JP7294605B2 - 有機ゲルマニウム化合物を有効成分として含有するi型インターフェロン産生抑制剤 - Google Patents
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一般式(I)
R1及びR2は、互いに独立して水素、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、C2-4アルケニル、C2-4ハロアルケニル、C3-4アルキニル、C3-4ハロアルキニル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルコキシ、C1-4アルキルチオ、C1-4アルキルスルフィニル若しくはC1-4アルキルスルホニルであるか、又はそれらが結合している2個の炭素原子と共に、4~10員の単環式若しくは多環式の飽和環、4~10員の単環式若しくは多環式の部分飽和環、6~10員の単環式若しくは多環式の芳香環、若しくは5~10員の単環式若しくは多環式の窒素、酸素及び硫黄から選択される1~4個の原子を含有するヘテロ環を形成し、
これらの環は、置換されていないか、又はハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、オキソ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、C2-4アルケニル、C2-4ハロアルケニル、C3-4アルキニル、C3-4ハロアルキニル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルコキシ、C1-4アルキルチオ、C1-4アルキルスルフィニル及びC1-4アルキルスルホニルよりなる群からの1若しくは複数の置換基により置換されており、
R3は、水素、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、C2-4アルケニル、C2-4ハロアルケニル、C3-4アルキニル、C3-4ハロアルキニル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルコキシ、C1-4アルキルチオ、C1-4アルキルスルフィニル又はC1-4アルキルスルホニルである、
前記化合物若しくは薬学的に許容されるその塩若しくはエステル又はこれらの重合体を有効成分として含有する、I型インターフェロン産生抑制剤。
(2) 一般式(I)において、R1及びR2が、いずれも水素であるか、又はそれらが結合している2個の炭素原子と共に、4~7員の単環式飽和環若しくは6~10員の多環式飽和環を形成し、前記飽和環は置換されておらず、R3が水素又はC1-4アルキルである化合物若しくは薬学的に許容されるその塩若しくはエステル又はこれらの重合体を有効成分として含有する、(1)に記載の抑制剤。
(3) 一般式(I)において、R1及びR2がいずれも水素であるか、又はそれらが結合している2個の炭素原子と共に5若しくは6員の単環式飽和環若しくは8員の二環式芳香環を形成し、前記飽和環は置換されておらず、R3が水素である化合物若しくは薬学的に許容されるその塩若しくはエステル又はこれらの重合体を有効成分として含有する、(1)に記載の抑制剤。
(4) インターフェロンβの産生抑制剤である、(1)~(3)のいずれか一項に記載の抑制剤。
(5) 一般式(I)
R1及びR2は、互いに独立して水素、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、C2-4アルケニル、C2-4ハロアルケニル、C3-4アルキニル、C3-4ハロアルキニル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルコキシ、C1-4アルキルチオ、C1-4アルキルスルフィニル若しくはC1-4アルキルスルホニルであるか、又はそれらが結合している2個の炭素原子と共に、4~10員の単環式若しくは多環式の飽和環、4~10員の単環式若しくは多環式の部分飽和環、6~10員の単環式若しくは多環式の芳香環、若しくは5~10員の単環式若しくは多環式の窒素、酸素及び硫黄から選択される1~4個の原子を含有するヘテロ環を形成し、
これらの環は、置換されていないか、又はハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、オキソ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、C2-4アルケニル、C2-4ハロアルケニル、C3-4アルキニル、C3-4ハロアルキニル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルコキシ、C1-4アルキルチオ、C1-4アルキルスルフィニル及びC1-4アルキルスルホニルよりなる群からの1若しくは複数の置換基により置換されており、
R3は、水素、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、C2-4アルケニル、C2-4ハロアルケニル、C3-4アルキニル、C3-4ハロアルキニル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルコキシ、C1-4アルキルチオ、C1-4アルキルスルフィニル又はC1-4アルキルスルホニルである、
前記化合物若しくは薬学的に許容されるその塩若しくはエステル又はこれらの重合体を有効成分として含有する、RIG-IとRNAとの結合の阻害剤。
(6) 一般式(I)において、R1及びR2が、いずれも水素であるか、又はそれらが結合している2個の炭素原子と共に、4~7員の単環式飽和環若しくは6~10員の多環式飽和環を形成し、前記飽和環は置換されておらず、R3が水素又はC1-4アルキルである化合物若しくは薬学的に許容されるその塩若しくはエステル又はこれらの重合体を有効成分として含有する、(5)に記載の阻害剤。
(7) 一般式(I)において、R1及びR2がいずれも水素であるか、又はそれらが結合している2個の炭素原子と共に5若しくは6員の単環式飽和環若しくは8員の二環式芳香環を形成し、前記飽和環は置換されておらず、R3が水素である化合物若しくは薬学的に許容されるその塩若しくはエステル又はこれらの重合体を有効成分として含有する、(5)に記載の阻害剤。
R1及びR2は、互いに独立して水素、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、C2-4アルケニル、C2-4ハロアルケニル、C3-4アルキニル、C3-4ハロアルキニル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルコキシ、C1-4アルキルチオ、C1-4アルキルスルフィニル若しくはC1-4アルキルスルホニルであるか、又はそれらが結合している2個の炭素原子と共に、4~10員の単環式若しくは多環式の飽和環、4~10員の単環式若しくは多環式の部分飽和環、6~10員の単環式若しくは多環式の芳香環、若しくは5~10員の単環式若しくは多環式の窒素、酸素及び硫黄から選択される1~4個の原子を含有するヘテロ環を形成し、
これらの環は、置換されていないか、又はハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、オキソ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、C2-4アルケニル、C2-4ハロアルケニル、C3-4アルキニル、C3-4ハロアルキニル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルコキシ、C1-4アルキルチオ、C1-4アルキルスルフィニル及びC1-4アルキルスルホニルよりなる群からの1若しくは複数の置換基により置換されており、
R3は、水素、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、C2-4アルケニル、C2-4ハロアルケニル、C3-4アルキニル、C3-4ハロアルキニル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルコキシ、C1-4アルキルチオ、C1-4アルキルスルフィニル又はC1-4アルキルスルホニルである。
1)2-Trichlorogermyl cyclohexanecarboxylic acid(2-(トリクロロゲルミル)シクロヘキサンカルボン酸)及び2-Trihydroxygermyl cyclohexanecarboxylic acid(2-(トリヒドロキシゲルミル)シクロヘキサンカルボン酸)の合成
得られた2-(トリクロロゲルミル)シクロヘキサンカルボン酸(306 mg, 1 mmol)を水(5 ml)に溶解しpH 7.0付近になるよう水酸化ナトリウム水溶液(40wt%)を用いて中和することにより、目的の2-(トリヒドロキシゲルミル)シクロヘキサンカルボン酸を得た。
得られた2-(トリクロロゲルミル)シクロペンタンカルボン酸(292 mg, 1 mmol)を水(5 ml)に溶解しpH 7.0付近になるよう水酸化ナトリウム水溶液(40wt%)を用いて中和することにより、目的の2-(トリヒドロキシゲルミル)シクロペンタンカルボン酸を得た。
得られた3-(トリクロロゲルミル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-2-カルボン酸(292 mg, 1 mmol)を水(5 ml)に溶解しpH 7.0付近になるよう水酸化ナトリウム水溶液(40wt%)を用いて中和することにより、目的の3-(トリヒドロキシゲルミル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-2-カルボン酸を得た。
本実験で用いたマウスマクロファージ様細胞株であるRAW264.7細胞、イヌ腎臓尿細管上皮胞由来の細胞株であるMDCK細胞、ヒト胎児腎細胞株であるHEK293T細胞はATCCより購入した。いずれの細胞もDMEM(Dulbecco’s modified eagle medium, Nissui)に0.1%炭酸水素ナトリウム溶液、4 mM L-glutamine(Gibco)、10%FBS(Fetal bovine serum、ウシ胎児血清、Gibco)を加えた培地を製品プロトコルに従って用いて、37℃、CO2濃度5.0%に設定されたインキュベータで培養した。実験に用いる際は前日に、RAW264.7細胞は12 wellプレート(BD Biosciences)に2×105個播種し、MDCK細胞は12 wellプレートに3×105個播種し、HEK293T細胞は12 wellプレート(BD Biosciences)に2×105個播種した。
1 gのGe-132(浅井ゲルマニウム研究所)を水酸化ナトリウムで中和し、減菌水に溶解させ、塩酸でpHを7.0に調節した。10 mLにメスアップした後、0.22μmメンブランフィルターによる滅菌を行い、THGP濃度が100 mg/ml、10 mg/ml、1 mg/ml、0.1 mg/ml の各溶液を用意した。同様に、2-(トリクロロゲルミル)シクロペンタンカルボン酸及び2-(トリクロロゲルミル)シクロヘキサンカルボン酸から、2-(トリヒドロキシゲルミル)シクロペンタンカルボン酸及び2-(トリヒドロキシゲルミル)シクロヘキサンカルボン酸の水溶液をそれぞれ調製した。
THGPによる細胞の刺激は、THGPの最終濃度が2μg/ml、20μg/ml、200μg/ml、2000μg/mlである培養液中で対象細胞を培養することにより行った。
3pRNA(5'-triphosphate RNA)は、Takahashiら(J. Biol. Chem., 2009, Vol. 284, pp. 17465-17474)、Hayakawaら(Nat. Immunol., 2011, Vol. 12, pp.37-44)、Satoら(Immunity, 2015, Vol.42, pp. 123-132)の方法に準じて、MEGAscript(登録商標) T7 Kit(Ambion)を用いて、鋳型DNA(センス鎖:TAATACGACTCACTATAGGGAAACTAAAAGGGAGAAGTGAAAGTG(配列番号1)、アンチセンス鎖:CACTTTCACTTCTCCCTTTTAGTTTCCCTATAGTGAGTCGTATTA(配列番号2))をin vitroにて転写を行った後、ISOGEN(ニッポンジーン)を用いてRNAを精製することで調製した。また、Label IT (登録商標) Biotin Labeling Kit(Mirus)又はLabel IT(登録商標) Nucleic Acid Labeling Kit, CX -Rhodamine(Mirus)を製品プロトコルに従って使用して、ビオチン化3pRNA及びRhodamine -3pRNAを作製した。
核酸による細胞刺激は、Lipofectamine 2000 Reagent(Invitrogen)を製品プロトコルに従って使用して、OPTI-MEM(Invitrogen)で希釈した3pRNA又はpolyI:C(Invitrogen)(最終濃度1μg/ml)を対象細胞に取り込ませることで行った。
ISOGENを用いたチオシアン酸グアニジンフェノールクロロホルム法にて対象細胞から全RNAの回収を行い、DNase及びRNase freeの水に溶解した。水溶液にDNase I(Invitrogen)を加えて25℃で15分間反応させることでDNase処理を行い、さらに25mM EDTA 1μlを加えて65℃で10分間反応させることでDNase Iを失活させた。その後、ReverTra Ace(登録商標) qPCR RT Kit(Toyobo)を用いてRNAを逆転写し、cDNAを合成した。SYBR(登録商標) Premix Ex TaqTM(Takara)を用いたインターカレーター法で、95℃10秒間の初期変性、95℃5秒間の変性、60℃30秒間のアニーリング及び伸長反応の2ステップを50サイクル行う条件で定量的PCRを行い、StepOnePlusTM Real Real -Time PCR System(Applied Biosystems)で定量し、ΔΔCt法にて解析した。内部標準としてはGapdhを使用した。使用したプライマーの配列を表1に記す。
EMCV(encephalomyocarditis virus、東京大学 谷口維紹博士より分与)の場合、培養液をFBSを含まないDMEMに替え、1.0 MOIになるようにEMCVを加えて感染させ、1時間後に培養液に最終濃度が10%になるようにFBSを加えた。インフルエンザウイルスPR8(strain A/Puerto Rico/8/1934H1N1、北海道大学 高田礼人博士より分与)の場合、培養液を0.0005%トリブシンを含むFBSを含まないDMEMに替え、1.0 MOIになるようにPR8を加えて感染させ、1時間後に培養液に最終濃度が10%になるようにFBSを加えた。
RAW264.7細胞に1.0 MOIになるようにPR8を感染させ、24時間後の上清を10-1から10-6に希釈し、MDCK細胞に感染させた。感染から1時間後に上清を除去し、MEM/Bacto Agar/trypsin混合液(1×MEM(Gibco)、0.3%BSA、0.28%NaHCO3、1×MEM Amino Acids Solution(Gibco)、1×MEM Vitamine Liquid(Gibco)、2 mM L Glutamine、1×Penicillin Streptomycin Solution、0.0005%trypsin、0.8%BactoAgar)で細胞を固定し、感染から2日後にプラークの数を数えることで、PR8数を測定した。
各濃度のTHGPと75μgの3pRNAとを混和し、37℃で30分間インキュベートした。その後、10×Loading bufferを加え、2% アガロースゲルで電気泳動を行った。SYBR Gold nucleic acid gel stain(Molecular probes)で30分間反応させた後、LAS-1000LC(富士フイルム)を用いて発光を測定した。
対象細胞を2% FBS-PBSに懸濁し、セルストレーナキャップ付きチューブ(Falcon)に入れた。FACS Cantoll(BD)で細胞中の蛍光を測定し、全部で2000個の細胞を数え、蛍光色素を含んだ細胞の割合を算出した。
12 well -Plate(BD FALCON(登録商標))の底にカバースリップを敷き、その上にRAW264.7細胞を2.0×105個/wellずつ播種し、24時間後に培地にTHGPを加え、さらにRhodamine -3pRNAを加えて刺激を行い、37℃で5時間インキュベートした。4 %パラホルムアルデヒド・リン酸緩衝液(Wako)を用いて室温で10分間インキュベートすることで細胞を固定し、0.2 %Triton -X100を用いて室温で15分間インキュベートすることで細胞膜透過処理を行った。その後、1%BSAを用いて4℃で一晩ブロッキングを行い、Blocking Concentrate(MBL)で10分間静置した。その後、抗体としてStreptavidin、DyLight 649(VEC)を200倍希釈したものを用いて37℃で1時間インキュベートした。松浪スライドグラス(松浪硝子工業株式会社)にSlowfade(登録商標) Gold anti -fade Reagent(Invitrogen)を封入剤として滴下し、その上にカバーガラスを置くことでサンプルを作製した。細胞内局在観察はFV -1000D(OLYMPUS)を用いた。
Bac -to -Bac baculovirus expression system(Invitrogen)を使用してグルタチオン-S-トランスフェーゼ(GST)とRIG-Iとの融合タンパク質をコードする遺伝子を発現可能に有するベクターを作製し、Sf -9細胞を形質転換させた。0.25%Gentamicin Reagent Solution(Gibco)及び5.0%FBS(Fetal bovine serum、Gibco)を添加したSf -900TM II SFM(1×)(Gibco)中で形質転換細胞を培養して、前記融合タンパク質を発現させた。培養後の細胞から回収したタンパク質をGlutathione Sepharose 4B(GE HEALTHCARE)に通してGST-RIG-Iを回収し、リコンビナントRIG-Iとして用いた。
Lysis buffer(20 mM HEPES、150 mM NaCl、1 mM EDTA、1%NP -40、1 mM PMSF)中で各濃度のTHGPとビオチン化3pRNA 0.1μgを室温で30分間、穏やかに転倒混和した。その後GST-RIG 3μgを加え、さらに室温で1時間転倒混和した。次に、Dynabeads M -280 Streptavidin(Invitrogen)を加え室温で1時間転倒混和し、ビーズをwash buffer(20 mM HEPES、150 mM NaCl、1 mM EDTA、0.5%NP -40)で3回洗浄し、2×sample bufferを20μl加えた後、100℃で5分間ボイルした。これを10%ポリアクリルアミドゲルを用いたSDS-PAGEにより展開した。SDS-PAGE後のゲルを回収し、PVDFメンブレンに130mAの定電流で70分間トランスファーした後、メンブレンを5%スキムミルクで1時間ブロッキングし、1/1000の濃度の1次抗体(GST(B-14):sc-138(Santa Cruz Biotechnology))を含んだSolution 1(TOYOBO)を加えて4℃で一晩反応させた。その後、メンブレンを10分間×3回洗浄し、1/5000の濃度の2次抗体(Anti-mouse IgG HRP -linked Antibody Cell Signaling Technology)を含んだTBS -Tを加えて1時間反応させた。その後、メンブレンを10分間×3回洗浄し、LAS -4000(GE Healthcare)を用いてPierce(登録商標) Western Blotting Substrate Plus(Thermo SCIENTIFIC)による発光を計測した。
THGP固定化カラム(島田康弘、岩手大学大学院連合農学研究科博士学位論文、2016年に準じて作製)を0.7M NaOHで前処理し、RNase freeの水でpH7になるまで水洗した。コントロールとしてRNase freeの水で水洗したGSTビーズ(GE HEALTHCARE)を用いた。50μlの約0.5mg/ml 3pRNA、poly I:C又はニシン精子DNA(HT -DNA)をTHGP固定化カラム又はGSTビーズに添加し、室温で30分間静置した。その後、溶出液中の核酸濃度を、微量紫外可視分光度計Q5000(トミー精工)を用いて測定した。
ΔβLucマウス(IFN -βの遺伝子部分をルシフェラーゼに置換したマウス、Dr. Stefan Lienenklausより入手、Lienenklaus et al. J Immunol, 183, 3229-3236, 2009)への3pRNA刺激は、In vivo jetPEI(Polyplus transfection)を製品プロトコルに従って使用し、3pRNA 10μgをN/P比が10になるようにして経鼻投与することで行った。またTHGPの投与は、NaClを含まないPBSでTHGPを3倍希釈して最終濃度33.33 mg/mlとし、3pRNA刺激の24時間前、3時間前及び3時間後にTHGP溶液を経鼻投与することで行った。
VivoGlo TM Luciferin、In Vivo Grade(Promega)を50 mg/mlに調整し、400μlを腹腔に投与し、15分後にIVIS Spectrum(Xenogen)を用いて蛍光測定を行った。
Mouse IL -6 Quantikine ELISA Kit(R&D Systems)を製品プロトコルに従って使用して、2倍に希釈した血清からサンプルを作製し、POWERSCAN4(DSファーマ)を用いて蛍光測定を行った。
1)RIG-Iと3pRNAとの結合へのTHGPの影響
RIG-Iと3pRNAとの結合に対するTHGPの影響をin vitro RNA pull down assay法で調べたところ、THGPの存在によってRIG-Iと3pRNAの結合量が減少することが確認された(図1a)。さらに、THGP固定化カラムを用いた吸着試験を3pRNA、poly I:C及びHT -DNAについて行った結果、HT -DNA及びpoly I:Cと比較して、3pRNAがTHGP固定化カラムにより多く吸着することが確認された(図1b)。
THGPと3pRNAを混和してアガロースゲル電気泳動を行った結果、THGPを混和しても3pRNA量は変化しない、即ち分解されないことが確認された(図2)。
RAW264.7細胞の培地にTHGPを加え、Rhodamine-3pRNAで刺激した。刺激から5時間後の細胞を共焦点顕微鏡を用いて観察し、3pRNAを取り込んだ細胞数をカウントし、またFACSを用いて3pRNAを取り込んだ細胞の割合を測定した。その結果、THGP無添加と比較して、3pRNAを取り込んだ細胞の割合に変化は見られなかった(図3)。以上の1)~3)の結果から、THGPはRIG-Iとそのリガンド3pRNAとの結合を阻害することでRIG-Iシグナルを阻害するものと推察された。
RAW264.7細胞の培地に最終濃度が0μg/ml、2μg/ml、20μg/ml、200μg/ml、2000μg/mlのTHGPを加え、24時間後にpoly I:Cで刺激した。刺激から8時間後に細胞から全RNAを回収し、定量的RT -PCR法でmRNA量を測定した。その結果、THGPで前処理をしてもIFN-βのmRNA量の増減は観察されなかった(図4a)。polyI:Cの刺激をMDA5シグナルを活性化させることが知られているEMCVの感染に代えて同様の実験を行った場合も、IFN-βのmRNA量の増減は観察されなかった(図4b)。以上から、RIG-Iとの高い相同性を持ちRNAヘリカーゼ様ドメインを有する細胞内タンパク質であるMDA5との結合を介してIFN-βの発現を誘導することが知られているpoly I:Cと対照的に、THGPはMDA5を介したIFN-βの産生誘導に影響を与えないものと推察された。
RAW264.7細胞を最終濃度が0μg/ml、2μg/ml、20μg/ml、200μg/ml、2000μg/mlのTHGPでそれぞれ24時間前処理した後、1.0 MOIのインフルエンザウイルスPR8を感染させ、24時間後に上清を回収し、MDCK細胞を用いたplaque-forming assay法でウイルス量を測定した。その結果、THGPの存在によりウイルス数は減少傾向にあることが確認された(図5c)。また、感染から24時間時のRAW264.7細胞のIFN-βのmRNAとPR8のNP(Nuclear protein)のmRNAとを定量的RT -PCR法で定量した。その結果、IFN-βのmRNA量とPR8のNPのmRNA量は、THGP濃度依存的に低下する傾向が観察された(図5a,b)。この結果は、THGPがIFN-βの産生誘導を抑制する機能を有し、またRNAウイルスであるPR8の複製又は増殖を抑制する機能を有することを示す。
ΔβLucマウスに3pRNAを経鼻投与し、3pRNA刺激の前後に計3回THGP(用量134.4 mg/kg体重)又はPBSを経鼻投与した。3pRNA刺激から12時間後及び24時間後にIVIS imaging systemを用いて胸部及び頭部の蛍光を測定してIFN -βのプロモーター活性を定量した。その結果、PBSを投与したマウスと比較して、THGPを投与したマウスではIFN -βプロモーター活性の減弱が観察された(図6a)。
HEK293T細胞に、IFN-βプロモーターの制御下にホタルルシフェラーゼ遺伝子を発現可能に有する発現ベクターp125-Luc(京都大学 藤田尚志博士より分与、Yoneyama et al., J. Biochem. 120: 160-169, 1996)及びウミシイタケルシフェラーゼを恒常的に発現する発現ベクターpRL-TK(Promega)をco-transfectionして24時間培養した後、最終濃度が0μM、1μM、10μM、100μM、1000μMのTHGP又はTHGP誘導体である3-(トリメチルゲルミル)プロパン酸、2-(トリヒドロキシゲルミル)シクロペンタンカルボン酸若しくは2-(トリヒドロキシゲルミル)シクロヘキサンカルボン酸でそれぞれ24時間処理した。次いで3pRNA(最終濃度1μg/mL)を用いて核酸刺激を24時間行った後、Dual-Luciferase Reporter Assay System(Promega)によりホタルルシフェラーゼ及びウミシイタケルシフェラーゼ活性を測定し、IFN -βのプロモーター活性をウミシイタケルシフェラーゼ活性に対するホタルルシフェラーゼ活性の相対値として表した。使用したTHGP誘導体のうち、2-(トリヒドロキシゲルミル)シクロペンタンカルボン酸及び2-(トリヒドロキシゲルミル)シクロヘキサンカルボン酸はTHGPよりもIFN-βプロモーター活性を強く抑制することが確認された(図7、図中のTHGP誘導体1は3-(トリメチルゲルミル)プロパン酸、THGP誘導体2は2-(トリヒドロキシゲルミル)シクロペンタンカルボン酸、THGP誘導体3は2-(トリヒドロキシゲルミル)シクロヘキサンカルボン酸である)。
Claims (7)
- 一般式(I)
R1及びR2は、互いに独立して水素、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、C2-4アルケニル、C2-4ハロアルケニル、C3-4アルキニル、C3-4ハロアルキニル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルコキシ、C1-4アルキルチオ、C1-4アルキルスルフィニル若しくはC1-4アルキルスルホニルであるか、又はそれらが結合している2個の炭素原子と共に、4~10員の単環式若しくは多環式の飽和環、4~10員の単環式若しくは多環式の部分飽和環、若しくは5~10員の単環式若しくは多環式の窒素、酸素及び硫黄から選択される1~4個の原子を含有する飽和若しくは部分不飽和のヘテロ環を形成し、
これらの環は、置換されていないか、又はハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、オキソ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、C2-4アルケニル、C2-4ハロアルケニル、C3-4アルキニル、C3-4ハロアルキニル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルコキシ、C1-4アルキルチオ、C1-4アルキルスルフィニル及びC1-4アルキルスルホニルよりなる群からの1若しくは複数の置換基により置換されており、
R3は、水素、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、C2-4アルケニル、C2-4ハロアルケニル、C3-4アルキニル、C3-4ハロアルキニル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルコキシ、C1-4アルキルチオ、C1-4アルキルスルフィニル又はC1-4アルキルスルホニルである、
前記化合物若しくは薬学的に許容されるその塩若しくはC 1-4 アルキルエステル又はこれらの重合体を有効成分として含有する、I型インターフェロン産生抑制剤。 - 一般式(I)において、R1及びR2が、いずれも水素であるか、又はそれらが結合している2個の炭素原子と共に、4~7員の単環式飽和環若しくは6~10員の多環式飽和環を形成し、前記飽和環は置換されておらず、R3が水素又はC1-4アルキルである化合物若しくは薬学的に許容されるその塩若しくはC 1-4 アルキルエステル又はこれらの重合体を有効成分として含有する、請求項1に記載の抑制剤。
- 一般式(I)において、R1及びR2がいずれも水素であるか、又はそれらが結合している2個の炭素原子と共に5若しくは6員の単環式飽和環を形成し、前記飽和環は置換されておらず、R3が水素である化合物若しくは薬学的に許容されるその塩若しくはC 1-4 アルキルエステル又はこれらの重合体を有効成分として含有する、請求項1に記載の抑制剤。
- インターフェロンβの産生抑制剤である、請求項1~3のいずれか一項に記載の抑制剤。
- 一般式(I)
R1及びR2は、互いに独立して水素、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、C2-4アルケニル、C2-4ハロアルケニル、C3-4アルキニル、C3-4ハロアルキニル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルコキシ、C1-4アルキルチオ、C1-4アルキルスルフィニル若しくはC1-4アルキルスルホニルであるか、又はそれらが結合している2個の炭素原子と共に、4~10員の単環式若しくは多環式の飽和環、4~10員の単環式若しくは多環式の部分飽和環、若しくは5~10員の単環式若しくは多環式の窒素、酸素及び硫黄から選択される1~4個の原子を含有する飽和若しくは部分不飽和のヘテロ環を形成し、
これらの環は、置換されていないか、又はハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、オキソ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、C2-4アルケニル、C2-4ハロアルケニル、C3-4アルキニル、C3-4ハロアルキニル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルコキシ、C1-4アルキルチオ、C1-4アルキルスルフィニル及びC1-4アルキルスルホニルよりなる群からの1若しくは複数の置換基により置換されており、
R3は、水素、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、C2-4アルケニル、C2-4ハロアルケニル、C3-4アルキニル、C3-4ハロアルキニル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルコキシ、C1-4アルキルチオ、C1-4アルキルスルフィニル又はC1-4アルキルスルホニルである、
前記化合物若しくは薬学的に許容されるその塩若しくはC 1-4 アルキルエステル又はこれらの重合体を有効成分として含有する、RIG-IとRNAとの結合の阻害剤。 - 一般式(I)において、R1及びR2が、いずれも水素であるか、又はそれらが結合している2個の炭素原子と共に、4~7員の単環式飽和環若しくは6~10員の多環式飽和環を形成し、前記飽和環は置換されておらず、R3が水素又はC1-4アルキルである化合物若しくは薬学的に許容されるその塩若しくはC 1-4 アルキルエステル又はこれらの重合体を有効成分として含有する、請求項5に記載の阻害剤。
- 一般式(I)において、R1及びR2がいずれも水素であるか、又はそれらが結合している2個の炭素原子と共に5若しくは6員の単環式飽和環を形成し、前記飽和環は置換されておらず、R3が水素である化合物若しくは薬学的に許容されるその塩若しくはC 1-4 アルキルエステル又はこれらの重合体を有効成分として含有する、請求項5に記載の阻害剤。
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Biomed Res Trace Elements,1997年,8(3),pp.103-104 |
ウイルス,56(1),2006年,pp.1-8 |
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医学のあゆみ,142(9),1987年,pp.666-669 |
医学のあゆみ,161(5),1992年,pp.338-342 |
室蘭工業大学地域共同研究開発センター研究報告,No.28,2018年,pp.30~32 |
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