JP7299955B2 - グリコシンターゼとしてのEndo-S2変異体、糖タンパク質の製造方法および糖タンパク質の糖鎖操作のための使用 - Google Patents
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Description
本発明は、国立衛生研究所(National Institutes of Health)により付与された助成
金番号R01 GM096973およびR01 GM080374の下での政府支援によりなされた。政府は本発明において一定の権利を有する。
本出願は、2016年1月15日に出願された同時係属中の米国仮特許出願第62/279,087号に対する優先権を主張し、この出願の内容は、全ての目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
本発明の分野
本発明は糖タンパク質合成に関し、より具体的には、トランスグリコシル化活性および限定された加水分解活性を持ち、それによって抗体の効率的なグリコシル化再構築を可能にする、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)の血清型49の株NZ131由来のEndo-β-N-アセチルグルコサミニダーゼである組換え変異体Endo S2の使用に関する。
モノクローナル抗体(mAb)は、癌、炎症性障害および感染性疾患の処置に使用される治療用タンパク質の主要なクラスを表す[1~3]。グリコシル化が抗体の安定性、生物学的機能および全体的な治療効果に重大な影響を及ぼし得るという説得力のある実験データが示されている[4~7]。例えば、Fcグリカンのコアフコシル化により抗体依存性細胞毒性(ADCC)が有意に減少され得、コアフコシル化の含有量が低い抗体は、抗癌治療において改善された治療効果を示している[8、9]。他方では、動物モデルで実証されたように、静注用免疫グロブリン(IVIG)中の微量成分である末端α-2,6-シアル化FcグリコフォームはIVIGの抗炎症活性に関与することが報告されている[10~13]。しかしながら、天然および組換えの抗体は通常、抗体の構造-活性の関係をさらに調べるために分離することが困難である不均一グリコフォームとして生じる。さらに、治療効果の主要なメカニズムとしてADCCに依存する市場の抗癌mAbの大部分の場合では、最も活性な非フコシル化グリコフォームは通常、この不均一混合物の中でマイナーな割合として存在する[8、9]。そのため、構造的に明確に定義された均一グリコフォームの抗体が製造され得る方法は、機能の研究と、より良好な抗体ベースの治療法の開発との両方にとって非常に望ましい。宿主のグリコシル化経路操作を介してグリコシル化を制御しようとする試み[14~20]と並行して、エンドグリコシダーゼにより触媒される脱グリコシル化およびその後のインタクトな抗体のトランスグリコシル化を含む化学酵素的グリコシル化再構築法が、均一な抗体グリコフォームを得るのに有望なアプローチとして現れている[21]。組換えIgG-FcドメインのFcグリカンを、タンパク質変性を必要とすることなく、Endo-AおよびEndo-D等の適切なエンドグリコシダーゼの触媒下での酵素的脱グリコシル化-トランスグリコシル化工程により再構築し得たことが示されている[22~24]。2012年には、インタクトな治療用モノクローナル抗体およびIVIGのグリコシル化再構築の最初の例が、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)由来のエンドグリコシダーゼであるEndo-Sのグリコシンターゼ変異体の発見により可能になった[25]。このアプローチでは、
リツキシマブ等のモノクローナル抗体の不均一Fcグリカンを、Endo Sにより触媒される脱グリコシル化により除去して、グリコシル化部位でα1,6-フコシル化GlcNAcアクセプターのみを担持する抗体タンパク質骨格を得る。次いで、所望のN-グリカンを、部位特異的および立体特異的な様式でEndo-Sグリコシンターゼ変異体(Endo S-D233AまたはD233Q)によりGlcNAcアクセプターに転移させて、抗体の均一グリコフォームを再構成する。いくつかの研究グループにより、構造および機能の研究のために抗体の様々な均一グリコフォームを合成すべくEndo-Sグリコシンターゼ変異体が使用されている[26~31]。Endo-Sグリコシンターゼは二分岐複合型および改変型のMan3GlcNAcコアを転移させ得たが、この変異体は高マンノース型N-グリカンの転移ではわずかな活性しか示さなかった。近年では、別のGH18ファミリのエンドグリコシダーゼである、Endo-F3由来のグリコシンターゼ変異体が生成されている[32]。D165A変異体等のEndo-F3グリコシンターゼは三分岐N-グリカンをインタクトな抗体のFcドメインに転移させ得たが、トランスグリコシル化のアクセプターとしてα1,6-フコシル化GlcNAc部分を必要とし、非フコシル化GlcNAcアクセプターに転移させ得ないことが分かった。これらの研究により、これまで利用可能なグリコシンターゼは基質特異性に起因する制限を依然と有しており且つトランスグリコシル化効率も異なることが実証されている。
本発明は、所望の糖鎖がフコシル化GlcNAc-IgGアクセプターまたは非フコシル化GlcNAc-IgGアクセプターに付加されている糖タンパク質の合成のための、減少した加水分解活性および増加したトランスグリコシル化活性を示す組換えEndo-S2変異体(Endo-S2グリコシンターゼと命名する)を提供する。このようにして、本発明は、治療用抗体の合成および再構築を可能にし、それによって特定の生物学的活性(例えば、延長されたインビボでの半減期、より低い免疫原性、増強されたインビボでの活性、増大した標的化能力、および/または治療剤を送達する能力)を提供する。本変異体Endo-S2グリコシンターゼは、既に開示されたEndo-S変異体では達成され得ない、多様なグリカンの数が増加した(例えば、高マンノース型およびハイブリッド型グリカン)治療用抗体およびこのFc断片のグリコシル化再構築を可能にする。
(Endo-S2)(配列番号1)のトランスグリコシル化活性を提供し、この変異体はエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼに対して少なくとも85%の相同性を有し、フコシル化GlcNAc-IgGアクセプターおよび非フコシル化GlcNAc-IgGアクセプターの両方でトランスグリコシル化活性を示し、このエンドグリコシダーゼは、オリゴ糖(活性化糖オキサゾリンの形態である)をまとめてフコシル化GlcNAc-IgGまたは非フコシル化GlcNAc-IgGに転移させてIgGの新規グリコフォームを形成することを可能にする。
a.コアフコシル化GlcNAc-IgGおよび非フコシル化GlcNAc-IgGまたは対応するIgG-Fc断片からなる群から選択されるアクセプターを提供すること、ならびに
b.S.ピオゲネス(S. pyogenes)Endo-S2 Asp-184変異体タンパク
質またはその断片であって触媒ドメインを含み且つ野生型Endo-S2酵素と比較して増加したトランスグリコシル化および減少した加水分解活性を示す断片の存在下で、このアクセプターと、活性化オリゴ糖部分を含むドナー基質とを反応させることであって、この活性化オリゴ糖部分をアクセプターに転移させて均一なフコシル化糖タンパク質または非フコシル化糖タンパク質を得る、こと
を含む化学酵素的方法を提供する。
a.アスパラギンが連結されたコアフコシル化N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)残基を含むコアフコシル化アクセプタータンパク質を提供すること、ならびに
b.エンドグリコシダーゼ-S2 184変異体タンパク質またはその断片であって触媒ドメインを含み且つ野生型Endo-S2酵素と比較して増加したトランスグリコシル化および減少した加水分解活性を示す断片の存在下で、このコアフコシル化アクセプター
タンパク質と活性化オリゴ糖ドナーとを酵素的に反応させることであって、この活性化オリゴ糖ドナーは、所定の数およびタイプの糖残基を含むオリゴ糖部分を担持し、このオリゴ糖部分はアクセプタータンパク質に共有結合的に連結され、それによって所定のオリゴ糖部分を有するコアフコシル化IgG断片またはコアフコシル化IgG-Fc断片が調製される、こと
を含む方法を提供する。
a.コアフコシル化されたまたはフコシル化されていないGlcNAc-IgG断片またはIgG-Fc断片から選択されるアクセプターを提供すること、ならびに
b.S.ピオゲネス(S. pyogenes)Endo-S Asp-184変異体タンパク質
またはその断片であって触媒ドメインを含み且つ野生型Endo-S2酵素と比較して増加したトランスグリコシル化および減少した加水分解活性を示す断片の存在下で、このアクセプターとドナー基質とを反応させることであって、このドナー基質は、規定の数およびタイプの糖残基ならびに特有の連結タイプを有する所定のオリゴ糖成分を含み、それによって均一なフコシル化糖タンパク質または非フコシル化糖タンパク質が得られる、ことを含む方法に関する。
質またはこの断片はアミノ酸残基中に追加の変異を含み得るが、D184変異を担持することが重要である。
a.Fc N-グリカンを含むフコシル化糖タンパク質基質を提供すること、
b.このフコシル化糖タンパク質基質をエンド酵素で処理し、N-グリカン中の2つのコアGlcNAc残基の間の結合を加水分解して、コアフコシル化されたまたはフコシル化されていないGlcNAc-IgG断片またはIgG-Fc断片を得ること、ならびに
c.配列番号2~配列番号20からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するEndo-S2変異体またはその断片であって触媒ドメインを含み且つ野生型Endo-S2酵素(配列番号1)と比較して増加したトランスグリコシル化および減少した加水分解活性を示す断片の存在下で、このオリゴ糖をAsnが連結されたGlcNAc部分に接続させることであって、それによって所定のオリゴ糖成分が付加される、こと
を含む方法に関する。
a.不均一なN-グリカンを担持する天然供給源また組換え供給源から得られる、フコ
シル化されたまたはフコシル化されてないGlcNAc-IgG断片またはIgG-Fc断片を提供すること、
b.天然または組換えのIgG断片またはIgG-Fc断片をエンド酵素(野生型エンドグリコシダーゼまたは効率的な加水分解活性を有する変異体エンドグリコシダーゼ)で処理することであって、ペプチドドメインの最も近くに位置する2つのGlcNAc残基の間の結合を加水分解して、それによってコアフコシル化されたまたはフコシル化されていないGlcNAc-IgG断片またはIgG-Fc断片を担持する脱グリコシル化タンパク質が形成される、こと、ならびに
c.所定のオリゴ糖をGlcNAc残基に付着させることであって、S.ピオゲネス(S. pyogenes)Endo-S2 Asp-184変異体酵素またはその断片であって触媒
ドメインを含み且つ野生型Endo-S2酵素と比較して増加したトランスグリコシル化および減少した加水分解活性を示す断片によるトランスグリコシル化により、天然のベータ-1,4-グリコシド結合を再構成し、それによって所定のオリゴ糖成分が付加される、こと
を含む方法に関する。
a.天然に存在するIgG抗体または組換え抗体またはFc N-グリカンを担持するFcドメインを前駆体として使用すること、
b.Fcドメインを脱グリコシル化してGlcNAc-アクセプターを形成するために、野生Endo-S2等のエンドグリコシダーゼを使用してFc脱グリコシル化することであって、GlcNAc部分は抗体のFc領域に位置し、GlcNAc部分はコアフコシル化されているかまたはフコシル化されていない、こと、および
c.Endo-S2変異体 配列番号2~配列番号20またはそれらの断片であって触媒ドメインを含み且つ野生型Endo-S2酵素と比較して増加したトランスグリコシル化および減少した加水分解活性を示す断片からなる群から選択される酵素の触媒作用下で、所定の数の糖残基を有するオリゴ糖オキサゾリンまたはシアログリカンオキサゾリンにより抗体中のGlcNAc部分をトランスグリコシル化して、所定の数の糖類(saccharides)を有する修飾抗体を形成すること
を含む方法に関する。
a.Fc N-グリカンを担持するIVIGを提供すること、
b.GlcNAc-アクセプターを形成するために、Endo-S等のエンドグリコシダーゼを使用してFc N-グリカンをFc脱グリコシル化することであって、このGlcNAc-アクセプターはIVIGのFc領域に位置しており、このGlcNAc-アクセプターはフコシル化されているかまたはフコシル化されていない、こと、ならびに
c.シアル化IVIGを形成するために、Endo-S2変異体 配列番号2~配列番号20またはそれらの断片であって触媒ドメインを含み且つ野生型Endo-S2酵素と比較して増加したトランスグリコシル化および減少した加水分解活性を示す断片からなる
群から選択される酵素の触媒作用下で、所定の数の糖残基を有するシアログリカンオキサゾリンによりGlcNAc-アクセプターをトランスグリコシル化すること
を含む方法を提供する。
a.天然または組換えのIgG抗体またはIgG-Fc断片を提供することであって、この組換えIgGまたはIgG-Fcは、酵母、昆虫、植物およびあらゆる哺乳動物の発現系が挙げられるがこれらに限定されない典型的なタンパク質発現系から産生されている、こと、
b.Endo-H、Endo-A、Endo-S、Endo S2(WT)および/またはEndo-F3からなる群から選択される酵素によりN-グリカンを除去して、コアフコシル化GlcNAc含有タンパク質または非フコシル化GlcNAc含有タンパク質を形成すること、
c.鎖中に規定の数およびタイプの糖残基を含む所望のオリゴ糖成分を有する糖オキサゾリンまたはシアログリカンオキサゾリンを提供すること、ならびに
d.ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)Endo-S2 Asp-184変異体酵素またはその断片であって野生型Endo-S2酵素と比較して増加したトランスグリコシル化および減少した加水分解活性を示す断片からなる群から選択されるエンドグリコシダーゼにより、所望の数の糖残基を有する糖オキサゾリンまたは所望の数の糖残基およびシアル酸残基を有するシアログリカンオキサゾリンとともに、フコシル化GlcNAc含有タンパク質または非フコシル化GlcNAc含有タンパク質を酵素的にトランスグリコシル化することであって、それによって所望の数の糖残基および/またはシアル酸の伸長を有する均一なコアフコシル化されたまたはフコシル化されていないIgG抗体またはIgG-Fc断片が形成される、こと
を含む方法に関する。
末端の糖残基またはシアル酸に接続した治療剤または薬剤とを有する再構築IgGまたは再構築IgG-Fc断片を含む送達デバイスをさらに提供する。
、マツズマブ(Merck)、CP-675,206(Pfizer)、CAL(Roche)、SGN-30(Seattle Genetics)、ザノリムマブ(SeronoおよびGenmab)、アデカツムマブ(adecatumumab)(Sereno)、オレゴボマブ(United Therapeutics)、ニモツズマブ(YM Bioscience)、ABT-874(Abbott Laboratories)、デノスマブ(Amgen)、AM 108(Amgen)、AMG 714(Amgen)
、フォントリズマブ(Biogen IdecおよびPDL BioPharm)、ダクリズマブ(Biogent Idec
およびPDL BioPharm)、ゴリムマブ(CentocorおよびSchering-Plough)、CNTO 1275(Centocor)、オクレリズマブ(GenetechおよびRoche)、HuMax-CD20(Genmab)、ベリムマ
ブ(HGSおよびGSK)、エプラツズマブ(Immunomedics)、MLN1202(Millennium Pharmaceuticals)、ビジリズマブ(PDL BioPharm)、トシリズマブ(Roche)、オクレルリズマブ(ocrerlizumab)(Roche)、セルトリズマブペゴル(UCB、以前はCelltech)、エクリズマブ(Alexion Pharmaceuticals)、ペキセリズマブ(Alexion PharmaceuticalsおよびProcter & Gamble)、アブシキシマブ(Centocor)、ラニビジムマブ(ranibizimumab)(Genetech)、メポリズマブ(GSK)、TNX-355(Tanox)またはMYO-029(Wyeth)。
a.エンドグリコシダーゼにより抗体から不均一な糖鎖を除去することであって、元のグリコシル化部位に接続した単一のフコシル化GlcNAc部分または非フコシル化GlcNAc部分を残す、こと、および
b.タグが付与された抗体を得るためにエンドグリコシダーゼにより触媒されたトランスグリコシル化により、少なくとも1つのタグを有するコアオリゴ糖またはシアログリカンオキサゾリンをフコシル化GlcNAc部分または非フコシル化GlcNAc部分に転移させることであって、このエンドグリコシダーゼは、Endo-S2変異体 配列番号2~配列番号20またはそれらの断片であって触媒ドメインを含み且つ野生型Endo-S2酵素と比較して増加したトランスグリコシル化および低減した低い加水分解活性を示す断片からなる群から選択される、こと
を含む方法に関する。
この抗体は本発明に従って改変され得、且つ癌を有する人々の処置のための標的療法として設計されている、抗体-薬物コンジュゲートを提供する。具体的には、ADCは以下の2つの部分:モノクローナル抗体、およびこの抗体に連結された少量の非常に強力な細胞傷害性薬物を含む。ADCの抗体が標的細胞の表面上の特定のレセプターと結合すると、この連結が壊れ、ADCは細胞内に致死性毒素を放出する。特異的モノクローナル抗体は本明細書において後に説明され、可能性のある細胞傷害性薬物でもある。そのため、本発明は、癌を処置するための治療剤(例えばケモカインおよび/またはサイトカイン)等の追加部分をさらに含み、それによって抗体-薬物コンジュゲート(ADC)を形成する修飾抗体を提供する。
本発明は、生成物を加水分解することなく複合型N-グリカン、高マンノース型N-グリカンおよびハイブリッド型N-グリカンを、活性化グリカンオキサゾリンから脱グリコシル化されたインタクトな抗体へと転移させることが可能な顕著なトランスグリコシル化効率を示す新規のグリコシンターゼEndoS2 Asp184変異体を提供する。本明細書において、グリコシンターゼEndoS2 Asp184変異体は、インタクトな抗体のコアフコシル化GlcNAc-Fcドメインおよび非フコシル化GlcNAc-Fcドメインの両方に効率的に作用して、様々な規定のIgGグリコフォームが生成されることを発見した。本明細書で説明されているように、Endo-S2は強力なトランスグリコシル化活性を持ち、系統的な部位特異的変異誘発により、明らかな生成物加水分解活性なしに顕著なトランスグリコシル化活性を示す、D184MおよびD184Q等のいくつかのグリコシンターゼ変異体を発見した。さらに、本明細書では、Endo-S2グリコシンターゼは、抗体のグリコシル化再構築のためにN-グリカンの3つの主要な型(複合型、高マンノース型およびハイブリッド型)の転移が可能である、顕著に緩和された基質特異性を示したことが分かる。さらに、本明細書でさらに説明されているように、Endo-S2グリコシンターゼ変異体は概して、トランスグリコシル化のためにEndo-S変異体と比べてはるかに活性であることを発見した。2種の治療用モノクローナル抗体(リツキシマブおよびトラスツズマブ(ハーセプチン))の高効率のグリコシル化再構築が説明されている。さらに、抗体および静注用免疫グロブリンを、抗炎症活性が増加したFc完全シアル化グリコフォームへと形質転換した。さらに、本発明は、FcγIIIaレセプター結合活性が増強された、ADCC活性が増加した均一な非フコシル化グリコフォーム、および他のグリコフォームへとさらに形質転換され得るアジドタグ付きグリコフォームを提供する。
(1987))を参照されたい。
本願の明細書で使用される場合、「a」または「an」は1つまたは複数を意味し得る。本願の特許請求の範囲で使用される場合、単語「~を含む」と合わせて使用される際には、単語「a」または「an」は1つまたは複数を意味し得る。本明細書で使用される場合、「別の」は、少なくとももう一つまたはより多くを意味し得る。
1);レトロウイルス、例えばRSV、HTLV-1(Taxonomy ID:39015)およ
びHTLV-II(Taxonomy ID:11909);ヘルペスウイルス、例えばEBV(Taxonomy ID:10295)、CMV(Taxonomy ID:10358)または単純ヘルペスウイ
ルス(ATCC#:VR-1487);レンチウイルス、例えばHIV-1(Taxonomy ID:12721)およびHIV-2 Taxonomy ID:11709);ラブドウイルス、例えば狂犬病;ピコルノウイルス、例えばポリオウイルス(Taxonomy ID:12080);ポ
ックスウイルス、例えばワクシニア(Taxonomy ID:10245);ロタウイルス(Taxonomy ID:10912);ならびにパルボウイルス、例えばアデノ随伴ウイルス1(Taxonomy ID:85106)。
137)、Rev(National Institute of Allergy and Infectious Disease HIV Repositoryカタログ#2088;GenBank登録#L14572)、Pol(National Institute of Allergy and Infectious Disease HIV Repositoryカタログ#238;GenBank登録#AJ237568)ならびにgp120のT細胞エピトープおよびB細胞エピトープ;B型肝炎表面抗原(GenBank登録#AF043578);ロタウイルス抗原、例えば、VP4(GenBank登録#AJ293721)およびVP7(GenBank登録#AY003871);インフルエンザウイルス抗原、例えば赤血球凝集素(GenBank登録#AJ404627);核タンパク質(GenBank登録#AJ289872);ならびに単純ヘルペスウイルス抗原、例えばチミジンキナーゼ(GenBank登録#AB047378)。
ビブリオ種(Vibrio spp.)およびボレリア・ブルグドルフェリ(Borellia burgdorferi
)。
の菌体抗原、例えばCFA/I線毛抗原および易熱性毒素の非毒性Bサブユニット;ボルデテラ・パータシス(Bordetella pertussis)のパータクチン、B.パータシス(B. pertussis)のアデニル酸シクラーゼ溶血素、クロストリジウム・テタニ(Clostridium teta
ni)の破傷風毒素のフラグメントC、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borellia burgdorferi)のOspA、リケッチア・プロワツェキイ(Rickettsia prowazekii)およびリケッ
チア・チフィ(Rickettsia typhi)の防御パラ結晶性表層タンパク質(protective paracrystalline-surface-layer protein)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)のリステリオリシン(「Llo」および「Hly」としても知られている)ならびに/またはスーパーオキシドジスムターゼ(「SOD」および「p60」としても知
られている);ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)のウレアーゼ、ならびにバチルス・アントラックス(Bacillus anthrax)の致死毒素および/または防御抗原のレセプター結合ドメイン。
;ジアルジア種(Giardia spp.)、例えばジアルジア・インテスティナリス(Giardia intestinalis)(ATCC#:30888D);ボオフィルス種(Boophilus spp.);バベシア種(Babesia spp.)、例えばバベシア・ミクロチ(Babesia microti)(ATCC#
:30221);エントアメーバ種(Entamoeba spp.)、例えば赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)(ATCC#:30015);エイメリア種(Eimeria spp.)、例えば
エイメリア・マキシマ(Eimeria maxima)(ATCC#40357);リーシュマニア種(Leishmania spp.)(Taxonomy ID:38568);住血吸虫種(Schistosome spp.)
、例えばマンソン住血吸虫(Schistosoma mansoni)(GenBank登録#AZ301
495);ブルギア種(Brugia spp.)、例えばブルギア・マレイ(Brugia malayi)(GenBank登録#BE352806);ファスキオラ種(Fascida spp.)、例えば肝蛭(Fasciola hepatica)(GenBank登録#AF286903);ディロフィラリア
種(Dirofilaria spp.)、例えばディロフィラリア・イミティス(Dirofilaria immitis
)(GenBank登録#AF008300);糸状虫種(Wuchereria spp.)、例えば
バンクロフト糸状虫(Wuchereria bancrofti)(GenBank登録#AF250996);およびオンコセルカ種(Onchocerea spp);例えば回旋糸状虫(Onchocerca volvulus)(GenBank登録#BE588251)。
#M20670)のスポロゾイト周囲抗原;プラスモジウム種(Plasmodium spp.)の肝
臓期抗原、例えば肝臓期抗原1(LSA-1と称される;GenBank登録#AF086802);プラスモジウム種(Plasmodium spp.)のメロゾイト期抗原;例えば、メロ
ゾイト表面抗原-1(MSA-1またはMSP-1とも称される;GenBank登録#AF199410);赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)の表面抗原、例えばガラ
クトース特異的レクチン(GenBank登録#M59850)またはセリンリッチ赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)タンパク質;リーシュマニア種(Leishmania spp.)の表面タンパク質、例えば森林型熱帯リーシュマニア(Leishmania major)(GenBank登録#Y00647)の63kDa糖タンパク質(gp63)または森林型熱帯リーシュマニア(Leishmania major)の46kDa糖タンパク質(gp46);ブルギア・マレイ(Brugia malayi)(GenBank登録#U77590)のパラミオシン;マンソ
ン住血吸虫(Schistosoma mansoni)(GenBank登録#W06781)のトリオー
スリン酸イソメラーゼ;コルブリフォルミス毛様線虫(Trichostrongylus colubriformis)(GenBank登録#M63263)の分泌型グロビン様タンパク質;肝蛭(Fasciola hepatica)(GenBank登録#M77682)のグルタチオン-S-トランスフ
ェラーゼ;ボビス住血吸虫(Schistosoma bovis)(GenBank登録#M77682
);日本住血吸虫(S. japonicum)(GenBank登録#U58012);ならびにボビス住血吸虫(Schistosoma bovis)および日本住血吸虫(S. japonicum)のKLH(B
ashir他、上記を参照)。
(TRPとも称される;GenBank登録#AJ132933)および腫瘍特異的ペプチド抗原が挙げられる。
)、デラビルジン(Delaviradine)(DLV)、エファビレンツ(EFV)、ネビラピン(NVP)、サクイナビル(SQV)、リトナビル(RTV)、インジナビル(IDV)、ネルフィナビル(NFV)、アンプレナビル(APV)、ロピナビル(LPV)、アタザナビル、コンビビル(ZDV/3TC)、カレトラ(RTV/LPV)、トリジビル(ZDV/3TC/ABC)。
;アンジオテンシン;アンジオテンシンII;アスパラギナーゼ;心房性ナトリウム利尿
ペプチド;心房性ナトリウム利尿ペプチド(atrial sodium diuretic peptide);バシトラシン;ベータ-エンドルフィン;血液凝固因子VII、VIIIおよびIX;血液胸腺因子(FTS);血液胸腺因子誘導体;ボンベシン;骨形態形成因子(BMP);骨形態形成タンパク質;ブラジキニン;セルレイン;カルシトニン遺伝子関連ポリペプチド(CGRP);カルシトニン;CCK-8;細胞増殖因子(例えば、EGF;TGF-アルファ;TGF-ベータ;PDGF;酸性FGF;塩基性FGF);セルレイン;ケモカイン;コレシストキニン;コレシストキニン-8;コレシストキニン-パンクレオザイミン(CCK-PZ);コリスチン;コロニー刺激因子(例えば、CSF;GCSF;GMSCF;MCSF);副腎皮質刺激ホルモン放出因子(CRF);サイトカイン;デスモプレッシン;ジノルフィン;ジペプチド;ジスムターゼ;ダイノルフィン;エレドイシン;エンドルフィン;エンドセリン;エンドセリン拮抗ペプチド;エンドセリン(endotherin);エンケファリン;エンケファリン誘導体;上皮増殖因子(EGF);エリスロポエチン(EPO);卵胞刺激ホルモン(FSH);ガラニン;胃抑制ポリペプチド;ガストリン放出ポリペプチド(GRP);ガストリン;G-CSF;グルカゴン;グルタチオンペルオキシダーゼ;グルタチオ-ペルオキシダーゼ;性腺刺激ホルモン(例えば、ヒト胎盤性性腺刺激ホルモンならびにこのアルファサブユニットおよびベータサブユニット);グラミシジン;グラミシジン群、成長因子(EGF)、成長ホルモン放出因子(GRF);成長ホルモン群;ホルモン放出ホルモン(LHRH);ヒト心房ナトリウム利尿性ポリペプチド(h-ANP);ヒト胎盤ラクトゲン;インスリン;インスリン様成長因子(IGF-I;IGF-II);インターフェロン;インターフェロン類(例えば、アルファ-インターフェロン類、ベータ-インターフェロン類およびガンマ-インターフェロンル類);インターロイキン(例えば1;2;3;4;5;6;7;8;9;10;11および12);腸ポリペプチド(VIP);カリクレイン;キョートルフィン;ルリベリン;黄体形成ホルモン(LH);黄体形成ホルモン放出ホルモン(LH-RH);塩化リゾチーム、メラニン形成細胞刺激ホルモン(MSH);メラニン保有細胞刺激ホルモン;メリチン;モチリン;ムラミル;ムラミルジペプチド;神経成長因子(NGF);神経栄養因子(例えば、NT-3;NT-4;CNTF;GDNF;BDNF);神経ペプチドY;ニューロテンシン;オキシトシン;パンクレアスタチン;膵ポリペプチド;パンクレオザイミン;副甲状腺ホルモン(PTH);ペンタガストリン;ポリペプチドYY;脳下垂体アデニルシクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP);血小板由来成長因子;ポリミキシンB;プロラクチン;タンパク質合成刺激ポリペプチド;PTH関連タンパク質;リラキシン;レニン;セクレチン;血清胸腺因子;ソマトメジン;ソマトスタチン誘導体;スーパーオキシドジスムターゼ;タフトシン;テトラガストリン;トロンボポエチン(TPO);胸腺液性因子(THF);サイモポエチン;サイモシン;チモスチムリン(thymostimulin);甲状腺ホルモン放出ホルモン;甲状腺刺激ホルモン(TSH);甲状腺刺激ホル
モン放出ホルモン(TRH);トリプシン;タフトシン:腫瘍増殖因子(TGF-アルファ);腫瘍壊死因子(TNF);チロシジン;ウロガストロン;ウロキナーゼ;血管作動性腸ポリペプチド;およびバソプレシン。
)の構造のみが異なるグリコフォームの混合物として生成される。
る構造的改変にかけ得る。この官能基は、毒素、特殊抗原(例えばアルファ-Gal)、放射性種、光活性種、PEG等が挙げられるがこれらに限定されない任意の適切なタイプであり得る。この糖タンパク質を、この糖タンパク質のアジド官能基と目的の官能基部分を有するアルキンとの「クリックケミストリー」付加環化反応で触媒的に反応させ得る。これらアジド官能基およびアルキン官能基はそれぞれのライゲーション成分で切り替えられ得、この糖タンパク質はアルキニル官能基で官能化され得、目的の部分を含むアジド官能化化合物と反応され得る。クリックケミストリー反応のために他のライゲーションペアを考案し得ることも認識されるだろう。
Endo-S2グリコシンターゼ変異体の生成、およびこの変異体の、インタクトなモノクローナル抗体リツキシマブのグリコシル化再構築のための使用
グリコシンターゼは、加水分解の最中でのオキサゾリニウムイオン中間体の形成の促進に関与するGH85ファミリでの重要なアスパラギン(Asn)またはGH18ファミリでのアスパラギン酸(Asp)残基の部位特異的な変異誘発により、いくつかのGH85エンドグリコシダーゼ(ENGアーゼ)、例えばEndoA、EndoM、EndoDおよびGH18エンドグリコシダーゼEndoSから既に作られている[36、38]。Endo-S2は、グリコシドヒドロラーゼファミリ18(GH18)に属するエンドグリコシダーゼであり[33]、トランスグリコシル化活性を有することが最近分かったEndoS、EndoF1、EndoF2およびEndoF3と同一のGHファミリである。EndoS2に触媒される加水分解は、EndoS等の他のGH18エンドグリコシダーゼにより実証されているように、オキサゾリニウムイオン中間体の形成に関与する基質補助機構によっても進行するという前提に基づいて、オキサゾリニウムイオン形成の促進に関与する残基を同定して変異させることにより、Endo-S2由来の潜在的グリコシンターゼを作成した。Endo-Sに関するこれまでの構造および変異誘発の研究から、233位のアスパラギン酸残基(D233)がオキサゾリン形成の促進に関与することおよびE235残基が触媒的加水分解のための一般的な酸/塩基であることが分かっている[47、48]。図2に示すように、EndoS2とEndoSとの配列アラインメント(図2)から、触媒作用のためのEndoS中での2つの重要な残基:オキサゾリニウムイオン形成の促進に関与するD184残基(EndoS中のD233に対応する)およびグリカン加水分解での一般的な酸/塩基残基としてのE186残基(EndoSのE235と同一)を同定した。そのため、D184が基質補助機構を介した加水分解におけるオキサゾリニウムイオン中間体形成を促進する重要な残基であることを前提として、19種の特定の変異体D184A~Y(配列番号2~20)をEndo-S2(配列番号1)の部位特異的変異誘発により生成した。これらの変異体および野生型Endo-S2を、CP
D融合タンパク質として高収量(20~30mg/L)で大腸菌(Escherichia coli)中において発現させ、Ni-NTAアフィニティクロマトグラフィーで精製した。
対応する均一なグリコフォーム(6)および(7)が形成される(図4Fおよび図4G)。図4Fに示すように、トランスグリコシル化生成物(6)の重鎖のデコンボリューションESI-MSは51074で単一種を示し、これはMan9GlcNAc2グリカンを担持するリツキシマブ重鎖の算出分子量(M=51082Da)と良好に一致した。同様に、図4Gに示すように、トランスグリコシル化生成物(7)の重鎖のデコンボリューションされたESI-MSは51080で単一種を示し、これはN3Man3GlcNAc2グリカンを担持するリツキシマブ重鎖の算出分子量(M=50190Da)と良好に一致した。本明細書に記載されている結果は、EndoS2およびEndoS2ベースのグリコシンターゼの併用によって可能になる高効率の脱グリコシル化-再グリコシル化プロトコルによる完全なサイズの天然高マンノース(Man9)およびシアロハイブリッド型N-グリカンのFcドメインへの一括した転移によるインタクトなIgGモノクローナル抗体のグリコシル化再構築の最初の報告を意味する。トランスグリコシル化の完了後、この生成物を単純なプロテインAアフィニティカラムクロマトグラフィーで精製し得、十分に規定された均一なグリコフォームを得た。特に、EndoS/EndoSベースのグリコシンターゼを使用することによる二分岐複合型N-グリカンのFcドメインへの転移によるインタクトなリツキシマブの糖鎖操作が報告されている。しかしながら、このシステムは、抗体への高マンノースおよびハイブリッド型グリカンの転移では非効率的である。EndoS2/EndoS2-グリコシンターゼシステムの開発により、抗体の化学酵素的糖鎖操作のグリカン指定の範囲が大幅に拡大した。
抗癌治療には非フコシル化IgGグリコフォームが望ましく、なぜならば、特にFcγIIIaレセプターの低親和性F158対立遺伝子を保有する患者の場合に、低フコース含有量のFc N-グリカンを有するmAbはインビトロでのADCC活性の増強およびインビボでの抗癌効果の増強を示したことが既に実証されているからである[8、39、40、49]。しかしながら、α-フコシダーゼを利用してインタクトなリツキシマブ中のα1,6-フコースを除去することはできない。α-1,6-フコース部分はFcドメインおよび/または複合N-グリカンにより遮断されている可能性があり、そのためα-フコシダーゼに接近できない。脱グリコシル化の結果、得られたFuc(α1,6)GlcNAcグリコフォームのリツキシマブはα-フコシダーゼにより接近できる可能性があることを理論化した。実際には、EndoS2による脱グリコシル化の後、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)由来のα1,6-フコシダーゼとの一晩のインキュ
ベーションによりα-1,6-フコース部分の大部分を除去して、GlcNAc含有リツキシマブ(8)を得ることができた。この結果はLC-MSにより裏付けられる(図6B)。次に、グリコシンターゼEndoS2-D184A、EndoS-D184QまたはEndoS-D184Nも、本質的に定量的な変換で比較的均一なフコシル化されていない複合型(9)、高マンノース型(10)およびハイブリッド型(11)のグリコフォームを生成するための複合(2)、高マンノース(3)またはハイブリッド(4)のオキサゾリンによるトランスグリコシル化のために(8)中の非フコシル化GlcNAcを認識するのに効率的であることを実証した(図5)。図6に示すように、糖鎖操作生成物(9、10、11)の同一性および純度をSDS-PAGEおよびLC-MS分析で確認した。脱フコシル化リツキシマブ(8)は49266で主要なピークを示し(図6B)、フコースの除去を裏付けた(GlcNAc-リツキシマブの重鎖に関する計算値、M=49274Da)。複合型グリカン(9)のトランスグリコシル化生成物の重鎖のデコンボリューションされたESI-MSは51268で主要な種として現れ(図6C)、シアル化二分岐複合型N-グリカンSia2Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2を担持するリツキシマブ重鎖の算出分子量(M=51276Da)と良好に一致した。同様に、高マンノース型(10)およびハイブリッド型(11)のグリカンのトランスグリコシル化生成物の重鎖のLC-MS分析は、50930(図6D)および50939(図6E)
で主要な種として現れ、それぞれ算出分子量(50936Daおよび50944Da)と良好に一致した。ハイブリッドグリカンオキサゾリンの転移では、出発物質の約33%が転移されないままである。反応条件の最適化(EndoS2変異体濃度の増加、より多くのオキサゾリンの添加等)により、反応を完了まで押し進め得るはずである。フコシル化リツキシマブ(1)は非フコシル化リツキシマブ(8)と比べて好ましいアクセプターであるように思われる。比較研究では、変異体D184A、D184NおよびD184Qは非フコシル化アクセプター(8)と比べてフコシル化GlcNAc-リツキシマブ(1)への早いトランスグリコシル化反応を有することも発見した(データは示さない)。まとめると、これらの実験結果は、市販のモノクローナル抗体からフコシル化されていない複合型、高マンノース型およびハイブリッド型の均一な(または比較的均一な)グリコフォームを作製するための複合酵素的アプローチを明らかにした。結果として得られた非フコシル化リツキシマブは、これまでの研究により示唆されているように、ADCCエフェクター機能およびCDCエフェクター機能の改善を獲得することが予想される[8、42,49]。
シアロ二分岐複合グリカンオキサゾリン(2)をフコシル化GlcNAc-リツキシマブ(1)への転移でのEndoS2-D184A、D184NおよびD184Qの活性を比較した。同一の反応条件により、アスパラギン(N)変異体は5分でオキサゾリンの30%超をアクセプターに転移させたが、アラニン(A)変異体およびグルタミン(Q)変異体は20%未満を転移させた(図7)。N変異体は複合型オキサゾリンの転移においてA変異体およびQ変異体と比べて活性であると思われる。
Endo-S2(配列番号1の44~843)をコードするcDNA配列(Endo-S2遺伝子(ndoS2)のGenBank登録番号はACI61688である)をpET22b-CPDベクターへとクローニングし、このベクターは、発現タンパク質のC末端に、ビブリオ・コレラエ(Vibrio cholerae)MARTX毒素のシステインプロテアー
ゼドメイン(CPD)および10×ヒスチジンタグを付加する[35](配列番号22)。このベクターを使用してEndo-F3およびこの変異体の高レベルの可容性発現が達成され得ることが最近報告された[32]。あるいは、Endo-S2をコードするcDNA配列は(配列番号1の1および44~843位のアミノ酸)を含み得る。同様の方法に従って、Endo-S2を大腸菌(E. coli)中で成功裏に発現させ、固定化金属イオ
ンアフィニティクロマトグラフィー(IMAC)を使用して容易に精製して20mg/L超の収量で可溶性酵素を得た。組換えEndo-S2は、市販のリツキシマブの迅速な脱グリコシル化により実証されているように高い加水分解活性を示し、この加水分解活性をLC-MS分析でモニタリングした。
基質補助機構で進行する加水分解の最中でのオキサゾリニウムイオン中間体の形成の促進に関与する重要な残基での部位特異的変異誘発により、GH85ファミリおよびGH18ファミリの両方のエンドグリコシダーゼ由来のグリコシンターゼ変異体を生成した。このグリコシンターゼ変異体は、GH85ファミリのエンドグリコシダーゼEndo-Aにとって重要なアスパラギン残基(Asn171)[36]、Endo-Mにとって重要なアスパラギン残基(Asn175)[37、38]およびEndo-Dにとって重要なアスパラギン残基(Asn322)[24]、またはGH18ファミリのエンドグリコシダーゼEndo-Sにとって重要なアスパラギン酸残基(Asp233)[25]およびEndo-F3にとって重要なアスパラギン酸残基(Asp-165)[32]を含む。Endo-S2とEndo-Sとの配列アラインメントから、Endo-S2のAsp-184は加水分解中でのオキサゾリニウムイオン形成の促進に必須のEndo-SのAsp
233に相当する残基であることが明らかになった(図2)。Endo-S2から効率的なグリコシンターゼ変異体を生成するために、Asp-184を、部位特異的変異誘発を使用して他の19種の天然アミノ酸座残基で、44~843)位の残基を含む切断型発現タンパク質中で系統的に置き換えた。特に、この置換では非天然タンパク質も使用され得ることが想定される。野生型酵素に関して実証されたのと同一の方法で、結果として得られた19種のD184変異体もpET22bCPDベクター中で可溶性タンパク質として発現させ、固定化金属イオンアフィニティクロマトグラフィーを使用して精製した。変異体酵素の発現は野生型酵素の発現と同等の収量(15~20mg/L)を示した。
インタクトな抗体中のFc N-グリカンに対する加水分解活性およびグリカンオキサゾリンによるトランスグリコシル化活性を、図8に示すスキームに従って評価した。これらの結果は、D184残基での変異体の大部分がFc N-グリカンに対する有意に減少したまたは完全に低下した加水分解活性をもたらしたことを示す。これらの内、D184F変異体、D184H変異体、D184K変異体、D184R変異体およびD184W変異体は加水分解活性を完全に欠いていたが、いくつかの他の変異体(例えば、D184C、D184E、D184G、D184N、D184S、D184Y)は依然として有意な加水分解活性を保持していることを発見した(表1)。一方、トランスグリコシル化の評価は、アクセプターとして脱グリコシル化リツキシマブを使用し且つドナー基質として二分岐複合型グリカンオキサゾリンを使用する場合にはほとんど全ての変異体がトランスグリコシル化活性を有するが、活性は様々な変異体の間で有意に変化することを示した(図8、表2)。特に、D184C、D184M、D184G、D184E、D184Y、D184SおよびD184Aが最も活性な変異体であることを発見した。しかしながら、D184C、D184G、D184E、D184Y、D184SおよびD184Aも有意に残る加水分解活性を示した。最も興味深い変異体はD184M(わずかな加水分解活性しか保持しないが非常に高いトランスグリコシル化活性(D184Cに次ぐ)を示した)であり、グリコシル化再構築のために選択される最適なグリコシンターゼ変異体のうちの1つである。
治療用モノクローナル抗体であるリツキシマブをモデルとして使用して、Endo-S2 D184変異体のトランスグリコシル化活性を調べた。市販のリツキシマブの主要なFcグリカンは、それぞれG0Fグリコフォーム、G1FグリコフォームおよびG2Fグリコフォームと命名した、0~2個のガラクトース部分を担持するコアフコシル化二分岐複合型オリゴ糖である。一般的なグリコシル化再構築アプローチを図9に示し、反応生成物をLC-MS分析で評価した(図10)。市販のリツキシマブ(図10A)中で見られるグリコフォーム混合物(G0F、G1FおよびG2F)のリツキシマブのFucα1,6GlcNAc-グリコフォーム(2)(図10B)への変換により実証されているように、野生型Endo-S2によるリツキシマブ(1)の処理によりリツキシマブが完全に
脱グリコシル化された。Fucα1,6GlcNAc-リツキシマブ(2)をWTエンドグリコシダーゼから精製し、プロテインAアフィニティクロマトグラフィーによりグリカンを遊離させ、トランスグリコシル化反応においてアクセプターとして使用した。EndoS2 D184Mは、対応するグリカンオキサゾリン(4)からFucα1,6GlcNAc-リツキシマブアクセプター(2)へとシアル化二分岐複合型(SCT)Nグリカンを効率的に転移させてリツキシマブのS2G2Fグリコフォーム(3)を形成し得ることを発見した。この反応を、20モル当量(即ち、単量体Fcドメイン当たり10モル当量)のグリカンオキサゾリンで完了へと容易に押し進め得た。出発物質をほとんど検出しなかったことから、反応収率をLC-MS分析により95%超であると推定し、このことはトランスグリコシル化の完了を裏付けた。SCT N-グリカンを担持するトランスグリコシル化生成物(3)のLC-MS分析は、(3)の重鎖が51412で単一種として現れることを明らかにし(デコンボリューションデータ)、このことは、それぞれSCT
N-グリカン(コアフコースを有する)を担持する重鎖に関する算出分子量(M=51421Da)と良好に一致する(図10C)。
抗癌治療には非フコシル化IgGグリコフォームが望ましく、なぜならば、特にFcγIIIaレセプターの低親和性F158対立遺伝子を保有する患者の場合に、低フコース含有量のFcグリコシル化を有するmAbはインビトロでのADCC活性の増強およびインビボでの抗癌効果の増強を示したことが既に実証されているからである[8、9、39、40]。Endo-S2が非フコシル化IgGをグリコシル化し得るかどうかを試験するために、Fucα1,6GlcNAc-リツキシマブ(2)をラクトバチルス・カゼイ
(Lactobacillus casei)由来の組換えα1,6-フコシダーゼ[41]と共にインキュ
ベートして、コアフコースを欠くGlcNAc-リツキシマブ(9)を得た。Endo-S2 D184Mが触媒するGlcNAc-リツキシマブ(9)のトランスグリコシル化を、シアロ二分岐複合型(CT)N-グリカンオキサゾリン(10)で実行した。D184M変異体は抗体中においてN-グリカンをGlcNAcアクセプターへと効率的に転移させて、本質的に定量的な変換で完全なガラクトシル化および非フコシル化グリコフォーム(11)を生じ得ることを発見した。トランスグリコシル化生成物(11)の重鎖のデコンボリューションされたESI-MSは、図10Iに示すように50684で単一種を示し、これは、コアフコースを有しない、完全にガラクトシル化された二分岐複合型N-グリカンを担持するリツキシマブ重鎖の算出分子量(M=50693Da)と良好に一致した。酵素的形質転換と組み合わされたLC-MS分析による重鎖の部位特異的グリコシル化の確認に加えて、トランスグリコシル化生成物(3、6、8、11)の軽鎖も23034で単一種として現れ、これは、あらゆる改変がないリツキシマブの軽鎖の算出分子量(M=23039Da)(図10D、図10F、図10H、図10J)と一致する。これらの結果は、Endo-S2が触媒するグリコシル化再構築プロセスの最中にFcドメインにおけるGlcNAcアクセプターでの転移性Nグリカンの接続を除いて重鎖および軽鎖で非酵素的改変が起きていないことを示した。完全なガラクトシル化および非フコシル化グリコフォームのリツキシマブ(11)は市販のリツキシマブと比較してFcγIIIAレセプターに対して少なくとも20倍増強された親和性を有することが既に示されていることが指摘されるべきであり、このことは有意に増強されたADCCの表れである[25]。
Endo-S2 D184MのN-グリカン基質選択の特徴をさらに明らかにするために、それぞれ複合(SCT)型、高マンノース(HM)型およびハイブリッド(Hyb)型のN-グリカンオキサゾリンで3つの平行したトランスグリコシル化反応を実行した。反応の進行を、複数の時点で採取した反応アリコートのLC-MS分析でモニタリングし、結果を図11にまとめた。同一条件下で、SCT-オキサゾリン(4)によるトランスグリコシル化反応は20分以内に完了してS2G2F-リツキシマブ(3)が生じたが、HM-オキサゾリン(7)およびHyb-オキサゾリン(5)によるトランスグリコシル化は非常に遅かった。これらの結果は、N-グリカン特異性が顕著に緩和されているにもかかわらずEndo-S2 D184Mは高マンノース型およびハイブリッド型のN-グリカンよりも複合型を好むことを示唆する。
複合型N-グリカンオキサゾリンで効率的にリツキシマブをトランスグリコシル化するEndo-Sグリコシンターゼ変異体D233QおよびD233Aを既に生成した[25]。構造および機能の研究のために均一なモノクローナル抗体を生成すべく、最近ではEndoS D233変異体が使用されている[26~31]。Endo-S2およびEndo-Sに由来するグリコシンターゼ変異体のトランスグリコシル化効率を比較するために、3つの平行なトランスグリコシル化反応を触媒すべく、Endo-S D233Q変異体、等価のEndo-S2 D184Q変異体およびEndo-S2 D184M変異体を選択した。トランスグリコシル化反応の経時変化をLC-MS分析でモニタリングし、図12にまとめた。反応条件下で、Endo-S2のD184M変異体は顕著に強力なトランスグリコシル化活性を示し、10分以内にグリカン転移が完了に達した。他のEndo-S2変異体もグリカンを円滑に転移させ得、1時間以内に完了に達した。しかしながら、対応するEndo-S変異体(D233Q)は非常に効率が低く、同一条件下では1時間で約10%のトランスグリコシル化に達した(図12)。別の実験で実証されてい
るように、Endo-S2 D184Q変異体により触媒されるトランスグリコシル化との同一レベルを達成するためには、さらに多く(10倍)のEndo-S D233Q変異体および大過剰のグリカンオキサゾリンが必要であり、Endo-S2のD184M変異体はD184Q変異体と比べてはるかに効率的であった。これらの研究は、新たに発見したEndo-S2 D184変異体は、反応の効率および基質多様性の幅の両方において、抗体のグリコシル化再構築のために既に報告されているEndo-S変異体よりも優れていることを示唆する。
Endo-S2およびこの変異体の観測した酵素特性が抗体のグリコシル化再構築に概して適用可能であることを実証するために、乳癌の処置で広く使用されている別のモノクローナル抗体トラスツズマブ(ハーセプチン)のグリコシル化再構築を実施した。トラスツズマブのシアル化グリコフォームの合成により、グリコシル化再構築を評価した(図13)。市販のトラスツズマブで見られるグリコフォーム混合物(G0F、G1FおよびG2F)(図13A)のトラスツズマブのFucα1,6GlcNAc-グリコフォーム(12)(図13B)への変換により実証されるように、野生型Endo-S2によるトラスツズマブの処置により完全に脱グリコシル化された。脱グリコシル化トラスツズマブをエンドグリコシダーゼから精製し、プロテインAアフィニティクロマトグラフィーによりグリカンを遊離させ、トランスグリコシル化反応においてアクセプターとして使用した。Endo-S2 D184M変異体の存在下でのドナー基質SCT-オキサゾリン(4)とのFucα1,6GlcNAc-トラスツズマブ(12)のインキュベーションにより、脱グリコシル化トラスツズマブ(12)が完全グリコシル化トラスツズマブ(13)へと迅速に変換された。この反応は本質的に定量的であり、単一のトランスグリコシル化生成物(13)が生じた。このトランスグリコシル化生成物(13)のLC-MS分析により、(13)の重鎖が51500Da(デコンボリューションデータ)で単一種として表れたことが明らかになり(図13C)、このことは重鎖上での単一のシアル化N-グリカンの接続を示す。一方、このトランスグリコシル化生成物(13)の軽鎖は23438で単一種として現れ、これは、いかなる付加的な改変も行なわれていないトラスツズマブの軽鎖と良好に一致する(図13D)。
されたグリコシンターゼ(例えば、Endo-A、Endo-M、Endo-SおよびEndo-F3に由来するもの)と比べて、抗体のグリコシル化再構築のために広い基質特性およびはるかに強力なトランスグリコシル化活性を示した。これらの発見は、結果として得られた19種の変異体の加水分解活性およびトランスグリコシル化活性の比較分析と相まって、重要な残基D184での系統的な変異誘発により可能になった。この実験データはまた、19種の変異体の間において加水分解活性およびトランスグリコシル化活性の両方で顕著な差異も明らかにしたが(表1および表2)、このことは、この比較研究なしでは予測することは困難であろう。グリコシル化再構築のために高いトランスグリコシル化活性を示すが、わずかな加水分解活性しか保持しない、D184M変異体およびD184Q変異体等のいくつかの注目すべき変異体を同定した。
材料-モノクローナル抗体リツキシマブおよびトラスツズマブ(ハーセプチン)は、Genentech Inc., (South San Francisco, CA)の製品であった。シアロ複合型オキサゾリン
およびシアログリカン複合型オキサゾリンを、既に報告された手順[42]に従って合成した。高マンノース型(HM)グリカン(Man9GlcNAc)を、既に説明されている手順[43]によりダイズ粉から調製した。ハイブリッド型(Hyb)グリカン(Neu5AcGalGlcNAcMan5GlcNAc)の合成を、β-1,2-GlcNAcトランスフェラーゼ(GnT1)[44]、β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ[45]およびα-2,6-シアリルトランスフェラーゼ[46]の触媒作用下でのMan5GlcNAcの連続的な酵素的グリコシル化[43]により達成した。HMグリカンオキサゾリンおよびハイブリッドグリカンオキサゾリンを、既に説明されているワンポット形質転換手順[42]に従って合成した。ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)由来のEndo-S D233Qを、本発明者らの以前の手順[25]に従って過剰発現させて精製した。
ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)NZ131(血清型M49)由来のEndo-S2のアミノ酸44~843をコードするcDNAをPCRで増幅させ、pCPDLassoベクター(pET22b-CPD誘導体)(35)にクローニングし、ビブリオ・コレラエ(Vibrio cholerae)MARTX毒素のCPD(システイン
プロテアーゼドメイン)およびヒスチジンタグの配列を配列番号22に記載する。Asp-184残基の飽和変異誘発のために、フォワードプライマー5’-CGTAAATTCGTGCTCAATNNNAATATCTAGTCCATCGACACCACGATCAGTT-3’(配列番号23)およびリバースプライマー5’-AACTGATCGTGGTGTCGATGGACTAGATATTNNNATTGAGCACGAATTTACG-3’(配列番号24)を使用した。変異をDNA配列決定で確認した。変異Endo-S2遺伝子を含むプラスミドを大腸菌(E. coli)BL21(DE3)に形質転換した
。20種のEndo-S2 D184バリアントの同時産生のために、この形質転換体を、100μg/mLのカルベニシリンを補充した2×YTブロス培地20mL中で培養した。細胞が0.8~1.0のOD600に達するまで培養物を37℃で増殖させた。次いで、この培養物に0.5mMのイソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)を添加して、20℃にてタンパク質の過剰産生を誘導した。24時間後、遠心分離により細胞を回収した。細胞ペレットを、製造業者の指示に従ってBacterial Cell Lysis
Buffer(Gold Biotechnology, Inc.)で溶解させた。10×ヒスチジン(His10)
タグ付きEndoS2/CPD融合タンパク質をNiNTA Spin Columns(Qiagen)で精製した。精製したEndoS2タンパク質を、Amicon限外ろ過(10kDa、Millipore)に
よる遠心ダイアフィルトレーションを使用してPBS(pH7.4)に脱塩した。このタンパク質の純度をSDS-PAGEで確認し、濃度を280nmでの吸光度を使用してNanoDrop 2000cで測定した。選択したEndo-S2バリアントの大規模精製のために、培養液1Lを使用する。細胞溶解物をHisTrap HPカラム(GE)にアプライし、0.5MのNaClおよび20mMのイミダゾール(pH7.4)を含むPBSで洗浄した。結合した
Hisタグ付きタンパク質を、PBS緩衝液中の0~250mMのイミダゾールの勾配で溶出させた。Endo-S2タンパク質を含む溶出画分をプールし、濃縮し、HiPrep 16/60 Sephacryl S-200 HRカラム(GE)によるサイズ排除クロマトグラフィーでさらに精製
した。
Exactive Plus Orbitrap(Thermo Scientific)でLC-MS分析を実施した。インタ
クトな抗体の場合には、この分析を、0.4ml/分の流速で9分以内に、0.1%のギ酸を含む5~90%MeCNの直線勾配を有するWaters XBridgeTM BEH300 C4カラム(3.5μm、2.1×50mm)で実施した。抗体の軽鎖および重鎖の分析の場合には、IgG抗体を50mMのTCEPで処理し、20分にわたり37℃で加熱し、次いでAgilent Poroshell 300SB-C8カラム(5μm、75×1mm)によるLC-MS分析にかけた。この分析を、0.40mL/分の流速で6分以内に、0.1%のギ酸を含む25~35%MeCNの直線勾配での60℃溶出で実施した。PNGアーゼF処理抗体グリコフォームのLC-MS分析を同一の方法で実施したが、TCEP処理の前にPNGアーゼFとの3時間のインキュベーションを含んだ。生データを、MagTran(Amgen)を使用してデコンボリューションした。
最初の緩衝液中の市販のリツキシマブを、500:1の抗体対酵素の比(重量比)で37℃にて1時間にわたり野生型Endo-S2と共にインキュベートした。LC-MS分析は重鎖上のN-グリカンの完全な開裂を示した。脱グリコシル化リツキシマブをプロテインAクロマトグラフィーで精製した。LC-MS:(Fucα1,6)GlcNAc-リツキシマブ(2)の重鎖に関する算出、M=49420Da;実測(m/z)、49412(デコンボリューションデータ)。
(Fucα1,6)GlcNAc-リツキシマブ(2)のTris-HCl緩衝液溶液(50mM、pH7.4)を、50:1の抗体対酵素の比で37℃にてラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)由来のα-フコシダーゼAlfCと共にインキュベート
した。16時間のインキュベーション後、LC-MSモニタリングは、(Fucα1,6)GlcNAcリツキシマブ(2)が完全に脱フコシル化して生成物GlcNAc-リツキシマブ(9)が生じることを示した。この脱フコシル化リツキシマブをプロテインAクロマトグラフィーで精製した。LC-MS:GlcNAc部分を担持するGlcNAc-リツキシマブ(9)の重鎖に関する算出、M=49274Da;実測(m/z)、49265(デコンボリューションデータ)。
各Endo-S2バリアント(0.1μg)の加水分解活性のアッセイを、PBS緩衝液(pH7.4、10μl)中の基質としての純粋なシアロ複合型(S2G2F)リツキシマブ3(10μg、7.0μM)で30℃にて実施した。各反応混合物のアリコートを0.1%のギ酸で希釈して反応を停止させ、LC-MSで分析した。基質と加水分解生成物との相対量を、MagTranを使用した生データのデコンボリューションおよび対応するM
Sピークの積分の後に定量した。合成糖オキサゾリンによるトランスグリコシル化反応を以下のようにアッセイした:(Fucα1,6)GlcNAc-リツキシマブ(100μg、69μM)、SCTox(1.38mM、20当量)を、PBS(pH7.4、10μl)中で30℃にて各Endo-S2バリアント0.1μgと共にインキュベートした。この反応を停止させ、上記した加水分解活性アッセイのように分析した。各変異体の実
験を、これらの結果の一貫性を確保するために少なくとも2回繰り返した。
Fuc1,6GlcNAc-リツキシマブ(1mg、69μM)(2)およびSCTox(1.38mM、20当量)(4)の溶液を、15分にわたり100mMのTris緩衝液(pH7.4)100μl中で30℃にてEndo-S2 D184M(5μg)と共にインキュベートした。LC-MS分析は、このトランスグリコシル化反応の完了を示した。生成物(3)を、プロテインAクロマトグラフィーを使用して精製した。LC-MS:完全シアル化二分岐N-グリカンを担持する(3)の重鎖に関する算出、M=51421Da;実測(m/z)、51412(デコンボリューションデータ)。
GlcNAc-リツキシマブ(1mg、69μM)(9)およびCTox(1.38mM、20当量)(10)の溶液を、30分にわたり100mMのTris緩衝液(pH7.4)100μl中で30℃にてEndo-S2 D184M(5μg)と共にインキュベートした。LC-MS分析はトランスグリコシル化反応の完了を示した。プロテインAクロマトグラフィーを使用して生成物(11)を精製した。LC-MS:二分岐N-グリカンを担持する(11)の重鎖に関する算出、M=50693Da;実測(m/z)、50684(デコンボリューションデータ)。
3つの別々の反応において、SCTox(4)、Hyb-ox(5)またはHM-ox(7)(1.38mM、20当量)と一緒にFuc1,6GlcNAc-リツキシマブ(0.2mg、69μM)(2)を、100mMのTris緩衝液(pH7.4)20μl中で30℃にてEndo-S2 D184M(1μg)と共にインキュベートした。いくつかの時点で反応のアリコート(0.5μl)を採取し、0.1%のギ酸で希釈して反応を停止させた。全てのアリコートをLC-MSで分析し、デコンボリューションデータか
らトランスグリコシル化の%を算出した。
3つの別々の反応において、Fuc1,6GlcNAc-リツキシマブ(0.2mg、69μM)(2)およびSCTox(4)(1.38mM、20当量)を、100mMのTris緩衝液(pH7.4)20μl中で30℃にてEndo-S2 D184M、Endo-S2 D184QまたはEndo-S D233Q(1μg)と共にインキュベートした。いくつかの時点で反応のアリコート(0.5μl)を採取し、0.1%のギ酸で希釈して反応を停止させた。全てのアリコートをLC-MSで分析し、デコンボリューションデータからトランスグリコシル化の%を算出した。
市販のトラスツズマブ(凍結乾燥粉末)を水に溶解させ、リツキシマブの場合と同一の方法に従って野生型Endo-S2で脱グリコシル化した。トランスグリコシル化のために、Fuc1,6GlcNAc-トラスツズマブ(12)(1mg、69μM)およびSCTox(4)(1.38mM、20当量)の溶液を、15分にわたり100mMのTris緩衝液(pH7.4)100μl中で30℃にてEndo-S2 D184M(5μg)と共にインキュベートした。LC-MS分析はトランスグリコシル化反応の完了を示した。プロテインAクロマトグラフィーを使用して生成物(13)を精製した。
本明細書中で参照されるすべての参考文献の内容は、全ての目的のために、本明細書中に組み込まれる。
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Claims (14)
- 所定の数およびタイプの糖残基を含む所定のオリゴ糖部分を有するフコシル化糖タンパク質または非フコシル化糖タンパク質を調製する方法であって、前記方法が、
フコシル化N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)アクセプタータンパク質または非フコシル化GlcNAcアクセプタータンパク質を含むフコシル化アクセプタータンパク質または非フコシル化アクセプタータンパク質を提供すること、および
前記フコシル化アクセプタータンパク質または非フコシル化アクセプタータンパク質と、活性化オリゴ糖ドナーとを、D184M(配列番号7)、D184E(配列番号8)、D184C(配列番号6)およびD184G(配列番号9)からなる群から選択され、野生型Endo-S2酵素と比較して増加したトランスグリコシル化および減少した加水分解活性を有するストレプトコッカス・ピオゲネス(血清型M49)Endo-S2 Asp184変異体酵素であるEndo-S2変異体酵素の存在下で酵素的に反応させることであって、前記活性化オリゴ糖ドナーは、オキサゾリンと前記所定の数およびタイプの糖残基を含む前記所定のオリゴ糖部分を含み、前記Endo-S2変異体酵素による酵素反応により、オリゴ糖部分は前記フコシル化GlcNAcアクセプタータンパク質または非フコシル化GlcNAcアクセプタータンパク質に共有結合的に連結され、それによって前記所定のオリゴ糖部分を有するフコシル化糖タンパク質または非フコシル化糖タンパク質が調製される、こと
を含む方法。 - 前記フコシル化アクセプタータンパク質または非フコシル化アクセプタータンパク質は、抗体、そのFc含有断片、または静注用免疫グロブリン(IVIG)である、請求項1に記載の方法。
- 前記活性化オリゴ糖ドナーは合成オリゴ糖オキサゾリンまたは天然N-グリカンオキサゾリンである、請求項1または2に記載の方法。
- 前記合成オリゴ糖オキサゾリンは、高マンノースタイプ、ハイブリッドタイプ、シアログリカンオキサゾリンまたは複合タイプのNグリカンを含み、二糖、三糖、四糖、五糖、六糖、七糖、八糖、九糖、十糖または十一糖を有する、請求項3に記載の方法。
- 前記活性化オリゴ糖ドナーは追加の生物学的活性剤またはタグをさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
- 前記追加の生物学的活性剤またはタグは、薬物、毒素、蛍光プローブ、ビオチン、PEG、脂質またはポリペプチドである、請求項5に記載の方法。
- 前記フコシル化アクセプタータンパク質はアルファ-1-6-フコシル-GlcNAc-タンパク質である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
- 前記フコシル化糖タンパク質または非フコシル化糖タンパク質は、治療用モノクローナル抗体である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
- 前記抗体は、修飾抗体を形成するための、癌を処置するための治療剤、HIV用の治療剤、毒素、抗原、ケモカインおよびサイトカインからなる群から選択される追加部分をさらに含む、請求項2に記載の方法。
- 前記Endo-S2変異体酵素はD184M(配列番号7)である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
- 前記フコシル化アクセプタータンパク質または非フコシル化アクセプタータンパク質が、Endo-H、Endo-F3、Endo-S、Endo-S2およびEndo-Aの群から選択される酵素により、不均一なまたは望ましくないN-グリカンを除去することによって形成される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
- ある状態を処置するための生物学的活性を有する薬物を送達するためのグリカン再構築抗体を調製するための、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法の使用であって、前記再構築抗体が、所定の数の糖残基と、末端糖またはシアル化基に接続した治療剤とを有する組換えのフコシル化抗体または非フコシル化抗体を含む、使用。
- 前記IVIGがFc-シアル化グリコフォームを示す、請求項2に記載の方法であって、
Fc N-グリカンを担持するIVIGを提供すること、
GlcNAc-アクセプターを形成するために、エンドグリコシダーゼ-S酵素(Endo-S)、エンドグリコシダーゼ-S2酵素(Endo-S2)またはエンドグリコシダーゼ-F3酵素(Endo-F3)を使用して前記Fc N-グリカンを脱グリコシル化することであって、GlcNAc部分は前記IVIGのFc領域に位置しており、前記GlcNAcアクセプターはフコシル化されているかまたはフコシル化されていない、こと、および
前記野生型Endo-S2酵素と比較して増加したトランスグリコシル化および減少した加水分解活性を示す前記Endo-S2変異体酵素の触媒作用下で、所定の数の糖残基を有するシアログリカンオキサゾリンにより、前記GlcNAc部分をトランスグリコシル化して、シアル化IVIGを形成すること
をさらに含む方法。 - D184M(配列番号7)、D184E(配列番号8)、D184C(配列番号6)、D184G(配列番号9)からなる群から選択され、Endo-S2野生型酵素と比較して増加したトランスグリコシル化および減少した加水分解活性を示すEndo-S2変異体酵素。
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