〔実施形態1〕
<スパッタリング装置>
まず、図1及び図2を用いて、スパッタリング装置100の概要について説明する。図1及び図2は、スパッタリング装置100の概略的な構成の一例を示す図である。図1は、アンテナ5の長手方向に沿った断面図であり、図2は、アンテナ5の長手方向に直交する断面図である。
スパッタリング装置100は、プラズマを用いて基板Wに対する成膜処理を行うプラズマ処理装置の一例である。本実施形態のスパッタリング装置100は、誘導結合型のプラズマPを用いてターゲットTをスパッタリングして基板Wに成膜するものである。ここで、基板Wは、例えば、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ(FPD)用の基板、フレキシブルディスプレイ用のフレキシブル基板等であり、その形状は例えば平板状である。
具体的には、図1及び図2に示すように、スパッタリング装置100は、真空容器2、基板保持部3、ターゲット保持部4、複数のアンテナ5、高周波電源6、ターゲットバイアス電源10、第1圧力センサ23、第2圧力センサ24、及び第3圧力センサ25を備えている。その他、スパッタリング装置100は、絶縁部9、絶縁部材11、絶縁カバー12、往復走査機構14、真空排気装置16、ゲートバルブ17、ガス導入口21、22、整合回路61、及びバルブ26,27を備えている。
真空容器2は、真空排気され、かつガス(例:スパッタ用ガス7又は反応性ガス8)が導入されるチャンバである。真空容器2は、例えば金属製の容器であり、その内部は、真空排気装置16によって真空排気される。真空容器2は、この例では電気的に接地されている。なお、真空排気装置16は、ゲートバルブ17を介して真空容器2に接続されている。ゲートバルブ17は、開度調整可能なバルブ(例:CCV(Conductance Control Valve))である。この開度が調整されることにより、真空排気される量が調整される。つまり、ゲートバルブ17の開度を調整することにより、真空容器2内の真空度が調整される。
真空容器2内には、例えば流量調整器(図示省略)及び複数のガス導入口21、22を経由して、スパッタ用ガス7又は反応性ガス8が導入される。スパッタ用ガス7及び反応性ガス8は、基板Wに施す処理内容に応じたものにすれば良い。スパッタ用ガス7としては、例えばアルゴン(Ar)等の不活性ガスであり、反応性ガス8としては、例えば酸素(O2)又は窒素(N2)等である。
基板保持部3は、真空容器2内において、基板Wを例えば水平状態となるように保持するホルダである。本実施形態の基板保持部3は、往復走査機構14により、真空容器2内において直線状に往復走査される。
ターゲット保持部4は、真空容器2内においてターゲットTを保持する。具体的には、ターゲット保持部4は、基板保持部3に保持された基板Wと対向してターゲットTを保持する。ターゲット保持部4は、真空容器2を形成する上側壁2aに設けられている。また、ターゲット保持部4と上側壁2aとの間には、真空シール機能を有する絶縁部9が設けられている。
本実施形態では、ターゲット保持部4は複数設けられている。複数のターゲット保持部4は、真空容器2内における基板Wの表面側に、基板Wの表面に沿うように同一平面上に並列に配置されている。複数のターゲット保持部4は、その長手方向が互いに平行となるように等間隔に配置されている。なお、各ターゲット保持部4は同一構成である。
ターゲットTは、基板Wに成膜させる成膜材料の一例である。ターゲットTの材質は、基板W上に形成する膜に応じたものにすれば良い。一例を示せば、基板W上に酸化物半導体薄膜を形成する場合には、ターゲットTは、例えば、In-Ga-Zn-O(インジウム-ガリウム-亜鉛-酸素)、又はIn-Sn-Zn-O(インジウム-スズ-亜鉛-酸素)等から構成される酸化物半導体である。但し、ターゲットTの材質はこれに限られるものではない。また、ターゲットTの形状は例えば平板状であり、その平面形状は例えば矩形状であるが、これに限らず、円形状等であっても構わない。
ターゲットバイアス電源10は、ターゲット保持部4に保持されたターゲットTに、ターゲットバイアス電圧(バイアス電圧)を供給(印加)するバイアス電源である。ターゲットバイアス電圧は、例えば-400Vに設定される。ターゲットバイアス電源10は、ターゲット保持部4を介して接続されている。ターゲットバイアス電圧は、プラズマP中のイオンをターゲットTに引き込んでスパッタさせる電圧である。
また、ターゲットバイアス電源10は、アナログI/F101を備えている。アナログI/F101は、ターゲットTと真空容器2との間に印加される電圧(ターゲットバイアス電圧)を測定する電圧計として機能する。
複数のアンテナ5は、真空容器2内に配置され、真空容器2内にプラズマを発生させるプラズマ発生部である。複数のアンテナ5は、真空容器2内における基板Wの表面側に、基板Wの表面に沿うように同一平面上に並列に配置されている。複数のアンテナ5は、その長手方向が互いに平行となるように等間隔に配置されている。なお、各アンテナ5は、平面視において、例えば直線状でかつ同一構成である。
本実施形態のアンテナ5は、各ターゲット保持部4に保持されたターゲットTの両側にそれぞれ配置されている。つまり、アンテナ5とターゲットTとが交互に配置されており、1つのターゲットTは、2本のアンテナ5により挟まれた構成となる。ここで、各アンテナ5の長手方向と各ターゲット保持部4に保持されたターゲットTの長手方向とは同一方向である。また、2つのターゲットTの間に配置されるアンテナ5は、それら2つのターゲットTから等距離の位置に配置されている。
各アンテナ5の材質は、例えば、銅、アルミニウム、これらの合金、ステンレス等であるが、これに限られるものではない。なお、アンテナ5を中空にして、その中に冷却水等の冷媒を流し、アンテナ5を冷却するようにしても良い。
アンテナ5の両端部付近は、真空容器2の相対向する側壁2b、2cをそれぞれ貫通している。アンテナ5の両端部を真空容器2外へ貫通させる部分には、絶縁部材11がそれぞれ設けられている。各絶縁部材11をアンテナ5の両端部が貫通しており、その貫通部は例えばパッキンによって真空シールされている。各絶縁部材11と真空容器2との間も、例えばパッキンによって真空シールされている。なお、絶縁部材11の材質は、例えば、アルミナ等のセラミックス、石英、又はポリフェニンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等のエンジニアリングプラスチック等である。
さらに、各アンテナ5において、真空容器2内に位置する部分は、絶縁物製で直管状の絶縁カバー12により覆われている。絶縁カバー12の両端部と真空容器2との間はシールしなくても良い。絶縁カバー12内の空間にスパッタ用ガス7が入っても、当該空間は小さくて電子の移動距離は短いので、通常は当該空間にプラズマPは発生しないからである。なお、絶縁カバー12の材質は、例えば、石英、アルミナ、フッ素樹脂、窒化シリコン、炭化シリコン、シリコン等であるが、これらに限られるものではない。
アンテナ5の一端部である給電端部5aには、整合回路61を介して高周波電源6が接続されており、他端部である終端部5bは直接接地されている。なお、給電端部5a又は終端部5bに、可変コンデンサ又は可変リアクトル等のインピーダンス調整回路を設けて、各アンテナ5のインピーダンスを調整するように構成しても良い。このように各アンテナ5のインピーダンスを調整することによって、アンテナ5の長手方向におけるプラズマPの密度分布を均一化することができ、アンテナ5の長手方向の膜厚を均一化することができる。
高周波電源6は、高周波電力を複数のアンテナ5のそれぞれに供給する。高周波電源6は、整合回路61を介して各アンテナ5に高周波電力を供給することにより、各アンテナ5に高周波電流IRが流れて、真空容器2内に誘導電界を発生させる。これにより、複数のアンテナ5の周囲に、誘導結合型のプラズマPが生成される。高周波電力の周波数は、例えば、一般的な13.56MHzであるが、これに限られるものではない。
往復走査機構14は、基板保持部3をアンテナ5の配列方向Xに沿って機械的に往復走査させることにより、基板保持部3に保持された基板Wを配列方向Xに沿って同一平面上で往復走査させる。往復走査機構14は、例えば、真空容器2外に設けられたアクチュエータと、基板保持部3に連結されるとともにアクチュエータにより駆動されるリニアガイドとを備えている。往復走査機構14により、基板Wを往復走査させながら成膜処理を行うことで、成膜の均一性を向上させることが可能となる。
第1圧力センサ23は、成膜処理中の真空容器2内の圧力を測定する圧力センサである。第1圧力センサ23は、真空容器2内の圧力が数Pa(例:6~7Pa、例えば6.67Pa)未満であるときの圧力を測定するものであり、例えばダイヤフラム真空計である。また、第1圧力センサ23は、バルブ26を介して真空容器2に接続されている。第1圧力センサ23の使用時(オンされるとき)に、バルブ26は開状態となる。
第2圧力センサ24は、非成膜処理中の真空容器2内の圧力を測定する圧力センサである。第2圧力センサ24は、例えば、成膜処理開始前の圧力、及び成膜処理完了後の真空容器2からのガス抜き処理時の圧力を測定する。また、第2圧力センサ24は、例えば、スパッタリング装置100に接続された真空状態の部屋への、基板Wの搬入又は搬出時の圧力を測定する。
第2圧力センサ24は、真空容器2内の圧力が上記数Pa未満であるときの圧力を測定するものであり、第2圧力センサ24は、例えば電離真空計である。第2圧力センサ24は、バルブ27を介して真空容器2に接続されている。第2圧力センサ24の使用時(オンされるとき)に、バルブ27は開状態となる。
第3圧力センサ25は、非成膜処理中の真空容器2内の圧力を測定する圧力センサである。第3圧力センサ25は、例えば、真空容器2内を大気状態から真空排気するときに、使用する2種類の真空ポンプの切替え制御のために用いられる。第3圧力センサ25は、真空容器2内の圧力が上記数Pa以上であるときの圧力(大気圧から上記数Paまでの圧力)を測定するものであり、例えばサーモカップル真空計である。
ここで、真空排気装置16は、大気圧から上記数Paとなるまで、真空容器2内の排気を行う第1真空ポンプと、上記数Paから高真空(例:0.000001~0.1Pa)となるまで排気を行う第2真空ポンプと、を備えている。成膜処理開始前に、真空排気する真空ポンプとして第1真空ポンプに設定されている場合、真空容器2は、第1真空ポンプにより大気状態から真空排気される。第3圧力センサ25により真空容器2内の圧力として上記数Paが測定されたときに、制御部15(後述)は、第1真空ポンプを第2真空ポンプに切替えて真空排気を続行する。
圧力センサは、真空度(圧力)の大きさにより測定可能な範囲が異なっている。そのため、スパッタリング装置100では、用途等に応じて、第1圧力センサ23、第2圧力センサ24、及び第3圧力センサ25が設けられている。また、第1圧力センサ23、第2圧力センサ24、及び第3圧力センサ25は、測定した真空度を電圧値に変換して制御部15に送信する。
<スパッタリング装置のその他の構成>
スパッタリング装置100は、上述した構成の他、制御部15(制御装置)、表示部18及び記憶部19を備えている。制御部15は、スパッタリング装置100の各部を統括的に制御する。制御部15の詳細は後述する。
記憶部19は、制御部15によって処理される情報(プログラムを含む)を記憶する。当該情報としては、例えば、各スパッタ工程(レシピ)に対して予め設定された装置パラメータが挙げられる。装置パラメータには、例えば、動作時間、スパッタ用ガス7及び反応性ガス8の種類及び導入量、高周波電源6及びターゲットバイアス電源10のオン/オフタイミング及び出力値、真空容器2内の各種設定値(例:圧力設定値)、等が含まれる。動作時間は、例えば、次のスパッタ工程に移行するまでの時間として設定された移行設定時間を指す。なお、基板Wに対する1回のスパッタリング処理は、複数のスパッタ工程が行われることにより完結される。
例えば、あるスパッタ工程の装置パラメータは、以下のように設定されている。
・動作時間(移行設定時間):60s、
・スパッタ用ガス7:アルゴン(Ar)ガス、
・反応性ガス8:酸素、
・スパッタ用ガス7の導入量:180sccm、
・反応性ガス8の導入量:10sccm、
・高周波電源6の出力値(成膜処理に要する出力値):10kW、
・ターゲットバイアス電源の出力値(成膜処理に要する出力値):-400V、
・真空容器2内の圧力設定値(後述の第1設定値):0.8Pa。
表示部18は、各種情報を表示する。表示部18に代えて、各種情報を音(音声を含む)として出力する音出力部を備えても構わないし、表示部18及び音出力部の両方を備えていても構わない。つまり、スパッタリング装置100は、各種情報を外部に出力(提示、通知)する出力装置を備えていればよい。
なお、制御部15、表示部18及び記憶部19は、スパッタリング装置100が備えるものとして説明するが、これに限らず、スパッタリング装置100と通信可能に接続される外部装置(制御装置、表示装置及び記憶装置)として実現されても構わない。
<制御部の詳細>
制御部15は、処理監視部151、圧力制御部152、圧力監視部153、電力制御部154、異常放電検出部155、時間算出部156、及び表示制御部157を備えている。
処理監視部151は、スパッタリングに係る処理全般を監視する。処理監視部151は、例えば、スパッタリング処理に含まれる各ステップ工程の設定値等を規定する装置パラメータを記憶部19から読み出す。その他、処理監視部151は、カウンタの設定、カウンタの比較、動作時間の監視、スパッタ用ガス7又は反応性ガス8の導入制御等を行う。
カウンタとしては、例えば、スパッタ工程カウンタCs(=1,2,…,N)及びリトライ回数カウンタCr(=0,1,2,…,M)が挙げられる。また、カウンタの比較としては、例えば、設定されたスパッタ工程カウンタCsの値と最終スパッタ工程のカウンタ値(最終工程カウンタ値Csfin)との比較、及び、設定されたリトライ回数カウンタCrとリトライ回数上限値Crmaxとの比較が行われる。リトライ回数上限値Crmaxは、リトライ制御後の異常放電の検出可否、スパッタリング処理の効率等から、実験等を経て設定される。リトライ回数上限値Crmaxは、例えば3回と設定される。
リトライ制御(動作)とは、異常放電が発生した場合の高周波電源6及びターゲットバイアス電源10の出力制御である。具体的には、リトライ制御は、高周波電源6及びターゲットバイアス電源10の出力を一旦低下させて、プラズマPの発生及びスパッタ粒子の叩き出しを中断した後、当該出力を増加させて、プラズマPの発生及びスパッタ粒子の叩き出しを再度行うことを指す。当該出力は、真空容器2内の圧力が、所定時間、所定の設定値に維持されたことを条件として増加させる。
また、処理監視部151は、動作時間の監視のために、各スパッタ工程の開始にあわせて計時を開始するとともに、異常放電検出時に計時を一旦停止する。また、後述の制御部15によるリトライ制御後、再度計時を開始する。
圧力制御部152は、真空排気装置16及びゲートバルブ17を制御することにより、真空容器2内の圧力を制御する。具体的には、圧力制御部152は、真空排気装置16をオンにした状態で、ゲートバルブ17の開度を調整することで、真空容器2内の圧力を調整する。
圧力監視部153は、真空容器2内の圧力が一定となったか否か、つまり、第1圧力センサ23が測定した圧力値が所定の設定値に所定時間維持されたか否かを判定する。所定の設定値は、本実施形態では、成膜処理を行うために予め設定された第1設定値(例:0.8~0.9Pa)である。所定時間は、実験等に基づき、所定の設定値が安定したと判断できる程度の時間に設定されればよい。
電力制御部154は、高周波電源6及びターゲットバイアス電源10の出力を制御する。例えば、電力制御部154は、異常放電検出部155が異常放電を検出したときに、上記出力を低下させる。また、電力制御部154は、第1圧力センサ23によって測定された、上記出力を低下させた後の真空容器2内の圧力が、所定の設定値に所定時間維持されたときに、上記出力を増加させる。
異常放電が生じた場合に成膜処理を続行すると、真空容器2内の真空度が悪化する等、上述したような不具合が生じる。電力制御部154は、異常放電が検出されたときに上記出力を低下させるため、当該不具合の原因となる異常放電を消滅させることができる。
その後、真空容器2内の圧力が所定の設定値に所定時間維持されている状態(すなわち、真空容器2内が安定した状態)において、上記出力を増加させる。そのため、真空容器2内を再度異常放電が生じないような環境にした上で、プラズマPを発生させ、基板Wへの成膜処理を開始することが可能となる。従って、成膜処理開始後の異常放電の発生を抑制できる。換言すれば、基板Wへの成膜中の異常放電の発生を抑制できる。これにより、成膜した基板の生産性を向上させることが可能となる。
また、制御部15は、スパッタリング装置に一般に設けられている第1圧力センサ23の測定値に基づいて、真空容器2内が安定した状態か否かの判定を行うことができる。そのため、当該判定のために、別途測定器(例:質量分析計)を備えることなく、簡易な構成で上記異常放電の発生を抑制できる。
また、異常放電を検出したときに、高周波電源6の出力を維持した場合、異常放電の原因となるターゲットバイアス電源10の出力を低下させたとしても、高周波電源6の出力に起因して異常放電が維持されてしまう。そのため、ターゲットバイアス電源10の出力だけでなく、高周波電源6の出力も低下させることで、異常放電の維持を防止できる。
本実施形態では、電力制御部154は、上記出力を低下させた後の真空容器2内の圧力が、第1設定値に所定時間維持されたときに、上記出力を増加させる。これにより、真空容器2内の圧力が第1設定値に所定時間維持された状態(真空容器2内が安定した状態)となったタイミングで、上記出力を元の状態に戻すことができる。
また、電力制御部154は、異常放電が検出されない限り、上記出力を増加させてから、時間算出部156が算出した所定の成膜処理を行うための残り時間が経過するまで、上記出力を維持する。これにより、所定の成膜処理の動作時間全体に亘り(既に所定の成膜処理が行われた時間分も含めて)、所定の成膜処理を行う必要が無い。従って、効率良く所定の成膜処理を行うことが可能となる。なお、所定の成膜処理とは、例えば、各スパッタ工程の成膜処理を指す。
また、電力制御部154は、上記出力を増加させるとき、低下させた高周波電源6の出力を増加させた後に、ターゲットバイアス電源10の出力を増加させる。これにより、プラズマPを発生させた状態において基板Wへの成膜処理を開始することができる。そのため、効率良く成膜処理を行うことができる。但し、この点を考慮しなければ、ターゲットバイアス電源10の出力を増加させた後に、高周波電源6の出力を増加させても構わないし、両方の出力を同時に増加させても構わない。
本明細書では、電力制御部154は、異常放電が検出されたときに、上記出力を低下させる一例として、当該出力をオフ(出力値を0)にする。これにより、異常放電が検出されたときに、異常放電を確実に消滅させることが可能となる。なお、上記出力をオフするタイミングは、同時であってもずれていても構わない。
一方、電力制御部154は、成膜処理開始時(リトライ制御時を含む)には、上記出力をオンする。本実施形態では、電力制御部154は、上記出力をオンした場合、各スパッタ工程において設定された、成膜処理に要する出力値(例:高周波電源6の出力値:10kW、ターゲットバイアス電源10の出力値:-400V)での出力を行う。
但し、上述のように、上記出力をオン又はオフさせる代わりに、上記出力を増加又は低下させる構成であっても構わない。上記出力を低下させる場合、異常放電が発生しない程度の出力まで低下させる。また、上記出力を増加させる場合、スパッタリング又はプラズマPが発生する程度の出力まで増加させる。低下又は増加させる量は、実験等により定められる。
異常放電検出部155は、真空容器2内の異常放電を検出する。異常放電検出部155は、アナログI/F101で測定されたターゲットバイアス電圧が所定値(異常放電検出電圧(閾値電圧)Vth)を超えた場合に、異常放電が生じていると判定する。
図3は、ターゲットバイアス電圧の経時的な変化の一例を示すグラフである。図3の縦軸はターゲットバイアス電圧Vtを示し、横軸は時間tを示す。図3に示すように、成膜処理が開始され、ターゲットバイアス電源10がオンされると、成膜処理を行うために予め設定された出力値(スパッタ電圧)Vs(例:-400V)がターゲット保持部4に供給される。
異常放電検出部155は、ターゲットバイアス電圧が出力値Vsに維持されるのに十分な時間として予め設定された電圧安定待機時間Twv(例:0.01s)を超えると、異常放電の検出を開始する。つまり、異常放電検出部155は、電圧安定待機時間Twvを超えると、アナログI/F101で測定されたターゲットバイアス電圧Vtが異常放電検出電圧Vth(例:-300V)を超えたか否かの判定を開始する。
そして、異常放電検出部155は、異常放電検出電圧Vthを超えたと判定した場合に、異常放電が発生したと判定し、電力制御部154は、ターゲットバイアス電源10の出力をオフにする。このとき、電力制御部154は、高周波電源6の出力もオフにする。
時間算出部156は、予め設定された、所定の成膜処理を行うための動作時間から、所定の成膜処理が行われていた時間(経過時間)を減ずることで、上記残り時間を算出する。また、時間算出部156は、残り時間を算出した後に再度残り時間を算出する場合には、既に算出した残り時間から、経過時間を減ずることで、新たな残り時間を算出する。
表示制御部157は、表示部18を制御する。表示制御部157は、例えば、スパッタリング装置100の状態を示す情報を、表示部18に表示させる。また、表示制御部157は、設定されたリトライ回数カウンタCrがリトライ回数上限値Crmaxを超えたと判定された場合に、スパッタリング装置100にエラーが生じたことを示す情報を表示部18に表示させる。これと共に、表示制御部157は、スパッタリング装置100のメンテナンス(例:クリーニング)をユーザに促すための情報を、表示部18に表示させる。
<スパッタリング処理の概要>
次に、図4を用いて、スパッタリング処理の一例について説明する。図4は、制御部15によるスパッタリング処理の一例を示す図である。
図4に示すように、まず、処理監視部151は、初期設定を行う。具体的には、処理監視部151は、スパッタ工程カウンタCsに1を設定する共に(Cs=1)、リトライ回数カウンタCrに0を設定する(Cr=0)(S1)。
次に、該当するスパッタ工程の成膜処理を実行するために、処理監視部151は、該当するスパッタ工程の装置パラメータ(レシピ情報)を記憶部19から読み出す(S2)。以降、スパッタ工程カウンタCsとして値Nが設定されている(制御部15がN番目のスパッタ工程を実行する)ものとして説明する。
次に、処理監視部151は、設定されたスパッタ工程カウンタCsの値Nが、最終工程カウンタ値Csfinと一致するか否かを判定する(S3)。処理監視部151が、値Nが最終工程カウンタ値Csfinと一致したと判定した場合(S3でYES)、スパッタリング処理は終了となる(S8)。これに対し、処理監視部151により、値Nが最終工程カウンタ値Csfinと一致しないと判定された場合(S3でNO)、制御部15により、N番目のスパッタ工程の成膜処理が実行される(S4)。S4の具体的処理については後述する。
スパッタ工程の成膜処理が実行された状態において、異常放電検出部155は、ターゲットバイアス電圧を監視することにより、異常放電の発生有無を監視する(S5:異常放電検出ステップ)。異常放電検出部155が異常放電を検出した場合(S5でYES)、制御部15により、リトライ制御が実行される(S6)。S6の具体的処理については後述する。
一方、異常放電検出部155が異常放電を検出しない限り(S5でNO)、処理監視部151は、S4においてN番目のステップ工程が開始されてから移行設定時間Tsが経過したか否かを判定する(S7)。
処理監視部151により移行設定時間Tsが経過したと判定されるまで(S7でNO)、S5の処理が実行される。これに対し、処理監視部151は、移行設定時間Tsが経過したと判定した場合(S7でYES)、N番目のスパッタ工程の成膜処理が完了したと判定する。処理監視部151は、次のスパッタ工程(N+1番目のスパッタ工程)に移行するために、スパッタ工程カウンタCsをインクリメントする(Cs=Cs+1)。また、処理監視部151は、リトライ回数カウンタCrが0でない場合には0に設定する(S8)。その後、S2の処理に戻る。
<スパッタ工程(N番目)の処理実行フロー>
次に、図5を用いて、N番目のスパッタ工程の処理実行フロー(図4のS4)の一例について説明する。図5は、N番目のスパッタ工程の処理実行フローの一例を示すフローチャートである。
図5に示すように、S4の処理に移行すると、まず、圧力制御部152は、真空排気装置16をオンにする(S11)。これにより、真空容器2内の真空排気処理が開始される。次に、処理監視部151は、ガス導入口21、22から、真空容器2内にスパッタ用ガス7及び反応性ガス8を導入させる(S12)。そして、圧力制御部152は、ゲートバルブ17を制御することにより、真空容器2内の圧力が第1設定値(例:0.8Pa)となるように、当該圧力を調整する(S13)。そして、圧力監視部153は、第1圧力センサ23が測定した圧力値を監視することにより、真空容器2内の圧力が所定時間、第1設定値に維持されているか否かを判定する(S14)。
圧力監視部153により、真空容器2内の圧力が所定時間、第1設定値に維持されたと判定された場合(S14でYES)、電力制御部154は、高周波電源6の出力をオンにする(S15)。その後、電力制御部154は、ターゲットバイアス電源10をオンする(S16)。これにより、ターゲットTからスパッタ粒子の飛散が始まるので、スパッタ粒子の基板Wへの堆積が始まる。
また、圧力監視部153により、真空容器2内の圧力が所定時間、第1設定値に維持されたと判定されるまで、S14の処理が繰り返される(S14でNOの場合)。つまり、真空容器2内の圧力が一定となるまで待機状態となる。なお、S14の処理は、予め規定された時間間隔で実行されても構わない。また、S13に戻り、圧力制御部152が、ゲートバルブ17を制御して上記圧力を調整しても構わない。
なお、本処理では、電力制御部154は、高周波電源6の出力をオンした後に、ターゲットバイアス電源10の出力をオンしているが、これに限らず、上述したように、ターゲットバイアス電源10の出力をオンした後に、高周波電源6の出力をオンしても構わないし、両方の出力を同時にオンしても構わない。また、本処理においては、S14の処理は省略されても構わない。
<リトライ制御フロー>
次に、図6及び図7を用いて、リトライ制御フロー(図4のS6)の一例について説明する。図6は、実施形態1に係るリトライ制御フロー(制御方法)の一例を示すフローチャートである。図7は、ターゲットバイアス電圧Vt及び高周波電力RFそれぞれの経時的な変化の一例を示すグラフである。図7において、縦軸はターゲットバイアス電源10及び高周波電源6の出力値(ターゲットバイアス電圧Vt及び高周波電力RFの値)を示し、横軸は時間tを示す。
異常放電が検出されると(図4のS5でYES)、処理監視部151は、計時を停止する。これと共に、図6に示すように、時間算出部156は、N番目のスパッタ工程を行うための動作時間(移行設定時間Ts)から、当該スパッタ工程の経過時間Tpを減ずる。これにより、時間算出部156は、当該スパッタ工程を行うための残り時間Trを算出する(Tr=Ts-Tp)(S21)。例えば、装置パラメータに示された移行設定時間Ts=60s、経過時間Tp=30sの場合、残り時間Tr=30sと算出される。
次に、処理監視部151は、リトライ回数カウンタCrをインクリメントする(Cr=Cr+1)(S22)。リトライ制御回数が1回目であれば、リトライ回数カウンタCr=1に設定される。一方、S31の処理後に再度S21に戻った場合には、リトライ制御回数が2回以上となるため、リトライ回数カウンタCrには2以上の値が設定される。
次に、電力制御部154は、高周波電源6及びターゲットバイアス電源10の出力をオフにする(S23:電力制御ステップ)。これにより、異常放電を消滅させることができる。また、ターゲットバイアス電源10の出力だけでなく、高周波電源6の出力も低下させることで、異常放電の維持を防止できる。
次に、処理監視部151は、設定されたリトライ回数カウンタCrがリトライ回数上限値Crmaxと一致するか否かを判定する(S24)。処理監視部151により一致したと判定された場合(S24でYES)、表示制御部157は、エラーを示す情報と、メンテナンスを促す情報と、を表示部18に表示させると共に、制御部15は、スパッタリング装置100の動作を停止する(S25)。これにより、スパッタリング装置100の状態をユーザに通知できると共に、不要なリトライ制御を行うことを回避できる。
一方、処理監視部151により一致しないと判定された場合(S24でNO)、図4に示すS12~S16の処理が実行される(S26~S30)。ここで、リトライ回数上限値Crmaxが2以上に設定されており、かつリトライ制御回数がリトライ回数上限値Crmaxを超えない限り、リトライ制御は複数回行われることになる。そのため、異常放電が消滅する可能性を増やすことができる。
特に、S28でYES(真空容器2内の圧力が所定時間、第1設定値に維持されたと判定された)場合に、S29の処理(高周波電源6の出力オン;電力制御ステップ)及びS30の処理(ターゲットバイアス電源10の出力オン;電力制御ステップ)が実行される。そのため、真空容器2内を再度異常放電が生じないような環境にした上で、プラズマPを発生させ、基板Wへの成膜処理を再度開始することが可能となる。従って、成膜処理開始後の異常放電の発生を抑制できる。なお、図5の処理においてはS14の処理は必須ではないが、本処理においてはS28の処理は必須である。
また、S29の処理(高周波電源6の出力オン)後に、S30の処理(ターゲットバイアス電源10の出力オン)が行われるので、効率良く成膜処理を行うことができる。上述の通り、S30の処理後にS29の処理を実行しても、S29及びS30の処理を同時に実行しても構わない。
また、処理監視部151は、S30の処理実行時に、残り時間Tr分の計時を再開する。そして、S29及びS30の処理を経て成膜処理が再度開始されると、図4のS5と同様、異常放電検出部155は、異常放電の発生有無を監視する(S31:異常放電検出ステップ)。
異常放電検出部155が異常放電を検出しない限り(S31でNO)、処理監視部151は、残り時間Trが経過したか否かを判定する(S32)。処理監視部151により残り時間Trが経過したと判定されるまで(S32でNO)、S31の処理が実行される。これに対し、処理監視部151は、残り時間Trが経過したと判定した場合(S32でYES)、N番目のスパッタ工程の成膜処理が完了したと判定する。そのため、1以上に設定されたリトライ回数カウンタCrを0に設定し直す(S33)。その後、図4のS8の処理に移行する。つまり、処理監視部151は、次のスパッタ工程(N+1番目のスパッタ工程)に移行するために、スパッタ工程カウンタCsをインクリメントする(Cs=Cs+1)。
また、電力制御部154は、異常放電が検出されない限り(S31でNO)、残り時間Trが経過するまで、高周波電源6及びターゲットバイアス電源10の出力をオンの状態に維持する。つまり、残り時間Tr分のみ、成膜処理が行われる。そのため、上述したように、経過時間Tp分の成膜処理を行わないので、効率良く成膜処理を行うことができる。
一方、異常放電検出部155が異常放電を検出した場合(S31でYES)、S21の処理に戻る。この場合、時間算出部156は、残り時間Trを再度算出する。また、このとき、処理監視部151が計時を停止する。
例えば、残り時間Trが30秒で、S30で計時を開始した後3秒経過して、異常放電が検出された場合、時間算出部156は、既に算出した残り時間Tr(30秒)から経過時間(3秒)を減ずることで、新たな残り時間(27秒)を算出する。そのため、S30の処理後(成膜処理再開後)に実行された時間分を差し引いて、成膜処理を行うことが可能となる。そのため、リトライ制御が複数回行われる場合であっても、効率良く成膜処理を行うことができる。
なお、往復走査機構14は、S23で高周波電源6及びターゲットバイアス電源10の出力がオフとなったときに、基板保持部3の走査を停止すると共に、S29及びS30で当該出力がオンとなったときに、当該走査を再開しても構わない。この場合、成膜処理が行われていない間に当該走査を行うといった無駄な動作を排除できる。また、S21~S23の処理は、この順に処理されなくても構わない。
(リトライ制御に係る電力制御)
図7に示すように、異常放電が検出されると(図4のS5でYES)、電力制御部154は、高周波電源6及びターゲットバイアス電源10の出力をオフにする(図6のS23)。つまり、ターゲットバイアス電圧Vt及び高周波電力RFはそれぞれ0となる。その後、真空容器2内の圧力が安定するまで(圧力安定待機時間Twp分)、待機状態となる(図6のS28)。その後、当該圧力が安定したと判定されると(図6のS28でYES)、電力制御部154は、高周波電源6の出力をオンとした後(図6のS29)、ターゲットバイアス電源10の出力をオンにする(図6のS30)。つまり、ターゲットバイアス電圧Vt及び高周波電力RFを共に、成膜処理に要する出力値まで増加させる。
<成膜処理の早期立ち上げ>
未使用のターゲットTの表面には凹凸が存在していることが多い。そのため、ターゲットTを交換した場合には、当該凹凸(又はターゲットTの酸化等)に起因して、プラズマPの発生のための放電(例:グロー放電)が安定せずに、異常放電(例:アーク放電)が発生する可能性がある。
本実施形態では、異常放電が発生した場合には、リトライ回数上限値Crmax(但し、2以上に設定)を上限として、リトライ制御を繰り返し行うことができる。そのため、複数回のリトライ制御が実行される中で、ターゲットTの表面の凹凸がならされ、異常放電を生じにくくすることができる。そのため、異常放電のたびに成膜処理を中断して、人手を介したメンテナンスを行う必要が無いため、異常放電のたびに成膜処理を中断するような構成に比べ、ターゲットTの交換後の成膜処理を早期に立ち上げることができる。
また、本実施形態では、異常放電検出後、真空容器2内の圧力が一定となったこと(つまり、できるだけ異常放電が生じにくい状態になったこと)を条件として、高周波電源6及びターゲットバイアス電源10の出力をオンにする。そのため、異常放電の発生回数を減少させることができる。さらに、再度異常放電が生じたとしても、上記圧力が一定となったことを条件として、再度出力をオンにする。この処理を自動的に行うため、ターゲット交換後の成膜処理を早期に立ち上げることができる。
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。以降の実施形態についても同様である。
実施形態1では、制御部15は、異常放電を検出し、高周波電源6及びターゲットバイアス電源10の出力をオフにした後、第1設定値(例:0.8Pa)が所定時間維持されたことを条件として、当該出力を再度オンにしている。
一方、実施形態2では、電力制御部154は、第1設定値よりも低い値に予め設定された第2設定値(所定の設定値)に所定時間維持されたときに、上記出力を増加させる。つまり、実施形態1よりも更に高真空状態とした後に、上記出力を増加させる。これにより、発生させるプラズマPの密度が低い状態で、基板Wへの成膜処理(初期成膜)行うことが可能となる。従って、成膜処理再開時において、基板W上に形成され露出しているスパッタ粒子の層が、成膜処理により受けるダメージを小さくできる。
ここで、成膜処理を一旦中断してから、真空容器2内の圧力と上記出力とを成膜処理再開前の状態に戻して成膜処理を再開した場合、上記ダメージにより、再開前後における上記スパッタ粒子の層の界面が、製造上規定された状態にならない等、成膜処理に影響を及ぼす可能性がある。上記のようにダメージを小さくすることで、そのような影響が生じる可能性を抑制できる。
また、圧力制御部152は、基板Wへの初期成膜を行うための初期成膜時間Tiが経過した後に、第2設定値から第1設定値となるように、真空容器2内の圧力を増加させる。そのため、成膜処理再開前と同じ状態で成膜処理を行うことができる。
<リトライ制御フロー>
図8は、実施形態2に係るリトライ制御フロー(制御方法)の一例を示すフローチャートである。図8に示すように、まず、図6のS21~S26の処理が行われる。S26の処理後、圧力制御部152は、ゲートバルブ17を制御することにより、真空容器2内の圧力が第2設定値(初期成膜用圧力)となるように、当該圧力を調整する(S41)。その後、図6のS28~S31の処理が行われる。但し、S28では、圧力監視部153は、真空容器2内の圧力が所定時間、第2設定値に維持されているか否かを判定する。
S31において、異常放電検出部155が異常放電を検出した場合(S31でYES)、S21の処理に戻る。一方、異常放電検出部155が異常放電を検出しない限り(S31でNO)、処理監視部151は、初期成膜時間Tiが経過したか否かを判定する(S42)。
処理監視部151により初期成膜時間Tiが経過したと判定されるまで(S42でNO)、S42の処理が実行される。これに対し、処理監視部151は、初期成膜時間Tiが経過したと判定した場合(S42でYES)、圧力制御部152は、ゲートバルブ17を制御することにより、第2設定値から第1設定値となるように、真空容器2内の圧力を増加させる(S43)。そして、圧力監視部153は、真空容器2内の圧力が所定時間、第1設定値に維持されているか否かを判定する(S44)。
圧力監視部153により、真空容器2内の圧力が所定時間、第1設定値に維持されていると判定された場合(S44でYES)、異常放電検出部155は、異常放電の発生有無を監視する(S45:異常放電検出ステップ)。なお、真空容器2内の圧力が所定時間、第1設定値に維持されたと判定されるまで、S44の処理が繰り返される(S44でNOの場合)。
異常放電検出部155が異常放電を検出した場合(S45でYES)、S21の処理に戻る。一方、異常放電検出部155が異常放電を検出しない限り(S45でNO)、S32の処理が実行される。S32の処理後、S33の処理が実行される。
<変形例>
第2設定値は、プラズマPの密度が、真空容器2内の圧力を第1設定値に設定したときのプラズマPの密度よりも低い状態となることにより、上記ダメージを小さくできる程度の値に設定されればよい。この場合、第2設定値として、第1設定値よりも高い値に予め設定することも可能である。つまり、第2設定値は、成膜処理を行うために設定される第1設定値と異なる値(例:0.3~0.8Pa、0.9~1.4Pa、但し0.8Pa及び0.9Paを含まず)に設定されていればよい。
また、第2設定値>第1設定値の場合、S43の処理では、圧力制御部152は、第2設定値から第1設定値となるように、真空容器2内の圧力を低下させる。つまり、圧力制御部152は、第1設定値と第2設定値の大小関係に応じて、第2設定値から第1設定値となるように、真空容器2内の圧力を変更する。
〔実施形態3〕
実施形態1及び2では、制御部15は、異常放電を検出し、高周波電源6及びターゲットバイアス電源10の出力をオフにした後、第1設定値又は第2設定値が所定時間維持されたことを条件として、高周波電源6の出力を成膜処理再開前の出力値まで増加させる。
一方、実施形態3では、電力制御部154は、低下させた高周波電源6の出力を経時的に単調増加させる(ランプ状に増加させる)。具体的には、電力制御部154は、高周波電源6の出力を、成膜処理再開前の出力値(各スパッタ工程において設定された、成膜処理に要する出力値)まで、単調増加させる。これにより、出力増加を開始させたときに発生させるプラズマPの密度を小さくできる。そのため、実施形態2と同様、成膜処理再開時において、基板W上に形成され露出しているスパッタ粒子の層が、成膜処理により受けるダメージを小さくできるので、上述の影響が生じる可能性を抑制できる。
図9は、高周波電源6の出力の経時的な変化の一例を示すグラフである。縦軸は高周波電源6の出力値(高周波電力RFの値)を示し、横軸は時間tを示す。
グラフGr1では、電力制御部154は、高周波電源6の出力を、各スパッタ工程において設定された、成膜処理に要する出力値RFsまで、階段状に増加させる。グラフGr2では、電力制御部154は、高周波電源6の出力を、出力値RFsまで、一次関数的に増加させる。その他、例えば2次曲線的に単調増加させても構わない。
<リトライ制御フロー>
図10は、実施形態3に係るリトライ制御フロー(制御方法)の一例を示すフローチャートである。図10に示すように、まず、図8のS21~S26、S41、S28の処理が行われる。
S28において、圧力監視部153により、真空容器2内の圧力が所定時間、第2設定値に維持されていると判定された場合(S28でYES)、電力制御部154は、高周波電源6をオンにする。但し、電力制御部154は、出力値RFsまで増加させず、出力値RFsよりも低い値(例:図9のグラフGr1に示す出力値RFa)での出力を高周波電源6に行わせる(S51)。その後、電力制御部154は、ターゲットバイアス電源10をオンする(S30)。
次に、電力制御部154は、高周波電源6の出力を単調増加させていく(S52)。そして、異常放電検出部155は、異常放電の発生有無を監視する(S31:異常放電検出ステップ)。
S31において、異常放電検出部155が異常放電を検出した場合(S31でYES)、S21の処理に戻る。一方、異常放電検出部155が異常放電を検出しない限り(S31でNO)、処理監視部151は、初期成膜処理が完了したか否かを判定する(S53)。具体的には、処理監視部151は、初期成膜時間Tiが経過したか否かを判定すると共に、高周波電源6の出力を出力値RFsまで増加させたか否かを判定する。
処理監視部151により、出力値RFsまで出力を増加させていないと判定された場合(S53でNO)、S52の処理に戻る。また、初期成膜時間Tiが経過するまで、S53の処理が繰り返される(S53でNOの場合)。一方、処理監視部151により、初期成膜時間Tiが経過し、かつ出力値RFsまで高周波電源6の出力を増加させたと判定された場合には(S53でYES)、図8を用いて説明した実施形態2と同様、S43以降の処理が行われる。
なお、上記処理では、電力制御部154は、S51において、高周波電源6の出力を出力値RFaに一旦設定した後、S52にて高周波電源6の出力を単調増加させている。しかしこれに限らず、S51において単調増加を開始させても構わない。
また、図6を用いて説明した実施形態1の処理において、実施形態3の処理(高周波電源6の出力を単調増加させる処理)を実行することも可能である。この場合、図6に示すS29の処理(高周波電源6の出力をオン)を、図10のS51の処理(出力値RFaで高周波電源6の出力を開始)に変更すればよい。また、図6に示すS30の処理(ターゲットバイアス電源10の出力をオン)及びS31の処理(異常放電の発生監視)の間に、S52の処理(高周波電源6の出力を単調増加)を挿入すればよい。
〔変形例〕
(1)実施形態1~3のスパッタリング装置100は、図2に示すように、複数のターゲット保持部4と、3以上のアンテナ5と、往復走査機構14とを備えている。スパッタリング装置100は、往復走査機構14を動作させることで、複数のアンテナ5の配列方向Xに沿って、基板保持部3に保持された基板Wが各ターゲット保持部4に対向するように走査させながら、基板Wへの成膜処理を行う。
しかしながら、往復走査機構14による基板Wの走査は必ずしも行われる必要は無い。つまり、スパッタリング装置は、往復走査機構14を備えている必要は必ずしも無い。この場合、スパッタリング装置は、基板保持部3に対向する1つのターゲット保持部4を備え、ターゲット保持部4を平面視したときに、ターゲット保持部4の両側に2つのアンテナ5を備える構成であればよい。
(2)異常放電検出部155は、ターゲットバイアス電圧を検出することにより、異常放電を検出しているが、これに限らず、ターゲット保持部4に供給される電流の変化を検出することにより、異常放電を検出しても構わない。
(3)制御部15が制御対象とするプラズマ処理装置として、スパッタリング装置100を例に挙げて説明した。しかしこれに限らず、制御部15が制御対象とするプラズマ処理装置は、真空容器に高周波電力を供給することによりプラズマを発生させる高周波電源と、バイアス電圧を供給するバイアス電源と、を備えるものであればよい。このようなプラズマ処理装置としては、スパッタリング装置の他、例えばRIE(Reactive Ion Etching)装置、又はCVD(Chemical Vapor Deposition)装置が挙げられる。
プラズマ処理装置がスパッタリング装置(100)である場合、上述したように、バイアス電源(ターゲットバイアス電源10)は、基板(W)に成膜させる成膜材料(ターゲットT)に、バイアス電圧(ターゲットバイアス電圧)を供給する。一方、プラズマ処理装置がRIE装置又はCVD装置である場合、成膜処理の対象となる基板に対して、バイアス電圧を供給する。つまり、プラズマ処理装置におけるバイアス電源は、基板、又は基板に成膜させる成膜材料に、バイアス電圧を供給するものといえる。
〔ソフトウェアによる実現例〕
制御部15の制御ブロック(特に、処理監視部151、圧力制御部152、圧力監視部153、電力制御部154、異常放電検出部155、時間算出部156、及び表示制御部157)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
後者の場合、制御部15は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。