JP7293625B2 - 液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置、及び液滴吐出方法 - Google Patents
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Description
インクジェットヘッドの方式としては、圧電素子を用いた圧電加圧方式、ヒータを用いたサーマル方式、静電引力によって液を引っ張る静電方式などが挙げられる。これらの中でも、圧電加圧方式のインクジェットヘッドは、その他の方式のインクジェットヘッドと比べて、熱や電場によるダメージを細胞に与え難いため、細胞溶液の液滴を吐出する際に好適に用いることができる。
これらの問題を解決するため、液を収容する液室の内部を大気に開放する大気開放部を有し、ノズル部が形成された液室の下面に位置する膜状部材を振動させることにより、液滴を形成する液滴形成装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、複数の孔を有する平面状部材に液を供給して液滴を形成し、平面状部材を振動させることにより、複数の孔から液を噴霧する液室の存在しない構造(液室レス)の液滴形成装置も提案されている(例えば、特許文献2参照)。この技術においては、平面状部材の所望の位置に安定して液を供給することが難しく、吐出不良の原因となることがある。
液を吐出可能な吐出口を有する膜状部材と、
前記膜状部材に配置される液と接触し、且つ、液の分子間力により吐出口の近傍に液を配置させることが可能な液配置部材と、
吐出口の近傍に配置された液を吐出させる変位部材と、を有する。
本発明の液滴吐出ヘッドは、液を吐出する吐出口を有する膜状部材と、液と接触し、液が吐出口から吐出可能となるように、吐出口の近傍に液を配置させる液配置部材と、少なくとも吐出口を変位させることで、液配置部材により吐出口の近傍に配置された液を吐出させる変位部材とを有し、必要に応じてその他の部材を有する。
まず、本発明の液滴吐出ヘッドと従来の液滴吐出ヘッドの差異について説明する。
一般的な従来の液滴吐出ヘッドにおいては、細胞溶液などの粒子が懸濁した液(粒子懸濁液)を吐出する場合に、液滴吐出ヘッドの流路に粒子が詰まりやすく、液を安定して吐出できないときがある。
そこで、特許文献1で開示されている技術においては、ノズル部が形成された液室の下面に位置する膜状部材を振動させて液滴を形成することにより、流路がない構造とすることで粒子の詰まりを抑制している。
膜状部材としては、吐出口を有するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
膜状部材の形状としては、膜状であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。また、膜状部材の平面形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、円形、楕円形、長方形、正方形、菱形などが挙げられる。
膜状部材の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ステンレス鋼、ニッケル、アルミニウム等の金属、ABS、ポリカーボネート、フッ素樹脂等のプラスチックス(樹脂材料)、二酸化ケイ素、アルミナ、ジルコニア等のセラミックスなどが挙げられる。これらの中でも、吐出する液が粒子を含む場合であって、粒子として細胞やタンパク質を用いる際には、細胞やタンパク質に対する付着性の低い材料を用いることが好ましい。
また、膜状部材の材料表面をコーティングすることで細胞の付着性を低下させることも好ましい。膜状部材の材料表面に対するコーティングとしては、例えば、材料表面を前述の金属又は金属酸化物材料でコーティングすることや、細胞膜を模した合成リン脂質ポリマー(例えば、日油株式会社製、Lipidure)によってコーティングすることなどが挙げられる。
親水部とは、水に対する接触角が0°以上89°以下となる部分を意味する。なお、水に対する接触角は、接触角計を利用することで、測定することができる。
親水部となる部分の材質としては、例えば、金属、セラミックス(金属酸化物)、ガラスなどが挙げられる。
疎水部とは、上記の親水部よりも疎水性が高い部分を意味する。また、疎水部は、親水部の外側に位置する。
疎水部において、親水部よりも疎水性が高いとは、水に対する接触角が90°以上180°以下であることを意味する。
親水部となる部分の材質としては、例えば、フッ素樹脂、ガラスコーティング剤、光触媒剤などが挙げられる。また、疎水部としては、親水部と同様の材質に対して、疎水性(撥水性)コーティングを施したものを用いることもできる。疎水性コーティングは、例えば、フッ素系コーティング剤、シリコーン系コーティング剤などを用いて行うことができる。
吐出口(ノズル)は、膜状部材上に配された液を吐出する口(孔)を意味する。
吐出口としては、その配列数、配列態様、間隔(ピッチ)、開口形状、開口の大きさなどについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
吐出口の平均径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。吐出口の平均径としては、液が粒子を含む場合には、粒子が液吐出口に詰まることを避けるため、粒子の大きさの2倍以上とすることが好ましい。
粒子が、例えば、動物細胞、特にヒトの細胞である場合、ヒトの細胞の大きさは、5μm以上50μm以下であるため、ノズルの平均径は、使用する細胞に合わせて、10μm以上100μm以下とすることが好ましい。
一方で、液滴が大きくなり過ぎると、微小液滴を形成するという目的の達成が困難となるため、吐出口の平均径は、200μm以下であることが好ましい。したがって、吐出口の平均径は、10μm以上200μm以下がより好ましい。
吐出口が吐出する液としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イオン交換水、蒸留水、純水、生理食塩水、アルコール、鉱物油、植物油等の様々な有機溶媒などが挙げられる。吐出口が吐出する液は、粒子を含むことが好ましい。
吐出口が吐出する液として水を使用する際には、液に水分の蒸発を抑えるための湿潤剤などが含まれていることが好ましい。これらの処方には、インクジェットインクに用いられる一般的な材料を用いることができる。
また、吐出口が吐出する液は、吐出口から液滴として吐出される。
液滴の直径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、25μm以上150μm以下が好ましい。液滴の直径が25μm以上であると、内包する粒子の直径が適正となり、適用できる粒子の種類が多くなる。また、液滴の直径が150μm以下であると、液滴の吐出が安定となる。
液滴の液量は、例えば、液滴の画像から液滴の大きさを求め、液量を算出する方法などにより測定することができる。
細胞としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、真核細胞、原核細胞、多細胞生物細胞、単細胞生物細胞を問わず、すべての細胞が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
細胞周期とは、細胞が増えるとき、細胞分裂が生じ、細胞分裂で生じた細胞(娘細胞)が再び細胞分裂を行う細胞(母細胞)となって新しい娘細胞を生み出す過程を意味する。
ここで、受光とは、光を受けることを意味する。
また、光学センサとは、人間の目で見ることができる可視光線と、それより波長の長い近赤外線や短波長赤外線、熱赤外線領域までの光のいずれかの光をレンズで集め、対象物である細胞の形状などを画像データとして取得する受動型センサを意味する。
光を受光したときに発光可能な細胞としては、光を受光したときに発光可能であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、蛍光色素によって染色された細胞、蛍光タンパク質を発現した細胞、蛍光標識抗体により標識された細胞などが挙げられる。
細胞における蛍光色素による染色部位、蛍光タンパク質の発現部位、又は蛍光標識抗体による標識部位としては、特に制限はなく、細胞全体、細胞核、細胞膜などが挙げられる。
蛍光色素としては、例えば、フルオレセイン類、アゾ類、ローダミン類、クマリン類、ピレン類、シアニン類などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、フルオレセイン類、アゾ類、ローダミン類が好ましく、エオシン、エバンスブルー、トリパンブルー、ローダミン6G、ローダミンB、ローダミン123がより好ましい。
蛍光タンパク質としては、例えば、Sirius、EBFP、ECFP、mTurquoise、TagCFP、AmCyan、mTFP1、MidoriishiCyan、CFP、TurboGFP、AcGFP、TagGFP、Azami-Green、ZsGreen、EmGFP、EGFP、GFP2、HyPer、TagYFP、EYFP、Venus、YFP、PhiYFP、PhiYFP-m、TurboYFP、ZsYellow、mBanana、KusabiraOrange、mOrange、TurboRFP、DsRed-Express、DsRed2、TagRFP、DsRed-Monomer、AsRed2、mStrawberry、TurboFP602、mRFP1、JRed、KillerRed、mCherry、mPlum、PS-CFP、Dendra2、Kaede、EosFP、KikumeGRなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
蛍光標識抗体としては、蛍光標識されていれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、CD4-FITC、CD8-PEなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
特定の核酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、感染症検査に用いられる塩基配列、自然界には存在しない核酸、動物細胞由来の塩基配列、植物細胞由来の塩基配列などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、特定の核酸としては、プラスミドも好適に使用することができる。
核酸とは、プリン又はピリミジンから導かれる含窒素塩基、糖、及びリン酸が規則的に結合した高分子の有機化合物を意味する。
金属微粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、銀粒子、銅粒子などが挙げられる。これらは吐出した液滴によって配線を描画する用途に用いることができる。
無機微粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸化チタン、酸化ケイ素等が白色インクとしての用途などで用いられる。
液配置部材とは、膜状部材上に配された液と接触し、液が吐出口から吐出可能となるように、吐出口の近傍に液を配置させる部材を意味する。
液配置部材としては、上記の機能を有するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
液配置部材の形状が、平板状であることにより、液配置部材と膜状部材に配された液とが接触する面積が大きくなる(液配置部材が配置できる液の体積が大きくなる)ため、より安定して液を吐出できるとともに、液を供給する回数を減らすことができる。
また、液配置部材の形状が、平板状の液配置部材に突起部を設けた形状であることにより、液配置部材と膜状部材に配された液とが接触する面積が大きくなるとともに、突起部が供給された液を捉えて、より確実に液を吐出口の近傍に配置することができる。このため、液配置部材の形状が、平板状の液配置部材に突起部を設けた形状であることにより、後述する液供給手段が液を供給する位置、量、速度などが大きくばらついた場合などであっても、より確実に吐出口の近傍に液を配置させることができる。
液配置部材の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、膜状部材と同様のものを用いることができる。また、液配置部材においても、吐出する液が粒子を含む場合であって、粒子として細胞やタンパク質を用いる際には、細胞やタンパク質に対する付着性の低い材料、及び細胞親和性の高い材料を用いることが好ましい。
また、液配置部材は、親水部よりも疎水性が高い疎水部を有していてもよい。この場合、疎水部は親水部の外側に位置することが好ましく、例えば、平板状の液配置部材においては、膜状部材に対向する面を親水部とし、側面を疎水部とすることが好ましい。
液配置部材における親水部としては、膜状部材における親水部と同様の材質を用いることができる。また、液配置部材における疎水部としては、膜状部材における疎水部と同様の材質を用いることができる。
また、液配置部材の位置としては、液配置部材と膜状部材に配された液とが接触する面積が大きくなる(液配置部材が配置できる液の体積が大きくなる)位置とすることも好ましい。こうすることで、より安定して液を吐出できるとともに、液を供給する回数を減らすことができる。
さらに、液配置部材と膜状部材との距離としては、液配置部材が膜状部材に配された液と接触することができる距離であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、膜状部材に配される液の量に応じて変化させてもよいし、一定としてもよい。
変位部材は、少なくとも膜状部材の吐出口を変位させることで、液配置部材により吐出口の近傍に配置された液を吐出させる部材である。なお、吐出口を変位させるとは、膜状部材が変形することにより吐出口の位置が変位すること、膜状部材全体の位置が変位することにより吐出口の位置が変位することなどを意味する。
また、液滴吐出ヘッドは、変位部材が吐出口の位置を変位させることにより、液の吐出を安定させるための予備吐出を行ってもよい。
圧電素子としては、例えば、圧電材料に電圧を印加するための電極を設けた構造とすることができる。この場合、駆動手段から圧電素子の電極間に電圧を印加することにより、圧電素子を振動させて、膜状部材などを振動させることができる。
圧電材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)、ビスマス鉄酸化物、ニオブ酸金属物、チタン酸バリウム、又はこれらの材料に金属や異なる酸化物を加えたものなどが挙げられる。これらの中でも、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)が好ましい。
また、変位部材が吐出口の位置を変位させる際には、吐出口を往復運動させることが好ましく、振動させることがより好ましい。
変位部材を膜状部材と接するように位置させる場合、膜状部材の平面形状が円形状であるときには、変位部材は吐出口を中心とする円環状の形状とすることが好ましい。こうすることにより、膜状部材が変形する大きさ(幅)を一定に制御することが容易になるため、より安定して液を吐出することができる。
支持部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
変位部材が支持部材と接する位置に配され、膜状部材及び液配置部材を共に変位させる場合、支持部材の少なくとも一部は、気体を流通可能であることが好ましい。こうすることにより、膜状部材や支持部材などの内側(液が配される側)の領域の気圧が、その領域の外部の気圧(通常は大気圧)と同程度となるため、膜状部材や支持部材などの内側の気圧が負圧となることを抑制して、より安定して液を吐出することができる。なお、支持部材の少なくとも一部が気体を流通可能であるとは、支持部材における内部と外部の間で、気体が流通可能であることを意味する。
なお、固定部としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
その他の部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
本発明の液滴吐出装置は、本発明の液滴吐出ヘッドを備え、液供給手段を有することが好ましく、更に必要に応じてその他の手段を備える。すなわち、本発明の液滴吐出装置は、液を吐出する吐出口を有する膜状部材と、液と接触し、液が吐出口から吐出可能となるように、吐出口の近傍に液を配置させる液配置部材と、少なくとも吐出口を変位させることで、液配置部材により吐出口の近傍に配置された液を吐出させる変位部材と、を有する液滴吐出ヘッドを備える。
また、本発明の液滴吐出方法は、液と接触する液配置部材により、液が膜状部材の吐出口から吐出可能となるように、吐出口の近傍に液を配置させる液配置工程と、少なくとも吐出口を変位させることで、液配置工程において吐出口の近傍に配置された液を吐出させる変位工程と、を含み、液供給工程を含むことが好ましく、更に必要に応じてその他の工程を含む。
つまり、本発明の液滴吐出装置は、本発明の液滴吐出方法を実施することと同義である。そのため、本発明の液滴吐出装置に関する説明を通じて、本発明の液滴吐出方法の詳細についても明らかにする。なお、液滴吐出装置及び液滴吐出方法の説明において、液滴吐出ヘッドの説明と重複する部分に関しては説明を省略する。
液供給手段は、膜状部材に液を供給する手段である。
液供給工程は、膜状部材に液を供給する工程である。
液滴吐出装置が液供給手段を有することにより、膜状部材に液を供給することができるため、膜状部材に配することができる液の量に制限されることなく、多くの液滴を安定して吐出することができる。そのため、液滴の吐出を連続して行う場合などにおいては、液滴吐出装置が液供給手段を有することが特に有利である。
液供給手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知のシリンジ、シリンジポンプ、ダイヤフラムポンプ、ディスペンサなどが挙げられる。つまり、液の供給に関しては、ユーザ等がシリンジなどを用いて液を供給してもよいし、ダイヤフラムポンプなどを用いて装置による制御を行って、定量的に液を供給してもよい。
これらの中でも、吐出口から吐出された液の量に応じて液を供給することが好ましい。この場合、吐出口から吐出された液の量と同量の液を供給することがより好ましい。こうすることにより、液滴の吐出を行う際に、膜状部材に配される液の量が一定に保たれるため、連続して液滴を吐出する場合であっても、より安定して液滴を吐出することができる。
なお、吐出された液の量は、液滴一つあたりの体積と吐出した液滴の数から求めてもよいし、膜状部材に重量計を設置し、膜状部材上の液の重量の変化から求めてもよい。
なお、貫通孔の位置及び方向としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、液供給手段を鉛直方向から貫通させることができる位置及び方向などとすることができる。
その他の手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、駆動手段、粒子数計数手段、制御手段、表示手段、記録手段などを有することが好ましい。
その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、駆動工程、粒子数計数工程、制御工程、表示工程、記録工程などを有することが好ましい。
駆動工程は駆動手段により好適に行うことができ、粒子数計数工程は粒子数計数手段により好適に行うことができ、制御工程は制御手段により好適に行うことができ、表示工程は表示手段により好適に行うことができ、記録工程は記録手段により好適に行うことができ、
駆動手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、液滴吐出ヘッドに駆動電圧を入力する手段などが挙げられる。この場合、駆動手段が圧電素子を変形させることにより微小な液滴を吐出させることができる。
粒子数計数手段は、液滴に含まれる粒子を計数する手段であり、液滴の吐出後、かつ液滴の被着対象物への着弾前に、液滴に含まれる粒子数をセンサによって計数する手段であることが好ましい。
センサとは、自然現象や人工物の機械的・電磁気的、熱的、音響的、又は化学的性質、或いはそれらにより示される空間情報・時間情報を、何らかの科学的原理を応用して、人間や機械が扱い易い別媒体の信号に置き換える装置を意味する。
プレートにおけるウェルの数は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、単数であってもよく、複数であってもよい。
ウェルの数が複数であるプレートとしては、ウェルの数が24個、96個、384個など業界において一般的な個数及び寸法で穴が形成されたものを用いることが好ましい。
プレートの材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、後の処理のために、細胞や核酸の壁面への付着が抑制されているものを用いることが好ましい。
本発明の液滴吐出装置は、液滴吐出ヘッドとして本発明の液滴吐出ヘッドを用いるため、以下の本発明の液滴吐出装置の実施形態の説明を通じて、本発明の液滴吐出ヘッドの実施形態についても説明する。
なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。また、構成部材の数、位置、形状等は本実施形態に限定されず、本発明を実施する上で好ましい数、位置、形状等にすることができる。
また、以下の説明では、粒子としての細胞を懸濁した細胞溶液の吐出を対象として例示するが、本発明の液滴吐出ヘッド及び液滴吐出装置は、粒子を含まない液を吐出するものや、その他の分野の粒子を懸濁した粒子懸濁液の吐出に適用するものでも構わない。
図1は、第1の実施形態に係る液滴吐出装置の一例を示す概略側面図である。
液滴吐出装置10は、液滴吐出ヘッド100と、液供給手段としてのディスペンサ20とを有する。
図3に示すように、制御手段70は、CPU(Central Processing Unit)71と、ROM(Read Only Memory)72と、RAM(Random Access Memory)73と、I/F(インターフェイス)74と、バスライン75とを有している。CPU71、ROM72、RAM73、及びI/F74は、バスライン75を介して相互に接続されている。
図4に示すような従来の液滴吐出装置50における液滴吐出ヘッド200では、ノズル135の近傍に細胞懸濁液150を配置する手段が存在しない。このため、液滴吐出ヘッド200では、ディスペンサ20が細胞懸濁液150を供給する位置、量、速度などがばらついた場合などには、ノズル135の近傍に供給される細胞懸濁液150の量に過不足が生じ、安定して細胞懸濁液150を吐出することが難しくなることがある。
これに対して、図1に示すような液滴吐出ヘッド100においては、細胞懸濁液150と接触し、ノズル135の近傍に細胞懸濁液150を配置させる液配置部材を有するため、安定して細胞懸濁液150を吐出することができる。
図5に示すように、第2の実施形態に係る液滴吐出装置11の液滴吐出ヘッド101は、液滴吐出ヘッド100と異なり、メンブレン支持部160と、圧電素子支持部161と、圧電素子支持部161に支持される圧電素子121とを更に有する。なお、メンブレン支持部160と圧電素子支持部161は互いに固定されており、液配置部材110は液配置部材支持部115を介してメンブレン支持部161に固定されている。
また、液滴吐出ヘッド101は、貫通孔162がディスペンサ20に貫通されている際に、貫通孔162を通じて気体が流通可能となっている。そのため、液滴吐出ヘッド101は、メンブレン130、メンブレン支持部160、圧電素子支持部161、及び圧電素子121で囲まれる領域の圧力が負圧なることを抑制できるため、より安定して細胞懸濁液150の液滴を吐出することができる。
図6に示すように、第3の実施形態に係る液滴吐出装置12の液滴吐出ヘッド102は、液滴吐出ヘッド101と異なり、液配置部材110及び圧電素子121を固定する固定部170を更に有する。なお、圧電素子支持部161の一部は、液配置部材支持部115により貫通される貫通孔163を有しており、液配置部材110は、液配置部材支持部115を介して固定部170に固定されている。
図7に示すように、第4の実施形態に係る液滴吐出装置13の液滴吐出ヘッド103は、液滴吐出ヘッド100と異なり、平板状の液配置部材111を有している。このため、液滴吐出ヘッド103においては、液配置部材111とメンブレン130に配された細胞懸濁液150とが接触する面積が大きくなり、液配置部材111が配置できる細胞懸濁液150の体積が大きくなる。したがって、液滴吐出ヘッド103は、より安定して細胞懸濁液150の液滴を吐出できるとともに、ディスペンサ20により細胞懸濁液150を供給する回数を減らすことができる。
図8に示すように、第5の実施形態に係る液滴吐出装置14の液滴吐出ヘッド104は、液滴吐出ヘッド103と異なり、突起部が設けられた液配置部材112を有する。このため、液滴吐出ヘッド104においては、ディスペンサ20から供給される細胞懸濁液150をより確実にノズル135の近傍に配置することができる。したがって、液滴吐出ヘッド104は、ディスペンサ20が細胞懸濁液150を供給する位置、量、速度などが大きくばらついた場合などであっても、より安定して細胞懸濁液150の液滴を吐出することができる。
図9に示すように、第6の実施形態に係る液滴吐出装置15の液滴吐出ヘッド105は、液滴吐出ヘッド103と異なり、親水部131a及び疎水部131bを有するメンブレン131と、親水部113a及び疎水部113bを有する液配置部材113を備えている。また、メンブレン131における親水部131aは、ノズル135の周囲に設けられ、疎水部131bは、親水部131aの外側に設けられている。液配置部材113における親水部113aは、メンブレン131に対抗する面に設けられ、疎水部113bは、液配置部材113の側面に設けられている。
図10に示すように、第7の実施形態に係る液滴吐出装置16の液滴吐出ヘッド106は、液滴吐出ヘッド103と異なり、ディスペンサ20の少なくとも一部により貫通される貫通孔114aを有する液配置部材114を備えている。本実施形態においては、貫通孔114aは、ディスペンサ20の一部を鉛直方向から貫通させることができるようになっている。
液滴吐出ヘッド106においては、ディスペンサ20をより自由な位置に位置させることができるため、ディスペンサ20の位置や方向に制限されることなく、液滴吐出装置16を小型化することができる。
<1> 液を吐出する吐出口を有する膜状部材と、
前記液と接触し、前記液が前記吐出口から吐出可能となるように、前記吐出口の近傍に前記液を配置させる液配置部材と、
少なくとも前記吐出口を変位させることで、前記液配置部材により前記吐出口の近傍に配置された前記液を吐出させる変位部材と、
を有することを特徴とする液滴吐出ヘッドである。
<2> 前記液配置部材が、平板状である前記<1>に記載の液滴吐出ヘッドである。
<3> 前記液配置部材が、突起部を有する前記<1>から<2>のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドである。
<4> 前記膜状部材が、前記吐出口の周囲に親水部を有し、前記親水部よりも疎水性が高い疎水部を前記親水部の外側に有する前記<1>から<3>のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドである。
<5> 前記液配置部材が、少なくとも親水部を有する前記<1>から<4>のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドである。
<6> 前記変位部材が、前記膜状部材と接するように位置し、前記膜状部材を変形させることにより前記液を吐出する前記<1>から<5>のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドである。
<7> 前記変位部材が、前記膜状部材及び前記液配置部材を共に変位させる前記<1>から<5>のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドである。
<8> 前記吐出口から吐出される前記液が粒子を含む前記<1>から<7>のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドである。
<9> 前記粒子が細胞である前記<8>に記載の液滴吐出ヘッドである。
<10> 前記<1>から<9>のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドを備えることを特徴とする液滴吐出装置である。
<11> 前記膜状部材に前記液を供給する液供給手段を備える前記<10>に記載の液滴吐出装置である。
<12> 前記液供給手段が、前記吐出口から吐出された前記液の量に応じて前記液を供給する前記<11>に記載の液滴吐出装置である。
<13> 前記液配置部材が、前記液供給手段の少なくとも一部により貫通される貫通孔を有する前記<11>から<12>のいずれかに記載の液滴吐出装置である。
<14> 液と接触する液配置部材により、前記液が膜状部材の吐出口から吐出可能となるように、前記吐出口の近傍に前記液を配置させる液配置工程と、
少なくとも前記吐出口を変位させることにより、前記液配置工程において前記吐出口の近傍に配置された前記液を吐出させる変位工程と、
を含むことを特徴とする液滴吐出方法である。
<15> 前記膜状部材に前記液を供給する液供給工程を含む前記<14>に記載の液滴吐出方法である。
<16> 前記液供給工程が、前記吐出口から吐出された前記液の量に応じて前記液を供給する前記<15>に記載の液滴吐出方法である。
10a 第1の実施形態における液滴吐出装置の別の一例
11 第2の実施形態における液滴吐出装置
12 第3の実施形態における液滴吐出装置
13 第4の実施形態における液滴吐出装置
14 第5の実施形態における液滴吐出装置
15 第6の実施形態における液滴吐出装置
16 第7の実施形態における液滴吐出装置
20 ディスペンサ(液供給手段)
100 第1の実施形態における液滴吐出ヘッド
101 第2の実施形態における液滴吐出ヘッド
102 第3の実施形態における液滴吐出ヘッド
103 第4の実施形態における液滴吐出ヘッド
104 第5の実施形態における液滴吐出ヘッド
105 第6の実施形態における液滴吐出ヘッド
106 第7の実施形態における液滴吐出ヘッド
110 液配置部材
111 平板状の液配置部材
112 突起部を有する液配置部材
113 親水部及び疎水部を有する液配置部材
114 貫通孔を有する液配置部材
120 圧電素子(変位部材)
130 メンブレン(膜状部材)
131 親水部及び疎水部を有するメンブレン
135 ノズル(吐出口)
140 細胞(粒子)
150 細胞懸濁液(液)
Claims (19)
- 液を吐出可能な吐出口を有する膜状部材と、
前記膜状部材に配置される前記液と接触し、且つ、前記液の分子間力により前記吐出口の近傍に前記液を配置させることが可能な液配置部材と、
前記吐出口の近傍に配置された前記液を吐出させる変位部材と、
を有することを特徴とする液滴吐出ヘッド。 - 前記液配置部材が、平板状である請求項1に記載の液滴吐出ヘッド。
- 前記液配置部材が、突起部を有する請求項1から2のいずれかに記載の液滴吐出ヘッド。
- 前記膜状部材が、前記吐出口の周囲に親水部を有し、前記親水部よりも疎水性が高い疎水部を前記親水部の外側に有する請求項1から3のいずれかに記載の液滴吐出ヘッド。
- 前記液配置部材が、少なくとも親水部を有する請求項1から4のいずれかに記載の液滴吐出ヘッド。
- 前記変位部材が、前記膜状部材と接するように位置し、前記膜状部材を変形させることにより前記液を吐出する請求項1から5のいずれかに記載の液滴吐出ヘッド。
- 前記変位部材が、前記膜状部材及び前記液配置部材を共に変位させる請求項1から5のいずれかに記載の液滴吐出ヘッド。
- 前記吐出口から吐出される前記液が粒子を含む請求項1から7のいずれかに記載の液滴吐出ヘッド。
- 前記粒子が細胞である請求項8に記載の液滴吐出ヘッド。
- 請求項1から9のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドを備えることを特徴とする液滴吐出装置。
- 前記膜状部材に前記液を供給する液供給手段を備える請求項10に記載の液滴吐出装置。
- 前記液供給手段が、前記吐出口から吐出された前記液の量に応じて前記液を供給する請求項11に記載の液滴吐出装置。
- 前記液配置部材が、前記液供給手段の少なくとも一部により貫通される貫通孔を有する請求項11から12のいずれかに記載の液滴吐出装置。
- 液と接触可能な液配置部材により、吐出口の近傍に前記液の分子間力により液を配置させる液配置工程と、
前記吐出口の近傍に配置された前記液を吐出させる変位工程と、
を含むことを特徴とする液滴吐出方法。 - 前記吐出口を有する膜状部材に前記液を供給する液供給工程を含む請求項14に記載の液滴吐出方法。
- 前記液供給工程が、前記吐出口から吐出された前記液の量に応じて前記液を供給する請求項15に記載の液滴吐出方法。
- 液を吐出可能な吐出口を有する膜状部材と、
前記液と接触し、前記吐出口の近傍に前記液を配置させる平板状の液配置部材と、
前記吐出口の近傍に配置された前記液を吐出させる変位部材と、
を有することを特徴とする液滴吐出ヘッド。 - 液を吐出可能な吐出口を有する膜状部材と、
前記液と接触し、前記吐出口の近傍に前記液を配置させる液配置部材と、前記吐出口の近傍に配置された前記液を吐出させる変位部材と、
を有し、
前記膜状部材が、前記吐出口の周囲に親水部を有し、前記親水部よりも疎水性が高い疎水部を前記親水部の外側に有することを特徴とする液滴吐出ヘッド。 - 前記液配置部材が、少なくとも親水部を有する請求項17または18に記載の液滴吐出ヘッド。
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