JP7289748B2 - 能動的方式を不使用としたpcsを連系した系統の単独運転検出限界を求める評価方法 - Google Patents

能動的方式を不使用としたpcsを連系した系統の単独運転検出限界を求める評価方法 Download PDF

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本発明は、太陽光発電のパワーコンディショナー(本明細書においては、PCS(Power Conditioning Subsystem)と呼ぶ)の単独運転防止機能に関するものである。さらに詳述すると、本発明は、能動的単独運転検出方式としてステップ注入付周波数フィードバック方式が搭載されたPCS(本明細書においては、新型PCSと呼ぶ)とステップ注入付周波数フィードバック方式が搭載されていないPCS(本明細書においては、従来型PCSと呼ぶ)とが混在した系統において、新型PCSの能動的方式の単独運転検出機能で周波数の急変を生じさせ、単独運転検出が可能となる従来型PCSの最大連系台数あるいは連系容量を求める評価方法に関するものである。
近年、我が国では太陽光発電、風力発電といった再生可能エネルギーを由来とした分散電源の急速な大量導入が進められている。例えば、50kW未満のPV(以下、太陽光発電と呼ぶ)の低圧配電線への連系やメガワット級の大規模な太陽光発電(以下、メガソーラーと呼ぶ)の高圧配電線への連系が拡大している。それに伴い、太陽光発電が集中連系された配電系統において、広域的な電圧フリッカが発生する問題が生じている。
この電圧フリッカは、低圧連系のPCSに搭載されている単独運転検出機能のステップ注入付周波数フィードバック方式(以下、新型能動的方式と呼ぶ)を採用した新型PCSの応動により発生する無効電力振動が継続することが要因であることが確認されている(例えば、非特許文献1,2)。このため、配電系統の電力品質に影響を与えない適切な単独運転防止法の確立が急務となっている。そこで、現在、系統のフリッカの予兆を監視しPCS無効電力の注入量を制御するロジックが系統連系規定および日本電機工業会規格に反映されている(例えば、非特許文献3)。
白崎, 岡田, 佐野, 岩月:「ステップ注入付周波数フィードバック方式を搭載したPCS の集中連系時におけるフリッカ発生要因の実験的検証」, 電気学会研究会,分冊3,pp.71-78,2017. 佐野, 岡田, 白崎, 岩月:「ステップ注入付周波数フィードバック方式を搭載した単相PCSに起因する無効電力振動の継続条」, 電気学会論文誌B(電力・エネルギー部門誌),Vol.138,No.8,pp.659-670,2018. 日本電気技術規格委員会.系統連系規程2018年追補版(その1).2018.
しかしながら、電圧フリッカの主な原因は新型PCSでの無効電力注入にあるが、従来型能動的方式のPCSにおいても無効電力注入機能を有している。即ち、高圧連系のPV用のPCSにも、無効電力等を注入することで、負荷と発電のバランス状態を崩し、周波数などの変化を検知して単独運転を検出する能動的方式(ステップ注入付周波数フィードバック方式の新型能動的方式に対して従来型能動的方式と呼ばれている。本明細書では、この従来型能動的方式の単独運転検出機能を採用したPCSを従来型PCSと呼ぶ。)の単独運転検出機能が搭載されている。このため、従来型PCSにおいても、無効電力注入に起因するフリッカ障害が伴う問題を有している。
実フィールドでは新型PCSと従来型PCSとが混在して連系していることから、新型PCSの大量連系に伴うフリッカ障害のみならず、従来型PCSに起因するフリッカ障害を考慮した単独運転検出手法の確立が望まれる。
そこで、本発明者等は、実フィールドにおける新型PCSの連系容量の急増に着目して、従来型PCSの能動的方式を不使用とした場合の単独運転移行後の系統において、新型PCSの能動的方式のみで周波数の急変を生じさせ、単独運転検出を行うことについて検討するに至った。
つまり、本発明者等は、上述の要望に応えるため、新型PCSと従来型PCSとが混在した系統において、従来型PCSの能動的方式を不使用状態とし、受動的方式と4要素リレー{過電圧継電器(OVR)、不足電圧継電器(UVR)、過周波数継電器(OFR)、不足周波数継電器(UFR)}のみにより、単独運転を検出する方式について実機試験・研究を試みた。尚、実機試験は、低圧用新型PCSと高圧用従来型PCS混在時の単独運転検出性能の評価を行うため、それぞれ定格容量が同程度の新型PCSと従来型PCSを用い、低圧単相回路上に1台の新型PCSと1台から3台の従来型PCSを接続した単独運転試験を実施し、単独運転検出の可否と検出時間を測定した。
そして、実機試験の結果、新型PCSと能動的方式を不使用とした従来型PCSが混在する系統においては、高圧用従来型PCSの単独運転検出の規定時間である3秒以内に単独運転を検出するものの、新型PCSに対する従来型PCSの連系比率を増加させると、従来型PCSの連系比率が少ない場合と比較して、単独運転検出時間が遅延することを知見した。この結果は、新型PCSと比較して、従来型PCSの連系台数あるいは連系容量が支配的である系統においては、単独運転検出が困難となることを示唆する。即ち、能動的方式を不使用とした従来型PCSを新規に連系する運用を考えた場合に、新型PCSの連系台数あるいは連系容量が極端に少ない系統において、従来型PCSの能動的方式による無効電力注入を不使用とした場合に単独運転検出が困難になる恐れがあるといえる。
このことから、電圧フリッカ対策として、新型PCSと従来型PCSが混在する系統において従来型PCSの能動的方式を不使用状態とし、受動的方式と4要素リレー{過電圧継電器(OVR)、不足電圧継電器(UVR)、過周波数継電器(OFR)、不足周波数継電器(UFR)}のみにより、単独運転を検出する運用を適切に行うためには、新型PCSに対する従来型PCSの連系比率の限界値を導出しておく必要がある。
本発明は、かかる要望に応えるものであって、能動的方式を不使用としたPCSを連系した系統の単独運転検出限界を求める評価方法を提供することを目的とする。
本発明者等は、かかる要望に応えるため、新型PCSと従来型PCSとが混在した系統における単独運転検出へ至るまでの経緯について種々実験・研究した結果、単独運転検出へ至るまでの系統電圧周期の変動特性には、新型PCSのPCS端電圧周期変動開始点から新型PCSの単独運転検出(換言すれば、新型PCS運転停止)までの区間において電圧周期が線形的に変化する傾向があり、その傾きが単独運転検出の可否と検出時間を左右することを知見するに至った。また、新型PCSの停止以後に従来型PCSは受動的方式によって単独運転開始から400ms以内に停止する傾向にあることも確認した。
本発明はかかる知見に基づくものであり、ステップ注入付周波数フィードバック方式の能動的単独運転検出機能を備える新型PCSとそれを備えない従来型PCSとが混在する系統を模擬した実機試験設備を用いて、新型PCSのPCS端電圧周期変動開始時点からPCS停止時点までの電圧周期の傾きを、1台の新型PCSに対して連系する従来型PCSの台数あるいは連系容量を異ならせて各従来型PCSの連系台数あるいは連系容量毎に求める工程と、1台の新型PCSに対する従来型PCSの連系台数あるいは連系容量毎の傾きを直交座標上にプロットし、各プロット間を繋ぐ近似曲線を求める工程と、新型PCSの能動的単独運転検出ロジックに基づいて新型PCSが単独運転検出可能な電圧周期の傾きの下限値を求める工程と、新型PCSの能動的単独運転検出の傾きの下限値と近似曲線との交点から1台の新型PCSに対して単独運転検出が可能となる従来型PCSの最大連系台数あるいは連系容量を求める工程とを有するようにしている。
請求項1記載の発明にかかる能動的方式を不使用としたPCSを連系した系統の単独運転検出限界を求める評価方法によれば、1台の新型PCSに対する従来型PCSの最大連系台数あるいは連系容量を求めることができるので、1台の新型PCSに対する従来型PCSの連系台数あるいは連系容量が最大連系台数あるいは連系容量を下回る場合には、従来型PCSの能動的方式を不使用として受動的方式の単独運転防止機能のみを使用し、新型PCSの新型能動的(ステップ注入付周波数フィードバック)方式の単独運転防止機能と相俟って、新型PCSと従来型PCSが混在する系統の単独運転検出を可能とする。
即ち、本発明によれば、配電系統の電力品質に影響を与えない適切な単独運転防止法の確立が可能であり、新型能動的単独運転検出方式を起因とした電圧フリッカの抑制に寄与できる。
単独運転中の電圧周期変動特性を示す説明図である。 従来型PCSの連系限界台数算定手法の概要を示すグラフである。 単独運転実機試験回路の一例を示す回路図である。 新型PCSに対して従来型PCS連系量が増加した際に単独運転時間が増加する例を示すグラフである。 新型PCSと従来型PCSが存在する系統の単独運転検出までの電圧周期の変動の考え方を示す説明図である。 新型PCSメーカA社、従来型PCSメーカC社の組み合わせの電圧周期変動の例を示すグラフである。 新型PCSメーカA社、従来型PCSメーカB社の組み合わせの電圧周期変動の例を示すグラフである。 新型PCSと従来型PCSとが混在する時の従来型PCSの連系限界台数算定手法のフロー図である。 単独運転検出の可否と検出時間の算出手法の一部を示すフロー図である。 単独運転検出の可否と検出時間の算出手法の残部を示すフロー図である。 従来型メーカAの実停止時間と算出停止時間の偏差のヒストグラムである。 従来型メーカBの実停止時間と算出停止時間の偏差のヒストグラムである。 従来型メーカCの実停止時間と算出停止時間の偏差のヒストグラムである。 従来型メーカDの実停止時間と算出停止時間の偏差のヒストグラムである。 従来型メーカEの実停止時間と算出停止時間の偏差のヒストグラムである。 新型メーカAの実停止時間と算出停止時間の偏差のヒストグラムである。 従来型PCSの連系台数に対する各メーカーの電圧周期の傾きの関係を示すグラフである。 新型PCS算出停止時間と電圧周期の傾きの関係を示すグラフである。 1台の新型PCSに対する従来型PCSの連系台数と電圧周期の傾きの関係(指数関数近似シナリオ)を示すグラフである。 1台の新型PCSに対する従来型PCSの連系台数と電圧周期の傾きの関係(対数関数近似シナリオ)を示すグラフである。
以下、本発明にかかる単独運転検出機能の評価方法、即ち能動的方式を不使用としたPCSを連系した系統の単独運転検出限界を求める評価方法を図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1及び図2に、本発明の能動的方式を不使用としたPCSを連系した系統の単独運転検出限界を求める評価方法の実施形態の一例を示す。
この実施形態にかかるPCSの単独運転検出機能の評価方法は、ステップ注入付周波数フィードバック方式の能動的単独運転検出機能を備える新型PCSとそれを備えない従来型PCSとが混在する系統を模擬した実機試験設備を用いて、新型PCSのPCS端電圧周期変動開始時点からPCS停止時点までの電圧周期の傾きを、1台の新型PCSに対して連系する従来型PCSの台数あるいは連系容量を異ならせて各従来型PCSの連系台数あるいは連系容量毎に求める工程(図1参照)と、1台の新型PCSに対する従来型PCSの連系台数あるいは連系容量毎の傾きを直交座標上にプロットし、各プロット間を繋ぐ近似曲線を求める工程と、新型PCSの能動的単独運転検出ロジックに基づいて新型PCSが単独運転検出可能な電圧周期の傾きの下限値を求める工程と、新型PCSの能動的単独運転検出の傾きの下限値と近似曲線との交点から1台の新型PCSに対して単独運転検出が可能となる従来型PCSの最大連系台数あるいは連系容量を求める工程(図2参照)とを有するようにしている。
新型PCSのPCS端電圧周期変動開始時点からPCS停止時点までの電圧周期の傾きを求める工程は、新型PCSと従来型PCSとが混在する配電系統を模擬した実機試験設備を用いて蒐集したデータを用いて行う。実機試験設備は、例えば、それぞれ定格容量が同程度の新型PCSと従来型PCSを用い、低圧単相回路上に1台の新型PCSと1台から複数台例えば3台の従来型PCSを断続可能に接続して1台の新型PCSに対する従来型PCSの連系台数あるいは連系容量を変更しながら単独運転試験を実施可能としたものであり、1台の新型PCSに対して連系される従来型PCSを切り替えながら従来型PCSの連系台数あるいは連系容量毎の単独運転検出の可否と検出時間を測定し得ると共に、単独運転開始時点から新型PCSが単独運転を検出して従来型PCSが停止するまでの間のPCS端電圧周期の変化を測定するようにしている。
ここで、電圧周期ΔTは、例えば、図9の単独運転検出の可否と検出時間の算出手法のフローに示すように、PCS端の電圧瞬時値データの立ち上がり(交流電圧が負の値から正の値に切り替わる時点)から次の立ち上がりまでの時間を計算することによって導出される。即ち、電圧瞬時値波形を矩形化して、矩形化した波形の立ち上がりを抽出することにより電圧周期が求められて、電圧周期の時系列が作成される。そして、PCS端電圧周期変動開始点は、電圧周期の時系列から電圧周期の変動が開始する時点として求める。例えば、前時点との周期の偏差が一定値を超えたタイミングをPCS端電圧周期変動開始点とする。このPCS端電圧周期変動開始点は、演算によらずとも、図1に示すように作図によって求めるようにしても良い。
また、単独運転検出時間は、例えば次のようにして算出される。例えば、図10に示すフローのように、まず、電圧周期ΔTの時系列から、検出に必要となる過去サイクルの周期の平均値(図10中のT)と現在サイクルの周期の平均値(図10中のT)を導出し、TとTとの差の絶対値を導出して単独運転検出閾値(整定値)以上の値が表れたタイミングを単独運転検出時点とする。即ち、単独運転検出閾値を超えた時点が単独運転検出時間となる(図10(C))。尚、TとTとを導出する区間は機種に応じて異なる点に注意が必要である。また、平均周期を導出する区間と同様に、単独運転検出閾値も機種によって異なる点に注意が必要である。ここで、新型PCS内部の制御部が単独運転を検出したタイミングでPCSがゲートブロック(半導体スイッチで系統から切り離すことを通例的にゲートブロックと呼ぶ(解列))するわけではないが、一般的に単独運転検出時点とPCS停止時点の時間はそれほど乖離したものでなく、実験的にもPCS内部の単独運転検出フラグがONになったタイミングからゲートブロックが実施されるまでの時間を実験的に評価することは不可能と考えられるため、本実験・検討においては検出時点と停止時点が同じであるとし、本明細書においては、説明の便宜上、新型PCSの単独運転検出と運転停止とを同義として説明する。
そして、新型PCSのPCS端電圧周期変動開始時点からPCS停止時点(換言すれば、新型PCSの単独運転検出)までの電圧周期の傾きA(A=ΔT/Δt)は、例えば線形近似を用いて算出する(図2中の(i))。
次いで、縦軸を系統電圧周期の傾きA、横軸を1台の新型PCSに対する従来型PCSの連系台数[台]あるいは連系容量とした極座標上に、各従来型PCS連系台数あるいは連系容量毎の各々の系統電圧周期の傾きをプロットし、各従来型PCS連系台数あるいは連系容量のプロットに線形近似を適用して各プロット間を繋ぐ近似曲線、即ち電圧周期の傾きの減少特性を意味する近似曲線を算出する(図2中の(ii))。
また、前述の図9~図10に示す単独運転検出時間算出手法を用いて、任意の単独運転検出ロジックと任意の電圧瞬時値を基に、新型PCSが停止することのできる電圧周期の傾きAの下限値を算出する。ここでは、新型PCSの無効電力注入による電圧周期変動は線形状であるとし、PCS連系端電圧は周波数が線形状に減少する正弦波を計算によって求め、単独運転検出時間算出に用いる。そして、この系統周波数の変化の傾き(即ち、PCS端電圧の電圧周期の傾きA)をパラメータとして、徐々に変化させながら繰り返し計算を行い、系統周波数の変化率(傾きA)と新型PCSの停止時間の関係をシミュレーションによって算出する。この結果、新型PCSの算出停止時間と電圧周期の傾きとの間に、例えば図18に示すような関係が得られる。この新型PCS算出停止時間と電圧周期の傾きとの関係から、新型PCSが単独運転検出に至るに必要な時間を得るには最小で電圧周期の傾きがどの程度必要であるかを知ることができる。尚、新型PCSは単機の単独運転検出時間が200ms以下となるように規格化されているが、従来型PCSと混在した系統においては、従来型PCSのPLL回路の時定数やPCS内部の計算時間の遅延等の影響を受け、周波数変化率が減少し、単独運転検出に至っても、その検出時間が200msを超えることがある。そのため、電圧周期の傾き下限値を決めるには、新型PCSの停止限界値(検出時間)が200msを超える場合、例えば300ms以内とか、500ms以内となるケースにおいても検討の対象とする必要がある場合もある。
そして、上述の近似曲線と下限値の交点を求め(図2参照)、従来型PCS連系限界台数あるいは連系容量とする。つまり、新型PCSが停止した場合には、従来型PCSが受動的方式によって単独運転を検出するという実験結果を利用して、(ii)の近似曲線と(iii)の下限値の交点が従来型PCS連系限界台数あるいは連系容量とする。(図2中の(iv))。導出した交点は新型PCSが停止する電圧周期の傾きの下限値となる従来型PCSの連系台数あるいは連系容量を示すと共に、従来型PCSが単独運転を検出し、停止することのできる連系限界台数あるいは連系容量と考えることができる。これによって、新型PCSと従来型PCSとの台数が何台まで単独運転可能かあるいはどの程度の連系容量まで単独運転可能かを評価できる。
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
(実施例1)
[1 単独運転検出性能評価試験について]
本願特許出願人の赤城試験センターのPCS実験設備において、それぞれ定格容量が同程度の新型PCSと従来型PCSが混在する系統を模擬した低圧試験回路(図3参照)を構築し、新型PCSと従来型PCSの設備容量比を1:1~1:3の範囲で変化させて従来型PCSの能動的方式を不使用とした場合の単独運転検出性能の評価試験(以下、単独運転試験)を実施した。そして、試験データから新型PCSと従来型PCSが混在する系統における単独運転開始以後の系統の電圧周期の変動特性を取得し、分析して、新型PCS、従来型PCS各々が単独運転検出へ至る過程について明らかにした。次に、既知である任意の単独運転検出ロジックにおいて、与えられた任意の瞬時電圧値に対して、単独運転検出の可否や検出可能な場合の検出時間を算出し、1台の新型PCSに対する単独運転検出が可能となる従来型PCSの連系容量を連系台数として表し、その限界値を算定して実機試験での実験結果と比較して妥当性について評価した。
[単独運転実機試験の概要]
従来型PCS連系限界台数の評価試験に用いた低圧単相回路による実機試験の概要について述べる。単独運転試験のパラメーターとして以下を設け、図3に示す試験回路を構築した。実機試験の内、メーカーB、C製の従来型PCSとメーカーA製の新型PCSの能動的方式による単独運転検出回路を不使用、無効電力注入量計算部のゲインを0とし、従来型PCSを模擬した計3種を対象として、交流電圧源の連系点を流れる潮流がバランスし、新型、従来型PCS間の線路インピーダンスを0Ωとした条件の結果を用いた。なお、実機試験では定格容量が4kWの新型、従来型PCSを用いた。
[パラメーター1]
従来型PCSの連系台数:1~3台
(なお、単相誘導電動機は、新型PCSと従来型PCSの累計連系台数と等しい台数を連系する。)
[パラメーター2]
遮断器の通過潮流(有効、無効電力)の値:
P=-0.05p.u.、0.00p.u.、0.05p.u.
Q=-0.05p.u.、0.00p.u.、0.05p.u.
(p.u.は連系されている新型、従来型PCSの有効電力の累計出力に対する割合を示し、目標値となるように負荷の値を調整する。)
[パラメーター3]
線路Zの値:0.0Ω、0.2Ω、0.5Ω
(抵抗成分とリアクタンス成分の値が等しい条件とした。)
[パラメーター4]
従来型PCSのメーカー:計3機種
各設定値となるように試験回路を調整し、新型、従来型PCS起動後、十分に動作が安定したタイミングで交流遮断器を開放する。そして、PCS各機が停止するまでの時間を計測する。なお、この時に単独運転開始時点と終了時点はそれぞれ遮断機二次側の電流が急激に減少した時点と、各PCSの出力電流が急激に減少した時点とする。
[2 新型PCS、従来型PCSが単独運転を検出するまでの電圧周期変動特性]
実機試験の結果から、電圧周期変動特性を分析し、新型、従来型PCSが単独運転を検出する条件について整理する。
[2.1 従来型PCSの増加による単独運転検出時間の遅延現象について]
新型PCSと能動的方式を不使用とした従来型PCSが混在する系統において、新型PCSに対する従来型PCSの連系比率を増加させると、従来型PCSの連系比率が少ない場合と比較して単独運転検出時間が遅延することが確認された。一例として、新型PCSをメーカーA、従来型PCSをメーカーCとし、新型PCSを1台、従来型PCSを1~3台まで変化させた場合の新型PCSの単独運転検出による停止時間を3回測定し、その停止時間の平均値を比較した結果を図4に示す。なお、図4の時の試験条件は交流電圧源の連系点の有効、無効電力の潮流バランスをそれぞれ0.0p.u.、0.0p.u.とし、新型PCSと従来型PCS間の線路インピーダンスを0.0Ωとしたものである。
図4の結果より、1台の新型PCSに対して、従来型PCSの連系台数が増加すると単独運転検出時間が増加することがわかり、新型PCSと比較して、従来型PCSの連系台数が支配的である系統においては、単独運転検出が困難となることが示唆される。即ち、能動的方式を不使用とした従来型PCSを新規に連系する運用を考えた場合に、新型PCSの連系台数が極端に少ない系統において、従来型PCSの能動的方式による無効電力注入を不使用とした場合に単独運転検出が困難になる恐れがあるといえる。
[2.2 新型PCSと従来型PCSが混在する系統における電圧周期変動]
新型PCSと従来型PCSが混在する系統において、交流電圧源の連系点の有効、無効電力の潮流バランスをそれぞれ0.0p.u.、0.0p.u.とし、新型PCSと従来型PCS間の線路インピーダンスを0.0Ωとした単独運転試験を実施した結果、新型PCSが能動的方式の検出部によって単独運転を検出し、停止した後若しくは、ほぼ同タイミングで従来型PCSが単独運転を検出し、停止する傾向が顕著であることを確認した。また、従来型PCSが停止へ至るまでの電圧周期の変動特性はPCSメーカーによる違いがあるものの、図5に示すように3つの区間に分かれる傾向があることがわかった。区間1は単独運転開始時点から新型PCSが周波数変動を観測し、無効電力の注入を開始するまでの区間を示す。続いて、区間2は新型PCSによる無効電力の注入が開始されてから、新型PCSが単独運転検出に至るまでの区間を示す。なお、区間2は無効電力の注入後、新型PCS連系端電圧で周波数の急変を観測するまでの区間2-1と周波数が急変し、新型PCSが単独運転を検出するまでの区間2-2に細分化した。最後に、区間3は新型PCSの単独運転検出後から従来型PCSが単独運転を検出するまでの区間を示す。区間3はPCSメーカーによって電圧周期変動の特性が大きく異なる他、非線形的な特徴がある。一方で、区間2-2は比較的線形的な特性があることが分かった。電圧周期変動の特性例を図6と図7に示す。図6は新型PCSをメーカーA製とし、従来型PCSをメーカーC製としたものを示し、図7は新型PCSをメーカーA製とし、従来型PCSをメーカーB製としたものを示す。図6の区間2-2は比較的線形的な特性であることがわかる。一方で、図7の区間2-2は電圧周期に振動が生じているが回帰線は直線的に変化していることが分かる。そのため、すべての試験結果の区間2-2は線形的に電圧周期が変動するとみなすことができるものと判断できると考えられる。区間2-2の傾きが大きいと、単独運転検出が容易であり、小さいと困難である。
[2.3 新型PCSと従来型PCSが単独運転検出へ至る条件の整理]
新型PCSと従来型PCSが混在する系統において、交流電圧源の連系点の有効、無効電力の潮流バランスをそれぞれ0.0p.u.、0.0p.u.とし、新型PCSと従来型PCS間の線路インピーダンスを0.0Ωとした単独運転試験結果を参照すると、従来型PCSをメーカーB製、メーカーC製とした場合には、すべての試験ケースで従来型PCSは受動的方式によって単独運転を検出し、400ms以内にPCSが停止していることを確認した。また、メーカーA製の新型PCSの能動的方式による単独運転検出回路を不使用とし、無効電力注入量計算部のゲインを0として、従来型PCSに見立てた(以降、従来型模擬と呼ぶ。)試験ケースにおいては、瞬時電圧低下によってPCSが停止しているものの、多くのケースでは受動的方式によって単独運転を検出し、400ms以内にPCSが停止していることを確認した。瞬時電圧低下によるPCSの停止は、内部回路の過電流の保護を目的としたものであり、UVRによる停止とは異なる。一方で、前述したものと異なる試験条件において、極稀に受動的方式によって単独運転を検出できず、UVRによってPCSが停止したケースが確認された。これらの試験結果から、新型PCSによる無効電力注入が行われ、一定値以上の区間2-2の電圧周期の傾きが生じ、新型PCSが単独運転を検出し、停止した場合には、従来型PCSが遅れて単独運転検出を行うとする。新型PCSは概ね400ms以内に停止していることから系統連系規程で定められている4要素リレーの時限最大値である2秒を考慮しても、従来型PCSは系統連系規程に定められている高圧用従来型PCSの停止時限である3秒以内に停止するものと考えられる。
[3.新型、従来型PCS混在時の従来型PCS連系限界台数算定手法]
新型PCSと従来型PCSが混在した系統における従来型PCSの連系台数上限値の算定手法について述べる。
[3.1従来型PCS連系限界台数算定手法の概要]
実機試験の結果では、すべての試験ケースにおいて、新型PCSと従来型PCSが単独運転を検出し、停止することを確認したが、新型PCSに対する従来型PCSの比率が増加すると、周波数変化率が低くなり、比率によっては新型PCSが単独運転を検出できない可能性がある。その結果、PCSの単独運転が継続し、単独運転検出の規定時間を超過する可能性がある。このため、新型PCSの連系台数に対する能動的方式による単独運転検出を不使用とした従来型PCSの連系限界台数を求める必要がある。しかしながら、実験では必要とする供試PCS台数が非常に多くなり、必要な実験設備容量も大きなものとなるため、費用や労力面で大きな負担が生じるものと想定される。このため、限界比率算定のためには、実験結果を補完する簡易な計算を用いた解析手法が望まれる。
以上を勘案し、実機試験の結果を基に新型PCSと従来型PCSが混在する系統における従来型PCS連系限界台数を算定する手法を開発した。
図8は新型PCSと従来型PCSとが混在する時の従来型PCSの連系限界台数算定手法のフローを示したものである。まず、実機試験の結果から、1サイクルあたりの電圧周期時系列を導出し、区間2-2を求める。次いで、区間2-2の傾きを線形近似により導出する(図8左上部)。次に、新型PCSが単独運転を検出する傾きの下限値を導出する。この下限値の導出のために、数式より導出したPCS連系端の瞬時電圧値とPCSの単独運転検出ロジックを基に単独運転検出の可否と検出時間を算出する。そして、任意の変化率で電圧周期が変化する正弦波波形を数式より導出し、単独運転検出時間算出手法に適用する。電圧周期の傾きに対する新型PCSの単独運転検出時間を記録し、新型PCSが単独運転を検出する傾きの下限値を求める。最後に、実機試験結果を分析し、得られた区間2-2の傾きの減少特性を曲線近似によって補完し、得られた近似曲線と新型PCSが単独運転を検出する傾きの下限値との交点を導出する。ここでは、実機試験の傾向を利用し、新型PCSが単独運転を検出し、停止した場合には従来型PCSが3秒以内に単独運転を検出し、停止するとする。そのため、導出した交点は新型PCSが停止する電圧周期の傾きの下限値となる従来型PCSの連系台数を示すと共に、従来型PCSが単独運転を検出し、停止することのできる連系限界台数と考えることができる。
[3.2単独運転検出の可否と検出時間の算出手法]
新型PCSに対する従来型PCSの連系台数が増加した場合には、周波数変化率が減少し、単独運転検出が困難となることが想定されるが、この限界値を実機試験によって求める場合には、トライアンドエラーを繰り返すため、試験ケース数が膨大となり、多大な労力と時間を要する。そのため、任意の単独運転検出ロジックと任意の電圧瞬時値を基に単独運転検出の可否と停止時間を算出する手法が望まれる。以上を勘案し、与えられた任意の電圧瞬時値を用い、任意の単独運転検出ロジックにおける検出の可否や検出可能な場合の検出時間を算出する手法を提案した。なお、提案した手法は周波数変化率検出または電圧位相跳躍検出を対象としている。
図9と図10は単独運転検出の可否と検出時間の算出手法のフローを示したものである。まず、電圧瞬時値が0.0V以上ならば1.0V、0.0V未満ならば-1.0Vとして、矩形化を行う。そして、矩形化した波形の立ち上がりを抽出し、次の立ち上がりまでの時間を計算した値が電圧周期となる。電圧周期の時間関係は、図9の矩形波のように時点Aから時点Bまでの時間が時点Bにおける電圧周期となり、時点Bから時点Cまでの時間が時点Cにおける電圧周期となる。このようにして、電圧周期の時系列を作成する。続いて、電圧周期の時系列から、検出に必要となる過去サイクルの周期の平均値(図10中のT)と現在サイクルの周期の平均値(図10中のT)を導出する。ここで、TとTとを導出する区間は機種に応じて異なる点に留意されたい。最後に、TとTとの差の絶対値を導出し、単独運転検出閾値(整定値)以上の値が表れたタイミングを単独運転検出時点とする。即ち、単独運転検出閾値を超えた時点が単独運転検出時間となる(図10)。なお、平均周期を導出する区間と同様に、単独運転検出閾値も機種によって異なる点に留意されたい。
[3.3単独運転検出時間算出手法の精度検証]
ここでは、上述の単独運転検出時間算出手法の精度検証を行う。検証方法は実機試験結果における新型PCS、従来型PCSの連系端瞬時電圧値を入力値として得られた単独運転検出時間と実機試験におけるPCS停止時間を比較することによって行う。
[3.3.1 各PCSの単独運転検出ロジック]
ここでは、精度検証の対象としたPCSの単独運転の検出ロジックについて述べる。Aメーカー製の新型PCSの能動的方式による単独運転検出ロジックは参考文献[独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構. 新エネルギー技術研究開発単独運転検出装置の複数台連系試験技術開発研究. 平成20年度~平成21年度成果報告書. 2010 ]を参照し、A~Eメーカー製の従来型PCSの受動的方式による検出ロジックは日本電機工業会(JEMA)のHP[日本電機工業会. 各単独運転防止法式の概要. アクセス日:2019.1.18.https://www.jema-net.or.jp/Japanese/res/fukusudai/kenshutsu.html]より参照した。メーカーA製の従来型PCSは周波数変化率検出方式が採用されており、メーカーBからメーカーE製の従来型PCSは電圧位相跳躍検出方式が採用されている。なお、具体的な検出ロジックは特定のメーカー名がわかる恐れがあるため、記載しないこととする。
[3.3.2単独運転検出時間算出手法の精度評価]
実機試験データを用いて、単独運転検出時間算出手法の精度を検証する。ここでは、実機試験によって得られたPCS端瞬時電圧値を入力データとして、単独運転検出時間算出手法によって単独運転検出時間算出値を導出する。そして、試験結果より得られた実停止時間から算出停止時間を減じ、偏差を導出する。即ち、この偏差が正の値となる場合は、算出停止時間が実停止時間よりも早いことを意味し、負の値となる場合は、算出停止時間が実停止時間よりも遅いことを意味する。また、精度検証は新型PCSをメーカーA製のものとし、従来型PCSをメーカーAからE製に加え、従来型模擬メーカーAとした計6種類の組み合わせの試験ケースに対して実施する。
A)従来型メーカーA
計90ケースに対して単独運転検出時間算出手法を適用し、精度の評価を行った結果、実停止時間と算出停止時間の偏差のヒストグラムが図11に示す結果となった。偏差の多くは0ms~20msと20ms~40msに分布しており、高圧用従来型PCSの単独運転検出時限の3秒と比較し、十分に誤差が小さいという点から、精度よく単独運転検出時間を算出できていることがわかる。
B) 従来型メーカーB
計135ケースに対して単独運転検出時間算出手法を適用し、精度の評価を行った結果、実停止時間と算出停止時間の偏差のヒストグラムが図12に示す結果となった。偏差の多くは20ms~40ms、40ms~60msに分布しており、図11に示したメーカーA製の従来型PCSの偏差よりも若干誤差が多いことがわかる。また、ヒストグラムの特徴から単独運転検出後に1、2サイクル運転を継続する傾向があると考察できる。これは、PCS本体の計測時間や演算処理における時間遅れであると考えられる。一方で、500ms以上の偏差が生じているケースが計9回発生している。これらの大きな偏差が生じたケースは、整定値を僅かに上回り単独運転を検出しているケースであったため、機器の計測精度の差によるものと考察できる。即ち、本手法によって得られた単独運転検出算出時間に停止時間までの遅れを考慮して、20ms若しくは、40msを加算することによって比較的精度よく単独運転検出時間を算出することができると考える。
C) 従来型メーカーC
計135ケースに対して単独運転検出時間算出手法を適用し、精度評価を行った結果、実停止時間と算出停止時間の偏差のヒストグラムが図13に示す結果となった。偏差の多くは40~60ms、60ms~80msに分布している。また、偏差の多くは60ms近傍に集中しているため、このPCSは単独運転を検出した後、3サイクルの間運転を継続し、ゲートブロックを行う特性があると考察できる。この遅れ時間は、メーカーBと同様に計測時間や演算処理によるものであると考えられる。一方で、200ms以上の偏差が計4回発生している他、提案手法では単独運転検出には至らないという結果が得られるケースが計5回発生している。しかしながら、分布の多くが前述したように、60ms近傍に集中しているため、算出停止時間に60msを加算した時間を算出停止時間として用いれば比較的よい精度で単独運転検出時間を算出することができると考えられる。
D)従来型メーカーD
計69ケースに対して単独運転検出時間算出手法を適用し、精度評価を行った結果、実停止時間と算出停止時間の偏差のヒストグラムが図14に示す結果となった。偏差の多くは0ms~20msに分布しており、非常に精度よく単独運転検出時間を算出できていることがわかる。
E)従来型メーカーE
計69ケースに対して単独運転検出時間算出手法を適用し、精度評価を行った結果、実停止時間と算出停止時間の偏差のヒストグラムが図15に示す結果となった。約半数の試験ケースでは、PCSが単独運転検出に至らないという結果が出た。この原因は他メーカーと同様に測定系の誤差によるものと考えられる。一方で、単独運転を検出できた場合の偏差の多くは0ms~20msに分布しており、比較的精度よく単独運転検出時間を算出できていることがわかる。
F)新型メーカーA
計114ケースに対して単独運転検出時間算出手法を適用し、精度評価を行った結果、実停止時間と算出停止時間の偏差のヒストグラムが図16に示す結果となった。0サイクル以内の偏差が多くを占めており、精度よく単独運転検出時間を算出できていることがわかる。
これらの結果より、単独運転検出ロジックとPCS端の電圧瞬時値を基に単独運転検出時間を算出する手法は比較的よい精度で算出できることが分かった。また、機種ごとの停止時間のバイアスを考慮することによって、更に精度よく算出できることがわかった。
[4.新型PCS、従来型PCS混在時の従来型PCS連系限界台数の試算]
ここでは、上述の新型PCSと従来型PCS混在時の従来型PCS連系限界台数算定手法を用いて、メーカーB、メーカーC製の従来型PCSとメーカーA製の新型PCSを従来型模擬としたPCSの計3ケースを対象に従来型PCSの連系限界台数を試算した結果を述べる。まず、過去の実機試験の結果から図5中の区間2-2の電圧周期の傾きを導出した結果について述べる。次に単独運転検出時間算出手法を用いて新型PCSが停止することのできる電圧周期の傾き下限値の算出結果について述べる。最後に、実機試験より導出した区間2-2の傾きと新型PCSが停止することのできる電圧周期の傾き下限値を用いて、1台の新型PCSに対する従来型PCSの連系限界台数を試算した結果を述べる。
[4.1 新型PCSによる無効電力注入時の電圧周期の傾きの算出]
実機試験の結果を分析し、新型PCSによる無効電力注入時(図5の区間2-2)の電圧周期の傾きを線形近似によって算出する。ただし、同一の試験条件であっても、区間2-2の電圧周期の傾きは単独運転開始時点の電圧位相角や連系点に流れる電流量によって同じ結果とならない。本検討においては最悪条件の検討を行うこととして、同一条件の試験結果の内、最も電圧周期の変動が緩慢であった結果を抽出する。メーカーB、メーカーC製の従来型PCSとメーカーA製の新型PCSを従来型模擬としたPCSの区間2-2の傾きを導出した結果は図17となった。なお、この算出は交流電圧源の連系点の有効、無効電力の潮流バランスをそれぞれ0.0p.u.、0.0p.u.とし、新型PCSと従来型PCS間の線路インピーダンスを0.0Ωとした試験を対象とした。
図17よりメーカーB製の従来型PCSは他のPCSと比較して、電圧周期の傾きが小さいことが分かる。これは、従来型PCSの位相同期(Phase Locked Loop;PLL)回路の時定数が他のPCSと比較して大きいためと推察する。PLL回路の時定数が大きい場合には、小さい場合と比較して、より過去の系統情報を基に電流波形を生成するため、無効電力注入による位相急変を鈍化させる。一方、メーカーB製の従来型PCSとメーカーA製の従来型模擬PCSを比較すると、メーカーA製の従来型模擬PCSは急峻に電圧周期の傾きが変化する傾向があることが分かる。これらの結果から、従来型PCSの能動的方式を不使用とした場合においては、単独運転状態の電圧周期の変動特性はメーカーによってばらつきがあることがわかる。
[4.2 新型PCSが単独運転を検出する電圧周期の傾き下限値の算出]
ここでは、単独運転検出時間算出手法を用いて、新型PCSが停止することのできる電圧周期の傾き下限値を算出する。新型PCSの無効電力注入による電圧周期変動は線形状であるとし、PCS連系端電圧は周波数が線形状に減少する正弦波を計算によって求め、単独運転検出時間算出に用いる。そして、この系統周波数の変化の傾き(即ち、PCS端電圧の電圧周期の傾き)をパラメータとして、徐々に変化させながら繰り返し計算を行い、系統周波数の変化率と新型PCSの停止時間の関係をシミュレーションによって算出する。PCS端電圧の電圧周期の傾きを8.60×10-4[-]から2.76×10-3[-]まで2.0×10-6[-]ステップで変化させ、新型PCSの停止時間を算出した結果、図18のような特性となった。なお、ここでは区間1と区間2-1は系統連系規程に定められている高圧用PCSの停止時限である3秒と比較して、微小であるため、考慮しないこととした。また、図18のグラフの左側のプロットがない範囲については、単独運転を検出できず、運転が継続することを示す。
この結果より、新型PCSが200ms以内に停止するには、最小で電圧周期の傾きが2.038×10-3[-]となる必要があることがわかった。また、300ms以内に停止するには、最小で電圧周期の傾きが1.266×10-3[-]となる必要があり、さらに500ms以内に停止するには、最小で電圧周期の傾きが9.000×10-4[-]となる必要があることがわかった。なお、新型PCSは単機の単独運転検出時間が200ms以下となるように規格化されているが、従来型PCSと混在した系統においては、従来型PCSのPLL回路の時定数の影響を受け、周波数変化率が減少し、単独運転検出に至っても、その検出時間が200msを超えることがある。そのため、本検討においては、新型PCSの停止限界値が300ms以内と500ms以内となるケースにおいても検討の対象とする。
[4.3 新型、従来型PCS混在時の従来型PCS連系限界台数の試算結果]
ここでは、電圧周期の傾きと新型PCSが単独運転を検出する電圧周期の傾き下限値の算出結果を基に、新型PCSと従来型PCS混在時の1台の新型PCSに対する単独運転検出が可能となる従来型PCSの連系限界台数の試算結果について述べる。実機試験結果を分析し、得られた従来型PCSの連系台数に対する電圧周期の傾きの関係(図17)に曲線近似を適用することによって、試験結果より得られた従来型PCSの連系台数に対する電圧周期の傾きの減少特性を補完するが、試験結果より得られたプロットが3点のみであるため、最適な近似式を検討することが困難である。そこで、本試算においては、従来型PCSの連系台数に対する電圧周期の傾きが指数関数的に減少するとした指数関数近似シナリオと対数関数的に減少するとした対数関数近似シナリオの2つのシナリオで検討を行うこととする。そして、電圧周期の傾きの減少特性を意味する近似曲線と新型PCSが単独運転を検出する電圧周期の傾きの下限値との交点を導出する。
メーカーB、メーカーC製の従来型PCSとメーカーA製の新型PCSを従来型模擬としたPCSの計3ケースを対象として従来型PCSの連系限界台数を試算した結果、指数関数近似シナリオと対数関数近似シナリオの結果はそれぞれ図19、図20となった。また、各シナリオ、各PCSが連系限界に達する台数をまとめたものを表1に示す。
Figure 0007289748000001
尚、指数関数近似シナリオは各傾き算出値に対して、フィッティングするものの、0に漸近する特徴があるため、限界値に達する台数が多くなる特徴がある。一方、対数関数近似シナリオは従来型模擬メーカーAはフィッティングが精度良くできていない。他方、対数関数近似シナリオは電圧周期の傾きの減衰が急であるため、過酷条件の評価と考えることができ、安全サイドの評価といえるため、基礎検討として対数関数近似を採用することが好ましいと考える。メーカーBの従来型PCSの能動的方式を不使用として系統に連系することを考えると、新型PCSの停止時間上限値が200ms以内の場合には新型PCSの台数に対して、従来型PCSの台数を1.93倍以下にしなければ、新型PCSが200ms以内に単独運転を検出することができないといえる。一方で、従来型PCSと新型PCS混在時の新型PCSの単独運転検出時間を500ms以内に行えれば良いと考えるならば、新型PCSの台数に対して、3.04倍以下まで従来型PCSが連系可能となる。
A電力管内の配電線フィーダー単位の新型PCSと従来型PCSの連系比率を比較した結果では、新型PCSが25%以上となるフィーダーは管内の70%程度を占めるとのことであった。即ち、本検討で導出したメーカーBの500ms以内に新型PCSが単独運転を検出する連系限界台数である3.04台となった場合(新型PCSの連系比率が25.0%以上)は70%程度の配電線フィーダーにおいて、従来型PCSの能動的方式を不使用としても、単独運転検出が可能となるとの試算結果が得られた。故に、本題目における高圧PCSの能動的方式による無効電力注入を不使用とした単独運転検出の可否の検討の意義が再確認された。
以上、従来型PCSと新型PCSについて、それぞれ単独運転試験を実施した結果、全ての設備容量比で高圧連系の規定時間(3s)以内に停止し、1:3程度までは単独運転が検出可能となることが確認された。また、検出時間変化の特徴として、設備容量比の拡大に伴い即ち従来型PCSの連系台数が増加するに従い、新型PCSおよび従来型PCSの停止時間が延びる傾向(単独運転検出時間の平均値)が確認された(図1)。さらに、実機試験で得られたデータを基に新型PCSと従来型PCSが混在する系統の単独運転検出へ至るまでの電圧周期の変動特性を分析した結果、新型PCSのPCS端電圧周期変動開始点から新型PCSの単独運転検出(新型PCS停止)までの電圧周期は線形的に変化する傾向があることと、新型PCSの停止以後に能動的方式を不使用とした従来型PCSは受動的方式によって単独運転を検出し、単独運転開始から400ms以内に停止する傾向があることが確認された。
そして、1台の新型PCSに対する従来型PCSの連系限界台数を試算した結果、新型PCSが無効電力を注入している間の系統電圧の周期変動特性は従来型PCSの連系台数が増加するにつれて、周波数変化率が低減することがわかった。他方、任意の単独運転検出ロジックと与えられた任意の瞬時電圧値に基づいて算出された新型PCSが単独運転検出可能な電圧周期の傾きの下限値と、新型PCSのPCS端電圧周期変動開始時点からPCS停止時点までの電圧周期の傾きを従来型PCSの連系台数毎に求めて線形近似を適用して得られた近似曲線の電圧周期の傾きの減少特性とから、1台の新型PCSに対する単独運転検出が可能となる従来型PCSの連系台数限界値を求めることが、実機試験での実験結果と比較した結果、比較的精度良いことが確認された。

Claims (1)

  1. ステップ注入付周波数フィードバック方式の能動的単独運転検出機能を備える新型PCSとそれを備えない従来型PCSとが混在する系統を模擬した実機試験設備を用いて、前記新型PCSのPCS端電圧周期変動開始時点からPCS停止時点までの電圧周期の傾きを、1台の新型PCSに対して連系する従来型PCSの台数あるいは連系容量を異ならせて各従来型PCSの連系台数あるいは連系容量毎に求める工程と、
    1台の前記新型PCSに対する前記従来型PCSの連系台数あるいは連系容量毎の傾きを直交座標上にプロットし、各プロット間を繋ぐ近似曲線を求める工程と、
    前記新型PCSの能動的単独運転検出ロジックに基づいて前記新型PCSが単独運転検出可能な前記電圧周期の傾きの下限値を求める工程と、
    前記新型PCSの能動的単独運転検出の傾きの下限値と前記近似曲線との交点から1台の前記新型PCSに対して単独運転検出が可能となる前記従来型PCSの最大連系台数あるいは連系容量を求める工程
    とを有することを特徴とする能動的方式を不使用としたPCSを連系した系統の単独運転検出限界を求める評価方法。
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