JP7308040B2 - 無機多孔質体よりなる油吸着剤、及びその製造方法 - Google Patents
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Description
<1>
シリコーンオイルを無機多孔質体に対し0.1質量%以上塗布又は含侵させた後、
前記シリコーンオイルが塗布又は含侵した無機多孔質体を、150℃以上に加熱することによって製造される、油吸着剤。
<2>
前記無機多孔質体が、パーライト、珪藻土、焼成珪藻土からなる群のうち、いずれか一種以上である、<1>に記載の油吸着剤。
<3>
前記無機多孔質体が、珪藻土又は焼成珪藻土である、<1>又は<2>のいずれかに記載の油吸着剤。
<4>
前記シリコ-ンオイルの25℃での動粘度が、10mm2/s~5000mm2/sである、<1>~<3>のいずれかに記載の油吸着剤。
<5>
前記シリコ-ンオイルが、ジメチルシリコーンオイルまたはメチルフェニルシリコーンオイルを含む、<1>~<4>のいずれかに記載の油吸着剤。
<6>
前記<1>~<5>のいずれ一項に記載の油吸着剤であって、消火剤として使用することを特徴とする、油吸着剤。
<7>
<1>~<6>のいずれかに記載の油吸着剤の製造方法であって、
前記シリコーンオイルを前記無機多孔質体に対し0.1質量%以上塗布又は含侵させた後、
前記シリコーンオイルを塗布又は含侵した無機多孔質体を、150℃以上に加熱する、油吸着剤の製造方法。
<8>
前記シリコーンオイルを前記無機多孔質体に対し0.3質量%以上10質量%以下塗布又は含侵させた後、
前記シリコーンオイルを塗布又は含侵した無機多孔質体を、190℃以上450℃以下に加熱する、<7>に記載の製造方法。
前記無機多孔質体の形状は、板状、ブロック状、シート状、粒状等どのような形状であってもよいが、ハンドリングが容易になり、水面に浮いた状態の油分を吸着除去し易くできる観点から、粒状であることがより好ましく、粒は円柱状であることがさらに好ましい。前記無機多孔質体の粒の形状が円柱状である場合、直径が0.1mm以上、高さが3mm以上の円柱状であることが好ましく、直径が1mm以上5mm以下、高さが5mm以上10mm以下の円柱状であることがより好ましい。ここで円柱の直径と高さは、ノギス又は定規によって測定した値である。
この焼成処理によりシリコーンオイルの疎水基が配向し油吸着剤に疎水性が付与されると考えられる。空気中で加熱した場合、シロキサン結合が破断し、酸化反応により低分子量シロキサンと共にホルマリンやその酸化物などが生じると共に分子間架橋が起こり、シリコーンオイルの粘度が上昇し、流動性が抑えられ易い。また、これらの反応によりシリコーンオイルが固定化され易くなる。空気中での酸化反応は、200℃以上の温度になるとかなり活発に進み、250℃以上では短時間であっても加熱時の質量減分が著しく大きくなる傾向がある。また、450℃以上では燃焼が起こり易く、有機成分は無くなり、シリカのみが残り、撥水性が付与できなくなる場合がある。これらを考慮すると、加熱温度により最小必要加熱時間が決まるが、シリコーンオイルの加熱時の酸化反応による撥水成分ロスを抑え、より少量のシリコーンオイル塗布量で撥水性を付与できることから、例えば、190℃以上450℃以下で加熱した場合、好ましい加熱時間は、1時間以上10時間以下であり、より好ましくは1時間以上5時間以下である。
第一の特徴は、水/油系中の油を短時間で油膜も残さないほど完全に吸着除去できることである。本油吸着剤は撥水性があり、かさ比重が1未満である場合、水面上に留まり易く、水面上に存在する油のみを吸着するため、従来の油吸着剤のように水面に薄い油膜が残るとの問題点がないことである。
200mlバイアル瓶に水80mlを入れ、油吸着剤5gを入れた後、蓋をし、振とう機を用いて上下に120rpmで4時間振とうした後、水に浮いている油吸着剤を回収、乾燥し、質量を測定した。用いた油吸着剤5gに対する、水に浮いていた油吸着剤の質量の割合を浮上率(%)とした。
50mlのポリプロピレン製遠心分離沈殿管に水30ml、油吸着剤3g、A重油2.25ml(1.91g)を入れた後蓋をし、15分間撹拌し、A重油を吸着させた。引き続き、遠心分離機(株式会社久保田製作所製テーブルトップ冷却遠心機5420、ローター半径160mm)により、遠心分離沈殿管を3000rpmで、5分間、遠心分離した。上澄みの未吸着のA重油を含む水11mlを15mlのポリプロピレン製遠心分離沈殿管に採取し、油吸着剤により吸着除去されたA重油から分離した。さらに上述した水へ10%食塩水1mlを加え、蓋をし、3500rpmで、15分間、遠心分離した。振とうによりエマルジョン化したA重油を含む未吸着のA重油と水を分離し、-20℃で凍結させ、上層の油をフロン系溶剤(3,3-ジクロロ-1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン及び1,3-ジクロロ-1,1,2,3,3-ペンタフルオロプロパンの混合溶剤)で溶解し、バイアル瓶に移した。ここへ硫酸ナトリウムを加え、脱水後、赤外油分濃度測定装置(株式会社堀場製作所製油分濃度計OCMA-355)で油分量を測定し、質量を求めた。最初に添加したA重油量2.25ml(1.91g)との差を求め、A重油吸着量を算出した。
50mlナスフラスコに、表1に記載の信越化学工業株式会社製シリコーンオイル580mgを取り、無機多孔質体としてイソライト工業株式会社製焼成珪藻土イソライトCG-1(かさ比重0.59)30gを加えた。これをロータリーエバポレーターにより回転撹拌させながら、常圧、空気中にて、オイルバスで230℃、2時間加熱して、油吸着剤を得た。得られた油吸着剤の浮上率及びA重油吸着量の結果を表1に示す。尚、振とうせずにそのまま放置した場合、3か月以上油吸着材の沈降が認められなかった。
表1に記載したシリコーンオイルを用い、表1に示した加熱温度とする以外は、実施例1と同様にして油吸着剤を得た。得られた油吸着剤の浮上率及びA重油吸着量の結果を表1に示す。
表1に記載したシリコーンオイルを用い、、表1に示す加熱温度とする以外は、実施例1と同様にして油吸着剤を得た。得られた油吸着剤の浮上率及びA重油吸着量の結果を表1に示す。
シリコーンオイルを用いず、表1に示す加熱温度とする以外は、実施例1と同様にして油吸着剤を得た。得られた油吸着剤の浮上率及びA重油吸着量の結果を表1に示す。
無機多孔質体として、珪藻土由来の鉱物にリン脂質を付着させた汚染化学物質の吸着剤(ユトラスK-2・ダイヤアクアソリューションズ(株)製)を用いる以外は、実施例1と同様に行った。その結果、浮上率は18%、A重油吸着量は0.47gであった。
10kg用小型コンクリートミキサーにイソライト工業株式会社製焼成珪藻土イソライトCG-1を300g入れ中央部のみ最小限開放した蓋を着けた。24rpmで回転撹拌しながらスプレーガンでミキサー中央部の穴より信越化学工業株式会社製シリコーンオイルKF-96-100CS 5.43g(イソライトCG-1の質量に対し1.81%)を噴霧し塗布した。これをアルミ皿に移し、電気炉で190℃、5分間、焼成処理を行った。得られた油吸着剤の浮上率及びA重油吸着量の結果を表2に示す。
表2に示す条件で行う以外は実施例7と同様に行った。得られた油吸着剤の浮上率及びA重油吸着量の結果を表2に示す。
焼成処理を行わない以外、実施例7と同様に行った。得られた油吸着剤の浮上率及びA重油吸着量の結果を表2に示す。
リボンミキサーにイソライト工業株式会社製焼成珪藻土イソライトCG-1を140kg仕込み、エアースプレーガン(アネスト岩田製 W-200-251)を用い、信越化学工業株式会社製シリコーンオイルKF-96-100CS1.8kg(シリコーンオイルの塗布量は1.3%)を、ミキサーを回転させながら上部より15分間かけて噴霧した。これをステンレスバットに深さ1cmに敷きつめ、棚式乾燥機に入れ、250℃にて20分間焼成処理を行った。その後加熱を止め放冷した。焼成処理には、25℃からの250℃までの温度上昇、さらに100℃までの放冷に合計6時間を要した。得られた油吸着剤の浮上率は70%、A重油吸着量は0.46gであった。
実施例19で得られた油吸着剤を用いて、浮上したA重油の回収試験を実施した。即ち、あらかじめ水600gを入れた1Lの水槽にA重油10gを加え、実施例19で得られた油吸着剤20gを注ぎいれ、薬さじで撹拌し油吸着剤とA重油を接触させた。水面上に浮かぶA重油は、油吸着剤に吸着除去され、油吸着剤が水中に沈むのを目視にて確認した。また、水面には、過剰な油吸着剤と少量の油を吸着した油吸着剤が浮いていたのを目視にて確認した。油膜は確認されなかった。
実施例19で用いた油吸着剤の代わりに、市販の油吸着マット(日本クレシア株式会社製PP-100)約2cm×2cm30枚を使用する以外は、実施例20と同様に浮上したA重油の回収試験を実施した。A重油を吸着した油吸着マットは浮いたままであり、沈んだマットはなかったことを目視にて確認した。また、水面上には油膜も目視にて確認され、完全にはA重油を取りきれなかった。
実施例19で得られた油吸着剤を用いて、水面上に浮かぶガソリンの回収試験を実施した。即ち、あらかじめ水47mlを入れた50mlバイアル瓶にガソリン3.8mlを加え、実施例23で得られた油吸着剤5gを静かに注いだ。水面上に浮かぶガソリンは、油吸着剤に吸着除去され水中に沈み、油膜は目視にて確認されなかった。その後バイアル瓶口付近に直火を近づけたが、燃焼は確認されなかった。
シリコーンオイルを噴霧しない以外は、実施例19と同様に実施した。イソライトCG-1は水中に沈んだものの、水面上に油膜が目視にて確認され、直火により激しく燃焼した。
イソライト工業株式会社製焼成珪藻土イソライトCG-1の代わりに、微粉を12メッシュの篩で取り除いたパーライト(かさ比重0.08)を用い、シリコーンオイルの塗布量は5.6%とし、電気炉で280℃、30分間焼成処理を行う以外は、実施例19と同様に実施した。得られた油吸着剤をあらかじめ水をいれたバイアル瓶に静かに注ぎ12日間放置したが、全量水面上に浮上していたのを目視にて確認した。吸油量は実施例11で製造した油吸着剤と同程度であった。
シリコーンオイルを噴霧しない以外は、実施例22と同様に実施した。油吸着剤の大部分は水面下に浮いており、水中に沈んだものも目視にて認められた。油吸着剤が水面下で浮いているため、水共存下で水面に浮く油を吸着除去する油吸着剤としては不適であった。
実施例2で得られた油吸着剤を磁製るつぼに2g分取し、電気炉(YAMATO製、型式FO310)を用いて300℃、60分間加熱した。放冷後、外観の変化を調べ、重量減少率(%)、浮上率を測定した。
(実施例24~26)
表3に示す条件で行う以外は実施例23と同様に行った。得られた外観の変化、重量減少率(%)、浮上率(%)を表3に示す。
(比較例19~21)
比較例16で用いた合成樹脂から成る市販の吸着マット(PP-100)、市販の特殊加工された天然セルロースからなる油吸着材(有限会社バイオフューチャー製セルソーブ、綿状)、市販の天然素材からなる油吸着分解剤(有限会社バイオフューチャー製オイルゲーター、粉状)を選び、実施例23と同様に加熱した。得られた外観の変化、重量減少率(%)を表3に示す。
浮上油が燃焼しているところに油吸着剤を投入し、油が吸着され水没して燃焼が収まり消火が早まるか試験を行った。ステンレス製の寸胴鍋(高さ18cm、内径15cm)に水道水2.5L(水温23℃、比重1.00)を加えたところ水深14cmの水が溜まった。その上に市販のレギュラーガソリン200mL(液温23℃、比重0.74)を加えた。着火源を用意し、ガソリンを燃焼させ、燃焼が安定した着火から4分後に実施例2で得られた油吸着剤100gを一度に投入した。投入後、油吸着剤はガソリンを吸って緩やかに全部沈んだ。その後53秒経過した後、液面に残っていたガソリンが無くなり消火した。着火から消火までの燃焼時間は4分53秒であった。
表4に示す条件で行う以外は実施例27と同様に行った。着火から消火までの燃焼時間の結果を表4に示す。
投入する油吸着剤を190gに増量した以外は実施例27と同様に行った。投入後、油吸着剤の一部は液面に浮いて残ったが、1分19秒経過した後に、液面に残っていたガソリンが無くなり消火した。着火から消火までの燃焼時間は5分19秒であった。
実施例27と同様に、燃焼が安定した着火から4分後に実施例2で得られた油吸着剤を100g一度に投入した後、着火から4分30秒後にステンレス製のザル(外径15cm、深さ7cm、目開き0.5mm)を投入した。ザルにより液面に浮いていた油吸着剤はザルと共に全て沈み、水没と同時に消火した。ザル投入から消火までの時間は5秒であった。着火から消火までの燃焼時間は4分35秒であった。
油吸着剤を加えない以外、実施例27と同様に行った。着火から消火までの燃焼時間は9分27秒であった。
(比較例23、24)
表4に示す条件で行う以外は実施例27と同様に行った。着火から消火までの燃焼時間の結果を表4に示す。
市販の灯油190mL(液温23℃、比重0.79)又はA重油190mL(液温23℃、比重0.88)について実施例27と同様に試験を行った。燃焼効果を上げるためにガソリンを10mL加えた。着火から消火までの燃焼時間の結果を表5に示す。
Claims (5)
- シリコーンオイルを無機多孔質体に対し0.3質量%以上10質量%以下塗布又は含侵させた後、前記シリコーンオイルを塗布又は含侵した無機多孔質体を、190℃以上450℃以下に加熱する工程を含む、油吸着剤の製造方法であって、
前記無機多孔質体が、パーライト、珪藻土、及び焼成珪藻土からなる群より選択される一種以上であり、
前記シリコーンオイルを塗布又は含侵させる量が、0.77~4.50質量%であり、前記加熱する温度が、230~280℃である、前記製造方法。 - 前記無機多孔質体が、珪藻土又は焼成珪藻土である、請求項1に記載の製造方法。
- 前記シリコーンオイルの25℃での動粘度が、10mm2/s~5000mm2/sである、請求項1または2に記載の製造方法。
- 前記シリコーンオイルが、ジメチルシリコーンオイルまたはメチルフェニルシリコーン オイルを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
- 前記油吸着剤が、消火剤として使用される、請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
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