性を高め、且つ、適宜の濾過特性を有する、フィルタ314及び、フィルタ314を含む香味吸引物品310が提供される。
本願発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は可能な限り適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。