JP7306438B2 - 防汚層付きガラス基体及び表示装置用前面板 - Google Patents
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Description
1.相互に対向する一対の主面を有するガラス基体の一方の主面に、炭素含有材料からなる粘着剤を前記ガラス基体の外周の少なくとも一部から外方に露出させて付着させることと、
前記粘着剤が付着した状態で、前記ガラス基体の他方の主面に酸化ケイ素を含む材料を成膜して密着層を形成することと、
前記密着層の表面に防汚層を形成することと、を含み、
前記成膜の方法は真空蒸着法、イオンビームアシスト蒸着法、イオンプレート法、スパッタリング法、プラズマCVD法からなる群から選ばれる少なくとも1の方法である、防汚層付きガラス基体の製造方法。
2.前記密着層の前記防汚層と接する層は、酸化ケイ素を主体とし、炭素原子を5×1018~5×1019atoms/cm3の濃度で含有する、前記1に記載の防汚層付きガラス基体の製造方法。
3.前記粘着剤を前記ガラス基体の前記他方の主面の面積に対して1~50面積%露出させる、前記1または2に記載の防汚層付きガラス基体の製造方法。
4.前記粘着剤を前記ガラス基体の外周の全部から露出させる、前記1~3のいずれか1に記載の防汚層付きガラス基体の製造方法。
5.前記粘着剤がシリコーン系粘着剤、アクリル系粘着剤またはポリウレタン系粘着剤である、前記1~4のいずれか1に記載の防汚層付きガラス基体の製造方法。
6.前記ガラス基体の前記一方の主面側に前記粘着剤を介してキャリア基材を貼り付けることを含み、
前記キャリア基材の材質はガラス、ポリエチレンテレフタラート樹脂またはポリイミド樹脂である、前記1~5のいずれか1に記載の防汚層付きガラス基体の製造方法。
7.前記ガラス基体に前記粘着剤および前記キャリア基材が付着した状態で前記防汚層を形成する、前記6に記載の防汚層付きガラス基体の製造方法。
8.前記成膜の方法がスパッタリング法である、前記1~7のいずれか1に記載の防汚層付きガラス基体の製造方法。
9.1~8の層を積層して前記密着層を形成する、前記1~8のいずれか1に記載の防汚層付きガラス基体の製造方法。
10.窒化ケイ素、酸化ニオブ、酸化タンタルおよび酸化ジルコニウムから選ばれる1種類以上を含む材料を成膜することと、
酸化ケイ素を含む材料を成膜することと、を交互に行って前記密着層を形成する、前記1~9のいずれか1に記載の防汚層付きガラス基体の製造方法。
11.含フッ素加水分解性ケイ素化合物を含む被膜形成用組成物を硬化させて前記防汚層を形成する、前記1~10のいずれか1に記載の防汚層付きガラス基体の製造方法。
12.前記ガラス基体の前記他方の主面に防眩処理を施すことを含む、前記1~11のいずれか1に記載の防汚層付きガラス基体の製造方法。
図1は、実施形態の防汚層付きガラス基体を概略的に示す断面図である。図1に示す防汚層付きガラス基体1は、相互に対向する第一の主面2と、第二の主面3と、第一の主面2と第二の主面3とを接続する端面4とを有するガラス基体5を備えている。
有する含炭素酸化ケイ素層である。
なお、含フッ素加水分解性ケイ素化合物は、ケイ素原子に結合する含フッ素有機基を有する化合物であって、シラノール基を有した含フッ素ケイ素化合物であってもよく、この場合にも上記と同様の効果が得られる。
実施形態の防汚層付きガラス基体1に用いられるガラス基体5は、一般に防汚層による防汚性の付与が求められているガラス基体であれば特に限定されず、二酸化ケイ素を主成分とする一般的なガラス、例えばソーダライムシリケートガラス、アルミノシリケートガラス、ホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス等のガラス基体を使用できる。
ガラス基体5は、物理強化処理もしくは化学強化処理により強化されていることが好ましく、化学強化処理されていることがより好ましい。
(i)モル%で表示した組成で、SiO2を50~80%、Al2O3を2~25%、Li2Oを0~10%、Na2Oを0~18%、K2Oを0~10%、MgOを0~15%
、CaOを0~5%およびZrO2を0~5%を含むガラス
(ii)モル%で表示した組成が、SiO2を50~74%、Al2O3を1~10%、Na2Oを6~14%、K2Oを3~11%、MgOを2~15%、CaOを0~6%およびZrO2を0~5%含有し、SiO2およびAl2O3の含有量の合計が75%以下、Na2OおよびK2Oの含有量の合計が12~25%、MgOおよびCaOの含有量の合計が7~15%であるガラス
(iii)モル%で表示した組成が、SiO2を68~80%、Al2O3を4~10%、Na2Oを5~15%、K2Oを0~1%、MgOを4~15%およびZrO2を0~1%含有するガラス
(iv)モル%で表示した組成が、SiO2を67~75%、Al2O3を0~4%、Na2Oを7~15%、K2Oを1~9%、MgOを6~14%およびZrO2を0~1.5%含有し、SiO2およびAl2O3の含有量の合計が71~75%、Na2OおよびK2Oの含有量の合計が12~20%であり、CaOを含有する場合その含有量が1%未満であるガラス
密着層6は、上述したように、ガラス基体5の第一の主面2表面に備えられる。密着層6は、単層または複数の層が積層された積層体からなる。密着層6の防汚層7と接する層は、酸化ケイ素を主体とし、5×1018atoms/cm3~5×1019atoms/cm3の濃度で炭素原子を含有する含炭素酸化ケイ素層である。密着層6の防汚層7と接する層が、上記した範囲の含炭素酸化ケイ素層であることで、防汚層7が密着層6を介してガラス基体5に強固に密着されるため、防汚層付きガラス基体1は優れた耐摩耗性を有する。含炭素酸化ケイ素層は、6×1018atoms/cm3~4×1019atoms/cm3の濃度で炭素原子を含有することが好ましい。
した低屈折率層と同様の方法を用いて形成できる。例えば、後述のように、ガラス基体5の第二の主面3上の印刷層8の表面に、炭素含有材料からなる粘着剤をガラス基体5の外周から露出させて付着させた状態で、密着層6を構成する酸化ケイ素層の形成を行う。これにより、酸化ケイ素層を形成する際の、加熱やプラズマダメージによって、粘着剤の、上記ガラス基体5の外周から露出された部分より炭素含有材料に含まれる炭素成分が揮発し、酸化ケイ素層中に取り込まれる。このようにして、炭素原子が上記所定の割合で含有された含炭素酸化ケイ素層を形成できる。この際の、炭素原子の含有量は、上記ガラス基体5の外周から露出された粘着剤の面積等を変更することで調節できる。
好ましく、500nm以下がさらに好ましく、200nm以下が特に好ましい。RMSが前記範囲であれば、防汚層7の剥がれが抑制され耐摩耗性が向上されるだけでなく、ギラツキ防止性や防眩性も両立できる。凹凸形状のRMSの測定に際しては、上述の密着層6の算術平均粗さ(Ra)の測定とは反対に、測定領域に円形状の孔が十分多く含まれるように測定領域を選べばよい。また、上述のように、密着層6や防汚層7の表面粗さは十分平滑なので、密着層6や防汚層7がある状態で、上記の方法で測定されたRMSの値は、凹凸形状のRMSと同値であると考えてよい。
低反射膜とは、反射率低減の効果をもたらし、光の映り込みによる眩しさを低減するほか、画像表示装置に使用した場合には、画像表示装置からの光の透過率を向上でき、画像表示装置の視認性を向上できる膜のことである。
本実施形態の防汚層付きガラス基体1は、第一の主面2と防汚層7の間に、低反射膜を備えることが好ましい。低反射膜の構成としては光の反射を抑制できる構成であれば特に限定されず、例えば、波長550nmでの屈折率が1.9以上の高屈折率層と、波長550nmでの屈折率が1.6以下の低屈折率層とを積層した構成とすることができる。また、低屈折率層1層のみの構成でもよい。
ましい。
防汚層7とは、表面への有機物、無機物の付着を抑制する膜、または、表面に有機物、無機物が付着した場合においても、ふき取り等のクリーニングにより付着物が容易に除去できる効果をもたらす層のことである。
防汚層7は、密着層6の表面上に備えられる。防汚層7としては、例えば、撥水・撥油性を有することで、得られる防汚層付きガラス基体1に防汚性を付与できるものであれば特に限定されないが、含フッ素有機ケイ素化合物を加水分解縮合反応させることで硬化さ
せて得られる、含フッ素有機ケイ素化合物被膜からなることが好ましい。
本発明の含フッ素有機ケイ素化合物被膜の形成に用いる含フッ素加水分解性ケイ素化合物は、得られる含フッ素有機ケイ素化合物被膜が、撥水性、撥油性等の防汚性を有するものであれば特に限定されない。
たは直接結合する含フッ素有機基として存在する。市販されているパーフルオロポリエーテル基、パーフルオロアルキレン基およびパーフルオロアルキル基からなる群から選ばれる1つ以上の基を有するフッ素含有有機ケイ素化合物(含フッ素加水分解性ケイ素化合物)として、KP-801(商品名、信越化学工業社製)、X-71(商品名、信越化学工業社製)、KY-130(商品名、信越化学工業社製)、KY-178(商品名、信越化学工業社製)、KY-185(商品名、信越化学工業社製)、KY-195(商品名、信越化学工業社製)、Afluid(登録商標)S-550(商品名、旭硝子社製)、オプツ-ル(登録商標)DSX(商品名、ダイキン工業社製)などが好ましく使用できる。上記したなかでも、KY-185、KY-195、オプツ-ルDSX、S-550を用いることがより好ましい。
印刷層8は、例えば、表示の視認性と美観を高める目的で、携帯機器の表示装置の外周近傍に配置された配線回路や、携帯機器の筺体と防汚層付きガラス基体1の接着部等を隠ぺいするように必要に応じて備えられる。ここで、周縁部とは、外周から中央部に向かって、所定の幅を有する帯状領域を意味する。印刷層8は、第二の主面3の周縁全周に備えられていてもよく、周縁一部に備えられていてもよい。
的に応じて所望の色を選択可能である。印刷層8は、インクを印刷する方法等により形成される。
(水接触角)
防汚層付きガラス基体1の水接触角は、90°~130°であることが好ましく、100°~120°であることがより好ましい。水接触角が上記した範囲であることで、防汚層付きガラス基体1は優れた防汚性を発揮する。なお、水接触角は、水に対する接触角の値であり、例えば、防汚層付きガラス基体1の第一の主面2の最表面に約1μLの純水の水滴を着滴させて、接触角計で測定できる。
次に、防汚層付きガラス基体1の製造方法について説明する。上記の密着層6および防汚層7を備える防汚層付きガラス基体1は、例えば、以下に説明するように製造される。まず、ガラス基体5の第二の主面3側に粘着剤を介してキャリア基材が貼り付けられる。さらに、キャリア基材が貼り付けられた状態で、第一の主面2上に、密着層6および防汚層7が順に形成されて防汚層付きガラス基体1が製造される。
防眩処理としては、防眩性を付与し得る凹凸形状を形成できる方法であれば特に限定されず、公知の方法を使用できる。防眩処理として例えば、ガラス基体5の第一の主面2に化学的な方法、あるいは物理的な方法で表面処理を施し、所望の表面粗さの凹凸形状を形成する方法を使用できる。また、防眩処理として、ガラス基体5の第一の主面に防眩膜用の塗布液を塗布あるいは噴霧して、ガラス基体5上に防眩膜を堆積させて、凹凸形状を付与してもよい。
を使用できる。
金属粒子の材料としては、金属(Ag、Ru等)、合金(AgPd、RuAu等)等が挙げられる。
顔料系粒子としては、無機顔料(チタンブラック、カーボンブラック等)、有機顔料が挙げられる。
樹脂粒子の材料としては、アクリル樹脂、ポリスチレン、メラニン樹脂等が挙げられる。
粒子は、中実粒子でもよく、中空粒子でもよく、多孔質粒子等の穴あき粒子でもよい。
化学強化処理方法としては、特に限定されず、ガラス基体5の表面をイオン交換し、圧縮応力が残留する表面層を形成する。具体的には、ガラス転移点以下の温度で、ガラス基
体5の表面のガラスに含まれるイオン半径が小さなアルカリ金属イオン(例えば、Liイオン、Naイオン)を、イオン半径がより大きなアルカリ金属イオン(例えば、Liイオンに対してはNaイオンまたはKイオンであり、Naイオンに対してはKイオン)に置換する。これにより、ガラス基体5の表面に圧縮応力が残留し、ガラス基体5の強度を向上させる。
その後、ガラス基体5の第二の主面3側に例えばインクが印刷され、印刷層8が形成される。印刷層8の形成は必須ではなく、必要に応じて適宜行われる。印刷法としては、バ
ーコート法、リバースコート法、グラビアコート法、ダイコート法、ロールコート法、スクリーン法等があるが、簡便に印刷できるうえ、種々の基材に印刷でき、またガラス基体5のサイズに合わせて印刷可能であることから、スクリーン印刷法が好ましい。印刷層8は複数の層を積層した複層からなってもよく、単一の層からなってもよい。印刷層8が複層からなる場合、印刷層8は、上記インクの印刷、乾燥を繰り返すことで形成できる。
次いで、印刷層8の形成されたガラス基体5の第二の主面3上に、炭素含有材料からなる粘着剤を付着させ、さらに、当該粘着剤の表面にキャリア基材を貼り付ける。この際、粘着剤は、ガラス基体5の外周から露出させるように配置されることが好ましい。
ス基体のA-A線断面図である。図4においては、キャリア基材10のガラス基体5の貼り付けられる面の全部に粘着剤9が付着されて、この粘着剤9上にガラス基体5が貼り付けられている。このように、キャリア基材10の一方の主面全面に粘着剤9を付着させ、これによりガラス基体5が貼り付けられてもよい。
粘着剤9の材料としては、シリコーンゴムやシリコーンレジンを用いたシリコーン系粘着剤、1種以上のアクリル酸エステルのモノマーを重合あるいは共重合させて合成されるアクリル系粘着剤、ポリウレタンを用いたポリウレタン系の粘着剤等が挙げられる。ここで、防汚層付きガラス基体1は、携帯機器等に組み付けられる際、第二の主面3側で接着剤等により携帯機器等の表示装置あるいは筺体に接着される。そのため、接着性の観点から第二の主面3は、撥水・撥油性の低い方が好ましい。このような点から、粘着剤9の材料としては上記したなかでも、アクリル系、ポリウレタン系の粘着剤9が好ましい。
キャリア基材10としては、ガラス基体5を保持したまま垂直状態または水平状態を維持できる程度の強度を有し、密着層6および防汚層7を形成する温度、圧力、雰囲気等の条件に耐え得る材質のものであれば特に限定されず、ガラス製、樹脂製、金属製等のものを使用できる。キャリア基材10の形状としては、板状、フィルム状の基材を使用できる。なお、ガラス基体5が曲面を有する場合には、キャリア基材10は、ガラス基体5の第二の主面3と対応する形状に加工されていてもよい。
合、ガラス基体5を、第二の主面3より面積の小さいキャリア基材10上に貼り付けた状態で、例えば、密着層6をスパッタリングにより形成し、さらに、防汚層7を蒸着により形成すれば、第二の主面3側の最表面の外周近傍まで、密着層6および防汚層7を形成できる。
密着層6は、キャリア基材10がガラス基体5に貼りつけられた状態で、密着層形成材料を第一の主面2に向けてスパッタリングすることで形成される。次いで、キャリア基材10にガラス基体5が貼りつけられた状態で、密着層6が形成された第一の主面2に向けて、防汚層形成材料を蒸着することで防汚層7が形成される。
図6は本実施形態の防汚層付きガラス基体1の製造方法において、防汚層7を形成するために使用可能な装置を模式的に示す図である。図6に示す装置は、ガラス基体5の第一の主面2上に、含フッ素加水分解性ケイ素化合物を含有する組成物を蒸着する装置である。
好ましく、0.1Pa以下がより好ましい。この圧力であれば、抵抗加熱法による真空蒸着を問題なく実施できる。
6の表面で進行するが、さらにこの反応を十分に促進させるために、必要に応じて、含フッ素有機ケイ素化合物被膜が形成されたガラス基体5を、真空チャンバ33から取り出した後、ホットプレートや恒温恒湿槽を使用した加熱処理を行ってもよい。加熱処理の条件としては、例えば、80~200℃の温度で10~60分間の加熱処理が挙げられる。
膜の表面粗さ(Ra)を例えば、10nm以下に調整してもよい。
ガラス基体に次のように(1)防眩処理、(2)化学強化処理、(3)アルカリ処理、(4)黒色印刷層の形成、(5)密着層(低反射膜)の形成、(6)防汚層の形成をその順に以下の手順で行い、防汚層付きガラス基体を得た。
ガラス基体の第1面に以下の手順により、フロスト処理による防眩処理を施した。
上記でガラス基体に貼り付けた保護フィルムを除去した後、450℃に加熱・溶解させた硝酸カリウム塩にガラス基体を2時間浸漬した。その後、ガラス基体を溶融塩より引き上げ、室温まで1時間で徐冷することで化学強化ガラス基体を得た。こうして得られた化
学強化ガラス基体の表面圧縮応力(CS)は730MPa、応力層の深さ(DOL)は30μmである。
次いで、このガラス基体を、アルカリ溶液(ライオン社製、サンウォッシュTL-75)に4時間浸漬して、表面の汚れを除去した。
次いで、以下の手順により、ガラス基体の防眩処理がなされていない面(第2面)の周
辺部の四辺に、スクリーン印刷によって2cm幅の黒枠状に印刷を施し、黒色印刷層を形成した。まず、スクリーン印刷機により、顔料を含む有機系インクである黒色インク(商品名:GLSHF、帝国インキ製)を5μmの厚さに塗布した後、150℃で10分間保持して乾燥させ、第1の印刷層を形成した。次いで、第1の印刷層の上に、上記と同じ手順で、上記同様の黒色インクを5μmの厚さに塗布した後、150℃で40分間保持して乾燥させ、第2の印刷層を形成した。こうして、第1の印刷層と第2の印刷層とが積層された黒色印刷層を形成し、第2面の外側周辺部に黒色印刷層を備えたガラス基体を得た。
次に、以下の方法で、防眩処理がなされている側(第1面)と側面に密着層を形成した。
次に、以下の方法で防汚層を成膜した。なお、ガラス基体はキャリア基材に貼りつけたまま用い、防眩処理がなされた面(第1面)に成膜すると同時に側面にも効率的に防汚層を成膜した。防汚層の成膜に際しては、図6に示す装置と同様の装置を用いた。まず、防汚層の材料として、含フッ素有機ケイ素化合物膜の形成材料を、加熱容器内に導入した。その後、加熱容器内を真空ポンプで10時間以上脱気して溶液中の溶媒除去を行い、含フッ素有機ケイ素化合物膜の形成用組成物(以下、防汚層形成用組成物という。)とした。防汚層形成用組成物としては、KY-185(信越化学工業社製)を用いた。
例1と同様に(1)防眩処理、(2)化学強化処理、(3)アルカリ処理、(4)黒色印刷層の形成を行ったガラス基体を、次のように、樹脂製のキャリア基材によりラミネートし、この状態で、(5)密着層の形成、(6)防汚層の形成を行って防汚層付きガラス基体を得た。
例1と同様に(2)化学強化処理、(3)アルカリ処理、(4)黒色印刷層の形成を行ったガラス基体の、黒色印刷層を、ガラス基体の第2面よりも大きい吸着樹脂(キャリア基材を兼ねた粘着剤)で保持させた。この状態で、例3の(5)密着層の形成では、例1の第4層と同様の手順により、厚さ20nmの炭素を含有する酸化ケイ素(シリカ)からなる低屈折率層のみを形成した。そして、この密着層の形成されたガラス基体を用いて、(6)防汚層の形成を行った。(6)防汚層の形成は、例1と同様の手順で行い、防汚層形成用組成物として、KY-185(信越化学工業社製)に代えて、オプツールDSX(ダイキン工業社製)を用いた。吸着樹脂としては、ウレタンゴムシート(タイプレン TR-100-50、タイガーポリマー社製)を用いた。この際、吸着樹脂が、ガラス基体の各辺の外周から2mmだけ露出するようにした。例3では、吸着樹脂の露出部分の面積は、ガラス基体の第1面の面積に対して4.3面積%である。
例2においてガラス基体に(4)黒色印刷層を形成しなかったこと、またガラス基体を保持するキャリア基材および粘着剤にシリコーン系吸着樹脂(IonPad、クリエイティブテクノロジー社製)を使用した他は、同様の条件および操作で、防汚層付きガラス基体を作製した。例4では、吸着樹脂の露出部分の面積は、ガラス基体の第1面の面積に対して4.3面積%である。
例2において、アクリル系の粘着剤を付着させた樹脂製のキャリア基材の代わりに、ポリウレタン系の粘着剤を付着させた樹脂製のキャリア基材(PETフィルム UA-3000AS、スミロン社製)でラミネートした。その際、ガラス基体の各辺の外周から粘着剤が各々10mmだけ露出するようにラミネートした。ラミネートされたガラス基体について、(5)密着層の形成、(6)防汚層の形成を行って防汚層付きガラス基体を得た。(5)密着層の形成においては、例1における密着層の構成を下記のように変更した以外は例1と同様の手順でスパッタリングを行った。(6)防汚層の形成は、例1と同様の手順で行った。例5では、粘着剤の露出部分の面積は、ガラス基体の第1面の面積に対して34.5面積%である。
例1において、ガラス基体を、粘着剤を使用せず、金属爪(金属の材質:ステンレス鋼SUS304)でキャリア基材であるガラス基板に保持した他は、例1と同様の手順で、(1)防眩処理、(2)化学強化処理、(3)アルカリ処理、(4)黒色印刷層の形成、(5)密着層の形成、(6)防汚層の形成をその順に行い、防汚層付きガラス基体を得た。
例1において、ガラス基体を、粘着剤を使用せず金属爪(金属の材質:ステンレス鋼SUS304)でキャリア基材であるガラス基板に保持した他は、例1と同様の手順で、(1)防眩処理、(2)化学強化処理、(3)アルカリ処理、(4)黒色印刷層の形成、(5)密着層の形成、(6)防汚層の形成をその順に行い、防汚層付きガラス基体を得た。さらに、(5)密着層の形成においては、防汚層と接する層のSiO2を成膜する際に、圧力を1Paとした。
性評価および視感反射率の測定を行った。
防汚層付きガラス基体の防汚層の形成された側(第1面)の表面に約1μLの純水の水滴を着滴させ、接触角計(協和界面科学社製、装置名;DM-501)を用いて、水に対する接触角を測定した。防汚層表面における水接触角の測定箇所は10箇所として、その平均を算出して評価に用いた。その結果を表1に示す。
防汚層付きガラス基体の防汚層の形成された側の表面の平面プロファイルを走査型プロープ顕微鏡(型式:SPA400、セイコーインスツル社製)で測定した。測定モードをDFMモードとし、操作エリアを3μm×3μmとした。得られた平面プロファイルからJIS B 0601(2001)に基いてRaの値を求めた。なお、実施例および比較例においては、防汚層の膜厚が4nmと極めて薄いため、防汚層の表面構造は、密着層の表面構造をトレースして形成される。そのため、防汚層のRaを接触層のRaとみなした。なお、後述の防汚層の除去処理を行った後のRaは上記の測定でのRaと変化がなかった。また、防眩処理のなされた基板(例1~2、例4~7)の場合、基板自体の凹凸形状を拾わないように微小領域で測定する等、測定領域を選定した。
まず、防汚層付きガラス基体に形成された防汚層や、表面有機汚染を除去するため、酸素プラズマ処理を実施し、その後、紫外線(UV)オゾン処理を実施した。これらは、防汚層の膜厚や表面汚染の度合いによってはどちらか一方の処理でもよい。
(ア)初めに、炭素原子濃度既知の標準試料をイオン注入により作製する。評価対象の膜と同じ組成の基板あるいは単膜を、評価対象の試料とは別に準備する。準備する試料は、炭素原子濃度の極力低いものが好ましい。ここでは、SiO2膜評価用に石英ガラス基板を用意した。
elative Sensitivity Factor:RSF)を求め、求めたRSFを用いて測定試料の炭素原子濃度のプロファイルを得る。
する。なお、測定精度を確保するために、装置内を極力高真空にしておくことが好ましい。今回のSIMSの測定開始前の真空度は6.7×10-8Paであった。
先ず、底面が10mm×10mmである平面金属圧子の表面に平織り綿布金巾3号を装着してサンプルを擦る摩擦子とした。次に、前記摩擦子を用い、平面摩耗試験機3連式(大栄科学精器製作所製)にて摩耗試験を行った。具体的には、上記圧子の底面がサンプルの防汚層表面に接触するよう摩耗試験機に取り付け、摩擦子への加重が1000gとなるように重りを載せ、平均速さ6400mm/min、片道40mmで往復摺動した。往復1回で擦り回数2回として試験を行い、擦り回数50000回終了後の防汚層表面の水の接触角を上記同様に測定した。その結果を表1に示す。
防汚層付きガラス基体の第1面の最表面の、第2面に形成された黒色印刷層に対向する領域について、分光測色計(形式:CM-2600d、コニカミノルタ製)により、分光反射率をSCIモードで測定し、その分光反射率から、視感反射率(JIS Z8701において規定されている反射の刺激値Y)を求めた。その結果を表1に示す。
い場合を×で表わす。
Claims (20)
- 相互に対向する一対の主面を有するガラス基体と、前記ガラス基体の一方の主面に、密着層と、防汚層とを順に備え、
前記密着層の前記防汚層と接する層は、酸化ケイ素を主体とし、炭素原子を5×1018~5×1019atoms/cm3の濃度で含有し、
前記ガラス基体は、化学強化ガラス基体であることを特徴とする防汚層付きガラス基体。 - 前記密着層の前記防汚層と接する層の算術平均粗さ(Ra)は、3nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の防汚層付きガラス基体。
- 前記密着層を構成する層の数は1~8である、請求項1又は2に記載の防汚層付きガラス基体。
- 前記密着層は低反射膜であり、
前記低反射膜は波長550nmでの屈折率が1.9以上の高屈折率層と、波長550nmでの屈折率が1.6以下の低屈折率層とを積層した構成であり、
前記高屈折率層は、窒化ケイ素、酸化ニオブ、酸化タンタルおよび酸化ジルコニウムから選ばれる1種類以上からなる層であり、前記低屈折率層は、酸化ケイ素、SiとSnとの混合酸化物を含む材料、SiとZrとの混合酸化物を含む材料およびSiとAlとの混合酸化物を含む材料から選ばれる1種類以上からなる層である、請求項1~3のいずれか1項に記載の防汚層付きガラス基体。 - 前記密着層は、窒化ケイ素、酸化ニオブ、酸化タンタルおよび酸化ジルコニウムから選ばれる1種類以上からなる層と、酸化ケイ素からなる層とが交互に積層された積層体である、請求項1~4のいずれか1項に記載の防汚層付きガラス基体。
- 前記防汚層に含フッ素有機基が存在する、請求項1~5のいずれか1項に記載の防汚層付きガラス基体。
- 前記防汚層は、含フッ素加水分解性ケイ素化合物を含む被膜形成用組成物の硬化物からなる、請求項6に記載の防汚層付きガラス基体。
- 前記防汚層の厚さは、2nm~20nmである、請求項6または7に記載の防汚層付きガラス基体。
- 前記一方の主面は、凹凸形状を有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の防汚層付きガラス基体。
- 前記凹凸形状の二乗平均粗さ(RMS)は、10nm以上であることを特徴とする請求項9に記載の防汚層付きガラス基体。
- 前記凹凸形状の二乗平均粗さ(RMS)は、1000nm以下であることを特徴とする請求項9又は10に記載の防汚層付きガラス基体。
- 前記凹凸形状が円形状の孔を有する、請求項9~11のいずれか1項に記載の防汚層付きガラス基体。
- 前記円形状の孔の直径は5μm以上50μm以下である、請求項12に記載の防汚層付きガラス基体。
- 前記ガラス基体の、前記一方の主面から前記一対の主面を接続する端面にわたる領域に、前記密着層および前記防汚層をその順に備える、請求項1~13のいずれか1項に記載の防汚層付きガラス基体。
- 前記ガラス基体の、前記一方の主面から前記一対の主面を接続する端面にわたる領域に前記防汚層を備え、前記端面の前記防汚層の備えられる一部の領域において、前記端面上に前記密着層および前記防汚層をその順に備える、請求項1~13のいずれか1項に記載の防汚層付きガラス基体。
- 前記ガラス基体は、曲面を有する形状である、請求項1~15のいずれか1項に記載の防汚層付きガラス基体。
- 前記曲面の曲率半径は、1mm~5000mmである、請求項16に記載の防汚層付きガラス基体。
- 前記ガラス基体の厚さは、0.1mm~5mmである、請求項1~17のいずれか1項に記載の防汚層付きガラス基体。
- 前記ガラス基体は、モル%表示でSiO2を50~80%、Al2O3を2~25%、Li2Oを0~10%、Na2Oを0~18%、K2Oを0~10%、MgOを0~15%、CaOを0~5%およびZrO2を0~5%含む、請求項1~18のいずれか1項に記載の防汚層付きガラス基体。
- 請求項1~19のいずれか1項に記載の防汚層付きガラス基体を備える、表示装置用前面板。
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