簡潔のために、特許および特許出願を含む本明細書で引用されている刊行物の開示は、それら全体が参照により本明細書に組み込まれる。
大部分の化学名は本明細書ではIUPAC命名法を用いて生成した。いくつかの化学名は当該技術分野で知られている異なる命名法を用いて生成したものであるか、別の名前または商品名である。名前と構造との間で矛盾がある場合、構造を優先する。
定義および一般用語
次に、その例が付随する構造および式で図示されている本発明の特定の実施形態を詳細に参照する。本発明は特許請求の範囲によって定められているように、本発明の範囲に含めることができる全ての代替物、修正物および均等物を包含することを意図している。当業者であれば、本発明の実施において使用することができる本明細書に記載されているものと同様または同等の多くの方法および材料を認識するであろう。本発明は決して本明細書に記載されている方法および材料に限定されない。限定されるものではないが定義されている用語、用語の用法、記載されている技術などを含む、組み込まれている文献、特許および同様の資料のうちの1つ以上が本出願とは異なっていたり矛盾していたりする場合、本出願を優先する。
明確性のために別個の実施形態の文脈に記載されている本発明の特定の特徴は単一の実施形態において組み合わせでも提供できることがさらに理解される。逆に、簡潔のために単一の実施形態の文脈に記載されている本発明の様々な特徴は、別々または任意の好適なサブコンビネーションで提供することもできる。
特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書で参照される全ての特許および刊行物はそれら全体が参照によって組み込まれる。
特に記載しない限り、本明細書で使用される以下の定義を適用するものとする。本発明の目的ために、化学元素は元素周期表、CAS版および化学・物理学ハンドブック(第75版、1994年)に従って特定される。さらに、有機化学の一般的な原理は“有機化学(Organic Chemistry)”,Thomas Sorrell,University Science Books,Sausalito:1999および“マーチの上級有機化学(March’s Advanced Organic Chemistry)”Michael B.SmithおよびJerry March著,John Wiley&Sons,ニューヨーク:2007に記載されており、その内容全体は参照により本明細書に組み込まれている。
上で使用されているように本開示全体を通して、以下の用語は特に記載しない限り以下の意味を有すると理解されるものとする。定義がない場合、当業者に知られている従来の定義を優先する。本明細書に提供されている定義が任意の引用されている刊行物に提供されている定義と矛盾したり異なっていたりする場合、本明細書に提供されている定義を優先する。
本明細書で使用される「含む(including)」、「含む(含有する)(containing)」および「含む(comprising)」という用語は、それらのオープンな非限定的な意味で使用されている。
本明細書で使用される「1つの(a)」、「1つの(an)」および「前記(その)(the)」という単数形は、文脈が明らかに別の意を示していない限り複数の指示対象を含む。
より簡潔な説明を提供するために、本明細書において与えられている定量的表現のいくつかは「約」という用語で修飾されていない。当然ながら、「約」という用語が明示的に使用されているか否かに関わらず、本明細書において与えられている全ての量は実際の所与の値を指すように意図されており、それはそのような所与の値を得るための実験および/または測定条件に起因する同等値および近似値を含む当該技術分野における通常の技量に基づいて合理的に推測されるそのような所与の値の近似値も指すように意図されている。収率が割合として与えられている場合はいつでも、そのような収率は、その収率が特定の化学量論的条件下で得ることができる同じ実体の最大量に対して与えられる実体の質量を指す。割合とした与えられる濃度は異なるように示されていない限り質量比を指す。
化学的定義
本明細書で使用される「アルキル」は、1~12個の炭素原子を有する飽和の直鎖状もしくは分岐鎖状炭化水素基を指す。代表的なアルキル基としては、限定されるものではないが、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、2-メチル-1-プロピル、2-メチル-2-プロピル、2-メチル-1-ブチル、3-メチル-1-ブチル、2-メチル-3-ブチル、2,2-ジメチル-1-プロピル、2-メチル-1-ペンチル、3-メチル-1-ペンチル、4-メチル-1-ペンチル、2-メチル-2-ペンチル、3-メチル-2-ペンチル、4-メチル-2-ペンチル、2,2-ジメチル-1-ブチル、3,3-ジメチル-1-ブチル、2-エチル-1-ブチル、ブチル、イソブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシルなど、およびヘプチル、オクチルなどのより長いアルキル基が挙げられる。本明細書で使用される「低級アルキル」は、1~6個の炭素原子を有するアルキルを意味する。
本明細書で使用される「アルキルアミノ」という用語は、アミノ基の1個の水素原子が本明細書に定義されているアルキル基で置換されている本明細書に定義されているアミノ基を意味する。アミノアルキル基は、一般式:-NH-アルキルによって定義することができる。この一般式は、一般式:-NH-C1~C10アルキルおよび-NH-C1~C6アルキルの基を含む。アミノアルキル基の例としては、限定されるものではないが、アミノメチル、アミノエチル、アミノプロピル、アミノブチルが挙げられる。
本明細書で使用される「ジアルキルアミノ」という用語は、アミノ基の2個の水素原子が本明細書に定義されているアルキル基で置換されている本明細書に定義されているアミノ基を意味する。ジアミノアルキル基は、一般式:-N(アルキル)2によって定義することができ、式中、アルキル基は同じであっても異なってもよく、かつ本明細書に定義されているアルキル、例えばC1~C10アルキルまたはC1~C6アルキルから選択されてもよい。
本明細書で使用される「アルコキシ」という用語は-O-(アルキル)を含み、式中、アルキルは上に定義されているとおりである。
本明細書で使用される「アルコキシアルキル」は-(アルキレニル)-O-(アルキル)を意味し、式中、各「アルキル」は独立して上に定義されているアルキル基である。
本明細書で使用される「アミノ」という用語は-NH2基を指す。
「アリール」は、単環式、二環式もしくは三環式芳香族基を意味し、ここではこれらの基の全ての環は芳香族である。二環式もしくは三環式系では、個々の芳香族環は互いに縮合されている。例示的なアリール基としては、限定されるものではないが、フェニル、ナフタレンおよびアントラセンが挙げられる。
本明細書で使用される「アリールオキシ」は-O-(アリール)基を指し、式中、アリールは上に定義されているとおりである。
本明細書で使用される「アリールアルキル」は-(アルキレニル)-(アリール)基を指し、式中、アルキレニルおよびアリールは上に定義されているとおりである。アリールアルキルの非限定的な例は低級アルキル基を含む。好適なアリールアルキル基の非限定的な例としては、ベンジル、2-フェネチルおよびナフタレニルメチルが挙げられる。
本明細書で使用される「アリールアルコキシ」は、-O-(アルキレニル)-アリール基を指し、式中、アルキレニルおよびアリールは上に定義されているとおりである。
本明細書で使用される「シアノ」という用語は、三重結合によって窒素原子に結合された炭素原子を有する置換基を意味する。
「シアノアルキル」という用語は、アルキル基の水素原子がシアノ(-CN)基で置換されている上に定義されているアルキル基を意味する。シアノアルキル基のアルキル部分は分子の残りの部分への結合点を提供する。
本明細書で使用される「重水素」という用語は、1つの陽子および1つの中性子を有する水素の安定な同位体を意味する。
本明細書で使用される「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を指す。「ハロ」という用語は、クロロ、フルオロ、ブロモまたはヨードを表す。
「ハロアルキル」という用語は、アルキル基の水素原子の1つ以上、例えば1つ、2つまたは3つがハロゲン原子、例えばフルオロ、ブロモまたはクロロ、特にフルオロで置換されている上に定義されているアルキル基を意味する。ハロアルキルの例としては、限定されるものではないが、モノフルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、モノフルオロエチル、ジフルオロエチル、トリフルオロエチル、モノフルオロプロピル、ジフルオロプロピルまたはトリフルオロプロピル、例えば、3,3,3-トリフルオロプロピル、2-フルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチルまたはブロモエチルまたはクロロエチルが挙げられる。同様に「フルオロアルキル」という用語は、1つ以上、例えば1つ、2つまたは3つのフッ素原子で置換された上に定義されているアルキル基を指す。
本明細書で使用される「ハロアルコキシ」という用語は-O-(ハロアルキル)基を指し、式中、ハロアルキルは上に定義されているとおりである。例示的なハロアルコキシ基は、ブロモエトキシ、クロロエトキシ、トリフルオロメトキシおよび2,2,2-トリフルオロエトキシである。
「ヒドロキシ」という用語は-OH基を意味する。
「ヒドロキシアルキル」という用語は、少なくとも1つヒドロキシ基、例えば1つ、2つまたは3つのヒドロキシ基で置換されたアルキル基を意味する。ヒドロキシアルキル基のアルキル部分は、分子の残りの部分への結合点を提供する。ヒドロキシアルキル基の例としては、限定されるものではないが、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、1-ヒドロキシプロピル、2-ヒドロキシイソプロピルおよび1,4-ジヒドロキシブチルなどが挙げられる。
「オキソ」という用語は=O基を意味し、かつ炭素原子または硫黄原子に結合されていてもよい。「N-オキシド」という用語は窒素原子の酸化された形態を指す。
本明細書で使用される「シクロアルキル」という用語は、3~12個の環炭素原子を有する飽和もしくは部分飽和の単環式、縮合多環式、架橋多環式またはスピロ多環式の炭素環を指す。シクロアルキル基の非限定的なカテゴリは、3~6個の炭素原子を有する飽和もしくは部分飽和の単環式炭素環である。シクロアルキル基の実例としては、限定されるものではないが、以下の部分が挙げられる。
「シクロアルコキシ」という用語は-O-(シクロアルキル)基を指す。
本明細書で使用される「ヘテロアリール」という用語は、炭素、酸素、窒素、セレンおよび硫黄から選択される3~15個の環原子を有する単環式もしくは縮合多環式芳香族複素環を指す。好適なヘテロアリール基は、ピリリウムなどの芳香族にするために荷電しなければならない環系を含まない。いくつかの好適な5員環のヘテロアリール環(単環式ヘテロアリールまたは多環式ヘテロアリールの一部として)は、1つの酸素、硫黄または窒素原子、1つの窒素+1つの酸素または硫黄、あるいは2つ、3つまたは4つの窒素原子を有する。いくつかの好適な6員環のヘテロアリール環(単環式ヘテロアリールまたは多環式ヘテロアリールの一部として)は、1つ、2つまたは3つの窒素原子を有する。ヘテロアリール基の例としては、限定されるものではないが、ピリジニル、イミダゾリル、イミダゾピリジニル、ピリミジニル、ピラゾリル、トリアゾリル、ピラジニル、テトラゾリル、フリル、チエニル、イソオキサゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、ピロリル、キノリニル、イソキノリニル、インドリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、シンノリニル、インダゾリル、インドリジニル、フタラジニル、ピリダジニル、トリアジニル、イソインドリル、プテリジニル、プリニル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、フラザニル、ベンゾフラザニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、キナゾリニル、キノキサリニル、ナフチリジニルおよびフロピリジニルが挙げられる。
「二環式ヘテロアリール」という用語は、2つの環が互いに縮合されており、かつその環のうちの少なくとも1つが上に定義されているヘテロアリールである、2つの構成芳香族環を有する上に定義されているヘテロアリールを指す。二環式ヘテロアリールは、1つ、2つ、3つまたは4つのヘテロ原子環員を含む二環式ヘテロアリール基を含み、かつ置換されていないかアミノおよびハロからなる群から選択される1つ以上の置換基で置換されており、ここでは前記ヘテロアリールの1つ以上のN環員は任意にN-オキシドである。二環式ヘテロアリールは、8、9もしくは10員環の二環式ヘテロアリール基も含む。二環式ヘテロアリールは、1つ、2つ、3つもしくは4つのヘテロ原子環員を有し、かつ置換されていないかアミノおよびハロからなる群から選択される1つ以上の置換基で置換されている8、9もしくは10員環の二環式ヘテロアリール基も含み、ここでは前記ヘテロアリールの1つ以上のN環員は任意にN-オキシドである。本発明に関する二環式ヘテロアリールの実例としては、限定されるものではないが、以下が挙げられる。
当業者であれば、上に列挙または図示されているヘテロアリールおよびシクロアルキル基の化学種は網羅的なものではなく、これらの定義されている用語の範囲内のさらなる化学種も選択できることを認識するであろう。
本明細書に記載されているように、本明細書に開示されている化合物は、1つ以上の置換基または例示されているように本発明の特定のクラス、サブクラスおよび化学種で任意に置換されていてもよい。
本明細書で使用される「置換されている」という用語は、特定の基または部分が1つ以上の好適な置換基を有することを意味する。本明細書で使用される「置換されていない」という用語は、特定の基が置換基を有しないことを意味する。本明細書で使用される「任意に置換されている」という用語は、特定の基が置換されていないか特定の数の置換基で置換されていることを意味する。「置換されている」という用語が構造系について記述するために使用されている場合、その置換は当該系上の任意の原子価許容位置(valency-allowed position)で生じることが意図されている。
本明細書で使用される「1つ以上の置換基」という表現は、当該系上の任意の原子価許容位置で生じ得る1つから最大可能数までの置換を意味する。特定の実施形態では、1つ以上の置換基は1つ、2つ、3つ、4つまたは5つの置換基を意味する。別の実施形態では、1つ以上の置換基は1つ、2つまたは3つの置換基を意味する。
満たされていない原子価と共に本明細書において表されている任意の原子は、その原子価を満たすのに十分な数の水素原子を有するものとみなす。
任意の変数(例えば、アルキル、アルキレニル、ヘテロアリール、R1、R2またはRa)が本明細書に提供されている任意の式または説明において2つ以上の場所で現れる場合、各出現に対するその変数の定義は全ての他の出現におけるその定義とは無関係である。
本明細書で使用される数値範囲は連続的な整数を含むことが意図されている。例えば、「0から4まで」または「0~4」として表されている範囲は0、1、2、3および4を含み、「10~20%」として表されている範囲は10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%および20%を含む。同様に、数値範囲はその間の連続的な分数も含むことが意図されている。例えば、「1~2%」として表されている範囲は1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%および2.0%を含む。
多官能性部分が示されている場合、コアへの結合点は線またはハイフンによって示されている。例えばアリールオキシ-は、酸素原子がコア分子への結合点であると共にアリールがその酸素原子に結合されている部分を指す。
さらなる定義
本明細書で使用される「対象」という用語は哺乳類および非哺乳類を包含する。哺乳類の例としては、限定されるものではないが、哺乳類クラス(ヒト)、チンパンジーおよび他の類人猿およびサル種などの非ヒト霊長類、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタなどの家畜、ウサギ、イヌおよびネコなどの家庭用動物、ならびにラット、マウスおよびモルモットなどの齧歯類を含む実験動物の任意の一員が挙げられる。非哺乳類の例としては、限定されるものではないが鳥および魚などが挙げられる。本発明の一実施形態では、哺乳類はヒトである。
「患者」はヒトおよび動物の両方を含む。
「阻害剤」という用語は、特定の生物活性を遮断するかそれ以外の方法で妨害する化合物、薬物、酵素活性化剤またはホルモンなどの分子を指す。
「調節剤」という用語は、所与のタンパク質、受容体および/またはイオンチャネルの活性を増加または減少させるかそれ以外の方法で影響を与える本発明の化合物などの分子を指す。
「有効量」または「治療的有効量」という用語は、所望の生物学的結果を与えるのに十分な量の薬剤を指す。その結果は疾患または病状の徴候、症状または原因の減少および/または緩和、あるいは生体系の任意の他の所望の変化であってもよい。例えば、治療的使用のための「有効量」は、疾患状態、症状または病状における臨床的に関連する変化を与えるのに必要な化合物または当該化合物を含む組成物の量である。任意の個体の事例における適当な「有効」量は日常的な実験法を用いて当業者によって決定してもよい。従って、「有効量」という表現は一般に、活性物質が治療的に所望の効果を有する量を指す。
本明細書で使用される「治療する」または「治療」という用語は、「予防的」および「治癒的」治療の両方を包含する。「予防的」治療は、疾患、疾患症状または病状の発生を引き延ばすこと、現れ得る症状を抑制すること、あるいは疾患または症状の発生または再発のリスクを低下させることを示すことが意図されている。「治癒的」治療は、既存の疾患、症状または状態の重症度を低下させること、またはそれらの悪化を抑制することを含む。従って治療は、既存の疾患症状の悪化を改善または予防すること、さらなる症状が生じるのを予防すること、症状の根底にある代謝の原因を改善または予防すること、障害または疾患を阻害すること、例えば、障害または疾患の発生を抑止すること、障害または疾患を軽減すること、障害または疾患の軽減を引き起こすこと、疾患または障害によって引き起こされる状態を軽減すること、あるいは疾患または障害の症状を停止すること含む。
本明細書で使用される「化合物の投与」および「化合物を投与する」という用語は、本発明の化合物、化合物を含む医薬組成物または本発明の化合物のプロドラッグをそれを必要とする個体に提供することを意味すると理解されるべきである。非限定的な技術分野の当業者は、有効量の本発明の化合物を用いて神経および精神障害に現在罹患している患者を治療するか、当該疾患に罹患している患者を予防的に治療することができると認識される。
本明細書で使用される「組成物」という用語は、特定の量で特定の成分を含む生成物、ならびに特定の量の特定の成分の組み合わせから直接または間接的に得られる任意の生成物を包含することが意図されている。医薬組成物に関するそのような用語は、活性成分および担体を構成する不活性成分を含む生成物、ならびに任意の2種以上の成分の組み合わせ、複合体形成または凝集あるいは1種以上の成分の解離を引き起こすような他の種類の反応または相互作用により直接または間接的に得られる任意の生成物を包含することが意図されている。従って本発明の医薬組成物は、本発明の化合物と薬学的に許容される担体との混合によって調製される任意の組成物を包含する。
さらなる化学的説明
本明細書において与えられている任意の式は、構造式によって示されている構造を有する化合物ならびに特定の変形または形態を表すことが意図されている。例えば、本明細書において与えられている任意の式の化合物は不斉中心すなわちキラル中心を有していてもよく、従って異なる立体異性体で存在してもよい。一般式の化合物の光学異性体、鏡像異性体およびジアステレオマーならびにそれらの混合物を含む全ての立体異性体は当該式の範囲内に含まれるとみなされる。さらに特定の構造は幾何異性体(すなわち、シスおよびトランス異性体)、互変異性体またはアトロプ異性体として存在してもよい。全てのそのような異性体およびそれらの混合物は本明細書において本発明の一部として想定されている。従って本明細書において与えられている任意の式は、ラセミ体、1つ以上の鏡像異性型、1つ以上のジアステレオマー型、1つ以上の互変異性型またはアトロプ異性型およびそれらの混合物を表すことが意図されている。
「立体異性体」は、同一の化学組成を有するが、空間における原子または基の配置に関して異なる化合物を指す。立体異性体としては、鏡像異性体、ジアステレオマー、配座異性体(回転異性体)、幾何(シス/トランス)異性体、アトロプ異性体などが挙げられる。
「キラル」は、鏡像相手と重ね合わせることができないという特性を有する分子を指し、「アキラル」という用語は、それらの鏡像相手に重ね合わせることができる分子を指す。
「鏡像異性体」は互いに重ね合わせることができない鏡像である化合物の2種類の立体異性体を指す。
「ジアステレオマー」は、2つ以上のキラル中心を有し、かつそれらの分子が互いに鏡像でない立体異性体を指す。ジアステレオマーは異なる物理的性質、例えば、融点、沸点、スペクトル特性または生物活性を有する。ジアステレオマーの混合物は、電気泳動などの高解像度解析手順およびHPLCなどのクロマトグラフィにより分離してもよい。
本明細書で使用される立体化学的定義および規定は一般に、S.P.Parker,Ed.,マグロウヒル化学用語辞典(McGraw-Hill Dictionary of Chemical Terms)(1984)McGraw-Hill Book Company,ニューヨークならびにEliel,E.およびWilen,S.,「有機化合物の立体化学(Stereochemistry of Organic Compounds)」,John Wiley&Sons,Inc.,ニューヨーク,1994に従っている。
多くの有機化合物は光学活性型で存在し、すなわち偏光面を回転するための能力を有する。光学活性化合物について記述する際は、そのキラル中心の周りの分子の絶対配置を示すために接頭辞DおよびLまたはRおよびSが使用される。接頭辞dおよびlまたは(+)および(-)は当該化合物による偏光面の回転の符号を示すために用いられ、この場合、(-)またはlは当該化合物が左旋性であることを意味する。(+)またはdが接頭辞として付された化合物は右旋性である。特定の立体異性体を鏡像異性体と呼ぶことがあり、そのような立体異性体の混合物を鏡像異性体混合物と呼ぶ。鏡像異性体の50:50混合物をラセミ混合物またはラセミ体と呼び、これは化学反応またはプロセスにおいて立体選択または立体特異性が存在しない場合に生じ得る。
本明細書に開示されている化合物のあらゆる不斉原子(例えば炭素など)は、ラセミ体または鏡像異性的に濃縮された、例えば(R)、(S)または(R,S)配置であってもよい。特定の実施形態では、各不斉原子は、(R)または(S)配置において少なくとも50%の鏡像体過剰率、少なくとも60%の鏡像体過剰率、少なくとも70%の鏡像体過剰率、少なくともの80%鏡像体過剰率、少なくとも90%の鏡像体過剰率、少なくとも95%の鏡像体過剰率または少なくとも99%の鏡像体過剰率を有する。
出発物質および手順の選択に応じて、本化合物は、不斉炭素原子の数により可能な立体異性体またはラセミ体およびジアステレオマー混合物などのそれらの混合物のうちの1つの形態で存在することができる。光学活性な(R)および(S)異性体は、キラルシントンまたはキラル試薬を用いて調製しても従来の技術を用いて分割してもよい。本化合物が二重結合を含む場合、その置換基はEもしくはZ配置であってもよい。本化合物が二置換シクロアルキルを含む場合、シクロアルキル置換基は同じシクロアルキル骨格の別の置換基に対してシスもしくはトランス配置を有していてもよい。
立体異性体の任意の生じる混合物は、例えばクロマトグラフィおよび/または分別結晶により、成分の物理化学的相違に基づいて純粋または実質的に純粋な幾何異性体、鏡像異性体、ジアステレオマーに分離することができる。最終生成物または中間体の任意の生じるラセミ体を当業者に公知の方法、例えばそのジアステレオマー塩の分離によって光学的対掌体に分割することができる。ラセミ生成物をキラルクロマトグラフィ、例えばキラル吸着剤を用いる高速液体クロマトグラフィ(HPLC)によって分割することもできる。好ましい鏡像異性体は不斉合成によって調製することもできる。例えば、Jacquesら,鏡像異性体、ラセミ体および分割(Enantiomers,Racemates and Resolutions)(Wiley Interscience,ニューヨーク,1981)、不斉合成の原理(Principles of Asymmetric Synthesis)(2nd Ed.Robert E.Gawley,Jeffrey Aube,Elsevier,Oxford,UK,2012)、Eliel,E.L.炭素化合物の立体化学(Stereochemistry of Carbon Compounds)(McGraw-Hill,NY,1962)、Wilen,S.H.分割剤および光学分割の表(Tables of Resolving Agents and Optical Resolutions)268頁(E.L.Eliel,Ed.,Univ.of Notre Dame Press,Notre Dame,IN 1972)、キラル分離技術:実践的アプローチ(Chiral Separation Techniques:A Practical Approach)(Subramanian,G.Ed.,Wiley-VCH Verlag GmbH&Co.KGaA,ワインハイム,ドイツ,2007)を参照されたい。
ジアステレオマー混合物は、例えばクロマトグラフィおよび/または分別結晶などの当業者に周知の方法により、それらの物理的化学的相違に基づいてそれらの個々のジアステレオマーに分離してもよい。鏡像異性体は、適当な光学活性化合物との反応によって鏡像異性混合物をジアステレオマー混合物に変換し(例えば、キラルアルコールまたはモッシャーの酸塩化物などの不斉補助剤、あるいはジアステレオマー塩の混合物の形成)、ジアステレオマーを分離し、かつ個々のジアステレオマーを対応する純粋な鏡像異性体に変換すること(例えば加水分解または脱塩すること)によって分離してもよい。またキラルHPLCカラムを使用して鏡像異性体を分離してもよい。
本発明の化合物は薬学的に許容される塩を形成することができ、これも本発明の範囲内である。「薬学的に許容される塩」とは、非毒性であり、生理学的に許容可能であり、それが製剤化される医薬組成物に適合可能であり、かつそれ以外に製剤および/または対象への投与に適している式Iの化合物の遊離酸または遊離塩基の塩を指す。本明細書における化合物の言及は、特に記載しない限り前記化合物の薬学的に許容される塩の言及を含むものと理解される。
化合物の塩は、無機酸および/または有機酸と共に形成される酸性塩ならびに無機塩基および/または有機塩基と共に形成される塩基性塩を含む。また所与の化合物が、限定されるものではないがピリジンまたはイミダゾールなどの塩基性部分、および限定されるものではないがカルボン酸などの酸性部分の両方を含む場合、当業者であれば、当該化合物は双性イオン(「分子内塩」)として存在する場合があり、そのような塩は本明細書で使用される「塩」という用語の中に含まれることを認識するであろう。本発明の化合物の塩は、例えば塩が沈殿するような媒体または水性媒体中で化合物を当量などの好適な量の酸または塩基と反応させた後に凍結乾燥することによって調製してもよい。
例示的な塩としては、限定されるものではないが、硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、酸クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチジン酸塩(gentisinate)、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、糖酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩(「メシル酸塩」)、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩およびパモ酸塩(すなわち、1,1’-メチレン-ビス(2-ヒドロキシ-3-ナフトエ酸塩))が挙げられる。薬学的に許容される塩は、酢酸イオン、コハク酸イオンまたは他の対イオンなどの別の分子の包含を伴ってもよい。これらの対イオンは、親化合物上の電荷を安定化させる任意の有機もしくは無機部分であってもよい。さらに薬学的に許容される塩は、その構造中に2つ以上の電荷を帯びた原子を有していてもよい。複数の電荷を帯びた原子が薬学的に許容される塩の一部である例は複数の対イオンを有することができる。故に、薬学的に許容される塩は1つ以上の電荷を帯びた原子および/または1つ以上の対イオンを有することができる。
例示的な酸付加塩としては、酢酸塩、アスコルビン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、硫酸水素塩、ホウ酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、フマル酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、リン酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩(トシル酸塩としても知られている)などが挙げられる。
例示的な塩基性塩としては、アンモニウム塩、ナトリウム、リチウムおよびカリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウムおよびマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、ジシクロヘキシルアミン、tert-ブチルアミンなどの有機塩基(例えば有機アミン)との塩、およびアルギニンおよびリジンなどのアミノ酸との塩が挙げられる。塩基性窒素含有基は、低級ハロゲン化アルキル(例えば、塩化、臭化およびヨウ化メチル、塩化、臭化およびヨウ化エチル、塩化、臭化およびヨウ化ブチル、硫酸ジアルキル(例えば、硫酸ジメチル、ジエチルおよびジブチル)、長鎖ハロゲン化物(例えば、塩化、臭化およびヨウ化デシル、塩化、臭化およびヨウ化ラウリル、塩化、臭化およびヨウ化ステアリル)、ハロゲン化アラルキル(例えば、臭化ベンジルおよびフェネチル)およびそれ以外などの薬剤により四級化されていてもよい。
さらに、一般に医薬化合物からの薬学的に有用な塩の形成に適しているとみなされる酸および塩基については、例えば、P.Stahlら,Camille G.(eds.)医薬塩のハンドブック:性質、選択および使用(Handbook of Pharmaceutical Salts.Properties,Selection and Use).(2002)チューリッヒ:Wiley-VCH、S.Bergeら,Journal of Pharmaceutical Sciences(1977)66(1)1-19、P.Gould,International J.of Pharmaceutics(1986)33 201-217、Andersonら,The Practice of Medicinal Chemistry(1996),Academic Press,ニューヨーク、およびThe Orange Book(食品医薬品局,メリーランド州,FDAから入手可能)によって考察されている。これらの開示内容はその参照により本明細書に組み込まれる。
さらに、本明細書に記載されている任意の化合物は、そのような形態が明示的に列挙されていないとしても、そのような化合物の任意の非溶媒和形態、水和物、溶媒和物または多形およびそれらの混合物を指すことが意図されている。「溶媒和物」は、本発明の化合物と1つ以上の溶媒分子との物理的会合を意味する。この物理的会合は水素結合などの様々な程度のイオンおよび共有結合を含む。場合によっては、溶媒和物は、例えば1つ以上の溶媒分子が結晶性固体の結晶格子に組み込まれている場合には単離することができる。「溶媒和物」は溶液相および単離可能な溶媒和物の両方を包含する。好適な溶媒和物としては、水およびエタノールなどの薬学的に許容される溶媒と共に形成されるものが挙げられる。いくつかの実施形態では、溶媒は水であり、溶媒和物は水和物である。
1種以上の本発明の化合物は任意に溶媒和物に変換させてもよい。溶媒和物の調製のための方法は一般に公知である。従って、例えば、M.Cairaら,J.Pharmaceutical Sci.,93(3),601-611(2004)は、酢酸エチル中の抗真菌性フルコナゾールならびに水からの溶媒和物の調製について記載している。溶媒和物、半溶媒和物(hemisolvate)および水和物などの同様の調製については、E.C.van Tonderら,AAPS PharmSciTech.,5(1),論文12(2004)およびA.L.Binghamら,Chem.Commun.,603-604(2001)によって記載されている。典型的な非限定的プロセスでは、本発明の化合物を周囲温度よりも高い温度の好適な量の溶媒(有機溶媒または水あるいはそれらの混合物)に溶解し、かつその溶液を結晶を形成するのに十分な速度で冷却し、次いでこれを標準的な方法によって単離する。例えば、赤外線分光法などの解析技術は、溶媒和物(または水和物)としての結晶中の溶媒(または水)の存在を示す。
本発明は、式(A)の化合物の薬学的に活性な代謝産物、および本発明の方法におけるそのような代謝産物の使用にも関する。「薬学的に活性な代謝産物」は、式(A)の化合物またはその塩の体内での代謝の薬理学的に活性な産物を意味する。化合物の活性な代謝産物は、当該技術分野において公知または入手可能な日常的な技術を用いて決定してもよい。例えば、Bertoliniら,J.Med.Chem.1997,40,2011-2016、Shanら,J.Pharm.Sci.1997,86(7),765-767、Bagshawe,Drug Dev.Res.1995,34,220-230、Bodor,Adv.Drug Res.1984,13,255-331、Bundgaard,プロドラッグの設計(Design of Prodrugs)(Elsevier Press,1985)、およびLarsen,プロドラッグの設計および適用(Design and Application of Prodrugs),薬物の設計および開発(Drug Design and Development)(Krogsgaard-Larsenら,eds.,Harwood Academic Publishers,1991)を参照されたい。
本明細書において与えられている任意の式は、本化合物の非標識形態ならびに同位体で標識された形態を表すことも意図されている。同位体で標識された化合物は、1つ以上の原子が選択された原子質量または質量数を有する原子で置き換えられていること以外は本明細書において与えられている式によって示されている構造を有する。本発明の化合物に組み込むことができる同位体の例としては、2H、3H、11C、13C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18F、36Clおよび125Iなどのそれぞれ水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素、塩素およびヨウ素の同位体が挙げられる。そのような同位体で標識された化合物は、代謝研究(例えば14C)、反応動態研究(例えば2Hまたは3Hを用いる)、検出もしくはイメージング技術[薬物もしくは基質組織分布アッセイを含むポジトロン断層法(PET)または単一光子放射断層撮影(SPECT)など]、あるいは患者の放射線治療において有用である。特に、18Fもしくは11C標識された化合物は特にPETもしくはSPECT研究に適し得る。さらに、重水素(すなわち2H)などのより重い同位体との置換は、より大きな代謝的安定性から得られる特定の治療上の利点、例えばインビボ半減期の増加または投与量要求の減少を提供することができる。本発明の同位体で標識された化合物は一般に、同位体で標識されていない試薬の代わりに容易に入手可能な同位体で標識された試薬を使用することによって、以下に記載されているスキームまたは実施例および調製において開示されている手順を実施することによって調製することができる。
本明細書に記載されている化合物に関する「塩」「溶媒和物」「多形」などの用語の使用は、本発明の化合物の鏡像異性体、立体異性体、回転異性体、互変異性体、アトロプ異性体およびラセミ体の塩、溶媒和物および多形形態にも同等に適用することが意図されている。
本発明の化合物の説明
本発明は、特定の分子およびその薬学的に許容される塩または異性体に関する。本発明はさらに、異常なグルタミン酸伝達を調節するのに有用な分子およびその薬学的に許容される塩、溶媒和物、エステルまたは異性体に関する。
本発明は、本明細書に記載されている化合物およびその薬学的に許容される塩、溶媒和物、エステルまたは異性体、ならびに1種以上の本明細書に記載されている化合物およびその薬学的に許容される塩または異性体を含む医薬組成物に関する。本発明の一態様は、式(A)の化合物:
(式中、
XはNH、O、SまたはSEであり、
W
1またはW
2は、W
1およびW
2の両方ともがNではないという条件でCHまたはNであり、
R
1およびR
2は同じであるか異なり、かつ独立して、
水素および
GR
a(式中、Gは非存在、-C(O)-または-C(O)O-であり、かつR
aは、R
1およびR
2の両方ともがGR
a(式中、Gは非存在ではない)ではないという条件で、1~4個の炭素原子の飽和の直鎖状もしくは分岐鎖状アルキルまたは3~6個の炭素原子の飽和シクロアルキルある)
からなる群から選択され、
Y
qは、水素、重水素、SF
5、CF
3、OCF
3、SCF
3、S(O)CF
3、S(O)
2CF
3、CN、SCN、S(O)CH
3、S(O)
2CH
3、NO
2からなる群から選択され、かつqは1または2であるが、但し、qが2である場合、Y
1およびY
2は同じであっても異なってもよく、かつそれらは両方ともが水素ではないか、両方ともが重水素であるか、あるいは一方が水素であり、かつ他方が重水素である)
またはその薬学的に許容される塩
(但し、W
1およびW
2がCHである場合、式(A)の化合物は、以下の化合物(式中、R
1またはR
2は上に定義されている通りである):
のうちの1つではなく、かつ
W
1またはW
2がNである場合、式(A)の化合物は、以下の化合物(式中、R
1またはR
2は上に定義されている通りである):
のうちの1つではない)
を有する、哺乳類におけるグルタミン酸伝達を調節するための化合物、組成物、キットおよび解毒薬の提供である。
化合物が一般式(A)を有するいくつかの実施形態では、Xは、NHまたはOまたはSまたはSeである。他の実施形態では、W
1またはW
2は、W
1およびW
2の両方ともがNではないという条件でNである。さらに他の実施形態では、W
1またはW
2はCHである。他の実施形態では、コアの二環式ヘテロアリールは、以下からなる群から選択される。
化合物が一般式(A)を有するさらに他の実施形態では、Yqは、水素、重水素、SF5、CF3、OCF3、SCF3、S(O)CF3、S(O)2CF3、CN、SCN、S(O)CH3、S(O)2CH3、NO2からなる群から選択され、式中、qは1または2であるが、但し、qが2である場合、Y1およびY2は同じであっても異なってもよく、かつそれらは両方ともが水素ではないか、両方ともが重水素であるか、あるいは一方が水素であり、かつ他方が重水素である。
化合物が一般式(A)を有するいくつかの実施形態では、R1およびR2は同じであるか異なり、かつ独立して、水素およびGRa(式中、Gは非存在、-C(O)-または-C(O)O-であり、かつRaは、R1およびR2の両方ともがGRa(式中、Gは非存在ではない)ではないという条件で、1~4個の炭素原子の飽和の直鎖状もしくは分岐鎖状アルキルまたは3~6個の炭素原子の飽和シクロアルキルある)からなる群から選択される。
化合物が一般式(A)を有するいくつかの実施形態では、R1またはR2はGRaであり、式中、Gは非存在であり、かつRaは1~4個の炭素原子の直鎖状もしくは分岐鎖状アルキルであり、かつ-CH3、-CH2CH3、-CH2CH2CH3、-CH(CH3)2、-CH2CH2CH2CH3、-CH2CH(CH3)2および-C(CH3)3からなる群から選択される。
化合物が一般式(A)を有するいくつかの実施形態では、R
1またはR
2はGR
aであり、式中、Gは非存在であり、かつR
aは3~6個の炭素原子のシクロアルキルであり、かつ以下:
からなる群から選択され、任意にR
aはC
1~C
4アルキルで置換されている。
化合物が一般式(A)を有するいくつかの実施形態では、R
1およびR
2のうちの1つはGR
aであり、式中、Gは-C(O)-であり、かつR
aは1~4個の炭素原子の飽和の直鎖状もしくは分岐鎖状アルキルまたは3~6個の炭素原子の飽和シクロアルキルであり、かつ以下:
からなる群から選択され、任意にR
aはC
1~C
4アルキルで置換されている。
化合物が一般式(A)を有するいくつかの実施形態では、R
1およびR
2のうちの1つはGR
aであり、式中、Gは-C(O)O-であり、かつR
aは1~4個の炭素原子を有する飽和の直鎖状もしくは分岐鎖状アルキルまたは3~6個の炭素原子を有する飽和環式アルキルであり、かつ以下:
からなる群から選択され、任意にR
aはC
1~C
4アルキルで置換されている。
化合物が一般式(A)を有する他の実施形態では、R1およびR2のうちの1つはGRaであり、式中、Raは1~4個の炭素原子の飽和の直鎖状もしくは分岐鎖状アルキルおよび3~6個の炭素原子の飽和シクロアルキルからなる群から選択され、ここでは前記炭素原子の1つ以上は任意に不斉原子である。
本発明の一実施形態は、各種部分は独立して選択され、W1およびW2はCHであり、XはNであり、Y1はSF5であり、Y2はHまたはDであり、かつR1およびR2は上に定義されているとおりである化合物の提供である。
本発明の別の実施形態は、各種部分は独立して選択され、W1およびW2はCHであり、XはNであり、Y1およびY2はSF5であり、かつR1およびR2は上に定義されているとおりである化合物の提供である。
本発明の別の実施形態は、各種部分は独立して選択され、W1およびW2はCHであり、XはOであり、Y1はSF5であり、Y2はHまたはDであり、かつR1およびR2は上に定義されているとおりである化合物の提供である。
本発明の別の実施形態は、各種部分は独立して選択され、W1およびW2はCHであり、XはOであり、Y1およびY2はSF5であり、かつR1およびR2は上に定義されているとおりである化合物の提供である。
本発明の別の実施形態は、各種部分は独立して選択され、W1およびW2はCHであり、XはSであり、Y1はSF5であり、Y2はHまたはDであり、かつR1およびR2は上に定義されているとおりである化合物の提供である。
本発明の別の実施形態は、各種部分は独立して選択され、W1およびW2はCHであり、XはSであり、Y1およびY2はSF5であり、かつR1およびR2は上に定義されているとおりである化合物の提供である。
本発明の別の実施形態は、各種部分は独立して選択され、W1およびW2はCHであり、XはSeであり、Y1はSF5であり、Y2はHまたはDであり、かつR1およびR2は上に定義されているとおりである化合物の提供である。
本発明の別の実施形態は、各種部分は独立して選択され、W1およびW2はCHであり、XはSeであり、Y1およびY2はSF5であり、かつR1およびR2は上に定義されているとおりである化合物の提供である。
本発明の別の実施形態は、各種部分は独立して選択され、W1およびW2はCHであり、XはSeであり、Y1は、CF3、OCF3、SCF3、S(O)CF3、S(O)2CF3、CN、SCN、S(O)CH3、S(O)2CH3およびNO2からなる群から選択され、Y2はHまたはDであり、かつR1およびR2は上に定義されているとおりである化合物の提供である。
本発明の別の実施形態は、各種部分は独立して選択され、W1またはW2はNであり、XはN、O、SおよびSeからなる群から選択され、Y1はSF5であり、Y2はHまたはDであり、かつR1およびR2は上に定義されているとおりである化合物の提供である。
本発明の別の実施形態は、各種部分は独立して選択され、W1またはW2はNであり、XはN、O、SおよびSeからなる群から選択され、Y1はCF3であり、Y2はHまたはDであり、かつR1およびR2は上に定義されているとおりである化合物の提供である。
本発明の別の実施形態は、各種部分は独立して選択され、W1またはW2はNであり、XはN、O、SおよびSeからなる群から選択され、Y1はOCF3であり、Y2はHまたはDであり、かつR1およびR2は上に定義されているとおりである化合物の提供である。
本発明の別の実施形態は、各種部分は独立して選択され、W1またはW2はNであり、XはN、O、SおよびSeからなる群から選択され、Y1は、SCF3、S(O)CF3、S(O)2CF3、CN、SCN、S(O)CH3、S(O)2CH3およびNO2からなる群から選択され、Y2はHまたはDであり、かつR1およびR2は上に定義されているとおりである化合物の提供である。
特定の実施形態では、式(A)の化合物は、以下:
からなる化合物群およびそれらの薬学的に許容される塩によってさらに例示される。
本発明の態様は、本明細書に開示されている化合物に関する。
本発明の態様は、異常なグルタミン酸伝達の調節剤であるかそれになり得る化合物に関する。
本発明の態様は、腫瘍の治療、予防、阻害または排除において使用される薬の調製のための異常なグルタミン酸伝達の調節剤の使用に関する。
本発明の態様は、患者における異常なグルタミン酸伝達を調節することによる前記患者における障害または疾患または病状の治療、予防、阻害または排除において使用される薬の調製のための異常なグルタミン酸伝達の調節剤の使用に関し、前記障害または疾患または病状は、神経膠腫、乳癌、黒色腫、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、慢性神経障害性疼痛、多発性硬化症、運動失調症、パーキンソン、ハンチントン、トゥレット症候群、てんかん、ジストニア、脆弱X症候群、外傷性脳/脊髄損傷により生じる障害、脳虚血により生じる障害、鬱病、不安症、双極性障害、統合失調症、強迫性障害、自閉症、アルコール/薬物嗜癖、血管型およびアルツハイマー型認知症、緑内障誘発性視神経症および注意欠陥多動性障害(ADHD)からなる群から選択される。
本発明は、本発明の化合物の1つ以上の合成方法についても記載している。
本発明は、本発明の化合物の1つ以上の使用についても記載している。
本発明は、腫瘍壊死因子(TNF)、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)または他の化学療法剤との使用などの、本発明の化合物の補助薬との1つ以上の使用についても記載している。
本発明は、本発明の化合物を含む各種医薬組成物の1つ以上の調製方法についても記載している。
本発明は、患者における異常なグルタミン酸伝達を調節することによる前記患者における障害または疾患または病状の治療、予防、阻害または排除において使用される薬の調製のための本発明の各種医薬組成物の1つ以上の使用についても記載している。
本発明の化合物の医薬組成物ならびに調製および投与
本発明は、本発明の化合物、例えば実施例の化合物を含む医薬組成物を提供する。本発明の具体例によれば、本医薬組成物は、薬学的に許容される賦形剤、担体、アジュバント、溶媒およびそれらの組み合わせをさらに含むことができる。
本発明は、本発明の化合物および1種以上の治療用活性薬剤を含有する安全かつ有効な量の薬物の組み合わせを投与することを含む、疾患または障害を治療、予防または改善する方法を提供する。これらの中の薬物の組み合わせは、中枢神経系の神経および精神障害および疾患の治療のための1種以上のさらなる薬物を含む。
中枢神経系の神経および精神障害および疾患の治療のための他の薬物としては、限定されるものではないが、抗精神病薬、非定型抗精神病薬、抗てんかん薬、抗パーキンソン病薬、抗筋萎縮性側索硬化症薬、抗疼痛薬またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
本明細書に開示されている医薬組成物の本化合物の量は、患者における生物学試料の異常なグルタミン酸伝達を調節するために有効に検出することができる量を指す。活性成分は、そのような治療を必要とする対象に最適な薬効を提供する投与量で投与してもよく、それは所望の治療効果、投与経路および治療持続期間に限定されない。投与量は、疾患の性質および重症度、患者の体重、その時に患者が従っている特別食、併用薬、および当業者が認識している他の因子に応じて患者ごとに異なる。単位用量の製剤中の活性化合物の量は、特定の用途に従って約1mg~約1000mg、好ましくは約1mg~約500mg、より好ましくは約1mg~約250mg、さらにより好ましくは約1mg~約50mgの間で変更または調整してもよい。
用いられる実際の投与量は患者の要求および治療されている病気の重症度に応じて変更してもよい。特定の状況のための適切な投与計画の決定は当該技術分野の技量の範囲内である。都合上、総1日投与量を必要に応じて分割して1日の間に数回に分けて投与してもよい。本発明の化合物および/またはその薬学的に許容される塩の投与の量および頻度は、患者の年齢、状態および体格ならびに治療されている症状の重症度などの因子を考慮して主治医の判断に従って調整される。経口投与のための典型的な推奨される1日投与計画は約1mg/日~約200mg/日、好ましくは10mg/日~100mg/日の範囲であってもよく、これを単回もしくは複数回用量で投与してもよい。さらに別の実施形態では、それは患者1人当たり1日約1mg~50mgである。
当然のことながら本発明の化合物のいくつかは、治療のために遊離型で、あるいは適当な場合にはその薬学的に許容される誘導体またはプロドラッグとして存在することできる。薬学的に許容される誘導体としては、薬学的に許容される塩、エステル、そのようなエステルの塩、あるいはそれを必要とする患者に投与すると別途本明細書に記載されている化合物またはその治療的に有効な代謝産物または残基を直接または間接的に提供する任意の他の付加体または誘導体が挙げられる。
本発明の医薬組成物は、安全かつ有効な量の本明細書に開示されている式(A)の化合物を抽出し、次いで粉末剤またはシロップ剤などにより患者に与えることができるバルク形態で調製および包装してもよい。一般に、異常なグルタミン酸伝達の有効な調節を得るために0.0001~10mg/kg体重/日の投与量レベルが患者に投与される。あるいは、本発明の医薬組成物を、それぞれ物理的に別々の単位が安全かつ有効な量の本明細書に開示されている式(A)の化合物を含有する単位剤形で調製および包装してもよい。単位剤形で調製する場合、本発明の医薬組成物は一般に、約0.5mg~1gまたは1mg~700mg、または5mg~100mg、またはより好ましくは25mg~60mgの本発明の化合物を含有する。
本発明の医薬組成物が本発明の化合物に加えて1種以上の他の活性成分も含有する場合、本発明の化合物と第2の活性成分との重量比は変更してよく、かつ各成分の有効な用量によって決まってもよい。従って、例えば本発明の化合物が別の薬剤と組み合わせられている場合、本発明の化合物と他の薬剤との重量比は一般に、約200:1~1:200などの約1000:1~約1:1000の範囲である。本発明の化合物と他の活性成分との組み合わせは一般に上記範囲内であるが、いずれの場合も、その組み合わせ中の各活性成分の有効な用量を使用しなければならない。
本明細書で使用される「薬学的に許容される賦形剤」は、本医薬組成物に形態またはコンシステンシーを与えることに関与する薬学的に許容される材料、組成物または媒体を意味する。各賦形剤は混合された場合に本医薬組成物の他の成分と適合可能なものでなければならず、さもなくば、その相互作用により患者に投与された場合に本発明の化合物の有効性が実質的に低下し、かつ薬学的に許容されない組成物が生じる。また各賦形剤は当然ながら、それを薬学的に許容なものにさせるのに十分に高い純度を有するものでなければならない。
好適な薬学的に許容される賦形剤は選択される特定の剤形によって異なる。また好適な薬学的に許容される賦形剤は、本組成物において担うことができる特定の機能のために選択されてもよい。例えば、特定の薬学的に許容される賦形剤は均一な剤形の生産を容易にするそれらの能力のために選択されてもよい。特定の薬学的に許容される賦形剤は、安定な剤形の生産を容易にするそれらの能力のために選択されてもよい。特定の薬学的に許容される賦形剤は、患者に投与されるとある器官すなわち体の一部から別の器官すなわち体の一部へと本発明の化合物を運ぶすなわち輸送するのを容易にするそれらの能力のために選択されてもよい。特定の薬学的に許容される賦形剤は、患者の服薬遵守を高めるそれらの能力のために選択されてもよい。
好適な薬学的に許容される賦形剤としては、以下の種類の賦形剤:希釈液、充填剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動促進剤、造粒剤、被覆剤、湿潤剤、溶媒、共溶媒、懸濁化剤、乳化剤、甘味料、着香料、フレーバーマスキング剤、着色料、固化防止剤、湿潤剤、キレート剤、可塑剤、増粘剤(viscosity increasing agent)、抗酸化剤、防腐剤、安定化剤、界面活性剤および緩衝剤が挙げられる。当業者であれば、特定の薬学的に許容される賦形剤が2つ以上の機能を担うことができ、かつその賦形剤がどの位の量で当該製剤中に存在するか、および他の成分が当該製剤中に存在するかに応じて他の機能を担うことができることを理解するであろう。
当業者は、本発明に使用するための適当な量の好適な薬学的に許容される賦形剤を自身で選択することができる知識および技量を有する。また薬学的に許容される賦形剤について記載している当業者に利用可能な情報提供源が存在し、これは好適な薬学的に許容される賦形剤を選択する際に有用になり得る。例としては、レミントンの製薬科学(Mack Publishing Company)、医薬品添加物のハンドブック(The Handbook of Pharmaceutical Additives)(Gower Publishing Limited)、および医薬品賦形剤(The Handbook of Pharmaceutical Excipients)(the American Pharmaceutical Association and the Pharmaceutical Press)が挙げられる。
レミントン:薬学の科学と実務(Remington:The Science and Practice of Pharmacy),第21版,2005,ed.D.B.Troy,Lippincott Williams&Wilkins,フィラデルフィア、および製薬技術の百科事典(Encyclopedia of Pharmaceutical Technology),eds.J.SwarbrickおよびJ.C.Boylan,1988-1999,Marcel Dekker,ニューヨーク(それらの各内容が参照により本明細書に組み込まれる)には、薬学的に許容される組成物を製剤化するのに使用される各種担体およびその調製のための公知の技術が開示されている。あらゆる望ましくない生物学的作用を生じさせたり、それ以外に薬学的に許容される組成物の任意の他の成分と有害な方法で相互作用したりすることなどによって任意の従来の担体媒体が本発明の化合物と適合不可能である場合を除き、その使用は本発明の範囲内であることが想定されている。
本発明の医薬組成物は当業者に公知の技術および方法を用いて調製される。当該技術分野においてよく使用される方法のいくつかは、レミントンの製薬科学(Mack Publishing Company)に記載されている。
従って本発明の別の態様は医薬組成物を調製するための方法に関する。本医薬組成物は、本明細書に開示されている化合物と薬学的に許容される賦形剤、担体、アジュバント、媒体またはそれらの組み合わせとを含有し、本方法は各種成分を混合することを含む。本明細書に開示されている化合物を含有する本医薬組成物は、例えば正常な周囲温度および圧力で調製することができる。
本発明の化合物は典型的に、所望の投与経路によって患者に投与するのに適した剤形に製剤化される。例えば、剤形としては、(1)錠剤、カプセル剤、カプレット剤、丸剤、トローチ剤、粉末剤、シロップ剤、エリキシル剤、懸濁液、溶液、乳濁液、小袋剤およびカシェ剤などの経口投与、(2)再構成のための無菌溶液、懸濁液および粉末剤などの非経口投与、(3)経皮パッチなどの経皮投与、(4)坐剤などの直腸内投与、(5)エアロゾル、溶液および乾燥粉末剤などの吸入、および(6)クリーム剤、軟膏剤、ローション剤、溶液剤、ペースト剤、スプレー剤、泡剤およびゲル剤などの局所投与に適したものが挙げられる。
本明細書に提供されている医薬組成物は、圧縮錠剤、湿製錠剤、チュアブルトローチ剤、速溶性錠剤、多重圧縮錠剤、または腸溶コーティング錠剤、糖衣もしくはフィルムコート錠剤として提供されてもよい。腸溶性錠剤は、胃酸の作用には抵抗するが腸で溶解または崩壊し、このようにして活性成分を胃の酸性環境から保護する物質でコーティングされた圧縮錠剤である。腸溶コーティングとしては、限定されるものではないが、脂肪酸、脂肪、サリチル酸フェニル、ワックス、セラック、アンモニア処理セラック(ammoniated shellac)、および酢酸フタル酸セルロースが挙げられる。糖衣錠剤は糖コーティングによって取り囲まれた圧縮錠剤であり、これは不快な味または匂いを覆い隠し、かつ錠剤を酸化から保護するのに有利になり得る。フィルムコート錠剤は水溶性材料の薄層またはフィルムで覆われた圧縮錠剤である。フィルムコーティングとしては、限定されるものではないが、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、ポリエチレングリコール4000および酢酸フタル酸セルロースが挙げられる。フィルムコーティングは糖コーティングと同じ一般的な特性を与える。多重圧縮錠剤は、層状錠剤およびプレスもしくはドライコーティングされた錠剤などの2回以上の圧縮サイクルによって製造される圧縮錠剤である。
錠剤剤形は、粉末、結晶もしくは顆粒形態の活性成分のみから、あるいは結合剤、崩壊剤、制御放出ポリマー、滑沢剤、希釈液および/または着色剤などの本明細書に記載されている1種以上の担体または賦形剤と組み合わせて調製してもよい。着香料および甘味料は咀嚼錠およびトローチ剤の形成において特に有用である。
本明細書に提供されている医薬組成物は、ゼラチン、メチルセルロース、澱粉またはアルギン酸カルシウムから製造することができる軟もしくは硬カプセル剤として提供されてもよい。乾燥充填カプセル剤(DFC)としても知られている硬ゼラチンカプセル剤は、一方を他方の上に被せて、このようにして活性成分を完全に取り囲む2つのセクションからなる。軟カプセル剤(SEC)は、グリセリン、ソルビトールまたは同様のポリオールの添加によって可塑化されるゼラチンシェルなどの柔軟な球状シェルである。軟ゼラチンシェルは微生物の増殖を防止するために防腐剤を含有していてもよい。好適な防腐剤は、メチルパラベン、プロピルパラベンおよびアスコルビン酸などの本明細書に記載されているようなものである。本明細書に提供されている液体、半固体および固体剤形はカプセルに封入されていてもよい。好適な液体および半固体剤形としては、炭酸プロピレン、植物油またはトリグリセリドの溶液および懸濁液が挙げられる。そのような溶液を含有するカプセルは、米国特許第4,328,245号、第4,409,239号および第4,410,545号に記載されているように調製することができる。またこれらのカプセルは、活性成分の溶解を変更または維持するために当業者によって知られているようにコーティングされていてもよい。
本明細書に提供されている医薬組成物は、乳濁液、溶液、懸濁液、エリキシル剤およびシロップ剤などの液体および半固体剤形で提供されてもよい。乳濁液は、一方の液体が小さい小球の形態で他方の液体全体に分散されている二相系であり、これは水中油型または油中水型であってもよい。乳濁液は薬学的に許容される非水性液体または溶媒、乳化剤および防腐剤を含んでいてもよい。懸濁液は薬学的に許容される懸濁化剤および防腐剤を含んでいてもよい。水性アルコール溶液は、低級アルキルアルデヒドのジ(低級アルキル)アセタール、例えばアセトアルデヒドジエチルアセタールなどの薬学的に許容されるアセタール、およびプロピレングリコールおよびエタノールなどの1つ以上のヒドロキシ基を有する水混和性溶媒を含んでいてもよい。エリキシル剤は透明な甘い水アルコール溶液である。シロップ剤は濃縮された糖(例えばスクロース)の水溶液であり、防腐剤も含有していてもよい。液体剤形の場合、例えばポリエチレングリコール溶液は、投与のために好都合に測定される十分な量の薬学的に許容される液体担体、例えば水で希釈されていてもよい。
他の有用な液体および半固体剤形としては、限定されるものではないが、本明細書に提供されている活性成分と、ジアルキル化モノもしくはポリアルキレングリコール、例えば、1,2-ジメトキシメタン、ダイグライム、トリグライム、テトラグライム、ポリエチレングリコール-350-ジメチルエーテル、ポリエチレングリコール-550-ジメチルエーテル、ポリエチレングリコール-750-ジメチルエーテルとを含有するものが挙げられ、ここでは、350、550および750はポリエチレングリコールのおよその平均分子量を指す。これらの製剤は、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、没食子酸プロピル、ビタミンE、ヒドロキノン、ヒドロキシクマリン、エタノールアミン、レシチン、ケファリン、アスコルビン酸、リンゴ酸、ソルビトール、リン酸、亜硫酸水素塩、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオジプロピオン酸およびそのエステルならびにジチオカルバミン酸塩などの1種以上の抗酸化剤をさらに含んでいてもよい。
適当な場合には、経口投与のための用量単位製剤をマイクロカプセル化することができる。当該製剤は、例えば粒子状材料をポリマーまたはワックスなどでコーティングするかそれらの中に埋め込むことによって、その遊離を延長または維持するように調製することもできる。
また経口投与のための本明細書に提供されている医薬組成物は、リポソーム、ミセル、小球体またはナノ系の形態で提供されてもよい。ミセル剤形は、米国特許第6,350,458号に記載されているように調製することができる。
本明細書に提供されている医薬組成物は、液体剤形に再構成される非発泡性もしくは発泡性顆粒剤および粉末剤として提供されてもよい。非発泡性顆粒剤または粉末剤中に使用される薬学的に許容される担体および賦形剤は希釈液、甘味料および湿潤剤を含んでもよい。発泡性顆粒剤または粉末剤中に使用される薬学的に許容される担体および賦形剤は有機酸および二酸化炭素源を含んでもよい。
着色料および着香料は上記剤形の全てに使用することができる。
本明細書に開示されている化合物は、標的化薬担体としての可溶性ポリマーに結合されていてもよい。そのようなポリマーは、パルミトイルラジカルで置換されたポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミドフェノール、ポリヒドロキシエチルアスパルトアミドフェノール(polyhydroxyethylaspartamidophenol)またはポリエチレンオキシドポリリジンを包含してもよい。本化合物は、薬の制御放出を達成するのに適した生分解性ポリマーのクラス、例えばポリ乳酸、ポリイプシロン-カプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロキシピラン、ポリシアノアクリレートおよびヒドロゲルの架橋もしくは両親媒性ブロックコポリマーにさらに結合されていてもよい。
本明細書に提供されている医薬組成物は、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的化放出およびプログラム放出形態などの、即時放出もしくは調節放出剤形として製剤化されていてもよい。
本明細書に提供されている医薬組成物は、所望の治療作用に影響を与えない他の活性成分または所望の作用を補う物質と共製剤化されていてもよい。
本明細書に提供されている医薬組成物は、局所もしくは全身投与のために注射、注入または埋め込みによって非経口で投与してもよい。本明細書で使用される非経口投与としては、静脈内、動脈内、腹膜内、クモ膜下腔内、心室内、尿道内、胸骨内、頭蓋内、筋肉内、滑液嚢内および皮下投与が挙げられる。
本明細書に提供されている医薬組成物は、注射の前に液体に溶解または懸濁するのに適した、溶液、懸濁液、乳濁液、ミセル、リポソーム、小球体、ナノ系および固体形態などの非経口投与に適した任意の剤形で製剤化されていてもよい。そのような剤形は、薬学の当業者に公知の従来の方法に従って調製することができる(レミントン:薬学の科学と実務(Remington:The Science and Practice of Pharmacy),上記を参照)。
非経口投与を目的とした医薬組成物は、限定されるものではないが、水性媒体、水混和性媒体、非水性媒体、微生物の増殖に対する抗菌剤または防腐剤、安定化剤、溶解性増強剤(solubility enhancer)、等張剤、緩衝剤、抗酸化剤、局所麻酔剤、懸濁剤および分散剤、湿潤剤または乳化剤、錯化剤、金属イオン封鎖剤またはキレート剤、凍結防止剤、凍結乾燥保護剤(lyoprotectant)、増粘剤、pH調整剤および不活性ガスなどの1つ以上の薬学的に許容される担体および賦形剤を含んでいてもよい。
好適な水性媒体としては、限定されるものではないが、水、食塩水、生理食塩水またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、塩化ナトリウム注射、リンゲル液、等張性デキストロース注射、滅菌水注射液(sterile water injection)、デキストロースおよび乳酸加リンゲル液が挙げられる。非水性媒体としては、限定されるものではないが、植物由来の不揮発性油、ヒマシ油、トウモロコシ油、綿実油、オリーブ油、落花生油、ハッカ油、サフラワー油、胡麻油、大豆油、水添植物油、水添大豆油、およびヤシ油の中鎖トリグリセリド、およびパーム核油が挙げられる。水混和性媒体としては、限定されるものではないが、エタノール、1,3-ブタンジオール、液体ポリエチレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール300およびポリエチレングリコール400)、プロピレングリコール、グリセリン、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミドおよびジメチルスルホキシドが挙げられる。
好適な抗菌剤または防腐剤としては、限定されるものではないが、フェノール、クレゾール、水銀剤、ベンジルアルコール、クロロブタノール、p-ヒドロキシ安息香酸メチルおよびプロピル、チメロサール、塩化ベンザルコニウム(例えば、塩化ベンゼトニウム)、メチルおよびプロピルパラベンならびにソルビン酸が挙げられる。好適な等張剤としては、限定されるものではないが、塩化ナトリウム、グリセリンおよびデキストロースが挙げられる。好適な緩衝剤としては、限定されるものではないが、リン酸塩およびクエン酸塩が挙げられる。好適な抗酸化剤は亜硫酸水素塩およびメタ重亜硫酸ナトリウムを含む本明細書に記載されているものである。好適な局所麻酔剤としては、限定されるものではないが、プロカイン塩酸塩が挙げられる。好適な懸濁剤および分散剤は、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびポリビニルピロリドンを含む本明細書に記載されているものである。好適な乳化剤としては、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート80およびトリエタノールアミンオレアートを含む本明細書に記載されているものが挙げられる。好適な金属イオン封鎖剤またはキレート剤としては、限定されるものではないが、EDTAが挙げられる。好適なpH調整剤としては、限定されるものではないが、水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸および乳酸が挙げられる。好適な錯化剤としては、限定されるものではないが、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリンおよびスルホブチルエーテル7-β-シクロデキストリン(CAPTISOL(登録商標)、CyDex社、レネクサ、カンザス州)などのシクロデキストリンが挙げられる。
本明細書に提供されている医薬組成物は、単回もしくは複数回用量投与のために製剤化されていてもよい。単回剤形はアンプル、バイアルまたは注射器に包装されている。複数回用量非経口製剤は、静菌もしくは静真菌濃度で抗菌剤を含有していてなければならない。全ての非経口製剤は、当該技術分野において公知かつ実践されているように無菌でなければならない。
一実施形態では、本医薬組成物はすぐに使用できる無菌溶液として提供される。別の実施形態では、本医薬組成物は、使用前に無菌媒体で再構成される凍結乾燥粉末剤および皮下注射用錠剤などの無菌の乾燥可溶性製品として提供される。さらに別の実施形態では、本医薬組成物はすぐに使用できる無菌懸濁液として提供される。さらに別の実施形態では、本医薬組成物は使用前に媒体で再構成される無菌の乾燥不溶性製品として提供される。さらに別の実施形態では、本医薬組成物はすぐに使用できる無菌乳濁液として提供される。
本医薬組成物は、埋込みデポ(implanted depot)として投与するための懸濁液、固体、半固体または揺変性液体として製剤化されていてもよい。一実施形態では、本明細書に提供されている医薬組成物は、体液中では不溶性であるが本医薬組成物中の活性成分をそこから拡散させることができる外側ポリマー膜によって取り囲まれた固体の内側マトリックスに分散されている。
好適な内側マトリックスとしては、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ブチル、可塑化もしくは非可塑化ポリ塩化ビニル、可塑化ナイロン、可塑化ポリエチレンテレフタレート、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、シリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン、シリコーンカーボネートコポリマー、アクリル酸およびメタクリル酸エステルのヒドロゲルなどの親水性ポリマー、コラーゲン、架橋ポリビニルアルコール、および架橋部分加水分解ポリ酢酸ビニルが挙げられる。
好適な外側ポリマー膜としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレンコポリマー、エチレン/アクリル酸エチルコポリマー、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、シリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン、ネオプレンゴム、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、酢酸ビニル、塩化ビニリデン、エチレンおよびプロピレンとの塩化ビニルコポリマー、アイオノマーポリエチレンテレフタラート、ブチルゴム、エピクロロヒドリンゴム、エチレン/ビニルアルコールコポリマー、エチレン/酢酸ビニル/ビニルアルコールターポリマー、およびエチレン/ビニルオキシエタノールコポリマーが挙げられる。
他の態様では、本発明の医薬組成物は、例えば乾燥粉末、エアロゾル、懸濁液または溶液組成物として吸入による患者への投与に適した剤形に調製される。一実施形態では、本発明は乾燥粉末剤として吸入による患者への投与に適した剤形に関する。一実施形態では、本発明は、乾燥粉末剤として吸入による患者への投与に適した剤形に関する。吸入による肺への送達のための乾燥粉末組成物は典型的に、微粉化粉末剤としての1種以上の薬学的に許容される賦形剤と共に微粉化粉末剤としての本明細書に開示されている化合物またはその薬学的に許容される塩を含む。特に乾燥粉末剤中に使用するのに適した薬学的に許容される賦形剤は当業者に公知であり、ラクトース、澱粉、マンニトールならびに単糖、二糖および多糖が挙げられる。微粉化粉末剤は例えば微粒子化や粉砕によって調製してもよい。一般に、サイズ減少(例えば微粉化)化合物は、約1~約10ミクロンのD50値(例えば、レーザー回折を用いて測定した場合)によって定めることができる。
エアロゾルは、本明細書に開示されている化合物またはその薬学的に許容される塩を液化噴射剤に懸濁または溶解させることによって形成してもよい。好適な噴射剤としては、ハロカーボン、炭化水素および他の液化ガスが挙げられる。代表的な噴射剤としては、トリクロロフルオロメタン(噴射剤11)、ジクロロフルオロメタン(噴射剤12)、ジクロロテトラフルオロエタン(噴射剤114)、テトラフルオロエタン(HFA-134a)、1,1-ジフルオロエタン(HFA-152a)、ジフルオロメタン(HFA-32)、ペンタフルオロエタン(HFA-12)、ヘプタフルオロプロパン(HFA-227a)、パーフルオロプロパン、パーフルオロブタン、パーフルオロペンタン、ブタン、イソブタンおよびペンタンが挙げられる。式(A)の化合物またはその薬学的に許容される塩を含むエアロゾルは典型的に、定量噴霧式吸入器(MDI)により患者に投与される。そのような装置は当業者に公知である。
エアロゾルは、界面活性剤、滑沢剤、共溶媒および当該製剤の物理的安定性を高めるか、弁性能を高めるか、溶解性を高めるか、あるいは味を改善するための他の賦形剤などの典型的にMDIで使用されるさらなる薬学的に許容される賦形剤を含有していてもよい。
経皮投与に適した医薬組成物は、長期間にわたって患者の表皮と密接させたままにすることを目的とした別々のパッチとして提供されてもよい。例えば活性成分は、一般にPharmaceutical Research,3(6),318(1986)に記載されているようにイオン導入法によってパッチから送達されてもよい。
局所投与に適した医薬組成物は、軟膏剤、クリーム剤、懸濁液剤、ローション剤、粉末剤、溶液剤、ペースト剤、ゲル剤、スプレー剤、エアロゾル剤または油剤として製剤化されていてもよい。軟膏剤、クリーム剤およびゲル剤は、例えば好適な増粘剤および/またはゲル化剤および/または溶媒の添加により水性もしくは油性基剤と共に製剤化されていてもよい。従ってそのような基剤としては、例えば水および/または液体パラフィンまたはラッカセイ油もしくはヒマシ油などの植物油などの油、あるいはポリエチレングリコールなどの溶媒が挙げられる。上記基剤の性質に従って使用することができる増粘剤およびゲル化剤としては、軟パラフィン、ステアリン酸アルミニウム、セトステアリルアルコール、ポリエチレングリコール、羊毛脂、蜜蝋、カルボキシポリメチレンおよびセルロース誘導体、および/またはモノステアリン酸グリセリルおよび/または非イオン性乳化剤が挙げられる。
ローション剤は水性もしくは油性基剤と共に製剤化されてもよく、一般に1種以上の乳化剤、安定化剤、分散剤、懸濁化剤または増粘剤も含有している。
外用のための粉末剤は、あらゆる好適な粉末基剤、例えばタルク、ラクトースまたは澱粉の助けを借りて形成されてもよい。滴剤は1種以上の分散剤、可溶化剤、懸濁化剤または防腐剤も含む水性もしくは非水性基剤と共に製剤化されていてもよい。
局所製剤は、患部への1日当たり1回以上の塗布により投与してもよく、有利には皮膚領域上に密封包帯を使用してもよい。粘着性レザバーシステムを介して連続的もしくは持続的送達を達成してもよい。
本発明の化合物および組成物の使用
本明細書に開示されている本発明の化合物または医薬組成物は、対象における神経および精神障害または疾患あるいは癌を治療、予防、改善または軽減するための薬、ならびに異常なグルタミン酸伝達を調節する(例えば遮断する)ための他の薬の製造において使用することができ、本発明の化合物は、より優れた薬物動態学的および薬力学的特性ならびにより少ない有毒な副作用を有する。
具体的には、本発明の組成物の化合物の量は、異常なグルタミン酸伝達を有効かつ検出可能に調節することができる。本発明の化合物または医薬組成物は異常なグルタミン酸伝達に関連する疾患を予防、治療または緩和するために使用してもよく、そのような疾患としては、神経膠腫、乳癌、黒色腫、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、慢性神経障害性疼痛、多発性硬化症、運動失調症、パーキンソン、ハンチントン、トゥレット症候群、てんかん、ジストニア、脆弱X症候群、外傷性脳/脊髄損傷により生じる障害、脳虚血により生じる障害、鬱病、不安症、双極性障害、統合失調症、強迫性障害、自閉症、アルコール/薬物嗜癖、血管型およびアルツハイマー型認知症、緑内障誘発性視神経症および注意欠陥多動性障害(ADHD)が挙げられる。
治療法
一実施形態では、本明細書に開示されている治療法は、安全かつ有効な量の本発明の化合物または本発明の化合物を含有する医薬組成物を必要とする患者に投与することを含む。本明細書に開示されている各例は、安全かつ有効な量の本発明の化合物または本発明の化合物を含有する医薬組成物を必要とする患者に投与することを含む上記疾患を治療する方法を含む。
一実施形態では、本発明の化合物またはその医薬組成物を全身投与および局所投与の両方を含む任意の好適な投与経路によって投与してもよい。全身投与としては、経口投与、非経口投与、経皮投与および直腸内投与が挙げられる。非経口投与とは腸内または経皮以外の投与経路を指し、典型的には注射または注入によるものである。非経口投与としては静脈内、筋肉内および皮下注射または注入が挙げられる。局所投与としては皮膚への塗布ならびに眼内、膣内、吸入および鼻腔内投与が挙げられる。一実施形態では、本発明の化合物またはその医薬組成物を経口で投与してもよい。別の実施形態では、本発明の化合物またはその医薬組成物を吸入によって投与してもよい。さらなる実施形態では、本発明の化合物またはその医薬組成物を鼻腔内に投与してもよい。
一実施形態では、本発明の化合物またはその医薬組成物を1回投与しても、複数回用量が所与の期間にわたって様々な時間間隔で投与される投与計画に従って投与してもよい。例えば用量を1日当たり1回、2回、3回または4回投与してもよい。一実施形態では、用量を1日1回投与する。さらなる実施形態では、用量を1日2回投与する。用量を所望の治療効果が達成されるまで、あるいは無期限に所望の治療効果を維持するために投与してもよい。本発明の化合物またはその医薬組成物のための好適な投与計画はその吸収、分布ならびに代謝および排出半減期などのその化合物の薬物動態学的特性によって決まり、それらは当業者によって決定することができる。また本発明の化合物またはその医薬組成物のための好適な投与計画(そのような投与計画が行われる持続期間を含む)は、治療されている疾患、治療されている疾患の重症度、治療されている患者の年齢および身体的状態、治療される患者の病歴、併用療法の性質、所望の治療効果ならびに当業者の知識および専門知識の範囲内の同様の因子によって決まる。好適な投与計画は、投与計画に対する個々の患者の寛容性を考慮したり個々の患者の必要性の変化に伴って時間と共に調整を必要としたりすることがあることが、そのような当業者によってさらに理解されるであろう。
本発明の化合物は1種以上の他の治療薬と同時に、あるいはその前または後に投与してもよい。本発明の化合物は同じまたは異なる投与経路によって別々に、あるいは他の薬剤と同じ医薬組成物に入れて一緒に投与してもよい。
本発明の医薬組成物または組み合わせは、約50~70kgの対象に対して約1~1000mgの活性成分、好ましくは約1~500mgまたは約1~250mgまたは約1~150mgまたは約0.5~100mgまたは約1~50mgの活性成分の単位剤形であってもよい。本化合物、本医薬組成物またはそれらの組み合わせの治療的に有効な投与量は、対象の生物種、体重、年齢および個々の状態、治療されている障害もしくは疾患またはその重症度によって決まる。通常の技量を有する医師、臨床医または獣医は、障害または疾患を予防または治療するかその進行を阻害するのに必要な活性成分のそれぞれの有効量を容易に決定することができる。
上に引用されている投与特性は、有利には哺乳類、例えばマウス、ラット、イヌ、サルなどの非ヒト霊長類またはその単離された臓器、組織および調製物を用いるインビトロおよびインビボ試験と相関させることができる。本発明の化合物は、インビトロで溶液、例えば好ましくは水溶液の形態で投与することができ、かつインビボで例えば懸濁液または水溶液として局所、吸入、経腸または非経口、有利には静脈内投与することができる。
一実施形態では、本明細書に開示されている化合物の治療的に有効な投与量は1日約0.1mg~約1,000mgである。本医薬組成物は約0.1mg~約1,000mgの本化合物の投与量を提供するものでなければならない。特殊な実施形態では、医薬単位剤形は、単位剤形当たり約1mg~約1,000mg、約10mg~約500mg、約20mg~約200mg、約25mg~約100mgまたは約30mg~約60mgの活性成分または必須成分の組み合わせを提供するように調製される。特殊な実施形態では、医薬単位剤形は、約1mg、5mg、10mg、20mg、25mg、50mg、100mg、250mg、500mg、1000mgの活性成分を提供するように調製される。
本発明の好ましい実施形態
一般的な合成手順
以下の実施例は本発明をより十分に理解することができるように提供されている。但し当然のことながら、これらの実施形態は単に本発明を実施する方法を提供するものであり、本発明はこれらの実施形態に限定されない。
一般に、本明細書に開示されている化合物は本明細書に記載されている方法によって調製してもよく、その中の置換基は、さらなる記載がない限り、上記式(A)について定義されているとおりである。以下の非限定的なスキームおよび実施例は、本発明をさらに例示するために提供されている。
当該技術分野の専門家であれば、記載されている化学反応を多くの他の本明細書に開示されている化合物を調製するために容易に改変し得ること、および本明細書に開示されている化合物を調製するための他の方法は本明細書に開示されている範囲内であるとみなされることを認識するであろう。当業者であれば、以下の実施例によって実証されているように出発物質を変更し、かつさらなる工程を用いて本発明によって包含される化合物を生成し得ることを認識するであろう。場合によっては、特定の反応性官能基の保護が上記変換のうちのいくつかを達成するために必要な場合がある。一般に、保護基のそのような必要性ならびにそのような基を結合および除去するのに必要な条件は有機合成の当業者には明らかであろう。例えば、本発明に係る例示されていない化合物の合成は、当業者に明らかな変更によって、例えば妨害する基を適当に保護すること、記載されているもの以外の当該技術分野で知られている他の好適な試薬を利用すること、および/または反応条件の日常的な変更を行うことによって上手く行ってもよい。あるいは、公知の反応条件または本発明において開示されている反応は、本明細書に開示されている他の化合物を調製するための適用性を有するものとして認識されるであろう。
以下に記載されている実施例では、特に記載しない限り全ての温度は摂氏で示されている。試薬はAldrich Chemical社、Arco Chemical社およびAlfa Chemical社などの商用業者から購入したものであり、特に記載しない限りさらに精製することなく使用した。
化合物の調製
その塩、エステル、水和物または溶媒和物を含む本発明の化合物は、任意の公知の有機合成技術を用いて調製することができ、かつ数多くの可能な合成経路のうちのいずれかに従って合成することができる。
本発明の化合物を調製するための反応は、有機合成の当業者によって容易に選択することができる好適な溶媒中で行うことができる。好適な溶媒は、反応が行われる温度、例えば溶媒の凍結温度から溶媒の沸点までの範囲であってもよい温度で、出発物質(反応物)、中間体または製品と実質的に反応しないものであればよい。所与の反応を1種の溶媒または2種以上の溶媒の混合物中で行うことができる。特定の反応工程に応じて、特定の反応工程のための好適な溶媒は当業者によって選択することができる。
反応は当該技術分野で知られている任意の好適な方法に従って監視することができる。例えば生成物の形成は、核磁気共鳴分光法(例えば1Hまたは13C)、赤外線分光法、分光測色法(例えば紫外可視)、質量分析などの分光学的手段、または高速液体クロマトグラフィ(HPLC)、液体クロマトグラフィ-質量分光法(LCMS)または薄層クロマトグラフィ(TLC)などのクロマトグラフ法によって監視することができる。化合物は当業者によって、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)(“分取LC-MS精製:改良された化合物特異的方法の最適化(Preparative LC-MS Purification:Improved Compound Specific Method Optimization)”Karl F.Blom,Brian Glass,Richard Sparks,Andrew P.Combs J.Combi.Chem.2004,6(6),874-883、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)および順相シリカクロマトグラフィなどの様々な方法で精製することができる。
本発明の化合物は、以下に記載されている方法を有機合成化学の技術分野で知られている合成法または当業者によって理解されているその変形と共に用いて合成することができる。好ましい方法としては、限定されるものではないが、以下に記載されている方法が挙げられる。具体的には、式(A)の本発明の化合物を以下に列挙されている例示的な一般的な合成スキームに概説されている工程に従って合成することができ、合成スキームに含められている反応物または反応物の化学基のための略語は実施例に定義されている。
一般的な合成スキーム(1~13)が以下のとおり示されている。
スキーム1:Y
qで置換されたベンゾ[d]チアゾール-2-アミン(XI)の一般的な合成
式XIを有する化合物への合成は、参考文献(Synlett,2012,23,15,2219-2222;国際公開第2013/163244A1号)に開示されている関連する手順に従って行うことができるが、これらの開示されている手順に限定されない。従って、アニリン誘導体1を適当な溶媒系中のKSCNで処理して化合物XIを形成する。
スキーム2:Y
qで置換されたベンゾ[d]オキサゾール-2-アミン(XII)の一般的な合成
式XIIを有する化合物への合成は、参考文献(Journal of Organic Chemistry,1990,55,17,4979-4981;Tetrahedron Letters,2011,52,34,4392-4394;Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters,2014,24,15,3521-3525)に開示されている関連する手順に従って行うことができるが、これらの開示されている手順に限定されない。従って、ニトロベンゼン誘導体2を酸化させてヒドロキシル化合物3を生成した後に水素化し、得られたアミノ化合物4を適当な溶媒系中のBrCNで処理して化合物XIIを形成する。
スキーム3:Y
qで置換された1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-アミン(XIII)の一般的な合成
式XIIIを有する化合物への合成は、参考文献(European Journal of Organic Chemistry,2012,11,2123-2126;Journal of Medicinal Chemistry,2014,57,17,7325-7341;米国特許出願公開第2007/117818A1号)に開示されている関連する手順に従って行うことができるが、これらの開示されている手順に限定されない。従って、ニトロベンゼン誘導体5を化合物6に変換させた後に水素化し、得られたジアミノ化合物7を適当な溶媒系中のBrCNで処理して化合物XIIIを形成する。
スキーム4:Y
qで置換されたベンゾ[d][1,3]セレナゾール-2-アミン(XIV)の一般的な合成
式XIVを有する化合物への合成は、参考文献(European Journal of Medicinal Chemistry,2015,96,92-97;Synthesis,2016,48,01,85-96;European Journal of Organic Chemistry,2011,25,4756-4759)に開示されている関連する手順に従って行うことができるが、これらの開示されている手順に限定されない。従って、アニリン誘導体8を臭素化して化合物9を得、これをアミド化合物10にさらに変換する。化合物10をPOCl3で処理して化合物11を生成した後にSeおよびNH4OHで連続処理し、得られた化合物13を適当な溶媒系中で環化して化合物XIVを形成する。
スキーム5:Y
qで置換されたチアゾロ[5,4-b]ピリジン-2-アミン(XV)の一般的な合成
式XVを有する化合物への合成は、参考文献(Journal of Medicinal Chemistry,2009,52,19,6142-6152;米国特許出願公開第2009/270405A1号)に開示されている関連する手順に従って行うことができるが、これらの開示されている手順に限定されない。従って、アミノピリジン誘導体14を適当な溶媒系中のKSCNで処理して化合物XVを形成する。
スキーム6:Y
qで置換されたオキサゾロ[5,4-b]ピリジン-2-アミン(XVI)の一般的な合成
式XVIを有する化合物への合成は、参考文献(国際公開第2013/177024A1号;国際公開第2009/147431A1号)に開示されている関連する手順に従って行うことができるが、これらの開示されている手順に限定されない。従って、ピリジン誘導体15を適当な溶媒系中のBrCNで処理して化合物XVIを形成する。
スキーム7:Y
qで置換された3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2-アミン(XVII)の一般的な合成
式XVIIを有する化合物への合成は、参考文献(Chemical Communications,2014,50,85,12911-12914;Journal of Medicinal Chemistry,2014,57,13,5702-5713)に開示されている関連する手順に従って行うことができるが、これらの開示されている手順に限定されない。従って、ジアミノピリジン誘導体16を適当な溶媒系中のBrCNで処理して化合物XVIIを形成する。
スキーム8:Y
qで置換された[1,3]セレナゾロ[5,4-b]ピリジン-2-アミン(XVIII)の一般的な合成
式XVIIIを有する化合物への合成は、参考文献(米国特許出願公開第2003/171395A1号;Synthesis,2001,14,2175-2179;Synthesis,2016,48,01,85-96;European Journal of Organic Chemistry,2011,25,4756-4759)に開示されている関連する手順に従って行うことができるが、これらの開示されている手順に限定されない。従って、アミノピリジン誘導体17を臭素化して化合物18を得、これをアミド化合物19にさらに変換する。化合物19をPOCl3で処理して化合物20を生成した後にSeおよびNH4OHで連続処理して、得られた化合物22を適当な溶媒系中で環化して化合物XVIIIを形成する。
スキーム9:Y
qで置換されたチアゾロ[4,5-b]ピリジン-2-アミン(XIX)の一般的な合成
式XIXを有する化合物への合成は、参考文献(Journal of Heterocyclic Chemistry,2003,40,2,261-268;Phosphorus,Sulfur and Silicon and the Related Elements,2006,181,7,1665-1673)に開示されている関連する手順に従って行うことができるが、これらの開示されている手順に限定されない。従って、アミノピリジン誘導体23をNH4SCNで処理して化合物24を生成し、これを適当な溶媒系中でさらに環化して化合物XIXを形成する。
スキーム10:Y
qで置換されたオキサゾロ[4,5-b]ピリジン-2-アミン(XX)の一般的な合成
式XXを有する化合物への合成は、参考文献(米国特許出願公開第2012/149718A1号;ドイツ特許第2239311号)に開示されている関連する手順に従って行うことができるが、これらの開示されている手順に限定されない。従って、ピリジン誘導体25を適当な溶媒系中のBrCNで処理して化合物XXを形成する。
スキーム11:Y
qで置換された1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2-アミン(XXI)の一般的な合成
式XXIを有する化合物への合成は、参考文献(Journal of Heterocyclic Chemistry,1990,27,6,1821-1824;Chemical Communications,2014,50,85,12911-12914)に開示されている関連する手順に従って行うことができるが、これらの開示されている手順に限定されない。従って、ジアミノピリジン誘導体26を適当な溶媒系中のBrCNで処理して化合物XXIを形成する。
スキーム12:Y
qで置換された[1,3]セレナゾロ[4,5-b]ピリジン-2-アミン(XXII)の一般的な合成
式XXIIを有する化合物への合成は、参考文献(Organic Letters,2016,18,5,984-987;European Journal of Medicinal Chemistry,2015,96,92-97;European Journal of Organic Chemistry,2011,25,4756-4759)に開示されている関連する手順に従って行うことができるが、これらの開示されている手順に限定されない。従って、アミノピリジン誘導体27を臭素化して化合物28を得、これをアミド化合物29にさらに変換する。化合物29をPOCl3で処理して化合物30を生成した後にSeおよびNH4OHで連続処理して、得られた化合物32を適当な溶媒系中で環化して化合物XXIIを形成する。
スキーム13:式Aを有するY
qで置換されたアミン誘導体の一般的な合成
式Aを有する化合物への合成は、参考文献に開示されている関連する手順に従って式I~XXIIを有するアミノ化合物から開始して行うことができるが、これらの開示されている手順に限定されない。
式中、R1およびR2は両方ともがHではなく、ZはCl、BrまたはIから選択することができる脱離基である。アミノ化合物I~XXIIは、典型的なN-アシル化法により対応するN-アシルまたはN-アシルオキシ化合物に変換することができる(Journal of Medicinal Chemistry,2012,55,11,5554-5565;米国特許出願公開第2015/225407A1号、Bioorganic and Medicinal Chemistry,2012,20,18,5642-5648;国際公開第2010/100144A1号)。
式中、R1およびR2は両方ともがHではない。アミノ化合物I~XXIIは、様々な方法により対応するN-アルキル化合物に変換することができる(Synlett,2013,24,17,2249-2254;Chemical Communications,2012,48,4,603-605;Journal of Medicinal Chemistry,1999,42,15,2828-2843;European Journal of Medicinal Chemistry,2014,74,703-716;Angewandte Chemie-International Edition,2015,54,31,9042-9046;米国特許出願公開第2004/44258A1号)。
本開示の実施形態のこれらおよび他の態様および利点は、添付のスキームおよび図面を参照しながらなされる以下の説明から明らかになり、かつより容易に理解されるであろう。
なお、以下に詳細に記載されている本発明の実施形態は、本発明を説明するための例示にすぎず、本発明を限定するものとして解釈されない。具体的な技術または条件を含まない実施例は、当該技術分野の文書中の技術または条件あるいは製品の説明書に従って実施することができる。製造業者名のない試薬または機器は従来の購入により入手可能である。当業者であれば、以下の実施例によって実証されているように出発物質を変更し、かつさらなる工程を用いて本発明によって包含される化合物を生成し得ることを認識するであろう。
実施例1:6-(ペンタフルオロスルファニル)ベンゾ[d]チアゾール-2-アミン(I)
4-(ペンタフルオロスルファニル)アニリン(33)(500mg、2.28mmol)のAcOH(10mL)撹拌溶液に、KSCN(265mg、2.73mmol)を20℃で一度に添加した。30分間撹拌した後に、この反応混合物を0℃まで冷却し、Br2(365mg、2.28mmol)のAcOH(1mL)溶液を滴下した。次いで氷浴を除去し、この反応混合物を20℃で16時間撹拌した。この混合物を水(100mL)の中に注ぎ、CH2Cl2(3×30mL)で抽出した。1つにまとめた有機相をNaHCO3飽和水溶液(15mL)、飽和食塩水溶液(15mL)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、濃縮した。残留物をprep-HPLCで精製して表題化合物Iを白色の固体として得た(378mg、60%)。
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ=8.34(d,J=2.0Hz,1H),7.97(s,2H),7.68(dd,J=2.2Hz,9.0Hz,1H),7.40(d,J=9.2Hz,1H);
MS(ESI):[M+H+]=276.9.
実施例2:5-(ペンタフルオロスルファニル)ベンゾ[d]チアゾール-2-アミン(II)
3-(ペンタフルオロスルファニル)アニリン(34)(400mg、1.83mmol)のAcOH(8mL)撹拌溶液に、KSCN(355mg、3.65mmol)を20℃で一度に添加した。30分間撹拌した後に、この反応混合物を0℃まで冷却し、Br2(292mg、1.83mmol)のAcOH(1mL)溶液を滴下した。次いで氷浴を除去し、この反応混合物を20℃で16時間撹拌した。この混合物を水(100mL)の中に注ぎ、CH2Cl2(3×30mL)で抽出した。1つにまとめた有機相をNaHCO3飽和水溶液(15mL)、飽和食塩水溶液(15mL)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィ(シリカゲル、石油エーテル/EtOAc=10:1~2:1)で精製して表題化合物IIを白色の固体として得た(135mg、27%)。
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ=7.90(br.s,2H),7.87(s,1H),7.73(d,J=2.4Hz,1H),7.50(dd,J=2.0,8.8Hz,1H);
MS(ESI):[M+H+]=276.8.
実施例3:6-(ペンタフルオロスルファニル)ベンゾ[d]オキサゾール-2-アミン(III)
工程1:2-ニトロ-5-(ペンタフルオロスルファニル)フェノール(36)
t-BuOK(337mg、3mmol)のCH3NH2(2MのTHF溶液、5mL)撹拌溶液に、1-ニトロ-4-(ペンタフルオロスルファニル)ベンゼン(35)(249mg、1mmol)およびクメンヒドロペルオキシド(80%、0.2mL、1.1mmol)の乾燥THF(1mL)溶液を-50℃で滴下した。得られた褐色の混合物を-50℃で15分間撹拌した後に固体のNH4Cl(1g)を添加し、CH3NH2を蒸発させた。得られた混合物をHCl水溶液(1M)で処理してpH1にし、CH2Cl2(3×20mL)で抽出した。1つにまとめた有機抽出物をNaOH水溶液(0.5M、3×15mL)で洗浄し、アルカリ性抽出物を回収し、pH1になるまでHCl水溶液(6M)で酸性化し、次いでCH2Cl2(3×20mL)で抽出した。1つにまとめた有機相を無水MgSO4で乾燥し、濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィ(シリカゲル、石油エーテル/EtOAc=20:1)で精製して表題化合物36を黄色の油として得た(238mg、90%)。
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ=10.56(br.s,1H),8.23(d,J=9.2Hz,1H),7.62(d,J=2.4Hz,1H),7.40(dd,J=2.4,9.6Hz,1H).
工程2:2-アミノ-5-(ペンタフルオロスルファニル)フェノール(37)
2-ニトロ-5-(ペンタフルオロスルファニル)フェノール(36)(616mg、2.32mmol)のエタノール(5mL)溶液に、Pd(OH)2(200mg、木炭上に10%)を添加した。この混合物をH2雰囲気下で3時間撹拌した。この混合物を濾過し、その濾液を濃縮して表題化合物37を黄色の油として得た(448mg、82%)。
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ=7.21(dd,J=2.0,8.4Hz,1H),7.12(d,J=2.0Hz,1H),6.67(d,J=8.8Hz,1H),4.88(br.s,1H),4.08(br.s,2H).
工程3:6-(ペンタフルオロスルファニル)ベンゾ[d]オキサゾール-2-アミン(III)
2-アミノ-5-(ペンタフルオロスルファニル)フェノール(37)(410mg、1.74mmol)のCH3CN(10mL)撹拌溶液に、ジ(1H-イミダゾール-1-イル)メタンイミン(562mg、3.49mmol)を20℃で一度に添加した。この反応混合物を80℃で6時間撹拌した。溶媒を蒸発させ、残留物をカラムクロマトグラフィ(シリカゲル、石油エーテル/EtOAc=10:1~2:1)で精製して表題化合物IIIを白色の固体として得た(296mg、65%)。
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ=7.99(d,J=2.0Hz,1H),7.96(s,2H),7.64(dd,J=2.0,8.4Hz,1H),7.30(d,J=8.8Hz,1H);
MS(ESI):[M+H+]=260.7.
実施例4:5-(ペンタフルオロスルファニル)ベンゾ[d]オキサゾール-2-アミン(IV)
工程1:2-ニトロ-4-(ペンタフルオロスルファニル)フェノール(39)
t-BuOK(100mg、3mmol)のCH3NH2(2MのTHF溶液、2mL)撹拌溶液に、1-ニトロ-4-(ペンタフルオロスルファニル)ベンゼン(38)(249mg、1mmol)およびクメンヒドロペルオキシド(80%、84mg、1.1mmol)の乾燥THF(1mL)溶液を-50℃で滴下した。得られた褐色の混合物を-50℃で15分間撹拌した後に固体のNH4Cl(1g)を添加し、CH3NH2を蒸発させた。得られた混合物をHCl水溶液(1M)で処理してpH1にし、DCM(3×20mL)で抽出した。1つにまとめた有機抽出物をNaOH水溶液(0.5M、3×15mL)で洗浄し、アルカリ性溶液を回収し、pH1になるまでHCl水溶液(6M)で酸性化し、次いでCH2Cl2(3×20mL)で抽出した。1つにまとめた有機相を無水MgSO4で乾燥し、濃縮した。粗製生成物39を黄色の油として得(265mg、100%)、これをさらに精製することなく次の工程のために使用した。
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ=10.78(br.s,1H),8.57(s,1H),7.96(d,J=8.4Hz,1H),7.51(s,1H).
工程2:2-アミノ-4-(ペンタフルオロスルファニル)フェノール(40)
2-ニトロ-4-(ペンタフルオロスルファニル)フェノール(39)(150mg、0.40mmol)のエタノール(3mL)溶液に、Pd(OH)2(80mg、木炭上に10%)を添加した。この混合物をH2雰囲気下で3時間撹拌した。この混合物を濾過し、その濾液を濃縮して粗製生成物を得、これをprep-TLC(シリカゲル、石油エーテル/EtOAc=3:1)で精製して表題化合物40を黄色の油として得た(70mg、74%)。
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ=7.14(d,J=2.4Hz,1H),7.07(dd,J=2.0,8.8Hz,1H),6.72(d,J=8.8Hz,1H),5.40(br.s,1H);
MS(ESI):[M+H+]=235.8.
工程3:5-(ペンタフルオロスルファニル)ベンゾ[d]オキサゾール-2-アミン(IV)
2-アミノ-4-(ペンタフルオロスルファニル)フェノール(40)(70mg、0.30mmol)のCH3CN(1mL)撹拌溶液に、ジ(1H-イミダゾール-1-イル)メタンイミン(96mg、0.60mmol)を20℃で一度に添加した。この反応混合物を80℃で6時間撹拌した。溶媒を蒸発させ、残留物をカラムクロマトグラフィ(シリカゲル、石油エーテル/EtOAc=10:1~2:1)で精製して表題化合物IVを白色の固体として得た(56mg、72%)。
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ=7.85(s,2H),7.68(s,1H),7.52(s,1H);
MS(ESI):[M+H+]=260.8.
実施例5:6-(ペンタフルオロスルファニル)ベンゾ[d][1,3]セレナゾール-2-アミン(V)
工程1:2-ブロモ-4-(ペンタフルオロスルファニル)アニリン(41)
4-(ペンタフルオロスルファニル)アニリン(33)(500.0mg、2.28mmol)のAcOH(5.0mL)撹拌溶液に、Br2(364.6mg、2.28mmol)のAcOH(1.0mL)溶液をゆっくりと10℃で添加した。この混合物を10℃で3時間撹拌した。この混合物を氷水(60mL)で失活させ、EtOAc(2×30mL)で抽出し、1つにまとめた抽出物を無水Na2SO4で乾燥し、濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィ(シリカゲル、石油エーテル/EtOAc=20:1~10:1)で精製して表題化合物41を黄色の固体として得た(648mg、96%)。
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ=7.81(d,J=2.4Hz,1H),7.49(dd,J=2.4,9.2Hz,1H),6.71(d,J=9.2Hz,1H),4.46(s,2H).
工程2:N-(2-ブロモ-4-(ペンタフルオロスルファニル)フェニル)ホルムアミド(42)
2-ブロモ-4-(ペンタフルオロスルファニル)アニリン(41)(1.54g、5.17mmol)の乾燥トルエン(20mL)撹拌溶液に、HCOOH(4.0mL、103.30mmol)を20℃で滴下した。この反応物を100℃で16時間撹拌した。その後、この反応混合物を30℃まで冷却し、EtOAc(60mL)で希釈し、水(30mL)および飽和食塩水溶液(30mL)で連続的に洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィ(シリカゲル、石油エーテル/EtOAc=20:1~5:1)で精製して表題化合物42を黄色の固体として得た(1.63g、97%)。
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ=10.07(s,1H),8.44(s,1H),8.39(d,J=8.8Hz,1H),8.22(d,J=2.4Hz,1H),7.96(dd,J=2.4,8.8Hz,1H).
工程3:2-ブロモ-1-イソシアノ-4-(ペンタフルオロスルファニル)ベンゼン(43)
N-(2-ブロモ-4-(ペンタフルオロスルファニル)フェニル)ホルムアミド(42)(400mg、1.23mmol)の乾燥CH2Cl2(10mL)溶液に、Et3N(0.5mL、3.68mmol)を0℃で添加し、次いでPOCl3(282mg、1.84mmol)を添加した。この反応物を0~20℃で3時間撹拌した。その後、Na2CO3飽和水溶液をゆっくりと添加した。30分間撹拌した後に、水相をCH2Cl2(2×20mL)で抽出した。1つにまとめた有機相を無水Na2SO4で乾燥し、濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィ(シリカゲル、石油エーテル/EtOAc=50:1~20:1)で精製して表題化合物43を暗色の油として得た(236mg、62%)。
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ=8.08(d,J=2.0Hz,1H),7.78(dd,J=2.0,8.8Hz,1H),7.56(d,J=8.8Hz,1H).
工程4:2-ブロモ-1-イソセレノシアナト-4-(ペンタフルオロスルファニル)ベンゼン(44)
2-ブロモ-1-イソシアノ-4-(ペンタフルオロスルファニル)ベンゼン(43)(517mg、1.68mmol)のCH2Cl2(10mL)懸濁液に、Se粉末(398mg、5.03mmol)、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム(19.10mg、0.084mmol)を添加し、次いでNaOH水溶液(50%、0.5mL)を添加した。この反応物を40℃で3時間撹拌した。その後、この反応混合物をCH2Cl2(20mL)で希釈し、水(10mL)および飽和食塩水溶液(10mL)で連続的に洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィ(シリカゲル、石油エーテル/EtOAc=50:1~20:1)で精製して表題化合物44を黄色の油として得た(308mg、47%)。
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ=8.00(d,J=2.4Hz,1H),7.71(dd,J=2.4,9.2Hz,1H),7.39(d,J=8.8Hz,1H).
工程5:1-(2-ブロモ-4-(ペンタフルオロスルファニル)フェニル)セレノ尿素(45)
2-ブロモ-1-イソセレノシアナト-4-(ペンタフルオロスルファニル)ベンゼン(44)(308mg、0.80mmol)のCH2Cl2(6mL)懸濁液に、NH4OH(134mg、25%水溶液)を20℃で添加した。この混合物を20℃で15分間撹拌した。この混合物中の溶媒を蒸発させて表題化合物45を白色の固体として得た(322mg、100%)。
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ=9.88(s,1H),8.64(s,1H),8.19(d,J=2.0Hz,1H),7.96(br.s,1H),7.90(dd,J=2.4,8.8Hz,1H),7.78(d,J=8.4Hz,1H).
工程6:6-(ペンタフルオロスルファニル)ベンゾ[d][1,3]セレナゾール-2-アミン(V)
1-(2-ブロモ-4-(ペンタフルオロスルファニル)フェニル)セレノ尿素(45)(322mg、0.80mmol)のDMSO(6mL)撹拌溶液に、CuI(15mg、0.08mmol)、1,10-フェナントロリン(14mg、0.08mmol)を20℃で添加し、次いでCs2CO3(130mg、0.40mmol)を添加した。この反応物を窒素下80℃で30分間撹拌した。その後、この反応混合物を氷水(60mL)で失活させ、EtOAc(2×30mL)で抽出した。1つにまとめた有機相を飽和食塩水溶液(30mL)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、濃縮した。残留物をprep-HPLCで精製して表題化合物Vを白色の固体として得た(15mg、6%)。
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ=8.30(d,J=2.4Hz,1H),8.00(s,2H),7.64(dd,J=2.4,8.8Hz,1H),7.33(d,J=8.8Hz,1H));
MS(ESI):[M+H+]=324.7.
実施例6:6-(トリフルオロメチル)ベンゾ[d][1,3]セレナゾール-2-アミン(VI)
工程1:N-(2-ヨード-4-(トリフルオロメチル)フェニル)ホルムアミド(47)
2-ヨード-4-(トリフルオロメチル)アニリン(46)(3.0g、10.5mmol)の乾燥トルエン(30mL)撹拌溶液に、HCOOH(4.0mL、114.5mmol)を20℃で滴下した。この反応物を100℃で16時間撹拌した。この混合物を30℃まで冷却し、EtOAc(80mL)で希釈し、水(40mL)および飽和食塩水溶液(40mL)で連続的に洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィ(シリカゲル、石油エーテル/EtOAc=20:1~10:1)で精製して表題化合物47を白色の固体として得た(3.1g、94%)。
MS(ESI):[M+H+]=315.7
工程2:2-ヨード-1-イソシアノ-4-(トリフルオロメチル)ベンゼン(48)
N-(2-ヨード-4-(トリフルオロメチル)フェニル)ホルムアミド(47)(2.0g、6.35mmol)の乾燥CH2Cl2(30mL)溶液に、Et3N(2.6mL、19.05mmol)を0℃で添加し、次いでPOCl3(1.5g、9.52mmol)を添加した。この反応物を0~20℃で3時間撹拌し、次いでNa2CO3飽和水溶液(10mL)を滴下した。30分間撹拌した後に、水相をDCM(2×30mL)で抽出した。1つにまとめた有機相を無水Na2SO4で乾燥し、濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィ(シリカゲル、石油エーテル/EtOAc=50:1~20:1)で精製して表題化合物48を暗色の油として得た(1.32g、70%)。
工程3:2-ヨード-1-イソセレノシアナト-4-(トリフルオロメチル)ベンゼン(49)
2-ヨード-1-イソシアノ-4-(トリフルオロメチル)ベンゼン(48)(1.32g、4.44mmol)のCH2Cl2(30mL)懸濁液に、Se粉末(1.05g、13.33mmol)、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム(50.70mg、0.22mmol)およびNaOH水溶液(50%、2.0mL)を添加した。この反応物を40℃で3時間撹拌した。この混合物をCH2Cl2(30mL)で希釈し、水(20mL)および飽和食塩水溶液(20mL)で連続的に洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィ(シリカゲル、PE/EA=50:1~20:1)で精製して表題化合物49を黄色の油として得た(0.90g、54%)。
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ=8.08(s,1H),7.61(d,J=8.0Hz,1H),7.40(d,J=8.4Hz,1H).
工程4:1-(2-ヨード-4-(トリフルオロメチル)フェニル)セレノ尿素(50)
2-ヨード-1-イソセレノシアナト-4-(トリフルオロメチル)ベンゼン(49)(300mg、0.80mmol)のCH2Cl2(6mL)懸濁液に、NH4OH(134mg、25%水溶液)を20℃で添加した。この反応物を20℃で15分間撹拌した。溶媒を蒸発させて表題化合物50を白色の固体として得た(314mg、100%)。
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ=9.79(s,1H),8.48(s,1H),8.16(s,1H),7.76(s,1H),7.73(d,J=8.0Hz,1H),7.57(d,J=8.4Hz,1H).
工程5:6-(トリフルオロメチル)ベンゾ[d][1,3]セレナゾール-2-アミン(VI)
1-(2-ヨード-4-(トリフルオロメチル)フェニル)セレノ尿素(50)(600.0mg、1.53mmol)のDMSO(10mL)撹拌溶液に、CuI(29.1mg、0.15mmol)、1,10-フェナントロリン(27.5mg、0.15mmol)およびCs2CO3(248.0mg、0.76mmol)を20℃で添加した。この反応物を窒素下80℃で30分間撹拌した。この混合物を氷水(60mL)で失活させ、EtOAc(2×30mL)で抽出した。1つにまとめた有機相を飽和食塩水溶液(30mL)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィ(シリカゲル、石油エーテル/EtOAc=10:1~2:1)で精製して表題化合物VIを淡黄色の固体として得た(226mg、56%)。
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ=8.12(d,J=1.2Hz,1H),7.94(s,2H),7.48(dd,J=1.2,8.8Hz,1H),7.40(d,J=8.8Hz,1H);
MS(ESI):[M+H+]=266.7.
実施例7:6-(トリフルオロメトキシ)ベンゾ[d][1,3]セレナゾール-2-アミン(VII)
工程1:N-(2-ブロモ-4-(トリフルオロメトキシ)フェニル)ホルムアミド(52)
2-ブロモ-4-(トリフルオロメトキシ)アニリン(51)(3.0g、11.7mmol)の乾燥トルエン(30mL)撹拌溶液に、HCOOH(4.3mL、113.7mmol)を20℃で滴下した。この反応物を100℃で16時間撹拌した。この混合物を30℃まで冷却し、EtOAc(60mL)で希釈し、水(30mL)および飽和食塩水溶液(30mL)で連続的に洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィ(シリカゲル、石油エーテル/EtOAc=20:1~5:1)で精製して表題化合物52を白色の固体として得た(3.2g、96%)。
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ=9.90(s,1H),8.37(s,1H),8.14(d,J=8.8Hz,1H),7.78(d,J=2.0Hz,1H),7.45(d,J=8.8Hz,1H).
工程2:2-ブロモ-1-イソシアノ-4-(トリフルオロメトキシ)ベンゼン(53)
N-(2-ブロモ-4-(トリフルオロメトキシ)フェニル)ホルムアミド(52)(2.0g、7.04mmol)の乾燥CH2Cl2(30mL)溶液に、Et3N(2.1g、21.12mmol)を0℃で添加し、次いでPOCl3(1.6g、10.56mmol)を添加した。この反応物を0~20℃で3時間撹拌し、次いでNa2CO3飽和水溶液(10mL)を滴下した。30分間撹拌した後に、この混合物をCH2Cl2(2×30mL)で抽出した。水相を無水Na2SO4で乾燥し、濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィ(シリカゲル、石油エーテル/EtOAc=50:1~20:1)で精製して表題化合物53を暗色の油として得た(1.8g、96%)。
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ=7.55(d,J=1.6Hz,1H),7.51(d,J=9.2Hz,1H),7.24(dd,J=1.6,9.2Hz,1H).
工程3:2-ブロモ-1-イソセレノシアナト-4-(トリフルオロメトキシ)ベンゼン(54)
2-ブロモ-1-イソシアノ-4-(トリフルオロメトキシ)ベンゼン(53)(1.80g、6.77mmol)のCH2Cl2(36mL)懸濁液に、Se粉末(1.60g、20.30mmol)、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム(77.52mg、0.34mmol)を添加し、次いでNaOH水溶液(50%、5mL)を添加した。この反応物を40℃で3時間撹拌した。この混合物をCH2Cl2(50mL)で希釈し、水(30mL)および飽和食塩水溶液(30mL)で連続的に洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィ(シリカゲル、石油エーテル/EtOAc=50:1~20:1)で精製して表題化合物54を無色の固体として得た(0.95g、41%)。
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ=7.49(d,J=2.0Hz,1H),7.36(d,J=8.8Hz,1H),7.18(dd,J=1.2,8.4Hz,1H).
工程4:1-(2-ブロモ-4-(トリフルオロメトキシ)フェニル)セレノ尿素(55)
2-ブロモ-1-イソセレノシアナト-4-(トリフルオロメトキシ)ベンゼン(54)(820mg、2.38mmol)のCH2Cl2(10mL)懸濁液に、NH4OH(400mg、25%水溶液)を20℃で添加した。この反応物を20℃で15分間撹拌した。溶媒を蒸発させて表題化合物55を灰色がかった白色の固体として得た(862mg、100%)。
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ=9.78(s,1H),8.45(s,1H),7.76(d,J=2.0Hz,1H),7.74(br.s,1H),7.56(d,J=9.2Hz,1H),7.42(dd,J=1.2,8.4Hz,1H).
工程5:6-(トリフルオロメトキシ)ベンゾ[d][1,3]セレナゾール-2-アミン(VII)
1-(2-ブロモ-4-(トリフルオロメトキシ)フェニル)セレノ尿素(55)(600.0mg、1.66mmol)のDMSO(10mL)撹拌溶液に、CuI(31.6mg、0.17mmol)、1,10-フェナントロリン(30.0mg、0.17mmol)を20℃で添加し、次いでCs2CO3(270.0mg、0.83mmol)を添加した。この反応物を窒素下80℃で30分間撹拌した。この混合物を氷水(60mL)で失活させ、EA(2×30mL)で抽出した。1つにまとめた有機相を飽和食塩水溶液(30mL)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィ(シリカゲル、石油エーテル/EtOAc=10:1~2:1)で精製して表題化合物VIIを白色の固体として得た(106mg、23%)。
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ=7.77(d,J=1.2Hz,1H),7.71(s,2H),7.33(d,J=8.8Hz,1H),7.16(dd,J=1.2,8.4Hz,1H);
MS(ESI):[M+H+]=282.8.
実施例8:5-(トリフルオロメチル)ベンゾ[d][1,3]セレナゾール-2-アミン(VIII)
工程1:N-(2-ブロモ-5-(トリフルオロメチル)フェニル)ホルムアミド(57)
2-ブロモ-5-(トリフルオロメチル)アニリン(56)(4.0g、16.67mmol)の乾燥トルエン(40mL)撹拌溶液に、HCOOH(6.4mL、166.70mmol)を20℃で滴下した。この反応物を100℃で16時間撹拌した。この混合物を30℃まで冷却し、EtOAc(120mL)で希釈し、(30mL)および飽和食塩水溶液(30mL)で連続的に洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィ(シリカゲル、石油エーテル/EtOAc=20:1~10:1)で精製して表題化合物57を白色の固体として得た(4.2g、93%)。
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ=10.05(s,1H),8.48(s,1H),8.42(s,1H),7.92(d,J=8.4Hz,1H),7.43(d,J=8.4Hz,1H);
MS(ESI):[M+H++CH3CN]=310.8.
工程2:2-ブロモ-1-イソシアノ-5-(トリフルオロメチル)ベンゼン(58)
N-(2-ブロモ-5-(トリフルオロメチル)フェニル)ホルムアミド(57)(3.0g、11.19mmol)の乾燥CH2Cl2(40mL)溶液に、Et3N(4.7mL、33.58mmol)を0℃で添加し、次いでPOCl3(2.6g、16.79mmol)を添加した。この反応物を0~20℃で3時間撹拌し、次いでNa2CO3飽和水溶液を滴下した。30分間撹拌した後に、この混合物をCH2Cl2(2×50mL)で抽出した。1つにまとめた有機相を無水Na2SO4で乾燥し、濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィ(シリカゲル、石油エーテル/EtOAc=50:1~20:1)で精製して表題化合物58を暗色の油として得た(2.02g、68%)。
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ=7.83(d,J=8.0Hz,1H),7.71(s,1H),7.54(d,J=8.4Hz,1H).
工程3:2-ブロモ-1-イソセレノシアナト-5-(トリフルオロメチル)ベンゼン(59)
2-ブロモ-1-イソシアノ-5-(トリフルオロメチル)ベンゼン(58)(2.0g、8.08mmol)のCH2Cl2(40mL)懸濁液に、Se粉末(1.92g、24.24mmol)、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム(92mg、0.40mmol)を添加し、次いでNaOH水溶液(50%、4.0mL)を添加した。この混合物を40℃で3時間撹拌した。この混合物をCH2Cl2(100mL)で希釈し、水(50mL)および飽和食塩水溶液(50mL)で連続的に洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィ(シリカゲル、石油エーテル/EtOAc=50:1~20:1)で精製して表題化合物59を黄色の油として得た(1.56g、54%)。
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ=7.75(d,J=8.4Hz,1H),7.56(s,1H),7.42(d,J=8.4Hz,1H).
工程4:1-(2-ブロモ-5-(トリフルオロメチル)フェニル)セレノ尿素(60)
2-ブロモ-1-イソセレノシアナト-5-(トリフルオロメチル)ベンゼン(59)(580mg、1.76mmol)のCH2Cl2(10mL)懸濁液に、NH4OH(0.33mL、25%水溶液)を20℃で添加した。この反応物を20℃で15分間撹拌した。溶媒を蒸発させて表題化合物60を白色の固体として得た(593mg、97%)。
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ=9.87(s,1H),8.53(s,1H),7.90(d,J=8.4Hz,2H),7.86(s,1H),7.55(dd,J=1.5,8.0Hz,1H);
MS(ESI):[M+H+]=346.7.
工程5:5-(トリフルオロメチル)ベンゾ[d][1,3]セレナゾール-2-アミン(VIII)
1-(2-ブロモ-5-(トリフルオロメチル)フェニル)セレノ尿素(60)(500.0mg、1.53mmol)のDMSO(10mL)の撹拌溶液に、CuI(27.5mg、0.14mmol)、1,10-フェナントロリン(26.0mg、0.14mmol)を20℃で添加し、次いでCs2CO3(235.4mg、0.72mmol)を添加した。この反応物を窒素下80℃で30分間撹拌した。この混合物を氷水(60mL)で失活させ、EA(2×40mL)で抽出した。1つにまとめた有機相を飽和食塩水溶液(50mL)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、濃縮した。残留物をprep-HPLC(溶離液中に0.5%TFA)で精製して表題化合物VIIIを淡黄色の固体として得た(200mg、52%)。
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ=8.39(br.s,2H),7.98(d,J=8.0Hz,1H),7.57(s,1H),7.31(d,J=8.0Hz,1H);
MS(ESI):[M+H+]=266.7.
実施例9:6-((トリフルオロメチル)チオ)ベンゾ[d][1,3]セレナゾール-2-アミン(IX)
工程1:2-ブロモ-4-((トリフルオロメチル)チオ)アニリン(62)
4-((トリフルオロメチル)チオ)アニリン(61)(4.0g、20.72mmol)のDMF(40mL)撹拌溶液に、N-ブロモスクシンアミド(NBS)(3.87g、21.74mmol)を添加した。この混合物を30℃で2時間撹拌した。この混合物を氷水(120mL)で失活させ、EtOAc(2×50mL)で抽出した。1つにまとめた有機相を水(50mL)および飽和食塩水溶液(50mL)で連続的に洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィ(シリカゲル、石油エーテル/EtOAc=20:1~10:1)で精製して表題化合物62を赤色の油として得た(3.60g、64%)。
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ=7.70(d,J=1.6Hz,1H),7.37(dd,J=1.6,8.0Hz,1H),6.75(d,J=8.4Hz,1H),4.41(br.s,2H);
MS(ESI):[M+H+]=273.8.
工程2:N-(2-ブロモ-4-((トリフルオロメチル)チオ)フェニル)ホルムアミド(63)
2-ブロモ-4-((トリフルオロメチル)チオ)アニリン(62)(3.0g、11.03mmol)の乾燥トルエン(30mL)撹拌溶液に、HCOOH(4.3mL、113.70mmol)を20℃で滴下した。この反応物を100℃で16時間撹拌した。この混合物を30℃まで冷却し、EtOAc(60mL)で希釈し、水(50mL)および食塩水(50mL)で連続的に洗浄した。有機相を無水Na2SO4で乾燥し、濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィ(シリカゲル、石油エーテル/EtOAc=20:1~5:1)で精製して表題化合物63を白色の固体として得た(3.1g、94%)。
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ=10.00(s,1H),8.42(s,1H),8.29(d,J=8.4Hz,1H),8.03(d,J=1.6Hz,1H),7.74(dd,J=1.2,8.4Hz,1H);
MS(ESI):[M+H++CH3CN]=340.8.
工程3:(3-ブロモ-4-イソシアノフェニル)(トリフルオロメチル)スルファン(64)
N-(2-ブロモ-4-((トリフルオロメチル)チオ)フェニル)ホルムアミド(63)(3.00g、10.0mmol)の乾燥CH2Cl2(30mL)溶液に、Et3N(4.17mL、30.0mmol)を氷浴下で添加し、次いでPOCl3(1.40mL、15.0mmol)を添加した。この反応物を0~20℃で3時間撹拌し、次いでNa2CO3飽和水溶液(10mL)を滴下した。30分間撹拌した後に、この混合物をCH2Cl2(2×30mL)で抽出した。1つにまとめた有機相を無水Na2SO4で乾燥し、濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィ(シリカゲル、石油エーテル/EtOAc=50:1~20:1)で精製して表題化合物64を暗色の固体として得た(2.4g、84%)。
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ=7.97(d,J=1.6Hz,1H),7.65(dd,J=1.6,8.0Hz,1H),7.49(d,J=8.8Hz,1H).
工程4:(3-ブロモ-4-イソセレノシアナトフェニル)(トリフルオロメチル)スルファン(65)
(3-ブロモ-4-イソシアノフェニル)(トリフルオロメチル)スルファン(64)(800mg、2.84mmol)のCH2Cl2(8mL)懸濁液に、Se粉末(672mg、8.51mmol)、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム(33mg、0.14mmol)を添加し、次いでNaOH水溶液(50%、1.2mL)を添加した。この反応物を40℃で2時間撹拌した。その後、この反応混合物をCH2Cl2(50mL)で希釈した。有機相を水(50mL)および食塩水(50mL)で連続的に洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィ(シリカゲル、石油エーテル/EtOAc=50:1~20:1)で精製して表題化合物65を褐色の固体として得た(0.78g、78%)。
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ=7.90(d,J=1.6Hz,1H),7.60(dd,J=1.6,8.0Hz,1H),7.36(d,J=8.8Hz,1H).
工程5:1-(2-ブロモ-4-((トリフルオロメチル)チオ)フェニル)セレノ尿素(66)
(3-ブロモ-4-イソセレノシアナトフェニル)(トリフルオロメチル)スルファン(65)(558mg、1.55mmol)のCH2Cl2(6mL)溶液に、NH4OH(0.3mL、25%水溶液)を20℃で添加した。この反応物を20℃で30分間撹拌した。溶媒を蒸発させて表題化合物66を黄色の固体として得た(486mg、83%)。
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ=9.82(s,1H),8.61(br.s,1H),8.02(d,J=1.6Hz,1H),7.94(br.s,1H),7.75(d,J=8.0Hz,1H),7.71(dd,J=1.6,8.4Hz,1H);
MS(ESI):[M+H+]=378.7.
工程6:6-(トリフルオロメトキシ)ベンゾ[d][1,3]セレナゾール-2-アミン(IX)
1-(2-ブロモ-4-((トリフルオロメチル)チオ)フェニル)セレノ尿素(66)(400.0mg、1.06mmol)のDMSO(6mL)撹拌溶液に、CuI(20.2mg、0.11mmol)および1,10-フェナントロリン(19.1mg、0.11mmol)を20℃で添加し、次いでCs2CO3(172.4mg、0.53mmol)を添加した。この反応物を窒素下80℃で20分間撹拌した。この混合物を氷水(60mL)で失活させ、EtOAc(2×30mL)で抽出した。1つにまとめた有機相を飽和食塩水溶液(50mL)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、濃縮した。残留物をprep-HPLCで精製して表題化合物IXを白色の固体として得た(40mg、13%)。
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ=8.21(s,1H),7.62(d,J=8.4Hz,1H),7.48(d,J=9.2Hz,1H);
MS(ESI):[M+H+]=298.8.
実施例10:6-(ペンタフルオロスルファニル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-アミン(X)
工程1:N-(4-(ペンタフルオロスルファニル)フェニル)アセトアミド(67)
4-(ペンタフルオロスルファニル)アニリン(33)(100mg、0.46mmol)のCHCl3(1mL)の撹拌溶液に、Et3N(92.3mg、0.92mmol)を添加し、次いでAc2O(61.2mg、0.46mmol)を添加した。この反応物を20℃で3時間撹拌し、ここにH2O(20mL)を添加した。この混合物をCH2Cl2(2×10mL)で抽出した。1つにまとめた有機相を無水Na2SO4で乾燥し、濃縮して表題の粗製化合物67(110mg、92%)を黄色の固体として得、これをさらに精製することなく次の工程のために使用した。
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ=7.70(d,J=9.2Hz,2H),7.62(d,J=8.8Hz,2H),7.42(br.s,1H),2.22(s,3H);
MS(ESI):[M+H+]=261.8.
工程2:N-(2-ニトロ-4-(ペンタフルオロスルファニル)フェニル)アセトアミド(68)
N-(4-(ペンタフルオロスルファニル)フェニル)アセトアミド(67)(110mg、0.42mmol)の濃H2SO4(1mL)溶液に、HNO3(0.3mL、65%)を氷浴下で滴下した。この反応物を0~20℃で1時間撹拌した。その後、この反応混合物を氷水(30mL)の中に注ぎ、CH2Cl2(2×15mL)で抽出した。1つにまとめた有機相を無水Na2SO4で乾燥し、濃縮して表題の粗製化合物68(120mg、93%)を黄色の固体として得、これをさらに精製することなく次の工程のために使用した。
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ=10.49(br.s,1H),8.99(d,J=9.6Hz,1H),8.65(d,J=2.4Hz,1H),8.00(dd,J=2.4,9.6Hz,1H),2.34(s,3H)).
工程3:2-ニトロ-4-(ペンタフルオロスルファニル)アニリン(69)
N-(2-ニトロ-4-(ペンタフルオロスルファニル)フェニル)アセトアミド(68)(120mg、0.39mmol)を濃H2SO4(1mL)に溶解し、この反応物を100℃で15分間撹拌した。この混合物を30℃まで冷却し、砕いた氷の中に注ぎ、10分間撹拌し、CH2Cl2(2×15mL)で抽出した。1つにまとめた有機相を水(20mL)および食塩水(20mL)で連続的に洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、濃縮した。粗製の表題化合物69(100mg、97%)を黄色の固体として得、これをさらに精製することなく次の工程のために使用した。
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ=8.58(d,J=2.4Hz,1H),7.70(dd,J=2.4,9.2Hz,1H),6.85(d,J=9.6Hz,1H),6.40(br.s,2H).
工程4:4-(ペンタフルオロスルファニル)ベンゼン-1,2-ジアミン(70)
2-ニトロ-4-(ペンタフルオロスルファニル)アニリン(69)(100mg、0.39mmol)のEtOH(2mL)溶液に、Pd/C(100mg、10%)を添加した。この反応物をH2雰囲気下20℃で16時間撹拌した。この反応混合物を濾過し、その濾液を濃縮して粗製の表題化合物70を黄色の固体として得た(70mg、80%)。
MS(ESI):[M+H+]=234.8.
工程5:6-(ペンタフルオロスルファニル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-アミン(X)
4-(ペンタフルオロスルファニル)ベンゼン-1,2-ジアミン(70)(70mg、0.30mmol)のH2O(1mL)撹拌溶液に、BrCN(32.3mg、0.31mmol)を添加した。この反応物を窒素下100℃で8時間撹拌した。この反応混合物をH2O(20mL)で希釈し、pH10~11になるまでNH4OH(25%)で処理し、次いでEtOAc(2×10mL)で抽出した。1つにまとめた有機相を飽和食塩水溶液(20mL)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、濃縮した。残留物をprep-TLC(シリカゲル、CH2Cl2/MeOH=8:1)で精製して表題化合物Xを淡黄色の固体として得た(30mg、38%)。
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ=11.14(br.s,1H),7.55(s,1H),7.37(d,J=7.2Hz,1H),7.19(d,J=8.4Hz,1H),6.71(br.s,2H);
MS(ESI):[M+H+]=259.8.
実施例11:薬理学的研究
本実施例には、式I~XXIIを有する化合物に関する薬理学的特性が詳細に記載されている。
A.ヒトの電位依存性ナトリウムチャネルに対する化合物I~XXIIの阻害効果
ヒトの電位依存性ナトリウムチャネル(hNav1.2/1.7)に対する可能な化合物I~XXIIの阻害効果を、記載されている手順に従って手動のパッチクランプシステムで評価した。SCN2A/SCN9A遺伝子で安定にトランスフェクトしたHEK293細胞株を本研究で用い、フグ毒(TTX)を陽性対照として使用して本アッセイの良好な品質を確認した。その結果が以下の表1に示されており、化合物Iのためのフィッティング用量反応曲線が図1Aおよび図1Bに示されている。
一般的な手順:HEK293細胞をヒトNav1.2またはNav1.7電位依存性ナトリウムチャネルで安定にトランスフェクトした。これらの細胞を90%DMEM中に10%FBS、100U/mLのペニシリン-ストレプトマイシンおよび400mg/mLのG418を含有する培地において日常的に維持した。本アッセイの前に、これらの細胞を再懸濁させて、使用される6cmの細胞培養皿当たり5×10
5細胞でカバーガラスの上に蒔いた。電位依存性Nav1.2およびNav1.7チャネル電流は、EPC10 USB(HEKA社)またはMulticlamp 700B増幅器(Molecular Devices社)が備えられた全細胞パッチクランプシステムにより、ランダムに選択したトランスフェクト細胞から室温(25℃)で記録し、電気データを10kHz超のサンプリング周波数を用いてDigidata1440Aでデジタル化し、PatchmasterまたはpClamp10でそれぞれ取得した。2~3.5MWの範囲の抵抗を有するガラス電極をマイクロピペットプラーP-97(Sutter Instrument社)により準備し、内液:140mMのKCl、2mMのMgCl
2、10mMのEGTA、10mMのHEPESおよび5mMのMgATP(pHはKOHで7.35に調整されている)で満たし、細胞は細胞外溶液:132mMのNaCl、4mMのKCl、3mMのCaCl
2、0.5mMのMgCl
2、11.1mMのグルコースおよび10mMのHEPES(pHはNaOHで7.35に調整されている)に浸した。破裂後、直列膜抵抗は少なくとも50%補償され、静電容量も補償された。全ての細胞を特に記載しない限り-80mVの保持電位に電位固定した。15秒ごとに印加される-80mVから10mVまでの20ミリ秒の電圧パルスによって内向きのナトリウム電流を誘導させた。電流安定性を評価するために最初にナトリウム電流を少なくとも120秒間記録し、合格規準を超える記録パラメータを有する細胞のみを最終的に使用して、化合物I~XXIIの局所灌流に対する用量反応を評価した。記録ベースラインを確立するために最初にブランク媒体をパッチした細胞に施用した。誘導されたナトリウム電流が安定化に到達する少なくとも5分後に、試験化合物を低濃度から高濃度まで累積的に記録チャンバー内に灌流した。記録システムの良好な性能を確認するために、陽性対照製品であるフグ毒(TTX)も使用して同じバッチの細胞を検証した。IC
50の決定のために全ての実験を3回行った。データを取得したら、PatchMasterまたはpClamfitソフトウェアを使用して元の生データからピーク電流を抽出し、ピーク電流阻害を以下に示す方程式によって定めた。
試験化合物のために用量反応曲線をGraphpad Prism 5.0ソフトウェアを用いて試験化合物の用量濃度に対する阻害率(%)でプロットし、次いでこのデータをIC
50の決定のために可変勾配を有するシグモイド用量反応曲線に当てはめた。
B.SNL(脊髄神経結紮)ラットにおける機械的アロディニアに対する化合物Iの試験
SNLモデルは、外科手術誘発性神経因性疼痛を測定するためによく使用されるモデルである。本研究の目的は、SDラット中のSNLモデルにおける機械的アロディニアを減弱する化合物Iの有効性を評価することであった。
本研究では、典型的な手順に従ってSNLモデルを作製し、認可されている薬物タペンタドール(XW-TAP)を参照化合物として使用した。モデル検証のために陽性対照としてガバペンチンを施用した。
用量処方:
1)5mg/kgの化合物I:17.13mgの化合物Iを16.96mLの0.5%メチルセルロース生理食塩水に添加し、完全に混合されるまでボルテックスした。
2)10mg/kgのタペンタドール:39.39mgのタペンタドールを16.81mLの生理食塩水に添加し、完全に混合されるまでボルテックスした。
機械的アロディニア測定のための手順:
1)足への完全なアクセスを可能にするメッシュの底を有するプラスチックケースの中にラットを個々に入れた。ラットを試験前に15分間馴化させた。
2)馴化後、3.61(0.4g)、3.84(0.6g)、4.08(1g)、4.31(2g)、4.56(4g)、4.74(6g)、4.93(8g)および5.18(15g)ように対数関数的に漸増する剛性を有する一連の8種類のフォンフライヘア(von Frey hair)のうちの1つで後足の足底中央にタッチした。これらのフォンフライヘアを足に対して僅かに曲がるような十分な力で足底面に垂直に与え、およそ6~8秒間保持した。刺激は5秒間隔で与え、これは前の刺激に対するあらゆる行動反応の見かけ上の回復を可能にした。足が敏速に逃避された場合に肯定的な反応を認めた。ヘアの除去直後の尻込みも肯定的な反応とみなした。歩行運動は曖昧な反応とみなし、そのような場合は刺激を繰り返した。
3)フィラメント4.31(2g)で開始し、反応の有無に応じて、研究者はDixonのup-down法に基づいてそれぞれ強めたか弱めた力のフィラメントを使用した。肯定的な反応はフィラメントからの明らかな後足の逃避またはフィラメントの除去直後の尻込み行動を含んでいた。印加された最大の力はフィラメント5.18(15g)であった。
馴化および投与前機械的アロディニアベースライン値測定:
外科手術から10日後にラットを試験環境に15分間馴化させた後、アロディニア測定を3日間行った。投与前ベースライン値は13日目に測定した。この時点でアロディニア反応を示さなかったラットは除外した(足の逃避閾値>5gを有するラット)。
図2はSNLラットにおける本化合物の抗アロディニア作用を示す。(*一元配置分散分析、次いでダネットの多重比較検定により媒体群に対してp<0.05)。
結果から、化合物Iにより投与後0.5hの時点で5mg/kgの用量でSNL誘発性機械的アロディニアが改善したことが分かる。
C.薬物動態研究
ラットの薬物動態研究のために雄のSDラットを個々に収容し、使用前に一晩絶食させた。動物投与実験は、実験動物の管理と使用に対する国立衛生研究所指針および動物保護法に従って行った。化合物Iでは、5.8mg/kgの単回用量を2つの群(n=5/群)中の各ラットにそれぞれ静脈内(IV)および経口(PO)投与により投与した。IV投与のために使用した媒体は、90%PBS中に10%(v/v)クレモフォールELを含むものであった。PO投与のために使用した媒体は生理食塩水中に0.5%(w/v)メチルセルロースを含むものであった。血液試料はIVおよびPO群内の個々のラットへの投与後の特定の時点(投与前、30分、1時間、2時間、4時間、7時間、8時間、12時間、24時間)で回収した。血液試料を即座に氷の上で凝固させ、次いで血漿試料を遠心分離により単離し、さらなる分析まで凍結保存した(-80℃)。化合物Iの濃度をLC/MS/MSアッセイによって個々に決定した。各種薬物動態パラメータはPhoenix(商標)WinNonlin(登録商標)ソフトウェアを用いて計算した。循環系における化合物Iの生物変換効率を定量化するために、PO投与後の化合物Iの生物学的利用能を計算した。
最後に、本発明を実施するための他の方法が存在することに留意されたい。従って、本発明の実施形態は実施例として記載されているが、本発明は記載されている内容に限定されず、本発明または特許請求の範囲に追加されている均等物の範囲内でさらなる修正が可能である。
本明細書において引用されている全ての刊行物または特許は参照によって本発明に組み込まれる。
本明細書を通して「一実施形態(an embodiment)」、「いくつかの実施形態」、「一実施形態(one embodiment)」、「別の例」、「一例」、「具体例」または「いくつかの例」という言及は、実施形態または実施例に関連して記載されている特定の特徴、構造、材料または特性が本開示の少なくとも1つの実施形態または実施例に含まれていることを意味する。従って、本明細書全体における様々な場所での「いくつかの実施形態では」、「一実施形態では(in one embodiment)」、「一実施形態では(in an embodiment)」、「別の例では」、「一例では」、「具体例では」または「いくつかの例では」などの語句の出現は必ずしも本開示の同じ実施形態または実施例を指していない。さらに特定の特徴、構造、材料または特性は、1種以上の実施形態または実施例において任意の好適な方法で組み合わせられてもよい。
説明のための実施形態が図示および記載されているが、上記実施形態は本開示を限定するものとして解釈することはできず、本開示の趣旨、原理および範囲から逸脱することなく実施形態において変形、代替および修正が可能であることが当業者によって理解されるであろう。