JP7303443B2 - 固体高分子形燃料電池用合金触媒及びその製造方法 - Google Patents

固体高分子形燃料電池用合金触媒及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、固体高分子形燃料電池用合金触媒及びその製造方法に関する。
燃料電池の一種として、固体高分子形燃料電池が知られている。固体高分子形燃料電池は、固体高分子電解質膜の両面に配置される一対の触媒層と、各触媒層の外側に配置されるガス拡散層と、各ガス拡散層の外側に配置されるセパレータとを備える。一対の触媒層のうち、一方の触媒層は固体高分子形燃料電池のアノードとなり、他方の触媒層は固体高分子形燃料電池のカソードとなる。なお、通常の固体高分子形燃料電池では、所望の出力を得るために、上記構成要素を有する単位セルが複数個スタックされている。
触媒層に使用される触媒としては、触媒粒子である白金を触媒担体に担持させた触媒が広く使用されている。しかし、固体高分子形燃料電池にはさらなる低コスト化、高性能化が求められており、このような観点から、触媒粒子として複合金属粒子を使用した合金触媒が着目されている。複合金属粒子は、白金等の貴金属元素に遷移金属元素が合金化した粒子である。なお、本明細書において、「合金触媒」等の「触媒」は、触媒担体に触媒能を有する触媒粒子を担持させたものを指し、「触媒粒子」は、触媒担体に担持された個々の粒子、すなわち触媒能を有する粒子を指すものとする。
このような合金触媒は、初期活性が高いものの、耐久性が低いという問題を有している。合金触媒の耐久性を高める方法としては、例えば特許文献1~3及び非特許文献1に開示されているリーチングが知られている。リーチングは、概略的には、合金触媒を酸性水溶液に接触させる処理である。合金触媒を酸性水溶液に接触させる際に、酸性水溶液が加熱される場合もある。
合金触媒の耐久性を低くする要因の一つとして、複合金属粒子の表面に露出した遷移金属元素が固体高分子形燃料電池の使用中に固体高分子電解質膜に溶出することが挙げられる。リーチングの目的は、複合金属粒子の表面から遷移金属元素を酸性水溶液中に溶出させることである。複合金属粒子の表面から遷移金属元素を酸性水溶液中に溶出させることができれば、複合触媒粒子の表面にほぼ貴金属元素のみで構成されるスキン層を形成することができる。このようなスキン層によってスキン層より内側の遷移金属元素が固体高分子形燃料電池の使用中に溶出しにくくなる。したがって、合金触媒の耐久性が向上することが期待される。
特開2010-027364号公報 特開2016-054065号公報 特開2001-052718号公報
ACS Sustainable Chem. Eng. 2017, 5, 9809-9817
しかし、本発明者が従来のリーチングについて検討したところ、従来のリーチングでは耐久性を高めることができないのみならず、初期活性がかえって低下する場合があることが判明した。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、合金触媒が本来的に有している高い初期活性を維持しつつ、合金触媒の耐久性を高めることが可能な、新規かつ改良された合金触媒及びその製造方法を提供することにある。
本発明者は、従来のリーチングによって合金触媒の初期活性が低下する原因及び耐久性が改善されない原因を検討した。この結果、本発明者は、従来のリーチングの強度(酸濃度、加熱温度、または酸性水溶液との接触時間)が強すぎて(例えば、酸濃度が高すぎる、加熱温度が高すぎる、酸性水溶液との接触時間が長すぎる等)、複合触媒粒子の表面のみならず内部からも遷移金属元素を溶出させてしまうのではないかと考えた。すなわち、従来のリーチングでは、多量の遷移金属元素を溶出させてしまう結果、リーチング後の複合金属粒子の組成が仕込みの組成(当初狙っていた組成)から大きくずれてしまう(所謂「組成ずれ」)。この結果、合金触媒の初期活性が低下すると考えられる。また、リーチングによって複合金属粒子の表面に激しい凹凸が形成され、このような凹凸によって複合金属粒子の奥に存在する遷移金属元素が表面に露出すると考えられる。このような遷移金属元素は、固体高分子形燃料電池の使用中に固体高分子電解質膜に溶出する。このため、耐久性が改善しないと考えられる。
そこで、本発明者は、リーチングの強度を弱めて(すなわち、酸濃度を低く、加熱温度を低く、あるいは酸性水溶液との接触時間を短くして)合金触媒をリーチングした。この結果、合金触媒の初期活性は維持できるものの、耐久性が改善しなかった。リーチングの強度が弱い場合、複合触媒粒子の表面から遷移金属元素が十分に溶出しなかったために、耐久性が改善しなかったと考えられる。
そこで、本発明者は、複合金属粒子の組成ずれを抑制しつつ、合金触媒の耐久性を高めることが可能なリーチングの条件について検討した。ところで、上述したように、リーチングの目的は、複合金属粒子の表面にスキン層を形成することである。このようなスキン層によってスキン層より内側の遷移金属元素が固体高分子形燃料電池の使用中に溶出しにくくなる。したがって、合金触媒の耐久性が向上する。ただし、複合金属粒子の表面に(すなわちスキン層に)遷移金属元素が残留していると合金触媒の耐久性が低下する。したがって、スキン層に占める貴金属元素の存在割合(概念的には、複合金属粒子の表面に存在する総原子数に対する貴金属元素の原子数の割合。すなわち貴金属元素による被覆率)が大きいほど、スキン層が強固であり、合金触媒の耐久性が向上すると言える。したがって、リーチングの条件を検討するにあたっては、スキン層に占める貴金属元素の存在割合を定量的に評価する評価方法を確立しておく必要がある。
従来では、複合金属粒子の観測には、SEM-EDS(走査型電子顕微鏡-エネルギー分散形X線分析装置)等の電子顕微鏡またはXPS(X線光電子分光法)等が用いられていた。しかし、SEM-EDS等の電子顕微鏡では局所情報しか得られない。つまり、着目している複合金属粒子しか観測できない。したがって、ある一定数(N数)の複合金属粒子を観測する必要があるが、複数の複合金属粒子の観察は非常に手間がかかる。また、そもそもSEM-EDS等の電子顕微鏡では、スキン層が形成される領域を選択的に観測できるわけではなく、さらに定量的な評価もできない。また、XPSの分析深さは数nm程度であるが、複合金属粒子の粒子径も概ね数nmである。したがって、XPSでは複合金属粒子の全体を観測することになり、スキン層が形成される領域を選択的に観測することができない。
したがって、従来の観測方法では、スキン層に占める貴金属元素の存在割合を定量的に評価することができなかった。そこで、本発明者は、まず、スキン層に占める貴金属元素の存在割合を定量的に評価する方法について鋭意検討した。
具体的には、本発明者は、昇温脱離法に着目した。リーチング前の複合金属粒子の表面には貴金属元素及び遷移金属元素が存在する。リーチングを行うことで、複合金属粒子の表面における貴金属元素の存在割合が増加する。ここで、複合金属粒子の表面の貴金属元素には、通常の昇温脱離法で使用される温度域(室温から数百℃程度)では酸素分子が吸着しない。しかし、ごく低温(85K程度)であれば酸素分子が物理吸着する。一方、複合金属粒子の表面の遷移金属元素は酸化物として存在するので、酸素分子は遷移金属元素には吸着しない。また、遷移金属元素に化学結合した酸素原子が遷移金属元素の周囲に存在する貴金属元素への酸素分子の吸着を妨害すると考えられる。これらのことから、本発明者は、85Kで複合金属粒子の表面に吸着させた酸素分子を昇温によって脱離させ、この時の酸素分子の脱離量を評価すれば、スキン層に占める貴金属元素の存在割合を定量的に評価することができるのではないかと考えた。以下、このような評価方法を「低温酸素TPD測定法」とも称する。
つまり、スキン層に占める貴金属元素の存在割合が大きいほど多くの酸素分子が複合金属粒子の表面に物理吸着する。複合金属粒子の表面に物理吸着した酸素分子は昇温に伴って脱離するので、スキン層に占める貴金属元素の存在割合が大きいほど、酸素分子の脱離量が多くなる。また、低温酸素TPD測定法によれば、測定対象のすべての複合金属粒子を評価することができる。
つぎに、本発明者は、複合金属粒子の組成ずれを抑制しつつ、合金触媒の耐久性を高めることが可能なリーチング条件について検討した。単にリーチング強度を強くしただけでは、複合金属粒子の組成ずれが生じ、合金触媒の初期活性が低下する。さらに、複合金属粒子の表面に激しい凹凸が形成され、この凹凸によって複合金属粒子の奥に存在する遷移金属元素が表面に露出する。したがって、耐久性が改善されない。一方で、リーチング強度が弱い場合、スキン層に占める貴金属元素の存在割合が十分に高まらず、耐久性が改善されない。
このため、本発明者は、従来では行わないような弱いリーチング強度で複数回リーチングを行うことを検討した。さらに、本発明者は、単に複数回リーチングを行うだけでなく、リーチング回数の増加に伴ってリーチング強度を段階的に弱めることとした。そして、作製された合金触媒を上述した低温酸素TPD測定法で評価したところ、ある特定のリーチング条件下で作製された合金触媒の酸素分子の脱離量が飛躍的に上昇することを見出した。具体的には、酸素分子の脱離量の積算値が複合金属粒子の表面に露出した貴金属部分の表面積1m当たり1.0×10-6mol以上となった。そして、このような脱離量が得られる合金触媒の耐久性を評価したところ、合金触媒が十分な耐久性を有することが判明した。これは、スキン層に占める貴金属元素の存在割合が非常に大きくなったことを示している。したがって、酸素分子の脱離量の積算値によってスキン層に占める貴金属元素の存在割合を定量的に評価できることが確認できた。さらに、本発明者は、この製造方法で作製された合金触媒の初期活性も問題ないことを確認できた。したがって、組成ずれも抑制できていることが確認できた。
なお、本発明者が従来のリーチング方法で作製された合金触媒を低温酸素TPD測定法で評価したところ、いずれも酸素分子の脱離量が不足した。まず、リーチング強度が弱い場合、複合金属粒子の表面に多くの遷移金属元素が残留するため、酸素分子の脱離量が少なくなる。したがって、リーチング強度を高めていけば、いずれ複合金属粒子の表面に遷移金属元素が存在しなくなり、酸素分子の脱離量が多くなると考えられる。しかし、リーチング強度を単に高めただけでは、酸素分子の脱離量の積算値が上述した値(複合金属粒子の表面に露出した貴金属部分の表面積1m当たり1.0×10-6mol以上)に到達しなかった。リーチング強度を高めた場合、複合金属粒子の表面は酸性水溶液で浸食されて激しい凹凸が形成される。このため、複合金属粒子の奥に存在する遷移金属元素にも酸素分子が到達可能となり、このような遷移金属元素には酸素分子が吸着しない。したがって、酸素分子の脱離量が少なくなると考えられる。また、このような遷移金属元素は燃料電池の使用中に容易に溶出する。さらに、複合金属粒子の表面に激しい凹凸が形成された結果、複合金属粒子の表面の貴金属元素が整列していない。これらの理由により、合金触媒の耐久性が悪くなる。このような問題を解決するために複合金属粒子をアニールして複合金属粒子の表面を平滑化することも考えられる。しかし、激しい凹凸を平滑化するために強いアニール(高温でのアニール)を行った場合、複合金属粒子の奥に存在する遷移金属元素が表面に移動し、露出する。このため、リーチングの効果が相殺され、やはり酸素分子の脱離量が少なくなる。アニール強度が不足した場合、表面の凹凸が十分に平滑化されず、やはり酸素分子の脱離量が少なくなる。
なお、リーチング強度を高めた場合、組成ずれの問題も生じる。この問題を解決する手法として、予め遷移金属元素を複合金属粒子に多めに仕込んでおくことが考えられる。しかし、リーチング強度が高い場合、リーチングによってどの程度遷移金属元素が溶出するか予測することは非常に困難である。このため、どの程度遷移金属元素を仕込んでおくべきかを判断することは非常に困難である。また、仮にリーチング後の組成が狙いの組成にたまたま一致したとしても、上述した問題(表面に激しい凹凸が形成されることにより耐久性が低下する等の問題)は依然として残る。
以上の結果から、本発明者は以下の知見を得た。すなわち、低温酸素TPD測定法によってスキン層に占める貴金属元素の存在割合を定量的に評価することができる。さらに、従来では行わないような弱いリーチング強度で複数回リーチングを行うとともに、リーチング回数の増加に伴ってリーチング強度を段階的に弱めることによって、耐久性及び初期活性に優れた合金触媒を作製することができる。本発明は、これらの知見によってなされたものである。
すなわち、本発明のある観点によれば、貴金属元素及び遷移金属元素を含む複合金属粒子と、複合金属粒子を担持する触媒担体と、を備え、貴金属元素は、Pt、Au、及びPdからなる群から選択される何れか1種以上であり、遷移金属元素は、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、及びNiからなる群から選択される何れか1種類以上であり、複合金属粒子は、貴金属元素及び遷移金属元素を貴金属元素:遷移金属元素=1:0.2以上1:1以下のモル比で含み、複合金属粒子をX線回折分析した場合に、2θ=37°以上42°以下で回折ピークが観測され、当該回折ピークに基づいて算出される格子定数と、以下の式(1)とに基づいて算出される合金化率が60%以上100%以下であり、
合金化率[%]={(バルク貴金属の格子定数)-(複合金属粒子の格子定数)}/{(バルク貴金属の格子定数)-(バルク複合金属の最大ピークの格子定数)}×100 (1)
回折ピークに基づいて算出される複合金属粒子の結晶子径が2~8nmであり、85Kで複合金属粒子に吸着させた酸素分子を昇温脱離させる昇温脱離法を行った場合に、酸素分子に相当するm/z=32の昇温脱離曲線が130K以上190K以下の範囲に脱離ピークトップを有し、脱離ピークの面積に基づいて算出される酸素分子の脱離量の積算値が、複合金属粒子の表面に露出した貴金属部分の表面積1m当たり1.0×10-6mol以上であることを特徴とする、固体高分子形燃料電池用合金触媒が提供される。
ここで、酸素分子の脱離量の積算値が、貴金属元素の表面積1m当たり3.0×10-6mol以上であってもよい。
また、85Kで複合金属粒子に吸着させた酸素分子を昇温脱離させる昇温脱離法を行った場合に、二酸化炭素分子に相当するm/z=44の昇温脱離曲線が300K以上900K以下の範囲に脱離ピークトップを有し、脱離ピークの面積に基づいて算出される二酸化炭素分子の脱離量の積算値が、複合金属粒子の表面に露出した貴金属部分の表面積1m当たり3.0×10-7mol以下であってもよい。
また、二酸化炭素分子の脱離量の積算値が、複合金属粒子の表面に露出した貴金属部分の表面積1m当たり2.5×10-7mol以下であってもよい。
また、貴金属元素はPtであり、遷移金属元素は、Fe、Co、及びNiからなる群から選択される何れか1種類以上であってもよい。
本発明の他の観点によれば、上記の固体高分子形燃料電池用合金触媒の製造方法であって、以下の第0工程~第10工程を含むことを特徴とする、固体高分子形燃料電池用合金触媒の製造方法が提供される。
(第0工程)
貴金属元素及び遷移金属元素を含む未処理複合金属粒子と、未処理複合金属粒子を担持する触媒担体と、を備える未処理合金触媒を準備する。
ここで、貴金属元素は、Pt、Au、及びPdからなる群から選択される何れか1種以上であり、遷移金属元素は、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、及びNiからなる群から選択される何れか1種類以上である。
(第1工程)
未処理合金触媒を、アルゴン、窒素、及びヘリウムからなる群から選択される何れか1種以上で構成される不活性ガスと、不活性ガスの流量に対して50体積%以下の水素ガスとを含む雰囲気中、500℃以上900℃以下の温度で、10分以上60分以下の時間熱処理する。
(第2工程)
第1工程により得られた合金触媒を、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、及び過塩素酸からなる群から選択される何れか1種以上の酸を1.0×10-3mol/L以上5.0×10-3mol/L以下の濃度で含む酸性水溶液に、30℃以上90℃以下の温度で、30分以上100分以下の時間接触させる。
(第3工程)
第2工程により得られた合金触媒を洗浄した後、乾燥させる。
(第4工程)
第3工程により得られた合金触媒を、アルゴン、窒素、及びヘリウムからなる群から選択される何れか1種以上で構成される不活性ガスと、不活性ガスの流量に対して10体積%以下の水素ガスとを含む雰囲気中、250℃以上550℃以下の温度で、10分以上60分以下の時間熱処理する。
(第5工程)
第4工程により得られた合金触媒を、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、及び過塩素酸からなる群から選択される何れか1種以上の酸を1.0×10-4mol/L以上5.0×10-4mol/L以下の濃度で含む酸性水溶液に、30℃以上70℃以下の温度で、10分以上60分以下の時間接触させる。
(第6工程)
第5工程により得られた合金触媒を洗浄した後、乾燥させる。
(第7工程)
第6工程により得られた合金触媒を、アルゴン、窒素、及びヘリウムからなる群から選択される何れか1種以上で構成される不活性ガスと、不活性ガスの流量に対して5体積%以下の水素ガスとを含む雰囲気中、200℃以上500℃以下の温度で、10分以上60分以下の時間熱処理する。
(第8工程)
第7工程により得られた合金触媒を、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、及び過塩素酸からなる群から選択される何れか1種以上の酸を1.0×10-5mol/L以上5.0×10-5mol/L以下の濃度で含む酸性水溶液に、30℃以上60℃以下の温度で、5分以上30分以下の時間接触させる。
(第9工程)
第8工程により得られた合金触媒を洗浄した後、乾燥させる。
(第10工程)
第9工程により得られた合金触媒を、アルゴン、窒素、及びヘリウムからなる群から選択される何れか1種以上で構成される不活性ガス雰囲気中、200℃以上450℃以下の温度で、5分以上30分以下の時間熱処理する。
以上説明した通り、本発明によれば、合金触媒が本来的に有している高い初期活性を維持しつつ、合金触媒の耐久性を高めることが可能となる。
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
<1.低温酸素TPD測定法について>
本実施形態では、低温酸素TPD測定法を行うことで、複合金属粒子の表面に形成されたスキン層を定量的に評価する。以下、低温酸素TPD測定法の具体的な手順の一例を説明する。もちろん、本実施形態に係る低温酸素TPD測定法は以下の手順に限定されない。
本実施形態に係る低温酸素TPD測定法は、例えばターボ分子ポンプで排気された四重極質量分析器と、油拡散ポンプを備えた試料管ガス導入系を持つ真空装置とを用いて行うことができる。試料温度は石英ガラス製の試料管に取り付けた熱電対温度計によって測定される。
まず、所定量(例えば0.05g程度)の合金触媒の試料を試料管に入れ、前処理として500℃の水素還元を5分間行い、同温度で排気する。水素還元は複数回(例えば2回程度)行うことが好ましい。ついで、試料を液体窒素で85K(-185℃)まで冷却する。その後、試料管内に酸素を1kPa導入して15分間静置する。この工程により、試料に酸素分子を吸着させる。
ついで、試料管を排気する。その後、試料管を四重極分析装置に接続する。試料管内の酸素分圧が下がるまで20分間静置した後、試料管内の試料を例えば10K/minの昇温速度で昇温する。この際、四重極質量分析装置でm/z=32、好ましくはさらにm/z=44の信号をそれぞれ記録する。ここで、m/z=32の信号は酸素分子に、m/z=44の信号は二酸化炭素分子に相当する。各信号は規定量の酸素、二酸化炭素に対してキャリブレーションする。ついで、横軸を温度、縦軸をmol/(s・g)としたxy平面に測定値をプロットすることで、酸素分子に相当するm/z=32のTPDスペクトル(昇温脱離曲線)、好ましくはさらに二酸化炭素分子に相当するm/z=44のTPDスペクトルを得る。C元素を含む触媒担体、例えば多孔質炭素材料を使用した場合に、m/z=44のTPDスペクトルが得られる場合がある。m/z=32のTPDスペクトルは、130K以上190K以下の範囲に脱離ピークトップを有する。m/z=44のTPDスペクトルは、300K以上900K以下の範囲に脱離ピークトップを有する場合がある。なお、m/z=44のTPDスペクトルを取得することで、合金触媒の耐久性をより正確に評価することができる。詳細は後述する。
ついで、各TPDスペクトルから脱離ピークを分離し、脱離ピークの面積を算出する。脱離ピークの分離は、例えば、OriginPro 2018(ライトストーン社製)のピークフィット機能を用いて行うことができる。TPDスペクトルの横軸は温度であるが、昇温速度(例えば10K/min)に基づいて横軸を時間に換算する。具体的には、脱離ピークの横軸の値を昇温速度で除することで横軸の値を時間に換算する。さらに、横軸の時間の単位を縦軸の時間の単位(上記の例ではs、すなわち秒)に合わせる。このような換算を行った後に、脱離ピークの面積を算出する。脱離ピークの面積の単位はmol/(s・g)×s=mol/gとなる。これにより、単位がmol/gである脱離ピークの面積を算出する。脱離ピークの面積は、試料1g当たりの酸素分子または二酸化炭素分子の脱離量の積算値を意味する。
上述したように、酸素分子の脱離量の積算値は、スキン層に占める貴金属元素の存在割合を定量的に評価する指標となる。二酸化炭素分子の脱離量の積算値も同様に、スキン層に占める貴金属元素の存在割合を定量的に評価する指標となる。後述する実施例で示される通り、酸素分子の脱離量の積算値が大きくなる程(すなわち、スキン層に占める貴金属元素の存在割合が大きくなる程)、二酸化炭素分子の脱離量の積算値は減少する傾向にある。したがって、二酸化炭素分子の脱離量の積算値が小さいほど、スキン層に占める貴金属元素の存在割合が大きいと言える。この原因は明らかではないが、本発明者は、二酸化炭素分子が複合金属粒子の表面に存在する遷移金属元素の酸化物に由来するものであると考えている。つまり、触媒担体中のC元素が遷移金属元素に化学結合した酸素と何らかの原因で結合し、二酸化炭素分子となって合金触媒から脱離すると考えられる。スキン層に占める貴金属元素の存在割合が大きいほど、複合金属粒子の表面(すなわちスキン層)に存在する遷移金属元素が少なくなるので、二酸化炭素分子の脱離量の積算値も小さくなる。
ただし、試料1g当たりの酸素分子または二酸化炭素分子の脱離量の積算値は、スキン層に占める貴金属元素の存在割合を正確に反映していない場合がある。低温酸素TPD測定法の測定対象は合金触媒であり、複合金属粒子の他触媒担体を構成要素として含む。また、詳細は後述するが、リーチングの対象となる合金触媒の製造方法は特に問われない。したがって、合金触媒における複合金属粒子の担持率(合金触媒の総質量に対する複合金属粒子の質量%)が合金触媒毎に変動しうる。この場合、スキン層に占める貴金属元素の存在割合が同程度であっても担持率によっては脱離ピークの面積が変動する可能性がある。
そこで、試料1g当たりの酸素分子または二酸化炭素分子の脱離量の積算値を、複合金属粒子の表面に露出した貴金属部分の表面積(以下、単に「貴金属部分の表面積」とも称する)1m当たりの値に換算する。具体的には、試料1g当たりの貴金属部分の表面積(m/g)をCOパルスインジェクション化学吸着量測定法により求める。ここで、COパルスインジェクション化学吸着量測定は、例えば金属分散度測定装置(BEL-METAL-3、マイクロトラック・ベル社製)を用いて行うことができる。具体的には、所定量(例えば0.05g)の試料を試料管に入れる。ついで、前処理として、Heガス流通下で試料を500℃まで昇温し、5分間保持する。ついで、Heガスを水素ガスに切り替え、水素ガスの流通下で試料を500℃で10分間保持する。ついで、水素ガスをArガスに切り替え、Arガスの流通下で試料を40℃まで冷却する。ついで、この温度を維持しながら、CO吸着が見られなくなるまで試料管内に1分毎に10体積%COガスパルスを注入する。ついで、試料のCO吸着量を算出する。得られたCOガスの吸着量と、以下の式(2)に基づいて、試料1g当たりの貴金属部分の表面積(m/g)を算出する。なお、式(2)においてNAはアボガドロ定数である。
貴金属部分の表面積[m/g]=(CO吸着量[L]×NA×COの分子占有面積[m/1分子])/(22.4「L/mol」×試料質量[g]) (2)
ついで、試料1g当たりの酸素分子または二酸化炭素分子の脱離量の積算値を試料1g当たりの貴金属部分の表面積(m/g)で除することで、貴金属部分の表面積1m当たりの酸素分子または二酸化炭素分子の脱離量の積算値を求める。上述したように、貴金属部分の表面積1m当たりの酸素分子の脱離量の積算値は、スキン層に占める貴金属元素の存在割合を定量的に評価するための指標となる。すなわち、スキン層に占める貴金属元素の存在割合が大きいほど(言い換えれば、複合金属粒子の全表面積に占める貴金属部分の表面積が広いほど)、多くの酸素分子が複合金属粒子の表面に物理吸着する。詳細は後述するが、本実施形態では、貴金属部分の表面積1m当たりの酸素分子の脱離量の積算値が1.0×10-6mol以上となる場合に、スキン層が強固に形成された、すなわち合金触媒の耐久性が十分に高いと判断される。貴金属部分の表面積1m当たりの二酸化炭素分子の脱離量の積算値も、スキン層に占める貴金属元素の存在割合を定量的に評価するための指標となる。すなわち、スキン層に占める貴金属元素の存在割合が大きいほど、二酸化炭素分子の脱離量の積算値が小さくなる。
<2.合金触媒の構成>
つぎに、合金触媒の構成について説明する。本実施形態に係る合金触媒は、貴金属元素及び遷移金属元素を含む多数の複合金属粒子と、これらの複合金属粒子を担持する触媒担体と、を備える。触媒担体は多孔質体となっており、触媒担体の表面(内部の気孔部分の壁面含む)に複合金属粒子が分散して担持されている。
(2-1.複合金属粒子)
複合金属粒子は、貴金属元素及び遷移金属元素を含む。貴金属元素は、Pt、Au、及びPdからなる群から選択される何れか1種以上である。これにより、合金触媒の初期活性が向上する。貴金属元素は、好ましくはPtである。この場合、固体高分子形燃料電池の初期活性が特に向上しうる。遷移金属元素は、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、及びNiからなる群から選択される何れか1種類以上である。これにより、合金触媒の初期活性が向上する。遷移金属元素は、好ましくはFe、Co、及びNiからなる群から選択される何れか1種類以上である。この場合、合金触媒の初期活性が特に向上しうる。
さらに、複合金属粒子は、貴金属元素及び遷移金属元素を貴金属元素:遷移金属元素=1:0.2以上1:1以下のモル比で含む。より具体的には、複合金属粒子は、貴金属元素1mol当たり遷移金属元素を0.2mol以上1.0mol以下の比率で含む。これにより、合金触媒の初期活性が向上する。なお、詳細は後述するが、本実施形態に係る合金触媒の製造方法によれば、複合金属粒子の組成ずれを抑制することができ、ひいては、複合金属粒子の組成を上記範囲内の値とすることができる。ここで、貴金属元素及び遷移金属元素のモル比は、例えば誘導結合プラズマ発光分光分析法により求められる。具体的には、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES: Inductively Coupled Plasma - Atomic Emission Spectrometry)により合金触媒における貴金属元素の担持率(合金触媒の総質量に対する貴金属元素の質量%)及び遷移金属元素の担持率(合金触媒の総質量に対する遷移金属元素の質量%)を求める。そして、貴金属元素及び遷移金属元素それぞれの担持率に基づいて、貴金属元素及び遷移金属元素のモル比を求める。なお、誘導結合プラズマ発光分光分析法による測定は例えば島津製作所社製ICPE-9800により行うことができる。
さらに、複合金属粒子をX線回折分析した場合に、2θ=37°以上42°以下で回折ピークが観測され、当該回折ピークに基づいて算出される格子定数と、以下の式(1)とに基づいて算出される合金化率が60%以上100%以下である。つまり、貴金属元素及び遷移金属元素は高い合金化率で合金化されている。合金化率は、概念的には複合金属粒子内の遷移金属元素の固溶度合いを示す値であり、合金化率が高いほど遷移金属元素と貴金属元素が複合金属粒子内で均一に固溶している。貴金属元素及び遷移金属元素が合金化されることで、貴金属元素のみからなる触媒粒子に比べて原子間距離が変動し、初期活性が向上する。特に、合金化率を60%以上100%以下の範囲内の値とすることで、遷移金属元素の偏析が抑制され、初期活性がより向上する。合金化率が低い、すなわち複合金属粒子内に遷移金属元素が偏析している場合、リーチングによって多量の遷移金属元素が溶出し、複合金属粒子が組成ずれを起こしている可能性がある。このために初期活性が低下する。
合金化率[%]={(バルク貴金属の格子定数)-(複合金属粒子の格子定数)}/{(バルク貴金属の格子定数)-(バルク複合金属の最大ピークの格子定数)}×100
(1)
式(1)において、複合金属粒子の格子定数は、X線回折分析により求められた値である。バルク貴金属の格子定数は、貴金属元素の標準試料をX線回折分析することで得られた格子定数であり、データベース(例えば、国際回折データセンター(International Centre for Diffraction Date; ICDDが配布するデータベース)に登録されている。なお、複合金属粒子に貴金属元素が複数種類含まれている場合、バルク貴金属の格子定数は、複合金属粒子中の物質量が最も多い貴金属元素の格子定数を用いることができる。バルク複合金属の最大ピークの格子定数は、複合金属粒子と同一組成の標準試料をX線回折分析することで得られた格子定数であり、データベース(例えば、国際回折データセンター(International Centre for Diffraction Date; ICDDが配布するデータベース)に登録されている。後述する実施例では、国際回折データセンターが配布するデータベースに基づいて、合金化率を算出した。
さらに、当該回折ピークに基づいて算出される複合金属粒子の結晶子径が2~8nmである。ここでの結晶子径は所謂平均結晶子径である。結晶子径をこの範囲内の値とすることで、初期活性が向上する。例えば、結晶子径が8nmを超える場合、全複合金属粒子の表面積の総和が小さくなる。これは固体高分子形燃料電池を作動させた際の反応場が狭くなることを意味する。したがって、初期活性が小さくなる。結晶子径が2nm未満となる場合、複合金属粒子の表面積の総和は大きいものの、結晶子径が小さく、燃料電池環境下でオストワルド成長による凝集が起こりやすくなる。したがって、結晶子径が2nm未満では複合金属粒子が速やかに凝集してしまうため、初期活性が速やかに低下し、耐久性が低くなる。なお、ここでの結晶子径は、複合金属粒子の粒子径と考えて問題ない。本実施形態における複合金属粒子の粒子径は数nm程度と小さく、単結晶として存在していると考えられるからである。
さらに、合金触媒に対して低温酸素TPD測定を行った場合に、酸素分子に相当するm/z=32のTPDスペクトル(昇温脱離曲線)が得られる。このTPDスペクトルは、130K以上190K以下の範囲に脱離ピークトップを有する。そして、脱離ピークの面積に基づいて算出される酸素分子の脱離量の積算値は、貴金属部分の表面積1m当たり1.0×10-6mol(mol/m)以上となる。上述したように、貴金属部分の表面積1m当たりの酸素分子の脱離量の積算値は、スキン層に占める貴金属元素の存在割合を定量的に評価するための指標となる。すなわち、スキン層に占める貴金属元素の存在割合が大きいほど(言い換えれば、複合金属粒子の全表面積に占める貴金属部分の表面積が広いほど)、多くの酸素分子が複合金属粒子の表面に物理吸着する。そして、本実施形態に係る合金触媒では、貴金属部分の表面積1m当たりの酸素分子の脱離量の積算値が1.0×10-6mol(mol/m)以上となる。これにより、スキン層が強固に形成され、合金触媒の耐久性が飛躍的に向上する。なお、スキン層にわずかに遷移金属元素が残留している場合も想定されるが、貴金属部分の表面積1m当たりの酸素分子の脱離量の積算値が1.0×10-6mol(mol/m)以上であれば、スキン層に占める貴金属元素の存在割合は十分高く、耐久性も十分高いと判断できる。
ここで、酸素分子の脱離量の積算値は、好ましくは貴金属元素の表面積1m当たり3.0×10-6mol(mol/m)以上である。この場合、合金触媒の耐久性がさらに向上する。上限値は特に制限されないが、複合金属粒子の表面がすべて貴金属元素で覆われていると仮定した場合に測定される酸素分子の脱離量の積算値が実質的な上限値となりうる。
また、合金触媒に対して低温酸素TPD測定を行った場合に、二酸化炭素に相当するm/z=44のTPDスペクトルをさらに得ることが好ましい。このTPDスペクトルは、300K以上900K以下の範囲に脱離ピークトップを有する場合がある。そして、脱離ピークの面積に基づいて算出される二酸化炭素分子の脱離量の積算値は、好ましくは貴金属部分の表面積1m当たり3.0×10-7mol(mol/m)以下である。上述したように、二酸化炭素分子の脱離量の積算値もスキン層に占める貴金属元素の存在割合を定量的に評価するための指標となる。すなわち、スキン層に占める貴金属元素の存在割合が大きいほど、二酸化炭素分子の脱離量の積算値が小さくなる。本実施形態に係る合金触媒では、貴金属部分の表面積1m当たりの二酸化炭素分子の脱離量の積算値が3.0×10-7mol(mol/m)以下となることが好ましい。この場合、スキン層に占める貴金属元素の存在割合が十分高くなり、合金触媒の耐久性が向上する。貴金属部分の表面積1m当たりの二酸化炭素分子の脱離量の積算値は、より好ましくは、2.5×10-7mol(mol/m)以下である。この場合、合金触媒の耐久性がさらに向上する。二酸化炭素分子の脱離量の積算値の下限値は特に制限されず、0mol/mであってもよい。
(2-2.触媒担体)
触媒担体の種類は特に問われず、固体高分子形燃料電池の触媒担体として使用可能な多孔質材料であれば特に制限されない。触媒担体の例としては、多孔質炭素材料(例えば活性炭等)、シリカ、シリカアルミナ、シリカカルシア、モレキュラーシーブ、アルミナ、ゼオライト、チタニア、粘土、珪藻土、及び炭化ケイ素等が挙げられる。上述した中でも、多孔質材料としては、細孔容量が比較的大きく、入手、取り扱いが容易な点で、多孔質炭素材料、シリカ、モレキュラーシーブ、アルミナ、ゼオライト、及びチタニア等が好ましい。触媒担体としてC元素を含む担体、例えば多孔質炭素材料を使用した場合に、二酸化炭素分子に相当するm/z=44のTPDスペクトルを取得できる場合がある。
以上述べたように、本実施形態に係る合金触媒によれば、スキン層に占める貴金属元素の存在割合を高めることができるので、複合金属粒子の表面に強固なスキン層を形成することができる。これにより、合金触媒の耐久性が向上する。さらに、本実施形態に係る合金触媒は、複合金属粒子の組成ずれを抑制することができるので、初期活性も向上する。
<3.合金触媒の製造方法>
つぎに、本実施形態に係る合金触媒の製造方法について説明する。本実施形態に係る合金触媒の製造方法は、概略的には、従来では行わないような弱いリーチング強度で複数回リーチングを行うとともに、リーチング回数の増加に伴ってリーチング強度を段階的に弱める、というものである。具体的には、合金触媒の製造方法は、以下に説明する第0~第10工程を含む。
(3-0.第0工程)
第0工程では、貴金属元素及び遷移金属元素を含む未処理複合金属粒子と、未処理複合金属粒子を担持する触媒担体と、を備える未処理合金触媒を準備する。つまり、第0工程では、リーチングの対象となる未処理合金触媒を準備する。未処理合金触媒は、例えば以下の第1~第3の製造方法の何れかに従って作製してもよい。もちろん、未処理合金触媒の製造方法は以下の例に限定されず、未処理合金触媒を製造できる製造方法であればどのような製造方法であってもよい。あるいは、予め製造された未処理合金触媒を入手してもよい。
(第1の製造方法)
未処理合金触媒の第1の製造方法は、貴金属元素及び遷移金属元素を別々に触媒担体に担持させる方法である。この方法では、まず触媒担体にどちらか一方の金属種を担持させた後、もう一方の金属種をさらに担持させる。ついで、貴金属元素及び遷移金属元素を担持させた触媒担体を熱処理することで、貴金属元素及び遷移金属元素を合金化させる。
第1の製造方法の具体例は以下の通りである。この例では、触媒担体である多孔質炭素材料にPt-Co複合金属粒子を担持させる。まず、水などの溶媒に触媒担体である多孔質炭素材料を分散させ、ここに目的の担持率となる量の白金溶液(例えば、ジニトロジアンミン白金硝酸溶液)と還元剤としてエタノールなどのアルコールを加え、オイルバス中で加熱する。加熱後、得られた混合液から固形分をろ過等により回収し、固形分を洗浄する。ついで、回収した固形分に水などの溶媒を注ぎ、ここに目的の担持率となる量のコバルト溶液(例えば、硝酸コバルト水溶液)を加えて撹拌する。撹拌後、ロータリーエバポレーター等を用いて溶媒を除去し、固形分を乾燥させる。ついで、固形分を還元性ガス雰囲気下で熱処理することにより、目的の未処理合金触媒が得られる。
(第2の製造方法)
未処理合金触媒の第2の製造方法は、貴金属元素及び遷移金属元素を同時に触媒担体に担持させる方法である。この方法法では、触媒担体、貴金属元素化合物及び遷移金属元素化合物を含む溶液に還元剤を加えることで、貴金属元素及び遷移金属元素を同時に還元する。
第2の製造方法の具体例は以下の通りである。この例では、触媒担体である多孔質炭素材料にPt-Co複合金属粒子を担持させる。まず、水などの溶媒に触媒担体である多孔質炭素材料を分散させ、ここに目的の担持率となる量の白金溶液(例えば、ジニトロジアンミン白金硝酸溶液)およびコバルト溶液(例えば、硝酸コバルト水溶液)を加える。このとき、触媒金属粒子の分散性を向上させる目的で、ポリビニルピロリドンのような有機分子を一緒に加えても良い。混合溶液を撹拌後、この混合液に水素化ホウ素ナトリウム等の還元剤を加え、撹拌する。撹拌後、混合液から固形分をろ過等により回収し、固形分を洗浄する。ついで、回収した固形分を乾燥することにより、目的の合金触媒が得られる。Pt-Co複合金属粒子の合金化率を高める目的で、乾燥後の合金触媒に熱処理を行っても良い。
(第3の製造方法)
第3の製造方法は、上述した第1~第2の製造方法の中間的な方法である。この方法では、触媒担体に貴金属元素化合物及び遷移金属元素化合物を含む溶液を含浸乾固させ、凝固物を水素などの還元性ガスを含む雰囲気下で熱処理する。これにより、貴金属元素及び遷移金属元素を同時に還元する。
第3の製造方法の具体例は以下の通りである。この例では、触媒担体である多孔質炭素材料にPt-Co複合金属粒子を担持させる。まず、水などの溶媒に触媒担体である多孔質炭素材料を分散させ、ここに目的の担持率となる量の白金溶液(例えば、ジニトロジアンミン白金硝酸溶液)およびコバルト溶液(例えば、硝酸コバルト水溶液)を加える。混合溶液を撹拌後、ロータリーエバポレーター等を用いて溶媒を除去し、乾燥させた後、還元性ガス雰囲気下で熱処理を行うことにより、目的の合金触媒が得られる。
第0工程で得られた未処理合金触媒にはリーチングを施していない。このため、未処理複合金属粒子の表面には、貴金属元素の他、遷移金属元素も多数存在しうる。これらの遷移金属元素を以下で説明する複数回のリーチングで除去し、その後のアニール処理によって複合金属粒子の表面を平滑化する。また、未処理複合金属粒子の合金化率も十分でない可能性があり、これを以下で説明する第1工程のアニール処理で高めていく。第1工程のアニール処理もリーチング後のアニール処理と同様、未処理複合金属粒子の表面を平滑化することもできる。
(3-1.第1工程)
第1工程では、1回目のアニール処理を行う。具体的には、未処理合金触媒を、アルゴン、窒素、及びヘリウムからなる群から選択される何れか1種以上で構成される不活性ガスと、不活性ガスの流量に対して50体積%以下の水素ガスとを含む雰囲気中、500℃以上900℃以下の温度で、10分以上60分以下の時間熱処理する。水素ガスの濃度の下限値は0体積%であってもよい。ただし、水素ガスは未処理複合金属粒子の合金化率を高めるという作用を有するので、水素ガスを不活性ガスに含めることが好ましい。
後述する2回目以降のアニール処理と対比すると明らかな通り、1回目のアニール処理の強度(水素ガス濃度、雰囲気ガス温度、または熱処理時間)は2回目以降のアニール処理の強度よりも強い。これは、後述するリーチング後のアニール処理の主な目的が、リーチングにより生じた複合金属粒子の表面の凹凸を平滑化することであるのに対し、第1工程のアニール処理の主な目的は、未処理合金触媒の合金化率を高めることだからである。平滑化と比較し、合金化率を高めたい場合、アニール処理の強度をより高める必要がある。ただし、アニール処理により合金化および平滑化はいずれも可能であるため、リーチング後のアニール処理でも合金化率は高められ、第1工程のアニール処理でも平滑化も進行する。第10工程後の複合金属粒子の合金化率が低いままだと、合金触媒の初期活性が低下する。また、複合金属粒子の表面に大きな凹凸が残ったままだと、貴金属元素の表面積1m当たりの酸素分子の脱離量の積算値が本実施形態の条件を満たさず、合金触媒の耐久性が低下する。凹凸によって複合金属粒子の奥に存在する遷移金属元素が露出するからである。
そこで、比較的強度の強い1回目のアニール処理によって未処理複合金属粒子の合金化率を高め、表面の凹凸を平滑化する。1回目のアニール処理の強度が上述した強度よりも弱い場合、すなわち、熱処理温度が500℃未満であり、熱処理時間が10分未満となる場合、第10工程後の複合金属粒子の合金化率、貴金属元素の表面積1m当たりの酸素分子の脱離量の積算値、及び貴金属元素の表面積1m当たりの二酸化炭素分子の脱離量の積算値が本実施形態の条件を満たさず、初期活性及び耐久性が低下する。より具体的に説明すると、1回目のアニール処理後の複合金属粒子の合金化率は非常に低くなっている。したがって、複合金属粒子内に遷移金属元素が偏析している。このため、第2工程以降のリーチングにおいて遷移金属元素の溶出量を制御することが困難となり、第10工程後の複合金属粒子の組成が第0工程で作製された未処理複合金属粒子の組成と大きくずれてしまう(組成ずれ)。なお、結果物である複合金属粒子の組成は本実施形態の条件を満たしている場合もありえるが、いずれにしても、複合金属粒子は非常に不安定な状態となっている。したがって、初期活性が低くなる。また、遷移金属元素が偏析していることから、第2工程以降のリーチングによって複合金属粒子の表面に激しい凹凸が形成される。このような凹凸によって複合金属粒子の奥に存在する遷移金属元素が表面に露出する。さらに、複合金属粒子の表面の貴金属元素が整列していない。このため、貴金属元素の表面積1m当たりの酸素分子の脱離量の積算値、及び貴金属元素の表面積1m当たりの二酸化炭素分子の脱離量の積算値が本実施形態の条件を満たさず、合金触媒の耐久性が低下する。
一方、1回目のアニール処理の強度が上述した強度よりも強い場合、すなわち、水素ガス濃度が50体積%を超え、熱処理温度が900℃を超え、熱処理時間が60分を超える場合、第10工程後の複合金属粒子の結晶子径が大きくなりすぎて、初期活性が低下する。固体高分子形燃料電池を作動させた際の反応場が狭くなるからである。
(3-2.第2工程)
第2工程では、1回目のリーチングを行う。具体的には、第1工程により得られた合金触媒を、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、及び過塩素酸からなる群から選択される何れか1種以上の酸を1.0×10-3mol/L以上5.0×10-3mol/L以下の濃度で含む酸性水溶液に、30℃以上90℃以下の温度で、30分以上100分以下の時間接触させる。
後述する2回目以降のリーチングと対比すると明らかな通り、1回目のリーチングの強度(酸濃度、加熱温度、または酸性水溶液との接触時間)は2回目以降のリーチングの強度よりも強い。ただし、従来のリーチングに比べると強度は弱めとなっている。例えば、従来では、酸濃度は低くても0.01mol/Lであるが(特許文献2)、第2工程の酸濃度は高くても5.0×10-3mol/Lである。第1工程により得られた合金触媒では、複合金属粒子の表面に多くの遷移金属元素が存在する。このため、本製造方法において最も強度の強いリーチングにより、複合金属粒子の表面及び表面から比較的深い位置に存在する遷移金属元素を除去する。
1回目のリーチングの強度が上述した強度よりも弱い場合、すなわち、酸濃度が1.0×10-3mol/L未満となり、加熱温度が30℃未満となり、接触時間が30分未満となる場合、第10工程後の複合金属粒子の表面に多数の遷移金属元素が残留する。このため、貴金属元素の表面積1m当たりの酸素分子の脱離量の積算値が本実施形態の条件を満たさず、合金触媒の耐久性が低下する。1回目のリーチングの強度が上述した強度よりも強い場合、すなわち、酸濃度が5.0×10-3mol/Lを超え、加熱温度が90℃を超え、接触時間が100分を超える場合、第10工程後の複合金属粒子の表面に大きな凹凸が残留する。このため、複合金属粒子の奥に存在する遷移金属元素が表面に露出する。したがって、貴金属元素の表面積1m当たりの酸素分子の脱離量の積算値、及び貴金属元素の表面積1m当たりの二酸化炭素分子の脱離量の積算値が本実施形態の条件を満たさず、合金触媒の耐久性が低下する。また、多量の遷移金属元素がリーチングによって除去される結果、上述した「組成ずれ」が起こり、複合金属粒子の組成が本実施形態の条件を満たさなくなる。このため、合金触媒の初期活性が低下する。また、生成されるスキン層が過剰に厚くなり、スキン層よりも内側の遷移金属元素による効果が得られにくくなる。この点でも合金触媒の初期活性が低下する。
(3-3.第3工程)
第3工程では、第2工程により得られた合金触媒を洗浄した後、乾燥させる。合金触媒の洗浄は例えば水で行うことができるが、本実施形態の効果を損なわない限り他の媒体で洗浄を行ってもよい。
(3-4.第4工程)
第4工程では、2回目のアニール処理を行う。具体的には、第3工程により得られた合金触媒を、アルゴン、窒素、及びヘリウムからなる群から選択される何れか1種以上で構成される不活性ガスと、不活性ガスの流量に対して10体積%以下の水素ガスとを含む雰囲気中、250℃以上550℃以下の温度で、10分以上60分以下の時間熱処理する。水素ガスの濃度の下限値は0体積%であってもよい。ただし、水素ガスは未処理複合金属粒子の合金化率を高めるという作用を有するので、水素ガスを不活性ガスに含めることが好ましい。
2回目のアニール処理により、複合金属粒子の表面を平滑化させる。ただし、上述した1回目のアニール処理と対比すると明らかな通り、2回目のアニール処理の強度は1回目のアニール処理の強度よりも弱い。2回目のアニール処理の対象となる合金触媒では、複合金属粒子の合金化率が1回目のアニール処理の対象となる未処理合金触媒よりも高まっており、複合金属粒子の合金化率を積極的に高める必要がないためである。しかしながら、アニール処理によって生じた複合金属粒子表面の凹凸を平滑化する必要があることから、2回目のアニール処理が必要である。
2回目のアニール処理の強度が上述した強度よりも弱い場合、すなわち、熱処理温度が250℃未満であり、熱処理時間が10分未満となる場合、複合金属粒子の表面の凹凸が十分に平滑化されず、その後のリーチングにより、複合金属粒子の奥に存在する遷移金属元素が表面に露出する。このため、第10工程後の貴金属元素の表面積1m当たりの酸素分子の脱離量の積算値、及び貴金属元素の表面積1m当たりの二酸化炭素分子の脱離量の積算値が本実施形態の条件を満たさず、合金触媒の耐久性が低下する。2回目のアニール処理の強度が上述した強度よりも強い場合(例えば1回目のアニール処理の強度と同程度またはより強い場合)、すなわち、水素ガス濃度が10体積%を超え、熱処理温度が550℃を超え、熱処理時間が60分を超える場合、合金化が必要以上に進み、複合金属粒子の奥に存在する多くの遷移金属元素が過度に表面に移動する。このため、後述する2回目以降のリーチングを行っても複合金属粒子の表面の遷移金属元素を十分に除去できない。したがって、第10工程後の合金触媒において、貴金属元素の表面積1m当たりの酸素分子の脱離量の積算値、及び貴金属元素の表面積1m当たりの二酸化炭素分子の脱離量の積算値が本実施形態の条件を満たさず、合金触媒の耐久性が低下する。なお、2回目のアニール処理の強度が本発明の範囲であれば、複合金属粒子表面の平滑化とともに合金化が進行し、表面およびその近傍に再度遷移金属元素が移動したとしても、後述する2回目以降のリーチングを行うことで表面及びその近傍の遷移金属元素を充分に除去することが可能である。
(3-5.第5工程)
第5工程では、2回目のリーチングを行う。具体的には、第4工程により得られた合金触媒を、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、及び過塩素酸からなる群から選択される何れか1種以上の酸を1.0×10-4mol/L以上5.0×10-4mol/L以下の濃度で含む酸性水溶液に、30℃以上70℃以下の温度で、10分以上60分以下の時間接触させる。
第4工程により、複合金属粒子の表面及びその近傍に遷移金属元素が移動してくる。そこで、2回目のリーチングにより、複合金属粒子の表面及びその近傍に存在する遷移金属元素を除去する。ただし、ただし、上述した1回目のリーチングと対比すると明らかな通り、2回目のリーチングの強度は1回目のリーチングの強度よりも弱い。複合金属粒子の表面及びその近傍に存在する遷移金属元素の原子数は1回目のリーチングの対象となる合金触媒よりも少ないからである。つまり、2回目のリーチングでは、複合金属粒子の表面からの深さがより浅い位置から遷移金属元素を除去する。
2回目のリーチングの強度が上述した強度よりも弱い場合、すなわち、酸濃度が1.0×10-4mol/L未満となり、加熱温度が30℃未満となり、接触時間が10分未満となる場合、第10工程後の複合金属粒子の表面に多数の遷移金属元素が残留する。このため、貴金属元素の表面積1m当たりの酸素分子の脱離量の積算値、及び貴金属元素の表面積1m当たりの二酸化炭素分子の脱離量の積算値が本実施形態の条件を満たさず、合金触媒の耐久性が低下する。2回目のリーチングの強度が上述した強度よりも強い場合(例えば1回目のリーチングの強度と同程度またはより強い場合)、すなわち、酸濃度が5.0×10-4mol/Lを超え、加熱温度が70℃を超え、接触時間が60分を超える場合、第10工程後の複合金属粒子の表面に大きな凹凸が残留する。このため、複合金属粒子の奥に存在する遷移金属元素が表面に露出する。したがって、貴金属元素の表面積1m当たりの酸素分子の脱離量の積算値、及び貴金属元素の表面積1m当たりの二酸化炭素分子の脱離量の積算値が本実施形態の条件を満たさず、合金触媒の耐久性が低下する。また、多量の遷移金属元素がリーチングによって除去される結果、上述した「組成ずれ」が起こり、複合金属粒子の組成が本実施形態の条件を満たさなくなる。このため、合金触媒の初期活性も低下する。また、生成されるスキン層が過剰に厚くなり、スキン層よりも内側の遷移金属元素による効果が得られにくくなる。この点でも合金触媒の初期活性が低下する。
(3-6.第6工程)
第6工程では、第5工程により得られた合金触媒を洗浄した後、乾燥させる。合金触媒の洗浄は例えば水で行うことができるが、本実施形態の効果を損なわない限り他の媒体で洗浄を行ってもよい。
(3-7.第7工程)
第7工程では、3回目のアニール処理を行う。具体的には、第6工程により得られた合金触媒を、アルゴン、窒素、及びヘリウムからなる群から選択される何れか1種以上で構成される不活性ガスと、不活性ガスの流量に対して5体積%以下の水素ガスとを含む雰囲気中、200℃以上500℃以下の温度で、10分以上60分以下の時間熱処理する。水素ガスの濃度の下限値は0体積%であってもよい。ただし、水素ガスは未処理複合金属粒子の合金化率を高めるという作用を有するので、水素ガスを不活性ガスに含めることが好ましい。
3回目のアニール処理により、複合金属粒子の表面を平滑化させる。ただし、上述した2回目のアニール処理と対比すると明らかな通り、3回目のアニール処理の強度は2回目のアニール処理の強度よりも弱い。2回目のリーチング強度は1回目のリーチング強度よりも弱いことから、3回目のアニール処理の対象となる複合金属粒子は、2回目のアニール処理の対象となる複合金属粒子と比較して、遷移金属元素が溶出した量が少なく、複合金属粒子表面の凹凸がより小さい。従って3回目のアニール処理の対象となる複合金属粒子は、2回目のアニール処理の対象となる複合金属粒子よりも複合金属粒子表面の平滑化が進行していることから、より弱いアニール処理強度を行う。
3回目のアニール処理の強度が上述した強度よりも弱い場合、すなわち、熱処理温度が200℃未満であり、熱処理時間が10分未満となる場合、複合金属粒子の表面の凹凸が十分に平滑化されず、その後のリーチングにより、複合金属粒子の奥に存在する遷移金属元素が表面に露出する。このため、第10工程後の貴金属元素の表面積1m当たりの酸素分子の脱離量の積算値、及び貴金属元素の表面積1m当たりの二酸化炭素分子の脱離量の積算値が本実施形態の条件を満たさず、合金触媒の耐久性が低下する。3回目のアニール処理の強度が上述した強度よりも強い場合(例えば2回目のアニール処理の強度と同程度またはより強い場合)、すなわち、水素ガス濃度が5体積%を超え、熱処理温度が500℃を超え、熱処理時間が60分を超える場合、複合金属粒子の奥に存在する多くの遷移金属元素が表面に移動する。このため、後述する3回目のリーチングを行っても複合金属粒子の表面の遷移金属元素を十分に除去できない。したがって、第10工程後の合金触媒において、貴金属元素の表面積1m当たりの酸素分子の脱離量の積算値、及び貴金属元素の表面積1m当たりの二酸化炭素分子の脱離量の積算値が本実施形態の条件を満たさず、合金触媒の耐久性が低下する。
(3-8.第8工程)
第8工程では、3回目のリーチングを行う。具体的には、第7工程により得られた合金触媒を、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、及び過塩素酸からなる群から選択される何れか1種以上の酸を1.0×10-5mol/L以上5.0×10-5mol/L以下の濃度で含む酸性水溶液に、30℃以上60℃以下の温度で、5分以上30分以下の時間接触させる。
第7工程により、複合金属粒子の表面及びその近傍に遷移金属元素が移動してくる。そこで、3回目のリーチングにより、複合金属粒子の表面及びその近傍に存在する遷移金属元素を除去する。ただし、上述した2回目のリーチングと対比すると明らかな通り、3回目のリーチングの強度は2回目のリーチングの強度よりも弱い。複合金属粒子の表面及びその近傍に遷移金属元素の原子数は2回目のリーチングの対象となる合金触媒よりも少ないからである。つまり、3回目のリーチングでは、複合金属粒子の表面からの深さがより浅い位置から遷移金属元素を除去する。
3回目のリーチングの強度が上述した強度よりも弱い場合、すなわち、酸濃度が1.0×10-5mol/L未満となり、加熱温度が30℃未満となり、接触時間が5分未満となる場合、第10工程後の複合金属粒子の表面に多数の遷移金属元素が残留する。このため、貴金属元素の表面積1m当たりの酸素分子の脱離量の積算値、及び貴金属元素の表面積1m当たりの二酸化炭素分子の脱離量の積算値が本実施形態の条件を満たさず、合金触媒の耐久性が低下する。3回目のリーチングの強度が上述した強度よりも強い場合(例えば2回目のリーチングの強度と同程度またはより強い場合)、すなわち、酸濃度が5.0×10-5mol/Lを超え、加熱温度が60℃を超え、接触時間が30分を超える場合、第10工程後の複合金属粒子の表面に大きな凹凸が残留する。このため、複合金属粒子の奥に存在する遷移金属元素が表面に露出する。したがって、貴金属元素の表面積1m当たりの酸素分子の脱離量の積算値、及び貴金属元素の表面積1m当たりの二酸化炭素分子の脱離量の積算値が本実施形態の条件を満たさず、合金触媒の耐久性が低下する。また、多量の遷移金属元素がリーチングによって除去される結果、上述した「組成ずれ」が起こり、複合金属粒子の組成が本実施形態の条件を満たさなくなる。このため、合金触媒の初期活性も低下する。また、生成されるスキン層が過剰に厚くなり、スキン層よりも内側の遷移金属元素による効果が得られにくくなる。この点でも合金触媒の初期活性が低下する。
(3-9.第9工程)
第9工程では、第8工程により得られた合金触媒を洗浄した後、乾燥させる。合金触媒の洗浄は例えば水で行うことができるが、本実施形態の効果を損なわない限り他の媒体で洗浄を行ってもよい。
(3-10.第10工程)
第10工程では、4回目のアニール処理を行う。具体的には、第9工程により得られた合金触媒を、アルゴン、窒素、及びヘリウムからなる群から選択される何れか1種以上で構成される不活性ガス雰囲気中、200℃以上450℃以下の温度で、5分以上30分以下の時間熱処理する。
複合金属粒子の合金化率は3回目のアニール処理までで十分に高まっており、複合金属粒子の表面状態はわずかな凹凸が残っている程度である。このため、4回目のアニール処理は、複合金属粒子の表面にわずかに残った凹凸を平滑化させればよい。このため、上述した3回目のアニール処理と対比すると明らかな通り、4回目のアニール処理の強度は3回目のアニール処理の強度よりも弱い。さらに、4回目のアニール処理では、合金化率を高める必要がないだけでなく、合金化率が高まってしまった場合、複合金属粒子表面に遷移金属元素が再び移動してきてしまう。したがって、合金化率を高めないようにするために、水素ガスを使用しない。
4回目のアニール処理の強度が上述した強度よりも弱い場合、すなわち、熱処理温度が200℃未満であり、熱処理時間が5分未満となる場合、第10工程後の複合金属粒子の表面の凹凸が十分に平滑化されず、酸素分子が複合金属粒子の奥に存在する遷移金属元素に表面から到達可能な状態となってしまう。このため、貴金属元素の表面積1m当たりの酸素分子の脱離量の積算値、及び貴金属元素の表面積1m当たりの二酸化炭素分子の脱離量の積算値が本実施形態の条件を満たさず、合金触媒の耐久性が低下する。4回目のアニール処理の強度が上述した強度よりも強い場合(例えば3回目のアニール処理の強度と同程度またはより強い場合)、すなわち、熱処理温度が450℃を超え、熱処理時間が30分を超える場合(あるいは、これらに加え、雰囲気ガスに水素ガスが含まれる場合)、複合金属粒子の奥に存在する多くの遷移金属元素が表面に移動する。このため、第10工程後の合金触媒において、貴金属元素の表面積1m当たりの酸素分子の脱離量の積算値、及び貴金属元素の表面積1m当たりの二酸化炭素分子の脱離量の積算値が本実施形態の条件を満たさず、合金触媒の耐久性が低下する。
以上の工程により、本実施形態に係る合金触媒を作製することができる。つまり、複合金属粒子の組成ずれを抑制しつつ、合金触媒の耐久性を高めることが可能な合金触媒を作製することができる。なお、各工程は互いに複雑に関連しあうので一概には言えないが、各工程におけるリーチングまたはアニール処理の強度を上記範囲内で高めることで、酸素分子の脱離量の積算値が高まる(これに応じて二酸化炭素分子の脱離量の積算値が小さくなる)傾向がある。ただし、リーチングまたはアニール処理の強度が上記範囲の上限値に近づいていくと、酸素分子の脱離量の積算値が減少に転じる(これに応じて二酸化炭素分子の脱離量の積算値が大きくなる)傾向がある。リーチング及びアニール処理のいずれにおいても、処理の進行に応じて強度を段階的に弱めることが好ましい。すなわち、各回のリーチングは、前回のリーチングよりも強度を弱めて行うことが好ましく、各回のアニール処理は、前回のアニール処理よりも強度を弱めて行うことが好ましい。
つぎに、本実施形態の実施例について説明する。実施例では、本実施形態の効果を確認するための実験を行った。以下、実験の詳細を説明する。
<1.測定方法>
(1-1.低温酸素TPD測定法)
まず、本実施例で使用した各測定方法について説明する。低温酸素TPD測定法は以下のように行った。まず、0.05gの合金触媒の試料を試料管に入れ、前処理として500℃の水素還元を5分間行い、同温度で排気した。水素還元は2回行った。ついで、試料を液体窒素で85K(-185℃)まで冷却した。その後、試料管内に酸素を1kPa導入して15分間静置した。この工程により、試料に酸素分子を吸着させた。
ついで、試料管を排気した。その後、試料管を四重極分析装置に接続した。試料管内の酸素分圧が下がるまで20分間静置した後、試料管内の試料を10K/minの昇温速度で直線的に昇温した。この際、四重極質量分析装置でm/z=32、m/z=44の信号をそれぞれ記録した。上述したように、m/z=32の信号は酸素分子に、m/z=44の信号は二酸化炭素分子に相当する。各信号は規定量の酸素、二酸化炭素に対してキャリブレーションした。ついで、横軸を温度、縦軸をmol/(s・g)としたxy平面に測定値をプロットすることで、酸素分子に相当するm/z=32のTPDスペクトル(昇温脱離曲線)、二酸化炭素分子に相当するm/z=44のTPDスペクトルを得た。
ついで、各TPDスペクトルから脱離ピークを分離し、脱離ピークの面積を算出した。脱離ピークの分離は、OriginPro 2018(ライトストーン社製)のピークフィット機能を用いて行った。TPDスペクトルの横軸は温度であるが、昇温速度(10K/min)に基づいて横軸を時間に換算した。これにより、単位がmol/gである脱離ピークの面積を算出した。脱離ピークの面積は、試料1g当たりの酸素分子または二酸化炭素分子の脱離量の積算値を意味する。
ついで、試料1g当たりの酸素分子または二酸化炭素分子の脱離量の積算値を、貴金属部分の表面積1m当たりの値に換算した。具体的には、試料1g当たりの貴金属部分の表面積(m/g)をCOパルスインジェクション化学吸着量測定法により求めた。ここで、COパルスインジェクション化学吸着量測定は、金属分散度測定装置(BEL-METAL-3、マイクロトラック・ベル社製)を用いて行った。具体的には、0.05gの試料を試料管に入れた。ついで、前処理として、Heガス流通下で試料を500℃まで昇温し、5分間保持した。ついで、Heガスを水素ガスに切り替え、水素ガスの流通下で試料を500℃で10分間保持した。ついで、水素ガスをArガスに切り替え、Arガスの流通下で試料を40℃まで冷却した。ついで、この温度を維持しながら、CO吸着が見られなくなるまで試料管内に1分毎に10体積%COガスパルスを注入した。ついで、試料のCO吸着量を算出した。得られたCOガスの吸着量と、上述した式(2)に基づいて、試料1g当たりの貴金属部分の表面積(m/g)を算出した。
ついで、試料1g当たりの酸素分子または二酸化炭素分子の脱離量の積算値を試料1g当たりの貴金属部分の表面積(m/g)で除することで、貴金属部分の表面積1m当たりの酸素分子または二酸化炭素分子の脱離量の積算値(mol/m)を求めた。
(1-2.合金化率、結晶子径の測定方法)
複合金属粒子の合金化率は、X線回折装置(X-Ray Diffraction;XRD、リガク社製、Smart Lab)により測定した。具体的には、合金触媒の試料をX線回折装置によりX線回折分析した。ついで、2θ=37°以上42°以下で観測された回折ピークに基づいて複合金属粒子の格子定数を算出した。ついで、算出された複合金属粒子の格子定数と、上述した式(1)に基づいて、複合金属粒子の合金化率を算出した。
さらに、上述した回折ピークと、以下の式(3)(シェラーの式)に基づいて、複合金属粒子の結晶子径を算出した。
シェラーの式:D=Kλ/βcosθ (3)
D:結晶子径[nm]、K:シェラー定数(0.94)、λ:CuKαのX線波長[nm]、β:半値幅[rad]、θ:Bragg角[rad]
(1-3.複合金属粒子の組成の測定方法)
複合金属粒子の組成(より詳細には、第1~第10工程を行った後の複合金属粒子の組成)は、誘導結合プラズマ発光分光分析法により求めた。具体的には、島津製作所社製ICPE-9800により合金触媒における貴金属元素の担持率(合金触媒の総質量に対する貴金属元素の質量%)及び遷移金属元素の担持率(合金触媒の総質量に対する遷移金属元素の質量%)を求めた。ついで、貴金属元素及び遷移金属元素それぞれの担持率に基づいて、複合金属粒子の組成、より具体的には貴金属元素及び遷移金属元素のモル比を求めた。
<2.合金触媒の作製>
(2-1.第1工程グループ)
合金触媒の作製はいくつかのグループ分けをして行った。第1工程グループでは、第1工程の条件を本実施形態の条件の範囲内、外のそれぞれに設定し、第2~第10工程の条件は本実施形態の条件を満たすように設定して合金触媒を作成した(比較例1-1、実施例1-2~1-7、比較例1-8)。
(2-1-1.比較例1-1)
まず、比較例1-1について説明する。比較例1-1の第0工程では、以下の工程により未処理合金触媒の試料を作製した。まず、水120mLに触媒担体となるデンカブラック粉状品(デンカ社製)1.0gを加えて、超音波ホモジナイザーによってデンカブラック粉状品を2分間水中に分散させた。作製された分散液に白金濃度4.5質量%のジニトロジアンミン白金硝酸溶液2.01g、エタノール30mLを加え、混合液を110℃に設定したオイルバス中で12時間撹拌した。得られた混合液をろ過して固形分を洗浄した後、固形分を回収した。回収した固形分に水を100mL注ぎ、ここに塩化チタンを0.054g加え、30分間撹拌した。撹拌後、ロータリーエバポレーターを用いて混合液から溶媒を除去した。以上の工程により、未処理合金触媒の試料を得た。ついで、未処理合金触媒の試料を真空乾燥した。
ついで、未処理合金触媒の試料に対して上述した第1~第10工程を行った。第1工程では、第0工程により得られた試料に対して表1A~1B(以下、表1と略称する)に示す条件(雰囲気ガスの組成、雰囲気ガス温度、及び熱処理時間)で1回目のアニール処理を行った。なお、表1及び後述する表3A~3B(以下、表3と略称する)、5A~5B(以下、表5と略称する)、7A~7B(以下、表7と略称する)、9における「雰囲気」の項目の「%」は「体積%」を示し、「室温」は25℃を示す。
第2工程では、第1工程後の試料1.0gをナスフラスコに測りとり、さらに、当該ナスフラスコに表1に示す種類及び酸濃度の酸性水溶液100mLを加えた。ついで、試料及び酸性水溶液が入ったナスフラスコをオイルバスに入れ、表1に記載の加熱温度及び接触時間で1回目のリーチングを行った。リーチング中は試料及び酸性水溶液の混合液を攪拌した。第3工程では、第2工程後の混合液から試料をろ過により回収し、回収した試料を水で洗浄した。ついで、試料を真空乾燥した。ついで、第4~第10工程を上述した第1~第3工程と同様にして行った。第4~第10工程の条件は表1に示す通りである。以上の工程により、合金触媒の試料を作製した。ついで、<1.測定方法>で示した測定方法により、貴金属部分の表面積1m当たりの酸素分子または二酸化炭素分子の脱離量の積算値、複合金属粒子の合金化率、複合金属粒子の結晶子径、及び複合金属粒子の組成を測定した。結果を表2に示す。なお、組成は仕込みの組成(未処理複合金属粒子の組成)及びリーチング後の組成(第1~第10工程後の組成)の両方を示す。
Figure 0007303443000001
Figure 0007303443000002
Figure 0007303443000003
(2-1-2.実施例1-2)
塩化チタンに代えて塩化マンガン四水和物0.056gを用い、かつ第1~第10工程の条件を表1に示す条件としたこと以外は、比較例1-1と同様の処理を行うことで、未処理合金触媒の試料を作製した。さらに、<1.測定方法>で示した測定方法により、各パラメータの値を測定した。結果を表2に示す。
(2-1-3.実施例1-3)
塩化チタンに代えて塩化スカンジウム六水和物0.074gを用い、かつ第1~第10工程の条件を表1に示す条件としたこと以外は、比較例1-1と同様の処理を行うことで、未処理合金触媒の試料を作製した。さらに、<1.測定方法>で示した測定方法により、各パラメータの値を測定した。結果を表2に示す。
(2-1-4.実施例1-4)
塩化チタンに代えて塩化バナジウム0.045gを用い、かつ第1~第10工程の条件を表1に示す条件としたこと以外は、比較例1-1と同様の処理を行うことで、未処理合金触媒の試料を作製した。さらに、<1.測定方法>で示した測定方法により、各パラメータの値を測定した。結果を表2に示す。
(2-1-5.実施例1-5)
塩化チタンに代えて塩化鉄六水和物0.077gを用い、かつ第1~第10工程の条件を表1に示す条件としたこと以外は、比較例1-1と同様の処理を行うことで、未処理合金触媒の試料を作製した。さらに、<1.測定方法>で示した測定方法により、各パラメータの値を測定した。結果を表2に示す。
(2-1-6.実施例1-6)
塩化チタンに代えて塩化クロム六水和物0.076gを用い、かつ第1~第10工程の条件を表1に示す条件としたこと以外は、比較例1-1と同様の処理を行うことで、未処理合金触媒の試料を作製した。さらに、<1.測定方法>で示した測定方法により、各パラメータの値を測定した。結果を表2に示す。
(2-1-7.実施例1-7)
第1~第10工程の条件を表1に示す条件としたこと以外は、比較例1-1と同様の処理を行うことで、未処理合金触媒の試料を作製した。さらに、<1.測定方法>で示した測定方法により、各パラメータの値を測定した。結果を表2に示す。
(2-1-8.比較例1-8)
塩化チタンに代えて塩化クロム六水和物0.076gを用い、かつ第1~第10工程の条件を表1に示す条件としたこと以外は、比較例1-1と同様の処理を行うことで、未処理合金触媒の試料を作製した。さらに、<1.測定方法>で示した測定方法により、各パラメータの値を測定した。結果を表2に示す。
(2-2.第2~第4工程グループ)
第2~第4工程グループでは、第2~第4工程の条件を本実施形態の条件の範囲内、外のそれぞれに設定し、第1、第5~第10工程の条件は本実施形態の条件を満たすように設定して合金触媒を作製した(比較例2-1、実施例2-2~2-4、比較例2-5)。
(2-2-1.比較例2-1)
ジニトロジアンミン白金硝酸溶液に代えて硝酸パラジウム0.160g、塩化チタンに代えて塩化鉄六水和物0.094gを用い、かつ第1~第10工程の条件を表3に示す条件としたこと以外は比較例1-1と同様の処理を行うことで、未処理合金触媒の試料を作製した。さらに、<1.測定方法>で示した測定方法により、各パラメータの値を測定した。結果を表4に示す。
Figure 0007303443000004
Figure 0007303443000005
Figure 0007303443000006
(2-2-2.実施例2-2)
塩化鉄六水和物に代えて塩化ニッケル0.045gを用い、かつ第1~第10工程の条件を表3に示す条件としたこと以外は、比較例2-1と同様の処理を行うことで、未処理合金触媒の試料を作製した。さらに、<1.測定方法>で示した測定方法により、各パラメータの値を測定した。結果を表4に示す。
(2-2-3.実施例2-3)
塩化鉄六水和物に代えて塩化コバルト六水和物0.083gを用い、かつ第1~第10工程の条件を表3に示す条件としたこと以外は、比較例2-1と同様の処理を行うことで、未処理合金触媒の試料を作製した。さらに、<1.測定方法>で示した測定方法により、各パラメータの値を測定した。結果を表4に示す。
(2-2-4.実施例2-4)
ジニトロジアンミン白金硝酸溶液に代えて塩化金酸四水和物0.155g、塩化チタンに代えて塩化ニッケル0.024gを用い、かつ第1~第10工程の条件を表3に示す条件としたこと以外は、比較例1-1と同様の処理を行うことで、未処理合金触媒の試料を作製した。さらに、<1.測定方法>で示した測定方法により、各パラメータの値を測定した。結果を表4に示す。
(2-2-5.比較例2-5)
塩化ニッケルの代わりに塩化鉄六水和物0.051gを用い、かつ第1~第10工程の条件を表3に示す条件としたこと以外は、実施例2-4と同様の処理を行うことで、未処理合金触媒の試料を作製した。さらに、<1.測定方法>で示した測定方法により、各パラメータの値を測定した。結果を表4に示す。
(2-3.第5~第7工程グループ)
第5~第7工程グループでは、第5~第7工程の条件を本実施形態の条件の範囲内、外のそれぞれに設定し、第1~第4、第8~第10工程の条件は本実施形態の条件を満たすように設定して合金触媒を作製した(比較例3-1、実施例3-2~3-4、比較例3-5)。
(2-3-1.比較例3-1)
ジニトロジアンミン白金硝酸溶液の使用量を2.01gから3.01gとし、塩化チタンに代えて塩化コバルト六水和物0.034gを用い、かつ第1~第10工程の条件を表5に示す条件としたこと以外は比較例1-1と同様の処理を行うことで、未処理合金触媒の試料を作製した。さらに、<1.測定方法>で示した測定方法により、各パラメータの値を測定した。結果を表6に示す。
Figure 0007303443000007
Figure 0007303443000008
Figure 0007303443000009
(2-3-2.実施例3-2)
第1~第10工程の条件を表5に示す条件とした他は比較例3-1と同様の処理を行うことで、未処理合金触媒の試料を作製した。さらに、<1.測定方法>で示した測定方法により、各パラメータの値を測定した。結果を表6に示す。
(2-3-3.実施例3-3)
第1~第10工程の条件を表5に示す条件とした他は比較例3-1と同様の処理を行うことで、未処理合金触媒の試料を作製した。さらに、<1.測定方法>で示した測定方法により、各パラメータの値を測定した。結果を表6に示す。
(2-3-4.実施例3-4)
第1~第10工程の条件を表5に示す条件とした他は比較例3-1と同様の処理を行うことで、未処理合金触媒の試料を作製した。さらに、<1.測定方法>で示した測定方法により、各パラメータの値を測定した。結果を表6に示す。
(2-3-5.比較例3-5)
第1~第10工程の条件を表5に示す条件とした他は比較例3-1と同様の処理を行うことで、未処理合金触媒の試料を作製した。さらに、<1.測定方法>で示した測定方法により、各パラメータの値を測定した。結果を表6に示す。
(2-4.第8~第10工程グループ)
第8~第10工程グループでは、第8~第10工程の条件を本実施形態の条件の範囲内、外のそれぞれに設定し、第1~第7工程の条件は本実施形態の条件を満たすように設定して合金触媒を作製した(比較例4-1、実施例4-2~4-4、比較例4-5)。
(2-4-1.比較例4-1)
塩化コバルト六水和物0.034gに代えて塩化ニッケル0.018gを用い、かつ第1~第10工程の条件を表7に示す条件としたこと以外は比較例3-1と同様の処理を行うことで、未処理合金触媒の試料を作製した。さらに、<1.測定方法>で示した測定方法により、各パラメータの値を測定した。結果を表8に示す。
Figure 0007303443000010
Figure 0007303443000011
Figure 0007303443000012
(2-4-2.実施例4-2)
第1~第10工程の条件を表7に示す条件とした他は比較例4-1と同様の処理を行うことで、未処理合金触媒の試料を作製した。さらに、<1.測定方法>で示した測定方法により、各パラメータの値を測定した。結果を表8に示す。
(2-4-3.実施例4-3)
第1~第10工程の条件を表7に示す条件とした他は比較例4-1と同様の処理を行うことで、未処理合金触媒の試料を作製した。さらに、<1.測定方法>で示した測定方法により、各パラメータの値を測定した。結果を表8に示す。
(2-4-4.実施例4-4)
第1~第10工程の条件を表7に示す条件とした他は比較例4-1と同様の処理を行うことで、未処理合金触媒の試料を作製した。さらに、<1.測定方法>で示した測定方法により、各パラメータの値を測定した。結果を表8に示す。
(2-4-5.比較例4-5)
第1~第10工程の条件を表7に示す条件とした他は比較例4-1と同様の処理を行うことで、未処理合金触媒の試料を作製した。さらに、<1.測定方法>で示した測定方法により、各パラメータの値を測定した。結果を表8に示す。
(2-5.他のグループ)
(2-5-1.比較例5-1)
比較例5-1は、従来から行われている一般的なリーチング及びアニール処理を行った例である。具体的には、比較例5-1では、第1~第4工程の条件を表9に示す条件とした他は比較例3-1と同様の処理を行うことで、未処理合金触媒の試料を作製した。比較例5-1では、第5工程以降を行わなかった。また、第1~第4工程の条件は非特許文献1を参照した。さらに、<1.測定方法>で示した測定方法により、各パラメータの値を測定した。結果を表10に示す。
Figure 0007303443000013
Figure 0007303443000014
(2-5-2.比較例5-2)
比較例5-2では、比較例5-1の第4工程の条件(2回目のアニール処理の強度)を強くした他は比較例5-1と同様の処理を行うことで、未処理合金触媒の試料を作製した。さらに、<1.測定方法>で示した測定方法により、各パラメータの値を測定した。結果を表10に示す。
(2-5-3.比較例5-3)
比較例5-3は、「組成ずれ」を見越して予め未処理複合金属粒子に遷移金属元素を多めに仕込んだ例である。具体的には、比較例5-3では、ジニトロジアンミン白金硝酸溶液3.01gに代えてジニトロジアンミン白金硝酸溶液2.19g(濃度は同じ)、塩化コバルト六水和物0.034gに代えて塩化コバルト六水和物0.062gを用い、かつ第1~第4工程の条件を表9に示す条件とした他は比較例3-1と同様の処理を行うことで、未処理合金触媒の試料を作製した。比較例5-3では、第5工程以降を行わなかった。さらに、<1.測定方法>で示した測定方法により、各パラメータの値を測定した。結果を表10に示す。
(2-5-4.比較例5-4)
比較例5-4では、比較例5-1の第2工程の条件(1回目のリーチングの強度)を非常に弱くした他は比較例5-1と同様の処理を行うことで、未処理合金触媒の試料を作製した。さらに、<1.測定方法>で示した測定方法により、各パラメータの値を測定した。結果を表10に示す。
(2-5-5.比較例5-5)
比較例5-5は、特許文献1の実施例を再現した例である。具体的には、比較例5-5では、第1~第3工程の条件を表9に示す条件とした他は比較例3-1と同様の処理を行うことで、未処理合金触媒の試料を作製した。比較例5-5では、第4工程以降を行わなかった。さらに、<1.測定方法>で示した測定方法により、各パラメータの値を測定した。結果を表10に示す。
(2-5-6.比較例5-6)
比較例5-6は、特許文献2の実施例を再現した例である。具体的には、比較例5-6では、第1~第4工程の条件を表9に示す条件とした他は比較例3-1と同様の処理を行うことで、未処理合金触媒の試料を作製した。比較例5-6では、第5工程以降を行わなかった。さらに、<1.測定方法>で示した測定方法により、各パラメータの値を測定した。結果を表10に示す。
(2-5-7.比較例5-7)
比較例5-7は、特許文献3の実施例を再現した例である。具体的には、比較例5-7では、第1~第4工程の条件を表9に示す条件とした他は実施例1-4と同様の処理を行うことで、未処理合金触媒の試料を作製した。比較例5-7では、第5工程以降を行わなかった。さらに、<1.測定方法>で示した測定方法により、各パラメータの値を測定した。結果を表10に示す。
<3.試験用セルの作製>
つぎに、作製された各グループの合金触媒を用いて試験用セルを作製した。具体的な工程は以下の通りである。
(3-1.塗布インクの作製)
電解質樹脂となるナフィオン(Dupont社製ナフィオン、登録商標:Nafion、パースルホン酸系イオン交換樹脂)が溶解したナフィオン溶液を用意した。ついで、アルゴン雰囲気下で合金触媒及びナフィオン溶液を混合した。ここで、電解質樹脂の固形分の質量比は、合金触媒に対して1.0倍とした。ついで、混合溶液を軽く撹拌した後、超音波で混合溶液中の合金触媒を解砕した。ついで、混合溶液に更にエタノールを加えることで、合金触媒及び電解質樹脂の合計の固形分濃度が混合溶液の総質量に対して1.0質量%となるように調整した。これにより、合金触媒及び電解質樹脂を含む塗布インクを作製した。
(3-2.触媒層の作製)
塗布インクにさらにエタノールを加えることで、塗布インク中の合金触媒濃度を塗布インクの総質量に対して1.0質量%とした。ここで、合金触媒の濃度は、合金触媒を構成する金属元素(ここでは貴金属元素及び遷移金属元素)の全成分の合計濃度を意味する。後述の目付量も同様である。ついで、合金触媒の触媒層単位面積当たりの質量(以下、「触媒目付量」という。)が0.2mg/cmとなるようにスプレー条件を調節し、上記塗布インクをテフロン(登録商標)シート上にスプレーした。ついで、アルゴン雰囲気中120℃で60分間の乾燥処理を行うことで、触媒層を作製した。同じ触媒層を2つ作製し、一方をカソード、他方をアノードとした。
(3-3.膜/電極接合体(Membrane Electrode Assembly:MEA)の作製
ナフィオン膜(Dupont社製NR211)から一辺6cmの正方形状の電解質膜を切り出した。また、テフロン(登録商標)シート上に塗布されたアノード及びカソードの各触媒層をそれぞれカッターナイフで一辺2.5cmの正方形状に切り出した。このようにして切り出されたアノード及びカソードの各触媒層の間に、各触媒層が電解質膜の中心部を挟んでそれぞれ接すると共に互いにずれが無いように、この電解質膜を挟み込み、120℃、100kg/cmで10分間プレスした。次いで、この積層体を室温まで冷却した。次いで、アノード及びカソード共にテフロン(登録商標)シートのみを注意深く剥ぎ取った。以上の工程により、アノード及びカソードの各触媒層を電解質膜に定着させた。
次に、ガス拡散層となるカーボンペーパー(SGLカーボン社製35BC)から一辺2.5cmの正方形状のカーボンペーパーを2つ切り出した。ついで、これらのカーボンペーパーをアノードとカソードにずれが無いように積層することで、積層体を作製した。ついで、積層体を120℃、50kg/cmで10分間プレスすることで、MEAを作製した。なお、プレス前の触媒層付テフロン(登録商標)シートの質量とプレス後にはがしたテフロン(登録商標)シートの質量との差からナフィオン膜に定着した触媒層の質量を求め、触媒層の組成の質量比より触媒目付量、合金触媒の目付量、及び電解質樹脂の目付量を算出した。この方法により、触媒目付量が0.2mg/cmであることを確認した。ついで、作製されたMEAをセルに組み込むことで、試験用セルを作製した。
<4.初期活性及び耐久性の評価>
(4-1.初期活性の評価)
試験用セルを燃料電池測定装置(東陽テクニカ社製AutoPEM)にセットし、以下の手順で合金触媒の初期活性を評価した。
カソードに供給ガスとして空気を、また、アノードに供給ガスとして純水素をそれぞれ利用率が40%と70%となるように、大気圧下で供給した。また、セル温度は80℃に設定した。また、カソード側及びアノード側共に、供給ガス(すなわち空気または純水素)を加湿器中で65℃に保温された蒸留水にそれぞれ通す(すなわち、バブリングを行う)ことで、供給ガスに加湿機中の水温に相当する飽和水蒸気を付与した。その後、供給ガスをカソードまたはアノードに供給した。
このような設定の下に試験用セルに供給ガスを供給しつつ、負荷を徐々に増やして、初期の発電特性(すなわち合金触媒の初期活性)を評価した。具体的には、電流密度0.2A/cmにおけるセル端子間電圧(以下、セル電圧という)を記録し、このセル電圧の値を合金触媒の初期活性の評価指標とした。具体的には、初期活性が780mV以上であれば初期活性を合格レベルとした。評価結果を表2、4、6、8、10にまとめて示す。
(4-2.耐久性の評価)
引き続いて、合金触媒の耐久性を評価するために、「セル電圧を0.6Vにして4秒間保持し、次いでセル電圧を1.2Vに上昇させて4秒間保持し、その後にセル電圧を元の0.6Vに戻す」という操作を1回のサイクル操作とし、このサイクル操作を300回繰り返す耐久試験を実施した。この耐久試験の後に、上述した初期活性の評価試験と同様の方法でセル電圧(電流密度0.2A/cmにおけるセル電圧)を測定した。測定された耐久試験後のセル電圧(V)を耐久試験前のセル電圧(すなわち上述した初期活性の評価試験で得られたセル電圧)から差し引いてセル電圧の低下幅△Vを求めた。さらに、この低下幅△Vを耐久前試験前のセル電圧で除してセル電圧低下率を算出した。そして、セル電圧低下率を耐久性の評価指標とした。具体的には、低下率が15%以下であれば合格レベルとした。低下率が5%以下であれば耐久性に特に優れていると言える。評価結果を表2、4、6、8、10にまとめて示す。なお、耐久試験後のセル電圧(V)は表中「耐久後」として示した。
<5.評価結果の考察>
(5-1.第1工程グループ)
以下、表1~10に基づいて、評価結果を考察する。なお、表1~10において、本実施形態の要件を満たさない値、または合格レベルに達していない値に下線を付した。実施例1-2~1-7は、第1工程のみならず第2~第10工程の条件が本実施形態の条件を満たすので、結果物である合金触媒も本実施形態の条件を満たす。すなわち、実施例1-2~1-7では、リーチングにより複合金属粒子の表面及びその近傍のみから遷移金属元素を除去することができるので、「組成ずれ」を抑制することができ、合金触媒の初期活性が高くなる。また、スキン層に占める貴金属元素の存在割合が高く、強固なスキン層が形成される。したがって、合金触媒の耐久性が高くなる。したがって、初期活性及び耐久性のいずれも合格レベルとなった。
一方、比較例1-1では、第1工程、すなわち1回目のアニール処理の強度が本実施形態の条件よりも弱くなっている。具体的には、雰囲気ガス温度が本実施形態の条件よりも低く、熱処理時間が本実施形態の条件よりも短くなっている。このため、第10工程後の複合金属粒子の合金化率、貴金属元素の表面積1m当たりの酸素分子の脱離量の積算値、及び貴金属元素の表面積1m当たりの二酸化炭素分子の脱離量の積算値が本実施形態の条件を満たさず、初期活性及び耐久性が不合格レベルとなった。
より具体的に説明すると、1回目のアニール処理後の複合金属粒子の合金化率は非常に低くなっている。したがって、複合金属粒子内に遷移金属元素が偏析している。このため、第2工程以降のリーチングにおいて遷移金属元素の溶出量を制御することが困難となり、第10工程後の複合金属粒子の組成が第0工程で作製された未処理複合金属粒子の組成と大きくずれてしまう(組成ずれ)。このため、初期活性が低下する。また、遷移金属元素が偏析していることから、第2工程以降のリーチングによって複合金属粒子の表面に激しい凹凸が形成される。このような凹凸によって複合金属粒子の奥に存在する遷移金属元素が表面に露出する。さらに、複合金属粒子の表面の貴金属元素が整列していない。このため、貴金属元素の表面積1m当たりの酸素分子の脱離量の積算値が本実施形態の条件を満たさず、合金触媒の耐久性が低下する。また、複合金属粒子の表面に多くの遷移金属元素(より詳細には遷移金属元素の酸化物)が露出していることから、当該酸化物に起因して二酸化炭素分子の脱離量の積算値が大きくなり、本実施形態の条件を満たさなくなる。この点でも合金触媒の耐久性が低下する。
比較例1-8では、1回目のアニール処理の強度が本実施形態の条件よりも強くなっている。具体的には、雰囲気ガス温度が本実施形態の条件よりも高く、熱処理時間が本実施形態の条件よりも長くなっている。さらに、水素ガス濃度が本実施形態の条件よりも高くなっている。このため、第10工程後の複合金属粒子の結晶子径が大きくなりすぎて、初期活性が不合格レベルとなった。固体高分子形燃料電池を作動させた際の反応場が狭くなるからである。
(5-2.第2~第4工程グループ)
実施例2-2~2-4は、第2~第4工程のみならず、第1、第5~第10工程の条件が本実施形態の条件を満たすので、結果物である合金触媒も本実施形態の条件を満たす。すなわち、実施例2-2~2-4では、リーチングにより複合金属粒子の表面及びその近傍のみから遷移金属元素を除去することができるので、「組成ずれ」を抑制することができ、合金触媒の初期活性が高くなる。また、スキン層に占める貴金属元素の存在割合が高く、強固なスキン層が形成される。したがって、合金触媒の耐久性が高くなる。したがって、初期活性及び耐久性がいずれも合格レベルとなった。
一方、比較例2-1では、第2工程、すなわち1回目のリーチングの強度が本実施形態の条件よりも弱くなっている。具体的には、酸濃度及び加熱温度が本実施形態の条件よりも低く、酸性水溶液との接触時間が本実施形態の条件よりも短くなっている。さらに、第4工程、すなわち2回目のアニール処理の条件が本実施形態の条件よりも弱くなっている。具体的には、雰囲気ガス温度が本実施形態の条件よりも低く、熱処理時間が本実施形態の条件よりも短くなっている。雰囲気ガス中に水素ガスは含まれていない。このため、第10工程後の貴金属元素の表面積1m当たりの酸素分子の脱離量の積算値、及び貴金属元素の表面積1m当たりの二酸化炭素分子の脱離量の積算値が本実施形態の条件を満たさず、耐久性が不合格レベルとなった。
より具体的に説明すると、1回目のリーチング後の複合金属粒子の表面には多くの遷移金属元素が残っている。さらに、2回目のアニール処理の強度は本実施形態の条件よりも弱いと言えるので、2回目のアニール処理後の複合金属粒子の表面には大きな凹凸が残っている。このような凹凸によって複合金属粒子の奥に存在する遷移金属元素が表面に露出する。他の工程は本実施形態の条件を満たしているが、これらの工程によってもこれらの問題は解決されない。したがって、第10工程後の複合金属粒子の表面には多くの遷移金属元素が残留し、かつ大きな凹凸が残留している。さらに、複合金属粒子の表面の貴金属元素が整列していない。このため、貴金属元素の表面積1m当たりの酸素分子の脱離量の積算値が本実施形態の条件を満たさず、合金触媒の耐久性が低下する。また、複合金属粒子の表面に多くの遷移金属元素(より詳細には遷移金属元素の酸化物)が露出していることから、当該酸化物に起因して二酸化炭素分子の脱離量の積算値が大きくなり、本実施形態の条件を満たさなくなる。この点でも合金触媒の耐久性が低下する。
比較例2-5では、1回目のリーチングの強度が本実施形態の条件よりも強くなっている。具体的には、酸濃度及び加熱温度が本実施形態の条件よりも高く、酸性水溶液との接触時間が本実施形態の条件よりも長くなっている。さらに、第4工程、すなわち2回目のアニール処理の条件が本実施形態の条件よりも強くなっている。具体的には、雰囲気ガス温度が本実施形態の条件よりも高く、熱処理時間が本実施形態の条件よりも長くなっている。さらに、水素ガス濃度が本実施形態の条件よりも高くなっている。このため、第10工程後の複合金属粒子の組成が本実施形態の条件を満たさない。さらに、貴金属元素の表面積1m当たりの酸素分子の脱離量の積算値、及び貴金属元素の表面積1m当たりの二酸化炭素分子の脱離量の積算値が本実施形態の条件を満たさない。このため、初期活性及び耐久性が不合格レベルとなった。
より具体的に説明すると、1回目のリーチング後の複合金属粒子の表面に大きな凹凸が形成される。このため、複合金属粒子の奥に存在する遷移金属元素が表面に露出する。また、多量の遷移金属元素がリーチングによって除去される結果、上述した「組成ずれ」が起こる。さらに、2回目のアニール処理によって合金化が必要以上に進み、複合金属粒子の奥に存在する多くの遷移金属元素が表面に移動し、露出する。他の工程は本実施形態の条件を満たしているが、これらの工程によってもこれらの問題は解決されない。したがって、第10工程後の複合金属粒子の表面には多くの遷移金属元素が残留し、かつ大きな凹凸が残留している。さらに、複合金属粒子の表面の貴金属元素が整列していない。なお、2回目のアニール処理によって凹凸が緩和されているとも考えられるが、仮に凹凸が緩和されても表面に多数の遷移金属元素が残留することには変わりがない。このため、貴金属元素の表面積1m当たりの酸素分子の脱離量の積算値が本実施形態の条件を満たさず、合金触媒の耐久性が低下する。また、複合金属粒子の表面に多くの遷移金属元素(より詳細には遷移金属元素の酸化物)が露出していることから、当該酸化物に起因して二酸化炭素分子の脱離量の積算値が大きくなり、本実施形態の条件を満たさなくなる。この点でも合金触媒の耐久性が低下する。さらに、「組成ずれ」が生じていることから初期活性も低下する。
(5-3.第5~第7工程グループ)
実施例3-2~3-4は、第5~第7工程のみならず、第1~第4、第8~第10工程の条件が本実施形態の条件を満たすので、結果物である合金触媒も本実施形態の条件を満たす。すなわち、実施例3-2~3-4では、リーチングにより複合金属粒子の表面及びその近傍のみから遷移金属元素を除去することができるので、「組成ずれ」を抑制することができ、合金触媒の初期活性が高くなる。また、スキン層に占める貴金属元素の存在割合が高く、強固なスキン層が形成される。したがって、合金触媒の耐久性が高くなる。したがって、初期活性及び耐久性がいずれも合格レベルとなった。特に、実施例3-3では、貴金属元素の表面積1m当たりの酸素分子の脱離量の積算値が本実施形態の好ましい条件である3.0×10-6mol/m以上となっており、貴金属元素の表面積1m当たりの二酸化炭素分子の脱離量の積算値が本実施形態の好ましい条件である2.5×10-7molmol/m以下となっている。したがって、耐久性が特に優れている(低下率が5.0%以下となっている)。
一方、比較例3-1では、第5工程、すなわち2回目のリーチングの強度が本実施形態の条件よりも弱くなっている。具体的には、酸濃度及び加熱温度が本実施形態の条件よりも低く、酸性水溶液との接触時間が本実施形態の条件よりも短くなっている。さらに、第7工程、すなわち3回目のアニール処理の条件が本実施形態の条件よりも弱くなっている。具体的には、雰囲気ガス温度が本実施形態の条件よりも低く、熱処理時間が本実施形態の条件よりも短くなっている。雰囲気ガス中に水素ガスは含まれていない。このため、第10工程後の貴金属元素の表面積1m当たりの酸素分子の脱離量の積算値、及び貴金属元素の表面積1m当たりの二酸化炭素分子の脱離量の積算値が本実施形態の条件を満たさず、耐久性が不合格レベルとなった。
より具体的に説明すると、2回目のリーチング後の複合金属粒子の表面には多くの遷移金属元素が残っている。さらに、さらに、3回目のアニール処理の強度は本実施形態の条件よりも弱いと言えるので、3回目のアニール処理後の複合金属粒子の表面には大きな凹凸が残っている。このような凹凸によって複合金属粒子の奥に存在する遷移金属元素が表面に露出する。他の工程は本実施形態の条件を満たしているが、これらの工程によってもこれらの問題は解決されない。したがって、第10工程後の複合金属粒子の表面には多くの遷移金属元素が残留し、かつ大きな凹凸が残留している。さらに、複合金属粒子の表面の貴金属元素が整列していない。このため、貴金属元素の表面積1m当たりの酸素分子の脱離量の積算値が本実施形態の条件を満たさず、合金触媒の耐久性が低下する。また、複合金属粒子の表面に多くの遷移金属元素(より詳細には遷移金属元素の酸化物)が露出していることから、当該酸化物に起因して二酸化炭素分子の脱離量の積算値が大きくなり、本実施形態の条件を満たさなくなる。この点でも合金触媒の耐久性が低下する。
比較例3-5では、2回目のリーチングの強度が本実施形態の条件よりも強くなっている。具体的には、酸濃度及び加熱温度が本実施形態の条件よりも高く、酸性水溶液との接触時間が本実施形態の条件よりも長くなっている。さらに、第7工程、すなわち3回目のアニール処理の強度が本実施形態の条件よりも強くなっている。具体的には、雰囲気ガス温度が本実施形態の条件よりも高く、熱処理時間が本実施形態の条件よりも長くなっている。さらに、水素ガス濃度が本実施形態の条件よりも高くなっている。このため、第10工程後の複合金属粒子の組成が本実施形態の条件を満たさない。さらに、貴金属元素の表面積1m当たりの酸素分子の脱離量の積算値、及び貴金属元素の表面積1m当たりの二酸化炭素分子の脱離量の積算値が本実施形態の条件を満たさない。このため、初期活性及び耐久性が不合格レベルとなった。
より具体的に説明すると、2回目のリーチング後の複合金属粒子の表面に大きな凹凸が形成される。このため、複合金属粒子の奥に存在する遷移金属元素が表面に露出する。また、多量の遷移金属元素がリーチングによって除去される結果、上述した「組成ずれ」が起こる。さらに、3回目のアニール処理によって合金化が必要以上に進み、複合金属粒子の奥に存在する多くの遷移金属元素が表面に移動し、露出する。他の工程は本実施形態の条件を満たしているが、これらの工程によってもこれらの問題は解決されない。したがって、第10工程後の複合金属粒子の表面には多くの遷移金属元素が残留し、かつ大きな凹凸が残留している。さらに、複合金属粒子の表面の貴金属元素が整列していない。なお、3回目のアニール処理によって凹凸が緩和されているとも考えられるが、仮に凹凸が緩和されても表面に多数の遷移金属元素が残留することには変わりがない。このため、貴金属元素の表面積1m当たりの酸素分子の脱離量の積算値が本実施形態の条件を満たさず、合金触媒の耐久性が低下する。また、複合金属粒子の表面に多くの遷移金属元素(より詳細には遷移金属元素の酸化物)が露出していることから、当該酸化物に起因して二酸化炭素分子の脱離量の積算値が大きくなり、本実施形態の条件を満たさなくなる。この点でも合金触媒の耐久性が低下する。さらに、「組成ずれ」が生じていることから初期活性も低下する。
(5-4.第8~第10工程グループ)
実施例4-2~4-4は、第8~第10工程のみならず、第1~第7工程の条件が本実施形態の条件を満たすので、結果物である合金触媒も本実施形態の条件を満たす。すなわち、実施例4-2~4-4では、リーチングにより複合金属粒子の表面及びその近傍のみから遷移金属元素を除去することができるので、「組成ずれ」を抑制することができ、合金触媒の初期活性が高くなる。また、スキン層に占める貴金属元素の存在割合が高く、強固なスキン層が形成される。したがって、合金触媒の耐久性が高くなる。したがって、初期活性及び耐久性がいずれも合格レベルとなった。特に、実施例4-3、4-4では、貴金属元素の表面積1m当たりの酸素分子の脱離量の積算値が本実施形態の好ましい条件である3.0×10-6mol(mol/m)以上となっており、貴金属元素の表面積1m当たりの二酸化炭素分子の脱離量の積算値が本実施形態の好ましい条件である2.5×10-7mol(mol/m)以下となっている。したがって、耐久性が特に優れている(低下率が5.0%以下となっている)。
一方、比較例4-1では、第8工程、すなわち3回目のリーチングの強度が本実施形態の条件よりも弱くなっている。具体的には、酸濃度及び加熱温度が本実施形態の条件よりも低く、酸性水溶液との接触時間が本実施形態の条件よりも短くなっている。さらに、第10工程、すなわち4回目のアニール処理の条件が本実施形態の条件よりも弱くなっている。具体的には、雰囲気ガス温度が本実施形態の条件よりも低く、熱処理時間が本実施形態の条件よりも短くなっている。このため、第10工程後の貴金属元素の表面積1m当たりの酸素分子の脱離量の積算値、及び貴金属元素の表面積1m当たりの二酸化炭素分子の脱離量の積算値が本実施形態の条件を満たさず、耐久性が不合格レベルとなった。
より具体的に説明すると、3回目のリーチング後の複合金属粒子の表面には多くの遷移金属元素が残っている。さらに、4回目のアニール処理後の複合金属粒子の表面には大きな凹凸が残っている。このような凹凸によって複合金属粒子の奥に存在する遷移金属元素が表面に露出する。他の工程は本実施形態の条件を満たしているが、これらの工程によってもこれらの問題は解決されない。したがって、第10工程後の複合金属粒子の表面には多くの遷移金属元素が残留し、かつ大きな凹凸が残留している。さらに、複合金属粒子の表面の貴金属元素が整列していない。このため、貴金属元素の表面積1m当たりの酸素分子の脱離量の積算値が本実施形態の条件を満たさず、合金触媒の耐久性が低下する。また、複合金属粒子の表面に多くの遷移金属元素(より詳細には遷移金属元素の酸化物)が露出していることから、当該酸化物に起因して二酸化炭素分子の脱離量の積算値が大きくなり、本実施形態の条件を満たさなくなる。この点でも合金触媒の耐久性が低下する。
比較例4-5では、3回目のリーチングの強度が本実施形態の条件よりも強くなっている。具体的には、酸濃度及び加熱温度が本実施形態の条件よりも高く、酸性水溶液との接触時間が本実施形態の条件よりも長くなっている。さらに、第10工程、すなわち4回目のリーチングの条件が本実施形態の条件よりも強くなっている。具体的には、雰囲気ガス温度が本実施形態の条件よりも高く、熱処理時間が本実施形態の条件よりも長くなっている。さらに、水素ガス濃度が本実施形態の条件よりも高くなっている。このため、第10工程後の複合金属粒子の組成が本実施形態の条件を満たさない。さらに、貴金属元素の表面積1m当たりの酸素分子の脱離量の積算値、及び貴金属元素の表面積1m当たりの二酸化炭素分子の脱離量の積算値が本実施形態の条件を満たさない。このため、初期活性及び耐久性が不合格レベルとなった。
より具体的に説明すると、3回目のリーチング後の複合金属粒子の表面に大きな凹凸が形成される。このため、複合金属粒子の奥に存在する遷移金属元素が表面に露出する。また、多量の遷移金属元素がリーチングによって除去される結果、上述した「組成ずれ」が起こる。さらに、4回目のアニール処理によって合金化が必要以上に進み、複合金属粒子の奥に存在する多くの遷移金属元素が表面に移動し、露出する。他の工程は本実施形態の条件を満たしているが、これらの工程によってもこれらの問題は解決されない。したがって、第10工程後の複合金属粒子の表面には多くの遷移金属元素が残留し、かつ大きな凹凸が残留している。さらに、複合金属粒子の表面の貴金属元素が整列していない。なお、4回目のアニール処理によって凹凸が緩和されているとも考えられるが、仮に凹凸が緩和されても表面に多数の遷移金属元素が残留することには変わりがない。このため、貴金属元素の表面積1m当たりの酸素分子の脱離量の積算値が本実施形態の条件を満たさず、合金触媒の耐久性が低下する。また、複合金属粒子の表面に多くの遷移金属元素(より詳細には遷移金属元素の酸化物)が露出していることから、当該酸化物に起因して二酸化炭素分子の脱離量の積算値が大きくなり、本実施形態の条件を満たさなくなる。この点でも合金触媒の耐久性が低下する。さらに、「組成ずれ」が生じていることから初期活性も低下する。
(5-5.他のグループ)
比較例5-1は、従来から行われている一般的なリーチング及びアニール処理を行った例である。比較例5-1では、第1工程、すなわち1回目のアニール処理の強度が本実施形態の条件を満たしている。ただし、リーチングは第2工程の1回のみであり、さらに、リーチングの強度が本実施形態の条件よりも強くなっている。具体的には、酸濃度が本実施形態の条件よりも高く、酸性水溶液との接触時間が本実施形態の条件よりも長くなっている。このため、比較例5-1では、複合金属粒子の合金化率及び結晶子径が本実施形態の条件を満たすが、複合金属粒子の組成は本実施形態の条件を満たさない。さらに、貴金属元素の表面積1m当たりの酸素分子の脱離量の積算値、及び貴金属元素の表面積1m当たりの二酸化炭素分子の脱離量の積算値が本実施形態の条件を満たさない。このため、初期活性及び耐久性が不合格レベルとなった。
より具体的に説明すると、第1工程、すなわち1回目のアニール処理の強度が本実施形態の条件を満たしているので、合金化率及び結晶子径が本実施形態の条件を満たす。しかし、リーチングの強度が本実施形態の条件よりも強くなっているので、リーチング後の複合金属粒子の表面に大きな凹凸が形成される。このため、複合金属粒子の奥に存在する遷移金属元素が表面に露出する。また、多量の遷移金属元素がリーチングによって除去される結果、上述した「組成ずれ」が起こる。第4工程、すなわち2回目のアニール処理の強度は本実施形態の条件を満たすが、このアニール処理では凹凸を十分に平滑化することができない。したがって、比較例5-1で作製された複合金属粒子の表面には多くの遷移金属元素が残留し、かつ大きな凹凸が残留している。さらに、複合金属粒子の表面の貴金属元素が整列していない。このため、貴金属元素の表面積1m当たりの酸素分子の脱離量の積算値が本実施形態の条件を満たさず、合金触媒の耐久性が低下する。また、複合金属粒子の表面に多くの遷移金属元素(より詳細には遷移金属元素の酸化物)が露出していることから、当該酸化物に起因して二酸化炭素分子の脱離量の積算値が大きくなり、本実施形態の条件を満たさなくなる。この点でも合金触媒の耐久性が低下する。さらに、「組成ずれ」が生じていることから初期活性も低下する。
比較例5-2は、比較例5-1の第4工程の条件(2回目のアニール処理の強度)を強くした例である。比較例5-2でも初期活性及び耐久性が不合格レベルとなった。比較例5-2でも第2工程のリーチングの強度が本実施形態の条件よりも強くなっている。さらに、比較例5-2では、2回目のアニール処理の雰囲気ガス温度が本実施形態の条件よりも高く、熱処理時間が本実施形態の条件よりも長くなっている。このため、比較例5-2で作製された複合金属粒子の組成及び結晶子径は本実施形態の条件を満たさない。さらに、貴金属元素の表面積1m当たりの酸素分子の脱離量の積算値、及び貴金属元素の表面積1m当たりの二酸化炭素分子の脱離量の積算値が本実施形態の条件を満たさない。このため、初期活性及び耐久性が不合格レベルとなった。
より具体的に説明すると、比較例5-2では、リーチングの強度が本実施形態の条件よりも強くなっているので、リーチング後の複合金属粒子の表面に大きな凹凸が形成される。このため、複合金属粒子の奥に存在する遷移金属元素が表面に露出する。また、多量の遷移金属元素がリーチングによって除去される結果、上述した「組成ずれ」が起こる。したがって、初期活性が低下する。第4工程のアニール処理によって複合金属粒子の表面の凹凸はある程度平滑化される。しかし、アニール処理の強度が本実施形態の条件よりも強いことから、複合金属粒子が凝集・粗大化し、結晶子径が大きくなる。この結果、結晶子径が本実施形態の条件を満たさなくなり、この点でも初期活性が低下する。固体高分子形燃料電池を作動させた際の反応場が狭くなるからである。さらに、第4工程のアニール処理によって合金化が必要以上に進み、複合金属粒子の奥に存在する多くの遷移金属元素が表面に移動し、露出する。このため、貴金属元素の表面積1m当たりの酸素分子の脱離量の積算値が本実施形態の条件を満たさず、合金触媒の耐久性が低下する。また、複合金属粒子の表面に多くの遷移金属元素(より詳細には遷移金属元素の酸化物)が露出していることから、当該酸化物に起因して二酸化炭素分子の脱離量の積算値が大きくなり、本実施形態の条件を満たさなくなる。この点でも合金触媒の耐久性が低下する。
比較例5-3は、「組成ずれ」を見越して予め未処理複合金属粒子に遷移金属元素を多めに仕込んだ例である。しかし、比較例5-3でも初期活性及び耐久性が不合格レベルとなった。比較例5-3では、確かに複合金属粒子の組成が本実施形態の条件を満たしている。しかし、第2工程、すなわちリーチングの強度が本実施形態の条件よりも強いという点では比較例5-1と変わりがない。このため、複合金属粒子の表面のみならず、内部からも遷移金属元素が多数溶出しており、複合金属粒子の表面には激しい凹凸が形成される。また、複合金属粒子の内部に多数の気孔が形成される。このため、複合金属粒子が不安定な状態となり、初期活性が低下する。さらに、このような凹凸によって内部の遷移金属元素が露出する。さらに、複合金属粒子の表面の貴金属元素が整列していない。このため、貴金属元素の表面積1m当たりの酸素分子の脱離量の積算値が本実施形態の条件を満たさず、合金触媒の耐久性が低下する。また、複合金属粒子の表面に多くの遷移金属元素(より詳細には遷移金属元素の酸化物)が露出していることから、当該酸化物に起因して二酸化炭素分子の脱離量の積算値が大きくなり、本実施形態の条件を満たさなくなる。この点でも合金触媒の耐久性が低下する。
比較例5-4は、比較例5-1の第2工程の条件(1回目のリーチングの強度)を非常に弱くした例である。比較例5-4では初期活性が合格レベルになったものの、耐久性は依然として不合格レベルとなった。比較例5-4では、第1工程、すなわち1回目のアニール処理の強度が本実施形態の条件を満たしている。このため、合金化率及び結晶子径が本実施形態の条件を満たす。ただし、リーチングの強度が本実施形態の条件よりも弱くなっている。具体的には、酸濃度が本実施形態の条件よりも低く、酸性水溶液との接触時間が本実施形態の条件よりも短くなっている。このため、「組成ずれ」は抑制されており、初期活性は高い。しかし、複合金属粒子の表面に多数の遷移金属元素が残留している。このため、貴金属元素の表面積1m当たりの酸素分子の脱離量の積算値が本実施形態の条件を満たさず、合金触媒の耐久性が低下する。また、複合金属粒子の表面に多くの遷移金属元素(より詳細には遷移金属元素の酸化物)が露出していることから、当該酸化物に起因して二酸化炭素分子の脱離量の積算値が大きくなり、本実施形態の条件を満たさなくなる。この点でも合金触媒の耐久性が低下する。
比較例5-5は、特許文献1の実施例を再現した例である。比較例5-5でも初期活性及び耐久性が不合格レベルとなった。比較例5-5では、第1工程、すなわち1回目のアニール処理の強度が本実施形態の条件よりも強い。具体的には、雰囲気ガス温度が本実施形態の条件よりも高くなっている。さらに、第2工程、すなわちリーチングの強度が本実施形態の条件よりも強い。具体的には、酸濃度が本実施形態の条件よりも高く、酸性水溶液との接触時間が本実施形態の条件よりも長くなっている。このため、比較例5-5で作製された複合金属粒子の組成及び結晶子径は本実施形態の条件を満たさない。さらに、貴金属元素の表面積1m当たりの酸素分子の脱離量の積算値、及び貴金属元素の表面積1m当たりの二酸化炭素分子の脱離量の積算値が本実施形態の条件を満たさない。このため、初期活性及び耐久性が不合格レベルとなった。
より具体的に説明すると、1回目のアニール処理の強度が本実施形態の条件よりも強いので、複合金属粒子が凝集・粗大化し、結晶子径が大きくなる。この結果、複合金属粒子の結晶子径が本実施形態の条件を満たさなくなり、初期活性が低下する。固体高分子形燃料電池を作動させた際の反応場が狭くなるからである。さらに、リーチングの強度が本実施形態の条件よりも強いので、多量の遷移金属元素がリーチングによって除去され、上述した「組成ずれ」が起こる。このため、複合金属粒子の組成は本実施形態の条件を満たさない。この点でも初期活性が低下する。さらに、リーチングの強度が本実施形態の条件よりも強くなっていることから、複合金属粒子の表面に激しい凹凸が形成される。比較例5-5ではリーチング後にアニール処理を行わないので、このような凹凸は平滑化されない。このため、凹凸によって複合金属粒子の奥に存在する遷移金属元素が表面に露出する。したがって、貴金属元素の表面積1m当たりの酸素分子の脱離量の積算値が本実施形態の条件を満たさず、合金触媒の耐久性が低下する。また、複合金属粒子の表面に多くの遷移金属元素(より詳細には遷移金属元素の酸化物)が露出していることから、当該酸化物に起因して二酸化炭素分子の脱離量の積算値が大きくなり、本実施形態の条件を満たさなくなる。この点でも合金触媒の耐久性が低下する。
比較例5-6は、特許文献2の実施例を再現した例である。比較例5-6でも初期活性及び耐久性が不合格レベルとなった。比較例5-6では、第1工程、すなわち1回目のアニール処理の強度が本実施形態の条件よりも強い。具体的には、熱処理時間が本実施形態の条件よりも長くなっている。さらに、第2工程、すなわちリーチングの強度が本実施形態の条件よりも強い。具体的には、酸濃度が本実施形態の条件よりも高く、酸性水溶液との接触時間が本実施形態の条件よりも長くなっている。なお、加熱温度は本実施形態の条件よりも低くはなっているものの、全体としてはリーチングの強度が強いと言える。さらに、第4工程、すなわち2回目のアニール処理の強度が本実施形態の条件よりも強くなっている。具体的には、雰囲気ガス温度が本実施形態の条件よりも高く、熱処理時間が本実施形態の条件よりも長くなっている。このため、比較例5-6で作製された複合金属粒子の組成及び結晶子径は本実施形態の条件を満たさない。さらに、貴金属元素の表面積1m当たりの酸素分子の脱離量の積算値、及び貴金属元素の表面積1m当たりの二酸化炭素分子の脱離量の積算値が本実施形態の条件を満たさない。このため、初期活性及び耐久性が不合格レベルとなった。
より具体的に説明すると、比較例5-6では、1回目のアニール処理の強度が本実施形態の条件よりも強いので、複合金属粒子が凝集・粗大化し、結晶子径が大きくなる。この結果、複合金属粒子の結晶子径が本実施形態の条件を満たさなくなり、初期活性が低下する。固体高分子形燃料電池を作動させた際の反応場が狭くなるからである。さらに、第2工程、すなわちリーチングの強度が本実施形態の条件よりも強くなっている。このため、多量の遷移金属元素がリーチングによって除去され、上述した「組成ずれ」が起こる。このため、複合金属粒子の組成は本実施形態の条件を満たさない。この点でも初期活性が低下する。さらに、リーチングの強度が本実施形態の条件よりも強くなっていることから、複合金属粒子の表面に激しい凹凸が形成される。このような凹凸によって複合金属粒子の奥に存在する遷移金属元素が表面に露出する。さらに、第4工程、すなわち2回目のアニール処理の強度が本実施形態の条件よりも強くなっている。このため、2回目のアニール処理によって合金化が必要以上に進み、複合金属粒子の奥に存在する多くの遷移金属元素が表面に移動し、露出する。なお、2回目のアニール処理によっても複合金属粒子の結晶子径が粗大化する。したがって、比較例5-6で作製された複合金属粒子の表面には多くの遷移金属元素が残留し、かつ大きな凹凸が残留している。さらに、複合金属粒子の表面の貴金属元素が整列していない。なお、2回目のアニール処理によって凹凸が緩和されているとも考えられるが、仮に凹凸が緩和されても表面に多数の遷移金属元素が残留することには変わりがない。このため、貴金属元素の表面積1m当たりの酸素分子の脱離量の積算値が本実施形態の条件を満たさず、合金触媒の耐久性が低下する。また、複合金属粒子の表面に多くの遷移金属元素(より詳細には遷移金属元素の酸化物)が露出していることから、当該酸化物に起因して二酸化炭素分子の脱離量の積算値が大きくなり、本実施形態の条件を満たさなくなる。この点でも合金触媒の耐久性が低下する。
比較例5-7は、特許文献3の実施例を再現した例である。比較例5-7でも初期活性及び耐久性が不合格レベルとなった。比較例5-7では、第1工程、すなわち1回目のアニール処理の強度が本実施形態の条件よりも強い。具体的には、熱処理時間が本実施形態の条件よりも長くなっている。さらに、第2工程、すなわちリーチングの強度が本実施形態の条件よりも強い。具体的には、酸濃度及び加熱温度が本実施形態の条件よりも高く、酸性水溶液との接触時間が本実施形態の条件よりも長くなっている。このため、比較例5-7で作製された複合金属粒子の結晶子径は本実施形態の条件を満たさない。さらに、貴金属元素の表面積1m当たりの酸素分子の脱離量の積算値、及び貴金属元素の表面積1m当たりの二酸化炭素分子の脱離量の積算値が本実施形態の条件を満たさない。このため、初期活性及び耐久性が不合格レベルとなった。
より具体的に説明すると、比較例5-7では、1回目のアニール処理の強度が本実施形態の条件よりも強いので、複合金属粒子が凝集・粗大化し、結晶子径が大きくなる。この結果、複合金属粒子の結晶子径が本実施形態の条件を満たさなくなり、初期活性が低下する。固体高分子形燃料電池を作動させた際の反応場が狭くなるからである。さらに、第2工程、すなわちリーチングの強度が本実施形態の条件よりも強くなっている。このため、多量の遷移金属元素がリーチングによって除去され、上述した「組成ずれ」が起こる。ただし、仕込みの遷移金属元素のモル比が大きいことから、複合金属粒子の組成は本実施形態の条件を満たしている。一方で、リーチングによって複合金属粒子の表面には激しい凹凸が形成される。また、複合金属粒子の内部に多数の気孔が形成される。このため、複合金属粒子が不安定な状態となる。このため、複合金属粒子が不安定な状態となり、初期活性が低下する。また、このような凹凸によって複合金属粒子の奥に存在する遷移金属元素が表面に露出する。第4工程、すなわち2回目のアニール処理の強度は本実施形態の条件を満たすが、このアニール処理では凹凸を十分に平滑化することができない。したがって、比較例5-7で作製された複合金属粒子の表面には多くの遷移金属元素が残留し、かつ大きな凹凸が残留している。さらに、複合金属粒子の表面の貴金属元素が整列していない。このため、貴金属元素の表面積1m当たりの酸素分子の脱離量の積算値が本実施形態の条件を満たさず、合金触媒の耐久性が低下する。また、複合金属粒子の表面に多くの遷移金属元素(より詳細には遷移金属元素の酸化物)が露出していることから、当該酸化物に起因して二酸化炭素分子の脱離量の積算値が大きくなり、本実施形態の条件を満たさなくなる。この点でも合金触媒の耐久性が低下する。
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。

Claims (6)

  1. 貴金属元素及び遷移金属元素を含む複合金属粒子と、
    前記複合金属粒子を担持する触媒担体と、を備え、
    前記貴金属元素は、Pt、Au、及びPdからなる群から選択される何れか1種以上であり、
    前記遷移金属元素は、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、及びNiからなる群から選択される何れか1種類以上であり、
    前記複合金属粒子は、前記貴金属元素及び前記遷移金属元素を貴金属元素:遷移金属元素=1:0.2以上1:1以下のモル比で含み、
    前記複合金属粒子をX線回折分析した場合に、2θ=37°以上42°以下で回折ピークが観測され、当該回折ピークに基づいて算出される格子定数と、以下の式(1)とに基づいて算出される合金化率が60%以上100%以下であり、
    合金化率[%]={(バルク貴金属の格子定数)-(前記複合金属粒子の格子定数)}/{(バルク貴金属の格子定数)-(バルク複合金属の最大ピークの格子定数)}×100 (1)
    前記回折ピークに基づいて算出される前記複合金属粒子の結晶子径が2~8nmであり、
    85Kで前記複合金属粒子に吸着させた酸素分子を昇温脱離させる昇温脱離法を行った場合に、前記酸素分子に相当するm/z=32の昇温脱離曲線が130K以上190K以下の範囲に脱離ピークトップを有し、脱離ピークの面積に基づいて算出される前記酸素分子の脱離量の積算値が、前記複合金属粒子の表面に露出した貴金属部分の表面積1m当たり1.0×10-6mol以上であることを特徴とする、固体高分子形燃料電池用合金触媒。
  2. 前記酸素分子の脱離量の積算値が、前記貴金属元素の表面積1m当たり3.0×10-6mol以上であることを特徴とする、請求項1記載の固体高分子形燃料電池用合金触媒。
  3. 85Kで前記複合金属粒子に吸着させた酸素分子を昇温脱離させる昇温脱離法を行った場合に、二酸化炭素分子に相当するm/z=44の昇温脱離曲線が300K以上900K以下の範囲に脱離ピークトップを有し、脱離ピークの面積に基づいて算出される前記二酸化炭素分子の脱離量の積算値が、前記複合金属粒子の表面に露出した貴金属部分の表面積1m当たり3.0×10-7mol以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の固体高分子形燃料電池用合金触媒。
  4. 前記二酸化炭素分子の脱離量の積算値が、前記複合金属粒子の表面に露出した貴金属部分の表面積1m当たり2.5×10-7mol以下であることを特徴とする、請求項3記載の固体高分子形燃料電池用合金触媒。
  5. 前記貴金属元素はPtであり、
    前記遷移金属元素は、Fe、Co、及びNiからなる群から選択される何れか1種類以上であることを特徴とする、請求項1~4の何れか1項に記載の固体高分子形燃料電池用合金触媒。
  6. 請求項1~5の何れか1項に記載の固体高分子形燃料電池用合金触媒の製造方法であって、以下の第0工程~第10工程を含むことを特徴とする、固体高分子形燃料電池用合金触媒の製造方法。
    (第0工程)
    貴金属元素及び遷移金属元素を含む未処理複合金属粒子と、前記未処理複合金属粒子を担持する触媒担体と、を備える未処理合金触媒を準備する。
    ここで、前記貴金属元素は、Pt、Au、及びPdからなる群から選択される何れか1種以上であり、前記遷移金属元素は、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、及びNiからなる群から選択される何れか1種類以上である。
    (第1工程)
    前記未処理合金触媒を、アルゴン、窒素、及びヘリウムからなる群から選択される何れか1種以上で構成される不活性ガスと、前記不活性ガスの流量に対して50体積%以下の水素ガスとを含む雰囲気中、500℃以上900℃以下の温度で、10分以上60分以下の時間熱処理する。
    (第2工程)
    前記第1工程により得られた合金触媒を、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、及び過塩素酸からなる群から選択される何れか1種以上の酸を1.0×10-3mol/L以上5.0×10-3mol/L以下の濃度で含む酸性水溶液に、30℃以上90℃以下の温度で、30分以上100分以下の時間接触させる。
    (第3工程)
    前記第2工程により得られた合金触媒を洗浄した後、乾燥させる。
    (第4工程)
    前記第3工程により得られた合金触媒を、アルゴン、窒素、及びヘリウムからなる群から選択される何れか1種以上で構成される不活性ガスと、前記不活性ガスの流量に対して10体積%以下の水素ガスとを含む雰囲気中、250℃以上550℃以下の温度で、10分以上60分以下の時間熱処理する。
    (第5工程)
    前記第4工程により得られた合金触媒を、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、及び過塩素酸からなる群から選択される何れか1種以上の酸を1.0×10-4mol/L以上5.0×10-4mol/L以下の濃度で含む酸性水溶液に、30℃以上70℃以下の温度で、10分以上60分以下の時間接触させる。
    (第6工程)
    前記第5工程により得られた合金触媒を洗浄した後、乾燥させる。
    (第7工程)
    前記第6工程により得られた合金触媒を、アルゴン、窒素、及びヘリウムからなる群から選択される何れか1種以上で構成される不活性ガスと、前記不活性ガスの流量に対して5体積%以下の水素ガスとを含む雰囲気中、200℃以上500℃以下の温度で、10分以上60分以下の時間熱処理する。
    (第8工程)
    前記第7工程により得られた合金触媒を、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、及び過塩素酸からなる群から選択される何れか1種以上の酸を1.0×10-5mol/L以上5.0×10-5mol/L以下の濃度で含む酸性水溶液に、30℃以上60℃以下の温度で、5分以上30分以下の時間接触させる。
    (第9工程)
    前記第8工程により得られた合金触媒を洗浄した後、乾燥させる。
    (第10工程)
    前記第9工程により得られた合金触媒を、アルゴン、窒素、及びヘリウムからなる群から選択される何れか1種以上で構成される不活性ガス雰囲気中、200℃以上450℃以下の温度で、5分以上30分以下の時間熱処理する。
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